(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る晶析反応槽及びこれを含む晶析分級装置の一例を示した図である。本発明の実施形態に係る晶析反応槽50は、撹拌槽10と、攪拌機20と、ドラフトチューブ30と、ドラフトチューブ固定治具35と、邪魔板40とを有する。晶析分級装置100は、晶析反応槽50に加えて、晶析原料供給器60と、分級出口70とを更に有する。
【0013】
撹拌槽10は、晶析原料110を槽内に保持するための手段であり、槽内に保持した晶析原料110を撹拌して晶析反応を発生及び促進させるための手段である。晶析原料110は、原料投入時は液体の状態又は液体と微粒子からなるスラリー状態であるが、晶析反応が進行するにつれて、固体粒子111が発生すると共に固体粒子111の粒径が大きくなっていく。よって、撹拌槽10は、通常、液体と固体粒子111が混合した晶析原料110を槽内に保持する。
【0014】
撹拌槽10は、鏡底を有する円筒形に構成されることが好ましい。前記の形状を有することにより、上下に循環する循環流を形成し易くなる。なお、循環流の具体的な説明については後述する。
【0015】
晶析原料110は、晶析対象及び用途に応じて種々の原料が選択されてよいが、例えば、Niの固体粒子111を晶析させるための晶析原料110が用いられてもよい。
【0016】
攪拌機20は、撹拌槽10内で晶析原料110を撹拌するための撹拌手段である。撹拌機20は、回転軸21と、主撹拌翼支持部22と、主撹拌翼23と、補助撹拌翼支持部24と、補助撹拌翼25と、モータ26とを有する。回転軸21は、撹拌槽10内の任意の位置に設けられてよいが、一般的には、撹拌槽10の中心付近に設けられ、主撹拌翼23及び補助撹拌翼25を回転させることにより、回転軸21を中心として撹拌槽10内で左右対称な流れを発生させることができるように設置される。回転軸21は、上下方向に延在して設けられ、主撹拌翼23及び補助撹拌翼25を水平に回転させる。
【0017】
主撹拌翼支持部22は、主撹拌翼23を支持するための支持手段である。主撹拌翼支持部22は、回転軸21に固定されて設けられ、回転軸21の回転を主撹拌翼23に伝達する役割を果たす。
【0018】
主撹拌翼23は、用途に応じて種々の形状を有して構成されてよいが、例えば、ドラフトチューブ30内に晶析原料110の上下方向の流れを形成すべく、水平方向又は鉛直方向に対して傾斜を有して設けられてもよい。傾斜を有して設けられることにより、上下に晶析原料110を押し出す上下方向の流れを形成することができる。なお、撹拌翼23の構成の詳細については後述する。
【0019】
主撹拌翼23は、回転軸21を中心として、水平方向(左右方向)に延びる形状を有することが好ましい。これにより、回転軸21の回転をロス無く効率的に晶析原料110に伝達できるとともに、回転軸21に対して左右対称な流れを形成することができる。
【0020】
主撹拌翼23は、主撹拌翼支持部22の周囲に1本以上設けられる。回転軸21を中心として、左右に延びた主撹拌翼23の各々を1本とカウントした場合、主撹拌翼23は最低1本設けられ、更に用途に応じて複数本設けられてよい。本実施形態においては、主撹拌翼23は、上段及び下段に各2本ずつ設けられた例を挙げて説明する。
【0021】
主撹拌翼支持部22及び主撹拌翼23は、上下方向において複数段設けられてもよい。
図1においては、撹拌翼支持部22及び撹拌翼23は、上段及び下段に1ユニットずつ設けられている。撹拌槽10の長さが長くなると、1段だけでは、十分な晶析原料110の流れを作るのが困難になってくるので、撹拌槽10が縦長の場合は、主撹拌翼支持部22及び主撹拌翼23は、上段及び下段に1ユニットずつ設けられる場合が多い。本実施形態においても、主撹拌翼支持部22及び主撹拌翼23が上段及び下段に1ユニットずつ設けられた例を挙げて説明する。
【0022】
主撹拌翼23は、上下方向の流れのうち、上昇流を形成するように構成される。本実施形態においては、主撹拌翼23がドラフトチューブ30の内側に設けられるのに加えて、ドラフトチューブ30の上方に補助撹拌翼25が設けられており、補助撹拌翼25が下方向の晶析原料110の流れを形成する役割を果たす。よって、ドラフトチューブ30の内側と外側とで上下方向の循環流を形成すべく、主撹拌翼23は、ドラフトチューブ30内に晶析原料110の上昇流を形成する働きをする。
【0023】
補助撹拌翼25は、ドラフトチューブ30の外側、つまりドラフトチューブ30の外周面と撹拌槽10の内周面との間に下降流を形成し、整流するために設けられた撹拌羽根である。主撹拌翼23は、ドラフトチューブ30の内側と外側とで上下方向の循環流を単独で形成することができるので、補助撹拌翼25が設けられていなくても、循環流自体は形成することができる。しかしながら、主撹拌翼23はドラフトチューブ30の内側に設けられているため、ドラフトチューブ30の下降流への影響は、当然に弱くなる。そこで、本実施形態に係る晶析出反応槽50においては、ドラフトチューブ30の上方外側に補助撹拌翼25を設置して撹拌することにより、撹拌槽10の上部から下部に向けての下降流を強化し、撹拌槽10内全体に形成される循環流を強くし、整流効果を増加させている。これにより、撹拌槽10の内部全体に良好な循環流を形成することができ、晶析反応を促進することができる。
【0024】
かかる観点から、補助撹拌翼25は、高さ方向においても、径方向においても、ドラフトチューブ30の外側に設けられ、ドラフトチューブ30の外側の晶析原料110の下降流にのみ作用し、ドラフトチューブ30の内部の上昇流には影響を及ぼさない配置とされている。
【0025】
補助撹拌翼支持部24は、補助撹拌翼25を支持するための部材であり、回転軸21に固定されるとともに回転軸21から半径方向に沿って放射状に延び、外側の補助撹拌翼25を内側から支持する。補助撹拌翼支持部24は、パドル状の形状を有しない円柱、角柱等の棒状の部材から構成され、ドラフトチューブ30内の上昇流に影響を与えないように構成される。
【0026】
このように、本実施形態に係る晶析反応槽50及び晶析分級装置100は、ドラフトチューブ30内に主撹拌翼23を設けるとともに、ドラフトチューブ30外に補助撹拌翼25を設けることにより、の良好な晶析原料110上下方向の循環流を形成することができる。
【0027】
モータ26は、主撹拌翼23及び補助撹拌翼25を、主撹拌翼支持部22及び補助撹拌翼支持部24を介して回転させるための駆動手段であり、主撹拌翼23及び補助撹拌翼25を適切な速度及びトルクで回転させることができれば、種々のモータ26を用いてよい。
【0028】
ドラフトチューブ30は、撹拌槽10内の流れを整えるために設けられ、整流部材として機能する。ドラフトチューブ30は、円筒形状を有し、回転軸21及び主撹拌翼23の周囲の所定の深さ領域を囲むように設けられる。ドラフトチューブ30は、主撹拌翼23により形成された晶析原料110の上下方向の流れをその内周面に沿わせ、ドラフトチューブ30内に上方向の一方向の流れ、つまり上昇流を形成する役割を果たす。
【0029】
このような晶析原料110の上昇流を適切に形成するためには、整流部材であるドラフトチューブ30の直径(内径)を撹拌翼23の水平方向の直径に対し、適切に設定することが好ましい。即ち、主撹拌翼23と補助撹拌翼25との協働においても、ドラフトチューブ30の内外の循環流を形成することができるが、ドラフトチューブ30を適切に設定することにより、より良好な循環流を形成することができる。本実施形態では、そのようなドラフトチューブ30の適切な設定方法についても説明するが、その詳細な内容は後述する。
【0030】
なお、ドラフトチューブ30は種々の材料により構成することができ、例えば、ステンレス鋼から構成されてもよい。
【0031】
ドラフトチューブ固定治具35は、ドラフトチューブ30を固定するための治具である。
図1においては、ドラフトチューブ固定治具35が邪魔板40に固定され、ドラフトチューブ固定治具35が更に内側のドラフトチューブ30を固定している構成が示されているが、ドラフトチューブ固定治具35は、ドラフトチューブ30を適切な位置に固定できれば、種々の構成を有してよい。
【0032】
邪魔板40は、晶析原料110の横方向、斜め方向の流れを上下方向又は軸流方向に変換するための整流板であり、撹拌槽1の内周側面に沿って上下方向に延在するとともに、撹拌槽10の中心、即ち回転軸21に向かって突出するように設けられる。具体的には、邪魔板40は、ドラフトチューブ30の外周側面と撹拌槽10の内周側面の間に、晶析原料110の上下方向の流れを形成する役割を果たす。上述のように、ドラフトチューブ30の内部で上下方向の一方向の流れを形成した場合には、ドラフトチューブ30と撹拌槽10との間で、ドラフトチューブ30の内部の上下方向の一方向の流れと逆方向の上下方向の流れを形成する。これにより、晶析原料110は、ドラフトチューブ30の内側と外側で上下に循環する循環流を形成することができ、晶析反応を促進させ、かつ晶析した固体粒子111を粒径によって効率的に上下に振り分けることができる。即ち、所定の粒径に達していない固体粒子111は、上昇流により上昇させることができるとともに、所定の粒径に達した固体粒子111については、速やかに撹拌槽10の底部上に堆積させることができる。
【0033】
邪魔板40は、ドラフトチューブ30を両側から挟むように、つまり対をなすようにして設けられる。例えば、邪魔板40は、ドラフトチューブ30を左右から挟むように一対のみ設けられてもよいし、四方向から挟むように、二対設けられてもよい。または、必要に応じて、それ以上に多く設けられてもよい。このように、邪魔板40の数は、用途に応じて適宜定めてよい。なお、邪魔板40は、バッフル40と呼んでもよい。
【0034】
以上が本発明の実施形態に係る晶析反応槽50の構成要素であるが、本発明の実施形態に係る晶析分級装置100は、更に晶析原料投入器60と、分級出口70とを備える。
【0035】
晶析原料投入器70は、晶析原料110を撹拌槽10内に投入するための手段であり、晶析原料タンク61と、晶析原料投入口62とを備える。晶析原料タンク61は、晶析原料110を蓄積するためのタンクであり、例えば、スラリー状の晶析原料110が蓄えられる。晶析原料投入口62は、晶析原料タンク61に蓄積された晶析原料110を撹拌槽10内に投入又は供給するための原料投入口又は原料供給口である。
【0036】
分級出口70は、所定の粒径以上の固定粒子を撹拌槽10から排出するための製品取り出し口であり、撹拌槽10の底部に接続されて設けられる。これにより、分級された所望の粒径を有する固体粒子111を得ることができる。
【0037】
図2は、本発明の実施形態に係る晶析反応槽50の主要部分を抽出して示した拡大図である。
図2に示されるように、攪拌機20の主撹拌翼23の周囲にドラフトチューブ30が設けられ、更にドラフトチューブ30より外側の上方に補助撹拌翼25が設けられている。また、ドラフトチューブ30より外側の撹拌槽10の内周側面に邪魔板40が設けられている。
【0038】
ここで、攪拌機20は、回転軸21が撹拌槽10の軸心に設けられ、ドラフトチューブ30内に回転可能な主撹拌翼23と、ドラフトチューブ30の上方外側で回転可能な補助撹拌翼25とを有する。主撹拌翼23及び補助撹拌翼25は傾斜パドル、傾斜タービン等、軸流を発生させる機能を有する形状を有している。主撹拌翼23及び補助撹拌翼25の形状及び寸法は、粒子の真比重、分級したい粒子径の終端速後を基準に、ドラフトチューブ内外の流速を設定してシミュレーションによって決定することができる。そして、主撹拌翼23は、上段及び下段の両方とも、傾斜した撹拌パドルとして構成されているとともに、主撹拌翼支持部材22から水平に外側に向かって延び、互いに直角に交わり、十字をなして2本ずつ設けられている。また、補助撹拌翼25も、ドラフトチューブ30よりも上方において、回転軸21から十字をなすように補助撹拌翼支持部24が放射状に水平にドラフトチューブ30よりも外側まで延び、その先端に補助撹拌翼25が設けられている。
図2においては、補助撹拌翼25は十字をなして二対設けられているが、補助撹拌翼25の数及び形状は、用途に応じて種々の構成とすることができる。
【0039】
また、ドラフトチューブ30は、撹拌槽10内の軸心部に直立支持させて設ける。ドラフトチューブ30は、円筒形を有し、撹拌翼23の先端から所定間隔を有して撹拌翼23を覆うように設けられている。ドラフトチューブ30を設置することにより、撹拌槽10内の整流効果、整流による撹拌機動力低減、スラリー分離効果が期待される。
【0040】
邪魔板40は、撹拌槽10の軸心に向かって突出するように、放射状に一対以上設置する。
図2においては、二対の邪魔板40が四方向から十字をなすように設置された例が示されている。
【0041】
このように、本発明の実施形態に係る晶析反応槽50では、撹拌翼23の周囲にドラフトチューブ30を設けた構成を有する。
【0042】
次に、シミュレーション実験により、ドラフトチューブ30内で晶析原料110が上下方向の流れを形成するような撹拌翼23の全長に対するドラフトチューブの直径の比率を求めた結果について説明する。なお、シミュレーション実験は、攪拌機20については、補助撹拌翼25を設けず、主撹拌翼23のみを設けた場合について行っているが、ドラフトチューブ30との相関性は主撹拌翼23の方が圧倒的に高く、補助撹拌翼25は、ドラフトチューブ30の外側の下降流にのみ影響を与えるように構成されているので、シミュレーション実験はほぼそのまま本実施形態に係る晶析反応槽50及び晶析分級装置100に適用可能である。
【0043】
シミュレーションの実験は撹拌槽10の直径をφ430mm、主撹拌翼23は直径をφ170mm、パドル幅25mmの4枚ピッチドパドルとし、ドラフトチューブ長さを330mm、下端位置を撹拌槽10の底面から75mmとし、撹拌槽10の底面から液面の高さを445mm、主撹拌翼23の回転数を600rpmと設定した条件下で、連続相を液体、分散相を50μmの固体粒子として液体比重:固体比重=1:43として行った。
【0044】
図3は、本発明の実施形態に係る晶析反応槽50のパラメータ設定及びシミュレーション結果を示した図である。
図3(a)は、本発明の実施形態に係る晶析反応槽50のパラメータ設定の一例を示した図である。
図3(a)に示されるように、本実施形態に係る晶析反応槽50の一例では、主撹拌翼23の全長をdとし、ドラフトチューブ30の直径をDとしたときに、D/d=1.4に設定する。
【0045】
図3(b)は、主撹拌翼23の全長dに対するドラフトチューブ30の直径Dの比率D/dが1.4のときの、実施形態に係る晶析反応槽50内における晶析原料110の流れのシミュレーション結果を示した図である。
【0046】
図3(b)に示されるように、ドラフトチューブ30内における晶析原料110の流れは、ほぼ総てが上昇流となっており、上方向への軸流が形成されている。更に、ドラフトチューブ30の外部のドラフトチューブ30と撹拌槽10の内周側面との間には、ほぼ総てが下降流となっており、ドラフトチューブ30の側面の内外を循環する循環流が形成されている。このように、ドラフトチューブ30の直径Dと主撹拌翼23の全長dとの比率を適切に設定することにより、ドラフトチューブ30の内側を上下方向の一方向に向かって流れ、ドラフトチューブ30の外側をドラフトチューブ30の内側と反対向きの上下方向の他方向に向かって流れる循環流を形成でき、効率的に晶析原料110を軸流方向に循環させることができる。
【0047】
なお、D/d=1.4は一例であり、主撹拌翼23の全長dに対するドラフトチューブの直径Dの比率D/dは、ドラフトチューブ30の内外で循環流を形成可能であれば、種々の値に設定することができる。
【0048】
このように、本実施形態に係る晶析反応槽50及び晶析分級装置100では、撹拌槽10内にドラフトチューブ30を設置し、槽内に安定な循環流を形成するとともに、槽底の中央に低速度の安定な上昇流れを形成して、その領域で所望の粒径以上の粒子を効率よく堆積させる分級機能を持たせている。
【0049】
次に、比較例に係る晶析反応槽のパラメータ設定について説明する。
【0050】
図4は、比較例1に係る晶析反応槽のパラメータ設定及びシミュレーション結果を示した図である。
図4(a)は、比較例1に係る晶析反応槽のパラメータ設定の一例を示した図である。
図4(a)に示されるように、比較例1に係る晶析反応槽では、主撹拌翼123の全長をdとし、ドラフトチューブ130の直径をDとしたときに、D/d=1.1に設定する。この場合には、主撹拌翼123の先端とドラフトチューブ130の内周面との間隔が、
図3(a)に示した、実施形態に係る晶析反応槽50の撹拌槽23の先端とドラフトチューブ30との間隔よりも狭くなる。
【0051】
図4(b)は、主撹拌翼123の全長dに対するドラフトチューブ130の直径Dの比率D/dが1.1のときの、比較例1に係る晶析反応槽内における晶析原料110の流れのシミュレーション結果を示した図である。
【0052】
図4(b)に示されるように、主撹拌翼123により形成された左側の上昇流は、途中でドラフトチューブ130の内周面と衝突してしまい、蛇行して上昇するような流れが形成されている。また、ドラフトチューブ130の外側では、左側ではドラフトチューブ130に向かう斜めの下降流が形成され、右側では上部に上昇流が形成されており、全体として循環流を形成していない。
【0053】
このように、主撹拌翼123とドラフトチューブ130との距離が短く、両者が接近し過ぎると、主撹拌翼123とドラフトチューブ130とが互いに干渉してしまい、循環流が形成されない。
【0054】
よって、本実施形態に係る晶析反応槽50は、主撹拌翼23の全長dに対するドラフトチューブの直径Dの比率D/dについて、1.1<D/dを満たす必要がある。
【0055】
図5は、比較例2に係る晶析反応槽のパラメータ設定及びシミュレーション結果を示した図である。
図5(a)は、比較例2に係る晶析反応槽のパラメータ設定の一例を示した図である。
図5(a)に示されるように、比較例2に係る晶析反応槽では、主撹拌翼223の全長をdとし、ドラフトチューブ230の直径をDとしたときに、D/d=1.6に設定する。この場合には、主撹拌翼223の先端とドラフトチューブ230の内周面との間隔が、
図3(a)に示した、実施形態に係る晶析反応槽50の撹拌槽23の先端とドラフトチューブ30との間の間隔よりも広くなる。
【0056】
図5(b)は、主撹拌翼223の全長dに対するドラフトチューブ230の直径Dの比率D/dが1.6のときの、比較例2に係る晶析反応槽内における晶析原料110の流れのシミュレーション結果を示した図である。
【0057】
図5(b)に示されるように、主撹拌翼223により形成された上昇流は、ドラフトチューブ30の上端に到達する前に向きを変えて下降流となり、ドラフトチューブ230内に循環流が発生してしまっている。これにより、ドラフトチューブ230内において、上方向と下方向の流れが混在してしまっている。このような流れが発生すると、晶析反応槽内全体では循環流が発生しなくなってしまう。
【0058】
このように、主撹拌翼223とドラフトチューブ230との距離が遠く離れ過ぎると、ドラフトチューブ230の内部に循環流が発生してしまい、晶析反応槽内全体では循環流が形成されない。
【0059】
よって、本実施形態に係る晶析反応槽50は、主撹拌翼23の全長dに対するドラフトチューブの直径Dの比率D/dについて、D/d<1.6を満たす必要がある。
【0060】
比較例1、2の双方を考慮すると、本発明の実施形態に係る晶析反応槽50は、主撹拌翼23の全長dに対するドラフトチューブの直径Dの比率D/dについて、1.1<D/d<1.6を満たす必要がある。
【0061】
なお、槽内に安定した循環流を形成するには、ドラフトチューブ30の直径Dと主撹拌翼23の全長dとの比D/dが、1.2以上1.5以下であることが望ましい。D/d=1.2未満の場合、
図4で説明したように、主撹拌翼123とドラフトチューブ130とが、撹拌軸の偏芯等により干渉するリスクがある。一方、D/d=1.5以上の場合、
図5で説明したように、ドラフトチューブ230の内部に循環流が形成されてしまうおそれがある。
【0062】
図6は、ドラフトチューブを設けない比較例3、4に係る晶析反応槽の固体粒子の濃度分布を示した図である。
図6(a)は、ドラフトチューブを設けない比較例3に係る晶析反応槽全体の固体粒子の濃度分布を示した図であり、
図6(b)は、
図6(a)の底部を拡大した図である。
図6(c)は、ドラフトチューブを設けない比較例4に係る晶析反応槽全体の固体粒子の濃度分布を示した図であり、
図6(d)は、
図6(c)の底部を拡大した図である。
【0063】
図6(a)〜(d)において、濃度の高い順に領域A、B、C、Dが示されている。
図6(a)〜(d)に示されるように、ドラフトチューブ30を設けない場合には、領域A〜Dが晶析反応槽内の各箇所に混在している。つまり、晶析反応槽の内部及び底部で濃度にバラツキがあり、固体粒子の粒径にバラツキが生じていることが分かる。
【0064】
一方、
図1乃至
図5で説明したように、本実施形態に係る晶析反応槽50及び晶析分級装置100によれば、主撹拌翼23の周囲にドラフトチューブ30を設け、かつドラフトチューブ30の上方外側に補助撹拌翼25を設け、更にドラフトチューブ30の直径Dと主撹拌翼23の全長dとの比D/dを適切に設定することにより、ドラフトチューブ30の内外を循環する循環流を形成するとともに循環速度を速めることができ、槽内で効率的に晶析反応をさせつつ、槽底では所望の粒径以上の固体粒子111を効率的に堆積させ排出することができる。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施形態及び実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態及び実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。