(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、フコース含有糖鎖および/または複合糖質に結合性を有するレクチンを担体に固定化する際に、高効率且つ位置選択的に担体に固定化することが可能なタンパク質、当該タンパク質の製造方法、および当該タンパク質を水に不溶性の担体に固定化して得られる吸着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、フコース含有糖鎖および/または複合糖質に結合性を有するレクチンのN末端側またはC末端側にシステインを1つ以上含むオリゴペプチドを付加したタンパク質が、高効率且つ位置選択的に担体に固定化できることを見いだした。さらに、本発明のレクチンを水に不溶性の担体に固定化した吸着剤がフコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着剤として優れた性能を持つことを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、以下の(1)から(13)に記載した発明を提供するものである。
【0011】
(1)フコース結合性レクチンのN末端またはC末端に、システインを1つ以上含むオリゴペプチドを有することを特徴とするタンパク質。
(2)フコース結合性レクチンが、
(A)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、少なくとも2番目のプロリンから156番目のグリシンまでのアミノ酸を含むタンパク質、または
(B)上記(A)のタンパク質のアミノ酸配列において、1個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたタンパク質である、
(1)記載のタンパク質。
(3)システインを1つ以上含むオリゴペプチドが、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるオリゴペプチドである、(1)または(2)記載のタンパク質。
(4)(1)から(3)のいずれか1項に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(5)(4)記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
(6)(5)記載の発現ベクターにより宿主を形質転換して得られる形質転換体。
(7)宿主が大腸菌である、(6)記載の形質転換体。
(8)フコース結合性レクチンのN末端またはC末端に、システインを1つ以上含むオリゴペプチドを有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを宿主に導入して得られた形質転換体を培養する工程と、得られる培養物から前記タンパク質を回収する工程とを含む、タンパク質の製造方法。
(9)フコース結合性レクチンが、
(A)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、少なくとも2番目のプロリンから156番目のグリシンまでのアミノ酸を含むタンパク質、または
(B)上記(A)のタンパク質のアミノ酸配列において、1個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたタンパク質であることを特徴とする(8)記載のタンパク質の製造方法。
(10)(8)または(9)に記載のタンパク質が、水に不溶性の担体に固定化されていることを特徴とする、フコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着剤。
(11)水に不溶性の担体が、システインのメルカプト基と反応して共有結合を形成する官能基を有することを特徴とする、(8)または(9)記載の吸着剤。
(12)(10)または(11)に記載の吸着剤を用いることを特徴とする、フコース含有糖鎖および/または複合糖質の精製方法。
【0012】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
【0013】
本発明において、フコース結合性レクチンとは、配列番号1に示すアミノ酸配列からなるフコース含有糖鎖および/または複合糖質に結合性を有するレクチンである。本発明のタンパク質は、配列番号1に示したアミノ酸配列からなるフコース結合性レクチンのN末端またはC末端に、システインを1つ以上含むオリゴペプチド(以下、システインタグという)が付加したタンパク質であることを特徴とする。より具体的には、例えば、配列番号3に示した、配列番号1に示したアミノ酸配列からなるフコース結合性レクチンの少なくとも2番目のプロリンから156番目のグリシンまでを含む領域のC末端に、配列番号2に示したシステインタグが付加した配列であることを特徴とする。
【0014】
なお本発明のタンパク質は、フコース含有糖鎖および/または複合糖質と結合性を有する機能と、水に不溶性の担体に導入されたチオール基と反応する官能基と反応可能なシステインを含めばよく、例えば、配列番号1に示したアミノ酸配列のうち、2番目のプロリンから156番目のグリシンまでの領域のアミノ酸のうちの1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたタンパク質や、配列番号31(配列番号1に示したアミノ酸配列の2番目のプロリンから156番目のグリシンのC末端に、配列番号32に示したアミノ酸配列からなるリンカーを導入し、そのC末端に配列番号2に示したシステインを含むアミノ酸配列が付加した配列)のような、システインタグの前にリンカーやドメインをコードするアミノ酸が付加されたタンパク質も、フコース含有糖鎖および/または複合糖質に結合する機能と、担体に導入されたメルカプト基と反応する官能基と反応可能なシステインを含むため、本発明のタンパク質に含まれる。
【0015】
また、本発明において、システインタグの長さは当該タグを付加するフコース結合性レクチンが有するフコース含有糖鎖および/または複合糖質との結合性を損なわない限り、1アミノ酸から50アミノ酸の範囲の中から任意に設定可能であり、特に2アミノ酸から20アミノ酸の範囲に設定することが好ましい。システインタグに含まれるシステインは1つ以上あればよいが、2つ以上のシステインを含む場合はシステイン同士でS−S結合が形成されないようにシステインタグのアミノ酸配列を設計する必要がある。システインタグを構成するシステイン以外のアミノ酸の種類は、本発明のタンパク質を固定化する水に不溶性の担体の物性を考慮し、本発明のタンパク質が担体と接近しやすい物性を有したアミノ酸を適宜選択すればよい。本発明におけるシステインタグの一例として、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるオリゴペプチドをあげることができる。
【0016】
本発明のフコース結合性タンパク質を遺伝子工学的に製造するために用いるポリヌクレオチドは、本発明のフコース結合性タンパク質をコードする配列からなるポリヌクレオチドであればよい。本発明のフコース結合性タンパク質をコードする配列からなるポリヌクレオチドは公知の方法により調製することが可能である。前記ポリヌクレオチド調製法の一例として、
(A)本発明のタンパク質のアミノ酸配列からヌクレオチド配列に変換し、当該ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを人工的に合成する方法や、
(B)本発明のタンパク質のうちフコース結合性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを、直接人工的に、またはBurkholderia cenocepaciaのゲノムDNA等からPCR法などのDNA増幅法を用いて調製後、当該調製したポリヌクレオチドの5’末端側または3’末端側に、配列番号2に記載のシステインタグをコードするオリゴヌクレオチドを遺伝子工学的手法により付加する方法、を例示することができる。
【0017】
なお、当該調製法において、前記ポリヌクレオチド配列を設計する際は、形質転換する宿主におけるコドンの使用頻度を考慮して設計した方が、宿主を用いた効率的なタンパク質発現ができる点で好ましい。また、前述の調製方法において(B)で調製したポリヌクレオチドを鋳型に、アミノ酸の置換、および/または欠失、および/または付加するように設計したプライマーセットを用いてPCR法で増幅を行なう、またはエラープローンPCR法にて増幅を行なうことで、1残基以上のアミノ酸の置換、および/または欠失、および/または付加された、フコース結合性タンパク質をコードしたポリヌクレオチドを調製することができる。
【0018】
前記方法により得られた本発明のタンパク質をコードする配列からなるポリヌクレオチドは、通常の遺伝子工学の分野で使用される相応のベクター系に導入することにより、種々の宿主で本発明のタンパク質を発現することができる。宿主としては細菌、酵母、カビ、昆虫細胞、動物細胞又は植物細胞が例示できるが、取扱い易さ、培養の容易性、高密度培養の可否、更には遺伝子操作における宿主/ベクター系が整備されている点で、細菌、特に大腸菌に代表されるエシェリヒア(Escherichia)属の細菌が好ましい。形質転換に用いる大腸菌(Escherichia coli)としては、JM109、JM110、HB101、BL21、BL21(DE3)、BLR(DE3)といった株が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
本発明のタンパク質をコードする配列からなるポリヌクレオチドは、制限酵素を用いて適切なプラスミドに挿入することで前記ポリヌクレオチドを有するプラスミドを調製後、宿主(例えば、大腸菌JM109やHB101)へ形質転換することで本発明のタンパク質を発現可能な宿主を調製することができる。本発明のタンパク質を発現させるためのプラスミドとして、例えばpET−28a(+)(メルク社製)、pTrc99A(GenBank ACCESSION No.U13872)、pSTV28(タカラバイオ社製)、pSTV29(タカラバイオ社製)、pCDF−1b(メルク社製)、pRSF−1b(メルク社製)が例示できる。
【0020】
本発明のタンパク質をコードしたポリヌクレオチドを前記プラスミドに挿入する際は、前記ポリヌクレオチドのフレームシフトが生じないようにプラスミド内のマルチクローニングサイトに挿入すればよい。なお、挿入したポリヌクレオチドの5’末端側、または3’末端側に適切なアミノ酸をコードするオリゴヌクレオチドが付加されるように設計されたプラスミドを用いることで、本発明のフコース結合性タンパク質をコードする配列に付加配列をもった配列からなるポリヌクレオチドを作製することもできる。一例として、プラスミドpET−26b(+)(メルク社製)のマルチクローニングサイト上の制限酵素NcoIサイトを利用することで、本発明のタンパク質のN末端側にPelBシグナル配列(さらに、任意のアミノ酸を付加してもよい)を連結したタンパク質をコードする配列からなるポリヌクレオチドを挿入したプラスミドを調製することができる。別の例として、プラスミドpTrc99A(GenBank ACCESSION No.U13872)の制限酵素EcoRIサイトを利用することで、本発明のタンパク質のN末端側にメチオニンとグルタミン酸(さらに、任意のアミノ酸を付加してもよい)が付加したタンパク質をコードする配列からなるポリヌクレオチドを挿入したプラスミドを調製することができる。
【0021】
本発明のタンパク質の製造方法は、
(ア)本発明の形質転換体を培養することで本発明のタンパク質を生産する工程、
(イ)工程(ア)で得られた培養物から本発明のタンパク質を回収する工程、
の2工程を含むことを特徴とする。なお、本明細書において、培養物とは、培養された形質転換体の細胞そのものや細胞分泌物のほかに、形質転換体の培養に用いた培地なども含まれる。以下に工程(ア)と工程(イ)の各工程の詳細を説明する。
【0022】
(ア)本発明の形質転換体を培養することで本発明のタンパク質を生産する工程
本発明におけるタンパク質の製造方法に用いる形質転換体は、対象とする宿主の培養に適した培地で培養すればよく、例えば、宿主が大腸菌の場合は、Terrific Broth(TB)培地や、必要な栄養源を補ったLuria−Bertani(LB)培地が好ましい培地の一例としてあげられる。また、培地には炭素、窒素および無機塩のほかに、当該技術分野において一般的な栄養源を添加してもよい。
【0023】
なお、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターの導入の有無によって選択的に形質転換体を増殖させるために培地に当該ベクターに含まれる薬剤耐性遺伝子に対応した薬剤を添加して培養することが好ましく、例えば、当該ベクターがカナマイシン耐性遺伝子を含んでいる場合には、培地にカナマイシンを添加すればよい。さらに、前述の形質転換体から培養液へのタンパク質の分泌を促すため、グリシンなどの試薬を培地に添加してもよく、具体的には、宿主が大腸菌の場合、培地に対してグリシンを2%(w/v)以下で添加することが好ましい。
【0024】
培養温度は、当該技術分野において一般的な温度であれば特に制限はなく、例えば宿主が大腸菌の場合、10℃から40℃、好ましくは25℃から35℃、より好ましくは30℃前後であり、発現させるタンパク質の特性により適宜選択すればよい。また、培地のpHは当該技術分野において一般的な範囲の中から宿主の種類などの諸条件に応じて適宜選択すればよく、例えば宿主が大腸菌の場合、好ましくはpH6.8からpH7.4の範囲が好ましく、より好ましくはpH7.0前後である。
【0025】
なお、本発明のタンパク質は発現ベクターによっては誘導剤を添加しなくても発現するため、必ずしも誘導剤が必要ではないが、本発明の発現ベクターに誘導性のプロモータが含まれている場合には、本発明のタンパク質が良好に発現できるような条件下で誘導剤を添加して、タンパク質発現を誘導することが好ましい。好ましい誘導剤としては、IPTG(isopropyl−β−D−thiogalactopyranoside)を例示することができる。IPTG添加濃度は、0.005mMから1.0mMの範囲から適宜選択すればよく、好ましくは0.01mMから0.5mMである。IPTG誘導に関する種々の条件は、当該技術分野において周知の条件で行えばよく、例えば、宿主が大腸菌の場合、培養液の濁度(600nmにおける吸光度)が約0.1から1.0のときに適当量のIPTGを添加後、引き続き培養することで、本発明のタンパク質発現を誘導することができる。
【0026】
(イ)工程(ア)で得られた培養物から本発明のタンパク質を回収する工程
本発明の形質転換体を培養して得られた培養物から本発明のタンパク質を回収するには、当業者が通常用いる方法の中から適宜選択して用いればよく、前述の培養物から本発明のタンパク質を抽出は、発現の形態に応じて実施すればよい。本発明のタンパク質が細胞内(原核生物においてはペリプラズムも含む)に発現する場合には、遠心分離操作により菌体を集めたのち、酵素処理剤や界面活性剤などを添加することにより菌体を破砕し、本発明のタンパク質を抽出すればよい。一方、培養液中に分泌される場合は、菌体を遠心分離操作によって分離し、得られる培養上清から本発明のタンパク質を抽出すればよい。
【0027】
前述の方法で得られた抽出物から、本発明のタンパク質を分離精製するには、当該技術分野において公知の方法を用いればよく、例えば、液体クロマトグラフィーを用いた分離精製をあげることができる。液体クロマトグラフィーとしては、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどがあり、これらのクロマトグラフィーを組み合わせて分離精製を行うことにより、本発明のタンパク質を高純度に回収することができる。
【0028】
本発明のタンパク質を水に不溶性の担体に固定化することにより、本発明のフコース含有糖鎖および/または複合糖質を分離精製するための吸着剤(以下、本発明の吸着剤という)を作製することができる。本発明の吸着剤の作製に用いる水に不溶性の担体に特に制限はなく、シリカゲルや金薄膜を蒸着させたガラスなどの無機系担体、アガロース、セルロース、キチン、キトサン、デキストラン、プルラン、デンプン、アルギン酸塩、カラギーナンなどの多糖類を原料とした多糖系担体およびそれらを架橋剤で架橋した架橋多糖系担体、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリスチレンなどの合成高分子系担体およびそれらを架橋剤で架橋した架橋合成高分子系担体を例示することができる。これらの担体の中では、親水性が高く分離精製対象物質の非特異的吸着が低い点で、アガロース、セルロース、デキストラン、プルランなどの電荷をもたない多糖系担体および架橋多糖系担体や、ポリメタクリレートや、ポリビニルアルコールなどの親水性合成高分子系担体および架橋親水性合成高分子系担体が好ましい。また、水に不溶性の担体の形状や細孔の有無に特に制限はなく、形状については粒子状、スポンジ状、平膜状、平板状、中空状、繊維状や非粒子状のいずれであってもよく、細孔の有無については多孔性または無孔性のいずれであってもよい。本発明のタンパク質を固定化する水に不溶性の担体としては、本発明のタンパク質を担体に固定化するための活性官能基導入が容易に行える点および分離精製対象であるフコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着量を高められる点で水酸基を有する粒子状担体であることが好ましく、多孔性粒子状担体がより好ましい。さらに、本発明の吸着剤の作製に用いる水に不溶性の担体は市販品を使用してもよく、例えば、ポリメタクリレートを原料としたトヨパール(東ソー社製)や、アガロースを原料としたSepharose(GEヘルスケア社製)、セルロースを原料としたセルファイン(JNC社製)を使用することができる。
【0029】
前述の水に不溶性の担体に本発明のタンパク質を固定化する方法は、一般的なタンパク質の固定化方法であれば特に制限はされず、例えば、配位結合やアフィニティー結合などを利用し、共有結合を形成せずに本発明のタンパク質を担体に固定化する方法、本発明のタンパク質に導入した固定化用活性官能基と担体を反応させ、共有結合を形成させて担体に固定化する方法、担体に導入した活性官能基と本発明のタンパク質を反応させ、共有結合を形成させて担体に固定化する方法をあげることができる。
【0030】
本発明のタンパク質は、システインを1つ以上含むシステインタグを有することから、システインのメルカプト基に選択的な反応を利用することにより、本発明のタンパク質を位置選択的に担体に固定化することができる。
【0031】
共有結合を形成せずに本発明のタンパク質を担体に固定化する方法としては、メルカプト基と金の配位結合を利用し、金薄膜を蒸着させたガラスに本発明のタンパク質を固定化する方法や、アビジン−ビオチンのアフィニティー結合を利用し、ビオチンを導入した本発明のタンパク質をストレプトアビジンセファロースハイパフォーマンス(GEヘルスケア社製)などのアビジンが固定化された担体に固定化する方法を例示することができる。本発明のタンパク質へのビオチンの導入方法としては、例えば、N−ビオチニル−N’−[2−(N−マレイミド)エチル]ピペラジン塩酸塩などのマレイミド基を有するビオチン化試薬と本発明のタンパク質のメルカプト基を反応させる方法を例示することができる。
【0032】
また、本発明のタンパク質に導入した固定化用活性官能基と担体を反応させ、共有結合を形成させて固定化する方法としては、4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸 3−スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルナトリウム塩などのマレイミド基と活性エステル基の双方を有する化合物のマレイミド基と、本発明のタンパク質のメルカプト基をpH7付近の中性条件で反応させて本発明のタンパク質に活性エステル基を導入したのち、トヨパールAF−アミノ−650M(東ソー社製)などのアミノ基が導入された担体と反応させる方法を例示することができる。
【0033】
さらに、担体に導入した活性官能基と本発明のタンパク質を反応させ、共有結合を形成させて担体に固定化する方法としては、担体に導入したエポキシ基、マレイミド基、ハロアセチル基、ハロアルキル基、ビニル基、イソシアネート基、イソチオシアネート基などのメルカプト基と反応して共有結合を形成する官能基と、本発明のタンパク質のメルカプト基を反応させる方法を例示することができる。これらのメルカプト基と反応して共有結合を形成する官能基の中では、pH6.5からpH7.5の範囲、すなわちpHが中性付近の水溶液中で、本発明のタンパク質の担体への固定化反応を高効率に行える点で、エポキシ基、マレイミド基、ハロアセチル基、ハロアルキル基、ビニル基が好ましく、より好ましくはエポキシ基、マレイミド基、ハロアセチル基である。
【0034】
水に不溶性の担体にエポキシ基を導入する方法としては、例えば、水酸基を有する担体と、エピクロロヒドリン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有化合物を塩基性条件下で反応させる方法をあげることができる。
【0035】
水に不溶性の担体にマレイミド基を導入する方法としては、例えば、水酸基および/またはアミノ基を有する担体と、3−マレイミドプロピオン酸、4−マレイミド酪酸、6−マレイミドヘキサン酸、4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボン酸などのマレイミド基を有するカルボン酸類を、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)などの縮合剤存在下で反応させる方法をあげることができる。さらに、前述のマレイミド基を有するカルボン酸類のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルやN−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステルを反応させる方法を例示することができる。なお、アミノ基を有する担体は、例えば、前述のエポキシ基を導入した担体と、アンモニア水、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリス(2−アミノエチル)アミンなどのアミノ基を有する化合物を反応させることにより作製することができる。
【0036】
水に不溶性の担体にハロアセチル基を導入する方法としては、例えば、水酸基を有する担体や、前述の方法によりアミノ基を導入した担体と、クロロ酢酸クロリド、ブロモ酢酸クロリド、ブロモ酢酸ブロミドなどの酸ハロゲン化物を反応させる方法や、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸などのハロゲン化酢酸をEDCなどの縮合剤存在下で反応させる方法をあげることができる。さらに前述のハロゲン化酢酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルやN−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステルを反応させる方法をあげることができる。
【0037】
前述の活性官能基を導入した担体と、緩衝液に溶解した本発明のタンパク質を反応させることで、本発明のタンパク質を水に不溶性の担体に固定化することができる。本発明のタンパク質を溶解する緩衝液に特に制限はなく、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)緩衝液、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)緩衝液、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)緩衝液を例示することができる。また、固定化反応の効率を高めることを目的として、緩衝液に塩化ナトリウムなどの無機塩類やポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween20)などの界面活性剤を添加してもよい。本発明のタンパク質を担体に固定化する際の反応温度およびpHは、活性官能基の反応性や本発明のタンパク質の安定性を考慮した上で反応温度については0℃以上50℃以下、pHについてはpH5以上pH9以下の範囲の中から適宜設定すればよく、タンパク質の失活を抑制する点で、反応温度については15℃以上40℃以下、pHについてはpH6以上pH8以下の範囲が好ましい。
【0038】
水に不溶性の担体への本発明のタンパク質の固定化量は、分離精製を行なう溶液中のフコース含有糖鎖および/または複合糖質の濃度や量などを考慮した上で適宜設定すればよく、例えば、担体が多孔性粒子状担体の場合、1mLの担体あたり0.01mg以上50mg以下が好ましく、0.05mg以上30mg以下がより好ましい。担体への本発明のタンパク質の固定化量は、固定化反応時の本発明のタンパク質の使用量や担体への活性官能基導入量を調節することにより調整することができる。本発明のタンパク質の担体への固定化量は、固定化反応液および反応後の洗浄液を回収して未反応の本発明のタンパク質量を求めたのち、固定化反応に使用した本発明のタンパク質量から未反応の本発明のタンパク質量を差し引くことで算出することができる。
【0039】
本発明の吸着剤で精製可能なフコース含有糖鎖および/または複合糖質は、フコース含有糖鎖およびフコース含有糖鎖が結合したタンパク質や脂質などの複合糖質であれば特に制限はなく、例えば、α1−2結合したフコースとα1−3結合したフコースを含むLewis Y型糖鎖、α1−2結合したフコースとα1−4結合したフコースを含むLewis b型糖鎖、α1−2結合したフコースを含むHタイプ1型糖鎖、Hタイプ2型糖鎖、Hタイプ3型糖鎖、α1−3結合したフコースを含むLewis X型糖鎖、α1−4結合したフコースを含むLewis a型糖鎖、還元末端のN−アセチルグルコサミンにα1−6結合したフコースを含むN−グリコシド結合型糖鎖およびこれらのフコース含有糖鎖が結合したタンパク質や脂質などの複合糖質や、これらのフコース含有糖鎖および/または複合糖質を細胞表面に有する細胞をあげることができる。
【0040】
本発明の吸着剤を用いたフコース含有糖鎖および/または複合糖質の精製方法に特に制限はないが、フコース含有糖鎖および/または複合糖質の分離精製が効率よく行うことができる点で、本発明の吸着剤と分離精製前のフコース含有糖鎖および/または複合糖質を含む溶液を混合したのち、フコース含有糖鎖および/または複合糖質が吸着した本発明の吸着剤と非吸着成分を分離する方法や、本発明の吸着剤を充填したクロマトグラフィー用カラムに分離精製前のフコース含有糖鎖および/または複合糖質を含む溶液を通液し、フコース含有糖鎖および/または複合糖質を本発明の吸着剤に吸着させる方法が好ましい。また、フコース含有糖鎖および/または複合糖質の分離精製に用いる本発明の吸着剤の使用量は、処理量に応じて適切な量を設定すればよい。
【0041】
本発明の吸着剤へのフコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着は、例えば、pH5以上pH9以下、好ましくはpH6以上pH8以下の緩衝液で平衡化した吸着剤と、分離精製前のフコース含有糖鎖および/または複合糖質を含む溶液を接触させればよい。本発明の吸着剤へのフコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着に用いる緩衝液に特に制限はなく、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)緩衝液、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)緩衝液、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)緩衝液を例示することができる。また、緩衝液に塩化ナトリウムなどの無機塩類やポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween20)などの界面活性剤を添加してもよい。
【0042】
本発明の吸着剤に吸着したフコース含有糖鎖および/または複合糖質は、L−フコースを含む緩衝液と接触させることにより脱着させることができる。L−フコースを含む緩衝液としては、例えば、前述のフコースを含む糖鎖および/または複合糖質の吸着に用いた緩衝液に、0.1mM以上1M以下、好ましくは1mM以上100mM以下のL−フコースを添加した緩衝液をあげることができる。
【0043】
分離精製前のフコース含有糖鎖および/または複合糖質を含む溶液から、フコース含有糖鎖および/または複合糖質を得たい場合には、前述の吸着および脱着の操作を行うことにより、目的とするフコース含有糖鎖および/または複合糖質を得ることができる。一方、分離精製前のフコース含有糖鎖および/または複合糖質を含む溶液から、フコース含有糖鎖および/または複合糖質を除去したい場合には、前述の吸着の操作のみを行うことにより、目的とするフコース含有糖鎖および/または複合糖質を除去した溶液を得ることができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明のタンパク質は、システインを1つ以上含むシステインタグをフコース結合性レクチンのN末端またはC末端に有するタンパク質であり、前述のフコース結合性レクチンを位置選択的に担体に固定化することができる。また、本発明のタンパク質を水に不溶性の担体に固定化した、フコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着剤を用いることにより、フコース含有糖鎖および/または複合糖質、細胞表面にフコース含有糖鎖を有する細胞の精製および除去を行うことができる。
【0045】
また、本発明の吸着剤は前述のフコース結合性レクチンを位置選択的に担体に固定化しており、フコース含有糖鎖および/または複合糖質への結合能を保持しているフコース結合性レクチンの割合が向上していることから、システインタグを付加していないフコース結合性レクチンを担体に固定化して得られる吸着剤に比べて、フコース含有糖鎖および/または複合糖質や、細胞表面にフコース含有糖鎖を有する細胞の吸着量を向上させることができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例、比較例および参考例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 プラスミドpET−BC2LCNcysの作製
以下(1)から(5)記載の方法により、配列番号3に示したフコース結合性レクチンのアミノ酸配列をコードした配列番号4のポリヌクレオチドを作製した。
【0048】
(1)以下の試薬組成および反応条件にて、1段階目のPCR反応を行った。
(試薬組成、総反応液量:50μL)
・0.025unit/μL PrimeSTAR HS DNA Polymerase(タカラバイオ社製)
・各30nM 配列番号5から28に示したプライマー
・酵素に付属する緩衝液
(反応条件)
・サーマルサイクラーを用い、98℃・10秒間、55℃・5秒間、72℃・60秒間のPCR反応を5サイクル実施した。
【0049】
(2)次に、(1)の反応液を用いて、以下の試薬組成および反応条件にて、2段階目のPCR反応を行った。
(試薬組成、総反応液量:50μL)
・0.025unit/μL PrimeSTAR HS DNA Polymerase
(タカラバイオ社製)
・各500nM 配列番号29と30に示したプライマー
・1μL 1段階目のPCR反応液
・酵素に付属する緩衝液
(反応条件)
・サーマルサイクラーを用い、98℃・10秒間、55℃・5秒間、72℃・60秒間のPCR反応を30サイクル実施した。
【0050】
(3)2段階目のPCR反応後の(2)の反応液をアガロースゲル電気泳動で泳動後、目的物に相当する0.5kbpのバンドを切り出すことで、PCR産物を精製した。
【0051】
(4)前述の(3)で得られたPCR産物を、制限酵素NcoIとXhoIで二重消化し、消化後のDNAをプラスミドpET−28(+)の制限酵素NcoI−XhoIサイトに、DNA Ligation Kit ver.2.1(タカラバイオ社製)を用いてライゲーションしてプラスミドを調製後、大腸菌BL21(DE3)へ形質転換し、組換え大腸菌BL21(DE3)/pET−BC2LCNcysを得た。
【0052】
(5)前述の(4)で得られた組換え大腸菌BL21(DE3)/pET−BC2LCNcysを培養し、集菌したのち、QIAprep Spin Miniprep Kit(キアゲン社製)を用いてプラスミドpET−BC2LCNcys(5.6kbp)を得た。当該方法で得られたプラスミドpET−BC2LCNcysに挿入されているフコース結合性レクチンをコードする塩基配列を分析した結果、塩基配列は設計どおりであることを確認した。
【0053】
実施例2 システインタグを付加したフコース結合性レクチンの作製
実施例1で得られた組換え大腸菌BL21(DE3)/pET−BC2LCNcysより、以下(1)から(5)記載の方法で、システインタグを付加したフコース結合性レクチンを作製した。
(1)組換え大腸菌BL21(DE3)/pET−BC2LCNcysを、30μg/mLのカナマイシンを添加したLB/Km液体培地に接種し、37℃で一晩振盪することで前培養を行った。培養液の濁度(O.D.600)が0.6になるように植菌後、37℃で培養した。
(2)前培養液を30μg/mLのカナマイシンを添加したLB/Km液体培地1Lに接種し、37℃で振盪培養した。培養液の濁度(O.D.600)が凡そ0.6になったところで、培養温度を20℃に切り替え、一晩培養した。
(3)培養終了後、培養液を氷冷したのち、遠心分離により集菌した。集めた菌を20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)および1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)を添加したBugBuster Protein Extraction Reagent(メルク社製)を用いて処理し、可溶性画分を150mL得た。
【0054】
(4)前述の(3)で得られた可溶性画分の溶液を、150mMの塩化ナトリウムと20mMイミダゾールを含む20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)で平衡化した担体(His・Bind Resin、メルク社製、担体容積15mL)を充填したカラムに通液し、可溶性画分に含まれるシステインタグを付加したフコース結合性レクチンを吸着させた。担体に吸着したシステインタグを付加したフコース結合性レクチンを150mMの塩化ナトリウムと250mMイミダゾールを含む20mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)で溶出させることにより、目的のシステインタグを付加したフコース結合性レクチンを含む溶出液を50mL得た。
(5)前述の(4)で得られたシステインタグを付加したフコース結合性レクチンを含む溶出液を、D−PBS(−)(和光純薬製)に対して透析することにより、目的のシステインタグを付加したフコース結合性レクチンのD−PBS(−)溶液を75mL得た。
【0055】
得られたD−PBS(−)溶液中のシステインタグを付加したフコース結合性レクチン濃度を紫外線吸収法により測定し、280nmにおける吸光度が1.0の場合のシステインタグを付加したフコース結合性レクチン濃度を1.0mg/mLとして濃度を算出した結果、濃度は1.2mg/mLであった。
実施例3 システインタグを付加したフコース結合性レクチンの糖鎖への親和性評価
実施例2で得られたシステインタグを付加したフコース結合性レクチンのフコース含有糖鎖への親和性を評価するため、BIACORE T100(GEヘルスケア社製)を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)測定を行った。親和性を評価するための糖鎖として、α1−2結合したフコースとα1−3結合したフコースを含むLewis Y型糖鎖を用い、ストレプトアビジン(和光純薬社製)を固定化したCM5センサーチップ(GEヘルスケア社製)に、ビオチン−アビジン結合を利用してビオチン化Lewis Y型糖鎖(Ley−PAA−biotin、Glycotech社製)を固定した。以下にLewis Y型糖鎖の構造を示した。
【0056】
Lewis Y型糖鎖
Fucα1−2Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc
システインタグを付加したフコース結合性レクチンはHBS−EP+緩衝液(GEヘルスケア社製)を用いて希釈し、0から1013nMの範囲の12種類の濃度でカイネティクス解析を行った。SPR測定は、各濃度のシステインタグを付加したフコース結合性レクチン溶液を30μL/分の流速で6分間注入し、Lewis Y型糖鎖を固定化したセンサーチップにシステインタグを付加したフコース結合性レクチンを結合させた。センサーチップに結合したフコース結合性レクチンのセンサーチップからの解離は、10mM水酸化ナトリウム水溶液を30μL/分の流速で30秒間注入することで行った。得られた結果を、BIACORE T100に付属のソフトウェア(バージョン1.1.1)で解析した結果、システインタグを付加したフコース結合性レクチンのLewis Y型糖鎖に対する解離定数(Kd値)は46nMであった。
【0057】
図1に、実施例3で行ったBIACORE T100を用いたSPR測定のセンサーグラムを示した。
実施例4 エポキシ基を導入した担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化および吸着剤としての評価(その1)
以下の実施例4から実施例9は、システインタグを付加したフコース結合性レクチンを担体に固定化することによるフコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着剤の作製と、フコース含有糖鎖およびフコースを含まない糖鎖を用いた吸着剤としての評価に関する。
【0058】
以下の実施例、比較例および参考例では、フコース含有糖鎖として、還元末端を2−アミノピリジンで蛍光標識したフコース含有糖鎖(PA−Sugar chain 046、Leb−hexasaccharide、タカラバイオ社製、以下、フコース含有糖鎖という)を用いた。また、フコースを含まない糖鎖として、還元末端を2−アミノピリジンで蛍光標識したオリゴマンノース型糖鎖(PA−Sugar chain 016、M3B、タカラバイオ社製、以下、オリゴマンノース型糖鎖という)を用いた。以下に、フコース含有糖鎖およびオリゴマンノース型糖鎖の構造を示した。なお、還元末端の2−アミノピリジンは省略した。
【0059】
フコース含有糖鎖
Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc
オリゴマンノース型糖鎖
Manα1−3(Manα1−6)Manβ1−4GlcNAcβ1−4GlcNAc
実施例4は、エポキシ基を導入した合成高分子系担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化と、吸着剤としての評価に関する。
(1)エポキシ基を導入した合成高分子系担体の作製
合成高分子系担体として、水に懸濁したトヨパールHW−65F(東ソー社製)をグラスフィルターで吸引ろ過したものを使用した。反応容器(PFA製ボトル、100mL容積、アズワン社製)に、含水状態のトヨパールHW−65F(10.0g)、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(アルドリッチ社製、2.0g)、水(15.0g)を添加し、50℃で30分間撹拌したのち、48%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学社製、280mg)を添加し、さらに50℃で8時間撹拌することによりエポキシ化反応を行なった。反応後、グラスフィルターを使用してろ液が中性になるまで多量の水で洗浄することにより、エポキシ基を導入したトヨパールHW−65F(以下、エポキシ化トヨパールHW−65F)を得た。
【0060】
(2)エポキシ基を導入した合成高分子系担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化(吸着剤1の作製)
(1)で作製したエポキシ化トヨパールHW−65Fに水を添加することで調製した50容積%懸濁液(200μL)を反応容器(ミニバイオスピンクロマトグラフィーカラム、BIO−RAD社製)に添加し、500mMの塩化ナトリウム(和光純薬社製)と20mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA、同仁化学研究所社製)を含む、リン酸二水素ナトリウム二水和物(和光純薬社製)とリン酸水素二ナトリウム(和光純薬社製)から調製した200mMのリン酸緩衝液(pH7.4、200μL)で5回洗浄した。なお、エポキシ化トヨパールHW−65Fの50容積%懸濁液は、水で懸濁したエポキシ化トヨパールHW−65Fをメスシリンダー内で沈降させ、時々タッピングを行なって容積が一定になるまで放置したのち、エポキシ化トヨパールHW−65Fの容積が50%となるよう、水を添加することで調製した。
【0061】
次に、エポキシ化トヨパールHW−65F(100μL)が入った反応容器に、担体1mLあたりのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの仕込み量を2.24mgとして、前述の実施例2で作製したシステインタグを付加したフコース結合性レクチンのD−PBS(−)溶液(濃度2.80mg/mL、80μL)とD−PBS(−)(20μL)を添加し、40℃で15時間撹拌することにより、システインタグを付加したフコース結合性レクチンをエポキシ化トヨパールHW−65Fに固定化した。固定化反応後、担体を0.05重量%のTween20(シグマ社製)を含むD−PBS(−)(和光純薬社製)で洗浄することにより、システインタグを付加したフコース結合性レクチンをエポキシ化トヨパールHW−65Fに固定化したフコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着剤1を得た。
【0062】
実施例3に記載した、Lewis Y型糖鎖を固定化したCM5センサーチップとBIACORE T100を用いたSPR測定により、固定化反応液および回収した洗浄液中のシステインタグを付加したフコース結合性レクチン量を算出し、固定化反応に使用したシステインタグを付加したフコース結合性レクチン量から、回収した固定化反応後の洗浄液に含まれる未反応のシステインタグを付加したフコース結合性レクチン量を差し引くことにより、吸着剤1へのフコース結合性レクチンの固定化量と固定化率を算出した結果、固定化量は担体1mLあたり0.92mg、固定化率は41.1%であった。
【0063】
(3)吸着剤1へのフコース含有糖鎖の吸着率の測定
(2)で作製した吸着剤1にD−PBS(−)を添加することで調製した25容積%懸濁液(100μL)を反応容器(BIO−RAD社製、ミニバイオスピンクロマトグラフィーカラム)に添加し、D−PBS(−)(100μL)で4回洗浄した。なお、吸着剤1Eの25容積%懸濁液は、(2)で作製した吸着剤1(100μL)が入った反応容器に、D−PBS(−)(300μL)を添加することで調製した。
【0064】
次に、吸着剤1(25μL)が入った反応容器に、フコース含有糖鎖のD−PBS(−)溶液(濃度500pmol/mL、50μL、添加量25pmol)を添加し、25℃で2時間撹拌することにより、吸着剤1にフコース含有糖鎖を吸着させた。フコース含有糖鎖を吸着させた吸着剤はD−PBS(−)で洗浄し、洗浄液全量を回収した。
【0065】
マイクロプレートリーダー(infinite M200、TECAN社製、Exitation320nm、Emission400nm)を用い、蛍光標識したフコース含有糖鎖に由来する蛍光強度を測定することにより、吸着処理に使用したフコース含有糖鎖量および洗浄液に含まれるフコース含有糖鎖量を求めたのち、以下に示した計算式から吸着剤1へのフコース含有糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は88%であった。
吸着率=((吸着処理に使用したフコース含有糖鎖量−洗浄液に含まれるフコース含有糖鎖量)/吸着処理に使用したフコース含有糖鎖量)×100
(4)フコース含有糖鎖が吸着した吸着剤1からのフコース含有糖鎖の回収率の測定
(3)でフコース含有糖鎖を吸着させた吸着剤1(25μL)が入った反応容器に、L−フコース(和光純薬社製)のD−PBS(−)溶液(濃度15mM、50μL、L−フコース添加量750nmol)を添加し、25℃で1時間分間撹拌することにより、吸着剤1に吸着したフコース含有糖鎖を脱着させた。フコース含有糖鎖を脱着させた吸着剤はD−PBS(−)で洗浄し、洗浄液全量を回収した。
【0066】
前述の(3)の操作と同様に、マイクロプレートリーダーを用いて吸着剤1から脱着したフコース含有糖鎖の量を求めたのち、以下に示した計算式から吸着剤1からのフコース含有糖鎖の回収率を算出した結果、回収率は82%であった。
【0067】
回収率=(脱着したフコース含有糖鎖の量/吸着処理に使用したフコース含有糖鎖の量)×100
(5)エポキシ基を導入した合成高分子系担体へのフコース含有糖鎖の吸着率の測定
(2)に記載の方法により、(1)で作製したエポキシ化トヨパールHW−65Fの50容積%懸濁液(200μL)を反応容器に添加し、500mMの塩化ナトリウムと20mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む200mMのリン酸緩衝液(pH7.4、200μL)で5回洗浄した。
【0068】
次に、エポキシ化トヨパールHW−65F(100μL)が入った反応容器に、α−チオグリセリン(東京化成社製)とD−PBS(−)から調製したα−チオグリセリン/D−PBS(−)溶液(濃度10mg/mL、100μL)を添加し、40℃で15時間撹拌することにより、エポキシ化トヨパールHW−65Fとα−チオグリセリンを反応させた。反応終了後、担体を0.05重量%のTween20を含むD−PBS(−)で洗浄することにより、エポキシ基をα−チオグリセリンでブロッキングした吸着剤1Bを得た。
【0069】
(3)に記載の方法により、吸着剤1Bへのフコース含有糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は5%であった。従って、担体に導入したエポキシ基をα−チオグリセリンでブロッキングした吸着剤1Bには、フコース含有糖鎖は吸着しないことが明らかとなった。
【0070】
(6)吸着剤1へのオリゴマンノース型糖鎖の吸着率の測定
(3)に記載の方法により、吸着剤1の25容積%懸濁液(100μL)を反応容器に添加し、D−PBS(−)(100μL)で4回洗浄した。次に、吸着剤1(25μL)が入った反応容器に、オリゴマンノース型糖鎖のD−PBS(−)溶液(濃度500pmol/mL、50μL、添加量25pmol)を添加し、25℃で60分間撹拌することにより、吸着剤1にオリゴマンノース型糖鎖を吸着させた。オリゴマンノース型糖鎖を吸着させた吸着剤はD−PBS(−)で洗浄し、洗浄液全量を回収した。
【0071】
(3)に記載の方法により、オリゴマンノース型糖鎖に由来する蛍光強度を測定することにより、吸着処理に使用したオリゴマンノース型糖鎖量および洗浄液に含まれるオリゴマンノース型糖鎖量を求めたのち、吸着剤1へのオリゴマンノース型糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は6%であった。従って、吸着剤1にはフコースを含まないオリゴマンノース型糖鎖は吸着しないことが明らかとなった。
【0072】
実施例5 エポキシ基を導入した担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化および吸着剤としての評価(その2)
実施例5は、エポキシ基を導入した多糖系担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化と、吸着剤としての評価に関する。
【0073】
(1)エポキシ基を導入した多糖系担体の作製
多糖系担体として、水に懸濁したSepharose 4 Fast Flow(GEヘルスケア社製、以下、Sepharose4FFという)をグラスフィルターで吸引ろ過したものを使用し、実施例4の(1)に記載の方法により、エポキシ基を導入したSepharose4FF(以下、エポキシ化Sepharose4FFという)を得た。
(2)エポキシ基を導入した多糖系担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化(吸着剤2の作製)
実施例4の(2)に記載の方法により、(1)で作製したエポキシ化Sepharose4FFにシステインタグを付加したフコース結合性レクチンを固定化したフコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着剤2を得た。同じく実施例4の(2)に記載の方法により、吸着剤2へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化量を算出した結果、固定化量は担体1mLあたり1.13mg、固定化率は50.4%であった。
【0074】
(3)吸着剤2へのフコース含有糖鎖の吸着率の測定
実施例4の(3)に記載の方法により、(2)で作製した吸着剤2へのフコース含有糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は90%であった。
(4)フコース含有糖鎖が吸着した吸着剤2からのフコース含有糖鎖の回収率の測定
実施例4の(4)に記載の方法により、(3)でフコース含有糖鎖を吸着させた吸着剤2からのフコース含有糖鎖の回収率を算出した結果、回収率は84%であった。
(5)エポキシ基を導入した多糖系担体へのフコース含有糖鎖の吸着率の測定
実施例4の(5)に記載の方法により、(1)で作製したエポキシ化Sepharose4FFから、エポキシ基をα−チオグリセリンでブロッキングした吸着剤2Bを得た。実施例4の(3)に記載の方法により、吸着剤2Bへのフコース含有糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は3%であった。従って、吸着剤2Bにはフコース含有糖鎖は吸着しないことが明らかとなった。
【0075】
(6)吸着剤2へのオリゴマンノース型糖鎖の吸着率の測定
実施例4の(6)に記載の方法により、(2)で作製した吸着剤2へのオリゴマンノース型糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は5%であった。従って、吸着剤2にはオリゴマンノース型糖鎖は吸着しないことが明らかとなった。
【0076】
比較例1 エポキシ基を導入した担体へのシステインタグを付加していないフコース結合性レクチンの固定化および吸着剤としての評価(その1)
比較例1は、エポキシ基を導入した合成高分子系担体へのシステインタグを付加していないフコース結合性レクチンの固定化と、吸着剤としての評価に関する。
システインタグを付加していないフコース結合性レクチンとして、α1−2結合したフコースを含むHタイプ1型糖鎖およびHタイプ3型糖鎖に結合性を有する、市販のフコース結合性レクチン(AiLecS1、和光純薬製、以下、市販フコース結合性レクチンという)を用いた。以下にHタイプ1型糖鎖およびHタイプ3型糖鎖の構造を示した。
【0077】
Hタイプ1型糖鎖
Fucα1−2Galβ1−3GlcNAc
Hタイプ3型糖鎖
Fucα1−2Galβ1−3GalNAc
比較例1では、エポキシ基を導入した合成高分子系担体への市販フコース結合性レクチンの固定化を、実施例1と同様にpH7.4で行なった。
【0078】
(1)エポキシ基を導入した合成高分子系担体への市販フコース結合性レクチンの固定化(吸着剤3の作製)
実施例4の(1)で作製したエポキシ化トヨパールHW−65Fの50容積%懸濁液(200μL)を反応容器に添加し、500mMの塩化ナトリウムと20mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む200mMのリン酸緩衝液(pH7.4、200μL)で5回洗浄した。
【0079】
次に、エポキシ化トヨパールHW−65F(100μL)が入った反応容器に、担体1mLあたりの市販フコース結合性レクチンの仕込み量を2.24mgとして、前述の市販フコース結合性レクチンのD−PBS(−)溶液(濃度1.60mg/mL、140μL)を添加し、40℃で15時間撹拌することにより、市販フコース結合性レクチンをエポキシ化トヨパールHW−65Fに固定化した。固定化反応後、担体を0.05重量%のTween20を含むD−PBS(−)で洗浄することにより、市販フコース結合性レクチンをエポキシ化トヨパールHW−65Fに固定化したフコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着剤3を得た。
【0080】
実施例4の(2)に記載の方法により、吸着剤3への市販フコース結合性レクチンの固定化量を算出した結果、反応に使用した市販フコース結合性レクチン量と、未反応の市販フコース結合性レクチン量が同じであったことから、市販フコース結合性レクチンはエポキシ化トヨパールHW−65Fに固定化されていないことが明らかとなった。従って、吸着剤3へのフコース含有糖鎖およびオリゴマンノース型糖鎖の吸着率の測定は行わなかった。
【0081】
比較例2 エポキシ基を導入した担体へのシステインタグを付加していないフコース結合性レクチンの固定化および吸着剤としての評価(その2)
比較例2では、エポキシ基を導入した合成高分子系担体への市販フコース結合性レクチンの固定化をpH8.4で行なったのち、吸着剤としての評価を実施した。
(1)エポキシ基を導入した合成高分子系担体への市販フコース結合性レクチンの固定化(吸着剤4の作製)
実施例4の(1)で作製したエポキシ化トヨパールHW−65Fの50容積%懸濁液(200μL)を反応容器に添加し、500mMの塩化ナトリウムと20mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む200mMのTris−HCl緩衝液(pH8.4、200μL)で5回洗浄した。
次に、エポキシ化トヨパールHW−65F(100μL)が入った反応容器に、担体1mLあたりの市販フコース結合性レクチンの仕込み量を2.24mgとして、前述の市販フコース結合性レクチンのD−PBS(−)溶液(濃度1.60mg/mL、140μL)を添加し、40℃で15時間撹拌することにより、市販フコース結合性レクチンをエポキシ化トヨパールHW−65Fに固定化した。固定化反応後、担体を0.05重量%のTween20を含むD−PBS(−)で洗浄することにより、市販フコース結合性レクチンをエポキシ化トヨパールHW−65Fに固定化したフコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着剤4を得た。実施例4の(2)に記載の方法により、吸着剤4への市販フコース結合性レクチンの固定化量と固定化率を算出した結果、固定化量は担体1mLあたり0.53mg、固定化率は23.8%であった。
【0082】
(2)吸着剤4へのフコース含有糖鎖の吸着率の測定
実施例4の(3)に記載の方法により、(1)で作製した吸着剤4へのフコース含有糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は15%であった。従って、吸着剤4へのフコース含有糖鎖の吸着率は低いことが明らかとなった。吸着剤4の吸着率が低かった原因として、担体への固定化反応時における市販フコース結合性レクチンの失活が考えられた。
【0083】
(3)フコース含有糖鎖が吸着した吸着剤4からのフコース含有糖鎖の回収率の測定
実施例4の(4)に記載の方法により、(2)でフコース含有糖鎖を吸着させた吸着剤4からのフコース含有糖鎖の回収率を算出した結果、回収率は5%であった。
(4)吸着剤4へのオリゴマンノース型糖鎖の吸着率の測定
実施例4の(6)に記載の方法により、(1)で作製した吸着剤4へのオリゴマンノース型糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は8%であった。従って、吸着剤4にはオリゴマンノース型糖鎖は吸着しないことが明らかとなった。
【0084】
実施例6 マレイミド基を導入した担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化および吸着剤としての評価(その1)
実施例6は、マレイミド基を導入した合成高分子系担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化と、吸着剤としての評価に関する。
【0085】
(1)マレイミド基を導入した合成高分子系担体の作製
合成高分子系担体として、水に懸濁したトヨパールHW−65F(東ソー社製)をグラスフィルターで吸引ろ過したものを使用し、実施例4の(1)に記載の方法により、エポキシ化トヨパールHW−65Fを得た。
【0086】
次に、得られたエポキシ化トヨパールHW−65F(2.0g)と、エチレンジアミン(東京化成社製)と水から調製した0.5Mのエチレンジアミン水溶液(4.0mL)を混合し、40℃で15時間撹拌することによりアミノ化反応を行なった。反応後、グラスフィルター上でろ液が中性になるまで多量の水で洗浄することにより、アミノ化トヨパールHW−65Fを得た。
次に、得られたアミノ化トヨパールHW−65F(2.0g)、ジメチルスルホキシド(関東化学社製、2.0mL、以下DMSOという)、3−マレイミドプロピオン酸N−スクシンイミジル(東京化成社製)とDMSOから調製した3−マレイミドプロピオン酸N−スクシンイミジルのDMSO溶液(濃度10mg/mL、2.0mL)を混合し、35℃で4時間撹拌することにより、マレイミド化反応を行なった。反応後、グラスフィルターを使用してDMSOと水で順次洗浄することにより、マレイミド基を導入したトヨパールHW−65F(以下、マレイミド化トヨパールHW−65F)を得た。
【0087】
(2)マレイミド基を導入した合成高分子系担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化(吸着剤5の作製)
(1)で作製したマレイミド化トヨパールHW−65Fの50容積%懸濁液(200μL)を反応容器に添加し、500mMの塩化ナトリウムと20mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む200mMのリン酸緩衝液(pH7.4、200μL)で5回洗浄した。
次に、マレイミド化トヨパールHW−65F(100μL)が入った反応容器に、担体1mLあたりのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの仕込み量を2.24mgとして、前述の実施例2で作製したシステインタグを付加したフコース結合性レクチンのD−PBS(−)溶液(濃度2.80mg/mL、80μL)とD−PBS(−)(20μL)を添加し、35℃で4時間撹拌することにより、システインタグを付加したフコース結合性レクチンを、マレイミド化トヨパールHW−65Fに固定化した。固定化反応後、担体を0.05重量%のTween20を含むD−PBS(−)で洗浄することにより、システインタグを付加したフコース結合性レクチンをマレイミド化トヨパールHW−65Fに固定化したフコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着剤5を得た。
【0088】
実施例4の(2)に記載の方法により、吸着剤5へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化量と固定化率を算出した結果、固定化量は担体1mLあたり1.07mg、固定化率は47.6%であった。
(3)吸着剤5へのフコース含有糖鎖の吸着率の測定
実施例4の(3)に記載の方法により、(2)で作製した吸着剤5へのフコース含有糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は90%であった。
(4)フコース含有糖鎖が吸着した吸着剤5からのフコース含有糖鎖の回収率の測定
実施例4の(4)に記載の方法により、(3)でフコース含有糖鎖を吸着させた吸着剤5からのフコース含有糖鎖の回収率を算出した結果、回収率は88%であった。
(5)マレイミド基を導入した多糖系担体へのフコース含有糖鎖の吸着率の測定
(2)に記載の方法により、(1)で作製したマレイミド化トヨパールHW−65Fの50容積%懸濁液(200μL)を反応容器に添加し、500mMの塩化ナトリウムと20mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む200mMのリン酸緩衝液(pH7.4、200μL)で5回洗浄した。
【0089】
次に、マレイミド化トヨパールHW−65F(100μL)が入った反応容器に、α−チオグリセリン(東京化成社製)とD−PBS(−)から調製したα−チオグリセリン/D−PBS(−)溶液(濃度10mg/mL、100μL)を添加し、35℃で4時間撹拌することにより、マレイミド化トヨパールHW−65Fとα−チオグリセリンを反応させた。反応終了後、担体を0.05重量%のTween20を含むD−PBS(−)で洗浄することにより、マレイミド基をα−チオグリセリンでブロッキングした吸着剤5Bを得た。
(3)に記載の方法により、吸着剤5Bへのフコース含有糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は5%であった。従って、吸着剤5Bにはフコース含有糖鎖は吸着しないことが明らかとなった。
【0090】
(6)吸着剤5へのオリゴマンノース型糖鎖の吸着率の測定
実施例4の(6)に記載の方法により、(2)で作製した吸着剤5へのオリゴマンノース型糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は6%であった。従って、吸着剤5にはオリゴマンノース型糖鎖は吸着しないことが明らかとなった。
【0091】
実施例7 マレイミド基を導入した担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化および吸着剤としての評価(その2)
実施例7は、マレイミド基を導入した多糖系担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化と、吸着剤としての評価に関する。
【0092】
(1)マレイミド基を導入した多糖系担体の作製
多糖系担体として、水に懸濁したSepharose4FFをグラスフィルターで吸引ろ過したものを使用し、実施例6の(1)に記載の方法により、マレイミド基を導入したSepharose4FF(以下、マレイミド化Sepharose4FFという)を得た。
(2)マレイミド基を導入した多糖系担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの担体への固定化(吸着剤6の作製)
実施例6の(1)に記載の方法により、(1)で作製したマレイミド化Sepharose4FFにシステインタグを付加したフコース結合性レクチンを固定化したフコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着剤6を得た。実施例4の(2)に記載の方法により、吸着剤6へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化量を算出した結果、固定化量は担体1mLあたり1.18mg、固定化率は52.5%であった。
【0093】
(3)吸着剤6へのフコース含有糖鎖の吸着率の測定
実施例4の(3)に記載の方法により、(2)で作製した吸着剤6へのフコース含有糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は95%であった。
(4)フコース含有糖鎖が吸着した吸着剤6からのフコース含有糖鎖の回収率の測定
実施例4の(4)に記載の方法により、(3)でフコース含有糖鎖を吸着させた吸着剤6からのフコース含有糖鎖の回収率を算出した結果、回収率は90%であった。
【0094】
(5)マレイミド基を導入した多糖系担体へのフコース含有糖鎖の吸着率の測定
実施例6の(5)に記載の方法により、(1)で作製したマレイミド化Sepharose4FFから、マレイミド基をα−チオグリセリンでブロッキングした吸着剤6Bを得た。実施例4の(3)に記載の方法により、吸着剤6Bへのフコース含有糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は3%であった。従って、吸着剤6Bにはフコース含有糖鎖は吸着しないことが明らかとなった。
(6)吸着剤6へのオリゴマンノース型糖鎖の吸着率の測定
実施例4の(6)に記載の方法により、(2)で作製した吸着剤6へのオリゴマンノース型糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は3%であった。従って、吸着剤6にはフコースを含まないオリゴマンノース型糖鎖は吸着しないことが明らかとなった。
比較例3 マレイミド基を導入した担体へのシステインタグを付加していないフコース結合性レクチンの固定化および吸着剤としての評価
比較例3は、マレイミド基を導入した合成高分子系担体への市販フコース結合性レクチンの固定化と、吸着剤としての評価に関する。
【0095】
(1)マレイミド基を導入した合成高分子系担体への市販フコース結合性レクチンの担体への固定化(吸着剤7の作製)
実施例6の(1)で作製したマレイミド化トヨパールHW−65Fの50容積%懸濁液(200μL)を反応容器に添加し、500mMの塩化ナトリウムと20mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む200mMのリン酸緩衝液(pH7.4、200μL)で5回洗浄した。
【0096】
次に、マレイミド化トヨパールHW−65F(100μL)が入った反応容器に、担体1mLあたりの市販フコース結合性レクチンの仕込み量を2.24mgとして、市販フコース結合性レクチンのD−PBS(−)溶液(濃度1.60mg/mL、140μL)を添加し、35℃で4時間撹拌することにより、市販フコース結合性レクチンをマレイミド化トヨパールHW−65Fに固定化した。固定化反応後、担体を0.05重量%のTween20を含むD−PBS(−)で洗浄することにより、市販フコース結合性レクチンをマレイミド化トヨパールHW−65Fに固定化したフコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着剤7を得た。
【0097】
実施例4の(2)に記載の方法により、吸着剤7への市販フコース結合性レクチンの固定化量を算出した結果、反応に使用した市販フコース結合性レクチン量と未反応の市販フコース結合性レクチン量が同じであったことから、市販フコース結合性レクチンはマレイミド化トヨパールHW−65Fに固定化されていないことが明らかとなった。従って、吸着剤7へのフコース含有糖鎖およびオリゴマンノース型糖鎖の吸着率の測定は行わなかった。
【0098】
実施例8 ハロアセチル基を導入した担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化および吸着剤としての評価(その1)
実施例8は、ハロアセチル基を導入した合成高分子系担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化と、吸着剤としての評価に関する。
【0099】
(1)ハロアセチル基を導入した合成高分子系担体の作製
合成高分子系担体として、水に懸濁したトヨパールHW−65F(東ソー社製)をグラスフィルターで吸引ろ過したものを使用し、実施例4の(1)に記載の方法により、アミノ化トヨパールHW−65Fを得た。
【0100】
次に、得られたアミノ化トヨパールHW−65F(2.0g)、DMSO(関東化学社製、2.0mL)、ブロモ酢酸N−スクシンイミジル(東京化成社製)とDMSOから調製した3−マレイミドプロピオン酸N−スクシンイミジルのDMSO溶液(濃度10mg/mL、2.0mL)を混合し、35℃で4時間撹拌することにより、ブロモアセチル化反応を行なった。反応後、グラスフィルターを使用してDMSOと水で順次洗浄することにより、ブロモアセチル基を導入したトヨパールHW−65F(以下、ブロモアセチル化トヨパールHW−65F)を得た。
【0101】
(2)ハロアセチル基を導入した合成高分子系担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化(吸着剤8の作製)
実施例6の(1)に記載の方法により、(1)で作製したブロモアセチル化トヨパールHW−65Fにシステインタグを付加したフコース結合性レクチンを固定化した、フコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着剤8を得た。実施例4の(2)に記載の方法により、吸着剤8へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化量を算出した結果、固定化量は担体1mLあたり1.10mg、固定化率は48.9%であった。
【0102】
(3)吸着剤8へのフコース含有糖鎖の吸着率の測定
実施例4の(3)に記載の方法により、(2)で作製した吸着剤8へのフコース含有糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は89%であった。
(4)フコース含有糖鎖が吸着した吸着剤2からのフコース含有糖鎖の回収率の測定
実施例4の(4)に記載の方法により、(3)でフコース含有糖鎖を吸着させた吸着剤8からのフコース含有糖鎖の回収率を算出した結果、回収率は86%であった。
(5)マレイミド基を導入した多糖系担体へのフコース含有糖鎖の吸着率の測定
実施例6の(5)に記載の方法により、(1)で作製したブロモアセチル化トヨパールHW−65Fのブロモアセチル基をα−チオグリセリンでブロッキングした吸着剤8Bを得た。実施例4の(3)に記載の方法により、吸着剤8Bへのフコース含有糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は4%であった。従って、吸着剤8Bにはフコース含有糖鎖は吸着しないことが明らかとなった。
【0103】
(6)吸着剤8へのオリゴマンノース型糖鎖の吸着率の測定
実施例4の(6)に記載の方法により、(2)で作製した吸着剤8へのオリゴマンノース型糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は5%であった。従って、吸着剤8にはフコースを含まないオリゴマンノース型糖鎖は吸着しないことが明らかとなった。
【0104】
実施例9 ハロアセチル基を導入した担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化および吸着剤としての評価(その2)
実施例9は、ハロアセチル基を導入した多糖系担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化と、吸着剤としての評価に関する。
【0105】
(1)ハロアセチル基を導入した多糖系担体の作製
多糖系担体として、水に懸濁したSepharose4FFをグラスフィルターで吸引ろ過したものを使用し、実施例8の(1)に記載の方法により、ブロモアセチル基を導入したSepharose4FF(以下、ブロモアセチル化Sepharose4FFという)を得た。
(2)ハロアセチル基を導入した多糖系担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの担体への固定化(吸着剤9の作製)
実施例8の(1)に記載の方法により、(1)で作製したブロモアセチル化Sepharose4FFにシステインタグを付加したフコース結合性レクチンを固定化したフコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着剤9を得た。実施例4の(2)に記載の方法により、吸着剤9へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化量を算出した結果、固定化量は担体1mLあたり1.21mg、固定化率は53.8%であった。
(3)吸着剤9へのフコース含有糖鎖の吸着率の測定
実施例4の(3)に記載の方法により、(2)で作製した吸着剤9へのフコース含有糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は94%であった。
(4)フコース含有糖鎖が吸着した吸着剤6からのフコース含有糖鎖の回収率の測定
実施例4の(4)に記載の方法により、(3)でフコース含有糖鎖を吸着させた吸着剤9からのフコース含有糖鎖の回収率を算出した結果、回収率は91%であった。
【0106】
(5)マレイミド基を導入した多糖系担体へのフコース含有糖鎖の吸着率の測定
実施例6の(5)に記載の方法により、(1)で作製したマレイミド化Sepharose4FFから、マレイミド基をα−チオグリセリンでブロッキングした吸着剤9Bを得た。実施例4の(3)に記載の方法により、吸着剤9Bへのフコース含有糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は4%であった。従って、吸着剤9Bにはフコース含有糖鎖は吸着しないことが明らかとなった。
(6)吸着剤9へのオリゴマンノース型糖鎖の吸着率の測定
実施例4の(6)に記載の方法により、(2)で作製した吸着剤9へのオリゴマンノース型糖鎖の吸着率を算出した結果、吸着率は4%であった。従って、吸着剤9にはフコースを含まないオリゴマンノース型糖鎖は吸着しないことが明らかとなった。
【0107】
比較例4 ハロアセチル基を導入した担体へのシステインタグを付加していないフコース結合性レクチンの固定化および吸着剤としての評価
比較例4は、ハロアセチル基を導入した合成高分子系担体への市販フコース結合性レクチンの固定化と、吸着剤としての評価に関する。
【0108】
(1)ハロアセチル基を導入した合成高分子系担体への市販フコース結合性レクチンの担体への固定化(吸着剤10の作製)
比較例3の(1)に記載の方法により、実施例8の(1)で作製したブロモアセチル化トヨパールHW−65Fに市販フコース結合性レクチンを固定化した、フコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着剤10を得た。実施例4の(2)に記載の方法により、吸着剤10への市販フコース結合性レクチンの固定化量を算出した結果、反応に使用した市販フコース結合性レクチン量と未反応の市販フコース結合性レクチン量が同じであったことから、市販フコース結合性レクチンはブロモアセチル化トヨパールHW−65Fに固定化されていないことが明らかとなった。従って、吸着剤10へのフコース含有糖鎖およびオリゴマンノース型糖鎖の吸着率の測定は行わなかった。
【0109】
参考例1 ホルミル基を導入した担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化および吸着剤としての評価
参考例1は、リジンのε−アミノ基を利用した、ホルミル基を導入した合成高分子系担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化と、吸着剤としての評価に関する。
【0110】
(1)ホルミル基を導入した合成高分子系担体の作製
合成高分子系担体として、水に懸濁したトヨパールHW−65F(東ソー社製)をグラスフィルターで吸引ろ過したものを使用し、実施例4の(1)に記載の方法により、エポキシ化トヨパールHW−65Fを得た。
【0111】
得られたエポキシ化トヨパールHW−65F(2.0g)と、D−グルカミン(東京化成社製)と水から調製した0.5MのD−グルカミン水溶液(4.0mL)を混合し、40℃で15時間撹拌することにより担体にD−グルカミンを導入した。反応後、グラスフィルター上でろ液が中性になるまで多量の水で洗浄することにより、D−グルカミン導入トヨパールHW−65Fを得た。
次に、得られたD−グルカミン導入トヨパールHW−65F(2.0g)と、過ヨウ素酸ナトリウム(関東化学社製)と水から調製した過ヨウ素酸ナトリウム水溶液(10mg/mL、1.5mL)、水(1.5mL)を混合し、25℃で60分間撹拌することによりホルミル化反応を行なった。反応後、グラスフィルターを使用して多量の水で洗浄することにより、ホルミル基を導入したトヨパールHW−65F(以下、ホルミル化トヨパールHW−65F)を得た。
【0112】
(2)ホルミル基を導入した合成高分子系担体へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化(吸着剤11の作製)
(1)で作製したホルミル化トヨパールHW−65Fの50容積%懸濁液(200μL)を反応容器に添加し、500mMの塩化ナトリウムと20mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む200mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0、200μL)で5回洗浄した。
【0113】
ホルミル化トヨパールHW−65F(100μL)が入った反応容器に、担体1mLあたりのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの仕込み量を2.24mgとして、前述の実施例2で作製したシステインタグを付加したフコース結合性レクチンのD−PBS(−)溶液(濃度2.80mg/mL、80μL)とD−PBS(−)(20μL)を添加し、30℃で1時間撹拌した。次に、水素化ホウ素ナトリウム(関東化学社製)と水から調製した水素化ホウ素ナトリウム水溶液(5mg/mL、10μL)を添加し、さらに30℃で1時間撹拌することにより、システインタグを付加したフコース結合性レクチンをホルミル化トヨパールHW−65Fに固定化した。固定化反応後、担体を0.05重量%のTween20を含むD−PBS(−)で洗浄することにより、システインタグを付加したフコース結合性レクチンをホルミル化トヨパールHW−65Fに固定化したフコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着剤11を得た。
【0114】
実施例4の(2)に記載の方法により、吸着剤11へのシステインタグを付加したフコース結合性レクチンの固定化量を算出した結果、反応に使用したシステインタグを付加したフコース結合性レクチン量と未反応のシステインタグを付加したフコース結合性レクチン量が同じであったことから、システインタグを付加したフコース結合性レクチンはホルミル化トヨパールHW−65Fに固定化されていないことが明らかとなった。従って、吸着剤11へのフコース含有糖鎖およびオリゴマンノース型糖鎖の吸着率の測定は行わなかった。
【0115】
実施例4から実施例9、比較例1から比較例4および参考例1における担体へのフコース結合性レクチンの固定化の結果を表1に示す。
また、実施例4から実施例9および比較例2で作製した吸着剤の、フコース含有糖鎖および/または複合糖質の吸着剤としての評価結果を表2に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】