(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0012】
以下の説明において、レターデーションとは、別に断らない限り、面内レターデーションを表す。また、あるフィルムの面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx−ny)×dで表される値である。ここで、nxは、前記フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、前記フィルムの面内方向であってnxの方向に垂直な方向の屈折率を表す。dは、前記フィルムの厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、550nmである。
【0013】
以下の説明において、フィルムの遅相軸とは、別に断らない限り、当該フィルムの面内における遅相軸を表す。
【0014】
以下の説明において、「1/4波長板」及び「偏光板」とは、別に断らない限り、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
【0015】
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、通常5倍以上、好ましくは10倍以上の長さを有するフィルムをいい、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬されうる程度の長さを有するフィルムをいう。長さの上限に特段の制限は無いが、通常、幅に対して10万倍以下である。
【0016】
以下の説明において、「紫外線」とは、別に断らない限り、波長が10nm〜400nmの光を示す。
【0017】
以下の説明において、複数のフィルムを備える部材における各フィルムの光学軸(偏光吸収軸、偏光透過軸、遅相軸等)がなす角度は、別に断らない限り、前記のフィルムを厚み方向から見たときの角度を表す。
【0018】
[1.光学積層体の概要]
図1は、本発明の一実施形態に係る光学積層体100を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、光学積層体100は、第一外側層110と、第二外側層120と、前記の第一外側層110及び第二外側層120の間に設けられた中間層130とを備える。よって、光学積層体100は、第一外側層110、中間層130及び第二外側層120を、この順に備える。通常、第一外側層110と中間層130とは、間に他の層を介することなく直接に接しており、中間層130と第二外側層120とは、間に他の層を介することなく直接に接している。
【0019】
中間層130は、紫外線吸収剤を含む樹脂(A)で形成されている。そのため、光学積層体100は、紫外線の透過を抑制することができる。特に、前記の光学積層体100は、波長390nmという従来は注目されていなかった波長の紫外線の透過を抑制しており、これにより、従来よりも効果的な紫外線の透過抑制を実現している。よって、この光学積層体100を有機EL表示装置に設けた場合に、有機EL表示装置に含まれる有機材料の紫外線による劣化を効果的に抑制できるので、有機EL表示装置の長寿命化が期待できる。
【0020】
また、第一外側層110は、前記の紫外線吸収剤を含まない樹脂(B)で形成されている。さらに、第二外側層120は、前記の紫外線吸収剤を含まない樹脂(B’)で形成されている。よって、紫外線吸収剤を含む中間層130の両側には、第一外側層110及び第二外側層120が設けられている。このため、中間層130に含まれる紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制できる。したがって、中間層130における紫外線吸収剤の濃度を高めたり、紫外線吸収剤の種類の選択の幅を広げたりできるので、光学積層体の厚みが薄くても、紫外線の透過抑制能力を高めることが可能である。
【0021】
[2.中間層]
中間層は、紫外線吸収剤を含む樹脂(A)で形成されている。前記の樹脂(A)は、通常、熱可塑性樹脂である。よって、樹脂(A)は、通常、熱可塑性の重合体と、紫外線吸収剤とを含む。
【0022】
重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリフェニレンサルファイド等のポリアリーレンサルファイド;ポリビニルアルコール;ポリカーボネート;ポリアリレート;セルロースエステル重合体、ポリエーテルスルホン;ポリスルホン;ポリアリルサルホン;ポリ塩化ビニル;ノルボルネン系重合体等の、脂環式構造を含有する重合体;棒状液晶ポリマーなどが挙げられる。重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、重合体は、単独重合体でもよく、共重合体でもよい。これらの中でも、機械特性、耐熱性、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性に優れることから、脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
【0023】
脂環式構造を含有する重合体は、その重合体の構造単位が脂環式構造を含有する重合体である。脂環式構造を含有する重合体は、通常、耐湿熱性に優れる。そのため、脂環式構造を含有する重合体を用いることにより、光学積層体の耐湿熱性を良好にできる。
【0024】
脂環式構造を含有する重合体は、主鎖に脂環式構造を有していてもよく、側鎖に脂環式構造を有していてもよい。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、主鎖に脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
【0025】
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、機械強度及び耐熱性の観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
【0026】
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下の範囲である。脂環式構造を構成する炭素原子数をこの範囲にすることにより、脂環式構造を含有する重合体を含む樹脂の機械強度、耐熱性及び成形性が高度にバランスされる。
【0027】
脂環式構造を含有する重合体において、脂環式構造を有する構造単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択しうる。脂環式構造を含有する重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。脂環式構造を含有する重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合がこの範囲にあると、脂環式構造を含有する重合体を含む樹脂の透明性及び耐熱性が良好となる。
【0028】
脂環式構造を含有する重合体としては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物が挙げられる。これらの中でも、透明性及び成形性が良好であるので、ノルボルネン系重合体がより好ましい。
【0029】
ノルボルネン系重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素添加物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素添加物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との付加共重合体が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素添加物は、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性の観点から、特に好適である。
【0030】
ノルボルネン構造を有する単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0031】
極性基の種類としては、例えば、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン酸基などが挙げられる。
【0032】
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のモノ環状オレフィン類及びその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン等の環状共役ジエン及びその誘導体;などが挙げられる。ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0033】
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体は、例えば、単量体を開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
【0034】
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素原子数2〜20のα−オレフィン及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロオレフィン及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0035】
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体は、例えば、単量体を付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
【0036】
上述した開環重合体及び付加重合体の水素添加物は、例えば、開環重合体及び付加重合体の溶液において、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む水素添加触媒の存在下で、炭素−炭素不飽和結合を、好ましくは90%以上水素添加することによって製造しうる。
【0037】
ノルボルネン系重合体の中でも、構造単位として、X:ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジイル−エチレン構造と、Y:トリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカン−7,9−ジイル−エチレン構造とを有し、これらの構造単位の量が、ノルボルネン系重合体の構造単位全体に対して90質量%以上であり、かつ、Xの割合とYの割合との比が、X:Yの質量比で100:0〜40:60であるものが好ましい。このような重合体を用いることにより、当該ノルボルネン系重合体を含む層を、長期的に寸法変化がなく、光学特性の安定性に優れるものにできる。
【0038】
樹脂(A)に含まれる重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、特に好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、この重合体を含む層の機械的強度および成型加工性が高度にバランスされる。
【0039】
樹脂(A)に含まれる重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、特に好ましくは1.8以上であり、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.7以下である。ここで、Mnは、数平均分子量を表す。分子量分布を前記範囲の下限値以上にすることにより、重合体の生産性を高め、製造コストを抑制できる。また、上限値以下にすることにより、低分子成分の量が小さくなるので、高温曝露時の緩和を抑制して、その重合体を含む層の安定性を高めることができる。
【0040】
前記の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、溶媒としてシクロヘキサンを用いた(但し、試料がシクロヘキサンに溶解しない場合にはトルエンを用いてもよい)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量として測定しうる。
【0041】
樹脂(A)に含まれる重合体のガラス転移温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上であり、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、特に好ましくは140℃以下である。重合体のガラス転移温度が、前記範囲の下限値以上であることにより高温環境下における光学積層体の耐久性を高めることができ、前記範囲の上限値以下であることにより光学積層体の延伸処理を容易に行える。
【0042】
樹脂(A)に含まれる重合体の屈折率は、好ましくは1.45以上、より好ましくは1.48以上、特に好ましくは1.50以上であり、好ましくは1.60以下、より好ましくは1.58以下、特に好ましくは1.54以下である。重合体の屈折率が前記の範囲に収まることにより、光学積層体を偏光子保護フィルムとして用いた場合に、光学積層体と偏光子との屈折率差を小さくすることが容易になり、偏光板の透過率を高くすることができる。
【0043】
樹脂(A)に含まれる重合体の飽和吸水率は、好ましくは0.03質量%以下、さらに好ましくは0.02質量%以下、特に好ましくは0.01質量%以下である。飽和吸水率が前記範囲であると、この重合体を含む層のレターデーション等の光学特性の経時変化を小さくすることができる。また、光学積層体を偏光子保護フィルムとして用いた場合に、偏光板及び画像表示装置の劣化を抑制でき、長期的に画像表示装置の表示を安定で良好に保つことができる。
【0044】
飽和吸水率は、試料を一定温度の水中に一定時間浸漬して増加した質量を、浸漬前の試験片の質量に対する百分率で表した値である。通常は、23℃の水中に24時間、浸漬して測定される。重合体の飽和吸水率は、例えば、重合体中の極性基の量を減少させることにより、前記の範囲に調節することができる。よって、飽和吸水率をより低くする観点から、樹脂(A)に含まれる重合体は、極性基を有さないことが好ましい。
【0045】
樹脂(A)における重合体の量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは82質量%以上、特に好ましくは84質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは88質量%以下、特に好ましくは86質量%以下である。重合体の量を前記範囲に収めることにより、光学積層体の耐湿熱性を効果的に向上させることができる。よって、光学積層体を偏光子保護フィルムとして用いた場合に、偏光板の加湿条件下での耐久性を高めることができる。
【0046】
紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する能力を有する成分であって、樹脂(B)及び樹脂(B’)に含まれていない成分である。また、この紫外線吸収剤としては、光学積層体の波長390nmにおける光線透過率を、1%以下という所定の範囲に収められるものを用いる。通常、このような紫外線吸収剤として、有機化合物を用いる。以下、有機化合物としての紫外線吸収剤を「有機紫外線吸収剤」ということがある。有機紫外線吸収剤を用いることにより、通常は、光学積層体の可視波長における光線透過率を高めたり、光学積層体のヘイズを小さくしたりできる。そのため、光学積層体を備える画像表示装置の表示性能を良好にできる。
【0047】
有機紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、アゾメチン系紫外線吸収剤、インドール系紫外線吸収剤、ナフタルイミド系紫外線吸収剤、フタロシアニン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0048】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、1,3,5−トリアジン環を有する化合物が好ましい。トリアジン系紫外線吸収剤の具体例としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(へキシル)オキシ]−フェノール、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。このようなトリアジン系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、チバスペシャリティーケミカルズ社製「チヌビン1577」、ADEKA社製「LA−F70」、「LA−46」などが挙げられる。
【0049】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−ベンゾトリアゾール−2−イル−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖および側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール等が挙げられる。このようなトリアゾール系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、ADEKA社製「アデカスタブLA−31」、チバスペシャリティーケミカルズ社製「TINUVIN326」などが挙げられる。
【0050】
アゾメチン系紫外線吸収剤としては、例えば、特許第3366697号公報に記載の材料を例示することができ、市販品としては、例えば、オリエント化学社製「BONASORB UA−3701」などが挙げられる。
【0051】
インドール系紫外線吸収剤としては、例えば、特許第2846091号公報に記載の材料を例示することができ、市販品としては、例えば、オリエント化学社製「BONASORB UA−3911」、「BONASORB UA−3912」などが挙げられる。
【0052】
フタロシアニン系紫外線吸収剤としては、例えば、特許第4403257号公報、特許第3286905号公報に記載の材料を例示することができ、市販品としては、例えば、山田化学工業社製「FDB001」、「FDB002」などが挙げられる。
【0053】
これらの中でも、紫外線吸収剤としては、クロロフォルム1Lに紫外線吸収剤10mgを溶解させたサンプル溶液の、波長390nmにおける吸光度が、特定の範囲に収まる紫外線吸収剤が好ましい。具体的には、前記の吸光度は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.11以上、特に好ましくは0.12以上である。このような紫外線吸収剤を用いることにより、光学積層体の波長390nmにおける光線透過率を、効果的に低くできる。前記の吸光度の上限は、特段の制限は無いが、光学積層体の可視波長における光線透過率を高くし易いことから、好ましくは0.16以下、より好ましくは0.15以下、特に好ましくは0.14以下である。
【0054】
前記のサンプル溶液の波長390nmにおける吸光度は、温度25℃、サンプル溶液中の光路長10mmの測定条件により、測定しうる。
【0055】
特に好ましい紫外線吸収剤としては、トリアジン系紫外線吸収剤であるASDEKA社製「LA−F70」、アゾメチン系紫外線吸収剤であるオリエンタル化学工業「UA−3701」、及び、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤であるBASF社製「Tinuvin326」が挙げられる。これらは、波長390nm付近における紫外線吸収能力に特に優れるので、量が少なくても、光学積層体の波長390nmにおける光線透過率を特に低くできる。
【0056】
紫外線吸収剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0057】
樹脂(A)における紫外線吸収剤の量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは12質量%以上、特に好ましくは14質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、特に好ましくは16質量%以下である。紫外線吸収剤の量が、前記範囲の下限値以上であることにより、光学積層体によって紫外線の透過を効果的に抑制できる。また、紫外線の量が、前記範囲の上限値以下であることによって、光学積層体の可視波長における光線透過率を高くし易い。また、光学積層体の製造時に、紫外線吸収剤による樹脂(A)のゲル化を抑制できるので、光学積層体でのフィッシュアイの発生を抑制し易い。ここで、フィッシュアイとは、光学積層体の内部に生じうる異物のことをいう。
【0058】
樹脂(A)は、重合体及び紫外線吸収剤に組み合わせて、更に任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、顔料、染料等の着色剤;可塑剤;蛍光増白剤;分散剤;熱安定剤;光安定剤;帯電防止剤;酸化防止剤;界面活性剤等の配合剤が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0059】
樹脂(A)の光弾性係数の絶対値は、好ましくは10×10
−12Pa
−1以下、より好ましくは7×10
−12Pa
−1以下、特に好ましくは4×10
−12Pa
−1以下である。樹脂(A)の光弾性係数の絶対値が前記範囲内であることにより、高性能な光学積層体を容易に製造することができる。また、光学積層体が延伸フィルムである場合、その面内レターデーションReのバラツキを小さくすることができる。
ここで、光弾性係数Cは、複屈折をΔn、応力をσとしたとき、C=Δn/σで表される値である。
【0060】
樹脂(A)の製造方法は、任意であり、例えば、重合体及び紫外線吸収剤、並びに必要に応じて任意の成分を混合することによって製造し得る。通常は、重合体及び紫外線吸収剤を、重合体が溶融しうる温度において混練することにより、樹脂(A)を製造する。混練には、例えば、二軸押出機を用いうる。
【0061】
中間層の厚みは、第一外側層及び第二外側層の合計厚みに対する中間層の厚みの比が、所定の範囲に収まるように設定されることが好ましい。よって、例えば
図1に示す光学積層体100においては、第一外側層110の厚みT
110及び第二外側層120の厚みT
120の合計T
110+T
120に対する中間層130の厚みT
130の比「T
130/(T
110+T
120)」が、所定範囲に収まることが好ましい。具体的には、前記の厚み比は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.3以上、特に好ましくは1.5以上である。厚み比が、前記下限値以上であることにより、光学積層体によって紫外線の透過を効果的に抑制できる。前記厚み比の上限は、特段の制限は無いが、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.3以下、特に好ましくは3.0以下である。厚み比が、前記上限値以下であることにより、第一外側層及び第二外側層を厚くできるので、紫外線吸収剤のブリードアウトを安定して抑制したり、光学積層体の製造を容易に行ったりできる。
【0062】
光学積層体に含まれる中間層、第一外側層及び第二外側層等の層の厚みは、次の方法で測定しうる。
光学積層体をエポキシ樹脂で包埋して、試料片を用意する。この試料片を、ミクロトームを用いて厚み0.05μmにスライスする。その後、スライスにより現れた断面を顕微鏡を用いて観察することで、光学積層体に含まれる各層の厚みを測定しうる。
【0063】
また、光学積層体が中間層、第一外側層及び第二外側層のみを備え、且つ、第一外側層の厚みと第二外側層の厚みとが同じであることが予め判明している場合、各層の厚みは、下記の方法によって測定してもよい。
中間層の厚みを、波長390nmにおける光学積層体の光線透過率から計算によって求める。その後、光学積層体の全体の厚みから中間層の厚みを引き算し、2で割ることにより、第一外側層及び第二外側層の厚みを求めうる。
【0064】
[3.第一外側層]
第一外側層は、紫外線吸収剤を含まない樹脂(B)で形成されている。前記の樹脂(B)は、通常、熱可塑性樹脂である。よって、樹脂(B)は、通常、熱可塑性の重合体を含む。
【0065】
樹脂(B)に含まれる重合体としては、樹脂(A)に含まれる重合体として説明した範囲から選択される任意の重合体を用いうる。これにより、樹脂(A)の重合体の説明で記載したのと同様の利点を得ることができる。中でも、樹脂(B)に含まれる重合体としては、樹脂(A)に含まれる重合体と同一の重合体を用いることが好ましい。これにより、中間層と第一外側層との接着強度を高めたり、中間層と第一外側層との界面での光の反射を抑制したりし易い。
【0066】
樹脂(B)における重合体の量は、好ましくは90.0質量%〜100質量%、より好ましくは95.0質量%〜100質量%である。重合体の量を前記範囲にすることにより、光学積層体の耐湿熱性及び機械的強度を効果的に高めることができる。
【0067】
樹脂(B)は、重合体に組み合わせて、更に任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、樹脂(A)が含みうる任意の成分として挙げたのと同様の成分が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0068】
樹脂(B)の光弾性係数の絶対値は、樹脂(A)の光弾性係数の絶対値の説明に記載した範囲から選択される任意の値にしうる。これにより、樹脂(A)の光弾性係数の説明で記載したのと同様の利点が得られる。中でも、樹脂(B)の光弾性係数は、樹脂(A)の光弾性係数と同一であることが好ましい。
【0069】
第一外側層の厚みは、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、特に好ましくは7μm以上であり、好ましくは15μm以下、より好ましくは13μm以下、特に好ましくは10μm以下である。第一外側層の厚みが、前記範囲の下限値以上であることにより、中間層に含まれる紫外線吸収剤のブリードアウトを効果的に抑制できる。また、第一外側層の厚みが、前記範囲の上限値以下であることにより、中間層が厚くなるので、紫外線の透過を抑制する光学積層体の能力を高め易い。
【0070】
[4.第二外側層]
第二外側層は、紫外線吸収剤を含まない樹脂(B’)で形成されている。樹脂(B’)としては、樹脂(B)として説明した樹脂の範囲から選択される任意の樹脂を用いうる。したがって、樹脂(B’)の含有成分及び特性は、樹脂(B)の含有成分及び特性として説明した範囲から選択して適用しうる。これにより、第一外側層の樹脂(B)の説明に記載したのと同様の利点を得ることができる。
【0071】
樹脂(B’)は、樹脂(B)と異なる樹脂であってもよく、樹脂(B)と同一の樹脂であってもよい。中でも、樹脂(B)及び樹脂(B’)として同一の樹脂を用いることが好ましい。樹脂(B)及び樹脂(B’)として同一の樹脂を用いることにより、光学積層体の製造コストを抑制したり、光学積層体のカールを抑制したりできる。
【0072】
第二外側層の厚みは、第一外側層の厚みの範囲として説明した範囲から選択される任意の厚みにしうる。これにより、第一外側層の厚みの説明で記載したのと同様の利点を得ることができる。中でも、光学積層体のカールを抑制するためには、第二外側層の厚みは、第一外側層と同一にすることが好ましい。
【0073】
[5.任意の層]
光学積層体は、必要に応じて、上述した中間層、第一外側層及び第二外側層に組み合わせて、任意の層を備えうる。例えば、中間層と第一外側層との間、中間層と第二外側層との間、第一外側層の中間層とは反対側、第二外側層の中間層とは反対側、などの位置に任意の樹脂層を備えていてもよい。任意の樹脂層としては、例えば、ハードコート層、低屈折率層、帯電防止層、インデックスマッチング層等が挙げられる。
ただし、光学積層体を薄くする観点から、光学積層体は任意の層を備えない3層構造のフィルムであることが好ましい。
【0074】
[6.光学積層体の厚み]
光学積層体の厚みは、通常20μm以上、好ましくは23μm以上、より好ましくは25μm以上である。光学積層体の厚みが、前記の下限値よりも大きいことにより、光学積層体の波長390nmにおける光線透過率を低くできる。また、光学積層体の厚みは、通常50μm以下、好ましくは45μm以下、より好ましくは40μm以下である。光学積層体の厚みが、前記の上限値以下であることにより、光学積層体の軽量化及び省スペース化を実現できる。そして、このように厚みが薄くても、紫外線の透過を効果的に抑制でき、これによって紫外線による劣化を受けやすい成分(例えば、有機EL表示装置の有機材料等)を効果的に保護できることが、前記の光学積層体の利点の一つである。
【0075】
[7.光学積層体の特性]
光学積層体の波長390nmにおける光線透過率は、通常1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.2%以下であり、理想的には0%である。このように、従来注目されていなかった波長範囲の紫外線まで透過を抑制することにより、厚みが薄くても紫外線の透過を効果的に抑制できる。そのため、この光学積層体を偏光子保護フィルムとして用いた場合に、偏光子の偏光度の低下を抑制したり、偏光子の着色を抑制したりできる。また、一般に、有機EL素子に含まれる有機成分は、長波長の紫外線によって特に劣化しやすい。しかし、波長390nmにおける光線透過率が低い光学積層体は、通常、有機EL素子に含まれる有機成分の紫外線による劣化を特に効果的に抑制できるので、有機EL表示装置の寿命を長くできる。
光学積層体の波長390nmにおける光線透過率は、例えば、紫外線吸収剤の種類を適切に選択したり、中間層における紫外線吸収剤の濃度を適切な範囲に調整したり、中間層の厚みを厚くしたりすることによって、低くできる。
【0076】
光学積層体は、可視波長における光線透過率が高いことが好ましい。よって、紫外線に近い波長の可視光線について、高い光線透過率を有することが好ましい。例えば、波長430nmにおける光学積層体の光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上であり、理想的には100%である。このように高い光線透過率を有することにより、画像表示装置に光学積層体を設けた場合に、意図しない画像の色づきを抑制できる。
【0077】
光学積層体の波長390nmにおける光線透過率の値[%]は、下記式(1)を満たすことが好ましい。
X−Y<0.5% (1)
上記式(1)において、Xは、放射照度60W/m
2のキセノンランプから光を500時間にわたって照射した後の、波長390nmにおける光学積層体の光線透過率の値[%]を示す。また、上記式(1)において、Yは、前記キセノンランプから光を照射する前の、波長390nmにおける光学積層体の光線透過率の値[%]を示す。
【0078】
前記式(1)を更に詳細に説明すると、光線透過率の差「X−Y」は、好ましくは0.5%未満、より好ましくは0.3%以下、特に好ましくは0.1%以下である。光線透過率の差「X−Y」が前記のように小さいことは、光学積層体が耐光性に優れることを表す。よって、光線透過率の差「X−Y」が小さいことにより、光学積層体が紫外線の透過を抑制する能力を、長期間にわたって維持することができる。光線透過率の差「X−Y」の下限値は、理想的には0%であるが、通常は0.01%以上である。
【0079】
光学積層体は、波長280nm〜380nmにおける光線透過率が小さいことが好ましい。光学積層体の波長280nm〜380nmにおける具体的な光線透過率は、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1%以下である。これにより、光学積層体が紫外線を遮断する能力を、更に高めることができる。
【0080】
光学積層体は、光学部材としての機能を安定して発揮させる観点から、高い全光線透過率を有することが好ましい。光学積層体の具体的な全光線透過率は、好ましくは85%〜100%、より好ましくは87%〜100%、特に好ましくは90%〜100%である。全光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて、波長400nm〜700nmの範囲で測定しうる。
【0081】
光学積層体は、光学積層体を組み込んだ画像表示装置の画像鮮明性を高める観点から、ヘイズが小さいことが好ましい。光学積層体の具体的なヘイズは、好ましくは1%以下、より好ましくは0.8%以下、特に好ましくは0.5%以下である。ヘイズは、JIS K7361−1997に準拠して、濁度計を用いて測定しうる。
【0082】
光学積層体は、面内レターデーションReを実質的に有さない光学等方性のフィルムであってもよく、用途に応じた大きさの面内レターデーションReを有する光学異方性のフィルムであってもよい。例えば、光学積層体が光学等方性のフィルムである場合、光学積層体の具体的な面内レターデーションは、好ましくは0nm〜15nm、より好ましくは0nm〜10nm、特に好ましくは0nm〜5nmとしうる。また、例えば、光学積層体が1/4波長板として機能しうる光学異方性のフィルムである場合、光学積層体の具体的な面内レターデーションは、好ましくは85nm以上、より好ましくは90nm以上、特に好ましくは95nm以上であり、好ましくは150nm以下、より好ましくは140nm以下、特に好ましくは120nm以下としうる。
【0083】
光学積層体の遅相軸の方向は、任意である。例えば光学積層体が長尺のフィルムである場合、この光学積層体の遅相軸の方向は、光学積層体の長手方向に対して遅相軸がなす配向角θが、用途に応じた所望の角度となるように設定しうる。例えば、光学積層体が1/4波長板として機能しうる光学異方性のフィルムである場合、前記の配向角θは、好ましくは40°以上、より好ましくは43°以上、特に好ましくは44°以上であり、好ましくは50°以下、より好ましくは47°以下、特に好ましくは46°以下である。光学積層体を偏光子保護フィルムとして用いて偏光板を製造する場合には、通常、長尺の偏光子と長尺の光学積層体とを、長手方向を平行にして貼り合わせる。また、偏光子の透過軸は、通常、偏光子の長手方向に平行又は垂直である。したがって、前記のように光学積層体が前記の配向角θを有する場合には、偏光子の透過軸と光学積層体の遅相軸とが45°±5°の角度をなすように、容易に貼り合わせることができる。このようにして製造された偏光板では、偏光子を透過した直線偏光は、光学積層体によって円偏光に変換されうる。よって、直線偏光によって画像を表示する画像表示装置にこの偏光板を設ければ、偏光サングラスを着用した場合でも画像の明るさを良好にできる画像表示装置を容易に実現できる。
【0084】
光学積層体が含む揮発性成分の量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、さらに好ましくは0.02質量%以下である。揮発性成分の量が前記範囲にあることにより、光学積層体の寸法安定性が向上し、レターデーション等の光学特性の経時変化を小さくすることができる。さらには、光学積層体を備える偏光板及び画像表示装置の劣化を抑制でき、長期的に画像表示装置の表示を安定で良好に保つことができる。ここで、揮発性成分は、分子量200以下の物質である。揮発性成分としては、例えば、残留単量体及び溶媒などが挙げられる。揮発性成分の量は、分子量200以下の物質の合計として、ガスクロマトグラフィーにより分析することにより定量しうる。
【0085】
光学積層体の飽和吸水率は、好ましくは0.05%以下、より好ましくは0.03%以下、特に好ましくは0.01%以下であり、理想的にはゼロ%である。光学積層体の飽和吸水率がこのように低いことにより、光学積層体の光学特性の継時的な変化を抑制することができる。
【0086】
光学積層体の飽和吸水率は、JIS K7209に従い、下記の手順で測定しうる。
光学積層体を50℃で24時間乾燥し、デシケータ中で放冷する。次いで、乾燥した光学積層体の質量(M1)を測定する。
この光学積層体を、温度23℃、相対湿度50%の室内で24時間水に浸漬し光学積層体を水で飽和させる。その後、水から光学積層体を取り出し、24時間浸漬後の光学積層体の質量(M2)を測定する。
これらの質量の測定値から、次式により、光学積層体の飽和吸水率を求めうる。
飽和吸水率(%)=[(M2−M1)/M1]×100(%)
【0087】
[8.光学積層体の製造方法]
光学積層体の製造方法に制限は無い。光学積層体は、例えば、樹脂(B)、樹脂(A)及び樹脂(B’)をフィルム状に成形する工程を含む製造方法により、製造しうる。樹脂(B)、樹脂(A)及び樹脂(B’)の成形方法としては、例えば、共押出法及び共流延法などが挙げられる。これらの成形方法の中でも、共押出法は、製造効率に優れ、光学積層体中に揮発性成分を残留させ難いので、好ましい。
【0088】
共押出法を用いた光学積層体の製造方法は、樹脂(B)と、樹脂(A)と、樹脂(B’)とを、共押し出しする工程を含む。共押出法においては、樹脂(B)、樹脂(A)及び樹脂(B’)は、それぞれ溶融状態で層状に押し出され、第一外側層、中間層及び第二外側層を形成する。この際、樹脂の押出方法としては、例えば、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等が挙げられる。中でも、共押出Tダイ法が好ましい。共押出Tダイ法には、フィードブロック方式及びマルチマニホールド方式があり、厚みのばらつきを少なくできる点で、マルチマニホールド方式が特に好ましい。
【0089】
共押出法において、押し出される樹脂(B)、樹脂(A)及び樹脂(B’)の溶融温度は、好ましくはTg+80℃以上、より好ましくはTg+100℃以上であり、好ましくはTg+180℃以下、より好ましくはTg+150℃以下である。ここで「Tg」は、樹脂(B)、樹脂(A)及び樹脂(B’)に含まれる重合体のガラス転移温度のうち、最も高い温度を表す。また、前記の溶融温度は、例えば共押出Tダイ法においては、Tダイを有する押出機における樹脂(B)、樹脂(A)及び樹脂(B’)の溶融温度を表す。押し出される樹脂(B)、樹脂(A)及び樹脂(B’)の溶融温度が、前記範囲の下限値以上であることより、樹脂の流動性を十分に高めて成形性を良好にでき、また、上限値以下であることにより、樹脂の劣化を抑制できる。
【0090】
押出温度は、樹脂(B)、樹脂(A)及び樹脂(B’)に応じて適切に選択しうる。例えば、押出機内における樹脂の温度は、樹脂投入口ではTg〜(Tg+100℃)、押出機出口では(Tg+50℃)〜(Tg+170℃)、ダイス温度は(Tg+50℃)〜(Tg+170℃)℃としうる。
【0091】
さらに、ダイのダイスリップの算術平均粗さRaは、好ましくは0μm〜1.0μm、より好ましくは0μm〜0.7μm、特に好ましくは0μm〜0.5μmである。ダイスリップの算術平均粗さを前記範囲に収めることにより、光学積層体のスジ状の欠陥を抑制することが容易となる。
【0092】
共押出法では、通常、ダイスリップから押し出されたフィルム状の溶融樹脂を冷却ロールに密着させて冷却し、硬化させる。この際、溶融樹脂を冷却ロールに密着させる方法としては、例えば、エアナイフ方式、バキュームボックス方式、静電密着方式などが挙げられる。
【0093】
前記のように樹脂(B)、樹脂(A)及び樹脂(B’)をフィルム状に成形することにより、樹脂(B)からなる第一外側層と、樹脂(A)からなる中間層と、樹脂(B’)からなる第二外側層とをこの順に備える光学積層体が得られる。
【0094】
また、光学積層体の製造方法は、延伸工程を含んでいてもよい。上述したように樹脂を成形して得られた光学積層体に延伸処理を施すことにより、この光学積層体にレターデーション等の所望の光学特性を発現させることができる。以下の説明において、「延伸前積層体」とは、延伸処理を施される前の光学積層体をいい、「延伸積層体」とは、延伸処理を施された光学積層体をいう。
【0095】
延伸は、一方向のみに延伸処理を行う一軸延伸処理を行ってもよく、異なる2方向に延伸処理を行う二軸延伸処理を行ってもよい。また、二軸延伸処理では、2方向に同時に延伸処理を行う同時二軸延伸処理を行ってもよく、ある方向に延伸処理を行った後で別の方向に延伸処理を行う逐次二軸延伸処理を行ってもよい。さらに、延伸は、延伸前積層体の長手方向に延伸処理を行う縦延伸処理、延伸前積層体の幅方向に延伸処理を行う横延伸処理、延伸前積層体の幅方向に平行でもなく垂直でもない斜め方向に延伸処理を行う斜め延伸処理のいずれを行ってもよく、これらを組み合わせて行ってもよい。これらの延伸処理の中でも、斜め延伸処理が好ましい。
【0096】
延伸積層体を偏光子保護フィルムとして用いて偏光板を製造する場合、通常は、偏光子の透過軸と延伸積層体の遅相軸とが所定の角度で交差するように貼り合わせることが求められる。ところが、縦延伸処理及び横延伸処理によって得られる延伸積層体は、その遅相軸の向きが、当該延伸積層体の幅方向と平行又は垂直な方向となる。このように幅方向と平行又は垂直な遅相軸を有する延伸積層体は、通常、偏光子と所定の角度で貼り合わせるために、斜め方向に枚葉に裁断することが求められる。これに対し、斜め延伸処理によって得られる延伸積層体は、遅相軸の方向が、当該延伸積層体の幅方向に対して平行でも垂直でもない斜め方向となる。よって、斜め延伸処理によって得られる延伸積層体は、偏光子とロール・トゥ・ロールで貼りわせることによって偏光板を容易に製造することができる。
【0097】
延伸温度及び延伸倍率は、延伸によって発現させたい光学特性に応じて任意に設定しうる。具体的な範囲を挙げると、延伸温度は、好ましくはTg−30℃以上、より好ましくはTg−10℃以上であり、好ましくはTg+60℃以下、より好ましくはTg+50℃以下である。また、延伸倍率は、好ましくは1.01倍〜30倍、好ましくは1.01倍〜10倍、より好ましくは1.01倍〜5倍である。
【0098】
また、光学積層体の製造方法は、前述した工程に加えて、更に任意の工程を含んでいてもよい。
【0099】
[9.偏光板]
上述した光学積層体は、位相差フィルム、偏光子保護フィルム、偏光補償フィルム等の光学フィルムとして広範な用途に用いうる。中でも、光学積層体は、偏光子保護フィルムに用いることが好ましい。偏光子保護フィルムとして光学積層体を用いた偏光板は、偏光子及び光学積層体を備える。
【0100】
図2は、本発明の一実施形態に係る偏光板200を模式的に示す断面図である。
図2に示すように、偏光板200は、偏光子210と、当該偏光子210の少なくとも片側に設けられた光学積層体100とを備える。このような偏光板200は、光学積層体100が紫外線を遮断して偏光子210を保護できるので、耐久性に優れる。
【0101】
偏光子210としては、直角に交わる二つの直線偏光の一方を透過し、他方を吸収又は反射しうるフィルムを用いうる。偏光子210の具体例を挙げると、ポリビニルアルコール、部分ホルマール化ポリビニルアルコール等のビニルアルコール系重合体のフィルムに、ヨウ素、二色性染料等の二色性物質による染色処理、延伸処理、架橋処理等の適切な処理を適切な順序及び方式で施したものが挙げられる。特に、ポリビニルアルコールを含む偏光子210が好ましい。また、偏光子210の厚さは、通常、5μm〜80μmである。
【0102】
さらに、光学積層体100が1/4波長板として機能しうる場合には、偏光板200において、偏光子210の偏光透過軸と、光学積層体100の遅相軸とは、45°±5°の角度をなすことが好ましい。これにより、偏光子210を透過した直線偏光を、光学積層体100によって円偏光に変換できる。
【0103】
偏光板200は、偏光子210に光学積層体100を貼り合わせることにより、製造できる。貼り合わせに際しては、必要に応じて接着剤を用いてもよい。
【0104】
偏光板200は、上述した偏光子210及び光学積層体100に組み合わせて、更に任意の層(図示せず。)を備えていてもよい。例えば、偏光板200は、光学積層体100以外の任意の保護フィルム層(図示せず。)を、偏光子210の保護のために備えていてもよい。このような保護フィルム層は、通常、光学積層体100とは反対側の偏光子210の面に設けられる。さらに、任意の層としては、例えば、ハードコート層、低屈折率層、帯電防止層、インデックスマッチング層が挙げられる。
【0105】
[有機EL表示装置]
図3は、本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置300を模式的に示す断面図である。
図3に示すように、有機EL表示装置300は、発光素子としての有機EL素子310、1/4波長板320、偏光子210、及び、光学積層体100を、この順に備える。偏光子210及び光学積層体100としては、
図2を示して説明した前記実施形態と同様のものを用いうる。
【0106】
有機EL素子310は、反射電極、透明電極等の電極層311と、透明電極層312と、前記の電極層311及び透明電極層312の間に設けられた発光層313を備え、電極層311及び透明電極層312から電圧を印加されることにより発光層313が光を生じうる。発光層313を構成する材料の例としては、ポリパラフェニレンビニレン系、ポリフルオレン系、およびポリビニルカルバゾール系の材料を挙げることができる。また、発光層313は、複数の発光色が異なる層の積層体、あるいはある色素の層に異なる色素がドーピングされた混合層を有していてもよい。さらに、有機EL素子310は、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、等電位面形成層、電荷発生層等の機能層(図示せず。)を備えていてもよい。有機EL表示装置300では、この有機EL素子310から発せられた光によって、画像が表示される。
【0107】
1/4波長板320の面内レターデーションReは、好ましくは80nm以上、より好ましくは85nm以上、特に好ましくは90nm以上であり、好ましくは180nm以下、より好ましくは160nm以下、特に好ましくは150nm以下である。また、1/4波長板320の遅相軸は、偏光子210の偏光透過軸に対して、45°±5°の角度をなすことが好ましい。このような1/4波長板320としては、例えば、延伸フィルム、液晶組成物を硬化させて得られるフィルム等の、樹脂フィルムを用いうる。
【0108】
このような1/4波長板320は、偏光子210を透過した直線偏光を円偏光に変換できるので、1/4波長板320と偏光子210との組み合わせによって、円偏光板としての機能が実現される。よって、1/4波長板320は、偏光子210との組み合わせによって、外光の反射による表示面のぎらつきを抑制することができる。具体的には、装置外部から入射した光は、その一部の直線偏光のみが偏光子210を通過し、次にそれが1/4波長板320を通過することにより円偏光となる。円偏光は、表示装置内の光を反射する構成要素(有機EL素子310中の電極層311など)により反射され、再び1/4波長板320を通過することにより、入射した直線偏光の振動方向と直交する振動方向を有する直線偏光となり、偏光子210を通過しなくなる。これにより、反射防止の機能が達成される(有機EL表示装置における反射防止の原理は、特開平9-127885号公報参照)。
【0109】
前記の有機EL表示装置300は、光学積層体100を備えるので、紫外線の進入を抑制できる。そのため、発光層313、1/4波長板320及び偏光子210のような有機EL表示装置300の構成要素に含まれる有機成分の紫外線による劣化を、抑制することができる。特に、有機EL表示装置300は、発光層313に含まれる有機成分が劣化すると、輝度が低下し易い傾向がある。そのため、発光層313に含まれる有機成分の紫外線による劣化の抑制ができることは、有機EL表示装置300の寿命を延ばすためには効果的である。
【0110】
さらに、光学積層体100が1/4波長板として機能しうる場合、偏光子210の偏向透過軸と光学積層体100の遅相軸とがなす角度を適切に調整することにより、光学積層体100によって、偏光サングラスを通して見る場合の画像視認性を高めることができる。通常、有機EL表示装置300においては、有機EL素子310から発せられ、1/4波長板320、偏光子210、及び光学積層体100を通過した光によって、画像が表示される。よって、画像を表示する光は、偏光子210を通過した時点では直線偏光であるが、光学積層体100を通過することによって円偏光に変換される。したがって、前記の有機EL表示装置300では、円偏光によって画像が表示されるので、偏光サングラスを通して表示面300Uを見た場合に、画像を視認することが可能である。
【実施例】
【0111】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り質量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中において行った。
【0112】
以下の説明において、別に断らない限り、「DCP」とは「トリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカ−3−エン」を示し、「TCD」とは「テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン」を示し、「MTF」とは「テトラシクロ[9.2.1.0
2,10.0
3,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン」を示す。
【0113】
[評価方法]
(吸光度の測定方法)
紫外線吸収剤10mgを、1リットルのクロロフォルムに混合し、溶解させて、サンプル溶液を得た。このサンプル溶液の測定波長390nmにおける吸光度を、温度25℃、サンプル溶液中の光路長10mmの条件で、測定装置(日本分光社製「V−7200」)を用いて測定した。
【0114】
(フィルムの配向角の測定方法)
フィルムの遅相軸の方向を、位相差計(王子計測社製「KOBRA−21ADH」)を用いて測定した。その遅相軸が、フィルム長手方向に対してなす配向角θを求めた。
【0115】
(フィルムの面内レターデーションReの測定方法)
フィルムの面内レターデーションReは、位相差計(王子計測社製「KOBRA−21ADH」)を用いて、測定波長550nmにおいて測定した。
【0116】
(フィルムに含まれる各層の厚みの測定方法)
フィルム全体の厚みは、スナップゲージにて測定した。
また、フィルムに含まれる中間層の厚みは、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製「V−7200」)を用いて波長390nmにおけるフィルムの光線透過率を測定し、得られた光線透過率から計算した。さらに、後述する実施例及び比較例においては、第一外側層及び第二外側層は同じ厚みの層として形成したので、第一外側層及び第二外側層の厚みは、フィルム全体の厚みから中間層の厚みを引き算し、2で割ることにより、計算した。
【0117】
(耐光試験前の光線透過率の測定方法)
後述の耐光試験の前に、波長390nmにおけるフィルムの光線透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製「V−7200」)を用いて測定した。
【0118】
(耐光試験後の光線透過率の測定方法)
フィルムに、放射照度60W/m
2のキセノンランプから光を500時間にわたって照射する耐光試験を施した。その後、光を照射されたフィルムの波長390nmにおける光線透過率を、前記の紫外可視近赤外分光光度計を用いて測定した。
【0119】
[製造例1:樹脂J1の製造]
(開環重合)
窒素で置換した反応器に、DCP、TCD及びMTFの混合物(DCP/TCD/MTF=55/40/5質量比)7部、並びに、シクロヘキサン1600部を加えた。前記のDCP、TCD及びMTFの混合物の量は、重合に使用するモノマー全量に対して質量1%である。
【0120】
さらに、反応器に、トリ−i−ブチルアルミニウム0.55部、イソブチルアルコール0.21部、反応調整剤としてジイソプロピルエーテル0.84部、及び、分子量調節剤として1−ヘキセン3.24部を添加した。
ここに、濃度0.65%の六塩化タングステンのシクロヘキサン溶液24.1部を添加して、55℃で10分間攪拌した。
【0121】
次いで、反応系を55℃に保持しながら、DCP、TCD及びMTFの混合物(DCP/TCD/MTF=55/40/5質量比)693部と、濃度0.65%の六塩化タングステンのシクロヘキサン溶液48.9部とを、それぞれ系内に150分かけて連続的に滴下した。
【0122】
その後、30分間反応を継続し、重合を終了した。これにより、シクロヘキサン中に開環重合体を含む開環重合反応液を得た。重合終了後、ガスクロマトグラフィーにより測定したモノマーの重合転化率は、重合終了時で100%であった。
【0123】
(水素添加)
得られた開環重合反応液を耐圧性の水素化反応器に移送した。この反応器に、ケイソウ土担持ニッケル触媒(日揮化学社製「T8400RL」、ニッケル担持率57%)1.4部、及び、シクロヘキサン167部を加え、180℃、水素圧4.6MPaで6時間、水素添加反応させた。この水素添加反応により、開環重合体の水素添加物を含む反応溶液を得た。この反応溶液から、ラジオライト#500を濾過床として、圧力0.25MPaで加圧濾過(石川島播磨重工社製、製品名「フンダフィルター」)によって水素化触媒を除去し、無色透明な溶液を得た。
【0124】
次いで、前記水素添加物100部あたり0.5部の酸化防止剤(ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガノックス1010」)を、得られた溶液に添加して、溶解させた。次いで、この溶液を、フィルター(キュノーフィルター社製「ゼータープラスフィルター30H」、孔径0.5μm〜1μm)にて順次濾過し、さらに別の金属ファイバー製フィルター(ニチダイ社製、孔径0.4μm)にて濾過して、溶液から微小な固形分を除去した。開環重合体の水素添加物の水素添加率は、99.9%であった。
【0125】
次いで、上記の濾過により得られた溶液を、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所社製)を用いて、温度270℃、圧力1kPa以下で処理することにより、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去した。そして、濃縮機に直結したダイから、溶液に含まれていた固形分を溶融状態でストランド状に押出し、冷却後、開環重合体の水素添加物を含む樹脂J1のペレットを得た。ペレットに含まれる開環重合体の水素添加物の重量平均分子量(Mw)は38,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.5、ガラス転移温度Tgは126℃であった。
【0126】
[製造例2:樹脂J2の製造]
乾燥させた樹脂J1(ガラス転移温度126℃)85.0部と、トリアジン系紫外線吸収剤(ADEKA社製「LA−F70」)15.0部とを、二軸押出機により混合して、混合物を得た。次いで、その混合物を、単軸押出機に接続されたホッパーへ投入し、前記の単軸押出機を用いて溶融押出して、樹脂J2を得た。樹脂J2における紫外線吸収剤の量は、15.0質量%であった。
【0127】
[製造例3:樹脂J3の製造]
乾燥させた樹脂J1(ガラス転移温度126℃)90.0部と、トリアジン系紫外線吸収剤(ADEKA社製「LA−F70」)10.0部とを、二軸押出機により混合して、混合物を得た。次いで、その混合物を、単軸押出機に接続されたホッパーへ投入し、前記の単軸押出機を用いて溶融押出して、樹脂J3を得た。樹脂J3における紫外線吸収剤の量は、10.0質量%であった。
【0128】
[製造例4:樹脂J4の製造]
乾燥させた樹脂J1(ガラス転移温度126℃)93.0部と、トリアジン系紫外線吸収剤(ADEKA社製「LA−F70」)7.0部とを、二軸押出機により混合して、混合物を得た。次いで、その混合物を、単軸押出機に接続されたホッパーへ投入し、前記の単軸押出機を用いて溶融押出して、樹脂J4を得た。樹脂J4における紫外線吸収剤の量は、7.0質量%であった。
【0129】
[製造例5:樹脂J5の製造]
乾燥させた樹脂J1(ガラス転移温度126℃)93.0部と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(ADEKA社製「LA−31」)7.0部とを、二軸押出機により混合して、混合物を得た。次いで、その混合物を、単軸押出機に接続されたホッパーへ投入し、前記の単軸押出機を用いて溶融押出して、樹脂J5を得た。樹脂J5における紫外線吸収剤の量は、7.0質量%であった。
【0130】
[製造例6:樹脂J6の製造]
乾燥させた樹脂J1(ガラス転移温度126℃)89.0部と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(ADEKA社製「LA−31」)11.0部とを、二軸押出機により混合して、混合物を得た。次いで、その混合物を、単軸押出機に接続されたホッパーへ投入し、前記の単軸押出機を用いて溶融押出して、樹脂J6を得た。樹脂J6における紫外線吸収剤の量は、11.0質量%であった。
【0131】
[製造例7:樹脂J7の製造]
乾燥させた樹脂J1(ガラス転移温度126℃)97.0部と、インドール系紫外線吸収剤(オリエント化学工業社製「UA−3911」)3.0部とを、二軸押出機により混合して、混合物を得た。次いで、その混合物を、単軸押出機に接続されたホッパーへ投入し、前記の単軸押出機を用いて溶融押出して、樹脂J7を得た。樹脂J7における紫外線吸収剤の量は、3.0質量%であった。
【0132】
[実施例1]
目開き3μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを備える、ダブルフライト型単軸押出機(スクリューの直径D50mm、スクリューの有効長さLとスクリューの直径Dとの比L/D=28)を用意した。この単軸押出機に接続されたホッパーに、製造例2で得られた樹脂J2を投入し、押出機出口温度260℃の条件で溶融させた。溶融した樹脂J2を、フィードブロックを介して、ダイスリップの表面粗さRaが0.1μmの単層ダイに供給した。
【0133】
他方、目開き3μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを備える単軸押出機(スクリューの直径D=50mm、スクリューの有効長さLとスクリューの直径Dとの比L/D=30)1台を用意した。この単軸押出機に、製造例1で得られた樹脂J1を導入し、押出機出口温度260℃の条件で溶融させた。溶融した樹脂J1を、フィードブロックを介して、前記の単層ダイに供給した。
【0134】
次いで、樹脂J1の層、樹脂J2の層及び樹脂J1の層の3層を含むフィルム状に吐出されるように、溶融状態の樹脂J1及び樹脂J2を、前記の単層ダイから280℃で吐出させた。吐出された樹脂を、100℃に温度調整された冷却ロールにキャストして、樹脂J1からなる第一外側層(厚み5μm)−樹脂J2からなる中間層(厚み20μm)−樹脂J1からなる第二外側層(厚み5μm)の3層を備える積層体を得た。吐出された樹脂を冷却ロールにキャストする際、エアギャップ量は50mmに設定した。また、溶融状態のフィルム状の樹脂を冷却ロールにキャストする方法としては、エッジピニングを採用した。
【0135】
得られた積層体の幅は1450mm、厚さは30μmであった。この積層体の両端50mmずつをトリミングして、幅1350mmの光学積層体としての延伸前積層体1を得た。得られた延伸前積層体1の面内レターデーションRe、耐光試験前の波長390nmにおける光線透過率、及び、耐光試験後の波長390nmにおける光線透過率を、上述した方法で測定した。
【0136】
[実施例2]
単層ダイからの樹脂の押出条件を調整することにより、各層の厚みを、第一外側層(厚み6μm)、中間層(33μm)、第二外側層(6μm)と変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして、光学積層体としての延伸前積層体2の製造及び評価を行った。
【0137】
[実施例3]
(延伸前積層体の製造)
単層ダイからの樹脂の押出条件を調整することにより、各層の厚みを、第一外側層(厚み7.5μm)、中間層(30μm)、第二外側層(7.5μm)と変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして、延伸前積層体3を製造した。
【0138】
(延伸工程)
この延伸前積層体3を、長手方向に連続的に搬送しながら斜め方向に延伸して、光学積層体としての延伸積層体S1を得た。前記の延伸は、延伸前積層体3のフィルム幅方向の端部を把持しうる把持子を備えたテンター延伸機を用いて、延伸温度138℃、延伸倍率1.5倍で行った。得られた延伸積層体S1の配向角θ、面内レターデーションRe、耐光試験前の波長390nmにおける光線透過率、及び、耐光試験後の波長390nmにおける光線透過率を、上述した方法で測定した。
【0139】
[実施例4]
(延伸前積層体の製造)
中間層を形成するための樹脂として、樹脂J2の代わりに樹脂J3を用いた。また、単層ダイからの樹脂の押出条件を調整することにより、各層の厚みを、第一外側層(厚み11.5μm)、中間層(47μm)、第二外側層(11.5μm)と変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして、延伸前積層体4を製造した。
【0140】
(延伸工程)
延伸前積層体3の代わりに延伸前積層体4を用いた。また、延伸温度を141℃に変更した。以上の事項以外は、実施例3の前記(延伸工程)と同様にして、延伸積層体S2の製造及び評価を行った。
【0141】
[実施例5]
中間層を形成するための樹脂として、樹脂J2の代わりに樹脂J7を用いた。以上の事項以外は実施例1と同様にして、光学積層体としての延伸前積層体11の製造及び評価を行った。
【0142】
[比較例1]
(延伸前積層体の製造)
中間層を形成するための樹脂として、樹脂J2の代わりに樹脂J5を用いた。また、単層ダイからの樹脂の押出条件を調整することにより、各層の厚みを、第一外側層(厚み16.5μm)、中間層(37μm)、第二外側層(16.5μm)と変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして、延伸前積層体5を製造した。
【0143】
(延伸工程)
延伸前積層体3の代わりに延伸前積層体5を用いた。また、延伸温度を141℃に変更した。以上の事項以外は、実施例3の前記(延伸工程)と同様にして、延伸積層体S3の製造及び評価を行った。
【0144】
[比較例2]
(延伸前積層体の製造)
中間層を形成するための樹脂として、樹脂J2の代わりに樹脂J6を用いた。また、単層ダイからの樹脂の押出条件を調整することにより、各層の厚みを、第一外側層(厚み9μm)、中間層(20μm)、第二外側層(9μm)と変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして、延伸前積層体6を製造した。
【0145】
(延伸工程)
延伸前積層体3の代わりに延伸前積層体6を用いた。また、延伸温度を136℃に変更した。以上の事項以外は、実施例3の前記(延伸工程)と同様にして、延伸積層体S4の製造及び評価を行った。
【0146】
[比較例3]
中間層を形成するための樹脂として、樹脂J2の代わりに樹脂J5を用いた。また、単層ダイからの樹脂の押出条件を調整することにより、各層の厚みを、第一外側層(厚み8.25μm)、中間層(8.5μm)、第二外側層(8.25μm)と変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして、光学積層体としての延伸前積層体7の製造及び評価を行った。
【0147】
[比較例4]
中間層を形成するための樹脂として、樹脂J2の代わりに樹脂J4を用いた。また、単層ダイからの樹脂の押出条件を調整することにより、各層の厚みを、第一外側層(厚み8.5μm)、中間層(9μm)、第二外側層(8.5μm)と変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして、光学積層体としての延伸前積層体8の製造及び評価を行った。
【0148】
[比較例5]
中間層を形成するための樹脂として、樹脂J2の代わりに樹脂J4を用いた。以上の事項以外は実施例1と同様にして、光学積層体としての延伸前積層体9の製造及び評価を行った。
【0149】
[比較例6]
単層ダイからの樹脂の押出条件を調整することにより、各層の厚みを、第一外側層(厚み10μm)、中間層(10μm)、第二外側層(10μm)と変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして、光学積層体としての延伸前積層体10の製造及び評価を行った。
【0150】
[結果]
前記の実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。下記の表において、略称の意味は、下記のとおりである。
UVA濃度:中間層に含まれる樹脂における紫外線吸収剤の濃度。
390nm吸光度:クロロフォルム1Lに紫外線吸収剤10mgを溶解させたサンプル溶液の、波長390nmにおける吸光度。
Re:面内レターデーション。
厚み比:第一外側層及び第二外側層の合計厚みに対する中間層の厚みの比。
配向角θ:長手方向に対して、延伸積層体の遅相軸がなす角度。
光線透過率(試験前):耐光試験の前に測定した、波長390nmにおける光線透過率。
光線透過率(試験後):耐光試験の後に測定した、波長390nmにおける光線透過率。
【0151】
【表1】
【0152】
【表2】
【0153】
[実施例6:円偏光板の製造]
実施例4で製造した延伸積層体S2の表面に、コロナ処理を施した。延伸積層体S2のコロナ処理を施した面と、直線偏光子としての長尺の偏光フィルム(サンリッツ社製「HLC2−5618S」、厚さ180μm、幅方向に対して0°の方向に透過軸を有する)の一方の面とを、粘接着剤(日立化成社製「LE−3000シリーズ」)を介して貼り合わせて、円偏光板を得た。