【文献】
Sha Huang et al,In vitro constitution and in vivo implantation of engineered skin constructs with sweat glands,Biomaterials,2010年,31,5520-5525
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
「インビトロ完全皮膚モデル」(以下、皮膚同等物としても既知)という用語は、インビトロ法を使用して専ら製造することができ、層状の表皮および真皮の両方を有し、基底膜が真皮と表皮との間に配置される皮膚のモデルを意味すると理解すべきである。
【0017】
さらに、本発明の文脈において使用される「支持層」という用語は、本発明による皮膚同等物の真皮同等物のための基部または骨格として機能する自立層を意味すると理解すべきである。好ましくは、この層は、皮膚同等物の製造に使用されるマイクロタイタープレートのウェルに配置される。本発明によれば、この層は、コラーゲンマトリックスを含み、「コラーゲンマトリックス」という用語は、好ましくは細孔を備える、コラーゲンから形成される空間ネットワークを意味すると理解すべきである。しかしながら、これは、真皮の線維芽細胞によって製造されるコラーゲンによって形成されるマトリックスを含まない。
【0018】
さらに、本発明の文脈において使用される「真皮同等物」という用語は、天然の真皮に実質的に対応する線維芽細胞から形成される結合組織様層を意味する。
【0019】
さらに、本発明の文脈において使用される「表皮同等物」という用語は、好ましくは、天然の表皮に実質的に対応する層状表皮の形態でケラチノサイトから形成される多層層を意味する。
【0020】
さらに、「基底膜」という用語は、好ましくは、コラーゲン、特にコラーゲンIVから形成され、ラミニンから形成された二次元ネットワークと絡み合っている多層ウェブから形成された層を意味すると理解すべきである。コラーゲンウェブとラミニンネットワークとの間の粘着力は、好ましくは、パーレカン(ヘパリン硫酸から形成されるプロテオグリカン)およびエンタクチン(ニドゲンとしても既知)によって確保される。
【0021】
最後に、本発明で使用される「三次元汗腺同等物」という用語は、空間において3方向すべてに延在し、細胞が、ネイティブな汗腺における細胞と類似の機能、特に同一の機能を有する汗腺細胞から形成される細胞モデルを意味すると理解すべきである。
【0022】
本発明によるインビトロ完全皮膚モデルは、第1の必須成分a)としてコラーゲンマトリックスを含有する支持層を含む。
【0023】
本発明の文脈において、皮膚同等物は、好ましくは、支持層として特定のコラーゲン化合物から形成されたマトリックスを含む。したがって、本発明によれば、コラーゲンマトリックスが、低溶解性コラーゲン、特に、ウマ、ブタ、またはウシの腱から形成される低溶解性コラーゲンを含むことが有利である。本発明で使用される「低溶解性コラーゲン」という用語は、少なくとも5時間にわたって水性媒体中で目に見えない、もしくは僅かな膨潤しか示さない、または僅かなゲル形成も示さない、もしくは僅かなゲル形成しか示さない粗繊維状コラーゲンを意味すると理解すべきである。このタイプのコラーゲンは、好ましくは動物、特に哺乳類、好ましくはウマ、ブタ、またはウシ由来の腱、より特に好ましくはアキレス腱またはウシ由来の皮膚、特にウシ由来のアキレス腱から得られる。
【0024】
本発明によれば、支持層として使用されるマトリックスが凍結乾燥された低溶解性コラーゲンから形成されることが特に有利であることが示されている。したがって、本発明の好ましい実施形態は、コラーゲンマトリックスが、凍結乾燥された低溶解性コラーゲン、特にウマ、ブタ、またはウシ由来の腱から形成される凍結乾燥された低溶解性コラーゲンを含むことを特徴とする。本発明により使用される「凍結乾燥された低溶解性コラーゲン」という用語は、この低溶解性コラーゲンの均質な懸濁液を溶媒、好ましくは水中で凍結乾燥することによって得られる低溶解性コラーゲンを意味すると理解すべきである。凍結乾燥はまた、昇華乾燥としても既知であり、この場合は、好ましくは水の形態で溶媒を凍結させることによって高真空下で急速冷凍した材料を乾燥させ、次いで凍結状態で蒸発させることを意味する。特に好ましくは、凍結乾燥された低溶解性コラーゲンから形成されたこのコラーゲンマトリックスは、その表面に細孔を有する皮膚を有する。これらの細孔は、真皮同等物の構築中に線維芽細胞による支持体材料の特に良好なコロニー形成をもたらし、その結果、真皮同等物の形成に必要な線維芽細胞の分化中の妨害が回避される。
【0025】
本発明の文脈において、支持層のコラーゲンマトリックスが特定の総量のコラーゲンを含有することが有利であることが示されている。したがって、本発明の好ましい実施形態は、コラーゲンマトリックスが、コラーゲンマトリックスの総重量に対して、0.5重量%〜5.0重量%、好ましくは0.8重量%〜3.5重量%、より好ましくは0.8重量%〜2.5重量%、特に0.8重量%〜1.2重量%の総量のコラーゲン、特に凍結乾燥された低溶解性コラーゲンを含有することを特徴とする。上記の総量のコラーゲン、特に凍結乾燥された低溶解性コラーゲンを含有する支持層は、本発明による皮膚同等物の効果的な安定化をもたらし、このようにして、同等物を容易に取り扱うことができることを意味する。
【0026】
架橋コラーゲンマトリックスの使用は、本発明による皮膚同等物が収縮するのを防止するために有利であることが示されている。収縮を避けることは、試験物質を常に同一の大きさの表面に適用することができるため、標準化の高い可能性を構成する。このようにして、試験物質の適用後の濃度の変動を回避することができる。したがって、本発明によれば、コラーゲンマトリックスが架橋コラーゲンマトリックスであることが好ましい。コラーゲンマトリックスの架橋は、例えば、化学的または物理的方法によって行われてもよい。化学的架橋の場合、特に化学的架橋剤が使用される;物理的架橋は、例えば、UV照射または脱水熱架橋(DHTとしても既知)を使用して行われてもよい。
【0027】
これに関連して、コラーゲンマトリックスが化学的架橋剤によって架橋されることが特に有利であることが示されている。したがって、本発明の文脈において、コラーゲンマトリックスの架橋は、グルタルアルデヒド、p−ベンゾキノン、ジメチルアジピミデート、ジメチルピメリニデート、ジメチルスベリミデート、1,4−フェニレンジイソチオシアネート、ポリオキシエチレン−ビス−(イミダゾリルカルボニル)、ビス[ポリオキシエチレン−ビス(イミダゾリルカルボニル)]およびスベリン酸ビス(N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、酵素、ならびにそれらの混合物によって形成される群からの化学的架橋剤、特に、グルタルアルデヒドを用いて行われることが好ましい。本出願人は、驚くべきことに、化学的架橋剤であるグルタルアルデヒドを使用したコラーゲンマトリックスの架橋が、インビトロ完全皮膚モデルに悪影響を及ぼすグルタルアルデヒドの細胞有毒性およびアポトーシス性なしに皮膚同等物の優れた安定化をもたらすことを立証した。
【0028】
本発明によるインビトロ完全皮膚モデルは、第2の必須成分として真皮同等物を含む。
【0029】
この真皮同等物は、好ましくは、真皮線維芽細胞によって形成される。したがって、本発明の好ましい実施形態は、真皮同等物が初代線維芽細胞、特にヒト初代線維芽細胞から形成されることを特徴とする。「初代線維芽細胞」という用語は、好ましくは、特にヒトの真皮、遺伝子組換え線維芽細胞、自発的突然変異由来の線維芽細胞、またはそれらの前駆体に天然に存在する線維芽細胞を意味すると理解すべきである。特に好ましくは、ヒト初代前培養線維芽細胞を使用して真皮同等物を形成する。前培養されたヒト初代線維芽細胞はまた、ヒト初代線維芽細胞を培養することによって得られてもよく、その培養は、好ましくは、細胞増殖によってインビトロで行われる。線維芽細胞を前培養するために、DMEM培地(ダルベッコ変性イーグル培地)を用いるのが好ましい。
【0030】
本発明による真皮同等物が、特定の総細胞数の初代線維芽細胞を含有することが有利であることが示されている。したがって、本発明の文脈において、真皮同等物は、好ましくは、5×10
5〜6×10
6個、好ましくは6×10
5〜5×10
6個、特に7×10
5〜4×10
6個の総細胞数において、初代線維芽細胞、特にヒト初代線維芽細胞を含有する。前記総細胞数の初代線維芽細胞を含有する真皮同等物は、ヒトの皮膚の真皮における分化と非常に類似した分化を示す。これは、本発明によるインビトロ完全皮膚モデルが、インビボ状況を可能な限り厳密にエミュレートすることを確実にする。
【0031】
本発明によるインビトロ完全皮膚モデルは、第3の必須成分c)として少なくとも1つの表皮同等物を含有する。
【0032】
この表皮同等物は、好ましくは初代ケラチノサイトから形成される。本発明で使用される「ケラチノサイト」という用語は、角質化した扁平上皮、遺伝子組換えケラチノサイト、および自発的突然変異から得られるケラチノサイト、ならびにそれらの前駆体を形成する表皮の細胞を意味すると理解すべきである。基礎幹細胞画分の完全な角化を伴う適切に分化した表皮同等物の形成は、表皮同等物の形成に使用されるケラチノサイトに依存するので、未処理の生検組織からの実質的に未分化のケラチノサイト幹細胞が好ましくは使用される。したがって、本発明の好ましい実施形態は、表皮同等物が初代ケラチノサイト、特にヒト初代ケラチノサイトから形成されることを特徴とする。好ましくは、表皮同等物は、初代ケラチノサイトを培養することによって、好ましくはこれらの細胞の増殖によって得られる前培養ケラチノサイトから形成される。ケラチノサイトの前培養を行うためには、DMEM培地(ダルベッコ変性イーグル培地)とハムのF12培地との混合物を使用するのが好ましい。
【0033】
特に好ましくは、表皮同等物は、互いに異なる複数の細胞層を有する。したがって、本発明によれば、好ましくは、表皮同等物は、互いに異なる複数の細胞層、特に少なくとも2つの異なる分化した細胞層、および少なくとも1つの角質化した細胞層を含む。本発明で使用される「複数の細胞層」という用語は、互いに異なる少なくとも2つの細胞層、特に互いに異なる2〜20個の細胞層を意味すると理解すべきである。表皮中の異なる細胞層の存在は、例えば、光学顕微鏡を用いて決定されてもよい。特に好ましくは、表皮同等物には、互いに異なる2〜10個の細胞層が提供され、前記細胞層のうちの少なくとも1つは、角質層、有棘層、および顆粒層から選択される。
【0034】
本発明によれば、表皮同等物が特定の総細胞数の初代ケラチノサイトを含有することが有利であることが示されている。したがって、本発明の文脈において、好ましくは、表皮同等物は、4×10
5〜5×10
6個、好ましくは5.5×10
5〜4×10
6個、特に6.5×10
5〜3.5×10
6個の総細胞数において、初代ケラチノサイト、特にヒト初代ケラチノサイトを含有する。上で定義した総細胞数の初代ケラチノサイトを含有する表皮同等物は、ヒトの皮膚の表皮における分化と非常に類似した分化を示す。これは、本発明によるインビトロ完全皮膚モデルが、インビボ状況を可能な限り厳密に模倣することを確実にする。
【0035】
本発明による完全皮膚モデルは、第4の必須成分として真皮同等物と表皮同等物との間に位置する基底膜を含む。
【0036】
好ましくは、本発明の文脈において、完全皮膚モデルの基底膜は、特異的タンパク質を含む。したがって、本発明の好ましい実施形態は、基底膜が、ラミニン、IV型コラーゲン、およびそれらの混合物によって形成される群からのタンパク質を含むことを特徴とする。上に列挙したタンパク質を含有する基底膜は、真皮同等物と表皮同等物との間の特に有効な結合をもたらし、このようにして、本発明による完全皮膚モデルの良好な安定性および取り扱いを確実にする。
【0037】
好ましくは、本発明による完全皮膚モデルは、1〜100個の三次元汗腺同等物を含有する。三次元汗腺同等物の組み込みは、ヒトの皮膚におけるインビボ状況が、汗腺または汗腺同等物を含有しない完全皮膚モデルよりも良好に再現されることを意味する。同等数の別個の汗腺同等物を組み込むことはまた、パンチ生検において、それぞれが、変動する数の汗腺を有するこれらの生検の使用と比較したときよりも標準化された様式で完全皮膚モデルを製造することができることを意味する。したがって、本発明の好ましい実施形態は、真皮同等物b)および/または表皮同等物c)が、2〜100個の三次元汗腺同等物、好ましくは5〜100個の三次元汗腺同等物、より好ましくは20〜100個の三次元汗腺同等物、特に50〜100個の三次元汗腺同等物を含むことを特徴とする。
【0038】
本発明による完全皮膚モデルに含有される別個の三次元汗腺同等物は、例えば、初代汗腺細胞を使用したハンギングドロップ法によって、および専らインビトロ法を使用して製造してもよい。この目的のために、最初に皮膚生検からの汗腺、特に皮膚生検からのネイティブなエクリンおよび/またはアポクリン汗腺が単離される。単離は、2〜3mg/mLのコラゲナーゼIIと0.1〜0.2mg/mLのサーモリシンとの混合物を使用して、3〜6時間、35℃〜40℃、特に37℃でヒトの皮膚を酵素消化することによって行われてもよい。初代汗腺細胞は、単離された汗腺を培養することによって得ることができる。初代汗腺細胞を解離させるために注意深くトリプシン処理した後、それらは、単層培養で7〜28日間培養され、次いで、混合物の総重量に対して、10重量%のウシ胎仔血清(FCS)をさらに含有する、3:1の重量比のDMEMおよびハムのF12によって形成された栄養培地に懸濁させる。培地1μLあたり50〜250000個、特に400〜600個の細胞の濃度を調整した後、この懸濁液の10〜100μL、特に40〜60μLを36℃〜38℃の温度および培養のために使用される雰囲気の総重量に対して、5重量%のCO
2含有量で2〜7日間、懸滴マルチウェルプレートに懸滴培養すると三次元汗腺同等物が形成される。これらの同等物は、その収穫直後または1〜6日間のさらなる培養後に完全皮膚モデルに統合することができる。収穫は、上記の栄養培地の70〜100μLを添加することによって行ってもよい。本発明による完全皮膚モデルに含有される三次元汗腺同等物の製造は、2015年11月12日に出願されたドイツ特許第DE 10 2015 222 279.9号に記載されている;その全体の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
本発明によれば、好ましくは、三次元汗腺同等物は、真皮同等物に含有される。これらの汗腺同等物を真皮同等物に組み込むことは、インビボ状況のより良い模倣を可能にする。したがって、本発明によれば、真皮同等物b)が、三次元汗腺同等物を含むことが有利である。三次元汗腺同等物を真皮同等物に導入することにより、インビボでも起こり、例えば、創傷治癒プロセスに関与する細胞−細胞相互作用が可能になる。
【0040】
好ましくは、特定の直径を有する三次元汗腺同等物が、本発明による完全皮膚モデルに含有される。したがって、有利には、本発明によれば、三次元汗腺同等物は、それぞれ100〜40000μm、好ましくは100〜3000μm、特に200〜2500μmの直径を有する。この点に関する直径データは、個々の三次元汗腺同等物の直径を指す。本発明による球状汗腺同等物の直径は、例えば、「CellSens」ソフトウェアを用いる顕微鏡測定によって測定されてもよい。
【0041】
本発明の文脈において、本発明による完全皮膚モデルに含有される汗腺同等物は、マトリックス化合物および/または支持体を含まない。「マトリックス化合物」という用語は、ここでは、空間ネットワークを形成することができる化合物を意味すると理解すべきである。しかしながら、これには、空間ネットワークを形成することができる細胞自体によって製造され排出される物質は含まれない。さらに、本発明において使用される「支持体」という用語は、汗腺細胞のための基部またはフレームとして機能することができる自立物質を意味する。本発明の好ましい実施形態によれば、三次元汗腺同等物は、それぞれマトリックス化合物および/または支持体を含まず、特にマトリックス化合物および支持体を含まない。
【0042】
本発明において使用される「含まない」という用語は、三次元汗腺同等物が、三次元汗腺同等物の総重量に対して、1重量%未満のマトリックス化合物および/または支持体を含有することを意味すると理解すべきである。したがって、本発明の文脈において、有利には、三次元汗腺同等物は、三次元汗腺同等物の総重量に対して、0〜1重量%、好ましくは0〜0.5重量%、好ましくは0〜0.2重量%、特に0重量%のマトリックス化合物および支持体を含有する。
【0043】
これに関連して、三次元汗腺同等物が特定のマトリックス化合物および支持体を含まないことが特に有利である。したがって、好ましくは、三次元汗腺同等物は、コラーゲン、特にI型コラーゲンおよび/またはIII型および/またはIV型、スクレロタンパク質、ゼラチン、キトサン、グルコサミン、グルコサミノグルカン(GAG)、硫酸ヘパリンプロテオグリカン、硫酸化糖タンパク質、増殖因子、架橋多糖類、架橋ポリペプチド、ならびにそれらの混合物によって形成される群から選択されるいかなるマトリックス化合物および/または支持体も含有しない。
【0044】
特に好ましくは、本発明による皮膚同等物に含有される三次元汗腺同等物は、エクリンおよび/またはアポクリンヒト汗腺の同等物である。したがって、本発明の好ましい実施形態は、三次元汗腺同等物が、それぞれエクリンおよび/またはアポクリンヒト汗腺の三次元汗腺同等物であることを特徴とする。そのような汗腺同等物を含有する完全皮膚モデルは、ヒトにおけるインビボ使用のための汗抑制物質の同定に特によく適している。
【0045】
本発明による特に好ましい完全皮膚モデルを以下に記載する。
【0046】
この発明の主題の特に好ましい実施形態は、
a)少なくとも1つのコラーゲンマトリックスを含む少なくとも1つの支持層であって、コラーゲンマトリックスが、コラーゲンマトリックスの総重量に対して、0.8重量%〜1.2重量%の総量の凍結乾燥低溶解性コラーゲンを含有し、コラーゲンマトリックスが、架橋コラーゲンマトリックスである、支持層、
b)少なくとも1つの真皮同等物、
c)少なくとも1つの表皮同等物、
d)真皮同等物と表皮同等物との間に位置する少なくとも1つの基底膜
を含むインビトロ完全皮膚モデルであって、
真皮同等物b)および/または表皮同等物c)が、1〜100個の三次元汗腺同等物を含み、三次元汗腺同等物が、それぞれ500〜500000個の汗腺細胞を含み、それぞれ100〜6000μmの直径を有することを特徴とする、インビトロ完全皮膚モデルによって構成される。
【0047】
さらに、この発明の主題の特に好ましい実施形態は、
a)少なくとも1つのコラーゲンマトリックスを含む少なくとも1つの支持層であって、コラーゲンマトリックスが、コラーゲンマトリックスの総重量に対して、0.8重量%〜1.2重量%の総量の凍結乾燥低溶解性コラーゲンを含有し、コラーゲンマトリックスが、架橋コラーゲンマトリックスである、支持層、
b)ヒト初代線維芽細胞から形成される少なくとも1つの真皮同等物、
c)少なくとも1つの表皮同等物、
d)真皮同等物と表皮同等物との間に位置する少なくとも1つの基底膜
を含むインビトロ完全皮膚モデルであって、
真皮同等物b)および/または表皮同等物c)が、1〜100個の三次元汗腺同等物を含み、三次元汗腺同等物が、それぞれ500〜500000個の汗腺細胞を含み、それぞれ100〜6000μmの直径を有することを特徴とする、インビトロ完全皮膚モデルによって構成される。
【0048】
また、この発明の主題の特に好ましい実施形態は、
a)少なくとも1つのコラーゲンマトリックスを含む少なくとも1つの支持層であって、コラーゲンマトリックスが、コラーゲンマトリックスの総重量に対して、0.8重量%〜1.2重量%の総量の凍結乾燥低溶解性コラーゲンを含有し、コラーゲンマトリックスが、架橋コラーゲンマトリックスである、支持層、
b)ヒト初代線維芽細胞から形成される少なくとも1つの真皮同等物、
c)少なくとも1つの表皮同等物であって、ヒト初代ケラチノサイトから形成され、少なくとも2つの異なる分化された細胞層および少なくとも1つの角質化した細胞層を含む、表皮同等物、
d)真皮同等物と表皮同等物との間に位置する少なくとも1つの基底膜
を含むインビトロ完全皮膚モデルであって、
真皮同等物b)および/または表皮同等物c)が、1〜100個の三次元汗腺同等物を含み、三次元汗腺同等物が、それぞれ500〜500000個の汗腺細胞を含み、それぞれ100〜6000μmの直径を有することを特徴とする、インビトロ完全皮膚モデルによって構成される。
【0049】
加えて、この発明の主題の特に好ましい実施形態は、
a)少なくとも1つのコラーゲンマトリックスを含む少なくとも1つの支持層であって、コラーゲンマトリックスが、コラーゲンマトリックスの総重量に対して、0.8重量%〜1.2重量%の総量の凍結乾燥低溶解性コラーゲンを含有し、コラーゲンマトリックスが、架橋コラーゲンマトリックスである、支持層、
b)ヒト初代線維芽細胞から形成される少なくとも1つの真皮同等物、
c)少なくとも1つの表皮同等物であって、ヒト初代ケラチノサイトから形成され、少なくとも2つの異なる分化された細胞層および少なくとも1つの角質化した細胞層を含む、表皮同等物、
d)少なくとも1つの基底膜であって、真皮同等物と表皮同等物との間に位置し、ラミニン、IV型コラーゲン、およびそれらの混合物によって形成される群からのタンパク質を含む、基底膜
を含むインビトロ完全皮膚モデルであって、
真皮同等物b)および/または表皮同等物c)が、1〜100個の三次元汗腺同等物を含み、三次元汗腺同等物が、それぞれ500〜500000個の汗腺細胞を含み、それぞれ100〜6000μmの直径を有することを特徴とする、インビトロ完全皮膚モデルによって構成される。
【0050】
最後に、この発明の主題の特に好ましい実施形態は、
a)少なくとも1つのコラーゲンマトリックスを含む少なくとも1つの支持層であって、コラーゲンマトリックスが、コラーゲンマトリックスの総重量に対して、0.8重量%〜1.2重量%の総量の凍結乾燥低溶解性コラーゲンを含有し、コラーゲンマトリックスが、架橋コラーゲンマトリックスである、支持層、
b)ヒト初代線維芽細胞から形成される少なくとも1つの真皮同等物、
c)少なくとも1つの表皮同等物であって、ヒト初代ケラチノサイトから形成され、少なくとも2つの異なる分化された細胞層および少なくとも1つの角質化した細胞層を含む、表皮同等物、
d)少なくとも1つの基底膜であって、真皮同等物と表皮同等物との間に位置し、ラミニン、IV型コラーゲン、およびそれらの混合物によって形成される群からのタンパク質を含む、基底膜
を含むインビトロ完全皮膚モデルであって、
真皮同等物b)が、50〜100個の三次元汗腺同等物を含み、三次元汗腺同等物が、それぞれ500〜500000個の汗腺細胞を含み、それぞれ200〜2500μmの直径を有し、三次元汗腺同等物が、それぞれエクリンおよび/またはアポクリンヒト汗腺の三次元汗腺同等物であることを特徴とする、インビトロ完全皮膚モデルによって構成される。
【0051】
本発明によるインビトロ完全皮膚モデルは、現在使用されているパンチ生検よりも標準化可能性および有用性の可能性が高く、いかなる汗腺および/または汗腺同等物も含有しない完全皮膚モデルよりもインビボ状況に近い。さらに、これらの皮膚同等物は、この完全皮膚モデルを使用することによって、例えば、特定の試験物質の存在下および非存在下でのアセチルコリン(Ach)による刺激時の遺伝子発現またはタンパク質発現を比較することによって、試験物質の汗抑制作用を調査することができるので、ヒトにおけるインビボ研究の安価な代替物を構成する。本発明による完全皮膚モデルは、それらの構造およびさらにそれらの組織学的組成の両方に関して、ヒトの皮膚をインビボでシミュレートするので、これらのモデルで得られた情報は、ヒトに容易に適用可能であり、インビボで既に試験された化合物のデータと比較することもできる。
【0052】
第2の態様では、本発明は、インビトロ完全皮膚モデルを製造するための方法であって、該方法が、特定の順序で以下:
a)低溶解性コラーゲンの懸濁液を提供する工程、
b)工程a)で提供されたコラーゲン懸濁液を凍結乾燥することによって支持層を製造する工程、
c)初代線維芽細胞、特にヒト初代線維芽細胞を工程b)で製造された支持層に適用し、7〜28日の期間にわたって前記線維芽細胞を培養することによって真皮同等物を製造する工程、
d)初代ケラチノサイト、特にヒト初代ケラチノサイトを工程c)で製造された真皮同等物に適用し、前記ケラチノサイトを1〜10日の期間にわたって培養する工程、
e)工程d)後に得られたモデルを、空気−培地境界で7〜42日の期間にわたって培養する工程
を含み、
それぞれ500〜500000個の汗腺細胞の細胞数およびそれぞれ100〜6000μmの直径を有する1〜100個の三次元汗腺同等物が、工程c)および/または工程d)において前記同等物を添加することによって導入される、方法を提供する。
【0053】
本発明の文脈において使用される「低溶解性コラーゲンの懸濁液」という用語は、溶媒、好ましくは水中の固体コラーゲンの均質な混合物を意味すると理解すべきである。均質な懸濁液を製造するために、当業者に既知である静的ミキサーまたはUltraTurraxミキサーなどの装置を使用してもよい。
【0054】
さらに、「培養する」という用語は、好ましくは、例えば、代謝産物および生成物の添加および除去による好適な環境において、細胞、特に線維芽細胞およびケラチノサイトの生命機能のインビトロ維持、特に細胞の増殖を意味する。
【0055】
本発明による方法の文脈において、方法工程a)において提供される懸濁液が特定の総量のコラーゲンを含有することが有利であることが示されている。したがって、本発明による方法の好ましい実施形態は、工程a)における低溶解性コラーゲンの懸濁液が、懸濁液の総重量に対して、0.2重量%〜4.0重量%、好ましくは0.3重量%〜3.0重量%、より好ましくは0.4重量%〜2.0重量%、特に0.5重量%〜1.5重量%の総量のコラーゲンを含有することを特徴とする。前述の総量のコラーゲンを有する懸濁液を使用することは、特に安定な支持層が形成されることを意味し、その結果、本発明による方法から生じる完全皮膚モデルの高い安定性および良好な取り扱い性が保証される。
【0056】
さらに、本発明による方法の文脈において、工程a)における低溶解性コラーゲンの懸濁液が、pH0.1〜pH6.9、好ましくはpH2.0〜pH5.0、より好ましくはpH3.0〜pH4.5、特にpH3.5〜pH4.0を有することが有利であると示されている。前述のpH値を有する懸濁液を使用することは、特に安定な支持層が形成されることを意味する。
【0057】
方法工程b)における凍結乾燥の前に、コラーゲン懸濁液は、好ましくは、所望の支持層に対応する寸法を有する容器に入れられる。この方法の文脈において、好適な容器は、例えば、マイクロタイタープレートのウェルである。さらに、支持層の容器壁への接着を改善するために、コラーゲン懸濁液を添加する前に、これらの容器を好適な薬剤で被覆することが可能である。好適な薬剤の例は、ゼラチン、ポリリシン、フィブリンもしくはフィブリノゲン/トロンビン、またはフィブロネクチンである。この点に関して、まず、内部容器壁が上記の薬剤で濡らされ、次いで乾燥される、その結果、薬剤の層は、内部容器表面に接着したままである。次に、コラーゲン懸濁液が添加される。方法工程b)において行われた凍結乾燥は、好ましくはこれらの容器中で行われる。さらに、本発明によれば、凍結乾燥は、好ましくは特定の冷却速度で行われる。したがって、本発明の文脈において、好ましくは、工程b)におけるコラーゲン懸濁液の凍結乾燥は、5℃〜40℃/時間、好ましくは10℃〜30℃/時間、より好ましくは18℃〜23℃/時間、特に20℃〜22℃/時間の冷却速度で行われる。遅い冷却速度は、凍結乾燥支持層の表面に薄い肌の形成をもたらし、薄い肌は、表面に細孔を有する。これらの細孔は、線維芽細胞の支持層へのゆっくりとした移動を促進するので、線維芽細胞によるその後のコロニー形成のための特に良好な条件を構成する。一方、上述の冷却速度よりも速い冷却速度は、所与の培養時間中に線維芽細胞が新たに合成された細胞外マトリックスを完全に満たすことができない大きな細孔を有する支持層をもたらす。次いで、播種された線維芽細胞は、これらの大きな細孔中で凝集し、分化することができ、その後層化することによって、真皮の分化を実質的に摂動することができる。したがって、上述の冷却速度は、線維芽細胞によって最適にコロニー形成することができる支持層が提供されることを確実にする。このようにして、ヒトの皮膚にも対応する非摂動な分化を達成することができる。
【0058】
架橋コラーゲンマトリックスが支持物質として使用される場合、このマトリックスの架橋は、方法工程c)に記載された凍結乾燥後に行われる。これに関して、本発明の第1の態様に関連して上記の架橋剤を使用してもよい。特に好ましくは、架橋のためにグルタルアルデヒドが使用される。架橋は、製造中の完全皮膚モデルにおける収縮プロセスが回避され、その結果、均一なサイズおよび能力のために高い再現性を保証することができることを意味する。
【0059】
真皮同等物の製造に使用される線維芽細胞の取得および培養は、当業者に既知の方法を使用して行われる。好ましくは、好適なパス、特に第3または第4のパスからの線維芽細胞は、細胞培養フラスコ中で予備培養され、使用直前にトリプシン処理によって基部から解離させる。線維芽細胞を培養するための栄養培地は、例えば、10重量%のFCSを含有するDMEMであってもよい。
【0060】
本発明によれば、特定の総濃度の線維芽細胞を使用することは、真皮同等物の製造にとって有利であることが示されている。したがって、本発明の好ましい実施形態は、工程c)における真皮同等物の製造のために、初代線維芽細胞、特にヒト初代線維芽細胞は、培地1mLあたり2×10
5〜2×10
6個の細胞、好ましくは培地1mLあたり3×10
5〜1×10
6個の細胞、より好ましくは培地1mL当たり4×10
5〜7×10
5個の細胞、特に培地1mLあたり4.5×10
5〜5.5×10
5個の細胞の総濃度で使用されることを特徴とする。培地は、好ましくは、10重量%のFCSを含有するDMEM培地である。さらなる安定化のために、追加のヒトフィブロネクチンおよび/またはラミニンを培養培地に添加してもよい。「フィブロネクチン」という用語は、インビボで他の巨大分子、例えば、コラーゲンと結合するように機能し、隣接細胞への細胞の接着に関与する線維芽細胞において製造される構造的または接着タンパク質を意味する。ラミニンは、細胞が接着することができる基底膜のタンパク質である。培養培地にフィブロネクチンおよび/またはラミニンを添加することにより、線維芽細胞の支持層への結合が相互補強される。上述の総濃度を用いることにより、支持層の線維芽細胞による十分なコロニー形成を確実にする。初代線維芽細胞の細胞数は、例えば、従来の計数チャンバおよびトリパンブルーを使用して決定されてもよい。この目的のために、トリパンブルー溶液は、培養初代線維芽細胞の希釈されていない懸濁液に添加され、適切な四角形における細胞の数が決定される。算術平均は、これらの値から作成される。計数チャンバの容積、希釈係数、および供給係数を考慮して、この平均値からmLまたはμLあたりの細胞数が決定される。この点で方法工程c)で使用される細胞数は、生存細胞の数(生存数)に関する。
【0061】
方法工程c)において支持層に適用される線維芽細胞の培養は、好ましくは浸漬培養で行われる。これは、栄養溶液で覆われた線維芽細胞の培養を意味すると理解すべきである。培養条件を変化させることによって、またはセラミドおよびビタミンなどの化学物質を培地に添加することによって、バリア機能をさらに作り出してもよい。好ましくは、本発明によれば、工程c)における初代線維芽細胞、特にヒト初代線維芽細胞の培養は、8〜25日、好ましくは10〜22日、好ましくは11〜20日、特に12〜18日の期間にわたって、30℃〜40℃の温度で行われる。
【0062】
表皮同等物を製造するために使用されるケラチノサイトの取得および培養は、当業者に既知の方法を使用して行われる。好ましくは、好適なパス、特に第3または第4のパスからのケラチノサイトは、細胞培養フラスコ中で予備培養され、使用直前にトリプシン処理によって基部から解離させる。線維芽細胞を培養するための栄養培地は、例えば、1重量%〜30重量%のFCS、ならびに他の血清生成物および添加物を含有するDMEMおよびハムのF12培地であってもよい。
【0063】
方法工程d)において、ケラチノサイトは、方法工程c)において製造された真皮同等物に適用される。この場合も、ケラチノサイトが特定の総濃度で使用されるのが有利であることが示されている。したがって、本発明によれば、初代ケラチノサイト、特にヒト初代ケラチノサイトは、培地1mLあたり1.5×10
5〜1×10
6個の細胞、好ましくは培地1mLあたり2.5×10
5〜9×10
5個の細胞、より好ましくは培地1mLあたり3.5×10
5〜7×10
5個の細胞、特に培地1mLあたり4×10
5〜5×10
5個の細胞の総濃度で、工程d)において使用することが有利である。上述の総濃度を使用することにより、真皮同等物のケラチノサイトによる十分なコロニー形成が保証される。細胞数は、線維芽細胞の細胞数に関連して上記の様式で決定されてもよい。
【0064】
方法工程d)において適用されるケラチノサイトは、好ましくは、浸漬培養において特定の期間培養される。したがって、本発明の文脈では、初代ケラチノサイト、特にヒト初代ケラチノサイトが、1〜8日、好ましくは1〜6日、より好ましくは1〜4日、特に1〜2日の期間にわたって、30℃〜40℃の温度での浸漬培養下で工程d)において培養されることが好ましい。特に好ましくは、ケラチノサイトは、培地の総重量に対して、およそ1重量%〜30重量%のウシ胎児血清(FCS)、NCS、所定の血清または血清置換産物、ならびに細胞の増殖および分化を促進する種々の添加物を含有する細胞培養培地、特に好ましくはDMEM/F12培地において支持層上に播種される。次に、支持層は、特に、マウスEGFまたは他の動物由来の匹敵する調製物、表皮増殖因子(hEGF)(例えば、0.2μg/Lの培地濃度)、および例えば、0.8mMのCaCl
2を含有するDMEM培地で覆われ、その後、好ましくは1〜8日間浸漬培養される。
【0065】
ケラチノサイト層の完全な分化は、培地−空気境界でのケラチノサイトの培養によって達成される。このタイプの培養は、hEGFおよびBPE(ウシ下垂体抽出物)を含まないDMEMが培養培地として使用されるエアリフト培養としても既知である。「エアリフト培養」という用語は、栄養培地表面の高さが正確に真皮同等物の高さに設定される培養を意味すると理解すべきであるが、ケラチノサイトによって形成された細胞層は、栄養培地の表面の上にあり、栄養培地で覆われない、すなわち培養は、空気−栄養培地境界層で行われ、培養物は、下から供給される。続いて、モデルは、マイクロタイタープレートのウェルから持ち上げ、ペトリ皿の金属製スペーサ上に置かれた濾紙上に置かれる。培地は、濾紙を完全に覆わないのではなく、皮膚モデルの基部の周囲に液体のカラー(空気−液体界面としても既知)を形成するような深さまでペトリ皿に注がれる。空気−栄養培地境界での培養中に皮膚の典型的な表皮同等物が形成される。したがって、本発明による方法の特に好ましい実施形態は、工程d)後に得られたモデルを空気−培地境界で培養することが、8〜35日、好ましくは9〜30日、より好ましくは10〜20日、特に10〜13日の期間にわたって、30℃〜40℃の温度で行われることを特徴とする。
【0066】
本発明の方法における三次元汗腺同等物は、方法工程c)および/またはd)に導入される。このようにして、インビボ状況を厳密にエミュレートすることができるので、真皮同等物の製造中の方法工程c)における汗腺同等物の導入は、本発明によれば好ましい。したがって、本発明によれば、三次元汗腺同等物を工程c)において導入することが好ましく、初代線維芽細胞、特にヒト初代線維芽細胞が三次元汗腺同等物と混合され、次いで、工程b)で製造された支持層に適用される。
【0067】
しかしながら、本発明によれば、本発明による方法の工程d)中に三次元汗腺同等物を導入することも可能である。したがって、本発明によれば、三次元汗腺同等物を工程d)において導入することも好ましく、三次元汗腺同等物は、初代ケラチノサイト、特にヒト初代ケラチノサイトを適用する1〜3時間前に播種される。「播種」という用語は、本明細書において、三次元汗腺同等物を真皮同等物の表面に適用することを意味すると理解すべきである。
【0068】
本発明によれば、方法工程c)および/またはd)において、500〜500000個の細胞の細胞数および100〜6000μmの直径をそれぞれ有する1〜100個の別個の汗腺同等物が導入される。しかしながら、本発明の文脈では、より小さな直径を有するより多くの汗腺同等物が完全皮膚モデルに導入されることが有利であることが示されている。したがって、本発明の文脈では、好ましくは、それぞれ500〜500000個の汗腺細胞の細胞数およびそれぞれ500〜2500μmの直径を有する50〜100個の三次元汗腺同等物は、工程c)および/または工程d)において、特に工程c)において導入されてもよい。
【0069】
本発明による特に好ましい方法を、インビトロ完全皮膚モデルの製造について以下に記載する。これらの方法は、好ましくは、方法工程のすべてが専らインビトロ法を使用して行われる方法に関する。
【0070】
したがって、本発明のこの主題の特に好ましい実施形態は、特定の順序で以下:
a)低溶解性コラーゲンの懸濁液を提供する工程であって、工程a)における低溶解性コラーゲンの懸濁液が、懸濁液の総重量に対して、0.2重量%〜4.0重量%、好ましくは0.3重量%〜3.0重量%、より好ましくは0.4重量%〜2.0重量%、特に0.5重量%〜1.5重量%の総量のコラーゲンを含有し、工程a)における低溶解性コラーゲンの懸濁液が、pH0.1〜pH6.9、好ましくはpH2.0〜pH5.0、より好ましくはpH3.0〜pH4.5、特にpH3.5〜pH4.0を有する、工程、
b)工程a)で提供されたコラーゲン懸濁液を凍結乾燥することによって支持層を製造する工程、
c)初代線維芽細胞、特にヒト初代線維芽細胞を工程b)で製造された支持層に適用し、7〜28日の期間にわたって前記線維芽細胞を培養することによって真皮同等物を製造する工程、
d)初代ケラチノサイト、特にヒト初代ケラチノサイトを工程c)で製造された真皮同等物に適用し、前記ケラチノサイトを1〜10日の期間にわたって培養する工程、
e)工程d)後に得られたモデルを、空気−培地境界で7〜42日の期間にわたって培養する工程
を含む、インビトロ完全皮膚モデルを製造するための方法であって、
それぞれ500〜500000個の汗腺細胞の細胞数およびそれぞれ100〜6000μmの直径を有する1〜100個の三次元汗腺同等物が、工程c)および/または工程d)において前記同等物を添加することによって導入される、方法によって構成される。
【0071】
本発明のこの主題のさらに特に好ましい実施形態は、特定の順序で以下:
a)低溶解性コラーゲンの懸濁液を提供する工程であって、工程a)における低溶解性コラーゲンの懸濁液が、懸濁液の総重量に対して、0.2重量%〜4.0重量%、好ましくは0.3重量%〜3.0重量%、より好ましくは0.4重量%〜2.0重量%、特に0.5重量%〜1.5重量%の総量のコラーゲンを含有し、工程a)における低溶解性コラーゲンの懸濁液が、pH0.1〜pH6.9、好ましくはpH2.0〜pH5.0、より好ましくはpH3.0〜pH4.5、特にpH3.5〜pH4.0を有する、工程、
b)工程a)で提供されたコラーゲン懸濁液を凍結乾燥することによって支持層を製造する工程であって、工程b)におけるコラーゲン懸濁液の凍結乾燥が、1時間あたり5℃〜40℃、好ましくは1時間あたり10℃〜30℃、より好ましくは1時間あたり18℃〜23℃、特に1時間あたり20℃〜22℃の冷却速度で行われる、工程、
c)初代線維芽細胞、特にヒト初代線維芽細胞を工程b)で製造された支持層に適用し、7〜28日の期間にわたって前記線維芽細胞を培養することによって真皮同等物を製造する工程、
d)初代ケラチノサイト、特にヒト初代ケラチノサイトを工程c)で製造された真皮同等物に適用し、前記ケラチノサイトを1〜10日の期間にわたって培養する工程、
e)工程d)後に得られたモデルを、空気−培地境界で7〜42日の期間にわたって培養する工程
を含む、インビトロ完全皮膚モデルを製造するための方法であって、
それぞれ500〜500000個の汗腺細胞の細胞数およびそれぞれ100〜6000μmの直径を有する1〜100個の三次元汗腺同等物が、工程c)および/または工程d)において前記同等物を添加することによって導入される、方法によって、適宜、構成される。
【0072】
本発明のこの主題のさらに特に好ましい実施形態は、特定の順序で以下:
a)低溶解性コラーゲンの懸濁液を提供する工程であって、工程a)における低溶解性コラーゲンの懸濁液が、懸濁液の総重量に対して、0.2重量%〜4.0重量%、好ましくは0.3重量%〜3.0重量%、より好ましくは0.4重量%〜2.0重量%、特に0.5重量%〜1.5重量%の総量のコラーゲンを含有し、工程a)における低溶解性コラーゲンの懸濁液が、pH0.1〜pH6.9、好ましくはpH2.0〜pH5.0、より好ましくはpH3.0〜pH4.5、特にpH3.5〜pH4.0を有する、工程、
b)工程a)で提供されたコラーゲン懸濁液を凍結乾燥することによって支持層を製造する工程であって、工程b)におけるコラーゲン懸濁液の凍結乾燥が、1時間あたり5℃〜40℃、好ましくは1時間あたり10℃〜30℃、より好ましくは1時間あたり18℃〜23℃、特に1時間あたり20℃〜22℃の冷却速度で行われる、工程、
c)初代線維芽細胞、特にヒト初代線維芽細胞を工程b)で製造された支持層に適用し、前記線維芽細胞を7〜28日の期間にわたって培養することによって真皮同等物を製造する工程であって、工程c)において真皮同等物を製造するために、初代線維芽細胞、特にヒト初代線維芽細胞が、培地1mLあたり2×10
5〜2×10
6個の細胞、好ましくは培地1mLあたり3×10
5〜1×10
6個の細胞、より好ましくは培地1mLあたり4×10
5〜7×10
5個の細胞、特に培地1mLあたり4.5×10
5〜5.5×10
5個の細胞の総濃度で使用される、工程、
d)初代ケラチノサイト、特にヒト初代ケラチノサイトを工程c)で製造された真皮同等物に適用し、前記ケラチノサイトを1〜10日の期間にわたって培養する工程、
e)工程d)後に得られたモデルを、空気−培地境界で7〜42日の期間にわたって培養する工程
を含む、インビトロ完全皮膚モデルを製造するための方法であって、
それぞれ500〜500000個の汗腺細胞の細胞数およびそれぞれ100〜6000μmの直径を有する1〜100個の三次元汗腺同等物が、工程c)および/または工程d)において前記同等物を添加することによって導入される、方法によって、適宜、構成される。
【0073】
本発明のこの主題のなおさらに特に好ましい実施形態は、特定の順序で以下:
a)低溶解性コラーゲンの懸濁液を提供する工程であって、工程a)における低溶解性コラーゲンの懸濁液が、懸濁液の総重量に対して、0.2重量%〜4.0重量%、好ましくは0.3重量%〜3.0重量%、より好ましくは0.4重量%〜2.0重量%、特に0.5重量%〜1.5重量%の総量のコラーゲンを含有し、工程a)における低溶解性コラーゲンの懸濁液が、pH0.1〜pH6.9、好ましくはpH2.0〜pH5.0、より好ましくはpH3.0〜pH4.5、特にpH3.5〜pH4.0を有する、工程、
b)工程a)で提供されたコラーゲン懸濁液を凍結乾燥することによって支持層を製造する工程であって、工程b)におけるコラーゲン懸濁液の凍結乾燥が、1時間あたり5℃〜40℃、好ましくは1時間あたり10℃〜30℃、より好ましくは1時間あたり18℃〜23℃、特に1時間あたり20℃〜22℃の冷却速度で行われる、工程、
c)初代線維芽細胞、特にヒト初代線維芽細胞を工程b)で製造された支持層に適用し、前記線維芽細胞を7〜28日の期間にわたって培養することによって真皮同等物を製造する工程であって、工程c)において真皮同等物を製造するために、初代線維芽細胞、特にヒト初代線維芽細胞が、培地1mLあたり2×10
5〜2×10
6個の細胞、好ましくは培地1mLあたり3×10
5〜1×10
6個の細胞、より好ましくは培地1mLあたり4×10
5〜7×10
5個の細胞、特に培地1mLあたり4.5×10
5〜5.5×10
5個の細胞の総濃度で使用される、工程、
d)初代ケラチノサイト、特にヒト初代ケラチノサイトを工程c)で製造された真皮同等物に適用し、前記ケラチノサイトを1〜10日の期間にわたって培養する工程であって、工程d)において、初代ケラチノサイト、特にヒト初代ケラチノサイトが、培地1mLあたり1.5×10
5〜1×10
6個の細胞、好ましくは培地1mLあたり2.5×10
5〜9×10
5個の細胞、より好ましくは培地1mLあたり3.5×10
5〜7×10
5個の細胞、特に培地1mLあたり4×10
5〜5×10
5個の細胞の総濃度で使用される、工程、
e)工程d)後に得られたモデルを、空気−培地境界で7〜42日の期間にわたって培養する工程
を含む、インビトロ完全皮膚モデルを製造するための方法であって、
それぞれ500〜500000個の汗腺細胞の細胞数およびそれぞれ100〜6000μmの直径を有する1〜100個の三次元汗腺同等物が、工程c)および/または工程d)において前記同等物を添加することによって導入される、方法によって、適宜、構成される。
【0074】
最後に、本発明のこの主題のなおさらに特に好ましい実施形態は、特定の順序で以下:
a)低溶解性コラーゲンの懸濁液を提供する工程であって、工程a)における低溶解性コラーゲンの懸濁液が、懸濁液の総重量に対して、0.2重量%〜4.0重量%、好ましくは0.3重量%〜3.0重量%、より好ましくは0.4重量%〜2.0重量%、特に0.5重量%〜1.5重量%の総量のコラーゲンを含有し、工程a)における低溶解性コラーゲンの懸濁液が、pH0.1〜pH6.9、好ましくはpH2.0〜pH5.0、より好ましくはpH3.0〜pH4.5、特にpH3.5〜pH4.0を有する、工程、
b)工程a)で提供されたコラーゲン懸濁液を凍結乾燥することによって支持層を製造する工程であって、工程b)におけるコラーゲン懸濁液の凍結乾燥が、1時間あたり5℃〜40℃、好ましくは1時間あたり10℃〜30℃、より好ましくは1時間あたり18℃〜23℃、特に1時間あたり20℃〜22℃の冷却速度で行われる、工程、
c)初代線維芽細胞、特にヒト初代線維芽細胞を工程b)で製造された支持層に適用し、前記線維芽細胞を7〜28日の期間にわたって培養することによって真皮同等物を製造する工程であって、工程c)において真皮同等物を製造するために、初代線維芽細胞、特にヒト初代線維芽細胞が、培地1mLあたり2×10
5〜2×10
6個の細胞、好ましくは培地1mLあたり3×10
5〜1×10
6個の細胞、より好ましくは培地1mLあたり4×10
5〜7×10
5個の細胞、特に培地1mLあたり4.5×10
5〜5.5×10
5個の細胞の総濃度で使用される、工程、
d)初代ケラチノサイト、特にヒト初代ケラチノサイトを工程c)で製造された真皮同等物に適用し、前記ケラチノサイトを1〜10日の期間にわたって培養する工程であって、工程d)において、初代ケラチノサイト、特にヒト初代ケラチノサイトが、培地1mLあたり1.5×10
5〜1×10
6個の細胞、好ましくは培地1mLあたり2.5×10
5〜9×10
5個の細胞、より好ましくは培地1mLあたり3.5×10
5〜7×10
5個の細胞、特に培地1mLあたり4×10
5〜5×10
5個の細胞の総濃度で使用される、工程、
e)工程d)後に得られたモデルを、空気−培地境界で7〜42日の期間にわたって培養する工程
を含む、インビトロ完全皮膚モデルを製造するための方法であって、
それぞれ500〜500000個の汗腺細胞の細胞数およびそれぞれ100〜6000μmの直径を有する50〜100個の三次元汗腺同等物が、工程c)においてこれらの同等物を添加することによって導入される、方法によって、適宜、構成される。
【0075】
エクリンおよび/またはアポクリンヒト汗腺の三次元汗腺同等物は、好ましくは、インビトロ完全皮膚モデルの製造のための上記方法において導入される。
【0076】
本発明による方法は、インビトロ完全皮膚モデルを製造するために、任意のインビボ方法を使用する必要はないという利点を有する。結果として、これらのモデルは、化粧品用途のために想定される物質を試験するためにも使用され得る。さらに、本発明による方法は、ハイスループット率を有するスクリーニング法において使用することができる標準化モデルの廉価な製造を提供する。さらに、この製造方法は、これらのモデルで生成されたインビトロデータをインビボ状況に適用することができるように、異なる分化された細胞層を有し、汗腺特異的マーカーを発現する完全皮膚モデルをもたらす。
【0077】
本発明によるインビトロ完全皮膚モデルに関する記述は、本発明による方法のさらに好ましい実施形態に準用する。
【0078】
第3の態様において、本発明は、化粧品および個人衛生において、特に化粧品物質の試験、同定、および調査のための、好ましくは体の汗および/または体臭の抑制および/または低減に関するそれらの有効性についての試験、同定、および調査のための本発明によるインビトロ完全皮膚モデルの使用に関する。既に言及したように、この完全皮膚モデルは、化粧品の分野における汗腺に対する試験物質の影響、特に個人衛生のものを決定するためのインビトロモデルとして使用されてもよい。可能な標準化の可能性が高く、およびインビボ状況の良好なシミュレーションのために、本発明による完全皮膚モデルは、特に、新規の汗抑制物質を発見するために使用されてもよい。本発明による完全皮膚モデルは、例えば、有効性、望ましくない副作用、例えば、刺激、毒性、および炎症効果、アレルギー誘発効果、または物質耐性に関する製品試験に特に好適である。さらに、本発明による完全皮膚モデルはまた、物質の再吸収、輸送、および/または浸透、ならびに創傷治癒に関する研究に使用されてもよい。さらに、このモデルにより、例えば、照射、熱、放射能、電場などの外部の環境影響が皮膚に及ぼす影響を調査することができる。そのような影響の作用は、例えば、遺伝子発現、代謝、増殖、分化、および細胞再編成を評価することによって決定されてもよい。本発明によるインビトロ完全皮膚モデルは、感染プロセスおよび治癒を研究するために、微生物、特に真菌、細菌、およびウイルスなどの病原性微生物でコロニー形成されることも可能である。
【0079】
本発明によるインビトロ完全皮膚モデルおよび方法に関する記述は、本発明による使用のさらに好ましい実施形態に準用する。
【0080】
さらなる態様では、本発明は、好ましくは自動化されたスクリーニング法において、特に化粧品物質の試験、同定、および調査のための、好ましくは体の汗および/または体臭の抑制および/または低減に関するそれらの有効性についての試験、同定、および調査のための本発明によるインビトロ完全皮膚モデルの使用に関する。
【0081】
本発明によるインビトロ完全皮膚モデルおよび方法に関する記述は、本発明による使用のさらに好ましい実施形態に準用する。
【0082】
さらなる態様では、本発明は、汗分泌および/または体臭の抑制および/または低減に対する化粧品物質の影響をインビトロ評価するための本発明によるインビトロ完全皮膚モデルの使用に関する。
【0083】
本発明による三次元汗腺同等物および方法に関する記述は、本発明による使用のさらに好ましい実施形態に準用する。
【0084】
最後に、さらなる態様では、本発明は、本発明によるインビトロ完全皮膚モデルを備えるシステム、特に試験システムに関する。
【0085】
本発明による三次元汗腺同等物および方法に関する記述は、本発明による使用のさらに好ましい実施形態に準用する。
【0086】
要約すると、本発明は、特に以下の点を特徴とする:
【0087】
1.インビトロ完全皮膚モデルであって、
a)少なくとも1つのコラーゲンマトリックスを含む少なくとも1つの支持層、
b)少なくとも1つの真皮同等物、
c)少なくとも1つの表皮同等物、
d)真皮同等物と表皮同等物との間に位置する少なくとも1つの基底膜
を含み、
真皮同等物b)および/または表皮同等物c)が、1〜100個の三次元汗腺同等物を含み、三次元汗腺同等物が、それぞれ500〜500000個の汗腺細胞を含み、それぞれ100〜6000μmの直径を有することを特徴とする、インビトロ完全皮膚モデル。
【0088】
2.コラーゲンマトリックスが、低溶解性コラーゲン、特にウマ、ブタ、またはウシ由来の腱から形成される低溶解性コラーゲンを含むことを特徴とする、ポイント1に記載のインビトロ完全皮膚モデル。
【0089】
3.コラーゲンマトリックスが、凍結乾燥された低溶解性コラーゲン、特にウマ、ブタ、またはウシ由来の腱から形成される低溶解性コラーゲンを含むことを特徴とする、ポイント1または2に記載のインビトロ完全皮膚モデル。
【0090】
4.コラーゲンマトリックスが、コラーゲンマトリックスの総重量に対して、0.5重量%〜5.0重量%、好ましくは0.8重量%〜3.5重量%、より好ましくは0.8重量%〜2.5重量%、特に0.8重量%〜1.2重量%の総量のコラーゲン、特に凍結乾燥された低溶解性コラーゲンを含有することを特徴とする、ポイント1〜3のいずれかに記載のインビトロ完全皮膚モデル。
【0091】
5.コラーゲンマトリックスが架橋コラーゲンマトリックスであることを特徴とする、ポイント1〜4のいずれかに記載のインビトロ完全皮膚モデル。
【0092】
6.コラーゲンマトリックスの架橋が、グルタルアルデヒド、p−ベンゾキノン、ジメチルアジピミデート、ジメチルピメリニデート、ジメチルスベリミデート、1,4−フェニレンジイソチオシアネート、ポリオキシエチレン−ビス−(イミダゾリルカルボニル)、ビス[ポリオキシエチレン−ビス(イミダゾリルカルボニル)]およびスベリン酸ビス(N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド、酵素、ならびにそれらの混合物、特に、グルタルアルデヒドによって形成される群からの化学的架橋剤を用いて行われることを特徴とする、ポイント5に記載のインビトロ完全皮膚モデル。
【0093】
7.真皮同等物が、初代線維芽細胞、特にヒト初代線維芽細胞から形成されることを特徴とする、ポイント1〜6のいずれかに記載のインビトロ完全皮膚モデル。
【0094】
8.真皮同等物が、5×10
5〜6×10
6個、好ましくは6×10
5〜5×10
6個、特に7×10
5〜4×10
6個の総細胞数において、初代線維芽細胞、特にヒト初代線維芽細胞を含有することを特徴とする、ポイント1〜7のいずれかに記載のインビトロ完全皮膚モデル。
【0095】
9.表皮同等物が、初代ケラチノサイト、特にヒト初代ケラチノサイトから形成されることを特徴とする、ポイント1〜8のいずれかに記載のインビトロ完全皮膚モデル。
【0096】
10.表皮同等物が、複数の相互に異なる細胞層、特に少なくとも2つの相互に異なる細胞層、および少なくとも1つの角質化した細胞層を含むことを特徴とする、ポイント1〜9のいずれかに記載のインビトロ完全皮膚モデル。
【0097】
11.表皮同等物が、4×10
5〜5×10
6個、好ましくは5.5×10
5〜4×10
6個、特に6.5×10
5〜3.5×10
6個の総細胞数において、初代ケラチノサイト、特にヒト初代ケラチノサイトを含有することを特徴とする、ポイント1〜10のいずれかに記載のインビトロ完全皮膚モデル。
【0098】
12.基底膜が、ラミニン、IV型コラーゲン、およびそれらの混合物によって形成される群からのタンパク質を含むことを特徴とする、ポイント1〜11のいずれかに記載のインビトロ完全皮膚モデル。
【0099】
13.真皮同等物b)および/または表皮同等物c)が、2〜100個の三次元汗腺同等物、好ましくは5〜100個の三次元汗腺同等物、より好ましくは20〜100個の三次元汗腺同等物、特に50〜100個の三次元汗腺同等物を含むことを特徴とする、ポイント1〜12のいずれかに記載のインビトロ完全皮膚モデル。
【0100】
14.前記真皮同等物b)が、三次元汗腺同等物を含むことを特徴とする、ポイント1〜13のいずれかに記載のインビトロ完全皮膚モデル。
【0101】
15.三次元汗腺同等物が、それぞれ100〜4000μm、好ましくは100〜3000μm、特に200〜2500μmの直径を有することを特徴とする、ポイント1〜14のいずれかに記載のインビトロ完全皮膚モデル。
【0102】
16.三次元汗腺同等物が、それぞれマトリックス化合物および/または支持体を含まず、特に、マトリックス化合物および支持体を含まないことを特徴とする、ポイント1〜15のいずれかに記載のインビトロ完全皮膚モデル。
【0103】
17.マトリックス化合物および/または支持体が、コラーゲン、特にI型コラーゲンおよび/またはIII型および/またはIV型、スクレロタンパク質、ゼラチン、キトサン、グルコサミン、グルコサミノグルカン(GAG)、硫酸ヘパリンプロテオグリカン、硫酸化糖タンパク質、増殖因子、架橋多糖類、架橋ポリペプチド、ならびにそれらの混合物によって形成される群から選択されることを特徴とする、ポイント16に記載のインビトロ完全皮膚モデル。
【0104】
18.三次元汗腺同等物が、それぞれエクリンおよび/またはアポクリンヒト汗腺の三次元汗腺同等物であることを特徴とする、ポイント1〜17のいずれかに記載のインビトロ完全皮膚モデル。
【0105】
19.インビトロ完全皮膚モデルを製造するための方法であって、該方法が、特定の順序で以下:
a)低溶解性コラーゲンの懸濁液を提供する工程、
b)工程a)で提供されたコラーゲン懸濁液を凍結乾燥することによって支持層を製造する工程、
c)初代線維芽細胞、特にヒト初代線維芽細胞を工程b)で製造された支持層に適用し、7〜28日の期間にわたって前記線維芽細胞を培養することによって真皮同等物を製造する工程、
d)初代ケラチノサイト、特にヒト初代ケラチノサイトを工程c)で製造された真皮同等物に適用し、前記ケラチノサイトを1〜10日の期間にわたって培養する工程、
e)工程d)後に得られたモデルを、空気−培地境界で7〜42日の期間にわたって培養する工程
を含み、
それぞれ500〜500000個の汗腺細胞の細胞数およびそれぞれ100〜6000μmの直径を有する1〜100個の三次元汗腺同等物が、工程c)および/または工程d)において前記同等物を添加することによって導入される、方法。
【0106】
20.工程a)における低溶解性コラーゲンの懸濁液が、懸濁液の総重量に対して、0.2重量%〜4.0重量%、好ましくは0.3重量%〜3.0重量%、より好ましくは0.4重量%〜2.0重量%、特に0.5重量%〜1.5重量%の総量のコラーゲンを含有することを特徴とする、ポイント19に記載の方法。
【0107】
21.工程a)における低溶解性コラーゲンの懸濁液が、pH0.1〜pH6.9、好ましくはpH2.0〜pH5.0、より好ましくはpH3.0〜pH4.5、特にpH3.5〜pH4.0を有することを特徴とする、ポイント19または20に記載の方法。
【0108】
22.工程b)におけるコラーゲン懸濁液の凍結乾燥が、5℃〜40℃/時間、好ましくは10℃〜30℃、より好ましくは18℃〜23℃/時間、特に20℃〜22℃/時間の冷却速度で行われることを特徴とする、ポイント19〜21のいずれかに記載の方法。
【0109】
23.工程c)における真皮同等物の製造のために、初代線維芽細胞、特にヒト初代線維芽細胞が、培地1mLあたり2×10
5〜2×10
6個の細胞、好ましくは培地1mLあたり3×10
5〜1×10
6個の細胞、より好ましくは培地1mLあたり4×10
5〜7×10
5個の細胞、特に培地1mLあたり4.5×10
5〜5.5×10
5個の細胞の総濃度で使用されることを特徴とする、ポイント19〜22のいずれかに記載の方法。
【0110】
24.初代線維芽細胞、特にヒト初代線維芽細胞の培養が、8〜25日、好ましくは10〜22日、より好ましくは11〜20日、特に12〜18日の期間にわたって、30℃〜40℃の温度で工程c)において行われることを特徴とする、ポイント19〜23のいずれかに記載の方法。
【0111】
25.工程d)において、初代ケラチノサイト、特にヒト初代ケラチノサイトが、培地1mLあたり1.5×10
5〜1×10
6個の細胞、好ましくは培地1mLあたり2.5×10
5〜9×10
5個の細胞、より好ましくは培地1mLあたり3.5×10
5〜7×10
5個の細胞、特に培地1mLあたり4×10
5〜5×10
5個の細胞の総濃度で使用されることを特徴とする、ポイント19〜24のいずれかに記載の方法。
【0112】
26.初代ケラチノサイト、特にヒト初代ケラチノサイトの培養が、浸漬培養で、1〜8日、好ましくは1〜6日、より好ましくは1〜4日、特に1〜2日の期間にわたって、30℃〜40℃の温度で工程d)において行われることを特徴とする、ポイント19〜25のいずれかに記載の方法。
【0113】
27.工程d)後に得られたモデルの培養が、空気−培地境界で、8〜35日、好ましくは9〜30日、より好ましくは10〜20日、特に10〜13日の期間にわたって、30℃〜40℃の温度で行われることを特徴とする、ポイント19〜26のいずれかに記載の方法。
【0114】
28.三次元汗腺同等物が、工程c)において導入され、初代線維芽細胞、特にヒト初代線維芽細胞が三次元汗腺同等物と混合され、次いで、工程b)で製造された支持層に適用されることを特徴とする、ポイント19〜27のいずれかに記載の方法。
【0115】
29.初代ケラチノサイト、特にヒト初代ケラチノサイトを適用する1〜3時間前に播種される三次元汗腺同等物が、工程d)において導入されることを特徴とする、ポイント19〜27のいずれかに記載の方法。
【0116】
30.それぞれ50〜500000個の汗腺細胞の細胞数およびそれぞれ500〜2500μmの直径を有する50〜100個の三次元汗腺同等物が、工程c)および/または工程d)において、特に工程c)において導入されることを特徴とする、ポイント19〜29のいずれかに記載の方法。
【0117】
31.化粧品および個人衛生における、特に化粧品物質の試験、同定、および調査のための、好ましくは、体の汗および/または体臭の抑制および/または低減に関するそれらの有効性についての試験、同定、および調査のためのポイント1〜18のいずれかに記載のインビトロ完全皮膚モデルの使用。
【0118】
32.好ましくは自動化されたスクリーニング法、特に化粧品物質の試験、同定、および調査のための、好ましくは体の汗および/または体臭の抑制および/または低減に関するそれらの有効性についての試験、同定、および調査のためのポイント1〜18のいずれかに記載のインビトロ完全皮膚モデルの使用。
【0119】
33.汗分泌および/または体臭の抑制および/または低減に対する化粧品物質の影響のインビトロ評価のためのポイント1〜18のいずれかに記載のインビトロ完全皮膚モデルの使用。
【0120】
34.ポイント1〜18のいずれかに記載のインビトロ完全皮膚モデルを備えるシステム、特に試験システム。
【0121】
以下の実施例は、本発明を例示するものであり、いかようにも限定しない。
【実施例】
【0122】
1.1 汗腺の単離
天然の汗腺は、整形外科手術を受けている患者から採取され、材料を研究目的に使用することができることに同意したヒト組織サンプル(生検として既知のもの)から得た。使用された組織は、上腕リフトおよびフェイスリフト中に取り出した。脇の下の領域からのエクリンおよびアポクリン汗腺をこれらから単離した。
【0123】
この目的のために、それぞれの生検を小片に分けた後、最大サイズおよそ1cm×1cmの切片に切断した。次に、結合組織がほぼ完全に消化されるまで、およそ3.5〜5時間、インキュベーターにおいて37℃で等量のコラゲナーゼII(5mg/mL)とサーモリシン(0.25mg/mL)との混合物で皮膚を消化させた。次いで、この混合物を1200rpmで5分間遠心分離し、上清を破棄して酵素溶液および余分な脂肪を除去した。残ったペレットをDMEM溶液に取り、溶液をペトリ皿に移した。インタクトな汗腺を、マイクロキャピラリーを使用して双眼顕微鏡下で単離し、新鮮なDMEM培地に移した。
【0124】
1.2 単離した天然汗腺の培養
工程1.1で単離した汗腺をコラーゲンIで被覆した培養フラスコに入れ、次いで、25mLの栄養培地を添加した。37℃および5%のCO
2下のインキュベーター内で7〜21日間培養した後、成長した汗腺細胞を解離させ、コラーゲンIで被覆した培養フラスコ内でコンフルエンス(初代汗腺細胞の単層培養)に再培養した。
【0125】
使用した栄養培地の組成は以下の通りであった:
【表1】
【0126】
1.3 細胞調製物および三次元汗腺同等物の製造
初代汗腺細胞の上記単層培養の正確な細胞数を決定した後、それらを上記栄養培地を使用して1μLあたり10〜5000個の細胞数に調整した後、この細胞懸濁液の50μLを「SureDrop(登録商標)Inlet」システムを使用して「GravityPLUS(登録商標)」プレートの各ウェルに移した(いずれもInsphero AG、スイス)。培養は、36℃〜38℃および培養に使用した雰囲気の総重量に対して、5重量%のCO
2含有量下で行った。1〜3日後、「GravityPLUS(登録商標)」プレートのウェル中の培地のそれぞれ40重量%を新鮮な栄養培地と交換した。3〜5日間培養した後、3D汗腺同等物を50〜200μLの栄養培地を添加することによって収穫し、「GravityTRAP(登録商標)」−Platte(Insphero AG、スイス)に移した。収穫する前に、「GravityTRAP(登録商標)」−Platteをマルチチャンネルピペットを用いて60〜100μLのケラチノサイト培地で湿らせ、気泡の形成を最小限にし、三次元汗腺同等物の損失を防止した。収穫後、プレートを100〜300×gで1〜5分間遠心分離して気泡を除去した。
【0127】
1.4 真皮同等物中に三次元汗腺同等物を有するインビトロ完全皮膚モデルの製造
架橋コラーゲンマトリックスを含んだ支持層の製造は、公開済みの特許文献WO2006/019147A1の22頁および23頁の実施例1および2に記載されているように行った。培地を吸引除去した後、マイクロタイタープレート中の支持層に、予め培養した線維芽細胞(培地1mLあたり6×10
5個の繊維芽細胞;使用した培地は、10重量%のFCS、100U/mLのペニシリンG、25μg/mLのゲンタマイシン、および1mMのアスコルビル−2−ホスフェートを有するDMEMであった)の混合物の1mLを、ポイント1.3に記載されているように製造された60〜100個の三次元汗腺同等物(およそ25000個の汗腺細胞あたりの細胞数)と補充した。この目的のために、培養フラスコ中で前培養された第3または第4のパスの線維芽細胞を、トリプシン溶液を添加することによって培養フラスコの底部から解離させ、培地で洗浄し、遠心分離した。細胞数を決定した後、細胞懸濁液を上記の濃度に調整し、上記の数の別個の汗腺同等物を加えた。線維芽細胞と汗腺同等物との混合物を支持層に適用した後、プレートの蓋を閉め、プレートを37℃および5%v/vのCO
2下で16日間浸漬インキュベートし、培地は3日ごとに交換した。16日後、三次元汗腺同等物が組み込まれた真皮同等物が形成された。次に、ケラチノサイトをこの真皮同等物に播種した。この目的のために、第1または第2パスのケラチノサイトを、細胞培養フラスコ中で、ポイント1.2で記述した栄養培地で予備培養し、次いで、トリプシン溶液を添加することによって底部から解離させた。栄養培地で洗浄し、遠心分離した後、ケラチノサイト懸濁液の細胞数を培地1mLあたり1〜6×10
5個のケラチノサイトに調整した。真皮同等物の表面がちょうど湿るまで、真皮同等物を含有したマイクロタイタープレートのウェルから培地を吸引した。次に、先に調製したケラチノサイト懸濁液の1mLを添加し、プレートの蓋を閉めた。浸漬培養における培養は、37℃および5%v/vのCO
2下で2日間行った。2日目の最後に、皮膚モデルをウェルから取り出し、ペトリ皿中の金属スペーサ上に置いた濾紙上に置いた。次いで、培地が濾紙の上端に達し、皮膚モデルの基部の周りにそれ自体が分布するように、ペトリ皿にポイント1.2で記述した栄養培地をある程度まで充填した。一方、モデルの表面は、培地によって覆わなかった(エアリフト培養)。エアリフト培養でさらに11日間培養した後、多層表皮および角質化した組織表面を有した本発明によるインビトロ完全皮膚モデルが得られた。
【0128】
1.5 表皮同等物中に三次元汗腺同等物を有するインビトロ完全皮膚モデルの製造
真皮同等物を支持する支持層は、線維芽細胞の培養を16日間行った、公開済みの特許文献WO2006/018147A1の22〜24頁の実施例1〜3に記載されているように製造した。ポイント1.3に記載されているよう製造された三次元汗腺同等物は、ポイント1.2に記載された栄養培地にそれらを懸濁させ、次いで、この懸濁液を真皮同等物に適用することによって、この真皮同等物上に置いた。1〜2時間後、ケラチノサイトをポイント1.4で記載したように播種した。浸漬条件下で1日後、モデルを空気−液体界面培養フォーマットに移し、これらの条件下でさらに11日間培養した。このようにして製造されたインビトロ完全皮膚モデルは、多層表皮および角質化した組織表面を含んでいた。
【0129】
1.6 インビトロ完全皮膚モデルの分析
汗腺特異的マーカータンパク質からのタンパク質発現をアッセイするために、組織学的部分について免疫蛍光染色を行った。この目的のために、ポイント1.4および1.5に記載されたように製造されたインビトロ完全皮膚モデルを1×0.5cmの大きさの切片に切断し、パラフィンに包埋するか、または包埋媒体で凍結させた。次に、組織学的部分(例えば、製造会社であるAbcam(ケンブリッジ、UK)製)についての標準的な蛍光プロトコールに従って物体を区分し、次いで染色した。次いで、染色されたサンプルは、蛍光顕微鏡または共焦点レーザー走査顕微鏡下で分析することができた。以下の汗腺特異的マーカータンパク質をアッセイした:癌胎児性抗原(CEA)、アルファ平滑筋アクチン(α−SMA)、ムスカリン性アセチルコリンレセプターM3(M−ACh−R3)、ナトリウム−塩化カリウム共輸送体1(NKCC1)、ガラニン受容体2(GalR2)。本発明によるインビトロ完全皮膚モデルにおける汗腺特異的マーカータンパク質の発現は、このモデルにおける三次元汗腺同等物がその天然の機能を保持していたことを示す。したがって、これらのモデルは、汗抑制に対する物質の影響を調査するために使用することができる。