(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のフッ素樹脂は、テトラフルオロエチレン由来の構成単位T、ヘキサフルオロプロピレン由来の構成単位H及びフッ化ビニリデン由来の構成単位Vを含むフッ素樹脂であって、前記構成単位T、H及びVの合計に対して、前記構成単位Tのモル比(T)が0.25以上、0.56未満であり、前記構成単位Vのモル比(V)が0.60以下であるフッ素樹脂であり、かつ、無機フィラーを含まないか、又は5質量%以下含んでいる。このような組成のフッ素樹脂は、電子素子から発せられた熱により変形する場合がある。しかし、本発明のフッ素樹脂は、後述する通り、紫外線を照射すること等により、熱による流動が抑制されており、所定の方法により評価した流動性指数が低いという特徴を有する。
【0010】
前記構成単位T、H及びVの合計に対して、前記構成単位Tのモル比(T)が0.25以上であるフッ素樹脂は、高温時の熱変色耐性が高い。構成単位Tのモル比(T)の下限は、より好ましくは0.28以上、更に好ましくは0.30以上である。一方、構成単位Tのモル比(T)の上限は、0.56未満であり、透明性が高い。構成単位Tのモル比(T)の上限は0.53以下が好ましく、0.50以下がより好ましい。
【0011】
前記構成単位T、H、及びVの合計に対する構成単位Vのモル比(V)は0.60以下である。これにより透明性が向上する傾向となる。そのため構成単位Vのモル比(V)の上限は、好ましくは0.58以下、より好ましくは0.56以下である。一方、構成単位Vのモル比(V)の下限は、好ましくは0.20以上であることが好ましい。これにより、樹脂の屈折率を高めることができ、素子と樹脂の界面での屈折率差を緩和できるため、素子からの光の取り出し効率が向上する。そのため構成単位Vのモル比(V)の下限は、より好ましくは0.30以上、更に好ましくは0.40以上、更により好ましくは0.50以上である。
【0012】
前記構成単位T、H、及びVの合計に対する構成単位Hのモル比(H)は0.05以上、0.50以下であることが好ましい。構成単位Hのモル比(H)の下限は透明性の観点から、より好ましくは0.07以上、更に好ましくは0.09以上である。一方、構成単位Hのモル比(H)の上限は、耐熱変色性の観点からより好ましくは0.40以下、更に好ましくは0.30以下、更により好ましくは0.20以下である。
【0013】
モル比(V)のモル比(T)に対する比(モル比(V)/モル比(T))は、0.20以上、3.50以下であることが好ましい。モル比(V)/モル比(T)を上記範囲に制御することによって、密着性が向上する傾向となる。また、高温加熱時の樹脂の着色を防止できる。モル比(V)/モル比(T)の下限は、より好ましくは0.50以上、更に好ましくは1.00以上、更により好ましくは1.30以上である。一方、モル比(V)/モル比(T)の上限は、より好ましくは3.00以下、更に好ましくは2.50以下、更により好ましくは2.00以下である。
【0014】
モル比(H)のモル比(T)に対する比(モル比(H)/モル比(T))は、0.10以上、0.80以下であることが好ましい。モル比(H)/モル比(T)を上記範囲に制御することにより、透過率が向上する傾向となる。モル比(H)/モル比(T)の下限は、より好ましくは0.20以上、更に好ましくは0.24以上、更により好ましくは0.28以上である。一方、モル比(H)/モル比(T)の上限は、より好ましくは0.60以下、更に好ましくは0.50以下、更により好ましくは0.40以下である。
【0015】
フッ素樹脂の各構成単位のモル比は、後記する実施例に記載のNMR測定により求めることができる。モル比の算出に当たっては、例えばEric B. Twum et al., “Multidimensional 19F NMR Analyses of Terpolymers from Vinylidene Fluoride (VDF)-Hexafluoropropylene(HFP)-Tetrafluoroethylene (TFE)”, Macromolecules、2015年, 48巻, 11号, p.3563-3576を参照することができる。
【0016】
本発明のフッ素樹脂は、前記構成単位T、H、及びV以外の他の構成単位を含む樹脂であってもよい。他の構成単位としては、例えばエチレン由来の構成単位、パーフルオロアルキルビニルエーテル由来の構成単位、クロロトリフルオロエチレン由来の構成単位等が挙げられる。
【0017】
本発明のフッ素樹脂の全構成単位に対する前記構成単位T、H、及びVの合計モル比は、好ましくは0.70以上、より好ましくは0.80以上、更に好ましくは0.90以上、特に好ましくは0.95以上、最も好ましくは1である。即ち、前記構成単位T、H、及びV以外の構成単位を含まないフッ素樹脂であることが最も好ましい。これにより耐熱変形性を向上し易くすることができる。
【0018】
上記フッ素樹脂の重量平均分子量は50,000以上であることが好ましい。重量平均分子量を50,000以上とすることにより融解時の粘度を高くすることができるため、本発明のフッ素樹脂をLED封止用樹脂として用いたときに、LED点灯時の封止樹脂の形状変化を抑制することができる。上記フッ素樹脂の重量平均分子量の下限は、より好ましくは100,000以上、更に好ましくは200,000以上、更により好ましくは250,000以上、特に好ましくは300,000以上である。一方、上記フッ素樹脂の重量平均分子量は、後述する分子量測定の際に用いるテトラヒドロフランにフッ素樹脂が溶解しなくなる程度にまで大きくてもよいし、溶解性を確保するため1,000,000以下としてもよい。上記フッ素樹脂の重量平均分子量の上限は、より好ましくは800,000以下、更に好ましくは600,000以下、更により好ましくは500,000以下である。なお、重量平均分子量は標準ポリスチレン換算値である。また、本発明のフッ素樹脂がテトラヒドロフランに溶解しないとは、25mgの樹脂を5mlのテトラヒドロフランに入れ、密閉した状態で、60℃で1時間保持した後に、樹脂の少なくとも一部が溶解せずに残存している状態を意味するものとする。
【0019】
上記フッ素樹脂が共重合体である場合、該共重合体は、ランダム共重合体、またはブロック共重合体のいずれであってもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。特に上記フッ素樹脂をランダム共重合体樹脂にすることにより、構成単位Tや構成単位Vの結晶化度を抑制することができ、透明性を確保しやすい。
【0020】
上記フッ素樹脂の屈折率は、好ましくは1.34超、より好ましくは1.35以上、更に好ましくは1.36以上である。これにより、本発明のフッ素樹脂を発光素子封止用に用いる場合に、後述する発光素子(例えば紫外線発光素子または可視光発光素子)と封止部の屈折率の差を小さくすることができ、発光素子と封止部との界面における全反射を低減して、光取出し効率を向上させることができる。なお光取出し効率とは、発光素子で発生した光が発光素子の外部に取り出される効率のことである。一方、フッ素樹脂の屈折率の上限は、例えば1.45以下、好ましくは 1.40以下であってもよい。屈折率は、カタログ値や一般的な物性表に記載の数値を使用しても良いし、アッベ屈折率計、エリプソメーターなどにより測定することができる。
【0021】
前記フッ素樹脂は、融点が90℃以上、140℃以下であることが好ましい。融点が90℃以上であることにより、本発明のフッ素樹脂を発光素子封止用に用いる場合に、発光素子の発熱による封止部材の溶融を抑制できる。フッ素樹脂の融点の下限は、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは110℃以上、更により好ましくは115℃以上である。一方、樹脂の融点が140℃以下であることにより、フッ素樹脂の加熱溶融による発光素子の封止を容易にでき、また封止後のフッ素樹脂は透明性や密着性に優れる。フッ素樹脂の融点の上限は、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは120℃以下である。フッ素樹脂の融点は、例えば示差走査熱量計(DSC、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、昇温速度10℃/分で−50℃から200℃の温度まで変化させ、これにより得られる融解曲線から融解ピーク温度(Tm)を測定することにより求めることができる。
【0022】
本発明のフッ素樹脂は、無機フィラーを含まないか、無機フィラーを含んでいる場合にはその量は5質量%以下である。無機フィラーを含まないか又はその量が少ないと、発光装置の基板等に対する密着性を高くでき、また光(特に可視光領域)の透過率低下を抑制できる。
【0023】
前記無機フィラーとしては、金属フッ化物、金属酸化物、金属リン酸塩、金属炭酸塩、金属スルホン酸塩、金属硝酸塩、金属窒化物、窒化ホウ素等が挙げられる。無機フィラーは、1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。無機フィラーにより、フッ素樹脂の熱分解を防止し易くすることができる。前記無機フィラーは、金属フッ化物であることが好ましく、金属フッ化物としては、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化ストロンチウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化マグネシウム、氷晶石等が挙げられる。このうちフッ化マグネシウムが好ましい。
【0024】
無機フィラーを含んでいる場合には、無機フィラーの量は3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。本発明のフッ素樹脂は無機フィラーを含んでいないことが最も好ましい。
【0025】
本発明のフッ素樹脂は、前記無機フィラーの他に添加剤等を含有していてもよいが、添加剤の量は、本発明のフッ素樹脂全体に対して3質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以下であり、0質量%が更に好ましい。添加剤の量が少ないと、前記フッ素樹脂の密着性が発揮され易くなる。
【0026】
本発明のフッ素樹脂の耐熱変形性は、本発明のフッ素樹脂を200℃で3時間保持した際の前記フッ素樹脂の上面から見た面積S(mm
2)を、前記フッ素樹脂の重量W(mg)で除して得られる流動性指数Fにより評価できる。フッ素樹脂は、アルミニウム基材上で保持することが好ましい。流動性指数Fは1.5以下であり、好ましくは1.3以下であり、より好ましくは1.0以下であり、更に好ましくは0.70以下であり、特に0.65以下が好ましい。流動性指数Fの下限は特に限定されないが、例えば0.50である。特に流動性指数Fが0.70以下である場合には、本発明のフッ素樹脂は溶媒に溶解しない。「溶媒に溶解しない」とは、25mgの樹脂を、5mlのテトラヒドロフランに入れ、60℃で1時間保持した後に、樹脂の少なくとも一部が溶解せずに残存している状態を言う。
【0027】
フッ素樹脂の流動性を抑える観点からは、前記流動性指数Fは低いほど好ましいが、本発明のフッ素樹脂を溶融又は溶媒に溶解させて用いる場合などには、流動性指数Fを1.5以下としつつも、0.90以上としておくことも好ましく、0.90以上、1.3以下としてもよいし、1.0以上、1.5以下としてもよいし、1.0以上、1.3以下としてもよい。このような流動性指数Fの範囲が好ましい例として、本発明のフッ素樹脂を発光素子の封止に用いる場合が挙げられる。
【0028】
前記流動性指数の評価に際しては、2mm×1.5mm×厚さ1mmのフッ素樹脂成型体を用いることが好ましく、面積S(mm
2)は、2mm×1.5mmの面の上面から見た面積を測定すればよい。
【0029】
また、耐熱変形性の度合いをサンプルの体積V(μl)と上記面積S(mm
2)から見積もってもよく、その場合、S/(V)
2/3の値を指標とできる。S/(V)
2/3の値は、4.0以下が好ましく、より好ましくは3.6以下であり、更に好ましくは2.6以下であり、一層好ましくは2.0以下であり、下限は特に限定されないが例えば1.5である。
【0030】
本発明のフッ素樹脂の形状は限定されず、シート状、塊状、ペレット状又は粉末状などが挙げられる他、発光装置を封止した後のフッ素樹脂のような形状も含まれる。シート状である場合の厚みは、例えば100μm以上5000μm以下である。本発明のフッ素樹脂が、前記した2mm×1.5mm×厚さ1mmのサイズよりも大きい場合には、前記サイズに切り出して流動性指数の評価を行えばよく、また前記サイズよりも小さい場合(特にペレット状、粉末状など)には圧縮成形等を行って前記サイズの成型体を作製してから評価すればよい。流動性指数を評価する際のフッ素樹脂成型体は、例えば相対密度が90%以上、又は見掛け密度が1.76g/cm
3以上となるようにすればよい。
【0031】
本発明のフッ素樹脂は、前記構成単位T、H及びVを含み、前記構成単位T、H及びVの合計に対して、前記構成単位Tのモル比(T)が0.25以上、0.56未満であり、前記構成単位Vのモル比(V)が0.60以下であり、無機フィラーを含まないか、又は5質量%以下含むフッ素樹脂に、紫外線を照射することで製造できる。前記構成単位T、H及びVを含み、前記構成単位T、H及びVの合計に対して、前記構成単位Tのモル比(T)が0.25以上、0.56未満であり、前記構成単位Vのモル比(V)が0.60以下であるフッ素樹脂は、通常、室温で結晶性であり、融点が140℃以下であり、熱で流動しやすいものであるが、紫外線を照射することで、無機フィラーを含まない場合又は無機フィラーを5質量%以下含む場合であっても、流動性を抑制することができ、好ましくは光(特に可視光)の透過率を大きく損なうことがないという利点を得ることもできる。
【0032】
つまり、本発明のフッ素樹脂の製造方法は、テトラフルオロエチレン由来の構成単位T、ヘキサフルオロプロピレン由来の構成単位H及びフッ化ビニリデン由来の構成単位Vを含み、室温で結晶性であり、融点が140℃以下であるフッ素樹脂であって、無機フィラーを含まないか、又は5質量%以下含むフッ素樹脂に、紫外線を照射する方法であるということもできる。前記融点は、好ましくは130℃以下であり、より好ましくは120℃以下であり、また90℃以上であってもよく、100℃以上がより好ましく、110℃以上が更に好ましく、115℃以上が一層好ましい。なお、フッ素樹脂が結晶性であるか否かは、X線回折測定により確認できる。
【0033】
前記紫外線とは、400nm以下(好ましくは300nm以下)にピーク波長を有する光であり、本発明では200nm以下にピーク波長を有する紫外線を照射することが好ましい。150nm以上、200nm以下の範囲と、250nm以上、300nm以下の範囲にそれぞれピーク波長を有する紫外線を照射することがより好ましい。
【0034】
特に、50nm以上、200nm以下の範囲と、150nm以上、300nm以下の範囲にそれぞれピーク波長を有する紫外線を照射する際には、酸素含有ガス雰囲気下で、前記紫外線を照射することが好ましい。前記紫外線を照射するための光源としては、低圧水銀ランプが挙げられる。酸素含有ガスは、酸素を含んでいれば特に限定されず、例えば酸素ガスであってもよいし、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスと酸素ガスとの混合ガスであってもよいし、空気であってもよい。酸素含有ガスの圧力は、大気圧とすることができる。
【0035】
紫外線の強度は、例えば0.02W/cm
2以上であり、0.04W/cm
2以上が好ましく、0.06W/cm
2以上がより好ましく、上限は特に限定されないが0.3W/cm
2であってもよい。前記紫外線強度は、紫外線が照射されるフッ素樹脂表面の値である。紫外線の照射時間は10分以上が好ましく、より好ましくは30分以上、更に好ましくは2時間以上、一層好ましくは9時間以上であり、上限は例えば70時間であってもよい。特に、0.06W/cm
2以上の強度で30分以上(好ましくは、2時間以上、より好ましくは9時間以上)紫外線を照射することが好ましい。また、上述したように、流動性指数Fを1.5以下としつつも、0.90以上としておくためには、0.06W/cm
2以上の強度で、30分以上、8時間以下(特に4時間以下)紫外線を照射することも好ましい。
【0036】
紫外線を照射するフッ素樹脂の形状も特に限定されず、シート状、塊状、ペレット状又は粉末状などのいずれであっても良い。
【0037】
なお、上記した構成単位T、H、及びVの比及び屈折率は、紫外線照射によっても変化しない。
【0038】
本発明のフッ素樹脂(すなわち、流動性指数Fが1.5以下であるフッ素樹脂)を用いて、発光素子を封止してもよいし、上記構成単位T、H及びVを含むフッ素樹脂であって、前記構成単位T、H及びVの合計に対して、前記構成単位Tのモル比(T)が0.25以上、0.56未満であり、前記構成単位Vのモル比(V)が0.60以下であり、無機フィラーを含まないか、又は5質量%以下含むフッ素樹脂であって流動性指数Fが1.5超のフッ素樹脂を用いて発光素子を封止した後に紫外線を照射して本発明のフッ素樹脂(流動性指数Fが1.5以下)としてもよい。本発明のフッ素樹脂は、表面実装型、チップオンボード型のいずれのタイプの発光装置の封止にも用いることができる。
【0039】
本発明のフッ素樹脂を用いて電子素子(好ましくは発光素子)を封止する方法の一例を、説明する。本発明のフッ素樹脂は、可視光を放出する可視光発光素子や紫外光を放出する紫外線発光素子等の発光素子を備え、該発光素子が、本発明のフッ素樹脂により封止されていることを特徴とする発光装置に好適に用いることができる。このような発光装置は、発光素子の上面を覆うように、前記フッ素樹脂(好ましくはシート形状)を配置し、このフッ素樹脂を溶融して前記発光素子を封止することによって製造可能である。
【0040】
以下では、本発明のフッ素樹脂(好ましくはシート形状)により封止された発光装置の一例について、側面図である
図1、2を参照しながら、より詳細に説明する。なお
図1、2では、後述する配線やバンプの図示は省略している。
図1に示すように、平板の基板3上に設けられている発光素子2上に本発明のフッ素樹脂1を配置して加熱溶融して、冷却することにより
図2に示すような発光素子2を封止する固化物10を形成し、発光装置20を製造することができる。当該加熱温度は、フッ素樹脂の融点以上であり、融点+10℃以上が好ましく、融点+20℃以上がより好ましい。加熱温度の上限は、例えば、270℃であり、より好ましくは230℃である。加熱時間は好ましくは2時間以上、4時間以下である。なお、基板3は、
図2に示すように複数の発光素子2を封止してから、切り欠け線3aで複数のブロックに切断して用いることができる。
【0041】
発光素子としては、
図3のフリップチップタイプの発光素子37やフェイスアップタイプの発光素子が挙げられる。発光素子37は、下側面の一部にアノード側のp電極30を備え、該p電極30の上にp層32が形成されている。更に発光素子37の下側面の別の一部に、カソード側のn電極31を備え、n電極31の上にn層34が形成されている。これらn電極31とn層34は、上記p電極30とp層32よりも上方にシフトして形成されており、上方に存在するn層34と下方に存在するp層32との間に活性層33が形成されている。更に上方に存在するn層34のさらに上に基材35が存在する。
【0042】
n層34は、例えばSi含有のGaN層やSi含有AlGaN層が挙げられる。p層32は、例えばMg含有GaN層が挙げられる。このp層32は、必要に応じて電子ブロック層などと積層構造にしてもよい。活性層33は、例えばInGaN層やAlGaN層が挙げられる。p電極30、p層32からn層34、n電極31に向けて順方向電流を流すことにより活性層33におけるバンドギャップエネルギに応じた発光が生じる。バンドギャップエネルギは、活性層33の例えばInN、GaN、およびAlNモル分率を調整することにより、InNとAlNが取り得るバンドギャップエネルギ(約0.7eVと約6.2eV)の範囲内で制御することができ、発光波長が約200nmから約1800nmまでの発光を得ることができる。
【0043】
発光素子が紫外線発光素子の場合、発光ピーク波長は300nm以下であることが好ましい。発光ピーク波長が300nm以下であることにより殺菌効果が発揮され易くなるため、殺菌用の発光装置に紫外線発光素子を用いることができる。発光ピーク波長は、より好ましくは280nm以下である。
【0044】
なお基材35として、サファイア基板、窒化アルミニウム基板等が挙げられる。p電極30の素材としてNi/Au、n電極31の素材として、Ti/Al/Ti/Au等が挙げられる。また図示していないがp電極30とn電極31の間の露出面は、短絡を防止するためにSiO
2等の保護絶縁膜により被覆されていても良い。
【0045】
基板は、
図2に示すように平らな基板3であってもよいし、
図4に示すような側壁39aを備える基板(キャビティ型)39であってもよい。
【0046】
図4に示す基板39上には配線(図示せず)が形成され、該配線上には、Au、Au−Sn(20質量%)合金等の金属製のバンプ36が形成されている。そしてバンプ36を介して、配線(図示せず)と発光素子37のp電極30、n電極31とがそれぞれ電気接続できるように固定されている。
図4に示す態様では、本発明のフッ素樹脂を加熱溶融して冷却することにより得られる固化物11で封止されて発光装置21が形成されている。
【0047】
その他に、発光素子等が固化物により封止され、かつその表面に、シリカガラス、ホウケイ酸ガラス等で形成された集光レンズが設けられて、発光装置が形成されていてもよい。集光レンズによって光取出し効率を向上することができるが、該集光レンズは必ずしも設ける必要はない。
【0048】
本発明のフッ素樹脂が粉末状、ペレット状等である場合には、シート形状である封止剤を加熱溶融及び冷却させて発光素子を封止することに代えて、溶媒に溶解させた粉末状又はペレット状フッ素樹脂を、発光素子に塗布及び乾燥させて発光素子を封止すればよい。
【0049】
また、上述した通り、上記構成単位T、H及びVを含むフッ素樹脂であって、前記構成単位T、H及びVの合計に対して、前記構成単位Tのモル比(T)が0.25以上、0.56未満であり、前記構成単位Vのモル比(V)が0.60以下であり、無機フィラーを含まないか、又は5質量%以下含み、流動性指数Fが1.5超のフッ素樹脂を用いて発光素子を封止した後に紫外線を照射して発光装置(フッ素樹脂部分の流動性指数Fは1.5以下)としてもよく、紫外線照射を封止後に行うことを除いて、発光装置の構成、封止の手順は、上述した本発明のフッ素樹脂を用いて封止する要領と同様である。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0051】
下記の実施例及び比較例では、フッ素樹脂を以下の方法で測定した。
【0052】
(1)フッ素樹脂のNMR測定
後記するTHV221AZを下記条件でNMR測定したところ、構成単位Tのモル比は0.35、構成単位Hのモル比は0.11、構成単位Vのモル比は0.54であった。
測定装置:JEOL ECZ−400
試料:約60mg/0.8ml ACT−d6
IS:4−クロロベンゾドリフルオリド 0.01mL
測定モード:
1H、
19F
緩和時間:
1H 30秒、
19F 20秒
構成単位Hのユニット数:CF
3の積分比を3で除して算出(CF
3積分比/3)
構成単位Vのユニット数:CH
2の積分比を2で除して算出(CH
2積分比/2)
構成単位Tのユニット数:CF
2の合計積分比より、構成単位H由来のCF
2と構成単位V由来のCF
2を差し引いたものを4で除して算出(CF
2合計積分比−構成単位Vのユニット数×2−構成単位Hのユニット数×2)/4
【0053】
(2)フッ素樹脂の重量平均分子量の測定
後記する実施例及び比較例においてTHV221AZの重量平均分子量を下記の方法で測定した。なお、重量平均分子量は標準ポリスチレン換算値として算出した。
装置名 :東ソー社製 HLC−8120
カラム :TSKguardcolumnHXL−L+TSKgel MultiporeHXL−M×3
流量 :1.0mL/min
検出条件 :RI(ポラリティー−)
濃度 :25mg+5mL(THF)
注入量 :200μL
カラム温度:40℃
溶離液 :THF
【0054】
(3)フッ素樹脂の融点の測定
また、THV221の融点をDSC測定により、下記の条件で測定したところ116℃であった。なお、後述の実施例7の紫外線照射後のTHV221の融点も、116℃であったことを確認している。
装置名 :日立ハイテクサイエンス社製 DSC7000X
温度範囲 :−60℃→200℃
昇温速度 :10℃/min
使用セル :Al open Pan
雰囲気ガス:N
2 50ml/min
【0055】
(4)X線回折測定による結晶性の確認
後記するTHV221AZについてX線回折測定を行ったところ、THV221AZは結晶性であった。
装置:MiniFlex600(株式会社リガク社製)
波長:CuKα
電圧:40kV
電流:15mA
測定範囲:2θ=3〜80°
測定温度:室温(約25℃)
【0056】
(5)フッ素樹脂の密度の測定
電子比重計(EW−300SG、アルファミラージュ株式会社製)を用いて、後記するフッ素樹脂シートの水(4℃)に対する比重を求めたところ、1.946であった。
【0057】
フッ素樹脂シートの作製
厚さ5mm、15cm角のSUS板の上に、厚さ0.1mm、15cm角のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルム(株式会社フロンケミカル社製、型番0532−003を15cm角に切って使用)を積層し、PTFEフィルムの上に、中心に5cm角の貫通孔を備える厚さ1.0mm、15cm角のSUS板を積層した。次いでTHV221AZ(3M社製、エリプソメーターで測定した波長589nmの光に対する屈折率:1.36、融点:115℃)を、上記5cm角の貫通孔の中に5.2g入れた。更に厚さ0.1mm、15cm角のPTFEフィルムと、厚さ5mm、15cm角のSUS板とを順に積層して金型を組立てた。次いで、プレス機の温度を200℃に設定し、加圧せずにプレス機の上下板を金型の上下の上記SUS板に接触させた状態で3分保持して樹脂を溶融させた。その後50MPaの圧力で2分間加圧した。加圧後に金型を取り出して、別途、水を通した2枚のSUS板で金型を挟んで十分に冷却して、金型を分解してフッ素樹脂シートE1を得た。更に同様の方法により、シートE1をもう1枚用意した。
得られたシートE1をカッターで切断し、2.5cm×1.5cmのフッ素樹脂シートを8枚得た。
【0058】
実施例1
ジャッキの上面にフッ素樹脂網(フロンケミカル社製、品番:0515−013)を敷き、上記した2.5cm×1.5cmのフッ素樹脂シートを載せ、ジャッキで高さを調節し、上面の高さが、床面から10cmになるように調節した。その後、フッ素樹脂シートに、低圧水銀ランプ(セン特殊光源株式会社製、PL16−110D)を用いて、強度0.079W/cm
2で紫外線を0.5時間照射した(大気圧下、空気中)。前記した紫外線の強度は、エネルギーメーター(Vaga、株式会社オフィールジャパン社製)にセンサー(L40(150)A−LP1)を接続し、紫外線ランプ点灯後、3分経ってからフッ素樹脂シートの表面に相当する位置で測定した値である。また、該紫外線は、185nmと254nmにピーク波長を有する紫外線である。
【0059】
実施例2〜実施例7
紫外線の照射時間を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、フッ素樹脂シートに紫外線を照射した。
【0060】
耐熱変形性の測定
実施例1〜7の紫外線照射後のフッ素樹脂シート、及び紫外線を照射しないフッ素樹脂シート(比較例1)を、下記の方法で測定した。
【0061】
実施例1〜7及び比較例1のフッ素樹脂シートを切断し、約2mm×1.5mm×厚さ1mmのサンプル片を切り出し、重量を測定した。次にサンプル片をアルミカップ(株式会社相互理化学硝子製作所社製、商品コード:309−09)に置き、乾燥機(ヤマト科学株式会社製、DKN−302)で加熱した。加熱条件は、室温から200℃まで1時間かけて昇温し、200℃で3時間置いた後、1時間かけて室温まで降温した。
【0062】
アルミカップを乾燥機から取り出し、デジタルマイクロスコープ(VHX−2000、株式会社キーエンス)で50倍の倍率で画像を取得した。得られた画像を印刷し、樹脂の輪郭で切り取ったのち、紙片の重量を測定した。また、1000μm×1000μmのスケールバーを表示した画像を取得し、紙に印刷した後、切断し、紙片の重量を測定した。紙片の重量比から、樹脂の面積S(mm
2)を算出した。
【0063】
また、樹脂の重量W(mg)を測定し、W(mg)/S(mm
2)を算出した。更に、上記(5)で測定したフッ素樹脂シートの水(4℃)に対する比重は1.946であったため、THV221樹脂の密度を1.95g/cm
3として樹脂の体積V(μl)を算出した。体積の値も併せて表1に示した。
【0064】
【表1】
【0065】
表1から明らかな通り、紫外線照射を行った実施例1〜7では流動性指数Fが1.5以下であり、耐熱変形性が向上した。
【0066】
また、実施例4(照射時間が4時間)、実施例5(照射時間が9時間)、比較例1(照射を行わず)のサンプルについて、株式会社島津製作所社製のUV−3600(検出器:積分球)を用いて、下記条件で波長450nmの光線透過率を測定した。
アタッチメント:積分球 ISR−3100
バックグラウンド測定:大気
【0067】
その結果、光線透過率はそれぞれ、実施例4:90.6%、実施例5:89.8%、比較例1:91.4%であり、紫外線照射した後のフッ素樹脂は、透過率において、紫外線照射前とほぼ同様であった。
【解決手段】テトラフルオロエチレン由来の構成単位T、ヘキサフルオロプロピレン由来の構成単位H及びフッ化ビニリデン由来の構成単位Vを含むフッ素樹脂であって、前記構成単位T、H及びVの合計に対して、前記構成単位Tのモル比(T)が0.25以上、0.56未満であり、前記構成単位Vのモル比(V)が0.60以下であり、無機フィラーを含まないか、又は5質量%以下含み、前記フッ素樹脂の重量をW(mg)とし、前記フッ素樹脂を200℃で3時間保持した際の、前記フッ素樹脂の上面からみた面積をS(mm