特許第6870258号(P6870258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870258
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】導電性接着剤および導電性材料
(51)【国際特許分類】
   C09J 171/00 20060101AFI20210426BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20210426BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20210426BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20210426BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20210426BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20210426BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   C09J171/00
   C09J11/04
   C09J9/02
   C09J11/06
   H01B1/22 D
   H01B1/00 L
   H01B13/00 Z
【請求項の数】16
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-186115(P2016-186115)
(22)【出願日】2016年9月23日
(65)【公開番号】特開2018-48286(P2018-48286A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
(72)【発明者】
【氏名】国宗 哲平
(72)【発明者】
【氏名】蔵本 雅史
【審査官】 井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−110759(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/060173(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/086588(WO,A1)
【文献】 特開2014−185227(JP,A)
【文献】 特開2016−003306(JP,A)
【文献】 特開2005−187793(JP,A)
【文献】 特開2011−071057(JP,A)
【文献】 特開2009−013449(JP,A)
【文献】 特開2016−148104(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/164836(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 − 201/00H01B 1/00
H01B 1/22
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料が導電性接着剤を硬化した物であり、金属粒子(B)が、導電性接着剤の硬化後に焼結している導電性材料であって、
前記導電性接着剤が、
(A)式:−R−O−[式中、Rは炭素数1〜10の炭化水素基である。]で示される繰り返し単位を有する主鎖および加水分解性シリル基である末端基を有するポリエーテル重合体、ならびに
(B)銀粒子を含む金属粒子であって、金属粒子は、0.3μm〜10μmの平均粒径(メジアン径)を有し、かつ粒径が0.3μm未満の金属粒子の含有量が5重量%以下である金属粒子
を含む導電性材料
【請求項2】
ポリエーテル重合体(A)における加水分解性シリル基が、式:
−Si(-X1)n(-X2)3-n
[式中、X1は加水分解性基、X2は炭素数1〜12の炭化水素基、nは1、2または3である。]
で示される請求項1に記載の導電性材料
【請求項3】
ポリエーテル重合体(A)における加水分解性基が、ハイドライド基、アルコキシ基、ハロゲン基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノキシ基、アミド基、アミノ基およびメルカプト基から選択された少なくとも1種の基である請求項2に記載の導電性材料
【請求項4】
前記導電性接着剤には、さらに金、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウムおよびオスミウムより選ばれる少なくとも1種である他の金属の粒子が含有されており、前記他の金属の粒子の量は、銀粒子と他の金属の粒子の合計に対して30重量%以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電性材料
【請求項5】
金属粒子(B)は、フレーク状の粒子である請求項1〜のいずれか一項に記載の導電性材料
【請求項6】
銀粒子の平均粒径(メジアン径)が0.3μm〜5μmである請求項1〜のいずれか一項に記載の導電性材料
【請求項7】
金属粒子(B)の含有量が導電性接着剤に対して70〜98重量%である請求項1〜のいずれか一項に記載の導電性材料
【請求項8】
(C)縮合触媒をさらに含む請求項1〜のいずれか一項に記載の導電性材料
【請求項9】
縮合触媒(C)が錫化合物である請求項に記載の導電性材料
【請求項10】
酸化防止剤(D)をポリエーテル重合体(A)100重量部に対して3重量部以下の量で含む請求項1〜のいずれか一項に記載の導電性材料
【請求項11】
酸化防止剤(D)を(実質的に)含まない請求項1〜1のいずれか一項に記載の導電性材料
【請求項12】
酸化防止剤(D)がフェノール系酸化防止剤である請求項1または1に記載の導電性材料
【請求項13】
エポキシ樹脂を実質的に含まない請求項1〜1のいずれか一項に記載の導電性材料
【請求項14】
抗率が300μΩ・cm以下で、かつ弾性率が150MPa以下である請求項1〜13のいずれか一項に記載の導電性材料。
【請求項15】
大気中で160℃〜250℃で30〜120分間硬化を行う導電性接着剤を硬化する工程を含む請求項1〜13のいずれか一項に記載の導電性材料の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の導電性材料を含む配線を有するバックライト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電性接着剤、その製造方法、ならびに導電性材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性接着剤が、主にプリント基板の導体に電子部品を接続する導電材料として使用されている。導電性接着剤は、エポキシ、シリコーン、ポリイミド、ポリウレタン系樹脂などのバインダ、および銀、ニッケル、カーボンなどの導電性フィラーから構成される。導電性接着剤は、部品を電気的に接合するために、IC、LSIのプリント配線板への二次実装と、振動子(水晶、セラミックス)において主として使用されている。バインダにおいて、シリコーンは接着力と価格の点、ポリイミドは柔軟性と価格の点、ポリウレタンは耐熱性の点でエポキシに劣っているので、エポキシ系接着剤が主として使用されている。
【0003】
最近になってウェアラブルデバイス等のフレキシブルデバイスが注目を集めている。これまでは少し曲げられるというレベルで十分であったが、今後は折りたたむようなレベルでの柔軟性がデバイスに求められる。デバイスに用いられる配線材料は、金属配線は伸縮しにくく折り曲げによって断線することがあり、導電性接着剤もこれまで主流であったエポキシ系は柔軟性がないため向いておらず、ポリイミド系も同じであり、ポリウレタン系は耐熱性が低い。このためシリコーン系導電性接着剤が期待されている。しかし、シリコーン系導電性接着剤などの導電性接着剤は金属に比べると導電性が劣るため、電力のロスが大きい。
【0004】
特許文献1は、熱伝導性フィラー、および分子鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリイソブチレン、ポリエーテルまたはアクリル共重合体含む熱伝導性組成物を開示している。熱伝導性フィラーとして、酸化アルミニウムが使用されている。この熱伝導性組成物は、熱伝導性に着目しているものであり、低い導電性を有する。
特許文献2は、導電性粉末、熱硬化性シリコーン樹脂、および溶媒を含む導電性接着剤を開示している。バインダとして、シリコーン樹脂が使用されている。この導電性接着剤は導電性が低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−363429号公報
【特許文献2】特表2011−510139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明に係る実施形態は、良好な柔軟性を有しながら高い導電性を持つ導電性接着剤及びその製造方法ならびに、その導電性接着剤を用いた導電性材料の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る実施形態は、(A)ポリエーテル重合体、ならびに(B)銀粒子を含む導電性接着剤に関する。
本発明に係る実施形態は、前記導電性接着剤を焼成する工程を含む、導電性材料の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
導電性接着剤により、良好な柔軟性を有しながら導電性の高い配線を形成する事ができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、導電性接着剤、導電性接着剤の製造方法、ならびに導電性材料および導電性材料の製造方法について説明する。
【0010】
<導電性接着剤>
本発明に係る実施形態において、導電性接着剤は、
(A)ポリエーテル重合体、および
(B)銀粒子
を含む。
これにより、良好な柔軟性を有しながら高い導電性を持つ導電性接着剤を提供することができる。また、この導電性接着剤は、酸素透過性が高く、また加熱時に酸素による分解が起こりやすいという2つの特徴を併せ持ち、加熱時の酸素による銀粒子の表面活性化と、銀粒子同士の接触点の増加が発生し、銀粒子が低温で焼結しやすい。
導電性接着剤は、さらに、
(C)縮合触媒、
(D)酸化防止剤、および
(E)他の成分
から選択された少なくとも1種を含んでよい。
【0011】
[(A)ポリエーテル重合体]
ポリエーテル重合体は、式:−R−O−[式中、Rは炭素数1〜10の炭化水素基である。]で示される繰り返し単位を有する主鎖および加水分解性シリル基である末端基を有する。
ポリエーテル重合体の主鎖は、式:−R−O−[式中、Rは炭素数1〜10の炭化水素基である。]で示される繰り返し単位を有する。
【0012】
R基は、炭素数1〜10の2価の炭化水素基である。R基の炭素数は、1〜6、例えば1〜4、特に2または3、特別に3であってよい。R基は、酸素原子または硫黄原子を有していてよく、例えば、酸素原子または硫黄原子で連結されていてもよい。R基の例は、脂肪族基、芳香族基、芳香脂肪族基である。R基はアルキレン基であることが好ましい。R基の具体例としては、-CH2-、-CH2CH2-、-CH(CH3)-CH2-、-CH2CH2CH2CH2-、-CH(C2H5)-CH2-、-C(CH3)2-CH2-が挙げられる。-CH(CH3)-CH2-が好ましい。R基は、1種のみ(例えば、イソプロピレン基のみ)であってよいが、2種以上の組み合わせ(例えば、イソプロピレン基とエチレン基の組み合わせ)であってもよい。
【0013】
主鎖は、−R−O−の繰り返し単位のみからなっていてもよいが、他の繰り返し単位を有していてもよい。他の繰り返し単位の例は、シロキサン基、アミド基、イミド基、エチレン基、エチリデン基などである。主鎖における−R−O−の繰り返し単位の量は、少なくとも40重量%、例えば40〜100重量%、特に100重量%であってよい。
【0014】
ポリエーテル重合体は、加水分解性シリル基である末端基を有する。
加水分解性シリル基は、式:
−Si(-X1)n(-X2)3-n
[式中、X1は加水分解性基、X2は炭素数1〜12の炭化水素基、nは1、2または3である。]
で示される基であることが好ましい。
【0015】
加水分解性基(X1基)は、ハイドライド基、アルコキシ基(炭素数例えば1〜4)、ハロゲン基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノキシ基、アミド基、アミノ基およびメルカプト基から選択された少なくとも1種の基であることが好ましい。加水分解性基の具体例としては、塩素原子、メトキシ基、エトキシ基が挙げられる。
X2は炭素数1〜12の炭化水素基である。X2はアルキル基であることが好ましい。X2の炭素数は1〜4であることが好ましい。X2の具体例としてはメチル基、エチル基、イソプロピル基が挙げられる。
末端基は、加水分解性シリル基である末端基のみからなっていてもよいが、他の末端基を有していてもよい。他の末端基の例は、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基(炭素数が例えば1〜6)(例えば、メチル基およびエチル基)、アルコキシ基(炭素数が例えば1〜6)(例えば、メトキシ基およびエトキシ基)、アリル基、アリルオキシ基などである。末端基における加水分解性シリル基の量は、全ての末端基の数に対して少なくとも30%、例えば40〜100%、特に40〜75%であってよい。
加水分解性シリル基は、主鎖中に存在してもよいが、重合体の末端のみに存在することが好ましい。
【0016】
ポリエーテル重合体の平均分子量は、300〜100000、例えば400〜20000であってよい。平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定される標準ポリスチレン換算での重量平均分子量である。
ポリエーテル重合体の量は、銀粒子(B)100重量部に対して、1〜30重量部、例えば2〜25重量部、特に5〜20重量部、特別に7〜18重量部であってよい。
ポリエーテル重合体は、液体である。重合体は、硬化して、非流動体(固体)になる。
【0017】
[(B)銀粒子]
導電性接着剤は、銀粒子を含有する。
低温で焼結しやすいので、銀粒子は、湿式還元法で製造されていることが好ましい。
【0018】
銀粒子に加えて、他の金属の粒子を使用してもよい。銀粒子以外の金属粒子としては、例えば、金、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウムおよびオスミウムから選択された少なくとも1種の金属の粒子を使用できる。金、白金およびパラジウムが好ましい。本明細書において、銀粒子と他の金属の粒子を含めた粒子を「金属粒子」と呼ぶ。金属粒子において、銀が主成分(例えば、70重量%以上)であることが好ましい。銀を主成分とする粒子は酸素存在下で焼結しやすい。金属粒子は、銀と他の金属との組み合わせ(例えば、合金)からできていてよいが、銀のみからできていることが好ましい。金属粒子における銀粒子の割合は、例えば70重量%以上(具体的には70〜100重量%)、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、特に100重量%であってよい。金属粒子における他の金属の粒子の割合は、例えば30〜0重量%、好ましくは20〜0重量%、より好ましくは10〜0重量%、特に0重量%であってよい。
【0019】
銀粒子を含めた金属の粒子(好ましくは他の金属の粒子)は、平均粒径が、0.1μm〜15μm、好ましくは0.3μm〜10μm、より好ましくは0.3μm〜5μmであってよい。銀粒子の平均粒径が0.3μm〜5μm、好ましくは1.0μm〜4μmであり、より好ましくは1.5μm〜3.5μmであってよい。金属粒子(特に、銀粒子)は、平均粒径が1種類のものであっても、2種類以上のものを混合して用いてもよい。所定の平均粒径の銀粒子を用いることにより、銀粒子を高密度に配置することができ、電気抵抗値を小さくすることができる。
【0020】
金属粒子は、粒径が0.3μm未満の粒子の含有量が5重量%以下であるのが好ましく、4重量%以下であるのがより好ましい。金属粒子は、粒径が0.5μm以下の粒子の含有量が15重量%以下であるのが好ましく、10重量%以下であるのがより好ましい。
【0021】
金属粒子の平均粒径は、レーザー回折により測定することができる。なお、平均粒径とは、粒度分布から求めた積算堆積頻度が50%の値を意味する。以下、平均粒径は特に断りのない限りメジアン径を意味する。
【0022】
また、金属粒子は、比表面積が0.4m/g〜1.5m/gであり、好ましくは0.6m/g〜0.9m/gであり、より好ましくは0.66m/g〜0.74m/gである。比表面積が大きいほど隣接する金属粒子(特に銀粒子)の接合面積を大きくすることで電気抵抗を小さくできるが、比表面積が大きすぎると金属粒子(特に銀粒子)の添加による粘度上昇が大きくなり、導電性接着剤中に含む事ができる金属粒子が減って、結果的に電気抵抗が大きくなる。所定の比表面積の金属粒子を用いることにより、低い電気抵抗が得られる。導電性接着剤の主原料である金属粒子の比表面積は、BETの方法により測定することができる。
【0023】
金属粒子の形態は限定されないが、例えば、球状、扁平な形状、フレーク状、多面体等が挙げられ、フレーク状が好ましい。フレーク状とすることで隣り合う金属粒子との接触面積が大きくなり、電気抵抗が下がる。金属粒子の形態は、平均粒径が所定の範囲内の金属粒子に関して、均等であるのが好ましい。金属粒子は、平均粒径が2種類以上のものを混合する場合、それぞれの平均粒径の金属粒子の形態は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、平均粒径が3μmである金属粒子と平均粒径が0.3μmである金属粒子の2種類を混合する場合、平均粒径が0.3μmである金属粒子は球状であり、平均粒径が3μmである金属粒子は扁平な形状であってもよい。
【0024】
金属粒子の含有量(特に、銀粒子の含有量)が、導電性接着剤に対して、好ましくは70重量%以上、より好ましくは75〜98重量%、特に80〜95重量%である。金属粒子の含有量が所定の範囲であると、得られる導電性材料の導電性が高くなる。
【0025】
導電性接着剤は、上記した成分に加えて、必要に応じて、
(C)縮合触媒、
(D)酸化防止剤、
(E)他の添加剤、例えば、有機溶剤、シランカップリング剤、可塑剤、紫外線吸収剤等を含有しても良い。
【0026】
[(C)縮合触媒]
縮合触媒として、例えば、シラノール縮合触媒を用いることができる。シラノール縮合触媒は、シラノール基とこれと縮合可能な基との縮合反応に適用できる化合物であれば特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。なかでも、より高い硬度を発現させることができ、硬化性(具体的には短時間で高い硬度を発現させ経時的な硬度変化が少ない。)、熱安定性、作業性に優れ、透明性が高く、粘度を低くすることができるという観点から、シラノール縮合触媒は、錫化合物、亜鉛化合物及びジルコニウム化合物から選ばれる1種以上の触媒であることが好ましく、錫化合物及び亜鉛化合物の一方または両方であることがより好ましい。
【0027】
錫化合物は錫を含有する化合物であれば特に制限されない。なかでも、より高い硬度を発現させることができ、硬化性、熱安定性、作業性に優れ、透明性が高く、粘度を低くすることができるという観点から、4価の錫化合物が好ましく、エステル結合を含む基及びアルキル基を有する4価のスズ化合物がより好ましい。
錫化合物としては、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。
(R11)aSn(-O-CO-R12)4-a
[式中、R11は炭素数1〜30のアルキル基、R12は炭素数1〜30の炭化水素基であり、aは1〜3の整数である。]
11の炭素数は1〜20、例えば1〜10であることが好ましい。R11の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、オクチル基が挙げられる。
12の炭素数は1〜20であってよい。R12は脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせであってよい。炭化水素基は直鎖状、分岐状、環状またはこれらの組み合わせであってよい。炭化水素基は不飽和結合を有することができる。炭化水素基は例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有していてもよい。
【0028】
錫化合物の具体例としては、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオレエート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズマレエート、ジブチルスズフタレートのようなジアルキルスズ化合物;ジブチルスズオキシアセテートジブチスズオキシオクチレート、ジブチルスズオキシラウレートジブチルスズビスメチルマレート、ジブチルスズオキシオレエートのようなジアルキルスズの2量体;またはジブチルスズマレートポリマー、ジオクチルスズマレートポリマー;モノブチルスズトリス(2−エチルヘキサノエート)が挙げられる。
錫化合物はより高硬度で、硬化性に優れ、より透明性が高いという観点から、なかでも、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオレエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクテートが好ましい。
【0029】
亜鉛化合物は亜鉛を含む化合物であれば特に制限されない。例えば、亜鉛アセテート、亜鉛アセチルアセテート、2−エチルヘキサン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛のような脂肪族カルボン酸亜鉛;ナフテン酸亜鉛のような脂環式カルボン酸亜鉛;安息香酸亜鉛、p−tert−ブチル安息香酸亜鉛、亜鉛サリチレートのような芳香族カルボン酸亜鉛等のカルボン酸塩;亜鉛(メタ)アクリレート;亜鉛アセチルアセトナート[Zn(II)アセチルアセトナート、Zn(acac)2]、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネートZnのような亜鉛キレートが挙げられる。なかでも、より高硬度で硬化性に優れ、透明性が高いという観点から、2−エチルヘキサン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛が好ましい。
【0030】
ジルコニウム化合物はジルコニウム原子を含む化合物であれば特に制限されない。例えば、ジルコニル化合物およびオルガノオキシジルコニウム化合物が挙げられる。
【0031】
ジルコニル化合物の例は、
O=Zr2+(-O-C(=O)-R21)2
[式中、R21は炭素原子数1〜18の炭化水素基である。]
で示される化合物である。
【0032】
ジルコニル化合物の具体例としては、ジオクチル酸ジルコニル、ジネオデカン酸ジルコニルのような脂肪族カルボン酸塩;ナフテン酸ジルコニル、シクロヘキサン酸ジルコニルのような脂環式カルボン酸塩;安息香酸ジルコニルのような芳香族カルボン酸塩が挙げられる。
【0033】
オルガノオキシジルコニウム化合物の例は、
(R31-C(=O)-O-)Zr(-OR32)4-m
[式中、R31は同一または異なる、炭素原子数1〜16の炭化水素基であり、R32は同一または異なる、炭素原子数1〜18の炭化水素基であり、mは1〜3の整数である。]
で示される化合物である。
【0034】
31のそれぞれまたはR32のそれぞれは同じでも異なっていてもよい。
31で表される炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられる。炭化水素基は直鎖状でも分岐していてもよい。炭化水素基は不飽和結合を有することができる。炭化水素基は例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有することができる。
31で表される炭化水素基は硬化性により優れるという観点から環状構造を有するのが好ましい。環状構造としては、例えば、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられる。R31は環状構造のほかに例えば脂肪族炭化水素基を有することができる。
【0035】
脂環式炭化水素基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基のようなシクロアルキル基;ナフテン環(ナフテン酸由来のシクロパラフィン環);アダマンチル基、ノルボルニル基のような縮合環系炭化水素基が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては例えば、フェニル基、ナフチル基、アズレンが挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基が挙げられる。
【0036】
なかでも硬化性により優れるという観点から、R31で表される炭化水素基は脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基であることが好ましく、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ナフテン環(R31COO−としてのナフテート基)、フェニル基がより好ましく、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ナフテン環がさらに好ましい。
【0037】
また、熱安定性に優れ、相溶性に優れるという観点から、R32で表される炭化水素基の炭素原子数は3〜8であるのが好ましい。
32で表される炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられる。炭化水素基は直鎖状でも分岐していてもよい。炭化水素基は不飽和結合を有することができる。炭化水素基は例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有することができる。熱安定性に優れ、相溶性に優れるという観点から、R32で表される炭化水素基は脂肪族炭化水素基であるのが好ましい。
【0038】
オルガノオキシジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムトリアルコキシモノナフテート、ジルコニウムトリアルコキシモノシクロプロパンカルボキシレート、ジルコニウムトリアルコキシシクロブタンカルボキレート、ジルコニウムトリアルコキシモノシクロペンタンカルボキシレート、ジルコニウムトリアルコキシモノシクロヘキサンカルボキシレート、ジルコニウムトリアルコキシモノアダマンタンカルボキシレートが挙げられる。
また、ジルコニウム化合物としては、例えば、オルガノオキシジルコニウム化合物と他の金属触媒(例えばカルボン酸亜鉛塩)との反応生成物が挙げられる。
ジルコニウム化合物はその製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0039】
縮合触媒の量は、より高い硬度を発現させることができ、硬化性に優れ、透明性が高いという観点から、ポリエーテル重合体(A)100重量部に対して、0.01〜5重量部であり、同様の理由から、0.01〜3重量部であるのが好ましく、0.01〜2重量部であるのがより好ましい。
縮合触媒が錫化合物及び亜鉛化合物を少なくとも含む場合、錫化合物及び亜鉛化合物の量比は、より高い硬度となり、硬化性に優れ、より透明性が高いという観点から、亜鉛化合物の量が、錫化合物100重量部に対して、5〜50重量部であるのが好ましく、5〜30重量部であるのがより好ましい。
【0040】
縮合触媒が錫化合物、亜鉛化合物及びジルコニウム化合物を含む場合、錫化合物、亜鉛化合物、ジルコニウム化合物の量比は、より高い硬度となり、硬化性に優れ、より透明性が高いという観点から、錫化合物100重量部に対して、亜鉛化合物が5〜50重量部であるのが好ましく、5〜30重量部であるのがより好ましく、ジルコニウム化合物が5〜50重量部であるのが好ましく、5〜30重量部であるのがより好ましい。
複数の縮合触媒を併用する場合、これらをそれぞれ別個に用いて接着剤に含有させることができる。また、複数の縮合触媒を予め加熱して反応させたものを用いることができる。
【0041】
接着剤は上記の成分以外に必要に応じてさらに添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、無機フィラー、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、熱光安定剤、分散剤、帯電防止剤、重合禁止剤、消泡剤、硬化促進剤、溶剤、無機蛍光体、老化防止剤、ラジカル禁止剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定性改良剤、オゾン老化防止剤、増粘剤、可塑剤、放射線遮断剤、核剤、カップリング剤、導電性付与剤、リン系過酸化物分解剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤が挙げられる。各種添加剤は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
添加剤の量は、ポリエーテル重合体(A)100重量部に対して、0〜20重量部、例えば0.1〜10重量部であってよい。
【0042】
[(D)酸化防止剤]
導電性接着剤は、酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤は、導電性接着剤の酸化を防止して、耐候性を改善するために使用されるものであり、例えば、ヒンダードアミン系やヒンダードフェノール系の酸化防止剤等が挙げられる。
【0043】
ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、例えば、N,N′,N″,N″′−テトラキス−(4,6−ビス(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミン・N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合体、[デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物(70%)]−ポリプロピレン(30%)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケ−ト、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケ−ト、1−[2−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリストール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレン−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N′−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオアミド]、ベンゼンプロパン酸3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシC7−C9側鎖アルキルエステル、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスホネート、3,3′,3″,5,5′,5″−ヘキサン−tert−ブチル−4−a,a′,a″−(メシチレン−2,4,6−トリル)トリ−p−クレゾール、カルシウムジエチルビス[[[3,5−ビス−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスホネート]、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、N−フェニルベンゼンアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記酸化防止剤は単独で使用しても良く、または、2種以上を併用しても良い。
【0045】
酸化防止剤の量は、ポリエーテル重合体(A)100重量部に対して3重量部以下、例えば、0〜2重量部、特に0〜0.5重量部、特別に0重量部であってよい。導電性接着剤は酸化防止剤を含まないことが好ましい。このような添加量とする事で、導電性接着剤の硬化後の電気抵抗が低くなる。
【0046】
[(E)他の添加剤]
他の添加剤の例は、有機溶剤、シランカップリング剤、可塑剤、紫外線吸収剤である。
他の添加剤の量は、ポリエーテル重合体(A)100重量部に対して、0〜15重量部、例えば0.1〜5重量部であってよい。
[(E1)有機溶剤]
酸化防止剤(D)が固体である場合、分散性を上げるために、ポリエーテル重合体と混合する前に、酸化防止剤(D)を有機溶剤に溶解してポリエーテル重合体に添加しても良い。有機溶剤としては、例えば、芳香族炭化水素(例えば、トルエン)およびアルコール(例えば、メチルアルコール)が挙げられる。
【0047】
[(E2)シランカップリング剤]
導電性接着剤は接着付与剤としてシランカップリング剤を含んでも良い。シランカップリング剤としては、例えばアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルメトキシシランなどのアミノシラン類、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシシラン類、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリルシラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシラン類、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネートシラン類などが挙げられる。上記シランカップリング剤は単独で用いても良く、2種以上併用しても良い。
【0048】
<導電性接着剤の製造方法>
導電性接着剤は、重合体(A)、銀粒子(B)、および必要により他の成分を混合することによって製造できる。混合は、0〜50℃、例えば室温(25℃)で行うことができる。導電性接着剤の製造において、脱泡を行う事が好ましい。脱泡により、硬化後に気泡が入る事による強度の低下を防ぐ事ができる。
【0049】
<導電性材料の製造方法>
本開示の実施形態の1つは、導電性接着剤を硬化する工程(焼成工程)を含む導電性材料の製造方法である。導電性材料が、導電性接着剤を焼成する工程を含む方法によって製造できる。
【0050】
焼成(硬化)は、非酸化性雰囲気下、大気下、真空雰囲気下、酸素もしくは混合ガス雰囲気下、気流中などの雰囲気下等で行ってもよいが、大気雰囲気下で行われるのが好ましい。この雰囲気下で焼成すれば、ロールトゥーロール工程に対応できる上に、金属粒子として銀粒子を用いる場合、銀の熱拡散が加速され、より低い電気抵抗を有する導電性材料が得られる。
【0051】
焼成は、150℃〜250℃、例えば160℃〜220℃の範囲の温度で行われるのが好ましい。この温度範囲では、樹脂材料(特に、ポリエーテル重合体(A))の酸化が生じずに、金属粒子の焼結が進む。焼成時間は、5分〜48時間であってよい。例えば、185℃で60分の大気オーブンによる焼成によって抵抗率が300μΩ・cm以下となり、かつ弾性率が300MPa以下となる導電性材料を与える導電性接着剤が好ましい。このような導電性接着剤は、フレキシブルデバイスにおいて高い信頼性(例えば、高い柔軟性)を有した上で電力消費を抑える。
【0052】
<導電性材料>
導電性材料は、導電性接着剤を硬化(焼成)して得られる硬化物である。導電性材料は、導電性接着剤の硬化物である。前記導電性材料の金属粒子は焼結している事が好ましい。導電性材料は、金属粒子が焼結している場合に特に、電気抵抗が低いという利点を有する。
【0053】
導電性材料は、抵抗率が300μΩ・cm以下、好ましくは200μΩ・cm以下、より好ましくは100μΩ・cm以下である。抵抗率が低いほど、電極として用いる場合には電力のロスが抑えられ、また放熱性に優れる。
【0054】
導電性材料は、弾性率が300MPa以下、好ましくは150MPa以下である。弾性率が低いほど、電極として用いる場合には柔軟性に優れる。
導電性材料は、一般に、基材に結合している。基材の例は、樹脂、プラスチック、セラミック、ガラス、金属、布、紙である。導電性材料は、2つの基材を結合してよく、あるいは1つの基材の上に存在してよい。
導電性材料は、良好な導電性を有する配線として使用できる。導電性材料は、柔軟性が要求される電子部品、例えば、バックライトなどの発光デバイスにおいて使用できる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例、比較例に基づいて、本実施形態に係る導電性接着剤、導電性接着剤の製造方法、導電性材料、および導電性材料の製造方法について説明する。
以下の実施例および比較例において、次のようにして測定を行った。
【0056】
[抵抗率の測定]
得られた導電性接着剤を、ガラス基板(厚み1mm)にスクリ−ン印刷法により厚み100μmに塗布した。導電性接着剤が塗布されたガラス基板を、表1および表2に指定した温度で、大気雰囲気下で60分加熱した。得られた配線(導電性材料)を製品名「MCP−T600」(三菱化学株式会社製)を用い四探針法にて抵抗率を温度25℃で測定した。
【0057】
[弾性率の測定]
得られた導電性接着剤を、フッ素樹脂加工した金型を用いて厚み1mmの板状に硬化した。得られた板(導電性材料)の弾性率を、セイコーインスツルメンツ株式会社製粘弾性測定装置「DMS6100」を用いて測定した。測定条件は、測定長さ20mm、測定幅10mm、測定温度30℃、測定周波数10Hz、測定時張力ゲイン1.0を用いた。
【0058】
[実施例1]
ポリエーテル重合体(A)として、主鎖の繰り返し単位-CH(CH3)-CH2-O-および末端基−Si(-CH3)(-OCH3)2を有する重合体(粘度6Pa・s)SAX350(カネカ製MSポリマー、ポリプロピレンオキサイド)(1.59g、100重量部)と、銀粒子(B)としてフレーク状銀粒子(福田金属箔粉工業株式会社製、製品名「AgC−239」、フレーク状、平均粒径が2.7μm、比表面積が0.7m2/g、粒径0.3μm未満の粒子の含有量は1重量%、粒径0.5μm以下の粒子の含有量は3重量%)(9.00g、566重量部)を、ミキサーにて1分間攪拌、次いで15秒間脱泡のレシピを用いて攪拌し、導電性接着剤を得た(銀粒子の含有量は、85.0重量%)。
【0059】
[実施例2]
縮合触媒(C)として、ジブチルスズジオクテートをポリエーテル重合体(A)100重量部に対して2重量部(0.03g)追加して加えた以外は、実施例1と同様に行い、導電性接着剤を得た(銀粒子の含有量は、84.7重量%)。
【0060】
[実施例3]
シランカップリング剤として、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−903、信越化学製)をポリエーテル重合体(A)100重量部に対して2重量部(0.03g)追加で加えた以外は、実施例2と同様に行い、導電性接着剤を得た(銀粒子の含有量は、84.5重量%)。
【0061】
[実施例4]
酸化防止剤(D)として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(AO−60、アデカ製)(4.00g)と、有機溶剤として、トルエン(7.50g)を混合し、事前に溶解した溶液を、ポリエーテル重合体(A)100重量部に対して各4重量部と7.5重量部(溶液として0.18g)追加で加えた以外は、実施例3と同様に行い、導電性接着剤を得た(銀粒子の含有量は、83.1重量%)。
【0062】
[実施例5]
ポリエーテル重合体(A)として主鎖の繰り返し単位-CH(CH3)-CH2-O-および末端基−Si(-CH3)(-OCH3)2を有する重合体(粘度0.6Pa・s)SAT010(カネカ製MSポリマー、ポリプロピレンオキサイド)(1.00g、100重量部)用いた以外は、実施例1と同様に行い、導電性接着剤を得た(銀粒子の含有量は、90.0重量%)。
【0063】
[実施例6]
縮合触媒(C)として、ジブチルスズジオクテートをポリエーテル重合体(A)100重量部に対して2重量部(0.02g)追加で加えた以外は、実施例5と同様に行い、導電性接着剤を得た(銀粒子の含有量は、89.8重量%)。
【0064】
[実施例7]
シランカップリング剤として、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−903、信越化学製)をポリエーテル重合体(A)100重量部に対して2重量部(0.02g)追加で加えた以外は、実施例6と同様に行い、導電性接着剤を得た(銀粒子の含有量は、89.6重量%)。
【0065】
[実施例8]
酸化防止剤(D)として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(AO−60、アデカ製)(4.00g)と、有機溶剤として、トルエン(7.50g)を混合し、事前に溶解した溶液を、ポリエーテル重合体(A)100重量部に対して各4重量部と7.5重量部(溶液として0.12g)追加で加えた以外は、実施例7と同様に行い、導電性接着剤を得た(銀粒子の含有量は、88.6重量%)。
【0066】
[比較例1]
SAX350に代えて、主鎖の繰り返し単位-CH(COOR)-CH2-および末端基−Si(-CH3)(-OCH3)2を有する重合体(粘度210Pa・s)SA100S(カネカ製XMAP、ポリアクリレート)(2.25g)用い、縮合触媒(C)として、ジブチルスズジオクテートをポリエーテル重合体(A)100重量部に対して2重量部(0.05g)追加で加え、シランカップリング剤として、KBM−903(信越化学製)をポリエーテル重合体(A)100重量部に対して2重量部(0.05g)追加で加え、酸化防止剤(D)として、AO−60(アデカ製、4.00g)と、有機溶剤として、トルエン(7.50g)を混合し、事前に溶解した溶液を、ポリエーテル重合体(A)100重量部に対して各4重量部と7.5重量部(溶液として0.26g)追加で加えた以外は、実施例1と同様に行い、導電性接着剤を得た(銀粒子の含有量は、77.5重量%)。
【0067】
[比較例2]
SAX350に代えて、縮合型シリコーン樹脂TLG−E001(住友化学製)(1.59g)用い、縮合触媒(C)として、TLG−X1(住友化学製)をポリエーテル重合体(A)100重量部に対して2重量部(0.03g)追加で加えた以外は、実施例1と同様に行い、導電性接着剤を得た(銀粒子の含有量は、84.7重量%)。
【0068】
[比較例3]
SAX350に代えて、縮合型シリコーン樹脂TLG−E001(住友化学製)(1.59g)用い、縮合触媒(C)として、TLG−X1(住友化学製)をポリエーテル重合体(A)100重量部に対して3重量部(0.05g)追加で加えた以外は、実施例1と同様に行い、導電性接着剤を得た(銀粒子の含有量は、84.6重量%)。
【0069】
[比較例4]
銀粒子(B)としてフレーク状銀粒子(福田金属箔粉工業株式会社製、製品名「AgC−239」、フレーク状、平均粒径が2.7μm、比表面積が0.7m2/g、粒径0.3μm未満の粒子の含有量は1重量%、粒径0.5μm以下の粒子の含有量は3重量%、9.19g)と、溶剤として、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(0.57g)とジエチレングリコールモノブチルエーテル(0.14g)と界面活性剤ビューライトLCA−H(三洋化成製、0.09g)を、ミキサーにて1分間攪拌、次いで15秒間脱泡のレシピを用いて攪拌し、導電性接着剤を得た(銀粒子の含有量は、91.9重量%)。
【0070】
[実施例9]
酸化防止剤(D)として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(AO−60、アデカ製)(4.00g)と、有機溶剤として、トルエン(7.50g)を混合し、事前に溶解した溶液を、ポリエーテル重合体(A)100重量部に対して各0.5重量部と0.9重量部(溶液として0.02g)追加で加えた以外は、実施例3と同様に行い、導電性接着剤を得た(銀粒子の含有量は、84.33重量%)。
【0071】
[実施例10]
酸化防止剤(D)として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(AO−60、アデカ製)(4.00g)と、有機溶剤として、トルエン(7.50g)を混合し、事前に溶解した溶液を、ポリエーテル重合体(A)100重量部に対して各1重量部と1.9重量部(溶液として0.05g)追加で加えた以外は、実施例3と同様に行い、導電性接着剤を得た(銀粒子の含有量は、84.15重量%)。
【0072】
[実施例11]
酸化防止剤(D)として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(AO−60、アデカ製)(4.00g)と、有機溶剤として、トルエン(7.50g)を混合し、事前に溶解した溶液を、ポリエーテル重合体(A)100重量部に対して各2重量部と3.8重量部(溶液として0.09g)追加で加えた以外は、実施例3と同様に行い、導電性接着剤を得た(銀粒子の含有量は、83.79重量%)。
【0073】
[実施例12]
酸化防止剤(D)として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(AO−60、アデカ製)(4.00g)と、有機溶剤として、トルエン(7.50g)を混合し、事前に溶解した溶液を、ポリエーテル重合体(A)100重量部に対して各3重量部と5.6重量部(溶液として0.14g)追加で加えた以外は、実施例3と同様に行い、導電性接着剤を得た(銀粒子の含有量は、83.43重量%)。
【0074】
[実施例13]
酸化防止剤(D)として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(AO−60、アデカ製)(4.00g)と、有機溶剤として、トルエン(7.50g)を混合し、事前に溶解した溶液を、ポリエーテル重合体(A)100重量部に対して各0.5重量部と0.9重量部(溶液として0.01g)追加で加えた以外は、実施例7と同様に行い、導電性接着剤を得た(銀粒子の含有量は、89.51重量%)。
【0075】
[実施例14]
酸化防止剤(D)として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(AO−60、アデカ製)(4.00g)と、有機溶剤として、トルエン(7.50g)を混合し、事前に溶解した溶液を、ポリエーテル重合体(A)100重量部に対して各1重量部と1.9重量部(溶液として0.03g)追加で加えた以外は、実施例7と同様に行い、導電性接着剤を得た(銀粒子の含有量は、89.39重量%)。
【0076】
[実施例15]
酸化防止剤(D)として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(AO−60、アデカ製)(4.00g)と、有機溶剤として、トルエン(7.50g)を混合し、事前に溶解した溶液を、ポリエーテル重合体(A)100重量部に対して各2重量部と3.8重量部(溶液として0.06g)追加で加えた以外は、実施例7と同様に行い、導電性接着剤を得た(銀粒子の含有量は、89.13重量%)。
【0077】
[実施例16]
酸化防止剤(D)として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(AO−60、アデカ製)(4.00g)と、有機溶剤として、トルエン(7.50g)を混合し、事前に溶解した溶液を、ポリエーテル重合体(A)100重量部に対して各3重量部と5.6重量部(溶液として0.09g)追加で加えた以外は、実施例7と同様に行い、導電性接着剤を得た(銀粒子の含有量は、88.88重量%)。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
表1および2に実施例1乃至16及び比較例1乃至4の配合比と抵抗率と弾性率の測定結果を示す。表1に示す通り、銀粒子(B)と溶剤成分のみで構成された比較例4では弾性率が1GPaを超え大きかったが、カネカMSポリマーを使用したものはいずれも150MPa以下と弾性率は小さかった。
【0081】
電気抵抗については、表1に示す通り、カネカMSポリマーを用いたものでは170℃や200℃よりも185℃の抵抗率の方が小さかった。銀粒子(B)は酸素の存在下で焼成することで焼結温度を下げることができ、高温で焼成するほど焼結が促進されると考えられる。一方、高温で焼成するほど樹脂材料(ポリエーテル重合体)の酸化分解により酸素が消費され銀粒子の焼結に必要な酸素が欠乏する。このことから、焼成温度には適切な範囲が存在すると考えられる。
【0082】
さらに酸化防止剤(D)の有無で比較すると、実施例3と4、実施例7と実施例8の185℃の結果を見る限り、酸化防止剤の添加は電気抵抗を悪化させる。これについても上記のように、銀粒子の焼結温度を下げる酸素が酸化防止剤によって不足したためと考えられる。表2に酸化防止剤の添加比を振った結果を示しており、添加比に従って電気抵抗の悪化が確認された。抵抗率を100μΩ・cm以下とするためには実施例16の結果が示すように、酸化防止剤(D)はポリエーテル重合体(A)100重量部に対して3重量部以下が望ましい。さらに望ましくは特性に影響しない0.5重量部以下、特に0重量部である。
【0083】
カネカMSポリマーに代表されるような、加水分解性珪素基を持つポリエーテルは、シロキサン結合を有する点で比較的酸素透過性が良く、また、カネカMSポリマーは、シロキサン結合が分解しやすく、加熱時に銀粒子の接触が起こりやすく、さらに構造上柔軟性に富んでいる。これらの理由で、弾性率150MPa以下かつ抵抗率100μΩ・cm以下という優れた特性を、185℃という低温で得る事ができた。
【0084】
市販シリコーン銀ペーストである製品名「TB3303B」(スリーボンド社製)と、実施例7の導電性接着剤を用いて、蛍光体入りの樹脂基板中に埋め込んだLEDチップ5個に対して、直接接続するように導電性接着剤をスクリーン印刷法を用いて塗布、硬化した。表3に、各電流値における駆動電圧と、電流値と駆動電圧を掛けて求められる消費電力を示す。
【0085】
【表3】
【0086】
表3に示すように、実施例7の導電性接着剤は既存のシリコーン銀ペーストに比べて電気抵抗が低く、消費電力を低減できる事がわかった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本実施形態の導電性接着剤は、例えば、フレキシブル基板向け電極、ダイアタッチ、微細バンプ、フラットパネル、ソーラ配線等の製造用途およびウェハ接続等の用途、またこれらを組み合わせて製造する電子部品の製造に適用できる。また、本実施形態の導電性材料の製造方法は、例えば、LEDやLDなどの発光素子を用いた発光装置を製造する際にも適用できる。