【実施例1】
【0030】
以下、本発明の実施例を、
図1を用いて説明する。
図1は本発明の実施例に係るプラズマ処理装置を示す図であり、特に本実施例ではマイクロ波ECR(Electron Cyclotron Resonance)エッチングを行うプラズマ処理装置である。
【0031】
図1は、本発明の実施例に係るプラズマ処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。この図において、本発明の実施例に係るプラズマ処理装置は、基板状の処理対象の試料であるウエハ11が載せられて保持される試料台10が配置されプラズマが形成されてウエハ11が処理される処理室4を内部に備えた真空容器1と、その下方に配置され処理室4内部を排気するターボ分子ポンプ20を備えた排気装置部と、真空容器1外部で処理室4の上方及びその周囲を囲んで配置され処理室4内に供給されるプラズマ形成用の電界または磁界を発生するプラズマ形成部とを備えて、ウエハ11をエッチング処理して半導体デバイスを製造する工程を行う半導体製造装置である。
【0032】
本実施例のプラズマ処理装置の真空容器1は、円筒形またはこれと見なせる程度の近似した形状を有してその円筒形の側壁と、その上方に開閉可能に配置された蓋部材であって円板形状を有し電界または磁界を透過可能な誘電体により構成された誘電体窓3(例えば石英製)を備えている。誘電体窓3と側壁の上端部とは、これらの間にOリング等のシール部材を挟んで接続され、誘電体窓3が接続された状態で真空容器1内部の処理室4内外が気密に封止されて保持され、真空容器1が誘電体窓3をその上部を構成する一部材として構成される。
【0033】
誘電体窓3の下方には、この真空容器1内部の処理室4の天井面を構成して、処理室4内に上方から処理用のガスを供給するための貫通孔が複数個配置された円板形状を有した誘電体製(例えば石英、またはイットリア等のセラミクスを含む材料製)の板部材であるシャワープレート2が配置されている。シャワープレート2と誘電体窓3との間には、貫通孔から処理室4内に供給される処理用ガスが供給され拡散、分散して充満するバッファ用空間が配置されている。
【0034】
このバッファ用の空間の内部はプラズマ処理装置に処理用ガスを供給するガス供給装置16と連結され、当該ガス供給装置16から供給されたエッチング処理用のガスが真空容器1に接続されたガス供給管を含むエッチングガスライン22を介して内部を通流する。また、ガス供給ユニット16からシャワープレート2を経由して減圧処理室へ処理用ガスを供給するエッチングガスライン22とチャンバ導入ガスライン25の間にガス切り替えユニット100が備えられている。真空容器1の下方には可変コンダクタンスバルブ18とターボ分子ポンプ20とドライポンプ19が配置され、真空容器1内の処理室4の底面に配置された真空排気口5を介し処理室4と連通されている。
【0035】
プラズマを生成するための電力を処理室4に伝送するため、誘電体窓3の上方には電磁波を放射する高周波導入手段として導波管6(またはアンテナ)が配置されている。
【0036】
導波管6は、その上下方向に延在した導波管6の円筒形の管状部分は上端部において水平方向に延在する断面矩形状の管状部分の一端部と連結されて向きが変えられ、さらに断面矩形状の管状部分の他端側には導波管6内へ伝送される電磁波を発振して形成するための電磁波発生用電源8が配置されている。この電磁波の周波数は特に限定されないが、本実施例では2.45GHzのマイクロ波が用いられる。
【0037】
処理室4の外周部であって誘電体窓3の上方及び真空容器1の円筒状部分の側壁の外周側には、磁場を形成する磁場発生コイル9が配置され、電磁波発生用電源8より発振されて導波管6及び、空洞共振器7、誘電体窓3、シャワープレート2を介して処理室4内に導入された電界は、直流電流が供給されて磁場発生コイル9により形成され処理室4内に導入された磁場との相互作用により、エッチングガスの粒子を励起して処理室4内のシャワープレート2の下方の空間にプラズマを生成する。また、本実施例では処理室4内の下部であってシャワープレート2の下方にはその下面に対向して配置された試料台10が配置されている。
【0038】
試料台10は、本実施例では略円筒形状を有してその上面であって処理対象のウエハ11が載せられる面には溶射によって形成された誘電体製の膜(図示省略)が配置されており、その誘電体の膜内部に配置された膜状の少なくとも1つの電極には高周波フィルター14を介して直流電源15が接続されて直流電力が供給可能に構成されている。さらに、試料台10の内部には、円板形状の導体製の基材が配置されておりマッチング回路12を介して高周波電源13が接続されている。
【0039】
なお、本実施例のプラズマ処理装置は、上記真空容器1、排気装置部、プラズマ形成部を構成する部分、ガス切り替えユニット100、マッチング回路12、高周波電源13等の部分と信号の送受信を可能に接続された図示しない制御部を備えている。本実施例のプラズマ処理装置では、以下に説明するウエハ11をエッチング処理する工程において、制御部内のハードディスクやCD−ROM、RAMまたはROM等の記憶装置内に記憶されたソフトウエアが読み出されてこれに記載されたアルゴリズムに基いて半導体製のマイクロプロセッサ等の演算器の動作により算出された指令信号がこれらの各部分に送信されてこれらの動作が調節され、ウエハ11のエッチング処理が実施される。制御部は、このような記憶装置、演算器と送受信のためのインターフェースとが通信可能に接続されたユニットであって、1つまたは複数のデバイスから構成されていても良い。
【0040】
このようなプラズマ処理装置において、樹脂材を用いたマスク層を含む複数の膜層が積層された膜構造が上面に予め形成されたウエハ11は、当該膜構造の処理対象の膜層が処理されていない未処理の状態で、処理室4内部に搬送されて、試料台10上面上に保持され、当該処理室4内に形成されたプラズマが用いられて処理対象の膜層がエッチング処理される。より詳細には、未処理のウエハ11は、図示されていない真空容器1の側壁に連結され減圧された搬送室の内部にロボットアーム等の搬送手段が配置された真空搬送容器の当該搬送室を搬送されて、真空容器1側壁に配置された貫通孔であるゲート内部を通して処理室4内に搬入される。
【0041】
搬送手段上に保持された未処理のウエハ11は、試料台10内に配置された試料台10上面上方に突出した複数のピン上端上に載せられて受け渡される。ロボットアーム等の搬送手段が処理室4から搬出して図示しないゲートバルブがゲートを気密に閉塞した状態で、ピンが試料台10内部に降下して収納され試料台10上面に受け渡されたウエハ11は、直流電源15から印加される直流電圧の静電気力で試料台10上面上に吸着される。
【0042】
次に、ガス供給ユニット16から所定の処理用ガスであるエッチングガスが処理室4内に供給され、圧力計17で処理室4内部の圧力を検出した結果がフィードバックされて可変コンダクタンスバルブ18の動作が調節され処理室4内部が処理に適した圧力に調節される。この状態で、電界及び磁界が処理室4内に供給されて試料台10及びシャワープレート2との間の処理室4内の空間に供給された処理用ガスの原子または分子が解離、電離されて処理室4内にプラズマが形成される。プラズマが形成された状態で、試料台10には高周波電源13から所定の周波数の高周波電力が印加されウエハ11上方にバイアス電位が形成され、当該バイアス電位とプラズマの電位との間の電位差に応じてプラズマ中の荷電粒子がウエハ11表面に誘引されてウエハ11表面上の膜構造と衝突して処理対象の膜がエッチング処理される。
【0043】
本実施例のエッチング処理では、処理の開始後の時間の経過に伴って、ウエハ11上面上の膜構造の少なくとも1つの処理対象の膜層を異なる処理の条件でエッチング処理する複数の工程が切り替えられて実施される。さらに、本例では、時間の経過上の前後の2つの工程(処理ステップ)の各々の間に、前の工程での処理のものから後の工程での処理のものに処理の条件が変更される移行用の工程(移行ステップ)を少なくとも1つ有した処理の工程が実施される。
【0044】
このような膜構造の処理が所定時間行われて処理の終点が検出されると、バイアス電位形成用の高周波電源からの高周波電力の試料台10内部の円板形状の電極への供給は停止されて、エッチング処理が停止される。この後、静電気力による吸着が除電されて解除される。その後、試料台10内部に収納された複数のピンが駆動されて上方に移動して、複数ピンの上端上に載せられたウエハ11が試料台10上面からその上方に遊離されて保持される。この状態で、ゲートバルブが動作し開放されたゲートを通して再度処理室4内に進入した搬送装置上面上方に処理済みのウエハ11が受け渡され、搬送装置が処理室4外に退出してウエハ11が外部に搬出され、ゲートが再閉塞される。
【0045】
次に、本実施例のプラズマ処理装置に具備されたガス切り替え機構を有するガス切り替えユニット100について説明する。
【0046】
本実施例のガス切り替えユニット100には、ガス供給ユニット16と真空容器1との間を接続する第1のガス供給ラインであるエッチングガス供給ライン22と、このエッチングガス供給ライン22上に備えられた第1のバルブ101及び第1バルブ101とを備えている。さらに、エッチングガス供給ライン22から分岐して処理室4の排気用のターボ分子ポンプ20とその排気口からの流れの下流側に配置された粗引き用のドライポンプ19入口との間を接続する排気ライン21との間を接続して配置された第1の捨てガスライン23と、第1のバルブ101及びガス供給ユニット16の間のエッチングガス供給ライン22と第1の捨てガスライン23との間を接続する第1のバイパスライン104と、その第1のバイパスライン上に備えられた第2のバルブ102とを備えている。
【0047】
更にまた、エッチングガス供給ライン22から分岐して排気ライン21との間を接続して配置された第2の捨てガスライン24と、第1のバルブ101及びガス供給ユニット16との間のエッチングガス供給ライン22と第2の捨てガスライン24との間を接続する第3のバイパスライン105と、第3のバイパスガスライン105上に備えられた第3のバルブ103とが配置されている。第1の捨てガスライン23,第2の捨てガスライン24は、エッチングガス供給ライン22上を流れる処理用ガスをドライポンプ19を通してプラズマ処理装置外部に排出するためのラインである。
【0048】
また、ガス切り替えユニット100は、移行ステップにおいて処理室4内にアルゴン等の希ガスあるいは不活性ガスを供給する第1移行ステップガス供給源117と、この第1移行ステップガス供給源117から供給される第1の移行ステップガスが内部を通流して第1移行ステップガス供給源117とエッチングガス供給ライン22との間を接続する第2のガス供給ライン110と、第2のガス供給ライン110上に配置され第1の移行ステップガスの流量または速度を調節する第1の移行ステップガス用マスフローコントローラー116とを備えている。第2のガス供給ライン110は、第1のバルブ101とチャンバ導入ガスライン25との間でエッチングガス供給ライン22に接続されている。
【0049】
さらに、第2のガス供給ライン110上に備えられた第4のバルブ111と、第2のガス供給ライン110から供給される第1の移行ステップ用ガスをドライポンプ19へと排気するために、第2のガス供給ライン110と第1の捨てガスライン23との間を接続する第3のバイパスライン114と、その第3のバイパスライン114上に備えられた第5のバルブ112とを備えている。更に、第1移行ステップガス供給源117から供給される第1の移行ステップガスをドライポンプ19へと排気するために、第2のガス供給ライン110と第2の捨てガスライン24との間を接続する第4のバイパスライン115と、その第4のバイパスガスライン115上に備えられた第6のバルブ113を備えている。
【0050】
また、移行ステップにおいて処理室4内にアルゴン等の希ガスあるいは不活性ガスを供給する第2移行ステップガス供給源127と、この第2移行ステップガス供給源127から供給される第2の移行ステップガスが内部を通流して第2移行ステップガス供給源127とエッチングガス供給ライン22との間を接続する第3のガス供給ライン120と、第3のガス供給ライン120上に配置され第2の移行ステップガスの流量または速度を調節する第2の移行ステップガス用マスフローコントローラー126とを備えている。第3のガス供給ライン120は、第1のバルブ101とチャンバ導入ガスライン25との間でエッチングガス供給ライン22に接続されている。
【0051】
さらに、第3のガス供給ライン120上に備えられた第7のバルブ121と、第3のガス供給ライン120から供給される第2の移行ステップ用ガスをドライポンプ19へと排気するために、第3のガス供給ライン120と第1の捨てガスライン23との間を接続する第5のバイパスライン124と、その第5のバイパスライン124上に備えられた第8のバルブ122とを備えている。更に、第2移行ステップガス供給源127から供給される第2の移行ステップガスをドライポンプ19へと排気するために、第3のガス供給ライン120と第2の捨てガスライン24との間を接続する第6のバイパスライン125と、その第6のバイパスガスライン125上に備えられた第9のバルブ123を備えている。
【0052】
また、ガス切り替えユニット100には、上記のガスライン各々上に圧力計が配置されており、チャンバ導入ガスライン25上にはチャンバ導入ガスライン用圧力計106が、第1の捨てガスライン23には第1の捨てガスライン用圧力計131が、第2の捨てガスライン24には第2の捨てガスライン用圧力計141が配置されている。
【0053】
また、第1の捨てガスライン23上に可変コンダクタンスバルブ132が、第2の捨てガスライン24上には可変コンダクタンスバルブ142が各々配置されている。これらの可変コンダクタンスバルブ132,142各々は、第1の捨てガスライン用圧力計131、第2の捨てガスライン用圧力計141の各々が検出した値がチャンバ導入ガスライン用圧力計106が検出した値と同じ値になるように、そのバルブの開度によるラインを構成する配管内の流路断面積や流路の形状等のコンダクタンスを増減して、流量やその速度を調節する動作を行う。なお、第1の捨てガスライン23、第二の捨てガスライン24の各々に供給されたガスは、排気ライン21を通してドライポンプ19によりプラズマ処理装置外部に排出される。
【0054】
次に、本実施例のプラズマ処理装置が備えるマッチング回路12について
図2を用いて説明する。
図2は、
図1に示す実施例が備えるマッチング回路の構成の概略を模式的に示すブロック図である。
【0055】
この図のように、本例のマッチング回路12は、高周波電源13と試料台10に内蔵された導体製の電極との間を接続する給電経路上に配置され、高周波電源13に近い順に、インピーダンスコントローラー26と、第1のマッチング用可変素子27と、第2のマッチング用可変素子28とが電気的に接続されて構成されている。また、マッチング回路12は、インピーダンス外部指示器29とスイッチを介して接続されている。
【0056】
当該スイッチは、第1のマッチング用可変素子27と第2のマッチング用可変素子28との各々とインピーダンス外部指示器29との間の電気的な接続を遮断、接続する。さらに、マッチング回路12内にもインピーダンスコントローラー26とインピーダンス外部指示器29との間でこれらの電気的接続を遮断、接続するスイッチを備えている。
これらのスイッチによる切替えによって、インピーダンスコントローラー26とインピーダンス外部指示器29を切り替えることができる。インピーダンスコントローラー26に接続している場合は、インピーダンスコントローラー26がインピーダンスの偏差をモニタしながら、マッチング出来るように第1のマッチング用可変素子27と第2のマッチング用可変素子28を調節する。インピーダンス外部指示器29に接続している場合は、インピーダンス外部指示器29により任意の値になるように第1のマッチング用可変素子27と第2のマッチング用可変素子28を調節する。このスイッチによる切り替えは、高周波電源13をOFFした際に切り替えることができる。
【0057】
次に、本実施例が実施するエッチング処理の工程について
図3,4を用いて説明する。
図3は、
図1に示す実施例が実施するエッチング処理の複数の工程の各々における条件の一部を示した表である。
図4は、
図3に示す工程の動作の流れを示すグラフである。
【0058】
上記のように、本実施例では、処理対象の少なくとも1つの膜層を処理する前後の2つの処理ステップの間に、これらのステップで異なる条件が前のものから後のものの値に変更される移行ステップを備えている。特に、この移行ステップは移行ステップ1、移行ステップ2の2つに分けられて前者から後者に引き続いて実施される。
【0059】
移行ステップ1では、処理の条件のうち、電磁波発生用電源8から供給されるマイクロ波の電界を形成するための電力(マイクロ波電力)、磁場発生コイル9に供給される磁界を形成するための電流(磁場コイル電流)および処理室4内部の圧力(処理室圧力)は、その値が前の処理ステップである処理ステップAにおける条件のものに維持される。すなわち、移行ステップ1において、試料台10に供給されるバイアス形成用の電力(ウエハバイアス電力)は供給が停止され(OFFにされ)る。さらに、チャンバ導入ガスライン25を通流するガスは、アルゴンガスもしくは不活性ガスに切り替えられ、その流量は処理ステップAの処理用ガスと同じにされる。
【0060】
次に行われる、移行ステップ2においては、処理の条件のうち、ウエハバイアス電力は停止された(OFF)状態が維持され、マイクロ波電力、磁場コイル電流、処理室圧力の値の各々は処理ステップBの処理の条件のものに変更される。さらに、チャンバ導入ガスライン25を通流するアルゴンガスもしくは不活性ガスの流量は、処理ステップBの処理用ガスと同じ値になるように変更される。
【0061】
このように、移行ステップ1,2の間で、マイクロ波電力、磁場コイル電流、処理室圧力、処理室4に供給されるガスの流量等の処理の条件の値が当該移行ステップの前後の処理ステップの前の条件の設定から後のものに変更されることにより、マイクロ波電力の大きさが変更されてマッチングされるまでの時間、磁場コイル電流及び処理室圧力の値が変更されて安定するまでの時間が低減され、処理のスループットが向上する。さらには、上記設定値の変更の指令信号が受信されて変更が開始されてから実際の条件の値の変更が終了する、あるいはその値が変動の所定の許容範囲内の大きさになる、所謂過渡応答の時間における各条件の当該過渡応答のプロファイルの再現性が向上し、このような過渡応答の機差が低減され、処理の歩留まりが向上する。さらにまた、ウエハバイアス電力のマッチングについては、ウエハバイアス電力がOFFの状態で維持されている移行ステップ2において第1のマッチング用可変素子27と第2のマッチング用可変素子28との各々を処理ステップBにおける整合値を予め取得しておき当該整合値に処理ステップB開始前に合わせておくことにより、過渡応答の影響が抑制される。
【0062】
次に、
図3に示した各ステップにおけるガス切り替えユニット100内部のガスの流れについて、
図5乃至8を用いて説明する。これらの図では、不活性ガスとしてアルゴン(Ar)が用いられ、第1の移行ステップガス用マスフローコントローラー116から供給されるアルゴンガスをアルゴンガス1(Ar1)、第2の移行ステップガス用マスフローコントローラー126から供給されるアルゴンガスをアルゴンガス2(Ar2)として示される。また、これらの図で示されるステップが実施されるウエハ11のエッチング処理における第1の捨てガスライン23を通過するガス流量、第2の捨てガスライン24を通過するガス流量の値の変化は
図3に、処理の動作の流れは
図4に示される。
【0063】
図5に、処理ステップAのガス切り替えユニット100内部のガス流れを示す。
図5は、
図1の実施例に係るプラズマ処理装置が実施する処理ステップAにおけるガスの流れを模式的に示す図である。
【0064】
本図において、処理ステップAの開始に際し、図示しない制御部からの指令信号に基づいて、エッチングガス供給ライン22上の第1のバルブ101が開かれ、ガス供給ユニット16から当該ステップの条件Aにおいて用いられる処理用ガスとしてのエッチングガスが、ガス供給ユニット16内に配置されたマスフローコントローラーによって流量あるいは速度が条件Aのものになるように調節されて、チャンバ導入ガスライン25を介して処理室4に供給される。この際、チャンバ導入ガスライン用圧力計106がチャンバ導入ガスライン25内の圧力を検知し、この検知結果が送信された制御部において圧力値が検出される。さらに、第1のバルブ101が開放される時刻と同時刻あるいは実質的にこれと見做せる程度に近似した時刻で、並行して第5のバルブ112が開かれて、第1の移行ステップガス用マスフローコントローラー116において当該条件Aのエッチングガスと同流量にされたアルゴンガス1(Ar1)が第2のガス供給ライン110と第3バイパスライン114とを介して第1の捨てガスライン23に供給される。
【0065】
また、第1のバルブ101の開放と実質的に同時刻で並行して第9のバルブ123が開かれ、第2の移行ステップガス用マスフローコントローラー126において処理ステップBにおける処理の条件である条件Bのエッチングガスと同じ流量に調節されたアルゴンガス2(Ar2)が第3のガス供給ライン120と第5バイパスラインとを介して、第2の捨てガスライン24に供給される。アルゴンガス1の第1の捨てガスライン23への供給の開始は、処理ステップAの期間中であって当該アルゴンガス1の流量または速度とが条件Aに等しくされるまでの時間が含むことが可能な時刻に開始され、処理ステップAの期間中は捨て第1のガスライン23におけるアルゴンガス1の流量または速度が条件Aのものに維持される。アルゴンガス2の第1の捨てガスライン24への供給の開始は、処理ステップAまたは移行ステップ1の期間中であって当該アルゴンガス2の流量または速度とが条件Bのものに等しくされるまでの時間が含むことが可能な時刻に開始され、処理ステップA及び移行ステップ1の期間中は捨て第2のガスライン24におけるアルゴンガス2の流量または速度が条件Bのものに維持される。
【0066】
すなわち、上記のアルゴンガス2の通流とともに、第1の捨てガスライン用圧力計131により第1の捨てガスライン23内の圧力が検知され、この検知の結果を示す信号が制御部に送信されて圧力が検出されて、検出結果に基いて制御部からの指令信号が可変コンダクタンスバルブ132に送信される。受信された指令信号に基づいた可変コンダクタンスバルブ132の動作より、第1の捨てガスライン23内のガス圧力がチャンバ導入ガスライン用圧力計106で検知され検出されたものと同じ値になるように調節される。同様に、第2の捨てガスライン用圧力計132により第2の捨てガスライン24内の圧力が検知され、制御部に送信されて圧力が検出され、制御部からの指令信号に基いて可変コンダクタンスバルブ142が駆動されることにより、第2の捨てガスライン24内の圧力がチャンバ導入ガスライン用圧力計106のものと同じ値になるように調節される。
【0067】
この状態で、処理ステップAが実施され、図示しない終点判定器が検知した終点を示す信号が制御部に送信されて終点が判定され、処理ステップAが停止される。さらに、制御部からの指令信号に基いて移行ステップ1が開始される。
【0068】
図6に、移行ステップ1のガス切り替えユニット100内部のガス流れを示す。
図6は、
図1の実施例に係るプラズマ処理装置が実施する移行ステップ1におけるガスの流れを模式的に示す図である。
【0069】
移行ステップ1の開始に際して、制御部からの指令に基いて、エッチングガス供給ライン22上の第1のバルブ101が閉塞され、第2のバルブ102が開放されて、条件Aにされたガス供給ユニット16からのエッチングガスが第1のバイパスライン104を介して第1の捨てガスライン23に供給される。これと実質的に同時に並行して、第5のバルブ112が閉じられ、第4のバルブ111が開かれて、第1の移行ステップガス用マスフローコントローラー116により流量または速度が条件Aのエッチングガスのものと同値または実質的にこれと見做せる同等の値となるように調節されたアルゴンガス1が第2のガス供給ライン110とこれに接続されたチャンバ導入ガスライン25を通して処理室4に供給される。
【0070】
このような状態が移行ステップ1の間維持されて、アルゴンガス1が第2のガス供給ライン110を通して処理室4に供給される。また、処理ステップ1の間において、第2の捨てガスラインの圧力計141の検知の結果が送信された制御部からの指令信号に基いて可変コンダクタンスバルブ142の動作が調節され、第二の捨てガスライン24の圧力が、第1のガス供給ライン用圧力計106が検知し検出されたものと同値または同等になるように調節される。移行ステップ2が開始されて予め定められた期間が経過したことが制御部により検出または判定されると、当該制御部からの指令信号に基づいて移行ステップ1が停止され移行ステップ2が開始される。
【0071】
図7に、移行ステップ2のガス切り替えユニット100内部のガス流れを示す。
図7は、
図1の実施例に係るプラズマ処理装置が実施する移行ステップ2におけるガスの流れを模式的に示す図である。
【0072】
本図において、移行ステップ2の開始に際して、制御部からの指令信号に基づいて、第4のバルブ111が閉塞され第6のバルブ113が開放されて、第1の移行ステップガス用マスフローコントローラー116を通して条件Aのエッチングガスと同じ値になるように流量、速度が調節されたアルゴンガス1が第2のガス供給ライン110と第4バイパスライン115とを介して第2の捨てガスライン24へ供給される。この際、制御部からの指令信号に基いて、可変コンダクタンスバルブ142の動作が調節され、第2の捨てガスライン24内の圧力はチャンバ導入ガスライン用圧力計106の検知結果から検出されたチャンバ導入ガスライン25のものと同値または実質的に同値になるように調節される。
【0073】
また、上記と同時刻または実質的に同時に並行して、第9のバルブ123が閉塞され第7のバルブ121が開放されて、第2の移行ステップガス用マスフローコントローラー126により処理ステップBにおける処理の条件である条件Bのエッチングガスの流量、速度と同値または実質的に同等になるようその流量、速度が調節されたアルゴンガス2(Ar2)が第2のガス供給ライン120とこれに接続されたチャンバ導入ガスライン25を介して処理室4に供給される。この際、第2の捨てガスライン24内の圧力は、第2の捨てガスライン用圧力計141からの検知結果を示す信号から制御部で検出された結果に応じた制御部からの指令信号に基いて、可変コンダクタンスバルブ142の動作が調節され、チャンバ導入ガスライン25内のものと同値または同等になるように調節される。
【0074】
また、移行ステップ2の開始または終了までの間に、制御部からの指令に基いて、ガス供給ユニット16から供給されるエッチングガスは、その流量あるいはその速度等の値は、条件Aから条件Bのものとなるように調節され変更される。この際、ガス供給ユニット16からのエッチングガスは、移行ステップ1と同じく第1の捨てガスライン23に供給されている。さらに、
図4に示すように、移行ステップ1において、処理ステップAの条件の値にされていた処理室圧力、マイクロ波電力は、移行ステップ2の開始時刻から終了時刻の間の期間に、処理ステップBのものに変更される。
【0075】
図8に処理ステップBのガス切り替えユニット100内部のガス流れを示す。
図8は、
図1の実施例に係るプラズマ処理装置が実施する処理ステップBにおけるガスの流れを模式的に示す図である。移行ステップ2が開始されて所定の時間が経過したことが制御部により検出あるいは判定されると、制御部からの指令信号がプラズマ処理装置の各部に発信されて移行ステップ2が停止されて処理ステップBが開始される。
【0076】
本図において、処理ステップBの開始に際して、制御部からの指令信号に基いて、第1のガス供給ライン22上の第2のバルブ102が閉じられ第1のバルブ101が開かれて、ガス供給ユニット16から条件Bの流量、あるいは速度の値と同等のものに調節されたエッチングガスがチャンバ導入ガスライン25を介して処理室4に供給される。また、これと同時刻または実質的に同時に並行して、第7のバルブ121が閉じられ第8のバルブ122が開かれて、第2の移行ステップガス用マスフローコントローラー126により処理ステップBの次の処理ステップCの処理の条件である条件Cにおいて用いられるエッチングガスの流量、速度と同値または実質的に同等の流量、速度になるように調節されたアルゴンガス2が第3のガス供給ライン120と第4バイパスライン124とを介して、第1の捨てガスライン23へ供給される。
【0077】
さらに、処理ステップBの間において、アルゴンガス1が処理ステップBのものと同値または同等になるように流量または速度が調節されて供給される第2の捨てガスライン24内の圧力は、第2の捨てガスライン用圧力計141の検知結果を用いて検出された値に応じた制御部からの指令信号に基いて可変コンダクタンスバルブ142の動作が調節されて、チャンバ導入ガスライン用圧力計106と同じ値になるように調節される。また、マイクロ波電力、ウエハバイアス電力等の他の処理の条件は条件Bのものとなるように制御部からの指令信号に基づいて調節されて、処理室4内にプラズマが形成され処理ステップBのエッチング処理が、終点判定器の検知結果から処理の終点への到達が制御部で検出されるまで実施される。
【0078】
処理ステップBの後に処理ステップC及びこれへの移行ステップがある場合には、上記と同等に、前の処理ステップと条件が同等となるように調節され希ガスが供給される移行ステップ1と後の処理ステップと条件が同等となるように調節され希ガスが導入される移行ステップ2を挟んで、必要な限り処理ステップが実施される。
【0079】
上記の構成を備えたプラズマ処理装置によって、処理の条件を異ならせた複数の処理ステップが実施されるウエハ11の処理において、処理の条件が変更されて安定するまでの時間が低減され、処理のスループットが向上する。さらには、上記変更の指令信号が受信されて変更が開始されてから実際の条件の値の変更が終了する、あるいはその値が変動の所定の許容範囲内の大きさになる、所謂過渡応答の時間における各条件の当該過渡応答のプロファイルの再現性が向上し、このような過渡応答の機差が低減され、処理の歩留まりが向上する。
【0080】
なお、上記の実施例において、排気ライン21内の圧力は、これに一方の端部が接続される第1、第2の捨てガスライン23,24内部の圧力、すなわちチャンバ導入ガスライン25内の圧力と比べて著しく小さくされ、且つ排気の流量や速度は処理室4内の圧力を条件A,Bに維持可能にされている。このため、第1、第二の捨てガスライン23,24からのガスが所定の流量、速度で流入されたとしても、これらのガスライン内部の圧力や流量、速度に大きな変動を生起することは抑制される。
【0081】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、
図6,7で説明した上記の移行ステップ1,2においては、処理室4内にアルゴンガス1及び2を用いてプラズマが形成され、ウエハバイアス電力は停止され、ウエハ11の処理の進行が抑制されている。一方、移行ステップ1,2においてはプラズマが消火されて処理が停止されても良く、マイクロ波電力はその設定値のみが変更されて導波管6を通して処理室4内に導入されていなくても良い。
【0082】
また、上記の実施例では、エッチングガス供給ライン22、第2のガス供給ライン110及び第2のガス供給ライン120と、チャンバガス導入ライン25、第1の捨てガスライン23及び第2の捨てガスライン24との間の各々には、2つのバイパスラインと3つのバルブとが配置され、各々が制御部からの指令信号に応じて、各ラインの開放と気密の閉塞とが行われて、チャンバガス導入ライン25と各供給ラインとの連通と各供給ラインと各捨てガスラインとの連通が切り替えられる構成が備えられている。これらの3つのバルブをより少ない数のバルブ、例えば4方弁等が用いられていても良い。この場合、エッチングガス供給ライン22、第2のガス供給ライン110及び第2のガス供給ライン120の少なくとも何れか1つは、このような弁に加えて各供給ラインとチャンバガス供給ライン25との間に3つの供給ラインの各々のガス通流の開放と気密の閉塞とを行うバルブが備えられていても良い。
【0083】
さらに、処理ステップAと処理ステップBとでは用いるエッチングガスは、用いられる物質の種類、組成が異なるものが用いられてもよく、同じ種類及び組成で流量または速度が異なる条件であっても、種類、組成の一方のみが異なるものであっても良い。また、用いる希ガスの種類は、移行ステップ1,2で異なるものであっても良い。上記した実施例は本発明を分りやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。