特許第6869944号(P6869944)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6869944レーザ暗視野システムにおけるスペックル抑圧方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6869944
(24)【登録日】2021年4月16日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】レーザ暗視野システムにおけるスペックル抑圧方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20210426BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   H01L21/66 J
   G01N21/956 A
【請求項の数】20
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-500648(P2018-500648)
(86)(22)【出願日】2016年7月5日
(65)【公表番号】特表2018-530146(P2018-530146A)
(43)【公表日】2018年10月11日
(86)【国際出願番号】US2016040991
(87)【国際公開番号】WO2017011226
(87)【国際公開日】20170119
【審査請求日】2019年7月3日
(31)【優先権主張番号】62/190,729
(32)【優先日】2015年7月10日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/201,191
(32)【優先日】2016年7月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガインド ヴァイブホー
(72)【発明者】
【氏名】カークウッド ジェイソン
【審査官】 小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0268117(US,A1)
【文献】 特開2013−210393(JP,A)
【文献】 特表2014−524033(JP,A)
【文献】 特開2011−154039(JP,A)
【文献】 特表2010−537217(JP,A)
【文献】 特表2002−532696(JP,A)
【文献】 特開2006−162500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01N 21/956
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体サンプル上の欠陥を検出するシステムであって、
非0次ガウシアン照明ビーム(nonzero-order Gaussian illumination beam)をサンプル上の複数個所に差し向ける照明光学系モジュールと、
上記非0次ガウシアン照明ビームに応じた上記サンプルからの散乱光を検出し、そのサンプル上の複数個所で複数個の出力画像又は信号を生成する集光光学系モジュールと、
プロセッサシステムであり、
上記非0次ガウシアン照明ビームの点拡がり関数(point spread function)のトロイド状光環とマッチするフィルタリング済画像又は信号部分が保存されるよう上記出力画像又は信号を処理し、欠陥の画像又は信号部分はトロイド状光環とマッチし、スペックルの画像又は信号部分はトロイド状光環とマッチせず、並びに
上記サンプル上の欠陥を検出すべく上記フィルタリング済画像又は信号部分を分析すること、
により、欠陥を検出するプロセッサシステムと、
を備えるシステム。
【請求項2】
請求項1のシステムであって、上記照明光学系モジュールが、
0次ガウシアン照明ビーム(zero-order Gaussian illumination beam)を生成する光源と、
上記0次ガウシアン照明ビームを改変することで非0次ガウシアン照明ビームを作成する非0次ガウシアン生成器と、
上記非0次ガウシアン照明ビームを上記サンプルに差し向ける1個又は複数個の光学素子と、
を備えるシステム。
【請求項3】
請求項2のシステムであって、上記0次ガウシアン照明ビームが0次ラゲールガウシアン(Laguerre Gaussian)照明ビームであり、上記非0次ガウシアン照明ビームが非0次ラゲールガウシアン照明ビームであるシステム。
【請求項4】
請求項2のシステムであって、上記非0次ガウシアン生成器が螺旋位相プレート(spiral phase plate)であるシステム。
【請求項5】
請求項2のシステムであって、上記非0次ガウシアン生成器が回折格子又はホログラム(diffraction grating or hologram)であるシステム。
【請求項6】
請求項2のシステムであって、上記非0次ガウシアン生成器が空間光変調器(spatial light modulator)又はqプレート(q-plate)であるシステム。
【請求項7】
請求項2のシステムであって、上記集光光学系モジュールが、上記非0次ガウシアン照明ビームに応じた上記サンプルからの散乱光を集光するよう配置された1個又は複数個の検出器を有するシステム。
【請求項8】
請求項7のシステムであって、上記非0次ガウシアン照明ビームの点拡がり関数とマッチするカーネル画像を上記出力画像に畳み込むことで上記フィルタリング済画像又は信号部分を取得するシステム。
【請求項9】
請求項7のシステムであって、上記非0次ガウシアン照明ビームの点拡がり関数とマッチする画像を欠陥として特定するようトレーニングが施されているクラシファイアを用い、上記出力画像を分類することによって、上記フィルタリング済画像又は信号部分を取得するシステム。
【請求項10】
請求項1のシステムであって、上記集光光学系モジュールが、暗視野モードにて上記散乱光を集光するよう配置されているシステム。
【請求項11】
半導体サンプル上の欠陥を検出する方法であって、
上記サンプルの複数位置を非0次ガウシアン照明ビームで以て照明するステップと、
上記非0次ガウシアン照明ビームに応じた上記サンプルからの散乱光を検出するよう配置されている1個又は複数個の検出器から出力画像又は信号を取得するステップと、
上記非0次ガウシアン照明ビームの点拡がり関数のトロイド状光環とマッチするフィルタリング済画像又は信号部分が保存されるよう上記出力画像又は信号をフィルタリングするステップであり、欠陥の画像又は信号部分はトロイド状光環とマッチし、スペックルの画像又は信号部分はトロイド状光環とマッチしない、ステップと、
上記サンプル上の欠陥を検出すべく上記フィルタリング済画像又は信号部分を分析するステップと、
を有する方法。
【請求項12】
請求項11の方法であって、上記サンプルの複数位置を非0次ガウシアン照明ビームで以て照明するステップが、
0次ガウシアン照明ビームを生成するステップと、
上記0次ガウシアン照明ビームから非0次ガウシアン照明ビームを作成するステップと、
上記非0次ガウシアン照明ビームを上記サンプル上の複数位置に差し向けるステップと、
を有する方法。
【請求項13】
請求項12の方法であって、上記0次ガウシアン照明ビームが0次ラゲールガウシアン照明ビームであり、上記非0次ガウシアン照明ビームが非0次ラゲールガウシアン照明ビームである方法。
【請求項14】
請求項12の方法であって、上記非0次ガウシアン照明ビームを螺旋位相プレートによって作成する方法。
【請求項15】
請求項12の方法であって、上記非0次ガウシアン照明ビームを回折格子又はホログラムによって作成する方法。
【請求項16】
請求項12の方法であって、上記非0次ガウシアン照明ビームを空間光変調器又はqプレートによって作成する方法。
【請求項17】
請求項12の方法であって、上記1個又は複数個の検出器を、上記非0次ガウシアン照明ビームに応じた上記サンプルからの散乱光を集光するよう配置する方法。
【請求項18】
請求項17の方法であって、上記非0次ガウシアン照明ビームの点拡がり関数とマッチするカーネル画像を上記出力画像に畳み込むことで上記フィルタリング済画像又は信号部分を取得する方法。
【請求項19】
請求項17の方法であって、上記非0次ガウシアン照明ビームの点拡がり関数とマッチする画像を欠陥として特定するようトレーニングが施されているクラシファイアを用い、上記出力画像を分類することによって、上記フィルタリング済画像又は信号部分を取得する方法。
【請求項20】
請求項11の方法であって、暗視野モードでの散乱光の集光を踏まえ上記出力画像又は信号を取得する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総じて検査システムにおける半導体ウェハ又はレティクル向け欠陥検出方法及びシステムに関し、より具体的には欠陥検出中のスペックル効果の低減に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願への相互参照)
本願は、Vaibhav Gaind et al.を発明者とする2015年7月10日付先行米国暫定特許出願第62/190729号に基づく利益を主張する出願であるので、この参照を以てその目的を問わず当該米国暫定特許出願の全容を本願に繰り入れることにする。
【0003】
欠陥に関するサンプルの検査には、多数のまた多種類の検査システムを利用することができる。レーザは、多くの検査システムにてウェハ上又はフォトマスク上の欠陥を検出するための光源として多用されている。レーザは最も効率的な照明方法のうち一つを提供するものであり、それはレーザが際立って高輝度であることに起因している。
【0004】
ただ、レーザの使用にはよくない面がある;その一つは、レーザ光の空間的及び時間的コヒーレンシが高いため、サンプル表面上のパターンを撮像する際にリンギング効果が、また表面造作がランダムなとき(例.面粗部又はラインエッジ粗部によるそれ)にスペックルが発生することである。リンギング効果やスペックルにより、画質が甚だしく劣化し、多大なノイズが持ち込まれ、ひいては欠陥検出感度が低下することとなりうる。干渉効果、例えばリンギング現象及びスペックル現象についての包括的議論は、非特許文献1及び2中に見いだすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7319229号明細書
【特許文献2】米国特許第7933026号明細書
【特許文献3】米国特許第7478019号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】"Fourier Optics", by J.W.Goodman, McGraw-Hill
【非特許文献2】"Statistical Optics", by J.W.Goodman, Wiley-Interscience
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これら有害な画像効果は様々な要領で低減することができる。従来技術の一つは部分非コヒーレントレーザ光を発生させるものであり、これは回転ディフューザの使用を伴っている。通常、回転ディフューザを構成する磨りガラススクリーンは、レーザビームの経路上で撮像対象物体に達する前のところに組み込まれる。回転ディフューザによりランダムな位相ばらつきを入射レーザビームに持ち込むことで、そのビームの空間コヒーレンスを低下させることができる。ディフューザを回転させつつ検出器で物体の像を集めることで、独立な複数のビュー即ち視角から物体の像を集めることができる。ひいては、その検出器によりそれら独立検査ビューを積分することで、撮像対象物体の非コヒーレント照明を実質的に合成することができる。回転ディフューザの使用に関連する問題の一つは照明効率である。ディフューザが総じて低効率なことであり、これは多大な光散乱に起因している。回転ディフューザに関連するもう一つの問題は回転ディフューザが振動源として動作することであり、これは、照明システム向けとしては理想的でない。そして、ディフューザディスクの回転速度を検出器の積分時間に比し高くする必要があり、さもないと十分なスペックル抑圧を実現することができない。これは高スループットシステム、即ち検出器の積分時間が数nsec以下になりうるシステムでは不可能である。
【0008】
上掲の事柄に鑑みれば、より秀逸な欠陥検出用計量装置及び技術でありスペックル効果が低減されるものが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これから提示するのは本件開示の簡略な概要であり、その目的は本発明の諸実施形態について基礎的理解を得ることにある。本概要は本件開示の包括的概観ではなく、また本発明の主要/重要構成要素を特定するものや本発明の技術的範囲を括るものでもない。その目的はただ一つ、本願記載の諸概念を単純な形態でまた後掲のより詳細な記述に対する序として提示することである。
【0010】
一実施形態に係り、半導体サンプル上の欠陥を検出するシステムを開示する。本システムは、非0次ガウシアン照明ビームをサンプル上の複数個所に差し向ける照明モジュールと、その非0次ガウシアン照明ビームに応じたサンプルからの散乱光を検出しそのサンプル上の個所毎に複数個の出力画像又は信号を生成する集光モジュールと、を有する。本システムは、更に、(i)1本又は複数本の非0次ガウシアン照明ビームの点拡がり関数と略マッチするフィルタリング済画像又は信号部分が保存されるよう出力画像又は信号を処理すること、並びに(ii)そのサンプル上の欠陥を検出すべくそのフィルタリング済画像又は信号部分を分析することにより、欠陥を検出するプロセッサシステムを、備える。
【0011】
ある具体的実現形態では、その照明モジュールが、(i)0次ガウシアン照明ビームを生成する光源と、(ii)その0次ガウシアン照明ビームを改変することで非0次ガウシアン照明ビームを作成する非0次ガウシアン生成器と、(iii)その非0次ガウシアン照明ビームをサンプルに差し向ける1個又は複数個の光学素子と、を備える。更なる態様にあっては、その0次ガウシアン照明ビームが0次ラゲールガウシアン照明ビーム、非0次ガウシアン照明ビームが非0次ラゲールガウシアン照明ビームとされる。更に他の態様にあっては、その非0次ガウシアン生成器が螺旋位相プレート、回折格子又はホログラム、或いは空間光変調器又はqプレートとされる。
【0012】
他の実施形態では、その集光モジュールが1個又は複数個の検出器を有し、非0次ガウシアン照明ビームに応じたサンプルからの散乱光を集光するようその検出器が配置される。更なる態様にあっては、その非0次ガウシアン照明ビームの点拡がり関数とマッチするカーネル画像を出力画像に畳み込むことでフィルタリング済出力画像を取得する。他の態様にあっては、その非0次ガウシアン照明ビームの点拡がり関数とマッチする画像を欠陥として特定するようトレーニングが施されているクラシファイアを用い、出力画像を分類することによって、フィルタリング済出力画像を取得する。他の例示的実施形態では、その集光モジュールを、暗視野モードにて散乱光を集光するよう配置する。
【0013】
本発明の代替的実施形態の一つは、半導体サンプル上の欠陥を検出する方法に関するものである。サンプルの複数位置を非0次ガウシアン照明ビームで以て照明する。その非0次ガウシアン照明ビームに応じたサンプルからの散乱光を検出するよう配置されている1個又は複数個の検出器から、出力画像又は信号を取得する。その非0次ガウシアン照明ビームの点拡がり関数と略マッチするフィルタリング済画像又は信号部分が保存されるよう、その出力画像又は信号をフィルタリングする。サンプル上の欠陥を検出すべくそのフィルタリング済画像又は信号部分を分析する。
【0014】
ある具体的実現形態では、サンプルの複数位置を非0次ガウシアン照明ビームで以て照明するに当たり、(i)0次ガウシアン照明ビームを生成し、(ii)その0次ガウシアンビームから非0次ガウシアン照明ビームを作成し、(iii)その非0次ガウシアン照明ビームをサンプル上の複数位置に差し向ける。
【0015】
以下、本発明のこれらの態様及びその他の態様につき図面を参照して詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】ガウシアンビーム幅とビーム沿い距離zとの関係を示す図である。
図1B】ラゲールガウシアン(LG)ビーム断面を数例示す図である。
図2】本発明の一実現形態に係り、様々なLGビームで以て欠陥及びラインエッジ粗部を照明することで得られた散乱(又は暗視野)欠陥画像を示す図である。
図3】本発明のある具体的実現形態に係り、照明ビームの点拡がり関数(PSF)とマッチするカーネルを収集済欠陥画像に適用することでもたらされたフィルタリング済欠陥画像を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係り、非0次ガウシアンビーム及びPSFマッチドフィルタリングを用い欠陥を検出する手順を示すフローチャートである。
図5】本発明のある具体的実現形態に係り、非0次ガウシアン照明及びPSFマッチドフィルタリングを伴う検査システムの模式図である。
図6A】本発明のある具体的実現形態に係り、標準的な横モード電磁波(TEM00)からヘリカルビームを生成する螺旋波プレートを示す図である。
図6B】本発明の他の実現形態に係り、±2次ガウシアンビームをもたらすフォークディスロケーション付回折ホログラムの用法を示す図である。
図6C】本発明の他の実現形態に係り、±2次ガウシアンビームをもたらすqプレートの用法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(例示的諸実施形態の詳細な説明)
以下の記述で具体的細部が多々説明されているのは、本発明につき全般的理解を頂くためである。本発明を実施するに当たりそれら具体的細部の一部又は全部を省いてもかまわない。その他、周知の処理動作について詳細な記述がされていないのは、本発明を不必要に曖昧化させないためである。本発明を具体的諸実施形態との関係で記述するけれども、ご理解頂けるように、本発明をそれら実施形態に限定する意図はない。
【0018】
(序)
旧来式の半導体サンプル検査用レーザシステムでは0次ガウシアンビーム(zero-order Gaussian beam)が利用される傾向がある;これは、ビームプロファイルを極力タイトにし極小構造の検査を行えるようにするためである。こうしたコヒーレントシステムを暗視野アプリケーションで用いると、欠陥による散乱効果とほとんどそっくりだが面粗部又はライン粗部による散乱効果、いわゆる“スペックル(speckle)効果”が生じる。そうなると面粗部又はライン粗部から欠陥を弁別することが難しい。例えば、欠陥の強度がスペックルノイズの強度以下であるためしきい値による欠陥特定法が功を奏さないことがある。
【0019】
スペックル抑圧には様々な方法を用いうる;例えば、集光チャネル間脱相関を用い信号対雑音比を改善するチャネル融合、照明偏向に対する集光の交差偏向化、並びに角度又は波長ダイバーシティを以てする部分コヒーレントシステムの生成である。また、マッチドフィルタリングを用い無相関ノイズ源例えばショットノイズを抑圧することもできる。しかしながら、粗エリアを0次ガウシアンビームで以て走査した場合、発生するスペックルにて入射ビームの点拡がり関数(point spread function)が保存されるので、マッチドフィルタを用いても欠陥信号対雑音比の改良に全くつながらない。
【0020】
(欠陥検出に関する例示的諸実施形態)
本発明のある種の実施形態では、非0次ガウシアンビーム(nonzero-order Gaussian beam)を利用しサンプルが撮像される。まず、単純なガウシアンビームについて記述することにする。図1Aに、ガウシアンビームの幅と、そのビーム沿いの距離zとの関係を示す。この図に示すパラメタのうち、wはビームウェスト、bは焦点深度、zはレイリー範囲、Θは総拡がり角である。波長λが与えられている場合、ガウシアンビームの形状はビームウェストwのみで決定づけられる;ビームウェストwはそのビームの焦点(z=0)、即ちビーム幅w(z)が最小(即ち軸上(z=0)での強度が最大)の点におけるビームサイズの尺度である。このパラメタをもとに、他のガウシアンビーム記述パラメタを定めることができる。例えばZ
=πw/λ
と定義することができる。
【0021】
ガウス関数のテイルが実際に0に達することはないが、ビームの“エッジ”にありr=w(z)がzに対し直線的に増大する場所のことを半径線と呼んでいる。これは強度がその軸上値の1/eまで低下する場所である。即ち、z≫zではパラメタw(z)がzに対し直線的に増大する。この関係は、ウェストから離れているところでは(上掲の意味での)ビーム“エッジ”が円錐状であることを意味している。その円錐に沿った(r=w(z)の)線とビームの中心軸(r=0)とがなす角度はそのビームの発散角と呼ばれ、
θ≒λ/(πw
により与えられる。
【0022】
ウェストから遠いところでのビームの総拡がり角は
Θ=2θ
により与えられる。
【0023】
非0次ガウシアンビームの一種にラゲールガウシアン(Laguerre-Gaussian:LG)なる形態を採るものがある。本願では非0次LGビームを用いる実施形態が記述されているが、他種非0次ガウシアンビーム(例.エルミートガウシアン、インスガウシアン、超幾何ガウシアン、フラットトップ、ベッセル、エアリ又はフラクタルビーム等々)を用いてもよい。LGビームに係る等式は
【数1】
によって与えられる;但しCは規格化定数、zはビームの焦点即ちウェストからの軸方向距離、k=2π/λは波長λに係る波数(単位はrad/m)、rはビームの中心軸からの径方向距離、zはレイリー距離又は範囲、pはビームの径方向成分に相当、lの基準はアジマス軸、Lは一般化ラゲール多項式、w(z)はビーム沿い平面zにあり電界振幅がそれらの軸上値の1/eまで低下するところでの半径、iは虚数単位である。Zはやはり
=πw/λ
と定義される。
【0024】
l>0なるLGビームはある軌道角運動量を呈する。古典的なガウシアンビームはl=0及びp=0に対応しているので位相はアジマス軸対称となる。これに対し、l>0では位相がexp(−ilφ)由来の付加的寄与分を獲得する。回転モード指数lの影響が、ラゲール多項式に及ぶのに加え、主として位相因数exp(−ilφ)に入り込んでいるので、ビーム周り1回転(φ方向)の間に2πのl倍、ビームプロファイルの位相が進む(又は遅れる)こととなる。
【0025】
LGビームの生成には螺旋位相プレート(spiral phase plate)や回折性光学素子を用いることができる。その種の位相プレートでありDUV及びUV波長向けのものが入手可能である。以下の例では、lがでない非0次照明ビームの生成について示すが、pパラメタを変化させることで双極子、四重極等々を形成してもよいのであり、どのようにするかは具体的な検査アプリケーションにより左右される。
【0026】
図1BにLGビームを数例示す。図示の通り、p=0,l=0,1,2,3の組合せ方により、LGビームの点拡がり関数(PSF)は異なるものとなる。PSF102aはLG00ビーム、PSF102bはLG01ビーム、PSF102cはLG02ビーム、そしてPSF102dはLG03ビームに対応している。
【0027】
大略、これらLGビームは皆、サンプル上にトロイド状光環の態をなす。サンプルを照らすビームのプロファイルがトロイド状であるとき、欠陥による散乱挙動は、面粗部又はラインエッジ粗部による散乱挙動とは異なるものになる。欠陥由来の散乱効果が照明形状を受け継ぐ結果、欠陥によりもたらされる像は、欠けのないトロイド状になる。これに対し、スペックル散乱はトロイドや環の態をなさないか部分環の態をなすのみである。言い換えれば、欠陥による散乱がエネルギ輸送現象であるのに対し、面粗部又はラインエッジ粗部によるそれは干渉現象なのである。どういった非0次ガウシアンビームであれ、欠陥信号の形状は、入射ビームの点拡がり関数(PSF)の形状と強く相関するであろう。
【0028】
図2に、本発明の一実現形態に係り、様々なLGビームで以て欠陥及びラインエッジ粗部を照明することで得られた散乱(又は暗視野)欠陥画像を示す。この例では欠陥が線状突起でありラインエッジ粗部が存在している。図中の欠陥画像201aは、サンプル上の欠陥とラインエッジ粗部とをLG00ビームで以て照明することで得られたものである。この欠陥画像201aには、ラインエッジ粗部に由来するスペックル画像部分204aと、欠陥に由来する欠陥画像部分202aとが含まれている。看取できる通り、スペックル画像部分204aが欠陥部分202aと似通った強度を有しているので、スペックルを欠陥から弁別するのは困難であろう。
【0029】
ところが、LGビームの次数を漸増させていくと、欠陥部分が大きく、スペックル部分が小さくなっていく。例えば、lを大きくすると照明ビームのトロイドサイズが大きくなる。LG01ビームに係る欠陥画像201bはスペックル部分204b欠陥部分202bを、またLG02ビームに係る欠陥画像201cはスペックル部分204c及び欠陥部分202cを含んでいる。その欠陥画像部分では、明らかに、その欠陥の走査に用いられた高次ビームのPSFが保存されている。即ち、欠陥画像部分がPSFとマッチしているのに対し、スペックルスポット画像部分は、それに対応する高次照明ビームのPSFと部分的にしか又は全くマッチしていない。
【0030】
スペックルは散乱波同士の干渉に由来しているので、スペックルがPSFの全点にて強調干渉を呈する蓋然性は低い。即ち、スペックルの外観がPSFとは別の形状を呈することとなりやすかろう。ならば、集まった画像を相手にアルゴリズム的フィルタその他の種類のフィルタを用いることで、欠陥のエネルギ効果を再捕捉すること、それでいてスペックルノイズの捕捉を抑えることができる。従って、諸実施形態に従いフィルタリングプロセスを実行し、非0次ガウシアンビームのPSFとマッチする出力画像又は信号をそのプロセスによって除去することで、欠陥でありスペックルではないものの所在を、高次LGビームによりもたらされる散乱画像内で速やかに特定することができる。照明ビームのPSFに依拠するこうしたフィルタリングにより、本願詳述の如くスペックルから欠陥を速やかに弁別することが可能になる。
【0031】
図3に、本発明のある具体的実現形態に係り、照明ビームとマッチするカーネルを収集済欠陥画像に適用することでもたらされたフィルタリング済欠陥画像を示す。図示の通り、μ00ビームに対応するカーネル304aを、同LGビームによりもたらされた欠陥散乱及びスペックル散乱画像に適用することで、フィルタリング済画像305aが得られる。このフィルタリング済画像305aにはスペックル部分306a及び欠陥部分302aが含まれている。対するに、μ01ビームに対応するカーネル304bを検出画像に適用すると、スペックル部分306b及び欠陥部分302bを有するフィルタリング済画像305bが得られる。そして、μ02ビームに対応するカーネル304cを検出画像に適用すると、スペックル部分306c及び欠陥部分302cを有するフィルタリング済画像305cが得られる。次数が高まるにつれスペックルに係る部分環効果が薄れひいては消失していく。即ち、そうしたスペックル画像はトロイド環状のカーネルとマッチしないので、部分環の存在(或いは環全体の不存在)によりスペックル信号の大きさが低減される。得られるフィルタリング済欠陥画像にて顕著なSNR(信号対雑音比)上昇が現れる。μ02ビームではμ00ビームに比し1.8倍のSNRが観測されている。
【0032】
図4は、本発明の一実施形態に係り、非0次ガウシアンビーム及びPSFマッチドフィルタリングを用い欠陥を検出する手順400を示すフローチャートである。図示手順は、半導体標本を対象にした暗視野欠陥検査に適用されるものとして記述されているが、これらの技術(及びシステム)は、コヒーレント照明が用いられスペックルが問題となるタイプの欠陥検出全般に適用することができる。
【0033】
まず、動作402にて、サンプル上の複数位置を非0次ガウシアンビームで以て照明すればよい。例えば、0次ガウシアンビームを生成し、そのビームの軌道角運動量(OAM)を改変する光学素子にそれを通すことで非0次ガウシアンビームを作成し、そしてその非0次ガウシアンビームで以てサンプル上を走査すればよい。
【0034】
例えば、ウェハ(又はその他の種類のサンプル)と照明ビームとの相対走査により、そのウェハの全スワス部分に関し画像を得ることができる。各個所から信号又は画像を得るには、ウェハをビームカラムに対し動かしてもよいし、ビームカラムをウェハに対し動かしてもよいし、ビームカラム及びウェハを共に動かすことで相対運動させてもよい。得られた画像スワスを複数個の画像パッチに分割し、並列的又は縦続的に個別分析してもよい。ウェハのパッチ全てを単一の指定波長で以て検査するのが普通であろうが、それに代え、指定波長セッティングで以て各パッチ又はパッチ群を検査する手法を採ってもよい;そのセッティングはそのパッチの具体的素材特性により左右される。集めた光に偏向及びアパーチャセッティングを適用してもよい。
【0035】
その上で、動作404にて、1個又は複数個の検出器から集めた画像又は信号から出力画像又は信号を得ればよい。その出力画像は、欠陥を分析するのに適した何らかの要領で形成すればよい。例を挙げるなら、ダイ対ダイ、セル対セル又はダイ対データベース法を用い、供試画像と参照画像との比較により差分画像を得ればよい。例えば、撮像した供試エリアをそれとは別の参照画像エリアから減ずることで出力画像を得ればよい;参照画像エリアは供試エリアに対し相違を呈しうる無欠陥なエリアであり、別のダイ又はセルから得られ或いはデザインデータベースに基づくシミュレーションで求まる。
【0036】
次いで、動作406にて、出力画像又は信号をフィルタリングすることで、非0次照明ビームのPSFとマッチするフィルタリング済画像及び信号を取得する。その際には、例えば、マッチしているPSFカーネルに基づきその画像又は信号をフィルタリングすればよい。即ち、非0次ガウシアンビームのPSFとマッチするフィルタを用い、検出画像から欠陥をフィルタリングすればよい。例えば、サンプル上をμ02入射ビームで以て走査するのであれば、もたらされる画像それぞれを、そのμ02入射ビームに係るPSFを模したカーネル(例.304c)を用いフィルタリングすればよい。その上で、そのPSFカーネルを出力画像に畳み込むことで、その出力画像から欠陥をフィルタリングすることができる。
【0037】
他の技術を用い欠陥画像又は信号をフィルタリングしてもよい。例えば、トロイド形状を欠陥としてフィルタリングするようクラシファイアモデル(何らかの機械学習アルゴリズム、例えばニューラルネットワーク、サポートベクタマシン(SVM)又は決定木、或いはニューラルネットワーク)をトレーニングすればよい。
【0038】
フィルタリングプロセスの実行対象は、検出された画像でも、供試画像・参照画像間比較を経て得られた“差分”画像でもかまわない。結果は同じである。但し、検出器から得た画像をフィルタリングしてから参照画像及び供試画像間の比較を行うのに比べると、差分画像をフィルタリングした方が情報処理時間の節約になろう。
【0039】
そして、動作408にて、フィルタリング済画像又は信号を分析することで、欠陥を呈している位置があるか否かを判別すればよい。それらフィルタリング済信号又は画像の分析は、何らかの好適な技術を用い何らかの好適な要領で行えばよい。欠陥を示すフラグを、供試画像エリア・参照画像エリア間差分が所定のしきい値を上回ったときに立てればよい;そのしきい値を、色々なパターン種別又はサンプル上位置を踏まえ、それ相応しい感度に基づき変えてもよい。
【0040】
ある実施形態では、デザインデータベース(レティクル及び供試ウェハの製造に用いられたもの)を用い撮像対象エリアの光学的参照画像が生成される。総じて、そうした参照画像をレンダリングするには、レティクル製造プロセス及びフォトリソグラフィプロセスを模擬実行することによってウェハパターンを模擬導出すればよい。検査ツールの物理構成及び光学特性(例.波長域、照明及び光学的レンズの構成、収差効果等々)を模擬することで、模擬ウェハパターン画像を生成してもよい。別の実施形態では、そっくりなダイ又はセルに実存するそっくりな諸エリアがその検査ツールで以て撮像され、参照エリアとして用いられ、対応するそっくりなダイ又はセルの供試エリアと比較されることとなろう。
【0041】
サンプル上の欠陥を補修してもよいし、そのサンプルを廃棄してもよい。その欠陥の源泉を特定できるのなら、次サンプル製造プロセスを調整して欠陥を減らしてもよい。例えば、ある種の欠陥シグネチャをある種のウェハ製造時プロセス条件又は問題に関連付けておき、ウェハ上にその欠陥シグネチャが見受けられるときにそれらの条件又は問題を調整又は補正してもよい。
【0042】
本発明のある種の実施形態では、欠陥画像に情報を付加する仕組みであって、ヌーサンス例えば面粗部又はラインエッジ粗部にはその情報が付加されず又は一部分だけが最小限付加される仕組みが利用される。即ち、検出された欠陥画像に対しては構造がユニークに付加され、スペックル画像に対しては付加されないようにする。欠陥画像にユニークな形態学的情報を含めることで、同様な視覚的改変を受けていないスペックル画像から、その欠陥画像が視覚的に差別化されることになる。その上で、この欠陥画像向け付加情報を用いることで、その欠陥画像をヌーサンス画像からフィルタリングすることができる。
【0043】
全体として、これら後処理付非0次ガウシアン照明ビーム使用機構は暗視野撮像システムにて有用であり、とりわけ、大きなウェハノイズによって暗視野システムの使用が制約される大規模アレイ、デップ層及びバックエンド層向けのそれにて有用である。これは、潜在的には、その種のウェハに対する暗視野システムの感度を大きく向上させうるものである。
【0044】
一般に、本発明の技術を実施する際に利用可能な検査ツールは、非0次ガウシアン入射光ビームを生成する光源を少なくとも1個備えるものであろう。その種の検査には、更に、その入射ビームを注目エリアに差し向ける照明光学系と、その入射ビームに応じ注目エリアから発せられた出射ビームの方向を定める集光光学系と、出射ビームを検出し検出した出射ビームから画像又は信号を生成するセンサと、同検査ツールの構成要素を制御し本願詳述の如く集光後フィルタリングを含む欠陥検出を実行させるコントローラと、を具備させることができる。
【0045】
図5は、本発明のある具体的実現形態に係り、非0次ガウシアン照明及びPSFマッチドフィルタリングを伴う検査システムの模式図である。図示の通り、本システム500は、略コヒーレントな照明ビームを生成する光源502を有している。この出射光源は、0次ガウシアンビームを生成するレーザ光源等、任意の好適な形態とすることができる。そのレーザ光源によって生成された照明ビームは非0次生成器503に通され、そこでその0次ガウシアンビームが改変を受け非0次ガウシアンビームが発生する。
【0046】
非0次生成器503は、非0次ガウシアン照明ビームを生成するのに適するものであればどのような形態を採っていてもよい。ある実施形態では位相プレートが入射ビームの経路上に挿入される。非0次生成器503によって、事実上、非0次向けに軌道角運動量(OAM)が導入される。所与l状態の軌道角運動量は、螺旋位相プレート、回折格子/ホログラム、空間光変調器、qプレート等々によって生成することができる。
【0047】
螺旋波プレートはプラスチック製又はガラス製のプレートであり、螺旋状パターンに従いその素材厚が増していくので、それを通り抜ける光に位相勾配が付与されることとなる。図6Aに、本発明のある具体的実現形態に係り、標準的な横モード電磁波(TEM00)からヘリカルビームを生成する螺旋波プレート602を示す。波長が与えられている場合、OAM状態を所与l状態にするには、ステップ高即ちそのプレートの最厚部分・最薄部分間高さを、nを整数としd=lλ/(n−1)で与えられる高さとする必要がある。螺旋波プレート自体は効率的だが、比較的割高になりうるし別波長への調整が行えない。
【0048】
別の光位相修正手法としては、回折格子又はホログラムによるものがある。l=0なる状態では回折格子/ホログラムが平行線で構成されることとなろう。これに対し、l=1なる状態では“フォーク”ディスロケーション(刃状転位)が存在し、そのディスロケーションの上方における線の本数が下方におけるそれより多くなる。図6Bに、本発明の他の実現形態に係り、非0次ガウシアンビームをもたらすフォークディスロケーション付回折ホログラム(632)の用法を示す。l>1なるOAM状態は、ディスロケーションの上方における線の本数と下方における線の本数との差を大きくすることで生成することができる。螺旋波プレートと同じく、こうした回折格子/ホログラムはlに関し固定されるものの、特定の波長に限定されるわけではない。空間光変調器は、回折格子/ホログラムと同じ要領で稼働するよう構成可能なものであるが、広範囲のOAM状態を動的に生成しうるようコンピュータで制御することができる。
【0049】
他のOAM生成方法としては、異方性及び不均質性を兼備する媒体中で生じうる光スピン角運動量(SAM)−OAM結合に基づくものがある。具体的には、qプレートを入射ビーム経路上に挿入すればよい。qプレートは液晶、ポリマ又はサブ波長格子を用い構成することが可能で、SAMの符号変化を利用しOAMを生成することが可能なプレートである。この場合、OAMの符合は入力偏向によって制御される。図6Cに、本発明の他の実現形態に係り、±2次ガウシアンビームをもたらすqプレート(例.652)の用法を示す。
【0050】
これらの手段は他のスペックル低減機構、例えば回転ディフューザ、チャネル融合、集光チャネルにおける交差偏向、波長又は角度ばらつきによる部分コヒーレントシステムの生成等々と併用することが可能である。幾通りかのスペックル低減技術及び装置が、Mehdi Vaez−Iravani et al.を発明者とする2008年1月15日付特許文献1にて詳述されているので、同文献の全容をこの参照を以てまたその目的を問わず本願に繰り入れることにする。
【0051】
光源は、0次ガウシアンレーザビーム等を生成するコヒーレント光源に加え、一通り又は複数通りの電磁波形を生成しうる任意な形態を採りうる。即ち、光源を複数個用いてもよい。当該1個又は複数個の光源により、単一波長しか含まない光(例.単色光)、複数通りの離散波長を含む光(例.多色光)、複数通りの波長を含む光(例.広帯域光)及び/又は連続的に若しくは波長ホッピングの態で諸波長を掃引する光(例.可調光源又は掃引光源)を生成すればよい。例えば、様々な波長を様々な素材と併用することで、供試素材上への入射光に関し透明性又は不透明性を達成することができる。光源502としてレーザ光源を用いることで、分光法例えば白色光干渉法及び有色共焦点顕微鏡に比べ高い輝度を実現することができる。レーザ光源例えばダイオードレーザならその光源の寿命、安定性及び熱的制御が良好になる。好適な光源の別例としては、白色光源、紫外(UV)レーザ、アークランプ又は無電極ランプ、有色又は白色発光ダイオード(LED)、レーザ維持プラズマ(LSP)光源例えば米国マサチューセッツ州ウーバン所在のEnergetiq Technology,Inc.から購入可能なそれ、スーパーコンティニウム光源(例えば広帯域レーザ光源)例えば米国ニュージャージー州モーガンビル所在のNKT Photonics Inc.から購入可能なそれ、或いはより短波長な光源例えばX線源、極端UV源或いはそれらの任意の組合せがある。その又はそれらの光源は、十分な輝度で発光するよう、場合によっては約1W/(nm・cm・sr)超の輝度となるよう構成することもできる。その検査システムに光源への高速フィードバックを組み込み、光源のパワー及び波長をそれにより安定化させてもよい。その光源の出力は自由空間伝搬を介した送給が可能であり、場合によっては各種光導波路又は光ファイバを介した送給も可能である。
【0052】
その光源からの入射ビームは、大略、任意個数及び種類のレンズに通しその働きでサンプル方向へと中継(例.整形、集束若しくは焦点オフセット調整、波長選別/フィルタリング、偏向状態選別/フィルタリング、リサイズ、拡大、歪み低減等々)すればよい。
【0053】
偏向セッティングをより長波長又は短波長の波長域に適用してもよい。例えば、指定されている波長域に応じ水平偏向か垂直偏向を選定すればよい。偏向セッティングは、任意の好適な検査パラメタ、例えば欠陥種別、サンプル組成、波長域又はサブ波長域選定等々に基づき適用すればよい。
【0054】
アパーチャセッティングを照明(及び集光)経路上に挿入してもよい。例えば、ある特定の入射角(AOI)群を実現するためのアパーチャセッティングを、任意の好適な検査パラメタ例えば欠陥種別、サンプル組成、検査対象サンプル構造の種類、偏向セッティング、波長域又はサブ波長域選定等々に基づき選定すればよい。
【0055】
対物系506は高倍率対物レンズ、例えばテレセントリック型のそれとすればよい。入射光の一部又は全部がこの対物レンズ506を通りサンプル501の少なくとも一部分上に達する。照明点におけるその入射光のスポットサイズは回折制限的である。
【0056】
ある種の検査システム実施形態は、半導体サンプル例えばウェハ及びレティクルの検査向けに構成することができる。本発明の検査装置を用い検査又は撮像しうる他種サンプルとしてはソーラパネル構造、光ディスク等々がある。
【0057】
また、サンプル501は、そのサンプル501を位置決めし特定の計測サイトで入射光を受光させるよう構成されたステージ530上に、配すればよい。サンプル501は、例えば、機械的及び/又は静電的クランピングの働き等でステージにクランプすればよい。
【0058】
ステージ530を固定可能としてもよいし、x方向、y方向及び/又はz方向に沿い走査運動可能としてもよい。例えば、そのステージによって、サンプル501を、入射光の軸に直交する平面(例.xy平面)内で又はそうした入射軸に対し平行な方向(例.z軸)に沿い並進させることができる。
【0059】
本検査システム500に、入射ビームに対しステージ530(及びサンプル501)を動かす位置決め機構531を具備させてもよい。例えば、1個又は複数個のモータ機構を、それぞれ、スクリュドライブ及びステッパモータ、位置フィードバック付リニアドライブ、或いはバンドアクチュエータ及びステッパモータによって、形成すればよい。当該1個又は複数個の位置決め機構531を、本検査システムの他部材例えば照明又は集光ミラー、アパーチャ、波長フィルタ、偏向器等々を動かしうるよう構成してもよい。
【0060】
その後、光はサンプル501にて反射及び散乱される。その出射ビームは任意な好適個数且つ種類の集光光学系(例.506a、506b、506c、518)、例えば瞳リレイ、1個又は複数個のミラー又はレンズ、偏向器、アパーチャ、並びに出射ビームズーム・集束用光学素子によりその方向と形状を整え、1個又は複数個の検出器(例.520a、520b、521)上に向かいズーム及び集束させればよい。図中、検出器520a及び520bが散乱暗視野光を2本のチャネルで受光するのに対し、検出器521は反射出射光を受光するよう配置されている。例を挙げれば、それら検出器にCCD(電荷結合デバイス)若しくはTDI(時間遅延積分)型検出器、光電子増倍管(PMT)その他のセンサを含めてもよい。
【0061】
本システム500にコントローラ又はコンピュータシステム526を具備させてもよい。例えば、各検出器で捕捉された信号をコントローラ526により処理することとし、そのコントローラ526にアナログディジタルコンバータ付きの信号処理デバイスを具備させ、各センサからのアナログ信号を処理用ディジタル信号へと変換するようそのアナログディジタルコンバータを構成すればよい。
【0062】
ある具体的実現形態では、コントローラ526に、検出された散乱暗視野画像又は信号からトロイド形状をフィルタリングするPSFフィルタ522と、上述の如く欠陥を探索する欠陥検出モジュール524とが備わる。暗視野チャネルを2本有する検査システムを示したが、好適であれば何本のチャネルを用い暗視野散乱光を集光してもよいし、その暗視野散乱光のいずれか一部を集光するのでも概ね全てを集光するのでもよい。
【0063】
そのコントローラを、感知した光ビームの強度、位相及び/又はその他の特性を分析するよう構成してもよい。同コントローラを、(例.コンピュータ画面上で)ユーザインタフェースを提供するよう、また得られた試験画像及びその他の検査特性を本願詳述の如くそこに表示させるよう(例.命令のプログラミングで以て)構成してもよい。同コントローラに1個又は複数個の入力デバイス(例.キーボード、マウス、ジョイスティック)を具備させユーザ入力、例えば波長、偏向又はアパーチャ構成の変更、検出結果データ又は画像の視認、検査ツールレシピのセットアップ等のユーザ入力を行えるようにしてもよい。
【0064】
本発明の技術は、ハードウェア及び/又はソフトウェアの何らかの好適な組合せで実施すればよい。そのコントローラには、通常、相応なバスその他の通信機構を介し入出力ポート及び1個又は複数個のメモリに結合された1個又は複数個のプロセッサが備わる。
【0065】
そのコントローラは、ソフトウェア及びハードウェアの何らかの相応な組合せとすればよく、大略、本検査システムの諸構成部材を制御しうるよう構成すればよい。例えば、同コントローラによって、照明源の選択的起動、照明又は出射アパーチャセッティング、波長帯、焦点オフセットセッティング、偏向セッティング等々を制御すればよい。同コントローラを、各検出器から得られた画像又は信号を受け取り、得られた画像又は信号を分析することでそのサンプル上における欠陥の存否を判定し、そのサンプル上に存する欠陥の特性を調べ、或いはそのサンプルの特性をその他のかたちで調べるよう、構成してもよい。例えば、同コントローラに、プロセッサ、メモリ及びその他のコンピュータ周辺部材を具備させ、本発明の諸方法実施形態を構成する命令を実行するようそれらにプログラミングしてもよい。
【0066】
そうした情報及びプログラム命令は格別に構成されたコンピュータシステム上で利用・実行すればよく、そのシステムにプログラム命令/コンピュータコードを組み込むことで本願記載の諸動作を実行させることが可能であり、またそれらプログラム命令/コンピュータコードはコンピュータ可読媒体上に格納することが可能である。機械可読媒体の例としては、これに限られるものではないが、磁気媒体例えばハードディスク、フロッピーディスク及び磁気テープ、光学媒体例えばCD−ROMディスク、磁気光媒体例えば光ディスク、並びにプログラム命令を格納及び実行しうるよう格別に構成されたハードウェアデバイス例えばリードオンリメモリデバイス(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)がある。プログラム命令の例としては、マシン語例えばコンパイラによって生成されるそれがあり、またインタプリタを用いコンピュータによって実行することが可能な高級言語コードを含むファイルがある。
【0067】
なお、検査システムについての上掲の記述及び図面は同システムの個別構成要素についての限定として解されるべきではなく、本システムは他の多様な形態での具現化が可能である。例えば、その検査又は計測ツールには任意の好適な特徴を具備させうると考えられる;それらの特徴は、欠陥を検出しうるよう及び/又はレティクル若しくはウェハに備わる特徴の重要側面を分解・解明しうるよう工夫されている任意個数の既知撮像又は計量ツールから、取り入れることができる。例を以て言えば、検査又は計測ツールを明視野撮像顕微鏡、暗視野撮像顕微鏡、フルスカイイメージング顕微鏡、位相差顕微鏡、偏光コントラスト顕微鏡及びコヒーレンスプローブ顕微鏡向けに適合させうる。また、ターゲットの像を捉える手段として一通り又は複数通りの撮像方法を用いうるものと考えられる。そうした方法の例としては、シングルグラブ法、ダブルグラブ法、シングルグラブコヒーレンスプローブ顕微鏡(CPM)法及びダブルグラブCPM法がある。非撮像的光学手段例えば散乱計も、検査又は計量装置の一部を形成しうるものと考えられる。
【0068】
入射ビームをサンプルへと差し向け、そのサンプルに発する出射ビームを検出器へと差し向ける手段としては、任意の好適なレンズ配置を用いればよい。本システムに具備させる照明及び集光光学素子は反射性のものでも透過性のものでもよい。出射ビームがサンプルで反射又は散乱するのでもサンプルを透過するのでもよい。同様に、出射ビームを受け取り、受け取った出射ビームの特性(例.強度)に基づき画像又は信号を作成する手段としては、任意検出器種別及び任意個数の好適な検出素子を用いればよい。
【0069】
将来のウェハ欠陥検査では、DRの狭隘化に伴い欠陥信号が顕著に弱くなる。そのため、短めの波長で強めの欠陥信号を得ようという全般的傾向が存在しているので、波長を短くし、分解能を高め、そして検査画素を小さくすることが望ましい。しかしながら、そうした短波長検査型の構成では、焦点深度が小さい、焦点変化に対する熱的感度が高い、スループットが低い等々という欠点が生じうる。ある種のシステム実施形態で提供される特徴によれば、焦点を追跡及び補正すること、システムパラメタの調整によりS/Nを最適化すること等々が可能である。加えて、そうした構成では1回の走査でより多くの情報が得られるので、検査をより費用効果的なものとすることができる。また、1回の走査で複数通りの情報を捉えることで、欠陥特徴解明のための後処理、信号強調及びノイズ/ヌーサンス低減を効果的に実行することができる。
【0070】
その検査ツールには、本発明の上述した諸実施形態に加え使用可能な1個又は複数個のハードウェア構成を具備させることができる。そうしたハードウェア構成の例としては、これに限られるものではないが、ビームプロファイル反射率計(角度分解反射率計)、広帯域反射分光計(分光反射率計)、単一波長反射率計、角度分解反射率計、撮像システム及び散乱計(例.スペックルアナライザ)がある。
【0071】
そうしたハードウェア構成は、別々に動作する複数個のシステムへと分割することが可能である。その逆に、1個又は複数個のハードウェア構成を組み合わせて単一ツール化することも可能である。複数個のハードウェア構成の組合せによる単一ツール化については、その一例が特許文献2にて子細に描写及び記述されているので、この参照を以て同文献の全容をその目的を問わず本願に繰り入れることにする。そのシステムには、ある種のレンズ、コリメータ、ミラー、1/4波長プレート、偏向器、検出器、カメラ、アパーチャ及び/又は光源を具備させうる。その光学系向けの波長は約120nm〜3μmの範囲内としうる。集めた信号については偏向分解や無偏向化が可能である。
【0072】
本システムに複数個の計量ヘッドを具備させそれらを同一ツール上に統合してもよい。とはいえ、多くの場合、複数個の計量ツールを用い、サンプル上の単一エリア又は複数エリアが計測される。複数ツール計量については、幾つかの実施形態が、例えばZangooie et al.を発明者とし「複数ツール及び構造分析」(Multiple tool and structure analysis)と題する特許文献3中で詳述されているので、この参照を以て同文献の全容をその目的を問わず本願に繰り入れることにする。
【0073】
ご認識頂くべきことに、本件開示の随所で記述された諸ステップは、単一のプロセッサシステムで実行しても複数個のプロセッサシステムで実行してもかまわない。更に、本システムの諸サブシステム、例えば上述した光源及び/又は検出器システム実施形態に、システム状態の制御、信号の前処理、或いは本願記載の諸ステップのうち少なくとも一部の実行に適したコンピュータシステムを具備させるとよい。従って、上掲の記述は本発明についての限定としてではなく単なる例証として解されるべきである。更に、当該1個又は複数個のプロセッサシステムを、本願記載の方法実施形態のうち任意のものを構成する他の任意のステップ(群)を実行するよう構成してもよい。
【0074】
加えて、そのプロセッサシステムを、本件技術分野で既知な何らかの要領で検出器システムに可通信結合させてもよい。例えば、当該1個又は複数個のプロセッサシステムを、検出器システムと連携する情報処理システムに結合させてもよい。また例えば、プロセッサシステムに結合されている単一のコンピュータシステムにより、検出器システムを直接制御してもよい。
【0075】
そのプロセッサシステムを、伝送媒体例えば有線区間及び/又は無線区間を有するそれにより他システムからデータ又は情報(例.計測信号、差分信号、統計結果、参照又は校正データ、トレーニングデータ、モデル、抽出済のフィーチャ又は変換結果、変換済のデータセット、曲線当てはめ、定性及び定量結果等々)を受領及び/又は捕捉するよう構成してもよい。この要領で、その伝送媒体を、同プロセッサシステムと他のシステム(例.外部メモリ、参照計測源その他の外部システム)との間のデータリンクとして働かせればよい。例えば、データリンクを介し格納媒体(例.内部又は外部メモリ)から計測データを受け取りうるようプロセッサシステムを構成するとよい。例えば、検出システムを用い取得した結果を恒久又は半恒久記憶デバイス(例.内部又は外部メモリ)に格納すればよい。この構成では、分光結果をオンボードメモリ又は外部メモリシステムからインポートしうる。更に、そのプロセッサシステムが伝送媒体を介し他システムへとデータを送信するようにしてもよい。例えば、プロセッサシステムにより求まった定性及び/又は定量結果を通信に供し外部メモリに格納すればよい。この構成では、計測結果を他システムへとエキスポートしうる。
【0076】
そのプロセッサシステムには、これに限られるものではないが、CPU、GPUボード、FPGA、プログラマブルロジックアレイ、パーソナルコンピュータシステム、メインフレームコンピュータシステム、ワークステーション、イメージコンピュータその他、本件技術分野で既知なあらゆるシステムが包含されうる。総じて、語“プロセッサシステム”は、記憶媒体に発する命令を実行するプロセッサを1個又は複数個備えるデバイス全般が包括されるよう広義に定義しうる。本願記載のそれをはじめとする諸方法を実行するためのプログラム命令は、伝送媒体例えばワイヤ、ケーブル又は無線伝送リンク上での伝送が可能である。プログラム命令をコンピュータ可読媒体(例.メモリ)に格納してもよい。コンピュータ可読媒体の例としてはリードオンリメモリ、フラッシュメモリ、ランダムアクセスメモリ、磁気若しくは光ディスク等がある。
【0077】
その検査ツールを、半導体製造に関わる多種類の計測を行えるよう設計してもよい。特定のターゲット特性を判別するための付加的な計量技術を上述の欠陥検出技術と組み合わせてもよい。例えば、ある種の実施形態では、同ツールによって信号を計測し1個又は複数個のターゲットの他特性を判別すること、例えば品質値及び欠陥量値、限界寸法、オーバレイ、膜厚、プロセス間連パラメタ(例.メッキ条件)等々を判別することができる。それらターゲットはある種の注目領域、例えば格子やチップ間相互接続用Cuピラーを有するものとすることができる。ターゲットが複数個の層(又は膜)、例えばフォトレジスト層やパッシベーション層を有していてもよい。
【0078】
収集したデータは多様なデータ当てはめ及び最適化技法及び技術で分析することが可能であり、その例としては機械学習アルゴリズム例えばニューラルネットワーク及びサポートベクタマシン(SVM)、次元削減アルゴリズム例えばPCA(主成分分析)、ICA(独立成分分析)及びLLE(局所線形埋込)、カルマンフィルタ、同種又は異種ツールに対するマッチングを促進するアルゴリズム、並びにその他がある。
【0079】
情報処理アルゴリズムは、情報処理ハードウェアの設計及び実現、並列化等々、一通り又は複数通りの手法を用い、データ処理の速度及び正確性の面で最適化されるのが普通である。ファームウェア、ソフトウェア、FPGA、プログラマブルロジックアレイ等々により様々な形態でアルゴリズムを実現することができる。
【0080】
データ分析を用い追求する目標の一つを、高さ、品質、欠陥個数、CD、組成、膜、生成プロセスパラメタ(例.メッキ又はエッチングセッティング)及び/又はそれらの任意の組合せ、の計測とすることができる。
【0081】
ここで述べた本発明のある種の実施形態は、総じて、半導体のプロセス及び品質制御の分野を扱うものであり、先に概括したハードウェア、アルゴリズム/ソフトウェア実現形態及び使用ケースに限定されるものではない。
【0082】
明瞭に理解されることをめざしここまで本発明をある程度詳細に記述してきたが、別紙特許請求の範囲の技術的範囲内である程度の変形及び修正を実行しうることは明らかであろう。本発明のプロセス、システム及び装置には多くの代替的実現手法が存することに注意されたい。従って、上掲の諸実施形態は限定としてではなく例証として解されるべきであり、また本発明は本願記載の詳細に限定されるべきものではない。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C