【文献】
Yuta Koda, Takaya Terashima, and Mitsuo Sawamoto,Fluorous Microgel Star Polymers: Selective Recognition and Separation of Polyfluorinated Surfactants and Compounds in Water,Journal of the American Chemical Society,米国,American Chemical Society,2014年10月10日,136巻44号,第15742-15748頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記重合性化合物が、分子内に、エーテル結合を含んでいてもよい炭素原子数1乃至30の脂肪族炭化水素基、及び1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーFをさらに含む、請求項1に記載の重合性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<親水性高分岐ポリマー>
本発明は、分子内にアミノ基(−NH
2など)、アミド構造(−C(=O)−NH−など)、アンモニウム基(−N(CH
3)
3+など)及びリン酸構造(−O−P(=O)(OH)−O−など)からなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性部位とフルオロアルキル基とを有する親水性高分岐ポリマーを対象とするものである。
詳細には、本発明は、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーA、分子内に前記少なくとも1種の親水性部位及び2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーB及び分子内に前記少なくとも1種の親水性部位及び1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCからなる群より少なくとも2種選ばれるか、又は前記モノマーBからなる親水性モノマーと、分子内に前記フルオロアルキル基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーD、そして所望により分子内に、エーテル結合を含んでいてもよい炭素原子数1乃至30の脂肪族炭化水素基、及び1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーFとを含む重合性化合物を、該モノマーA及び該モノマーBの合計モル数に対して5〜200mol%量の重合開始剤Eの存在下で重合させることにより得られる親水性高分岐ポリマーに関するものである。
また、前記親水性高分岐ポリマーは、本発明の効果を損わない限り、前記モノマーA、前記モノマーB、前記モノマーC、前記モノマーD、及び前記モノマーFに属さないその他のモノマーを、必要に応じて共重合させてもよい。
なお、前記親水性高分岐ポリマーは、いわゆる開始剤断片組込み(IFIRP)型高分岐ポリマーであり、その末端に重合に使用した重合開始剤Eの断片を有している。
【0011】
[分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーA]
本発明において、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAは、ビニル基又は(メタ)アクリロイル基の何れか一方又は双方を有する化合物であることが好ましく、特にジビニル化合物又はジ(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。なお、本発明では(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレート化合物とメタクリレート化合物の両方をいう。例えば(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸をいう。
【0012】
上記モノマーAの中でも、特に下記式[1]で表される化合物であることが好ましい。
【化6】
(式中、R
1はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、L
1はヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数2乃至12のアルキレン基を表し、aは1乃至30の整数を表す。)
【0013】
上記式[1]中、L
1であるヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数2乃至12のアルキレン基としては、例えばエチレン基、トリメチレン基、2−ヒドロキシトリメチレン基、メチルエチレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、ペンタメチレン基、2,2−ジメチルトリメチレン基、ヘキサメチレン基、ノナメチレン基、2−メチルオクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基等が挙げられ、それらの中でも、表面改質効果の観点から、エチレン基又はヘキサメチレン基であることが好ましい。
また式[1]中のaは1乃至10の整数であることが好ましい。
【0014】
前記モノマーAとしては、例えば、以下の(A1)乃至(A7)に示した有機化合物が挙げられる。
(A1)ビニル系炭化水素類:
(A1−1)脂肪族ビニル系炭化水素類;イソプレン、ブタジエン、3−メチル−1,2−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,2−ポリブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、オクタジエン等
(A1−2)脂環式ビニル系炭化水素類;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ノルボルナジエン等
(A1−3)芳香族ビニル系炭化水素類;ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン、ジビニルフルオレン、ジビニルカルバゾール、ジビニルピリジン等
(A2)ビニルエステル、アリルエステル、ビニルエーテル、アリルエーテル及びビニルケトン:
(A2−1)ビニルエステル;アジピン酸ジビニル、マレイン酸ジビニル、フタル酸ジビニル、イソフタル酸ジビニル、イタコン酸ジビニル、ビニル(メタ)アクリレート等
(A2−2)アリルエステル;マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、アリル(メタ)アクリレート等
(A2−3)ビニルエーテル;ジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等
(A2−4)アリルエーテル;ジアリルエーテル、ジアリルオキシエタン、トリアリルオキシエタン、テトラアリルオキシエタン、テトラアリルオキシプロパン、テトラアリルオキシブタン、テトラメタリルオキシエタン等
(A2−5)ビニルケトン;ジビニルケトン、ジアリルケトン等
(A3)(メタ)アクリル酸エステル:
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリン=トリ(メタ)アクリレート、グリセリン=1,3−ジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−アクリロイルオキシ−3−メタクリロイルオキシプロパン、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルコキシチタントリ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ビス[4−(メタ)アクリロイルチオフェニル]スルフィド、ビス[2−(メタ)アクリロイルチオエチル]スルフィド、芳香族ウレタンジ(メタ)アクリレート、イソホロンウレタンジ(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタンジ(メタ)アクリレート等
(A4)ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系化合物:
ポリエチレングリコール(分子量:200,300,400,600,1000など)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量:400,500,700など)ジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール(分子量:650など)ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコール(分子量:700など)ジ(メタ)アクリレート等
(A5)含窒素ビニル系化合物:
ジアリルアミン、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルシアヌレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ビスマレイミド等
(A6)含ケイ素ビニル系化合物:
ジメチルジビニルシラン、ジビニル(メチル)(フェニル)シラン、ジフェニルジビニルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラフェニルジシラザン、ジエトキジビニルシラン等
(A7)含フッ素ビニル系化合物:
1,4−ジビニルパーフルオロブタン、1,4−ジビニルオクタフルオロブタン、1,6−ジビニルパーフルオロヘキサン、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサン、1,8−ジビニルパーフルオロオクタン、1,8−ジビニルヘキサデカフルオロオクタン等。
【0015】
これらのうち好ましいものは、上記(A1−3)群の芳香族ビニル系炭化水素類、(A2)群のビニルエステル、アリルエステル、ビニルエーテル、アリルエーテル及びビニルケトン、(A3)群の(メタ)アクリル酸エステル、(A4)群のポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系化合物、並びに(A5)群の含窒素ビニル系化合物である。特に好ましいものとして、溶媒溶解性及び樹脂分散性の観点からエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0016】
[分子内に前記少なくとも1種の親水性部位及び2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーB]
本発明において、分子内に前記少なくとも1種の親水性部位及び2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBは、前記親水性部位の少なくとも1種と、ビニル基又は(メタ)アクリロイル基の何れか一方又は双方を有する化合物であることが好ましく、特に前記親水性部位の少なくとも1種を有するジビニル化合物又はジ(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。
【0017】
なかでも、前記モノマーBは、前記親水性部位としてリン酸構造を有する化合物であることが好ましく、特にビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)=ヒドロゲン=ホスフェート、又は1,3−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル−2−イル=ジヒドロゲン=ホスフェートであることが好ましい。
【0018】
前記モノマーBがモノマーAと併用される場合、モノマーB100質量部に対してモノマーAを50〜300質量部の割合にて使用することが好ましい。
【0019】
[分子内に前記少なくとも1種の親水性部位及び1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーC]
本発明において、前記少なくとも1種の親水性部位及び1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCは、好ましくは前記親水性部位の少なくとも1種と、ビニル基又は(メタ)アクリロイル基の何れか一方とを有する化合物であることが好ましく、特に下記式[2]乃至式[4]で表される化合物群から選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【化7】
(式中、R
2は水素原子又はメチル基を表し、R
3乃至R
5はそれぞれ独立してヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至6のアルキル基を表し、L
2は炭素原子数2乃至12のアルキレン基を表し、X
-は対アニオンを表し、kは1乃至30の整数を表す。)
【化8】
(式中、R
6は水素原子又はメチル基を表し、R
7及びR
8はそれぞれ独立してヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至6のアルキル基を表し、L
3は炭素原子数2乃至12のアルキレン基を表し、L
4はヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至12のアルキレン基を表し、Z
-はCOO
-基又はSO
3-基を表し、mは1乃至30の整数を表す。)
【化9】
(式中、R
9は水素原子又はメチル基を表し、R
10乃至R
12はそれぞれ独立してヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至6のアルキル基を表し、L
5及びL
6はそれぞれ独立して炭素原子数2乃至12のアルキレン基を表し、nは1乃至30の整数を表す。)
【0020】
上記式[2]中のR
3乃至R
5、式[3]中のR
7及びR
8、及び式[4]中のR
10乃至R
12における、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、2−ヒドロキシエチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、4−ヒドロキシブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0021】
式[2]中のL
2、式[3]中のL
3、及び式[4]中のL
5及びL
6における炭素原子数2乃至12のアルキレン基としては、エチレン基、トリメチレン基、メチルエチレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、ペンタメチレン基、2,2−ジメチルトリメチレン基、ヘキサメチレン基、ノナメチレン基、2−メチルオクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基等が挙げられる。
これらの中でも、表面改質効果の観点から、L
2、L
3、L
5、L
6はエチレン基であることが好ましい。
【0022】
式[3]中のL
4におけるヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1乃至12のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、2−ヒドロキシトリメチレン基、メチルエチレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、ペンタメチレン基、2,2−ジメチルトリメチレン基、ヘキサメチレン基、ノナメチレン基、2−メチルオクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基等が挙げられる。
これらの中でも、表面改質効果の観点から、L
4はメチレン基であることが好ましい。
【0023】
また式[2]中のX
-が表す対アニオンとしては、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン;ベンゼンスルホネートアニオン、p−トルエンスルホネートアニオン、メタンスルホネートアニオン、トリフルオロメタンスルホネートアニオン等のスルホネートアニオン;パークロレートアニオン;テトラフルオロボレートアニオン、テトラフェニルボレートアニオン等のボレートアニオン;ヘキサフルオロホスフェートアニオン;アセテートアニオンなどが挙げられる。
【0024】
前記モノマーCとしては、例えば、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(N−tert−ブチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等のアクリルアミド類;N−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム=クロリド、N−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム=ブロミド、N−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム=ヨージド、N−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム=メタンスルホネート、N−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−N,N−ジエチル−N−メチルアンモニウム=メタンスルホネート、N−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−N−ブチル−N,N−ジメチルアンモニウム=ヨージド、N−(2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)−N,N−ジエチル−N−メチルアンモニウム=クロリド等の(メタ)アクリロイル基含有4級アンモニウム塩類;2−((2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルアンモニオ)アセテート(N−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−N,N−ジメチルグリシンともいう)、3−((2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルアンモニオ)プロパノエート、4−((2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルアンモニオ)ブタノエート、5−((2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルアンモニオ)ペンタノエート等のカルボキシベタイン類;((2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルアンモニオ)メタンスルホネート、2−((2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルアンモニオ)エタンスルホネート、3−((2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート、4−((2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルアンモニオ)ブタン−1−スルホネート等のスルホベタイン類;2−(メタ)アクリロイルオキシエチル=ジビドロゲン=ホスフェート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル=ジビドロゲン=ホスフェート等の(メタ)アクリロイル基含有リン酸エステル類;(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスホリルコリン、(4−(メタ)アクリロイルオキシブチル)ホスホリルコリン等のホスホリルコリン類などが挙げられる。
【0025】
上記モノマーCの中でも、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム=クロリド、N−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−N,N−ジメチルグリシン、3−((2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル=ジビドロゲン=ホスフェート、(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスホリルコリンが好ましく、特にN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム=クロリド、N−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−N,N−ジメチルグリシン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル=ジビドロゲン=ホスフェートが好ましい。
【0026】
本発明において、モノマーCの使用量は、溶媒溶解性、樹脂分散性及び表面改質効果の観点から、前記モノマーA及び前記モノマーBの合計モル数に対して50〜1,200モル%の量で、より好ましくは、100〜1,000モル%の量で使用することが好ましい。
【0027】
[分子内に前記フルオロアルキル基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーD]
本発明において、分子内にフルオロアルキル基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーDは、好ましくは分子内にフルオロアルキル基と、ビニル基又は(メタ)アクリロイル基の何れか一方を少なくとも1つ有する化合物であることが好ましく、特に下記式[5]で表される化合物が好ましい。
【化10】
(式中、R
13は水素原子又はメチル基を表し、R
14は炭素原子数1乃至12のフルオロアルキル基を表す。)
中でも、前記モノマーDは下記式[6]で表される化合物であることが好ましい。
【化11】
(式中、R
13は前記式[5]における定義と同じ意味を表し、Gは水素原子又はフッ素原子を表し、pは1又は2を表し、qは0乃至5の整数を表す。)
【0028】
このようなモノマーDとしては、例えば、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、親水性及び表面改質効果の観点から2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレートが最も好ましい。
【0029】
本発明において、モノマーDの使用量は、親水性及び表面改質効果の観点から、前記モノマーA及び前記モノマーBの合計モル数に対して50〜300モル%の量で、より好ましくは、50〜150モル%の量で使用することが好ましい。
【0030】
[重合開始剤E]
上記重合開始剤Eとしては、好ましくはアゾ系重合開始剤が用いられる。アゾ系重合開始剤としては、例えば以下の(1)乃至(5)に示す化合物を挙げることができる。
(1)アゾニトリル化合物:
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等;
(2)アゾアミド化合物:
2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等;
(3)環状アゾアミジン化合物:
2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルフェートジヒドレート、2,2’−アゾビス[2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン]ジヒドロクロリド、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2'−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジヒドロクロリド等;
(4)アゾアミジン化合物:
2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラヒドレート等;
(5)その他:
2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)、ビス(2−(パーフルオロメチル)エチル)4,4’−アゾビス(4−シアノバレレート)、ビス(2−(パーフルオロブチル)エチル)4,4’−アゾビス(4−シアノバレレート)、ビス(2−(パーフルオロヘキシル)エチル)4,4’−アゾビス(4−シアノバレレート)等。
【0031】
上記アゾ系重合開始剤の中でも、後述する重合性組成物における活性エネルギー線重合性多官能モノマーへの、当該親水性高分岐ポリマーの分散性の観点から、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)が好ましい。
【0032】
前記重合開始剤Eは、前記モノマーA及び前記モノマーBの合計モル数に対して、5〜200モル%の量で使用され、好ましくは20〜200モル%の量で、より好ましくは20〜100モル%の量で使用される。
【0033】
[分子内に、エーテル結合を含んでいてもよい炭素原子数1乃至30の脂肪族炭化水素基、及び1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーF]
本発明において、前記モノマーA乃至モノマーDに加えて、エーテル結合を含んでいてもよい炭素原子数1乃至30の脂肪族炭化水素基、及び1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーFをさらに含んでいてもよい。該モノマーFを加えることにより、後述する硬化膜(ハードコート層)の形成時において、表面均一性を損なう微小粒状物の生成を抑制し、硬化膜の表面均一性をより向上させることができる。
上記モノマーFとしては、好ましくはエーテル結合を含んでいてもよい炭素原子数1乃至30の脂肪族炭化水素基と、ビニル基又は(メタ)アクリロイル基の何れか一方とを有する化合物であることが好ましい。
【0034】
上記エーテル結合を含んでいてもよい炭素原子数1乃至30の脂肪族炭化水素基としては、炭素原子数1乃至30の直鎖状アルキル基、炭素原子数1乃至30の分枝鎖状アルキル基、炭素原子数3乃至30の環状アルキル基又はこれら鎖又は環の組み合わせからなる炭素原子数30以下のアルキル基、さらにこれらアルキル基の少なくとも一部がエーテル結合(−O−)によって中断されている基が挙げられ、好ましくは炭素原子数1乃至30の直鎖状アルキル基が挙げられる。
具体的には、以下に示す直鎖状、分枝鎖状もしくは環状の、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基(ミリスチル基)、ペンタデシル基、ヘキサデシル基(パルミチル基)、ヘプタデシル基(マルガリル基)、オクタデシル基(ステアリル基)、ノナデシル基、イコシル基等並びにこれらの少なくとも一部がエーテル結合によって中断されている基が挙げられる。
【0035】
中でも本発明における好ましいモノマーFとして、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
本発明において、モノマーFの使用量は、反応性や表面均一性を向上させる観点から、前記モノマーA及び前記モノマーBの合計モル数に対して50〜500モル%の量で、より好ましくは、50〜200モル%の量で使用することが好ましい。
【0037】
[その他モノマー]
本発明において、前記モノマーA、モノマーB、モノマーC、モノマーD及びモノマーFに属さないその他のモノマーを共重合してもよく、その場合、その他のモノマーとしては分子内に1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーであれば特に制限はないが、ビニル化合物又は(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。
本発明において、その他モノマーの使用量は、前記モノマーA及びモノマーBの合計モル数に対して5〜300モル%の量で使用することが好ましい。
【0038】
[親水性高分岐ポリマーの製造方法]
本発明の親水性高分岐ポリマーは、前述のモノマーA乃至モノマーCのうち少なくとも2種選ばれるか又はモノマーBからなる親水性モノマーと、モノマーDと、所望によりモノマーFとを含む重合性化合物を、該モノマーA及びモノマーBの合計モル数に対して所定量の重合開始剤Eの存在下で重合させることにより得られる。該重合方法としては公知の方法、例えば溶液重合、分散重合、沈殿重合、及び塊状重合等が挙げられ、中でも溶液重合又は沈殿重合が好ましい。特に分子量制御の点から、有機溶媒中での溶液重合によって反応を実施することが好ましい。
【0039】
このとき用いられる有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素類;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化物類;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類又はエステルエーテル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール等のアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、並びにこれらの2種以上の混合溶媒が挙げられる。
【0040】
これらのうち好ましいのは、芳香族炭化水素類、ハロゲン化物類、エステル類、エステルエーテル類、エーテル類、ケトン類、アルコール類、アミド類等であり、特に好ましいものはベンゼン、トルエン、キシレン、o−ジクロロベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等である。
【0041】
上記重合反応を有機溶媒の存在下で行う場合、前記モノマーA及びモノマーBの合計1質量部に対する前記有機溶媒の質量は、通常5〜120質量部であり、好ましくは10〜110質量部である。
重合反応は常圧、加圧密閉下、又は減圧下で行われ、装置及び操作の簡便さから常圧下で行うのが好ましい。また、N
2等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
重合温度は、反応混合物の沸点以下であれば任意であるが、重合効率と分子量調節の点から、好ましくは50〜200℃であり、さらに好ましくは80〜150℃であり、80〜130℃がより好ましい。
反応時間は、反応温度や、モノマーA、モノマーB、モノマーC、モノマーD、重合開始剤E並びに所望によりモノマーFの種類及び割合、重合溶媒種等によって変動するものであるため一概には規定できないが、好ましくは30〜720分、より好ましくは40〜540分である。
重合反応の終了後、得られた親水性高分岐ポリマーを任意の方法で回収し、必要に応じて洗浄等の後処理を行う。反応溶液から高分子を回収する方法としては、再沈殿等の方法が挙げられる。
【0042】
上記親水性高分岐ポリマーのゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)は、1,000〜400,000、好ましくは1,000〜200,000、より好ましくは1,000〜50,000である。
【0043】
<重合性組成物>
本発明は、前記親水性高分岐ポリマーを含む重合性組成物、詳細には、(a)活性エネルギー線重合性多官能モノマー100質量部、(b)前記親水性高分岐ポリマー0.001〜20質量部、及び(c)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤1〜20質量部を含有する重合性組成物も対象とする。
【0044】
[(a)活性エネルギー線重合性多官能モノマー]
上記(a)活性エネルギー線重合性多官能モノマー(以下、単に(a)多官能モノマーとも称する)としては、後述する成分(c)重合開始剤の作用によって重合する重合性の部位を、分子内に2個以上有する化合物であれば特に制限はなく、例えばウレタンアクリル系、エポキシアクリル系、各種(メタ)アクリレート系等の(メタ)アクリロイル基を2個以上含有する多官能モノマー等が挙げられる。
好ましくは、(a)多官能モノマーは、多官能(メタ)アクリレート化合物及び多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物からなる群から選ばれるモノマーであることが望ましい。
【0045】
このような活性エネルギー線硬化性多官能モノマーのうち、多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、プロピレンオキシド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−アクリロイルオキシ−3−メタクリロイルオキシプロパン、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ビス[4−(メタ)アクリロイルチオフェニル]スルフィド、ビス[2−(メタ)アクリロイルチオエチル]スルフィド、1,3−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
これら化合物は一種を単独で用いてもよいし、必要に応じて二種以上を混合して用いてもよい。
これらの例示の中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を3個以上含有する化合物が好ましく、さらにペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を4個以上含有する化合物がより好ましい。
【0046】
また、多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、エチレン性不飽和結合の部位を有する(メタ)アクリロイル基を2個以上有するウレタン化合物が挙げられる。なお、本発明で好適に用いられる多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート或いは芳香族ウレタン(メタ)アクリレートの何れであってもよい。これら化合物は一種を単独で用いてもよいし、必要に応じて二種以上を混合して用いてもよい。
【0047】
本発明で好適に用いられる多官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、例えば、ポリイソシアネート化合物と、活性水素を有する(メタ)アクリル系モノマーとの反応により得られる。
上記ポリイソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロメタンジイソシアネート或いはこれらジイソシアネート化合物のうち芳香族のイソシアネート類を水添して得られるジイソシアネート化合物(例えば水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジメチレントリフェニルトリイソシアネートなどのような2価あるいは3価のジイソシアネート化合物あるいはポリイソシアネート化合物や、これらを多量化させて得られる多量化ポリイソシアネート化合物等のイソシアネート基含有化合物が挙げられる。
また活性水素を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、これらのラクトン付加物(例えば、(株)ダイセル製のプラクセル(登録商標)FAシリーズ、同FMシリーズ等)も使用することができる。また、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート(例えば、ダイセル・サイテック(株)製「DPHA」等)も使用可能である。
【0048】
これら多官能ウレタン(メタ)アクリレートの市販品の具体例としては、共栄社化学(株)製:AH−600、AT−600、UA−306H、UA−306T、UA−306I、UA−510H、UF−8001G、DAUA−167等;ダイセル・サイテック(株)製:EBECRYL(登録商標)204、同205、同210、同215、同220、同6202、同230、同244、同245、同264、同265、同270、同280/15IB、同1259、同5129、同8210、同8301、同8307、同8411、同8804、同8807、同9227EA、同9260、同284、同285、同294/25HD、同4820、同4858、同8402、同8405、同9270、同8311、同8701、KRM8200、KRM8200AE、KRM7735、KRM8296、KRM8452等;日本合成化学(株)製:紫光(登録商標)UV−1700B、同UV−6300B、同UV−7550B、同UV−7600B、同UV−7605B、同UV−7610B、同UV−7620E、同UV−7620EA、同UV−7630B、同UV−7640B、同UV−7650B等を挙げることができる。
【0049】
また(a)多官能モノマーは、上記多官能(メタ)アクリレート化合物と上記多官能ウレタン(メタ)アクリレートを混合して使用してもよい。
【0050】
[(b)親水性高分岐ポリマー]
本発明の重合性組成物において、成分(b)として親水性高分岐ポリマーを用いる。当該重合性組成物において、前記親水性高分岐ポリマーは、親水性を付与する表面改質剤としての役割を備える。
成分(b)の親水性高分岐ポリマーは、前記成分(a)活性エネルギー線重合性多官能モノマー100質量部に対し、0.001〜20質量部の量にて、好ましくは0.01〜10質量部の量にて使用することが好ましい。
【0051】
[(c)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤]
上記(c)活性エネルギー線によりラジカルを発生する重合開始剤(以下、単に(c)重合開始剤とも称する)は、例えば紫外線(光)等の活性エネルギー線照射時に活性ラジカルを生成する化合物(光ラジカル重合開始剤)であれば特に限定されることなく使用できる。
このような光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン系化合物、アルキルフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、アジド系化合物、ジアゾ系化合物、o−キノンジアジド系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾフェノン類、ビスクマリン、ビスイミダゾール化合物、有機過酸化物、チタノセン化合物、チオール化合物、ハロゲン化炭化水素化合物、トリクロロメチルトリアジン化合物、あるいはヨードニウム塩化合物、スルホニウム塩化合物などのオニウム塩化合物等が用いられる。
これら重合開始剤は単独で用いてもよいし、必要に応じて二種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
上記ベンゾイン系化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等を挙げることができる。
【0053】
上記アルキルフェノン系化合物としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシル=フェニル=ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、フェニルグリオキシル酸メチル、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−((4−メチルフェニル)メチル)−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン等を挙げることができる。
【0054】
上記チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、1−クロロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等を挙げることができる。
【0055】
上記アジド系化合物としては、例えば、p−アジドベンズアルデヒド、p−アジドアセトフェノン、p−アジド安息香酸、p−アジドベンザルアセトフェノン、4,4’−ジアジドカルコン、4,4’−ジアジドジフェニルスルフィド、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4’−ジアジドスチルベン等を挙げることができる。
【0056】
上記ジアゾ系化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、2,2’−アゾビス(N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−(1−ヒドロキシブチル))プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二塩酸塩二硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)、1−ジアゾ−2,5−ジエトキシ−4−p−トリルメルカプトベンゼンボロフルオリド、1−ジアゾ−4−N,N−ジメチルアミノベンゼンクロリド、1−ジアゾ−4−N,N−ジエチルアミノベンゼンボロフルオリド等を挙げることができる。
【0057】
上記o−キノンジアジド系化合物としては、例えば、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸ナトリウム塩、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸エステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロリド等を挙げることができる。
【0058】
上記アシルホスフィンオキシド系化合物としては、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等を挙げることができる。
【0059】
上記オキシムエステル系化合物としては、例えば、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン等を挙げることが出来る。
【0060】
上記ベンゾフェノン類としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、1,4−ジベンゾイルベンゼン、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルジフェニルエーテル、ベンジル等を挙げることができる。
【0061】
上記ビスクマリンとしては、例えば、3,3’−カルボニルビス(7−(ジエチルアミノ)−2H−クロメン−2−オン)(みどり化学(株)でBC(CAS[63226−13−1])として市販されている)等を挙げることができる。
【0062】
上記ビスイミダゾール化合物としては、例えば、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール等を挙げることができる。
【0063】
上記有機過酸化物としては、例えば、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化ジ−tert−ブチル等を挙げることが出来る。
【0064】
上記チタノセン化合物としては、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロチタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジフェニルチタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,4,6−トリフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,6−ジフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,4−ジフルオロフェニル)チタニウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)チタニウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)チタニウム、ビス(2,6−ジフルオロフェニル)ビス(メチルシクロペンタジエニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム等を挙げることができる。
【0065】
上記(c)重合開始剤の中でも、特にアルキルフェノン化合物が好ましい。アルキルフェノン系光重合開始剤として市販の光重合開始剤を使用することができ、例えば、BASFジャパン(株)製:IRGACURE(登録商標)651、同184、同2959、同127、同907、同369、同379EG、DAROCUR(登録商標)1173、同MBF等を挙げることができる。
【0066】
成分(c)重合開始剤は、前記成分(a)多官能モノマー100質量部に対し、1〜20質量部の量にて、好ましくは1〜10質量部の量にて使用することが好ましい。
【0067】
本発明の重合性組成物には、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて一般的に添加される添加剤、例えば、光増感剤、重合禁止剤、重合開始剤、レベリング剤、界面活性剤、密着性付与剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、貯蔵安定剤、帯電防止剤、無機充填剤、顔料、染料等を適宜配合してよい。
【0068】
<硬化膜>
本発明の重合性組成物は、基材上にコーティングして光重合(硬化)させることにより、硬化膜や積層体などの成形品を成すことができる。こうして得られる硬化膜もまた本発明の対象である。
前記基材としては、例えば、プラスチック材料[ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合物(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合物(AS)樹脂、ノルボルネン系樹脂等]、金属、木材、紙、ガラス、二酸化ケイ素、スレート等を挙げることができ、中でも好ましくはプラスチック材料である。これら基材の形状は板状、フィルム状又は3次元成形体でもよい。
【0069】
本発明の重合性組成物は、好ましくは溶媒に溶解又は分散してワニスの形態(膜形成材料)とし、該ワニスを基板上にキャストコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、カーテンコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等)等を適宜選択して塗布し、その後、ホットプレート又はオーブン等で乾燥して成膜することができる。
これらの塗布方法の中でも短時間で塗布できることから揮発性の高い溶液であっても利用でき、また、容易に均一な塗布を行うことができるという利点より、スピンコート法を用いることが望ましい。また、簡単に塗布することができ、かつ、大面積に塗装ムラがなく平滑な塗膜を形成することができるという利点より、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法を用いることが望ましい。
【0070】
上記ワニスの形態において使用する溶媒としては、前記(a)乃至(c)成分並びにその他成分を溶解又は分散するものであればよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素類;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化物類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸3−メトキシブチル、γ−ブチロラクトン、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等のエステル類又はエステルエーテル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジ−n−ブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、2−ブタノール、tert−ブチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のアミド類;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類などの有機溶媒が挙げられる。これらの有機溶媒は一種を単独で使用してもよく、また二種以上の有機溶媒を混合して使用してもよい。
また上記(a)乃至(c)成分並びにその他成分を溶媒に溶解又は分散させる濃度は任意であるが、前記(a)乃至(c)成分及びその他成分(固形分)と溶媒の総質量(合計質量)に対して、固形分濃度が0.5〜80質量%であり、好ましくは1〜70質量%であり、より好ましくは1〜60質量%とすることが好ましい。
こうして得られたワニスは、事前に孔径が0.2μm程度のフィルタなどを用いて濾過した後、コーティングに供してもよい。
【0071】
上記コーティング後、好ましくは続いてホットプレート又はオーブン等で予備乾燥した後、紫外線等の活性エネルギー線を照射して光硬化させる。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線等が挙げられる。紫外線照射に用いる光源としては、太陽光線、ケミカルランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、UV−LED等が使用できる。
その後、必要に応じてポストベーク、具体的にはホットプレート、オーブンなどを用いて加熱してもよい。
なお、コーティングにより形成された膜の厚さは、乾燥、硬化後において、通常0.01〜50μm、好ましくは0.05〜50μmである。
【0072】
<ハードコート層を備えるハードコートフィルム>
また本発明は、上記重合性組成物、好ましくはワニスの形態の上記重合性組成物を、フィルム基材上に塗布し塗膜を形成する工程、塗膜に紫外線を照射し硬化する工程により形成されている、フィルム基材の少なくとも一方の面にハードコート層を備えるハードコートフィルムも対象とする。
ここで使用する基材や塗膜方法、紫外線等のエネルギー線照射については、前述の<硬化膜>における基材、コーティング方法、活性エネルギー線照射の通りである。
本発明のハードコートフィルムにおいては、前記ハードコート層の膜厚は1〜30μmであることが好ましく、より好ましくは1〜10μmである。
【実施例】
【0073】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。
【0074】
(1)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
装置:東ソー(株)製 HLC−8220GPC
カラム:昭和電工(株)製 Shodex(登録商標)OHpak SB−803HQ、OHpak SB−804HQ
カラム温度:40℃
溶離液:N,N−ジメチルホルムアミド(リン酸29.6mM及びリチウムブロミド29.6mM添加)
検出器:RI
(2)バーコート塗布
装置:(株)エスエムテー製 PM−9050MC
バー:オーエスジーシステムプロダクツ(株)製 A−Bar OSP−22、最大膜厚22μm(ワイヤーバー#9相当)
塗布速度:6.7m/分
(3)オーブン
装置:アドバンテック東洋(株)製 無塵乾燥器 DRC433FA
(4)UV照射装置
装置:アイグラフィックス(株)製 H02−L41
(5)接触角測定
装置:協和界面科学(株)製 DropMaster DM−501
測定温度:20℃
(6)HAZE
装置:日本電色工業(株)製 ヘーズメーター NDH5000
【0075】
また、略記号は以下の意味を表す。
9DMA:ノナエチレングリコールジメタクリレート[日油(株)製 ブレンマー(登録商標)PDE−400]
DMA:エチレングリコールジメタクリレート[新中村化学工業(株)製 1G]
HDN:1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート[新中村化学工業(株)製 HD−N]
PDMA:ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)=ヒドロゲン=ホスフェート[共栄社化学(株)製 ライトエステルP−2M]
ACA:N−(2−アクリロイルオキシエチル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム=クロリド[大阪有機化学工業(株)製 DMAMC]
BTM:N−(2−メタクリロイルオキシエチル)−N,N−ジメチルグリシン[大阪有機化学工業(株)製 GLBT]
HAA:N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド[KJケミカルズ(株)製 HEAA(登録商標)]
PMA:2−メタクリロイルオキシエチル=ジヒドロゲン=ホスフェート[共栄社化学(株)製 ライトエステルP−1M]
C1FA:2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート[大阪有機化学工業(株)製 ビスコート3F]
C1FM:2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート[共栄社化学(株)製 ライトエステルM−3F]
AMBN:2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)[和光純薬工業(株)製 V−59]
BA:ブチルアクリレート[東京化成工業(株)製]
LA:ラウリルアクリレート[日油(株)製 ブレンマー(登録商標)LA]
UV7600:6官能ウレタンアクリレート[日本合成化学工業(株)製 紫光(登録商標)UV−7600B]
I184:1−ヒドロキシシクロヘキシル=フェニル=ケトン[BASFジャパン(株)製 IRGACURE(登録商標)184]
MIBK:メチルイソブチルケトン
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0076】
[実施例1]フルオロアルキル基を有する親水性高分岐ポリマー(HBP1)の製造
100mL反応フラスコに、PGME13g(モノマーBの使用量に対して4質量部)を仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、内液が還流するまで(およそ120℃)加熱した。
別の50mL反応フラスコに、モノマーBとしてPDMA3.2g(10mmol)、モノマーDとしてC1FM1.7g(10mmol、モノマーBに対して1モル当量)、重合開始剤EとしてAMBN1.0g(5mmol、モノマーBに対して0.5モル当量)、及びPGME13g(モノマーBの使用量に対して4質量部)を仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行い、氷浴にて0℃まで冷却した。
前述の100mL反応フラスコ中の還流してあるPGME中に、PDMA、C1FM、AMBNが仕込まれた前述の50mLの反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌した。
この反応混合物を室温(およそ25℃)に冷却し、目的とする高分岐ポリマー(HBP1)を、ポリマー濃度18質量%のPGME溶液として31.5g得た。
得られた高分岐ポリマーのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量:Mwは4,900、分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は5.9であった。
【0077】
[実施例2乃至7]フルオロアルキル基を有する親水性高分岐ポリマー(HBP2乃至HBP7)の製造
表1の記載に従って実施例1と同様に各高分岐ポリマーを製造した。なお、モノマーA、モノマーC及びモノマーFは、モノマーB、モノマーD及び開始剤Eと一緒に混合し仕込んだ。
また表1中、モノマーC、モノマーD、モノマーF及び重合開始剤Eにおける[モル当量]とは、それぞれモノマーA及びモノマーBの合計モル数に対するモル当量を示し、PGMEにおける[質量部]とは、モノマーA及びモノマーBの合計1質量部に対する質量部を示す。なお、PGMEにおける、X+Y(例えば10+10)との記載は、予め還流させるPGME量としてX質量部、各モノマー等と混合するPGME量としてY質量部、をそれぞれ使用することを意味する。
得られた高分岐ポリマーPGME溶液のポリマー濃度、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量:Mw及び分散度:Mw/Mnを表1に併せて示す。
【0078】
[製造例1]フルオロアルキル基を有さない親水性高分岐ポリマー(HBP8)の製造
表1の記載に従って実施例1と同様に高分岐ポリマーを製造した。得られた高分岐ポリマーPGME溶液のポリマー濃度、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量:Mw及び分散度:Mw/Mnを表1に併せて示す。
【0079】
【表1】
【0080】
[実施例8乃至15及び比較例1、2]
以下の各成分を混合し、不揮発分濃度40質量%の硬化性組成物を調製した。
(1)多官能モノマー:UV7600 100質量部
(2)表面改質剤:表2に記載の表面改質剤 表2に記載の量(高分岐ポリマーとして)
(3)重合開始剤:I184 6質量部
(4)溶媒:MIBK 表2に記載の量
この硬化性組成物を、A4サイズのPETフィルム[東洋紡(株)製 コスモシャイン(商標登録)A4100、厚み125μm]上(易接着処理面側)に、バーコート塗布し塗膜を得た。この塗膜を100℃のオーブンで3分間乾燥させ溶媒を除去した。得られた膜を、空気雰囲気下、露光量300mJ/cm
2のUV光を照射し露光することで、厚さおよそ5〜6μmのハードコート層を有するハードコートフィルムを作製した。
【0081】
得られたハードコート層の、水及びオレイン酸の接触角、HAZE、並びに表面均一性を評価した。なお、接触角は、プローブ液体(水又はオレイン酸)1μLをハードコート層表面に付着させて10秒後の接触角を5回測定し、その平均値を接触角値とした。また、表面均一性は、ハードコート層表面の状態を目視で確認し以下の基準に従い評価した。結果を表2に併せて示す。
[表面均一性評価基準]
A:表面全体に亘って微小粒状物が観察されず平滑
B:表面の一部分に微小粒状物が観察される
C:微小粒状物が散見される
【0082】
【表2】
【0083】
表2に示すように、表面改質剤を使用していないハードコート層(比較例1)と比べ、本発明のフルオロアルキル基を有する親水性高分岐ポリマー(HBP1乃至HBP7)を表面改質剤として添加したハードコート層(実施例8乃至15)では、水の接触角が小さいとする結果を得た。すなわち本発明のフルオロアルキル基を有する親水性高分岐ポリマーは、僅かな添加量でハードコート表面の親水性を付与できるという結果を得た。
また、モノマーFを加えることにより、得られるハードコート層の表面均一性をより向上できるという結果を得た。
一方、フルオロアルキル基を含まない親水性の高分岐ポリマー(HPB8)を用いたハードコート層(比較例2)では、前記実施例と比べて水の接触角が極めて大きい結果となり、該高分岐ポリマーではハードコート層表面に親水性を殆ど付与できないとする結果となった。