特許第6871067号(P6871067)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6871067-スパッタリング装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871067
(24)【登録日】2021年4月19日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】スパッタリング装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20210426BHJP
【FI】
   C23C14/34 M
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-108367(P2017-108367)
(22)【出願日】2017年5月31日
(65)【公開番号】特開2018-204060(P2018-204060A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】藤井 佳詞
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
【審査官】 宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−018885(JP,A)
【文献】 特開平04−350929(JP,A)
【文献】 特開平01−208458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッタリング用のターゲットが設置される筒状の真空チャンバと、真空チャンバ内でターゲットに対向する位置に設けられて成膜対象物の設置を可能とするステージと、真空チャンバの内壁面から隙間を存して設置されてターゲットとステージとの間の成膜空間を囲繞するシールド板とを備えるスパッタリング装置であって、
真空チャンバに、ターゲットとステージとを結ぶ延長線に対して直交する方向に局所的に膨出させた排気空間部を設け、排気空間部に開設した排気口を介して真空ポンプにより成膜空間を含む真空チャンバ内が真空排気されるものにおいて、
排気空間部の排気ガス流入口に対峙するシールド板の外表面部分を隙間を存在して覆う覆板を設け
前記覆板は、排気空間部を区画する底壁面に立設した固定板部と、昇降機構により固定板部に対して上下方向に進退自在な可動板部とで構成され、固定板部と可動板部とが真空チャンバ1の内壁面に同等の曲率を有するように湾曲されることを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項2】
スパッタリング用のターゲットが設置される筒状の真空チャンバと、真空チャンバ内でターゲットに対向する位置に設けられて成膜対象物の設置を可能とするステージと、真空チャンバの内壁面から隙間を存して設置されてターゲットとステージとの間の成膜空間を囲繞するシールド板とを備えるスパッタリング装置であって、
真空チャンバに、ターゲットとステージとを結ぶ延長線に対して直交する方向に局所的に膨出させた排気空間部を設け、排気空間部に開設した排気口を介して真空ポンプにより成膜空間を含む真空チャンバ内が真空排気されるものにおいて、
排気空間部の排気ガス流入口に対峙するシールド板の外表面部分を隙間を存在して覆う第1の覆板を設け、
第1の覆板は、真空チャンバの内壁面と同等の曲率を有するように湾曲され、真空チャンバの内壁面を通る仮想円周上に略一致するように配置されることを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項3】
前記排気空間部を区画する底壁面に立設され、前記排気空間部の排気ガス流入口に対峙するシールド板の外表面部分を隙間を存在して覆う第2の覆板を更に備え、前記第1の覆板は、昇降機構により第2の覆板に対して上下方向に進退自在構成されることを特徴とする請求項記載のスパッタリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリング装置に関し、より詳しくは、膜厚分布の向上を図ることができる構造を持つものに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のスパッタリング装置は例えば特許文献1で知られている。このものでは、上部にスパッタリング用ターゲットを備える筒状の真空チャンバを備え、真空チャンバ内の下部には、ターゲットに対向させて、成膜対象物としてのシリコンウエハやガラス基板等(以下、単に「基板」という)が設置されるステージが設けられている。また、ターゲットのスパッタリングによる成膜時、真空チャンバの内壁面への着膜を防止するために、真空チャンバの内壁面に隙間を存して近接配置されてターゲットとステージとの間の成膜空間を囲繞するシールド板が真空チャンバ内に設けられている。
【0003】
ここで、ターゲットの上側には、例えばターゲットのスパッタ面側に漏洩磁場を作用させる磁石ユニット等の各種の部品が設けられる。一方、ステージの下側には、基板を効率よく加熱冷却するための加熱冷却機構や静電チャック機構等の各種の部品が設けられる。このため、成膜空間を含む真空チャンバ内を真空排気するために、真空ポンプからの排気管が接続される排気口やこれに接続される排気管をターゲットとステージとを結ぶ延長線上に設けることは事実上できない。そこで、この種のスパッタリング装置においては、真空チャンバの下部に、延長線に対して直交する方向に局所的に膨出させた排気空間部を設け、排気空間部に開設した排気口を介して真空ポンプにより成膜空間を含む真空チャンバ内を真空排気するように真空チャンバを設計することが一般に行われている。この場合、排気空間部の排気ガス流入口に対峙するシールド板の外表部分は、真空チャンバの内壁面が近接しない構造となる。
【0004】
ところで、例えば、不揮発性メモリやフラッシュメモリ等の半導体デバイスの製造工程においては、上記スパッタリング装置を用いて基板表面に所定の薄膜を成膜する際に、基板面内における膜厚分布の均一性が数%(例えば±5%)以内の範囲に収まることが近年要求されるようなっている。このような要求を満たすための手法の一つとして、スパッタガスの成膜空間へのガス導入経路を適宜設計して、ターゲットのスパッタリングによる成膜中、シールド板で画成される成膜空間内の圧力分布をその全体に亘って同等にすることが考えられている。然し、成膜空間内の圧力分布をその全体に亘って同等にしたとしても、排気空間部の方位に位置する基板の部分(特に基板の外周部分)において膜厚がその他の方位に位置する部分と比較して薄くなり易い傾向があることが判明した。このように局所的に膜厚が薄くなり易い部分があると、より一層均一性のとれた基板面内の膜厚分布を得ることにとって障害となる。
【0005】
そこで、本発明の発明者らは、鋭意研究を重ね、次のことを知見するのに至った。即ち、上記スパッタリング装置では、成膜中、成膜空間に導入されたスパッタガスの一部は排気ガスとなって、シールド板の継ぎ目や、シールド板とターゲットまたはステージとの隙間から、シールド板の外表面と真空チャンバの内壁面との間の隙間を通って排気ガス流入口から排気空間部に流れ、排気口を介して真空ポンプへと真空排気される。このとき、排気空間部の排気ガス流入口近傍に達した排気ガスの流速がシールド板の外表面と真空チャンバの内壁面との間の隙間を流れるときより極度に低下する。言い換えると、成膜空間を画成するシールド板の周囲に、局所的に排気ガスの流速が遅い領域が存在する。そして、このように排気ガスの流速が遅い領域がシールド板の周囲に存在すると、当該領域の方位に位置する基板の部分において膜厚が薄くなり易くなると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−148703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであり、より一層均一性のとれた基板面内の膜厚分布で所定の薄膜を成膜することができるスパッタリング装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のスパッタリング装置は、スパッタリング用のターゲットが設置される筒状の真空チャンバと、真空チャンバ内でターゲットに対向する位置に設けられて成膜対象物の設置を可能とするステージと、真空チャンバの内壁面から隙間を存して設置されてターゲットとステージとの間の成膜空間を囲繞するシールド板とを備え、真空チャンバに、ターゲットとステージとを結ぶ延長線に対して直交する方向に局所的に膨出させた排気空間部を設け、排気空間部に開設した排気口を介して真空ポンプにより成膜空間を含む真空チャンバ内が真空排気され、排気空間部の排気ガス流入口に対峙するシールド板の外表面部分を隙間を存在して覆う覆板を設け、前記覆板は、排気空間部を区画する底壁面に立設した固定板部と、昇降機構により固定板部に対して上下方向に進退自在な可動板部とで構成され、固定板部と可動板部とが真空チャンバ1の内壁面に同等の曲率を有するように湾曲されることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、成膜空間を画成するシールド板の周囲にて排気ガスの流速が遅い領域が可及的に小さくなること、言い換えると、シールド板の周囲における排気ガスの流速が略均等になることで、より一層均一性のとれた基板面内の膜厚分布(例えば、±3%)を持つ薄膜を成膜することができる。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明のスパッタリング装置は、スパッタリング用のターゲットが設置される筒状の真空チャンバと、真空チャンバ内でターゲットに対向する位置に設けられて成膜対象物の設置を可能とするステージと、真空チャンバの内壁面から隙間を存して設置されてターゲットとステージとの間の成膜空間を囲繞するシールド板とを備え、真空チャンバに、ターゲットとステージとを結ぶ延長線に対して直交する方向に局所的に膨出させた排気空間部を設け、排気空間部に開設した排気口を介して真空ポンプにより成膜空間を含む真空チャンバ内が真空排気され、排気空間部の排気ガス流入口に対峙するシールド板の外表面部分を隙間を存在して覆う第1の覆板を設け、第1の覆板は、真空チャンバの内壁面と同等の曲率を有するように湾曲され、真空チャンバの内壁面を通る仮想円周上に略一致するように配置されることを特徴とする。本発明においては、前記排気空間部を区画する底壁面に立設され、前記排気空間部の排気ガス流入口に対峙するシールド板の外表面部分を隙間を存在して覆う第2の覆板を更に備え、前記第1の覆板は、昇降機構により第2の覆板に対して上下方向に進退自在構成されることが好ましい。これによれば、スパッタリング装置毎に、シールド板の周囲における排気ガスの流速が略均等になるように調整でき、有利である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態のスパッタリング装置を模式的に示す断面図。
図2図1のII−II線に沿う断面図。
図3図2に対応する従来例のスパッタリング装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、成膜対象物をシリコンウエハ(以下、単に「基板W」という)とし、真空チャンバの上部にスパッタリング用ターゲット、その下部に基板Wが設置されるステージが設けられたものを例に本発明のスパッタリング装置の実施形態を説明する。
【0013】
図1及び図2を参照して、SMは、本実施形態のマグネトロン方式のスパッタリング装置である。スパッタリング装置SMは真空チャンバ1を備え、真空チャンバ1の上部にカソードユニットCuが着脱自在に取付けられている。カソードユニットCuは、スパッタリング用ターゲット2と、このターゲット2の上方に配置された磁石ユニット3とで構成されている。
【0014】
ターゲット2は、基板Wに成膜しようとする薄膜に応じてその組成が適宜選択され、基板Wの輪郭に応じて平面視円形に形成されたものである。ターゲット2は、バッキングプレート21に装着した状態で、そのスパッタ面22を下方にして、真空チャンバ1の上壁に設けた絶縁体Ibを介して真空チャンバ1の上部に取り付けられている。また、ターゲット2には、公知の構造を持つスパッタ電源Eが接続され、スパッタリングによる成膜時、負の電位を持った直流電力や、アースとの間で所定周波数(例えば、13.56MHz)の高周波電力が投入できるようにしている。ターゲット2の上方に配置される磁石ユニット3は、ターゲット2のスパッタ面22の下方空間に磁場を発生させ、スパッタ時にスパッタ面22の下方で電離した電子等を捕捉してターゲット2から飛散したスパッタ粒子を効率よくイオン化する閉鎖磁場若しくはカスプ磁場構造を有するものである。磁石ユニット3自体としては公知のものが利用できるため、これ以上の説明は省略する。
【0015】
真空チャンバ1の底部中央には、ターゲット2に対向させてステージ4が他の絶縁体Ibを介して配置されている。ステージ4は、特に図示して説明しないが、例えば筒状の輪郭を持つ金属製の基台と、この基台の上面に接着されるチャックプレートとで構成され、成膜中、基板Wを吸着保持できるようにしている。なお、静電チャックの構造については、単極型や双極型等の公知のものが利用できるため、これ以上の詳細な説明は省略する。また、基台には、冷媒循環用の通路やヒータを内蔵し、成膜中、基板Wを所定温度に制御することができるようにしてもよい。
【0016】
また、真空チャンバ1内には、その内壁面1aから隙間を存して設置されてターゲット2とステージ4との間の成膜空間1bを囲繞するシールド板5を備える。シールド板5は、ターゲット2の周囲を囲繞し、かつ、真空チャンバ1の下方にのびる略筒状の上板部51と、ステージ4の周囲を囲繞し、かつ、真空チャンバ1の上方にのびる略筒状の下板部52とを有し、上板部51の下端と下板部52の上端とを周方向で隙間を存してオーバラップさせている。なお、上板部51及び下板部52は一体に形成されていてもよく、また、周方向に複数部分に分割して組み合わせるようにしてもよい。
【0017】
更に、真空チャンバ1には所定のガスを導入するガス導入手段6が設けられている。ガスとしては、成膜空間1bにプラズマを形成する際に導入されるアルゴンガス等の希ガスだけでなく、成膜に応じて適宜導入される酸素ガスや窒素ガスなどの反応ガスも含まれる。ガス導入手段6は、上板部51の外周に設けられたガスリング61と、ガスリング61に接続された、真空チャンバ1の側壁を貫通するガス管62とを有し、ガス管62がマスフローコントローラ63を介して図示省略のガス源に連通している。この場合、詳細な図示を省略したが、ガスリング61にはガス拡散部が付設され、ガス管62からのスパッタガスがガス拡散部で拡散されて、ガスリング61に周方向に等間隔で穿設されたガス噴射口61aから同等流量でスパッタガスが噴射されるようにしている。そして、ガス噴射口61aから噴射されたスパッタガスは、上板部51に形成したガス孔(図示せず)から成膜空間1b内に所定の流量で導入され、成膜中、成膜空間1b内の圧力分布をその全体に亘って同等にできるようにしている。なお、成膜空間1b内の圧力分布をその全体に亘って同等にするための手法は、これに限定されるものではなく、他の公知の手法を適宜採用できる。
【0018】
また、真空チャンバ1には、ターゲット2とステージ4とを結ぶ中心線(延長線)Clに対して直交する方向に局所的に膨出させた排気空間部11が設けられ、この排気空間部11を区画する底壁面には、排気口11aが開設されている。排気口11aには、排気管を介してクライオポンプやターボ分子ポンプ等の真空ポンプVpが接続されている。成膜中、成膜空間1bに導入されたスパッタガスの一部は排気ガスとなって、シールド板5の継ぎ目や、シールド板5とターゲット2またはステージ4との隙間から、シールド板5の外表面と真空チャンバ1の内壁面1aとの間の隙間を通って排気ガス流入口11bから排気空間部11に流れ、排気口11aを介して真空ポンプVpへと真空排気される。このとき、成膜空間1bと排気空間部11との間には、数Pa程度の圧力差が生じるようになる。
【0019】
基板Wに対して所定の薄膜を成膜する場合、図外の真空搬送ロボットによりステージ4上へと基板Wを搬入し、ステージ4のチャックプレート上面に基板Wを設置する(この場合、基板Wの上面が成膜面となる)。そして、真空搬送ロボットを退避させると共に、静電チャック用の電極に対してチャック電源から所定電圧を印加して、チャックプレート上面に基板Wを静電吸着する。次に、真空チャンバ1内が所定圧力(例えば、1×10−5Pa)まで真空引きされると、ガス導入手段6を介してスパッタガスとしてのアルゴンガスを一定の流量で導入し、これに併せてターゲット2にスパッタ電源Eから所定電力を投入する。これにより、成膜空間1b内にプラズマが形成され、プラズマ中のアルゴンガスのイオンでターゲットがスパッタリングされ、ターゲット2からのスパッタ粒子が基板Wの上面に付着、堆積して所定の薄膜が成膜される。このようにターゲット2をスパッタリングして成膜する場合、成膜空間1b内の圧力分布をその全体に亘って同等にしたとしても、排気空間部11の方位に位置する基板Wの部分(特に、基板Wの径方向外端側)において膜厚がその他の方位に位置する部分と比較して薄くなり易い傾向があることが判明した。
【0020】
ここで、図3に示すように、従来例のスパッタリング装置では、排気空間部11の排気ガス流入口11bに対峙するシールド板5の下板部52の外表面部分52aが真空チャンバ1の内壁面1aと近接しない構造となる。このため、シールド板5の外表面と真空チャンバ1の内壁面1aとの間の隙間Gpを通って排気ガス流入口11bから排気空間部11へと排気ガスが流れるときに、排気ガス流入口11b近傍に達した排気ガスの流速が、上記隙間Gpを流れるときより極度に低下する(図3中、矢印は排気ガスの流速を示し、それが短くなればなる程、流速が遅いことを示す)。言い換えると、成膜空間1bを画成するシールド板5の周囲に、局所的に排気ガスの流速が遅い領域が存在する。そして、このように排気ガスの流速が遅い領域がシールド板5の周囲に存在すると、当該領域の方位に位置する基板Wの部分において膜厚が薄くなり易くなると考えられる。
【0021】
そこで、本実施形態では、図1及び図2に示すように、排気空間部11の排気ガス流入口11bに対峙するシールド板5の下板部52の外表面部分52aを隙間を存在して覆う覆板7を設けることとした。この場合、覆板7は、排気空間部11を区画する底壁面に立設した固定板部71と、モータ等の昇降機構72aにより固定板部71に対して上下方向に進退自在な可動板部72とで構成される。固定板部71と、可動板部72とは、真空チャンバ1の内壁面1aに略一致する曲率を有するように湾曲され、可動板部72が、真空チャンバ1の内壁面1aを通る仮想円周72b上に略位置するように配置されている。他方、可動板部72の高さは、昇降機構72aにより固定板部71に対して可動板部72を上動位置に移動したときに、可動板部72の下端が固定板部71の上端と径方向でオーバ―ラップし、可動板部72の上端が、排気ガス流入口11bを区画する真空チャンバの内壁面部分11cに当接できるように設定されている。
【0022】
以上によれば、図2に示すように、成膜空間1bを画成するシールド板5の周囲にて排気ガスの流速が遅い領域が可及的に小さくなること、言い換えると、シールド板5の周囲における排気ガスの流速が略均等になる。その結果、より均一性のとれた基板面内の膜厚分布(例えば、±3%)を持つ薄膜を成膜することができる。また、固定板部71と、可動板部72とで覆板7を構成しておけば、スパッタリング装置毎に、シールド板5の周囲における排気ガスの流速が略均等になるように調整でき、有利である。しかも、固定板部71に対する可動板部72の高さ位置を調整することで、基板面内の膜厚分布の微調整も行い得る。
【0023】
次に、本発明の効果を確認するため、基板Wをシリコンウエハ、スパッタリング用ターゲット2をAl製とし、上記スパッタリング装置SMを用いて基板WにAl膜を成膜した。スパッタ条件として、ターゲット2と基板Wとの間の距離を60mm、スパッタ電源Eによる投入電力を2kW、スパッタ時間を120secに設定した。また、スパッタガスとしてアルゴンガスを用い、スパッタリング中、スパッタガスの分圧を0.1Paとした。また、比較実験として、上記スパッタリング装置SMから覆板7を取り外し、同一の条件で成膜した。Al膜の基板Wの径方向の膜厚分布を公知の測定器具を用いて夫々測定した。これによれば、上記従来例に相当する比較実験では、その膜厚分布が1.8%であったのに対し、本実施形態のものでは、その膜厚分布が0.8%であった。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記に限定されるものではない。上記実施形態では、固定板部71と、可動板部72とで覆板を構成したものを例に説明したが、単一の覆板を排気空間部に設置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
SM…スパッタリング装置、Vp…真空ポンプ、W…基板(成膜対象物)、1…真空チャンバ、1a…真空チャンバ1の内壁面、1b…成膜空間、11…排気空間部、11a…排気口、11b…排気ガス流入口、2…スパッタリング用ターゲット、4…ステージ、5…シールド板、7…覆板、71…固定板部、72…可動板部。
図1
図2
図3