(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
円筒状の胴部を有する容器と、前記胴部の内側の空間を鉛直方向上下に区画する1以上の仕切板と、複数の熱交換ブロックとを備え、前記空間が前記仕切板によって区画された、鉛直方向上下に並ぶ複数の室に、前記熱交換ブロックをそれぞれ配置した縦積型凝縮蒸発器であって、
前記胴部の内周面と、前記仕切板の周端部とが、前記胴部の中心軸に垂直な第1平面と交差する前記内周面にわたって液密に接合された1以上の接合部と、
前記室のうち、最上段に位置する前記室に液体酸素を供給する液体酸素供給管と、
前記仕切板を貫通し、上方に位置する前記室に貯留する液体酸素を下方に位置する前記室に供給する1以上の連通管と、を備え、
前記室には液体酸素がそれぞれ貯液され、
少なくとも1以上の前記仕切板が、前記第1平面に対して湾曲している、縦積型凝縮蒸発器。
【背景技術】
【0002】
空気分離装置は、一般的に、高圧蒸留塔、低圧蒸留塔及び凝縮蒸発器を備えている。特許文献1及び2には、空気分離装置で用いる縦積型の凝縮蒸発器(以下、「縦積型凝縮蒸発器」という)の構成が開示されている。縦積型凝縮蒸発器は、柱状の容器の内側の空間を鉛直方向上下に仕切る1以上の仕切板を有し、この仕切板によって区画された鉛直方向上下に並ぶ複数の室に、それぞれ熱交換ブロックを配置したものである。
【0003】
図6は、従来の縦積型凝縮蒸発器を用いた空気分離装置の構成を模式的に示す系統図である。
図6に示すように、空気分離装置101は、高圧蒸留塔500、低圧蒸留塔600及び縦積型凝縮蒸発器400を備えている。空気分離装置101では、圧縮、精製された原料空気が、高圧蒸留塔500の底部に供給されて塔内を上昇する。原料空気が塔内を上昇する際、塔内を流下する還流液との気液接触により低沸点成分である窒素が濃縮し、塔頂にて窒素ガスが生成する。一方、塔内を流下する還流液は、下降しながら高沸点成分である酸素が富化し、塔底にて酸素富化液体空気が生成する。生成した酸素富化液体空気は、原料として低圧蒸留塔600の中央部に供給されて塔内を流下する。酸素富化液体空気が塔内を流下する際、上昇ガスとの気液接触により高沸点成分である酸素が濃縮し、塔底にて液体酸素が生成する。一方、上昇ガスは、塔内を上昇しながら低沸点成分である窒素が濃縮し、塔頂にて窒素ガスが生成する。
【0004】
高圧蒸留塔500の塔頂に生成した窒素ガスは、管路61を経て仕切板14,24により区画された室110,120,130に設けられた熱交換ブロック100,200,300にそれぞれに供給される。一方、低圧蒸留塔600の塔底に生成した液体酸素は、仕切板により区画されて鉛直方向上下に多段に並ぶ室のうち、最上段の室110に液体酸素供給管31を経て供給される。室110に供給された液体酸素は、熱交換ブロック100を流れる窒素ガスとの熱交換によって、サーモサイフォン効果により、熱交換ブロック100に導入され、その一部が蒸発する。蒸発しなかった液体酸素は、仕切板14により区画された室110と室120とを連通する管(連通管)51を経て、下方の室120に供給される。供給された液体酸素は、設置された熱交換ブロック200にて窒素ガスとの熱交換によりその一部が蒸発し、蒸発されなかった液体酸素は、さらに下方の室130に連通管52を介して供給される。最下段の室130に供給された液体酸素は、熱交換ブロック300にてその一部が蒸発するとともに、蒸発しなかった液体酸素は、縦積型凝縮蒸発器400を構成する容器41の低部より抜き出される。また、各室の熱交換ブロックで蒸発した酸素ガスは、低圧蒸留塔600に上昇ガスとして供給される。また、液体酸素との熱交換により凝縮した液体窒素は、高圧蒸留塔500及び低圧蒸留塔600に還流液として戻される。
【0005】
従来の縦積型凝縮蒸発器400は、円柱状の容器41の内側の空間を鉛直方向上下に仕切る仕切板14,24を有し、この仕切板14,24によって区画された鉛直方向上下に並ぶ複数の室110,120,130に、それぞれ熱交換ブロック100,200,300を配置したものである。なお、仕切板14,24は、それぞれ容器41の胴部の断面形状に対応する形状と所定の厚さとを有する平板であり、当該仕切板によって区画された上方の室にとって床板となり、下方の室にとって天板となる。また、容器41と仕切板14,24とは、容器41の胴部の内周面に設けられたリング状の接合部材13,23を介して接合されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した一実施形態である縦積型凝縮蒸発器及びこれを備える空気分離装置の構成について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0014】
なお、本明細書において、数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
仕切板が湾曲しているとは、仕切板の周端部と、仕切板の周端部よりも内側のいずれかの部分とが、同一平面上に位置しないことをいう。これに対して、仕切板が平板(平坦)であるとは、仕切板の周端部と、仕切板の周端部の内側の全ての部分とが、同一平面上に位置することをいう。
「欠球形状」とは、球体をある平面で切り欠いた際に得られる球面体であって、所定の厚さを有する形状を意味する。なお、欠球形状を断面視した際、高さ=H、中央部の内半径(クラウンR)=R、厚さ(呼び厚さ)=t、内径=Dと示す。
【0015】
<空気分離装置>
先ず、本発明を適用した一実施形態である空気分離装置の構成について、説明する。
図1は、本発明を適用した一実施形態である空気分離装置の構成の一例を示す系統図である。
図1に示すように、本実施形態の空気分離装置1は、高圧蒸留塔50、低圧蒸留塔60及び縦積型凝縮蒸発器40を備えて概略構成されている。空気分離装置1では、高圧蒸留塔50と低圧蒸留塔60とが、縦積型凝縮蒸発器40によって熱的に統合されている。
【0016】
高圧蒸留塔50、及び低圧蒸留塔60は、特に限定されるものではなく、従来から一般的に用いられている構成のものを適用することができる。
【0017】
(縦積型凝縮蒸発器)
図2は、本発明を適用した一実施形態である縦積型凝縮蒸発器の構成の一例を示す断面模式図である。
図2に示すように、本実施形態の縦積型凝縮蒸発器40は、円筒状の胴部41Aを有する容器41と、胴部41Aの内側の空間を鉛直方向上下に区画する1以上の仕切板と、複数の熱交換ブロックとを備え、上記空間が仕切板によって区画された、鉛直方向上下に並ぶ複数の室に熱交換ブロックがそれぞれ配置されている。
なお、本実施形態の縦積型凝縮蒸発器40では、湾曲した2つの仕切板114,124によって、容器41の内側の空間が3つの室110,120,130に区画され、それぞれの室に熱交換ブロック100,200,300が配置された場合を一例として説明する。
【0018】
容器41は、縦積型凝縮蒸発器40の本体(筐体)である。容器41は、円柱状である。容器41は、円筒状の胴部41Aと、平板状の床板41Bと、を有する。
【0019】
胴部41Aは円筒状であり、胴部41Aの内側には空間が存在する。
胴部41Aの中心軸Cと垂直な平面で切断した、胴部41Aを断面視した際、胴部41Aの内周面41aの形状は円形である。後述するように、内周面41aの直径は、Dと示すことができる。
胴部41Aの中心軸Cを含む平面(第2平面)で切断した、胴部41Aを断面視した際、胴部41Aの内周面41aの形状は、平行な直線となる。
【0020】
胴部41Aの材質は、液体が透過せず、低温で脆化性のないものであれば、特に限定されない。胴部41Aの材質としては、アルミニウム合金等が挙げられる。
【0021】
胴部41Aの厚さは、容器41の許容応力に応じて、適宜選択できる。胴部41Aの厚さとしては、5〜50(mm)とすることができ、5〜30(mm)とすることが好ましく、5〜20(mm)とすることがより好ましい。
【0022】
胴部41Aの周方向(あるいは半径方向)における線膨張係数としては、18〜26(×10
−6/℃)とすることができ、18〜20(×10
−6/℃)とすることが好ましい。
【0023】
床板41Bは、容器41の底部分に位置する。したがって、床板41Bは、仕切板には該当しない。
床板41Bを、胴部41Aの中心軸Cと垂直な方向に断面視すると、床板41Bの形状は、円(円形)である。また、床板41Bを、胴部41Aの中心軸Cと平行な方向に断面視すると、床板41Bの断面形状は、厚さを有する直線である。すなわち、床板41Bの三次元の形状は、円形の平板(円板)形状である。
【0024】
床板41Bの材質は、液体が透過せず、低温で脆化性のないものであれば、特に限定されない。床板41Bの材質としては、アルミニウム合金等が挙げられる。
【0025】
床板41Bの厚さは、容器41の許容応力に応じて、適宜選択できる。床板41Bの厚さとしては、50〜300(mm)とすることができ、100〜200(mm)とすることが好ましい。
【0026】
仕切板114,124は、所定の厚さを有する板状の部材である。仕切板114,124は、胴部41Aの内側の空間を鉛直方向上下に区画する。
【0027】
図3は、本実施形態の縦積型凝縮蒸発器に適用する仕切板の構成の一例を示す拡大断面図である。具体的には、
図3は、容器41の胴部41Aの中心軸Cを含む平面で切断した、胴部41Aの拡大断面図である。
図3に示すように、胴部41Aの中心軸Cを含む平面で切断した、仕切板114を断面視した際、仕切板114の断面形状は、円の一部(切り欠いた円)である。また、仕切板114の形状(円の一部)は、胴部41Aの中心軸Cに垂直な平面(第1平面)Sに対して上方に凸となるように、湾曲している。また、胴部41Aの中心軸Cと垂直な平面で切断した、仕切板114を断面視した際、仕切板114の形状は、胴部41Aの内周面41aの断面形状に対応した円形である(図示せず)。すなわち、仕切板114の三次元の形状は、欠球形状となっている。
また、
図2に示すように、仕切板114の鉛直方向下方に設けられた仕切板124の三次元の形状も、仕切板114と同様に欠球形状となっている。
【0028】
仕切板114、124の材質は、液体が透過せず、低温で脆化性のないものであれば、特に限定されない。仕切板114、124の材質としては、アルミニウム合金等が挙げられる。
【0029】
仕切板114,124の厚さdは、容器41の許容応力に応じて、適宜選択できる。仕切板114,124の厚さdとしては、後述するように、5〜50(mm)とすることができ、5〜30(mm)とすることが好ましく、5〜20(mm)とすることがより好ましい。
【0030】
仕切板114,124の周方向(あるいは半径方向)における線膨張係数としては、18〜26(×10
−6/℃)とすることができ、18〜20(×10
−6/℃)とすることが好ましい。
【0031】
図2及び
図3に示すように、容器41の胴部41Aの内周面41aと、仕切板114,124の周端部とは、容器41の胴部41Aの中心軸Cに垂直な平面Sと交差する内周面41aの周方向にわたって、それぞれ液密に接合されている。
具体的には、胴部41Aの内周面41aには、胴部41Aの軸方向上下に所定の間隔をあけて、リング状の接合部材13,23が設けられている。接合部材13,23は、容器41の胴部41Aの中心軸Cに垂直な平面Sと交差する内周面41aの周方向全体に亘ってそれぞれ設けられている。そして、容器41の胴部41Aの内周面41aと、欠球形状の仕切板114とは、接合部材13を介して液密に接合されている。また、容器41の胴部41Aの内周面41aと、欠球形状の仕切板124とは、接合部材23を介して液密に接合されている。
【0032】
図3に示すように、容器41の胴部41Aの中心軸Cを含む平面で切断した、胴部41A及び仕切板114を断面視した際、胴部41Aの内周面41aの直径、及び仕切板114の内径は、いずれもDで示される。仕切板114の板厚(厚さ)は、dで示される。
また、容器41の胴部41Aの中心軸Cを含む平面で切断した、胴部41A及び仕切板114を断面視した際、仕切板114の周端部と胴部41Aの内周面41aとの接合部がなす円を含む平面Sと、仕切板114との最大距離は、Hで示される。
【0033】
ところで、従来の縦積型凝縮蒸発器によれば、仕切板が円形かつ平坦(平板形状)であるため、容器の胴部の中心軸を含む平面で切断した、胴部及び仕切板を断面視した際、仕切板の周端部と胴部の内周面との接合部がなす円を含む平面Sと、仕切板とが一致することになる。すなわち、平面Sと仕切板114との最大距離(最大高さ)Hは、0である。
【0034】
これに対して、本実施形態の縦積型凝縮蒸発器40では、仕切板114が欠球形状、かつ上方に凸となるように湾曲しているため、平面Sと仕切板114との最大距離Hは、仕切板114の平面Sからの最大高さとなる。また、最大距離(最大高さ)Hは、容器41の胴部41Aの中心軸C上に位置することになる。なお、平面Sと仕切板114との最大距離Hは、仕切板114の欠球高さHと示す場合もある。
【0035】
ここで、本実施形態の縦積型凝縮蒸発器40によれば、上述した最大距離Hと内周面41aの直径Dからなる「H/D
2」の値が、0.014〜0.061(1/m)であることが好ましい。「H/D
2」の値が上記範囲内となる形状の仕切板を選択することにより、仕切板の板厚(厚さd)を薄くして設備コストを低減する効果と、起動時間の短縮する効果との両方が得られる。
なお、詳細については、後述する検証例で説明する。
【0036】
図2及び
図3に示すように、胴部41Aの内側の空間は、2つの湾曲した仕切板114,124によって、3つの室110,120,130に区画される。具体的には、室110は、区画された室のうち、最上段に位置し、仕切板114を床板とする空間である。室120は、区画された室のうち、中段に位置し、仕切板114を天板、仕切板124を床板とする空間である。室130は区画された室のうち、最下段に位置し、仕切板124を天板とする空間である。これらの室110,120,130には、それぞれ液体酸素が貯液される。
【0037】
図2に示すように、仕切板114には、当該仕切板114を貫通する連通管51が設けられている。連通管51により、上方の室110に貯留した液体酸素を下方の室120に供給できる。また、仕切板124には、当該仕切板124を貫通する連通管52が設けられている。連通管52により、上方の室120に貯留した液体酸素を下方の室130に供給できる。
【0038】
熱交換ブロック100,200,300は、プレートとフィンからなるプレートフィン型熱交換器であり、熱交換器コア10には、ガスを流入するためのガスヘッダー11と凝縮液を取り出すための液ヘッダー12とがそれぞれ設けられている。熱交換ブロック100は、上段の室110内に配置されている。熱交換ブロック200は、中段の室120内に配置されている。熱交換ブロック300は、下段の室130内に配置されている。
【0039】
<空気分離装置の運転方法>
図1に示すように、空気分離装置1では、圧縮、精製された原料空気が、高圧蒸留塔50の底部に供給されて塔内を上昇する。原料空気が塔内を上昇する際、塔内を流下する還流液との気液接触により低沸点成分である窒素が濃縮し、塔頂にて窒素ガスが生成する。一方、塔内を流下する還流液は、下降しながら高沸点成分である酸素が富化し、塔底にて酸素富化液体空気が生成する。生成した酸素富化液体空気は、原料として低圧蒸留塔60の中央部に供給されて塔内を流下する。酸素富化液体空気が塔内を流下する際、上昇ガスとの気液接触により高沸点成分である酸素が濃縮し、塔底にて液体酸素が生成する。一方、上昇ガスは、塔内を上昇しながら低沸点成分である窒素が濃縮し、塔頂にて窒素ガスが生成する。
【0040】
高圧蒸留塔50の塔頂に生成した窒素ガスは、管路61を経て仕切板114,124により区画された室110,120,130に設けられた熱交換ブロック100,200,300にそれぞれに供給される。一方、低圧蒸留塔60の塔底に生成した液体酸素は、仕切板により区画されて鉛直方向上下に多段に並ぶ室のうち、最上段の室110に液体酸素供給管31を経て供給される。室110に供給された液体酸素は、熱交換ブロック100を流れる窒素ガスとの熱交換によって、サーモサイフォン効果により、熱交換ブロック100に導入され、その一部が蒸発する。蒸発しなかった液体酸素は、仕切板114により区画された室110と室120とを連通する連通管51を経て、下方の室120に供給される。供給された液体酸素は、設置された熱交換ブロック200にて窒素ガスとの熱交換によりその一部が蒸発し、蒸発されなかった液体酸素は、さらに下方の室130に連通管52を介して供給される。最下段の室130に供給された液体酸素は、熱交換ブロック300にてその一部が蒸発するとともに、蒸発しなかった液体酸素は、縦積型凝縮蒸発器40を構成する容器41の低部より抜き出される。また、各室の熱交換ブロックで蒸発した酸素ガスは、低圧蒸留塔60に上昇ガスとして供給される。また、液体酸素との熱交換により凝縮した液体窒素は、高圧蒸留塔50及び低圧蒸留塔60に還流液として戻される。
【0041】
(縦積型凝縮蒸発器の起動方法)
図2に示すように、本実施形態の縦積型凝縮蒸発器40の起動は、先ず、低温ガスをガスヘッダー11から熱交換コア10に流入させ、液ヘッダー12から排出することで各室110,120,130の熱交換ブロック100,200,300をそれぞれ冷却する。
【0042】
次いで、低温ガスを最上段に位置する室110に流入させた後、液体酸素取出管32から排出することで、室110に対応する容器41の胴部41A、仕切板114、連通管51、室120に対応する容器41の胴部41A、仕切板124、連通管52、室130に対応する容器41の胴部41A、の順番に冷却する。
【0043】
次に、液体窒素を最上段に位置する室110に液体酸素供給管31を介して流入する。その際、液体酸素供給管31から流出した液体は室110の床板となる仕切板114に放散され、仕切板114は蒸発潜熱により急速に温度が低下する。
【0044】
ここで、仕切板114と、これに接合されている容器41の胴部41Aとの間に温度差が生じるが、仕切板114が欠球形状に湾曲した形状であり、熱応力が緩和されるため、仕切板114と容器41の胴部41Aとの接合部が破損しない。したがって、供給する液体の流量を極力減少させる必要や、低温空気ガスによる冷却到達温度を液体温度付近まで低下させる必要がなく、冷却時間の短縮が可能である。
【実施例】
【0045】
本発明の効果を確認するために、以下の検証試験を行った。なお、本発明は、以下の検証試験の内容に限定されない。
【0046】
<検証試験1>
本発明の縦積型凝縮蒸発器において、仕切板によって区画された室に貯留された液体酸素の液ヘッドに対して、仕切板が欠球形状の場合(例1)、及び平板形状の場合(例2)のそれぞれの最小板厚dをシミュレーションによって求めた。結果を表1に示す。
なお、シミュレーションは、構造解析の計算ソフトを用い、仕切板の内径(容器の直径)Dが4050mm、液ヘッドが19kPa、許容応力125MPaの条件を用いて行った。
【0047】
(例1)
図3に示すような、欠球形状に湾曲した仕切板を用いた。仕切板の欠球高さH、H/D
2は、表1に示す。
【0048】
(例2)
平坦な仕切板を用いた。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示すように、欠球形状に湾曲した仕切板を用いることで、最小板厚dの値を50%以上薄くできることを確認した。これにより、設備コストの低減が可能であることが示唆された。
【0051】
<検証試験2>
本発明の縦積型凝縮蒸発器において、仕切板によって区画された室に液体窒素を流入し、仕切板の温度が瞬時に液体窒素の沸点まで低下すると仮定し、発生する最大熱応力が許容応力を超えないようにするための温度差(容器の胴部の温度−仕切板温度)をシミュレーションにより求めた。結果を表2に示す。
なお、シミュレーションは、構造解析の計算ソフトを用い、内径(容器の直径)Dが4050mm、許容応力125MPaの条件を用いて行った。
【0052】
(例3,4)
図3に示すような、欠球形状に湾曲した仕切板を用いた。それぞれの仕切板の欠球高さH、H/D
2は、表2に示す。
【0053】
(例5)
平坦な仕切板を用いた。
【0054】
【表2】
【0055】
表2に示すように、欠球形状(例3及び例4)では、平板形状(例5)に比べて温度差が大きく、低温ガスによる冷却到達温度を高くできることがわかった。これにより、欠球形状に湾曲した仕切板を用いることで、縦積型凝縮蒸発器の冷却が迅速にでき、起動時間の短縮、及び起動の際の運転コストを低減できることが示唆された。
【0056】
なお、表2に示すように、欠球高さHが異なる例3及び例4では、求めた温度差はほぼ同じであった。さらに、欠球高さHを低くすると平坦(平板形状)に近づくため、温度差は小さくなると考えられる。
【0057】
<検証試験3>
本発明の縦積型凝縮蒸発器において、仕切板の欠球形状(欠球高さH)と仕切板の最小板厚dとの関係について検証した。具体的には、3つの容器径(容器の直径=仕切板の内径)D:1.5m、2.9m、4.0について、シミュレーションを実施した。
【0058】
図4は、本発明の縦積型凝縮蒸発器における、仕切板の欠球形状(欠球高さH)と仕切板の最小板厚dとの関係を示す図である。
図4中、縦軸は、欠球形状の仕切板の最小板厚(平板形状の最小板厚に対する比)である。また、横軸は、容器径Dの2乗に対する欠球高さHの比(H/D
2[1/m])であって、欠球の形状を示すものである。
【0059】
図4に示すように、仕切板の欠球形状(欠球高さH)と仕切板の最小板厚dとの関係は、容器径(容器の直径=仕切板の内径)D:1.5m、2.9m、4.0mによらず、一つの関係で表されることがわかった。
【0060】
また、同じ容器径において、欠球高さHを大きくすると最小板厚dを薄くできるが、横軸(H/D
2[1/m])が0.060を超えると板厚を減少させる効果はほとんどないことを確認した。また、横軸(H/D
2[1/m])が0.014未満では、前述したように平板形状に近づくため、起動時の熱応力に対する有効性が小さくなる。したがって、容器径の2乗に対する欠球高さの比横軸(H/D
2[1/m])が、0.014〜0.060[1/m]である欠球形状に湾曲した仕切板を用いることが好ましいことを確認した。
【0061】
以上説明したように、本実施形態の縦積型凝縮蒸発器40、及びこれを備える空気分離装置1によれば、仕切板114,124が、容器41の胴部41Aの中心軸Cに垂直な平面Sに対して上方に凸となるように、それぞれ欠球形状に湾曲したものである。これにより、同じ液ヘッドが仕切板114,124にかかる場合、平坦(平板形状)な仕切板をも通るよりも最小板厚dを薄くすることができる。したがって、設備コストを低減できる。また、欠球形状に湾曲した仕切板114,124を用いることで、低温ガスによる冷却到達温度を高くできるため、縦積型凝縮蒸発器40の冷却が迅速にでき、起動時間の短縮、及び起動の際の運転コストを低減できる。
【0062】
また、仕切板114,124としては、容器径の2乗に対する欠球高さの比横軸(H/D
2[1/m])が、0.014〜0.060[1/m]であるものを適用することが好ましい。
【0063】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0064】
例えば、
図5に示すように、縦積型凝縮蒸発器において、仕切板114を貫通するガス導管71、仕切板124を貫通するガス導管72を有する構成としてもよい。ガス導管71を設けることにより、下方の室120にて蒸発したガスを上方の室110に導くことができる。また、下方の室130にて蒸発したガスを上方の室120に導くことができる。
【0065】
また、上述した縦積型凝縮蒸発器40では、仕切板114,124が欠球形状となるようにそれぞれ湾曲する構成を一例として説明したが、これに限定されるものではない。
【0066】
仕切板は、容器41の胴部41Aの中心軸Cを含む平面で切断した際の断面形状が湾曲したものであれば、欠球形状(真円)に限定されない。すなわち、仕切板は、容器41の胴部41Aの中心軸Cに垂直な平面Sに対して上方に凸となるように湾曲していればよく、楕円球等であってもよい。これにより、上述した実施形態の縦積型凝縮蒸発器40と同様の効果が得られる。
【0067】
また、上述した縦積型凝縮蒸発器40では、仕切板114,124のそれぞれが湾曲する構成を一例として説明したが、これに限定されるものではない。
すなわち、複数の仕切板のうち、少なくとも1以上の仕切板が、上記平面Sに対して湾曲していればよい。この場合、容器41の胴部41Aに設けられる仕切板のうち、上方の仕切板から湾曲形状とすることが好ましい。
【0068】
また、上述した縦積型凝縮蒸発器40では、仕切板114,124が、容器41の胴部41Aの中心軸Cに垂直な平面Sに対して上方に凸となるようにそれぞれ湾曲する構成を一例として説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、仕切板は、容器41の胴部41Aの中心軸Cに垂直な平面Sに対して下方に凸となるように湾曲していてもよい。これにより、上述した実施形態の縦積型凝縮蒸発器40と同様の効果が得られる。