【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のポリマー及び特定の溶剤を含有する樹脂溶液が、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち本発明は、正の複屈折性を示すポリマーA、負の複屈折性を示すポリマーB、及び有機溶剤を含有する樹脂溶液であって、該有機溶剤が−OR(ここで、Rは炭素数1〜5の直鎖状または分岐状のアルキルを示す。)基を有する芳香族系溶剤の単独溶剤又は芳香族系溶剤と−OR基を有する非芳香族系溶剤との混合溶剤であり、かつ該有機溶剤についてのFedorの方法で求めた溶解度パラメーターδが17〜23(J/cm
3)
1/2であることを特徴とする樹脂溶液に関するものである。
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
本発明の樹脂溶液は、正の複屈折性を示すポリマーA、負の複屈折性を示すポリマーB、及び有機溶剤を含有する。本発明では、樹脂溶液が、正の複屈折性を示すポリマーAと負の複屈折性を示すポリマーBとを有機溶媒で溶解して得られる樹脂溶液であることで、フィルムとした際に、単層でny<nz<nxと逆波長分散とを発現させるフィルムとなるものである。なお、本発明では、各ポリマーの粉体、ペレット等を混練後、有機溶剤に溶解させることも可能である。
【0018】
本発明のポリマーAは、正の複屈折性を示すポリマーであれば特に制限はない。
【0019】
ポリマーAは、ポリマーBとの高い相溶性を付与するため、異分子間で水素結合的な相互作用を発現することが好ましい。そのため、水酸基、カルボン酸基、カルボニル基、エーテル基、アミノ基、シアノ基、ウレア基など水素結合を形成可能な官能基を有することが好ましい。
【0020】
熱的安定性からポリマーAのTg
Aは、120℃以上が好ましい。
【0021】
ポリマーAとしては、例えば、セルロース系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリアリレート系ポリマー、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリエチレン系ポリマー、ノルボルネン系ポリマー、シクロオレフィン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー等を挙げることが出来る。これらのうち、汎用溶剤への溶解性が良好で、相溶域が広いことからセルロース系ポリマーおよびアクリル系ポリマーが好ましく、セルロースエーテルがさらに好ましく、下記一般式(1)で示されるセルロースエーテルが特に好ましい。
【0022】
【化1】
【0023】
(式中、R
1、R
2、R
3はそれぞれ独立して水素または炭素数1〜12の置換基を示す。)
い。
【0024】
以下、本発明の光学フィルムに用いられるポリマーAとして、特に好ましいセルロース系ポリマーであるセルロースエーテルについて説明する。
【0025】
該セルロースエーテルは、β−グルコース単位が直鎖状に重合した高分子であり、かつグルコース単位の2位、3位および6位の水酸基の一部または全部をエーテル化したポリマーであり、例えば、アルキルセルロース(メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース等)、ヒドロキシアルキルセルロース(ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、アラルキルセルロース(ベンジルセルロース、トリチルセルロース等)、シアノアルキルセルロース(シアンエチルセルロース等)、カルボキシアルキルセルロース(カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等)、カルボキシアルキルアルキルセルロース(カルボキシメチルメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース等)、アミノアルキルセルロース(アミノエチルセルロース等)等が挙げられる。
【0026】
セルロースの水酸基の酸素原子を介して置換している置換度は、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースの水酸基がエーテル化している割合(100%のエーテル化は置換度3)を意味し、エーテル基の全置換度DSは、有機溶剤への溶解性が良好なことから、好ましくは1.5〜3.0(1.5≦DS≦3.0)であり、さらに好ましくは1.8〜2.8である。セルロース系ポリマーは、炭素数1〜12の置換基を有することが好ましい。炭素数1〜12の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デカニル基、ドデカニル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、フェノニル基、ベンジル基、ナフチル基等を挙げることができる。これらの中でも、炭素数1〜5のアルキル基であるメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基が特に好ましい。本発明で用いるセルロース系ポリマーのエーテル基は1種類だけでもよいし、2種類以上のエーテル基を有していてもよい。エーテル基の他にエステル基を有していてもよい。
【0027】
セルロースエーテルは一般に、木材又はコットンより得たセルロースパルプをアルカリ分解し、アルカリ分解したセルロースパルプをエーテル化することで合成される。アルカリとしては、リチウム,カリウム,ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物やアンモニアなどが利用でき、特に水酸化ナトリウムが好ましい。前記アルカリは一般に、水溶液として使用される。
【0028】
アルカリ性にされたセルロースパルプは好ましくは、塩化メチル又は塩化メチルとプロピレンオキシドの混合物と接触されることによりエーテル化される。セルロースエーテルの種類に応じて、ハロゲン化アルキル(塩化メチル、塩化エチルなど)、ハロゲン化アラルキル(ベンジルクロライド、トリチルクロライドなど)、ハロカルボン酸(モノクロロ酢酸、モノクロロプロピオン酸など)、アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなど)などのエーテル化剤が用いられる。これらのエーテル化剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。通常のエーテル化剤としては、アルキルハロゲン化物、エポキシド等を含むものであり、具体的には、例えば塩化メチル、塩化エチル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、及びこれらの混合物を含む。
【0029】
なお、必要であれば、反応終了後、粘度調整のため塩化水素、臭化水素、塩酸、及び硫酸等で解重合処理してもよい。
【0030】
セルロース系ポリマーは、機械特性に優れ、製膜時の成形加工性に優れたものとなることから、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した溶出曲線より得られる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が1×10
3〜1×10
6であることが好ましく、5×10
3〜2×10
5であることがさらに好ましい。
【0031】
本発明のポリマーBは、負の複屈折性を示すポリマーであれば特に制限はない。
【0032】
ポリマーBとしては、例えば、エチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー等が挙げられる。
【0033】
エチレン性不飽和モノマー単位としては:ビニルエステルとして、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、オクチル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等;アクリル酸エステルとして、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェネチル、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸−p−ヒドロキシメチルフェニル、アクリル酸−p−(2−ヒドロキシエチル)フェニル等;メタクリル酸エステルとして、上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたもの;不飽和酸として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸等;スチレン類として、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレンアセトキシスチレン、ビニルフェノール、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、シアノスチレン、ニトロスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル等;2つ以上の芳香族環からなる縮合環などを側鎖に有するモノマーとして、例えば、ビニルナフタレン、ビニルピレン、ビニルアズレン、ビニルカルバゾール、ビニルフルオレン等;ケイ素含有ビニル系モノマーとして、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等;窒素含有ビニル系モノマーとして、例えば、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等;フマル酸エステル;ケイ皮酸エステル等が挙げられる。上記モノマーで構成されるポリマーはコポリマーでもホモポリマーでもよい。これらのうち本発明に係るポリマーBとしては、汎用溶剤への溶解性が良好で、相溶域が広いことから、側鎖にカルボン酸基または水酸基を有するポリマーが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル残基単位、ケイ皮酸エステル残基単位、フマル酸エステル残基単位を含むポリマーがさらに好ましく、ケイ皮酸エステル残基単位および/またはフマル酸エステル残基単位を含むエステル系ポリマーが特に好ましい。
【0034】
以下、本発明の光学フィルムに用いられるポリマーBとして、特に好ましいケイ皮酸エステル残基単位および/またはフマル酸エステル残基単位を含むエステル系ポリマーについて説明する。
【0035】
なお、本発明において、複屈折の正負は以下に示すように定義される。
【0036】
負の複屈折とは延伸方向が進相軸方向となるものであり、正の複屈折とは延伸方向の垂直方向が進相軸方向となるものである。
【0037】
つまり、一軸延伸すると延伸軸と直交する軸方向の屈折率が小さく(進相軸:延伸方向の垂直方向)なるものを正の複屈折を示すポリマー、一軸延伸すると延伸軸方向の屈折率が小さく(進相軸:延伸方向)なるものを負の複屈折を示すポリマーという。
【0038】
光学フィルム用途として用いる場合、負の複屈折性を示すエステル系ポリマーとしては、負の複屈折の発現性が大きく、光学補償フィルムの薄膜化が図れるため、下記一般式(2)で示されるケイ皮酸エステル残基単位および/または下記一般式(3)で示されるフマル酸エステル残基単位を含むエステル系ポリマーであることが好ましい。
【0039】
【化2】
【0040】
(式中、R
4は水素または炭素数1〜12のアルキル基を示す。Xはニトロ基、ブロモ基、ヨード基、シアノ基、クロロ基、スルホン酸基、カルボン酸基、フルオロ基、フェニル基または炭素数1〜12のアルコキシ基を示す。)
【0041】
【化3】
【0042】
(式中、R
5、R
6はそれぞれ独立して水素または炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
負の複屈折性を示すエステル系ポリマーは、負の複屈折性を示すエステル残基単位に係る単量体を100モル%として、該単量体と共重合可能な単量体の残基単位0〜20モル%を含んでいてもよい。
【0043】
負の複屈折性を示すエステル残基単位に係る単量体と共重合可能な単量体の残基単位としては、例えば、スチレン残基、α−メチルスチレン残基などのスチレン類残基;アクリル酸残基;メタクリル酸残基;酢酸ビニル残基、プロピオン酸ビニル残基などのビニルエステル類残基;メチルビニルエ−テル残基、エチルビニルエ−テル残基、ブチルビニルエ−テル残基などのビニルエ−テル残基;N−メチルマレイミド残基、N−シクロヘキシルマレイミド残基、N−フェニルマレイミド残基などのN−置換マレイミド残基;アクリロニトリル残基;メタクリロニトリル残基;;ケイ皮酸残基;エチレン残基、プロピレン残基などのオレフィン類残基;ビニルピロリドン残基;ビニルピリジン残基等の1種または2種以上を挙げることができる。
【0044】
負の複屈折性を示すエステル系ポリマーは、特に機械特性に優れ、製膜時の成形加工性に優れたものとなることから、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した溶出曲線より得られる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が1×10
3〜5×10
6のものであることが好ましく、5×10
3〜2×10
5であることがさらに好ましい。
【0045】
負の複屈折性を示すエステル系ポリマーの製造方法としては、該エステル系ポリマーが得られる限りにおいて如何なる方法により製造してもよく、ラジカル重合を行うことにより製造することができる。負の複屈折性を示すエステル類と共重合可能な単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン類;アクリル酸;メタクリル酸;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;メチルビニルエ−テル、エチルビニルエ−テル、ブチルビニルエ−テルなどのビニルエ−テル;N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのN−置換マレイミド;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;ケイ皮酸;エチレン、プロピレンなどのオレフィン類;ビニルピロリドン;ビニルピリジン等の1種または2種以上を挙げることができる。
【0046】
本発明において、ポリマーAとポリマーBの組成の割合は、位相差の発現性の観点から、ポリマーA30〜99重量%およびポリマーB70〜1重量%であることが好ましい。
【0047】
本発明の有機溶剤は、−OR(ここで、Rは炭素数1〜5の直鎖状または分岐状アルキルを示す。)基を有する芳香族系溶剤の単独溶剤又は芳香族系溶剤と−OR基を有する非芳香族系溶剤との混合溶剤である。本発明では、有機溶剤が−OR基を有する芳香族系溶剤の単独溶剤又は芳香族系溶剤と−OR基を有する非芳香族系溶剤との混合溶剤であることで、フィルムとした際の位相差の発現性を向上させることができ、位相差フィルムとして好適な光学フィルムが得られるものである。ここで本発明において、−OR基のない芳香族系溶剤を単独で用いるとき、または−OR基を有する非芳香族系溶剤を単独で用いるとき、光学特性が劣るものとなる。また、−OR基におけるRのアルキルの炭素数が5を超えるとき、揮発性が低く、生産性に劣ったものとなり、−OR基におけるRが環状アルキルのとき、過酸化物の生成などにより、フィルムの黄色変性や脆化の問題が生じるものとなるため、位相差フィルムとして好適な光学フィルムが得られない。
【0048】
本発明の有機溶剤は、Fedorの方法で求めた溶解度パラメーターδが17〜23(J/cm
3)
1/2である。本発明では、前記特定の単独溶剤又は混合溶剤を用いるとき、溶解度パラメーターδを本発明に係る範囲とするとき、位相差の発現性を向上できることを見出したものであり、溶解度パラメーターδが本発明の範囲外であるとき、位相差の発現性の向上が困難となる。
【0049】
Fedorの方法による溶解度パラメーターδの算出方法については、例えばPROPERTIES OF POLYMERS THEIR CORRELATION WITH CHEMICAL STRUCTURE; THIER NUMERICAL ESTIMATION AND PREDICTION FROM ADDITIVE GROUP CONTRIBUTIONS, D. W. VAN KREVELEN,ELSEVIER, p.189−200 (1990)に記載の方法により算出できる。2種以上の溶剤を用いる場合は、溶剤の溶解度パラメーターはそれぞれの重量比での相加平均と定義する。
【0050】
本発明に係る有機溶剤は、前期要件を満足する溶剤であれば特に制限はないが、光学特性に優れるため、芳香族系溶剤と、下記一般式(4)で示される非芳香族系溶剤との混合溶剤であることが好ましい。
【0051】
【化4】
【0052】
(式中、R
7、R
8はそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基を示す。)
本発明に係る有機溶剤の沸点は、製膜工程にて、残溶剤が残りにくい様、200℃以下が好ましく、170℃以下がさらに好ましい。
【0053】
具体的な本発明に係る有機溶剤について、単独溶剤としては、例えば、メトキシベンゼン、エトキシベンゼン等の芳香族炭化水素溶剤が挙げられる。
【0054】
具体的な本発明に係る有機溶剤について、混合溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素溶剤;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族ハロゲン化炭化水素溶剤;フェノール、バラクロロフエノールなどのフェノール溶剤等の芳香族系溶剤と、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチルなどのエステル系溶剤等の非芳香族系溶剤との混合溶媒が挙げられる。
【0055】
本発明の樹脂溶液の粘度は、重合体の分子量、重合体の濃度、溶剤の種類で調整可能である。樹脂溶液の粘度としては特に制限はないが、フィルム塗工性をより容易にするため、好ましくは50〜30000cps、さらに好ましくは100〜20000cps、特に好ましくは300〜10000cpsである。ポリマー溶液として塗工する場合は、粘度の点より、溶媒100重量%に対して、上記ポリマーAおよびポリマーBを合計で5〜60重量%、好ましくは10〜50重量%を混合して用いるのがよい。
【0056】
本発明の樹脂溶液は、熱安定性を向上させるために酸化防止剤を含有していても良い。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、ビタミンE系酸化防止剤、その他酸化防止剤が挙げられ、これら酸化防止剤はそれぞれ単独でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0057】
本発明の樹脂溶液は、耐候性を高めるためヒンダ−ドアミン系光安定剤や紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾ−ル、ベンゾフェノン、トリアジン、ベンゾエ−ト等が挙げられる。
【0058】
本発明の樹脂溶液は、発明の主旨を超えない範囲で、その他ポリマー、界面活性剤、高分子電解質、導電性錯体、顔料、染料、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤等を含有していてもよい。
【0059】
本発明の樹脂溶液を用いたフィルムの製造方法としては、如何なる方法を用いてもよいが、溶液キャスト法により製造することが好ましい。ここで、溶液キャスト法とは、樹脂溶液を支持基板上に流延した後、加熱することにより溶媒を蒸発させてフィルムを得る方法である。塗工方法は特に制限されず、通常の方法を採用できる。たとえば、Tダイ法、ドクターブレード法、バーコーター法、スロットダイ法、リップコーター法、リバースグラビアコート法、マイクログラビア法、スピンコート法、刷毛塗り法、ロールコート法、フレキソ印刷法などがあげられる。また、用いられる支持基材としては、特に制限はないが、例えばポリエステルやポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン、トリアセチルセルロースやポリビニルアルコール、ポリイミドやポリアリレート、ポリスルホンやポリエーテルスルホン、エポキシ系樹脂等からなる高分子基材、ガラス板や石英基板などのガラス基材、アルミやステンレスやフェロタイプ等の金属基材、セラミックス基板などの無機基材等が挙げられる。上記基材として好ましくは、高分子基材または金属基材である。
【0060】
塗工溶液の乾燥工程における、乾燥方法は特に制限されず、通常の加熱手段を採用できる。 たとえば、熱風器、加熱ロール、遠赤外線ヒーター等があげられる。
【0061】
乾燥時間、外観、位相差発現性の点から、乾燥工程は第1の低温乾燥工程と第2の高温乾燥工程の2段階以上であることが好ましく、特に3段階以上の乾燥工程が好ましい。第1の低温乾燥工程を2段階以上に分けてもよく、第2の高温乾燥工程を2段階以上に分けてもよい。具体的には第1の乾燥工程は20〜79℃が好ましく、30〜79℃がさらに好ましく、40℃〜79℃が特に好ましい。また第1の乾燥工程終了後の樹脂溶液成分に対する残溶剤量は3〜50重量%が好ましく、5〜30重量%がさらに好ましい。第1の乾燥工程終了後の残溶剤量を十分減らすことで、外観が良好となり、位相差を制御できる。第2の乾燥工程の乾燥温度は80℃〜220℃が好ましく、80℃〜200℃がさらに好ましい。第2の乾燥工程の前半を80〜120℃とし、後半を130℃以上とすることは乾燥時間の短縮と、位相差制御の点から好ましく選択できる。特に130℃以上の乾燥前の残溶剤としては3〜30重量%が好ましく、4〜20重量%がさらに好ましく、5〜15重量%が特に好ましい。
【0062】
本発明の樹脂溶液を用いた光学フィルムの製造方法としては、例えば、樹脂溶液を基材にキャストし、加熱乾燥後基材より剥離することが挙げられる。
【0063】
本発明の樹脂溶液により得られたフィルムは光学フィルムに好適に用いられる。以下、本発明に関する光学フィルムについて説明する。
【0064】
本発明の樹脂溶液を用いた光学フィルムは、フィルムの取扱い性及び光学部材の薄膜化への適合性の観点から、厚みが5〜200μmであることが好ましく、10〜100μmがさらに好ましく、20〜80μmが特に好ましい。
【0065】
本発明の樹脂溶液を用いた光学フィルムの位相差特性は、目的とする光学フィルムにより異なるものであり、例えば、下記式(1)で示される面内位相差(Re)が好ましくは60〜300nm、さらに好ましくは80〜300nm、特に好ましくは80〜280nmであって、下記式(2)で示されるNz係数が好ましくは0.30〜0.95、さらに好ましくは0.35〜0.65、特に好ましくは0.45〜0.55であるもの等が挙げられる。このときの位相差特性は全自動複屈折計(王子計測機器株式会社製、商品名KOBRA−21ADH)を用い、測定波長589nmの条件で測定されるものである。
【0066】
Re=(ny−nx)×d (1)
Nz=(ny−nz)/(ny−nx) (2)
Rth=[(nx+ny)/2−nz]×d (3)
(式中、nxはフィルム面内の進相軸方向の屈折率を示し、nyはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率を示し、nzはフィルム面外の屈折率を示し、dはフィルム厚みを示す。)
本発明の光学フィルムの波長分散特性としては、色ずれ抑制のため、好ましくは0.60<Re(450)/Re(550)<1.05であり、さらに好ましくは0.70<Re(450)/Re(550)<1.02であり、特に好ましくは0.75<Re(450)/Re(550)<1.00である。
【0067】
本発明の光学フィルムは、輝度向上のため、光線透過率が好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0068】
本発明の光学フィルムは、コントラスト向上のため、ヘーズが好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下である。
【0069】
本発明の製造方法を用いて得られた光学フィルムは、面内位相差(Re)を発現するために一軸延伸またはアンバランス二軸延伸することが好ましい。光学フィルムを延伸する方法としては、ロ−ル延伸による縦一軸延伸法やテンタ−延伸による横一軸延伸法、斜め延伸法、これらの組み合わせによるアンバランス逐次二軸延伸法やアンバランス同時二軸延伸法等を用いることができるが、少なくとも一軸方法に延伸していれば如何なる延伸方法でもよい。
【0070】
延伸する際の光学フィルムの厚みは、延伸処理のし易さおよび光学部材の薄膜化への適合性の観点から、10〜200μmが好ましく、15〜150μmがさらに好ましく、15〜110μmが特に好ましい。
【0071】
延伸の温度は特に制限はないが、良好な位相差特性が得られることから、好ましくは50〜200℃、さらに好ましくは100〜180℃である。一軸延伸の延伸倍率は特に制限はないが、良好な位相差特性が得られることから、1.05〜4.0倍が好ましく、1.1〜3.5倍がさらに好ましい。アンバランス二軸延伸の延伸倍率は特に制限はないが、光学特性に優れた光学補償フィルムとなることから長さ方向には1.05〜4.0倍が好ましく、1.1〜3.5倍がさらに好ましく、光学特性に優れた光学補償フィルムとなることから、幅方向には1.01〜1.2倍が好ましく、1.05〜1.1倍がさらに好ましい。延伸温度、延伸倍率により面内位相差(Re)を制御することができる。
【0072】
本発明の樹脂溶液を用いた光学フィルムは、必要に応じて他樹脂を含むフィルムと積層することができる。他樹脂としては、例えば、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、マレイミド系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド等が挙げられる。また、ハードコート層やガスバリア層を積層することも可能である。