(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液晶表示素子の動作モードが、IPSモード、TNモード、FFSモード、またはFPAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である、請求項16に記載の液晶表示素子。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。「液晶組成物」および「液晶表示素子」の用語をそれぞれ「組成物」および「素子」と略すことがある。「液晶表示素子」は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。「液晶性化合物」は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物および液晶相を有しないが、ネマチック相の温度範囲、粘度、誘電率異方性のような特性を調節する目的で組成物に混合される化合物の総称である。この化合物は、例えば1,4−シクロヘキシレンや1,4−フェニレンのような六員環を有し、その分子構造は棒状(rod like)である。「重合性化合物」は、組成物中に重合体を生成させる目的で添加する化合物である。
【0014】
液晶組成物は、複数の液晶性化合物を混合することによって調製される。この液晶組成物に、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、極性化合物のような添加物が必要に応じて添加される。液晶性化合物や添加物は、このような手順で混合される。液晶性化合物の割合(含有量)は、添加物を添加した場合であっても、添加物を含まない液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)で表される。添加物の割合(添加量)は、添加物を含まない液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)で表される。重量百万分率(ppm)が用いられることもある。重合開始剤および重合禁止剤の割合は、例外的に重合性化合物の重量に基づいて表される。
【0015】
「ネマチック相の上限温度」を「上限温度」と略すことがある。「ネマチック相の下限温度」を「下限温度」と略すことがある。「比抵抗が大きい」は、組成物が初期段階において室温だけでなく上限温度に近い温度でも大きな比抵抗を有し、そして長時間使用したあと室温だけでなく上限温度に近い温度でも大きな比抵抗を有することを意味する。「電圧保持率が大きい」は、素子が初期段階において室温だけでなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を有し、そして長時間使用したあと室温だけでなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を有することを意味する。組成物や素子では、経時変化試験(加速劣化試験を含む)の前後で特性が検討されることがある。「誘電率異方性を上げる」の表現は、誘電率異方性が正である組成物のときは、その値が正に増加することを意味し、誘電率異方性が負である組成物のときは、その値が負に増加することを意味する。
【0016】
式(1)で表される化合物を「化合物(1)」と略すことがある。式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を「化合物(1)」と略すことがある。「化合物(1)」は、式(1)で表される1つの化合物、2つの化合物の混合物、または3つ以上の化合物の混合物を意味する。他の式で表される化合物についても同様である。「少なくとも1つの‘A’」の表現は、‘A’の数は任意であることを意味する。「少なくとも1つの‘A’は、‘B’で置き換えられてもよい」の表現は、‘A’の数が1つのとき、‘A’の位置は任意であり、‘A’の数が2つ以上のときも、それらの位置は制限なく選択できる。このルールは、「少なくとも1つの‘A’が、‘B’で置き換えられた」の表現にも適用される。
【0017】
成分化合物の化学式において、末端基R
1の記号を複数の化合物に用いる。これらの化合物において、任意の2つのR
1が表す2つの基は同一であってもよく、または異なってもよい。例えば、化合物(2−1)のR
1がエチルであり、化合物(2−2)のR
1がエチルであるケースがある。化合物(2−1)のR
1がエチルであり、化合物(2−2)のR
1がプロピルであるケースもある。このルールは、他の末端基などの記号にも適用される。式(2)において、eが2のとき、2つの環Dが存在する。この化合物において、2つの環Dが表す2つの環は、同一であってもよく、または異なってもよい。このルールは、eが2より大きいとき、任意の2つの環Dにも適用される。このルールは、他の記号にも適用される。このルールは、化合物(1−11)における2つの−Sp
2−P
2のような場合にも適用される。
【0018】
六角形で囲んだA、B、C、Dなどの記号はそれぞれ環A、環B、環C、環Dなどの環に対応し、六員環、縮合環などの環を表す。式(1)において、この六角形を横切る斜線は、環上の任意の水素が−Sp
1−P
1などの基で置き換えられてもよいことを表す。‘b’などの添え字は、置き換えられた基の数を示す。添え字‘b’が0のとき、そのような置き換えはない。添え字‘b’が2以上のとき、環A上には複数の−Sp
1−P
1が存在する。−Sp
1−P
1が表す複数の基は、同一であってもよいし、または異なってもよい。
【0019】
2−フルオロ−1,4−フェニレンは、下記の2つの二価基を意味する。化学式において、フッ素は左向き(L)であってもよいし、右向き(R)であってもよい。このルールは、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルのような、環から2つの水素を除くことによって生成した、非対称な二価基にも適用される。このルールは、カルボニルオキシ(−COO−または−OCO−)のような二価の結合基にも適用される。
【0020】
「少なくとも1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよい」のような表現がこの明細書で使われる。この場合、−CH
2−CH
2−CH
2−は、隣接しない−CH
2−が−O−で置き換えられることによって−O−CH
2−O−に変換されてもよい。しかしながら、隣接した−CH
2−が−O−で置き換えられることはない。この置き換えでは−O−O−CH
2−(ペルオキシド)が生成するからである。すなわち、この表現は、「1つの−CH
2−は−O−で置き換えられてもよい」と「少なくとも2つの隣接しない−CH
2−は−O−で置き換えられてもよい」の両方とを意味する。このルールは、−O−への置き換えだけでなく、−CH=CH−や−COO−のような二価基へ置き換えにも適用される。式(5)において、R
4は炭素数4から20のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−CH=CH−などで置き換えられてもよい。この置き換えによってアルキルの炭素数が増加する。このようなとき、最大の炭素数は30である。このルールは、アルキレン、シクロアルキレンなどにも適用される。
【0021】
液晶性化合物のアルキルは、直鎖状または分岐状であり、環状アルキルを含まない。直鎖状アルキルは、分岐状アルキルよりも好ましい。これらのことは、アルコキシ、アルケニルなどの末端基についても同様である。1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置は、上限温度を上げるためにシスよりもトランスが好ましい。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を意味する。好ましいハロゲンはフッ素または塩素である。さらに好ましいハロゲンはフッ素である。
【0023】
項1. 第一添加物として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの重合性化合物を含有し、第二添加物として少なくとも1つの極性化合物を含有し、そして正の誘電率異方性を有する液晶組成物。
式(1)において、環Aおよび環Cは独立して、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、テトラヒドロピラン−2−イル、1,3−ジオキサン−2−イル、ピリミジン−2−イル、またはピリジン−2−イルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよく;環Bは、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、ナフタレン−1,2−ジイル、ナフタレン−1,3−ジイル、ナフタレン−1,4−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−1,6−ジイル、ナフタレン−1,7−ジイル、ナフタレン−1,8−ジイル、ナフタレン−2,3−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、またはピリジン−2,5−ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよく;Z
1およびZ
2は独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−CO−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよく、そして少なくとも1つの−CH
2−CH
2−は、−CH=CH−、−C(CH
3)=CH−、−CH=C(CH
3)−、または−C(CH
3)=C(CH
3)−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;P
1、P
2、およびP
3は、重合性基であり;Sp
1、Sp
2、およびSp
3は独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく、そして少なくとも1つの−CH
2−CH
2−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;aは0、1、または2であり;b、c、およびdは独立して、0、1、2、3、または4であり;ただし、環Aおよび環Cがフェニルであるとき、aは1または2であり、そしてaが1であるとき、Sp
1およびSp
3は単結合である。
【0024】
項2. 項1に記載の式(1)において、P
1、P
2、およびP
3が独立して式(P−1)から式(P−5)で表される基の群から選択された重合性基である、項1に記載の液晶組成物。
式(P−1)から式(P−5)において、M
1、M
2、およびM
3は独立して、水素、フッ素、炭素数1から5のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルである。
【0025】
項3. 第一添加物が式(1−1)から式(1−12)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの重合性化合物である、項1または2に記載の液晶組成物。
式(1−1)から式(1−12)において、P
1、P
2、およびP
3は独立して、式(P−1)から式(P−3)で表される基の群から選択された重合性基であり、ここでM
1、M
2、およびM
3は独立して、水素、フッ素、炭素数1から5のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルであり;
Sp
1、Sp
2、およびSp
3は独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく、そして少なくとも1つの−CH
2−CH
2−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよい。
【0026】
項4. 液晶組成物の重量に基づいて、第一添加物の割合が0.03重量%から10重量%の範囲である、項1から3のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0027】
項5. 第一成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から4のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(2)において、R
1は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Dは、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;Z
3は、単結合、−CH
2CH
2−、−CH
2O−、−OCH
2−、−COO−、−OCO−、−CF
2O−、または−OCF
2−であり;X
1およびX
2は独立して、水素またはフッ素であり;Y
1は、フッ素、塩素、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルオキシであり;eは、1、2、3、または4である。
【0028】
項6. 第一成分として式(2−1)から式(2−46)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から5のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0032】
式(2−1)から式(2−46)において、R
1は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
【0033】
項7. 液晶組成物の重量に基づいて、第一成分の割合が10重量%から90重量%の範囲である、項5または6に記載の液晶組成物。
【0034】
項8. 第二成分として式(3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から7のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(3)において、R
2およびR
3は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Eおよび環Fは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;Z
4は、単結合、−CH
2CH
2−、−CH
2O−、−OCH
2−、−COO−、または−OCO−であり;fは、1、2、または3である。
【0035】
項9. 第二成分として式(3−1)から式(3−13)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から8のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(3−1)から式(3−13)において、R
2およびR
3は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
【0036】
項10. 液晶組成物の重量に基づいて、第二成分の割合が10重量%から90重量%の範囲である、項8または9に記載の液晶組成物。
【0037】
項11. 第三成分として式(4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から10のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(4)において、R
7およびR
8は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または炭素数2から12のアルケニルオキシであり;環Qおよび環Vは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;環Uは、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2−クロロ−3−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−5−メチル−1,4−フェニレン、3,4,5−トリフルオロナフタレン−2,6−ジイル、または7,8−ジフルオロクロマン−2,6−ジイルであり;Z
7およびZ
8は独立して、単結合、−CH
2CH
2−、−CH
2O−、−OCH
2−、−COO−、または−OCO−であり;pは、1、2、または3であり、qは、0または1であり;pとqとの和は3以下である。
【0038】
項12. 第三成分として式(4−1)から式(4−21)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から11のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(4−1)から式(4−21)において、R
7およびR
8は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または炭素数2から12のアルケニルオキシである。
【0039】
項13. 液晶組成物の重量に基づいて、第三成分の割合が3重量%から25重量%の範囲である、項11または12に記載の液晶組成物。
【0040】
項14. 第二添加物が、窒素、酸素、硫黄、およびリンから選択されたヘテロ原子を有する極性基を有する極性化合物である、項1から13のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0041】
項15. 第二添加物として式(5)および式(6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの極性化合物を含有する、項1から14のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(5)において、MESは、少なくとも1つの環を有するメソゲン基であり;式(6)において、R
4は炭素数4から20のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−C≡C−、または炭素数3から8のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく;式(5)および式(6)において、R
5は、OH構造の酸素原子、SH構造の硫黄原子、および第一級、第二級、または第三級のアミン構造の窒素原子の少なくとも1つを有する極性基であり;gは、1または2である。
【0042】
項16. 第二添加物として式(5−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から15のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(5−1)において、環Gおよび環Iは独立して、炭素数6から25の芳香族基、炭素数5から25の複素芳香族基、炭素数3から25の脂環式基、または炭素数4から25の複素脂環式基であり、これらの基は縮合環であってもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は基Tで置き換えられてもよく、ここで基Tは、−OH、−(CH
2)
i−OH、ハロゲン、−CN、−NO
2、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)N(R
0)
2、−C(=O)R
0、−N(R
0)
2、−(CH
2)
i−N(R
0)
2、炭素数6から20のアリール、炭素数6から20のヘテロアリール、炭素数1から25のアルキル、炭素数1から25のアルコキシ、炭素数2から25のアルキルカルボニル、炭素数2から25のアルコキシカルボニル、炭素数2から25のアルキルカルボニルオキシ、または炭素数2から25のアルコキシカルボニルオキシであり、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく、ここでR
0は、水素または炭素数1から12のアルキルであり、iは、1、2、3、または4であり;Z
5は、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−OCO−、−O−CO−O−、−OCH
2−、−CH
2O−、−SCH
2−、−CH
2S−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CF
2S−、−SCF
2−、−(CH
2)
i−、−CF
2CH
2−、−CH
2CF
2−、−(CF
2)
i−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−C(R
0)
2、または単結合であり、ここでR
0は、水素または炭素数1から12のアルキルであり、iは、1、2、3、または4であり;R
5は、炭素数1から25のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−NR
0−、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、または炭素数3から8のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、ここでR
0は、水素または炭素数1から12のアルキルであり、少なくとも1つの第三級炭素(>CH−)は、窒素(>N−)で置き換えられてもよく、そして少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく、ただしR
5は、OH構造の酸素原子、SH構造の硫黄原子、または第一級、第二級、または第三級のアミン構造の窒素原子の少なくとも1つを有し;R
6は、水素、ハロゲン、炭素数1から25のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−NR
0−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、または炭素数3から8のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、そして少なくとも1つの第三級炭素(>CH−)は、窒素(>N−)で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく、ここでR
0は、水素または炭素数1から12のアルキルであり;hは、0、1、2、3、4、または5である。
【0043】
項17. 第二添加物として式(6−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの極性化合物を含有する、項1から15のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(6−1)において、R
4は、炭素数4から20のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−C≡C−、または炭素数3から8のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく;R
5は、炭素数1から25のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−NR
0−、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、または炭素数3から8のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、ここでR
0は、水素または炭素数1から12のアルキルであり、少なくとも1つの第三級炭素(>CH−)は、窒素(>N−)で置き換えられてもよく、そして少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく、ただしR
5は、OH構造の酸素原子、SH構造の硫黄原子、および第一級、第二級、または第三級のアミン構造の窒素原子の少なくとも1つを有する。
【0044】
項18. 項15に記載の式(5)および式(6)において、R
5が式(A1)から式(A4)のいずれか1つで表される基である、項15から17のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(A1)から式(A4)において、Sp
4、Sp
6、およびSp
7は独立して、単結合または基(−Sp’’−X’’−)であり、ここで、Sp’’は、炭素数1から20のアルキレンであり、このアルキレンにおいて少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−S−、−NH−、−N(R
0)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−N(R
0)−CO−O−、−O−CO−N(R
0)−、−N(R
0)−CO−N(R
0)−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、または−CNで置き換えられてもよく、そしてX’’は、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(R
0)−、−N(R
0)−CO−、−N(R
0)−CO−N(R
0)−、−OCH
2−、−CH
2O−、−SCH
2−、−CH
2S−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CF
2S−、−SCF
2−、−CF
2CH
2−、−CH
2CF
2−、−CF
2CF
2−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR
0−、−CY
2=CY
3−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−、または単結合であり、ここでR
0は、水素または炭素数1から12のアルキルであり、Y
2およびY
3は独立して、水素、フッ素、塩素、または−CNであり;Sp
5は、>CH−、>CR
11−、>N−、または>C<であり;X
3は、−OH、−OR
11、−COOH、−NH
2、−NHR
11、−N(R
11)
2、−SH、−SR
11、
であり、ここでR
0は、水素または炭素数1から12のアルキルであり;X
4は、−O−、−CO−、−NH−、−NR
11−、−S−、または単結合であり;Z
6は、炭素数1から15のアルキレン、炭素数5または6の脂環式基、またはこれらの組み合わせであり、これらの基において、少なくとも1つの水素は、−OH、−OR
11、−COOH、−NH
2、−NHR
11、−N(R
11)
2、フッ素、または塩素で置き換えられてもよく;R
11は、炭素数1から15のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−C≡C−、−CH=CH−、−COO−、−OCO−、−CO−、または−O−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;環Jは、炭素数6から25の芳香族基または炭素数3から25の脂環式基であり、これらの基は縮合環であってもよく、これらの基において1つから3つの水素はR
Lで置き換えられてもよく;R
Lは、−OH、−(CH
2)
i−OH、フッ素、塩素、−CN、−NO
2、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)N(R
0)
2、−C(=O)R
0、−N(R
0)
2、−(CH
2)
i−N(R
0)
2、−SH、−SR
0、炭素数6から20のアリール、炭素数6から20のヘテロアリール、炭素数1から25のアルキル、炭素数1から25のアルコキシ、炭素数2から25のアルキルカルボニル、炭素数2から25のアルコキシカルボニル、炭素数2から25のアルキルカルボニルオキシ、または炭素数2から25のアルコキシカルボニルオキシであり、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく、ここでR
0は、水素または炭素数1から12のアルキルであり、iは、1、2、3、または4であり;jは、0、1、2、または3であり;kは、2、3、4、または5である。
【0045】
項19. 第二添加物が式(5−1−1)から式(5−1−4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である、項16に記載の液晶組成物。
式(5−1−1)から式(5−1−4)において、環Gおよび環Iは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,3−フェニレン、2−エチル−1,4−フェニレン、2,6−ジエチル−1,4−フェニレン、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、または、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレンであり;環Jは、シクロヘキシルまたはフェニルであり;Z
5は、単結合、−CH
2CH
2−、−COO−、または−OCO−であり;Z
6は、単結合、炭素数1から15のアルキレン、炭素数5または6の脂環式基、またはこれらの組み合わせであり、これらの基において、少なくとも1つの水素は、−OH、−OR
11、−COOH、−NH
2、−NHR
11、−N(R
11)
2、フッ素、または塩素で置き換えられてもよく、R
11は、炭素数1から15のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの−CH
2−は、−C≡C−、−CH=CH−、−COO−、−OCO−、−CO−、−O−、または−NH−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;Sp
4は、単結合、エチレン、プロピレン、またはメチレンオキシであり;Sp
7は、単結合、または炭素数1から5のアルキレンであり、このアルキレンにおいて−CH
2−は−O−または−NH−で置き換えられてもよく;R
6は、炭素数1から8のアルキルまたはフッ素であり;hは、0、1、2、3、4、または5であり;X
3は−OH、−COOH、−SH、−OCH
3、または−NH
2であり;X
4は単結合または−O−である。
【0046】
項20. 第二添加物が式(6−1−1)から式(6−1−29)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である、項17に記載の液晶組成物。
【0048】
式(6−1−1)から式(6−1−29)において、R
4は、炭素数4から20のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−C≡C−、または炭素数3から8のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよい。
【0049】
項21. 液晶組成物の重量に基づいて、第二添加物の割合が10重量%未満である、項1から20のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0050】
項22. 項1から21のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【0051】
項23. 液晶表示素子の動作モードが、IPSモード、TNモード、FFSモード、またはFPAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である、項22に記載の液晶表示素子。
【0052】
項24. 項1から21のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有し、この液晶組成物中の重合性化合物が重合された、高分子支持配向型の液晶表示素子。
【0053】
項25. 項1から21のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有し、この液晶組成物中の重合性化合物が重合された、配向膜を有しない液晶表示素子。
【0054】
項26. 項1から21のいずれか1項に記載の液晶組成物の、液晶表示素子における使用。
【0055】
項27. 項1から21のいずれか1項に記載の液晶組成物の、高分子支持配向型の液晶表示素子における使用。
【0056】
項28. 項1から21のいずれか1項に記載の液晶組成物の、配向膜を有しない液晶表示素子における使用。
【0057】
本発明は、次の項も含む。(a)上記の液晶組成物を2つの基板のあいだに配置し、この組成物に電圧を印加した状態で光を照射し、この組成物に含有される重合性化合物を重合させることによって、上記の液晶表示素子を製造する方法。(b)ネマチック相の上限温度が70℃以上であり、波長589nmにおける光学異方性(25℃で測定)が0.08以上であり、そして周波数1kHzにおける誘電率異方性(25℃で測定)が2以上である、上記の液晶組成物。
【0058】
本発明は、次の項も含む。(c)上記の重合性化合物(1)を少なくとも2つ含有する上記の組成物。(d)上記の重合性化合物(1)とは異なる重合性化合物をさらに含有する上記の組成物。(e)光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、極性化合物のような添加物の1つ、2つまたは少なくとも3つを含有する上記の組成物。(f)上記の組成物を含有するAM素子。(g)上記の組成物を含有し、そしてTN、ECB、OCB、IPS、FFS、VA、またはFPAのモードを有する素子。(h)上記の組成物を含有する透過型の素子。(i)上記の組成物を、ネマチック相を有する組成物として使用すること。(j)上記の組成物に光学活性化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用。
【0059】
本発明の組成物を次の順で説明する。第一に、組成物の構成を説明する。第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物に及ぼす主要な効果を説明する。第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分の好ましい割合およびその根拠を説明する。第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。第五に、好ましい成分化合物を示す。第六に、組成物に添加してもよい添加物を説明する。第七に、成分化合物の合成法を説明する。最後に、組成物の用途を説明する。
【0060】
第一に、組成物の構成を説明する。本発明の組成物は組成物Aと組成物Bに分類される。組成物Aは、化合物(2)、化合物(3)、および化合物(4)から選択された液晶性化合物の他に、その他の液晶性化合物、添加物などをさらに含有してもよい。「その他の液晶性化合物」は、化合物(2)、化合物(3)、および化合物(4)とは異なる液晶性化合物である。このような化合物は、特性をさらに調整する目的で組成物に混合される。添加物は、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、極性化合物などである。
【0061】
組成物Bは、実質的に化合物(2)、化合物(3)、および化合物(4)から選択された液晶性化合物のみからなる。「実質的に」は、組成物が添加物を含有してもよいが、その他の液晶性化合物を含有しないことを意味する。組成物Bは組成物Aに比較して成分の数が少ない。コストを下げるという観点から、組成物Bは組成物Aよりも好ましい。その他の液晶性化合物を混合することによって特性をさらに調整できるという観点から、組成物Aは組成物Bよりも好ましい。
【0062】
第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果を説明する。成分化合物の主要な特性を本発明の効果に基づいて表2にまとめる。表2の記号において、Lは大きいまたは高い、Mは中程度の、Sは小さいまたは低い、を意味する。記号L、M、Sは、成分化合物のあいだの定性的な比較に基づいた分類であり、記号0は、値がゼロであるか、またはゼロに近いことを意味する。
【0064】
成分化合物を組成物に混合したとき、成分化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果は次のとおりである。化合物(1)は、重合によって重合体を与える。この重合体は、液晶分子の配向を安定化するので、素子の応答時間を短縮し、そして画像の焼き付きを改善する。化合物(2)は、誘電率異方性を上げ、そして下限温度を下げる。化合物(3)は、粘度を下げる。化合物(4)は、短軸方向における誘電率を上げる。化合物(5)および化合物(6)は、極性基の作用で基板表面に吸着し、液晶分子の配向を制御する。液晶分子の配向という観点から、化合物(1)の重合体は効果的である。化合物(5)または化合物(6)も効果的である。化合物(1)および化合物(5)、または化合物(1)および化合物(6)の組み合わせはさらに効果的である。この組み合わせによって相乗効果が期待できる。この組み合わせは、化合物(5)のみ、または化合物(6)のみよりも良好な長期安定性を期待できる。
【0065】
第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分の好ましい割合およびその根拠を説明する。組成物における成分の好ましい組み合わせは、化合物(1)+化合物(2)+化合物(5)、化合物(1)+化合物(2)+化合物(3)+化合物(5)、化合物(1)+化合物(2)+化合物(3)+化合物(4)+化合物(5)、化合物(1)+化合物(2)+化合物(6)、化合物(1)+化合物(2)+化合物(3)+化合物(6)、化合物(1)+化合物(2)+化合物(3)+化合物(4)+化合物(6)、化合物(1)+化合物(2)+化合物(5)+化合物(6)、化合物(1)+化合物(2)+化合物(3)+化合物(5)+化合物(6)、または化合物(1)+化合物(2)+化合物(3)+化合物(4)+化合物(5)+化合物(6)である。さらに好ましい組み合わせは、化合物(1)+化合物(2)+化合物(3)+化合物(5)である。
【0066】
化合物(1)は、高分子支持配向型の素子に適合させる目的で、組成物に添加される。化合物(1)の好ましい割合は、素子の長期信頼性を向上させるために約0.03重量%以上であり、素子の表示不良を防ぐために約10重量%以下である。さらに好ましい割合は、約0.1重量%から約2重量%の範囲である。特に好ましい割合は、約0.2重量%から約1.0重量%の範囲である。
【0067】
化合物(2)の好ましい割合は、誘電率異方性を上げるために約10重量%以上であり、下限温度を下げるために、または粘度を下げるために約90重量%以下である。さらに好ましい割合は約15重量%から約75重量%の範囲である。特に好ましい割合は約20重量%から約65重量%の範囲である。
【0068】
化合物(3)の好ましい割合は、上限温度を上げるために、または粘度を下げるために約10重量%以上であり、誘電率異方性を上げるために約90重量%以下である。さらに好ましい割合は約20重量%から約85重量%の範囲である。特に好ましい割合は約30重量%から約80重量%の範囲である。
【0069】
化合物(4)の好ましい割合は、誘電率異方性を上げるために約3重量%以上であり、下限温度を下げるために約25重量%以下である。さらに好ましい割合は約5重量%から約20重量%の範囲である。特に好ましい割合は約5重量%から約15重量%の範囲である。
【0070】
化合物(5)または化合物(6)は、液晶分子の配向を制御する目的で、組成物に添加される。化合物(5)または化合物(6)の好ましい割合は、液晶分子を配向させるために約0.05重量%以上であり、素子の表示不良を防ぐために約10重量%以下である。さらに好ましい割合は、約0.1重量%から約7重量%の範囲である。特に好ましい割合は、約0.5重量%から約5重量%の範囲である。
【0071】
第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。式(1)において、P
1、P
2、およびP
3は独立して、重合性基である。好ましいP
1、P
2、またはP
3は、式(P−1)から式(P−5)で表される基の群から選択された重合性基である。さらに好ましいP
1、P
2、またはP
3は、式(P−1)、式(P−2)、または式(P−3)で表される基である。特に好ましいP
1、P
2、またはP
3は、式(P−1)または式(P−2)で表される基である。最も好ましいP
1、P
2、またはP
3は、式(P−1)で表される基である。式(P−1)で表される好ましい基は、−OCO−CH=CH
2または−OCO−C(CH
3)=CH
2である。式(P−1)から式(P−5)の波線は、結合する部位を示す。
【0072】
式(P−1)から式(P−5)において、M
1、M
2、およびM
3は独立して、水素、フッ素、炭素数1から5のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルである。好ましいM
1、M
2、またはM
3は、反応性を上げるために水素またはメチルである。さらに好ましいM
1は水素またはメチルであり、さらに好ましいM
2またはM
3は水素である。
【0073】
Sp
1、Sp
2、およびSp
3は独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく、そして少なくとも1つの−CH
2−CH
2−は、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよい。好ましいSp
1、Sp
2、またはSp
3は、単結合、−CH
2CH
2−、−CH
2O−、−OCH
2−、−COO−、−OCO−、−CO−CH=CH−、または−CH=CH−CO−である。さらに好ましいSp
1、Sp
2またはSp
3は、単結合である。ただし、環Aおよび環Cがフェニルであるとき、Sp
1およびSp
3は単結合である。
【0074】
環Aおよび環Cは独立して、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、テトラヒドロピラン−2−イル、1,3−ジオキサン−2−イル、ピリミジン−2−イル、またはピリジン−2−イルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよい。好ましい環Aまたは環Cは、フェニルである。環Bは、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、ナフタレン−1,2−ジイル、ナフタレン−1,3−ジイル、ナフタレン−1,4−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、ナフタレン−1,6−ジイル、ナフタレン−1,7−ジイル、ナフタレン−1,8−ジイル、ナフタレン−2,3−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、ナフタレン−2,7−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、またはピリジン−2,5−ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよい。好ましい環Bは、1,4−フェニレンまたは2−フルオロ−1,4−フェニレンである。
【0075】
Z
1およびZ
2は独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−CO−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよく、そして少なくとも1つの−CH
2−CH
2−は、−CH=CH−、−C(CH
3)=CH−、−CH=C(CH
3)−、または−C(CH
3)=C(CH
3)−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよい。好ましいZ
1またはZ
2は、単結合、−CH
2CH
2−、−CH
2O−、−OCH
2−、−COO−、または−OCO−である。さらに好ましいZ
1またはZ
2は、単結合である。
【0076】
aは、0、1、または2である。好ましいaは、0または1である。b、c、およびdは独立して、0、1、2、3、または4であり、そしてb、c、およびdの和は、1以上である。好ましいb、c、およびdは、1または2である。ただし、環Aおよび環Cがフェニルであるとき、aは1または2である。従って、ビフェニル骨格を有する重合性化合物は除外される。
【0077】
式(2)、式(3)、および式(4)において、R
1は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。好ましいR
1は、紫外線または熱に対する安定性を上げるために、炭素数1から12のアルキルである。R
2およびR
3は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。好ましいR
2またはR
3は、粘度を下げるために、炭素数2から12のアルケニルであり、安定性を上げるために炭素数1から12のアルキルである。R
7およびR
8は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または炭素数2から12のアルケニルオキシである。好ましいR
7またはR
8は、安定性を上げるために炭素数1から12のアルキルであり、誘電率異方性を上げるために炭素数1から12のアルコキシである。
【0078】
好ましいアルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、またはオクチルである。さらに好ましいアルキルは、粘度を下げるためにエチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘプチルである。
【0079】
好ましいアルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、またはヘプチルオキシである。粘度を下げるために、さらに好ましいアルコキシは、メトキシまたはエトキシである。
【0080】
好ましいアルケニルは、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、または5−ヘキセニルである。さらに好ましいアルケニルは、粘度を下げるためにビニル、1−プロペニル、3−ブテニル、または3−ペンテニルである。これらのアルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。粘度を下げるためなどから1−プロペニル、1−ブテニル、1−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ペンテニル、3−ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはトランスが好ましい。2−ブテニル、2−ペンテニル、2−ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはシスが好ましい。
【0081】
好ましいアルケニルオキシは、ビニルオキシ、アリルオキシ、3−ブテニルオキシ、3−ペンテニルオキシ、または4−ペンテニルオキシである。粘度を下げるために、さらに好ましいアルケニルオキシは、アリルオキシまたは3−ブテニルオキシである。
【0082】
少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたアルキルの好ましい例は、フルオロメチル、2−フルオロエチル、3−フルオロプロピル、4−フルオロブチル、5−フルオロペンチル、6−フルオロヘキシル、7−フルオロヘプチル、または8−フルオロオクチルである。さらに好ましい例は、誘電率異方性を上げるために2−フルオロエチル、3−フルオロプロピル、4−フルオロブチル、または5−フルオロペンチルである。
【0083】
少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたアルケニルの好ましい例は、2,2−ジフルオロビニル、3,3−ジフルオロ−2−プロペニル、4,4−ジフルオロ−3−ブテニル、5,5−ジフルオロ−4−ペンテニル、または6,6−ジフルオロ−5−ヘキセニルである。さらに好ましい例は、粘度を下げるために2,2−ジフルオロビニルまたは4,4−ジフルオロ−3−ブテニルである。
【0084】
環Dは、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルである。好ましい環Dは、光学異方性を上げるために1,4−フェニレンまたは2−フルオロ−1,4−フェニレンである。
【0085】
環Eおよび環Fは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。好ましい環Eまたは環Fは粘度を下げるために、または上限温度を上げるために、1,4−シクロヘキシレンであり、下限温度を下げるために1,4−フェニレンである。
【0086】
環Qおよび環Vは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4−フェニレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルである。好ましい環Qまたは環Vは、粘度を下げるために1,4−シクロヘキシレンであり、誘電率異方性を上げるためにテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり、光学異方性を上げるために1,4−フェニレンである。環Uは、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2−クロロ−3−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−5−メチル−1,4−フェニレン、3,4,5−トリフルオロナフタレン−2,6−ジイル、または7,8−ジフルオロクロマン−2,6−ジイルである。好ましい環Uは、誘電率異方性を上げるために2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。テトラヒドロピラン−2,5−ジイルは、
または
であり、好ましくは
である。
【0087】
Z
3は、単結合、−CH
2CH
2−、−CH
2O−、−OCH
2−、−COO−、−OCO−、−CF
2O−、または−OCF
2−である。好ましいZ
3は、粘度を下げるために単結合である。Z
4は、単結合、−CH
2CH
2−、−CH
2O−、−OCH
2−、−COO−、または−OCO−である。好ましいZ
4は、粘度を下げるために単結合であり、下限温度を下げるために−CH
2CH
2−であり、上限温度を上げるために−COO−または−OCO−である。Z
7およびZ
8は独立して、単結合、−CH
2CH
2−、−CH
2O−、−OCH
2−、−COO−、または−OCO−である。好ましいZ
7またはZ
8は、粘度を下げるために単結合であり、誘電率異方性を上げるためにメチレンオキシである。
【0088】
X
1およびX
2は独立して、水素またはフッ素である。好ましいX
1またはX
2は、誘電率異方性を上げるためにフッ素である。
【0089】
Y
1は、フッ素、塩素、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルオキシである。少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたアルキルの好ましい例は、トリフルオロメチルである。少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたアルコキシの好ましい例は、トリフルオロメトキシである。少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたアルケニルオキシの好ましい例は、トリフルオロビニルオキシである。好ましいY
1は、下限温度を下げるためにフッ素である。
【0090】
eは、1、2、3、または4である。好ましいeは、下限温度を下げるために2であり、誘電率異方性を上げるために3である。fは、1、2、または3である。好ましいfは粘度を下げるために1であり、上限温度を上げるために2または3である。pは、1、2、または3であり、qは、0または1であり、pとqとの和は3以下である。好ましいpは粘度を下げるために1であり、上限温度を上げるために2または3である。好ましいqは粘度を下げるために0であり、下限温度を下げるために1である。
【0091】
式(5)および式(6)において、R
5は、極性基である。極性基を有する極性化合物は、組成物に添加するので安定であることが好ましい。極性化合物を組成物に添加したとき、この化合物が素子の電圧保持率を下げないことが好ましい。極性化合物は、低い揮発性を有することが好ましい。好ましいモル質量は130g/mol以上である。さらに好ましいモル質量は150g/molから500g/molの範囲である。好ましい極性化合物は、アクリロイルオキシ(−OCO−CH=CH
2)、メタクリロイルオキシ(−OCO−(CH
3)C=CH
2)のような重合性基を有しない。
【0092】
極性基は、ガラス基板または金属酸化物膜の表面との非共有結合的な相互作用を有する。好ましい極性基は、窒素、酸素、硫黄、およびリンから選択されたヘテロ原子を有する。好ましい極性基は、これらのヘテロ原子を少なくとも1つ、または少なくとも2つを有する。さらに好ましい極性基は、アルコール、第一級、第二級、および第三級のアミン、ケトン、カルボン酸、チオール、エステル、エーテル、チオエーテル、およびそれらの組み合わせの群から選択された化合物から水素を除くことによって誘導された一価基である。これらの基の構造は、直鎖状、分岐状、環状、またはそれらの組み合わせでもよい。特に好ましい極性基は、少なくとも1つのOH構造の酸素原子または第一級、第二級、または第三級のアミン構造の窒素原子を有する。最も好ましい極性基はヒドロキシ基(炭素−OH)である。
【0093】
極性基R
5の例は、式(A1)から式(A4)で表される基である。
【0094】
式(A1)から式(A4)において、Sp
4、Sp
6、およびSp
7は独立して、単結合または基(−Sp’’−X’’−)であり、そしてX’’は、MES基またはR
4に結合する。Sp’’は、炭素数1から20のアルキレンであり、好ましくは炭素数1から12のアルキレンであり、このアルキレンにおいて少なくとも1つの−CH
2−は、−O−、−S−、−NH−、−N(R
0)−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−N(R
0)−CO−O−、−O−CO−N(R
0)−、−N(R
0)−CO−N(R
0)−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、または−CNで置き換えられてもよく、X’’は、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−N(R
0)−、−N(R
0)−CO−、−N(R
0)−CO−N(R
0)−、−OCH
2−、−CH
2O−、−SCH
2−、−CH
2S−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CF
2S−、−SCF
2−、−CF
2CH
2−、−CH
2CF
2−、−CF
2CF
2−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR
0−、−CY
2=CY
3−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−、または単結合であり、ここでR
0は、水素または炭素数1から12のアルキルであり、そしてY
2およびY
3は独立して、水素、フッ素、塩素、または−CNである。好ましいX’’は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR
0−、−NR
0−CO−、−NR
0−CO−NR
0−、または単結合である。Sp
5は、>CH−、>CR
11−、>N−、または>C<である。すなわち、式(A2)におけるSp
5は、>CH−、>CR
11−、または>N−であり、式(A3)におけるSp
5は>C<であることを意味する。
【0095】
好ましいSp’’は、−(CH
2)
p1−、−(CH
2CH
2O)
q1−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2−S−CH
2CH
2−、または−CH
2CH
2−NHCH
2CH
2−であり、ここでp1は1から12の整数であり、q1は1から3の整数である。好ましい基(−Sp’’−X’’−)は、−(CH
2)
p1−、−(CH
2)
p1−O−、−(CH
2)
p1−O−CO−、−(CH
2)
p1−O−CO−O−であり、ここでp1およびq1は、上に示した意味を有する。さらに好ましい基Sp’’は、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、オクタデシレン、エチレンオキシエチレン、メチレンオキシブチレン、エチレンチオエチレン、エチレン−N−メチルイミノエチレン、1−メチルアルキレン、エテニレン、プロペニレン、およびブテニレンである。
【0096】
X
3は、−NH
2、−NHR
11、−NR
112、−OR
11、−OH、−COOH、−SH、−SR
11、
であり、ここでR
11は、炭素数1から15のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−C≡C−、−CH=CH−、−COO−、−OCO−、−CO−、または−O−で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく、R
0は、水素または炭素数1から12のアルキルである。
【0097】
X
4は、−O−、−CO−、−NH−、−NR
11−、−S−、または単結合であり、Z
6は、炭素数1から15のアルキレン、炭素数5から6の脂環式基、または、少なくとも1つの環とアルキレンとの組み合わせを表し、これらの基において、少なくとも1つの水素は、−OH、−OR
11、−COOH、−NH
2、−NHR
11、−N(R
11)
2、フッ素、または塩素で置き換えられてもよく、ここでR
11は上に示した意味を有する。jは、0、1、2、または3である。
【0098】
特に好ましい窒素含有基R
5は、−NH
2、−NH−(CH
2)
n3H、−(CH
2)
n−NH
2、−(CH
2)
n−NH−(CH
2)
n3H、−NH−(CH
2)
n−NH
2、−NH−(CH
2)
n−NH−(CH
2)
n3H、−(CH
2)
n1−NH−(CH
2)
n2−NH
2、−(CH
2)
n1−NH−(CH
2)
n2−NH−(CH
2)
n3H、−O−(CH
2)
n−NH
2、−(CH
2)
n1−O−(CH
2)
n−NH
2、−(CH
2)
n1−NH−(CH
2)
n2−OH、−O−(CH
2)
n1−NH−(CH
2)
n2−NH
2、−O−(CH
2)
n1−NH−(CH
2)
n2−OH、または−(CH
2)
n1−NH−(CH
2)
n2−NH−(CH
2)
n3Hであり、ここでn、n1、n2、およびn3は独立して、1から12の整数であり、好ましくは1、2、3、または4である。
【0099】
特に好ましい窒素非含有基R
5は、−OH、−(CH
2)
n−OH、−O−(CH
2)
n−OH、−[O−(CH
2)
n1−]
n2−OH、−COOH、−(CH
2)
n−COOH、−O−(CH
2)
n−COOH、または−[O−(CH
2)
n1−]
n2−COOHであり、ここでn、n1、およびn2は独立して、1から12の整数であり、好ましくは1、2、3、または4である。
【0100】
液晶組成物への高い溶解度の観点から、R
5は−OHまたは−NH
2であることが特に好ましい。−OHは、高いアンカー力を有するので−O−、−CO−、または−COO−よりも好ましい。複数のヘテロ原子(窒素、酸素)を有する基は、特に好ましい。そのような極性基を有する化合物は、低い濃度であっても有効である。
【0101】
式(5)において、MESは少なくとも1つの環を有するメソゲン基である。メソゲン基は、当業者に周知である。メソゲン基は、化合物が液晶相(中間相)を有するとき、液晶相の形成に寄与する部分を意味する。化合物(5)の好ましい例は、化合物(5−1)である。
【0102】
式(5−1)において、環Gおよび環Iは独立して、炭素数6から25の芳香族基、炭素数5から25の複素芳香族基、炭素数3から25の脂環式基、または炭素数4から25の複素脂環式基であり、これらの基は縮合環であってもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は基Tで置き換えられてもよく、これらの基において好ましい炭素の数は4から25である。基Tの意味は、この段落の最後に述べる。好ましい環Gまたは環Iは、1,4−フェニレン、ナフタレン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル(これら3つの基において少なくとも1つの第三級炭素(>CH−)は、窒素(>N−)で置き換えられてもよい)、1,4−シクロヘキシレン(この基において、少なくとも1つの−CH
2−は、−O−または−S−で置き換えられてもよい)、3,3’−ビシクロブチリデン、1,4−シクロヘキセニレン、ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1,3−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、スピロ[3.3]ヘプタン−2,6−ジイル、ピペリジン−1,4−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、インダン−2,5−ジイル、オクタヒドロ−4,7−メタノインダン−2,5−ジイル、またはペルヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン−3,17−ジイル(特に、ゴナン−3,17−ジイル)であり、これらの基において、少なくとも1つの水素は基Tで置き換えられてもよく、ここで基Tは、−OH、−(CH
2)
i−OH、ハロゲン、−CN、−NO
2、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)N(R
0)
2、−C(=O)R
0、−N(R
0)
2、−(CH
2)
i−N(R
0)
2、炭素数6から20のアリールまたはヘテロアリール、炭素数1から25のアルキル、アルコキシ、炭素数2から25のアルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、またはアルコキシカルボニルオキシであり、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく、ここでR
0は、水素または炭素数1から12のアルキルであり、iは、1、2、3、または4である。
【0103】
Z
5は、単結合、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−OCO−、−O−CO−O−、−OCH
2−、−CH
2O−、−SCH
2−、−CH
2S−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CF
2S−、−SCF
2−、−(CH
2)
i−、−CF
2CH
2−、−CH
2CF
2−、−(CF
2)
i−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、または−C(R
0)
2−である。R
0は、水素または炭素数1から12のアルキルであり、iは、1、2、3、または4である。好ましいZ
5は、単結合である。
【0104】
R
5は、炭素数1から25のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−NR
0−、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、または炭素数3から8のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、ここでR
0は、水素または炭素数1から12のアルキルであり、少なくとも1つの第三級炭素(>CH−)は、窒素(>N−)で置き換えられてもよく、そして少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく、ただしR
5は、OH構造の酸素原子、SH構造の硫黄原子、および第一級、第二級、または第三級のアミン構造の窒素原子の少なくとも1つを有する。好ましいR
5は、少なくとも1つの>NH、−OH、または−SHを有する。R
6は、水素、ハロゲン、炭素数1から25のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−NR
0−、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、または炭素数3から8のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、そして少なくとも1つの第三級炭素(>CH−)は、窒素(>N−)で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく、ここでR
0は、水素または炭素数1から12のアルキルである。好ましいR
6は、アルキルである。
【0105】
芳香族基は、アリールまたは置換されたアリールを指す。複素芳香族基は、ヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリールを指す。ヘテロアリールは、少なくとも1つのヘテロ原子を有する芳香族基を表す。アリールおよびヘテロアリールは単環または多環のいずれでもよい。すなわちこれらの基は少なくとも1つの環を有し、この環は縮合(例えば、ナフチル)されてもよく、二つの環は共有結合で連結(例えば、ビフェニル)されてもよく、または縮合環および連結環の組み合わせを有してもよい。好ましいヘテロアリールは、窒素、酸素、硫黄、およびリンの群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を有する。
【0106】
好ましいアリールまたはヘテロアリールは、炭素数6から25を有し、五員環、六員環、または七員環であってもよい。好ましいアリールまたはヘテロアリールは、単環であってもよいし、二環または三環であってもよい。これらの基は縮合環であってもよく、置換されてもよい。
【0107】
好ましいアリールは、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、[1,1’:3’,1”]ターフェニル、ナフタレン、アントラセン、ビナフチル、フェナントレン、ピレン、ジヒドロピレン、クリセン、ペリレン、テトラセン、ペンタセン、ベンゾピレン、フルオレン、インデン、インデノフルオレン、スピロビフルオレンから1つの水素を除くことによって誘導される一価基である。
【0108】
好ましいヘテロアリールは、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、フラン、チオフェン、セレノフェン、オキサゾール、イソキサゾール、1,2−チアゾール、1,3−チアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾールなどの五員環化合物、またはピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,3,5−テトラジンなどの六員環化合物から1つの水素を除くことによって誘導される一価基である。
【0109】
好ましいヘテロアリールは、インドール、イソインドール、インドリジン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、プリン、ナフタイミダゾール、フェナントライミダゾール、ピリダイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、ベンゾキサゾール、ナフトキサゾール、アントロキサゾール、フェナントロキサゾール、イソキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、キノリン、イソキノリン、プテリジン、ベンゾ−5,6−キノリン、ベンゾ−6,7−キノリン、ベンゾ−7,8−キノリン、ベンゾイソキノリン、アクリジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾピリダジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、フェナジン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントリジン、フェナントロリン、チエノ[2,3b]チオフェン、チエノ[3,2b]チオフェン、ジチエノチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ベンゾチアジアゾチオフェンなどの縮合環化合物から1つの水素を除くことによって誘導される一価基でもある。好ましいヘテロアリールは、これらの五員環、六員環、縮合環から選択された2つの基を組み合わせた環から1つの水素を除くことによって誘導される一価基でもある。これらのヘテロアリールは、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、フッ素、フルオロアルキル、アリール、またはヘテロアリールで置換されてもよい。
【0110】
脂環式基および複素脂環式基は、飽和であってもよいし、不飽和であってもよい。すなわち、これらの基は、単結合だけを有してもよいし、単結合と多重結合との組み合わせを有してもよい。不飽和の環よりも飽和の環の方が好ましい。好ましい複素脂環式基は、窒素、酸素、硫黄、およびリンから選択された少なくとも1つのヘテロ原子を有する。
【0111】
脂環式基および複素脂環式基は、1つの環であってもよいし、複数の環であってもよい。これらの基の好ましい例は、炭素数3から25の単環、二環、または三環であり、これらの基は縮合環であってもよく、置換されてもよい。これらの基の好ましい例は、五員環、六員環、七員環、または八員環であり、これらの基において、少なくとも1つの炭素はケイ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの>CH−は>N−で置き換えられてもよく、そして少なくとも1つの−CH
2−は−O−または−S−で置き換えられてもよい。
【0112】
好ましい脂環式基および複素脂環式基は、シクロペンタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフラン、ピロリジンなどの五員環、シクロヘキサン、シクロヘキセン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジチアン、ピペリジンなどの六員環、シクロヘプタンなどの七員環、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、インダン、ビシクロ[1.1.1]ペンタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、スピロ[3.3]ヘプタン、オクタヒドロ−4,7−メタノインダンなどの縮合環から2つの水素を除くことによって誘導される二価基である。
【0113】
hは、0、1、2、3、4、または5である。
【0114】
式(6)において、R
4は炭素数4から20のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの−CH
2−は、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−C≡C−、または炭素数3から8のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、そして少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよい。gは、1または2であり、好ましくは1である。
【0115】
好ましいR
4は、炭素数4から20のアルキルである。さらに好ましいR
4は、炭素数6から18のアルキルである。少なくとも1つの−CH
2−は、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−C≡C−、または−O−で置き換えられてもよく、そして少なくとも1つ水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよい。
【0116】
特に好ましい化合物(5−1)は、次の化合物から選択される。
【0130】
式(5−1−1−1)から式(5−1−4−4)において、R
6は炭素数1から8のアルキルまたはフッ素である。
【0131】
特に好ましい化合物(6−1)は、次の化合物(6−1−1−1)から化合物(6−1−29−1)より選択される。
【0158】
第五に、好ましい成分化合物を示す。好ましい化合物(1)は、項3に記載の化合物(1−1)から化合物(1−12)である。これらの化合物において、第一添加物の少なくとも1つが、化合物(1−7)、化合物(1−8)、化合物(1−9)、または化合物(1−10)であることが好ましい。第一添加物の少なくとも2つが、化合物(1−8)および化合物(1−9)、または化合物(1−2)および化合物(1−7)の組み合わせであることが好ましい。
【0159】
好ましい化合物(2)は、項6に記載の化合物(2−1)から化合物(2−46)である。これらの化合物において、第一成分の少なくとも1つが、化合物(2−1)、化合物(2−7)、化合物(2−11)、化合物(2−12)、化合物(2−22)、化合物(2−23)、化合物(2−24)、または化合物(2−36)であることが好ましい。
【0160】
好ましい化合物(3)は、項9に記載の化合物(3−1)から化合物(3−13)である。これらの化合物において、第二成分の少なくとも1つが、化合物(3−1)、化合物(3−3)、化合物(3−5)、化合物(3−6)、化合物(3−7)、化合物(3−8)、化合物(3−9)、または化合物(3−13)であることが好ましい。第二成分の少なくとも2つが化合物(3−1)および化合物(3−3)、化合物(3−1)および化合物(3−5)、または化合物(3−1)および化合物(3−6)の組み合わせであることが好ましい。
【0161】
好ましい化合物(4)は、項12に記載の化合物(4−1)から化合物(4−21)である。これらの化合物において、第三成分の少なくとも1つが、化合物(4−1)、化合物(4−4)、化合物(4−5)、化合物(4−7)、化合物(4−10)、または化合物(4−15)であることが好ましい。第三成分の少なくとも2つが、化合物(4−1)および化合物(4−7)、化合物(4−1)および化合物(4−15)、化合物(4−4)および化合物(4−7)、化合物(4−4)および化合物(4−15)、化合物(4−5)および化合物(4−7)、または化合物(4−5)および化合物(4−10)の組み合わせであることが好ましい。
【0162】
好ましい化合物(5)は、項16に記載の化合物(5−1)である。さらに好ましい化合物(5)は、項19に記載の化合物(5−1−1)から化合物(5−1−4)である。好ましい化合物(6)は、項17に記載の化合物(6−1)である。さらに好ましい化合物(6)は、項20に記載の化合物(6−1−1)から化合物(6−1−29)である。一般的に化合物(5)は化合物(6)よりも好ましい。
【0163】
第六に、組成物に添加してもよい添加物を説明する。このような添加物は、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、極性化合物などである。液晶分子のらせん構造を誘起してねじれ角を与える目的で光学活性化合物が組成物に添加される。このような化合物の例は、化合物(7−1)から化合物(7−5)である。光学活性化合物の好ましい割合は約5重量%以下である。さらに好ましい割合は約0.01重量%から約2重量%の範囲である。
【0165】
大気中での加熱による比抵抗の低下を防止するために、または素子を長時間使用したあと、室温だけではなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を維持するために、酸化防止剤が組成物に添加される。酸化防止剤の好ましい例は、nが1から9の整数である化合物(8)などである。
【0166】
化合物(8)において、好ましいnは、1、3、5、7、または9である。さらに好ましいnは7である。nが7である化合物(8)は、揮発性が小さいので、素子を長時間使用したあと、室温だけではなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を維持するのに有効である。酸化防止剤の好ましい割合は、その効果を得るために約50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないように約600ppm以下である。さらに好ましい割合は、約100ppmから約300ppmの範囲である。
【0167】
紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などである。立体障害のあるアミンのような光安定剤もまた好ましい。これらの吸収剤や安定剤における好ましい割合は、その効果を得るために約50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないために約10000ppm以下である。さらに好ましい割合は約100ppmから約10000ppmの範囲である。
【0168】
GH(guest host)モードの素子に適合させるために、アゾ系色素、アントラキノン系色素などのような二色性色素(dichroic dye)が組成物に添加される。色素の好ましい割合は、約0.01重量%から約10重量%の範囲である。泡立ちを防ぐために、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどの消泡剤が組成物に添加される。消泡剤の好ましい割合は、その効果を得るために約1ppm以上であり、表示不良を防ぐために約1000ppm以下である。さらに好ましい割合は、約1ppmから約500ppmの範囲である。
【0169】
高分子支持配向(PSA)型の素子に適合させるために重合性化合物が用いられる。化合物(1)はこの目的に適している。化合物(1)と共に、化合物(1)とは異なる、その他の重合性化合物を組成物に添加してもよい。その他の重合性化合物の好ましい例は、アクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、ビニルケトンなど化合物である。さらに好ましい例は、アクリレートまたはメタクリレートである。化合物(1)の好ましい割合は、重合性化合物の全重量に基づいて約10重量%以上である。さらに好ましい割合は、約50重量%以上である。特に好ましい割合は、約80重量%以上である。特に好ましい割合は、100重量%でもある。化合物(1)の種類を変えることによって、または化合物(1)にその他の重合性化合物を適切な比で組み合わせることによって、重合性化合物の反応性や液晶分子のプレチルト角を調整することができる。プレチルト角を最適化することによって、素子の短い応答時間を達成することができる。液晶分子の配向が安定化されるので、大きなコントラスト比や長い寿命を達成することができる。
【0170】
化合物(1)のような重合性化合物は紫外線照射によって重合する。光重合開始剤などの適切な開始剤存在下で重合させてもよい。重合のための適切な条件、開始剤の適切なタイプ、および適切な量は、当業者には既知であり、文献に記載されている。例えば光重合開始剤であるIrgacure651(登録商標;BASF)、Irgacure184(登録商標;BASF)、またはDarocur1173(登録商標;BASF)がラジカル重合に対して適切である。光重合開始剤の好ましい割合は、重合性化合物の全重量に基づいて約0.1重量%から約5重量%の範囲である。さらに好ましい割合は約1重量%から約3重量%の範囲である。
【0171】
化合物(1)のような重合性化合物を保管するとき、重合を防止するために重合禁止剤を添加してもよい。重合性化合物は、通常は重合禁止剤を除去しないまま組成物に添加される。重合禁止剤の例は、ヒドロキノン、メチルヒドロキノンのようなヒドロキノン誘導体、4−t−ブチルカテコール、4−メトキシフェノ−ル、フェノチアジンなどである。
【0172】
第七に、成分化合物の合成法を説明する。これらの化合物は既知の方法によって合成できる。合成法を例示する。化合物(1−2)は特開平7−101900号公報に記載された方法で合成する。化合物(2−2)および化合物(2−7)は、特開平2−233626号公報に記載された方法で合成する。化合物(3−5)は、特開昭57−165328号公報に記載された方法で合成する。化合物(4−1)および化合物(4−7)は、特表平2−503441号公報に掲載された方法で合成する。化合物(5−1)は、国際公開2012−038026号公報に記載された方法で合成する。化合物(6)の一部は市販されている。式(8)のnが1である化合物は、アルドリッチ(Sigma-Aldrich Corporation)から入手できる。nが7である化合物(8)などは、米国特許3660505号明細書に記載された方法によって合成する。
【0173】
合成法を記載しなかった化合物は、オーガニック・シンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc.)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載された方法によって合成できる。組成物は、このようにして得た化合物から公知の方法によって調製される。例えば、成分化合物を混合し、そして加熱によって互いに溶解させる。
【0174】
最後に、組成物の用途を説明する。大部分の組成物は、約−10℃以下の下限温度、約70℃以上の上限温度、そして約0.07から約0.20の範囲の光学異方性を有する。成分化合物の割合を制御することによって、またはその他の液晶性化合物を混合することによって、約0.08から約0.25の範囲の光学異方性を有する組成物を調製してもよい。さらには、試行錯誤によって約0.10から約0.30の範囲の光学異方性を有する組成物を調製してもよい。この組成物を含有する素子は大きな電圧保持率を有する。この組成物はAM素子に適する。この組成物は透過型のAM素子に特に適する。この組成物は、ネマチック相を有する組成物としての使用、光学活性化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用が可能である。
【0175】
この組成物はAM素子への使用が可能である。さらにPM素子への使用も可能である。この組成物は、PC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、FFS、VA、FPAなどのモードを有するAM素子およびPM素子への使用が可能である。TN、OCB、IPSモードまたはFFSモードを有するAM素子への使用は特に好ましい。IPSモードまたはFFSモードを有するAM素子において、電圧が無印加のとき、液晶分子の配向がガラス基板に対して並行であってもよく、または垂直であってもよい。これらの素子が反射型、透過型、または半透過型であってもよい。透過型の素子への使用は好ましい。非結晶シリコン−TFT素子または多結晶シリコン−TFT素子への使用も可能である。この組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)型の素子や、組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)型の素子にも使用できる。
【0176】
従来の高分子支持配向型の素子を製造する方法の一例は、次のとおりである。アレイ基板とカラーフィルター基板と呼ばれる2つの基板を有する素子を組み立てる。この基板は配向膜を有する。この基板の少なくとも1つは、電極層を有する。液晶性化合物を混合して液晶組成物を調製する。この組成物に重合性化合物を添加する。必要に応じて添加物をさらに添加してもよい。この組成物を素子に注入する。この素子に電圧を印加した状態で光照射する。紫外線が好ましい。光照射によって重合性化合物を重合させる。この重合によって、重合体を含有する組成物が生成する。高分子支持配向型の素子は、このような手順で製造する。
【0177】
この手順において、電圧を印加したとき、液晶分子が配向膜および電場の作用によって配向する。この配向に従って重合性化合物の分子も配向する。この状態で重合性化合物が紫外線によって重合するので、この配向を維持した重合体が生成する。この重合体の効果によって、素子の応答時間が短縮される。画像の焼き付きは、液晶分子の動作不良であるから、この重合体の効果によって焼き付きも同時に改善されることになる。なお、組成物中の重合性化合物を予め重合させ、この組成物を液晶表示素子の基板のあいだに配置することも可能であろう。
【0178】
配向膜を有しない素子を製造する方法の一例は、次のとおりである。アレイ基板とカラーフィルター基板と呼ばれる2つの基板を有する素子を用意する。この基板は配向膜を有しない。この基板の少なくとも1つは、電極層を有する。液晶性化合物を混合して液晶組成物を調製する。この組成物に重合性化合物および極性化合物を添加する。必要に応じて添加物をさらに添加してもよい。この組成物を素子に注入する。この素子に電圧を印加した状態で光照射する。紫外線が好ましい。光照射によって重合性化合物を重合させる。この重合によって、重合体および極性化合物を含む組成物の層が基板上に形成される。
【0179】
この手順において、極性化合物は、極性基が基板表面と相互作用するので、基板上に配列する。この配列に従って液晶分子が配向される。電圧を印加したとき、液晶分子の配向がさらに促進され、この配向に従って重合性化合物も配向する。この状態で重合性化合物が紫外線によって重合するので、この配向を維持した重合体が生成する。この重合体の効果によって、液晶分子の配向が追加的に安定化し、素子の応答時間が短縮される。画像の焼き付きは、液晶分子の動作不良であるから、この重合体の効果によって焼き付きも同時に改善されることになる。
【実施例】
【0180】
実施例によって本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例によっては制限されない。本発明は、組成物M1と組成物M2との混合物を含む。本発明は、実施例の組成物の少なくとも2つを混合した混合物をも含む。合成した化合物は、NMR分析などの方法によって同定した。化合物、組成物および素子の特性は、下記の方法によって測定した。
【0181】
NMR分析:測定には、ブルカーバイオスピン社製のDRX−500を用いた。
1H−NMRの測定では、試料をCDCl
3などの重水素化溶媒に溶解させ、測定は、室温で、500MHz、積算回数16回の条件で行った。テトラメチルシランを内部標準として用いた。
19F−NMRの測定では、CFCl
3を内部標準として用い、積算回数24回で行った。核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、quinはクインテット、sexはセクステット、mはマルチプレット、brはブロードであることを意味する。
【0182】
ガスクロマト分析:測定には島津製作所製のGC−14B型ガスクロマトグラフを用いた。キャリアーガスはヘリウム(2mL/分)である。試料気化室を280℃に、検出器(FID)を300℃に設定した。成分化合物の分離には、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm;固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。このカラムは、200℃で2分間保持したあと、5℃/分の割合で280℃まで昇温した。試料はアセトン溶液(0.1重量%)に調製したあと、その1μLを試料気化室に注入した。記録計は島津製作所製のC−R5A型Chromatopac、またはその同等品である。得られたガスクロマトグラムは、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積を示した。
【0183】
試料を希釈するための溶媒は、クロロホルム、ヘキサンなどを用いてもよい。成分化合物を分離するために、次のキャピラリカラムを用いてもよい。Agilent Technologies Inc.製のHP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty. Ltd製のBP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)。化合物ピークの重なりを防ぐ目的で島津製作所製のキャピラリカラムCBP1−M50−025(長さ50m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いてもよい。
【0184】
組成物に含有される液晶性化合物の割合は、次のような方法で算出してよい。液晶性化合物の混合物をガスクロマトグラフィ(FID)で分析する。ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は液晶性化合物の割合に相当する。上に記載したキャピラリカラムを用いたときは、各々の液晶性化合物の補正係数を1とみなしてよい。したがって、液晶性化合物の割合(重量%)は、ピークの面積比から算出することができる。
【0185】
測定試料:組成物および素子の特性を測定するときは、組成物をそのまま試料として用いた。化合物の特性を測定するときは、この化合物(15重量%)を母液晶(85重量%)に混合することによって測定用の試料を調製した。測定によって得られた値から外挿法によって化合物の特性値を算出した。(外挿値)={(試料の測定値)−0.85×(母液晶の測定値)}/0.15。この割合でスメクチック相(または結晶)が25℃で析出するときは、化合物と母液晶の割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更した。この外挿法によって化合物に関する上限温度、光学異方性、粘度、および誘電率異方性の値を求めた。
【0186】
下記の母液晶を用いた。成分化合物の割合は重量%で示した。
【0187】
測定方法:特性の測定は下記の方法で行った。これらの多くは、社団法人電子情報技術産業協会(Japan Electronics and Information Technology Industries Association;JEITAという)で審議制定されるJEITA規格(JEITA・ED−2521B)に記載された方法、またはこれを修飾した方法であった。測定に用いたTN素子には、薄膜トランジスター(TFT)を取り付けなかった。
【0188】
(1)ネマチック相の上限温度(NI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0189】
(2)ネマチック相の下限温度(T
C;℃):ネマチック相を有する試料をガラス瓶に入れ、0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、T
Cを<−20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0190】
(3)粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s):測定には東京計器株式会社製のE型回転粘度計を用いた。
【0191】
(4)粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s):測定は、M. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。ツイスト角が0°であり、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5μmであるTN素子に試料を入れた。この素子に16Vから19.5Vの範囲で0.5V毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算に必要な誘電率異方性は、測定(6)に記載された方法で測定した。
【0192】
(5)光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計によって行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率n‖は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率n⊥は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。
【0193】
(6)誘電率異方性(Δε;25℃で測定):2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、そしてツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(10V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0194】
(7)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が0.45/Δn(μm)であり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に印加する電圧(32Hz、矩形波)は0Vから10Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が90%になったときの電圧で表した。
【0195】
(8)電圧保持率(VHR−1;25℃で測定;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmであった。この素子は試料を注入したあと紫外線で硬化する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積であった。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率で表した。
【0196】
(9)電圧保持率(VHR−2;80℃で測定;%):25℃の代わりに、80℃で測定した以外は、上記と同じ手順で電圧保持率を測定した。得られた値をVHR−2で表した。
【0197】
(10)電圧保持率(VHR−3;25℃で測定;%):紫外線を照射したあと、電圧保持率を測定し、紫外線に対する安定性を評価した。測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そしてセルギャップは5μmであった。この素子に試料を注入し、光を20分間照射した。光源は超高圧水銀ランプUSH−500D(ウシオ電機製)であり、素子と光源の間隔は20cmであった。VHR−3の測定では、16.7ミリ秒のあいだ減衰する電圧を測定した。大きなVHR−3を有する組成物は紫外線に対して大きな安定性を有する。VHR−3は90%以上が好ましく、95%以上がさらに好ましい。
【0198】
(11)電圧保持率(VHR−4;25℃で測定;%):試料を注入したTN素子を80℃の恒温槽内で500時間加熱したあと、電圧保持率を測定し、熱に対する安定性を評価した。VHR−4の測定では、16.7ミリ秒のあいだ減衰する電圧を測定した。大きなVHR−4を有する組成物は熱に対して大きな安定性を有する。
【0199】
(12)応答時間(τ;25℃で測定;ms):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が3.5μmであり、配向膜を有しないFFS素子に試料を入れた。この素子を紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子に、30Vの電圧を印加しながら78mW/cm
2(405nm)の紫外線を359秒間(28J)照射した。紫外線の照射には、アイグラフィックス株式会社製、紫外硬化用マルチメタルランプM04−L41を用いた。この素子に矩形波(120Hz)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%であるとみなした。矩形波の最大電圧は透過率が90%になるように設定した。矩形波の最低電圧は透過率が0%になる2.5Vに設定した。応答時間は透過率90%から10%に変化するのに要した時間(立ち下がり時間;fall time;ミリ秒)で表した。
【0200】
(13)弾性定数(K;25℃で測定;pN):測定には横河・ヒューレットパッカード株式会社製のHP4284A型LCRメータを用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである水平配向素子に試料を入れた。この素子に0ボルトから20ボルト電荷を印加し、静電容量および印加電圧を測定した。測定した静電容量(C)と印加電圧(V)の値を「液晶デバイスハンドブック」(日刊工業新聞社)、75頁にある式(2.98)、式(2.101)を用いてフィッティングし、式(2.99)からK11およびK33の値を得た。次に同171頁にある式(3.18)に、先ほど求めたK11およびK33の値を用いてK22を算出した。弾性定数Kは、このようにして求めたK11、K22、およびK33の平均値で表した。
【0201】
(14)比抵抗(ρ;25℃で測定;Ωcm):電極を備えた容器に試料1.0mLを入れた。この容器に直流電圧(10V)を印加し、10秒後の直流電流を測定した。比抵抗は次の式から算出した。(比抵抗)={(電圧)×(容器の電気容量)}/{(直流電流)×(真空の誘電率)}。
【0202】
(15)プレチルト角(度): プレチルト角の測定には、分光エリプソメータM−2000U(J. A. Woollam Co., Inc. 製)を使用した。
【0203】
(16)配向安定性(液晶配向軸安定性):液晶表示素子の電極側の液晶配向軸の変化を評価した。ストレス印加前の電極側の液晶配向角度φ(before)を測定し、その後、素子に矩形波4.5V、60Hzを20分間印加した後、1秒間ショートし、1秒後および5分後に再び電極側の液晶配向角度φ(after)を測定した。これらの値から、1秒後および5分後の液晶配向角度の変化Δφ(deg.)を次の式を用いて算出した。
Δφ(deg.)=φ(after)−φ(before)
これらの測定はJ. Hilfiker, B. Johs, C. Herzinger, J. F. Elman, E. Montbach, D. Bryant, and P. J. Bos, Thin Solid Films, 455-456, (2004) 596-600 を参考に行った。Δφが小さいほうが液晶配向軸の変化率が小さく、液晶配向軸の安定性が良いといえる。
【0204】
組成物の実施例を以下に示す。成分化合物は、下記の表3の定義に基づいて記号によって表した。表3において、1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。実施例において記号化された化合物の後にあるかっこ内の番号は、化合物が属する化学式を表す。(−)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)である。最後に、組成物の特性値をまとめた。
【0205】
【0206】
素子の実施例
1.原料
配向膜を有しない素子を作製し、液晶分子の垂直配向と、重合性化合物の転化率とを検討した。最初に原料を説明する。原料は、液晶組成物(M1)から(M11)、重合性化合物(RM−1)から(RM−8)、極性化合物(PC−1)から(PC−33)であり、この順にリストアップする。
【0207】
[組成物M1]
3−HHB(F、F)−F (2−12) 10%
3−HBB(F、F)−F (2−24) 40%
2−HHBB(F、F)−F (2−42) 2%
3−HHBB(F、F)−F (2−42) 5%
4−HHBB(F、F)−F (2−42) 4%
V−HH−3 (3−1) 25%
V−HHB−1 (3−5) 8%
2−BB(F)B−3 (3−8) 6%
NI=78.9℃;Tc<−20℃;Δn=0.105;Δε=5.7;Vth=1.62V;η=15.5mPa・s.
【0208】
[組成物M2]
5−H2B(F)−F (2−4) 7%
3−HHB−OCF3 (2−8) 10%
3−HHEB−F (2−17) 7%
5−HHEB−F (2−17) 5%
2−HBEB(F,F)−F (2−30) 3%
3−HBEB(F,F)−F (2−30) 3%
3−BB(F,F)B(F)−OCF3 (2−34) 8%
3−BBB(F,F)−F (2−35) 3%
3−BB2B(F,F)−F (2−39) 3%
V−HH−3 (3−1) 31%
1V−HH−4 (3−1) 6%
V−HHB−1 (3−5) 3%
5−HBBH−3 (3−11) 6%
5−HB(F)BH−3 (3−12) 5%
NI=90・5℃;Tc<−20℃;Δn=0.093;Δε=4.3;Vth=2・07V;η=12.2mPa・s.
【0209】
[組成物M3]
3−HB−CL (2−1) 10%
3−HHB−CL (2−7) 4%
3−HHB(F)−F (2−11) 7%
3−HBB(F、F)−F (2−24) 25%
3−HHEBB−F (2−40) 3%
3−HH2BB(F,F)−F (2−44) 6%
4−HH2BB(F,F)−F (2−44) 4%
3−HH−O1 (3−1) 15%
1V−HH−3 (3−1) 18%
3−HBB−2 (3−6) 3%
1−BB(F)B−2V (3−8) 5%
NI=84.2℃;Tc<−20℃;Δn=0.104;Δε=4.2;Vth=1.94V;η=15.9mPa・s.
【0210】
[組成物M4]
3−HHB(F、F)−F (2−12) 10%
4−HHB(F、F)−F (2−12) 6%
5−HHB(F、F)−F (2−12) 6%
3−HBB(F、F)−F (2−24) 30%
2−HHBB(F、F)−F (2−42) 3%
3−HHBB(F、F)−F (2−42) 4%
4−HHBB(F、F)−F (2−42) 2%
3−HH−V (3−1) 25%
1V2−HH−3 (3−1) 6%
V2−HHB−1 (3−5) 4%
3−HHEBH−3 (3−9) 4%
NI=93.1℃;Tc<−20℃;Δn=0.091;Δε=5.3;Vth=1.83V;η=14.0mPa・s.
【0211】
[組成物M5]
3−HHB(F)−OCF3 (2−10) 7%
3−HBB(F,F)−F (2−24) 12%
2−HB(F)B(F,F)−F (2−25) 4%
3−HB(F)B(F,F)−F (2−25) 12%
3−H2BB(F,F)−F (2−27) 5%
3−HHB(F)B(F,F)−F (2−43) 4%
5−HHB(F)B(F,F)−F (2−43) 3%
3−HH−5 (3−1) 20%
2−HH−3 (3−1) 4%
3−HB−O2 (3−2) 6%
3−HHEH−5 (3−4) 3%
VFF−HHB−1 (3−5) 10%
3−HHB−1 (3−5) 5%
1V−HBB−2 (3−6) 5%
NI=81.1℃;Tc<−20℃;Δn=0.091;Δε=5.6;Vth=1.76V;η=12.0mPa・s.
【0212】
[組成物M6]
1V2−BB−CL (2) 3%
7−HB(F)−F (2−2) 5%
7−HB(F,F)−F (2−3) 7%
3−HHB(F,F)−F (2−12) 10%
3−H2HB(F)−F (2−13) 6%
5−H2HB(F)−F (2−13) 4%
3−H2HB(F,F)−F (2−14) 6%
4−H2HB(F,F)−F (2−14) 5%
3−HH2B(F,F)−F (2−16) 12%
3−HBB−F (2−22) 5%
V−HH−5 (3−1) 17%
V2−HH−2V (3−1) 8%
V2−BB(F)B−1 (3−8) 4%
5−HBB(F)B−3 (3−13) 8%
NI=75.0℃;Tc<−20℃;Δn=0.088;Δε=4.5;Vth=1.89V;η=14.0mPa・s.
【0213】
[組成物M7]
3−HGB(F,F)−F (2−19) 3%
3−H2GB(F,F)−F (2−20) 5%
5−GHB(F,F)−F (2−21) 10%
3−HBB(F,F)−F (2−24) 10%
2−HHBB(F,F)−F (2−42) 3%
3−HHBB(F,F)−F (2−42) 4%
2−HH−3 (3−1) 20%
3−HH−VFF (3−1) 9%
1V−HH−3 (3−1) 7%
1V2−BB−1 (3−3) 4%
V−HHB−1 (3−5) 7%
1−BB(F)B−2V (3−8) 4%
2−BB(F)B−2V (3−8) 6%
3−HHEBH−5 (3−9) 4%
1O1−HBBH−5 (−) 4%
NI=93.0℃;Tc<−20℃;Δn=0.103;Δε=5.4;Vth=1.83V;η=12.7mPa・s.
【0214】
[組成物M8]
5−HEB−F (2−5) 3%
5−HEB(F,F)−F (2−6) 5%
3−HHB−F (2−9) 5%
2−HHEB(F,F)−F (2−18) 4%
3−HHEB(F,F)−F (2−18) 7%
3−HBB(F)−F (2−23) 9%
5−HBB(F)−F (2−23) 6%
5−HBEB−F (2−29) 4%
2−BB(F)B(F,F)−F (2−36) 4%
3−BB(F)B(F,F)−F (2−36) 10%
3−HHBB(F)−F (2−41) 4%
5−HHBB(F)−F (2−41) 4%
3−HH−O1 (3−1) 3%
3−HH−4 (3−1) 6%
2−HH−5 (3−1) 6%
F3−HH−V (3−1) 20%
NI=77.7℃;Tc<−20℃;Δn=0.097;Δε=5.7;Vth=1.68V;η=17.1mPa・s.
【0215】
[組成物M9]
3−HHB(F,F)−F (2−12) 10%
3−HH2B(F)−F (2−15) 8%
3−H2BB(F)−F (2−26) 7%
3−HB(F)EB−OCF3 (2−28) 8%
3−HH2BB(F,F)−F (2−44) 5%
4−HH2BB(F,F)−F (2−44) 3%
1V2−HH−V (3−1) 6%
1V−HH−V (3−1) 8%
7−HB−1 (3−2) 3%
1−BB−5 (3−3) 9%
V2−BB−1 (3−3) 4%
1V2−BB−1 (3−3) 6%
3−HHB−O1 (3−5) 5%
V2−HHB−1 (3−5) 5%
1−BB(F)B−2V (3−8) 6%
2−BB(F)B−2V (3−8) 3%
3−BB(F)B−2V (3−8) 4%
NI=90.9℃;Tc<−20℃;Δn=0.131;Δε=5.0;Vth=1.84V;η=13.6mPa・s.
【0216】
[組成物M10]
3−H2HB(F,F)−F (2−14) 6%
3−HBB(F,F)−F (2−24) 18%
3−BB(F,F)B−F (2−33) 4%
3−BB(F)B(F,F)−F (2−36) 10%
3−B2BB(F,F)−F (2−38) 5%
3−HHB(F)B(F,F)−F (2−43) 4%
3−HH2BB(F,F)−F (2−44) 4%
V−HH−3 (3−1) 25%
1V−HH−3 (3−1) 5%
7−HB−1 (3−2) 5%
V2−HHB−1 (3−5) 5%
1−BB(F)B−2V (3−8) 5%
5−HBB(F)B−3 (3−13) 4%
NI=80.2℃;Tc<−20℃;Δn=0.118;Δε=6.2;Vth=1.53V;η=15.1mPa・s.
【0217】
[組成物M11]
3−HHB−F (2−9) 3%
3−GHB(F,F)−F (2−21) 4%
3−HBB(F)−F (2−23) 3%
3−GB(F)B(F)−F (2−31) 8%
3−BB(F)B(F,F)−CF3 (2−37) 3%
3−GB(F)B(F)B(F)−F (2−45) 2%
4−GBB(F)B(F,F)−F (2−46) 3%
3−HH−V (3−1) 30%
F3−HH−V (3−1) 8%
3−HB−O2 (3−2) 5%
1−BB−5 (3−3) 4%
V−HBB−2 (3−6) 6%
1−BB(F)B−2V (3−8) 4%
2−BB(F)B−2V (3−8) 6%
3−BB(F)B−2V (3−8) 3%
5−HBBH−3 (3−11) 3%
3−dhBB(2F,3F)−O2 (4−16) 5%
NI=82.4℃;Tc<−20℃;Δn=0.125;Δε=2.7;Vth=2.10V;η=17.1mPa・s.
【0218】
以下の重合性化合物(RM−1)から(RM−8)を第一添加物として使用した。
【0219】
以下の極性化合物(PC−1)から(PC−33)を第二添加物として使用した。
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
【0224】
【0225】
2.液晶分子の垂直配向
試験番号1
組成物(M1)に重合性化合物(RM−1)を0.5重量%の割合で、極性化合物(PC−1)を5重量%の割合で添加した。この混合物を100℃のホットステージ上で2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4.0μmである、配向膜を有しない素子に注入した。この素子に超高圧水銀ランプUSH−250−BY(ウシオ電機製)を用いて紫外線を照射(28J)することによって、重合性化合物を重合させた。この素子を偏光子と検光子が直行して配置された偏光顕微鏡にセットし、下から素子に光を照射し、光漏れの有無を観察した。液晶分子が充分に配向し、光が素子を通過しない場合は、垂直配向が「良好」と判断した。素子を通過した光が観察された場合は、「不良」と表した。
【0226】
試験番号2から33
組成物、重合性化合物、および極性化合物を組み合わせた混合物を用いて配向膜を有しない素子を作製した。試験番号1と同様な方法で光漏れの有無を観察した。結果を表4にまとめた。
【0227】
【0228】
3.重合性化合物の転化率
組成物には極性化合物と共に重合性化合物を添加した。この重合性化合物は、重合によって消費され重合体を与えた。この反応の転化率は大きい方が好ましい。重合性化合物の残量(未反応の重合性化合物の量)は、画像の焼き付きの観点から少ない方が好ましいからである。高分子支持配向型の素子を作製するときは、液晶分子のプレチルト角を最適化する目的で、一般に二段階で紫外線を照射する。次の試験では、第一段階の紫外線を照射したあと、重合性化合物の残量を測定し、転化率を算出した。比較するために、下記の重合性化合物(RM−9)を選んだ。この化合物は、記号の定義によって化合物(1)から除外されている。
【0229】
重合は次のように行った。「液晶分子の垂直配向」の段落に記載した方法で、配向膜を有しない素子を作成した。この素子に、30Vの電圧を印加しながら78mW/cm
2(405nm)の紫外線を359秒間(28J)照射した。紫外線の照射には、アイグラフィックス株式会社製、紫外硬化用マルチメタルランプM04−L41を用いた。HPLCにより、重合性化合物の残量を測定し、転化率を算出した。結果を表5にまとめた。試験番号1から8の転化率は38%から46%の範囲であった。比較例1では、試験番号1で使われた重合性化合物(RM−1)を重合性化合物(RM−9)に置き換えて重合させた。この場合に転化率は18%であった。この比較によって、本発明の組成物は、転化率の点からも優れていると結論できる。
【0230】
【0231】
表4と表5が示す結果は、重合性化合物および極性化合物を含む液晶組成物を使うことによって、各成分の種類が異なるにも拘わらず、配向膜が無くても液晶分子が安定して配向していることを示している。これは、特筆すべき本発明の特徴である。