(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
100℃の温水中で10秒間浸漬したときに収縮量が最大となる主収縮方向の熱収縮率が50%以上である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の熱収縮性積層多孔フィルム。
引張速度100mm/分の条件下で測定される前記主収縮方向の層間剥離強度0.8N/15mm以上であり、かつ、粘着力が4.01N/10mmの粘着テープを貼り付けた後、前記粘着テープを剥がした際に層間剥離がない、請求項6又は請求項7に記載の熱収縮性積層多孔フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明するが、本発明は、以下の実施の形態によって何ら限定されるものではない。なお、本明細書において、「主成分とする」とは、主成分として含有される樹脂が有する作用及び効果を妨げない範囲で、他の成分を含むことを許容する意味である。また、「主成分とする」とは、具体的な含有率を制限するものではないが、構成成分全体に対する含有率が50質量%以上を占める成分であることが好ましく、70質量%以上を占める成分であることがより好ましく、80質量%以上を占める成分であることが更に好ましく、また100質量%以下の範囲を占める成分である。
【0025】
<熱収縮性積層多孔フィルム>
図1は、本実施の形態に係る熱収縮性積層多孔フィルムの一例を示す断面模式図である。
図1に示すように、熱収縮性積層多孔フィルム(熱収縮性積層ラベル)1は、少なくとも一方向に延伸されてなり、被覆対象となる各種物品を熱収縮によって被覆するものである。熱収縮性積層多孔フィルム1は、スチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素の共重合体樹脂(A)の少なくとも1種を主成分とする一対の表裏層11と、この一対の表裏層11の間に設けられ、ポリオレフィン系樹脂(B)及び充填剤(C)を含有する樹脂組成物(B)を主成分とする多孔層12とを備える。熱収縮性積層多孔フィルム1は、表裏層111、多孔層12及び表裏層112がこの順に積層された2種3層の構成を有する。なお、表裏層111,112は、同一の共重合体樹脂(A)を主成分として含むものでもよく、異なる共重合体樹脂(A)を主成分として含有していてもよい。また、表裏層111及び表裏層112は、同一の厚さを有していてもよく、異なる厚さを有していてもよい。
【0026】
図2は、本実施の形態に係る熱収縮性積層多孔フィルムの他の例を示す図である。
図2に示す熱収縮性積層多孔フィルム2においては、表層21と、裏層22と、表層21と裏層22との間に設けられた中間層23とを備える。表層21は、第1表層211、表裏層112及び第2表層212がこの順に積層されている。裏層22は、第1裏層221、表裏層111及び第2裏層222がこの順に積層されている。中間層23は、第1中間層231、多孔層12及び第2中間層232がこの順に積層されている。すなわち、表裏層112が表層21の一部として設けられ、表裏層111が裏層22の一部として設けられ、多孔層12が中間層23の一部として設けられている。このように、本実施の形態において、表裏層111,112は、必ずしも熱収縮性積層多孔フィルムの表面又は裏面に設けられている必要はなく、熱収縮性積層多孔フィルム1の多孔層12に対して表面側又は裏面側に設けられていればよい。なお、第1表層211、第2表層212、第1裏層221、第2裏層222、第1中間層231、及び第2中間層232は適宜省略可能である。
【0027】
第1表層211,第2表層212は、例えば、表裏層111と同一の共重合体樹脂(A)を含有してもよく、異なる共重合体樹脂(A)を含有していてもよい。また、第1表層211及び第2表層212は、同一の厚さを有していてもよく、異なる厚さを有していてもよい。第1裏層221,第2裏層222は、例えば、表裏層111と同一の共重合体樹脂(A)を含有してもよく、異なる共重合体樹脂(A)を含有していてもよい。また、第1裏層221及び第2裏層222は、同一の厚さを有していてもよく、異なる厚さを有していてもよい。第1中間層231及び第2中間層232は、例えば、多孔層12と同一の樹脂組成物を含有してもよく、異なる樹脂組成物を含有していてもよい。また、第1中間層231及び第2中間層232は、同一の厚さを有していてもよく、異なる厚さを有していてもよい。
【0028】
図3は、本実施の形態に係る熱収縮性積層多孔フィルムの他の例を示す図である。
図3に示す熱収縮性積層多孔フィルム3は、
図1に示した熱収縮性フィルム1の構成に加えて、表裏層111と多孔層12との間に設けられ、接着性樹脂を主成分とする接着層131と、表裏層112と多孔層12との間に設けられ、接着性樹脂を主成分とする接着層132とを備える。熱収縮性積層多孔フィルム3は、表裏層111、接着層131、多孔層12、接着層132及び表裏層112がこの順に積層された3種5層の構成を有する。このような接着層131を設けることにより、表裏層111と多孔層12との間の層間剥離などが起こりにくくなる。また、接着層132を設けることにより、表裏層112と多孔層12との間の層間剥離などが起こりにくくなる。なお、接着層131,132は、適宜省略可能である。また、上述した熱収縮性積層多孔フィルム1〜3においては、必要に応じて、各種機能を付与するために、さらにその他の層を積層してもよい。なお、接着層131,132は、同一の接着性樹脂を主成分として含むものでもよく、異なる接着性樹脂を主成分として含んでいてもよい。また、接着層131,132は、同一の厚さを有していてもよく、異なる厚さを有していてもよい。
【0029】
(熱収縮性積層多孔フィルムの厚さ)
熱収縮性積層多孔フィルムの全体の厚さについては、特に制限はない。熱収縮性積層多孔フィルムの全体の厚さは、収縮特性及び易引裂性の観点から、300μm以下が好ましく、250μm以下がより好ましく、200μm以下が更に好ましい。また、熱収縮性積層多孔フィルムの全体の厚さは、熱収縮性積層多孔フィルムのハンドリング性、耐衝撃性の観点から、50μm以上が好ましい。
【0030】
熱収縮性積層多孔フィルムの各層の積層比は、特に制限されるものではない。熱収縮析積層フィルムの各層の積層比は、収縮特性、多孔性、耐破断性、耐衝撃性及び易引裂性の観点から、熱収縮性積層多孔フィルム全体の厚さに対する多孔層の厚さの割合が、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、また90%以下であることが好ましく、85%以下であることがより好ましい。また、熱収縮析積層フィルムの各層の積層比は、収縮特性、多孔性、耐破断性、耐衝撃性及び易引裂性の観点から、熱熱収縮性積層多孔フィルム全体の厚さに対する表裏層の厚さの割合が10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、また50%以下が好ましく、40%以下がより好ましい。
【0031】
また、熱収縮性積層多孔フィルムが接着層を備える場合には、接着層の厚さは、表裏層
と多孔層との層間剥離を効率良く防ぐ観点から、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましく、また6μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。
【0032】
(空孔率)
空孔率は、熱収縮性積層多孔フィルム中の空間部分の割合を示す数値である。空孔率は、熱収縮性積層多孔フィルムの実質量W1を測定し、樹脂組成物の密度及び厚さから空孔率0%の場合の質量W0を計算し、計算した値から下記式(1)に基づき算出される。
空孔率={(W0−W1)/W0}×100 (%)・・・式(1)
【0033】
熱収縮性積層多孔フィルム中の空孔は、多孔層に含まれるポリオレフィン樹脂及び充填剤によって形成される。熱収縮性積層多孔フィルム中の空孔率としては、熱収縮性積層多孔フィルムの耐衝撃性及び易開封性の観点から、30%以上が好ましく、32.5%以上がより好ましく、35%以上が更に好ましく、また、70%以下が好ましく、67.5%以下がより好ましく、65%以上が更に好ましい。
【0034】
(収縮率)
本実施の形態に係る熱収縮性積層多孔フィルムは、多種多様な形状の物品を被覆対象とした場合であっても、熱収縮性積層多孔フィルムの熱収縮率が特定範囲を満たすので、きれいな収縮仕上がり性を実現できる。
【0035】
熱収縮性積層多孔フィルムは、多様な形状の特に太い部分と細い部分の差が大きい異形物品への密着性、及び収縮した際の物品の変形を抑制する観点から、100℃温水中で10秒間浸漬したときに熱収縮性積層多孔フィルムの収縮量が最大となる主収縮方向の熱収縮率が50%以上であることが好ましく、52%以上であることがより好ましく、54%以上であることが特に好ましく、また主収縮方向への熱収縮率の上限に特に制限はなく、80%以下が好ましい。また、熱収縮性積層多孔フィルムは、多様な形状の特に太い部分と細い部分の差が大きい異形物品への密着性、及び収縮した際の物品の変形を抑制する観点から、100℃温水中で10秒間浸漬したときに主収縮方向に直交する直交方向の熱収縮率が20%以上が好ましく、22%以上であることが好ましく、24%以上であることがより好ましく、また直交方向の熱収縮率の上限に特に制限はなく、ラベルの寸法変化によるハンドリング性の観点から、50%以下が好ましい。なお、熱収縮性積層多孔フィルムの熱収縮率は、延伸温度及び延伸倍率を調整することにより、上記範囲内に調整することができる。
【0036】
(引裂強度)
熱収縮性積層多孔フィルムの引裂強度は、JIS−K7128に準拠して試験片を作製し、万能試験機で試験片両端を把持し、雰囲気温度23℃、引張速度200mm/分の条件下で測定される。熱収縮性積層多孔フィルムの引裂強度は、物品を被覆した後に熱収縮性積層多孔フィルムを開封する際の易引裂き性が得られる観点、及びフィルム成型加工時などで破断するなどの不具合が生じにくくする観点から、主収縮方向及び直交方向の引裂強度(引裂強度=引張破壊強度/厚さ)が、それぞれ10N/mm以上であることが好ましく、20N/mm以上であることがより好ましく、30N/mm以上であることが更に好ましく、また150N/mm以下であることが好ましい。
【0037】
(引張破断伸度)
熱収縮性積層多孔フィルムの破断伸度は、雰囲気温度23℃、引張速度100mm/分の条件下で測定される。熱収縮性積層多孔フィルムは、直交方向の引張破断伸度が、印刷及び製袋などの工程時に熱収縮性積層多孔フィルムが破断するなどの不具合が生じにくくなる観点から、100%以上であることが好ましく、120%以上であることがより好ましく、150%以上であることが更に好ましく、また800%以下であることが好ましい。熱収縮性積層多孔フィルムの引張破断伸度は、各層の配合の調整、製膜工程での押出条件の調整、延伸条件の調整、熱収縮率の調整、積層比の調整などを適宜行うことにより上記範囲とすることができる。
【0038】
(層間剥離強度)
熱収縮性積層多孔フィルムの層間剥離強度は、特に制限されない。熱収縮性積層多孔フィルムの層間剥離強度は、使用時及び熱収縮時にシール部分及びフィルム層間での剥離を効率良く防ぐ観点から、0.8N/15mm幅以上であることが好ましい。
【0039】
(層間剥離性)
熱収縮性積層多孔フィルムにおいては、直交方向300mm、主収縮方向225mmの試験片を作製し、粘着テープとしてのセロテープ(登録商標)(型番:「LP−18」、ニチバン社製、粘着力:4.01N/10mm、引張強さ42.1N/10mm、幅18mm)を貼付けた後、セロテープ(登録商標)を剥がした際の層間剥離状態を確認できる。層間剥離がなければ、フィルム巻末にテープを貼り付けて剥がす際及びフィルムを開封する際の層間剥離を効率良く防止できる。
【0040】
<表裏層>
(共重合体樹脂(A))
表裏層のスチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体樹脂(A)としては、例えば、スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とのランダム共重合体及びブロック共重合体などが挙げられる。これらの中でも、共重合体樹脂(A)としては、スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とのブロック共重合体が好ましい。ブロック共重合体としては、ブロック毎の樹脂が単一の構成単位になっているピュアブロック、共重合成分が混合してブロックを形成しているランダムブロック、及び共重合成分濃度をテーパーになったテーパードブロックなどが含まれる。これらの中でも、ブロック共重合体としては、熱収縮性を付与するための粘弾性特性を満たす観点から、ブロック部分がランダムブロック及びテーパードブロックの少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0041】
スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とのブロック共重合体におけるスチレン系炭化水素としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン及びα−メチルスチレンなどが挙げられる。スチレン系炭化水素ブロック部分は、これらの単独重合体であってもよく、これらの共重合体であってもよく、スチレン系炭化水素以外の共重合可能なモノマーをブロック内に含んでよい。
【0042】
共役ジエン系炭化水素としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられる。共役ジエン系炭化水素ブロック部分は、これらの単独重合体であってもよく、これらの共重合体であってもよく、共役ジエン系炭化水素以外の共重合可能なモノマーをブロック内に含んでいてもよい。
【0043】
スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体は、表裏層全体の質量に対して50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。全体の質量に対する共重合体の含有率が50質量%以上であれば、におけるスチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体の効果である収縮仕上がり性を十分発揮させることができる。
【0044】
スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とのブロック共重合体としては、スチレン系炭化水素がスチレンであり、共役ジエン系炭化水素がブタジエンであるスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(以下、「SBS」ともいう)が好ましい。SBSはスチレン/ブタジエンの質量比が「95質量%以上60質量%以下」/「5質量%以上40質量%以下」であることが好ましく、「90質量%以上60質量%以下」/「10質量%以上40質量%以下」であることがより好ましい。SBSのメルトフローレート(MFR)測定値(測定条件:温度200℃、荷重49N)は、2g/10分以上が好ましく、3g/10分以上がより好ましく、また15g/10分以下が好ましく、10g/10分以下がより好ましい。
【0045】
上記スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体としては、例えば、アサフレックスシリーズ(旭化成ケミカルズ社製)、クリアレンシリーズ(電気化学工業社製)、Kレジン(シェブロンフィリップス社製)、スタイロラックス(BASF社製)、及びフィナクリア(アトフィナ社製)などが挙げられる。
【0046】
他のブロック共重合体としては、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(以下、「SIBS」ともいう)が好ましい。SIBSにおいて、スチレン/イソプレン/ブタジエンの質量比は、「60質量%以上90質量%以下」/「10質量%以上40質量%以下」/「5質量%以上30質量%以下」であることが好ましく、「60質量%以上80質量%以下」/「10質量%以上25質量%以下」/「5質量%以上20質量%以下」であることがより好ましい。また、SIBSのメルトフローレート(MFR)測定値(測定条件:温度200℃、荷重49N)は、2g/10分以上が好ましく、3g/10分以上がより好ましく、また15g/10分以下が好ましく、10g/10分以下がより好ましい。ブタジエン含有量及びイソプレン含有量が上記範囲内であれば、押出機内部などで加熱された際のブタジエンの架橋反応を抑制し、ゲル状物の発生を抑えられると共に、原料単価の観点からも好ましい。上記スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体としては、例えば、アサフレックスIシリーズ(旭化成ケミカルズ社製)などの市販を用いてもよい。
【0047】
スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とのブロック共重合体は、2種類以上を混合したものであってもよい。すなわち、個々のスチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素とのブロック共重合体のみでは以下に示す熱収縮性積層多孔フィルムの所定の粘弾性特性を満たしていなくても、混合後に熱収縮性積層多孔フィルムの所定の粘弾性特性を満たすものを混合して用いることもできる。
【0048】
スチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素共重合体の0℃における貯蔵弾性率(E’(0))としては、5.0×10
8Pa以上が好ましく、7.0×10
8Pa以上がより好ましく、また1.0×10
9Pa以下が好ましい。スチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素共重合体の50℃における貯蔵弾性率(E’(50))としては、1.5×10
8Pa以上が好ましく、1.5×10
8Pa以上がより好ましく、また2.0×10
9Pa以下が好ましい。スチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素共重合体の0℃及び50℃における貯蔵弾性率(E’(0)及び(50))を上記範囲に調整するためには、例えば、スチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素共重合体の損失弾性率(E”)のピークを−80℃以上0℃以下、好ましくは−80℃以上−20℃以下の範囲に存在させてもよく、またブタジエンブロックとスチレンブロックとの分子量の差を調整してもよい。また、スチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素共重合体の90℃における貯蔵弾性率(E’(90))は、1.0×10
7Pa以上が好ましく、5.0×10
7Pa以上がより好ましく、また2.0×10
8Pa以下が好ましい。スチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素共重合体の90℃における貯蔵弾性率を1.0×10
7Pa以上とするためには、SBSなどのスチレンブロックをピュアブロックに近い状態にすることによって調整できる。このように、スチレン系炭化水素−共役ジエン系炭化水素共重合体のブタジエン部分のブロック構造をランダムブロックとし、スチレン部分のブロック構造をピュアブロックに近い状態にすることにより、0℃、50℃、及び90℃における貯蔵弾性率(E’)を所定の範囲に調整することができる。
【0049】
(その他の添加剤)
表裏層には、本発明の効果を奏する範囲であれば、成形加工性、生産性及び熱収縮性積層多孔フィルムの諸物性を改良及び調整するために、シリカ、タルク、カオリン等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤などの添加剤を適宜添加してもよい。
【0050】
<多孔層>
(ポリオレフィン系樹脂(B))
ポリオレフィン系樹脂(B)は、プロピレン、エチレンなどのオレフィン炭化水素を単量体成分として含む重合体である。ポリオレフィン系樹脂(B)としては、オレフィン炭化水素のホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。コポリマーである場合、オレフィン炭化水素の共重合割合は50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
【0051】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂が好ましい。ポリエチレン系樹脂は、ポリエチレンを単量体成分として含む重合体であり、ホモポリマーであってもよく、コポリマーであってもよい。ポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及びエチレンを主成分とする共重合体などが挙げられる。エチレンを主成分とする共重合体としては、コポリマーである場合ランダムコポリマーであってもよく、ブロックコポリマーであってもよい。また、コポリマーである場合、共重合成分に限定はなく、例えば、プロピレン、ブテン、ヘキセンなどが挙げられる。ポリエチレン系樹脂がコポリマーである場合、エチレンの共重合割合は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。これらの中でもポリエチレン系樹脂としては、熱収縮性積層多孔フィルムの熱収縮性及び易開封性の観点から、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
【0052】
ポリオレフィン系樹脂を重合する際に用いる触媒にも特に制限はなく、チーグラー・ナッタ系の触媒やメタロセン系の触媒などを使用することができる。また、立体規則性にも特に制限はなく、アイソタクチック及びシンジオタクチックを使用することができる。また、用いるポリオレフィン系樹脂は、いかなる結晶性や融点を有するものであってもよく、得られる多孔性フィルムの物性や用途に応じて、異なる性質を有する2種のポリオレフィン系樹脂を特定範囲で配合したポリオレフィン系樹脂組成物を用いてもよい。
【0053】
ポリオレフィン系樹脂のMFR(JIS K6922、温度190℃、荷重2.16N)は、などの他層との溶融粘度を調整することができ、共押出時に粘度差によるシート外観不良などが起こりにくくなる観点から、0.5g/10分以上であることが好ましく、1.0g/10分以上であることがより好ましく、また15g/10分以下であることが好ましく、10g/10分以下であることがより好ましい。
【0054】
ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、1.0以上10.0以下であることが好ましく、2.0以上6.0以下が更に好ましい。なお、本実施の形態において、Mw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定されたMw及びMnから求められる。
【0055】
ポリオレフィン系樹脂の融点は、フィルムの機械的強度及び耐熱性のバランスが良く、また延伸性の低下などが起こらなくなる観点から、100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、120℃以上が更に好ましく、また150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、130℃以下が更に好ましい。なお、本実施の形態において、融点は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、JIS K7121に準拠して昇温速度10℃/分で測定したものである。
【0056】
(充填剤)
充填剤としては、無機粒子などの無機系充填剤、有機粒子などの有機系充填剤及びその他一般に知られる各種充填剤を用いることができる。無機系充填剤としては、例えば、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、シリカ及びタルクなどが挙げられる。これらの中では、硫酸バリウムが好ましい。炭酸カルシウムなどの水中懸濁液のPHが9を越える高い塩基性化合物の粒子を使用して製造した多孔性フィルムは、肌に刺激を与えるため人体と接することが多い用途では使用が制限されることから、PH6以上PH9程度の中性化合物である硫酸バリウムなどを用いることが好ましい。これらの充填剤は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0057】
また、有機系充填剤としては、例えば、架橋剤を用いて高分子化合物を架橋した粒子、例えば、ポリメトキシシラン系化合物の架橋粒子、ポリスチレン系化合物の架橋粒子、アクリル系化合物の架橋粒子、ポリウレタン系化合物の架橋粒子、ポリエステル系化合物の架橋粒子、フッソ系化合物の架橋粒子、及びこれらの混合物などを挙げることができる。
【0058】
熱収縮性積層多孔フィルムにおいては、ポリオレフィン系樹脂と充填剤とをブレンドして溶融混練した後、延伸してポリオレフィン系樹脂と充填剤との界面を剥離、開孔することで空孔を形成することができる。そのため、ポリオレフィン系樹脂に対する充填剤の分散性が良好であると均一な空孔を形成することができる。充填剤は空孔を形成するのに適した充填剤であれば無機系及び有機系いずれを使用してもよい。充填剤として有機系充填剤を使用する場合、ポリオレフィン系樹脂と海島構造を有し、かつ有機系充填剤の粒径を0.1μm以上10μm以下の範囲で調整することが好ましい。また、有機系充填剤を用いた際にはモルフォロジー制御が必要となるために、多孔性の容易化の観点から無機充填剤が好ましい。
【0059】
充填剤の平均粒径は、特に限定されるものではない。充填剤の平均粒径としては、充填剤の分散性が良好となり、得られる多孔性フィルム中で粒子が凝集することで生成する異物及びピンホールの発生が抑制される観点から、0.1μm以上10μm以下が好ましい。また、平均粒径が10μ以下であれば、粒子の分散性が良好となり、充填剤の凝集を防ぐことができると共に、均一な空孔が形成されて延伸性の向上及びピンホール発生を防ぐことができる。また平均粒径が0.1μm以上であれば、粒子の分散性は良好となると共に、空孔を形成する際、起点となる界面が大きくなるので、十分な空孔を得ることができる。引張伸度などの機械物性低下を抑制するためには、均一な空孔を形成する必要があり、充填剤の形状は特に限定されるものではないが、米粒状粒子より扁平状粒子を用いる方が好ましい。なお、本実施の形態において、平均粒径とは、走査型電子顕微鏡(HITACHIS−4700)によって粒子を観察し、粒子の長径及び短径の平均値を粒子径とし、サンプリング粒子数を100としたときの平均値をいう。
【0060】
多孔層における充填剤の配合割合は、十分な透気性が得られる観点、及びポリオレフィン系樹脂と充填剤とを混合した際に起こる充填剤の凝集を低減して分散不良を抑制する観点から、40質量%以上70質量%以下であることが好ましく、42.5質量%以上67.5質量%以下であることがより好ましく、45質量%以上65質量%以下であることが更に好ましい。
【0061】
(その他の添加剤)
多孔層には、上記各成分のほか、公知の添加剤、例えば酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、滑り剤、ブロッキング防止剤、粒子分散剤、ポリテルペン樹脂、石油樹脂及び充填剤などを製造工程及びフィルム特性を低下させない程度に含有させてもよい。
【0062】
<接着性樹脂>
接着層の主成分である接着性樹脂としては、と多孔層との間の層間接着性を向上させるものであれば特に制限されない。接着性樹脂としては、の主成分である共重合体樹脂(A)に対して親和性を有する部位と、多孔層のポリオレフィン系樹脂(B)と親和性を有する部位とを兼ね備えた接着性樹脂が好適に用いられる。
【0063】
ここで、「共重合体樹脂(A)に対して親和性を有する」とは、共重合体樹脂(A)と親和性のある連鎖を有することを意味する。このような親和性のある連鎖としては、スチレン系炭化水素基を有する樹脂、又は直鎖若しくは分岐した飽和炭化水素部位を主鎖、ブロック鎖及びグラフト鎖などとして有するものが挙げられる。
【0064】
また、「ポリオレフィン系樹脂(B)と親和性を有する部位」とは、ポリオレフィン系樹脂(B)と親和性のある連鎖を有することを意味する。このような親和性のある連鎖とは、直鎖又は分岐した飽和炭化水素部位を主鎖、ブロック鎖及びグラフト鎖などとして有するものが挙げられる。
【0065】
また、接着性樹脂としては、軟質ポリオレフィン系樹脂、スチレン系炭化水素と共役ジエン炭化水素との共重合体、及びその水素添加樹脂などが好ましい。軟質ポリオレフィン系樹脂としては、軟質な直鎖状低密度ポリエチレン、低結晶性ポリプロピレン系樹脂及びエチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体としては、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体などが挙げられる。
【0066】
上述した共重合体樹脂(A)と親和性の高い官能基を有し、かつ、ポリオレフィン系樹脂(B)と親和性の高い官能基を有する樹脂の市販品としては、スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体、及びその水素添加樹脂として「ダイナロン(登録商標)」(JSR社製)、「ハイブラー(登録商標)」(クラレ社製)、「タフテック(登録商標)H」(旭化成ケミカルズ社製)、「クレイトン(登録商標)」(クレイトンポリマージャパン社製)、「セプトン(登録商標)」(クラレ社製)、「タフプレン(登録商標)」(旭化成ケミカルズ社製)、酸変性ポリオレフィン系樹脂として「アドマー(登録商標)」(三井化学社製)、「モディック(登録商標)」(三菱化学社製)、「モディパー(登録商標)」(日油社製)、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体として「ボンダイン(登録商標)」(アルケマ社製)、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メタクリル酸グリシジル三元共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジル三元共重合体として「ボンドファースト(登録商標)」(住友化学社製)、酸変性スチレン系熱可塑性樹脂として、「タフテック(登録商標)M」(旭化成ケミカルズ社製)、「エポフレンド(登録商標)」(ダイセル社製)などが挙げられる。
【0067】
(その他の添加剤)
接着層には、上記各成分のほか、公知の添加剤、例えば酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、滑り剤、ブロッキング防止剤、粒子分散剤、ポリテルペン樹脂、石油樹脂及び充填剤などを製造工程及びフィルム特性を低下させない程度に含有させてもよい。
【0068】
<熱収縮性積層多孔フィルムの製造方法>
熱収縮性積層多孔フィルムは、公知の積層フィルムの製造方法によって製造できる。フィルムの形態としては、平面状、チューブ状のいずれであってもよいが、生産性(原反フィルムの幅方向に製品として数丁取りが可能)及び外面に印刷が可能な観点から、平面状が好ましい。平面状のフィルムの製造方法としては、例えば、複数の押出機を用いて樹脂を溶融し、Tダイから共押出し、チルドロールで冷却固化し、縦方向にロール延伸し、横方向にテンター延伸し、アニールし、冷却し、巻取機にて巻き取ることによりフィルムを得る方法が挙げられる。また、チューブラー法により製造したフィルムを切り開いて平面状とする方法も適用できる。
【0069】
樹脂の押出温度としては、200℃以上240℃以下が好ましく、210℃以上230℃以下がより好ましい。樹脂の押出時には、押出温度及びせん断の状態を最適化し、材料の分散状態を制御することも、熱収縮性積層多孔フィルムの種々の物理的特性及び機械的特性を所望の値にするのに有効である。
【0070】
オーバーラップ用など、二方向に収縮させる用途では、フィルム流れ方向である縦方向(MD)の延伸倍率が、1.5倍以上10倍以下が好ましく、2倍以上6倍以下がより好ましい。また、フィルム流れ方向に直交する横方向(TD)の延伸倍率は、2倍以上10倍以下が好ましく、3倍以上6倍以下がより好ましい。なお、1倍とは、延伸していない場合を指す。
【0071】
延伸温度は、80℃以上が好ましく、85℃以上がより好ましく、90℃以上が更に好ましく、また110℃未満が好ましく、105℃未満がより好ましく、100℃未満が更に好ましい。
【0072】
熱処理温度は、55℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、65℃以上が更に好ましく、また85℃未満が好ましく、80℃未満がより好ましく、75℃未満が更に好ましい。
【0073】
熱収縮性積層多孔フィルムの製造工程の熱処理時には、フィルム特性を低下させない範囲で弛緩工程を含んでも良い。弛緩率は、経時での自然収縮を抑制する観点から、最大延伸フィルム幅に対して、下限の制限は特になく、上限は10%以下であることが好ましい。
【0074】
なお、熱収縮性積層多孔フィルムにおいては、、多孔層及び接着層の少なくとも1層に、トリミングロスなどから発生する熱収縮性積層多孔フィルムを再生するフィルム再生樹脂を含有させてもよい。フィルム再生樹脂は、多孔層に配合することが好ましい。フィルム再生樹脂の配合量は、製造工程及びフィルム特性を低下させない程度に含有させてもよい。
【0075】
(その他の加工)
なお、熱収縮性積層多孔フィルムにおいては、必要に応じて、コロナ処理、印刷、コーティング、蒸着などの表面処理及び表面加工、更には、各種溶剤及びヒートシールによる製袋加工及びミシン目加工などを施すことができる。
【0076】
<成形品、ラベル>
熱収縮性積層多孔フィルムは、その用途が特に制限されるものではないが、熱収縮性積層多孔フィルムを基材として、必要に応じて印刷層、蒸着層及びその他の機能層を積層して形成することにより、トレー、ブリスター容器、深絞り容器、梱包容器などの様々な成形品として用いることができる。
【0077】
また、熱収縮性積層多孔フィルムを輸送物品用の熱収縮性ラベルの基材として用いることができる。この場合、物品が、中心のくびれた円柱、角のある四角柱、五角柱、六角柱などの複雑な形状であっても、当該複雑な形状に密着可能であり、シワ及びアバタのない美麗に装着されたラベルとなる。上記成形品は、通常の成形法を用いることにより作製することができる。
【0078】
熱収縮性積層多孔フィルムは、高温に加熱すると変形を生じるようなプラスチック成形品に用いられる熱収縮性ラベル素材のほか、熱膨張率及び吸水性などが上記熱収縮性フィルムとは極めて異なる材質、例えば金属、磁器、ガラス、紙、ポリメタクリル酸エステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂から選ばれる少なくとも1種を構成素材として用いた包装体の熱収縮性ラベル素材としても好適に利用できる。
【0079】
プラスチック包装体を構成する材質としては、上記樹脂の他、ゴム変性耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−ブチルアクリレート共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、(メタ)アクリル酸−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂などを挙げることができる。これらのプラスチック包装体は2種以上の樹脂類の混合物でも、積層体であってもよい。
【0080】
以上説明したように、上記実施の形態によれば、スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体樹脂の少なくとも1種を主成分とする一対の間に、ポリオレフィン系樹脂及び充填剤を含む樹脂組成物を主成分とする多孔層を設けて延伸されるので、に十分な収縮特性が付与されると共に、多孔層に易開封性及び緩衝性の発現に必要な空孔が形成されて多孔化する。これにより、上記実施の形態に係る熱収縮性積層多孔フィルムは、熱収縮により被覆対象となる物品との間の間隙を低減でき、しかも、熱収縮により被覆した物品を開封する際の易開封性に優れたものとなる。そして、熱収縮性積層多孔フィルムは、枯渇性資源使用の削減及び輸送効率向上のための近年の多岐形状にわたる物品に適用した際に良好な収縮仕上がり性を備えることも可能となるので、被覆対象となる多岐形状にわたる物品に熱収縮性フィルムを被覆して被覆物品とした後、被覆物品を開封する際の易開封性に優れる、収縮包装、収縮結束包装及び収縮ラベルなどに好適に使用することができる。
【実施例】
【0081】
以下、本発明の効果を明確にするために実施した実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。
【0082】
<測定方法>
実施例における各種物性の測定及び評価は以下のように行った。なお、以下の実施例では、熱収縮性積層多孔フィルムの引き取り(流れ)方向を「縦」方向(又はMD)とし、「縦方向」に対する直交方向を「横」方向(又はTD)と記載する。また、以下の実施例では、「横」方向(TD)を熱収縮性積層多孔フィルムの主収縮方向とし、「縦」方向(MD)を主収縮方向に直交する直交方向とする。
【0083】
(1)空孔率
空孔率は、熱収縮性積層多孔フィルム中の空間部分の割合を示す数値である。空孔率は、熱収縮性積層多孔フィルムの実質量W1を測定し、樹脂組成物の密度及び厚さから空孔率0%の場合の質量W0を計算し、質量W0及び実質量W1から下記式(1)に基づき算出した。
空孔率={(W0−W1)/W0}×100 (%)・・・式(1)
【0084】
(2)熱収縮率
得られたフィルムを縦10mm、横200mm及び縦200mm、横10mmの大きさにそれぞれ切り取り、100℃の温水バスに10秒間それぞれ浸漬し、縦方向(TD)及び横方向(MD)における収縮量をそれぞれ測定した。熱収縮率は、縦方向(TD)及び横方向(MD)について、収縮前の原寸に対する収縮量の比率を%値で表示した。
【0085】
(3)引裂強度
得られた熱収縮性積層多孔フィルムをJIS−K7128に準拠して縦方向(TD)及び横方向(MD)の試験片を作製し、万能試験機で試験片両端を把持し、雰囲気温度23℃、引張速度200mm/分の条件下における引張破断強度を測定した。下記式(2)を用いて単位厚さ当たりのTD、MD引裂強度を算出して、5回の平均値を測定した。
引裂強度=引張破壊強度/厚さ (N/mm)・・・式(2)
【0086】
(4)引張破断伸度
得られた熱収縮性積層多孔フィルムを縦方向(MD)120mm、横方向(TD)15mmの大きさに切り出した。切り出した熱収縮性積層多孔フィルムをJIS K7127に準拠し、引張速度200mm/minで雰囲気温度23℃におけるフィルム引き取り方向である縦方向(MD)の引張破断伸度を測定し、10回の測定値の平均値を測定した。
【0087】
(5)層間剥離強度
得られたフィルムを縦方向(MD)15mm、横方向(TD)150mmの大きさに切り取り、横方向(TD)端面の片側のを多孔層から一部剥離した。剥離した剥離層と被剥離層とを引張試験機のチャックにそれぞれ挟み、横方向(TD)方向に対して、試験速度100mm/minにて180度剥離試験を行った。剥離試験にて得られる荷重が安定した値を示す領域において、平均値を層間剥離強度として評価した。
【0088】
(6)層間剥離性
得られた熱収縮性積層多孔フィルムを縦方向(MD)300mm、横方向(TD)225mmの大きさに切り取り、粘着テープとしてのセロテープ(登録商標)(型番:「LP−18」、ニチバン社製、粘着力:4.01N/10mm、引張強さ42.1N/10mm、幅18mm)を貼付けた後、セロテープ(登録商標)を剥がした際の層間剥離状態を確認して評価した。また上記層間剥離強度評価とあわせて、下記の基準により層間剥離性を評価した。
〇:剥離強度が0.8(N/15mm幅)以上、かつ、テープ剥離での層間剥離なし
×:剥離強度が0.8(N/15mm幅)未満、又は、テープ剥離での層間剥離あり
【0089】
(7)収縮仕上り性
得られたフィルムを縦方向(MD)120mm、横方向(TD)225mmで切り出し、TDに10mm分重なるように折り、重なった部分をヒートシールして円筒状のフィルムとした。次に、円筒状のフィルムを225mlのボトルに、ボトルの下面までかぶせて仕上り評価用サンプルを作製した。評価用サンプルは熱風加熱方式の長さ2.5m(3ゾーン構成)の収縮トンネル中を回転させずに、トンネル内の各ゾーンの温度を以下の温度条件として20秒間で通過させた。ボトルに収縮したフィルムの腰折れに起因する折れ込みやシワがないか、収縮不足ではないかの確認を行い評価した。評価は各サンプルN=10で行った。シュリンカー内の温度条件は以下のように設定した。
温度条件:1ゾーン/85〜90℃、2ゾーン/105〜110℃、3ゾーン/145〜150℃
熱風を噴射するトンネル内のノズル位置: 1ゾーン/フィルム下部、2ゾーン/フィルム全体、3ゾーン/フィルム全体
フィルム被覆後は下記基準で評価した。
○:収縮が十分でシワ、アバタ、格子目の歪みが生じない。
×:収縮が十分であるが、シワ、アバタ、格子目の歪みが顕著に生じる、または収縮が十分でなく、ボトルへの被覆が不十分である。
【0090】
以下の各実施例及び比較例で使用した原材料は、下記の通りである。
<スチレン系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体樹脂(A)>
・SBS:スチレン/ブタジエン=84.0wt%/16.0wt%を構成成分として含むスチレン−ブタジエン共重合体(以下、「共重合体樹脂A1」ともいう)
・SBS:スチレン/ブタジエン=77.0wt%/23.0wt%を構成成分として含むスチレン−ブタジエン共重合体(以下、「共重合体樹脂A2」ともいう)
・SBS:スチレン/ブタジエン=81.5wt%/18.5wt%を構成成分として含むスチレン−ブタジエン共重合体(以下、「共重合体樹脂A3」ともいう)
<ポリオレフィン系樹脂(B)>
・直鎖状低密度ポリエチレン:商品名「ノバテックSF240」、日本ポリエチ社製、MFR=2.0g/10分、融点=126℃(以下、「ポリオレフィン系樹脂」ともいう)
<充填剤(C)>
・硫酸バリウム、商品名「バリエースB−54」、堺化学社製、平均粒径1.1μm(以下、「充填剤」ともいう)
<ポリエステル系樹脂>
・1,4−シクロヘキサンジメタノール:32.0モル%、エチレングリコール:65.0モル%、ジエチレングリコール:3.0%、テレフタル酸:100.0モル%を構成成分として含むポリエステル(以下、「ポリエステル系樹脂B1」ともいう)
・1,4−シクロヘキサンジメタノール:23.0モル%、エチレングリコール:65.0モル%、ジエチレングリコール:12.0%、テレフタル酸:100.0モル%を構成成分として含むポリエステル(以下、「ポリエステル系樹脂B2」ともいう)
・1,4−ブタンジオール:100.0モル%、テレフタル酸:90.0モル%、イソフタル酸:10.0モル%を構成成分として含むポリエステル(以下、「ポリエステル系樹脂B3」ともいう)
<接着性樹脂>
・官能基含有水素添加スチレン‐ブタジエン共重合体(SEBC):商品名:ダイナロン4600P、JSR社製 スチレン含量=20%、MFR(230℃、21.2N)=5.5g/10分(以下、「接着性樹脂C1」ともいう)
・官能基含有水素添加スチレン‐ブタジエン共重合体:商品名:ダイナロン8903P、JSR社製 スチレン含量=35%、MFR(230℃、21.2N)=10g/10分(以下、「接着性樹脂C2」ともいう)
・スチレン系熱可塑エラストマー:商品名:ハイブラー 7125、クラレ社製 スチレン含量=20%、MFR(230℃、2.16kg)=4g/10分(以下、「接着性樹脂C3」ともいう)
・変性ポリオレフィン系熱可塑エラストマー:商品名:アドマーSF725、三井化学社製(以下、「接着性樹脂C4」ともいう)
【0091】
(実施例1)
表裏層としては、100質量部の共重合体樹脂A1を用いた。多孔層としては、40質量部のポリオレフィン系樹脂と60質量部の充填剤とを混合して用いた。接着層としては、100質量部の接着性樹脂B1を用いた。/接着層/多孔層/接着層/の3種5層の積層フィルムを製造するために、各原材料を混合した後、3台の単軸押出機及び3種5層マルチマニホールド口金により、上記3種5層の積層フィルムの積層共押出が可能な設備において共押出しした。及び接着層の押出機設定温度を210℃以上220℃以下とし、多孔層の押出機設定温度220℃以上230℃以下として溶融混合後、各層の厚さ比が、/接着層/多孔層/接着層/=4/1/14/1/4となるよう共押出し、60℃のキャストロールで引き取り、冷却固化させて未延伸積層シートを得た。次に、フィルムテンターを用いて、得られた未延伸析層シートを下記表1に示す延伸温度にて、下記表1に示す流れ方向の延伸倍率について延伸した。次に、幅方向の延伸倍率5倍にて延伸した後、下記表1に示す熱処理温度で熱処理を行って熱収縮性積層多孔フィルムを得た。熱収縮性積層多孔フィルムの作製に用いた各原材料の配合を下記表2に示し、得られた熱収縮性積層多孔フィルムの各種評価結果を下記表3に示す。
【0092】
(実施例2)
未延伸積層シートの延伸を下記表1に示す条件としたこと以外は実施例1と同様にして熱収縮性積層多孔フィルムを作製して評価した。熱収縮性積層多孔フィルムの作製に用いた各原材料の配合を下記表2に示し、得られた熱収縮性積層多孔フィルムの各種評価結果を下記表3に示す。
【0093】
(実施例3)
接着層を接着性樹脂B1に代えて100質量部の接着性樹脂B2を用いたこと以外は実施例1と同様にして熱収縮性積層多孔フィルムを作製して評価した。熱収縮性積層多孔フィルムの作製に用いた各原材料の配合を下記表2に示し、得られた熱収縮性積層多孔フィルムの各種評価結果を下記表3に示す。
【0094】
(実施例4)
未延伸積層シートの延伸を下記表1に示す条件としたこと以外は実施例3と同様にして熱収縮性積層多孔フィルムを作製して評価した。熱収縮性積層多孔フィルムの作製に用いた各原材料の配合を下記表2に示し、得られた熱収縮性積層多孔フィルムの各種評価結果を下記表3に示す。
【0095】
(実施例5)
接着層を接着性樹脂B1に代えて100質量部の接着性樹脂B3を用いたこと以外は実施例1と同様にして熱収縮性積層多孔フィルムを作製して評価した。熱収縮性積層多孔フィルムの作製に用いた各原材料の配合を下記表2に示し、得られた熱収縮性積層多孔フィルムの各種評価結果を下記表3に示す。
【0096】
(実施例6)
未延伸積層シートの延伸を下記表1に示す条件としたこと以外は実施例5と同様にして熱収縮性積層多孔フィルムを作製して評価した。熱収縮性積層多孔フィルムの作製に用いた各原材料の配合を下記表2に示し、得られた熱収縮性積層多孔フィルムの各種評価結果を下記表3に示す。
【0097】
(実施例7)
多孔層として、50質量部のポリオレフィン系樹脂及び50質量部の充填剤を用いたこと以外は、実施例2と同様にして熱収縮性積層多孔フィルムを作製して評価した。熱収縮性積層多孔フィルムの作製に用いた各原材料の配合を下記表2に示し、得られた熱収縮性積層多孔フィルムの各種評価結果を下記表3に示す。
【0098】
(実施例8)
実施例5と同様の未延伸積層シートを作製した。次に、フィルムテンターを用いて、得られた未延伸積層シートを下記表1に示す延伸温度にて、下記表1に示す流れ方向の延伸倍率について延伸した後、幅方向の延伸倍率5倍にて延伸した。次に、下記表1に示す熱処理温度で熱処理を行いながら約5%弛緩して熱収縮性フィルムを得た。熱収縮性積層多孔フィルムの作製に用いた各原材料の配合を下記表2に示し、得られた熱収縮性積層多孔フィルムの各種評価結果を下記表3に示す。
【0099】
(実施例9)
未延伸積層シートの延伸を下記表1に示す条件としたこと以外は実施例8と同様にして熱収縮性積層多孔フィルムを作製して評価した。熱収縮性積層多孔フィルムの作製に用いた各原材料の配合を下記表2に示し、得られた熱収縮性積層多孔フィルムの各種評価結果を下記表3に示す。
【0100】
(比較例1)
表裏層として、共重合体樹脂A1に代えて、100質量部のポリエステル系樹脂C1を用いたこと、接着層として、接着性樹脂B1に代えて、100質量部の接着性樹脂B4を用いたこと、の押出機設定温度を240℃以上250℃以下とし、接着層の押出機設定温度を210℃以上220℃以下とし、多孔層の押出機設定温度を220℃以上230℃以下として溶融混合したこと以外は実施例1と同様にして未延伸積層シートを得た。次に、フィルムテンターを用いて得られた未延伸積層シートを下記表4に示す延伸温度にて、下記表4に示す流れ方向の延伸倍率について延伸し、次に、幅方向の延伸倍率5倍にて延伸した。次に、下記表4に示す熱処理温度で熱処理を行って熱収縮性フィルムを得た。熱収縮性積層多孔フィルムの作製に用いた各原材料の配合を下記表5に示し、得られた熱収縮性積層多孔フィルムの各種評価結果を下記表6に示す。
【0101】
(比較例2)
未延伸積層シートの延伸を下記表4に示す条件としたこと以外は比較例1と同様にして熱収縮性積層多孔フィルムを作製して評価した。熱収縮性積層多孔フィルムの作製に用いた各原材料の配合を下記表5に示し、得られた熱収縮性積層多孔フィルムの各種評価結果を下記表6に示す。
【0102】
(比較例3)
未延伸積層シートの延伸を下記表4に示す条件とし、厚さを変更した以外は比較例2と同様にして熱収縮性積層多孔フィルムを作製して評価した。熱収縮性積層多孔フィルムの作製に用いた各原材料の配合を下記表5に示し、得られた熱収縮性積層多孔フィルムの各種評価結果を下記表6に示す。
【0103】
(比較例4)
未延伸積層シートの延伸を下記表4に示す条件とし、厚さを変更したこと以外は比較例2と同様にして熱収縮性積層多孔フィルムを作製して評価した。熱収縮性積層多孔フィルムの作製に用いた各原材料の配合を下記表5に示し、得られた熱収縮性積層多孔フィルムの各種評価結果を下記表6に示す。
【0104】
(比較例5)
表裏層としては、85質量部のポリエステル系樹脂C2と15質量部のポリエステル系樹脂C3と混合して用いた。多孔層としては、84質量部のポリエステル系樹脂C1と15質量部のポリエステル系樹脂C3と混合して用いた。各原材料を混合した後、各層の押出機設定温度240℃、各層の厚さ比が、/
中間層/=1/6/1となるよう共押出し、流れ方向の延伸倍率1.1倍、幅方向の延伸倍率5.0倍にて下記表4の条件で延伸したこと以外は実施例1と同様にして、熱収縮性積
層フィルムを得た。熱収縮性積
層フィルムの作製に用いた各原材料の配合を下記表5に示し、得られた熱収縮性積
層フィルムの各種評価結果を下記表6に示す。
【0105】
(比較例6)
表裏層としては、100質量部の共重合体樹脂A2を用いた。
中間層としては、100質量部の共重合体樹脂A3を用いた。各原材料を混合した後、下記表4の条件で延伸したこと以外は比較例5と同様にして、熱収縮性積
層フィルムを得た。熱収縮性積
層フィルムの作製に用いた各原材料の配合を下記表5に示し、得られた熱収縮性積
層フィルムの各種評価結果を下記表6に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
【表4】
【0110】
【表5】
【0111】
【表6】
【0112】
表1〜表3から分かるように、上記実施例1〜実施例9に係る熱収縮性積層多孔フィルムは、上記実施の形態に係る表裏層及び多孔層を備えるので、十分な多孔性と優れた熱収縮性を有し、耐破断性、耐層間剥離性が良好であり、易引裂性を有するものであった。これに対して、比較例1〜比較例4に係る熱収縮性積層多孔フィルムは、表裏層が共重合体樹脂(A)を含まないので、いずれも実施例1〜実施例9に対して耐層間剥離性が劣るものであった。また、比較例5及び比較例6に係る熱収縮性フィルムは、上記
中間層がポリオレフィン樹脂(B)を含まないので、多孔性及び易引裂性に劣るものであった。
【0113】
以上、現時点において、最も実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施の形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施の形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う熱収縮性積層多孔フィルム、該フィルムを用いた成形品及び熱収縮性ラベル、並びに、該成形品及びラベルを装着してなる物品もまた本発明に包含されるものとして理解されなければならない。