(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
肌対向面を形成する表面シートと、非肌対向面を形成する裏面シートと、これらのシートの間に位置する吸収体とを備えた、長手方向、幅方向及び厚さ方向を有する吸収性物品であって、
前記吸収体は、平面視にて、
前記長手方向に延びる幅方向中心線を挟んで対称となるように配置された、少なくとも一対の折曲げ誘導部と、
前記一対の折曲げ誘導部の幅方向内方側に位置し且つ前記幅方向中心線を挟んで対称となるように配置された、前記長手方向に延びる少なくとも一対の凹部と、を有しており、
前記一対の折曲げ誘導部の各々は、前記吸収体の幅方向端縁から幅方向内方側に向かって延び、且つ幅方向内方側に向かうにつれて、長手方向内方側に向かうように延びており、
さらに、前記吸収性物品は、前記裏面シートの非肌対向面側の表面に配置された粘着部を有しており、
前記一対の折曲げ誘導部の各々は、前記粘着部と厚さ方向に重ならない又は部分的に重なるように配置されていることを特徴とする、前記吸収性物品。
前記少なくとも一対の折曲げ誘導部は、前記幅方向に延びる長手方向中心線に対して、前記長手方向の一方側に位置する一対の折曲げ誘導部と、前記長手方向の他方側に位置する一対の折曲げ誘導部と、を含み、
前記長手方向の一方側に位置する一対の折曲げ誘導部と、前記長手方向の他方側に位置する一対の折曲げ誘導部とは、前記長手方向中心線を挟んで対称となるように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の吸収性物品。
前記少なくとも一対の折曲げ誘導部は、前記幅方向中心線に対して前記幅方向の一方側に位置する折曲げ誘導部の仮想延長線と、前記幅方向中心線に対して前記幅方向の他方側に位置する折曲げ誘導部の仮想延長線とが同一直線上に重ならないように配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
前記一対の折曲げ誘導部の各々は、平面視にて、幅方向内方側の端部が前記一対の凹部と連通していることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
前記吸収性物品は、平面視にて、前記幅方向の両端部に位置し且つ前記長手方向に延在するように前記表面シートの肌対向面側の表面に配置された一対のサイドシートと、前記一対のサイドシートの各々に固定され且つ前記長手方向に延びる弾性部材と、を含む、一対の防漏壁部を更に有しており、
前記弾性部材の長手方向固定端は、前記一対の折曲げ誘導部の仮想延長線よりも長手方向外方側に位置していることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の吸収性物品。
前記一対の折曲げ誘導部の各々は、幅方向外方側の端部が前記括れ部の長手方向外方側において前記吸収体の最大幅を有する最大幅部と、前記括れ部において前記吸収体の最小幅を有する最小幅部との間に位置し、且つ前記最大幅部と前記最小幅部との間の長手方向中間位置よりも長手方向外方側に位置していることを特徴とする、請求項11に記載の吸収性物品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような特許文献1に開示された吸収性物品では、着用者の歩行時などの動作時におけるフィット性については考慮されておらず、また、着用者の脚周りに近い交差溝部が吸収体の幅方向端縁まで延びていないため、着用者が歩行などの動作を行ったときに(具体的には、吸収性物品に対し、長手方向を軸として左右交互に捩じれる方向の力が加わるような動作を行ったときに)、吸収体、ひいては吸収性物品が着用者の動作に追従して変形しきれず、着用者に違和感を生じさせる恐れがあった。
【0006】
そこで、本発明は、歩行などの動作時においても着用者に違和感を生じさせにくく、フィット性に優れた吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様(態様1)は、肌対向面を形成する表面シートと、非肌対向面を形成する裏面シートと、これらのシートの間に位置する吸収体とを備えた、長手方向、幅方向及び厚さ方向を有する吸収性物品であって、
前記吸収体は、平面視にて、
前記長手方向に延びる幅方向中心線を挟んで対称となるように配置された、少なくとも一対の折曲げ誘導部と、
前記一対の折曲げ誘導部の幅方向内方側に位置し且つ前記幅方向中心線を挟んで対称となるように配置された、前記長手方向に延びる少なくとも一対の凹部と、を有しており、
前記一対の折曲げ誘導部の各々は、前記吸収体の幅方向端縁から幅方向内方側に向かって延び、且つ幅方向内方側に向かうにつれて、長手方向内方側に向かうように延びていることを特徴とする、前記吸収性物品である。
【0008】
本態様1の吸収性物品は、吸収体の折れ曲がり基点として機能する折曲げ誘導部が、吸収体の幅方向端縁から幅方向内方側に向かって延び、且つ幅方向内方側に向かうにつれて、長手方向内方側に向かうように延びているため、着用者の歩行時などの動作時においても(具体的には、吸収性物品に対し、長手方向を軸として左右交互に捩じれる方向の力が加わるような動作時においても)、吸収体、ひいては吸収性物品が着用者の動作に追従して変形しやすく(以下、このような折曲げ誘導部による作用を、単に「追従変形作用」と称する。)、着用者に違和感を生じさせにくくなっている。
さらに、本態様1の吸収性物品は、吸収体が折曲げ誘導部の幅方向内方側の位置に長手方向に延びる一対の凹部を有しているので、着用者の動作時に、上述の折曲げ誘導部を介して吸収性物品に長手方向を軸として左右交互に捩じれる方向の力が加わったとしても、長手方向に延びる一対の凹部によってその力を分散することができ、当該一対の凹部よりも幅方向内方側の部分、すなわち吸収体の幅方向中央部分を変形しにくくすることができる。
このように本態様1の吸収性物品は、上述の折曲げ誘導部による追従変形作用に加えて、吸収体の幅方向中央部分を的確に着用者の股間部に密着させることできるので、着用者の動作時においても優れたフィット性を発揮することができる。
以上より、本態様1の吸収性物品は、歩行などの動作時においても着用者に違和感を生じさせにくく、優れたフィット性を発揮することができる。
【0009】
また、本発明の別の態様(態様2)では、上記態様1の吸収性物品において、前記少なくとも一対の折曲げ誘導部は、前記幅方向に延びる長手方向中心線に対して、前記長手方向の一方側に位置する一対の折曲げ誘導部と、前記長手方向の他方側に位置する一対の折曲げ誘導部と、を含み、
前記長手方向の一方側に位置する一対の折曲げ誘導部と、前記長手方向の他方側に位置する一対の折曲げ誘導部とは、前記長手方向中心線を挟んで対称となるように配置されていることを特徴とする。
【0010】
本態様2の吸収性物品は、長手方向の一方側に位置する一対の折曲げ誘導部と、長手方向の他方側に位置する一対の折曲げ誘導部とが長手方向中心線を挟んで対称となるように配置されているため、着用者の動作時に、吸収性物品の長手方向の広範囲にわたって上述の折曲げ誘導部による追従変形作用を発揮することができる。
【0011】
本発明の更に別の態様(態様3)では、上記態様1又は2の吸収性物品において、前記少なくとも一対の折曲げ誘導部は、前記幅方向中心線に対して前記幅方向の一方側に位置する折曲げ誘導部の仮想延長線と、前記幅方向中心線に対して前記幅方向の他方側に位置する折曲げ誘導部の仮想延長線とが同一直線上に重ならないように配置されていることを特徴とする。
【0012】
本態様3の吸収性物品は、少なくとも一対の折曲げ誘導部が、幅方向の一方側に位置する折曲げ誘導部の仮想延長線と、前記幅方向中心線に対して前記幅方向の他方側に位置する折曲げ誘導部の仮想延長線とが同一直線上に重ならないように配置されているため、それぞれの折曲げ誘導部ごとに折れ曲がり基点を形成することができ、吸収体をより多様な形状に変形しやすくすることができる上、仮に、着用者の動作時に上述の捩じれる方向の力が折曲げ誘導部を介して吸収体の幅方向中央部分に及んだとしても、当該幅方向中央部分においては折れ曲がり基点が形成されにくく、当該吸収体の幅方向中央部分の折れ曲がりをより生じにくくすることができる。
【0013】
本発明の更に別の態様(態様4)では、上記態様1〜3のいずれかの吸収性物品において、前記吸収体は、肌対向面側に位置する前記表面シート又は中間シートと接着層を介して接合されており、
前記接着層は、平面視にて、前記長手方向と平行な仮想線と交差する部分を有しながら、前記長手方向に延在していることを特徴とする。
【0014】
本態様4の吸収性物品は、吸収体が肌対向面側に位置する表面シート又は中間シートと接着層を介して接合されているので、着用者の動作時においても吸収体が型崩れしにくく、より優れたフィット性を発揮することができる。
さらに、本態様4の吸収性物品は、上述の接着層が平面視にて長手方向と交差する部分を有しながら、長手方向に延在している(例えば、長手方向に沿ってスパイラル状、オメガ状等の形態で配置されている)ので、接着層による吸収阻害が生じにくい上、上述の捩じれる方向の力が加わるような動作時においても、折曲げ誘導部による追従変形作用を阻害せず、吸収性物品を着用者の動作に的確に追従して変形させることができる。
【0015】
本発明の更に別の態様(態様5)では、上記態様1〜4のいずれかの吸収性物品において、前記吸収性物品は、前記吸収体よりも肌対向面側の位置に肌対向面側吸収層を有しており、
前記肌対向面側吸収層は、前記一対の折曲げ誘導部と前記厚さ方向に重複する部分の幅方向長さが、前記吸収体における前記一対の折曲げ誘導部を有する部分の幅方向長さよりも大きいことを特徴とする。
【0016】
本態様5の吸収性物品は、肌対向面側吸収層における前記一対の折曲げ誘導部と厚さ方向に重複する部分の幅方向長さが、吸収体における前記一対の折曲げ誘導部を有する部分の幅方向長さよりも大きいため、着用者から尿などの排泄液が供給される前において、上述の折曲げ誘導部の変形によるヨレを生じにくくすることができる。これにより、本態様5の吸収性物品は、より優れたフィット性を発揮することができる上、ヨレによる排泄液の漏れも生じにくくすることができる。
【0017】
本発明の更に別の態様(態様6)では、上記態様5の吸収性物品において、前記肌対向面側吸収層が少なくとも吸収性ポリマーを含むことを特徴とする。
【0018】
本態様6の吸収性物品は、肌対向面側吸収層が少なくとも吸収性ポリマーを含んでいるため、着用者から尿などの排泄液が供給されたときに、肌対向面側吸収層が排泄液を吸収して膨張し、当該肌対向面側吸収層の非肌対向面側に位置する吸収体のヨレをより生じにくくすることができる。これにより、本態様6の吸収性物品は、着用者の排泄後においても優れたフィット性を維持しやすく、ヨレに起因する排泄液の漏れを生じにくくすることができる。
【0019】
本発明の更に別の態様(態様7)では、上記態様1〜6のいずれかの吸収性物品において、前記一対の折曲げ誘導部の各々は、平面視にて、幅方向内方側の端部が前記一対の凹部と連通していることを特徴とする。
【0020】
本態様7の吸収性物品は、一対の折曲げ誘導部の幅方向内方側の端部が一対の凹部と連通しているので、着用者の動作時に折曲げ誘導部を介して伝わる上述の捩じれる方向の力を一対の凹部においてより分散しやすく、吸収体の幅方向中央部分をより一層変形しにくくすることができる。
【0021】
本発明の更に別の態様(態様8)では、上記態様1〜7のいずれかの吸収性物品において、前記吸収性物品は、平面視にて、前記幅方向に延びる少なくとも2本の折り線を有しており、
前記一対の折曲げ誘導部の各々は、前記折り線と交差しないように配置されていることを特徴とする。
【0022】
本態様8の吸収性物品は、幅方向に延びる少なくとも2本の折り線を有していて、一対の折曲げ誘導部の各々がこれらの折り線と交差しないように配置されているため、吸収性物品をコンパクトに折り畳むことができ、収納性や携帯性などに優れたものとすることができる上、折り線による折り皺を利用した折れ曲がり基点を形成することができるので、上述の一対の折曲げ誘導部による追従変形作用を阻害せずに、吸収性物品をより多様な形状に変形しやすくすることができる。
【0023】
本発明の更に別の態様(態様9)では、上記態様1〜8のいずれかの吸収性物品において、前記吸収性物品は、前記裏面シートの非肌対向面側の表面に配置された粘着部を有しており、
前記一対の折曲げ誘導部の各々は、前記粘着部と厚さ方向に重ならない又は部分的に重なるように配置されていることを特徴とする。
【0024】
本態様9の吸収性物品は、着用者の下着等の着衣に固定するための粘着部を有していて、一対の折曲げ誘導部の各々が粘着部と厚さ方向に完全には重ならないように配置されているため、上述の一対の折曲げ誘導部による追従変形作用を阻害せずに、吸収性物品を着用者の着衣に固定することができ、優れたフィット性をより安定的に発揮することができる。
【0025】
本発明の更に別の態様(態様10)では、上記態様9の吸収性物品において、前記粘着部は、平面視にて、少なくとも前記一対の折曲げ誘導部よりも長手方向外方側の位置に配置されていることを特徴とする。
【0026】
本態様10の吸収性物品は、粘着部が少なくとも折曲げ誘導部よりも長手方向外方側の位置に配置されているので、上述の折曲げ誘導部が折れ曲がり基点として機能しても、当該折曲げ誘導部の長手方向外方側の部分を着用者の着衣に着実に固定することができ、吸収性物品が着用中に捲れたり、剥がれたりするようなことを生じにくくすることができる。
【0027】
本発明の更に別の態様(態様11)では、上記態様1〜10のいずれかの吸収性物品において、当該吸収性物品は、平面視にて、前記幅方向の両端部に位置し且つ前記長手方向に延在するように前記表面シートの肌対向面側の表面に配置された一対のサイドシートと、前記一対のサイドシートの各々に固定され且つ前記長手方向に延びる弾性部材と、を含む、一対の防漏壁部を更に有しており、
前記弾性部材の長手方向固定端は、前記一対の折曲げ誘導部の仮想延長線よりも長手方向外方側に位置していることを特徴とする。
【0028】
本態様11の吸収性物品は、弾性部材の長手方向固定端が一対の折曲げ誘導部の仮想延長線よりも長手方向外方側に位置しており、折曲げ誘導部の長手方向外方側まで防漏壁部を形成することができるため、着用中に上述の折曲げ誘導部が折れ曲がり基点として機能し、吸収性物品が着用者の動作に追従して変形したとしても、排泄液の漏れを生じにくくすることができる。
【0029】
本発明の更に別の態様(態様12)では、上記態様1〜11のいずれかの吸収性物品において、前記吸収体は、平面視にて長手方向中央部に、幅方向長さが相対的に小さい括れ部を有しており、
前記一対の折曲げ誘導部の各々は、前記括れ部に配置されていることを特徴とする。
【0030】
本態様12の吸収性物品は、着用者の脚周りに対応する括れ部に上述の折曲げ誘導部が配置されているため、当該折曲げ誘導部が着用者の脚の動きに応じて変形しやすく、より的確に上述の追従変形作用を発揮することができる。
【0031】
本発明の更に別の態様(態様13)では、上記態様12の軽失禁パッドにおいて、前記一対の折曲げ誘導部の各々は、幅方向外方側の端部が前記括れ部の長手方向外方側において前記吸収体の最大幅を有する最大幅部と、前記括れ部において前記吸収体の最小幅を有する最小幅部との間に位置し、且つ前記最大幅部と前記最小幅部との間の長手方向中間位置よりも長手方向外方側に位置していることを特徴とする。
【0032】
本態様13の吸収性物品は、折曲げ誘導部の幅方向外方側の端部が上記特定の部分に位置しているため、着用者の脚の動きが大きいような場合でも、折曲げ誘導部がその動きに応じて的確に変形することができ、上述の態様12の効果をより安定的に且つ確実に発揮することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、歩行などの動作時においても着用者に違和感を生じさせにくく、フィット性に優れた吸収性物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(各種定義)
以下、本発明の吸収性物品の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書においては、特に断りのない限り、「展開した状態で水平面上に置いた対象物(例えば、軽失禁パッド、吸収体等)を、垂直方向の上方側(対象物が軽失禁パッドの場合は表面シート側あるいは裏面シート側)から対象物の厚さ方向に見ること」を、単に「平面視」という。
【0036】
本明細書において用いられる各種方向等については、特に断りのない限り、以下のとおりである。
本明細書において、「長手方向」は、「平面視における縦長の対象物(例えば、展開した状態の軽失禁パッド、吸収体等)の長さの長い方向」を指し、「幅方向」は、「平面視における縦長の対象物の長さの短い方向」を指し、「厚さ方向」は、「展開した状態で水平面上に置いた対象物に対して垂直方向」を指し、これらの長手方向、幅方向及び厚さ方向は、それぞれ互いに直交する関係にある。
【0037】
さらに、本明細書では、「縦長の対象物の幅方向の中央に位置し且つ長手方向に延びる仮想線」を「幅方向中心線C
L」といい、「縦長の対象物の長手方向の中央に位置し且つ幅方向に延びる仮想線」を「長手方向中心線C
W」という。これに関連して、「縦長の対象物の長手方向において、長手方向中心線C
Wに対して相対的に近位側」を「長手方向内方側」といい、「縦長の対象物の長手方向において、長手方向中心線C
Wに対して相対的に遠位側」を「長手方向外方側」という。同様に、「縦長の対象物の幅方向において、幅方向中心線C
Lに対して相対的に近位側」を「幅方向内方側」といい、「縦長の対象物の幅方向において、幅方向中心線C
Lに対して相対的に遠位側」を「幅方向外方側」という。
【0038】
また、本明細書では、特に断りのない限り、軽失禁パッドの厚さ方向において、「軽失禁パッドの着用時に、着用者の肌面に対して相対的に近位側」を「肌対向面側」といい、「軽失禁パッドの着用時に、着用者の肌面に対して相対的に遠位側」を「非肌対向面側」という。これに関連して、吸収性物品においては、厚さ方向に対向する肌対向面側及び非肌対向面側の2つの表面を、それぞれ肌対向面及び非肌対向面といい、表面シートや裏面シート、吸収体等の構成部材においては、厚さ方向に対向する肌対向面側及び非肌対向面側の2つの表面を、それぞれ肌対向面側の表面及び非肌対向面側の表面という。
【0039】
[軽失禁パッド]
本発明の一実施形態に係る軽失禁パッド1は、
図1及び
図2に示すように、平面視にて、長手方向L及び幅方向Wを有し、且つ2つの長手方向端縁が長手方向外方側に向かって円弧状に突出してなる縦長の外形形状を有している。なお、軽失禁パッド1の外形形状はこのような態様に限定されず、縦長の形状のものであれば、各種用途や使用態様等に応じた任意の形状(例えば、楕円形、砂時計形、瓢箪形など)を採用することができる。
【0040】
また、上述の軽失禁パッド1は、厚さ方向Tにおいて、軽失禁パッド1の肌対向面を形成する液透過性の表面シート2と、軽失禁パッド1の非肌対向面を形成する裏面シート3と、これらのシートの間に位置する吸収体4とを、基本構成として備えている。
さらに、上述の軽失禁パッド1においては、
図1〜
図3に示すように、表面シート2と吸収体4の間に配置され、複数の粒状の吸収性ポリマーとそれを包む親水性不織布とによって構成された肌対向面側吸収層7と、裏面シート3の非肌対向面側の表面に配置され、軽失禁パッド1を着用者の下着等の着衣の内面に粘着固定する粘着部8と、表面シート2よりも肌対向面側の位置において軽失禁パッド1の幅方向Wの両端部に位置し且つ長手方向Lに延在するように配置された一対のサイドシート91、92と、当該一対のサイドシート91、92の各々において長手方向Lに沿うように配置された複数本の弾性部材93、94と、を更に備えている。
【0041】
なお、一対のサイドシート91、92と弾性部材93、94は、軽失禁パッド1を着用者の着衣の内面へ装着した時に(すなわち、軽失禁パッド1が長手方向Lに湾曲した時に)、弾性部材93、94が一対のサイドシート91、92を長手方向Lに収縮させて、当該一対のサイドシート91、92の幅方向内方側の端縁部が起立し、一対の防漏壁部9、9を形成することができる。
【0042】
また、軽失禁パッド1は、
図1に示すように、平面視にて、軽失禁パッド1の長手方向Lの一方側端縁と他方側端縁の間に、軽失禁パッド1を、表面シート2を内側にして長手方向Lに折り畳むための、幅方向Wに延びる第1折り線FL
1及び第2折り線FL
2を有しているため、コンパクトに折り畳むことができ、収納性や携帯性などに優れたものとなっている。
【0043】
そして、本実施形態の軽失禁パッド1においては、吸収体4は、
図1〜
図4に示すように平面視にて、軽失禁パッド1の長手方向Lに延びる幅方向中心線C
Lを挟んで対称となるように配置され、非肌対向面側の表面から肌対向面側の表面に向かって厚さ方向Tに窪む、相対的に低剛性の二対の折曲げ誘導部51〜54と、これら二対の折曲げ誘導部51〜54の幅方向内方側に位置し且つ幅方向中心線C
Lを挟んで対称となるように長手方向Lに延びるように配置され、非肌対向面側の表面から肌対向面側の表面に向かって厚さ方向Tに窪む、相対的に低剛性の一対の凹部61、62と、を有している。なお、本明細書において相対的に低剛性とは、他の部分と比べて相対的に剛性が低いことを意味する。
さらに、上記の折曲げ誘導部51〜54の各々は、
図1に示すように、吸収体4の幅方向端縁4W
1,4W
2から幅方向内方側に向かって延び、且つ幅方向内方側に向かうにつれて、長手方向内方側に向かうように延びている。
【0044】
なお、軽失禁パッド1においては、吸収体4の長手方向Lの一方側に位置する一対の折曲げ誘導部51、52と、吸収体4の長手方向Lの他方側に位置する一対の折曲げ誘導部53、54とは、幅方向Wに延びる長手方向中心線C
Wを挟んで対称となるように配置されている。
【0045】
上述の軽失禁パッド1は、
図5に示すように吸収体4の折れ曲がり基点として機能する少なくとも一対の折曲げ誘導部51、52が、吸収体4の幅方向端縁4W
1,4W
2から幅方向内方側に向かって延び、且つ幅方向内方側に向かうにつれて、長手方向内方側に向かうように延びているため、着用者の歩行時などの動作時においても(具体的には、軽失禁パッド1に対し、長手方向Lを軸として左右交互に捩じれる方向の力が加わるような動作時においても)、吸収体4、ひいては軽失禁パッド1が着用者の動作に追従して変形しやすく(すなわち、追従変形作用を有しており)、着用者に違和感を生じさせにくくなっている。
さらに、軽失禁パッド1は、吸収体4が折曲げ誘導部51、52の幅方向内方側の位置に長手方向Lに延びる一対の凹部61、62を有しているので、着用者の動作時に、上述の少なくとも一対の折曲げ誘導部51、52を介して軽失禁パッド1に長手方向Lを軸として左右交互に捩じれる方向の力が加わったとしても、長手方向Lに延びる一対の凹部61、62によってその力を分散することができ、当該一対の凹部61,62よりも幅方向内方側の部分、すなわち吸収体4の幅方向中央部分を変形しにくくすることができる。
このように軽失禁パッド1は、上述の少なくとも一対の折曲げ誘導部51,52による追従変形作用に加えて、吸収体4の幅方向中央部分を的確に着用者の股間部に密着させることできるので、着用者の動作時においても優れたフィット性を発揮することができる。
したがって、軽失禁パッド1は、歩行などの動作時においても着用者に違和感を生じさせにくく、優れたフィット性を発揮することができる。
【0046】
ここで、本明細書において、長手方向Lに延びる幅方向中心線C
Lを挟んで対称とは、幅方向中心線C
Lを対称軸として線対称であることを意味する。なお、幅方向Wに延びる長手方向中心線C
Wを挟んで対称も同様である。
【0047】
なお、上述の軽失禁パッド1においては、
図1に示すように、幅方向中心線C
Lを挟んで対称となるように長手方向Lに延びる一対の圧搾部E
1、E
2と、当該一対の圧搾部E
1、E
2の間に位置し且つ長手方向中心線C
Wを挟んで対称となるように円弧状に幅方向Wに延びる一対の圧搾部E
3、E
4と、軽失禁パッド1の外周縁部に沿って連続的に延びるラウンドシール部R
sと、を更に有している。上述の軽失禁パッド1においては、一対の圧搾部E
1、E
2は、
図1に示すように、平面視にて上記一対の凹部61、62と重複する位置及び形状で形成されている。
【0048】
上述の圧搾部E
1〜E
4は、
図3に示すように、表面シート2の肌対向面側の表面から裏面シート3に向かって厚さ方向Tに窪むように形成されており、エンボスなどの加工手段によって、表面シート2、肌対向面側吸収層7及び吸収体4が肌対向面側から非肌対向面側に向かって厚さ方向Tに圧搾されることにより形成されている。
【0049】
なお、これらの圧搾部E
1〜E
4の位置や形状は、特に制限されず、所望の液拡散性や変形誘導性、強度などに応じた任意の形状を採用することができる。そもそも軽失禁パッド1は、このような圧搾部E
1〜E
4を有していなくてもよい。
【0050】
以下、本発明の吸収性物品の各種構成部材について、上述の実施形態の軽失禁パッド1等を用いて更に詳細に説明する。
【0051】
[表面シート]
上述の軽失禁パッド1において表面シート2は、
図1に示すように、平面視にて、軽失禁パッド1の長手方向Lの一方側端縁から他方側端縁にわたって延在し、且つ、軽失禁パッド1の幅方向Wの一方側端縁近傍から他方側端縁近傍にわたって延在する、縦長の外形形状を有している。かかる表面シート2は、軽失禁パッド1の厚さ方向Tにおいて肌対向面側の位置に配置され、着用者の肌に当接し得る接触面、すなわち軽失禁パッド1の肌対向面を形成する、液透過性のシート状部材によって構成されている。
【0052】
表面シート2は、
図1に示すように、当該表面シート2の非肌対向面側に配置される吸収体4に比べて、長手方向L及び幅方向Wにやや大きいサイズを有しており、幅方向Wの両端部の肌対向面側の表面には、一対のサイドシート91、92が接合されている。
【0053】
表面シート2として用い得る液透過性のシート状部材は、軽失禁パッドの表面シートとして用い得る諸特性(例えば、液透過性や肌触り、柔軟性、強度等)を有するものであれば特に制限されず、例えば、エアスルー不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布等の不織布や、多孔性樹脂フィルムなどの任意の液透過性のシート状部材を用いることができる。
【0054】
なお、表面シートとして不織布を用いる場合、不織布は、単層構造を有していても、2層以上の多層構造を有していてもよい。かかる不織布の構成繊維の種類は特に制限されず、例えば、セルロース系繊維や親水化処理を施した熱可塑性樹脂繊維などの親水性繊維が挙げられる。これらの繊維は単独で用いても、二種類以上の繊維を併用してもよい。
【0055】
さらに、不織布の構成繊維に用い得るセルロース系繊維としては、例えば、天然セルロース繊維(例えば、コットン等の植物繊維など)や再生セルロース繊維、精製セルロース繊維、半合成セルロース繊維などが挙げられる。
また、不織布の構成繊維に用い得る熱可塑性樹脂繊維としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、6−ナイロン等のポリアミド系樹脂などの公知の熱可塑性樹脂からなる繊維が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いても、二種類以上の樹脂を併用してもよい。
【0056】
また、表面シート2として用いられる液透過性のシート状部材の構造は、本発明の効果を阻害しないものであれば特に制限されず、全体的に平坦なシート状構造を有していても、長手方向又は幅方向に延びる複数の凸条部及び凹溝部を備えた凹凸構造(例えば、断面形状が波形となる凹凸構造や畝溝構造等)を有していてもよい。なお、液透過性のシート状部材がこのような凹凸構造を有する場合、当該凹凸構造における複数の凸条部の各々は、中実の内部構造を有していても、中空の内部構造を有していてもよい。
【0057】
表面シート2の肌対向面側の表面には、例えば植物由来エキスやスキンケア剤等の任意の薬剤が塗布されていてもよく、また、表面シート2の非肌対向面側には、所定の液拡散性及び液透過性を有する中間シートが配置されていてもよい。
【0058】
本発明において、表面シートの外形形状や各種寸法、坪量等は、吸収性物品の表面シートとして用い得るものであれば特に制限されず、所望の液透過性や肌触り、柔軟性、強度等に応じた任意の形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0059】
[裏面シート]
上述の軽失禁パッド1において裏面シート3は、
図2に示すように、平面視にて、軽失禁パッド1の長手方向Lの一方側端縁から他方側端縁にわたって延在し、且つ、軽失禁パッド1の幅方向Wの一方側端縁から他方側端縁にわたって延在する、縦長の外形形状を有している。かかる裏面シート3は、
図3に示すように、軽失禁パッド1の厚さ方向Tにおいて非肌対向面側の位置に配置されて、軽失禁パッド1の非肌対向面を形成するとともに、吸収体4を透過してきた尿などの排泄液が軽失禁パッド1の外部へ漏出するのを防ぐ、液不透過性のシート状部材によって構成されている。
【0060】
なお、裏面シート3の非肌対向面側の表面には、軽失禁パッド1を着用者の下着等の着衣の内面に粘着固定するための粘着部8が配置されている。
【0061】
裏面シート3として用い得る液不透過性のシート状部材は、着用者から排出される尿などの排泄液の透過を防止し得るものであれば特に制限されず、例えば、疎水性の熱可塑性樹脂繊維(例えば、ポリオレフィン系樹脂繊維、ポリエステル系樹脂繊維、芯鞘型複合繊維等の各種複合繊維など)によって形成された疎水性不織布;PEやPP等の疎水性の熱可塑性樹脂によって形成された有孔又は無孔の樹脂フィルム;該樹脂フィルムに不織布を貼り合わせた積層体;SMS不織布等の積層不織布などの公知の液不透過性のシート状部材を採用することができる。
なお、裏面シート3の肌対向面側には、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂フィルムによって形成された防漏シートが配置されていてもよい。
【0062】
本発明において、裏面シートの外形形状や各種寸法、坪量等は、吸収性物品の裏面シートとして用い得るものであれば特に制限されず、所望の防漏性能や通気性、強度等に応じた任意の形状や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0063】
[吸収体]
上述の軽失禁パッド1において吸収体4は、
図1に示すように、平面視にて、軽失禁パッド1の長手方向L及び幅方向Wの中央部を中心にして、長手方向Lの一方側端縁近傍から他方側端縁近傍にわたる長手方向Lの広範囲の領域に延在するとともに、幅方向Wにおいても、当該幅方向Wの一方側端縁近傍から他方側端縁近傍にわたる広範囲の領域に延在しており、さらに2つの長手方向端縁が長手方向外方側に向かって円弧状に突出してなる、縦長の外形形状を有している。
【0064】
また、吸収体4は、平面視にて長手方向中央部に、他の部分と比べて幅方向長さが相対的に小さい括れ部41を有しており、さらに、この括れ部41において吸収体4の最小幅を有する最小幅部42と、上記括れ部41の長手方向外方側において吸収体4の最大幅を有する最大幅部43、43とを有している。
【0065】
かかる吸収体4は、
図3に示すように、軽失禁パッド1の厚さ方向Tにおいて表面シート2と裏面シート3との間(より具体的には、表面シート2の非肌対向面側に位置する肌対向面側吸収層7と裏面シート3との間)に配置されて、表面シート2及び肌対向面側吸収層7を透過してきた着用者の尿などの排泄液を吸収して保持し得る、所定の吸水性部材によって形成されている。
【0066】
なお、吸収体4は、肌対向面側の肌対向面側吸収層7及び非肌対向面側の裏面シート3と、それぞれホットメルト型接着剤等の任意の接着剤により接合されている。かかる接着剤によって形成される接着層Hについては後述する。
【0067】
吸収体4として用い得る吸水性部材は、着用者から排出される尿などの排泄液を吸収して保持し得るものであれば特に制限されず、当分野において公知の吸水性材料によって構成された吸水性部材を採用することができる。このような吸水性部材を構成する吸水性材料としては、例えば、親水性繊維や高吸収性ポリマーなどが挙げられ、更に具体的には、粉砕パルプ、コットン、レーヨン、アセテート等のセルロース系繊維;アクリル酸ナトリウムコポリマー等の高吸収性ポリマーからなる粒状物;これらを任意に組み合わせた混合物などが挙げられる。
なお、吸収体4は、親水性を有するティッシュ等のラップシートによって覆われていてもよい。
【0068】
(折曲げ誘導部)
そして、吸収体4は、
図1に示すように平面視にて、軽失禁パッド1の長手方向Lに延びる幅方向中心線C
Lを挟んで対称となるように配置された、非肌対向面側の表面から肌対向面側の表面に向かって厚さ方向Tに窪む、相対的に低剛性の二対の折曲げ誘導部51〜54を有している。かかる折曲げ誘導部51〜54の各々は、吸収体4の幅方向端縁4W
1,4W
2から幅方向内方側に向かって延び、且つ幅方向内方側に向かうにつれて、長手方向内方側に向かうように延びている。
【0069】
なお、本発明において、折曲げ誘導部の配置本数は、少なくとも一対であれば上述の実施形態の軽失禁パッド1のもの(すなわち、二対)に限定されず、折曲げ誘導部は、吸収体に一対だけ形成されていても、三対以上形成されていてもよい。
このように、吸収体の折れ曲がり基点として機能する折曲げ誘導部が少なくとも一対形成され、さらに、当該一対の折曲げ誘導部が、吸収体の幅方向端縁から幅方向内方側に向かって延び且つ幅方向内方側に向かうにつれて、長手方向内方側に向かうように延びていると、着用者の歩行時などの動作時においても、吸収体、ひいては吸収性物品が着用者の動作に追従して変形しやすくなり、着用者に違和感を生じさせにくくすることができる。
【0070】
また、本発明において、折曲げ誘導部の形態は、吸収体に上記のような折曲げ変形を促し得るものであれば特に限定されず、折曲げ誘導部は、吸水性材料の低坪量化によって厚さ方向に窪んでなる低坪量部のほか、例えば、貫通又は非貫通のスリット部や吸収体をエンボス等により厚さ方向に圧搾してなる圧搾溝部などの、相対的に剛性の低い低剛性部によって形成することができる。同様に、折曲げ誘導部を形成する吸収体の表面(すなわち、肌対向面側の表面及び非肌対向面側の表面)についても、上記のような折曲げ変形を促し得るものであれば特に限定されず、折曲げ誘導部は、上述の軽失禁パッド1のように吸収体の非肌対向面側の表面から肌対向面側の表面に向かって厚さ方向に窪むように形成されていても、吸収体の肌対向面側の表面から非肌対向面側の表面に向かって厚さ方向に窪むように形成されていても、あるいは吸収体の両方の表面から互いに反対側の表面に向かって厚さ方向に窪むように形成されていてもよい。
【0071】
折曲げ誘導部は、吸収体の幅方向端縁から幅方向内方側に向かって延び、且つ幅方向内方側に向かうにつれて、長手方向内方側に向かうように延びるものであれば、その延びる形態は特に制限されず、折曲げ誘導部は、例えば、直線状、点線状及び/又は曲線状に延びていても、単数又は複数の分岐を形成しながら延びていてもよい。
【0072】
なお、少なくとも一対の折曲げ誘導部の配置位置は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されないが、着用者が吸収性物品を着用した時に着用者の臀部に対応する長手方向の一方側に少なくとも一対の折曲げ誘導部が配置されていることが好ましく、さらに、長手方向Lの一方側及び他方側のそれぞれに少なくとも一対ずつ配置されていることがより好ましい。
【0073】
また、上述の軽失禁パッド1においては、二対の折曲げ誘導部51〜54は、
図1及び
図4に示すように、幅方向Wに延びる長手方向中心線C
Wに対して、長手方向Lの一方側に位置する一対の折曲げ誘導部51、52と、長手方向Lの他方側に位置する一対の折曲げ誘導部53、54と、を含んでおり、さらに長手方向Lの一方側に位置する一対の折曲げ誘導部51、52と、長手方向Lの他方側に位置する一対の折曲げ誘導部53、54とは、長手方向中心線C
Wを挟んで対称となるように配置されている。
【0074】
本発明の吸収性物品においては、少なくとも一対の折曲げ誘導部をこのように配置することは必須の構成要件ではないものの、吸収性物品は、少なくとも一対の折曲げ誘導部が幅方向に延びる長手方向中心線に対して、長手方向の一方側に位置する一対の折曲げ誘導部と、長手方向の他方側に位置する一対の折曲げ誘導部とを含み、さらに長手方向の一方側に位置する一対の折曲げ誘導部と、長手方向の他方側に位置する一対の折曲げ誘導部とが長手方向中心線を挟んで対称となるように配置されていることが好ましい。少なくとも一対の折曲げ誘導部がこのように配置されていると、着用者の動作時に、吸収性物品の長手方向の広範囲にわたって上述の折曲げ誘導部による追従変形作用を発揮することができるという利点がある。
【0075】
また、上述の軽失禁パッド1においては、長手方向Lの一方側に位置する一対の折曲げ誘導部51、52は、
図1及び
図4に示すように、幅方向中心線C
Lに対して幅方向Wの一方側に位置する折曲げ誘導部51の仮想延長線51Lと、幅方向中心線C
Lに対して幅方向Wの他方側に位置する折曲げ誘導部52の仮想延長線52Lとが同一直線上に重ならないように配置されている。
同様に、長手方向Lの他方側に位置する一対の折曲げ誘導部53、54も、幅方向中心線C
Lに対して幅方向Wの一方側に位置する折曲げ誘導部53の仮想延長線53Lと、幅方向中心線C
Lに対して幅方向Wの他方側に位置する折曲げ誘導部54の仮想延長線54Lとが同一直線上に重ならないように配置されている。
なお、折曲げ誘導部の仮想延長線は、平面視にて折曲げ誘導部の中心線と重なるとともにそれを延長した仮想線であり、上述の各仮想延長線51L〜54Lでは、それぞれ直線状の折曲げ誘導部51〜54の中心線と重なる仮想直線である。
【0076】
本発明の吸収性物品において、少なくとも一対の折曲げ誘導部をこのように配置することは必須の構成要件ではないものの、少なくとも一対の折曲げ誘導部は、幅方向中心線に対して幅方向の一方側に位置する折曲げ誘導部の仮想延長線と、幅方向中心線に対して幅方向の他方側に位置する折曲げ誘導部の仮想延長線とが同一直線上に重ならないように配置されていることが好ましい。少なくとも一対の折曲げ誘導部がこのように配置されていると、それぞれの折曲げ誘導部ごとに折れ曲がり基点を形成することができ、吸収体をより多様な形状に変形しやすくすることができる上、仮に、着用者の動作時に上述の捩じれる方向の力が折曲げ誘導部を介して吸収体の幅方向中央部分に及んだとしても、当該幅方向中央部分においては折れ曲がり基点が形成されにくく、当該吸収体の幅方向中央部分の折れ曲がりをより生じにくくすることができる。
【0077】
また、上述の軽失禁パッド1においては、長手方向Lの一方側に位置する一対の折曲げ誘導部51、52の各々は、
図4に示すように、平面視にて、幅方向内方側の端部51E、52Eが一対の凹部61、62とそれぞれ連通している。
同様に、長手方向Lの他方側に位置する一対の折曲げ誘導部53、54の各々も、平面視にて、幅方向内方側の端部53E、54Eが一対の凹部61、62とそれぞれ連通している。
【0078】
本発明の吸収性物品において、少なくとも一対の折曲げ誘導部をこのように配置することは必須の構成要件ではないものの、少なくとも一対の折曲げ誘導部は、各々の幅方向内方側の端部が一対の凹部と連通していることが好ましい。少なくとも一対の折曲げ誘導部がこのように配置されていると、着用者の動作時に折曲げ誘導部を介して伝わる上述の捩じれる方向の力を、一対の凹部においてより分散しやすくなり、吸収体の幅方向中央部分をより一層変形しにくくすることができる。
【0079】
なお、
図4においては、折曲げ誘導部51、53の幅方向内方側の端部51E、53Eと長手方向Lに延びる凹部61との境界及び折曲げ誘導部52、54の幅方向内方側の端部52E、54Eと長手方向Lに延びる凹部62との境界を、それぞれ仮想線(点線)によって示している。
【0080】
さらに、上述の軽失禁パッド1においては、平面視にて、幅方向Wに延びる2本の折り線FL
1、FL
2を有しており、上述の二対の折曲げ誘導部51〜54の各々は、
図1に示すように、2本の折り線FL
1、FL
2と交差しないように配置されている。
【0081】
本発明において、吸収性物品をこのように構成することは必須の構成要件ではないものの、吸収性物品は、幅方向に延びる少なくとも2本の折り線を有し、一対の折曲げ誘導部の各々がこれらの折り線と交差しないように配置されていることが好ましい。吸収性物品がこのように構成されていると、吸収性物品をコンパクトに折り畳むことができ、収納性や携帯性などに優れたものとすることができる上、折り線による折り皺を利用した折れ曲がり基点を形成することができるので、上述の一対の折曲げ誘導部による追従変形作用を阻害せずに、吸収性物品をより多様な形状に変形しやすくすることができる。
【0082】
なお、本発明において、吸収性物品の折り畳み形態や各折り線の位置、折り線の本数等は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されない。例えば、吸収性物品は、幅方向に延びる1本の折り線を有していても、2本以上の任意の本数の折り線を有していてもよく、或いは、幅方向に延びる折り線を有していなくてもよい。
【0083】
(凹部)
そして、吸収体4は、
図1に示すように平面視にて、上述の折曲げ誘導部51〜54の幅方向内方側に位置し且つ幅方向中心線C
Lを挟んで対称となるように長手方向Lに延びるように配置され、非肌対向面側の表面から肌対向面側の表面に向かって厚さ方向Tに窪む、相対的に低剛性の一対の凹部61、62を有している。かかる一対の凹部61、62は、幅方向Wの一方側の凹部61と他方側の凹部62との間の距離が、吸収体4の幅方向長さの1/4以上となるように配置されており、さらに、長手方向長さが吸収体4の長手方向長さの1/10以上となるように長手方向Lに延びている。
【0084】
なお、本発明において、折曲げ誘導部の幅方向内方側に位置する凹部の配置本数は、少なくとも一対であれば特に制限されず、長手方向に延びる凹部は、吸収体に一対だけ形成されていても、二対以上形成されていてもよい。
【0085】
このように、吸収体が折曲げ誘導部の幅方向内方側の位置に長手方向に延びる少なくとも一対の凹部を有していると、着用者の動作時に、上述の折曲げ誘導部を介して吸収性物品に長手方向を軸として左右交互に捩じれる方向の力が加わったとしても、長手方向に延びる少なくとも一対の凹部によってその力を分散することができ、当該一対の凹部よりも幅方向内方側の部分、すなわち吸収体の幅方向中央部分を変形しにくくすることができる。これにより、本発明の吸収性物品は、上述の折曲げ誘導部による追従変形作用に加えて、吸収体の幅方向中央部分を的確に着用者の股間部に密着させることできるので、着用者の動作時においても優れたフィット性を発揮することができる。
【0086】
本発明において、長手方向に延びる凹部の形態は、折曲げ誘導部から伝わる力を長手方向に分散し得るものであれば特に制限されず、長手方向に延びる凹部は、吸水性材料の低坪量化により厚さ方向に窪んでなる低坪量部のほか、例えば、貫通又は非貫通のスリット部や吸収体をエンボス等により厚さ方向に圧搾してなる圧搾溝部などの、相対的に低剛性の凹部によって形成することができる。同様に、長手方向に延びる凹部を形成する吸収体の表面(すなわち、肌対向面側の表面及び非肌対向面側の表面)についても、上記のような折曲げ誘導部から伝わる力を長手方向に分散し得るものであれば特に限定されず、長手方向に延びる凹部は、上述の軽失禁パッド1のように吸収体の非肌対向面側の表面から肌対向面側の表面に向かって厚さ方向に窪むように形成されていても、吸収体の肌対向面側の表面から非肌対向面側の表面に向かって厚さ方向に窪むように形成されていても、あるいは吸収体の両方の表面から互いに反対側の表面に向かって厚さ方向に窪むように形成されていてもよい。
【0087】
さらに、長手方向に延びる少なくとも一対の凹部は、平面視にて、上述の折曲げ誘導部の幅方向内方側に位置し且つ幅方向中心線を挟んで対称となるように長手方向に延びるものであれば、その延びる形態は特に制限されず、長手方向に延びる一対の凹部の各々は、例えば、直線状、点線状及び/又は曲線状に延びていても、単数又は複数の分岐を形成しながら延びていてもよい。
【0088】
なお、長手方向に延びる少なくとも一対の凹部の配置位置等は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されないが、着用者が吸収性物品を着用した時に着用者の排泄口が当接し得る領域よりも幅方向外方側に位置し、且つ当該領域よりも長手方向に長く延びるように配置されていることが好ましい。
【0089】
(括れ部)
また、上述の軽失禁パッド1においては、吸収体4は、
図1及び
図4に示すように、平面視にて長手方向中央部に、幅方向長さが相対的に小さい括れ部41を有しており、軽失禁パッド1が着用者の股間部に密着しやすくなっている。なお、吸収体4がこのような括れ部41を有していると、軽失禁パッド1の構成部材の中でも相対的に剛性の高い吸収体4が着用者の両脚の内側部分に接触しにくくなるため、着用者に異物感を生じさせにくくすることができる。
【0090】
さらに、上述の軽失禁パッド1においては、上記二対の折曲げ誘導部51〜54の各々が、この括れ部41に配置されている。
本発明の吸収性物品において、折曲げ誘導部をこのような括れ部に配置することは必須の構成要件ではないものの、少なくとも一対の折曲げ誘導部は、このような括れ部に配置されていることが好ましい。少なくとも一対の折曲げ誘導部がこのような着用者の脚周りに対応する括れ部に配置されていると、当該折曲げ誘導部が着用者の脚の動きに応じて変形しやすく、より的確に上述の追従変形作用を発揮することができる。
【0091】
また、上述の軽失禁パッド1においては、上記の折曲げ誘導部51〜54の各々は、
図1に示すように、幅方向外方側の端部が括れ部41の長手方向外方側において吸収体4の最大幅を有する最大幅部43と、括れ部41において吸収体4の最小幅を有する最小幅部42との間に位置し、且つ最大幅部43と最小幅部42との間の長手方向中間位置よりも長手方向外方側に位置している。
【0092】
本発明の吸収性物品において、折曲げ誘導部をこのように配置することは必須の構成要件ではないものの、少なくとも一対の折曲げ誘導部の各々の幅方向外方側の端部がこのような特定の部分に位置していると、着用者の脚の動きが大きいような場合でも、折曲げ誘導部がその動きに応じて的確に変形することができ、上述の効果をより安定的に且つ確実に発揮することができる。
【0093】
なお、本発明の吸収性物品において、吸収体が上述のような括れ部を有することは必須の構成要件ではないため、吸収体は、例えば、幅方向長さが長手方向に一定となる構造を有していてもよい。
【0094】
本発明において、吸収体の平面視形状や各種寸法、坪量等は、吸収性物品の吸収体として用い得るものであれば特に制限されず、所望の吸収性能や柔軟性、強度等に応じた任意の形状(例えば、長方形、楕円形、砂時計形等)や各種寸法、坪量等を採用することができる。
【0095】
また、吸収体が配置される位置についても、吸収性物品の長手方向中央部を含む位置であれば特に制限されず、吸収体は、例えば吸収性物品における長手方向の一方寄りに偏って配置されていてもよい。
【0096】
なお、本発明の吸収性物品においては、吸収体は、肌対向面側に位置する肌対向面側吸収層や表面シート、中間シートなどの構成部材と接着層を介して接合されていてもよい。このように、吸収体が肌対向面側に位置する構成部材と接着層を介して接合されていると、着用者の動作時においても吸収体が型崩れしにくく、より優れたフィット性を発揮することができる。
【0097】
また、上述の接着層は、平面視にて、長手方向と平行な仮想線と交差する部分を有しながら、長手方向に延在していることが好ましい。
ここで、
図6は、吸収体4の肌対向面側に配置される接着層Hの配置形態を模式的に示す平面図である。
図6において、吸収体4に配置される接着層Hは、平面視にてスパイラル状の形態で、すなわち、長手方向Lと平行な仮想線L
1と交差する部分を有する形態で、長手方向Lに延在している。
このように、接着層が平面視にて長手方向Lと交差する部分を有しながら、長手方向に延在している(例えば、長手方向に沿ってスパイラル状、オメガ状等の形態で配置されている)と、接着層による吸収阻害が生じにくい上、上述の捩じれる方向の力が加わるような動作時においても、折曲げ誘導部による追従変形作用を阻害せず、吸収性物品を着用者の動作に的確に追従して変形させることができる。
【0098】
なお、本発明において、吸収体の態様、特に吸収体に形成される少なくとも一対の折曲げ誘導部及び長手方向に延びる少なくとも一対の凹部の態様は、本発明の効果を阻害しない限り上述の軽失禁パッド1の態様に限定されない。
ここで、
図7は、本発明の吸収性物品の別の実施形態に係る軽失禁パッド1’を展開した状態で表面シート2側から厚さ方向Tに見た平面図であり、
図8は、軽失禁パッド1’の吸収体4’を展開した状態で肌対向面側から厚さ方向Tに見た平面図である。
【0099】
この別の実施形態の軽失禁パッド1’においては、厚さ方向Tにおいて、軽失禁パッド1’の肌対向面を形成する液透過性の表面シート2と、軽失禁パッド1の非肌対向面を形成する裏面シート(不図示)と、これらのシートの間に位置する吸収体4’とを、基本構成として備えており、さらに、裏面シートの非肌対向面側の表面に配置され、軽失禁パッド1’を着用者の着衣の内面に粘着固定する粘着部(不図示)を更に備えている。
【0100】
この軽失禁パッド1’においては、
図7に示すように、幅方向中心線C
Lを挟んで対称となるように長手方向Lに延びる一対の圧搾部E’
1、E’
2と、当該一対の圧搾部E’
1、E’
2の長手方向外方側にそれぞれ位置し且つ長手方向中心線C
Wを挟んで対称となるように幅方向Wに幅方向中心線C
Lを跨ぎながら略円弧状に延びる一対の圧搾部E’
3、E’
4と、上記一対の圧搾部E’
1、E’
2の長手方向外方側にそれぞれ位置し且つ長手方向中心線C
Wを挟んで対称となるように上記一対の圧搾部E’
3、E’
4よりも大きな弧を描くように延びる一対の圧搾部E’
5、E’
6と、軽失禁パッド1の外周縁部に沿って連続的に延びるラウンドシール部と、を有している。
【0101】
また、この軽失禁パッド1’においても、吸収体4’は、
図7及び
図8に示すように平面視にて、軽失禁パッド1’の長手方向Lに延びる幅方向中心線C
Lを挟んで対称となるように配置され、非肌対向面側の表面から肌対向面側の表面に向かって厚さ方向Tに窪む、相対的に低剛性の二対の折曲げ誘導部51’〜54’と、これら二対の折曲げ誘導部51’〜54’の幅方向内方側に位置し且つ幅方向中心線C
Lを挟んで対称となるように長手方向Lに延びるように配置され、非肌対向面側の表面から肌対向面側の表面に向かって厚さ方向Tに窪む、相対的に低剛性の一対の凹部61’、62’と、を有している。さらに、上記の折曲げ誘導部51’〜54’の各々は、吸収体4’の幅方向端縁4W
1,4W
2から幅方向内方側に向かって延び、且つ幅方向内方側に向かうにつれて、長手方向内方側に向かうように延びるとともに、吸収体4’の幅方向端縁4W
1,4W
2から幅方向内方側に向かう途中部分において、幅方向内方側に向かうにつれて、長手方向外方側に向かうように分岐する分岐部51’B〜54’Bを有している。折曲げ誘導部51’〜54’がこのような分岐部51’B〜54’Bを有していると、尿などの排泄液が折曲げ誘導部51’〜54’を伝って長手方向Lに拡散したとしても、排泄液を幅方向内方側へ誘導することができるので、排泄液の漏れをより生じにくくすることができる。
【0102】
さらに、この軽失禁パッド1’においても、長手方向Lの一方側に位置する一対の折曲げ誘導部51’、52’の各々は、
図8に示すように、平面視にて、幅方向内方側の端部51’E、52’Eが一対の凹部61’、62’の長手方向Lの一方側端部とそれぞれ連通している。
同様に、長手方向Lの他方側に位置する一対の折曲げ誘導部53’、54’の各々も、平面視にて、幅方向内方側の端部53’E、54’Eが一対の凹部61’、62’の長手方向の他方側端部とそれぞれ連通している。
【0103】
一対の折曲げ誘導部及び長手方向に延びる一対の凹部がこのように配置されていると、上述の軽失禁パッド1と同様に、着用者の動作時に折曲げ誘導部を介して伝わる上述の捩じれる方向の力を、一対の凹部においてより分散しやすくなり、吸収体の幅方向中央部分をより一層変形しにくくすることができる。
【0104】
なお、
図8においても、折曲げ誘導部51’、53’ の幅方向内方側の端部51’E、53’Eと長手方向Lに延びる凹部61’との境界及び折曲げ誘導部52’、54’ の幅方向内方側の端部52’E、54’Eと長手方向Lに延びる凹部62’との境界を、それぞれ仮想線(点線)によって示している。
【0105】
また、この軽失禁パッド1’においても、長手方向Lの一方側に位置する一対の折曲げ誘導部51’、52’と、長手方向Lの他方側に位置する一対の折曲げ誘導部53’、54’とが、長手方向中心線C
Wを挟んで対称となるように配置されている。
さらに、この軽失禁パッド1’においても、長手方向Lの一方側に位置する一対の折曲げ誘導部51’、52’が、幅方向中心線C
Lに対して幅方向Wの一方側に位置する折曲げ誘導部51’の仮想延長線51’Lと、幅方向中心線C
Lに対して幅方向Wの他方側に位置する折曲げ誘導部52’の仮想延長線52’Lとが同一直線上に重ならないように配置されており、同様に、長手方向Lの他方側に位置する一対の折曲げ誘導部53’、54’も、幅方向中心線C
Lに対して幅方向Wの一方側に位置する折曲げ誘導部53’の仮想延長線53’Lと、幅方向中心線C
Lに対して幅方向Wの他方側に位置する折曲げ誘導部54’の仮想延長線54’Lとが同一直線上に重ならないように配置されている。
【0106】
[肌対向面側吸収層]
また、
図1に示す上述の軽失禁パッド1においては、
図3に示すように、吸収体4よりも肌対向面側の位置に(より具体的には、表面シート2と吸収体4の間に)肌対向面側吸収層7を有している。
かかる肌対向面側吸収層7は、
図1に示すように、折曲げ誘導部51〜54と厚さ方向Tに重複する部分の幅方向長さが、吸収体4における折曲げ誘導部51〜54を有する部分の幅方向長さよりも大きく形成されている。
【0107】
本発明の吸収性物品において、肌対向面側吸収層をこのように形成することは必須の構成要件ではないものの、肌対向面側吸収層は、一対の折曲げ誘導部と厚さ方向に重複する部分の幅方向長さが、吸収体における上記一対の折曲げ誘導部を有する部分の幅方向長さよりも大きく形成されていることが好ましい。肌対向面側吸収層がこのように形成されていると、着用者から尿などの排泄液が供給される前において、上述の折曲げ誘導部の変形によるヨレを生じにくくすることができるので、このような肌対向面側吸収層を備えた吸収性物品は、より優れたフィット性を発揮することができる上、ヨレによる排泄液の漏れも生じにくくすることができる。
【0108】
本発明において、肌対向面側吸収層は、着用者から排出された尿などの排泄液を吸収し保持し得る機能を有するものであれば特に制限されず、例えば、上述の吸収体と同様の吸水性材料からなるもの、或いは、当該吸水性材料を1枚又は2枚以上の親水性不織布などの液透過性シートで包んだものなどを好適に用いることができる。
【0109】
さらに、本発明の吸収性物品においては、肌対向面側吸収層が少なくとも吸収性ポリマーを含むものであることが好ましい。肌対向面側吸収層が少なくとも吸収性ポリマーを含んでいると、着用者から尿などの排泄液が供給されたときに、肌対向面側吸収層が排泄液を吸収して膨張し、当該肌対向面側吸収層の非肌対向面側に位置する吸収体のヨレをより生じにくくすることができる。これにより、このような肌対向面側吸収層を備えた吸収性物品は、着用者の排泄後においても優れたフィット性を維持しやすく、ヨレに起因する排泄液の漏れを生じにくくすることができる。
【0110】
なお、吸収性ポリマーは、水を吸収して保持することができるポリマーであり、例えば水溶性高分子が適度に架橋された三次元網目構造を有するポリマーなどが挙げられる。具体的には、デンプン系、アクリル酸系、アミノ酸系の粒子状又は繊維状のポリマーなどが挙げられる。
【0111】
本発明において、肌対向面側吸収層の平面視形状や各種寸法、坪量等は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、所望の吸収性能や柔軟性、強度等に応じた任意の形状(例えば、長方形、楕円形、砂時計形等)や各種寸法、坪量等を採用することができる。そもそも本発明の吸収性物品において、このような肌対向面側吸収層を備えることは必須の構成要件ではないため、吸収性物品はこのような肌対向面側吸収層を備えていなくてもよい。
【0112】
[粘着部]
上述の軽失禁パッド1において、当該軽失禁パッド1を着用者の着衣の内面に粘着固定するための粘着部8は、
図2に示すように、裏面シート3の非肌対向面側の表面において長手方向Lに連続的に延在し且つ幅方向Wに所定の間隔をあけて並ぶ、6本のストライプ状の形態で配置されている。
【0113】
なお、このような粘着部8の表面には、通常、粘着部8を保護するための剥離シート(不図示)が貼付されているため、軽失禁パッド1を着用者の着衣の内面に粘着固定する際には、その剥離シートを剥がしてから、粘着部8を着衣の内面に押し当てることにより、軽失禁パッド1を着衣の内面に粘着固定することができる。
【0114】
そして、上述の軽失禁パッド1においては、折曲げ誘導部51〜54の各々は、
図2に示すように、粘着部8と厚さ方向Tに部分的に重なるように配置されている。
本発明の吸収性物品において、上述の一対の折曲げ誘導部をこのように配置することは必須の構成要件ではないものの、上述の一対の折曲げ誘導部の各々は、裏面シートの非肌対向面側の表面に配置された粘着部と厚さ方向に重ならない又は部分的に重なるように配置されていることが好ましい。このように、一対の折曲げ誘導部の各々が粘着部と厚さ方向に完全には重ならないように配置されていると、上述の一対の折曲げ誘導部による追従変形作用を阻害せずに、吸収性物品を着用者の着衣に固定することができ、優れたフィット性をより安定的に発揮することができる。
【0115】
さらに、上述の軽失禁パッド1においては、粘着部8は、
図2に示すように、平面視にて、各折曲げ誘導部51〜54よりも長手方向外方側の位置まで延在するように配置されている。
本発明の吸収性物品において、粘着部をこのように配置することは必須の構成要件ではないものの、粘着部は、少なくとも上記の一対の折曲げ誘導部よりも長手方向外方側の位置に配置されていることが好ましい。粘着部がこのように配置されていると、上述の折曲げ誘導部が折れ曲がり基点として機能しても、当該折曲げ誘導部の長手方向外方側の部分を着用者の着衣に着実に固定することができ、吸収性物品が着用中に捲れたり、剥がれたりするようなことを生じにくくすることができる。
【0116】
また、上述の軽失禁パッド1においては、粘着部8は、
図2に示すように、平面視にて、吸収体4と厚さ方向Tに重複する領域内に配置され、且つ、長手方向Lに延びる幅方向中心線C
Lを挟んでその両側に配置されている。粘着部8がこのように配置されていると、吸収体4と厚さ方向に重複する部分を着用者の着衣の内面の形状に沿わせて着実に粘着固定することができ、さらに、着用中に着用者の両脚や臀部が左右交互に動いたりしても、着用者の着衣と共にその動きに追従して変形しやすいため、着用中に軽失禁パッド1がめくれたり、剥がれたりするようなことが生じにくくなる。
【0117】
このような粘着部に用い得る粘着剤としては、当分野において公知の任意の粘着剤を採用することができ、例えば、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)等のスチレン系コポリマーを主体とした感圧型粘着剤などを用いることができる。
【0118】
なお、本発明の吸収性物品において、粘着部の配置量や配置形状等は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、粘着部は、裏面シートの非肌対向面側の表面において、例えば、長手方向Lに1本又は2本以上の複数本の直線状(ストライプ状)、点線状、曲線状、ジグザグ状等の任意の線状の形態で配置することができる。また、粘着部は、上述のように長手方向Lに連続的に延在していても、間欠的に延在していてもよい。
【0119】
さらに、粘着部の各種寸法(例えば、長手方向長さ、幅方向長さ等)や坪量等も、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、軽失禁パッドの着衣への固定のしやすさやフィット性などを考慮した任意の寸法や坪量等を採用することができる。そもそも本発明の吸収性物品において、このような粘着部を備えることは必須の構成要件ではないため、吸収性物品はこのような粘着部を備えていなくてもよい。
【0120】
[防漏壁部]
上述の軽失禁パッド1においては、
図1に示すように、表面シート2よりも肌対向面側の位置において軽失禁パッド1の幅方向Wの両端部に位置し且つ長手方向Lに延在するように配置された一対のサイドシート91、92と、当該一対のサイドシート91、92の各々において長手方向Lに沿うように配置された複数本の弾性部材93、94とを含む、一対の防漏壁部9、9を備えている。
【0121】
(サイドシート)
上述の軽失禁パッド1において、一対のサイドシート91、92は、
図1に示すように、表面シート2の肌対向面側の位置において、軽失禁パッド1の幅方向Wの両端部に配置されており、軽失禁パッド1を着用する時に(すなわち、軽失禁パッド1が長手方向Lに湾曲した時に)、幅方向内方側の端縁部が起立して一対の防漏壁を形成し得る、長手方向Lに延在する一対の帯状の液不透過性シートによって構成されている。
なお、一対のサイドシート91、92の各々は、平面視にて、軽失禁パッド1の長手方向Lの一方側端縁から他方側端縁にわたって延在している。
【0122】
なお、一対のサイドシート91、92の各々は、表面シート2、肌対向面側吸収層7、吸収体4及び裏面シート3の積層物の幅方向Wの両端部において、表面シート2の肌対向面側の表面から裏面シート3の非肌対向面側の表面に至るように折り曲げながら両シートを厚さ方向Tに挟むように配置されており、さらにその状態で上記積層物の幅方向Wの両端部を熱融着等の任意の接合手段(不図示)で接合することにより、一対のサイドシート91、92の各々の固定端が形成されている。一方、表面シート2の肌対向面側に位置する、一対のサイドシート91、92の各々の幅方向Wの内方側端部は、いずれのシート状部材とも接合されておらず自由端を形成している。
【0123】
本発明において、サイドシートとして用い得る帯状の液不透過性シートは、吸収性物品のサイドシートとして用い得る諸特性(例えば、液不透過性や肌触り、柔軟性、強度等)を有するものであれば特に制限されず、例えば、疎水性不織布(例えば、疎水性を有する又は疎水性が付与された、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、SMS不織布等)、液不透過性を有する合成樹脂製フィルム、及びこれらの積層体などを用いることができる。
【0124】
また、本発明において、サイドシートとして用い得る帯状の液不透過性シートの外形形状や坪量、厚み等は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されず、所望の液不透過性や肌触り、柔軟性等に応じた任意の形状や坪量、厚み等を採用することができる。
【0125】
(弾性部材)
また、上述の軽失禁パッド1においては、
図1に示すように、一対のサイドシート91、92の各々に、当該一対のサイドシート91、92を長手方向Lに収縮させて、幅方向Wの内方側端縁の起立を促すための、それぞれ2本(合計4本)の弾性部材93、94が長手方向Lに沿って配置されている。
【0126】
弾性部材93、94は、一対のサイドシート91、92、さらには当該一対のサイドシート91、92を介して軽失禁パッド1に長手方向Lの収縮力を付与し得るものであれば特に制限されず、例えば、天然ゴムからなる糸ゴムや平ゴム;ウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性エラストマーを糸状又は帯状に成形したものなどの任意の弾性部材を用いることができる。
【0127】
弾性部材93、94の寸法形状や本数は、一対のサイドシート91、92、さらには当該一対のサイドシート91、92を介して軽失禁パッド1に長手方向Lの収縮力を付与し得るものであれば特に制限されず、例えば、弾性部材93、94の長手方向長さとして、軽失禁パッド1全体の長手方向長さ(全長)の1/2以上の長手方向長さ、好ましくは2/3以上の長手方向長さを採用することができ、また、弾性部材93、94の繊度として、200dtex〜800dtexの繊度、好ましくは300dtex〜700dtexの繊度を採用することができ、さらに、弾性部材93、94の本数として、一対のサイドシート91、92の各々に1本ずつ配置されていても、2本ずつ或いは3本以上ずつ配置されていてもよい。
【0128】
そして、上述の軽失禁パッド1においては、
図1に示すように、弾性部材93、94の長手方向固定端93E、94Eは、各折曲げ誘導部51〜54の仮想延長線51L〜54Lよりも長手方向外方側に位置している。
本発明の吸収性物品において、弾性部材をこのように配置することは必須の構成要件ではないものの、弾性部材は、長手方向固定端が一対の折曲げ誘導部の仮想延長線よりも長手方向外方側に位置していることが好ましい。弾性部材をこのように配置すると、折曲げ誘導部の長手方向外方側まで防漏壁部を形成することができるため、着用中に上述の折曲げ誘導部が折れ曲がり基点として機能し、吸収性物品が着用者の動作に追従して変形したとしても、排泄液の漏れを生じにくくすることができる。
【0129】
なお、本発明の吸収性物品において、上述の防漏壁部(すなわち、サイドシート及び弾性部材)を備えることは必須の構成要件ではないため、吸収性物品はこれらのサイドシートや弾性部材を備えていなくてもよい。
【0130】
本発明は、上述した各実施形態の軽失禁パッドのほかに、例えば、パンティーライナー、生理用ナプキン、使い捨ておむつ等の様々な吸収性物品に適用することができる。また、本発明の吸収性物品は、上述した各実施形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組み合わせや代替、変更等が可能である。なお、本明細書において、「第1」、「第2」等の序数は、当該序数が付された事項を区別するためのものであり、各事項の順序や優先度、重要度等を意味するものではない。
【解決手段】本発明の吸収性物品は、表面シート(2)と、裏面シート(3)と、これらのシートの間に位置する吸収体(4)とを備えた吸収性物品であって、吸収体(4)は、平面視にて、長手方向Lに延びる幅方向中心線C
を挟んで対称となるように配置された、長手方向Lに延びる少なくとも一対の凹部(61、62)と、を有しており、一対の折曲げ誘導部(51、52)の各々は、吸収体(4)の幅方向端縁から幅方向内方側に向かって延び、且つ幅方向内方側に向かうにつれて、長手方向内方側に向かうように延びていることを特徴とする。