【実施例】
【0039】
以下に合成例及び実施例により本発明をより具体的に説明する。
【0040】
(合成例1:デンドリマー構造を有する多官能アクリレート(A1)の合成)
部分還流式冷却器、温度計、撹拌棒を備えた反応容器に、エチレンオキシド変性ペンタエリスリトール(分子量355)100質量部、2,2−ジメチロールプロパン酸530質量部、パラトルエンスルホン酸8.80質量部、トルエン90質量部を仕込んだ後、140℃に昇温し、トルエンを還流しながら水を共沸により系外に除いた。同条件で5時間反応を継続した後、トルエンを除き、多分岐ポリエステルを得た。
【0041】
次いで、上記で得られた多分岐ポリエステルに対して、アクリル酸400質量部、メトキノン1.42質量部、パラトルエンスルホン酸10.5質量部、トルエン700質量部を仕込み、反応温度110℃でトルエンを還流しながら水を共沸により系外に除いた。同条件で5時間反応を継続した後、反応混合物を20質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、食塩水で3回洗浄した。最後に減圧蒸留によりトルエンを除いて、デンドリマー構造を有する多官能アクリレート(A1)(以下、「デンドリマー(A1)」と略記する。)を得た。このデンドリマー(A1)の重量平均分子量は3,500であり、平均官能基数は18であった。
【0042】
(合成例2:デンドリマー構造を有する多官能アクリレート(A2)の合成)
部分還流式冷却器、温度計、撹拌棒を備えた反応容器にエチレンオキシド変性ペンタエリスリトール(分子量355)43.1質量部、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパン(分子量398)に対して、2,2−ジメチロールプロパン酸142質量部、パラトルエンスルホン酸2.85質量部、トルエン90質量部を仕込んだ後、140℃に昇温し、トルエンを還流しながら水を共沸により系外に除いた。同条件で5時間反応を継続した後、トルエンを除き、多分岐ポリエステルを得た。
【0043】
次いで、上記で得られた多分岐ポリエステルに対して、アクリル酸170質量部、メトキノン1.33質量部、パラトルエンスルホン酸4.27質量部、トルエン300質量部を仕込み、反応温度110℃でトルエンを還流しながら水を共沸により系外に除いた。同条件で5時間反応を継続した後、反応混合物を20質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、食塩水で3回洗浄した。最後に減圧蒸留によりトルエンを除いて、デンドリマー構造を有する多官能アクリレート(A2)(以下、「デンドリマー(A2)」と略記する。)を得た。このデンドリマー(A2)の重量平均分子量は1,510であり、平均官能基数は8であった。
【0044】
(合成例3:デンドリマー構造を有する多官能アクリレート(A3)の合成)
部分還流式冷却器、温度計、撹拌棒を備えた反応容器に、パーストープ社製「BOLTORN H2004」、水酸基価:115mgKOH/g)100質量部とアクリル酸15.4質量部、メトキノン0.16質量部、パラトルエンスルホン酸0・36質量部、トルエン120質量部を仕込み、反応温度110℃でトルエンを還流しながら水を共沸により系外に除いた。同条件で5時間反応を継続した後、反応混合物を20質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、食塩水で3回洗浄した。最後にトルエンを減圧留去して、デンドリマー構造を有する多官能アクリレート(A3)(以下、「デンドリマー(A3)」と略記する。)を得た。このデンドリマー構造を有する多官能アクリレート(A3)の重量平均分子量は3,430であり、平均官能基数は6であった。
【0045】
(合成例4:デンドリマー構造を有する多官能アクリレート(A4)の合成)
部分還流式冷却器、温度計、撹拌棒を備えた反応容器に、パーストープ社製「BOLTORN H20」、水酸基価:505mgKOH/g)100質量部とアクリル酸71.1質量部、メトキノン0.26質量部、パラトルエンスルホン酸1.71質量部、トルエン120質量部を仕込み、反応温度110℃でトルエンを還流しながら水を共沸により系外に除いた。同条件で5時間反応を継続した後、反応混合物を20質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和し、食塩水で3回洗浄した。最後にトルエンを減圧留去して、デンドリマー構造を有する多官能アクリレート(A4)(以下、「デンドリマー(A3)」と略記する。)を得た。このデンドリマー構造を有する多官能アクリレート(A4)の重量平均分子量は2,620であり、平均官能基数は16であった。
【0046】
上記で得られたデンドリマー(A1)〜(A4)の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した。
【0047】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0048】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0049】
(実施例1)
合成例1で得られたデンドリマー(A1)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以下、「DPHA」と略記する。)及びジペンタエリスリトールペンタアクリレート(以下、「DPPA」と略記する。)の混合物(DPHA/DPPA=65/35(質量比))30質量部、リン酸基を有するメタクリレート(美源スペシャリティケミカル株式会社製「ミラマー SC1400」;以下、「SC1400」と略記する。)2質量部、シリカ微粒子(日産化学工業株式会社製「MEK−ST40」、平均粒子径10〜20nm、オルガノシリカゾルの40質量%メチルエチルケトン分散液;以下、「MEK−ST40」と略記する。)150質量部(シリカ微粒子として60質量部)、及び光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア754」、オキシフェニル酢酸2−(2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ)エチルエステルを含有する光重合開始剤;(以下、「Irg.754」と略記する。)10質量部を均一に攪拌した後、メチルエチルケトンで希釈して、不揮発分40質量%の活性エネルギー線硬化性組成物(1)を調製した。
【0050】
(実施例2〜5及び比較例1〜9)
表1〜3に示した組成とした以外は実施例1と同様に行い、活性エネルギー線硬化性組成物(2)〜(5)及び(R1)〜(R9)を調製した。
【0051】
上記で得られた活性エネルギー線硬化性組成物(1)〜(5)及び(R1)〜(R9)を用いて、下記の通り、評価用フィルムを作製した後、密着性、耐擦傷性及び耐クラック性の評価を行った。
【0052】
[評価用フィルムの作製]
上記で得られた活性エネルギー線硬化性組成物を、予めその表面を電気的処理(コロナ放電処理;出力100W、速度1.0m/分)した環状オレフィン樹脂フィルム(日本ゼオン株式会社製「ゼオノアフィルムZF16−100」、厚さ100μm)上に、ワイヤーバーを用いて塗工し、60℃で90秒間加熱後、空気雰囲気下で紫外線照射装置(アイグラフィックス株式会社製「MIDN−042−C1」、ランプ:120W/cm、高圧水銀灯)を用いて、照射光量3kJ/m
2で紫外線を照射して、厚さ2μmの硬化塗膜を有する評価用フィルムを得た。
【0053】
[密着性の評価]
上記で得られた評価用フィルムに、フィルムの硬化塗膜表面に1mm間隔で縦、横それぞれ11本の切れ目を入れて100個のマス目を作製した。次いで、市販のセロハンテープをその表面に密着させた後、一気に剥がした。次いで、剥離せずに残ったマス目の数を数え、下記の基準により密着性を評価した。
◎:残ったマス目の数が100個である。
○:残ったマス目の数が90〜99個である。
△:残ったマス目の数が50〜89個である。
×:残ったマス目の数が49個以下である。
【0054】
[耐擦傷性の評価]
上記で得られた評価用フィルムの硬化塗膜の表面について、クロックメーター形摩擦試験機(東洋精機製作所社製「平面摩擦試験機」、測定条件:直径10mm円形摩擦子、スチールウール#0000、荷重200g、10往復)を用いて試験を行い、試験後の硬化塗膜表面の傷の有無を目視で確認し、下記の基準により耐擦傷性を評価した。
◎:傷がない。
○:傷の数が1〜2本である。
△:傷の数が3〜10本である。
×:傷の数が10本を超える。
【0055】
[耐クラック性の評価]
上記で得られた評価用フィルムを100mm×50mmの大きさにカットし、外径2、3、4mmφのロッドをセットしたマンドレル試験機にテープで固定した。次に、マンドレル試験機を約1秒折り曲げて、試験後の硬化塗膜表面のクラックの有無を目視で確認し、下記の基準により耐クラック性を評価した。
◎:外径2mmφのロッドでクラックを発生しない。
○:クラックを発生する最小ロッド径が2mmφである。
△:クラックを発生する最小ロッド径が3mmφである。
×:クラックを発生する最小ロッド径が4mmφである。
【0056】
上記の実施例1〜5及び比較例1〜9で調製した活性エネルギー線硬化性組成物の組成及びその硬化塗膜の評価結果を表1〜3に示す。なお、表1〜3中の組成は、すべて不揮発分量で記載している。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
表1〜3中の略号は、下記のものを表す。
PS420:ポリエステルアクリレート(美源スペシャリティケミカル株式会社製「ミラマー PS420」、平均官能基数4)
PU370:ウレタンアクリレート(美源スペシャリティケミカル株式会社製「ミラマー PU370」、平均官能基数3)
PU2034:ウレタンアクリレート(美源スペシャリティケミカル株式会社製「ミラマー PU2034」、平均官能基数2)
PU2050:ウレタンアクリレート(美源スペシャリティケミカル株式会社製「ミラマー PU2050」、平均官能基数2)
PU610:ウレタンアクリレート(美源スペシャリティケミカル株式会社製「ミラマー PU610」、平均官能基数6)
PU640:ウレタンアクリレート(美源スペシャリティケミカル株式会社製「ミラマー PU640」、平均官能基数6)
【0061】
表1に示した評価結果から、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物である実施例1〜5のものの硬化塗膜は、基材である環状ポリオレフィン樹脂フィルムとの密着性も高く、その表面の耐擦傷性に優れ、さらに耐クラック性も優れたものであった。
【0062】
一方、比較例1は、前記多官能(メタ)アクリレート(B)を用いなかった例であるが、密着性及び耐擦傷性に劣るものであった。
【0063】
比較例2は、前記多官能(メタ)アクリレート(B)の含有量が、前記多官能(メタ)アクリレート(A)100質量部に対して、下限の40質量部未満の例であるが、密着性及び耐擦傷性に劣るものであった。
【0064】
比較例3は、前記多官能(メタ)アクリレート(B)の含有量が、前記多官能(メタ)アクリレート(A)100質量部に対して、上限の65質量部を超える例であるが、耐クラック性に劣るものであった。
【0065】
比較例4〜9は、デンドリマー構造を有する多官能アクリレートの代わりに、ポリエステルアクリレート又はウレタンアクリレートを用いた例であるが、密着性、耐擦傷性及び耐クラック性の少なくとも1つが劣るものであった。