(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記樹脂成分が、前記芳香環を有するエポキシ樹脂として液状のビスフェノール型エポキシ樹脂及び液状のグリシジルアミン型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種と、前記脂肪族エポキシ樹脂として線状脂肪族エポキシ樹脂とを含む、請求項9に記載の封止方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワイヤ流れを抑制するためには樹脂組成物の流動性を高めることが有効と考えられるが、単に粘度を低くするのみではワイヤの周囲に付与した状態を充分に保持できず、ワイヤの周囲に良好な封止構造が形成されないおそれがある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、電子回路の周囲に良好な封止構造を形成可能な電子回路保護材、この電子回路保護材とともに用いられる封止用樹脂組成物、これらの電子回路保護材と電子回路保護材用封止材を組み合わせて用いる封止方法、及び電子回路の周囲に良好な封止構造を備える半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>樹脂成分と、無機充填材と、を含有し、75℃、せん断速度5s
−1の条件で測定される粘度(Pa・s)を粘度Aとし、75℃、せん断速度50s
−1の条件で測定される粘度(Pa・s)を粘度Bとしたとき、粘度A/粘度Bの値として得られる75℃での揺変指数が0.1〜2.5である、電子回路保護材。
<2>前記樹脂成分が熱硬化性の樹脂成分である、<1>に記載の電子回路保護材。
<3>塩素イオン量が100ppm以下である、<1>又は<2>に記載の電子回路保護材。
<4>前記無機充填材の最大粒子径が75μm以下である、<1>〜<3>のいずれか1項に記載の電子回路保護材。
<5>75℃、せん断速度5s
−1で測定される粘度が3.0Pa・s以下である、<1>〜<4>のいずれか1項に記載の電子回路保護材。
<6>25℃、せん断速度10s
−1で測定される粘度が30Pa・s以下である、<1>〜<5>のいずれか1項に記載の電子回路保護材。
<7>前記無機充填材の含有率が全体の50質量%以上である、<1>〜<6>のいずれか1項に記載の電子回路保護材。
<8>前記樹脂成分がエポキシ樹脂を含む、<1>〜<7>のいずれか1項に記載の電子回路保護材。
<9>前記樹脂成分が芳香環を有するエポキシ樹脂と、脂肪族エポキシ樹脂とを含む、<1>〜<8>のいずれか1項に記載の電子回路保護材。
<10>前記樹脂成分が、前記芳香環を有するエポキシ樹脂として液状のビスフェノール型エポキシ樹脂及び液状のグリシジルアミン型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種と、前記脂肪族エポキシ樹脂として線状脂肪族エポキシ樹脂とを含む、<1>〜<9>のいずれか1項に記載の電子回路保護材。
<11><1>〜<10>のいずれか1項に記載の電子回路保護材の硬化物の周囲を封止するための、電子回路保護材用封止材。
<12><1>〜<10>のいずれか1項に記載の電子回路保護材と、<11>に記載の電子回路保護材用封止材とを組み合わせて電子回路の周囲を封止する、封止方法。
<13>電子回路の周囲に<1>〜<10>のいずれか1項に記載の電子回路保護材を付与して電子回路保護材の硬化物を形成する工程を有する、半導体装置の製造方法。
<14>前記電子回路保護材の硬化物の周囲を封止用樹脂組成物を用いて封止する工程をさらに有する、<13>に記載の半導体装置の製造方法。
<15>前記電子回路は、半導体チップと基板とを接続するワイヤである、<13>又は<14>に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電子回路の周囲に良好な封止構造を形成可能な電子回路保護材、この電子回路保護材とともに用いられる封止用樹脂組成物、これらの電子回路保護材と電子回路保護材用封止材を組み合わせて用いる封止方法、及び電子回路の周囲に良好な封止構造を備える半導体装置の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
【0011】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本開示において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
【0012】
<電子回路保護材>
本実施形態の電子回路保護材は、樹脂成分と、無機充填材と、を含有し、75℃、せん断速度5s
−1の条件で測定される粘度(Pa・s)を粘度Aとし、75℃、せん断速度50s
−1の条件で測定される粘度(Pa・s)を粘度Bとしたとき、粘度A/粘度Bの値として得られる75℃での揺変指数が0.1〜2.5である。電子回路保護材は、必要に応じて樹脂成分及び無機充填材以外の成分を含有してもよい。
【0013】
本開示において「電子回路保護材」とは、半導体装置において電子回路の周囲を保護するための材料を意味し、ワイヤボンディング構造において半導体チップと基板とを接続するワイヤの周囲を封止するために用いられる樹脂材料(ワイヤコート材)、半導体チップと基板の間を充填する樹脂材料(アンダーフィル材)等が挙げられる。電子回路保護材を用いて電子回路の周囲を保護することで、その外側をさらに封止材で封止する際に、封止材によってワイヤ流れ等の問題が生じるのを回避することができる。また、封止材によってワイヤ流れ等の問題が生じる可能性を考慮する必要がなくなり、封止材の選択の自由度を広げることができる。
【0014】
本実施形態の電子回路保護材は、75℃での揺変指数が0.1〜2.5であることで、電子回路の周囲に良好な封止構造を形成することができる。
【0015】
電子回路保護材の75℃での揺変指数は、その用途(例えば、ワイヤコート材として用いるかアンダーフィル材として用いるか)、電子回路及び半導体装置の状態等に応じて設定できる。例えば、電子回路保護材をワイヤコート材として用いる場合の75℃での揺変指数は、0.1〜2.5であることが好ましく、アンダーフィル材として用いる場合の75℃での揺変指数は、0.1〜1.0であることが好ましいが、本実施形態はこれらの範囲に限定されるものではない。
【0016】
電子回路保護材は、75℃、せん断速度5s
−1で測定される粘度が3.0Pa・s以下であることが好ましく、2.0Pa・s以下であることがより好ましい。電子回路保護材の75℃、せん断速度5s
−1での粘度が3.0Pa・s以下であると、電子回路保護材をワイヤの周囲に付与する際に、ワイヤ流れの発生が効果的に抑制される傾向にある。上記粘度の下限は特に制限されないが、ワイヤの周囲に付与した状態を保持する観点からは、0.01Pa・s以上であることが好ましい。
【0017】
電子回路保護材は、25℃、せん断速度10s
−1で測定される粘度が30Pa・s以下であることが好ましく、20Pa・s以下であることがより好ましい。上記粘度の下限は特に制限されないが、ワイヤの周囲に付与した状態を保持する観点からは、0.1Pa・s以上であることが好ましい。
【0018】
本開示において、電子回路保護材の25℃での粘度はE型粘度計を用いて測定される値であり、75℃での粘度はレオメータ(例えば、TAインスツルメント社の商品名「AR2000」)を用いて測定される値である。
【0019】
電子回路保護材の75℃での揺変指数は、75℃、せん断速度5s
−1の条件で測定される粘度を粘度Aとし、75℃、せん断速度50s
−1の条件で測定される粘度を粘度Bとしたとき、粘度A/粘度Bの値として得られる。
【0020】
電子回路保護材が上述した粘度の条件を満たすようにするための方法は、特に制限されない。例えば、電子回路保護材の粘度を下げる手法としては、低粘度の樹脂成分を用いる方法、溶剤を添加する方法等が挙げられ、これらを単独又は組み合わせて用いることができる。
【0021】
[樹脂成分]
電子回路保護材に含まれる樹脂成分は、電子回路保護材が上記条件を満たしうるものであれば特に制限されない。既存の設備との適合性、電子回路保護材としての特性の安定性等の観点からは、熱硬化性の樹脂成分を用いることが好ましく、エポキシ樹脂を用いることがより好ましい。また、常温(25℃)で液状(以下、単に「液状の」ともいう)の樹脂成分を用いることが好ましく、液状のエポキシ樹脂を用いることがより好ましい。樹脂成分は、エポキシ樹脂と硬化剤の組み合わせであってもよい。
【0022】
(エポキシ樹脂)
電子回路保護材に使用できるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、水添ビスフェノールA等のジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を代表とするフェノール類とアルデヒド類のノボラック樹脂をエポキシ化したもの(ノボラック型エポキシ樹脂)、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、p−アミノフェノール、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のアミン化合物とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸により酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂などが挙げられる。エポキシ樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
上記のエポキシ樹脂の中でも、粘度、使用実績、材料価格等の観点から、ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。中でも、流動性の観点からは液状のビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、耐熱性、接着性及び流動性の観点から液状のグリシジルアミン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0024】
電子回路保護材のある実施態様では、芳香環を有するエポキシ樹脂と、脂肪族エポキシ樹脂とを樹脂成分として用いる。例えば、芳香環を有するエポキシ樹脂として液状のビスフェノールF型エポキシ樹脂及び液状のグリシジルアミン型エポキシ樹脂と、脂肪族エポキシ樹脂として線状脂肪族エポキシ樹脂とを樹脂成分として用いる。
【0025】
グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、p−(2,3−エポキシプロポキシ)−N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)アニリン、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、ジグリシジルメトキシアニリン、ジグリシジルジメチルアニリン、ジグリシジルトリフルオロメチルアニリン等が挙げられる。
線状脂肪族エポキシ樹脂としては、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,3-ビス(3−グリシドキシプロピル)テトラメメチルジシロキサン、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0026】
エポキシ樹脂として液状のビスフェノールF型エポキシ樹脂と、液状のグリシジルアミン型エポキシ樹脂と、線状脂肪族エポキシ樹脂とを併用する場合、これらの配合比は特に制限されないが、例えば、液状のグリシジルアミン型エポキシ樹脂が全体の40質量%〜70質量%であり、液状のビスフェノールF型エポキシ樹脂と線状脂肪族エポキシ樹脂の合計が全体の30質量%〜60質量%である配合比であってもよい。
【0027】
上記に例示したエポキシ樹脂のエポキシ樹脂全体に占める含有率(例示したエポキシ樹脂を2種以上用いる場合はその合計)は、その性能を充分に発揮する観点から20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。当該含有率の上限値は、特に制限されず、電子回路保護材の所望の性状及び特性が得られる範囲で決めることができる。
【0028】
エポキシ樹脂としては、液状のエポキシ樹脂を用いることが好ましいが、常温(25℃)で固形のエポキシ樹脂を併用してもよい。常温で固形のエポキシ樹脂を併用する場合、その割合はエポキシ樹脂全体の20質量%以下とすることが好ましい。
【0029】
ワイヤの腐食を抑制する観点からは、電子回路保護材の塩素イオン量は少ないほど好ましい。具体的には、例えば、100ppm以下であることが好ましい。
本開示において電子回路保護材の塩素イオン量は、イオンクロマトグラフィーにより、121℃、20hrの条件で処理し、2.5g/50ccで換算して得た値(ppm)である。
【0030】
(硬化剤)
硬化剤としては、アミン系硬化剤、フェノール硬化剤、酸無水物等のエポキシ樹脂の硬化剤として一般に使用されているものを特に制限なく用いることができる。ワイヤ流れ抑制の観点からは、液状の硬化剤を用いることが好ましい。耐温度サイクル性及び耐湿性等に優れ、半導体パッケージの信頼性を向上できるという観点からは、硬化剤は芳香族アミン化合物であることが好ましく、液状の芳香族アミン化合物であることがより好ましい。硬化剤は、1種を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
液状の芳香族アミン化合物としては、ジエチルトルエンジアミン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリエチル−2,6−ジアミノベンゼン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5,3’,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ジメチルチオトルエンジアミンなどが挙げられる。
【0032】
液状の芳香族アミン化合物は、市販品としても入手可能である。例えば、jERキュアW(三菱化学株式会社、商品名)、カヤハードA−A、カヤハードA−B、カヤハードA−S(日本化薬株式会社、商品名)、トートアミンHM−205(新日鉄住金化学株式会社、商品名)、アデカハードナーEH−101(株式会社アデカ、商品名)、エポミックQ−640、エポミックQ−643(三井化学株式会社、商品名)、DETDA80(Lonza社、商品名)等が入手可能である。
【0033】
液状の芳香族アミン化合物の中でも、電子回路保護材の保存安定性の観点から、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ジエチルトルエンジアミンおよびジメチルチオトルエンジアミンが好ましく、硬化剤はこれらのいずれか又はこれらの混合物を主成分とすることが好ましい。ジエチルトルエンジアミンとしては、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン及び3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミンが挙げられ、これらを単独で用いても組み合わせて用いてもよいが、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミンの割合をジエチルトルエンジアミン全体の60質量%以上とすることが好ましい。
【0034】
電子回路保護材における硬化剤の量は特に制限されず、エポキシ樹脂との当量比等を考慮して選択できる。エポキシ樹脂又は硬化剤の未反応分を少なく抑える観点からは、硬化剤の量は、エポキシ樹脂のエポキシ基の当量数に対する硬化剤の官能基の当量数(例えば、アミン系硬化剤の場合は活性水素の当量数)の比が0.7〜1.6の範囲となる量であることが好ましく、0.8〜1.4の範囲となる量であることがより好ましく、0.9〜1.2の範囲となる量であることがさらに好ましい。
【0035】
[無機充填材]
電子回路保護材に含まれる無機充填材の種類は、特に制限されない。例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレー、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素、窒化ホウ素、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、窒化アルミ、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、ガラス繊維などが挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填材を用いてもよく、このような無機充填材としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等が挙げられる。無機充填材は、1種を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
無機充填材の中でも、入手のし易さ、化学的安定性、材料コストの観点からは、シリカが好ましい。シリカとしては球状シリカ、結晶シリカ等が挙げられ、電子回路保護材の微細間隙への流動性及び浸透性の観点からは、球状シリカが好ましい。球状シリカとしては、爆燃法によって得られるシリカ、溶融シリカ等が挙げられる。
【0037】
無機充填材は、表面が表面処理されていてもよい。例えば、後述するカップリング剤を用いて表面処理されていてもよい。
【0038】
無機充填材の体積平均粒子径は、0.1μm〜30μmであることが好ましく、0.3μm〜5μmであることがより好ましく、0.5μm〜3μmであることがさらに好ましい。特に球形シリカの場合、体積平均粒子径が上記範囲内であることが好ましい。体積平均粒子径が0.1μm以上であると、電子回路保護材における分散性に優れ、流動性に優れる傾向にある。体積平均粒子径が30μm以下であると、電子回路保護材中での無機充填材の沈降が低減され、電子回路保護材の微細間隙への浸透性及び流動性が向上してボイド及び未充填の発生が抑制される傾向にある。
【0039】
本開示において無機充填材の体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて得られる体積基準の粒度分布において小径側からの累積が50%となるときの粒子径(D50%)を意味する。
【0040】
無機充填材の最大粒子径は、75μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。
【0041】
本開示において無機充填材の最大粒子径は、体積基準の粒度分布において小径側からの累積が99%となるときの粒子径(D99%)を意味する。
【0042】
無機充填材の含有率は、電子回路保護材全体の50質量%以上であることが好ましい。無機充填材の含有率が電子回路保護材全体の50質量%以上であると、ワイヤ周辺の放熱性と強度が充分に確保される傾向にある。無機充填材の含有率は、電子回路保護材全体の60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
電子回路保護材の粘度上昇を抑制する観点からは、無機充填材の含有率は、電子回路保護材全体の80質量%以下であることが好ましい。
【0043】
[溶剤]
電子回路保護材は、溶剤を含有してもよい。溶剤を含むことで、電子回路保護材の粘度を所望の範囲に調節することができる。溶剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0044】
溶剤の種類は特に制限されず、半導体装置の実装技術に用いられる樹脂組成物に一般に使用されるものから選択できる。具体的には、ブチルカルビトールアセテート、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル系溶剤、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン系溶剤、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤などが挙げられる。
電子回路用電子回路保護材を硬化する際の急激な揮発による気泡形成を避ける観点から、沸点の高い(例えば、常圧での沸点が170℃以上である)溶剤を用いることが好ましい。
【0045】
電子回路保護材が溶剤を含む場合、その量は特に制限されないが、電子回路保護材全体の1質量%〜70質量%であることが好ましい。
【0046】
[硬化促進剤]
電子回路保護材は、必要に応じてエポキシ樹脂と硬化剤の反応を促進する硬化促進剤を含有してもよい。
硬化促進剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザ−ビシクロ(4,3,0)ノネン、5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン化合物、及び2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジルー2−フェニルイミダゾール、1−ベンジルー2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2’−メチルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジン、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリアルキルホスフィン(トリブチルホスフィン等)、ジアルキルアリールホスフィン(ジメチルフェニルホスフィン等)、アルキルジアリールホスフィン(メチルジフェニルホスフィン等)、トリフェニルホスフィン、アルキル基置換トリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン化合物、及びこれらの有機リン化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、並びにこれらの誘導体が挙げられる。さらには、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、N−メチルモルホリンテトラフェニルボレート等のフェニルボロン塩が挙げられる。また、潜在性を有する硬化促進剤として、常温固体のアミノ基を有する化合物をコアとして、常温固体のエポキシ化合物のシェルを被覆してなるコア−シェル粒子が挙げられる。硬化促進剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
電子回路保護材が硬化促進剤を含む場合、その量は特に制限されないが、エポキシ樹脂100質量部に対して0.1質量部〜40質量部であることが好ましく、1質量部〜20質量部であることがより好ましい。
【0048】
[可撓剤]
電子回路保護材は、耐熱衝撃性向上、半導体素子に対する応力低減等の観点から、必要に応じて可撓剤を含有してもよい。
可撓剤は、特に制限されず、樹脂組成物に一般的に用いられるものから選択できる。中でもゴム粒子が好ましい。ゴム粒子としては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、ウレタンゴム(UR)、アクリルゴム(AR)等の粒子が挙げられる。これらの中でも耐熱性及び耐湿性の観点からアクリルゴムの粒子が好ましく、コアシェル構造を有するアクリル系重合体の粒子(すなわちコアシェル型アクリルゴム粒子)がより好ましい。
【0049】
また、シリコーンゴム粒子も好適に用いることができる。シリコーンゴム粒子としては、直鎖状のポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等のポリオルガノシロキサンを架橋したシリコーンゴム粒子、シリコーンゴム粒子の表面をシリコーンレジンで被覆したもの、乳化重合等で得られる固形シリコーン粒子のコアとアクリル樹脂等の有機重合体のシェルからなるコア−シェル重合体粒子などが挙げられる。これらのシリコーンゴム粒子の形状は無定形であっても球形であってもよいが、電子回路保護材の粘度を低く抑えるためには球形のものが好ましい。これらのシリコーンゴム粒子は、例えば、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、信越化学工業株式会社等から市販品が入手可能である。
【0050】
(カップリング剤)
電子回路保護材は、樹脂成分と無機充填材、又は樹脂成分とワイヤとの界面における接着性を高める目的でカップリング剤を用いてもよい。カップリング剤は無機充填材の表面処理に用いても、無機充填材とは別に配合してもよい。
【0051】
カップリング剤は特に制限されず、公知のものを用いることができる。例えば、アミノ基(1級、2級又は3級)を有するシラン化合物、エポキシシラン、メルカプトシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン化合物、チタン化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等が挙げられる。カップリング剤は、1種を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
シランカップリング剤として具体的には、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジメチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N,N−ジエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N,N−ジブチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N−メチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N−エチル)アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0053】
チタンカップリング剤として具体的には、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等が挙げられる。
【0054】
電子回路保護材がカップリング剤を含む場合、その量は特に制限されないが、無機充填材100質量部に対して1質量部〜30質量部であることが好ましい。
【0055】
[イオントラップ剤]
電子回路保護材は、半導体パッケージの耐マイグレーション性、耐湿性、高温放置特性等を向上させる観点から、イオントラップ剤を含有してもよい。イオントラップ剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
イオントラップ剤としては、下記組成式(V)及び(VI)で表される陰イオン交換体が挙げられる。
Mg
1−xAl
x(OH)
2(CO
3)
x/2・mH
2O ・・・(V)
(0<X≦0.5、mは正の数)
BiO
x(OH)
y(NO
3)
2 ・・・(VI)
(0.9≦x≦1.1、0.6≦y≦0.8、0.2≦z≦0.4)
【0057】
上記式(V)の化合物は、市販品(協和化学工業株式会社、商品名「DHT−4A」)として入手可能である。また、上記式(VI)の化合物は、市販品(東亞合成株式会社、商品名「IXE500」)として入手可能である。上記化合物以外の陰イオン交換体もイオントラップ剤として用いることができる。例えば、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、アンチモン等から選ばれる元素の含水酸化物等が挙げられる。
【0058】
電子回路保護材がイオントラップ剤を含む場合、その量は特に制限されない。例えば、電子回路保護材全体の0.1質量%〜3.0質量%であることが好ましく、0.3質量%〜1.5質量%であることがより好ましい。
【0059】
イオントラップ剤が粒子状である場合、その体積平均粒子径(D50%)は0.1μm〜3.0μmであることが好ましい。また、最大粒子径は10μm以下であることが好ましい。
【0060】
[その他成分]
電子回路保護材は、必要に応じて上述した成分以外の成分を含有してもよい。例えば、染料、カーボンブラック等の着色剤、希釈剤、レベリング剤、消泡剤などを必要に応じて配合することができる。
【0061】
[電子回路保護材の製造方法]
電子回路保護材の製造方法は、電子回路保護材の各成分を充分に分散混合できるのであれば、特に制限されない。例えば、一般的な手法として、所定の配合量の成分をらいかい機、ミキシングロール、プラネタリミキサ等を用いて混合及び混練し、必要に応じて脱泡することによって製造することができる。
【0062】
[電子回路保護材の使用方法]
電子回路保護材は、あらゆるワイヤボンディング方式の実装技術に用いることができる。具体的には、例えば、半導体素子と基板とを電気的に接続するワイヤの周囲に電子回路保護材を付与し、硬化させて、ワイヤを封止するとともにワイヤ流れが生じないようにワイヤの位置を固定する。電子回路保護材は、少なくともワイヤの周囲に付与されるものであればよく、基板の全面に付与しても一部にのみ付与してもよい。電子回路保護材をワイヤの周囲に付与する方法は特に制限されず、ディスペンス方式、注型方式、印刷方式等を採用できる。
【0063】
<電子回路保護材用封止材>
本実施形態の電子回路保護材用封止材は、上述した電子回路保護材の硬化物の周囲を封止するためのものである。
【0064】
電子回路保護材用封止材は、電子回路の周囲を直接封止するのではなく、電子回路の周囲に形成される電子回路保護材の硬化物の周囲を封止する。このため、電子回路保護材用封止材の流動によるワイヤ流れ等の問題の発生を考慮する必要がない。従って、電子回路保護材用封止材の種類は特に制限されず、半導体装置の実装技術に一般的に用いられるものを使用できる。
【0065】
電子回路保護材用封止材の好ましい組成としては、エポキシ樹脂と、硬化剤としてのフェノール樹脂との組み合わせが挙げられる。エポキシ樹脂としてはビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型(ビスフェノールF型、ビスフェノールA型等)エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂などが挙げられる。フェノール樹脂としてはトリフェニルメタン型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、ザイロック型フェノール樹脂、共重合フェノールアラルキル型フェノール樹脂、ナフトールアラルキル型フェノール樹脂、ビフェニレンアラルキル型フェノール樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
<封止方法>
本実施形態の封止方法は、上述した電子回路保護材と、上述した電子回路保護材用封止材を組み合わせて電子回路の周囲を封止するものである。
【0067】
上記封止方法に用いられる手法は特に制限されず、半導体装置の実装技術に一般的に用いられるものから選択できる。
【0068】
<半導体装置の製造方法>
本実施形態の半導体装置の製造方法は、電子回路周囲に上述した電子回路保護材を付与して電子回路保護材の硬化物を形成する工程を有する。電子回路保護材を電子回路の周囲に付与する方法は特に制限されず、ディスペンス方式、注型方式、印刷方式等を採用できる。
【0069】
上記方法はさらに、電子回路保護材を用いて形成した硬化物の周囲を上述した電子回路用封止材を用いて封止する工程を有していてもよい。電子回路保護材の硬化物の周囲を封止材を用いて封止する方法は特に制限されず、ディスペンス方式、注型方式、印刷方式等を採用できる。
【0070】
上記方法において、電子回路保護材及び電子回路用封止材の詳細は上述したとおりである。電子回路は、例えば、半導体チップと基板と接続するワイヤであってもよい。
【実施例】
【0071】
以下、上記実施形態を実施例により具体的に説明するが、上記実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、表中の各材料に相当する項目の単位は「質量部」であり、空欄は該当する材料を用いないことを表す。
【0072】
(1)電子回路保護材の調製
表1に示す材料を表1に示す組成割合で配合し、三本ロール及び真空らい潰機にて混練分散して、実施例の電子回路保護材を調製した。調製した電子回路保護材の25℃、せん断速度10
−1での粘度と、75℃、せん断速度5s
−1での粘度をそれぞれ測定した。また、75℃、せん断速度5s
−1での粘度を測定し、75℃での揺変指数を求めた。結果を表1に示す。
【0073】
(2)流動性の評価
電子回路保護材の流動性は、PBGA(Plastic Ball Grid Array)のパッケージを用いて形成したワイヤボンディング構造を電子回路保護材を用いて封止したときのワイヤ流れの状態により評価した。
具体的には、
図1に示すように、電子回路保護材を用いてワイヤボンディング構造を封止した後のワイヤの最大変位量aをX線で確認し、最大変位量aをループ長さbで割った値に100を乗じることで、W/S(%)を求めた。W/S(%)の値が3%以下であるときに、流動性が「良好」であると判断した。結果を表1に示す。
【0074】
(3)塩素イオン量の評価
電子回路保護材の塩素イオン量(ppm)は、イオンクロマトグラフィーにより上述した条件で測定した。結果を表2に示す。
【0075】
表1及び表2に示す材料の詳細は、下記のとおりである。
・エポキシ樹脂1…p−(2,3−エポキシプロポキシ)−N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)アニリン(株式会社ADEKA、商品名「EP−3950S」、全塩素量が1500ppm以下)
・エポキシ樹脂2…p−(2,3−エポキシプロポキシ)−N,N−ビス(2,3−エポキシプロピル)アニリン(三菱化学株式会社、商品名「jER630」、全塩素量が5500ppm以下)
・エポキシ樹脂3…ビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社、商品名「YDF−8170C」)
・エポキシ樹脂4…1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(阪本薬品工業株式会社、商品名「SR−16HL」)
・硬化剤…ジエチルトルエンジアミン(三菱化学株式会社、商品名「jERキュアW」)
・イオントラップ剤…ビスマス系イオントラップ剤(東亞合成株式会社、商品名「IXE−500」)
・溶剤…ブチルカルビトールアセテート
・無機充填材1…シランカップリング剤で表面処理された球状溶融シリカ(アドマテックス株式会社、商品名「SE5050−SEJ」、体積平均粒子径1.5μm
・無機充填材2…シランカップリング剤で表面処理された球状溶融シリカ(アドマテックス株式会社、商品名「SE2050−SEJ」、体積平均粒子径0.5μm)
【0076】
【表1】
【0077】
表1の結果に示されるように、実施例1〜3で作製した電子回路用保護材は、75℃での揺変指数が0.1〜2.5の範囲内であった。また、いずれの電子回路用保護材も優れた流動性を示し、良好な封止構造を形成可能であると評価できる。
【0078】
【表2】
【0079】
表2の結果に示されるように、エポキシ樹脂2とイオントラップ剤とを併用した実施例4の塩素イオン量は、高純度のエポキシ樹脂1を用いた実施例5に比べると塩素イオン量が高いものの、イオントラップ剤を併用しない参考例1の110ppmに比べて43ppmであり、電子回路用保護材としては充分に高い水準を達成していた。
塩素イオン量を低減するために無機充填材の量を増やした参考例2は、3本ロールでの混練ができなかったため塩素イオン量の評価を行わなかった。