特許第6871562号(P6871562)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6871562
(24)【登録日】2021年4月20日
(45)【発行日】2021年5月12日
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体素子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20210426BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20210426BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20210426BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20210426BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20210426BHJP
【FI】
   H01L29/78 652N
   H01L29/78 652T
   H01L29/78 652P
   H01L29/78 658G
   H01L29/78 658A
   H01L29/78 652J
   H01L29/78 653A
   H01L29/78 652D
   H01L29/06 301G
   H01L29/06 301V
   H01L29/06 301M
   H01L21/302 105A
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-223525(P2016-223525)
(22)【出願日】2016年11月16日
(65)【公開番号】特開2018-82050(P2018-82050A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2019年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】内海 誠
(72)【発明者】
【氏名】大西 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】福田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】原田 信介
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 将伸
【審査官】 杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−038308(JP,A)
【文献】 特開2010−147222(JP,A)
【文献】 特開2015−072999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/06
H01L 29/12
H01L 29/78
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の炭化珪素基板と、前記炭化珪素基板上に形成された第1導電型の炭化珪素エピタキシャル層と、前記炭化珪素エピタキシャル層の表面に選択的に形成された複数の第2導電型のベース層と、前記炭化珪素エピタキシャル層上に形成された第2導電型の第3炭化珪素エピタキシャル層と、少なくとも第3炭化珪素エピタキシャル層を貫通するトレンチを有し、前記第3炭化珪素エピタキシャル層の一部に、前記ベース層を露出させるメサ部を有する炭化珪素半導体素子において、
前記メサ部のメサ側面から素子の外側に、前記第2導電型のベース層の端部が位置し、低濃度のイオン注入層が前記第2導電型のベース層の端部に接続して設けられ、前記メサ部の連続したメサ側面の間に、前記炭化珪素基板にほぼ並行な平坦部を有し、露出された前記ベース層の残留厚さが0.5μmより大きく1.0μmより小さいことを特徴とする炭化珪素半導体素子。
【請求項2】
前記平坦部は、第3炭化珪素エピタキシャル層の深さの中央部に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体素子。
【請求項3】
第1導電型の炭化珪素基板上に第1導電型の第1炭化珪素エピタキシャル層を形成する工程と、
前記第1炭化珪素エピタキシャル層の表面に選択的に第2導電型の第1ベース層を形成する工程と、
前記第1炭化珪素エピタキシャル層上に第1導電型の第2炭化珪素エピタキシャル層を形成する工程と、
前記第1炭化珪素エピタキシャル層の複数の前記第1ベース層の一部に選択的に連続する第2導電型の第2ベース層を形成する工程と、
前記第2炭化珪素エピタキシャル層上に第2導電型の第3炭化珪素エピタキシャル層を形成する工程と、
前記第3炭化珪素エピタキシャル層の周囲を除去し、前記第2ベース層を露出させるメサ形状のメサ部を形成する工程と、
少なくとも前記第3炭化珪素エピタキシャル層を貫通するトレンチを形成する工程とを含み、
前記メサ部のメサ側面から素子の外側に、前記第2導電型のベース層の端部が位置し、低濃度のイオン注入層が前記第2導電型のベース層の端部に接続して設けられ、前記メサ部は、フォトレジストをエッチングマスクとしたドライエッチングを複数回繰り返すことにより形成することを特徴とする炭化珪素半導体素子の製造方法。
【請求項4】
第2導電型のコンタクト領域の形成と同時にイオン注入される領域を、活性領域の外側から、前記メサ部の内側の領域までとしたことを特徴とする請求項3に記載の炭化珪素半導体素子の製造方法。
【請求項5】
前記第3炭化珪素エピタキシャル層上面から前記メサ部のメサ側面に連続した第2導電型のコンタクト領域形成のイオン注入と同時にイオン注入される領域を、活性領域上から前記第1ベース層を被覆し第2炭化珪素エピタキシャル層の表面上まで広げたことを特徴とする請求項3に記載の炭化珪素半導体素子の製造方法。
【請求項6】
前記第3炭化珪素エピタキシャル層上面から前記メサ部のメサ側面に連続した第2導電型のコンタクト領域形成のイオン注入と同時にイオン注入される領域の端部を、活性領域の外側から前記メサ部のメサ側面の間の平坦部で囲まれた素子領域よりも内側までとしたことを特徴とする請求項3に記載の炭化珪素半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トレンチ構造を有する炭化珪素半導体素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、MOSFETは、基板表面に並行なチャネルを有するプレーナー型よりも基板表面に概垂直なチャネルを有するトレンチ型の方が単位面積当たりのセル密度を増やすことができるため、電流密度を増やすことができ、大電流化の要望に応じることが容易になる。
【0003】
トレンチ型の炭化珪素MOSFETの作製方法は、炭化珪素のエピタキシャル成長とイオン注入を複数回実施した後に、ドライエッチング法でトレンチを形成する工程が開示されている(例えば、下記特許文献1参照。)。この技術では、ドリフト層にn型の炭化珪素エピタキシャル層を用い、チャネルとして機能する層にp型の炭化珪素エピタキシャル層を用い、p型の炭化珪素エピタキシャル層の上側にn型のコンタクト領域とp型のボディコンタクト領域をイオン注入によって形成している。チャネル層の長さはエピタキシャル層の厚さによって決まり、上側のコンタクト領域を含めると、およそ1.0μm〜2.0μmのp型炭化珪素エピタキシャル層が製膜されることとなる。
【0004】
また、高電圧への耐圧をもたせるために、n型の炭化珪素層上に形成されたp型炭化珪素層の周囲をエッチングしたメサ形状を作製し、更にエッチングにより露出した素子外周のn型の炭化珪素層上に低濃度のp型イオンを注入したターミネーション構造を作製し、耐圧構造とすることが知られている(例えば、下記特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3471473号公報
【特許文献2】特開2012−195519号公報
【特許文献3】特開2010−147222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1.0μm以上の膜厚を有する炭化珪素エピタキシャル層をドライエッチングする場合、エッチングマスクと被エッチング部である炭化珪素との選択比を考慮して、一般にマスク材として酸化珪素が用いられる。メサ側面は、電界集中を抑制するため45°以下のテーパー角を持つことが望ましく、マスク材料にもテーパー角を持たせるなど、メサ形状を作製するための独特の技術が必要となる。特に、ドライエッチングで炭化珪素エピタキシャル層を除去する工程は、被エッチング部の端部にエッチングガスが集中するため、この部位が、周囲より深くエッチングされる、所謂サブトレンチが形成される課題が生じる。これは、除去する炭化珪素エピタキシャル層が厚くなるほど深くなる傾向があり、電圧印加時のリーク電流発生の原因となっている。
【0007】
また、炭化珪素エピタキシャル層を除去する工程は、炭化珪素エピタキシャル層自身の厚さのばらつきとエッチング深さのばらつきの影響を受けるため、炭化珪素エピタキシャル層の最大厚さより深く削る必要がある。このため、露出する下側の炭化珪素エピタキシャル層の厚さが薄くなる傾向がある。この点について、例えば、上記特許文献3に記載の炭化珪素半導体素子のように、2.0μmのp型炭化珪素エピタキシャル層を除去して、p型炭化珪素エピタキシャル層の下部に形成したp型ベース層を0.6μmから1.0μmの厚さで残すためには、少なくとも、1.0μmより大きな厚さでp型ベース層を形成する必要がある。このためには、炭化珪素からなるドリフト層に通常より高エネルギーでアルミニウム(Al)等のイオンを注入する必要があり、結晶欠陥が発生し、リーク電流が増加するなど信頼性が低くなる課題が生じる。
【0008】
このように1.0μm以上の炭化珪素エピタキシャル層を除去する工程は、炭化珪素半導体素子の逆電圧印加時のリーク電流発生の原因となっており、p型の炭化珪素エピタキシャル層の厚さによって決まるチャネル長やトレンチ深さなどの、トレンチ型の炭化珪素MOSFET素子の重要なパラメータを制約し、信頼性を向上できなかった。
【0009】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、所定位置に所望する形状のメサを容易に作成でき、長期にわたる素子の駆動信頼性を得ることができることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体素子は、第1導電型の炭化珪素基板と、前記炭化珪素基板上に形成された第1導電型の炭化珪素エピタキシャル層と、前記炭化珪素エピタキシャル層の表面に選択的に形成された複数の第2導電型のベース層と、前記炭化珪素エピタキシャル層上に形成された第2導電型の第3炭化珪素エピタキシャル層と、少なくとも第3炭化珪素エピタキシャル層を貫通するトレンチを有し、前記第3炭化珪素エピタキシャル層の一部に、前記ベース層を露出させるメサ部を有する炭化珪素半導体素子において、前記メサ部のメサ側面から素子の外側に、前記第2導電型のベース層の端部が位置し、低濃度のイオン注入層が前記第2導電型のベース層の端部に接続して設けられ、前記メサ部の連続したメサ側面の間に、前記炭化珪素基板にほぼ並行な平坦部を有し、露出された前記ベース層の残留厚さが0.5μmより大きく1.0μmより小さいことを特徴とする。
【0011】
また、前記平坦部は、第3炭化珪素エピタキシャル層の深さの中央部に形成されたことを特徴とする。
【0014】
本発明の炭化珪素半導体素子の製造方法は,第1導電型の炭化珪素基板上に第1導電型の第1炭化珪素エピタキシャル層を形成する工程と、前記第1炭化珪素エピタキシャル層の表面に選択的に第2導電型の第1ベース層を形成する工程と、前記第1炭化珪素エピタキシャル層上に第1導電型の第2炭化珪素エピタキシャル層を形成する工程と、前記第1炭化珪素エピタキシャル層の複数の前記第1ベース層の一部に選択的に連続する第2導電型の第2ベース層を形成する工程と、前記第2炭化珪素エピタキシャル層上に第2導電型の第3炭化珪素エピタキシャル層を形成する工程と、前記第3炭化珪素エピタキシャル層の周囲を除去し、前記第2ベース層を露出させるメサ形状のメサ部を形成する工程と、少なくとも前記第3炭化珪素エピタキシャル層を貫通するトレンチを形成する工程とを含み、前記メサ部のメサ側面から素子の外側に、前記第2導電型のベース層の端部が位置し、低濃度のイオン注入層が前記第2導電型のベース層の端部に接続して設けられ、前記メサ部は、フォトレジストをエッチングマスクとしたドライエッチングを複数回繰り返すことにより形成することを特徴とする。
【0015】
また、第2導電型のコンタクト領域の形成と同時にイオン注入される領域を、活性領域の外側から、前記メサ部の内側の領域までとしたことを特徴とする。
【0016】
また、前記第3炭化珪素エピタキシャル層上面から前記メサ部のメサ側面に連続した第2導電型のコンタクト領域形成のイオン注入と同時にイオン注入される領域を、活性領域上から前記第1ベース層を被覆し第2炭化珪素エピタキシャル層の表面上まで広げたことを特徴とする。
【0017】
また、前記第3炭化珪素エピタキシャル層上面から前記メサ部のメサ側面に連続した第2導電型のコンタクト領域形成のイオン注入と同時にイオン注入される領域の端部を、活性領域の外側から前記メサ部のメサ側面の間の平坦部で囲まれた素子領域よりも内側までとしたことを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、複数回のドライエッチングにより、炭化珪素エピタキシャル層に形成したベース層を所定の残留厚さに制御でき、メサ部のメサ作製時におけるサブトレンチの形成と、エッチング深さの不均一さと、をいずれも抑制することができ、素子の耐圧不良の発生を低減化できるようになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる炭化珪素半導体素子およびその製造方法によれば、所定位置に所望する形状のメサを容易に作成でき、長期にわたる素子の駆動信頼性を得ることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体素子の活性領域を示す断面図である。
図2図2は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体素子の端部領域を示す断面図である。
図3A図3Aは、実施の形態にかかる半導体装置の製造工程を示す断面図である。(その1)
図3B図3Bは、実施の形態にかかる半導体装置の製造工程を示す断面図である。(その2)
図3C図3Cは、実施の形態にかかる半導体装置の製造工程を示す断面図である。(その3)
図3D図3Dは、実施の形態にかかる半導体装置の製造工程を示す断面図である。(その4)
図3E図3Eは、実施の形態にかかる半導体装置の製造工程を示す断面図である。(その5)
図3F図3Fは、実施の形態にかかる半導体装置の製造工程を示す断面図である。(その6)
図3G図3Gは、実施の形態にかかる半導体装置の製造工程を示す断面図である。(その7)
図3H図3Hは、実施の形態にかかる半導体装置の製造工程を示す断面図である。(その8)
図3I図3Iは、実施の形態にかかる半導体装置の製造工程を示す断面図である。(その9)
図3J図3Jは、実施の形態にかかる半導体装置の製造工程を示す断面図である。(その10)
図3K図3Kは、実施の形態にかかる半導体装置の製造工程を示す断面図である。(その11)
図3L図3Lは、実施の形態にかかる半導体装置の製造工程を示す断面図である。(その12)
図3M図3Mは、実施の形態にかかる半導体装置の製造工程を示す断面図である。(その13)
図4図4は、実施例1のメサ形状を示す画像データの拡大図である。
図5図5は、実施例1〜3と比較例3のリーク発生を説明する図表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および−は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。+および−を含めたnやpの表記が同じ場合は近い濃度であることを示し濃度が同等とは限らない。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本明細書では、ミラー指数の表記において、“−”はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に“−”を付けることで負の指数をあらわしている。以下の説明では、第1導電型をn型、第2導電型をp型として説明する。
【0022】
(実施の形態)
図1は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体素子の活性領域の構造を示す断面図である。図1は、炭化珪素半導体素子の正電圧印加時に電流経路となる活性領域を示す。また、図2は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体素子の端部領域を示す断面図である。これら図1、2に示すように、実施の形態にかかる炭化珪素半導体素子は、n+型の炭化珪素基板1Aの第1主面、例えば(0001)面(Si面)に、n型の第1炭化珪素エピタキシャル層1が堆積されている。
【0023】
+型の炭化珪素基板1Aは、窒素等のn型不純物がドーピングされた炭化珪素単結晶基板である。第1炭化珪素エピタキシャル層1は、n+型の炭化珪素半導体基板1よりも低い不純物濃度で、窒素等のn型不純物がドーピングされた低濃度n型ドリフト層である。第1炭化珪素エピタキシャル層の厚さは素子耐圧により異なり、3μm〜100μm程度の厚さが用いられる。
【0024】
第1炭化珪素エピタキシャル層1の第1主面側(炭化珪素基板1Aと逆の表面)には、pベース層4の下層を構成するp型のイオン注入層(p+のpベース層)4aおよびトレンチ底部に位置するp型のイオン注入層(p+のpベース層)5が形成されている。pベース層4a,5のイオン注入深さは、熱処理で結晶欠陥を回復することができる、最大で0.7μm程度が望ましい。また、pベース層4a,5の周囲の電流経路となる部分に、n+型炭化珪素基板1Aよりも不純物濃度が低く、第1炭化珪素エピタキシャル層1よりも高い不純物濃度のn型のイオン注入層6aが形成されていても良い。
【0025】
また、第1炭化珪素エピタキシャル層1の第1主面側(炭化珪素基板1Aと逆の表面)には、第2炭化珪素エピタキシャル層2が形成されている。第2炭化珪素エピタキシャル層2は、第1炭化珪素半導体基板1と同等の不純物濃度で、窒素等のn型不純物がドーピングされた低濃度n型ドリフト層である。第2炭化珪素エピタキシャル層の厚さは電流経路となる十分な厚さとなることが望ましく、0.3μm〜0.7μm程度の厚さが用いられる。
【0026】
第2炭化珪素エピタキシャル層2の第1主面側(炭化珪素基板1Aと逆の表面)には、第1炭化珪素エピタキシャル層1に形成されたpベース層4aに連続する領域にpベース層4bが形成されている。前記pベース層4aとpベース層4bで形成される領域をpベース層4と表記する。
【0027】
また、pベース層4の周囲の電流経路となる、第1炭化珪素エピタキシャル層1に形成されたn型イオン注入層6aと接合する部位に、n+型炭化珪素基板1Aよりも不純物濃度が低く、第1炭化珪素エピタキシャル層1よりも高い不純物濃度のn型イオン注入層6bが形成されていても良い。n型イオン注入層6aとn型イオン注入層6bで形成される領域をn型イオン注入層6と表記する。
【0028】
第2炭化珪素エピタキシャル層2の第1主面側(炭化珪素基板1Aと逆の表面)には、第3炭化珪素エピタキシャル層3が形成されている。第3炭化珪素エピタキシャル層3は、例えばアルミニウム(Al)がドーピングされたp型層であり、トレンチ型MOSFETのチャネルとして機能する。
【0029】
図2に示すように、第3炭化珪素エピタキシャル層3の周囲は除去され、第2炭化珪素エピタキシャル層2が露出したメサ部100を有している。メサ部100側面の底部は、第2炭化珪素エピタキシャル層2の表面にイオン注入によって形成されたpベース層4と接しており、露出したpベース層4の厚さは0.5μmより大きくなっている。
【0030】
メサ部100側面の底部に0.5μmより厚い残留厚さdを有するpベース層を形成する方法としては、上述したように、より高エネルギーのイオン注入を行なう手法や、pベース層4をエピタキシャル成長させる手法が考えられるが、結晶欠陥の形成や、工程数の増加の課題を有している。pベース層4の周囲には低濃度p型イオン注入層20が設けられ、低濃度p型イオン注入層20は、メサ部100と低濃度p型イオン注入層20で素子の耐圧を維持するためのターミネーション領域となる。
【0031】
メサ部100の側面は、炭化珪素基板1Aの主面となす角αが鋭角の部分と、炭化珪素基板1Aの主面とほぼ並行な部分が交互に並んだ形をしている。この形状は、第3炭化珪素エピタキシャル層3の除去を複数回に分けて実施することで形成され、エッチング部と非エッチング部の境界に生じるサブトレンチが生じにくい特徴と、エッチング深さを正確に制御できる特徴がある。メサ部100の側面が炭化珪素基板1Aの主面となす角αは45°程度より小さく、かつ、素子寸法に影響を与えない角度から選択され、好ましくは、10°〜30°の範囲とする。メサ部100の深さは、第3炭化珪素エピタキシャル層3の厚さより大きいことが望ましく、かつ、エッチングによって露出する第2炭化珪素エピタキシャル層2を削り過ぎない範囲で決められ、pベース層4の残留厚さdが0.5μmより大きくなる深さで制御される。
【0032】
メサ部100側面の炭化珪素基板1Aの主面とほぼ並行な部分の位置は任意に決めることができ、例えば、図2に示すように、第3炭化珪素エピタキシャル層3の概中央や、表面からイオン注入されたp型層の下部等を選択することができる。このように、連続するメサ側面の間に炭化珪素基板1Aにほぼ並行な平坦部を有することで、素子端面の長さを長くでき、耐圧を向上させる効果を有している。
【0033】
炭化珪素半導体基体1Aの第1主面側には、第3炭化珪素エピタキシャル層3にトレンチが形成されている。トレンチは、第3炭化珪素エピタキシャル層3の第1主面表面から、少なくとも第3炭化珪素エピタキシャル層を貫くように形成される。また、トレンチの底部は、第1炭化珪素エピタキシャル層中に形成されたpベース層5と接するか、pベース層5の近傍に位置する。トレンチの表面に沿って、トレンチの底部および側部にはゲート絶縁膜9が形成されており、ゲート絶縁膜9により周囲と絶縁されたゲート電極10がトレンチ内部に設けられている。ゲート電極10の一部はトレンチ外部に突出していても良い。
【0034】
第3炭化珪素エピタキシャル層3の第1主面側には、n+ソース領域7およびp++コンタクト領域8が設けられている。また、n+ソース領域7およびp++コンタクト領域8は互いに接する。層間絶縁膜11は、炭化珪素半導体基体の第1主面側の全面に、トレンチに埋め込まれたゲート電極10を覆うように設けられている。ソース電極12は、層間絶縁膜11に開口されたコンタクトホールを介して、n+ソース領域7およびp++コンタクト領域8に接する。ソース電極12は、層間絶縁膜11によって、ゲート電極10と電気的に絶縁されている。ソース電極12上には、電極パッド14が設けられている。
【0035】
+型炭化珪素基板1Aの第2主面(第1炭化珪素エピタキシャル層1を形成した第1主面の逆側)には、ドレイン電極13およびドレイン電極パッド15が設けられている。
【0036】
(実施の形態にかかる半導体素子の製造方法の一例)
図3A図3Mは、実施の形態にかかる半導体装置の製造工程を示す断面図である。以下、トレンチ型MOSFETの製造工程を順に説明する。
【0037】
はじめに、図3Aに示すように、n+型炭化珪素基板1Aの第1主面上に、窒素等のn型不純物をドーピングした第1炭化珪素エピタキシャル層1を、例えば10μmの厚さで形成する。第1炭化珪素エピタキシャル層1の不純物濃度が3×1015/cm3程度となるように設定してもよい。
【0038】
次いで、第1炭化珪素エピタキシャル層1の表面上に、厚さ1.5μmの酸化珪素膜をプラズマCVD等の方法で堆積し、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを形成する。そして、アルミニウム等のp型の不純物を、酸化珪素膜の開口部に注入し、深さ0.5μm程度のpベース層4aを形成する。pベース層4aと同時に、トレンチの底部となるpベース層5を形成しても良い。pベース層4aおよびpベース層5の不純物濃度は、例えば5×1018/cm3程度に設定する。
【0039】
次に、イオン注入用マスクの一部を除去し、開口部に窒素等のn型の不純物をイオン注入し、第1炭化珪素エピタキシャル層1の表面領域の一部に、例えば深さ0.5μm程度の濃いn型領域(n型イオン注入層)6aを設ける。n型イオン注入層6aの不純物濃度は、例えば1×1017/cm3程度に設定する。
【0040】
次に、図3Bに示すように、第1炭化珪素エピタキシャル層1の表面上に、窒素等のn型の不純物をドーピングした第2炭化珪素エピタキシャル層2を、0.5μm程度の厚さで形成する。第2炭化珪素エピタキシャル層2の不純物濃度が3×1015/cm3程度となるように設定する。次いで、第2炭化珪素エピタキシャル層2の表面上に、厚さ1.5μmの酸化珪素膜をプラズマCVD等の方法で堆積し、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを形成する。そして、アルミニウム等のp型の不純物を、酸化珪素膜の開口部に注入し、深さ0.5μm程度のpベース層4bを、pベース層4aに重なるように形成する。pベース層4aと4bは連続した領域を形成し、pベース層4となる。pベース層4bの不純物濃度を例えば5×1018/cm3程度となるように設定する。
【0041】
次に、イオン注入用マスクの一部を除去し、開口部に窒素等のn型の不純物をイオン注入し、第2炭化珪素エピタキシャル層2の表面領域の一部に、例えば深さ0.5μm程度のn型イオン注入層6bを設ける。n型イオン注入層6bの不純物濃度を例えば1×1017/cm3程度に設定する。このn型領域6bとn型領域6aは少なくとも一部が接するように形成され、n型領域(n型イオン注入層)6を形成する。
【0042】
次に、図3Cに示すように、第2炭化珪素エピタキシャル層2の表面上に、アルミニウム等をp型不純物をドーピングした第3炭化珪素エピタキシャル層3を1.3μm程度の厚さで形成する。図3Cには炭化珪素半導体素子の端部領域を示している。第3炭化珪素エピタキシャル層3の不純物濃度は4×1017/cm3程度に設定する。
【0043】
次に、図3Dに示すように、第3炭化珪素エピタキシャル層3上にフォトリソグラフィにより素子中央部にフォトレジストを形成し、このフォトレジストをマスクとして、SF6等のフッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、第3炭化珪素エピタキシャル層3の周囲を0.7μm程度の深さで除去し、メサ部100の第1段目のメサ100aを作製する。
【0044】
次に、図3Eに示すように、この第1段目のメサ100aよりも広い領域にフォトリソグラフィによりフォトレジストを形成し、ドライエッチングを行い、第3炭化珪素エピタキシャル層3の周囲を0.7μm程度の深さで除去し、第2段目のメサ100bを作製する。
【0045】
これにより、合計で1.4μmの深さを有し、第3炭化珪素エピタキシャル層3の周囲に第2炭化珪素エピタキシャル層2が露出したメサ部100が作製される。図3Eに示されるように、メサ部100のメサ側面の底部100cは、第2炭化珪素エピタキシャル層2中に形成されたpベース層4と接しており、かつメサ側面の中央に炭化珪素基板1Aとほぼ平行な面が形成されている。
【0046】
メサ部100は2回以上の複数回のドライエッチングで作製することが可能で、回数が多いほど緩やかなメサ側面をもつ炭化珪素半導体素子の作製が可能となる。また、エッチングを行う毎に、ウエハの向きを変更するなどエッチングによる深さの分布を緩和する手法をとることができる。一方で、工程数が増える欠点があるため、炭化珪素をエッチングマスクとしたドライエッチングと同じエッチング回数となる2回のエッチングでメサ形状を形成することが望ましい。
【0047】
メサ部100のメサ側面と炭化珪素基板1Aとなす角αを所定角度、例えば、10°から30°に制御する方法として、フォトレジストにテーパーを形成する方法がある。例えば、フォトレジスト現像後のポストベークを120℃〜150℃程度とすることでフォトレジスト表面を収縮させテーパーを形成することができる。また露光用のフォトマスクの端部にスリットを入れ、部分的に露光することによってもフォトレジストにテーパーを形成することができる。
【0048】
そして、第3炭化珪素エピタキシャル層3の除去を露光用のフォトマスクを用いて、複数回に分けて実施するため、エッチング部と非エッチング部の境界をずらすことが可能となり、この境界の部位に生じ易いサブトレンチの発生を抑制する効果がある。メサ部100深さは、第3炭化珪素エピタキシャル層3の厚さより大きいことが望ましく、かつ、エッチングによって露出する第2炭化珪素エピタキシャル層2を削り過ぎない範囲で決められ、例えば、pベース層4の残留厚さdが0.5μmより大きくなる条件であり、メサ部100のメサ深さは1.3μmより大きく1.8μmより小さな範囲で制御される。
【0049】
次に、図3Fに示すように活性領域部分では、第3炭化珪素エピタキシャル層3および露出した第2炭化珪素エピタキシャル層2の表面上に、厚さ1.5μmの酸化珪素膜をプラズマCVD等の方法で堆積し、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを形成する。この開口部にリン等のn型の不純物をイオン注入し、第3炭化珪素エピタキシャル層3の表面の一部にn+ソース領域7を設ける。n+ソース領域7の不純物濃度は、第3炭化珪素エピタキシャル層3の不純物濃度より高くなるように設定する。
【0050】
次に、n+ソース領域7の形成に用いたイオン注入用マスクを除去し、同様の方法で、所定の開口部を有するイオン注入用マスクを形成し、第3炭化珪素エピタキシャル層3の表面の一部にアルミニウム等のp型の不純物をイオン注入し、p++コンタクト領域8を設ける。p++コンタクト領域8の不純物濃度は、第3炭化珪素エピタキシャル層3の不純物濃度より高くなるように設定する。
【0051】
次に、図3Gに示すように、p++コンタクト領域8の形成と同時にイオン注入される領域は、活性領域の外側から、メサ部100の内側の領域まで形成される。このとき、メサ部100のメサ側面の炭化珪素基板1Aとほぼ並行な部分は、p++コンタクト領域8より外側となるように設定し、第3炭化珪素エピタキシャル層3の露出長を長くすることができる。
【0052】
また、図3Hに示すように、p++コンタクト領域8の形成と同時にイオン注入される領域は、活性領域上からpベース層4を被覆し第2炭化珪素エピタキシャル層2の表面上まで広げてもよい。
【0053】
図3Gまたは図3Hの工程の後は、第3炭化珪素エピタキシャル層3および露出した第2炭化珪素エピタキシャル層2の表面上に、厚さ1.5μmの酸化珪素膜をプラズマCVD等の方法で堆積し、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを形成する。
【0054】
そして、図3Iに示すように、開口部にアルミニウム等のp型の不純物をイオン注入し、露出した第2炭化珪素エピタキシャル層2の表面の低不純物濃度のターミネーション領域20を設ける。このターミネーション領域20は、pベース層4の端部から素子の外側の領域に形成する構造や、図3Jに示すように、メサ部100のメサ側面から素子の外側の領域に向けて形成する構造をとることができる。
【0055】
図3Iまたは図3Jの工程の後は、1700℃程度の不活性ガス雰囲気で熱処理を行い、第1pベース層、第2pベース層、ソース領域、p++コンタクト領域の活性化処理を実施した後に、第3炭化珪素エピタキシャル層3および露出した第2炭化珪素エピタキシャル層2の表面上に、厚さ1.5μmの酸化珪素膜をプラズマCVD等の方法で堆積し、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するトレンチ形成用マスクを作製する。
【0056】
そして、図3Kに示すように、ドライエッチングによって第3炭化珪素エピタキシャル層3を貫通し、第2炭化珪素エピタキシャル層2に達するトレンチを形成する。トレンチの底部は第1炭化珪素エピタキシャル層に形成されたpベース層4に達しても良い。次に、トレンチ形成用マスクを除去する。
【0057】
次いで、図3Lに示すように、n+ソース領域7、p+コンタクト領域8、トレンチの表面に沿ったトレンチの底部および側部に酸化膜(ゲート絶縁膜)を形成する。この酸化膜は、酸素雰囲気中において1000℃程度の温度の熱処理によって熱酸化によって形成してもよい。また、この酸化膜はプラズマCVD法や、HTOのような気相成長法によって堆積してもよい。
【0058】
次いで、ゲート絶縁膜9上に、例えばリン原子がドーピングされた多結晶シリコン層を設ける。この多結晶シリコン層は、トレンチ内を埋めるように形成しても良い。この多結晶シリコン層をフォトリソグラフィによりパターニングし、トレンチ内部に残すことによって、ゲート電極10を設ける。ゲート電極10の一部はトレンチ外部に突出していても良い。
【0059】
次いで、ゲート絶縁膜9及びゲート電極10を覆うように、例えばリンガラスを1μm程度の厚さで成膜し、層間絶縁膜11を設ける。そして、層間絶縁膜11及びゲート絶縁膜9をフォトリソグラフィによりパターニングし、n+ソース領域7及びp++コンタクト領域8を露出させたコンタクトホールを形成する。その後、熱処理(リフロー)を行って層間絶縁膜11を平坦化する。
【0060】
次いで、コンタクトホール内及び層間絶縁膜11の上にソース電極12となるNi等の導電性の膜を設ける。この導電性の膜をフォトリソグラフィによりパターニングし、コンタクトホール内にのみソース電極12を残す。
【0061】
次いで、図3Mに示すように、炭化珪素基板1Aの第2主面上に、ニッケル等のドレイン電極13を設ける。この後、1000℃程度の不活性ガス雰囲気で熱処理を行って、n+ソース領域7及びp++コンタクト領域8および炭化珪素基板1Aとオーミック接合するソース電極12と、ドレイン電極13を形成する。
【0062】
次いで、炭化珪素基板1Aの第1主面上に、スパッタ法によって5μm程度の厚さのアルミニウム膜を堆積し、フォトリソグラフィによりソース電極12及び層間絶縁膜11を覆うようにアルミニウムを除去し、電極パッド14を形成する。
【0063】
次いで、ドレイン電極13の表面に、例えばチタン、ニッケル及び金を順に積層することによって、ドレイン電極パッド15を設ける。以上のようにして、図1および図2に示したトレンチMOS構造の炭化珪素半導体素子が完成する。
【実施例】
【0064】
(実施例1)
実施例1として、実施の形態に示す作製方法において、2回のフォトリソグラフィによりメサ形状を作製した。
【0065】
図4は、実施例1のメサ形状を示す画像データの拡大図である。図4に示すように、炭化珪素基板1Aとメサ側面のなす角αは約15°であり、pベース層4の残留厚さdは約0.7μmであった。また、p++コンタクト領域8は、図3Gに示すようにメサ部100のメサ上面の内側まで作製し、ターミネーション領域20をpベース層4と接する位置から外側まで形成した。
【0066】
(実施例2)
実施例2として、実施の形態に示す作製方法において、2回のフォトリソグラフィによりメサ形状を作製した。pベース層4の残留厚さdは約0.7μmであった。また、p++コンタクト領域8は、図3Hおよび図3Iに示すように、メサ部100のメサ下面の外側まで作製し、ターミネーション領域20をp++コンタクト領域8と接する位置から外側まで形成した。
【0067】
(実施例3)
実施例3として、実施の形態に示す作製方法において、2回のフォトリソグラフィによりメサ形状を作製した。pベース層4の残留厚さdは約0.7μmであった。また、図3Jに示すように、p++コンタクト領域8は、メサ部100のメサ上面の内側まで作製し、ターミネーション領域20をp++コンタクト領域8と接する位置から外側まで形成した。このとき、p++コンタクト領域8の注入深さは0.3μmであった。
【0068】
(比較例1)
実施の形態に示す作製方法において、メサ部100のメサ形状の作製方法を変更した。比較例1は、第3炭化珪素エピタキシャル層3上に厚さ2.0μm酸化珪素膜をCVD法により堆積し、レジストを形成した後に、バッファード弗酸を用いたウエットエッチングを行い、約45°のテーパー角を持つ酸化珪素マスクを形成した。次に、SF6ガスを用いたドライエッチングを行ない、炭化珪素基板1Aとメサ側面のなす角αが約45°のメサ形状を作製した。この場合、メサ部100のメサ端部にはおよそ0.1μm程度の深さのサブトレンチが形成された。
【0069】
(比較例2)
比較例2においても、実施の形態に示す作製方法において、メサ形状の作製方法を変更した。比較例2では、第3炭化珪素エピタキシャル層3上にレジストを形成した後に、ドライエッチングで約1.0μmの厚さで第3炭化珪素エピタキシャル層3を除去し、再度レジストを形成し、ドライエッチングで1.0μmの厚さで第3炭化珪素エピタキシャル層3と第2炭化珪素エピタキシャル層を除去した。この場合、炭化珪素基板1Aとメサ部100のメサ側面のなす角αが約15°であり、pベース層4の残留厚さdは約0.3μmであった。
【0070】
(比較例3)
比較例3では、実施例2に示す作製方法において、pベース層4の形成領域をメサ部100のメサ側面より内側とし、メサ側面と第1炭化珪素エピタキシャル層1が接する部位に、pベース4を形成しなかった。また、p++コンタクト領域8は、メサ下面の外側まで作製し、ターミネーション領域20をp++コンタクト領域8と接する位置から外側までに形成した。このとき、メサ側面と第1炭化珪素エピタキシャル層1の接する部分のp++コンタクト領域8の厚さを0.7μmとなるようイオン注入した。
【0071】
図5は、実施例1〜3と比較例1〜3のリーク発生を説明する図表である。上記の実施例1〜3と、比較例1〜3について、素子のドレイン側に1000V印加したときの、ソースドレイン間に流れる電流を測定し、1μA流れるときの電圧を10個の素子について平均値を比較した。
【0072】
この結果、実施例1〜3の電流量は、比較例と比べ小さいことが確認できた。このときのリーク電流の発生部位を、PHEMOS‐1000(浜松ホトニクス製)で観察した。比較例1および比較例2ではメサ外周部にリーク発生部位が多く分布しており、サブトレンチの形成やpベース層4が薄くなったことにより、リーク電流量が大きくなったと考えられる。また、比較例3ではメサ側面からメサ外周部にわたってリーク発生部位が多く分布しており、高い加速電圧で高ドーズ量のAlをイオン注入することによりリーク電流量が大きくなったと考えられる。
【0073】
以上の検証結果より、本実施例1〜3の炭化珪素半導体素子では、逆電圧印加時のリーク電流発生を抑えることができることがわかった。
【0074】
以上において本発明では、炭化珪素でできた炭化珪素基板の主面を(0001)面とし当該(0001)面上にMOSを構成した場合を例に説明したが、これに限らず、ワイドバンドギャップ半導体、基板主面の面方位などを種々変更可能である。
【0075】
以上において本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であり、上述した各実施の形態において、例えば各部の寸法や不純物濃度等は要求される仕様等に応じて種々設定される。また上述した各実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上のように、本発明にかかる炭化珪素半導体素子は、電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置などに使用される高耐圧半導体素子に有用である。
【符号の説明】
【0077】
1A n+型の炭化珪素基板
1 n型の第1炭化珪素エピタキシャル層
2 n型の第2炭化珪素エピタキシャル層
3 n型の第3炭化珪素エピタキシャル層
4,5 pベース層
6 濃いn型領域(n型イオン注入層)
7 n+ソース領域
8 p++コンタクト領域
9 ゲート絶縁膜
10 ゲート電極
11 層間絶縁膜
12 ソース電極
13 ドレイン電極
14 電極パット
15 ドレイン電極パッド
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図3K
図3L
図3M
図4
図5