(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光反応の対象となる試料ガスの供給を受ける容器と、該容器の内部に収容されて対向して配設した複数の凹面ミラーを有し、前記容器内にレーザ光を入射し、該入射したレーザ光を前記凹面ミラー間で複数回反射させて光反応を行う多重反射セルであって、
前記凹面ミラーの反射面付近にあるガスを吸い込んで前記容器外へと排気する吸込排気手段を備えたことを特徴とする多重反射セル。
請求項1又は2に記載の多重反射セルと、オゾンを主成分とする原料ガスの供給を受けて、該原料ガスに含まれる酸素ガスを除去してオゾンガスを精製するオゾン精製手段を備え、該精製したオゾンガスを試料ガスとして前記容器に供給して光反応により酸素の同位体を濃縮する同位体濃縮装置であって、
前記吸込排気手段により排気された前記ガスを前記オゾン精製手段に戻すようにしたことを特徴とする同位体濃縮装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施の形態1]
本発明の実施の形態1に係る多重反射セル1は、
図1に示すように、光反応の対象となる試料ガスの供給を受ける容器3と、容器3の内部に収容されて対向して配設した2枚の凹面ミラー5及び7を有し、容器3内にレーザ光を入射し、該入射したレーザ光を凹面ミラー5及び7の間で複数回反射させて光反応を行うものであって、凹面ミラー5の反射面5a及び凹面ミラー7の反射面7aの付近にあるガスを吸い込んで容器3外へと排気する吸込排気手段としてガス吸込ノズル9及び排気配管11を備えたものである。
【0016】
以下、多重反射セル1の各構成を詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示されている場合があるが、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0017】
<容器>
容器3は、筒状のものであり、内部に凹面ミラー5及び7を収容する。容器3には、レーザ光源13から出射したレーザ光が透過するレーザ透過窓15と、レーザ透過窓15を通して照射されたレーザ光を凹面ミラー7に向かって反射させるガイドミラー17が設けられている。
【0018】
容器3内において所定の回数反射したレーザ光は、ガイドミラー17に再び入射して反射した後、レーザ透過窓15を通して容器3外へと出射する。
図1に示す多重反射セル1においては、容器3から出射したレーザ光を検出する検出器19が設置されている。
【0019】
さらに、容器3には、ガス導入管21及びガス導出管23がそれぞれ接続し、光反応に供される試料ガスはガス導入管21を経て容器3内に導入され、光反応した後の試料ガスはガス導出管23を経て容器3外に導出される。
【0020】
本実施の形態1において、容器3には、外径300mm、厚さ4mm、長さ1000mmのSUS304製の鋼管を用いているが、容器3のサイズ及び材質はこれに限定されることではなく、任意に選択することができる。
また、レーザ透過窓15には直径34mm、厚さ2mmのコバール製を、ガイドミラー17には直径5mm、反射角度45度の合成石英製を用いているが、レーザ透過窓15およびガイドミラー17のサイズや材質はこれらに限定されるものではなく、任意に選択することができる。
【0021】
<凹面ミラー>
凹面ミラー5及び7は、凹形状の反射面5a及び7aをそれぞれ有し、入射したレーザ光を反射面5a及び7aにおいて複数回反射させるため、凹面ミラー5と凹面ミラー7が向かい合わせに対向して設けられている。
【0022】
本実施の形態1において、凹面ミラー5及び7は、直径200mm、厚さ23mmの合成石英製のものを用い、凹面ミラー5と凹面ミラー7との間の凹面ミラー間距離は760mmとした。また、凹面ミラー5及び7の反射率は99%である。
【0023】
なお、凹面ミラー5及び7は、球面ミラーに限らず、多重反射を構成するミラーであれば形状を制限するものではなく、シリンドリカルミラーや平板ミラーなどであってもよい。さらに、凹面ミラー5及び7の直径、厚さや凹面ミラー間距離についても上記に限定されるものではなく、任意の形状(直径、厚さ等)と距離を選択することができる。
【0024】
<ミラー固定部材>
ミラー固定部材25は、凹面ミラー5及び7の背面側を保持し、容器3に固定するものである。凹面ミラー5及び7は、ミラー固定部材25により位置(凹面ミラー間距離)及び向き(あおり方向、首振り方向)が固定された状態で容器3の内部に設置される。
ミラー固定部材25は、
図1に示すように、凹面ミラー5及び7それぞれの位置及び向きを厳密に調節するミラー調節機構27が接続されているものであることが好ましい。この場合、凹面ミラー5及び7それぞれの位置(ミラー間方向、鉛直方向)及び向き(あおり方向及び首振り方向)がミラー調節機構27により調節される。
【0025】
<ガス吸込ノズル>
ガス吸込ノズル9は、凹面ミラー5および7の反射面5aおよび7a付近にあるガスを吸い込むものであり、
図1に示すように、凹面ミラー5および7の反射面5aおよび7a側に設置され、排気配管11が接続されている。
ここで、反射面5aおよび7a付近にあるガスとは、容器3に供給された試料ガスと、該試料ガスの光反応により生成した生成ガスと、試料ガスが反射面5a及び7aに接触して主に熱分解反応により熱分解した熱分解ガスとを含むものである。
【0026】
ガス吸込ノズル9は、反射面5a及び7a付近にあるガスを効率よく吸い込むことができるように、その向きを適宜調節して変更可能に設置することが望ましい。
【0027】
図2に、ガス吸込ノズル9を反射面5a付近に設置した一例を示す。
図2において、ガス吸込ノズル9は、反射面5aの上下左右の4方向に配置されており、ガス吸込ノズル9の吸込口は、凹面ミラー5の中心軸方向に向けられている。
図2に例示するように、複数のガス吸込ノズル9を設置する場合、反射面5a付近のガスの吸込量に片寄りが生じないように、反射面5aの中心に対して点対称となるようにガス吸込ノズル9が設置されていることが望ましい。もっとも、ガスの吸込量をガス吸込ノズル9毎に個別に調整できる場合は、この限りではない。
【0028】
<排気配管>
排気配管11は、ガス吸込ノズル9により吸い込んだ反射面5a及び7a付近のガスを容器3外に排気するものである。
本実施の形態1において、排気配管11には、SUS304製のステンレス配管を用いたが、材質はこれに限定されるものではなく、試料ガスや光反応により生成した生成ガスに反応しない材質であれば、任意の材質を選択することができる。また、排気配管11の途中に、排気ガスの流量を制御するための調整弁(図示なし)が設けられていてもよい。
【0029】
次に、本発明に係る多重反射セルを用いたレーザ光反応方法について、
図1に示す多重反射セル1を用い、オゾンを原料ガスとして酸素同位体
18Oを光反応により濃縮する場合を例として、以下に説明する。
【0030】
まず、容器3の外部にレーザ光源13を設置する。本実施の形態1では、レーザ光源13として半導体レーザを用いた。ここで、レーザ光の強度は0.3Wとし、レーザ光の波長はオゾン中の同位体成分である
16O
16O
18Oのみを分解する992nmとした。
【0031】
次に、ミラー調節機構27が接続されているミラー固定部材25により、凹面ミラー5の反射面5aと凹面ミラー7の反射面7aとが対向するように、容器3内に固定する。
そして、凹面ミラー5および7の位置及び向きをミラー調節機構27により厳密に調節する。ここでは、凹面ミラー間距離を760mmに設定し、この時の凹面ミラー5及び7の間におけるレーザ光の反射回数は約160回である。
【0032】
そして、レーザ光源13からレーザ光を出射し、レーザ透過窓15を通して容器3の内部に導入する。容器3内に導入されたレーザ光は、ガイドミラー17により凹面ミラー7側に反射される。そして、凹面ミラー5及び7の間を所定回数(=約160回)反射したレーザ光は、再びガイドミラー17に入射してレーザ透過窓15に向かって反射し、レーザ透過窓15を通して容器3外へと出射する。
【0033】
凹面ミラー5及び7の間におけるレーザ光の反射回数は、凹面ミラー7の反射面7aに照射されたレーザ光のスポットパターンを図示しないカメラ等で撮影することにより計測することができる。
【0034】
撮影したスポットパターンにより凹面ミラー5及び7の位置及び向きが調節されていることを確認した後、レーザ光源13からのレーザ光の出射を停止する。そして、図示しない真空ポンプにより、ガス導出管23を経て容器3内を真空引きした後、光反応の原料ガスであるオゾンをガス導入管21から容器3内に導入する。
【0035】
同時に、ガス吸込ノズル9から反射面5a及び7a付近のガスを吸い込み、排気配管11を経て排気する。ここで、吸込口の形状が□3×200mmであるガス吸込ノズル9を凹面ミラー5及び7それぞれの上下に設置し、反射面5a及び7a付近のガスを均一に排気できるようにした。
【0036】
最後に、レーザ光源13からレーザ光を出射し、レーザ透過窓15を通してレーザ光を容器3に導入することで、オゾンの光反応を行う。
【0037】
このとき、凹面ミラー5の反射面5a及び凹面ミラー7の反射面7a付近のガスがガス吸込ノズル9と排気配管11により容器3外へ排気されることにより、反射面5a及び7a表面でのオゾンの熱分解により生成する熱分解ガスである酸素分子が、光反応により生成した生成ガスである酸素同位体
18Oを希釈することを防ぎ、酸素同位体
18Oの濃縮度を上げることができる。
【0038】
ここで、酸素同位体
18Oの濃縮度は、以下のように推算することができる。
酸素原子の同位体である
18Oを含むオゾン分子(
16O
16O
18O)に特定の周波数のレーザ光を照射したときの
18Oの濃縮は、以下の反応機構に従うことが知られている(特許文献2参照)。
【0039】
まず、
18Oを含むオゾン分子O
3(例えば
16O
16O
18O)にレーザ光が照射されると、式(1)のように、1個の酸素分子と1個の酸素原子に解離する。
O
3+ 「レーザ光照射」 → O
2 + O ・・・・・(1)
式(1)の反応で生成された酸素原子Oはエネルギーを得ているため、式(2)のように、周りに存在するオゾン分子O
3をいくつか分解する。
O + nO
3 → 0.5(1+3n)O
2 ・・・・・(2)
【0040】
式(2)において、nは巻き込み係数と呼ばれる。仮にn=5であった場合、レーザ光照射により1個のオゾン分子が分解されると、式(2)により5個のオゾン分子が分解されるため、式(1)と式(2)の反応により計6個のオゾン分子(
18Oの自然存在割合は約0.2%であることから、ほぼすべてが
16O
16O
16O)が分解され、9個の酸素分子O
2が生成する。
このとき、生成した9個の酸素分子に含まれる
18O濃度は、約5.6%となり、
18Oの自然存在割合(=約0.2%)との比較より、約28倍の濃縮効果に相当する。
【0041】
次に、レーザ光によるオゾン分子の分解量を試算する。
本発明の実施の形態に係る多重反射セル1を用いた酸素同位体
18Oの濃縮において、容器3内のオゾンの圧力を-60kPaG、温度を-60℃、レーザ光のエネルギーを0.3W、波長を992nm、
18Oの自然存在割合0.2%とし、これらの条件からレーザ光によるオゾン分子の分解量を試算すると、8.48×10
-9 [mol/sec]となる。ここで、凹面ミラー間距離は760mmである。
【0042】
式(2)における巻き込み係数がn=5であった場合、酸素分子O
2の製造量は、
8.48×10
-9×9=7.63×10
-8 [mol/sec] ・・・・・(3)
となる。
【0043】
一方、比較対象として、凹面ミラーの反射面付近のガスを排気しない従来の多重反射セルによる酸素同位体
18Oの濃縮効果を算出した。
凹面ミラーの反射率が99%である場合、1回目の反射で0.3Wのレーザ光のうち、
0.3×0.99=0.297 [W] ・・・・・(4)
が反射され、
0.3−0.297=0.003 [W] ・・・・・(5)
が、凹面ミラーでのロスとなる。
よって、凹面ミラー間で160回の反射が生じた場合におけるロスの総和は、
0.3×(1−0.99
160)=0.24 [W] ・・・・・(6)
となる。このロスの総和のうち、約25%が凹面ミラーの反射面において熱に変換される。
熱によりオゾン分子を分解するのに必要なエネルギーは101kJ/molであることから、凹面ミラーの反射面において熱分解するオゾンの量は、
0.24×0.25/(101×10
3)=5.94×10
-7 [mol/sec] ・・・・・(7)
となる。
【0044】
さらに、オゾンの熱分解により製造される酸素分子O
2の製造量を求めると、熱分解反応においてはオゾン分子1個から酸素分子は1.5個製造されることから、
5.97×10
-7×1.5=8.96×10
-7 [mol/sec] ・・・・・(8)
となる。
【0045】
よって、従来の多重反射セルを用いた場合における
18O濃度は、
(0.002×8.96×10
-7+0.056×7.63×10
-8)/(8.96×10
-7+7.63×10
-8)=0.0062=0.62% ・・・(9)
となる。
【0046】
これは、
18Oの自然存在割合である約0.2%と比較すると、約3倍の濃縮効果となる。
つまり、実施の形態1に係る多重反射セル1を用いてオゾンを光反応させて酸素同位体
18Oを濃縮する場合、凹面ミラー5及び7の反射面5a及び7a付近のガスを排気し、熱分解反応により生成した酸素分子による希釈を防止することにより、従来の多重反射容器を用いた場合と比較すると、5.6%/0.62%=約9倍の
18Oの濃縮効果が得られることが示唆される。
【0047】
なお、本発明に係る多重反射セルは、光反応により生成された同位体濃縮酸素ガスが、反射面での熱分解により発生した酸素ガスにより希釈されることを防ぐために、反射面付近のガスを吸い込んで排気するものであるが、反射面での熱分解により発生する同位体希釈酸素ガスの90%以上を排気するためには、排気流量は、容器に流入するオゾンの流量の1/20以上であることが望ましく、これよりも小さいと、同位体希釈酸素ガスと同位体濃縮酸素ガスとの混合が進んでしまう。
【0048】
さらに、本発明に係る多重反射セルは、吸込排気手段により排気されたガスを、別途設けた分離回収手段へ供給し、該分離回収手段により、排気されたガスから試料ガスを分離して回収し、該回収した試料ガスを容器に再度供給するようにしてもよい。
なお、分離回収手段としては、蒸留塔を使用することができる。
【0049】
また、上記の説明において、吸込排気手段は、ガス吸込ノズル9と排気配管11からなるものであったが、吸込排気手段は、ガス吸込ノズル9を備えていなくてもよく、この場合には、排気配管11の端部が凹面ミラー5及び7の反射面5a及び7aの付近に位置するように設置し、排気配管11の端部からガスを吸い込んで排気するようにすればよい。
【0050】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2に係る同位体濃縮装置について説明する。
本実施の形態2に係る同位体濃縮装置31は、
図3に示すように、実施の形態1に係る多重反射セル1と、オゾンを主成分とする原料ガスを供給する原料ガス供給手段33と、原料ガス供給手段33から原料ガスの供給を受けて該原料ガスに含まれる不純物(酸素ガスなど)を除去してオゾンを精製するオゾン精製手段35を備え、該精製したオゾンを試料ガスとして容器3に供給して光反応により酸素同位体
18Oを濃縮するものであって、排気配管11により排気された反射面5a及び7a付近のガスを、吸引手段37を用いてオゾン精製手段35に戻すようにしたものである。さらに、同位体濃縮装置31は、多重反射セル1で濃縮された酸素同位体
18Oを分離する分離手段39を備えている。
【0051】
同位体濃縮装置31の具体的な全体構成としては、
図4に示す同位体濃縮装置41が例示できる。
同位体濃縮装置41は、原料ガス供給手段33(
図3)としてオゾナイザ43と、オゾン精製手段35(
図3)として第1蒸留塔45と、吸引手段37(
図3)として熱交換器47及びポンプ49と、分離手段39(
図3)として第2蒸留塔51を備えてなるものである。以下、同位体濃縮装置41の各構成と、同位体濃縮装置41を用いてオゾンを原料ガスとして酸素同位体
18Oが濃縮した酸素ガス(以下、「同位体濃縮酸素ガス」という)を製造する場合について説明する。ただし、多重反射セル1については、前述の実施の形態1と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0052】
オゾナイザ43は、原料酸素ガスGOの供給を受けてオゾンを発生させるものであり、オゾナイザ43に供給された原料酸素ガスGOはオゾンに転化され、第1蒸留塔45に送られる。
【0053】
第1蒸留塔45は、オゾナイザ43で発生したオゾンとオゾンに転化せず残留した酸素ガスとを分離するものであり、第1蒸留塔45の上昇ガスを凝縮して還流液を得るための第1コンデンサ53と、塔底部にたまった液を加熱して上昇ガスを得るための第1リボイラ55とにより、原料ガスの蒸留操作を行う。
【0054】
この蒸留操作により、第1蒸留塔45の塔頂側に低沸点成分である酸素ガスが、塔底側に高沸点成分であるオゾンが濃縮し、原料ガスからオゾンが分離されて精製される。
【0055】
精製したオゾンは、光反応を行う多重反射セル1に試料ガスとして導入される。また、塔頂部側に分離した酸素ガスは、圧縮機57によりオゾナイザ43に供給され、原料酸素ガスGOとともに再度オゾンに転化される。
【0056】
多重反射セル1に導入されたオゾンは、凹面ミラー5及び7の間で形成されるレーザ多重反射光路において、前述の式(1)の反応により同位体濃縮酸素ガスが生成する。
一方、凹面ミラー5及び7の反射面5a及び7aの表面ではオゾンの熱分解により、非同位体選択的に酸素ガス(以下、「同位体希釈酸素ガス」という)が生成し、熱分解反応前後での酸素同位体濃度には変化がない。そのため、同位体希釈酸素ガスが光反応により生成した同位体濃縮酸素ガスと混合すると、同位体濃縮酸素ガスが希釈されて
18O濃度を低下させてしまう。
【0057】
これを防ぐため、ガス吸込ノズル9により反射面5a及び7a近傍のガスを吸い込み、排気配管11を経て排気させる。排気流量は、流量計59の指示値を確認しながら、バルブ61で調整する。同位体希釈酸素ガスの90%以上を排気するためには、排気流量は容器3に流入する試料ガス(オゾン)の流量の1/20以上であることが望ましい。排気流量がこれよりも小さいと、同位体希釈酸素ガスと同位体濃縮酸素ガスとの混合が進んでしまう。
【0058】
ガス吸込ノズル9及び排気配管11により吸い込まれて排気された反射面5a及び7a付近のガスは、液体窒素などの低温流体を冷媒とする熱交換器47に引き込まれて凝縮され、その凝縮液はポンプ49により第1蒸留塔45に送液される。そして、第1蒸留塔45において、排気されたガスに含まれるオゾンが塔底部側に、前記ガスに含まれる酸素ガスが塔頂部側に分離される。そして、塔底部側に分離されたオゾンは、原料ガスから精製したオゾンとともに多重反射セル1に導入される。これに対し、塔頂部側に分離された酸素ガスは圧縮機57によりオゾナイザに送られて再び原料酸素ガスGOとして利用される。
【0059】
さらに、多重反射セル1での光反応により得られた同位体濃縮酸素ガスは、第2蒸留塔51に送られる。
第2蒸留塔51においては、還流液を得るための第2コンデンサ63と、上昇ガスを得るための第2リボイラ65とによる蒸留操作により、残留オゾンOzが塔底部側に分離され、同位体濃縮酸素ガスが塔頂部側に分離して製品酸素ガスが得られる。
【0060】
以上、本実施の形態2に係る同位体濃縮装置41によれば、多重反射セル1内で非同位体選択的に生成した同位体希釈酸素ガスを排気することで、同位体濃縮酸素ガスの希釈を防いで製品として取り出すことができる。さらに、排気したガスに含まれるオゾンを回収して再利用することができる。
【0061】
なお、上記の説明において、排気したガスは、熱交換器及びポンプで凝縮して送液するものであったが、排気したガスを圧縮機などで昇圧して送ガスするものであってもよい。ただし、排気したガスに含まれるオゾンが圧縮されることにより昇温し、一部分解して連鎖的反応となる恐れがあることに注意する必要がある。
【0062】
また、第1蒸留塔45及び第2蒸留塔51には、規則充填物を用いた充填塔を用いることが好ましいが、本発明に係る同位体濃縮装置のオゾン精製手段及び分離手段としては、不規則充填物を用いた充填塔や棚段塔を用いてもよい。
さらに、第1蒸留塔45及び第2蒸留塔51は、オゾンを含むガスを液化可能な低温条件で保持されるが、多重反射セル1と第1蒸留塔45、及び、多重反射セル1と第2蒸留塔51のそれぞれを接続する配管や、第1蒸留塔45の塔底側からオゾンガスを抜き出す配管は、オゾンの自己分解を抑制するために低温で冷却することが好ましく、特に-50℃以下に冷却することが望ましい。