特許第6870789号(P6870789)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6870789
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物及び表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/08 20060101AFI20210426BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20210426BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20210426BHJP
   C08G 18/64 20060101ALI20210426BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   C09J175/08
   C09J11/06
   C09J7/38
   C08G18/64 015
   C08G18/48
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-565915(P2020-565915)
(86)(22)【出願日】2020年6月4日
(86)【国際出願番号】JP2020022043
【審査請求日】2020年11月24日
(31)【優先権主張番号】特願2019-106116(P2019-106116)
(32)【優先日】2019年6月6日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124143
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 嘉久
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩司
(72)【発明者】
【氏名】髭白 朋和
(72)【発明者】
【氏名】小松崎 優紀
【審査官】 田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−176068(JP,A)
【文献】 特開2017−008314(JP,A)
【文献】 特開2017−110127(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/092970(WO,A1)
【文献】 疋田淳 ほか,ポリウレタン樹脂塗料,色材,1976年,Vol.49,p.506-513,ISSN 1883-2199
【文献】 Product Line 商品リスト 樹脂・ゴム用商品版,三洋化成工業株式会社 [オンライン],2018年,[検索日 2020.08.04], インターネット:<URL: https://www.sanyo-chemical.co.jp/wp/wp-content/uploads/20
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
C08G 18/48,18/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン樹脂(A)とポリイソシアネート化合物(B)とを含み、
前記ウレタン樹脂(A)が、ポリオール(a)と3官能ポリイソシアネート化合物(b)との反応物であって、1分子中に3以上のヒドロキシ基を有するものであり、前記ポリオール(a)が、ポリエーテルポリオールを90質量%以上含むものであり、前記ポリオール(a)の平均水酸基当量が、700g/eq.以上3,000g/eq.以下であり、前記ウレタン樹脂(A)の水酸基価が、15mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である粘着剤組成物。
【請求項2】
前記ウレタン樹脂の数平均分子量が、10,000以上100,000以下である請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
記ポリエーテルポリオール中、オキシエチレン単位の含有率が、50モル%未満である請求項1又は2記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
さらに、可塑剤を含む請求項1〜3のいずれか1項記載の粘着剤組成物。

【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の粘着剤組成物から形成される粘着シート。
【請求項6】
請求項5記載の粘着シートを含む表面保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物及び表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種基材の表面の汚れや傷付きを防止することを目的として、表面保護フィルムが用いられている。前記表面保護フィルムは、例えば、表示装置の製造工程において、光学部材等に貼り付けられ、表面の保護が不要になった段階で光学部材等から剥離される。
【0003】
こうした表面保護フィルムに用いられる粘着剤としては、ウレタンプレポリマー、多官能ポリオール、イソシアネート硬化剤を含み、ウレタンプレポリマーとして、前記ポリイソシアネートのイソシアネート基と前記ポリオールの水酸基とのモル比を0.5〜0.9の範囲に調整し、前記ポリエーテルポリオールとして、3以上の水酸基を有するポリエーテルポリオールを用いた粘着剤が知られている(特許文献1参照)。また、高分子量成分(分子量8,000以上)と低分子量成分(分子量8,000未満)との比率を80/20〜97/3であり、全体の重量平均分子量が3万〜50万であるポリウレタン系樹脂と、ポリイソシアネートを含む粘着剤が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−176068号公報
【特許文献2】特開2017−008314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から知られる粘着剤では、ウェッティング性(被着体と接触させた際、被着体とすばやく密着して広がる性質)、耐熱性や、表面保護フィルムの外観が十分に満足できるものではない場合があった。本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、ウェッティング性、耐熱性が良好であり、好ましくは外観が良好な表面保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の粘着剤組成物は、ウレタン樹脂(A)とポリイソシアネート化合物(B)とを含み、前記ウレタン樹脂(A)が、ポリオール(a)とポリイソシアネート化合物(b)との反応物であって、1分子中に3以上のヒドロキシ基を有するものであり、前記ポリオール(a)が、ポリエーテルポリオールを90質量%以上含むものであり、前記ポリオール(a)の平均水酸基当量が、700g/eq.以上3,000g/eq.以下であり、前記ウレタン樹脂(A)の水酸基価が、15mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の粘着剤組成物を用いることで、ウェッティング性、耐熱性が良好であり、好ましくは外観が良好な表面保護フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の粘着剤組成物は、ウレタン樹脂(A)と、ポリイソシアネート化合物(B)とを含む。
【0009】
前記ウレタン樹脂(A)は、ポリオール(a)とポリイソシアネート(b)との反応物であり、1分子中に3以上のヒドロキシ基を有する。前記ポリオール(a)及び前記ポリイソシアネート(b)の少なくとも一方が、3官能以上であることが好ましい。本発明において、2官能のポリオールは、1分子中にヒドロキシ基を2個有する化合物を表し、3官能以上のポリオールは、1分子中にヒドロキシ基を3個以上有する化合物を表す。同様に、2官能のポリイソシアネートは、1分子中にイソシアネート基を2個有する化合物を表し、3官能以上のポリイソシアネートは、1分子中にイソシアネート基を3個以上有する化合物を表す。
【0010】
前記ポリオール(a)は、1分子中にヒドロキシル基を2個以上有する化合物又は該化合物の混合物であり、ポリエーテルポリオールを90質量%以上含む。前記ポリエーテルポリオールとしては、1種又は2種以上を用いることができ、2官能ポリエーテルポリオール、3官能以上のポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0011】
前記ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは700以上、さらに好ましくは900以上であり、好ましくは10,000以下、より好ましくは5,000以下、さらに好ましくは3,000以下、特に好ましくは2,000以下である。また、前記ポリエーテルポリオールが2種以上のポリオールの混合物である場合、該ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、各ポリエーテルポリオールの含有量及び数平均分子量に基づき、荷重平均値として計算することができる。
【0012】
本発明において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ポリスチレン換算によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフィにより測定した値を表す。
【0013】
前記ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール;前記ポリアルキレングリコールの誘導体(例えば、アルキル置換テトラヒドロフランの誘導体、ネオペンチルグリコールの誘導体)などが挙げられる。なかでも、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びそれらの誘導体が好ましい。
【0014】
前記ポリエーテルポリオールとしては、末端が1級の水酸基を有するポリエーテルポリオールを使用することが好ましい。末端が1級の水酸基を有するポリエーテルポリオールの含有率は、前記ポリエーテルポリオールの全量中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、上限は100質量%である。前記末端が1級の水酸基を有するポリエーテルポリオールの含有率が前記範囲にあることで、耐熱性がいっそう良好である。
【0015】
また、前記ポリエーテルポリオールとしては、末端が2級の水酸基を有するポリエーテルポリオールの含有率が低減されていることが好ましい。末端が2級の水酸基を有するポリエーテルポリオールの含有率は、前記ポリエーテルポリオールの全量中、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下であり、下限は0質量%である。前記末端が2級の水酸基を有するポリエーテルポリオールの含有率が前記範囲にあることで、耐熱性がいっそう良好である。
【0016】
前記ポリエーテルエーテルポリオール中、オキシエチレン単位の含有率は、好ましくは50モル%未満、より好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは20モル%以下であり、下限は0モル%である。
【0017】
前記ポリエーテルポリオール中、オキシプロピレン単位又はオキシテトラメチレン単位の含有率は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上であり、上限は100モル%である。
【0018】
前記ポリエーテルポリオールは、活性水素原子を2個又は3個以上有する化合物(例えば、分子量50以上500未満)を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合すること、或いは、前記活性水素原子を2個又は3個以上有する化合物(例えば、分子量50以上500未満)を必要に応じて開始剤として用い、環状エーテルを開環重合させることによって製造することができる。
【0019】
前記活性水素原子を2個有する化合物としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール;ビスフェノールA等の芳香族ジオールなどが挙げられる。前記活性水素原子を3個以上有する化合物としては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の脂肪族トリオールなどが挙げられる。
【0020】
前記アルキレンオキサイドとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、エピクロロヒドリン等が挙げられる。前記環状エーテルとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、テトラヒドロフラン、アルキル置換テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0021】
前記ポリエーテルポリオールの含有率は、前記ポリオール(a)中、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0022】
前記ポリオール(a)は、3官能ポリオールを含むことも好ましい。前記3官能ポリオールは、1分子中にヒドロキシル基を3個有する化合物又は該化合物の混合物である。前記3官能ポリオールの数平均分子量は、好ましくは10,000以下、より好ましくは5,000以下、さらに好ましくは3,000以下、特に好ましくは2,000以下であり、好ましくは100以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは700以上、いっそう好ましくは900以上である。前記3官能ポリオールは、分子量が、500未満であってもよく、300以下、200以下であってもよい。前記3官能ポリオールの分子量が500未満の場合、化学構造式に基づいて分子量を計算することができる。また、前記3官能ポリオールが2種以上のポリオールの混合物である場合、該3官能ポリオールの数平均分子量又は分子量は、各3官能ポリオールの含有量及び数平均分子量(分子量)に基づき、荷重平均値として計算することができる。
【0023】
前記3官能ポリオールの数平均分子量が500以上である場合、前記3官能ポリオールは、3官能ポリエーテルポリオールを含むことが好ましい。この場合、前記3官能ポリエーテルポリオールの含有率は、前記ポリオール(a)中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0024】
前記3官能ポリオールの数平均分子量が500以上である場合、前記3官能ポリオール中、オキシエチレン単位の含有率は、好ましくは50モル%未満、より好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは20モル%以下であり、下限は0モル%である。
【0025】
前記3官能ポリオールの数平均分子量が500以上である場合、前記3官能ポリオール中、オキシテトラメチレン単位又はオキシプロピレン単位の含有率は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上であり、上限は100モル%である。
【0026】
また、前記3官能ポリオールの分子量が500未満(低分子量)である場合、前記3官能ポリオールは、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の脂肪族トリオールであることが好ましい。この場合、前記低分子量の3官能ポリオールの含有率は、前記ポリオール(a)中、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上である。
【0027】
前記3官能ポリオールは、分子量500未満の化合物をそのまま用いてもよく、活性水素原子を3個有する化合物(例えば、分子量50以上500未満)を開始剤として、前記アルキレンオキサイドを付加重合すること、或いは、前記活性水素原子を3個有する化合物(例えば、分子量50以上500未満)を必要に応じて開始剤として用い、前記環状エーテルを開環重合させることによって製造することができる。
【0028】
前記活性水素原子を3個有する化合物としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の脂肪族トリオールなどが挙げられる。
【0029】
前記3官能ポリオールを含む場合、その含有率は、前記ポリオール(a)中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。特に、前記3官能ポリオールの数平均分子量が500未満の場合、該3官能ポリオールの含有率は、前記ポリオール(a)中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。また、前記3官能ポリオールの数平均分子量が500以上の場合、該3官能ポリオールの含有率は、前記ポリオール(a)中、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下である。
【0030】
前記ポリオール(a)は、前記ポリエーテルポリオール、前記3官能ポリオール以外に、その他のポリオールを含んでいてもよい。前記その他のポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、水酸基含有液状ジエン系重合体、4官能以上のポリエーテルポリオール等のポリマーポリール;2官能又は4官能以上(例えば、4〜8官能)の低分子ポリオール(分子量500未満)、カルボキシル基を有するポリオール等が挙げられる。
【0031】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子ポリオールとポリカルボン酸とのエステル化反応物;ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合物;前記エステル化反応物や開環重合物の共重合ポリエステルなどを使用することができる。
【0032】
前記低分子ポリオールとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等の脂肪族ポリオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ポリオール;ハイドロキノン、レゾルシン;ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ビフェノール等の芳香族ポリオールなどが挙げられる。
【0033】
前記ポリカルボン酸としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、及びそれらの無水物またはエステル化物等が挙げられる。
【0034】
前記ポリエステルポリオールの含有率は、前記ポリオール(a)中、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、いっそう好ましくは1質量%以下である。前記ポリエステルポリオールの含有率が前記範囲にあることで、ウェッティング性がいっそう良好である。
【0035】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば炭酸エステル及び/又はホスゲンと、前記低分子ポリオールとの反応が挙げられる。前記炭酸エステルとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、アルキルカーボネート(例えば、メチルカーボネート、エチルカーボネート等)、ジアルキルカーボネート(例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等)等の脂肪族カーボネート;シクロカーボネート等の脂環式構造を含むカーボネート(以下、「脂環式構造を含む」ことを単に「脂環式」という場合がある。);ジフェニルカーボネート等の芳香族カーボネートが挙げられる。中でも、脂肪族カーボネート、脂環式カーボネートが好ましく、脂肪族カーボネートがより好ましく、ジアルキルカーボネートがより好ましい。
【0036】
前記水酸基含有液状ジエン系重合体は、水酸基を分子鎖末端及び/又は分子鎖内部に含む液状ジエン系重合体;及び/又は前記液状ジエン系重合体の水素化物であり、例えば、水酸基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリイソプレン、水酸基末端水素化ポリブタジエン、水酸基末端水素化ポリイソプレンなどが挙げられる。
【0037】
水酸基は、分子鎖末端、分子鎖内部のいずれにあっても良いが、特に分子鎖末端にあるものが望ましい。
【0038】
前記ポリカーボネートポリオールの含有率は、前記ポリオール(a)中、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、いっそう好ましくは1質量%以下である。前記ポリカーボネートポリオールの含有率が前記範囲にあることで、ウェッティング性がいっそう良好である。
【0039】
前記ポリマーポリオールの数平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは700以上、さらに好ましくは900以上であり、好ましくは10,000以下、より好ましくは5,000以下、さらに好ましくは3,000以下、特に好ましくは2,000以下である。また、前記ポリマーポリオールが2種以上のポリマーポリオールの混合物である場合、該ポリマーポリオールの数平均分子量は、各ポリマーポリオールの数平均分子量及び含有量に基づき、荷重平均値として計算することができる。
【0040】
前記2官能又は4官能以上(例えば、4〜8官能)の低分子ポリオールとしては、前記低分子ポリオールのうち、2官能又は4官能以上のものが挙げられる。前記2官能又は4官能以上の低分子ポリオールの含有率は、ポリオール(a1)中、例えば、30質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であり、下限は0質量%である。
【0041】
前記カルボキシル基を有するポリオールとしては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸等のヒドロキシ酸;及び前記カルボキシ基を有するポリオールと前記ポリカルボン酸との反応物などが挙げられる。
【0042】
前記カルボキシル基を有するポリオールの含有率は、ポリオール(a1)中、例えば、2質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下であり、下限は0質量%である。カルボキシル基を有するポリオールの含有率を前記範囲とすることで、接着力の上昇を抑制することが容易である。
【0043】
前記ポリオール(a)の水酸基当量は、700g/eq.以上、好ましくは750g/eq.以上、より好ましくは800g/eq.以上であり、3,000以下、好ましくは2,800g/eq.以下、より好ましくは2,500g/eq.以下、さらに好ましくは2,000g/eq.以下である。前記ポリオール(a)の水酸基当量が前記範囲にあることで、ウェッティング性(濡れ性)が良好である。前記ポリオール(a)として、1種又は2種以上のポリオールが含まれる場合、前記ポリオール(a)の水酸基当量は、各ポリオールの水酸基当量及び質量分率に基づき、加重平均値として算出することができる。
【0044】
前記ポリイソシアネート(b)は、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物であり、1種又は2種以上を用いることができる。
【0045】
前記ポリイソシアネート(b)としては、1分子中にイソシアネート基を2個有するジイソシアネート、1分子中にイソシアネート基を3個有するポリイソシアネート(以下、「3官能ポリイソシアネート」という場合がある。)が挙げられる。前記ジイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリエンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソソシアネート;イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4−及び/又は2,6−メチルシクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキシレン−1,2−ジカルボキシレート及び2,5−及び/又は2,6−ノルボルナンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート等が挙げられる。なかでも、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートが好ましい。
【0046】
前記3官能ポリイソシアネートとしては、例えば、前記芳香族ジイソシアネート、前記脂肪族ジイソソシアネート、前記脂環式ジイソシアネート等のジイソシアネートのビウレット体、イソシアヌレート体、アダクト体等が挙げられる。
【0047】
前記ポリイソシアネート(b)に含まれるイソシアネート基と、前記ポリオール(a)に含まれるヒドロキシル基とのモル比(NCO/OH)は、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.5以上であり、好ましくは0.98以下、より好ましくは0.95以下、さらに好ましくは0.9以下である。
【0048】
ポリイソシアネート(b)の平均官能基数は、好ましくは2.05〜4、より好ましくは2.1〜3である。前記ポリイソシアネート(b)の平均官能基数は、各ポリイソシアネートの官能基数及び含有率に基づいて算出することができる。
【0049】
前記ウレタン樹脂(A)は、前記ポリオール(a)と前記ポリイソシアネート(b)とを反応させ、得られた反応物そのままであってもよく、前記ポリオール(a)と前記ポリイソシアネート(b)とを、ポリイソシアネート(b)過剰の条件で反応させ、得られた反応物に、さらに鎖伸長剤(a4)を反応させたものであってもよい。ポリイソシアネート(b)過剰の条件で反応させる場合、前記ポリイソシアネート(b)に含まれるイソシアネート基と、前記ポリオール(b)に含まれるヒドロキシル基とのモル比(イソシアネート基/ヒドロキシル基)を、例えば1.0以上、好ましくは1.05以上、より好ましくは1.1以上、好ましくは3.0未満、より好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.0以下とすればよい。
【0050】
前記鎖伸長剤(a4)としては、1種又は2種以上を用いることができ、活性水素原子を2個以上有する化合物やポリアミン等が挙げられる。前記活性水素原子を2個以上有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3,3’−ジメチロールへプタン、ネオペンチルグリコール、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)へプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の脂肪族鎖伸長剤;1,2−シクロブタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−ジメタノール、ビシクロ[4.3.0]−ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、ビシクロ[4.3.0]ノナンジメタノール、スピロ[3.4]オクタンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、1,1’−ビシクロヘキシリデンジオール、シクロヘキサントリオール、水素添加ビスフェノ−ルA、1,3−アダマンタンジオール等の脂環式鎖伸長剤などが挙げられ、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族アルキレングリコール;シクロヘキサンジメタノール等の脂環式グリコールなどが好ましい。また、前記ポリアミンとしては、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、N−ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N−エチルアミノエチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヒドラジン、N,N’−ジメチルヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビスヒドラジン、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、β−セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3−セミカルバジド−プロピル−カルバジン酸エステル、セミカルバジド−3−セミカルバジドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等のポリアミン伸長剤などが挙げられる。
【0051】
前記鎖伸長剤(a1−3)の含有量は、前記ポリオール(a)100質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下であり、下限は0質量部である。である。
【0052】
前記ウレタン樹脂(A)は、前記ポリオール(a)と前記ポリイソシアネート(b)と、必要に応じて用いる鎖伸長剤(a4)との反応物に、さらに末端停止剤を反応させたものであってもよい。末端停止剤を用いることで、イソシアネート基を失活することができる。
【0053】
前記末端停止剤としては、アルコールが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の1官能アルコール;1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の2官能アルコール;多官能ポリオール;アルカノールアミン(例えば、エタノールアミン等)、ジアルカノールアミン(例えば、ジエタノールアミン等)などのアルカノールアミン化合物などが挙げられる。ポリアルカノールアミン化合物を用いるとウレタン樹脂(A)末端に更に水酸基を導入することができるので必要に応じて使用してよい。
【0054】
前記末端停止剤を用いる場合、末端停止剤に含まれる活性水素原子を有する基と、前記ポリイソシアネート(b)に含まれるイソシアネート基とのモル比は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上であり、好ましくは10.0以下、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは3.0以下である。
【0055】
前記ウレタン樹脂の水酸基価は、15mgKOH/g以上、好ましくは17mgKOH/g以上、より好ましくは20mgKOH/g以上であり、
【0056】
前記ウレタン樹脂(A)の数平均分子量は、好ましくは10,000以上、より好ましくは20,000以上であり、好ましくは200,000以下、より好ましくは150,000以下、さらに好ましくは100,000以下である。
【0057】
前記ウレタン樹脂(A)の分子量分散度は、好ましくは1.8以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは2.3以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは10以下である。
【0058】
前記ウレタン樹脂(A)は、ポリオール(a)及びポリイソシアネート(b)を反応させ、必要に応じてさらに鎖伸長剤(a4)及び/又は末端停止剤を反応させることで、製造することができる。前記反応は、有機溶剤の存在下で行ってもよく、前記反応の際は、ウレタン化触媒を共存させてもよい。
【0059】
前記有機溶剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、トルエン等の芳香族炭化水素溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、3−ペンタノン等のケトン溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチルカルビトール等のエーテル溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル等のニトリル溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶剤;メチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド溶剤などが挙げられる。
【0060】
前記ウレタン化触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等の含窒素化合物、酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸錫等の金属塩、ジブチル錫ラウレート、ジオクチル錫ジネオデカネート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等の有機金属化合物などを用いることができる。
【0061】
前記ウレタン樹脂(A)の含有率は、前記粘着剤組成物の不揮発成分中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。
【0062】
前記粘着剤組成物の不揮発成分は、前記粘着剤組成物の溶剤を除いた成分を表す。
【0063】
前記硬化剤(B)は、ウレタン樹脂(A)が有するヒドロキシル基と反応して3次元架橋を形成するものであればよく、例えば、ポリイソシアネート硬化剤を用いることができる。
【0064】
前記ポリイソシアネート硬化剤としては、トリレンジイソシアネート、クロロフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、トリレンジイソシアネートのヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体、キシリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体等のトリイソシアネートを用いることができる。これらの硬化剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0065】
前記ポリイソシアネート硬化剤の含有率は、前記硬化剤(B)中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、上限は100質量%である。
【0066】
前記ウレタン樹脂(A)中の水酸基と、硬化剤(B)に含まれる水酸基と反応し得る基とのモル比(水酸基/水酸基と反応し得る官能基)は、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下である。
【0067】
前記粘着剤組成物は、さらに酸化防止剤を含んでいてもよい。前記酸化防止剤としては、1種又は2種類以上を用いることができ、例えば、ヒンダードフェノール化合物等の一次酸化防止剤;リン化合物、イオウ化合物等の二次酸化防止剤等が挙げられる。
【0068】
前記ヒンダードフェノール化合物としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ベンゼンプロパン酸−3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−C7−C9側鎖アルキルエステル、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール、N−フェニルベンゼンアミンと2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、3,9−ビス[2−〔3−(t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5・5〕ウンデカン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノン等が挙げられる。
【0069】
前記リン化合物としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、トリフェニルホスフィン、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−6−メチルフェニル)=エチル=ホスフィット、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−n−ブチリデンビス(2−ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,2’−メチレンビス(4,6−ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキスブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリブチルフェノールのホスファイト等が挙げられる。
【0070】
前記イオウ化合物としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、ジドデシル−3,3’−チオプロピオネート、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ラウジリルチオジチオネート、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、テトラキス−メチレン−3−ラウリルチオプロピオネートメタン、ジステアリル−3,3’−メチル−3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ビス[2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル]スルフィド、β−ラウリルチオプロピオネート、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンゾイミダゾール、ジオクタデシル−3,3’−チオジプロチオネート等が挙げられる。
【0071】
前記酸化防止剤の含有量は、前記ウレタン樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
【0072】
前記粘着剤組成物は、さらに反応遅延剤を含んでいてもよい。前記反応遅延剤は、前記硬化剤の反応を遅延させる作用を有するものであり、イソシアネート硬化剤の反応遅延剤であることが好ましい。前記反応遅延剤としては、例えば、β−ジケトン化合物等のケト−エノール互変異性を示す化合物が挙げられる。前記反応遅延剤を含むことで、粘着剤組成物中でのイソシアネート基と水酸基との反応を制御することが容易となり、ポットライフを調整しやすくなる。前記反応遅延剤の沸点は100℃以下であることが望ましい。前記反応遅延剤の沸点が100℃以下であることで、粘着シート加工時の乾燥条件で揮発し、エージング中はイソシアネート基と水酸基との反応を阻害せず、エージング中に硬化を完了させることができる。
【0073】
前記イソシアネート硬化剤の反応遅延剤(好ましくはβ−ジケトン化合物)としては、1種又は2種以上を用いることができ、アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2−メチルヘキサン−3,5−ジオン、6−メチルヘプタン−2,4−ジオン、2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオン等のβ−ジケトン類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸tert−ブチル等のアセト酢酸エステル類;プロピオニル酢酸エチル、プロピオニル酢酸エチル、プロピオニル酢酸イソプロピル、プロピオニル酢酸tert−ブチル等のプロピオニル酢酸エステル類;イソブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸イソプロピル、イソブチリル酢酸tert−ブチル等のイソブチリル酢酸エステル類;マロン酸メチル、マロン酸エチル等のマロン酸エステル類;等が挙げられる。
【0074】
前記反応遅延剤の含有量は、前記ウレタン樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0075】
前記粘着剤組成物は、さらに硬化触媒を含んでいてもよい。前記硬化触媒としては、前記ウレタン化触媒として例示した化合物と同様の化合物が挙げられる。前記硬化触媒を含む場合、その含有量は、前記ウレタン樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上、さらに好ましくは0.01質量部以上であり、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下、さらに好ましくは0.05質量部以下である。
【0076】
前記粘着剤組成物は、さらに可塑剤を含んでいてもよい。前記可塑剤としては、アジピン酸エステル、クエン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、マレイン酸エステル等の脂肪族ポリカルボン酸エステル;テレフタル酸エステル、イソフタル酸エステル、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル、安息香酸エステル等の芳香族ポリカルボン酸エステル;エーテル変性ポリエステル;エポキシ変性ポリエステル;ポリカルボン酸とポリオールから形成されるポリエステルなどが挙げられる。
【0077】
前記可塑剤を含む場合、該可塑剤の含有量は、前記ウレタン樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。
【0078】
前記粘着剤組成物は、さらに溶剤を含んでいてもよい。前記溶剤としては、前記有機溶媒として例示した化合物と同様の化合物が挙げられる。前記有機溶剤を含む場合、その含有率は、前記粘着剤組成物中、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。本発明の粘着剤組成物は、前記溶剤中、水の含有率が好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下であり、下限は0質量%である。
【0079】
前記粘着剤組成物は、ウレタン樹脂(A)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ法の溶出曲線において、重量平均分子量2,000以上6,000以下に極大値を有する低分子量成分の面積分率が、好ましくは5質量%未満、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下であり、最も好ましくは0質量%である。
【0080】
前記粘着剤組成物は、さらに、他の添加剤として、シランカップリング剤、光安定剤、防錆剤、チキソ性付与剤、増感剤、重合禁止剤、レベリング剤、粘着付与剤、帯電防止剤、難燃剤等を含んでいてもよい。前記他の添加剤の含有率は、前記粘着剤組成物中、好ましくは10質量以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下であり、下限は0質量%である。
【0081】
前記粘着剤組成物を基材に塗工し、必要に応じて溶剤を除去し、さらに必要に応じてエージングすることで、前記粘着剤組成物の硬化物である粘着層を形成することができる。前記粘着層の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。
【0082】
前記粘着剤組成物によりシートを形成する方法としては、例えば、前記粘着剤成物をプラスチック基材上に塗工し、乾燥・硬化させる方法が挙げられる。
【0083】
前記プラスチック基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレー等のポリエステル樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;ポリプロピレンエチレンビニルアルコール;ポリビニルアルコール樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂などを用いて得られるシート又はフィルムを使用することができる。これらのプラスチック基材の表面は、離型処理、帯電防止処理、コロナ処理等が施されていてもよい。また、これらの前記プラスチック基材の厚さとしては、例えば10〜200μmの範囲である。
【0084】
前記プラスチック基材に前記粘着剤組成物を塗工する方法としては、ロールコーター、グラビアコーター、リバースコーター、スプレーコーター、エアーナイフコーター、ダイコーター等による塗工方法が挙げられる。
【0085】
前記プラスチック基材上に前記粘着剤組成物を塗工した後、前記粘着剤組成物を乾燥させる方法としては、例えば50〜120℃で30秒〜30分間乾燥させる方法が挙げられる。また、乾燥後、硬化反応を促進する点から例えば20℃〜50℃の温度でエージングを行っても良い。
【0086】
前記粘着剤組成物の硬化物である粘着層は、その剥離の前後で基材の表面特性の変化を抑制することができるものであり、表面保護フィルムに用いることができ、特に、表示装置等の電子機器の情報表示部を保護するための表面保護フィルムとして有用である。また、前記粘着剤組成物の硬化物である粘着層を用いたフィルムは、被着体と接触させた際、被着体とすばやく密着して広がる性質(ウェッティング性)を有するものであり、表面保護フィルムとして有用である。
【0087】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0088】
ウレタン樹脂の数平均分子量、重量平均分子量は、以下のGPC測定方法で測定した。
[GPC測定方法]
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
(1)TSK−GEL HXL−H(ガードカラム)
(2)TSK−GEL GMHXL
(3)TSK−GEL GMHXL
(4)TSK−GEL GMHXL
(5)TSK−GEL GMHXL
サンプル濃度:4mg/mLとなるようにテトラヒドロフランで希釈
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/min
注入量:100μL
カラム温度:40℃
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−850」
【0089】
(製造例1:ウレタン樹脂(I)の製造)
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量:1,971.9、水酸基価:56.9)517.67質量部、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量:1,011.8、水酸基価:110.9)142.25質量部、メチルエチルケトン125.30質量部を加え、均一に混合した後、イソシアネート基を3つ有するイソシアヌレート(旭化成株式会社製「デュラネートTUL−100」、NCO%;23.0質量%)51.33質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.21質量部を加え、攪拌しながら75℃で約6時間反応させた。イソシアネート基の消失を確認後、メチルエチルケトン348.23質量部を加え、室温まで冷却し、ウレタン樹脂(I)のメチルエチルケトン溶液(固形分60%)を得た。
【0090】
このウレタン樹脂(I)の計算水酸基当量は812、計算水酸基価は26.34mgKOH/g、GPCによる分子量分布は、重量平均分子量が1571,751に極大値を有するピークと81,157に極大値を有するピークが検出され、前者の数平均分子量(Mn)は1494,356、重量平均分子量(Mw)は1571,751、分子量分散度(Mw/Mn)は1.1、後者の数平均分子量(Mn)は4,278、重量平均分子量(Mw)は81,157、分子量分散度(Mw/Mn)は19.0であった。NCO/OH比は、0.57であった。
【0091】
(製造例2:ウレタン樹脂(II)の製造)
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み缶を備えた4ツ口フラスコに、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量:1,931.32、水酸基価:58.1mgKOH/g)560.74質量部、トリオールのポリプロピレングリコール(数平均分子量:1,020.09、水酸基価:165.0)23.15質量部、メチルエチルケトン148.85質量部を加え、均ーに混合した後、1,6−ヘキサンジイソシアネートのイソシアヌレート体「デュラネートTUL−100」(旭化成株式会社製、NCO23.0質量%)12.10質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.15質量部を加え、攪拌しながら75℃で約3時間反応させ、イソシアネート基の消失を確認し、40℃まで冷却した。NCO/OH比は、0.10であった。
【0092】
1,6−ヘキサンジイソシアネート24.42質量部、メチルエチルケトン57.81質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.19質量部を加え、75℃で約6時間反応させ、イソシアネート基の消失を確認し、メチルエチルケトン58.90質量部を加え、室温まで冷却し、ウレタン樹脂(II)のメチルエチルケトン溶液(固形分70質量%)を得た。全NCO/OH比は、0.55であった。
【0093】
このウレタン樹脂(II)の計算水酸基当量は900、計算水酸基価は25.88mgKOH/g、GPCによる分子量分布は、1つのピークのみが検出され、数平均分子量(Mn)は6,021、重量平均分子量(Mw)は15,764、分子量分散度(Mw/Mn)は2.62であった。
【0094】
(製造例3:ウレタン樹脂(III)の製造)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、ネオペンチルグリコールとイソフタル酸からなるポリエステルジオール(数平均分子量:2,603.48、水酸基価:43.1mgKOH/g)496.02質量部、トリメチロールプロパン7.07質量部、メチルエチルケトン127.34質量部を加え、均ーに混合した後、イソホロンジイソシアネート56.62質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.42質量部を加え、攪拌しながら75℃で約8時間反応させ、イソシアネート基の消失を確認し、メチルエチルケトン235.82質量部を加え、室温まで冷却し、ウレタン樹脂(III)のメチルエチルケトン溶液(固形分60質量%)を得た。NCO/OH比は、0.75であった。
【0095】
このウレタン樹脂(III)の計算水酸基当量は750、計算水酸基価は16.50mgKOH/g、GPCによる分子量分布は、1つのピークのみが検出され、数平均分子量(Mn)は8,569、重量平均分子量(Mw)は106,713、分子量分散度(Mw/Mn)は12.45であった。
【0096】
(製造例4:ウレタン樹脂(IV)の製造)
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み缶を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量:1,971.88、水酸基価:56.9mgKOH/g)489.00質量部、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量:1,011.76、水酸基価:110.9)142.25質量部、メチルエチルケトン177. 28質量部を加え、均ーに混合した後、イソホロンジイソシアネート79.97質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.53質量部を加え、攪拌しながら75℃で約8時間反応させ、イソシアネート基の消失を確認し、メチルエチルケトン533.44質量部を加え、室温まで冷却し、ウレタン樹脂(IV)のメチルエチルケトン溶液(固形分50質量%)を得た。NCO/OH比は、0.925であった。
【0097】
このウレタン樹脂(IV)の計算水酸基当量は812、計算水酸基価は4.55mgKOH/g、GPCによる分子量分布は、1つのピークのみが検出され、数平均分了量(Mn)は7,336、重量平均分子量(Mw)は32,640、分子量分散度(Mw/Mn)は4.45であった。
【0098】
(製造例5:ウレタン樹脂(V)の製造)
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み缶を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量:1,010.90、水酸基価:111.0)477.62質量部、ネオペンチルグリコール0.28質量部を加え、均ーに混合した後、イソホロンジイソシアネート133.04質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.03質量部を加え、攪拌しながら90℃で約6時間反応させ、NCO%が理論NCO%以下になったことを確認し、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a)を得た。
【0099】
次いで、前記方法で得られたウレタンプレポリマー(a)を50℃まで冷却し、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸14.96質量部とメチルエチルケトン625.90質量部を加え、次いでオクタン酸スズ0.06質量部を加え、75℃で約6時間反応させた後、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(b)のメチルエチルケトン溶液(固形分50%)を得た。
【0100】
次いで、前記方法で得られたウレタンプリポリマー(b)のメチルエチルケトン溶液を50℃まで冷却し、ジエタノールアミン2.39質量部を加え、60℃で約1時間反応させ、イソシアネート基の消失を確認し、室温まで冷却し、ウレタン樹脂(V)のメチルエチルケトン溶液(固形分50質量%)を得た。
【0101】
このウレタン樹脂(V)の計算水酸基当量は420、計算水酸基価は0.99mgKOH/g、GPCによる分子量分布は、1つのピークのみが検出され、数平均分子量(Mn)は10,389、重量平均分子量(Mw)は56,341、分子量分散度(Mw/Mn)は5.42であった。
【0102】
(製造例6:ウレタン樹脂(VI)の製造)
攪拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み缶を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量:1,972.06、水酸基価:56.9mgKOH/g)518.64質量部、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量:1,011.82、水酸基価:110.9mgKOH/g)141.52質量部、メチルエチルケトン124.80質量部を加え、均ーに混合した後、1,6−ヘキサンジイソシアネート47.44質量部を加え、次いでジブチル錫ジラウレート0.07質量部を加え、攪拌しながら75℃で約3時間反応させ、イソシアネー卜基の消失を確認し、メチルエチルケトン346.86質量部を加え、室温まで冷却し、ウレタン樹脂(VI)のメチルエチルケトン溶液(固形分60質量%)を得た。NCO/OHは0.70であった。
【0103】
このウレタン樹脂(VI)の計算水酸基当量は819、計算水酸基価は19.16mgKOH/g、GPCによる分子量分布は、1つのピークのみが検出され、数平均分子量(Mn)は4,127、重量平均分子量(Mw)は12,608、分子量分散度(Mw/Mn)は3.06であった。
【0104】
(実施例1)
製造例1で得られたウレタン樹脂(I)のメチルエチルケトン溶液(固形分50%)100質量部に、シートを製造する直前に、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(旭化成株式会社製「デュラネートTKA−100」、NCO%;21.7質量%、以下「TKA−100」と略記する。)10.86質量部、硬化触媒としてジオクチル錫ジネオデカネートの1%メチルエチルケトン溶液を1.20質量部、酸化防止剤として「Irganox1010」(BASFジャパン株式会社製、以下「Ir1010」と略記する。)を1.20質量部、硬化遅延剤としてアセチルアセトンを0.60質量部、メチルエチルケトン31.46質量部を配合し、粘着剤組成物(A)(固形分50%)を得た。厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、得られた粘着剤組成物(A)を、乾燥後の膜厚が10μmとなるように塗工し、80℃で3分間乾燥させた。これに表面が離型処理された厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り合わせ、40℃で3日間養生することで、実施例1の粘着シートを得た。
【0105】
原料を表1に記載された種類・量に置き換えた以外は、実施例1と同様の方法で行うことで、それぞれ実施例2及び比較例1〜4の粘着テープを得た。いずれも、目視で白濁等の汚染は観察されなかった。
【0106】
【表1】
【0107】
[接着力の測定方法]
実施例及び比較例で得られた表面保護フィルムを幅25mmに裁断したものを試験片とした。試験片から離型フィルムを剥離し、ガラス板に対し、接着面積が25mm×60mmとなるように2kgロールで2往復して貼り付けた。貼り付けして24時間後に23℃、湿度50%の雰囲気下で180度剥離強度を行い、接着力(N/25mm)とした。接着力は以下のように評価した。
○:0.01〜0.10
△:0.10〜0.20
×:0.20以上
【0108】
[耐熱試験後の接着力の測定方法]
実施例及び比較例で得られた表面保護フィルムを幅25mmに裁断したものを試験片とした。試験片から離型フィルムを剥離し、ガラス板に対し、接着面積が25mm×60mmとなるように2kgロールで2往復して貼り付けた。貼り付けして1時間後に180℃の乾燥機に1時間入れ、取り出して23℃、湿度50%の雰囲気下に1時間静置後に同条件下で180度剥離強度を行い、耐熱試験後の接着力(N/25mm)とした。耐熱後の接着力は以下のように評価した。
○:0.10〜1.00
△:1.00〜2.00
×:2.00以上
【0109】
[濡れ性の評価]
実施例及び比較例で得られた表面保護フィルムを5cm×15cmの長方形に裁断し、離型PETフィルムを剥離し、長辺両端を手で持ち、湾曲させた。露出した粘着剤層の中心部をガラス板に接触させた後、手を離し、自重で粘着剤層全体がガラス板に貼着するまでの時間(秒)を測定した。
◎:3秒以下
○:3秒超5秒以下
△:5秒超10秒以下
×:10秒超
【0110】
以上の評価結果を表1に示す。
【0111】
【表2】
【0112】
実施例1、2は、本発明の実施例であり、ウェッティング性、耐熱性が良好であった。比較例1は、ポリエーテルポリオールを用いない例であり、濡れ性が著しく不良であり、耐熱性が不良であった。比較例2は、ウレタン樹脂に含まれるヒドロキシ基の数が3未満であって、水酸基価が15mgKOH/g未満であり、耐熱性が不良であった。比較例3は、ウレタン樹脂に含まれるヒドロキシ基の数が3未満であって、ポリオールの平均水酸基棟梁が700g/eq.未満、水酸基価が15mgKOH/g未満であり、耐熱性が不良であった。比較例4は、ウレタン樹脂に含まれるヒドロキシ基の数が3未満であり、耐熱性が不良であった。
【要約】
本発明は、ウェッティング性、耐熱性が良好であり、好ましくは外観が良好な表面保護フィルムを提供することを課題とする。本発明の粘着剤組成物は、ウレタン樹脂(A)とポリイソシアネート化合物(B)とを含み、前記ウレタン樹脂(A)が、ポリオール(a)とポリイソシアネート化合物(b)との反応物であって、1分子中に3以上のヒドロキシ基を有するものであり、前記ポリオール(a)が、ポリエーテルポリオールを90質量%以上含むものであり、前記ポリオール(a)の平均水酸基当量が、700g/eq.以上3,000g/eq.以下であり、前記ウレタン樹脂(A)の水酸基価が、15mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である。