(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ウレタンプレポリマー(a)が、重量平均分子量8000以上のポリエーテルポリオール(a−1)とジフェニルメタンジイソシアネート(a−2)との反応生成物である、請求項1に記載の二液硬化型ウレタン系組成物。
主剤(A)及び硬化剤(B)の少なくとも一方がカーボンブラック(g)を含有し、カーボンブラック(g)の総含有量は主剤(A)及び硬化剤(B)の総量に対して10〜30質量%である、請求項1又は2に記載の二液硬化型ウレタン系組成物。
【背景技術】
【0002】
自動車のボディ、フロントドア、リアドア、バックドア、フロントバンパー、リアバンパー、ロッカーモール等の内外装部品には一般的に鋼板が使用されているが、近年の燃費改善要求に応えるため、軽量化が求められている。このため、鋼板に代えてポリプロピレン等のプラスチック材料を自動車の内外装部品として使用する場合が増えている。なお、ポリプロピレン等のプラスチック材料は鋼板と比較して強度が低いため、タルク及びガラスフィラーを添加して強度を向上させることが一般的である。
【0003】
ポリプロピレン等のプラスチック製自動車部品同士の接着剤としてはウレタン系組成物が提案されている。
ウレタン系組成物としては、空気中の湿気等によって硬化する、湿気硬化型と呼ばれる一液型のものと、イソシアネート化合物とポリオール化合物とからなる二液型のものが知られている。これらの中で、接着工程における作業性の観点から、可使時間(ポットライフ、多液塗料において化学反応などで塗料が硬化しはじめるまでの時間)を十分確保でき、且つ速硬化が可能となる二液型が好まれる。
【0004】
一般に、ポリプロピレン基材は、表面の極性が小さく、難接着であることから、接着を容易にするために、基材表面に極性基を導入する表面処理を行う。表面処理には、プラズマ処理、コロナ処理、フレーム処理等が適用される。さらに、表面処理を施したポリプロピレン基材同士の接着にウレタン系組成物を直接適用することは困難であるため、各々のポリプロピレン基材に前処理としてプライマー処理を行ってからウレタン系組成物を適用することが一般的である。しかし近年、工程の簡略化、作業環境改善等の観点からノンプライマー化が求められている。
【0005】
また、硬化後の接着剤に求められる性能としては、接着性、速硬化性、耐温水性、耐疲労性、耐熱クリープ性等がある。特に、自動車は高温多湿等の過酷な環境に晒される可能性があるため、接着剤にも高温多湿環境において劣化し難い性能(以下、「耐湿熱老化性」ともいう。)が求められる。例えば、85℃85%RH(相対湿度)の条件にて300時間放置しても、接着性が損なわれないことが必要となる。
このような種々の特性を満足させるために、ウレタン系組成物にはカーボンブラックを配合することが一般的である。これにより、ウレタン系組成物の機械的強度が向上し、且つ取り扱い性に優れた粘度、チクソトロピー性を付与することが可能となる。
例えば、特許文献1には、一液湿気硬化型ウレタン樹脂組成物のノンプライマー接着剤が、特許文献2には、イソシアネート化合物を含有する主剤(第1液)と、ケチミンを含有する硬化剤(第2液)とを作業時に混合する二液型硬化性組成物が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の好適な実施形態について説明するが、本開示はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。なお、本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0011】
本実施形態の二液硬化型ウレタン系組成物(以下、単に「ウレタン系組成物」ともいう。)は、主剤(A)と硬化剤(B)を含む。このウレタン系組成物は、主剤(A)と硬化剤(B)を混合することにより、硬化させることができる。
【0012】
主剤(A)は、ウレタンプレポリマー(a)、ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(b)及びシランカップリング剤(c)を含有する。硬化剤(B)はポリエーテルポリオール(d)、4個以上のヒドロキシ基を有するポリエーテルポリオール(e)及びアミン触媒(f)を含有する。主剤(A)及び硬化剤(B)の少なくとも一方は、カーボンブラック(g)及び/又は可塑剤(h)を含有することが好ましい。以下、各成分について説明する。
【0013】
<ウレタンプレポリマー(a)>
ウレタンプレポリマー(a)は、活性水素基を2個以上有する化合物とイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物との反応生成物である。
活性水素基としては、例えば、ヒドロキシ基(OH基)、カルボキシル基(COOH基)、アミノ基(NH
2基)、チオール基(SH基)等が挙げられる。活性水素基を2個以上有する化合物としては、ポリオールが好ましく、ポリエーテルポリオール(a−1)がより好ましい。
ポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基が芳香族炭化水素と結合している芳香族ポリイソシアネート、イソシアネート基が脂環式炭化水素と結合している脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。これらの中で、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネート(a−2)又はジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H
12MDI)がより好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネート(a−2)がさらに好ましい。
【0014】
<ポリエーテルポリオール(a−1)>
上記ポリエーテルポリオール(a−1)は、OH基を2個以上有するポリエーテルポリオールであれば特に限定されない。具体的には、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ソルビトール系ポリオール等が挙げられる。これらの中でもポリプロピレングリコール(PPG)が好ましい。また、ポリエーテルポリオール(a−1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
上記ポリエーテルポリオール(a−1)は重量平均分子量8000以上であることが好ましく、重量平均分子量10000以上であることがより好ましい。ポリエーテルポリオールの重量平均分子量8000以上であると、ウレタン化した際のプレポリマーの凝集力が大きくなりすぎないことから、耐熱クリープ性に優れる。ポリエーテルポリオールは製造工程中に生成する副生成物を少なくし、より狭分散化させることで高分子量化できる。現在市販されているPPG(ポリプロピレングリコール)の中で最高の重量平均分子量は15000程度である。市販されている高分子量ポリエーテルポリオールとしては、例えば旭硝子株式会社製のプレミノール(登録商標、以下同様)を使用することができる。実施例で用いたプレミノール3012は、グリセリンを開始剤としたポリプロピレングリコールの重合体である。
なお、本明細書中、「重量平均分子量」とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を利用し、標準ポリスチレンの検量線を使用して算出したものである。
GPC測定条件は、下記のとおりである。
・測定器 :HLC−8120(東ソー株式会社製)
・カラム :TSKguardcolumn HXL―L (東ソー株式会社製)
・キャリア:テトラヒドロフラン(THF)
・検出器 :示差屈折
・サンプル:0.1質量%THF溶液
・検量線 :ポリスチレン
【0016】
<ジフェニルメタンジイソシアネート(a−2)>
上記ジフェニルメタンジイソシアネート(a−2)としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI(モノメリックMDI))、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)(2,4’−MDI)等が挙げられる。
【0017】
<ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(b)>
上記ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(b)としては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の各種ポリイソシアネート化合物の3量体である。当該3量体は、1種のポリイソシアネート化合物の3量体であってもよく、2種以上のポリイソシアネート化合物、例えばHDIとTDIとの混合3量体であってもよい。当該3量体の末端官能基は3官能全てがイソシアネート基(NCO基)である。
【0018】
上記ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(b)としては、例えば、TDIイソシアヌレート(タケネートD204、三井化学SKCポリウレタン株式会社製)、HDIイソシアヌレート(スミジュールN3300、住化バイエルウレタン株式会社製)、IPDIイソシアヌレート(T1890、エボニックジャパン株式会社製)、HDIとTDIとの混合イソシアヌレート(デスモジュールHL、住化バイエルウレタン株式会社製)等の市販品を使用することができる。
【0019】
上記ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(b)を添加することにより、ノンプライマー接着性及び耐湿熱老化性を向上させることができる。ノンプライマー接着性を向上できる理由は、イソシアヌレート変性体の分子内に3個存在するNCO基がウレタン系組成物中にてウレタン結合を形成し、さらに、ポリプロピレン基材表面にフレーム処理を施すことによって導入された極性基ともウレタン結合を形成する結果、界面接着力を強くすると推測される。
また、耐湿熱老化性を向上できる理由は、イソシアヌレート変性体の化合物中に存在するイソシアヌレート環がウレタン系組成物中の凝集力発現に寄与するためであると推測される。
【0020】
ウレタン系組成物におけるポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(b)の含有量はウレタンプレポリマー(a)100質量部に対して、0.5〜5.0質量部である。上記ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(b)の含有量が0.5質量部未満となると、ウレタン組成中のイソシアヌレート環の存在量が減少し、凝集力が低下する結果、接着剤の耐湿熱老化性が悪化する。また、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(b)の含有量が5.0質量部を超えると、ウレタン系組成物中のNCO基の存在量が多くなる結果、ウレタン系組成物が硬化した際に硬化度が高くなる。このため、基材からの接着剤の引剥がしの際に、基材と接着剤の界面に応力が集中し、基材と接着剤の間の界面破壊となるおそれがある、すなわち接着剤の接着性が悪化する。
上記ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(b)の含有量は、ノンプライマー接着性及び耐湿熱老化性をさらに向上させることができる点から、1.0〜4.5質量部であることがより好ましい。
【0021】
<シランカップリング剤(c)>
シランカップリング剤(c)は、1つの分子中に反応性の異なる2種類の官能基を有する有機ケイ素化合物である。シランカップリング剤(c)としては、例えば、エポキシシラン、ビニルシラン、イミダゾールシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、スチリルシラン、イソシアネートシラン、スルフィドシラン、ウレイドシラン等が挙げられる。
【0022】
上記シランカップリング剤(c)は、ウレタン系組成物中にてウレタン結合及びシロキサン結合を形成し、かつ、ポリプロピレン基材表面に導入された極性基を相手に共有結合を形成する。このため、ウレタン系組成物とポリプロピレン基材との間の接着に寄与する。これらのシランカップリング剤は、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
ウレタン系組成物におけるシランカップリング剤(c)の含有量は、ウレタンプレポリマー(a)100質量部に対して、0.5〜5.0質量部である。上記シランカップリング剤(c)の含有量が0.5質量部未満となると、ウレタン系組成物とポリプロピレン基材の間の密着力が小さくなり、結果的に、特に高温下(60〜100℃)でのポリプロピレン基材と接着剤の間のノンプライマー接着性が小さくなる。また、上記シランカップリング剤(c)の含有量が5.0質量部を超えると、ウレタン系組成物が発現する凝集力を低下させる傾向があり、結果的に、接着剤の耐熱クリープ性が低下する。
上記シランカップリング剤(c)の含有量は、ノンプライマー接着性及び耐熱クリープ性をさらに向上させることができる点から、1.0〜4.0質量部であることが好ましい。
【0024】
<ポリエーテルポリオール(d)>
ポリエーテルポリオール(d)は、ヒドロキシ基を2個又は3個有するポリエーテルポリオールであれば特に限定されない。具体的には、上記ポリエーテルポリオール(a−1)と同様の化合物を好適に用いることができる。ポリエーテルポリオール(a−1)とポリエーテルポリオール(d)は同一でも異なっていてもよい。
【0025】
<4個以上のヒドロキシ基を有するポリエーテルポリオール(e)>
4個以上のヒドロキシ基を有するポリエーテルポリオール(e)の種類は特に限定されず、例えば、活性水素基を4つ以上有する脂肪族、脂環族若しくは芳香族のポリオールとアルキレンオキサイドとの反応物であるポリエーテルポリオール、又は活性水素基を4つ以上有する脂肪族、脂環族若しくは芳香族のポリアミンとアルキレンオキサイドとの反応物であるアミン系ポリエーテルポリオールが挙げられる。これらのうち、アルキレンジアミン(脂肪族ジアミン)とアルキレンオキサイドとの反応物であるアミン系ポリエーテルテトラオールが、ウレタン反応の硬化速度を向上し、架橋密度を上昇させることができるので好ましい。アルキレンジアミンのアルキレン基の炭素数は2〜6であることが好ましく、アルキレンオキサイドのアルキレン基の炭素数は2〜4であることが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
市販されている4個以上のヒドロキシ基を有するアミン系ポリエーテルポリオールとしては、例えばエチレンジアミンの活性水素にプロピレンオキサイドを付加したポリエーテルテトラオールであるアデカポリエーテルEDPシリーズを使用することができる。
【0027】
上記4個以上のヒドロキシ基を有するポリエーテルポリオール(e)を添加することにより、耐湿熱老化性を向上させることができる。
耐湿熱老化性が向上する理由は、一分子中のヒドロキシ基が多い、即ち、OH当量の小さなポリエーテルポリオールを配合することで、ウレタン系組成物が硬化した際に、4個以上のヒドロキシ基を有するポリエーテルポリオール(e)を配合しないものと比較した場合に、ウレタン系組成物の架橋密度が上昇し、良好な硬度、耐湿熱老化性が得られると推定している。
【0028】
上記4個以上のヒドロキシ基を有するポリエーテルポリオール(e)の重量平均分子量は、100〜2000であることが好ましい。
上記4個以上のヒドロキシ基を有するポリエーテルポリオール(e)の重量平均分子量が上記所定の範囲であることにより、硬化時のウレタン系組成物の硬度がより適切な範囲に調整され、基材と接着剤の接着性、及び接着剤の耐湿熱老化性がさらに向上する。
【0029】
ウレタン系組成物における上記4個以上のヒドロキシ基を有するポリエーテルポリオール(e)の含有量は、ポリエーテルポリオール(d)100質量部に対して、1.0〜5.0質量部である。
上記4個以上のヒドロキシ基を有するポリエーテルポリオール(e)の含有量が1.0質量部未満となると、硬化時のウレタン系組成物の硬度が低くなりすぎ、接着剤の良好な耐湿熱老化性が得られないおそれがある。また、上記4個以上のヒドロキシ基を有するポリエーテルポリオール(e)の含有量が5.0質量部を超えると、硬化時のウレタン系組成物の硬度が高くなりすぎ、基材と接着剤の良好な接着性が得られない。
上記4個以上のヒドロキシ基を有するポリエーテルポリオール(e)の含有量は、耐湿熱老化性をさらに向上させることができる点から、1.5〜4.5質量部であることが好ましく、2.0〜4.0質量部であることがより好ましい。
【0030】
<アミン触媒(f)>
アミン触媒(f)としては、ウレタン化反応又は尿素化反応を促進する公知の触媒が使用できる。アミン触媒(f)は、ウレタン化反応性及び尿素化反応性を高めることができる点から、三級アミンであることが好ましい。
アミン触媒(f)の具体例としては、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N',N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N',N”,N”−ペンタメチル−(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N',N”,N”−ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N',N'−テトラメチルグアニジン、1,3,5−トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N−メチル−N'−(2−ジメチルアミノエチル)ピペラジン、N,N'−ジメチルピペラジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−ジメチルアミノプロピルイミダゾール、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルヘキサノールアミン、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N'−トリメチル−N'−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N'−トリメチル−N'−(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミン、N−メチル−N'−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、ビス(ジメチルアミノプロピル)メチルアミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)イソプロパノールアミン、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール、1−(2−ヒドロキシプロピル)イミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、3−キヌクリジノール、2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル等が挙げられる。
上記アミン触媒(f)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
ウレタン系組成物における上記アミン触媒(f)の含有量は、ポリエーテルポリオール(d)100質量部に対して、1.0〜10.0質量部であり、2.0〜9.0質量部であることが好ましく、3.0〜8.0質量部であることがより好ましい。上記アミン触媒(f)の含有量が1.0質量部未満となると、接着剤の硬化反応が著しく遅くなり作業性が悪くなる。一方、上記アミン触媒(f)の含有量が10.0質量部を超えると、貼り合せ可能時間が短くなり、作業性の点で好ましくない。
【0032】
<カーボンブラック(g)>
カーボンブラック(g)は、その平均粒子径(D50:体積粒度分布曲線の50%値の粒径)が20〜40nmであることが好ましく、25〜35nmであることがより好ましい。カーボンブラックの平均粒子径が上記所定の範囲であることにより、接着剤の粘性及びカーボンブラックの分散性がより適切な範囲に調整され、接着剤の作業性及び強度がより向上する。なお、カーボンブラックの平均粒子径(D50)は、例えばレーザー回折光散乱法により測定可能であり、例えばベックマン・コールター社製「モデルLS−230」を用いて測定できる。
カーボンブラックとしては、旭カーボン#70(旭カーボン株式会社製)、シースト3(東海カーボン株式会社製、「シースト」は登録商標)、三菱カーボン#32(三菱化学株式会社製)、ニテロン#200(新日化カーボン株式会社製、「ニテロン」は登録商標)等の市販品を好適に使用することができる。
【0033】
ウレタン系組成物の主剤(A)及び硬化剤(B)における上記カーボンブラック(g)の総含有量は、主剤(A)と硬化剤(B)の総量に対して10〜30質量%であることが好ましく、10〜25質量%であるのがより好ましい。上記カーボンブラック(g)の含有量が上記所定の範囲であることにより、接着剤の強度をより向上させることができ、さらに、未硬化時にはチクソトロピー性を有し、作業性が良好となり、また硬化時には耐発泡性を有し、さらには硬化後には高強度及び光遮蔽効果による高い耐候性、即ち、耐久耐候性を有することになるので好ましい。
【0034】
<可塑剤(h)>
可塑剤(h)としては、例えばフタル酸エステル系化合物、アルキルスルホン酸エステル系化合物、アジピン酸エステル系化合物等が挙げられる。フタル酸エステル系化合物の具体例としては、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)等が挙げられる。
【0035】
本実施形態のウレタン系組成物は、上述の成分に加えて、さらに顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、分散剤、溶剤等の添加剤を含有してもよい。
【0036】
ウレタン系組成物において、主剤(A)及び硬化剤(B)中のイソシアネート基(NCO)とヒドロキシ基(OH)との存在比率であるNCO/OH基当量比は1.0〜1.5であることが好ましい。NCO/OH基当量比が上記所定の範囲であることにより、接着剤の接着性及び接着工程の作業性が向上する。なお、上記イソシアネート基は主にウレタンプレポリマー(a)及びポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体(b)に由来するものであり、ヒドロキシ基は主にポリエーテルポリオール(d)及び4個以上のヒドロキシ基を有するポリエーテルポリオール(e)に由来するものである。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本開示の目的及び利点をさらに詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
(主剤中間品の調製)
撹拌機、窒素導入管、真空ポンプ及び加熱冷却装置付き混練容器に、プレミノール3012(ポリエーテルポリオール、旭硝子株式会社製、重量平均分子量(Mw)12000、3官能)を90.9g、三菱カーボン#32(カーボンブラック、三菱化学株式会社製、平均粒子径28nm)を24.0g、DINP(フタル酸ジイソノニル、株式会社ジェイプラス製)を20.0g仕込み、30分間、カーボンブラックの塊がなくなるまで撹拌した。次いで、内容物が100℃になるまで混練容器を加熱し、真空ポンプにより混練容器内部が20mmHgになるまで減圧し、1時間撹拌し続けた。さらに、内容物の温度が70℃になるまで冷却し、容器内にミリオネートMT(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(モノメリックMDI),東ソー株式会社製、「ミリオネート」は登録商標、NCO33.6%)を9.1g、錫触媒(ニッカオクチック錫)を200ppm(対ウレタンプレポリマー重量)添加し、窒素導入後、1時間撹拌し続けた。最後に内容物の温度が40℃になるまで冷却した。これを主剤中間品とした。
(硬化剤中間品の調製)
撹拌機、窒素導入管、真空ポンプ及び加熱冷却装置付き混練容器にプレミノール3012(ポリエーテルポリオール、旭硝子株式会社製、重量平均分子量(Mw)12000、3官能)を100.0g、旭カーボン#70(カーボンブラック、旭カーボン株式会社製、平均粒子径28nm)を40.0g、DINP(フタル酸ジイソノニル、株式会社ジェイプラス製)を90.0g仕込み、30分間、カーボンブラックの塊がなくなるまで撹拌した。次いで、内容物が100℃になるまで混練容器を加熱し、真空ポンプにより混練容器内部が20mmHgになるまで減圧し、1時間撹拌し続けた。さらに、内容物の温度が40℃になるまで冷却した。これを硬化剤中間品とした。
【0039】
<実施例1>
(主剤#1)
上記主剤中間品にKBM−803(メルカプトシラン、信越化学工業株式会社製)を2.5g、スミジュールN3300(HDIイソシアヌレート、住化バイエルウレタン株式会社製)を1.5g添加し、10分間攪拌した。
(硬化剤#1)
上記硬化剤中間品にアデカポリエーテルEDP−300(エチレンジアミンPPG、株式会社ADEKA製)を2.5g、U−CAT660M(2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル、サンアプロ株式会社製)を5.0g添加し、10分間攪拌した。
【0040】
<実施例2>
(主剤#2)
上記主剤中間品にKBM−573(アミノシラン、信越化学工業株式会社製)を3.0g、タケネートD204(TDIイソシアヌレート、三井化学SKCポリウレタン株式会社製)を4.3g添加し、10分間攪拌した。
(硬化剤#2)
上記硬化剤中間品にアデカポリエーテルEDP−1100(エチレンジアミンPPG、株式会社ADEKA製)を4.0g、U−CAT660M(2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル、サンアプロ株式会社製)を6.0g添加し、10分間攪拌した。
【0041】
<実施例3>
(主剤#3)
上記主剤中間品にKBM−803(メルカプトシラン、信越化学工業株式会社製)を1.0g、KBM−573(アミノシラン、信越化学工業株式会社製)を1.5g、スミジュールN3300(HDIイソシアヌレート、住化バイエルウレタン株式会社製)を3.5g添加し、10分間攪拌した。
(硬化剤#3)
上記硬化剤中間品にアデカポリエーテルEDP−1100(エチレンジアミンPPG、株式会社ADEKA製)を3.5g、U−CAT660M(2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル、サンアプロ株式会社製)を3.2g添加し、10分間攪拌した。
【0042】
<実施例4>
(主剤#4)
上記主剤中間品にKBM−803(メルカプトシラン、信越化学工業株式会社製)を4.0g、タケネートD204(TDIイソシアヌレート、三井化学SKCポリウレタン株式会社製)を2.0g添加し、10分間攪拌した。
(硬化剤#4)
上記硬化剤中間品にアデカポリエーテルEDP−300(エチレンジアミンPPG、株式会社ADEKA製)を1.5g、アデカポリエーテルEDP−1100(エチレンジアミンPPG、株式会社ADEKA製)を2.0g、U−CAT660M(2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル、サンアプロ株式会社製)を7.0g添加し、10分間攪拌した。
【0043】
<比較例1>
(主剤#5)
上記主剤中間品にKBM−573(アミノシラン、信越化学工業株式会社製)を3.0g、デスモジュールN3200(HDIビウレット、住化バイエルウレタン株式会社製)を1.5g添加し、10分間攪拌した。
(硬化剤#5)
上記硬化剤中間品にアデカポリエーテルEDP−300(エチレンジアミンPPG、株式会社ADEKA製)を2.5g、U−CAT660M(2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル、サンアプロ株式会社製)を5.0g添加し、10分間攪拌した。
【0044】
<比較例2>
(主剤#6)
上記主剤中間品にKBM−803(メルカプトシラン、信越化学工業株式会社製)を3.0g、スミジュールN3300(HDIイソシアヌレート、住化バイエルウレタン株式会社製)を2.0g添加し、10分間攪拌した。
(硬化剤#6)
上記硬化剤中間品にアデカポリエーテルEDP−300(エチレンジアミンPPG、株式会社ADEKA製)を6.0g、U−CAT660M(2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル、サンアプロ株式会社製)を3.0g添加し、10分間攪拌した。
【0045】
<比較例3>
(主剤#7)
上記主剤中間品にKBM−803(メルカプトシラン、信越化学工業株式会社製)を2.0g、タケネートD204(TDIイソシアヌレート、三井化学SKCポリウレタン株式会社製)を1.5g添加し、10分間攪拌した。
(硬化剤#7)
上記硬化剤中間品にアデカポリエーテルEDP−1100(エチレンジアミンPPG、株式会社ADEKA製)を3.0g、U−CAT660M(2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル、サンアプロ株式会社製)を0.5g添加し、10分間攪拌した。
【0046】
[速硬化性]
上記実施例1〜4、比較例1〜3の対応する主剤と硬化剤をプラネタリ装置で混合し、ウレタン系組成物を調製した。ガスバーナーでフレーム処理を行ったポリプロピレン基材に直接、このウレタン系組成物をビード状に塗布し、これに離型紙を重ね接着剤厚さが3mmとなるように圧着した。その後、養生のために60℃乾燥機に10分間投入し、速硬化性測定サンプル(サイズ25mm×100mm)を得た。このサンプルに対して、ナイフカットによる剥離試験を行い、ノンプライマー接着性を評価した。
接着剤の接着性評価として、接着した部分が凝集破壊の場合は「A」、ポリプロピレン基材表面と接着剤間との界面破壊(剥離)の場合は「B」とした。
【0047】
[ノンプライマー接着性]
上記実施例1〜4、比較例1〜3の対応する主剤と硬化剤をプラネタリ装置で混合し、ウレタン系組成物を調製した。ガスバーナーでフレーム処理を行ったポリプロピレン基材に直接、このウレタン系組成物をビード状に塗布し、これに離型紙を重ね接着剤厚さが3mmとなるように圧着した。その後、養生のために23℃、50%RH(相対湿度)にて72時間放置し、養生後の塗布サンプルを得た。このサンプル(サンプルサイズ;25mm×100mm)に対して、ナイフカットによる剥離試験を行い、ノンプライマー接着性を評価した。
接着剤の接着性評価として、接着した部分が凝集破壊の場合は「A」、ポリプロピレン基材表面と接着剤間との界面破壊(剥離)の場合は「B」とした。
【0048】
[耐湿熱老化性]
上記実施例1〜4、比較例1〜3の対応する主剤と硬化剤をプラネタリ装置で混合し、ウレタン系組成物を調製した。ガスバーナーでフレーム処理を行ったポリプロピレン基材に直接、このウレタン系組成物をビード状に塗布し、これに離型紙を重ね接着剤厚さが3mmとなるように圧着した。その後、養生のために23℃、50%RH(相対湿度)にて72時間放置し、養生後の塗布サンプルを得た。この塗布サンプル(サイズ25×100mm)を、湿熱劣化のために85℃、85%RH(相対湿度)にて300時間放置し、耐湿熱老化後の塗布サンプルを得た。このサンプルに対して、ナイフカットによる剥離試験を行い、耐湿熱老化性を評価した。
接着剤の接着性評価として、接着した部分が凝集破壊の場合は「A」、ポリプロピレン基材表面と接着剤間との界面破壊(剥離)の場合は「B」とした。
【0049】
[ショアA硬度]
上記実施例1〜4、比較例1〜3の対応する主剤と硬化剤をプラネタリ装置で混合し、ウレタン系組成物を調製した。このウレタン系組成物について、無処理のポリプロピレン基材上に接着剤厚さが厚さ3mmで塗布したものを、接着剤の厚さが12mm以上になるまで積み重ね、評価用試料とした。作製した評価用試料を23℃、50%RH(相対湿度)にて72時間放置した後、接着剤層のショアA硬度を、JIS K6253に準拠して、A型硬度計を用いて測定した。
【0050】
材料の配合・添加を表1に、評価の結果を表2に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
主剤(A)において、ウレタンプレポリマー(a)100質量部に対して、HDIビウレットを1.5質量%含有した比較例1のウレタン系組成物を用いて作製した試料は、ノンプライマー接着性は破壊モードが凝集破壊で良好な状態であり、ショアA硬度も39と良好であるが、耐湿熱老化性評価では剥離し、B評価となった。
硬化剤(B)において、ポリエーテルポリオール(d)100質量部に対して、4個以上のヒドロキシ基を有するポリエーテルポリオール(e)を6.0質量部含有した比較例2のウレタン系組成物を用いて作製した試料は、速硬化性が良好であったが、ショアA硬度が55と過大で、ノンプライマー接着性評価と耐湿熱老化性評価では剥離し、B評価となった。
硬化剤(B)において、ポリエーテルポリオール(d)100質量部に対して、アミン触媒(f)を0.5質量部含有した比較例3のウレタン系組成物を用いて作製した試料は、ノンプライマー接着性評価は破壊モードが凝集破壊で良好な状態であり、ショアA硬度も43と良好であるが、速硬化性評価では剥離し、B評価となった。
これらに対し、本発明の範囲となる実施例1〜4のウレタン系組成物を用いて作製した試料は、速硬化性、ノンプライマー接着性、耐湿熱老化性及びショアA硬度のいずれの評価でも良好な評価結果を示した。