【文献】
Kanie, Kiyoshi; Tanaka, Yoichiro; Shimizu, Masaki; Takehara, Sadao; Hiyama, Tamejiro,Synthesis and electrooptical properties of novel liquid crystals having a cyclohexyl trifluoromethyl ether moiety,Chemistry Letters ,1997年,(8),827-828
【文献】
Kanie, Kiyoshi; Takehara, Sadao; Hiyama, Tamejiro,A Facile Synthesis of Novel Liquid Crystalline Materials Having a Trifluoromethoxy Group and Their Electro-Optical Properties,Bulletin of the Chemical Society of Japan ,2000年,73(8),1875-1892
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、色素、および消泡剤の群から選択された少なくとも1つの添加物をさらに含有する、請求項4から8のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この明細書における用語の使い方は、次のとおりである。「液晶性化合物」、「液晶組成物」、および「液晶表示素子」の用語をそれぞれ「化合物」、「組成物」、および「素子」と略すことがある。「液晶性化合物」は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物、および液晶相を有しないが、上限温度、下限温度、粘度、誘電率異方性のような組成物の物性を調節する目的で添加する化合物の総称である。この化合物は、1,4−シクロヘキシレンや1,4−フェニレンのような六員環を有し、その分子構造は棒状(rod like)である。「液晶表示素子」は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。「重合性化合物」は、組成物中に重合体を生成させる目的で添加する化合物である。
【0015】
液晶組成物は、複数の液晶性化合物を混合することによって調製される。この組成物に、物性をさらに調整する目的で添加物が添加される。光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、極性化合物のような添加物が必要に応じて添加される。液晶性化合物や添加物は、このような手順で混合される。液晶性化合物の割合(含有量)は、添加物を添加した場合であっても、添加物を含まない液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)で表される。添加物の割合(添加量)は、添加物を含まない液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)で表される。重量百万分率(ppm)が用いられることもある。重合開始剤および重合禁止剤の割合は、例外的に重合性化合物の重量に基づいて表される。
【0016】
「透明点」は、液晶性化合物における液晶相−等方相の転移温度である。「液晶相の下限温度」は、液晶性化合物における固体−液晶相(スメクチック相、ネマチック相など)の転移温度である。「ネマチック相の上限温度」は、液晶性化合物と母液晶との混合物または液晶組成物におけるネマチック相−等方相の転移温度であり、「上限温度」と略すことがある。「ネマチック相の下限温度」を「下限温度」と略すことがある。「誘電率異方性を上げる」の表現は、誘電率異方性が正である組成物のときは、その値が正に増加することを意味し、誘電率異方性が負である組成物のときは、その値が負に増加することを意味する。
【0017】
式(1)で表される化合物を化合物(1)と略すことがある。式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を化合物(1)と略すことがある。「化合物(1)」は、式(1)で表される1つの化合物、2つの化合物の混合物、または3つ以上の化合物の混合物を意味する。これらのルールは、他の式で表される化合物についても適用される。式(1)から(15)において、六角形で囲んだA
1、B
1、C
1などの記号はそれぞれ環A
1、環B
1、環C
1などの環に対応する。六角形は、シクロヘキサンやベンゼンのような六員環を表す。六角形がナフタレンのような縮合環や、アダマンタンのような架橋環を表すことがある。
【0018】
化学式において、末端基R
11の記号を複数の化合物に用いた。これらの化合物において、任意の2つのR
11が表す2つの基は同一であってもよく、または異なってもよい。例えば、化合物(2)のR
11がエチルであり、化合物(3)のR
11がエチルであるケースがある。化合物(2)のR
11がエチルであり、化合物(3)のR
11がプロピルであるケースもある。このルールは、R
12、R
13、Z
11などの記号にも適用される。化合物(8)において、iが2のとき、2つの環D
1が存在する。この化合物において2つの環D
1が表す2つの基は、同一であってもよく、または異なってもよい。iが2より大きいとき、任意の2つの環D
1にも適用される。このルールは、他の記号にも適用される。
【0019】
「少なくとも1つの‘A’」の表現は、‘A’の数が任意であることを意味する。「少なくとも1つの‘A’は、‘B’で置き換えられてもよい」の表現は、‘A’の数が1つのとき、‘A’の位置は任意であり、‘A’の数が2つ以上のときも、それらの位置は制限なく選択できることを意味する。このルールは、「少なくとも1つの‘A’が、‘B’で置き換えられた」の表現にも適用される。「少なくとも1つの‘A’が、‘B’、‘C’、または‘D’で置き換えられてもよい」という表現は、任意の‘A’が‘B’で置き換えられた場合、任意の‘A’が‘C’で置き換えられた場合、および任意の‘A’が‘D’で置き換えられた場合、さらに複数の‘A’が‘B’、‘C’、および/または‘D’の少なくとも2つで置き換えられた場合を含むことを意味する。例えば、「少なくとも1つの−CH
2−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキル」には、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルケニル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルが含まれる。なお、連続する2つの−CH
2−が−O−で置き換えられて、−O−O−のようになることは好ましくない。アルキルなどにおいて、メチル部分(−CH
2−H)の−CH
2−が−O−で置き換えられて−O−Hになることも好ましくない。
【0020】
ハロゲンはフッ素、塩素、臭素およびヨウ素を意味する。好ましいハロゲンは、フッ素および塩素である。さらに好ましいハロゲンはフッ素である。液晶性化合物のアルキルは直鎖状または分岐状であり、環状アルキルを含まない。直鎖状アルキルは、一般的に分岐状アルキルよりも好ましい。これらのことは、アルコキシ、アルケニルなどの末端基についても同様である。1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置は、上限温度を上げるためにシスよりもトランスが好ましい。2−フルオロ−1,4−フェニレンは、下記の2つの二価基を意味する。化学式において、フッ素は左向き(L)であってもよいし、右向き(R)であってもよい。このルールは、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルのような、環から水素を2つ除くことによって生成した非対称な二価基にも適用される。
【0022】
項1. 式(1)で表される化合物。
式(1)において、
R
1は、炭素数1から10のアルキルの少なくとも1つの−CH
2−が−O−で置き換えられた基であり、この基において、少なくとも1つの−CH
2CH
2−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
R
2は炭素数2から10のアルケニルであり、この基において、二重結合を形成する炭素と結合する少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく;
Z
1およびZ
2は独立して、単結合、−CH
2CH
2−、−CH=CH−、−OCH
2−、−CH
2O−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CF
2CF
2−、−CF=CF−、−(CH
2)
4−、−CH=CH−(CH
2)
2−、または−(CH
2)
2−CH=CH−であり;
aおよびbは独立して、0または1である。
【0023】
項2. 式(1)において、
R
1は、炭素数1から9のアルコキシ、炭素数1から9のアルコキシアルキル、炭素数2から9のアルケニルオキシ、または炭素数2から9のアルケニルオキシアルキルであり、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
R
2は炭素数2から10のアルケニルであり、この基において、二重結合を形成する炭素と結合する少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
Z
1およびZ
2は独立して、単結合、−CH
2CH
2−、−CH=CH−、−OCH
2−、または−CH
2O−であり;
aおよびbは独立して、0または1である、項1に記載の化合物。
【0024】
項3. 式(1−1)から(1−4)のいずれか1つで表される、項1に記載の化合物。
式(1−1)から(1−4)において、
R
1は、炭素数1から9のアルコキシ、または炭素数2から9のアルケニルオキシであり、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
R
2は炭素数2から10のアルケニルであり、この基において、二重結合を形成する炭素と結合する少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
Z
1およびZ
2は独立して、単結合、−CH
2CH
2−、−CH=CH−、−OCH
2−、または−CH
2O−である。
【0025】
項4. 式(1−5)から(1−10)のいずれか1つで表される、項1に記載の化合物。
式(1−5)から(1−10)において、
R
1は、炭素数1から9のアルコキシ、または炭素数2から9のアルケニルオキシであり;
R
2は炭素数2から10のアルケニルであり、この基において、二重結合を形成する炭素と結合する少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよい。
【0026】
項5. 式(1−11)から(1−14)のいずれか1つで表される、項1に記載の化合物。
式(1−11)から(1−14)において、
R
1は、炭素数1から9のアルコキシであり;
R
2は、炭素数2から10のアルケニルであり、この基において、二重結合を形成する炭素と結合する少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよい。
【0027】
項6. 式(1−15)から(1−22)のいずれか1つで表される、項1から5のいずれか1項に記載の化合物。
式(1−15)から(1−22)において、R
3は炭素数1から9のアルキルである。
【0028】
項7. 式(1−23)から(1−26)のいずれか1つで表される、項1に記載の化合物。
式(1−23)から(1−26)において、R
3は炭素数1から6のアルキルである。
【0029】
項8. 項1から7のいずれか1項に記載の化合物を少なくとも1つ含有する液晶組成物。
【0030】
項9. 式(2)から(4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項8に記載の液晶組成物。
式(2)から(4)において、
R
11およびR
12は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、これらの基において、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環B
1、環B
2、環B
3、および環B
4は独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
Z
11、Z
12、およびZ
13は独立して、単結合、−COO−、−CH
2CH
2−、−CH=CH−、または−C≡C−であり;
式(3)において、
環B
1、環B
2、および環B
3がすべて1,4−シクロヘキシレンである場合には、R
11およびR
12は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
式(4)において、
環B
1、環B
2、環B
3、および環B
4がすべて1,4−シクロヘキシレンである場合には、R
11およびR
12は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよい。
【0031】
項10. 式(5)から(7)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項8または9に記載の液晶組成物。
式(5)から(7)において、
R
13は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、これらの基において、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
X
11は、フッ素、塩素、−OCF
3、−OCHF
2、−CF
3、−CHF
2、−CH
2F、−OCF
2CHF
2、または−OCF
2CHFCF
3であり;
環C
1、環C
2、および環C
3は独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
Z
14、Z
15、およびZ
16は独立して、単結合、−COO−、−OCO−、−CH
2O−、−OCH
2−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2CH
2−、−CH=CH−、−C≡C−、または−(CH
2)
4−であり;
L
11およびL
12は独立して、水素またはフッ素である。
【0032】
項11. 式(8)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項8から10のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(8)において、
R
14は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、これらの基において、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
X
12は−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;
環D
1は、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
Z
17は、単結合、−COO−、−OCO−、−CH
2O−、−OCH
2−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2CH
2−、または−C≡C−であり;
L
13およびL
14は独立して、水素またはフッ素であり;
iは、1、2、3、または4である。
【0033】
項12. 式(9)から(15)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項8から11のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(9)から(15)において、
R
15およびR
16は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、これらの基において、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
R
17は、水素、フッ素、炭素数1から10のアルキル、または炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環E
1、環E
2、環E
3、および環E
4は独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン,テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;
環E
5および環E
6は独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン,テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;
Z
18、Z
19、Z
20、およびZ
21は独立して、単結合、−COO−、−OCO−、−CH
2O−、−OCH
2−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CH
2CH
2−、−CF
2OCH
2CH
2−、または−OCF
2CH
2CH
2−であり;
L
15およびL
16は独立して、フッ素または塩素であり;
S
11は、水素またはメチルであり;
Xは、−CHF−または−CF
2−であり;
j、k、m、n、p、q、r、およびsは独立して、0または1であり、k、m、n、およびpの和は、1または2であり、q、r、およびsの和は、0、1、2、または3であり、tは、1、2、または3である。
【0034】
項13. 重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、色素、および消泡剤の群から選択された少なくとも1つの添加物をさらに含有する、項8から12のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0035】
項14. 項8から13のいずれか1項に記載の液晶組成物を含む液晶表示素子。
【0036】
本発明は、次の項をも含む。(a)重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、色素、および消泡剤の群から選択された、1つ、2つ、または少なくとも3つの添加物をさらに含有する、上記の組成物。(b)ネマチック相の上限温度が70℃以上であり、波長589nmにおける光学異方性(25℃で測定)が0.07以上であり、そして周波数1kHzにおける誘電率異方性(25℃で測定)が2以上である、上記の液晶組成物。(c)液晶表示素子の動作モードが、TNモード、ECBモード、OCBモード、IPSモード、VAモード、FFSモード、またはFPAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス(AM)方式である、上記の液晶表示素子。
【0037】
化合物(1)の態様、化合物(1)の合成法、液晶組成物、および液晶表示素子について、順に説明する。
【0038】
1.化合物(1)の態様
本発明の化合物(1)は、ターシクロヘキシル構造を有する。化合物(1)は、類似の化合物と比較して、ネマチック相の温度範囲が広く、他の液晶性化合物との優れた相溶性を有するという特徴がある(比較例1を参照)。化合物(1)の好ましい例について説明をする。化合物(1)における末端基R
1およびR
2、結合基Z
1およびZ
2、およびaおよびbの組み合わせの好ましい例は、化合物(1)の下位式にも適用される。化合物(1)において、これらの基を適切に組み合わせることによって、物性を任意に調整することが可能である。化合物の物性に大きな差異がないので、化合物(1)は、
2H(重水素)、
13Cなどの同位体を天然存在比の量より多く含んでもよい。なお、化合物(1)の記号の定義は、項1に記載したとおりである。
【0039】
式(1)において、R
1は、炭素数1から10のアルキルの少なくとも1つの−CH
2−が−O−で置き換えられた基であり、この基において、少なくとも1つの−CH
2CH
2−は−CH=CH−で置き換えられてもよい。
【0040】
R
1の例は、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、アルケニルオキシ、アルケニルオキシアルキル、およびアルコキシアルケニルである。好ましいR
1は、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルケニルオキシ、またはアルケニルオキシアルキルである。さらに好ましいR
1は、アルコキシ、アルコキシアルキル、またはアルケニルオキシである。特に好ましいR
1は、アルコキシまたはアルケニルオキシである。最も好ましいR
1は、アルコキシである。
【0041】
好ましいアルコキシは、−OCH
3、−OC
2H
5、−OC
3H
7、−OC
4H
9、−OC
5H
11、−OC
6H
13、または−OC
7H
15である。
【0042】
好ましいアルコキシアルキルは、−CH
2OCH
3、−CH
2OC
2H
5、−CH
2OC
3H
7、−(CH
2)
2−OCH
3、−(CH
2)
2−OC
2H
5、−(CH
2)
2−OC
3H
7、−(CH
2)
3−OCH
3、−(CH
2)
4−OCH
3、または−(CH
2)
5−OCH
3である。
【0043】
好ましいアルケニルオキシは、−OCH
2CH=CH
2、−OCH
2CH=CHCH
3、または−OCH
2CH=CHC
2H
5である。
【0044】
好ましいアルケニルは、−CH=CH
2、−CH=CHCH
3、−CH
2CH=CH
2、−CH=CHC
2H
5、−CH
2CH=CHCH
3、−(CH
2)
2−CH=CH
2、−CH=CHC
3H
7、−CH
2CH=CHC
2H
5、−(CH
2)
2−CH=CHCH
3、または−(CH
2)
3−CH=CH
2である。
【0045】
好ましいR
1は、−OCH
3、−OC
2H
5、−OC
3H
7、−OC
4H
9、−OC
5H
11、−CH
2OCH
3、−OCH
2CH=CH
2、−OCH
2CH=CHCH
3、または−OCH
2CH=CHC
2H
5である。さらに好ましいR
1は、−OCH
3、−OC
2H
5、−OC
3H
7、または−OC
4H
9である。
【0046】
R
1が直鎖であるときは、液晶相の温度範囲が広く、そして粘度が小さい。R
1が分岐鎖であるときは、他の液晶性化合物との相溶性がよい。R
1が光学活性である化合物は、キラルドーパントとして有用である。この化合物を組成物に添加することによって、液晶表示素子に発生するリバース・ツイスト・ドメイン(reverse twisted domain)を防止することができる。R
1が光学活性でない化合物は、組成物の成分として有用である。
【0047】
アルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。−CH=CHCH
3、−CH=CHC
2H
5、−CH=CHC
3H
7、−CH=CHC
4H
9、−C
2H
4CH=CHCH
3、および−C
2H
4CH=CHC
2H
5のような奇数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはトランス配置が好ましい。−CH
2CH=CHCH
3、−CH
2CH=CHC
2H
5、および−CH
2CH=CHC
3H
7のような偶数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはシス配置が好ましい。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、高い透明点または液晶相の広い温度範囲を有する。Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 109およびMol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 327、に詳細な説明がある。
【0048】
式(1)において、R
2は炭素数2から10のアルケニルであり、この基において、二重結合を形成する炭素と結合する少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよい。
【0049】
好ましいアルケニルは、−CH=CH
2、−CH=CHCH
3、−CH
2CH=CH
2、−CH=CHC
2H
5、−CH
2CH=CHCH
3、−(CH
2)
2−CH=CH
2、−CH=CHC
3H
7、−CH
2CH=CHC
2H
5、−(CH
2)
2−CH=CHCH
3、−(CH
2)
3−CH=CH
2、−CH=CH−(CH
2)
2−CH=CH
2、−CH=CH−(CH
2)
2−CH=CHCH
3、−(CH
2)
2−CH=CH−(CH
2)
2−CH=CH
2、または−(CH
2)
2−CH=CH−(CH
2)
2−CH=CHCH
3である。
【0050】
好ましいR
2は、−CH=CH
2、−CH=CHCH
3、−(CH
2)
2−CH=CH
2、−(CH
2)
2−CH=CHCH
3、−CH=CH−(CH
2)
2−CH=CH
2、または−(CH
2)
2−CH=CH−(CH
2)
2−CH=CH
2である。さらに好ましいR
2は、−CH=CH
2、−CH=CHCH
3、−(CH
2)
2−CH=CH
2、または−(CH
2)
2−CH=CHCH
3である。
【0051】
R
2が直鎖であるときは、液晶相の温度範囲が広く、そして粘度が小さい。R
1が分岐鎖であるときは、他の液晶性化合物との相溶性がよい。R
1が光学活性である化合物は、キラルドーパントとして有用である。この化合物を組成物に添加することによって、液晶表示素子に発生するリバース・ツイスト・ドメイン(reverse twisted domain)を防止することができる。R
2が光学活性でない化合物は、組成物の成分として有用である。R
2の好ましい立体配置は二重結合の位置に依存する。好ましい立体配置を有する化合物は、小さい粘度、高い上限温度または液晶相の広い温度範囲を有する。
【0052】
アルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。−CH=CHCH
3、−CH=CHC
2H
5、−CH=CHC
3H
7、−CH=CHC
4H
9、−C
2H
4CH=CHCH
3、および−C
2H
4CH=CHC
2H
5のような奇数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはトランス配置が好ましい。−CH
2CH=CHCH
3、−CH
2CH=CHC
2H
5、および−CH
2CH=CHC
3H
7のような偶数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはシス配置が好ましい。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、高い透明点または液晶相の広い温度範囲を有する。Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 109およびMol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 327、に詳細な説明がある。
【0053】
式(1)において、Z
1およびZ
2は独立して、単結合、−CH
2CH
2−、−CH=CH−、−OCH
2−、−CH
2O−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CF
2CF
2−、−CF=CF−、−(CH
2)
4−、−CH=CH−(CH
2)
2−、または−(CH
2)
2−CH=CH−である。
【0054】
好ましいZ
1またはZ
2は、単結合、−CH
2CH
2−、−CH=CH−、−OCH
2−、または−CH
2O−である。さらに好ましいZ
1またはZ
2は、単結合、−CH
2CH
2−、または−CH=CH−である。特に好ましいZ
1またはZ
2は、単結合または−CH=CH−である。最も好ましいZ
1またはZ
2は、単結合である。
【0055】
Z
1またはZ
2が単結合、−CH
2CH
2−、−OCH
2−、−CH
2O−、または−(CH
2)
4−であるときは、化学的安定性が高い。Z
1またはZ
2が単結合または−CH=CH−であるときは、透明点が高く、粘度が小さく、他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する。Z
1またはZ
2が−COO−または−OCO−であるときは、透明点が高い。
【0056】
式(1)において、aおよびbは独立して、0または1である。
【0057】
aとbの和が0であるときは、粘度が小さく、他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する。aとbの和が1であるときは、透明点が高い。
【0058】
好ましい化合物(1)の例は、項4に記載された化合物(1−5)から(1−10)である。より好ましい化合物(1)の例は、項5に記載された化合物(1−11)から(1−14)である。特に好ましい化合物(1)の例は、項6に記載された化合物(1−15)から(1−22)である。最も好ましい化合物(1)の例は、項7に記載された化合物(1−23)から(1−26)である。
【0059】
化合物(1−5)は、熱や光に対する高い安定性、他の液晶性化合物との優れた相溶性、および小さな粘度という観点から好ましい。化合物(1−6)、(1−7)、および(1−9)は、熱や光に対する高い安定性、および高い透明点という観点から好ましい。化合物(1−8)および(1−10)は、高い透明点および他の液晶性化合物との優れた相溶性という観点から好ましい。
【0060】
2.化合物(1)の合成
化合物(1)の合成法を説明する。化合物(1)は、有機合成化学の方法を適切に組み合わせることによって合成できる。出発物に目的の末端基、環および結合基を導入する方法は、「オーガニック・シンセシス」(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc.)、「オーガニック・リアクションズ」(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc.)、「コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス」(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、「新実験化学講座」(丸善)などの成書に記載されている。
【0061】
2−1.結合基Zの生成
結合基Z
1からZ
2を生成する方法に関して、最初にスキームを示す。次に、方法(1)から(11)でスキームに記載した反応を説明する。このスキームにおいて、MSG
1(またはMSG
2)は少なくとも1つの環を有する1価の有機基である。スキームで用いた複数のMSG
1(またはMSG
2)が表わす一価の有機基は、同一であってもよいし、または異なってもよい。化合物(1A)から(1J)は化合物(1)に相当する。
【0063】
(1)単結合の生成
公知の方法で合成されるアリールホウ酸(21)とハロゲン化物(22)とを、炭酸塩およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で反応させて化合物(1A)を合成する。この化合物(1A)は、公知の方法で合成されるハロゲン化物(23)にn−ブチルリチウムを、次いで塩化亜鉛を反応させ、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下でハロゲン化物(22)を反応させることによっても合成される。
【0064】
(2)−COO−の生成
ハロゲン化物(23)にn−ブチルリチウムを、続いて二酸化炭素を反応させてカルボン酸(24)を得る。公知の方法で合成される化合物(25)とカルボン酸(24)とをDCC(1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド)とDMAP(4−ジメチルアミノピリジン)の存在下で脱水させて化合物(1B)を合成する。
【0065】
(3)−CF
2O−の生成
化合物(1B)をローソン試薬のような硫黄化剤で処理してチオノエステル(26)を得る。チオノエステル(26)をフッ化水素ピリジン錯体とNBS(N−ブロモスクシンイミド)でフッ素化し、化合物(1C)を合成する。M. Kuroboshi et al., Chem. Lett., 1992,827.を参照。化合物(1C)はチオノエステル(26)をDAST((ジエチルアミノ)サルファートリフルオリド)でフッ素化しても合成される。W. H. Bunnelle et al., J. Org. Chem. 1990, 55, 768.を参照。Peer. Kirsch et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 1480. に記載の方法によってこの結合基を生成させることも可能である。
【0066】
(4)−CH=CH−の生成
ハロゲン化物(22)をn−ブチルリチウムで処理した後、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)などのホルムアミドと反応させてアルデヒド(28)を得る。公知の方法で合成されるホスホニウム塩(27)をカリウムt−ブトキシドのような塩基で処理してリンイリドを発生させる。このリンイリドをアルデヒド(28)に反応させて化合物(1D)を合成する。反応条件によってはシス体が生成するので、必要に応じて公知の方法によりシス体をトランス体に異性化する。
【0067】
(5)−CH
2CH
2−の生成
化合物(1D)をパラジウム炭素のような触媒の存在下で水素化することにより、化合物(1E)を合成する。
【0068】
(6)−(CH
2)
2−CH=CH−および−(CH
2)
4−の生成
ホスホニウム塩(27)の代わりにホスホニウム塩(29)を用い、方法(4)の方法に従って化合物(1F)を得る。これを接触水素化して化合物(1G)を合成する。
【0069】
(7)−C≡C−の生成
ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下で、ハロゲン化物(23)に2−メチル−3−ブチン−2−オールを反応させたのち、塩基性条件下で脱保護して化合物(32)を得る。ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下、化合物(32)をハロゲン化物(22)と反応させて、化合物(1H)を合成する。
【0070】
(8)−CF=CF−の生成
ハロゲン化物(23)をn−ブチルリチウムで処理したあと、テトラフルオロエチレンを反応させて化合物(33)を得る。ハロゲン化物(22)をn−ブチルリチウムで処理したあと化合物(33)と反応させて化合物(1I)を合成する。
【0071】
(9)−OCH
2−の生成
アルデヒド(28)を水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤で還元して化合物(34)を得る。化合物(34)を臭化水素酸などで臭素化して臭化物(35)を得る。炭酸カリウムなどの塩基存在下で、臭化物(35)を化合物(36)と反応させて化合物(1J)を合成する。
【0072】
(10)−CF
2CF
2−の生成
J. Am. Chem. Soc., 2001, 123, 5414. に記載された方法に従い、ジケトン(−COCO−)をフッ化水素触媒の存在下、四フッ化硫黄でフッ素化して−(CF
2)
2−を有する化合物を得る。
【0073】
2−2.化合物(1)を合成する方法
化合物(1)において、R
1が炭素数1から9のアルコキシであり、R
2が−CH=CH
2であり、aおよびbがともに0である化合物(1−15)を合成する方法の例は、次のとおりである。化合物(51)に対して公知の方法により合成される化合物(52)から調整したGrignard試薬を作用させ化合物(53)を得る。化合物(53)をエチレングリコールの存在下でPTSA(p−トルエンスルホン酸一水和物)を作用させて脱水することにより、化合物(54)を得る。化合物(54)をラネーニッケル触媒にて水素化することにより、化合物(55)を得る。化合物(55)をパラジウム炭素触媒にて水素化することにより、化合物(56)を得る。化合物(56)を水素化アルミニウムリチウムにて還元し、化合物(57)を得る。化合物(57)に対して水素化ナトリウムとアルキルブロミド(58)を用いて、エーテル化することによって、化合物(59)を得る。化合物(59)をギ酸にて脱保護して、化合物(60)を得る。化合物(60)に対し、(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウムクロリドとカリウムt−ブトキシドを用いてWittig反応を行うことにより、化合物(61)を得る。化合物(61)に対しメタノール中でPTSAを作用させることにより、化合物(62)を得る。化合物(62)に対しギ酸を作用させて、化合物(63)を得た後、メチルトリフェニルホスホニウムブロミドとカリウムt−ブトキシドを用いてWittig反応を行うことによって化合物(1−15)を合成する。これらの化合物において、R
3の定義は、項6に記載した記号の定義と同一である。
【0075】
3.液晶組成物
3−1.成分化合物
本発明の液晶組成物について説明をする。この組成物は、少なくとも1つの化合物(1)を成分Aとして含む。この組成物は、2つまたは3つ以上の化合物(1)を含んでもよい。組成物の成分が化合物(1)のみであってもよい。組成物は、化合物(1)の少なくとも1つを1重量%から99重量%の範囲で含有することが、優良な物性を発現させるために好ましい。誘電率異方性が正である組成物において、化合物(1)の好ましい含有量は5重量%から60重量%の範囲である。誘電率異方性が負である組成物において、化合物(1)の好ましい含有量は30重量%以下である。
【0076】
この組成物は、化合物(1)を成分Aとして含有し、下に示す成分B、C、D、およびEから選択された液晶性化合物をさらに含有することが好ましい。成分Bは、化合物(2)から(4)である。成分Cは化合物(5)から(7)である。成分Dは、化合物(8)である。成分Eは、化合物(9)から(15)である。この組成物は、化合物(2)から(15)とは異なる、その他の液晶性化合物を含んでもよい。この組成物は、その他の液晶性化合物を含まなくてもよい。この組成物を調製するときには、誘電率異方性の正負と大きさとを考慮して成分B、C、D、およびEを選択することが好ましい。成分を適切に選択した組成物は、熱や光に対する高い安定性、高い上限温度、低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性(すなわち、大きな光学異方性または小さな光学異方性)、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、および適切な弾性定数(すなわち、大きな弾性定数または小さな弾性定数)を有する。
【0077】
成分Bは、2つの末端基がアルキルなどである化合物である。成分Bの好ましい例として、化合物(2−1)から(2−11)、化合物(3−1)から(3−19)、および化合物(4−1)から(4−7)を挙げることができる。これらの化合物において、R
11およびR
12は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、これらの基において、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよい。
【0079】
成分Bは、小さな誘電率異方性を有する。成分Bは中性に近い。化合物(2)は、粘度を下げるまたは光学異方性を調整する効果がある。化合物(3)および(4)は、上限温度を上げることによってネマチック相の温度範囲を広げる、または光学異方性を調整する効果がある。
【0080】
成分Bの含有量を増加させるにつれて組成物の粘度は小さくなるが誘電率異方性が小さくなる。そこで、素子のしきい値電圧の要求値を満たす限り、含有量は多いほうが好ましい。IPS、VAなどのモード用の組成物を調製する場合には、成分Bの含有量は、液晶組成物の重量に基づいて、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上である。
【0081】
成分Cは、右末端にハロゲンまたはフッ素含有基を有する化合物である。成分Cの好ましい例として、化合物(5−1)から(5−16)、化合物(6−1)から(6−113)、化合物(7−1)から(7−57)を挙げることができる。これらの化合物において、R
13は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、これらの基において、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;X
11は、フッ素、塩素、−OCF
3、−OCHF
2、−CF
3、−CHF
2、−CH
2F、−OCF
2CHF
2、または−OCF
2CHFCF
3である。
【0088】
成分Cは、誘電率異方性が正であり、熱や光に対する安定性が非常に優れているので、IPS、FFS、OCBなどのモード用の組成物を調製する場合に用いられる。成分Cの含有量は、液晶組成物の重量に基づいて1重量%から99重量%の範囲が適しており、好ましくは10重量%から97重量%の範囲、さらに好ましくは40重量%から95重量%の範囲である。成分Cを誘電率異方性が負である組成物に添加する場合、成分Cの含有量は30重量%以下が好ましい。成分Cを添加することにより、組成物の弾性定数を調整し、素子の電圧−透過率曲線を調整することが可能となる。
【0089】
成分Dは、右末端基が−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nである化合物(8)である。成分Dの好ましい例として、化合物(8−1)から(8−64)を挙げることができる。これらの化合物において、R
14は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、これらの基において、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;X
12は−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nである。
【0092】
成分Dは、誘電率異方性が正であり、その値が大きいので、TNなどのモード用の組成物を調製する場合に用いられる。この成分Dを添加することにより、組成物の誘電率異方性を上げることができる。成分Dは、液晶相の温度範囲を広げる、粘度を調整する、または光学異方性を調整する、という効果がある。成分Dは、素子の電圧−透過率曲線の調整にも有用である。
【0093】
TNなどのモード用の組成物を調製する場合には、成分Dの含有量は、液晶組成物の重量に基づいて1重量%から99重量%の範囲が適しており、好ましくは10重量%から97重量%の範囲、さらに好ましくは40重量%から95重量%の範囲である。成分Dを誘電率異方性が負である組成物に添加する場合、成分Dの含有量は30重量%以下が好ましい。成分Dを添加することにより、組成物の弾性定数を調整し、素子の電圧−透過率曲線を調整することが可能となる。
【0094】
成分Eは、化合物(9)から(15)である。これらの化合物は、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンのように、ラテラル位が2つのハロゲンで置換されたフェニレンを有する。成分Eの好ましい例として、化合物(9−1)から(9−8)、化合物(10−1)から(10−17)、化合物(11−1)、化合物(12−1)から(12−3)、化合物(13−1)から(13−11)、化合物(14−1)から(14−3)、および化合物(15−1)から(15−3)を挙げることができる。これらの化合物において、R
15およびR
16は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、これらの基において、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;R
17は、水素、フッ素、炭素数1から10のアルキル、または炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよい。
【0097】
成分Eは、誘電率異方性が負に大きい。成分Eは、IPS、VA、PSAなどのモード用の組成物を調製する場合に用いられる。成分Eの含有量を増加させるにつれて組成物の誘電率異方性が負に大きくなるが、粘度が大きくなる。そこで、素子のしきい値電圧の要求値を満たす限り、含有量は少ないほうが好ましい。誘電率異方性が−5程度であることを考慮すると、充分な電圧駆動をさせるには、含有量が40重量%以上であることが好ましい。
【0098】
成分Eのうち、化合物(9)は二環化合物であるので、粘度を下げる、光学異方性を調整する、または誘電率異方性を上げる効果がある。化合物(10)および(11)は三環化合物であるので、上限温度を上げる、光学異方性を上げる、または誘電率異方性を上げるという効果がある。化合物(12)から(15)は、誘電率異方性を上げるという効果がある。
【0099】
IPS、VA、PSAなどのモード用の組成物を調製する場合には、成分Eの含有量は、液晶組成物の重量に基づいて、好ましくは40重量%以上であり、さらに好ましくは50重量%から95重量%の範囲である。成分Eを誘電率異方性が正である組成物に添加する場合は、成分Eの含有量は30重量%以下が好ましい。成分Eを添加することにより、組成物の弾性定数を調整し、素子の電圧−透過率曲線を調整することが可能となる。
【0100】
化合物(1)に成分B、C、D、およびEを適切に組み合わせることによって熱や光に対する高い安定性、高い上限温度、低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、適切な弾性定数などの物性の少なくとも1つを充足する液晶組成物を調製することができる。このような組成物を含む素子は、素子を使用できる広い温度範囲、短い応答時間、大きな電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、小さなフリッカ率、および長い寿命を有する。
【0101】
素子を長時間使用すると、表示画面にフリッカ(flicker)が発生することがある。フリッカ率(%)は、((|正の電圧を印加したときの輝度−負の電圧を印加したときの輝度|)/平均輝度)×100、によって表すことができる。フリッカ率が0%から1%の範囲である素子は、素子を長時間使用しても、表示画面にフリッカ(flicker)が発生しにくい。このフリッカは、画像の焼き付きに関連し、交流で駆動させる際に正フレームの電位と負フレームの電位との間に差が生じることによって発生すると推定される。化合物(1)を含有する組成物は、フリッカの発生を低減させるのにも有用である。
【0102】
3−2.添加物
液晶組成物は公知の方法によって調製される。例えば、成分化合物を混合し、そして加熱によって互いに溶解させる。用途に応じて、この組成物に添加物を添加してよい。添加物の例は、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、色素、消泡剤などである。このような添加物は当業者によく知られており、文献に記載されている。
【0103】
PSA(polymer sustained alignment;高分子支持配向)モードを有する液晶表示素子では、組成物が重合体を含有する。重合性化合物は、組成物中に重合体を生成させる目的で添加される。電極間に電圧を印加した状態で紫外線を照射して、重合性化合物を重合させることによって、組成物の中に重合体を生成させる。この方法によって、適切なプレチルトが達成されるので、応答時間が短縮され、画像の焼き付きが改善された素子が作製される。
【0104】
重合性化合物の好ましい例は、アクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、およびビニルケトンである。さらに好ましい例は、少なくとも1つのアクリロイルオキシを有する化合物および少なくとも1つのメタクリロイルオキシを有する化合物である。さらに好ましい例には、アクリロイルオキシとメタクリロイルオキシの両方を有する化合物も含まれる。
【0105】
さらに好ましい例は、化合物(M−1)から(M−18)である。これらの化合物において、R
25からR
31は独立して、水素またはメチルであり;R
32、R
33、およびR
34は独立して、水素または炭素数1から5のアルキルであり、R
32、R
33、およびR
34の少なくとも1つは炭素数1から5のアルキルであり;s、v、およびxは独立して、0または1であり;tおよびuは独立して、1から10の整数である。L
21からL
26は独立して、水素またはフッ素であり;L
27およびL
28は独立して、水素、フッ素、またはメチルである。
【0107】
重合性化合物は、重合開始剤を添加することによって、速やかに重合させることができる。反応温度を最適化することによって、残存する重合性化合物の量を減少させることができる。光ラジカル重合開始剤の例は、BASF社のダロキュアシリーズからTPO、1173、および4265であり、イルガキュアシリーズから184、369、500、651、784、819、907、1300、1700、1800、1850、および2959である。
【0108】
光ラジカル重合開始剤の追加例は、4−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)トリアジン、2−(4−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン混合物、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール混合物、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,4−ジエチルキサントン/p−ジメチルアミノ安息香酸メチル混合物、ベンゾフェノン/メチルトリエタノールアミン混合物である。
【0109】
液晶組成物に光ラジカル重合開始剤を添加したあと、電場を印加した状態で紫外線を照射することによって重合を行うことができる。しかし、未反応の重合開始剤または重合開始剤の分解生成物は、素子に画像の焼き付きなどの表示不良を引き起こすかもしれない。これを防ぐために重合開始剤を添加しないまま光重合を行ってもよい。照射する光の好ましい波長は150nmから500nmの範囲である。さらに好ましい波長は250nmから450nmの範囲であり、最も好ましい波長は300nmから400nmの範囲である。
【0110】
重合性化合物を保管するとき、重合を防止するために重合禁止剤を添加してもよい。重合性化合物は、通常は重合禁止剤を除去しないまま組成物に添加される。重合禁止剤の例は、ヒドロキノン、メチルヒドロキノンのようなヒドロキノン誘導体、4−t−ブチルカテコール、4−メトキシフェノール、フェノチアジンなどである。
【0111】
光学活性化合物は、液晶分子にらせん構造を誘起して必要なねじれ角を与えることによって逆ねじれを防ぐ、という効果を有する。光学活性化合物を添加することによって、らせんピッチを調整することができる。らせんピッチの温度依存性を調整する目的で2つ以上の光学活性化合物を添加してもよい。光学活性化合物の好ましい例として、下記の化合物(Op−1)から(Op−18)を挙げることができる。化合物(Op−18)において、環Fは1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり、R
21は炭素数1から10のアルキルである。*印は不斉炭素を表す。
【0113】
酸化防止剤は、大きな電圧保持率を維持するために有効である。酸化防止剤の好ましい例として、下記の化合物(AO−1)および(AO−2);Irganox415、Irganox565、Irganox1010、Irganox1035、Irganox3114、およびIrganox1098(商品名;BASF社)を挙げることができる。紫外線吸収剤は、上限温度の低下を防ぐために有効である。紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などであり、具体例として下記の化合物(AO−3)および(AO−4);Tinuvin329、TinuvinP、Tinuvin326、Tinuvin234、Tinuvin213、Tinuvin400、Tinuvin328、およびTinuvin99−2(商品名;BASF社);および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)を挙げることができる。
【0114】
立体障害のあるアミンのような光安定剤は、大きな電圧保持率を維持するために好ましい。光安定剤の好ましい例として、下記の化合物(AO−5)、(AO−6)、および(AO−7);Tinuvin144、Tinuvin765、およびTinuvin770DF(商品名;BASF社);LA−77YおよびLA−77G(商品名;ADEKA社)を挙げることができる。熱安定剤も大きな電圧保持率を維持するために有効であり、好ましい例としてIrgafos168(商品名;BASF社)を挙げることができる。GH(guest host)モードの素子に適合させるために、アゾ系色素、アントラキノン系色素などのような二色性色素(dichroic dye)が組成物に添加される。消泡剤は、泡立ちを防ぐために有効である。消泡剤の好ましい例は、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどである。
【0116】
化合物(AO−1)において、R
40は炭素数1から20のアルキル、炭素数1から20のアルコキシ、−COOR
41、または−CH
2CH
2COOR
41であり、ここでR
41は炭素数1から20のアルキルである。化合物(AO−2)および(AO−5)において、R
42は炭素数1から20のアルキルである。化合物(AO−5)において、R
43は水素、メチルまたはO
・(酸素ラジカル)であり;環G
1は1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり;化合物(AO−7)において、環G
2は1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンであり;化合物(AO−5)および(AO−7)において、zは、1、2、または3である。
【0117】
4.液晶表示素子
液晶組成物は、PC、TN、STN、OCB、PSAなどの動作モードを有し、アクティブマトリックスで駆動する液晶表示素子に使用できる。この組成物は、PC、TN、STN、OCB、VA、IPSなどの動作モードを有し、パッシブマトリクス方式で駆動する液晶表示素子にも使用することができる。これらの素子は、反射型、透過型、半透過型のいずれのタイプにも適用ができる。
【0118】
この組成物は、NCAP(nematic curvilinear aligned phase)素子にも適しており、ここでは組成物がマイクロカプセル化されている。この組成物は、ポリマー分散型液晶表示素子(PDLCD)や、ポリマーネットワーク液晶表示素子(PNLCD)にも使用できる。これらの組成物においては、多量の重合性化合物が添加される。一方、重合性化合物の添加量が液晶組成物の重量に基づいて10重量%以下であるとき、PSAモードの液晶表示素子が作製される。好ましい割合は0.1重量%から2重量%の範囲である。さらに好ましい割合は、0.2重量%から1.0重量%の範囲である。
【実施例】
【0119】
実施例(合成例、使用例を含む)により本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例によっては制限されない。本発明は、使用例1の組成物と使用例2の組成物との混合物を含む。本発明は、使用例の組成物の少なくとも2つを混合することによって調製した組成物をも含む。
【0120】
1.化合物(1)の実施例
化合物(1)は、下記の手順により合成した。合成した化合物は、NMR分析などの方法により同定した。化合物や組成物の物性、および素子の特性は、下記の方法により測定した。
【0121】
NMR分析:測定には、ブルカーバイオスピン社製のDRX−500を用いた。
1H−NMRの測定では、試料をCDCl
3などの重水素化溶媒に溶解させ、室温、500MHz、積算回数16回の条件で測定した。テトラメチルシランを内部標準として用いた。
19F−NMRの測定では、CFCl
3を内部標準として用い、積算回数24回で行った。核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、quinはクインテット、sexはセクステット、mはマルチプレット、brはブロードであることを意味する。
【0122】
ガスクロマト分析:測定には、島津製作所製のGC−2010型ガスクロマトグラフを用いた。カラムは、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB−1(長さ60m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いた。キャリアーガスとしてはヘリウム(1ml/分)を用いた。試料気化室の温度を300℃、検出器(FID)部分の温度を300℃に設定した。試料はアセトンに溶解して、1重量%の溶液となるように調製し、得られた溶液1μlを試料気化室に注入した。記録計には島津製作所製のGCSolutionシステムなどを用いた。
【0123】
HPLC分析:測定には、島津製作所製のProminence(LC−20AD;SPD−20A)を用いた。カラムはワイエムシー製のYMC−Pack ODS−A(長さ150mm、内径4.6mm、粒子径5μm)を用いた。溶出液はアセトニトリルと水を適宜混合して用いた。検出器としてはUV検出器、RI検出器、CORONA検出器などを適宜用いた。UV検出器を用いた場合、検出波長は254nmとした。試料はアセトニトリルに溶解して、0.1重量%の溶液となるように調製し、この溶液1μLを試料室に導入した。記録計としては島津製作所製のC−R7Aplusを用いた。
【0124】
紫外可視分光分析:測定には、島津製作所製のPharmaSpec UV−1700用いた。検出波長は190nmから700nmとした。試料はアセトニトリルに溶解して、0.01mmol/Lの溶液となるように調製し、石英セル(光路長1cm)に入れて測定した。
【0125】
測定試料:相構造および転移温度(透明点、融点、重合開始温度など)を測定するときには、化合物そのものを試料として用いた。ネマチック相の上限温度、粘度、光学異方性、誘電率異方性などの物性を測定するときには、化合物と母液晶との混合物を試料として用いた。
【0126】
化合物を母液晶と混合した試料を用いた場合は、次の式によって外挿値を算出し、この値を記載した。〈外挿値〉=(100×〈試料の測定値〉−〈母液晶の重量%〉×〈母液晶の測定値〉)/〈化合物の重量%〉.
【0127】
母液晶(A):化合物の誘電率異方性がゼロまたは正であるときは、下記の母液晶(A)を用いた。各成分の割合を、重量%で表した。
【0128】
化合物と母液晶(A)との割合は、15重量%:85重量%にした。この割合で結晶(または、スメクチック相)が25℃で析出した場合、化合物と母液晶(A)との割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更をしていき、結晶(または、スメクチック相)が25℃で析出しなくなった割合で試料を測定した。なお、特に断りのない限り、化合物と母液晶(A)との割合は、15重量%:85重量%であった。
【0129】
母液晶(B):比較例2では、下記のフッ素系化合物を成分とする母液晶(B)も用いた。母液晶(B)の成分の割合を重量%で表した。
【0130】
化合物と母液晶(B)の割合は、20重量%:80重量%にした。この割合で結晶(または、スメクチック相)が25℃で析出する場合には、化合物と母液晶(B)との割合を15重量%:85重量%、10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更をしていき、結晶(または、スメクチック相)が25℃で析出しなくなった割合で試料の物性を測定した。なお、特に断りのない限り、化合物と母液晶(B)との割合は、20重量%:80重量%である。
【0131】
測定方法:物性の測定は下記の方法で行った。これらの多くは、社団法人電子情報技術産業協会(JEITA;Japan Electronics and Information Technology Industries Association)で審議制定されるJEITA規格(JEITA・ED−2521B)に記載されている。これを修飾した方法も用いた。測定に用いたTN素子には、薄膜トランジスタ(TFT)を取り付けなかった。
【0132】
(1)相構造:偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に試料を置いた。この試料を、3℃/分の速度で加熱しながら相状態とその変化を偏光顕微鏡で観察し、相の種類を特定した。
【0133】
(2)転移温度(℃):測定には、パーキンエルマー社製の走査熱量計、Diamond DSCシステムまたはエスアイアイ・ナノテクノロジー社製の高感度示差走査熱量計、X−DSC7000を用いた。試料は、3℃/分の速度で昇降温し、試料の相変化に伴う吸熱ピークまたは発熱ピークの開始点を外挿により求め、転移温度を決定した。化合物の融点、重合開始温度もこの装置を使って測定した。化合物が固体からスメクチック相、ネマチック相などの液晶相に転移する温度を「液晶相の下限温度」と略すことがある。化合物が液晶相から液体に転移する温度を「透明点」と略すことがある。
【0134】
結晶はCと表した。結晶の種類の区別がつく場合は、それぞれをC
1またはC
2と表した。スメクチック相はS、ネマチック相はNと表した。スメクチック相の中で、スメクチックA相、スメクチックB相、スメクチックC相、またはスメクチックF相の区別がつく場合は、それぞれS
A、S
B、S
C、またはS
Fと表した。液体(アイソトロピック)はIと表した。転移温度は、例えば、「C 50.0 N 100.0 I」のように表記した。これは、結晶からネマチック相への転移温度が50.0℃であり、ネマチック相から液体への転移温度が100.0℃であることを示す。
【0135】
(3)低温相溶性:化合物の割合が、20重量%、15重量%、10重量%、5重量%、3重量%、および1重量%となるように母液晶と化合物とを混合した試料を調製し、試料をガラス瓶に入れた。このガラス瓶を、−10℃または−20℃のフリーザー中に一定期間保管したあと、結晶またはスメクチック相が析出したか否かを観察した。
【0136】
(4)ネマチック相の上限温度(T
NIまたはNI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。試料が化合物(1)と母液晶との混合物であるときは、T
NIの記号で示した。試料が化合物(1)と成分B、C、Dのような化合物との混合物であるときは、NIの記号で示した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0137】
(5)ネマチック相の下限温度(T
C;℃):ネマチック相を有する試料をガラス瓶に入れ、0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、T
Cを<−20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0138】
(6)粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s):測定には東京計器株式会社製のE型回転粘度計を用いた。
【0139】
(7)粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s):測定は、M. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。ツイスト角が0°であり、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5μmであるTN素子に試料を入れた。この素子に16Vから19.5Vの範囲で0.5V毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算に必要な誘電率異方性の値は、この回転粘度を測定した素子を用い、下に記載した方法で求めた。
【0140】
(8)光学異方性(屈折率異方性;25℃で測定;Δn):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性(Δn)の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。
【0141】
(9)誘電率異方性(Δε;25℃で測定):2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、そしてツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(10V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0142】
(10)弾性定数(K;25℃で測定;pN):測定には横河・ヒューレットパッカード株式会社製のHP4284A型LCRメータを用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである水平配向素子に試料を入れた。この素子に0ボルトから20ボルトの電荷を印加し、静電容量(C)と印加電圧(V)を測定した。これらの値を「液晶デバイスハンドブックク」(日刊工業新聞社)、75頁にある式(2.98)、式(2.101)を用いてフィッティングし、式(2.99)からK
11およびK
33の値を得た。次に171頁にある式(3.18)に、先ほど求めたK
11およびK
33の値を用いてK
22を算出した。弾性定数Kは、このようにして求めたK
11、K
22、およびK
33の平均値で表した。
【0143】
(11)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が0.45/Δn(μm)であり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に印加する電圧(32Hz、矩形波)は0Vから10Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が90%になったときの電圧で表した。
【0144】
(12)電圧保持率(VHR−1;25℃で測定;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmであった。この素子は試料を入れたあと紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子に25℃でパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積であった。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率で表した。
【0145】
(13)電圧保持率(VHR−2;80℃で測定;%):25℃の代わりに、80℃で測定した以外は、上記の方法で電圧保持率を測定した。得られた結果をVHR−2の記号で示した。
【0146】
(14)比抵抗(ρ;25℃で測定;Ωcm):電極を備えた容器に試料1.0mLを注入した。この容器に直流電圧(10V)を印加し、10秒後の直流電流を測定した。比抵抗は次の式から算出した。(比抵抗)={(電圧)×(容器の電気容量)}/{(直流電流)×(真空の誘電率)}。
【0147】
(15)応答時間(τ;25℃で測定;ms):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5.0μmであり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に矩形波(60Hz、5V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%であるとみなした。立ち上がり時間(τr:rise time;ミリ秒)は、透過率が90%から10%に変化するのに要した時間であった。立ち下がり時間(τf:fall time;ミリ秒)は透過率10%から90%に変化するのに要した時間であった。応答時間は、このようにして求めた立ち上がり時間と立ち下がり時間との和で表した。
【0148】
(16)フリッカ率(25℃で測定;%):測定には横河電機(株)製のマルチメディアディスプレイテスタ3298Fを用いた。光源はLEDであった。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が3.5μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のFFS素子に試料を入れた。この素子を紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。この素子に電圧を印加し、素子を透過した光量が最大になる電圧を測定した。この電圧を素子に印加しながらセンサ部を素子に近づけ、表示されたフリッカ率を読み取った。
【0149】
原料:ソルミックス(登録商標)A−11は、エタノール(85.5%)、メタノール(13.4%)とイソプロパノール(1.1%)の混合物であり、日本アルコール販売(株)から入手した。
【0150】
[合成例1]
化合物(No.1−1−4)の合成
【0151】
第1工程
窒素雰囲気下、塩化イソプロピルマグネシウム−塩化リチウム錯体(1.30M;THF溶液;381ml)およびTHF(テトラヒドロフラン)(700ml)を反応器に入れて、0℃に冷却した。そこへ化合物(T−2)(140g)をゆっくりと加え、0℃を維持して1時間撹拌した。次に化合物(T−1)(113g)をゆっくりと加え、室温に戻しつつ12時間撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液へ注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル=5/1、容積比)で精製して、化合物(T−3)(188g、収率99%)を得た。
【0152】
第2工程
窒素雰囲気下、化合物(T−3)(188g)、エチレングリコール(9.42g)、PTSA(p−トルエンスルホン酸一水和物)(5.65g)、およびトルエン(1.88l)を反応器に入れて、留出してくる水を除去しつつ、3時間加熱還流を行った。反応混合物を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル=10/1、容積比)で精製して、化合物(T−4)(180g、100%)を得た。
【0153】
第3工程
化合物(T−4)(180g)、ラネーニッケル(18.8g)、およびTHF(1.88l)を反応器に入れて、水素雰囲気下で12時間撹拌した。触媒を濾別したのち、減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル=2/1、容積比)で精製した。さらにヘプタンからの再結晶により精製して、化合物(T−5)(22.2g、収率16%)を得た。
【0154】
第4工程
化合物(T−5)(22.2g)、パラジウムカーボン触媒(10%Pd/CのNXタイプ(50%湿潤品);エヌ・イー・ケムキャット製;2.22g)、およびシクロヘキサン(222ml)をオートクレーブに入れて、水素加圧下55℃に加熱し2日間撹拌した。触媒を濾別したのち、減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル=5/1、容積比)で精製して、化合物(T−6)(12.1g、54%)を得た。
【0155】
第5工程
窒素雰囲気下、水素化アルミニウムリチウム(0.860g)およびテトラヒドロフラン(THF)(60.0ml)を反応器に入れて、−10℃に冷却した。そこへ、化合物(T−6)(12.1g)のTHF(60.0ml)溶液をゆっくりと滴下し、室温に戻しつつさらに12時間攪拌した。得られた反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ込み、不溶物を濾別した後、水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を(トルエン/ヘプタン=5/1、容積比)からの再結晶により精製して、化合物(T−7)(12.0g、収率98%)を得た。
【0156】
第6工程
窒素雰囲気下、化合物(T−7)(12.0g)、水素化ナトリウム(3.25g)、およびDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)(60.0ml)を入れて、70℃に加熱した。そこへ、1−ブロモブタン(8.00ml)を滴下し、70℃を維持して8時間攪拌した。得られた反応混合物を氷水に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を水で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン/酢酸エチル=10/1、容積比)で精製した。さらに(トルエン/ヘプタン=1/1、容積比)からの再結晶により精製して、化合物(T−8)(7.30g、収率52%)を得た。
【0157】
第7工程
窒素雰囲気下、化合物(T−8)(7.30g)、ギ酸(21.9ml)、TBAB(テトラブチルアンモニウムブロミド)(1.86g)およびトルエン(73.0ml)を反応器に入れて、室温で12時間撹拌した。有機層を分離し、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン)で精製し、化合物(T−9)(6.40g、収率99%)を得た。
【0158】
第8工程
窒素雰囲気下、(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウムクロリド(9.84g)およびTHF(34.0ml)を反応器に入れて、−30℃に冷却した。そこへカリウムt−ブトキシド(3.22g)を加え、−30℃を維持して1時間撹拌した。次に化合物(T−9)(6.40g)のTHF(30.0ml)溶液をゆっくりと滴下し、滴下後室温まで昇温した。反応混合物を水へ注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水、水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン/ヘプタン=2/1、容積比)で精製して、化合物(T−10)(6.93g、収率100%)を得た。
【0159】
第9工程
窒素雰囲気下、化合物(T−10)(6.93g)、PTSA(2.18g)、およびメタノール(64.0ml)を反応器に入れて、加熱還流下で8時間撹拌した。反応混合物を水へ注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。合わせた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、食塩水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をヘプタンからの再結晶により精製して、化合物(T−11)(5.40g、収率72%)を得た。
【0160】
第10工程
窒素雰囲気下、化合物(T−11)(5.40g)、ギ酸(2.62ml)、TBAB(1.32g)、およびトルエン(55.0ml)を反応器に入れて、室温で12時間撹拌した。有機層を分離し、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮して、化合物(T−12)(4.67g、収率98%)を得た。
【0161】
第11工程
窒素雰囲気下、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド(5.26g)およびTHF(25.0ml)を反応器に入れて、−30℃に冷却した。そこへカリウムt−ブトキシド(1.65g)を加え、−30℃を維持して1時間撹拌した。次に化合物(T−12)(4.67g)のTHF(25.0ml)溶液をゆっくりと滴下し、滴下後室温まで昇温した。反応混合物を水へ注ぎ込み、水層をトルエンで抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水、水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン)で精製した。さらに(ソルミックス(登録商標)A−11/ヘプタン=1/1、容積比)からの再結晶により精製して化合物(No.1−1−4)(2.59g、収率56%)を得た。
【0162】
1H−NMR(ppm;CDCl
3):δ5.82−5.72(m,1H)、5.00−4.82(m,2H)、3.44(t,J=6.6Hz,2H)、3.11(tt,J=10.9Hz,J=4.1Hz,1H)、2.09−1.99(m,2H)、1.93−1.68(m,11H)、1.58−1.49(m,2H)、1.42−1.30(m,2H)、1.21−0.87(m,19H).
転移温度:S
B 221 I.
上限温度(T
NI)=172℃;誘電率異方性(Δε)=0.30;光学異方性(Δn)=0.084;粘度(η)=27.0mPa・s.
【0163】
[合成例2]
化合物(No.1−1−1)の合成
【0164】
第1工程
1−ブロモブタンの代わりにヨードメタンを用い、合成例1の第6工程と同様の手法により、化合物(T−13)(7.20g、70%)を得た。
【0165】
第2工程
化合物(T−13)(7.20g)を原料として用い、合成例1の第7工程と同様の手法により、化合物(T−14)(6.01g、96%)を得た。
【0166】
第3工程
化合物(T−14)(6.01g)を原料として用い、合成例1の第8工程と同様の手法により、化合物(T−15)(6.52g、99%)を得た。
【0167】
第4工程
化合物(T−15)(6.52g)を原料として用い、合成例1の第9工程と同様の手法により、化合物(T−16)(5.38g、75%)を得た。
【0168】
第5工程
化合物(T−16)(5.38g)を原料として用い、合成例1の第10工程と同様の手法により、化合物(T−17)(4.63g、99%)を得た。
【0169】
第6工程
化合物(T−17)(4.63g)を原料として用い、合成例1の第11工程と同様の手法により、化合物(1−1−1)(2.90g、63%)を得た。
【0170】
1H−NMR(ppm;CDCl
3):δ5.81−5.71(m,1H)、5.00−4.85(m,2H)、3.34(s,3H)、3.04(tt,J=10.8Hz,J=4.2Hz,1H)、2.10−2.01(m,2H)、1.90−1.68(m,11H)、1.20−0.89(m,16H).
転移温度:C 38.8 S
B 168 N 198 I.
上限温度(T
NI)=162℃;誘電率異方性(Δε)=2.77;光学異方性(Δn)=0.084;粘度(η)=36.7mPa・s.
【0171】
[合成例3]
化合物(No.1−1−2)の合成
【0172】
第1工程
1−ブロモブタンの代わりにヨードエタンを用い、合成例1の第6工程と同様の手法により、化合物(T−18)(6.98g、63%)を得た。
【0173】
第2工程
化合物(T−18)(6.98g)を原料として用い、合成例1の第7工程と同様の手法により、化合物(T−19)(5.92g、97%)を得た。
【0174】
第3工程
化合物(T−19)(5.92g)を原料として用い、合成例1の第8工程と同様の手法により、化合物(T−20)(6.40g、99%)を得た。
【0175】
第4工程
化合物(T−20)(6.40g)を原料として用い、合成例1の第9工程と同様の手法により、化合物(T−21)(4.84g、69%)を得た。
【0176】
第5工程
化合物(T−21)(4.84g)を原料として用い、合成例1の第10工程と同様の手法により、化合物(T−22)(4.23g、100%)を得た。
【0177】
第6工程
化合物(T−22)(4.23g)を原料として用い、合成例1の第11工程と同様の手法により、化合物(1−1−2)(2.65g、63%)を得た。
【0178】
1H−NMR(ppm;CDCl
3):δ5.82−5.71(m,1H)、5.00−4.82(m,2H)、3.51(q,J=7.0Hz,2H)、3.13(tt,J=10.9Hz,J=4.1Hz,1H)、2.08−2.00(m,2H)、1.92−1.68(m,11H)、1.23−1.12(m,5H)、1.12−0.89(m,14H).
転移温度:C 23.7 S
B 192 N 222 I.
上限温度(T
NI)=179℃;誘電率異方性(Δε)=1.43;光学異方性(Δn)=0.097;粘度(η)=25.7mPa・s.
【0179】
[合成例4]
化合物(No.1−1−3)の合成
【0180】
第1工程
1−ブロモブタンの代わりに1−ブロモプロパンを用い、合成例1の第6工程と同様の手法により、化合物(T−23)(4.33g、48%)を得た。
【0181】
第2工程
化合物(T−23)(4.33g)を原料として用い、合成例1の第7工程と同様の手法により、化合物(T−24)(3.69g、97%)を得た。
【0182】
第3工程
化合物(T−24)(3.69g)を原料として用い、合成例1の第8工程と同様の手法により、化合物(T−25)(3.85g、96%)を得た。
【0183】
第4工程
化合物(T−25)(3.85g)を原料として用い、合成例1の第9工程と同様の手法により、化合物(T−26)(2.86g、68%)を得た。
【0184】
第5工程
化合物(T−26)(2.86g)を原料として用い、合成例1の第10工程と同様の手法により、化合物(T−27)(2.51g、100%)を得た。
【0185】
第6工程
化合物(T−27)(2.51g)を原料として用い、合成例1の第11工程と同様の手法により、化合物(1−1−3)(1.62g、65%)を得た。
【0186】
1H−NMR(ppm;CDCl
3):δ5.82−5.72(m,1H)、4.98−4.84(m,2H)、3.40(t,J=6.9Hz,2H)、3.11(tt,J=11.0Hz,J=4.1Hz,1H)、2.08−2.00(m,2H)、1.92−1.67(m,11H)、1.62−1.52(m,2H)、1.22−0.88(m,19H).
転移温度:C 0.8 S
B 215 N 220 I.
上限温度(T
NI)=176℃;誘電率異方性(Δε)=1.43;光学異方性(Δn)=0.084;粘度(η)=26.3mPa・s.
【0187】
[合成例5]
化合物(No.1−1−44)の合成
【0188】
第1工程
窒素雰囲気下、ジブロモジフルオロメタン(5.82g)、およびTHF(25.0ml)を反応器に入れ、−10℃に冷却した。そこへトリスジエチルアミノホスフィン(14.2g)のTHF(15.0ml)溶液をゆっくりと加え、室温に戻しつつ1時間撹拌した。次に化合物(T−12)(6.45g)のTHF(30.0ml)溶液をゆっくりと加え、10時間撹拌した。反応混合物を氷水に注ぎ込み、水層をヘプタンで抽出した。一緒にした1N塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮して、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製した。さらにヘプタンからの再結晶により精製して、化合物(1−1−44)(4.73g;67%)を得た。
【0189】
1H−NMR(ppm;CDCl
3):δ3.99(ddd,J=26.1Hz,9.5Hz,3.1Hz,1H)、3.44(t,J=6.8Hz,2H)、3.10(tt,J=10.9Hz,J=4.2Hz,1H)、2.11−2.00(m,2H)、1.82−1.66(m,11H)、1.58−1.49(m,2H)、1.40−1.31(m,2H)、1.21−0.88(m,19H).
転移温度:C 33.4 S
B 204 N 212 I.
上限温度(T
NI)=164℃;誘電率異方性(Δε)=2.57;光学異方性(Δn)=0.077;粘度(η)=23.8mPa・s.
【0190】
[比較例1]
物性の比較
比較化合物として下記の化合物(S−1)、(S−2)、および(S−3)を選んだ。これらの化合物と本願化合物とを比較することによって、ターシクロヘキシル構造の末端に酸素含有基とアルケニル基の双方を併せ持つことの物性に与える効果を明確にすることが出来るからである。
【0191】
化合物(S−1)は特開平9−110734号公報に記載された方法に従って合成した。
【0192】
1H−NMR(ppm;CDCl
3):δ1.80−1.64(m,10H)、1.41−0.72(m,32H).
転移温度:S
B 220 I.
上限温度(T
NI)=190℃;誘電率異方性(Δε)=−1.00;光学異方性(Δn)=0.087;粘度(η)=29.4mPa・s.
なお、測定試料は、5重量%の化合物(S−1)と95重量%の母液晶(A)とから調製した。通常の割合(15重量%:85重量%)では、スメクチック相が析出したからである。
【0193】
化合物(S−2)は特開平9−52851号公報に記載された方法に従って合成した。
【0194】
1H−NMR(ppm;CDCl
3):δ5.81−5.72(m,1H)、5.01−4.83(m,2H)、1.99−1.66(m,11H)、1.42−1.31(m,2H)、1.24−0.74(m,24H).
転移温度:C 228 S
B 232 I.
上限温度(T
NI)=203℃;誘電率異方性(Δε)=0.900;光学異方性(Δn)=0.084;粘度(η)=58.0mPa・s.
なお、測定試料は、10重量%の化合物(S−2)と90重量%の母液晶(A)とから調製した。通常の割合(15重量%:85重量%)では、結晶が析出したからである。
【0195】
化合物(S−3)はBulletin of the Chemical Society of Japan (2000), 73(8), 1875.に記載された方法に従って合成した。
【0196】
1H−NMR(ppm;CDCl
3):δ3.34(s,3H)、3.05(tt,J=10.6Hz,J=4.4Hz,1H)、2.12−2.03(m,2H)、1.86−1.68(m,10H)、1.40−1.28(m,2H)、1.28−0.83(m,22H).
転移温度:C 205 S
B 206 I.
上限温度(T
NI)=174℃;誘電率異方性(Δε)=3.30;光学異方性(Δn)=0.057;粘度(η)=45.5mPa・s.
なお、測定試料は、5重量%の化合物(S−3)と95重量%の母液晶(A)とから調製した。通常の割合(15重量%:85重量%)では、結晶が析出したからである。
【0197】
【0198】
合成例3で得られた化合物(No.1−1−2)と比較化合物(S−1)、(S−2)、および(S−3)の物性を表1にまとめた。表1から、比較化合物ではネマチック相が発現しなかったが、(No.1−1−2)でのみ、ネマチック相が発現した。また化合物(No.1−1−2)は粘度が小さい点で優れていることが分かった。
【0199】
[比較例2]
低温相溶性の比較
化合物(No.1−1−2)と比較化合物(S−1)、(S−2)、および(S−3)の低温相溶性の比較を行った。なお低温相溶性は、「測定方法の(3)低温相溶性」に示した方法に従い、各化合物を母液晶(A)または母液晶(B)に加え、−20℃のフリーザー中に30日間保管して評価した。
【0200】
【0201】
合成例3で得られた化合物(No.1−1−2)と比較化合物(S−1)、(S−2)、および(S−3)の低温相溶性を表2にまとめた。表2から、化合物(No.1−1−2)は比較化合物と比べ低温相溶性が優れていることが分かった。一般に、ターシクロヘキシル骨格を有する化合物はネマチック相を持たないためネマチック液晶組成物との相溶性が低く、それは片方の末端にアルケニル基や酸素含有基を有しても改善出来ないが、化合物(No.1−1−2)では末端に酸素含有基とアルケニル基の双方を併せ持つことでネマチック相が発現するため、液晶組成物との相溶性が大きく改善することを示している。
【0202】
2.化合物(1)の合成
化合物(1)は、上に記載した「2.化合物(1)の合成」および合成例に従って合成する。このような化合物の例として、以下に示す化合物(No.1−1−1)〜(No.1−1−60)、(No.1−2−1)〜(No.1−2−40)、(No.1−3−1)〜(No.1−3−17)、および(No.1−4−1)〜(No.1−4−3)を挙げることができる。
【0203】
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
2.組成物の実施例
実施例により本発明の組成物を詳細に説明する。本発明は、使用例1の組成物と使用例2の組成物との混合物を含む。本発明は、使用例の組成物の少なくとも2つを混合した混合物をも含む。使用例における化合物は、下記の表3の定義に基づいて記号により表した。表3において、1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。使用例において記号の後にあるかっこ内の番号は、化合物が属する化学式を表す。(−)の記号は、化合物(2)から(15)とは異なる、その他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)である。最後に、組成物の物性値をまとめた。物性は、先に記載した方法にしたがって測定し、測定値を(外挿することなく)そのまま記載した。
【0210】
【0211】
[使用例1]
1O−HHH−V (1−1−1) 5%
2−HB−C (8−1) 5%
3−HB−C (8−1) 12%
3−HB−O2 (2−5) 15%
2−BTB−1 (2−10) 3%
3−HHB−F (6−1) 4%
3−HHB−1 (3−1) 5%
3−HHB−O1 (3−1) 5%
3−HHB−3 (3−1) 9%
3−HHEH−5 (3−13) 3%
3−HHEB−F (6−10) 4%
5−HHEB−F (6−10) 4%
2−HHB(F)−F (6−2) 7%
3−HHB(F)−F (6−2) 7%
5−HHB(F)−F (6−2) 7%
3−HHB(F,F)−F (6−3) 5%
NI=101.3℃;η=19.9mPa・s;Δn=0.098;Δε=4.6.
【0212】
[使用例2]
2O−HHH−V (1−1−2) 4%
3−HB−CL (5−2) 13%
3−HH−4 (2−1) 10%
3−HB−O2 (2−5) 8%
3−HHB(F,F)−F (6−3) 3%
3−HBB(F,F)−F (6−24) 30%
5−HBB(F,F)−F (6−24) 24%
5−HBB(F)B−2 (4−5) 3%
5−HBB(F)B−3 (4−5) 5%
NI=71.5℃;η=19.1mPa・s;Δn=0.114;Δε=5.4.
【0213】
[使用例3]
3O−HHH−V (1−1−3) 3%
7−HB(F,F)−F (5−4) 3%
3−HB−O2 (2−5) 7%
2−HHB(F)−F (6−2) 10%
3−HHB(F)−F (6−2) 10%
5−HHB(F)−F (6−2) 10%
2−HBB(F)−F (6−23) 9%
3−HBB(F)−F (6−23) 9%
5−HBB(F)−F (6−23) 16%
2−HBB−F (6−22) 4%
3−HBB−F (6−22) 4%
3−HBB(F,F)−F (6−24) 5%
5−HBB(F,F)−F (6−24) 10%
NI=86.9℃;η=24.8mPa・s;Δn=0.113;Δε=5.7.
【0214】
[使用例4]
4O−HHH−V (1−1−4) 5%
5−HB−CL (5−2) 16%
3−HH−4 (2−1) 10%
3−HH−5 (2−1) 4%
3−HHB−F (6−1) 4%
3−HHB−CL (6−1) 3%
4−HHB−CL (6−1) 4%
3−HHB(F)−F (6−2) 10%
4−HHB(F)−F (6−2) 9%
5−HHB(F)−F (6−2) 9%
7−HHB(F)−F (6−2) 8%
5−HBB(F)−F (6−23) 4%
3−HHBB(F,F)−F (7−6) 2%
4−HHBB(F,F)−F (7−6) 3%
5−HHBB(F,F)−F (7−6) 3%
3−HH2BB(F,F)−F (7−15) 3%
4−HH2BB(F,F)−F (7−15) 3%
NI=114.6℃;η=19.2mPa・s;Δn=0.089;Δε=3.7.
【0215】
[使用例5]
4O−HHH−V (1−1−4) 5%
3−HHB(F,F)−F (6−3) 9%
3−H2HB(F,F)−F (6−15) 6%
4−H2HB(F,F)−F (6−15) 8%
5−H2HB(F,F)−F (6−15) 8%
3−HBB(F,F)−F (6−24) 21%
5−HBB(F,F)−F (6−24) 20%
3−H2BB(F,F)−F (6−27) 10%
5−HHBB(F,F)−F (7−6) 5%
5−HHEBB−F (7−17) 2%
3−HH2BB(F,F)−F (7−15) 2%
1O1−HBBH−4 (4−1) 2%
1O1−HBBH−5 (4−1) 2%
NI=97.2℃;η=34.2mPa・s;Δn=0.113;Δε=8.8.
上記の組成物に化合物(Op−05)を0.25重量%の割合で添加したときのピッチは66.5μmであった。
【0216】
[使用例6]
4O−HHH−V1 (1−1−17) 5%
5−HB−CL (5−2) 3%
7−HB(F)−F (5−3) 7%
3−HH−4 (2−1) 9%
3−HH−5 (2−1) 10%
3−HB−O2 (2−5) 13%
3−HHEB−F (6−10) 8%
5−HHEB−F (6−10) 3%
3−HHEB(F,F)−F (6−12) 10%
4−HHEB(F,F)−F (6−12) 5%
3−GHB(F,F)−F (6−109) 5%
4−GHB(F,F)−F (6−109) 6%
5−GHB(F,F)−F (6−109) 7%
2−HHB(F,F)−F (6−3) 4%
3−HHB(F,F)−F (6−3) 5%
【0217】
[使用例7]
4O−HHH−V1 (1−1−17) 5%
1V2−BEB(F,F)−C (8−15) 6%
3−HB−C (8−1) 16%
2−BTB−1 (2−10) 10%
5−HH−VFF (2−1) 30%
3−HHB−1 (3−1) 4%
VFF−HHB−1 (3−1) 8%
VFF2−HHB−1 (3−1) 8%
3−H2BTB−2 (3−17) 5%
3−H2BTB−3 (3−17) 4%
3−H2BTB−4 (3−17) 4%
【0218】
[使用例8]
4O−HHH−2V (1−1−24) 4%
3−HB−CL (5−2) 6%
3−HHB−OCF3 (6−1) 5%
3−H2HB−OCF3 (6−13) 5%
5−H4HB−OCF3 (6−19) 15%
V−HHB(F)−F (6−2) 5%
3−HHB(F)−F (6−2) 5%
5−HHB(F)−F (6−2) 5%
3−H4HB(F,F)−CF3 (6−21) 8%
5−H4HB(F,F)−CF3 (6−21) 10%
5−H2HB(F,F)−F (6−15) 5%
5−H4HB(F,F)−F (6−21) 7%
2−H2BB(F)−F (6−26) 5%
3−H2BB(F)−F (6−26) 10%
3−HBEB(F,F)−F (6−39) 5%
【0219】
[使用例9]
4O−HHH−2V (1−1−24) 4%
7−HB(F,F)−F (5−4) 3%
3−HB−O2 (2−5) 7%
2−HHB(F)−F (6−2) 10%
3−HHB(F)−F (6−2) 10%
5−HHB(F)−F (6−2) 10%
2−HBB(F)−F (6−23) 9%
3−HBB(F)−F (6−23) 9%
5−HBB(F)−F (6−23) 15%
2−HBB−F (6−22) 4%
3−HBB−F (6−22) 2%
5−HBB−F (6−22) 2%
3−HBB(F,F)−F (6−24) 5%
5−HBB(F,F)−F (6−24) 10%
【0220】
[使用例10]
4O−HHH−2V1 (1−1−28) 5%
3−HH−V (2−1) 7%
3−HH−V1 (2−1) 3%
5−HB−CL (5−2) 9%
3−HHB(F,F)−F (6−3) 8%
3−HBB(F,F)−F (6−24) 20%
5−HBB(F,F)−F (6−24) 15%
3−HHEB(F,F)−F (6−12) 10%
4−HHEB(F,F)−F (6−12) 3%
5−HHEB(F,F)−F (6−12) 3%
2−HBEB(F,F)−F (6−39) 3%
3−HBEB(F,F)−F (6−39) 5%
5−HBEB(F,F)−F (6−39) 3%
3−HHBB(F,F)−F (7−6) 6%
【0221】
[使用例11]
4O−HHH−2V1 (1−1−28) 5%
3−HHB(F,F)−F (6−3) 9%
3−H2HB(F,F)−F (6−15) 8%
4−H2HB(F,F)−F (6−15) 8%
5−H2HB(F,F)−F (6−15) 8%
3−HBB(F,F)−F (6−24) 18%
5−HBB(F,F)−F (6−24) 20%
3−H2BB(F,F)−F (6−27) 10%
5−HHBB(F,F)−F (7−6) 3%
5−HHEBB−F (7−17) 2%
3−HH2BB(F,F)−F (7−15) 3%
1O1−HBBH−4 (4−1) 4%
1O1−HBBH−5 (4−1) 2%
【0222】
[使用例12]
4O−HHHH−2V (1−2−11) 3%
5−HB−F (5−2) 12%
6−HB−F (5−2) 9%
7−HB−F (5−2) 7%
2−HHB−OCF3 (6−1) 7%
3−HHB−OCF3 (6−1) 7%
4−HHB−OCF3 (6−1) 7%
5−HHB−OCF3 (6−1) 5%
3−HH2B−OCF3 (6−4) 4%
5−HH2B−OCF3 (6−4) 4%
3−HHB(F,F)−OCF2H (6−3) 4%
3−HHB(F,F)−OCF3 (6−3) 5%
3−HH2B(F)−F (6−5) 3%
3−HBB(F)−F (6−23) 10%
5−HBB(F)−F (6−23) 10%
5−HBBH−3 (4−1) 3%
【0223】
[使用例13]
4O−HHHVH−V (1−2−24) 3%
5−HB−CL (5−2) 17%
7−HB(F,F)−F (5−4) 3%
3−HH−4 (2−1) 10%
3−HH−5 (2−1) 5%
3−HB−O2 (2−5) 15%
3−HHB−1 (3−1) 5%
3−HHB−O1 (3−1) 3%
V−HHB−1 (3−1) 2%
2−HHB(F)−F (6−2) 7%
3−HHB(F)−F (6−2) 7%
5−HHB(F)−F (6−2) 7%
3−HHB(F,F)−F (6−3) 6%
3−H2HB(F,F)−F (6−15) 5%
4−H2HB(F,F)−F (6−15) 5%
【0224】
4O−HHH−VFF (1−1−44) 3%
3−HB−CL (5−2) 10%
3−HH−4 (2−1) 12%
3−HB−O2 (2−5) 10%
3−HHB(F,F)−F (6−3) 5%
3−HBB(F,F)−F (6−24) 27%
5−HBB(F,F)−F (6−24) 25%
5−HBB(F)B−2 (4−5) 4%
5−HBB(F)B−3 (4−5) 4%
NI=72.1℃;η=18.6mPa・s;Δn=0.112;Δε=5.3.