特許第6870222号(P6870222)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6870222環状オレフィン樹脂用活性エネルギー線硬化性組成物及びそれを用いた環状オレフィン樹脂フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870222
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】環状オレフィン樹脂用活性エネルギー線硬化性組成物及びそれを用いた環状オレフィン樹脂フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/20 20060101AFI20210426BHJP
   C08F 2/48 20060101ALI20210426BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20210426BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20210426BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20210426BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20210426BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   C08F220/20
   C08F2/48
   C08J7/04 BCES
   C08F2/44 A
   B32B27/30 A
   B32B27/00 A
   C09D4/02
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-125563(P2016-125563)
(22)【出願日】2016年6月24日
(65)【公開番号】特開2017-226794(P2017-226794A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2019年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】奥村 彰朗
(72)【発明者】
【氏名】麸山 解
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−140341(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/142006(WO,A1)
【文献】 特開2009−272025(JP,A)
【文献】 特開2014−189566(JP,A)
【文献】 特開2010−155409(JP,A)
【文献】 特開2005−076005(JP,A)
【文献】 特開2007−293301(JP,A)
【文献】 特開平11−060540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00−246/00
C09D 1/00−201/10
B32B 1/00− 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンドリマー構造を有する多官能(メタ)アクリレート(A)、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1種以上のものである多価アルコールと(メタ)アクリル酸との反応物である多官能(メタ)アクリレート(B)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物であって、前記多官能(メタ)アクリレート(B)の含有量が、前記多官能(メタ)アクリレート(A)100質量部に対して、45〜65質量部の範囲であることを特徴とする環状オレフィン樹脂の表面塗工用活性エネルギー線硬化性組成物(但し不飽和第4級アンモニウム塩を含むものを除く)
【請求項2】
前記多官能(メタ)アクリレート(A)の1分子当たりの平均官能基数が6〜30の範囲である請求項1記載の環状オレフィン樹脂の表面塗工用活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
さらにリン酸基を有する(メタ)アクリレート(C)を含有する請求項1〜2のいずれか1項記載の環状オレフィン樹脂の表面塗工用活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
さらに光重合開始剤として、オキシフェニル酢酸2−(2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ)エチルエステルを含有する請求項1〜のいずれか1項記載の環状オレフィン樹脂の表面塗工用活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項5】
さらに無機充填剤を含有する請求項1〜のいずれか1項記載の環状オレフィン樹脂の表面塗工用活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項6】
環状オレフィン樹脂フィルムの少なくとも1面に、請求項1〜のいずれか1項記載の環状オレフィン樹脂の表面塗工用活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を有することを特徴とする環状オレフィン樹脂フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン樹脂の表面に塗工、硬化させることにより、下地との密着性に優れ、耐擦傷性が高く、耐クラック性に優れた硬化塗膜からなるハードコート層を形成することができる環状オレフィン樹脂用活性エネルギー線硬化性組成物及びそれを用いた環状オレフィン樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン樹脂フィルムは、透明性、低複屈折、低吸湿性、耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性等に優れ、光学部材、医療、包装フィルム、自動車、半導体用途等で幅広く用いられている。特に、光学部材においては、液晶ディスプレイやタッチパネル用途でのユニットの多様化に合わせ、従来用いられていたポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)等のプラスチックフィルムに代えて、透明性の高く、低吸湿性に優れた環状オレフィン樹脂フィルムを用いることが検討されている。
【0003】
また、環状オレフィン樹脂フィルムは、表面硬度が不十分であるため、加工時において傷が付くおそれがあり、耐摩耗性、耐擦傷性の向上のために、その表面に、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜からなるハードコート層等の保護層を設けることが検討されている。しかし、環状オレフィン樹脂フィルムは、その主構造が脂環構造であるため、フィルム表面の極性が低く、水接触角が90°程度と高いため、活性エネルギー線硬化性組成物を塗工した場合、塗材が塗れ広がりにくく、環状オレフィン樹脂フィルム表面とハードコート層との間の密着性が低いという問題あった。
【0004】
環状オレフィン樹脂フィルム表面とハードコート層との間の密着性を向上する方法として、環状オレフィン樹脂フィルム表面に極性基を有する変性オレフィン系樹脂を主成分としたプライマー層を設けた後、電離放射線硬化型樹脂を塗工、硬化させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法では、環状オレフィン樹脂フィルム表面とハードコート層との間の密着性を向上することはできるが、プライマー層を塗工、乾燥する工程が増え、さらに歩留まりの低下やコストアップを生じる問題があった。
【0005】
また、プライマー層を設けずにハードコート層を環状オレフィン樹脂フィルム表面に密着させる方法として、脂環構造を有する(メタ)アクリレートを含有する硬化性組成物の硬化塗膜をハードコート層として用いることが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この硬化性組成物を用いた場合、環状オレフィン樹脂フィルム表面との密着性を十分なものとするためには、脂環構造を有する(メタ)アクリレートの比率を高める必要がある。しかし、脂環構造を有する(メタ)アクリレートの比率を高めれば、硬化塗膜の架橋密度が低下し、硬化塗膜表面の耐擦傷性が不十分となる問題があった。
【0006】
さらに近年、ハードコート層を環状オレフィン樹脂フィルムの両面に設ける場合やハードコート層を厚膜で設ける場合が増加しており、密着性とともに裁断時のクラック発生が新たな課題として挙げられる。クラック発生の抑制には、靭性のある硬化塗膜が得られる樹脂の使用が一般的だが、このような樹脂を添加すると硬化塗膜の架橋密度が低下するために、密着性、耐摩耗性及び耐擦傷性が低下する問題があった。
【0007】
そこで、プライマー層なしで環状オレフィン樹脂フィルム表面との間で優れた密着性を有し、かつ環状オレフィン樹脂フィルム表面に耐擦傷性が高く、耐クラック性に優れた硬化塗膜を形成できる活性エネルギー線硬化性組成物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−284158号公報
【特許文献2】特開2010−89458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、環状オレフィン樹脂の表面に塗工、硬化させることにより、下地との密着性に優れ、耐擦傷性が高く、耐クラック性に優れた硬化塗膜からなるハードコート層を形成することができる環状オレフィン樹脂用活性エネルギー線硬化性組成物及びそれを用いた環状オレフィン樹脂フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記の課題を解決するため鋭意研究した結果、デンドリマー構造を有する多官能(メタ)アクリレート、及び多価アルコールと(メタ)アクリル酸との反応物である多官能(メタ)アクリレートを含有し、それらの含有量を特定の割合にすることで、環状オレフィン樹脂フィルム等の環状オレフィン樹脂成形品表面との密着性に優れた硬化塗膜を形成でき、さらにこの硬化塗膜の表面は高い耐擦傷性を有し、耐クラック性にも優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、デンドリマー構造を有する多官能(メタ)アクリレート(A)、及び多価アルコールと(メタ)アクリル酸との反応物である多官能(メタ)アクリレート(B)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物であって、前記多官能(メタ)アクリレート(B)の含有量が、前記多官能(メタ)アクリレート(A)100質量部に対して、40〜65質量部の範囲であることを特徴とする環状オレフィン樹脂用活性エネルギー線硬化性組成物及びそれを用いた環状オレフィン樹脂フィルムに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、環状オレフィン樹脂成形品表面に高い耐擦傷性を付与でき、環状オレフィン樹脂成形品との密着性に優れ、着色も少ない硬化塗膜を得ることができる。したがって、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、各種環状オレフィン樹脂成形品、特に環状オレフィン樹脂フィルム表面に高い耐擦傷性を有するハードコート層を形成する材料として用いることができる。また、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜からなるハードコート層を有する環状オレフィン樹脂フィルムは、液晶ディスプレイやタッチパネル用途で用いられる光学フィルムとして用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、デンドリマー構造を有する多官能(メタ)アクリレート(A)、及び多価アルコールと(メタ)アクリル酸との反応物である多官能(メタ)アクリレート(B)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物であって、前記多官能(メタ)アクリレート(B)の含有量が、前記多官能(メタ)アクリレート(A)100質量部に対して、40〜65質量部の範囲であるものである。
【0014】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基とメタクリロイル基の一方又は両方をいい、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸の一方又は両方をいう。
【0015】
前記多官能(メタ)アクリレート(A)は、デンドリマー構造を有する多官能(メタ)アクリレートである。ここで、デンドリマー構造とは、モノマーが枝分かれながら重合し、放射状に広がった多分岐構造を意味する。また、前記多官能(メタ)アクリレート(A)は、例えば、多価アルコールと1つのカルボキシル基及び2つ以上の水酸基を有する化合物とをエステル化反応させることにより得られる分子末端に水酸基を有する多分岐ポリエステルを得た後、末端の水酸基と(メタ)アクリル酸とを反応させる方法等により製造することができる。
【0016】
前記多価アルコールとしては、3官能又は4官能のアルコールが好ましく、具体例としてはグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0017】
前記の1つのカルボキシル基及び2つ以上の水酸基を有する化合物としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0018】
前記多分岐ポリエステルは、前記多価アルコールと前記多塩基酸又はその無水物とをエステル化反応して得る以外に、1分子中に6個以上の水酸基を有する市販の多分岐ポリエステルを使用することもできる。具体的には、パーストープ社製の「BOLTORN H20」、「BOLTORN H30」、「BOLTORN H40」、「BOLTORN H311」、「BOLTORN H2003」、「BOLTORN H2004」、「BOLTORN P500」、「BOLTORN P1000」等が挙げられる。
【0019】
前記多官能(メタ)アクリレート(A)の1分子当たりの平均官能基数((メタ)アクリロイル基の数)としては、環状オレフィン樹脂との密着性をより向上できることから、6〜30の範囲が好ましく、12〜24の範囲がより好ましく、14〜20の範囲がさらに好ましい。また、本発明の環状オレフィン樹脂用活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜の耐擦傷性と耐クラック性とのより優れた両立を図るためには、前記多官能(メタ)アクリレート(A)の分子量は、500〜10,000の範囲が好ましく、1,000〜6,000の範囲がより好ましく、1,500〜5,000の範囲がさらに好ましい。さらに、前記多官能(メタ)アクリレート(A)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0020】
前記多官能(メタ)アクリレート(B)は、多価アルコールと(メタ)アクリル酸との反応物である。前記多官能(メタ)アクリレート(B)の具体例としては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能(メタ)アクリレート(B)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの多官能(メタ)アクリレート(B)の中でも、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜の耐擦傷性がより向上することから、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0021】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物における前記多官能(メタ)アクリレート(B)の含有量は、環状オレフィン樹脂との密着性がより向上し、得られる硬化塗膜の耐擦傷性及び耐クラック性がより優れたものになることから、前記多官能(メタ)アクリレート(A)100質量部に対して、40〜65質量部の範囲が好ましく、45〜60質量部の範囲がより好ましい。
【0022】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物には、前記多官能(メタ)アクリレート(A)及び前記多官能(メタ)アクリレート(B)以外に、さらにリン酸基を有する(メタ)アクリレート(C)を配合すると、基材への密着性がより向上できることから好ましい。前記リン酸基を有する(メタ)アクリレート(C)は、1分子中に少なくとも1個のリン酸基を有する(メタ)アクリレートである。このリン酸基を有する(メタ)アクリレート(C)としては、例えば、リン酸(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸ジ(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸トリ(メタ)アクリロイルオキシエチル、カプロラクトン変性リン酸(メタ)アクリロイルオキシエチル等が挙げられ、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物も用いることができる。また、これらのリン酸基を有する(メタ)アクリレート(C)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0023】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物に、前記リン酸基を有する(メタ)アクリレート(C)を配合する場合のその配合量は、基材への密着性がより向上でき、硬化塗膜表面の耐擦傷性もより向上できることから、前記多官能(メタ)アクリレート(A)及び前記多官能(メタ)アクリレート(B)の合計100質量部に対して、0.1〜20質量部の範囲が好ましく、0.5〜10質量%の範囲がより好ましく、1〜5質量部の範囲がさらに好ましい。
【0024】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物には、上記の成分(A)〜(C)以外のその他の重合性成分を本発明の効果を損なわない範囲を配合することができる。前記その他の重合性成分としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのその他の重合成分は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0025】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、基材に塗工後、活性エネルギー線を照射することで硬化塗膜とすることができる。この活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線をいう。活性エネルギー線として紫外線を照射して硬化塗膜とする場合には、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物中に光重合開始剤(F)を添加し、硬化性を向上することが好ましい。また、必要であればさらに光増感剤(G)を添加して、硬化性を向上することもできる。一方、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線を用いる場合には、光重合開始剤や光増感剤を用いなくても速やかに硬化するので、特に光重合開始剤や光増感剤は不要である。
【0026】
前記光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン系化合物;2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンジル(ジベンゾイル)、メチルフェニルグリオキシエステル、オキシフェニル酢酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステル、オキシフェニル酢酸2−(2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ)エチルエステル等のベンジル系化合物;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;ミヒラ−ケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルサルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルサルフォニル)プロパン−1−オン等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの光重合開始剤の中でも、環状オレフィン樹脂との密着性をより向上できることから、オキシフェニル酢酸2−(2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ)エチルエステルが好ましい。
【0027】
また、前記光増感剤としては、例えば、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリブチルアミン等の3級アミン化合物、o−トリルチオ尿素等の尿素化合物、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルホネート等の硫黄化合物などが挙げられる。これらの光増感剤は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0028】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物中の光重合開始剤及び光増感剤の含有量は、上記の成分(A)〜(C)を含む重合性成分の合計100質量部に対し、それぞれ0.1〜20質量部の範囲が好ましく、0.5〜15質量%の範囲がより好ましく、1〜10質量部の範囲がさらに好ましい。
【0029】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物には、上記の紫外線硬化性化合物(A)及び光重合開始剤(B)以外に、用途、要求特性に応じて、有機溶剤、重合禁止剤、表面調整剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、有機顔料、無機顔料、顔料分散剤、有機ビーズ等の添加剤;酸化ケイ素(シリカ粒子)、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニア、五酸化アンチモン等の無機充填剤などを配合することができる。これらのその他の配合物は、それぞれ1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0030】
上記のその他の配合物の中でも、無機充填剤、特にシリカ粒子を配合することにより、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜表面の耐擦傷性をより向上でき、環状オレフィン樹脂への密着性もより向上できる。前記シリカ粒子としては、その表面が有機基で表面修飾されたものであっても表面修飾されていないものであってもよい。また、前記シリカ粒子は、本発明の紫外線線硬化性組成物の硬化塗膜の透明性及び表面の耐擦傷性をより向上できることから、ナノメーターオーダーのサイズのシリカ微粒子が好ましく、コロイダルシリカがより好ましい。前記シリカ微粒子の平均粒子径としては、5〜200nmの範囲が好ましく、5〜100nmの範囲がより好ましい。なお、この平均粒子径は、動的光散乱法で測定した値である。
【0031】
前記無機充填剤を配合する場合のその配合量は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜表面の耐擦傷性をより向上でき、基材への密着性もより向上できることから、上記の成分(A)〜(C)を含む重合性成分の合計100質量部に対し、1〜150質量部が好ましく、5〜100質量部がより好ましい。
【0032】
前記有機溶媒は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物に用いることで、後述する塗工方法に適した溶液粘度に調整することができ、特に薄膜の硬化塗膜を得る際には、その膜厚を調整することもできる。前記有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類などが挙げられる。これらの溶剤は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0033】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、特に環状オレフィン樹脂に対して優れた密着性を有する硬化塗膜が得られることから、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を塗工する基材としては、環状オレフィン樹脂成形品であり、特に環状オレフィン樹脂フィルムが好ましい。また、環状オレフィン樹脂としては、環状オレフィンを重合したものであれば、単独重合体であっても、共重合体であっても特に制限なく用いることができる。環状オレフィン樹脂の市販品としては、例えば、日本ゼオン株式会社製の「ZEONOR」、「ZEONEX」;JSR株式会社製の「ARTON」;ポリプラスチックス株式会社製の「TOPAS」等が挙げられる。
【0034】
前記環状オレフィン樹脂フィルムは、環状オレフィン樹脂をフィルム上に成形したものである。また、環状オレフィン樹脂フィルムの表面は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜との密着性を向上するため、サンドブラスト法、溶剤処理法等による表面の凹凸化処理、電気的処理(コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理)、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線・電子線照射処理、酸化処理等により処理をしたものが好ましく、これらの中でもコロナ放電処理、大気圧プラズマ処理等の電気的処理をしたものがより好ましい。
【0035】
また、前記環状オレフィン樹脂フィルムの厚さは、1〜200μmの範囲が好ましく、5〜100μmの範囲がより好ましく、10〜50μmの範囲がさらに好ましい。フィルム基材の厚さを当該範囲とすることで、環状オレフィン樹脂フィルムの片面に、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物によりハードコート層を設けた場合にもカールを抑制しやすくなる。
【0036】
本発明の環状オレフィン樹脂フィルムは、当該フィルムの少なくとも1面に、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を塗工し、その後紫外線を照射して硬化塗膜とすることで得られたものである。環状オレフィン樹脂フィルムに本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を塗工する方法としては、例えば、ダイコート、マイクログラビアコート、グラビアコート、ロールコート、コンマコート、エアナイフコート、キスコート、スプレーコート、ディップコート、スピンナーコート、ホイーラーコート、刷毛塗り、シルクスクリーンによるコート、ワイヤーバーコート、フローコート等が挙げられる。
【0037】
また、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化するために、紫外線を照射する装置としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ(フュージョンランプ)、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、水銀−キセノンランプ、ショートアーク灯、ヘリウム・カドミニウムレーザー、アルゴンレーザー、太陽光、LED等が挙げられる。
【0038】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を有する環状オレフィン樹脂フィルムは、その基材の優れた光学特性、寸法安定性、耐熱性、透明性に加え、その表面の耐擦傷性に優れることから、各種用途に適用できるが、特に、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)等の画像表示装置の画像表示部に用いる光学フィルムとして有用である。特に、薄型であっても優れた耐擦傷性を有することから、例えば、電子手帳、携帯電話、スマートフォン、携帯オーディオプレイヤー、モバイルパソコン、タブレット端末等の小型化や薄型化の要請の高い携帯電子端末の画像表示装置の画像表示部の光学フィルムとして好適に用いることができる。また、光学フィルムとして用いる場合、画像表示装置の画像表示部の最表面に用いる保護フィルム、タッチパネルの基材として用いることができる。さらに、保護フィルムとして用いた場合には、例えば、LCDモジュールやOLEDモジュール等の画像表示モジュールの上部に当該画像表示モジュールを保護する透明パネルが設けられた構成の画像表示装置においては、当該透明パネルの表面又は裏面に貼り付けて使用することで、傷つき防止や透明パネルが破損した際の飛散防止に有効である。
【実施例】
【0039】
以下に合成例及び実施例により本発明をより具体的に説明する。
【0040】
(合成例1:デンドリマー構造を有する多官能アクリレート(A1)の合成)
部分還流式冷却器、温度計、撹拌棒を備えた反応容器に、エチレンオキシド変性ペンタエリスリトール(分子量355)100質量部、2,2−ジメチロールプロパン酸530質量部、パラトルエンスルホン酸8.80質量部、トルエン90質量部を仕込んだ後、140℃に昇温し、トルエンを還流しながら水を共沸により系外に除いた。同条件で5時間反応を継続した後、トルエンを除き、多分岐ポリエステルを得た。
【0041】
次いで、上記で得られた多分岐ポリエステルに対して、アクリル酸400質量部、メトキノン1.42質量部、パラトルエンスルホン酸10.5質量部、トルエン700質量部を仕込み、反応温度110℃でトルエンを還流しながら水を共沸により系外に除いた。同条件で5時間反応を継続した後、反応混合物を20質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、食塩水で3回洗浄した。最後に減圧蒸留によりトルエンを除いて、デンドリマー構造を有する多官能アクリレート(A1)(以下、「デンドリマー(A1)」と略記する。)を得た。このデンドリマー(A1)の重量平均分子量は3,500であり、平均官能基数は18であった。
【0042】
(合成例2:デンドリマー構造を有する多官能アクリレート(A2)の合成)
部分還流式冷却器、温度計、撹拌棒を備えた反応容器にエチレンオキシド変性ペンタエリスリトール(分子量355)43.1質量部、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパン(分子量398)に対して、2,2−ジメチロールプロパン酸142質量部、パラトルエンスルホン酸2.85質量部、トルエン90質量部を仕込んだ後、140℃に昇温し、トルエンを還流しながら水を共沸により系外に除いた。同条件で5時間反応を継続した後、トルエンを除き、多分岐ポリエステルを得た。
【0043】
次いで、上記で得られた多分岐ポリエステルに対して、アクリル酸170質量部、メトキノン1.33質量部、パラトルエンスルホン酸4.27質量部、トルエン300質量部を仕込み、反応温度110℃でトルエンを還流しながら水を共沸により系外に除いた。同条件で5時間反応を継続した後、反応混合物を20質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、食塩水で3回洗浄した。最後に減圧蒸留によりトルエンを除いて、デンドリマー構造を有する多官能アクリレート(A2)(以下、「デンドリマー(A2)」と略記する。)を得た。このデンドリマー(A2)の重量平均分子量は1,510であり、平均官能基数は8であった。
【0044】
(合成例3:デンドリマー構造を有する多官能アクリレート(A3)の合成)
部分還流式冷却器、温度計、撹拌棒を備えた反応容器に、パーストープ社製「BOLTORN H2004」、水酸基価:115mgKOH/g)100質量部とアクリル酸15.4質量部、メトキノン0.16質量部、パラトルエンスルホン酸0・36質量部、トルエン120質量部を仕込み、反応温度110℃でトルエンを還流しながら水を共沸により系外に除いた。同条件で5時間反応を継続した後、反応混合物を20質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、食塩水で3回洗浄した。最後にトルエンを減圧留去して、デンドリマー構造を有する多官能アクリレート(A3)(以下、「デンドリマー(A3)」と略記する。)を得た。このデンドリマー構造を有する多官能アクリレート(A3)の重量平均分子量は3,430であり、平均官能基数は6であった。
【0045】
(合成例4:デンドリマー構造を有する多官能アクリレート(A4)の合成)
部分還流式冷却器、温度計、撹拌棒を備えた反応容器に、パーストープ社製「BOLTORN H20」、水酸基価:505mgKOH/g)100質量部とアクリル酸71.1質量部、メトキノン0.26質量部、パラトルエンスルホン酸1.71質量部、トルエン120質量部を仕込み、反応温度110℃でトルエンを還流しながら水を共沸により系外に除いた。同条件で5時間反応を継続した後、反応混合物を20質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、食塩水で3回洗浄した。最後にトルエンを減圧留去して、デンドリマー構造を有する多官能アクリレート(A4)(以下、「デンドリマー(A3)」と略記する。)を得た。このデンドリマー構造を有する多官能アクリレート(A4)の重量平均分子量は2,620であり、平均官能基数は16であった。
【0046】
上記で得られたデンドリマー(A1)〜(A4)の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した。
【0047】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0048】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0049】
(実施例1)
合成例1で得られたデンドリマー(A1)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以下、「DPHA」と略記する。)及びジペンタエリスリトールペンタアクリレート(以下、「DPPA」と略記する。)の混合物(DPHA/DPPA=65/35(質量比))30質量部、リン酸基を有するメタクリレート(美源スペシャリティケミカル株式会社製「ミラマー SC1400」;以下、「SC1400」と略記する。)2質量部、シリカ微粒子(日産化学工業株式会社製「MEK−ST40」、平均粒子径10〜20nm、オルガノシリカゾルの40質量%メチルエチルケトン分散液;以下、「MEK−ST40」と略記する。)150質量部(シリカ微粒子として60質量部)、及び光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア754」、オキシフェニル酢酸2−(2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ)エチルエステルを含有する光重合開始剤;(以下、「Irg.754」と略記する。)10質量部を均一に攪拌した後、メチルエチルケトンで希釈して、不揮発分40質量%の活性エネルギー線硬化性組成物(1)を調製した。
【0050】
(実施例2〜5及び比較例1〜9)
表1〜3に示した組成とした以外は実施例1と同様に行い、活性エネルギー線硬化性組成物(2)〜(5)及び(R1)〜(R9)を調製した。
【0051】
上記で得られた活性エネルギー線硬化性組成物(1)〜(5)及び(R1)〜(R9)を用いて、下記の通り、評価用フィルムを作製した後、密着性、耐擦傷性及び耐クラック性の評価を行った。
【0052】
[評価用フィルムの作製]
上記で得られた活性エネルギー線硬化性組成物を、予めその表面を電気的処理(コロナ放電処理;出力100W、速度1.0m/分)した環状オレフィン樹脂フィルム(日本ゼオン株式会社製「ゼオノアフィルムZF16−100」、厚さ100μm)上に、ワイヤーバーを用いて塗工し、60℃で90秒間加熱後、空気雰囲気下で紫外線照射装置(アイグラフィックス株式会社製「MIDN−042−C1」、ランプ:120W/cm、高圧水銀灯)を用いて、照射光量3kJ/mで紫外線を照射して、厚さ2μmの硬化塗膜を有する評価用フィルムを得た。
【0053】
[密着性の評価]
上記で得られた評価用フィルムに、フィルムの硬化塗膜表面に1mm間隔で縦、横それぞれ11本の切れ目を入れて100個のマス目を作製した。次いで、市販のセロハンテープをその表面に密着させた後、一気に剥がした。次いで、剥離せずに残ったマス目の数を数え、下記の基準により密着性を評価した。
◎:残ったマス目の数が100個である。
○:残ったマス目の数が90〜99個である。
△:残ったマス目の数が50〜89個である。
×:残ったマス目の数が49個以下である。
【0054】
[耐擦傷性の評価]
上記で得られた評価用フィルムの硬化塗膜の表面について、クロックメーター形摩擦試験機(東洋精機製作所社製「平面摩擦試験機」、測定条件:直径10mm円形摩擦子、スチールウール#0000、荷重200g、10往復)を用いて試験を行い、試験後の硬化塗膜表面の傷の有無を目視で確認し、下記の基準により耐擦傷性を評価した。
◎:傷がない。
○:傷の数が1〜2本である。
△:傷の数が3〜10本である。
×:傷の数が10本を超える。
【0055】
[耐クラック性の評価]
上記で得られた評価用フィルムを100mm×50mmの大きさにカットし、外径2、3、4mmφのロッドをセットしたマンドレル試験機にテープで固定した。次に、マンドレル試験機を約1秒折り曲げて、試験後の硬化塗膜表面のクラックの有無を目視で確認し、下記の基準により耐クラック性を評価した。
◎:外径2mmφのロッドでクラックを発生しない。
○:クラックを発生する最小ロッド径が2mmφである。
△:クラックを発生する最小ロッド径が3mmφである。
×:クラックを発生する最小ロッド径が4mmφである。
【0056】
上記の実施例1〜5及び比較例1〜9で調製した活性エネルギー線硬化性組成物の組成及びその硬化塗膜の評価結果を表1〜3に示す。なお、表1〜3中の組成は、すべて不揮発分量で記載している。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
表1〜3中の略号は、下記のものを表す。
PS420:ポリエステルアクリレート(美源スペシャリティケミカル株式会社製「ミラマー PS420」、平均官能基数4)
PU370:ウレタンアクリレート(美源スペシャリティケミカル株式会社製「ミラマー PU370」、平均官能基数3)
PU2034:ウレタンアクリレート(美源スペシャリティケミカル株式会社製「ミラマー PU2034」、平均官能基数2)
PU2050:ウレタンアクリレート(美源スペシャリティケミカル株式会社製「ミラマー PU2050」、平均官能基数2)
PU610:ウレタンアクリレート(美源スペシャリティケミカル株式会社製「ミラマー PU610」、平均官能基数6)
PU640:ウレタンアクリレート(美源スペシャリティケミカル株式会社製「ミラマー PU640」、平均官能基数6)
【0061】
表1に示した評価結果から、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物である実施例1〜5のものの硬化塗膜は、基材である環状ポリオレフィン樹脂フィルムとの密着性も高く、その表面の耐擦傷性に優れ、さらに耐クラック性も優れたものであった。
【0062】
一方、比較例1は、前記多官能(メタ)アクリレート(B)を用いなかった例であるが、密着性及び耐擦傷性に劣るものであった。
【0063】
比較例2は、前記多官能(メタ)アクリレート(B)の含有量が、前記多官能(メタ)アクリレート(A)100質量部に対して、下限の40質量部未満の例であるが、密着性及び耐擦傷性に劣るものであった。
【0064】
比較例3は、前記多官能(メタ)アクリレート(B)の含有量が、前記多官能(メタ)アクリレート(A)100質量部に対して、上限の65質量部を超える例であるが、耐クラック性に劣るものであった。
【0065】
比較例4〜9は、デンドリマー構造を有する多官能アクリレートの代わりに、ポリエステルアクリレート又はウレタンアクリレートを用いた例であるが、密着性、耐擦傷性及び耐クラック性の少なくとも1つが劣るものであった。