特許第6870432号(P6870432)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6870432複合金属酸化物粒子、並びに、これを用いた分散液、ハイブリッド複合粒子、ハイブリッド複合材及び光学材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6870432
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】複合金属酸化物粒子、並びに、これを用いた分散液、ハイブリッド複合粒子、ハイブリッド複合材及び光学材料
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/00 20060101AFI20210426BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20210426BHJP
   C08K 3/24 20060101ALI20210426BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20210426BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20210426BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   C01G23/00 C
   C08L101/00
   C08K3/24
   G02B6/02 391
   G02B6/12 371
   G02B1/00
【請求項の数】21
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2017-68816(P2017-68816)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-186250(P2017-186250A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2019年11月22日
(31)【優先権主張番号】特願2016-72098(P2016-72098)
(32)【優先日】2016年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】山内 律子
(72)【発明者】
【氏名】山崎 正典
【審査官】 神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−059027(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/077176(WO,A2)
【文献】 特表2012−520232(JP,A)
【文献】 特開2008−081355(JP,A)
【文献】 特開2011−195885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 23/00
C08K 3/24
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合金属酸化物を含有する複合金属酸化物粒子であって、
粒子コア、及び、前記粒子コアの表面の少なくとも一部に存在するアモルファス金属酸化物を含有し、
前記複合金属酸化物粒子は、一般式Aで表される組成を有すると共にペロブスカイト型結晶構造を有し、前記一般式A中、前記元素Aは、Ba、Sr、Ca、Mg、Al、Pb、Co、及びZnよりなる群から選択される1種以上であり、前記元素Bは、Ti、Zr、W、Nb、Hf、及びSnよりなる群から選択される1種以上であり、x及びyは、0<x≦1、0<y≦1、及び、0.01≦x/y≦0.99を満たす数であり、
前記複合金属酸化物粒子が、粉末X線回折測定において1〜10nmの平均結晶子径を有する
ことを特徴とする、複合金属酸化物粒子。
【請求項2】
複合金属酸化物を含有する複合金属酸化物粒子であって、
粒子コア、及び、前記粒子コアの表面の少なくとも一部に存在するアモルファス金属酸化物を含有し、
前記複合金属酸化物粒子は、一般式Aで表される組成を有すると共にペロブスカイト型結晶構造を有し、前記一般式A中、前記元素Aは、Ba、Sr、Ca、Mg、Al、Pb、Co、及びZnよりなる群から選択される1種以上であり、前記元素Bは、Ti、Zr、W、Nb、Hf、及びSnよりなる群から選択される1種以上であり、x及びyは、0<x≦1、0<y≦1、及び、0.01≦x/y≦0.99を満たす数であり、
焼成処理後に粉末X線回折測定を行った際、X線回折パターンが前記ペロブスカイト型結晶と異なる結晶のピークを含む
ことを特徴とする、複合金属酸化物粒子。
【請求項3】
前記x/yが、前記複合金属酸化物粒子の全体における前記元素Aと前記元素Bとのモル比を表す
ことを特徴とする、請求項2に記載の複合金属酸化物粒子。
【請求項4】
複合金属酸化物を含有する複合金属酸化物粒子であって、
粒子コア、及び、前記粒子コアの表面の少なくとも一部に存在するアモルファス金属酸
化物を含有し、
前記複合金属酸化物粒子は、一般式Aで表される組成を有すると共にペロブスカイト型結晶構造を有し、前記一般式A中、前記元素Aは、Ba、Sr、Ca、Mg、Al、Pb、Co、及びZnよりなる群から選択される1種以上であり、前記元素Bは、Ti、Zr、W、Nb、Hf、及びSnよりなる群から選択される1種以上であり、x及びyは、0<x≦1、0<y≦1、及び、0.01≦x/y≦0.99を満たす数であり、
前記アモルファス金属酸化物が、前記元素Bのアモルファス金属酸化物である
ことを特徴とする、複合金属酸化物粒子。
【請求項5】
焼成処理後に粉末X線回折測定を行った際、X線回折パターンが前記ペロブスカイト型結晶と異なる結晶のピークを含む
請求項1に記載の複合金属酸化物粒子。
【請求項6】
焼成処理後に粉末X線回折測定を行った際、一般式AB(1+n)(3+2n)(式中、nは1以上の数であり、各サイトA及びBは前記一般式Aで説明したものとそれぞれ同義である。)で表される複合金属酸化物のX線回折パターンを含む
請求項1〜のいずれか一項に記載の複合金属酸化物粒子。
【請求項7】
前記アモルファス金属酸化物は、波長範囲240〜800nmの反射スペクトル測定において、350〜380nmの範囲内に反射スペクトル一次微分ピークを有する
請求項1〜のいずれか一項に記載の複合金属酸化物粒子。
【請求項8】
光触媒活性を有する
請求項1〜のいずれか一項に記載の複合金属酸化物粒子。
【請求項9】
前記アモルファス金属酸化物が、前記元素Bのアモルファス金属酸化物である
請求項1〜3,5〜8のいずれか一項に記載の複合金属酸化物粒子。
【請求項10】
溶媒に前記複合金属酸化物含有量10質量%で分散した際に、測定波長550nm、及び光路長1cmにおいて50%以上の透過率を有する
請求項1〜のいずれか一項に記載の複合金属酸化物粒子。
【請求項11】
溶媒、及び
前記溶媒中に分散された請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合金属酸化物粒子を少なくとも含有する
ことを特徴とする、分散液。
【請求項12】
前記複合金属酸化物の含有量が10質量%以上である
請求項11に記載の分散液。
【請求項13】
前記複合金属酸化物粒子が、1〜20nmの平均分散粒子径(D50)を有する
請求項11又は12に記載の分散液。
【請求項14】
分散剤をさらに含有する
請求項10〜13のいずれか一項に記載の分散液。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合金属酸化物粒子、及び
前記複合金属酸化物粒子の表面に付着した分散剤
を少なくとも含有する、ハイブリッド複合粒子。
【請求項16】
前記分散剤が、重合性無機粒子分散剤である
請求項15に記載のハイブリッド複合粒子。
【請求項17】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の複合金属酸化物粒子、及び、
マトリックス樹脂又は該マトリックス樹脂の前駆物質
を少なくとも含有する、ハイブリッド複合材。
【請求項18】
請求項17に記載のハイブリッド複合材を含む、
光学材料。
【請求項19】
請求項17に記載のハイブリッド複合材を含む、
光回路。
【請求項20】
請求項17に記載のハイブリッド複合材を含む、
光導波路。
【請求項21】
請求項17に記載のハイブリッド複合材を含む、
レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な複合金属酸化物粒子、並びに、これを用いた分散液、ハイブリッド複合粒子、ハイブリッド複合材及び光学材料等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末等の情報端末機器、フラットパネルディスプレイ(FPD)、レンズ材料、光回路、光ファイバー等の分野において、無機ガラスに代えて、軽量で耐衝撃性が高く、生産性の高い樹脂材料の使用が進展している。
【0003】
また、誘電率や屈折率等を高める観点から、マトリックス樹脂中にナノ粒子を分散させた樹脂成形体も提案されている。とりわけ、誘電体用途や光学材料用途においては、上記ナノ粒子のなかでもチタン酸バリウムやチタン酸ストロンチウム等のペロブスカイト型結晶構造をとる複合金属酸化物粒子に、大きな期待が寄せられている。この種の複合金属酸化物は誘電率や屈折率が高く、そのナノ粒子をマトリックス樹脂中に分散させることで、得られる樹脂成形体の光学特性や電気的特性を大きく改善することができるためである。そして近年では、高誘電率材料や高屈折率材料として、各種性能向上のための様々な検討が行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、水及び有機溶媒の存在下、シランカップリング剤で処理された酸化チタン粒子と水酸化バリウムや水酸化ストロンチウム等とをマイクロウェーブ加熱処理することで、チタン酸バリウムやチタン酸ストロンチウム等のペロブスカイト型結晶構造をとる複合金属酸化物のナノ粒子を得る技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、ジルコニウムプロポキシドや水酸化バリウム8水和物等の金属酸化物前駆体を、オレイルアミン等のアミン類の存在下、より具体的には該金属酸化物前駆体に対してモル数で0.5倍以上10倍以下のアミン類の存在下、ベンジルアルコール等の含酸素有機溶媒を用いたソルボサーマル法に供することで、酸化ジルコニウムやチタン酸バリウム等の金属酸化物ナノ結晶(複合金属酸化物のナノ粒子)を得る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−177259号公報
【特許文献2】特開2007−269601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、得られるナノ粒子がシランカップリング剤由来成分、例えばシランカップリング剤の加水分解物や加水分解縮合物を含むため、マトリックス樹脂に対する高い分散性は期待できるものの、屈折率を上げるのが難しいという課題があった。
【0008】
また、特許文献2に記載の技術では、低温で比較的に短時間に結晶性の高いナノ粒子が得られるが、得られるナノ粒子の表面に、所望する複合金属酸化物以外の副生成物が多く存在するため、溶媒中に高濃度で分散させるのが難しいという課題があった。
【0009】
本発明は、かかる背景技術に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、屈折率や誘電率等の基本性能に優れるのみならず、溶媒等の有機化合物への分散性にも優れる、複合金属酸化物粒子を提供することにある。また、本発明の他の目的は、粒子自身の分散性が高く、屈折率及び透明性の高い光学材料を実現可能な複合金属酸化物粒子、並びに、これを用いた分散液、ハイブリッド複合粒子、ハイブリッド複合材、及び光学材料等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、粒子表面にアモルファス金属酸化物を存在(露出)させた複合金属酸化物粒子が、屈折率や誘電率等の基本性能に優れるのみならず、分散性にも優れることを見出し、また、これを用いることで屈折率及び透明性の高い光学材料を実現可能であることを見出し、かかる知見に基づいて、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下(1)〜(19)に示す具体的態様等を提供する。
(1)複合金属酸化物を含有する複合金属酸化物粒子であって、粒子コア、及び、前記粒子コアの表面の少なくとも一部に存在するアモルファス金属酸化物を含有し、一般式Aで表されるペロブスカイト型結晶構造を有し、前記一般式A中、前記元素Aは、Ba、Sr、Ca、Mg、Al、Pb、Co、及びZnよりなる群から選択される1種以上であり、前記元素Bは、Ti、Zr、W、Nb、Hf、及びSnよりなる群から選択される1種以上であり、x及びyは、0<x≦1、0<y≦1、及び、0.01≦x/y≦0.99を満たす数であることを特徴とする、複合金属酸化物粒子。
(2)焼成処理後に粉末X線回折測定を行った際、X線回折パターンが前記一般式Aで表されるペロブスカイト型結晶と異なる結晶のピークを含む上記(1)に記載の複合金属酸化物粒子。
(3)焼成処理後に粉末X線回折測定を行った際、一般式AB(1+n)(3+2n)(式中、nは1以上の数であり、各サイトA及びBは前記一般式Aで説明したものとそれぞれ同義である。)で表される複合金属酸化物のX線回折パターンを含む上記(1)又は(2)に記載の複合金属酸化物粒子。
(4)前記アモルファス金属酸化物は、波長範囲240〜800nmの反射スペクトル測定において、350〜380nmの範囲内に反射スペクトル一次微分ピークを有する上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の複合金属酸化物粒子。
(5)光触媒活性を有する上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の複合金属酸化物粒子。
(6)粉末X線回折測定において、1〜10nmの平均結晶子径を有する上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の複合金属酸化物粒子。
(7)前記アモルファス金属酸化物が、前記元素Bのアモルファス金属酸化物である上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の複合金属酸化物粒子。
(8)溶媒に前記複合金属酸化物含有量10質量%で分散した際に、測定波長550nm、及び光路長1cmにおいて50%以上の透過率を有する(1)〜(7)のいずれか一項に記載の複合金属酸化物粒子。
【0012】
(9)溶媒、及び前記溶媒中に分散された上記(1)〜(8)のいずれか一項に記載の複合金属酸化物粒子を少なくとも含有することを特徴とする、分散液。
(10)前記複合金属酸化物の含有量が10質量%以上である上記(9)に記載の分散液。
(11)前記複合金属酸化物粒子が、1〜20nmの平均分散粒子径(D50)を有する上記(9)又は(10)に記載の分散液。
(12)分散剤をさらに含有する上記(9)〜(11)のいずれか一項に記載の分散液。
【0013】
(13)上記(1)〜(8)のいずれか一項に記載の複合金属酸化物粒子、及び前記複合金属酸化物粒子の表面に付着した分散剤を少なくとも含有する、ハイブリッド複合粒子。
(14)前記分散剤が、重合性無機粒子分散剤である上記(13)に記載のハイブリッド複合粒子。
(15)上記(1)〜(8)のいずれか一項に記載の複合金属酸化物粒子、及び、マトリックス樹脂又は該マトリックス樹脂の前駆物質を少なくとも含有する、ハイブリッド複合材。
(16)上記(15)に記載のハイブリッド複合材を含む、光学材料。
(17)上記(15)に記載のハイブリッド複合材を含む、光回路。
(18)上記(15)に記載のハイブリッド複合材を含む、光導波路。
(19)上記(15)に記載のハイブリッド複合材を含む、レンズ。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、屈折率や誘電率等の基本性能に優れるのみならず、分散性にも優れる複合金属酸化物粒子を実現することができる。とりわけ、この複合金属酸化物粒子は、シランカップリング剤等の分散剤を用いなくても溶媒中に高濃度分散が可能である。そして、この複合金属酸化物粒子を用いることで、屈折率及び透明性の高い光学材料等を実現するための工業原料、例えば分散液、ハイブリッド複合粒子、ハイブリッド複合材等を提供することができ、これらを用いることにより、屈折率及び透明性の高い光学材料等、例えば光回路、光導波路、レンズ等を、容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例4の複合金属酸化物粒子(焼成処理前)の粉末X線回折測定結果である。
図2】焼成処理後の実施例4の複合金属酸化物粒子の粉末X線回折測定結果である。
図3】実施例4の複合金属酸化物粒子の反射スペクトル測定結果(一次微分後)である。
図4】比較例1の複合金属酸化物粒子(焼成処理前)の粉末X線回折測定結果である。
図5】焼成処理後の比較例1の複合金属酸化物粒子の粉末X線回折測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらに限定されるものではない。すなわち、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。なお、本明細書において、例えば「1〜100」との数値範囲の表記は、その下限値「1」及び上限値「100」の双方を包含するものとする。また、他の数値範囲の表記も同様である。
【0017】
[1.複合金属酸化物粒子]
本実施形態の複合金属酸化物粒子は、複合金属酸化物を含有する複合金属酸化物粒子であって、粒子コア、及び、前記粒子コアの表面の少なくとも一部に存在するアモルファス金属酸化物を含有し、一般式Aで表されるペロブスカイト型結晶構造を有することを特徴とする。この複合金属酸化物粒子は、一般式Aで表されるペロブスカイト型結晶構造を有するとともに粒子表面にアモルファス金属酸化物が表面露出した構成を備えることで、高い屈折率と高い分散性とを実現している。以下、各構成要素について、詳述する。
【0018】
一般式A中、元素Aは、Ba、Sr、Ca、Mg、Al、Pb、Co、及びZnよりなる群から選択される1種以上であり、好ましくはBa、Sr、Ca、及びPbよりなる群から選ばれる1種以上である。また、一般式A中、元素Bは、Ti、Zr、W、Nb、Hf、及びSnよりなる群から選択される1種以上であり、好ましくはTi、Zr、及びSnよりなる群から選ばれる1種以上であり、さらに好ましくはTi及び/又はZrである。
【0019】
一般式A中、x及びyは、0<x≦1、0<y≦1、及び、0.01≦x/y≦0.99を満たす数である。本実施形態の複合金属酸化物粒子は、x/y=1であるABOで表されるペロブスカイト型結晶に対して、元素Aの存在割合が比較的に少ないという特徴を有する。ここで、x/yが0.01未満であると、アモルファス金属酸化物の存在割合が相対的に大きくなり過ぎ、高い屈折率を保てない傾向にある。また、x/yが0.99を超えると、アモルファス金属酸化物の存在割合が相対的に小さくなり過ぎ、高い分散性が保てない傾向にある。これらの観点から、x/yは、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上であり、また、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下である。例えばペロブスカイト型結晶構造を有するチタン酸バリウム(BaTiO)の粒子の場合、理論的にはBa(元素A)/Ti(元素B)のモル比は1/1(=1)となるが、本実施形態のように粒子表面にアモルファス酸化チタン(元素Bのアモルファス金属酸化物)を存在させることにより、チタン酸バリウムのモル比を1未満、具体的には0.5〜0.8程度にすることができる。
【0020】
なお、本明細書において、上記の一般式Aは、元素Aと元素Bと酸素原子の組み合わせを表すための式である。したがって、これら必須構成元素である元素Aと元素Bと酸素原子を少なくとも含むものである限り、本実施形態の複合金属酸化物粒子は、元素Aを2種以上含んでいても、元素Bを2種以上含んでいても、これら以外の他の元素(以下、単に「元素D」ともいう。)を含んでいてもよい。また、かかる元素Dは、一般式Aで表されるペロブスカイト型結晶構造のAサイト及び/又はBサイトの元素と置換されてもいてもよい。結晶構造の安定化、酸素欠陥による電荷の移動を抑制する等の目的に応じて、元素Dとして公知の元素を用いることができる。例えば、Aサイトに置換する元素D1としては、La、Bi、Y、Ce、Li、Na、Ag、K、Fe等が挙げられ、Bサイトに置換する元素D2としては、Ta、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が挙げられる。複合金属酸化物粒子が元素Dを含む場合、Aサイトに置換する元素D1の含有量は、元素Aに対して0.001モル%以上1モル%以下が好ましく、0.01モル%以上0.1モル%以下がより好ましい。また、Bサイトに置換する元素D2の含有量は、元素Bに対して0.001モル%以上1モル%以下が好ましく、0.01モル%以上0.1モル%以下がより好ましい。
【0021】
上述した一般式Aで表されるペロブスカイト型結晶構造を有する複合金属酸化物の好ましい例(代表組成式)を以下に示す。なお、以下の代表組成式において、0<x<1、0<y<1である。
チタン酸バリウム[BaTiO]、
チタン酸ストロンチウム[SrTiO]、
チタン酸バリウムストロンチウム[(BaSr1−x)TiO]、
チタン酸カルシウム[CaTiO]、
チタン酸ジルコニウム酸バリウム[Ba(TiZr1−y)O]、
チタン酸ジルコニウム酸鉛[Pb(TiZr1−y)O]、
チタン酸ジルコニウム酸バリウムストロンチウム[(BaSr1−x)(TiZr1−y)O]、
チタン酸ジルコニウム酸バリウムカルシウム[(BaCa1−x)(TiZr1−y)O]、
ジルコン酸バリウム[BaZrO]、
ジルコン酸ストロンチウム[SrZrO]、
スズ酸バリウム[BaSnO]、
スズ酸ストロンチウム[SrSnO]、
珪酸バリウム[BaSiO]等。
【0022】
複合金属酸化物粒子のペロブスカイト型結晶構造は、粉末X線回折測定で得られるX線回折プロファイルから確認することができる。例えばペロブスカイト型結晶構造を有するチタン酸バリウム(BaTiO)では、粉末X線回折測定において、(100)面、(110)面、(111)面、(200)面、(210)面、(211)面、(220)面、(300)面、(310)面等に起因するX線回折パターンが得られる。
【0023】
アモルファス金属酸化物は、粒子コアの表面の少なくとも一部に存在すればよく、粒子コアの表面の略全面に存在していても、粒子コア内に存在していてもよい。粒子コアの表面に存在(露出)するアモルファス金属酸化物により、溶媒への分散性が殊に高められる。アモルファス金属酸化物が分散性能に影響している理由は明らかでないが、均質で等方性のある準安定状態にあるアモルファス金属酸化物は、一般的に固体表面エネルギーが小さい複合金属酸化物に対して、比較的に比表面積が大きく、濡れ性が高く、溶媒へ親和性に優れるためであると推察される。
【0024】
アモルファス金属酸化物の存在は、種々の方法で確認することができる。例えば、粉末X線回折測定を焼成前及び焼成後に行い、そのX線回折パターンの変化に基づいて確認可能である。具体的には、まず常温で粉末X線回折測定を行う。このとき、一般式Aで表されるペロブスカイト型結晶構造に起因するX線回折パターンが得られるが、それぞれのX線回折ピークは、アモルファス金属酸化物の存在により、ブロードになる傾向にある。一方、例えば大気下、800℃、2時間の焼成処理後に粉末X線回折測定を行うと、焼成前のX線回折パターンとは異なる、新たなX線回折パターンが確認される。
【0025】
具体的には、焼成後に生じる新たなX線回折パターンがBO(サイトBは前記一般式Aで説明したものと同義である。)の結晶のピークを含む場合や、AB(1+n)(3+2n)(n≧1、各サイトA及びBは前記一般式Aで説明したものとそれぞれ同義である。)の結晶のピークを含む場合がある。この新たなX線回折パターンは、アモルファス成分の結晶化、例えば一般式Aで表される複合金属酸化物とアモルファス金属酸化物との混合焼成により生じる複合金属酸化物に起因するもの、または、複合金属酸化物とアモルファス金属酸化物の結晶化物に起因するものと考えられる。他方、複合金属酸化物粒子にアモルファス成分が多く含まれていない場合、例えば大気下、800℃、2時間の焼成処理後に粉末X線回折測定において検出されるX線回折パターンは、若干の結晶化度の向上は生じ得るが、焼成処理前後でほとんど同一である。
【0026】
ここで、x/y>0.6の場合には、焼成後に生じる新たなX線回折パターンがないこともあるが、BO(各サイトA及びBは、前記一般式Aで説明したものと同義である。)の結晶のピークを含むことが好ましい。
【0027】
また、x/y≦0.6の場合には、焼成後に生じる新たなX線回折パターンがAB(1+n)(3+2n)(n≧1、各サイトA及びBは前記一般式Aで説明したものとそれぞれ同義である。)の結晶のピークを含むことが好ましい。
【0028】
アモルファス酸化物を含む理由は明確ではないが、化学的に不安定な複合金属酸化物を含む複合金属酸化物粒子が生成していると考えられる。そのため精製過程において化学的に不安定な複合金属酸化物中のA成分が除去され、より安定な酸化物を作りやすいB成分のみのアモルファス金属酸化物が残存し、アモルファス金属酸化物をもつ複合金属酸化物粒子が生成していると推察される。ここで、x/yが小さいほどA成分が除去され、複合金属酸化物粒子にBによるアモルファス酸化物が多く含まれていると考えられる。そのため、表面に存在するアモルファス酸化物もより多くなり、分散媒との親和性がより高くなり、分散性がより高められると考えられる。
【0029】
とりわけ、焼成後に生じる新たなX線回折パターンが一般式Aで表される複合金属酸化物とアモルファス金属酸化物との混合焼成によるものである場合、一般式AB(式中、aは2以上の数であり、bは5以上の数であり、各サイトA及びBは前記一般式Aで説明したものとそれぞれ同義である。)で表される複合金属酸化物結晶のピークを含むことがより好ましい。中でもAB(1+n)(3+2n)(n≧1、各サイトA及びBは前記一般式Aで説明したものとそれぞれ同義である。)を示すことが、誘電率を維持できる傾向があるため好ましい。例えば、粒子表面にアモルファス酸化チタンを有する複合金属酸化物粒子は、焼成前後でX線回折プロファイルが大きく変化する。具体的には、焼成前のX線回折プロファイルを示す図1では、チタン酸バリウム(BaTiO)に起因するX線回折パターンを示しているが、800℃の焼成後のX線回折プロファイルを示す図2では、酸化チタン分がより多い組成(組成式BaTi)のX線回折パターンを示している。
【0030】
また、粒子コアの表面におけるアモルファス金属酸化物の存在は、反射スペクトル測定で確認することもできる。反射スペクトル測定では、粒子の表面物質の情報が得られる。しかも、反射スペクトルの一次微分を取ることで、スペクトルの微小なピークもはっきりと確認することができる。そのため、測定された反射スペクトルを標品と比較することで、粒子表面に存在(露出)する物質の同定が可能である。標品の例として、チタン酸バリウムの一次微分後の反射スペクトルのピーク位置は385nmであり、アモルファス酸化チタンの一次微分後の反射スペクトルのピーク位置は350〜380nmの範囲内(通常372nm前後)である。なお、本明細書において、反射スペクトル測定は、波長範囲240〜800nmで行い、他の測定条件は、後述する実施例に記載の条件とした。
【0031】
本実施形態の複合金属酸化物粒子は、透明性及び屈折率等の観点から、ナノサイズの粒子(ナノ粒子)であることが好ましく、具体的には、粉末X線回折測定において1〜10nmの平均結晶子径を有することが好ましい。平均結晶子径は、より好ましくは2nm以上、さらに好ましくは3nm以上であり、また、より好ましくは8nm以下、さらに好ましくは7nm以下が特に好ましい。平均結晶子径が上記好ましい範囲内にあると、サイズ効果が低減されて有機成分との屈折率差をより大きくでき高い屈折率付与効果が得られ易い傾向にあるとともに、レイリー散乱が抑制されて高い透明性が得られ易い傾向にある。
【0032】
なお、本明細書において、複合金属酸化物粒子の平均結晶子径は、X線回折法により得られる結晶性ピークの半値幅から、以下のScherrerの式から求めることができる。
〔Scherrer式〕 結晶子サイズ(D)=K・λ/(β・cosθ)
【0033】
ここで、KはScherrer定数でK=0.9であり、X線(CuKα1)波長(λ)=1.54056Å(1Å=1×10−10m)である。また、より精度を上げるために、CuKα1線由来のブラッグ角(θ)及び半値幅(βo)はプロファイルフィッティング法(Peason−VII関数)を用いて算出することが好ましい。計算に用いる半値幅βは、予め標準Siにより求めておいた装置由来の半値幅βiから下記式を用いて補正することが好ましい。
【数1】
【0034】
さらに、本実施形態の複合金属酸化物粒子は、光触媒活性を有することが好ましい。酸化チタンは光触媒活性があることが知られている。そのため、複合金属酸化物粒子の粒子表面に酸化チタンが存在する場合には、光触媒作用が確認できる。
【0035】
また、本実施形態の複合金属酸化物粒子は、透明性に優れる光学材料を得る等の観点からは、溶媒に複合金属酸化物含有量10質量%で分散した際に、測定波長550nm、及び光路長1cmにおいて50%以上の透過率を有することが好ましく、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは65%以上である。
【0036】
ここで、高屈折率材料は、さらなる高屈折率化が求められているが、ハイブリッド材料による高屈折率化には、有機材料よりも屈折率が高い複合金属酸化物の含有量を多くすることが必要である。ハイブリッド化の方法としては、例えば、有機材料に直接、複合金属酸化物を添加して分散させる方法と、あらかじめ溶媒に複合金属酸化物を分散させた溶媒分散液を、有機材料中で分散させる方法等が挙げられるが、後者の方法、すなわち溶媒分散液を使用した方法の方が高透明な分散液が得られ易い傾向にある。そのため高屈折率なハイブリッド材料を得るためには、溶媒分散液は複合金属酸化物含有量が多い方が、少量でハイブリッド材料中に複合金属酸化物を含有させることができる。また、溶媒分散液中の複合金属酸化物量が多いことで相対的に溶媒量が少なくなるため、ハイブリッド材料を得るための溶媒除去工程が短縮できるため有利である。よって溶媒に分散した複合金属酸化物含有量は10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。一方、その上限は特に限定されないが、通常は50質量%超含有させると、溶媒中でゲル化が生じ易くなる傾向にある。
【0037】
[2.複合金属酸化物粒子の製造方法]
本実施形態の複合金属酸化物粒子は、従来から知られている各種合成方法を適用して製造することができ、その製造方法は特に限定されない。これらの中でも、水熱法、とりわけソルボサーマル法が好適である。ここで、ソルボサーマル法とは、所定の溶媒の存在下で、高温高圧の環境下において複合金属酸化物粒子を製造する方法である。以下、ソルボサーマル法による複合金属酸化物粒子の製造方法について詳述する。
【0038】
ここでは、金属酸化物前駆体(複合金属酸化物前駆体)から、アミン類及び含酸素有機溶媒の存在下、高温高圧の環境下で複合金属酸化物粒子を製造するソルボサーマル法を例に挙げて説明する。この方法では、まず、複合金属酸化物前駆体と、含酸素有機溶媒と、所定量のアミン類とを共存させた反応液を用意する。なお、反応液には、本発明の効果を著しく損なわない限りその他の成分が含有されていてもよい。例えば、必要に応じて、その他の添加剤を含有させてもよい。この場合、含酸素有機溶媒中に、複合金属酸化物前駆体、アミン類及び添加剤が溶解又は分散した組成物として、反応液が用意される。
【0039】
[2−1.複合金属酸化物前駆体]
複合金属酸化物前駆体としては、所望の複合金属酸化物粒子が得られる限り任意の物質を使用することができる。したがって、製造しようとする複合金属酸化物粒子に含有される金属元素を含有する金属単体や金属化合物から適切なものを任意に選択して使用することができる。複合金属酸化物前駆体の例としては、金属塩化物、金属アセテート、金属アルコキシド、金属水酸化物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、副生する不純物(例えば塩化物等)を考慮すると、金属アルコキシド、金属アセテート、金属水酸化物が好ましい。
【0040】
複合金属酸化物前駆体の好適例としては、チタニウムメトキシド、チタニウムエトキシド、チタニウム−ジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタニウム−ジイソプロポキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタニウム−ジイソプロポキシド(ビスエチルアセトアセテート)、チタニウム−2−ヘキソキサイド、チタニウム−n−ブトキシド、チタニウムイソプロポキシド、チタニウムメトキシプロポキシド、チタニウム−n−ノニロキシド、チタニウムオキシド(ビステトラメチルペンタンジオネート)、チタニウム−n−プロポキシド、チタニウムステアリルオキシド、チタニウムトリイソステアリルイソプロポキシド、チタニウムトリメチルシロキシド、
【0041】
ジルコニウム−n−ブトキシド、ジルコニウム−t−ブトキシド、ジルコニウム−ジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウム−ジ−イソプロポキシド(ビス−2,2,6,6,−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムプロポキシド、ジルコニウム−2−エチルヘキサノエート、ジルコニウム−2−エチルヘキソキシド、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウム−2−メチル−2−ブトキシド、ジルコニウム−2,4−ペンタンジオネート、ジルコニウム−n−プロポキシド、ジルコニウム−2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、ジルコニウムトリメチルシロキシド、ジルコニルプロピオネート、
【0042】
バリウムエトキシド、バリウム−2−エチルヘキサノエート、バリウムイソプロポキシド、バリウムメトキシプロポキシド、バリウム−2,4−ペンタンジオネート水和物、バリウム−2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、バリウム−2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート水和物、バリウムチタンダブルアルコキシド、バリウムジルコニウムダブルアルコキシド、水酸化バリウム8水和物、
【0043】
ハフニウム−n−ブトキシド、ハフニウム−t−ブトキシド、ハフニウムエトキシド、ハフニウム−2,4−ペンタンジオネート、ハフニウムテトラメチルヘプタンジオネート、
【0044】
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)ストロンチウム水和物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)ストロンチウムテトラグライム付加物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)ストロンチウムトリグライム付加物、ストロンチウムチタンダブルアルコキシド、ストロンチウムジルコニウムダブルアルコキシド、水酸化ストロンチウム、ストロンチウムアセテート、ストロンチウム−2−エチルヘキサノエート、ストロンチウムイソプロポキシド、ストロンチウムメトキシプロポキシド、ストロンチウム−2,4−ペンタンジオネート、ストロンチウム−2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、
【0045】
セリウムアセテート水和物、セリウム−t−ブトキシド、セリウム−2−エチルヘキサノエート、セリウムイソプロポキシド、セリウムメトキシエトキシド、セリウム−2,4−ペンタンジオネート水和物、セリウム−2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、水酸化セリウム、
【0046】
トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)イットリウムトリグライム付加物、イットリウムアセテート4水和物、イットリウム−2−エチルヘキサノエート、イットリウムイソプロポキシド、イットリウムメトキシエトキシド、イットリウムオキサレート9水和物、イットリウム−2,4−ペンタンジオネート、イットリウム−2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート等が挙げられる。
【0047】
なお、複合金属酸化物前駆体は、1種を単独で使用することができ、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で使用することもできる。また、複合金属酸化物前駆体は、反応液中においてどのような状態で存在していてもよい。通常、複合金属酸化物前駆体は、含酸素有機溶媒中に溶解した状態で存在することが多い。
【0048】
[2−2.含酸素有機溶媒]
含酸素有機溶媒は、複合金属酸化物前駆体から複合金属酸化物粒子を合成する際の反応溶媒として機能するとともに、複合金属酸化物前駆体に酸素を供給する酸素供給源としても機能する。この含酸素有機溶媒は、分子内に酸素原子を含有する有機溶媒であれば、他に制限はなく任意のものを使用することができる。
【0049】
含酸素有機溶媒の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1以上、また、通常30以下、好ましくは20以下、より好ましくは10以下である。
【0050】
含酸素有機溶媒の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常32以上、好ましくは50以上、より好ましくは70以上、また、通常500以下、好ましくは400以下、より好ましくは300以下である。
【0051】
含酸素有機溶媒の沸点は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常50℃以上、好ましくは70℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは150℃以上、また、通常300℃以下、好ましくは270℃以下、より好ましくは250℃以下である。
【0052】
含酸素有機溶媒は、アルコール系溶媒、グリコール系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、グリコールエステル系溶媒、ケトン系溶媒、アルデヒド系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、シロキサン系溶媒等に大別されるが、その種類は特に限定されない。また、これらの含酸素有機溶媒の1分子中に含まれる酸素原子の個数は、1個以上であれば特に限定されない。含酸素有機溶媒の具体例としては、エタノール、メタノール、ベンジルアルコール、2−メトキシエタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、アセトン、ベンズアルデヒド、シクロヘキサノン、アセトフェノン、ジフェニルエーテル、ヘキサメチルジシロキサン等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、ベンジルアルコール、2−メトキシエタノールが好ましい。なお、含酸素有機溶媒は、1種を単独で使用することができ、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で使用することもできる。
【0053】
含酸素有機溶媒の使用量は、特に制限されず、適宜設定することができる。溶媒の取扱性及び目的物の収量等の観点から、含酸素有機溶媒中の複合金属酸化物前駆体の濃度が0.1mol/L以上1.0mol/L以下となるように、含酸素有機溶媒を用いることが好ましい。より好ましくは0.3mol/L以上、さらに好ましくは0.5mol/L以上であり、また、より好ましくは0.8mol/L以下、さらに好ましくは0.6mol/L以下である。
【0054】
[2−3.アミン類]
アミン類としては、1級アミン類、2級アミン類及び3級アミン類のいずれでも用いることができる。但し、アミン類の併用効果や酸化劣化着色等の観点から、1級アミン類及び/又は2級アミン類が好ましく、より好ましくは1級アミン類である。
【0055】
また、アミン類の中でも、脂肪族アミン類が特に好ましい。合成時の粒子安定剤としての作用が高いためである。とりわけ、1級及び/又は2級の脂肪族アミン類は、粒子成長の促進剤或いは抑制剤としての効果が高いという利点があるため、殊に好ましい。
【0056】
アミン類の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、合成時の粒子安定剤としての併用効果及び高温下で変性したアミンの除去性等の観点から、通常8以上、好ましくは14以上、より好ましくは16以上、また、通常24以下、好ましくは20以下、より好ましくは18以下である。
【0057】
アミン類の具体例としては、オレイルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、アニリン、メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、アミン類は、1種を単独で使用することができ、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で使用することもできる。
【0058】
なお、アミン類の使用量は、特に制限されず、適宜設定することができる。得られる複合金属酸化物粒子の平均結晶子径及び結晶性、不純物の発生等を考慮すると、複合金属酸化物前駆体に対するモル比で、0.5倍以上が好ましく、より好ましくは1.5倍以上、さらに好ましくは2.0倍以上、また、10倍以下が好ましく、より好ましくは6倍以下、さらに好ましくは4倍以下である。
【0059】
[2−4.その他の添加剤]
反応液には、上述した複合金属酸化物前駆体、含酸素有機溶媒及びアミン類の他に、添加剤を共存させてもよい。添加剤としては、カルボン酸類、含酸素有機溶媒以外の溶媒、ホスフィン類等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0060】
[2−4−1.カルボン酸類]
ここで用いるカルボン酸類は、得られる複合金属酸化物粒子をカルボン酸類で修飾するためのものである。含酸素有機溶媒中にカルボン酸類を共存させることにより、表面にカルボン酸類を有する複合金属酸化物粒子が得られるようになる。そのため、複合金属酸化物粒子の有機溶媒に対する溶解性を向上させることが可能となる。
【0061】
カルボン酸類の種類は、特に制限はない。複合金属酸化物粒子に結合できる限り、任意のカルボン酸類を用いることができる。着色抑制の観点からは、脂肪族カルボン酸類が好ましい。
【0062】
また、カルボン酸類の炭素数は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、修飾剤としての併用効果及び高温下で変性したカルボン酸の除去性等の観点から、8以上が好ましく、より好ましくは14以上、さらに好ましくは16以上、また、24以下が好ましく、より好ましくは20以下、さらに好ましくは18以下である。
【0063】
カルボン酸類の具体例としては、オレイン酸、カプリル酸、ベヘン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、カルボン酸類は、1種を単独で使用することができ、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で使用することもできる。
【0064】
カルボン酸類の使用量は、特に制限されず、適宜設定することができる。修飾剤としての併用効果、及び得られる複合金属酸化物粒子の品質等を考慮すると、複合金属酸化物前駆体に対するモル比で、0.1倍以上が好ましく、より好ましくは0.75倍以上、さらに好ましくは1.0倍以上、また、5倍以下が好ましく、より好ましくは3倍以下、さらに好ましくは2倍以下である。
【0065】
また、アミン類とカルボン酸類とを併用する場合には、カルボン酸類の使用割合は、アミン類に対するモル比で、1/2倍以下が好ましく、より好ましくは1/4倍以下である。
【0066】
[2−4−2.その他の溶媒]
反応液には、含酸素有機溶媒以外の溶媒を含有させてもよい。上述した複合金属酸化物粒子を得ることができる限り、その他の溶媒の種類及び使用量に制限はない。その他の溶媒としては、水等が挙げられる。また、その他の溶媒は、1種を単独で使用することができ、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で使用することもできる。
【0067】
[2−5.反応液を用意する際の操作]
反応液を用意する際の具体的操作は任意である。また、上述した複合金属酸化物前駆体、含酸素有機溶媒及びアミン類並びに必要に応じて用いられる添加剤を混合する順序も任意である。一般的に、複合金属酸化物前駆体は、空気中の水分と速やかに反応するものが多いため、窒素雰囲気等の不活性ガス中で混合することが好ましい。例えば、含酸素有機溶媒を所定時間窒素バブリングした後、複合金属酸化物前駆体を所定量混合及び攪拌し、その後、アミン類及び添加剤を所定量混合する方法が挙げられる。
【0068】
[2−6.反応]
ここでは、上述した反応液を所定の反応条件に保持し、反応を進行させ、反応液内において複合金属酸化物粒子を得る。
【0069】
反応時の温度(反応温度。ここでは、反応液の温度)は、複合金属酸化物粒子が得られる限り任意である。本方法の一つとして、比較的低い温度で複合金属酸化物粒子が得られることが挙げられる。かかる観点から、反応温度は、100℃以上が好ましく、より好ましくは150℃以上、また、240℃以下が好ましく、より好ましくは200℃以下である。反応温度が低すぎると結晶性が低下する傾向にあり、反応温度が高すぎると、有機物の分解による副生物の量が多くなり得られる複合金属酸化物粒子の品質が低下する傾向にあるため、これらのバランスを考慮して反応温度を設定すればよい。
【0070】
なお、反応温度は一定でも変動していてもよい。また、反応液の温度が、上述した反応温度の範囲に継続的に収まっていてもよく、断続的に収まっていてもよい。さらに、反応液内の温度は均一でも不均一でもよい。したがって、上述した複合金属酸化物粒子が得られる限り、例えば反応液内の一部が上記反応温度の範囲外となっていても構わない。
【0071】
また、反応を進行させる際の圧力条件も、複合金属酸化物粒子が得られる限り任意である。通常は、圧力条件は自圧以下である。なお、ここで自圧とは、含酸素有機溶媒の当該温度における蒸気圧を意味する。
【0072】
さらに、反応時間も、複合金属酸化物粒子を得ることができる限り任意である。本方の利点の一つとして、複合金属酸化物前駆体、含酸素有機溶媒及びアミン類を反応系に共存させることにより、従来よりも短時間で複合金属酸化物粒子が得られることが挙げられる。このため、本方法においては、反応時間は、48時間以下が好ましく、より好ましくは24時間以下である。
【0073】
また、反応時の雰囲気も、複合金属酸化物粒子を得ることができる限り任意である。一般的には、反応は不活性雰囲気下で行なうことが好ましい。複合金属酸化物前駆体は、空気中の水分と速やかに反応するものが多いためである。なお、ここで不活性雰囲気とは、複合金属酸化物前駆体、含酸素有機溶媒及びアミン類のいずれに対しても不活性な雰囲気であることを意味する。不活性雰囲気を構成する雰囲気ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられる。なお、不活性雰囲気には、単独の不活性ガスを使用することができ、2種以上の不活性ガスを任意の組み合わせ及び比率で使用することもできる。
【0074】
上記の反応条件を満たすためには、例えば、反応液を密閉容器内において上記所定の反応温度に保持するようにすればよい。例えば、反応液を不活性雰囲気下で密閉容器(オートクレーブ容器等)に封入し、当該密閉容器内で加熱して上記所定の反応温度に保持するようにすればよい。
【0075】
なお、反応液の用意と反応の進行とは、一連の工程として行なうことも可能である。例えば、予め所定の反応条件を整えておいた環境で、複合金属酸化物前駆体、含酸素有機溶媒及びアミン類並びに必要に応じて添加剤を混合すれば、反応液の用意と反応の進行とを、互いに区別しない一連の工程として行なうことが可能となる。
【0076】
[2−7.精製]
この精製工程では、上述した反応工程で得られた反応終了液から複合金属酸化物粒子を単離し、精製する。精製方法としては、酸による分散洗浄が好ましい。ここで用いる酸としては、特に限定されないが、有機酸が好ましく用いられる。有機酸としては、例えば酢酸、ギ酸、クエン酸、リンゴ酸、アクリル酸等のカルボキシル基を有する有機酸がより好ましい。
【0077】
例えば、生成した複合金属酸化物粒子を含む反応終了液に貧溶媒を混合することにより、複合金属酸化物粒子を沈殿させることができ、その沈殿物を回収することができる。ここでいう貧溶媒とは、回収目的物、すなわち複合金属酸化物粒子に対する貧溶媒を意味し、上述したカルボン酸類が吸着した複合金属酸化物粒子やアミン類を回収目的物とする場合には、これらに対する貧溶媒を意味する。貧溶媒としては、例えばアルコール等が挙げられる。回収した複合金属酸化物粒子は、さらに酸を混合して分散洗浄を繰り返し行い、その後、水やアルコール等の溶媒により酸を除去し、沈殿した複合金属酸化物粒子を回収することができる。なお、酸としては、複合金属酸化物粒子と反応しないことが求められる。例えば、チタン酸バリウムの洗浄には、Baと反応性の高い塩酸ではなく、酢酸やアクリル酸を用いることが好ましい。
【0078】
精製して複合金属酸化物粒子を得た後、必要に応じて、酸を洗浄した溶媒を除去する。溶媒の除去は、例えば減圧及び/又は加熱により実施することができるが、粒子表面のアモルファス金属酸化物が結晶化しない温度で加熱することが好ましい。このように溶媒除去した複合金属酸化物粒子を用いて、後述する分散液の調製を実施する。なお、酸を洗浄した溶媒が残っている状態で、後述する分散液の調製を実施しても構わない。
【0079】
[3.分散液]
本実施形態の分散液は、上述した複合金属酸化物粒子を溶媒中に分散させたものである。以下、各構成要素について、詳述する。
【0080】
[3−1.複合金属酸化物粒子]
上記2−1で述べたとおりであり、ここでの重複した説明は省略する。
なお、分散液中の複合金属酸化物粒子の平均分散粒子径は、得られる分散液の透明性及びこの分散液を用いて成形される各種成形体の透明性等の観点から、1〜20nmが好ましく、より好ましくは10nm以下である。なお、本明細書において、分散液中の複合金属酸化物粒子の平均分散粒子径は、動的光散乱式粒度測定装置を用いて測定される、体積基準のメジアン径(D50)を意味する。
【0081】
[3−2.溶媒]
分散液の溶媒は、上述した複合金属酸化物粒子を分散可能である限り、その種類は特に限定されないが、上述した複合金属酸化物粒子との相溶性等の観点から、有機溶媒が好ましく用いられる。好適な有機溶媒としては、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、グリコール系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、グリコールエステル系溶媒等が挙げられる。
【0082】
芳香族炭化水素系溶媒としてはトルエン、キシレン等、脂肪族炭化水素系溶媒としては、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタン、イソオクタン、ノルマルデカン等、アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、イソブタノール、ターシャリーブタノール、セカンダリーブタノール、1,3−ブタンジオール、1,4,−ブタンジオール、2−エチル−1−ヘキサノール、ベンジルアルコール等、エステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等、エーテル系溶媒としては、1,4−ジオキサン、イソプロピルエーテル、ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等、グリコール系溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ジヒドロキシプロパン等、グリコールエーテル系溶媒としては、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−tert−ブトキシエタノール、2−イソブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレングリコールメチルエーテル等、グリコールエステル系溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等、その他の特殊溶媒としてはテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、シメチルホルムアミド等が挙げられる。これらの中でも複合金属酸化物粒子の合成時に使用した含酸素有機溶媒がよく、特にアルコール系溶媒およびグリコールエーテル系溶媒が好ましい。なお、これらは、1種を単独で使用することができ、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で使用することもできる。
【0083】
[3−3.任意成分]
この分散液は、上述した複合金属酸化物粒子及び溶媒を少なくとも含むものである限り、その配合組成は特に限定されない。例えば光学用途においては、分散液は、光学材料(成形体)を構成するための前駆物質(例えばマトリックス樹脂或いはモノマー類)、重合開始剤や重合促進剤、重合禁止剤、硬化剤等を含有していてもよい。また、分散液は、当業界で公知の各種添加剤、例えば分散剤、酸化防止剤等を含有していてもよい。以下、これらの任意成分について詳述する。
【0084】
[3−3−1.樹脂/モノマー類]
樹脂/モノマーは、各種公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。光学材料として用いる場合には、紫外領域から近赤外領域において透明性を有する樹脂が好ましい。例えば、放射線や熱等でラジカル重合が可能な官能基(以下「重合性官能基」ともいう。)を有するモノマーを、必要に応じて重合開始剤を用いて、重合又は共重合させた樹脂を、好適に用いることができる。また、生産性等の観点からは、放射線により重合可能な硬化性モノマー(以下、「放射線硬化性モノマー」ともいう。)を、必要に応じて重合開始剤を用いて、重合又は共重合させた樹脂が好ましい。放射線硬化性モノマーの種類は、特に限定されないが、生産性等の観点からは、紫外線硬化性モノマーが好ましい。
【0085】
なお、ここで用いる樹脂は、重合性官能基が1つのモノマー(以下、「単官能モノマー」ともいう。)を重合して得られた樹脂でもよく、重合性官能基が2つ以上のモノマー(以下、「多官能モノマー」ともいう。)を重合して得られた樹脂のいずれでもでもよいが、柔軟性の制御がし易い等の観点から、重合性官能基の数が異なる2種類以上のモノマーを共重合して得られた樹脂が好ましい。好ましい樹脂としては、透明性、屈折率、及び生産性等の観点からは、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、及びシリコーン樹脂から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0086】
これらの樹脂は、1種を単独で使用することができ、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で使用することもできる。2種類以上の樹脂を用いる場合、組み合わせる樹脂の種類及び比率は任意である。柔軟性の制御のし易さ等の観点から、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂の少なくとも一方を主成分とするのが好ましい。なお、主成分とは50質量%以上を占める成分を意味する。樹脂の組み合わせの具体例としては、アクリル樹脂とメタクリル樹脂との組み合わせ、主成分としてのアクリル樹脂及びメタクリル樹脂の少なくとも一方と、副成分としてのエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、又はエポキシ樹脂及びシリコーン樹脂との組み合わせ、等が挙げられる。
【0087】
これらの中でも、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂の少なくとも一方を含むことが好ましく、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂の少なくとも一方を共重合して得られた樹脂が最も好ましい。
【0088】
上記樹脂成分を構成するモノマーとしては、放射線によりラジカル重合が可能な官能基としてアクリロイル基、メタクリロイル基、及び/又はエポキシ基等を有するモノマーが好適に用いられる。
【0089】
以下、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂を構成するモノマーとして好適に用いられるモノマー、必要に応じて使用される重合開始剤及び硬化剤をそれぞれ例示する。
【0090】
(i)アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を構成するモノマーと重合開始剤
[モノマー]
アクリル樹脂及びメタクリル樹脂を構成するモノマーとして、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有するモノマーが好適に用いられる。アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有するモノマーは、単官能又は多官能のいずれでもよく、脂肪族(脂環式を含む。)又は芳香族のいずれでもよい。なお、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」と「メタクリレート」の一方又は双方を意味する。「(メタ)アクリル」についても同様である。単官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、単官能脂肪族(脂環式を含む)(メタ)アクリレート系モノマー、及び単官能芳香族(メタ)アクリレート系モノマーが挙げられる。多官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、2官能(メタ)アクリレート系モノマー及び3官能以上の(メタ)アクリレート系モノマーが挙げられる。2官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、2官能脂肪族(脂環式を含む)(メタ)アクリレート系モノマー及び2官能芳香族(メタ)アクリレート系モノマーが挙げられる。3官能以上の(メタ)アクリレート系モノマーとしては、多官能脂肪族(脂環式を含む)(メタ)アクリレート系モノマー及び多官能芳香族(メタ)アクリレート系モノマーが挙げられる。これらのモノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのモノマーとして、具体的には次のようなものが挙げられる。
【0091】
<単官能脂肪族(脂環式を含む)(メタ)アクリレート系モノマー>
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、メタリル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、2−ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、末端水酸基ポリエステルモノ(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、アリル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートモノエステル、(メタ)アクリル酸、カルビトール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、単官能ウレタン(メタ)アクリレート、単官能エポキシ(メタ)アクリレート、単官能ポリエステル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン等。
【0092】
これらの中でも、直鎖状の脂肪族(メタ)アクリレート類、エチレングリコール鎖又はプロピレングリコール鎖を有する(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアクリレート類、ホスフェート基含有アクリレート類が好ましく用いられる。
【0093】
<単官能芳香族(メタ)アクリレート系モノマー>
フェニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシー2−メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3−(2−フェニルフェニル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性p−クミルフェノールの(メタ)アクリレート、2−ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4−ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(n=2)(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性(n=2.5)(メタ)アクリレート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、o−フェニルフェノールグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート等のフタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート、フルオレン骨格含有単官能性(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル化o−フェニルフェノール(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート等。
【0094】
これらの中でも、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシアクリレート類、フルオレン骨格含有単官能性(メタ)アクリレート類が好ましく用いられる。
【0095】
<2官能脂肪族(脂環式を含む)(メタ)アクリレート系モノマー>
ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2官能ウレタン(メタ)アクリレート、2官能エポキシ(メタ)アクリレート、2官能ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのカプロラクトン変性ジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸グリセリンモノ(メタ)アクリレート、3−(メタ)アクリロイロキシグリセリンモノ(メタ)アクリレート等。
【0096】
<2官能芳香族(メタ)アクリレート系モノマー>
ビスフェノールAのEO(エポキシ)付加物ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、フルオレン骨格含有二官能性(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAの(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAの(メタ)アクリレート、ビスフェノールAとグリシジル(メタ)アクリレートとの反応で得られるエポキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAとグリシジル(メタ)アクリレートとの反応で得られるエポキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAとグリシジル(メタ)アクリレートとの反応で得られるエポキシ(メタ)アクリレート等。
【0097】
<3官能以上の脂肪族(メタ)アクリレート系モノマー>
ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、多官能ウレタン(メタ)アクリレート、多官能エポキシ(メタ)アクリレート、多官能ポリエステル(メタ)アクリレート、トリス[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリス[2−((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル]イソシアヌレート、2,4,6−トリス((メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−1,3,5−トリアジン等。
【0098】
<3官能以上の芳香族(メタ)アクリレート系モノマー>
フルオレン骨格含有多官能性(メタ)アクリレート、2,4,6−トリス((メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)−1,3,5−トリアジン等。
【0099】
これらの(メタ)アクリレート系モノマーのうち、耐熱性向上の観点からは、単官能芳香族(メタ)アクリレート系モノマーが好ましい。すなわち、樹脂の分子構造内に芳香環を導入することは、耐熱性の向上に有効である。芳香環を導入したアクリレート系モノマーの中でも、高い耐熱性を有するものとしては、ナフタレン構造やフルオレン構造、ビスフェノールA構造等を有するものが挙げられる。
【0100】
また、(メタ)アクリレート系モノマーのうち、ウレタン(メタ)アクリレートやウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー等のウレタン(メタ)アクリレート類は、得られる無機有機ハイブリッド材料に柔軟性を付与するための成分として有効である。なお、(メタ)アクリレート系モノマー中に極性官能基を有するモノマーは、複合金属酸化物粒子の表面処理剤として使用することができる。このようなモノマーとしては、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート等のフタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0101】
[重合開始剤]
これらのモノマーを重合するための重合開始剤の種類は、各種の重合反応を行えるものであれば特に制限はないが、ラジカル重合反応を行えるラジカル重合開始剤が好ましい。例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ベンゾインエーテル類、ヒドロキシケトン類、アシルホスフィンオキシド類、ジアゾニウムカチオンオニウム塩、ヨードニウムカチオンオニウム塩、スルホニウムカチオンオニウム塩等の重合開始剤を、硬化性モノマーの種類に応じて、適宜用いることができる。
【0102】
具体的には、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−メチルチオ]フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー、イソプロピルチオキサントン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、ベンゾフェノン、エチルアントラキノン、ベンゾフェノンアンモニウム塩、チオキサントンアンモニウム塩、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、1,4−ジベンゾイルベンゼン、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルジフェニルエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、ジベンゾイル、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、o−メチルベンゾイルベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル、活性ターシャリアミン、カルバゾール・フェノン系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、ベンゾイル、トリアリルスルフォニウム、ヘキサフルオロフォスフェート塩、6フッ化リン系芳香族スルホニウム塩、6フッ化アンチモン系芳香族スルホニウム塩、6フッ化アンチモン系芳香族スルホニウム塩、6フッ化アンチモン系芳香族スルホニウム塩、トリアリルスルフォニウム、ヘキサフルオロアンチモン、4−メチルフェニル−[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−ヘキサフルオロフォスフェート(1−)、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(o−ベンゾイルオキシム)]、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(o−アセチルオキシム)、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート、(9−オキソ9H−キサンテン−2−イル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−n−アルキル(C10〜13)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−n−アルキル(C10〜13)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモン、トリフェニルスルホニムトリフルオロスルホネート、トリフェニルスルホニウムビシクロ[2,2,1]ヘプタン−1−メタンスルフォネート、(9−オキソ9H−キサンテン−2−イル)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、p−アジドベンズアルデヒド、p−アジドアセトフェノン、p−アジド安息香酸、p−アジドベンズアルデヒド−2−スルホン酸Na塩、p−アジドベンザルアセトフェノン、4,4’−ジアジドカルコン、4,4’−ジアジドジフェニルスルフィド、3,3’−ジアジドジフェニルスルフィド、2,6−ビス−(4’−アジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサン、1,3−ビス−(4’−アジドベンザル)−プロパノン、4,4’−ジアジドカルコン−2−スルホン酸Na塩、4,4’−ジアジドスチルベン−2,2’−ジスルホン酸Na塩、1,3’−ビス−(4’−アジドベンザル)−2’−ジスルホン酸Na塩−2−プロパノン、2,6−ビス−(4’−アジドベンザル)−2’−スルホン酸(Na塩)シクロヘキサノン、2,6−ビス−(4’−アジドベンザル)−2’−スルホン酸(Na塩)4−メチル−シクロヘキサノン、α−シアノ−4,4’−ジベンゾスチルベン、2,5−ビス−(4’−アジドベンザルスルホン酸Na塩)シクロペンタノン、3−スルホニルアジド安息香酸、4−スルホニルアジド安息香酸、シンナミン酸、α−シアノシンナミリデンアセトン酸、p−アジド−α−シアノシンナミン酸、p−フェニレンジアクリル酸、p−フェニレンジアクリル酸ジエチルエステル、ポリビニルシンナメート、ポリフェノキシ−イソプロピルシンナミリデンアセテート、ポリフェノキシ−イソプロピルα−シアノシンナミリデンアセテート、ナフトキノン(1,2)ジアジド(2)−4−スルホン酸Na塩、ナフトキノン(1,2)ジアジド(2)−5−スルホン酸Na塩、ナフトキノン(1,2)ジアジド(2)−5−スルホン酸エステル(I)、ナフトキノン(1,2)ジアジド(2)−5−スルホン酸エステル(II)、ナフトキノン(1,2)ジアジド(2)−4−スルホン酸塩、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノントリ(ナフトキノンジアジドスルホン酸)エステル、ナフトキノン−1,2,5−(トリヒドロキシベンゾフェノン)トリエステル、1,4−イミノキノン−ジアジド(4)−2−スルフォアミド(I)、1−ジアゾ−2,5−ジエトキシ−4−p−トリメルカプトベンゼン塩、5−ニトロアセナフテン、N−アセチルアミノ−4−ニトロナフタレン、有機ホウ素化合物、これら以外の、光によりカチオンを発生する光酸発生剤、光によりアニオンを発生する光塩基発生剤等が挙げられるが、これらに限定されない。これらは、所望の硬化物の特性に応じて、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0103】
(ii)エポキシ樹脂を構成するモノマーと重合開始剤
[モノマー]
エポキシ樹脂を構成するモノマーとしては、エポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシモノマー」ともいう。)が好適に用いられる。例えば、ビスフェノールA型エポキシモノマー、ビスフェノールF型エポキシモノマー、フェノールノボラック型エポキシモノマー、クレゾールノボラック型エポキシモノマー等のノボラック型エポキシモノマー、脂環式エポキシモノマー、トリグリシジルイソシアヌレート、ヒダントインエポキシモノマー等の含窒素環エポキシモノマー、水素添加ビスフェノールA型エポキシモノマー、水素添加ビスフェノールF型エポキシモノマー、脂肪族系エポキシモノマー、グリシジルエーテル型エポキシモノマー、ビスフェノールS型エポキシモノマー、ビフェニル型エポキシモノマー、ジシクロ環型エポキシモノマー、ナフタレン型エポキシモノマー等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0104】
なお、モノマーとしてエポキシモノマーのみを用いても、前記エポキシモノマーと重合可能な官能基を有する他の種類のモノマーとを併用してもよいが、エポキシモノマーと重合可能な官能基を有する他の種類のモノマーとの併用が好ましい。エポキシモノマーのみを用いる場合には、エポキシモノマーとして単官能のモノマーと多官能のモノマーとの併用が好ましい。エポキシモノマーと重合可能な他の種類のモノマーと併用する場合には、エポキシモノマーとして単官能のモノマー及び多官能のモノマーのいずれか一方のみを用いてもよい。
【0105】
なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基とエポキシ基のいずれも有するモノマーは、便宜的に(メタ)アクリレート系モノマーと称する。
【0106】
[硬化剤]
上記エポキシモノマーの硬化剤としては、アミン系硬化剤や酸無水物系硬化剤等の公知の硬化剤を使用できる。酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸等が挙げられる。硬化剤は、所望の硬化物の特性に応じて、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0107】
(iii)シリコーン樹脂を構成するモノマーと重合開始剤
[モノマー]
シリコーン樹脂を構成するモノマーとしては、重合性シリコーンモノマーが好適に用いられる。例えば、モノマー中に重縮合やヒドロシリル化等が可能な官能基を有するシリコーンモノマーや、放射線硬化性シリコーンモノマー等が挙げられる。具体的には、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、アミノ基含有シリコーン、カルボキシ基含有シリコーン、カルビノール基含有シリコーン、フェニル基含有シリコーン、オルガノハイドロジェンシリコーン、多環式炭化水素含有シリコーン、芳香環炭化水素含有シリコーン、フェニルシルセスキオキサン等のシリコーンモノマー等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、放射線硬化性のシリコーンモノマーが好ましい。
【0108】
重合性シリコーンモノマーのみ用いても、重合性シリコーンモノマーと重合可能な他の種類のモノマーを併用してもよいが、重合性シリコーンモノマーと重合可能な他の種類のモノマーとの併用が好ましい。
【0109】
重合性シリコーンモノマーのみを用いる場合には、単官能の重合性シリコーンモノマーと多官能の重合性シリコーンモノマーとの併用が好ましい。重合性シリコーンモノマーと重合可能な他の種類のモノマーとを併用する場合には、単官能の重合性シリコーンモノマー及び多官能の重合性シリコーンモノマーのいずれか一方のみを用いてもよい。なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基を有するシリコーンは、便宜的に重合性シリコーンモノマーと称する。
【0110】
[重合開始剤]
モノマーの種類に応じて、重縮合反応触媒、ヒドロシリル化反応触媒、放射線硬化用重合開始剤等を用いることができる。重縮合反応触媒としては、公知の触媒を用いることができる。ヒドロシリル化反応触媒としては、アルミニウム化合物、白金化合物、ロジウム化合物、パラジウム化合物等が挙げられる。放射線硬化用重合開始剤としては、前記(メタ)アクリレート系モノマーの重合に用いる重合開始剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0111】
また、上記のモノマー以外に、ビニル基、アクリルアミド基等の官能基を持つ放射線硬化性モノマーを含んでもよい。
【0112】
[3−3−2.分散剤]
分散液は、必要に応じて、複合金属酸化物粒子等を分散するための分散剤を含有していてもよい。分散液は、本発明の効果を著しく損なわない限り、既知の分散剤の1種又は2種以上を含んでもよい。ここで用いる分散剤としては、複合金属酸化物粒子の分散性を高める観点からは、複合金属酸化物粒子に吸着するための吸着部位(力ルボキシル基、リン含有オキソ酸基、硫黄含有オキソ酸基等)を有していることが好ましい。また、屈折率や透明性を低下させない観点からは、分散剤自体が高屈折率であり透明であることが好ましい。このような分散剤としては、重合性官能基(重合性基)及び吸着部位(吸着性基)を有する分散剤が挙げられる。例えば、WO2013/047786等に記載の重合性無機粒子分散剤が好ましく用いられる。WO2013/047786に記載のすべての内容は、ここに参照として引用される。
【0113】
[3−3−3.酸化防止剤]
分散液は、耐候性付与等の観点から、窒素系或いはリン系等の公知の酸化防止剤を含有していてもよい。その場合、分散液中の酸化防止剤の含有量は、複合金属酸化物粒子に対して0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは1質量%以上であり、また、5質量%以下が好ましく、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。分散液中の酸化防止剤の含有量が上記好ましい数値範囲内にあることで、長期間、着色や劣化が抑制され易い傾向にあるとともに、透明性や屈折率の低下等も抑制され易い傾向にある。
【0114】
[3−3−4.重合禁止剤]
分散液は、複合金属酸化物粒子の重合防止等の観点から、重合禁止剤を含有していてもよい。その場合、分散液中の重合禁止剤の含有量は、複合金属酸化物粒子に対して0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは1質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。分散液中の重合禁止剤の含有量が上記好ましい数値範囲内にあることで、長期間、分散剤中でのゲル化が防止され易い傾向にあるとともに、透明性や屈折率の低下等も抑制され易い傾向にある。
【0115】
[3−3−5.その他]
分散液は、さらに、粘度やハンドリング性を改善する等の観点から、粘度調整剤やレペリング剤等を含んでいてもよい。この場合、複合金属酸化物粒子との相溶性に優れるものが好ましく用いられる。
【0116】
[3−4.分散液の各種態様]
本実施形態の分散液は、上述した複合金属酸化物粒子が溶媒中に分散されたものであれば、その態様に制限はない。具体的態様としては、上述した複合金属酸化物粒子を溶媒中に含有する分散剤、上述した複合金属酸化物粒子と樹脂/モノマーとを溶媒中に含有する分散剤、上述した複合金属酸化物粒子と樹脂/モノマーと重合開始剤等の任意成分とを溶媒中に含有する分散剤等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0117】
[3−5.分散液の物性]
本実施形態の分散液は、透明性に優れる光学材料を得る等の観点からは、測定波長550nm、及び光路長1cmで、50%以上の透過率を有することが好ましく、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは65%以上である。ここで本明細書において、透過率は、複合金属酸化物粒子の固形分濃度が10質量%以上に調製された分散液を用いたときの値とする。
【0118】
[3−6.分散液の製法]
本実施形態の分散液は、上述した複合金属酸化物粒子と溶媒とを、必要に応じてさらに上述した任意成分を加えて、混合することで容易に得ることができる。本実施形態の複合金属酸化物粒子は、高い分散性能を持つため、複合金属酸化物粒子が均一に分散した透明分散液を作製することが容易である。必要に応じて上述した分散剤を加えることで、さらに均一な分散状態にすることもできる。ここで、混合後に、必要に応じて超音波分散等の分散工程を行い、複合金属酸化物粒子をより均一に分散させてもよい。なお、分散剤の混合方法は、複合金属酸化物粒子と分散剤とをあらかじめ混合した後で溶媒に加えても、複合金属酸化物粒子と溶媒の混合液に分散剤を加えてもよい。
【0119】
分散液中の複合金属酸化物粒子の含有割合は、特に限定されないが、複合金属酸化物粒子の固形分濃度で、0.1質量%以上90質量%以下が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上50質量%以下である。複合金属酸化物粒子の固形分濃度を上記好ましい数値範囲内にすることで、屈折率付与効果が高く、複合金属酸化物粒子の分散安定性が高く、透明性に優れる分散液が得られ易い傾向にある。
【0120】
[4.ハイブリッド複合粒子]
本実施形態のハイブリッド複合粒子は、上述した複合金属酸化物粒子と、その粒子表面の付着した上述した分散剤とを少なくとも含有するものである。このように微細な複合金属酸化物粒子の粒子表面を分散剤で表面修飾することにより、高い分散性を有する複合金属酸化物粒子が得られる。このハイブリッド複合粒子は、例えば、溶媒中に複合金属酸化物粒子と分散剤とを含む分散液から、溶媒を除去することで容易に得ることができる。また、複合金属酸化物粒子に、分散剤を含む液を噴霧塗布し、溶媒を乾燥させることによっても容易に得ることができる。
【0121】
[5.ハイブリッド複合材]
本実施形態のハイブリッド複合材は、上述した複合金属酸化物粒子と、マトリックス樹脂又は該マトリックス樹脂の前駆物質(モノマー)とを少なくとも含有する。ここで用いるマトリックス樹脂及びその前駆物質としては、分散液の項において述べた樹脂/モノマー類を好適に用いることができる。また、ハイブリッド複合材は、分散液の項において述べた任意成分を含んでいてもよい。上述した複合金属酸化物粒子は、マトリックス樹脂又はその前駆物質に混合可能であり、このように複合金属酸化物粒子を混合することによってその樹脂や前駆物質の屈折率を容易に高めることができる。
【0122】
ハイブリッド複合材中のマトリックス樹脂及びその前駆物質の含有割合は、特に限定されないが、屈折率改善効果を高めるとともに、得られるハイブリッド複合材の機械的物性を高める等の観点から、複合金属酸化物粒子に対する固形分換算で、10質量%以上が好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、また、80質量%以下が好ましい。
【0123】
上述したハイブリッド複合材の製造方法は、特に限定されない。例えば、複合金属酸化物粒子をマトリックス樹脂及びその前駆物質中に、必要に応じてさらに上述した任意成分を加えて、混合することで容易に得ることができる。本実施形態の複合金属酸化物粒子は、高い分散性能を持つため、容易にハイブリッド複合材を得ることが可能である。また、混合後に必要に応じて、混練工程を行い、複合金属酸化物粒子をより均一に分散させてもよい。さらに、必要に応じて上述した分散剤を加えることで、さらに均一な分散状態にすることもできる。
【0124】
ハイブリッド複合材の好ましい製造方法としては、湿式法が挙げられる。ここでいう湿式法とは、例えば、前述の方法により複合金属酸化物粒子とマトリックス樹脂又はその前駆物質とを溶媒中に分散させた分散液に、所望のマトリックス樹脂を混合し、最後に溶媒を除去するような方法である。このような湿式法によれば、複合金属酸化物粒子の粒子表面に均一にマトリックス樹脂又はその前駆物質を作用させることができるため、例えばナノサイズの複合金属酸化物粒子の凝集が抑制されるとともに、透明分散状態の安定化を図ることも可能である。
【0125】
上述したハイブリッド複合材は、任意の形状に成形加工することができる。所定形状のハイブリッド複合材硬化物を得るには、例えば、前述の重合開始剤や硬化剤を用いることができる。このとき、重合開始剤の含有量は、特に限定されないが、屈折率、機械強度、硬化性、相溶性、着色抑制等の観点から、ハイブリッド複合材中の複合金属酸化物粒子以外の固形分に対する固形分換算で、0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、また、20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0126】
ハイブリッド複合材の成形においては、各種公知の成形方法が適用可能である。例えば、フィルム状又はシート状に成形、硬化させる場合、スピンコート、バーコート、スプレーコート、ロールコート等の既知の製膜方法を用いて製膜した後、紫外線、熱、電子線等を照射して重合させて硬化させることができる。また、ディスペンサー等を用いて所望の部位に直接流し込んだ後、紫外線等で重合させてもよい。硬化方法は、特に限定されないが、紫外線(UV)照射による硬化が好適である。UV照射による場合、紫外線ランプは、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、UV−LED等を用い、紫外線の照度としては、屈折率、機械強度、硬化性、相溶性、着色抑制等の観点から、30〜3000mW/cm、積算光量は10〜10000mJ/cmで照射して硬化させることが好ましい。このとき、これらの光照射又は電子線照射と、赤外線照射、熱風印加、高周波加熱等を併用してもよい。
【0127】
[6.用途]
本実施形態の複合金属酸化物粒子は、高い屈折率を有するのみならず、易分散である。そのため、これを用いた分散液、ハイブリッド複合粒子、ハイブリッド複合材及び光学材料においては、高い屈折率を有する複合金属酸化物粒子を容易に多量に含有させることができ、複合金属酸化物粒子の含有量を変化させることも可能である。したがって、本実施形態の複合金属酸化物粒子は、可視光域で用いられる光学部材、各種光学特性を組み合わせて一つの光学系を設計するようなレンズ用途、膜用途、光回路、光導路等、広範囲な屈折率制御が求められる各種用途等において好適に用いることができる。とりわけ、本実施形態の複合金属酸化物粒子は、幅広い波長領域で透明性が高く、しかも高い屈折率が要求される各種の光学用部材として最適な素材の1つとなる。すなわち、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(EL)、表面電界ディスプレイ(SED)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)の表示部に用いられる前方散乱、反射、集光等の機能性フィルムに最適である。また、光ファイバー、導光シート、マイクロアレイレンズシート、プリズムシート、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ等の光伝送部材、レンズシート、拡散フィルム、ホログラフィック基板、調光フィルム等においても適用可能である。
【実施例】
【0128】
以下、実施例等を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0129】
(実施例1)
窒素置換したフラスコに水酸化バリウム8水和物(複合金属酸化物前駆体)162.3g(514mmol)と2−メトキシエタノール(含酸素有機溶媒)を705.1ml加えて10分間撹拌した。次に、704.3mlのベンジルアルコール(含酸素有機溶媒)とチタニウムイソプロポキシド(複合金属酸化物前駆体)93.4g(329mmol)を溶解した液を添加し、10分間撹拌した。次いで、オレイルアミン(アミン類)1179g(4407mmol)を添加して10分間撹拌した後、オートクレーブに移液し、室温から105分かけて160℃まで加熱して5時間保持した。
【0130】
得られた乳白色スラリー状の反応終了液に反応終了液の2.2倍(質量比)量のメタノールを添加し、混合撹拌した。メタノールを混合した液を遠心分離し、得られた沈殿物にさらに反応終了液の2.2倍量(質量比)量のメタノールを添加し、分散させた後、さらに遠心分離を行い、沈殿物を得た。この沈殿物に5質量%アクリル酸の溶液(溶媒:アセトン/水=1/1(質量比))を反応終了液の2.2倍(質量比)量を加えて分散洗浄した後、遠心分離を行い、沈殿物を得た。その後、沈殿物に反応終了液と同量のアセトンを加えて分散し、遠心分離を行う操作を2回繰り返した。遠心分離で得られた沈殿物を65℃で2時間乾燥することにより、実施例1の複合金属酸化物粒子(ペロブスカイト型結晶構造をもつチタン酸バリウムの粉末)を得た。
また、遠心分離で得られた沈殿物に2−メトキシエタノールを加えて、実施例1の分散液を得た。この分散液は、チタン酸バリウムの固形分濃度が10質量%になるように調整した。得られた分散液の透過率、分散粒子径を測定した。測定結果を表3に示す。
【0131】
(実施例2)
15mlの2−メトキシエタノール(含酸素有機溶媒)をフラスコに入れ、窒素バブリングしながら、3.45g(10.9mmol)の水酸化バリウム8水和物(複合金属酸化物前駆体)を添加して10分間攪拌した。別に15mlのベンジルアルコール(含酸素有機溶媒)に1.995g(7.02mmol)のチタニウムイソプロポキシド(複合金属酸化物前駆体)を溶解した液を調製しておき、水酸化バリウムの2−メトキシエタノール溶液に添加し、1時間攪拌した。
次いで、オレイルアミン25g(アミン類:93mmol)を添加して2時間攪拌した後、テフロン(登録商標)製の内筒を有するステンレス製密閉容器に封入し、オイルバスを用いて5℃/minの速度で140℃まで昇温し1.5時間保持し、その後5℃/minの速度で150℃まで昇温し10分保持し、5℃/minの速度で160℃まで昇温し20分保持した。
【0132】
得られた乳白色スラリー状の反応終了液25gにメタノール55gを添加し、30分撹拌した。生成した沈殿を遠心分離した。得られた沈殿物にさらにメタノール55gを添加し沈殿物を分散させた後、さらに遠心分離を行い、沈殿物を得た。この沈殿物に5質量%酢酸の溶液(溶媒:アセトン/水=1/1(質量比))55gを加えて分散洗浄した後、遠心分離を行い、沈殿物を得た。その後、沈殿物にアセトン27.5gを加えて分散し、遠心分離を行う操作を2回繰り返した。遠心分離で得られた沈殿物を120℃2時間乾燥することにより、実施例1の複合金属酸化物粒子(ペロブスカイト型結晶構造をもつチタン酸バリウム粉末)を得た。元素分析及び粉末X線回折測定結果を表3に示す。
また、遠心分離で得られた沈殿物に2−メトキシエタノールを加えて、実施例2の分散液を得た。この分散液は、チタン酸バリウムの固形分濃度が10質量%になるように調整した。得られた分散液の透過率、分散粒子径を測定した。測定結果を表3に示す。
【0133】
(実施例3)
実施例2においてオレイルアミンの添加量を1.9g(7mmol)に変更する以外は、実施例2と同様に行い、実施例3の複合金属酸化物粒子(ペロブスカイト型結晶構造をもつチタン酸バリウムの粉末)及び分散液を得た。
【0134】
(実施例4)
実施例2において熱処理条件を105分かけて室温から160℃まで加熱するように変更する以外は、実施例2と同様に行い、実施例4の複合金属酸化物粒子(ペロブスカイト型結晶構造をもつチタン酸バリウムの粉末)及び分散液を得た。
【0135】
(実施例5)
12.06mlの2−メトキシエタノール(含酸素有機溶媒)をフラスコに入れ、窒素パブリングしながら、9.29g(29mmol)の水酸化バリウム8水和物(複合金属酸化物前駆体)を添加して10分間撹拌した。別に12.06m1のベンジルアルコール(含酸素有機溶媒)に5.37g(19mmol)のチタニウムイソプロポキシド(複合金属酸化物前駆体)を溶解した液を調製しておき、水酸化バリウムの2−メトキシエタノール溶液に添加し、1時間撹拌した。
次いで、オレイルアミン5.05g(アミン類:19mmol)を添加して2時間撹拌した後、テフロン(登録商標)製の内筒を有するステンレス製密閉容器に封入し、オイルバスを用いて室温から75分かけて120℃まで加熱して1時間保持した。
【0136】
得られた乳白色スラリー状の反応終了液12.5gにメタノール27.5gを添加し、30分混合撹拌した。メタノールを混合した液を遠心分離し、得られた沈殿物にさらにメタノール27.5gを添加し、分散させた後、さらに遠心分離を行い、沈殿物を得た。この沈殿物に5質量%アクリル酸の溶液(溶媒:アセトン/水=1/1(質量比))27.5gを加えて分散洗浄した後、遠心分離を行い、沈殿物を得た。その後、沈殿物にアセトン12.5gを加えて分散し、遠心分離を行う操作を2回繰り返した。遠心分離で得られた沈殿物を120℃で2時間乾燥することにより、実施例5の複合金属酸化物粒子(ペロブスカイト型結晶構造をもつチタン酸バリウムの粉末)を得た。
また、遠心分離で得られた沈殿物に2−メトキシエタノールを加えて、実施例5の分散液を得た。この分散液は、チタン酸バリウムの固形分濃度が10質量%になるように調整した。得られた分散液の透過率、分散粒子径を測定した。測定結果を表3に示す。
【0137】
(比較例1)
5質量%酢酸溶液による分散洗浄およびそれに続くアセトンでの分散洗浄を省略する以外は、実施例2と同様に操作して、比較例1の複合金属酸化物粒子(チタン酸バリウムの粉末)を得た。
また、遠心分離で得られた沈殿物に2−メトキシエタノールを加えて、チタン酸バリウムの固形分濃度が10質量%の分散液を得ようとしたが、大部分のチタン酸バリウム粉末は均一に分散しなかった。
【0138】
(比較例2)
複合金属酸化物粒子として、キシダ化学社製チタン酸バリウムを使用した以外は、比較例1と同様に操作して、チタン酸バリウムの固形分濃度が10質量%の分散液を得ようとしたが、大部分のチタン酸バリウム粉末は均一に分散しなかった。
【0139】
[各種評価]
得られた複合金属酸化物粒子のICP元素分析、平均結晶子径の測定、反射スペクトル測定、光触媒作用の確認試験、及び粉末X線回折測定をそれぞれ行った。また、得られた分散液中の複合金属酸化物粒子の平均分散粒子径D50の測定、及び得られた分散液の透過率の測定をそれぞれ行った。各結果を表3に示す。なお、それぞれの測定条件及び評価方法は、以下のとおりである。
【0140】
<ICP元素分析>
実施例1〜5及び比較例2においては、各々の複合金属酸化物粒子30mgに、硝酸5mlとフッ酸水を0.05ml添加して、さらに水を約15ml加えて超音波をかけて、それぞれ分解処理を行なった。この溶液を定容後希釈し、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−AES、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、CAP7600 Duo)を用いて測定を行った。得られた元素分析結果から、BaとTiのモル比を算出した。
比較例1においては、複合金属酸化物粒子30mgに、硝酸4ml、塩酸3ml、フッ酸水1mlおよび水を約15ml添加し、80℃で加熱して溶解した。定容後希釈し、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−AES、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、CAP7600 Duo)を用いて測定を行った。得られた元素分析結果から、BaとTiのモル比を算出した。
【0141】
<平均結晶子径>
複合金属酸化物粒子の平均結晶子径を、粉末X線回折測定(XRD測定)で得られる結晶性ピークの半値幅から、上述したScherrer式から算出した。
【0142】
【表1】
【0143】
【表2】
【0144】
<反射スペクトル測定>
60φ積分球付属装置を取り付けた分光光度計U−3310形(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、反射スペクトルの測定を行った。このとき、測定精度が保たれるように、複合金属酸化物粒子粉末を、サンプル表面が十分に平滑となるようにセルに詰めた。また、硫酸バリウムをベースラインとして使用し、測定した反射スペクトルは一次微分を行った。
積分球の球径(内面):60mm
球内面 :硫酸バリウム処理
副白板 :酸化アルミニウム
使用検出器 :超高感度ホトマルR928
測定波長範囲 :240−800nm
開口比率 :7.8%
【0145】
<光触媒作用の確認試験>
試験I
実施例1は、0.1質量%のメチルレッド溶液に複合金属酸化物粒子を加えたサンプルと、同溶液に複合金属酸化物粒子を加えていない参照サンプルの2種を準備した。それぞれのサンプルを普通紙の上に滴下し、それらを大気下、室温で、25W昼白色の蛍光灯(ツインハード工業株式会社製、FL−8271型)から10〜15cm離して光を照射して1週間放置した。1週間経過後、複合金属酸化物粒子を加えたサンプルと複合金属酸化物粒子を加えた参照サンプルとを比較して退色を目視で確認した。退色があった場合を光触媒作用があるとした。
試験II
0.1質量%のメチルレッド溶液に複合金属酸化物粒子を加えたサンプルと、同溶液に複合金属酸化物粒子を加えていない参照サンプルを準備した。それぞれのサンプルを普通紙の上に滴下し、それらを大気下、室温で、25W昼白色の蛍光灯(ツインハード工業株式会社製、FL−8271型)から10cm離して光を照射した。複合金属酸化物粒子を加えていない参照サンプルと比較して退色を目視で確認した。表3において、参照サンプルに比べて退色が大きかった場合を「○」とし、光触媒作用があり参照サンプルと退色が変わらなかった場合を「×」とした。
【0146】
<粉末X線回折測定>
まず、得られた複合金属酸化物粒子の粉末X線回折測定(XRD測定)を行った。次に、この複合金属酸化物粒子に、大気下、室温で電気炉に入れ、昇温速度10℃/分で室温から800℃に加熱し、800℃で2時間保持した後、30分かけて放冷することで焼成処理を施した。その後、この焼成処理後の複合金属酸化物粒子の粉末X線回折測定を行った。得られた焼成処理前後のX線回折プロファイルを比較し、異なる結晶のピークの有無を確認した。なお、粉末X線測定装置の仕様を表1に、測定条件を表2に示す。
【0147】
<平均分散粒子径D50
動的光散乱式粒子径分布測定装置(SZ−100、堀場製作所製)を用いて測定した。
ホルダ温度 :25℃
試料屈折率 :2.40(チタン酸バリウム)
分散媒屈折率 :1.401(2−メトキシエタノール)
分散媒粘度 :1.2mPa・s
【0148】
<透過率>
分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、U−3500)を用いて測定した。セル長は10mmで、石英セルに分散液を入れて550nmの透過率を測定した。ベースラインには石英セル(大気)のみを使用した。ナノ粒子濃度は10質量%に調整した。
【0149】
表3に、各種結果を示す。また、図1に、実施例4の複合金属酸化物粒子(焼成処理前)の粉末X線回折測定結果を、図2に、実施例4の焼成処理後の複合金属酸化物粒子の粉末X線回折測定結果をそれぞれ示す。さらに、図3に、実施例4の複合金属酸化物粒子の反射スペクトル測定結果(一次微分後)を示す。また、図4に、比較例1の複合金属酸化物粒子(焼成処理前)の粉末X線回折測定結果を、図5に、比較例1の焼成処理後の複合金属酸化物粒子の粉末X線回折測定結果をそれぞれ示す。
【0150】
【表3】
図1
図2
図3
図4
図5