(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870352
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】組立式保管箱を用いる保管方法
(51)【国際特許分類】
B65D 81/20 20060101AFI20210426BHJP
B65D 88/10 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
B65D81/20 F
B65D88/10 A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-17812(P2017-17812)
(22)【出願日】2017年2月2日
(65)【公開番号】特開2017-149483(P2017-149483A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2019年10月18日
(31)【優先権主張番号】特願2016-31604(P2016-31604)
(32)【優先日】2016年2月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(72)【発明者】
【氏名】森田 和樹
【審査官】
矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−177287(JP,A)
【文献】
特開2005−075462(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0257040(US,A1)
【文献】
特開2004−250015(JP,A)
【文献】
実開昭53−100363(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 67/00−79/02
B65D 81/18−81/30
B65D 81/38
B65D 85/88
B65D 88/00−90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が多角形の少なくとも1つの空洞を画定する、折り畳み可能な少なくとも1つの筒状部材と、
前記少なくとも1つの筒状部材が画定する前記少なくとも1つの空洞の上端に配置される第1平板部と、前記第1平板部と一体に形成され、前記第1平板部と略直交する第1側板部とを有する蓋部材と、
前記少なくとも1つの筒状部材が画定する前記少なくとも1つの空洞の下端に配置される第2平板部と、前記第2平板部と一体に形成され、前記第2平板部と略直交する第2側板部とを有する底部材と、
前記第1平板部または前記少なくとも1つの筒状部材に形成された少なくとも1つの貫通孔と
を有する組立式保管箱を用いる保管方法であって、
前記少なくとも1つの筒状部材、前記蓋部材、および前記底部材を用意する工程(a)と、
前記工程(a)の後に、所定の位置に前記底部材を配置する工程(b)と、
前記工程(b)の後に、前記底部材の上に、それぞれが複数のワークを収容した複数のコンテナを配置する工程(c)と、
前記少なくとも1つの空洞内に前記複数のコンテナを収容し、前記底部材の前記第2平板部に下端辺が接触するように前記少なくとも1つの筒状部材を配置する工程(d)と、
前記工程(d)の後に、前記少なくとも1つの筒状部材の上端辺に前記蓋部材の前記第1平板部が接触するように前記蓋部材を配置する工程(e)と、
前記工程(e)の後に、前記少なくとも1つの貫通孔から乾燥空気または不活性ガスを所定の流量で供給する工程(f)とを包含する、保管方法。
【請求項2】
前記工程(a)は、台を用意する工程を含み、前記工程(b)は、前記台上に前記底部材を配置する工程である、請求項1に記載の保管方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの貫通孔は前記第1平板部に形成されている、請求項1または2に記載の保管方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの貫通孔は前記少なくとも1つの筒状部材に形成されている、請求項1または2に記載の保管方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの貫通孔は2以上の貫通孔であって、前記2以上の貫通孔は前記少なくとも1つの筒状部材の前記多角形の異なる辺を含む2以上の面に形成されている、請求項4に記載の保管方法。
【請求項6】
前記2以上の貫通孔は前記少なくとも1つの筒状部材の前記多角形の異なる辺を含む全ての面に形成されている、請求項5に記載の保管方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの筒状部材、前記蓋部材および前記底部材は、プラスチック製のシートで形成されている、請求項1から6のいずれかに記載の保管方法。
【請求項8】
前記プラスチック製のシートは、プラスチック製の段ボールシートである、請求項7に記載の保管方法。
【請求項9】
前記多角形は四角形である、請求項1から8のいずれかに記載の保管方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組立式保管箱およびそれを用いた保管方法に関し、特に、希土類磁石片を工場内で保管するために好適に用いられる組立式保管箱およびそれを用いた保管方法に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石(以下、単に「磁石」という。)は、種々の形状の磁石片として用いられる。希土類磁石は、優れた磁気特性を有しており、広く利用されている。その中でも、ネオジム磁石として知られているR−T−B系焼結磁石(Rは希土類元素、TはFeを必ず含む遷移金属元素、Bはホウ素)は、優れた磁気特性と比較的材料費が安価なことから広く利用されている。
【0003】
R−T−B系焼結磁石の磁石片は、以下の方法で製造される。なお、本明細書において、着磁していない状態のものも磁石という。
【0004】
所望の組成を有するR−T−B系合金の粉末を用意する。合金粉末をプレス成形によって、所望の形状の成形体を得る。成形体を焼結することによって焼結体を得る。必要に応じて、焼結体は、時効処理などの熱処理を受ける。熱処理の前または後に、機械加工を受けて、所望の大きさおよび形状の磁石片となる。その後、磁石片は機械加工で発生し磁石表面に付着した研削加工粉や研削液を除去するために洗浄される。
【0005】
R−T−B系焼結磁石は、希土類磁石の中でも特に耐食性が低い。そこで、機械加工、および洗浄の後、磁石片の耐食性を改善するために表面処理が施される。表面処理が施されるまでの磁石片は、例えばプラスチック製のコンテナ(またはトレイ)に配列されて、パレット等の台上にそれらを積重ねた状態で保管される。各製造工程間の移動は、人手でコンテナを運ぶか、パレット上に複数のコンテナが積み上げられたパレットを、例えばフォークリフトで持ち上げて行われる。なお、本明細書において、コンテナは、トレイ(浅いコンテナ)を包含する意味で用いる。
【0006】
プラスチック製のコンテナは上部開口部を有しており、気密性を有しない。希土類磁石、特に、R−T−B系焼結磁石は、酸化され易く、空気中の水分などによって容易に酸化される。したがって、工場内での保管時間が長くなると、希土類磁石片の表面が錆びる。これを抑制するために、気密性の高い容器を用いると、作業性の低下や、コストの増大を招くという問題がある。小型の磁石片の中には、例えば、月産数十万個を超えるものがあり、作業性の低下を伴わない保管方法に対する要求は強い。
【0007】
従来、最終製品としての磁石片の包装構造について、例えば、特許文献1に提案されている。しかしながら、工場内における磁石片(最終製品となっていないものを含む)の保管方法や保管箱(保管容器)については検討されていなかった。
【0008】
ここでは、希土類磁石片を例に従来の問題を説明したが、上記の問題は、希土類磁石片に限られず、空気中の水分などで容易に酸化されるワークを大量に工場内で保管する場合に共通の問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−224997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、空気中で容易に酸化されるワークを大量に工場内で保管するのに適した組立式保管箱およびそれを用いた保管方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態による組立式保管箱は、断面が多角形の少なくとも1つの空洞を画定する、折り畳み可能な少なくとも1つの筒状部材と、前記少なくとも1つの筒状部材が画定する前記少なくとも1つの空洞の上端に配置される第1平板部と、前記第1平板部と一体に形成され、前記第1平板部と略直交する第1側板部とを有する蓋部材と、前記少なくとも1つの筒状部材が画定する前記少なくとも1つの空洞の下端に配置される第2平板部と、前記第2平板部と一体に形成され、前記第2平板部と略直交する第2側板部とを有する底部材と、前記第1平板部または前記少なくとも1つの筒状部材に形成された少なくとも1つの貫通孔とを有する。前記少なくとも1つの空洞は前記少なくとも1つの貫通孔を有する。例えば、前記少なくとも1つの空洞が複数の空洞のとき、前記複数の空洞のそれぞれが少なくとも1つの貫通孔を有する。
【0012】
ある実施形態において、前記少なくとも1つの貫通孔は前記第1平板部に形成されている。
【0013】
ある実施形態において、前記少なくとも1つの貫通孔は前記少なくとも1つの筒状部材に形成されている。
【0014】
ある実施形態において、前記少なくとも1つの貫通孔は2以上の貫通孔であって、前記2以上の貫通孔は前記少なくとも1つの筒状部材の前記多角形の異なる辺を含む2以上の面に形成されている。
【0015】
ある実施形態において、前記2以上の貫通孔は前記少なくとも1つの筒状部材の前記多角形の異なる辺を含む全ての面に形成されている。
【0016】
ある実施形態において、前記少なくとも1つの筒状部材、前記蓋部材および前記底部材は、プラスチック製のシートで形成されている。
【0017】
ある実施形態において、前記プラスチック製のシートは、プラスチック製の段ボールシートである。
【0018】
ある実施形態において、前記多角形は四角形である。
【0019】
本発明の実施形態による保管方法は、上記いずれかの組立式保管箱を用いる保管方法であって、前記少なくとも1つの筒状部材、前記蓋部材、および前記底部材を用意する工程(a)と、前記工程(a)の後に、所定の位置に前記底部材を配置する工程(b)と、前記工程(b)の後に、前記底部材の上に、それぞれが複数のワークを収容した複数のコンテナを配置する工程(c)と、前記空洞内に前記複数のコンテナを収容し、前記底部材の前記第2平板部に下端辺が接触するように前記少なくとも1つの筒状部材を配置する工程(d)と、前記工程(d)の後に、前記少なくとも1つの筒状部材の上端辺に前記蓋部材の前記第1平板部が接触するように前記蓋部材を配置する工程(e)と、前記工程(e)の後に、前記少なくとも1つの貫通孔から乾燥空気または不活性ガスを所定の流量で供給する工程(f)とを包含する。
【0020】
ある実施形態において、前記工程(a)は、台を用意する工程を含み、前記工程(b)は、前記台上に前記底部材を配置する工程である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施形態によると、空気中で容易に酸化されるワークを大量に工場内で保管するのに適した組立式保管箱およびそれを用いた保管方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態による組立式保管箱100の模式的な分解斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態による組立式保管箱100の使用状態を示す模式的な斜視図である。
【
図3】(a)および(b)は組立式保管箱100に用いられるプラスチック製の段ボールシート10aおよび10bの模式的な断面図である。
【
図4】(a)から(d)は組立式保管箱100を用いる保管方法を説明するための模式図である。
【
図5】(a)および(b)は組立式保管箱100を用いる保管方法を説明するための模式図である(
図4の続き)。
【
図6】(a)は、組立式保管箱100内に配置されるコンテナ60の模式的な斜視図であり、(b)は、複数のワーク(例えばR−T−B系焼結磁石の磁石片)62が配列されたコンテナ60の模式的な斜視図である。
【
図7】分解された(組立前の)組立式保管箱100を収納している状態を示す模式的な斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態による他の組立式保管箱100Aの模式的な分解斜視図である。
【
図9】本発明の実施形態によるさらに他の組立式保管箱100Bの模式的な分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態による組立式保管箱およびそれを用いたワークの保管方法を説明する。以下では、ワークとして、R−T−B系焼結磁石の磁石片を例示するが、本発明の実施形態による組立式保管箱およびそれを用いたワークの保管方法は、これに限られず、空気中の水分などで容易に酸化されるワークを保管するために用いられる。
【0024】
図1に本発明の実施形態による組立式保管箱100の模式的な分解斜視図を示す。組立式保管箱100は、蓋部材10、筒状部材20および底部材30を有している。また、
図2は本発明の実施形態による組立式保管箱100の使用状態を示す模式的な斜視図である。組立式保管箱100は、
図1に示した蓋部材10、筒状部材20および底部材30を組み立てることによって得られ、パレット40などの台の上に配置される。
【0025】
組立式保管箱100は、断面が多角形の空洞を画定する、折り畳み可能な筒状部材20と、筒状部材20が画定する空洞の上端に配置される第1平板部12と、第1平板部12と一体に形成され、第1平板部12と略直交する第1側板部(4面)14とを有する蓋部材10と、筒状部材20が画定する空洞の下端に配置される第2平板部32と、第2平板部32と一体に形成され、第2平板部32と略直交する第2側板部(4面)34とを有する底部材30とを有する。第1平板部12には貫通孔16が形成されている。
【0026】
貫通孔16は、乾燥空気、または、乾燥窒素およびアルゴンなどの不活性ガスを導入するために、例えば第1平板部12の一箇所に設けられている。例えば、乾燥空気は、
図2に示すプラスチック製のチューブ52から貫通孔16内に導入される。流量は、例えば、バルブ54で調整される。
【0027】
筒状部材20、蓋部材10および底部材30は、プラスチック製のシートで形成されていることが好ましく、特に、プラスチック製の段ボールシートで形成されていることが好ましい。プラスチックとしては、例えば、ポリプロピレンが広く用いられている。プラスチック製のシートは、紙に比べ、透湿性が低く、強度も高い。特に、プラスチック製の段ボールシートは、強度が高く、長期にわたって、繰り返し使用することができる。プラスチック製の段ボールシートは、例えば、
図3(a)および(b)に模式的に示す断面構造を有している。例えば、
図3(a)に示すプラスチック製の段ボールシート10aは、2枚の平坦なプラスチックフィルム10sの間に、波状のプラスチックフィルムによって、多数の空隙10c1が形成されている。また、
図3(b)に示すプラスチック製の段ボールシート10bは、2枚の平坦なプラスチックフィルム10sの間に形成された多数の隔壁によって、多数の四角筒状の空隙10c2が形成されている。
【0028】
プラスチック製の段ボールシートは、上記のような中空構造を有しているので、軽量で、強度が高く、かつ、断熱性にも優れている。種々のプラスチック製の段ボールシートが市販されており、上記の例に限らず、市販されている公知のプラスチック製の段ボールシートを広く用いることができる。プラスチック製の段ボールシートの厚さは、例えば、3mm以上15mm以下程度のものを好適に用いることができる。筒状部材20の大きさは、特に制限はないが、作業性の観点から、例えば、縦、横、高さがそれぞれ独立に、35cm以上150cm以下が好ましい。第1側板部14および第2側板部34の高さは、例えば、3cm以上15cm以下が好ましい。
【0029】
蓋部材10および底部材30は、必要に応じて、フレーム部材14a、34aおよびコーナ部材14b、34bによって補強される。フレーム部材14a、34aおよびコーナ部材14b、34bは、例えば、プラスチックで形成される。蓋部材10と底部材30とは、蓋部材10が貫通孔16を有している点を除いて、同じ構造であってよい。
【0030】
筒状部材20は断面が多角形の空洞を画定する形状を有しているので、例えば、折り目または切り込みに沿って容易に折り畳むことができる。多角形は、ここで例示するように、四角形であることが好ましい。四角形であると、複数の組立式保管箱100を効率よく配列しやすい。
【0031】
筒状部材20が画定する空洞の断面の多角形の大きさに対して、蓋部材10および底部材30の大きさの方が大きければよい。例えば、蓋部材10および底部材30の第1側板部14および第2側板部34が、筒状部材20の側面と密着する必要はなく、例えば、数cm以上の隙間が空いてよい。蓋部材10および底部材30の方が、数cm以上大きい方が、底部材30の第2側板部34で囲まれた空間内に筒状部材20を配置する作業がしやすい。
【0032】
次に、
図4および
図5を参照して、組立式保管箱100を用いる保管方法を説明する。
図4(a)から(d)および
図5(a)および(b)は組立式保管箱100を用いる保管方法を説明するための模式図である。
【0033】
まず、
図4(a)に示すように、パレット40と、筒状部材20、蓋部材10、底部材30を用意する。パレット40は、木材またはプラスチックで作製された、公知のパレットを広く用いることができる。工場内の搬送に用いるフォークリフトなどの搬送装置に応じて、適宜選択して用いればよい。もちろん、パレット40に代えて、据え置きの台であってもよい。組立式保管箱100は工場内の一定の場所に据え置いて使用されてもよい。また、工場内の環境(温度、湿度等)によっては、パレット40や据え置きの台を使用せず、底部材30を工場の床に直置きにしてもよい。ただし、床の温度や湿気が組立式保管箱100に伝わりにくいように、台を使用することが好ましく、パレットのように中空部を有する台を用いることが好ましい。
【0034】
次に、
図4(b)に示すように、パレット40の上に底部材30を配置する。もちろん、1つのパレット40の上に複数の底部材30を配置してもよい。パレット40などの台を用いない場合には、工場内の所定の位置に底部材30を配置する。
【0035】
次に、
図4(c)に示すように、底部材30の上に、それぞれが複数のワーク62を収容した複数のコンテナ60を配置する。この作業は、人間が行ってもよいし、ロボットを用いてもよい。この工程では、底部材30の上に筒状部材20が配置されていないので、底部材30上の空間はオープンになっており、必要な高さで、水平方向からコンテナ60を積むことができる。筒状部材20が配置されていると、筒状部材20の上端の開口からコンテナ60を運び込む必要があり、筒状部材20が高過ぎると、例えば、人間の手で底部材30上にコンテナ60を配置することができない。すなわち、筒状部材20の高さが実質的に作業者の手の長さによって制限されてしまう。これに対し、実施形態による組立式保管箱100を用いると、筒状部材20がない状態で、底部材30の上にコンテナ60を積むことができるので、より高く積むことができる上、作業者の負担も少ない。
【0036】
コンテナ60としては、公知の市販されている種々のコンテナを用いることができる。例えば、
図6(a)に示すトレイ状の比較的浅いコンテナ60を用いることもできるし、より深いコンテナを用いることもできる。コンテナ60には、例えば、
図6(b)に示すように、多数のワーク62が配列されている。ワーク62はランダムに収容されていてもよい。ワーク62として、例えば、R−T−B系焼結磁石の磁石片(縦、横、高さ:5mm、20mm、23mm、質量17.5g)62を、コンテナ(縦、横、高さ:360mm、265mm、85mm)60に、700個配列する。このコンテナ60の質量は約12.5kgとなる。このようなコンテナ60を42個(例えば、7段、6列)配列する。総質量は525kgとなる。
【0037】
所定の数のコンテナ60を配列した後、
図4(d)に示すように、空洞内にコンテナ60を収容し、底部材30の第2平板部32に端辺が接触するよう筒状部材20を配置する。
【0038】
次に、
図5(a)に示すように、筒状部材20の上端辺に蓋部材10の第1平板部12が接触するように蓋部材10を配置する。
【0039】
その後、
図5(b)に示すように、貫通孔16から乾燥空気、または、乾燥窒素およびアルゴンなどの不活性ガスを所定の流量で供給する。この時、これらの乾燥気体の流量は、組立式保管箱100の容量に応じて適宜調節される。例えば、容量が500L(リットル)のとき、約1000mL/min以上約10000mL/min以下に調節すればよい。
【0040】
筒状部材20、蓋部材10および底部材30で包囲された空間は、貫通孔16から供給される例えば乾燥空気によって満たされ、かつ、常に新鮮な乾燥空気が供給される。余分な乾燥空気は、筒状部材20と蓋部材10との隙間、および/または、筒状部材20と底部材30との隙間から、大気中に放出される。このようにして、組立式保管箱100内の空間は乾燥状態が保たれる。
【0041】
乾燥空気などは、
図2に示したプラスチック製のチューブ52から貫通孔16内に導入される。流量は、例えば、バルブ54で調整される。また、乾燥空気、または、乾燥窒素およびアルゴンなどの不活性ガスは、例えば、工場内の配管から供給され得る。あるいは、例えば、乾燥空気発生装置を用いてもよい。例えば、小型の乾燥空気発生装置を用いると、これを組立式保管箱100の蓋部材10の上に配置し、組立式保管箱100とともに搬送することもできる。すなわち、組立式保管箱100は、工場内で好適に用いられるが、これに限らず、搬送にも用いることができる。
【0042】
組立式保管箱100を使用しない時には、例えば、
図7に模式的に示すように、キャスター付きのラック70に収容すればよい。筒状部材20は容易に折り畳むことができるので、小さい空間に効率よく収容することができる。
【0043】
組立式保管箱100は、1つの蓋部材10と、1つの底部材30と、1つの筒状部材20を有しているが、本発明の実施形態による組立式保管箱は、これに限られず、一対の蓋部材および底部材と、2以上の筒状部材を有してもよい。
【0044】
例えば、
図8に示す組立式保管箱100Aは、1つの蓋部材10Aと、1つの底部材30と、2つの筒状部材20a、20bを有している。組立式保管箱100が有する構成要素と実質的に同じ構成要素には同じ参照符号を付して説明を省略する。
【0045】
組立式保管箱100Aでは、1つの蓋部材10Aと1つの底部材30との間に配置される2つの筒状部材20aおよび20bによって、2つの空洞が画定される。筒状部材20aおよび20bで画定される2つの空洞には、蓋部材10Aが有する2つの貫通孔16aおよび16bから乾燥空気または不活性ガスが所定の流量で供給される。例えば、貫通孔16aが筒状部材20aに対応し、貫通孔16bが筒状部材20bに対応するように、蓋部材10A、底部材30、および筒状部材20a、20bが配置される。もちろん、筒状部材20a、20bのそれぞれに対応する蓋部材(それぞれ1つの貫通孔を有する)を用いてもよい。
【0046】
組立式保管箱100Aのように、2つ以上の筒状部材を用いると、複数種のワークを1つの組立式保管箱内に分けて保管することができるので、異なる種類のワークが混ざることを効果的に防ぐことができる。
【0047】
組立式保管箱100Aが有する筒状部材20aおよび20bはほぼ同じ大きさを有しているが、異なる大きさを有してもよい。また、3以上の筒状部材を用いてもよい。このとき、3以上の筒状部材で画定される空洞のそれぞれに乾燥空気等を供給できるように、例えば、蓋部材に各空洞に対応する貫通孔を設ければよい。
【0048】
上記で例示した組立式保管箱100および100Aは、それぞれ蓋部材10および10Aに貫通孔16および16a、16bを有しているが、これに限らず、組立式保管箱の筒状部材に1または2以上の貫通孔を設けてもよい。
【0049】
図9に示す組立式保管箱100Bは、1つの蓋部材10Bと、1つの底部材30Bと、1つの筒状部材20Bとを有している。筒状部材20Bは、断面がほぼ正方形の空洞を画定する形状を有しており、正方形の異なる辺を含む全ての面(「側面」ということがある。)に貫通孔26a、26b、26cおよび26dが形成されている。なお、組立式保管箱100が有する構成要素と実質的に同じ構成要素には同じ参照符号を付して説明を省略する。
【0050】
工場において、例えば、複数の組立式保管箱を配列する場合、隣接する2つの組立式保管箱の互いに対面する側面に設けられた貫通孔から乾燥空気等を供給するのは不便である。また、複数の組立式保管箱を配列する際に、貫通孔が設けられた側面が所定の方向を向くように配列するのも作業効率が悪い。特に、断面形状が正方形に近いと、断面形状に基づいて4つの面を区別することが難しい。
【0051】
組立式保管箱100Bの様に、筒状部材20Bの全ての側面に貫通孔26a、26b、26cおよび26dを設けておけば、複数の組立式保管箱100Bを配列する際に、貫通孔が設けられた側面を特定する必要がないので、作業効率が向上する。なお、貫通孔26a、26b、26cおよび26dの内の1つから乾燥空気等を供給する場合、他の3つの貫通孔は例えば栓で塞がれることが好ましい。使用前には、4つの貫通孔26a、26b、26cおよび26dを例えば栓で塞いでおき、組立式保管箱100Bを所定の位置に配置した後、乾燥空気等を供給する貫通孔に挿入された栓だけを外し、その貫通孔から乾燥空気等を供給すればよい。
【0052】
4つの貫通孔26a、26b、26cおよび26dを設ける位置は、任意であってよく、乾燥空気等を供給する配管の位置など、利用場所に応じて適宜設計され得る。例えば、側面の下方(底部材30Bに近い位置)に設けてもよい。組立式保管箱100Bの様に、側面の上方(蓋部材10Bに近い位置)に設ける、あるいは、各側面の同じ位置に設ける等すると、作業者が貫通孔26a、26b、26cまたは26dを見つけやすい。
【0053】
なお、
図1に示した組立式保管箱100のように、断面が長方形の空洞を画定する形状を有する筒状部材20の場合、その形状から4つの側面の内の2つの側面は容易に特定できる。従って、4つの側面の全てに貫通口を設ける必要はなく、例えば、長辺を含む2つの側面、または、短辺を含む2つの側面にだけ貫通孔を設けても、作業効率は低下しない。多角形の形状や、組立式保管箱の配置位置などによっては、筒状部材に貫通孔を1つだけ設けてもよい。
【0054】
なお、組立式保管箱の蓋部材(平板部材)または筒状部材に複数の貫通孔を設けた場合に、乾燥空気等の供給に利用しない貫通孔は、例えばゴム栓またはプラスチックキャップで塞いでおくことが好ましいが、貫通孔を塞ぐ方法はこれに限られず、公知の種々の方法、部材を用いることができる。例えば、乾燥空気等を供給するためのチューブ(例えば、
図2中のチューブ52)にカップリングプラグを設けておき、貫通孔にカップリングソケットを設けてもよい。なお、専用の栓等を用意しなくても、テープ等で貫通孔を塞いでもよい。
【0055】
工場内では、大きさが異なる複数種類の組立式保管箱を利用するので、種々の蓋部材、底部材および筒状部材を多様に組み合わせてもよい。例えば、
図8に示す組立式保管箱100Aの蓋部材10Aの2つの貫通孔16a、16bの一方を塞げば、
図2に示す組立式保管箱100の蓋部材10として用いることができる。また、
図9に示す組立式保管箱100Bの筒状部材20Bを2つ用意し、
図8に示す組立式保管箱100Aの筒状部材20a、20bとして用いることもできる。このとき蓋部材10Aの貫通孔16a、16bを塞いでもよいし、蓋部材10Aに代えて貫通孔を有しない蓋部材を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の実施形態による組立式保管箱およびそれを用いた保管方法は、例えば、空気中の水分などで容易に酸化されるワークを大量に工場内で保管するのに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0057】
10、10A 蓋部材
12 第1平板部
14 第1側板部
16、16a、16b、26a、26b、26c、26d 貫通孔
20、20a、20b 筒状部材
30 底部材
32 第2平板部
34 第2側板部
100、100A、100B 組立式保管箱