【実施例】
【0049】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
レジスト材料の調製
[組成物1〜8の調製]
表1に示す組成でレジストの原料を調合し、0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過することによりレジスト材料R−01〜R−08をそれぞれ調製した。なお、表1中、樹脂、光酸発生剤、撥水性ポリマー、感度調整剤、及び溶剤は、以下の通りである。
【0051】
樹脂:ポリマー1
【化1】
Mw=8,000
Mw/Mn=1.60
【0052】
光酸発生剤:PAG−1
【化2】
【0053】
PAG−2
【化3】
【0054】
感度調整剤:AQ−1
【化4】
【0055】
撥水性ポリマー:SF−1
【化5】
Mw=8,700
Mw/Mn=1.85
【0056】
溶剤
PGMEA:プロピレングリコールモノメエチルエーテルアセテート
GBL:γ−ブチロラクトン
【0057】
【表1】
【0058】
[露光評価試験]
表1で示す組成で調製したレジスト組成物を、シリコンウエハーに有機反射防止膜としてARC29A(日産化学工業(株)製)を78nmの膜厚で成膜して作製した基板の上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、厚み100nmのレジスト膜を得た。これをArFエキシマレーザースキャナー((株)ニコン製NSR−S307E、NA=0.85、σ0.93/0.74、Annular照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で、ウエハー上寸法が、スペース幅90nm及びピッチ180nm、スペース幅80nm及びピッチ160nm、並びにスペース幅70nm及びピッチ140nmのラインアンドスペースパターン(LSパターン)と、スペース幅90nm及びピッチ1,650nmの孤立パターンとの露光を、露光量とフォーカスを変化(露光量ピッチ:1mJ/cm
2、フォーカスピッチ:0.025μm)させながら行い、露光後、表2に示した温度で60秒間PEBし、2.38質量%のTMAH水溶液で30秒間パドル現像を行い、純水でリンス、スピンドライを行い、ポジ型パターンを得た。現像後のLSパターン及び孤立パターンをTD−SEM((株)日立ハイテクノロジーズ製S−9380)で観察した。
【0059】
<感度評価>
感度評価として、スペース幅90nm及びピッチ180nmのLSパターンが得られる最適な露光量E
op(mJ/cm
2)を求めた。結果を表2に示す。この値が小さいほど感度が高い。
【0060】
<露光裕度(EL)評価>
露光裕度評価として、LSパターンにおけるスペース幅が90nmの±10%(81〜99nm)の範囲内で形成されるときの露光量から、次式により露光裕度(単位:%)を求めた。結果を表2に示す。
露光裕度(%)=(|E
1−E
2|/E
op)×100
E
1:スペース幅81nm、ピッチ180nmのLSパターンを与える最適露光量
E
2:スペース幅99nm、ピッチ180nmのLSパターンを与える最適露光量
E
op:スペース幅90nm、ピッチ180nmのLSパターンを与える最適露光量
【0061】
<ラインウィドゥスラフネス(LWR)評価>
感度評価における最適露光量で照射して得たLSパターンを、スペース幅の長手方向に10箇所の寸法を測定し、その結果から標準偏差(σ)を求め、標準偏差(σ)の3倍値(3σ)をLWRとした。結果を表2に示す。この値が小さいほど、ラフネスが小さく均一なスペース幅のパターンが得られる。
【0062】
<焦点深度(DOF)評価>
焦点深度評価として、孤立パターンにおけるスペース幅が90nmの±10%(81〜99nm)の範囲で形成されるときのフォーカスから、フォーカス範囲を求めた。結果を表2に示す。この値が大きいほど、焦点深度が広い。
【0063】
<解像力評価>
スペース幅70〜90nm(ピッチ140〜180nm)のLSパターンが解像するパターン寸法を解像力とした。結果を表2に示す。この値が小さいほど解像力に優れる。
【0064】
【表2】
【0065】
[実施例1]
[1H−NMR分析用のサンプルの調製、分析、及び解析]
調製したレジスト組成物0.2mlを重ジメチルスルホキシド(DMSO−d6)0.36mlに溶解させ、測定用サンプル(分析サンプル)とした。得られた測定用サンプルの1H−NMRを測定した。本実施例では日本電子製ECA−600スペクトロメーターを使用して、5mmφ多核プローブを用いてスペクトルを得た。DMSO−d6を内部ロックシグナル及びケミカルシフト内部標準として用いた。測定条件としてシングルパルス法を用い、パルス角は45°、積算回数は16回、データ点数は32Kでデータ取り込みを行った。
【0066】
1H−NMR測定により得られたスペクトルをALICE2 for Metabolome(JEOL RESONANCE)により位相及びベースライン補正、PCA解析を行った。解析範囲は−1〜10ppmの範囲にわたって0.04ppm幅でスペクトルを積分し、溶媒及び重溶剤のピークを除いた後に規格化した。NMRピークの帰属は、レジスト組成物フォーミュレーション前の各材料を個別に1H−NMR測定して、スペクトルを比較して行った。
【0067】
[組成物1〜4の1H−NMR測定結果のPCA解析結果]
図1に組成物1〜4の1H−NMR測定結果をPCA解析して得られたPC1の値と各組成物でのPAG−2とPAG−1の比率の相関図を示す。このときのPC1の寄与率は83.9%であった。組成物1のPAG−2が含まれないレジストと比較して、PAG−2の比率が増大するにつれ、PC1の値が減少していることから、PAG−2/PAG−1とPC1の値には良好な相関が見られている。
【0068】
図2のBに組成物1〜4のレジスト組成物の1H−NMR測定結果をPCA解析して得られたローディングチャートを示す。
図2のBからは1.7ppm、6.0ppm、及び6.6ppmに差異が生じていることを示す結果が得られた。このケミカルシフトはレジスト組成物各構成成分の標準サンプルとの比較の結果、PAG−1及びPAG−2に帰属されることが確認できた。これらの結果から、組成物1〜4のPC1の値の変動要因はレジスト組成物中のPAG−1及びPAG−2の比率の違いに由来することが、PCA解析により示された。
【0069】
図3に組成物1〜4の1H−NMR測定結果をPCA解析して得られたPC1の値と組成物1〜4の各評価結果との相関図を示す。感度、露光裕度、ラインウィドゥスラフネス、焦点深度の評価結果とPC1の値との間に相関が見られている。このように、通常は露光評価試験を行わないと分からないレジストの感度が露光評価試験を行わずとも、多変量解析により推定可能になり、不良ロットを発見することができ、さらに不良原因の特定を可能にする。露光評価試験の結果のみでは感度変動が生じていた場合、これまでは、その原因までは明らかにすることは出来なかったが、多変量解析を用いることで、感度変動の推定及び変動要因の特定が可能になる。
【0070】
[比較例1]
図2のAに組成物1の1H−NMRチャートを示す。
図2のAからはレジスト組成物を構成する溶剤のピークしか確認できず、このチャートから各レジスト組成物における構成成分の差異を見出すことは非常に困難である。
【0071】
[実施例2]
[組成物1及び5〜8の1H−NMR測定結果のPCA解析結果]
図4に組成物1及び5〜8の1H−NMR測定結果をPCA解析して得られたPC1の値と各組成物のPAG−1の添加量の相関図を示す。このときのPC1の寄与率は81.5%であった。組成物1と比較して、PAG−1の添加量の増減と連動してPC1の値も増減しており、PAG−1の添加量とPC1の値には良好な相関が見られている。
【0072】
図5に組成物1及び5〜8の1H−NMR測定結果をPCA解析して得られたローディングチャートを示す。チャートからは1.7ppm及び6.0ppmに差異が生じていることを示す結果が得られた。このケミカルシフトは
図2のBの結果と同様に、標準サンプルとの比較の結果、PAG−1に帰属されることが確認できた。これらの結果から、組成物1及び5〜8のPC1の値の変動要因はレジスト組成物中のPAG−1の添加量の違いに由来することが、PCA解析により示された。
【0073】
図6に組成物1及び5〜8の1H−NMR測定結果をPCA解析して得られたPC1の値と組成物1及び5〜8の各評価結果との相関図を示す。
図3と同様に感度、露光裕度、ラインウィドゥスラフネス、焦点深度の評価結果とPC1の値との間に相関が見られている。
【0074】
以上の評価結果から、レジスト組成物のPCA解析結果と実際の評価試験の結果には良好な相関が見られている。これにより、通常は露光評価試験を行わないと分からないレジストの感度が露光評価試験を行わずとも、多変量解析により推定可能になり、不良ロットを発見することができ、さらに不良原因の特定を可能にする。以上のように、本発明では、レジストの品質管理及び不良発生時の早期原因究明のために簡便な機械化された解析手法を提供することができることが明らかになった。
【0075】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。