(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記工程(1)において、前記ポリカーボネート樹脂(A1)及び前記ゴム強化スチレン系樹脂(A2)の合計100質量部に対し、リン原子含有オリゴマー(B)を3〜20質量部の範囲で溶融混練する請求項3記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
前記工程(2)において、前記熱可塑性樹脂(E)がポリカーボネート樹脂、ゴム強化スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂及びポリアリーレンエーテル樹脂から成る群から選ばれる少なくとも一種である請求項3または4記載の難燃性樹脂組成物の製造方法。
熱可塑性樹脂(E)が、前記ポリカーボネート樹脂(A1)及び/又は前記ゴム強化スチレン系樹脂(A2)であり、難燃性マスターバッチ中の前記ポリカーボネート樹脂(A1)と前記ゴム強化スチレン系樹脂(A2)と熱可塑性樹脂(E)との合計100質量部に対し、前記リン原子含有オリゴマー(B)が3〜20質量部の範囲である請求項6又は7記載の難燃性樹脂組成物。
熱可塑性樹脂(E)が、前記ポリカーボネート樹脂(A1)及び前記ゴム強化スチレン系樹脂(A2)以外の熱可塑性樹脂であり、難燃性マスターバッチ中のポリカーボネート樹脂(A1)及び前記ゴム強化スチレン系樹脂(A2)の合計100質量部に対して、熱可塑性樹脂(E)が1〜100質量部および前記リン原子含有オリゴマー(B)が3〜20質量部の範囲である請求項6又は7記載の難燃性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の難燃性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A1)、ゴム強化スチレン系樹脂(A2)およびリン原子含有オリゴマー(B)を必須成分として含有する難燃性樹脂組成物であって、前記リン原子含有オリゴマー(B)が、下記構造式(1)
【0036】
【化21】
(式中、Zは、それぞれ独立的に水素原子、又は、下記構造式z1
【0037】
【化22】
(上記構造式z1中、R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表す。)
で表される構造部位又は下記構造式z2
【0038】
【化23】
(上記構造式z2中、R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表し、R
5は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、R
6は炭素原子1〜4のアルキル基を表し、rは芳香核上の置換基OR
6の数であり1〜3である。)で表される構造部位であり、
Yは、それぞれ独立的に、水素原子、水酸基、炭素原子数1〜9のアルキル基、又は、炭素原子数1〜9のアルコキシ基、フェニル基、又はベンジル基であり、
Xは、メチレン基、2,2−プロピレン基、2価のアラルキル基、2価の脂肪族環状炭化水素基、下記構造式x1
【0039】
【化24】
で表される結節基x1、又は、下記構造式x2
【0040】
【化25】
で表される結節基x2であり、nおよびmは繰り返し単位であって、0〜10の範囲である。ただし、前記Xが、メチレン基、2,2−プロピレン基、2価のアラルキル基、又は前記結節基x1である場合、又は、n及びmが0である場合は、前記Zの少なくとも一つは、前記構造部位z1、又は、前記構造部位z2であり、また、前記Xとして前記結節基x2を有する場合には、前記Zは水素原子である。)で表されることを特徴とする。
【0041】
・ポリカーボネート樹脂(A1)
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂としては、特に制限はなく種々のものが挙げられる。通常、二価フェノールとカーボネート前駆体との反応により製造される芳香族ポリカーボネートを用いることができる。すなわち、2価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法あるいは溶融法、すなわち、二価フェノールとホスゲンの反応、2価フェノールとジフェニルカーボネートなどとのエステル交換法により反応させて製造されたものを使用することができる。
【0042】
2価フェノールとしては、様々なものが挙げられるが、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトンなどが挙げられる。
【0043】
特に好ましい2価フェノールとしては、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系、特にビスフェノールAを主原料としたものである。また、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエステル、またはハロホルメートなどであり、具体的にはホスゲン、2価フェノールのジハロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどである。この他、二価フェノールとしては、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール等が挙げられる。これらの二価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
なお、ポリカーボネート樹脂は、分岐構造を有していてもよく、分岐剤としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,α”−トリス(4−ビドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、フロログリシン、トリメリット酸、イサチンビス(o−クレゾール)などがある。また、分子量の調節のためには、フェノール、p−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−クミルフェノールなどが用いられる。
【0045】
また、本発明に用いることができるポリカーボネート樹脂としては、ポリカーボネート部とポリオルガノシロキサン部を有する共重合体、あるいはこの共重合体を含有するポリカーボネート樹脂であってもよい。また、テレフタル酸などの2官能性カルボン酸、またはそのエステル形成誘導体などのエステル前駆体の存在下でポリカーボネートの重合を行うことによって得られるポリエステル−ポリカーボネート樹脂であってもよい。また、種々のポリカーボネート樹脂の混合物を用いることもできる。本発明において用いることができるポリカーボネート樹脂は、構造中に実質的にハロゲンを含まないものが好ましい。また、機械的強度および成形性の点から、その粘度平均分子量は、10,000〜100,000のものが好ましく、特に14,000〜40,000のものが好適である。
なお、本発明におけるポリカーボネート樹脂(A1)成分の粘度平均分子量は、塩化メチレン100cm
3に芳香族ポリカーボネート樹脂を20℃で溶解した溶液をウベローデ粘度計を用いて測定した比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
【0046】
(ηsp)/C=[η]+0.45×[η]
2C
[η]=1.23×10
−5M
0.83
(但し、[η]は極限粘度、Cはポリマー濃度である)
【0047】
・ゴム強化系スチレン樹脂(A2)
本発明に使用するゴム強化系スチレン樹脂(A2)(以下、単に「樹脂(A2)」と言うことがある)は、ゴム状重合体の存在下に、芳香族ビニル単量体および必要に応じこれと共重合可能なビニル単量体を加えた単量体混合物を、公知の塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合または乳化重合に供することにより得られるものである。
【0048】
このようなゴム強化系スチレン樹脂(A2)の具体例としては、例えば、耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂、AAS樹脂(アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体)、MBS樹脂(メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム−スチレン共重合体)およびAES樹脂(アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体)などが挙げられる。
【0049】
また、ゴム強化系スチレン樹脂としては、スチレン単量体を含有する重合体または共重合体(以下、(共)重合体と表記することもある。)がゴム質重合体にグラフトした構造をとったものと、スチレン単量体を含有する(共)重合体がゴム質重合体に非グラフトした構造をとったものとを含むものである。
【0050】
具体的には、ゴム質重合体5〜80質量部に対し、芳香族ビニル系単量体を20質量%以上含有する単量体または単量体混合物95〜20質量部をグラフト重合して得られるグラフト(共)重合体(A2−1)10〜100質量%と、芳香族ビニル系単量体を20質量%以上含有する単量体または単量体混合物を重合して得られるビニル系(共)重合体(A2−2)0〜90質量%とからなるものが好ましいものとして挙げられる。
【0051】
上記ゴム質重合体としては、ガラス転移温度が0℃以下のものが好適であり、ジエン系ゴムが好ましく用いられる。具体的にはポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体などのジエン系ゴム、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系ゴム、ポリイソプレン、およびエチレン−プロピレン−ジエン系三元共重合体などが挙げられる。なかでもポリブタジエンまたはブタジエン共重合体の使用が好ましい。
【0052】
ゴム質重合体のゴム粒子径は特に制限されないが、ゴム粒子の質量平均粒子径が0.15〜0.6μm、特に0.2〜0.55μmである場合が、耐衝撃性にすぐれることから好ましい。中でも質量平均粒子径0.20〜0.25μmのものと、0.50〜0.65μmのものとの質量比が、90:10〜60:40のものが、耐衝撃性および薄肉成形品の落錘衝撃が著しくすぐれることから好ましい。
【0053】
なお、ゴム粒子の平均質量粒子径は、「Rubber Age Vol.88 p.484〜490(1960)by E.Schmidt, P.H.Biddison」に記載のアルギン酸ナトリウム法(アルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した質量割合と、アルギン酸ナトリウム濃度の累積質量分率とより累積質量分率50%の粒子径を求める)により測定することができる。
【0054】
芳香族ビニル系単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、o−エチルスチレンおよびp−t−ブチルスチレンなどが挙げられるが、特にスチレンの使用が好ましい。
【0055】
芳香族ビニル系単量体以外の単量体としては、一層の耐衝撃性、耐薬品性向上を目的とする場合にはシアン化ビニル系単量体が、また靭性および色調の向上を目的とする場合には(メタ)アクリル酸エステル系単量体が、それぞれ好ましく用いられる。
【0056】
前記シアン化ビニル系単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられるが、特にアクリロニトリルが好ましく用いられる。
【0057】
さらに前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体の具体例としては、アクリル酸およびメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステル化物などが挙げられるが、特にメタクリル酸メチルが好ましく用いられる。
【0058】
また、必要に応じて他のビニル系単量体、例えばマレイミド、N−メチルマレイミド、およびN−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体などを使用することもできる。
【0059】
上記のグラフト(共)重合体(A2−1)において用いる単量体または単量体混合物は、樹脂組成物の耐衝撃性の観点から、芳香族ビニル系単量体が20質量%以上であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上である。シアン化ビニル系単量体を混合する場合には、樹脂組成物の成形加工性の観点から、60質量%以下であることが好ましく、特に50質量%以下が好ましく用いられる。また(メタ)アクリル酸エステル系単量体を混合する場合には、靱性および耐衝撃性の観点から、80質量%以下であることが好ましく、特に75質量%以下が好ましく用いられる。単量体また単量体混合物における芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体の配合量の総和は、95〜20質量%であることが好ましく、さらに好ましくは90〜30質量%である。
【0060】
グラフト(共)重合体(A2−1)を得る際のゴム質重合体と単量体混合物との配合割合は、樹脂組成物の耐衝撃性の観点から、全グラフト共重合体100質量部中に、ゴム質重合体が5質量部以上であることが好ましく、より好ましくは10質量部以上である。また、樹脂組成物の耐衝撃性および成形品の外観の観点からは、80質量部以下であることが好ましく、より好ましくは70質量部以下である。また、単量体または単量体混合物の配合割合は、は95質量部以下、好ましくは90質量部以下、あるいは20質量部以上、好ましくは30質量部以上である。
【0061】
グラフト(共)重合体(A2−1)は、公知の重合法で得ることができる。例えば、ゴム質重合体ラテックスの存在下に単量体および連鎖移動剤の混合物と乳化剤に溶解したラジカル発生剤の溶液を連続的に重合容器に供給して乳化重合する方法などによって得ることができる。
【0062】
グラフト(共)重合体(A2−1)は、ゴム質重合体に単量体または単量体混合物がグラフトした構造をとったグラフト共重合体の他に、グラフトしていない共重合体を含有したものである。グラフト(共)重合体のグラフト率は特に制限がないが、耐衝撃性および光沢が均衡してすぐれる樹脂組成物を得るためには、20〜80質量%、特に25〜50質量%の範囲であることが好ましい。ここで、グラフト率は次式により算出される値である。
グラフト率(%)=[<ゴム質重合体にグラフト重合したビニル系共重合体量>/<グラフト共重合体のゴム含有量>]×100
【0063】
グラフトしていない(共)重合体の特性は特に制限されないが、メチルエチルケトン可溶分の極限粘度[η](30℃で測定)が、0.25〜0.6dl/g、特に0.25〜0.5dl/gの範囲であることが、すぐれた耐衝撃性の樹脂組成物を得るために好ましい条件である。
【0064】
ビニル系(共)重合体(A2−2)とは芳香族ビニル系単量体を必須とする共重合体である。芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエンおよびo−エチルスチレンなどが挙げられるが、特にスチレンが好ましく使用される。これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0065】
芳香族ビニル系単量体以外の単量体としては、一層の耐衝撃性、耐薬品性向上を目的とする場合にはシアン化ビニル系単量体が、また靭性および色調の向上を目的とする場合には(メタ)アクリル酸エステル系単量体が好ましく用いられる。
【0066】
シアン化ビニル系単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられるが、特にアクリロニトリルが好ましく使用される。(メタ)アクリル酸エステル系単量体の具体例としては、アクリル酸およびメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステル化物などが挙げられるが、特にメタクリル酸メチルが好ましく使用される。
【0067】
また、必要に応じて使用されるこれらと共重合可能な他のビニル系単量体としては、マレイミド、N−メチルマレイミドおよびN−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体が挙げられる。
【0068】
本発明において、マレイミド系単量体を共重合したビニル系共重合体、即ち、マレイミド基変性ビニル系共重合体は、ポリスチレン系樹脂中に含有させて使用することにより、樹脂組成物の耐熱性を向上でき、さらに難燃性も特異的に向上できるため、好ましく使用することができる。
【0069】
ビニル系(共)重合体(A2−2)の構成成分である芳香族ビニル系単量体の割合は、樹脂組成物の耐衝撃性の観点から、全単量体に対し20質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上の範囲である。シアン化ビニル系単量体を混合する場合には、耐衝撃性、流動性の観点から、60質量%以下が好ましく、さらに好ましくは50質量%以下の範囲である。また、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を混合する場合には、靭性、耐衝撃性の観点から、80質量%以下が好ましく、さらに好ましくは75質量%以下の範囲である。更に、これらと共重合可能な他のビニル系単量体を混合する場合には、60質量%以下が好ましく、特に50質量%以下の範囲が好ましい。
【0070】
ビニル系(共)重合体(A2−2)の特性には制限はないが、メチルエチルケトン溶媒を用いて、30℃で測定した極限粘度[η]が、0.4〜0.65dl/g、特に0.45〜0.55dl/gの範囲のものが、またN,N−ジメチルホルムアミド溶媒を用いて、30℃で測定した場合には、0.35〜0.85dl/g、特に0.45〜0.7dl/gの範囲のものが、すぐれた耐衝撃性および成形加工性を有する樹脂組成物が得られることから好ましい。
【0071】
ビニル系(共)重合体(A2−2)の製造法には特に制限がなく、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、塊状−懸濁重合法および溶液−塊状重合法など通常の方法を用いることができる。
【0072】
また、本発明においては、必要に応じてカルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基およびオキサゾリン基から選ばれた少なくとも一種の官能基を含有する変性ビニル系重合体(以下、変性ビニル系重合体と略称する。)を用いることもできる。この変性ビニル系重合体としては、一種または二種以上のビニル系単量体を重合または共重合して得られる構造を有し、かつ分子中にカルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基およびオキサゾリン基から選ばれた少なくとも一種の官能基を含有する重合体である。これらの官能基を含有する化合物の含有量については制限されないが、特に変性ビニル系重合体100質量部当たり0.01〜20質量部の範囲であることが好ましい。
【0073】
変性ビニル系重合体中にカルボキシル基を導入する方法には特に制限はないが、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、無水マレイン酸、フタル酸およびイタコン酸などのカルボキシル基または無水カルボキシル基を有するビニル系単量体を所定のビニル系単量体と共重合する方法、γ,γ’−アゾビス(γ−シアノバレイン酸)、α,α’−アゾビス(α−シアノエチル)−p−安息香酸および過酸化サクシン酸などのカルボキシル基を有する重合開始剤および/またはチオグリコール酸、α−メルカプトプロピオン酸、β−メルカプトプロピオン酸、α−メルカプト−イソ酪酸および2,3または4−メルカプト安息香酸などのカルボキシル基を有する重合度調節剤を用いて、所定のビニル系単量体を(共)重合する方法、およびメタクリル酸メチルやアクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体と芳香族ビニル系単量体、必要に応じてシアン化ビニル系単量体との共重合体をアルカリによってケン化する方法などを用いることができる。
【0074】
上記ヒドロキシル基を導入する方法についても特に制限はないが、例えばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、メタクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、メタクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、シス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、トランス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、4−ジヒドロキシ−2−ブテンなどのヒドロキシル基を有するビニル系単量体を、所定のビニル系単量体と共重合する方法などを用いることができる。
【0075】
上記エポキシ基を導入する方法についても特に制限はないが、例えばアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテルおよびp−グリシジルスチレンなどのエポキシ基を有するビニル系単量体を、所定のビニル系単量体と共重合する方法などを用いることができる。中でも、メタクリル酸グリシジルを共重合させることによりエポキシ基を導入したエポキシ変性ビニル系共重合体は、ポリスチレン系樹脂中に含有させて使用した場合、本発明の樹脂組成物の難燃性、衝撃強度を向上することができる。
【0076】
上記アミノ基を導入する方法についても特に制限はないが、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレンなどのアミノ基およびその誘導体を有するビニル系単量体を、所定のビニル系単量体と共重合する方法などを用いることができる。
【0077】
上記オキサゾリン基を導入する方法についても特に制限はないが、例えば2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどのオキサゾリン基を有するビニル系単量体を所定のビニル系単量体と共重合する方法などを用いることができる。
【0078】
この変性ビニル系重合体の特性には制限はないがメチルエチルケトン溶媒を用いて、30℃で測定した極限粘度[η]が、0.2〜0.65dl/g、特に0.35〜0.6dl/gの範囲のものが、またN,N−ジメチルホルムアミド溶媒を用いて、30℃で測定した場合には、0.3〜0.9dl/g、特に0.4〜0.75dl/gの範囲のものが、すぐれた難燃性、耐衝撃性、成形加工性の樹脂組成物が得られることから好ましい。
【0079】
前記ポリカーボネート樹脂(A1)及び前記ゴム強化スチレン系樹脂(A2)の割合は、本発明の効果を損ねなければ特に限定されないが、前記ポリカーボネート樹脂(A1)及び前記ゴム強化スチレン系樹脂(A2)の合計100質量部に対して、前記ポリカーボネート樹脂(A1)が95〜50質量部の範囲であり、かつ前記ゴム強化スチレン系樹脂(A2)が50〜95質量部の範囲であることが好ましく、さらに、前記ポリカーボネート樹脂(A1)が80〜60質量部の範囲であり、かつ前記ゴム強化スチレン系樹脂(A2)が20〜40質量部の範囲であることがより好ましい。
【0080】
・リン原子含有オリゴマー(B)
次に、本発明で用いるリン原子含有オリゴマー(B)は、前記した通り、下記構造式(1)
【0081】
【化26】
(式中、Zは、それぞれ独立的に水素原子、又は、下記構造式z1
【0082】
【化27】
(上記構造式z1中、R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表す。)で表される構造部位z1又は下記構造式z2
【0083】
【化28】
(上記構造式z2中、R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表し、R
5は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、R
6は炭素原子1〜4のアルキル基を表し、rは芳香核上の置換基OR
6の数であり1〜3である。)で表される構造部位z2であり、
Yは、それぞれ独立的に、水素原子、水酸基、炭素原子数1〜9のアルキル基、又は、炭素原子数1〜9のアルコキシ基、フェニル基、又はベンジル基であり、Xは、メチレン基、2,2−プロピレン基、2価のアラルキル基、2価の脂肪族環状炭化水素基、下記構造式x1
【0084】
【化29】
で表される結節基x1、又は、下記構造式x2
【0085】
【化30】
で表される結節基x2であり、nおよびmは繰り返し単位であって、0〜10の整数であり、かつ、前記Xが、メチレン基、2,2−プロピレン基、2価のアラルキル基、又は前記結節基x1である場合、又は、n及びmが0である場合は、前記Zの少なくとも一つは、前記構造部位z1、又は、前記構造部位z2であり、また、前記Xとして前記結節基x2を有する場合には、前記Zは水素原子である。)で表される構造を有するものである。
【0086】
斯かるリン原子含有フェノール化合物(B)は、具体的には、各種のリン原子非含有のフェノール化合物、フェノール樹脂の芳香核に下記構造式z1
【0087】
【化31】
(上記構造式z1中、R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表し、R
5は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。)で表される構造部位z1又は下記構造式z2
【0088】
【化32】
(上記構造式z2中、R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表し、R
5は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、R
6は炭素原子1〜4のアルキル基を表し、rは芳香核上の置換基OR
6の数であり1〜3である。)で表される構造部位z2が結合した構造を有するフェノール化合物(以下、これを「リン原子含有物質(I)」と略記する。)、或いは、
【0089】
複数のフェノール化合物を結節する結節基として、下記構造式x2
【0090】
【化33】
で表される結節基x2を有し、かつ、芳香核に前記構造部位z1又はz2を有しないもの(以下、これを「リン原子含有物質(II)」と略記する。)が挙げられる。
【0091】
ここで、前記リン原子含有物質(I)は、例えば、下記に示すリン原子含有物質(I−a)とリン原子含有物質(I−b)が挙げられる。
更に具体的には、リン原子含有物質(I−a)は、フェノール化合物(a1)を、塩基性触媒の存在下、ホルムアルデヒドと反応させて、メチロール基を含む重縮合物を得(工程1)、次いで、これを炭素原子数1〜8の脂肪族モノアルコールと反応させることによってエーテル化し、アルコキシメチル基を含む樹脂(α)を得(工程2)、次いで、これを例えば下記構造式(β−1)
【0092】
【化34】
(上記構造式(β−1)中、R
1、R
2、R
3、R
4はそれぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表す。)
で表されるようなリン原子含有化合物(β)と、生成するアルコールを除去し乍ら反応させる(工程3)ことにより得ることができる。
【0093】
ここで、リン原子含有物質(I−a)を製造する際に用いられるフェノール化合物(a1)は、具体的には、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、t−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ビニルフェノール、イソプロペニルフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール等の1価フェノール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール;ハイドロキノン、カテコール等の2価フェノール等が挙げられる。
【0094】
また、リン原子含有物質(I−a)を製造する際の工程1で使用し得る塩基性触媒としては、具体的には、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。特に触媒活性に優れる点から水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が好ましい。使用に際しては、これらの塩基性触媒を10〜55質量%程度の水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用しても構わない。塩基性触媒の使用量は特に限定されないが、フェノール化合物(a1)の水酸基に対して、0.5〜5倍当量、好ましくは、0.8〜3倍当量の範囲が挙げられる。
【0095】
また、工程1で用いる、ホルムアルデヒドは、ホルマリン水溶液、パラホルムアルデヒド、トリオキサンをホルムアルデヒド源として利用することができるが、本発明では取扱、反応の制御が容易である点から35%ホルマリン水溶液を使用することが好ましい。
【0096】
前記フェノール化合物(a1)とホルムアルデヒドとの反応割合は、前記フェノール化合物(a1)1モルに対して、ホルムアルデヒド4〜40モル、好ましくは5〜10モルとなる割合であることが好ましい。
【0097】
工程1の反応は、通常、水溶媒か、又は水と有機溶媒との混合溶媒中で行うことができる。ここで有機溶媒を用いる場合、その使用量は、原料である前記フェノール化合物(a1)に対して、質量比で、1〜5倍、好ましくは、2〜3倍程度の範囲であることが好ましい。
上記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、n−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、カルビトール等のアルコール−、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、また、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等の水溶性の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。
工程1の反応は、10〜60℃、好ましくは、20〜50℃の範囲の温度において行うことができる。
【0098】
反応終了後は、必要により、酸を加えて中和した後、常法により精製・単離して目的物であるメチロール基を含む重縮合物を得ることができる。ここで、中和処理に用いる酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、蓚酸等の有機酸、または、硫酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、塩酸等の無機酸が挙げられる。
【0099】
次に、工程2は、工程1で得られたメチロール基を含む重縮合物を、炭素原子数1〜8の脂肪族モノアルコールと反応させることによってエーテル化し、アルコキシメチル基を含む樹脂(α)を得る工程である。
【0100】
ここで、炭素原子数1〜8の脂肪族モノアルコールは、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−オクチルアルコール、s−オクチルアルコール、t−オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコールが挙げられる。これらの中でも樹脂(α)の製造が容易であり、また、その後の工程である脱アルコールが容易である点からn−アルコールが好ましく、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等の炭素原子数1〜4のアルコールが好ましい。
【0101】
また、前記炭素原子数1〜8の脂肪族モノアルコールの使用量は、前記メチロール基を含む重縮合物100質量部に対して200〜3000質量部、特に500〜1500質量部となる割合であることが好ましい。なお、前記炭素原子数1〜8の脂肪族モノアルコールは原料であると共に反応溶剤としても機能するものである。
【0102】
工程2は、無触媒であってもよいが、酸触媒を用いてもよい。ここで用いる酸触媒としては、濃硫酸、塩酸、硝酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、陽イオン交換樹脂(酸型)、シュウ酸等が好ましく用いられる。より好ましくは、濃硫酸等の無機の強酸が挙げられる。酸触媒は、メチロール基を含む重縮合物100質量部に対して、通常、0.1〜100質量部の範囲、好ましくは、0.5〜30質量部の範囲で用いることができる。
【0103】
また、工程2の反応温度は、通常、15〜80℃の範囲、好ましくは40〜60℃の範囲が挙げられる。
【0104】
反応終了後、必要に応じて精製した後、常法に従って、得られた反応混合物から目的とするアルコキシメチル基を含む樹脂(α)を単離することができる。
【0105】
ここで、フェノール化合物としてフェノールを用いた場合、アルコキシメチル基を含む樹脂(α)は具体的には、以下の構造式(I−a−1)、及び構造式(I−a−2)
【0106】
【化35】
(上記構造式(I−a−1)、及び構造式(I−a−2)においてR
7は炭素原子数1〜8のアルキル基であり、jは0又は1の整数である)
で表される化合物、並びに、下記構造式(I−a−3)又は構造式(I−a−4)
【0107】
【化36】
(構造式(I−a−3)及び構造式(I−a−4)においてR
7は炭素原子数1〜8のアルキル基であり、jは1〜2の整数である。)で表される構造部位を繰り返し単位とする重合体、或いは、上記構造式(I−a−3)及び構造式(I−a−4)を繰り返し単位とするランダム重合体若しくはブロック重合体、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0108】
また、フェノール化合物としてビスフェノールを用いた場合、下記構造式(I−a−5)〜構造式(I−a−7)
【0109】
【化37】
(構造式(I−a−5)〜構造式(I−a−7)においてR
8は炭素原子数1〜8のアルキル基であり、mは0又は1である。)で表される化合物、並びに、下記構造式(I−a−8)又は構造式(I−a−9)
【0110】
【化38】
(構造式(I−a−8)〜(I−a−9)においてR
8は炭素原子数1〜8のアルキル基であり、kは0又は1の整数である。)で表される構造部位を繰り返し単位とする重合体、或いは、上記構造式(I−a−8)及び構造式(I−a−9)を繰り返し単位とするランダム重合体若しくはブロック重合体、並びにこれらの混合物が挙げられる。上記構造式(I−a−8)及び構造式(I−a−9)は、結合位置*1〜*3の任意の2つが結合部位となる2価の構造単位、或いは、結合位置*1〜*3の全てが結合部位となる3価の構造単位であってもよい。
【0111】
次に、前記した通り、上記アルコキシメチル基を含む樹脂(α)を、例えば、下記構造式(β−1)
【0112】
【化39】
(上記構造式(β−1)中、R
1、R
2、R
3、R
4はそれぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表す。)で表されるようなリン原子含有化合物(β)と反応させて目的とするリン原子含有物質(I−a)を得ることができる。
【0113】
ここで、前記リン原子含有化合物(β)は、前記構造式(β−1)においてR
1、R
2、R
3、R
4の全てが水素原子である、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドであることが最終的に得られるリン原子含有フェノール樹脂の硬化物の難燃性及び耐熱性が極めて良好なものとなる点から好ましい。
【0114】
ここで、アルコキシメチル基を含む樹脂(α)と、リン原子含有化合物(β)との反応条件は、例えば、80〜180℃の温度条件下に、反応の進行と共に生成するアルコールを除去しつつ反応させることができる。反応は、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸、塩酸などの酸触媒下に行ってもよいが、目的物の収率に優れ、かつ、副反応を良好に抑制できる点から無触媒下に行うことが好ましい。有機溶媒は、アルコール系有機溶媒、炭化水素系有機溶媒などの非ケトン系有機溶媒の存在下で行うことができる。
【0115】
反応後は、必要により、脱水・乾燥して目的物を得ることができる。
【0116】
この様にして得られるリン原子含有物質(I−a)は、水酸基当量300〜600g/eq.の範囲であることが難燃性に優れる点から好ましく、また、リン原子の含有率を質量基準で5.0〜12.0質量%の範囲であることが薄肉成型品、成型品の薄肉部、薄膜部における難燃性に優れる点から好ましい。また、前記リン原子含有物質(I−a)は、前駆体であるアルコキシメチル基を含む樹脂(α)のR−O−CH
2−の5〜20%が残存しているものが、得られるリン原子含有物質(I−a)の溶剤溶解性が良好なものとなる点から好ましい。
【0117】
また、前記リン原子含有物質(I)としては、前記リン原子含有物質(I−a)の他、前記フェノール化合物(a1)又はフェノール樹脂(a2)と、アルデヒド化合物(a3)と、前記リン原子含有化合物(β)とを反応させて得られる、フェノール芳香核に前記構造部位z1又はz2を置換基として有するリン原子含有物質(I−b)が挙げられる。
【0118】
ここで、リン原子含有物質(I−b)は、具体的には、フェノール化合物(a1)又はフェノール樹脂(a2)と、アルデヒド化合物(a3)と、リン原子含有化合物(β)とを一括で反応させるか、或いは、アルデヒド化合物(a3)とリン原子含有化合物(β)とを反応させて下記構造式z1−r
【0119】
【化40】
で表される中間体z1−r、或いは、下記構造式z2−r
【0120】
【化41】
で表される中間体z1−r
を得、次いで、該中間体をフェノール化合物(a1)又はフェノール樹脂(a2)と反応させて得られるものが挙げられる。
【0121】
ここで、用いられるアルデヒド化合物(a3)は、ホルムアルデヒドの他、
下記構造式(a3−1)
【0122】
【化42】
(式中、R
5は水素原子又は炭素原子1〜3のアルキル基であり、R
6は炭素原子1〜4のアルキル基を表し、rは芳香核上の置換基OR
6の数であり1〜3である。)で表されるアルコキシ基を芳香核上の置換基として有する芳香族アルデヒド(a3−1)が挙げられる。
【0123】
本発明では前記芳香族アルデヒド(a3−1)のなかでも特に1分子中におけるリンの含有率が高くなる点からr=1のものが好ましい。
【0124】
本発明では、前記芳香族アルデヒド(a3−1)とリン原子含有化合物(β)との反応生成物中に生成する水酸基が、その反応性が優れたものとなり、殆ど触媒を用いなくとも、該生成物はフェノール化合物(a3)中の芳香核に反応する。このような特長がより顕著に現れる点からアルコキシ基はメトキシ基又はエトキシ基であることが好ましい。
前記リン原子含有化合物(β)は、前記した通り、下記構造式(β−1)
【0125】
【化43】
(上記構造式(β−1)中、R
1、R
2、R
3、R
4はそれぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表す。)で表されるものであるが、本発明では、難燃性の点からR
1、R
2、R
3、R
4の全てが水素原子であるものが好ましい。
【0126】
ここで、アルデヒド化合物(a1)と、リン原子含有化合物(β)との反応条件は、例えば、80〜180℃の温度条件下に行うことができる。該反応は無触媒で行うことができ、または、アルコール系有機溶媒、炭化水素系有機溶媒などの非ケトン系有機溶媒の存在下で行うことができる。また、該反応は、極めて反応性が高く、特に触媒を必要としないが、適宜、用いても構わない。ここで使用し得る触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸、三弗化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸などが挙げられる。その使用量は仕込み原料の総質量に対して、5.0質量%未満であることが好ましい。
【0127】
かかる反応によって下記構造式z1−r
【0128】
【化44】
で表される中間体z1−r、或いは、下記構造式z2−r
【0129】
【化45】
で表される中間体z1−rを得ることができる。
【0130】
次に、前記中間体z1−r又はz2−rと反応させる、フェノール化合物(a1)は、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、t−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ビニルフェノール、イソプロペニルフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール等の1価フェノール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール;ハイドロキノン、カテコール等の2価フェノールが挙げられる。
【0131】
また、前記中間体z1−r又はz2−rと反応させる前記フェノール樹脂(a2)は、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、その他下記構造式(a2−1)
【0132】
【化46】
(式中、Yは前記構造式1と同義であり、laは繰り返し単位で0〜10の整数である。)
で表されるノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;
【0133】
ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4−ビニルシクロヘキセン、5−ビニルノルボナ−2−エン、α−ピネン、β−ピネン、及びリモネンからなる群から選択される脂肪族環状炭化水素基を介してフェノール類が結節された分子構造をもつフェノール樹脂;下記構造式(a2−2)
【0134】
【化47】
(前記式中、Yは前記構造式1と同義であり、lbは繰り返し単位で0〜10の整数である。)で表されるアラルキル型フェノール樹脂;
下記構造式(a2−3)
【0135】
【化48】
(前記式中、Yは前記構造式1と同義であり、lcは繰り返し単位で0〜10の整数である。)で表されるアラルキル型フェノール樹脂;
下記構造式(a2−3)
【0136】
【化49】
(前記式中、Yは前記構造式1と同義であり、ldは繰り返し単位で0〜10の整数である。)で表されるアラルキル型フェノール樹脂;
が挙げられる。
【0137】
本発明では、これらのなかでも特に2価フェノール、ビスフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂が、最終的に得られる難燃性ポリアミド樹脂組成物の成形加工性に優れ、かつ、薄肉成型品、成型品の薄肉部、薄膜部における難燃性に優れる点から好ましく、特にノボラック型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂が好ましい。この場合、ノボラック型フェノール樹脂は150℃における溶融粘度が0.5〜300dPa・sの範囲であることが成形加工性の点から好ましい。
【0138】
次に、前記中間体z1−r又はz2−rと前記フェノール化合物(a1)又はフェノール樹脂(a2)との反応割合は特に限定されることがないが、最終的に得られるリン原子含有物質(I−b)中のリン原子の含有率が質量基準で4.0〜7.0質量%となる割合となる範囲であることが難燃性に優れる点から好ましい。
【0139】
反応後は、必要により、脱水・乾燥して目的物を得ることができる。
【0140】
前記リン原子含有物質(I−b)は上記した製造方法によって得られる分子構造を有するものである。具体的な分子構造は前記した各原料成分の選択により任意に設計することが可能であるが、例えば、ノボラック型フェノール樹脂であって、その芳香核上の置換基として、下記構造式z1
【0141】
【化50】
(上記構造式z1中、R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表す。)
で表される構造部位z1又は下記構造式z2
【0142】
【化51】
(上記構造式z2中、R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表し、R
5は水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、R
6は炭素原子1〜4のアルキル基を表し、rは芳香核上の置換基OR
6の数であり1〜3である。)で表される構造部位z2を有するフェノール樹脂(np1);
下記構造式(I−b−1)又は(I−b−2)
【0143】
【化52】
で表される構造を繰り返し単位とするフェノール樹脂であって、前記構造式(I−b−1)又は(I−b−2)中、Yが水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基であり、かつ、Zが、水素原子、前記構造部位z1、前記構造部位z2からなる群から選択され、かつ、該新規フェノール樹脂中、Zの少なくとも一つは前記構造式z1〜z2で表される部分構造から選択される構造部位を有することを特徴とするフェノール樹脂(np2);
また、ハイドロキノン又はカテコールの芳香核に前記前記構造部位z1又は前記構造部位z2を有する化合物(np3)が挙げられる。
【0144】
次に、前記リン原子含有物質(II)は、具体的には、フェノール化合物と、前記リン原子含有化合物(β)とホルムアルデヒドとを反応させて得られる前記結節基x2を有するフェノール樹脂、或いは、
下記構造式hb
【0145】
【化53】
で表されるヒドロキシベンズアルデヒドとを反応させて下記構造式hb’
【0146】
【化54】
で表されるモノフェノール化合物を得、これを更に前記フェノール化合物と反応させて得られる2官能フェノール化合物が挙げられる。ここで、前記フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、t−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ビニルフェノール、イソプロペニルフェノール、アリルフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、クロルフェノール、ブロムフェノール等の1価フェノールが挙げられる。
【0147】
本発明で使用するリン原子含有オリゴマー(B)の難燃性樹脂組成物中の含有割合は、本発明の効果を損ねない限り特に限定されるものではないが、樹脂組成物の流動性、押出安定性や、成形時の成形加工性、さらには得られた成形品の外観性、衝撃強度等の機械特性および難燃性に優れる点から、前記ポリカーボネート樹脂(A1)及び前記ゴム強化スチレン系樹脂(A2)の合計100質量部に対し、3〜20質量部の範囲であることが好ましく、さらに、難燃性に優れる点から、8〜20質量部の範囲であることがより好ましい。また、さらに成形品の外観性に優れる観点からは8〜15質量部の範囲であることが最も好ましい。
【0148】
・難燃助剤(C)
本発明の難燃性樹脂組成物は、難燃性や熱安定性を向上させるため、必要に応じて種々の難燃助剤(例えば、他の難燃剤、酸化防止剤、安定剤、ドリッピング防止剤など)を含んでいてもよい。
【0149】
(C1 他の難燃剤)
なお、本発明の難燃性樹脂組成物は、さらに難燃性を付与するため、他の難燃剤、例えば、リン含有化合物、窒素含有難燃剤、硫黄含有難燃剤、ケイ素含有難燃剤、アルコール系難燃剤、無機系難燃剤(金属酸化物、金属水酸化物など)(以下、他の難燃剤ということがある)などを本発明の効果を損ねない範囲で含んでいてもよい。
【0150】
(C1−1)リン含有化合物
リン含有化合物リン含有化合物としては、有機リン化合物(モノマー型、ダイマー型及びトリマー型のオリゴマー型有機リン化合物、ポリマー型有機リン化合物など)、無機リン化合物などが挙げられる。
【0151】
(C1−1−1)有機リン化合物
前記有機リン化合物のうち、オリゴマー型有機リン化合物には、リン酸エステル、リン酸エステルアミド、ホスホニトリル化合物、有機ホスホン酸化合物(エステル、金属塩など)、有機ホスフィン酸化合物(エステル、金属塩など)、ポリマー型有機リン化合物、ホスフィンオキシドなどが含まれる。
【0152】
(C1−1−1−1)リン酸エステル
リン酸エステルとしては、脂肪族リン酸エステル[リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリイソプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリイソブチル、リン酸ペンタエリスリトール(例えば、GreatLakes Chemical社のNH−1197、特開2001−106889号公報に記載のビシクロリン酸エステルなど)などのリン酸トリC
1−10アルキルエステル;前記リン酸トリエステルに対応するリン酸ジC
1−10アルキルエステル及びリン酸モノC
1−10アルキルエステルなど]、芳香族リン酸エステル[リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシリル、リン酸ジフェニルクレジル、リン酸トリ(イソプロピルフェニル)、リン酸ジフェニルエチルクレジルなどのリン酸トリC
6−20アリールエステルなど]、脂肪族−芳香族リン酸エステル[リン酸メチルジフェニル、リン酸フェニルジエチル、スピロ環状芳香族リン酸エステル(ジフェニルペンタエリスリトールジホスフェート、ジクレジルペンタエリスリトールジホスフェート、ジキシリルペンタエリスリトールジホスフェート等)など]などが挙げられる。
【0153】
(C1−1−1−2)リン酸エステルアミド
リン酸エステルアミドとしては、リン酸エステル及びリン酸アミドの結合様式を含み、特開2002−226547号公報、特開2001−354684号公報、特開2001−139823号公報、特開2000−327834号公報、特開2000−154277号公報、特開平10−175985号公報、特開平8−59888号公報、特開昭63−235363号公報、特開昭54−19919号公報に記載のリン酸エステルアミドなどが使用できる。
【0154】
リン酸エステルアミドは、商品名「リン酸エステルアミド系難燃剤SPシリーズ(例えば、SP−601、SP−670、SP−703など)」(四国化成工業株式会社製)として入手できる。
【0155】
(C1−1−1−3)ホスホニトリル化合物
ホスホニトリル化合物としては、直鎖状及び環状のフェノキシホスファゼンなどが使用できる。
【0156】
(C1−1−1−4)有機ホスホン酸化合物
有機ホスホン酸(亜リン酸)化合物としては、例えば、芳香族亜リン酸エステル(アリールがフェニル、クレジル、キシリルなどである亜リン酸トリC
6−20アリールエステルなど)、脂肪族亜リン酸エステル(アルキルが前記アルキルなどである亜リン酸トリC
1−10アルキルエステル;前記亜リン酸トリアルキルエステルに対応する亜リン酸ジ又はモノC
1−10アルキルエステルなど)、有機亜リン酸エステル[例えば、アルキルが前記例示のアルキルであるC
1−6アルキルホスホン酸ジC
1−6アルキル(ペンタエリスリトールビス(メチルホスホネート)などのスピロ環状アルキルホスホン酸エステルなど)、アルキルが前記例示のアルキルであり、アリールがフェニル、クレジル、キシリルなどであるC
1−6アルキルホスホン酸ジC
6−10アリール及びC
1−6アルキルホスホン酸C
1−6アルキルC
6−10アリールなどのアルキルホスホン酸ジエステル;前記アルキルホスホン酸ジエステルに対応するC
6−10アリール−ホスホン酸ジエステル(ペンタエリスリトールジフェニルホスホネートなどのスピロ環状C
6−10アリールホスホン酸エステルなど);C
6−10アリールホスホン酸モノエステル(例えば、10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドなど);ホスホノカルボン酸エステル(メトキシカルボニルメチルホスホン酸ジメチルなどの前記アルキルホスホン酸ジエステルに対応するC
1−4アルコキシカルボニルオキシC
1−4アルキルホスホン酸ジエステル)などのホスホノカルボン酸トリエステル]などの各種ホスホン酸エステルが含まれる。また、アルキル又はアリール基で置換されていてもよい亜リン酸、亜リン酸モノエステル、又はホスホノカルボン酸の金属塩(Ca、Mg、Zn、Ba、Al塩など)なども含まれる。
【0157】
(C1−1−1−5)有機ホスフィン酸化合物
有機ホスフィン酸化合物には、アルキル基(C
1−4アルキル基など)又はアリール基(C
6−10アリール基など)が置換(一置換又は二置換)していてもよいホスフィン酸エステル(ホスフィン酸メチルなどのホスフィン酸C
1−6アルキル、ホスフィン酸フェニルなどのホスフィン酸C
6−10アリール、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−C
1−30アルキル又はC
6−20アリール置換−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドなどの環状ホスフィン酸エステルなど)などが含まれる。また、アルキル基又はアリール基が置換していてもよいホスフィン酸(例えば、ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸など)の金属塩(Ca、Mg、Zn、Ba、Al塩など)、ホスフィニコカルボン酸エステル(例えば、3−メチルホスフィニコプロピオン酸エステル、3−フェニルホスフィニコプロピオン酸エステルなど)、及びその単独重合体や共重合体なども含まれる。
【0158】
(C1−1−1−6)ポリマー型有機リン化合物
ポリマー型有機リン化合物としては、ポリマー型リン酸エステル(C)以外のモノマー型有機リン化合物の縮合物、例えば、ポリホスフィニコカルボン酸エステル、ポリホスホン酸アミドも含まれる。
【0159】
(C1−1−1−7)ホスフィンオキシド
ホスフィンオキシドとしては、トリフェニルホスフィンオキシド、トリクレジルホスフィンオキシドなどが挙げられる。
【0160】
(C1−1−2)無機リン化合物
前記無機リン化合物には、例えば、赤リン、(ポリ)リン酸塩などが含まれる。
【0161】
(C1−1−2−1)赤リン
赤リンは、難燃効果が高く、少量であっても樹脂に難燃性を付与できる。また、少量で効果が得られるため、樹脂の特性(例えば、機械的特性や電気的特性)を損なうことなく難燃化できる。赤リンとしては、通常、安定化処理を施した赤リン(安定化赤リン)が好ましく用いられる。特に、赤リンの粉砕を行わず、赤リン表面に水や酸素との反応性が高い破砕面を形成させずに微粒子化する方法で得られた赤リン、さらには、赤リンの表面が、樹脂(例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂)、金属、金属化合物(例えば、金属水酸化物、金属酸化物等)等により単独で又は2種以上組み合わせて被覆された赤リンなどが使用できる。
【0162】
赤リンとしては、通常、安定化赤リンを粉粒状で使用できる。安定化赤リンの粒子径としては、例えば、0.01〜100μm、好ましくは0.1〜70μm、さらに好ましくは0.1〜50μm程度である。
【0163】
(C1−2−2)(ポリ)リン酸の無機塩
(ポリ)リン酸塩としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸等の非縮合又は縮合リン酸の無機塩(アンモニウム、Ca、Mg、Zn、Ba、Al塩)などが挙げられる。
【0164】
(C1−2)窒素含有難燃剤
窒素含有難燃剤窒素含有難燃剤としては、トリアジン類とシアヌール酸又はその誘導体との塩、例えば、メラミンシアヌレートなどのシアヌール酸のメラミン塩;メラミン塩に対応するメレム塩、メラム塩、メロン塩、グアナミン塩(例えば、グアナミンシアヌレート、アセトグアナミンシアヌレート、ベンゾグアナミンシアヌレートなど)などが含まれる。これらの塩は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0165】
(C1−3)硫黄含有難燃剤
硫黄含有難燃剤硫黄含有難燃剤としては、有機スルホン酸(アルカンスルホン酸、パーフルオロスルホン酸、アリールスルホン酸、スルホン化ポリスチレンなど)、スルファミン酸、有機スルファミン酸、有機スルホン酸アミドなどの塩(アンモニウム塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩など)などが挙げられる。
【0166】
(C1−4)ケイ素含有難燃剤
ケイ素含有難燃剤には、(ポリ)オルガノシロキサンが含まれる。(ポリ)オルガノシロキサンとしては、ジアルキルシロキサン(例えば、ジメチルシロキサンなど)、アルキルアリールシロキサン(フェニルメチルシロキサンなど)、ジアリールシロキサン、モノオルガノシロキサンなどの単独重合体(例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサンなど)、又は共重合体などが含まれる。また、(ポリ)オルガノシロキサンとしては、分岐オルガノシロキサン[東芝シリコーン株式会社の商品名「XC99−B5664」、信越化学工業株式会社の商品名「X−40−9243」、「X−40−9244」、「X−40−9805」、特開平10−139964号公報記載の化合物など]、分子末端や主鎖に、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エーテル基などの置換基を有する変性(ポリ)オルガノシロキサン(例えば、変性シリコーンなど)なども使用できる。
【0167】
(C1−5)アルコール系難燃剤
アルコール系難燃剤としては、多価アルコール(ペンタエリスリトールなど)、オリゴマーの多価アルコール(ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールなど)、エステル化された多価アルコール、置換されたアルコール、セルロース類(セルロース、ヘミセルロース、リグノセルロース、ペクトセルロース、アジポセルロースなど)、糖類(単糖類、多糖類など)などが挙げられる。
【0168】
(C1−6)無機系難燃剤
無機系難燃剤のうち、金属酸化物としては、例えば、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化銅、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化マンガン、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどが挙げられる。金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化スズ、水酸化ジルコニウムが挙げられる。金属硫化物としては、例えば、硫化亜鉛、硫化モリブデン、硫化タングステンなどが挙げられる。また、無機系難燃剤には、膨張性黒鉛なども含まれる。
【0169】
これら他の難燃剤は、一種で又は二種以上組み合わせて使用できる。他の難燃剤の含有量は、本発明の効果を損ねない範囲であれば特に制限されないが、用いる場合は、例えば、前記樹脂(A1)および前記樹脂(A2)の合計100質量部に対して、0.01〜50質量部の範囲が好ましく、さらに0.05〜30質量部の範囲がより好ましく、さらに0.1〜20質量部の範囲が最も好ましい。
【0170】
(C2 酸化防止剤又は安定剤)
また、本発明の難燃性樹脂組成物は、長期間安定に耐熱性を維持するために酸化防止剤又は安定剤を本発明の効果を損ねない範囲で含んでいてもよい。酸化防止剤又は安定剤には、例えば、フェノール系(ヒンダードフェノール類など)、アミン系(ヒンダードアミン類など)、リン系、イオウ系、ヒドロキノン系、キノリン系酸化防止剤(又は安定剤)、無機系安定剤、活性水素原子に対して反応性の官能基を有する化合物(反応性安定剤)などが含まれる。
【0171】
(C2−2)フェノール系酸化防止剤
フェノール系酸化防止剤には、ヒンダードフェノール類(ヒンダードフェノール系酸化防止剤)、例えば、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC
2−10アルキレンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−分岐C
3−6アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];例えば、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのジ又はトリオキシC
2−4アルキレンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−分岐C
3−6アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];例えば、グリセリントリス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC
3−8アルキレントリオール−ビス[3−(3,5−ジ−分岐C
3−6アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC
4−8アルキレンテトラオールテトラキス[3−(3,5−ジ−分岐C
3−6アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などが好ましい。
【0172】
(C2−3)アミン系酸化防止剤
アミン系酸化防止剤には、ヒンダードアミン類、例えば、トリ又はテトラC
1−3アルキルピペリジン又はその誘導体(4−位にメトキシ、ベンゾイルオキシ、フェノキシなどが置換していてもよい2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなど)、ビス(トリ、テトラ又はペンタC
1−3アルキルピペリジン)C
2−20アルキレンジカルボン酸エステル[例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)オギザレート、オギザレートに対応するマロネート、アジペート、セバケート、テレフタレートなど;ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート]、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)エタン、フェニルナフチルアミン、N,N’−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−シクロヘキシル−1,4−フェニレンジアミンなどが含まれる。
【0173】
(C2−4)(有機)リン系安定剤又は酸化防止剤
リン系(有機リン系)安定剤又は酸化防止剤には、例えば、トリイソデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジトリデシルホスファイト、トリス(分岐C
3−6アルキルフェニル)ホスファイト[例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)ホスファイトなど]、(分岐C
3−6アルキルフェニル)フェニルホスファイト[例えば、ビス(2−t−ブチルフェニル)フェニルホスファイト、2−t−ブチルフェニルジフェニルホスファイトなど]、トリス(2−シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、ビス(C
1−9アルキルアリール)ペンタエリスリトールジホスファイト[例えば、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなど]、トリフェニルホスフェート系安定剤(例えば、4−フェノキシ−9−α−(4−ヒドロキシフェニル)−p−クメニルオキシ−3,5,8,10−テトラオキサ−4,9−ジホスファピロ[5.5]ウンデカン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェートなど)、ジホスフォナイト系安定剤(例えば、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル)−4,4’−ビフェニレンジホスフォナイトなど)などが含まれる。リン系安定剤は、通常、分岐C
3−6アルキルフェニル基(特に、t−ブチルフェニル基)を有している。本発明の難燃性樹脂組成物は、リン系安定剤又は酸化防止剤を併用することが好ましく、前記樹脂(A1)および前記樹脂(A2)の合計100質量部に対して、リン系酸化防止剤(C2−4)を0.01〜10質量部を配合することで飛躍的に耐光性を高めることができる。これは、リン原子含有オリゴマー(B)が、フェノール性水酸基近傍に嵩高いHCAが反応をした構造をもつことで、自動酸化で生成するパーオキサイドラジカルに水素を供与した際、フェノール性水酸基自体が立体障害により活性の低いフェノキシラジカルになるためと考えられる。
【0174】
(C2−5)ヒドロキノン系酸化防止剤
ヒドロキノン系酸化防止剤には、例えば、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノンなどが含まれ、キノリン系酸化防止剤には、例えば、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどが含まれ、イオウ系酸化防止剤には、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートなどが含まれる。
【0175】
(C2−6)無機系安定剤(無機金属又は鉱物系安定剤)
無機系安定剤(無機金属又は鉱物系安定剤)には、ハイドロタルサイト、ゼオライト及びアルカリ土類金属化合物などが含まれる。
【0176】
(C2−6−1)ハイドロタルサイト
前記ハイドロタルサイトとしては、特開昭60−1241号公報及び特開平9−59475号公報などに記載されているハイドロタルサイト類、例えば、下記式[M
2+1-XM
3+X(OH)
2]
X+[A
N−X/n・mH
2O]
X−(式中、M
2+はMg
2+、Mn
2+、Fe
2+、Co
2+などの二価金属イオンを示し、M
3+はAl
3+、Fe
3+、Cr
3+などの三価金属イオンを示す。A
n−はCO
32−、OH
−、HPO
42−、SO
42−などのn価(特に1価又は2価)のアニオンを示す。xは、0<x<0.5であり、mは、0≦m<1である)で表されるハイドロタルサイト化合物などが使用できる。なお、ハイドロタルサイトは、「DHT−4A」、「DHT−4A−2」、「アルカマイザー」などとして協和化学工業株式会社から入手可能である。
【0177】
(C2−6−2)ゼオライト
前記ゼオライトとしては、特に制限されないが、例えば、特開平7−62142号公報に記載されているゼオライト[最小単位セルがアルカリ及び/又はアルカリ土類金属の結晶性アルミノケイ酸塩であるゼオライト(A型、X型、Y型、L型及びZSM型ゼオライト、モルデン沸石型ゼオライト;チャバザイト、モルデン沸石、ホージャサイトなどの天然ゼオライトなど)など]などが使用できる。なお、A型ゼオライトは、「ゼオラムシリーズ(A−3、A−4、A−5)」、「ゼオスターシリーズ(KA100P、NA−100P、CA−100P)」などとして、また、X型ゼオライトは、「ゼオラムシリーズ(F−9)」、「ゼオスターシリーズ(NX−100P)」などとして、Y型ゼオライトは、「HSZシリーズ(320NAA)」などとして東ソー株式会社、日本化学工業株式会社から入手可能である。
【0178】
(C2−6−3)アルカリ土類金属化合物
前記アルカリ土類金属化合物としては、例えば、酸化物(酸化マグネシウムなど)、水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなど)、炭酸塩[炭酸マグネシウム、(軟質/コロイド/重質)炭酸カルシウムなど]、有機カルボン酸塩(酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウムなど)などが使用できる。
【0179】
これらの無機系安定剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0180】
(C2−7)反応性安定剤
反応性安定剤には、活性水素原子に対して反応性の官能基を有する化合物が含まれる。活性水素原子に対して反応性の官能基を有する化合物としては、環状エーテル基、オキセタン基、酸無水物基、イソシアネート基、オキサゾリン基(環)、オキサジン基(環)、カルボジイミド基等から選択された少なくとも一種の官能基を有する化合物が例示できる。
【0181】
(C2−7−1) 環状エーテル基を有する化合物
環状エーテル基を有する化合物には、エポキシ基やオキセタン基を有する化合物などが含まれる。エポキシ基を有する化合物としては、例えば、ビニルシクロヘキセンジオキシドなどの脂環式化合物、バーサティック酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステル化合物、グリシジルエーテル化合物(ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ビフェノールジグリシジルエーテル、ビスフェノール−Aジグリシジルエーテルなど)、グリシジルアミン化合物、エポキシ基含有ビニル共重合体、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化ジエン系モノマー−スチレン共重合体、トリグリシジルイソシアヌレート、エポキシ変性(ポリ)オルガノシロキサンなどが挙げられる。
【0182】
(C2−7−2) オキセタン基を有する化合物
オキセタン基を有する化合物としては、例えば、イソフタル酸ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエステルやテレフタル酸ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエステルなどのオキセタニルエステル化合物、オキセタニルエーテル化合物{例えば、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテルや3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタンなどのアルキルオキセタニル化合物、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタンなどのアリールオキセタニル化合物、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼンなどのアラルキルオキセタニルエーテル化合物、ビスフェノール−Aジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテルなどのビスフェノール型オキセタン樹脂、モノ乃至ポリ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル化フェノールノボラックやモノ乃至ポリ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル化クレゾールノボラックなどのノボラック型オキセタン樹脂など}、3−エチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチルオキセタンなどのオキセタン変性(ポリ)オルガノシロキサン、及び前記オキセタニル単位を有する誘導体{例えば、[1−エチル(3−オキセタニル)]メチル誘導体}に対応するアルキルオキセタニルメチル誘導体{例えば、[1−メチル(3−オキセタニル)]メチル誘導体}などが挙げられる。
【0183】
(C2−7−3)酸無水物基を有する化合物
酸無水物基を有する化合物としては、例えば、無水マレイン酸基を有するオレフィン系樹脂(例えば、エチレン−無水マレイン酸共重合体、無水マレイン酸変性ポリプロピレン等)などが挙げられる。
【0184】
(C2−7−4)イソシアネート基を有する化合物
イソシアネート基を有する化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、これらのイソシアネートの変性体(例えば、イソホロンジイソシアネートの三量体など)などが挙げられる。
【0185】
(C2−7−5)オキサゾリン基を有する化合物
オキサゾリン基を有する化合物としては、例えば、2,2’−(1,3−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)や2,2’−(1,4−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)などのビスオキサゾリン化合物や、オキサゾリン基を有するビニル系樹脂(例えば、ビニルオキサゾリン変性スチレン系樹脂等)などが挙げられる。
【0186】
(C2−7−6)オキサジン基を有する化合物
オキサジン基を有する化合物としては、例えば、2,2’−ビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)などのビスオキサジン化合物などが挙げられる。
【0187】
(C2−7−7)カルボジイミド基を有する化合物
カルボジイミド基を有する化合物としては、例えば、ポリ(フェニルカルボジイミド)、ポリ(ナフチルカルボジイミド)などのポリアリールカルボジイミド、ポリ(2−メチルジフェニルカルボジイミド)、ポリ(2,6−ジエチルジフェニルカルボジイミド)、ポリ(2,6−ジイソプロピルジフェニルカルボジイミド)、ポリ(2,4,6−トリイソプロピルジフェニルカルボジイミド)、ポリ(2,4,6−トリt−ブチルジフェニルカルボジイミド)などのポリアルキルアリールカルボジイミド、ポリ[4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルフェニル)カルボジイミド]、ポリ[4,4’−メチレンビス(2−エチル−6−メチルフェニル)カルボジイミド]、ポリ[4,4’−メチレンビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド]、ポリ[4,4’−メチレンビス(2−エチル−6−メチルシクロヘキシルフェニル)カルボジイミド]などのポリ[アルキレンビス(アルキル又はシクロアルキルアリール)カルボジイミド]などが挙げられる。
【0188】
これらの反応性安定剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0189】
これらの酸化防止剤及び/又は安定剤は単独で又は二種以上使用できる。酸化防止剤及び/又は安定剤の含有量は、本発明の効果を損ねない範囲であれば特に制限されないが、用いる場合は、例えば、前記樹脂(A1)および前記樹脂(A2)の合計100質量部に対して、0.01〜15質量部の範囲が好ましく、さらに0.05〜10質量部の範囲がより好ましく、さらに0.1〜10質量部の範囲が最も好ましい。
【0190】
これらの酸化防止剤及び安定剤のうち、耐加水分解性の点から、無機系安定剤と反応性安定剤とを組み合わせるのが好ましく、両者の割合(質量比)は、無機系安定剤/反応性安定剤=95/5〜10/90、好ましくは90/10〜30/70、さらに好ましくは80/20〜50/50である。
【0191】
前記樹脂(A1)および前記樹脂(A2)に前記特定の難燃助剤の項で例示したリン酸類(例えば、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などの無機リン酸;ホスホノカルボン酸、含窒素リン酸などの有機リン酸など)を添加すると、熱安定性がさらに向上する。
【0192】
(C3 ドリッピング防止剤)
さらに、本発明の難燃性樹脂組成物は、本発明の効果を損ねない範囲でフッ素系樹脂などのドリッピング防止剤を添加してもよい。ドリッピング防止剤により、燃焼時の火種及び融液の滴下(ドリップ)を抑制できる。フッ素系樹脂には、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテルなどのフッ素含有モノマーの単独又は共重合体;前記フッ素含有モノマーと、エチレン、プロピレン、アクリレートなどの共重合性モノマーとの共重合体が含まれる。このようなフッ素系樹脂(フッ素含有樹脂)としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライドなどの単独重合体;テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体などの共重合体が例示される。これらのフッ素樹脂は、一種で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0193】
前記フッ素系樹脂は、粒子状で使用してもよく、平均粒径は、例えば、10〜5000μm程度、好ましくは100〜1000μm程度、さらに好ましくは100〜700μm程度であってもよい。
【0194】
フッ素系樹脂の含有量は、例えば、前記樹脂(A1)および前記樹脂(A2)の合計100質量部に対して、0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部、さらに好ましくは0.1〜3質量部である。
【0195】
・添加剤(D1)/充填剤(D2)
さらに、本発明の難燃性樹脂組成物は、目的に応じて他の成分として添加剤(D1)や充填剤(D2)を含んでいてもよい。他の添加剤(D1)としては、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、耐候安定剤など安定剤、滑剤、離型剤、着色剤、可塑剤、核剤、衝撃改良剤、摺動剤などが挙げられる。さらに、本発明の難燃性樹脂組成物は、機械的強度、剛性、耐熱性及び電気的性質などをさらに向上させるため、充填剤(D2)により改質されていてもよい。充填剤(D2)には、繊維状充填剤、非繊維状充填剤(板状充填剤、粉粒状充填剤など)が含まれる。これら添加剤(D1)や充填剤(D2)を用いる場合、難燃性樹脂組成物中の添加剤(D1)または充填剤(D2)の割合は、本発明の効果を損ねない範囲であれば特に制限されないが、用いる場合は、例えば、本発明の難燃性樹脂組成物中に1〜60質量%の範囲が好ましく、さらに1〜50質量%の範囲がより好ましく、さらに1〜45質量%の範囲が最も好ましい。
【0196】
(D2−1 繊維状充填剤)
繊維状充填剤としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維、金属繊維、高融点有機質繊維(例えば、脂肪族又は芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリルなどのアクリル樹脂など)などが例示できる。好ましい繊維状充填剤としては、ガラス繊維、カーボン繊維が挙げられる。
【0197】
(D2−2 非繊維状充填剤)
非繊維状充填剤のうち、板状充填剤には、例えば、ガラスフレーク、マイカ、グラファイト、各種金属箔などが例示できる。粉粒状充填剤には、カーボンブラック、炭化ケイ素、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ミルドファイバー(例えば、ミルドガラスファイバーなど)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、ケイ藻土、ウォラストナイトなどのケイ酸塩;酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナなどの金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属の硫酸塩、金属粉末などが含まれる。好ましい非繊維状充填剤としては、粉粒状又は板状充填剤、特に、ガラスビーズ、ミルドファイバー、カオリン、タルク、マイカ、及びガラスフレークが挙げられる。
【0198】
また、特に好ましい充填剤(D2)には、ガラス繊維、例えば、高い強度・剛性を有するガラス繊維(チョップドストランドなど)が含まれる。
【0199】
これらの充填剤(D2)の使用に当たっては、必要ならば、収束剤又は表面処理剤を使用することが望ましい。このような収束剤又は表面処理剤としては、官能性化合物が含まれる。前記官能性化合物としては、例えば、エポキシ系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物、好ましくはエポキシ系化合物、特にビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0200】
充填剤(D2)は、前記収束剤又は表面処理剤により、収束処理又は表面処理されていてもよい。処理の時期については、充填剤の添加と同時に処理してもよく、添加前に予め処理してもよい。また、併用される官能性表面処理剤又は収束剤の使用量は、充填剤に対して5質量%以下、好ましくは0.05〜2質量%程度である。
【0201】
本発明のリン原子含有オリゴマー(B)は、燃焼時に樹脂表面の炭化を促進するためか、樹脂を高度に難燃化できる。また、ポリマー型リン酸エステルや、芳香族樹脂、などと組み合わせて用いることにより、少量であっても本発明の難燃性樹脂組成物に対し、さらに難燃性を付与することができ、ブリードアウトや耐熱性の低下も引き起こすこともないため好ましい。
【0202】
(D3 高分子化合物)
(D3−1 樹脂)
また、本発明の難燃性樹脂組成物は、本発明の効果を損ねない範囲で、前記樹脂(A1)および前記樹脂(A2)の合計100質量部に対して、ポリエステル樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂に代表されるポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂に代表されるポリアリーレンエーテル樹脂を1〜100質量部をさらに配合することが好ましく、更に難燃性と耐熱性を高めたものとすることができる観点からポリアリーレンエーテル樹脂が好ましい樹脂として挙げられる。
本発明に用いることができるポリフェニレンエーテル樹脂としては、下記一般式(p−1)
【0203】
【化55】
(但し、R
11、R
12、R
13、R
14は、それぞれ水素、炭化水素、または置換炭化水素基からなる群から選択されるものであり、互いに同一でも異なっていてもよい。)で示される結合単位からなる単独重合体及び/又は共重合体である。このポリフェニレンエーテル樹脂の具体的な例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体等が好ましく、中でもポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が好ましい。かかるポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、例えば米国特許第3,306,874号明細書記載の方法による第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、例えば、2,6−キシレノールを酸化重合することにより容易に製造でき、そのほかにも米国特許第3,306,875号明細書、米国特許第3,257,357号明細書、米国特許第3,257,358号明細書及び特公昭52−17880号公報、特開昭50−51197号公報に記載された方法で容易に製造できる。本発明にて用いる上記PPEの還元粘度ηSP/C(0.5g/dl、クロロフォルム溶液、30℃測定)は、0.20〜0.70dl/gの範囲にあることが好ましく、0.30〜0.60dl/gの範囲にあることがより好ましい。ポリフェニレンエーテル樹脂の還元粘度に関する上記要件を満たすための手段としては、前記ポリフェニレンエーテル樹脂の製造の際の触媒量の調整などを挙げることができる。
【0204】
(D3−2 シリコーン化合物)
また、本発明の難燃性樹脂組成物は、それ自体で燃焼時の液滴の落下(ドリップ)しにくい組成物であるが、本発明の効果を損ねない範囲で、さらにシリコーン化合物を添加すると、燃焼時の液滴の落下(ドリップ)抑制、燃焼時の延燃抑制、耐衝撃性の向上効果を更にいっそう高めることができるため好ましい。本発明に使用することができるシリコーン化合物とは、シリコーン樹脂および/またはシリコーンオイルをいうものとする。
【0205】
本発明に使用することができるシリコーン樹脂としては、下記一般式(s−1)〜(s−4)
【0206】
【化56】
(ここで、R
21はそれぞれ飽和または不飽和一価炭化水素基、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アリール基、ビニルまたはアリル基から選ばれる基を表す。)で表される単位およびこれらの混合物から選ばれる化学的に結合されたシロキサン単位からなるポリオルガノシロキサンを挙げることができ、さらに、室温(23℃)で約200〜300,000,000センチポイズの粘度のものが好ましいが、上記のシリコーン樹脂である限り、それに限定されるものではない。
【0207】
本発明に使用することができるシリコーンオイルとしては、下記一般式(s−5)
【0208】
【化57】
(ここで、R
22はアルキル基またはフェニル基を表し、iは1以上の整数である。)で表されるものをあげることができる。使用することができるシリコーンオイルは、0.65〜100,000センチトークスの粘度のものが好ましいが、上記のシリコーンオイルである限り、それに限定されるものではない。
【0209】
本発明に使用することができるシリコーン化合物として、シリコーン樹脂および/またはシリコーンオイルを使用することができるが、難燃性、耐衝撃性向上の面からシリコーンオイルが好ましい。
【0210】
上記シリコーン化合物の添加量は前記樹脂(A1)および前記樹脂(A2)の合計100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲であることが好ましく、さらに0.05〜8質量部の範囲であることがより好ましく、更に0.1〜5質量部の範囲であることが最も好ましい。
【0211】
・難燃性樹脂組成物の製造方法
本発明の難燃性樹脂組成物は、前記ポリカーボネート樹脂(A1)と、前記ゴム強化スチレン系樹脂(A2)とリン原子含有オリゴマー(B)と、さらに必要に応じて、本発明の効果を損ねない範囲で、難燃助剤(C)、添加剤(D1)、充填剤(D2)、高分子化合物(D3)とを、例えば、タンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を使用して予め予備混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダー等の混合機を用い、樹脂設定温度を融点以上にして溶融混練することができる。 また各成分を予め予備混合せずに、又は一部の成分のみ予め混合してフィダーを用いて押出機に供給して溶融混練して製造してもよい。更に(C)、(D1)、(D2)、(D3)成分を添加する場合、これらの成分が溶融混練により破壊しやすいなど脆性を有する部材であるときは、(A1)、(A2)ないし(B)成分を上流部分に一括投入し、中流以降で(C)、(D1)、(D2)、(D3)成分を添加し樹脂成分と溶融混練する方法も、得られる樹脂組成物の機械的強度の点から好ましい。溶融混練後の樹脂組成物は、後述する成形加工に供されるが、一旦、保存や流通のためにペレットや粉末の形態とすることもできる。その場合の形態は、本発明の効果を損ねなければ、ペレットや粉末など公知の形態でよく、特に限定されることはないものの取扱い性の観点からペレットであることが好ましい。ペレットは、常法に従って製造することができ、例えば前記溶融混練に使用した装置からストランド状に押出した後、水冷、カッティングし、ペレットとすることが好ましい。
【0212】
・難燃性マスターバッチ及びその製造方法
本発明の難燃性樹脂組成物は、上述の通り前記ポリカーボネート樹脂(A1)、前記ゴム強化スチレン系樹脂(A2)およびリン原子含有オリゴマー(B)を含む難燃性樹脂組成物を直接溶融混練して製造することもできるが、前記ポリカーボネート樹脂(A1)及び/又は前記ゴム強化スチレン系樹脂(A2)並びに高濃度でリン原子含有オリゴマー(B)を含有する難燃性マスターバッチを溶融混練にて製造し、得られた難燃性マスターバッチに、さらに前記ポリカーボネート樹脂(A1)及び/又は前記ゴム強化スチレン系樹脂(A2)等の熱可塑性樹脂(E)を希釈配合し、溶融混練して得ることもできる。以下、詳述する。
【0213】
より具体的には、上記した各(A1)、(A2)および(B)成分を必要に応じてV型ブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサーなどの混合機により予備混合したのち、単軸押出型混練機、オープンロールミキサー、加圧型ニーダー、バンバリーミキサー、二軸押出型混練機等、既知の混合機を用い、樹脂設定温度を融点以上にして溶融混練する。このなかでも二軸押出型混練機は混練性、生産性の点で好ましい。溶融混練後、常法に従ってペレット等に加工することにより、本発明の難燃性マスターバッチが得られる。難燃性マスターバッチ中のリン原子含有オリゴマー(B)の含有割合は、本発明の効果を損ねない範囲であれば特に限定されないが、前記ポリカーボネート樹脂(A1)及び前記ゴム強化スチレン系樹脂(A2)の合計100質量部に対し、前記リン原子含有オリゴマー(B)を3〜20質量部の範囲で含有するよう溶融混練することが好ましく、8〜20質量部の範囲で含有するよう溶融混練することがより好ましい。
【0214】
本発明の難燃性樹脂組成物は、このようにして得られた難燃性マスターバッチに、さらに、希釈樹脂として熱可塑性樹脂(E)を加えて溶融混練して得られる。このようにマスターバッチを経由して難燃性樹脂組成物を得ることで、難燃成分であるリン原子含有オリゴマー(B)を安定的に均一分散でき、さらに高濃度添加することもできるため、成形体に優れた難燃効果を付与することができる。
【0215】
ここで本発明に用いることができる希釈樹脂用の熱可塑性樹脂(E)としては、本発明の効果を損ねない限り特に限定されないが、例えば、前記ポリカーボネート樹脂(A1)及び前記ゴム強化スチレン系樹脂(A2)や高分子化合物(D3)、すなわち、ポリカーボネート樹脂、ゴム強化スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリアリーレンエーテル樹脂、シリコーン化合物などが挙げられ、このうち、ポリカーボネート樹脂、ポリアリーレンエーテル樹脂が好ましいものとして挙げられる。前記ポリカーボネート樹脂(A1)及び前記ゴム強化スチレン系樹脂(A2)を含む難燃性マスターバッチと、熱可塑性樹脂(E)とを溶融混練する際、前記ポリカーボネート樹脂(A1)、前記ゴム強化スチレン系樹脂(A2)と熱可塑性樹脂(E)は、目的に応じて同じ種類の樹脂を用いても、異なる種類の樹脂を用いても良いが、相溶性の点から同じ種類の樹脂を用いることが好ましい。
【0216】
本発明の難燃性マスターバッチから、難燃性樹脂組成物を製造するには、最終的に得られる難燃性樹脂組成物中の前記ポリカーボネート樹脂(A1)及び前記ゴム強化スチレン系樹脂(A2)の合計100質量部に対し、前記リン原子含有オリゴマー(B)を3〜20質量部の範囲となる割合で含有するように、希釈樹脂用の熱可塑性樹脂(E)を調整して加え、溶融混練すれば特に制限はない。例えば、熱可塑性樹脂(E)が前記ポリカーボネート樹脂(A1)及び/又は前記ゴム強化スチレン系樹脂(A2)の場合には、難燃性マスターバッチ中の前記ポリカーボネート樹脂(A1)及び/又は前記ゴム強化スチレン系樹脂(A2)と希釈樹脂用の熱可塑性樹脂(E)の合計100質量部に対し、前記リン原子含有オリゴマー(B)が3〜20質量部となるよう、熱可塑性樹脂(E)を加えることが好ましい。熱可塑性樹脂(E)が前記ポリカーボネート樹脂(A1)及び/又は前記ゴム強化スチレン系樹脂(A2)以外の樹脂の場合には、難燃性マスターバッチ中の前記ポリカーボネート樹脂(A1)及び/又は前記ゴム強化スチレン系樹脂(A2)100質量部に対して、希釈樹脂用の熱可塑性樹脂(E)が1〜100質量部および前記リン原子含有オリゴマー(B)が3〜20質量部となるよう、熱可塑性樹脂(E)を加えることが好ましい。溶融混練の方法は、特に制限はなく、例えば、当該マスターバッチの製造方法と同様の方法を採用することができる。
【0217】
なお、前記難燃性マスターバッチを製造する際に上記の前記ポリカーボネート樹脂(A1)、前記ゴム強化スチレン系樹脂(A2)及びリン原子含有オリゴマー(B)と伴に、または、前記難燃性マスターバッチに希釈する際に熱可塑性樹脂(E)と伴に、上記した難燃助剤(C)、添加剤(D1)、充填剤(D2)、高分子化合物(D3)を本発明の効果を損ねない範囲で配合することもできる。
【0218】
・成形体/用途
上記のようにして得られた本発明の難燃性樹脂組成物は、成形機内で溶融混練して押出成形、射出成形、カレンダー成形、中空成形、真空成形、圧空成形等の公知の各種成形加工法にて、難燃性樹脂成形体を製造することができる。
【0219】
本発明の難燃性樹脂組成物を成形加工して得られる難燃性樹脂成形体の具体例としては、高難燃性が求められる種々の用途で使用することが可能であり、特に、フィルム、シート、繊維などの用途に好適に用いることができる。具体的には、例えば、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、パソコン、プリンター、ディスプレイ、CRTディスプレイ、ファックス、コピー、ワープロ、ノートパソコン、携帯電話、PHS、DVDドライブ、PDドライブ、フレキシブルディスクドライブなどの記憶装置のハウジング、シャーシ、リレー、スイッチ、ケース部材、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子機器部品、自動車部品、機械部品、その他各種用途に有用である。
【0220】
本発明の難燃性樹脂組成物をシート状ないしフィルム状に成形して得られるシートないしフィルムの厚みは、その用途に応じて異なり、任意の厚さとすることができるが、通常5〜200μm、好ましくは10〜150μm、より好ましくは20〜100μm、特に好ましくは30〜70μmである。
【0221】
本発明の難燃性樹脂組成物を成形してなる成形体、特にシート状ないしフィルム状又は繊維状に成形してなるフィルムないしシートまたは繊維は、機械強度や透明性等のゴム強化スチレン系樹脂及びポリカーボネート樹脂含有樹脂組成物が本来有する諸物性を維持しつつ、難燃成分であるリン原子含有オリゴマー(B)のブリードアウトを抑制し、優れた難燃性と、耐熱性を発揮することができる。
【0222】
なお、本発明におけるシート又はフィルムの用語は特にシートとフィルムを厳密に区別する為のものではなく、いずれをも含むことを明確にするために使用するものであり、本発明の特徴を有する限り、シート、フィルムは最大限広く解釈しうるもので、シートの用語は本発明の特徴を有する限り、プレート又は板と言われているものも含むものとする。なお、シートとフィルムを区別する必要がある場合には、シートは通常その厚さが0.5〜5mm程度のものの場合に使用し、フィルムは通常その厚さが5〜500μm程度のものの場合に使用される。
【実施例】
【0223】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0224】
<ポリカーボネート樹脂(A1)/ABS樹脂(A2)>
A−1:ABS樹脂30質量%を含有するポリカーボネート樹脂(帝人株式会社製「マルチロン T−3750」)
A−2:ポリカーボネート樹脂(帝人株式会社製「パンライト L1225WP」)
<リン原子含有オリゴマー>
B−1:リン原子含有オリゴマーを以下の方法で製造した。
温度計、冷却管、分留管、窒素ガス導入管、撹拌器を取り付けたフラスコに、フェノールノボラック樹脂192.4g(1.85モル)とp−アニスアルデヒド68.0g(0.50モル)と9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(以下、「HCA」と略記する。)108.0g(0.50モル)を仕込み、180℃まで昇温し180℃で8時間反応させた。次いで、水を加熱減圧下に除去し、下記構造単位A及び構造単位B
【0225】
【化58】
を繰り返し単位とするリン原子含有オリゴマー(B−1)355gを得た。得られたリン原子含有オリゴマーの軟化点は125℃(B&R法)、溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:180℃)は13dPa・s、水酸基当量は190g/eq.リン含有量4.2質量%であった。
【0226】
<リン系難燃剤>
・B−2:縮合リン酸エステル(大八化学株式会社製「PX−202」)
・B−3:縮合ホスホン酸エステル(丸菱油化工業株式会社製「ノンネン73」)
・B−4:ホスフィン酸アルミニウム塩(クラリアント株式会社製「EXOLIT OP−930」)
・B−5:ポリリン酸メラミン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製「MELAPUR 200/70」)
【0227】
実施例1〜5、比較例1〜8 難燃性マスターバッチの製造
表1および表2に示した組成比となるように、原料をヘンシェルミキサーで予備混合後、目開き25μmの焼結フィルターを装着した30mmφのベント付二軸押出型混練機(設定温度250℃)内で溶融混練し、その後、ストランド状物を得た後、カッティングしてペレット化しマスターバッチを製造した。その際、1時間連続運転した時の樹脂圧力上昇値を計測した。その結果を表1に示す。また、上記二軸押出機を用いたマスターバッチの製造に際して、1時間連続運転した時の押出安定性を下記基準にて評価した。
【0228】
(押出安定性)
○:混練吐出物の状態は安定しており問題なく押出できた。
△:混練吐出物の粘度低下および脈動現象および発泡が僅かに生じたが、ストランドを引くことができ、サンプリング可能であった。
×:混練吐出物の粘度低下および脈動現象および発泡が顕著であり、ストランドを引くことができず、サンプリング不可能であった。
【0229】
(固有粘度)
サンプリングが可能であったマスターバッチ(MB1−1)〜(MB6−1)ないしそれを用いて得られた樹脂組成物について、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(質量比 1/1)の混合溶媒を用い、濃度1.00×10
−2kg/Lとなるように、110℃で溶解させた後、30℃まで冷却し、全自動溶液粘度計(センテック社製「2CH型DJ504」)を用いて固有粘度を測定した。測定は、濃度1.00×10
−2kg/Lの試料溶液及び溶媒のみの落下秒数を測定し、下式により算出した。
IV=[(1+4KH・ηsp)0.5−1]/(200KH・C)
(ここで、 ηsp=η/η0−1 であり、ηは試料溶液の落下秒数、η0は溶媒の落下秒数、Cはポリマー溶液濃度(kg/L)、KHはハギンズの定数である。KHは0.33を採用した。)
【0230】
【表1】
【0231】
【表2】
【0232】
(実施例6〜19、比較例9〜16)
サンプリングが可能であったポリカーボネート樹脂組成物ペレット(マスターバッチ)(MB1−1)〜(MB6−1)を用い、表3〜表6に示した組成比(難燃剤濃度)となるように、希釈用ポリマー(E)のペレットを用いてドライブレンドした後、射出成形機にて厚み2mmのバー状試験片、および厚み3mmのバー状試験片を作成した。
【0233】
なお、射出成形機による成形は以下の条件で行った。
成形機:ファナック社製ロボショットS−2000i
成形条件:シリンダ温度260℃、金型温度70℃、射出速度50mm/sec、スクリュウ回転数80rpm、背圧3MPa、保圧力50MPa、保圧時間5sec、冷却時間10sec
【0234】
金型1(厚さ2mmバー状試験片):幅13mm×長さ135mm×厚さ2mmのバー状試験片用金型
金型2(厚さ3mmバー状試験片):幅13mm×長さ135mm×厚さ3mmのバー状試験片用金型
【0235】
<希釈用ポリマー(E)>
E−1:ABS樹脂30質量%を含有するポリカーボネート樹脂(帝人株式会社製「マルチロン T−3750」)
E−2:ポリカーボネート樹脂(帝人株式会社製「パンライト L1225WP」)
【0236】
(難燃性(垂直燃焼性)の評価 )
得られた各難燃性樹脂組成物を射出成形機により設定温度(260℃)にて成形し厚み2mmのバー状試験片を作成した。得られたバー状試験片を、UL94垂直燃焼試験規格に準拠した方法にて評価した。
【0237】
(難燃性(限界酸素指数)の評価 )
得られた各難燃性樹脂組成物を射出成形機により設定温度(260℃)にて成形し厚み3mmのバー状試験片を作成した。得られたバー状試験片を長手方向に半分に切削した後、JIS−K7201に準拠した方法にて評価した。
【0238】
(機械的物性(曲げ強さ)の評価)
得られた各難燃性樹脂組成物を射出成形機により設定温度(260℃)にて成形し厚み3mmのバー状試験片を作成した。得られたバー状試験片を、ASTM−D790に準拠した方法にて評価した。
【0239】
(機械的物性(Izod衝撃強さ)の評価)
得られた各難燃性樹脂組成物を射出成形機により設定温度(260℃)にて成形し厚み3mmのバー状試験片を作成した。得られたバー状試験片を短手方向に半分に切削した後、ノッチを付け、ASTM−D256に準拠した方法にて評価した。
【0240】
(成形加工性の評価)
厚み3mmのバー状試験片10点を射出成形する際の、射出成形機における樹脂計量時のドローリングと、得られたバー状試験片を観察し、以下の基準にそって評価付けを行った。
○・・・樹脂計量時にノズルから溶融した樹脂が漏れず、ドローリングが発生しなかった。かつ、バー状試験片のスプル部に糸引きが見られず完全にスプルブレイクし、連続成形可能であった。
△・・・樹脂計量時にノズルから溶融した樹脂が漏れず、ドローリングが発生しなかった。かつ、バー状試験片のスプル部に糸引きが見られスプルブレイクせず、連続性成形不可能であった。
×・・・樹脂計量時にノズルから溶融した樹脂が漏れ、ドローリングが発生した。かつ、バー状試験片のスプル部に糸引きが見られスプルブレイクせず、連続性成形不可能であった。
【0241】
【表3】
【0242】
【表4】
【0243】
【表5】
【0244】
【表6】