特許第6870117号(P6870117)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6870117骨付き肢肉の処理システム及び分離肉の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870117
(24)【登録日】2021年4月16日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】骨付き肢肉の処理システム及び分離肉の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A22C 21/00 20060101AFI20210426BHJP
   A22C 17/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   A22C21/00 Z
   A22C17/00
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-561563(P2019-561563)
(86)(22)【出願日】2018年12月19日
(86)【国際出願番号】JP2018046692
(87)【国際公開番号】WO2019131363
(87)【国際公開日】20190704
【審査請求日】2019年10月1日
(31)【優先権主張番号】特願2017-247369(P2017-247369)
(32)【優先日】2017年12月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】木藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】豊田 直紀
(72)【発明者】
【氏名】桜山 浩之
(72)【発明者】
【氏名】小泉 陽
(72)【発明者】
【氏名】赤羽根 元
(72)【発明者】
【氏名】加藤 もえ美
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/136513(WO,A1)
【文献】 特開平05−236868(JP,A)
【文献】 特開平03−117451(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/136994(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/074966(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 21/00,17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
右肢の骨付き肢肉の筋入れを行うための右肢用筋入れ部と、
左肢の骨付き肢肉の筋入れを行うための左肢用筋入れ部と、
前記右肢用筋入れ部及び前記左肢用筋入れ部で筋入れされた前記骨付き肢肉の骨部と肉部とを分離するための複数の処理ステーション、および、前記複数の処理ステーションを通過するように前記骨付き肢肉を搬送する搬送路を有し、前記右肢の前記骨付き肢肉および前記左肢の前記骨付き肢肉の両方を処理するように構成された単一の処理ラインと、
前記処理ラインの前記搬送路の最上流部に設けられ、前記搬送路外の前記右肢用筋入れ部から前記搬送路に投入される前記右肢の骨付き肢肉及び前記搬送路外の前記左肢用筋入れ部から前記搬送路に投入される前記左肢の骨付き肢肉を前記搬送路に沿って移動するクランプ具で受け取る投入部と、
を備え
前記処理ラインの前記搬送路は、前記投入部において受け取った前記右肢又は前記左肢の前記骨付き肢肉を前記クランプ具で保持した状態で、前記投入部の下流側に配置された前記複数の処理ステーションを順に前記クランプ具に保持された前記骨付き肢肉が通過するように前記骨付き肢肉を搬送し、前記複数の処理ステーションにおける処理が完了した前記骨付き肢肉が排出されて空になった前記クランプ具を再び前記投入部に戻すように構成された
ことを特徴とする骨付き肢肉の処理システム。
【請求項2】
右肢の骨付き肢肉の筋入れを行うための右肢用筋入れ部と、
左肢の骨付き肢肉の筋入れを行うための左肢用筋入れ部と、
前記右肢用筋入れ部及び前記左肢用筋入れ部で筋入れされた前記骨付き肢肉の骨部と肉部とを分離するための複数の処理ステーションを有し、前記右肢の前記骨付き肢肉および前記左肢の前記骨付き肢肉の両方を処理するように構成された単一の処理ラインと、
前記処理ラインの最上流部に設けられ、前記右肢用筋入れ部で筋入れされた前記右肢の骨付き肢肉及び前記左肢用筋入れ部で筋入れされた前記左肢の骨付き肢肉を受け取る投入部と、
を備え、
前記右肢用筋入れ部及び前記左肢用筋入れ部の各々は、
水平方向に沿って設けられた搬送路と、
前記搬送路で搬送される前記骨付き肢肉の筋入れを行うための第1切断刃と、
を備え、
前記右肢用筋入れ部と前記左肢用筋入れ部とは、前記搬送路及び前記第1切断刃を含め、前記搬送路間の中心線に対して対称に配置されることを特徴とする骨付き肢肉の処理システム。
【請求項3】
前記右肢用筋入れ部の前記搬送路と前記左肢用筋入れ部の前記搬送路は並列に配置され、かつ、前記骨付き肢肉の搬送方向が同一方向となるように配置されることを特徴とする請求項2に記載の骨付き肢肉の処理システム。
【請求項4】
前記搬送路は、前記骨付き肢肉の骨部が水平方向に沿いかつ前記骨付き肢肉の内側面及び外側面が上下方向に沿って搬送可能に構成されることを特徴とする請求項2又は3に記載の骨付き肢肉の処理システム。
【請求項5】
前記右肢用筋入れ部及び前記左肢用筋入れ部の各々は、前記骨付き肢肉を把持し前記搬送路に沿って移動可能な複数の第1クランプ具を備え、
前記処理ラインは、前記複数の第1クランプ具から受け取った前記骨付き肢肉を前記複数の処理ステーションに搬送する複数の第2クランプ具を備え、
前記投入部は、前記右肢用筋入れ部から前記右肢の骨付き肢肉を受け取る第1受取り部と、前記左肢用筋入れ部から前記左肢の骨付き肢肉を受け取る第2受取り部と、を有し、前記第1受取り部と前記第2受取り部との間の間隔と、前記複数の第2クランプ具間の間隔とは同一に構成され、
前記第1受取り部における前記右肢の骨付き肢肉の受取りと前記第2受取り部における前記左肢の骨付き肢肉の受取りとが同時に行われるように構成されることを特徴とする請求項2乃至4の何れか一項に記載の骨付き肢肉の処理システム。
【請求項6】
前記複数の第1クランプ具の間隔と前記複数の第2クランプ具の間隔とが同一であり、
前記複数の第2クランプ具の移動速度は前記複数の第1クランプ具の移動速度より速くなるように構成されることを特徴とする請求項5に記載の骨付き肢肉の処理システム。
【請求項7】
前記複数の処理ステーションの少なくとも1つは、前記骨部の周囲を切断するための第2切断刃を備えると共に、前記第2切断刃で切断された前記骨付き肢肉の肉部に係止可能であって、前記第2クランプ具との間隔を広げることで前記骨部から前記肉部を剥離可能な分離部材を備え、
前記分離部材は前記第2クランプ具の搬送方向に沿って前記第2クランプ具と同期して前記第2クランプ具の搬送速度と同一の速度で移動可能に構成されることを特徴とする請求項5又は6に記載の骨付き肢肉の処理システム。
【請求項8】
前記複数の処理ステーションは、
前記骨付き肢肉の肢首部の周囲に付着した腱を切断するための前記第2切断刃を備える肢首カットステーションと、
前記肢首カットステーションより前記骨付き肢肉の搬送方向下流側に設けられ、前記肢首部の腱を切断した前記骨付き肢肉の切断部の肉部を骨部から分離するための前記分離部材と、前記肉部が分離された前記骨部に付着する白膜を切断する別の前記第2切断刃と、を備える白膜カットステーションと、
を含むことを特徴とする請求項7に記載の骨付き肢肉の処理システム。
【請求項9】
右肢の骨付き肢肉及び左肢の骨付き肢肉の筋入れを夫々別の筋入れ部で行う筋入れステップと、
筋入れされた前記右肢の骨付き肢肉及び前記左肢の骨付き肢肉を、前記骨付き肢肉の骨部と肉部とを分離するための単一の処理ラインに投入する投入ステップと、
前記処理ラインに投入された前記右肢の骨付き肢肉及び前記左肢の骨付き肢肉の前記骨部と前記肉部とを分離する処理ステップと、
を備え、
前記処理ラインは、
前記処理ステップにおける前記骨部と前記肉部との分離を行うための複数の処理ステーションと、
前記複数の処理ステーションを通過するように前記骨付き肢肉を搬送する搬送路と、
を含み、
前記投入ステップでは、筋入れされた前記右肢の骨付き肢肉及び前記左肢の骨付き肢肉を前記搬送路外から前記搬送路に投入し、
前記投入ステップにおいて投入された前記右肢又は前記左肢の前記骨付き肢肉を前記搬送路に沿って移動するクランプ具で受け取り、前記投入ステップにおける前記搬送路への前記骨付き肢肉の投入位置の下流側に配置された前記複数の処理ステーションを順に前記クランプ具に保持された前記骨付き肢肉が通過するように前記骨付き肢肉を搬送し、前記複数の処理ステーションにおける処理が完了した前記骨付き肢肉が排出されて空になった前記クランプ具を再び前記投入位置に戻し、前記投入ステップを再度実行する
ことを特徴とする分離肉の製造方法。
【請求項10】
前記筋入れステップにおける前記右肢の骨付き肢肉及び前記左肢の骨付き肢肉の単位時間当たりの処理数を同一とし、
前記処理ステップにおける前記骨付き肢肉の単位時間当たりの処理数を前記処理数より多くすることを特徴とする請求項9に記載の分離肉の製造方法。
【請求項11】
前記投入ステップにおいて、
複数の前記骨付き肢肉のひざ部が前記処理ラインに常に同一方向を向いて投入されることを特徴とする請求項9又は10に記載の分離肉の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、骨付き肢肉の処理システム及び分離肉の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食用鳥獣の屠体の解体処理は、省力化のため人手による作業に代って機械による自動化処理が進められている。
自動化処理装置の例として、特許文献1には、骨付きモモ肉の脱骨処理を行う自動脱骨装置が開示されている。この装置は、骨付きモモ肉をクランプ具に吊架しながら複数の処理ステーション間を搬送し、各ステーションで骨付きモモ肉を停止させ、骨付きモモ肉の筋入れや骨肉分離等のステップを順々に行うことで、自動脱骨を可能にしている。
特許文献2には、コンベアで搬送される骨付きモモ肉を多軸多関節アームで把持してハンガに吊架させる動作を自動化した装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2013−507101号公報
【特許文献2】国際公開第2009/139031号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された自動脱骨装置は、右肢用又は左肢用の骨付きモモ肉の専用機であり、右肢及び左肢の両方の骨付きモモ肉の脱骨処理をすることはできない。
特許文献2に開示された装置は、右肢及び左肢の両方の脱骨処理が可能であるが、豚モモ部位のような大型の骨付きモモ肉の脱骨処理に適用されるものであり、1個体毎に肢首部からひざ関節部までの測定を行い、これらの測定結果から筋入れ経路を決定し脱骨をするため、単位時間当たりの処理個数を増加できない。
【0005】
一実施形態は、右肢及び左肢の骨付き肢肉の解体処理を行う場合に、設備の設置スペースをコンパクト化できると共に、単位時間当たりの処理個数を増加可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)一実施形態に係る骨付き肢肉の処理システムは、
右肢の骨付き肢肉の筋入れを行うための右肢用筋入れ部と、
左肢の骨付き肢肉の筋入れを行うための左肢用筋入れ部と、
前記右肢用筋入れ部及び前記左肢用筋入れ部で筋入れされた前記骨付き肢肉の骨部と肉部とを分離するための複数の処理ステーションを有する処理ラインと、
前記処理ラインの最上流部に設けられ、前記右肢用筋入れ部で筋入れされた前記右肢の骨付き肢肉及び前記左肢用筋入れ部で筋入れされた前記左肢の骨付き肢肉を受け取る投入部と、
を備える。
【0007】
上記処理システムにおいては、筋入れ部を右肢用と左肢用とに分けることで、筋入れ位置や筋入れ刃の構成を夫々の骨付き肢肉の形状に合ったものとすることができる。従って、右肢又は左肢毎に筋入れ刃の位置や構成を変える必要がなくなるため、夫々の筋入れ部を簡素化できると共に、処理数を増加できる。また、筋入れ後の処理は、右肢及び左肢とも単一の処理ラインで行うことで、処理ラインの設置スペースをコンパクト化できる。
【0008】
(2)一実施形態では、前記(1)の構成において、
前記右肢用筋入れ部及び前記左肢用筋入れ部の各々は、
水平方向に沿って設けられた搬送路と、
前記搬送路で搬送される前記骨付き肢肉の筋入れを行うための第1切断刃と、
を備え、
前記右肢用筋入れ部と前記左肢用筋入れ部とは、前記搬送路及び前記第1切断刃を含め、前記搬送路間の中心線に対して対称に配置される。
【0009】
上記(2)の構成によれば、右肢用筋入れ部及び左肢用筋入れ部が搬送路間の中心線に対して対称に配置されるため、左右骨付き肢肉を同じ向きで搬送路に投入したとき、左右骨付き肢肉に対し両者とも内側又は外側の同じ側から第1切断刃を挿入したとき、両者とも皮のない内側面から筋入れできる。そのため、皮を切らない商品価値が高い正肉を得ることができる。
【0010】
(3)一実施形態では、前記(2)の構成において、
前記右肢用筋入れ部の前記搬送路と前記左肢用筋入れ部の前記搬送路とは並列に配置され、かつ、前記骨付き肢肉の搬送方向が同一方向となるように配置される。
上記(3)の構成によれば、左右筋入れ部の搬送路が並列に配置されることで、筋入れ部のスペースをコンパクト化できる。また、骨付き肢肉の搬送方向が同一方向に配置されるので、両搬送路の各々へ骨付き肢肉を投入する投入部を互いに近接配置でき、これによって、1人の作業員で投入作業が可能になる。
【0011】
(4)一実施形態では、前記(2)又は(3)の構成において、
前記搬送路は、前記骨付き肢肉の骨部が水平方向に沿いかつ前記骨付き肢肉の内側面及び外側面が上下方向に沿って搬送可能に構成される。
上記(4)の構成によれば、左右骨付き肢肉を上記姿勢で搬送することで、左右骨付き肢肉を搬送しながら固定された第1切断刃で骨部と肉部との間を骨部に沿って切断できる。従って、筋入れのために骨付き肢肉を停止させる必要がないため、処理効率を向上できる。また、第1切断刃が固定刃でよいため、第1切断刃の駆動部が不要となり低コスト化できる。
【0012】
(5)一実施形態では、前記(2)〜(4)の何れかの構成において、
前記右肢用筋入れ部及び前記左肢用筋入れ部の各々は、前記骨付き肢肉を把持し前記搬送路に沿って移動可能な複数の第1クランプ具を備え、
前記処理ラインは、前記複数の第1クランプ具から受け取った前記骨付き肢肉を前記複数の処理ステーションに搬送する複数の第2クランプ具を備え、
前記投入部は、前記右肢用筋入れ部から前記右肢の骨付き肢肉を受け取る第1受取り部と、前記左肢用筋入れ部から前記左肢の骨付き肢肉を受け取る第2受取り部と、を有し、前記第1受取り部と前記第2受取り部との間の間隔と、前記複数の第2クランプ具間の間隔とは同一に構成され、
前記第1受取り部における前記右肢の骨付き肢肉の受取りと前記第2受取り部における前記左肢の骨付き肢肉の受取りとが同時に行われるように構成される。
【0013】
上記(5)の構成によれば、左右骨付き肢肉を上記第1クランプ具から第2クランプ具に受け渡すときの第1クランプ具の動作と第2クランプ具の動作との同期制御が容易になる。
【0014】
(6)一実施形態では、前記(5)の構成において、
前記複数の第1クランプ具の間隔と前記複数の第2クランプ具の間隔とが同一であり、
前記複数の第2クランプ具の移動速度は前記複数の第1クランプ具の移動速度より速くなるように構成される。
上記(6)の構成によれば、左右骨付き肢肉を上記第1クランプ具から第2クランプ具に受け渡すときの第1クランプ具の動作と第2クランプ具の動作との同期制御が容易になると共に、処理ラインにおける骨付き肢肉の処理速度が筋入れ部と比べて速くなるため、処理ラインにおける処理効率を向上できる。
【0015】
(7)一実施形態では、前記(5)又は(6)の構成において、
前記複数の処理ステーションの少なくとも1つは、前記骨部の周囲を切断するための第2切断刃を備えると共に、
前記複数の処理ステーションの少なくとも1つは、前記第2切断刃で切断された前記骨付き肢肉の肉部に係止可能であって、前記第2クランプ具との間隔を広げることで前記骨部から前記肉部を剥離可能な分離部材を備え、
前記分離部材は前記第2クランプ具の搬送方向に沿って前記第2クランプ具と同期して前記第2クランプ具の搬送速度と同一の速度で移動可能に構成される。
【0016】
上記(7)の構成によれば、分離部材は第2クランプ具の搬送方向に沿って第2クランプ具の搬送速度と同一の速度で移動することで、骨付き肢肉を搬送しながら停止させずに骨肉分離が可能になり、解体処理効率を向上できる。
【0017】
(8)一実施形態では、前記(7)の構成において、
前記複数の処理ステーションは、
前記骨付き肢肉の肢首部の周囲に付着した腱を切断するための前記第2切断刃を備える肢首カットステーションと、
前記肢首カットステーションより前記骨付き肢肉の搬送方向下流側に設けられ、前記肢首部の腱を切断した前記骨付き肢肉の切断部の肉部を骨部から分離するための前記分離部材と、前記肉部が分離された前記骨部に付着する白膜を切断する前記第2切断刃と、を備える白膜カットステーションと、
を含む。
【0018】
上記(8)の構成によれば、上記肢首カットステーションで白膜を切断せずに、上記白膜カットステーションで白膜を切断するようにしているので、白膜の内側でひざ関節部に付着した腓骨が骨部から分離するのを防止できる。そのため、腓骨が正肉に混じることで正肉の価値を下げるのを防止できる。
【0019】
(9)一実施形態に係る分離肉の製造方法は、
右肢の骨付き肢肉及び左肢の骨付き肢肉の筋入れを夫々別の筋入れ部で行う筋入れステップと、
筋入れされた前記右肢の骨付き肢肉及び前記左肢の骨付き肢肉を、前記骨付き肢肉の骨部と肉部とを分離するための単一の処理ラインに投入する投入ステップと、
前記処理ラインに投入された前記右肢の骨付き肢肉及び前記左肢の骨付き肢肉の前記骨部と前記肉部とを分離する処理ステップと、
を備える。
【0020】
上記(9)の方法によれば、筋入れ部を右肢用と左肢用とに分けることで、筋入れ位置や筋入れ刃の構成を夫々の骨付き肢肉の形状に合ったものとすることができる。従って、右肢又は左肢毎に筋入れ刃の位置や構成を変える必要がなくなるため、夫々の筋入れ部を簡素化できると共に、処理数を増加できる。また、筋入れ後の処理は、右肢及び左肢とも単一の処理ラインで行うことで、処理ラインの設置スペースをコンパクト化できる。
【0021】
(10)一実施形態では、前記(9)の方法において、
前記筋入れステップにおける前記右肢の骨付き肢肉及び前記左肢の骨付き肢肉の単位時間当たりの処理数を同一とし、
前記処理ステップにおける前記骨付き肢肉の単位時間当たりの処理数を前記処理数より多くする。
上記(10)の方法によれば、筋入れステップにおける右肢の骨付き肢肉及び左肢の骨付き肢肉の単位時間当たりの処理数を同一とすることで、左右筋入れ部における筋入れ刃の動作を容易に同期でき、筋入れ動作の制御が容易になる。
また、筋入れ後の処理ステップにおける骨付き肢肉の単位時間当たりの処理数を筋入れステップにおける処理数より多くすることで、第1クランプ具と第2クランプ具との動作の同期制御が容易になり、かつ筋入れステップにおける処理数を低下させることなく、筋入れ後の処理効率を向上できる。
【0022】
(11)一実施形態では、前記(9)又は(10)の方法において、
前記投入ステップにおいて、複数の前記骨付き肢肉の関節部が前記処理ラインに常に同一方向を向いて投入される。
上記(11)の方法によれば、複数の骨付き肢肉の関節部が常に同一方向を向いて処理ラインに投入されるため、処理ラインに設けられた機器類は左右骨付き肢肉の処理を共通の処理動作で解体処理が可能になる。従って、処理効率を向上できる。
【発明の効果】
【0023】
一実施形態によれば、右肢及び左肢の骨付き肢肉の解体処理を行う場合に、設備の設置スペースをコンパクト化できると共に、単位時間当たりの処理個数を増加できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一実施形態に係る骨付き肢肉の処理システムの全体構成図である。
図2】一実施形態に係る骨付き肢肉の処理システムの全体構成図である。
図3】一実施形態に係る筋入れ部の斜視図である。
図4】一実施形態に係る処理ラインの一つの処理ステーションを示す斜視図である。
図5】一実施形態に係る分離肉の製造方法の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0026】
図1及び図2は、幾つかの実施形態に係る骨付き肢肉の処理システム10(10A、10B)を示す。処理システム10(10A、10B)は、骨付き肢肉Mの処理ラインの最上流において、右肢の骨付き肢肉M(R)の筋入れを行うための右肢用筋入れ部12と、左肢の骨付き肢肉M(L)の筋入れを行うための左肢用筋入れ部14と、を備える。右肢用筋入れ部12及び左肢用筋入れ部14で筋入れされた骨付き肢肉Mは、処理ライン16(16A、16B)の投入部1stに搬送される。処理ライン16は骨付き肢肉Mの骨部と肉部とを分離するための複数の処理ステーションを有し、投入部1stは複数の処理ステーションの最上流部に設けられる。投入部1stに投入された骨付き肢肉Mは、処理ライン16の複数のステーションで順々に解体処理がなされ、最終的に骨部と肉部とが分離される。
【0027】
上記構成によれば、右肢の骨付き肢肉M(R)は右肢用筋入れ部12で筋入れされ、左肢の骨付き肢肉M(L)は左肢用筋入れ部14で筋入れされるので、各筋入れ部で筋入れ位置や筋入れ刃の構成を夫々の骨付き肢肉の形状に合ったものとすることができる。従って、右肢又は左肢毎に筋入れ刃の位置や構成を変える必要がなくなるため、夫々の筋入れ部を簡素化できると共に、処理数を増加できる。また、筋入れ後の処理は、右肢及び左肢とも単一の処理ライン16で行うことで、処理ライン16の設置スペースをコンパクト化できる。
【0028】
一実施形態では、図1及び図2に示すように、右肢用筋入れ部12及び左肢用筋入れ部14は、夫々水平方向に沿って設けられた搬送路20a及び20bと、搬送路20a及び20bで搬送される骨付き肢肉の筋入れを行うための筋入れ刃22a及び22b(第1切断刃)と、を備える。右肢用筋入れ部12と左肢用筋入れ部14とは、搬送路20a、20b及び筋入れ刃22a、22bを含めて、該搬送路間の中心線Cに対して対称に配置される。
【0029】
この実施形態によれば、右肢用筋入れ部12及び左肢用筋入れ部14が中心線Cに対して対称に配置されるため、左右骨付き肢肉を同じ向きで搬送路に投入したとき、左右骨付き肢肉に対して両者とも内側又は外側の同じ側から筋入れ刃22a及び22bを挿入したとき、両者とも皮のない内側面から筋入れできる。これによって、両者とも皮が存在する外側面を切らずに済むので、皮を切らない規格に合った正肉を得ることができる。
【0030】
一実施形態では、図3に示すように、搬送路20a及び20bは、左右骨付き肢肉M(R)及びM(L)は横向きの姿勢で、即ち、骨部bが水平方向に沿いかつ骨付き肢肉の内側面Sin及び外側面Soutが上下方向に沿って搬送可能に構成される。
この実施形態によれば、左右骨付き肢肉を上記姿勢で搬送することで、左右骨付き肢肉を搬送しながら固定された筋入れ刃22a及び22bで骨部bと肉部mとの間を骨部に沿って切断できる。従って、筋入れのために骨付き肢肉を停止させる必要がないため、処理効率を向上できる。また、筋入れ刃が固定刃でよいため、筋入れ刃の駆動部が不要となり、低コスト化できる。
【0031】
一実施形態では、図1及び図2に示すように、作業者Pが左右骨付き肢肉M(L)及びM(R)のひざ部nを筋入れ部側へ向けて、右肢骨付き肢肉M(R)を右肢用筋入れ部12に投入し、左肢骨付き肢肉M(L)を左肢用筋入れ部14に投入する。両筋入れ部12及び14の入口で、右肢用筋入れ部12及び左肢骨付き肢肉M(L)は反転機(不図示)で反転され、ひざ部nが上流側(作業者P側)を向く。そして、搬送路20a及び20bでは、左右骨付き肢肉M(L)及びM(R)は、ひざ部nが上方に位置した横向きの姿勢で搬送路20a及び20bを搬送される。この状態を左肢骨付き肢肉M(L)を例にとって図3に示す。
【0032】
筋入れ刃22a及び22bは搬送路20a及び20bの外側(中心線Cとは逆側)に設けられる。左右骨付き肢肉の内側面Sinが外側、即ち中心線Cとは逆側を向いており、筋入れ刃22a及び22bは内側面Sinから骨部bの下面と肉部mとの間に挿入される。
従って、皮が存在する外側面Soutを切らずに済むので、皮を切らない規格に合った高価値の正肉を得ることができる。また、筋入れ刃22a及び22bは搬送路20a及び20bの外側に設けられるので、メンテナンスが容易である。
【0033】
一実施形態では、図1及び図2に示すように、右肢用筋入れ部12及び左肢用筋入れ部14は、夫々複数の第1クランプ具24a及び24bを備える。図3に示すように、第1クランプ具24a及び24bは、左右骨付き肢肉M(L)及びM(R)を把持し搬送路20a及び20bに沿って移動可能に構成される。
処理ライン16は、投入部1stで複数の第1クランプ具24a及び24bから受け取った左右骨付き肢肉を、複数の処理ステーション2st〜10st又は処理ステーション2st〜12stに順々に搬送する複数の第2クランプ具26を備える。
投入部1stは、右肢用筋入れ部12から右肢骨付き肢肉M(R)を受け取る第1受取り部18aと、左肢用筋入れ部14から左肢骨付き肢肉M(L)を受け取る第2受取り部18bと、を有する。第1受取り部18aと第2受取り部18bとの間隔と、複数の第2クランプ具26間の間隔とは同一に構成される。
そして、第1受取り部18aにおける右肢骨付き肢肉M(R)の受取りと第2受取り部18bにおける左肢骨付き肢肉M(L)の受取りが同時に行われるように構成される。
【0034】
この実施形態によれば、投入部1stにおいて、左右骨付き肢肉を第1クランプ具24a及び24bから第2クランプ具26に受け渡すときの第1クランプ具の動作と第2クランプ具の動作との同期制御が容易になる。即ち、左右筋入れ部12及び14から同時に受け取った左右骨付き肢肉をそのまま同時に2個の第2クランプ具26に受け渡せばよい。また、処理ライン16における骨付き肢肉Mの処理速度が筋入れ部12及び14と比べて2倍にすれば、左右骨付き肢肉を第1クランプ具24a及び24bから第2クランプ具26に受け渡すときの受け渡しタイミングの設定が容易になると共に、処理ライン16における処理効率を向上できる。
【0035】
一実施形態では、図3に示すように、第1クランプ具24a及び24bは、連結部28を介して一体に構成される。従って、第1クランプ具24a及び24bを同期移動させるために複雑な制御は不要である。
【0036】
一実施形態では、図3に示すように、第1クランプ具24a及び24bは上方に開口する凹部25を有する。凹部25に左右骨付き肢肉の肢首部fが挿入され、第1クランプ具24a及び24bは左右骨付き肢肉を把持し、搬送路20a及び20bに沿って左右骨付き肢肉を搬送する。
【0037】
一実施形態では、図1及び図2に示すように、右肢用筋入れ部12で筋入れされた右肢骨付き肢肉M(R)は、受渡し部30aを介して第1受取り部18aに受け渡される。左肢用筋入れ部14で筋入れされた左肢骨付き肢肉M(L)は、受渡し部30bを介して第2受取り部18bに受け渡される。
受渡し部30a及び30bは、夫々凹部25と同様の凹部を有し、該凹部に骨付き肢肉を吊架し、軸32a及び32bを中心に180度回転し、夫々第1受取り部18a及び第2受取り部18bに骨付き肢肉を受け渡す。
【0038】
一実施形態では、第1受取り部18a及び第2受取り部18bは、受渡し部30a及び30bと第2クランプ具26の搬送路34との間に延設される。受渡し部30a及び30bの中央部には、延在方向に沿ってスリット孔が形成され、骨付き肢肉は受渡し部30a及び18bから押出し具(不図示)によって押し出され、該スリット孔を介して第2クランプ具26の把持部に挿入される。
【0039】
一実施形態では、第1クランプ具24a及び第1クランプ具24b間の間隔と複数の第2クランプ具26間の間隔とが同一となるように構成される。そして、複数の第2クランプ具26の移動速度は第1クランプ具24a及び24bの移動速度より速くなるように構成される。
この実施形態によれば、左右骨付き肢肉を第1クランプ具24a及び24bから第2クランプ具26に受け渡すときの第1クランプ具の動作と第2クランプ具の動作との同期制御が容易になると共に、処理ライン16における骨付き肢肉Mの処理速度が筋入れ部12及び14と比べて速くなるため(例えば2倍になるため)、処理ライン16における処理効率を向上できる。
【0040】
一実施形態では、図1及び図2に示すように、右肢用筋入れ部12の搬送路20aと左肢用筋入れ部14の搬送路20bとは並列に配置され、かつ左右筋入れ部における左右骨付き肢肉の搬送方向が同一方向となるように配置される。
この実施形態によれば、左右筋入れ部の搬送路20a及び20bが並列に配置されることで、筋入れ部12及び14のスペースをコンパクト化できる。また、両搬送路の各々へ骨付き肢肉Mを投入する投入部を互いに近接配置でき、1人の作業者Pで左右両投入部への投入作業が可能になる。
【0041】
一実施形態では、図1及び図2に示すように、処理ライン16は、複数の処理ステーション2st〜10st又は処理ステーション2st〜12stを有し、第2クランプ具26で把持された骨付き肢肉Mは搬送路34に沿って第2ステーション2stから第12ステーション12stまでの各処理ステーションに順々に搬送され、各処理ステーションで解体のための処理が行われる。
【0042】
複数の処理ステーションの少なくとも1つは、骨部bの周囲に付着した腱を切断するための切断刃36(第2切断刃)を備える。また、複数の処理ステーションの少なくとも1つは、切断刃36で切断された骨付き肢肉の肉部mに係止可能であって、第2クランプ具26との間隔を広げることで骨部bから肉部mを剥離可能な分離部材38を備える。分離部材38は、第2クランプ具26と同期して第2クランプ具26と同一方向に移動可能であり、かつ搬送路34に沿って第2クランプ具26の搬送速度と同一の速度で移動可能に構成される。
【0043】
この実施形態によれば、分離部材38は、第2クランプ具26の移動方向と同一方向に沿って同一速度で移動しながら、第2クランプ具26との間隔を広げることで骨部bから肉部mを剥離させることができると共に、骨付き肢肉Mの移動中に骨肉分離が可能になる。従って、骨肉分離工程中に骨付き肢肉Mを停止させる必要がないので、処理効率を向上できる。
【0044】
図4に、切断刃36と分離部材38とを備える処理ステーションの一例を示す。
図4において、分離部材38の一方の固定セパレータ38aは基部40に固定され、他方の可動セパレータ38bは回動軸42を介して回動可能に基部40に取り付けられる。また、基部40に可動セパレータ38bを回動させる駆動部44が固定される。かかる構成により、骨付き肢肉Mの大きさ及び形状によって固定セパレータ38aと可動セパレータ38b間の間隔を調整できる。
【0045】
切断刃36は、アーム50によって搬送路34を搬送される骨付き肢肉Mに接近及び退避可能に支持される。切断刃36は、図示のように1個配置され、あるいは骨付き肢肉Mを挟むように2個以上設けられる。
一実施形態では、切断刃36は円形の外形を有し回転軸48を中心に回転する丸刃で構成される。駆動部52からアーム50を介して切断刃36に回転力が伝達され、骨付き肢肉Mの骨部bの周囲に付着した腱や肉部mを切断する。分離部材38は、例えば切断刃36で切断された切断面に係止し、第2クランプ具26との間隔を広げることで骨部bから肉部mを分離できる。
【0046】
駆動部44はエアシリンダで構成され、該エアシリンダのピストンロッド44aは回動軸43を介して可動セパレータ38bに接続され、ピストンロッド44aの往復動によって可動セパレータ38bを固定セパレータ38aに対して進退させることができる。ピストンロッド44aはコイルバネ46により弾性的に支持され、伸長したピストンロッド44aはコイルバネ46から逆方向の力が付与される。
基部40は骨付き肢肉Mの搬送路34に沿って第2クランプ具26の移動速度と同一の速度で移動可能であり、これによって、第2クランプ具26の移動に分離部材38が追従するため、第2クランプ具26で骨付き肢肉Mを搬送しながら骨付き肢肉Mを停止させることなく骨部bと肉部mとの分離が可能になる。
【0047】
一実施形態では、図1及び図2に示すように、処理ライン16は、肢首カットステーション(第2ステーション2st)と、第2ステーション2stの骨付き肢肉搬送方向下流側に設けられた肢首部引き剥がしステーション(第3ステーション3st)と、さら下流側に設けられた白膜カットステーション(第4ステーション4st)とを備える。
第2ステーション2stでは、骨付き肢肉Mの肢首部fの周囲に付着した腱を切断刃36で切断する。第3ステーション3stでは、肢首部fの周囲に付着した腱を分離部材38で引き剥がす。第4ステーション4stでは、分離部材38で白膜を残して骨付き肢肉Mの肉部mを骨部bから分離すると共に、肉部mが分離された後骨部bに付着する白膜を切断刃36で切断する。
【0048】
この実施形態によれば、第4ステーション4stで白膜を残して骨付き肢肉Mの肉部mを骨部bから先に分離し、その後、白膜を切断するようにしているので、白膜の内側でひざ関節部に付着した腓骨が骨部bから分離するのを防止できる。そのため、腓骨が正肉に混じって正肉の価値が下がるのを防止できる。
【0049】
一実施形態では、第5ステーション5stでひざ関節部の骨部bに付着したX筋を切断刃36で切断すると共に、分離部材38によりひざ関節部の骨部bに付着した肉部mを引き剥がす。
【0050】
図1に示す処理システム10(10A)では、第5ステーション5stの後、第6ステーション6stにおいて、切断刃36でひざ関節部の骨部bに付着した腱を切断すると共に、分離部材38でひざ関節部の骨部bから肉部mを引き剥がし、ひざ関節部を露出させる。第7ステーション7stでは、切断刃36でひざ関節部下部の骨部bに付着した腱を切断すると共に、分離部材38でひざ関節部下部の骨部bに付着した肉部mを引き剥がす。第8ステーション8stでは、分離部材38で骨部bに付着した肉部mを大腿骨骨頭まで引き剥がす。第9ステーション9stでは、肉部mの最終引き剥がしを行う。即ち、分離部材38で肉部mを押えながら第2クランプ具26を引き上げて骨付き肢肉Mを引き上げることで、大腿骨骨頭から肉部mを引き剥がす。この動作中に、大腿骨骨頭末端に付着した腱を切断刃(丸刃カッタ)36で切断する。第10ステーション10stでは、第2クランプ具26のチャック(不図示)を開放し、肉部mが分離した骨部bを落下させる。骨部bは肉部mとは異なる排出路(不図示)に落下し排出される。
【0051】
図2に示す処理システム10(10B)では、第5ステーション5stの後、オプションとして、第6ステーション6stにおいて、ひざ関節部N(図3参照)から肉部mの末端までの長さを測定する。そして、第7ステーション7stにおいて、該測定値に基づいてひざ部nの表面にある膝関節筋を切断する。これによって、ひざ部nの残肉をなくし、該残肉を正肉側に移行させることで、正肉の価値を高めることができる。
処理システム10(10B)の第8ステーション8st〜第12ステーション12stは処理システム10(10A)の第6ステーション6st〜第10ステーション10stに相当し、処理システム10(10A)の第6ステーション6st〜第10ステーション10stと同一の処理を行う。
【0052】
一実施形態に係る分離肉の製造方法は、図5に示すように、まず筋入れステップS10を行うが、この筋入れステップS10では、右肢用筋入れ部12で右肢骨付き肢肉M(R)の筋入れを行い、左肢用筋入れ部14で左肢骨付き肢肉M(L)の筋入れを行う。夫々の筋入れ部で筋入れされた右肢骨付き肢肉M(R)及び左肢骨付き肢肉M(L)は、骨付き肢肉Mの骨部bと肉部mとを分離するための処理ライン16に投入される(投入ステップS12)。処理ライン16では、右肢骨付き肢肉M(R)及び左肢骨付き肢肉M(L)の骨部bと肉部mとを分離する(解体処理ステップS14)。
【0053】
上記方法によれば、右肢の骨付き肢肉M(R)は専用の右肢用筋入れ部12で筋入れされ、左肢の骨付き肢肉M(L)は専用の左肢用筋入れ部14で筋入れされるので、各筋入れ部で筋入れ位置や筋入れ刃の構成を夫々の骨付き肢肉の形状に合ったものとすることができる。従って、右肢又は左肢毎に筋入れ刃の位置や構成を変える必要がなくなる。また、筋入れ後の処理は、右肢及び左肢とも単一の処理ライン16で行うことで、処理ライン16の設置スペースをコンパクト化できる。
【0054】
一実施形態では、筋入れステップS10における右肢骨付き肢肉M(R)及び左肢骨付き肢肉M(L)の単位時間当たりの処理数を同一とし、解体処理ステップS14における骨付き肢肉Mの単位時間当たりの処理数を右肢用筋入れ部12及び左肢用筋入れ部14の処理数より多くする。
【0055】
この実施形態によれば、筋入れステップS10における右肢骨付き肢肉M(R)及び左肢骨付き肢肉M(L)の単位時間当たりの処理数を同一とすることで、左右筋入れ部12及び14における筋入れ刃22a及び22bの動作を容易に同期でき、筋入れ動作の制御が容易になる。また、筋入れ後の解体処理ステップS14における骨付き肢肉Mの単位時間当たりの処理数を筋入れステップS10における処理数より多くすることで、第1クランプ具24a及び24bと第2クランプ具26との動作の同期制御が容易になり、かつ筋入れステップS10における処理数を低下させることなく、筋入れ後の処理効率を向上できる。
【0056】
一実施形態では、筋入れステップS10における右肢骨付き肢肉M(R)及び左肢骨付き肢肉M(L)の単位時間当たりの処理数を同一とし、筋入れ後の解体処理ステップS14における骨付き肢肉Mの単位時間当たりの処理数を筋入れステップS10における処理数の2倍とすることで、第1クランプ具24a及び24bと第2クランプ具26との動作の同期制御が容易になり、かつ筋入れステップS10における処理数を低下させることなく、筋入れ後の処理効率を向上できる。
【0057】
一実施形態では、図3に示すように、第1クランプ具24a及び24bを連結部28を介して一体に構成することで、第1クランプ具24a及び24bの動作を同期させることが容易になり、かつ左右筋入れ部12及び14における骨付き肢肉Mの処理数を容易に同一とすることができる。
【0058】
一実施形態では、投入ステップS12において、複数の骨付き肢肉Mの関節部を処理ライン16に常に同一方向を向いて投入する。
この実施形態によれば、複数の骨付き肢肉Mの関節部が常に同一方向を向いて処理ライン16に投入されるため、処理ライン16に設けられた機器類は左右骨付き肢肉Mの処理を共通の処理動作で解体処理が可能になる。従って、処理効率を向上できる。
【0059】
一実施形態では、図3に示すように、左右筋入れ部でひざ部nが上向きの姿勢で筋入れされた左右骨付き肢肉Mは、夫々受渡し部30a及び30bで反転して第1受取り部18a及び第2受取り部18bに受け渡される。従って、処理ライン16では、左右骨付き肢肉Mともひざ部nが第2クランプ具26の凹部の奥側に向いた状態で把持される。
このように、左右骨付き肢肉Mともひざ部nが第2クランプ具26の奥側に位置する共通の姿勢で搬送されるため、共通の処理工程で解体処理が可能になる。従って、処理効率を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
一実施形態によれば、右肢及び左肢の骨付き肢肉の解体処理を行う場合に、設備の設置スペースをコンパクト化できると共に、単位時間当たりの処理個数を増加できる。
【符号の説明】
【0061】
10(10A、10B) 処理システム
12 右肢用筋入れ部
14 左肢用筋入れ部
16(16A、16B) 処理ライン
18a 第1受取り部
18b 第2受取り部
20a、20b、34 搬送路
22a、22b 筋入れ刃(第1切断刃)
24a、24b 第1クランプ具
25 凹部
26 第2クランプ具
28 連結部
30a、30b 受渡し部
32a、32b 軸
36 切断刃(第2切断刃)
38 分離部材
38a 固定セパレータ
38b 可動セパレータ
40 基部
42、43 回動軸
44、52 駆動部
44a ピストンロッド
46 コイルバネ
48 回転軸
50 アーム
C 中心線
M 骨付き肢肉
M(R) 右肢骨付き肢肉
M(L) 左肢骨付き肢肉
N ひざ関節部
P 作業者
in 内側面
out 外側面
b 骨部
f 肢首部
m 肉部
n ひざ部
図1
図2
図3
図4
図5