(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材層と、シーラント層と、内容物に接する薄膜層とをこの順で有する積層体から包装袋が構成され、前記積層体の間に注出口が接合された構成を有する注出口付き包装袋であって、
前記シーラント層が、環状オレフィン系樹脂を含み、
前記薄膜層が、ホスホリルコリン基を含む長分子鎖の化合物を含み、前記積層体と前記注出口との接合部まで積層されており、
前記注出口のうち、少なくとも前記内容物に接する部分が、環状オレフィン系樹脂を含み、
前記注出口の外周面のうち、前記積層体と前記注出口との接合部の少なくとも一部に、ポリオレフィン樹脂を含む被覆層が積層されていることを特徴とする注出口付き包装袋。
基材層と、シーラント層と、内容物に接する薄膜層とをこの順で有する積層体から包装袋が構成され、前記積層体の間に注出口が接合された構成を有する注出口付き包装袋であって、
前記シーラント層が、環状オレフィン系樹脂を含み、
前記薄膜層が、ホスホリルコリン基を含む長分子鎖の化合物を含み、
前記注出口のうち、少なくとも前記内容物に接する部分が、環状オレフィン系樹脂を含み、
前記積層体と前記注出口との接合部において、前記薄膜層が省略されており、前記シーラント層と前記注出口とが直接接合されていることを特徴とする注出口付き包装袋。
前記注出口の外周面のうち、少なくとも前記包装袋の外側に露出している部分に、ポリオレフィン樹脂を含む被覆層が積層されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の注出口付き包装袋。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1の断面図に、第1実施形態の注出口付き包装袋31を模式的に示す。注出口付き包装袋31は、内容物16を収容する包装袋17と、包装袋17から内容物16を取り出すための注出口20を備えている。なお、模式図では、内容物16の具体的な状態、形状等は図示しないが、特に限定されず、例えば、固体、液体、気体、粉体、粒体、混合物、組成物、分散物などが挙げられる。
【0013】
包装袋17は、基材層11と、シーラント層12と、内容物16に接する薄膜層13とをこの順で有する積層体10から構成されている。
【0014】
基材層11は、1層からなる単層構成でもよく、2層以上の積層構成でもよい。基材層11を構成する層は適宜選択が可能であるが、例えば補強層、ガスバリア層、遮光層、印刷層、金属箔、合成紙などが挙げられる。基材層11を構成する各層の積層方法としては、ドライラミネート法、押出ラミネート法、共押出法等が挙げられ、各層の組み合わせ等に応じて適宜選択することができる。基材層11は、全体が無色透明でもよく、厚さ方向又は面方向の一部又は全部が着色されてもよい。
【0015】
補強層としては、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(O−PET)、2軸延伸ナイロン(O−Ny)、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)等の補強樹脂層が挙げられる。
ガスバリア層は、例えば無機物やガスバリア性樹脂等から構成することができる。無機物としては、金属蒸着層やアルミナ等の金属酸化物が挙げられる。ガスバリア性樹脂としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、塩化ビニリデン、フッ素樹脂(PCTFE,PTFE,PFA)等が挙げられる。
【0016】
シーラント層12は、環状オレフィン系樹脂から構成されている。環状オレフィン系樹脂としては、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)等が挙げられる。シーラント層12を構成する樹脂成分が、環状オレフィン系樹脂の1又は2種以上であってもよく、環状オレフィン系樹脂と他の樹脂又はエラストマー等との混合物であってもよい。
【0017】
環状オレフィンポリマー(COP)としては、例えば環状オレフィンの単独重合体もしくは2種以上の環状オレフィンの共重合体、又はその水素添加物が挙げられる。環状オレフィンポリマーは、好ましくは非結晶性の重合体であり、より好ましくは、メタセシス等による環状オレフィンの開環重合体、又はその水素添加物である。環状オレフィンポリマーは、環状オレフィンコポリマー等に比べて脂環式構造を含有する比率が高く、非吸着性に優れる。
【0018】
環状オレフィンコポリマー(COC)としては、例えば1もしくは2種以上の環状オレフィンと、1もしくは2種以上の非環状オレフィンとの共重合体、又はその水素添加物が挙げられる。環状オレフィンコポリマーは、好ましくは非結晶性の重合体であり、より好ましくは、環状オレフィンとエチレンとの共重合体、又はその水素添加物である。
【0019】
環状オレフィン系樹脂の構成モノマーとして使用される環状オレフィンは、少なくとも1つの環構造を有する不飽和炭化水素(オレフィン)である。例えば、炭素原子数が3〜20のシクロアルカンを有するビニルシクロアルカン及びその誘導体、炭素原子数が3〜20のモノシクロアルケン及びその誘導体、ノルボルネン骨格を有する環状オレフィン(ノルボルネン系モノマー)等が挙げられる。
【0020】
ノルボルネン系モノマーとしては、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン(ノルボルネン)及びその誘導体が挙げられる。誘導体としては、アルキル基等の置換基を有する化合物、ノルボルナジエンのように不飽和結合を2以上有する化合物、3つ以上の環構造を有し、そのうち2つの環構造がノルボルネン骨格を構成する化合物が挙げられる。3つ以上の環構造を有するノルボルネン系モノマーとしては、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デセン(ジヒドロジシクロペンタジエン)や、ノルボルネン又はジヒドロジシクロペンタジエンに1分子以上のシクロペンタジエンがディールス・アルダー反応により付加した化合物(例えばテトラシクロドデセン、ペンタシクロペンタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン等)、これらの水素添加物、二重結合の位置が異なる異性体、アルキル置換体等が挙げられる。
【0021】
環状オレフィンコポリマー(COC)の構成モノマーとして使用される非環状オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等のα−オレフィン、3−デセン、3−ドデセン等のアルケン類が挙げられる。
【0022】
薄膜層13は、ホスホリルコリン基を含む長分子鎖の化合物から構成される。ホスホリルコリン基は、(トリメチルアンモニオ)エトキシホスホリル基、すなわち、次の式で表される基である。
【0023】
−O−P(O)(O
−)−OCH
2CH
2N(CH
3)
3+
【0024】
ホスホリルコリン基を含む長分子鎖の化合物としては、天然に由来するホスファチジルコリン(レシチン)、スフィンゴミエリン等のリン脂質に限らず、側鎖にホスホリルコリン基を含むポリマーが挙げられる。ホスホリルコリン基を含むモノマーの少なくとも1種と、他のモノマーの1種以上との共重合体が好ましい。特に、ホスホリルコリン基を含む(メタ)アクリル系共重合体が好ましい。
【0025】
ホスホリルコリン基を含むモノマーとしては、例えば、次の式で表される1又は2種以上のモノマーが挙げられる。
【0026】
CH
2=C(R
1)COO−R
2−O−P(O)(O
−)−OCH
2CH
2N(CH
3)
3+
【0027】
ここで、R
1としては、例えば水素原子又はメチル基等の置換基が挙げられる。R
2としては、例えばエチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、アルキレン基等の2価有機基が挙げられる。特に好ましいモノマーは、R
1がメチル基(−CH
3)であり、R
2がエチレン基(−CH
2CH
2−)である、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、すなわち、2−(メタクリロイルオキシ)エチル−2−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートである。
【0028】
ホスホリルコリン基を含むモノマーの一部として、(トリメチルアンモニオ)エトキシホスホリル基の代わりに、(トリエチルアンモニオ)エトキシホスホリル基、(トリプロピルアンモニオ)エトキシホスホリル基などの、(トリアルキルアンモニオ)エトキシホスホリル基を含むモノマーを併用することも可能である。
【0029】
他のモノマーの少なくとも一部としては、非環状アルキル(メタ)アクリレート、環状アルキル(メタ)アクリレート、芳香族(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、ビニルエステル系モノマー等の疎水性モノマーが挙げられる。
【0030】
非環状アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
環状アルキル(メタ)アクリレートとしては、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
芳香族(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
スチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン等が挙げられる。
【0032】
ビニルエーテル系モノマーとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテルが挙げられる。
ビニルエステル系モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステルが挙げられる。
【0033】
他のモノマーの一部として、水酸基を有する(メタ)アクリレート、アミノ基を有する(メタ)アクリレート、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、アミド基を有する(メタ)アクリル系モノマー、エーテル基を有する(メタ)アクリル系モノマー等の1又は2種以上を併用することも可能である。
【0034】
水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
アミノ基を有する(メタ)アクリレートとしては、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0035】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アミド基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
エーテル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
薄膜層13は、ホスホリルコリン基を含むことにより、積層体10の表面に親水性、生体適合性を付与することができる。例えば内容物16に酵素、細胞、生体組織等のタンパク質が含まれている場合でも、タンパク質の凝集を抑制することができる。薄膜層13において、ホスホリルコリン基を含む長分子鎖の化合物が、単分子膜を構成してもよい。
【0037】
ホスホリルコリン基を含む共重合体において、ホスホリルコリン基を含むモノマーが占める割合としては、30〜95モル%が好ましい。ここで、ホスホリルコリン基を含むモノマーが占める割合は、ホスホリルコリン基を含むモノマーと他のモノマーとのモル比がm:nである場合に、[m/(m+n)]×100%で求めることができる。
【0038】
ホスホリルコリン基を含むモノマーが占める割合は、30〜70モル%、55〜60モル%、70〜95モル%、80〜90モル%等、更に選択することができる。
また、他のモノマーにおいて、疎水性モノマーと親水性モノマーを併用することにより、親水性と疎水性のバランスを改善することもできる。
本発明の包装体で医薬品等の薬剤を包装する場合、内容物の性質によってホスホリルコリン基を含む共重合体に占めるホスホリルコリン基を含むモノマーの割合を適切に変更することが好ましい。例えば、免疫グロブリン等の親水性の化合物を含む薬剤の場合は70〜95モル%であることが好ましく、80〜90モル%であることがより好ましい。また、牛血清アルブミン等の疎水性の化合物を含む薬剤の場合は30〜70モル%であることが好ましく、55〜65モル%であることがより好ましい。薬剤は、注射液等の溶液であってもよい。ホスホリルコリン基を含むモノマーの割合を決定する方法として、包装袋に対して薬剤の凝集性を試験し、タンパク質などの化合物が凝集する等の問題がない包装袋を選択する方法が挙げられる。
【0039】
積層体10に薄膜層13を形成する方法としては、シーラント層12の表面に、ホスホリルコリン基を含む長分子鎖の化合物を塗工する方法が挙げられる。基材層11とシーラント層12との積層は、シーラント層12上の薄膜層13を形成する前に行うことが好ましい。
【0040】
基材層11とシーラント層12との積層方法としては、ドライラミネート法、押出ラミネート法などが挙げられる。基材層11とシーラント層12とを積層する際には、必要に応じて、接着剤を介することができる。接着剤としては、ポリウレタン系、ポリエーテル系、アルキルチタネート(有機チタン化合物)系などのアンカー剤、あるいは酸変性ポリオレフィンなどの接着性樹脂が挙げられる。
【0041】
薄膜層13の塗工に用いられる組成物は、ホスホリルコリン基を含む長分子鎖の化合物とともに、溶剤、添加剤などを含有してもよい。溶剤としては、例えば、水とエタノールとの混合溶媒が挙げられる。シーラント層12の表面の疎水性を低下させるため、塗工前のシーラント層12の表面に、酸素(O
2)、オゾン(O
3)、窒素(N
2)等の1又は2種以上のガスを含む雰囲気下で、コロナ処理又はプラズマ処理を行うことが好ましい。これにより、シーラント層12の表面に、酸素官能基又は窒素官能基が導入され、親水性を付与することができる。
【0042】
上述の積層体10から構成される包装袋17は、積層体10の間に注出口20が接合される第1接合端部14と、積層体10同士が接合される第2接合端部15とを含むことができる。包装袋17の面内で全周が第1接合端部14又は第2接合端部15から構成されてもよく、周囲の一部が積層体10を断面V字状に山折りとした折り返し部から構成されてもよい。内容物16が充填される前においては、包装袋17の周囲の一部が、包装袋17に内容物16を充填するための充填口が開口されていてもよい。
【0043】
本実施形態では、薄膜層13が、積層体10と注出口20との接合部25まで積層されている。このため、第1接合端部14の積層構成は、「基材層11/シーラント層12/薄膜層13/注出口20/薄膜層13/シーラント層12/基材層11」の順となっている。第1接合端部14及び第2接合端部15は、積層体10のシーラント層12又は注出口20の本体部21に含まれる樹脂の融着により構成することができる。
薄膜層13が積層体10の内面で略全面に形成されることにより、内容物16に接する積層体10の内面にシーラント層12が露出されにくくなり、好ましい。
【0044】
包装袋17を構成する積層体10の間に接合される注出口20は、少なくとも内容物16に接する部分が、環状オレフィン系樹脂を含むことが好ましい。環状オレフィン系樹脂としては、シーラント層12の材料と同様に、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)等の、環状オレフィン系樹脂が挙げられる。ただし、注出口20に用いられる環状オレフィン系樹脂は、シーラント層12に用いられる環状オレフィン系樹脂と同じ種類に限らず、異なる種類の環状オレフィン系樹脂でもよい。
【0045】
例えば、注出口20及びシーラント層12の両方に、同種又は異種のCOPを用いてもよい。また、注出口20及びシーラント層12の両方に、同種又は異種のCOCを用いてもよい。また、注出口20にCOPを用いて、シーラント層12にCOCを用いてもよい。また、注出口20にCOCを用いて、シーラント層12にCOPを用いてもよい。
【0046】
注出口20の本体部21を構成する樹脂成分が、環状オレフィン系樹脂の1又は2種以上であってもよく、環状オレフィン系樹脂と他の樹脂又はエラストマー等との混合物であってもよい。注出口20のうち、少なくとも内容物16と接する流路23の内面は、環状オレフィン系樹脂を含む本体部21から構成されている。
【0047】
注出口20の外周面のうち、少なくとも包装袋17の外側に露出している外側露出部26の外周面に、ポリオレフィン樹脂を含む被覆層22が積層されていてもよい。本実施形態では、注出口20のうち、包装袋17の内側で内容物16に接するように露出している内側露出部24は、環状オレフィン系樹脂を含む本体部21から構成されている。また、被覆層22が、注出口20のうち、接合部25の少なくとも一部、及び外側露出部26の外周面に積層されている。外側露出部26の外周面に、ポリオレフィン樹脂を含む被覆層22が積層されていると、積層体10と注出口20との接合部25における接合を確実にできる。またポリオレフィン樹脂に注出口が覆われているため外部からの衝撃によって注出口が割れにくくなり、強度が高くなる。
【0048】
被覆層22を構成するポリオレフィン樹脂としては、1種のオレフィンの単独重合体(ホモポリマー)でもよく、2種以上のオレフィンの共重合体(コポリマー)でもよい。オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、α−オレフィン等の非環状オレフィンが挙げられる。ポリオレフィンの具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィンコポリマー等が挙げられる。これらのポリオレフィンは、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルアルコール等、非オレフィン系のビニルモノマーを少量含むコポリマーであってもよい。オレフィンの由来は、石油由来オレフィン、植物由来オレフィン、又は両者の併用でもよい。
【0049】
接合部25の注出口20側においては、環状オレフィン系樹脂を含む本体部21が積層体10と接合されていてもよく、ポリオレフィン樹脂を含む被覆層22が積層体10と接合されていてもよい。接合部25において、本体部21が積層体10と接合された箇所と、被覆層22が積層体10と接合された箇所の両方が含まれてもよい。
【0050】
包装袋17の形態は、三方袋、四方袋、合掌貼り袋、ガゼット袋、自立袋、パウチ、バッグインボックス用の内袋やドラム缶内装袋などの大型の袋等、特に限定なく適用可能である。本実施形態の包装袋は、注出口以外にも、注入口、コック、ラベル、開封用ツマミ、取っ手等の付属物を設けることもできる。付属物が樹脂成形品である場合は、上述の注出口と同様の構成としてもよい。
【0051】
包装袋17に好適に収容され得る内容物16としては、医薬品、細胞、組織、臓器、生体材料、血液、体液、酵素、抗体、美容製品、栄養剤、保健剤、化粧品、食品等が挙げられる。内容物16が包装袋17内に収容される際、窒素等の不活性なガス又は液体が充填されてもよい。
【0052】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0053】
図1に示す注出口付き包装袋31は、積層体10と注出口20との接合部25において、シーラント層12が内容物に接することが原理的にないため、内容物の凝集のない状態に保ちやすい。
図2に示す注出口付き包装袋32は、積層体10と注出口20との接合部25において、薄膜層13が省略されている。このため、第1接合端部14の積層構成は、「基材層11/シーラント層12/注出口20/シーラント層12/基材層11」の順となっている。この場合、シーラント層12と注出口20とが直接接合されるので、接合をより確実にすることができる。内容物16に接する積層体10の内面において、シーラント層12が露出される薄膜層13の隙間は、シーラント層12が内容物に接する面積を小さくして内容物の凝集を防ぐために、なるべく狭くされることが好ましい。
【実施例】
【0054】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、実施例のみに限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなる基材層11と、環状オレフィンポリマー(COP)からなるシーラント層12とを積層した後、シーラント層12の全面に、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)を90モル%の割合で含む共重合体を塗工して薄膜層13を形成し、積層体10を作製した。
また、内側が環状オレフィンポリマー(COP)から構成され、外側の一部がポリエチレン(PE)から構成された略筒状の注出口20を二色成形法により成形した。
2枚の積層体10の間に注出口20を挟み込み、積層体10と注出口20との間の第1接合端部14、及び積層体10同士の間の第2接合端部15を接合して、実施例1の注出口付き包装袋を作製した。
【0056】
(実施例2)
積層体10に薄膜層13を形成する際に、第1接合端部14及び第2接合端部15となる領域には薄膜層13を塗工せず、積層体10の内面にシーラント層12が露出されるようにしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の注出口付き包装袋を作製した。
【0057】
(実施例3)
薄膜層13を構成する共重合体として、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)を60モル%の割合で含む共重合体を塗工したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の注出口付き包装袋を作製した。
【0058】
(比較例1)
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなる基材層と、ポリエチレン(PE)からなるシーラント層とを積層して、包装袋を構成するための積層体を作製した。
2枚の積層体の間に、ポリエチレン(PE)からなる注出口を挟み込み、積層体と注出口との間、及び積層体同士の間を接合することにより、比較例1の注出口付き包装袋を作製した。
【0059】
(比較例2)
シーラント層をポリエチレン(PE)から構成し、ポリエチレン(PE)からなる注出口を用いたこと以外は実施例2と同様にして、比較例2の注出口付き包装袋を作製した。
【0060】
(凝集性の評価)
実施例1〜3及び比較例1〜2の注出口付き包装袋の内容物として、免疫グロブリン又は牛血清アルブミンを含む製剤(医薬品原体)を充填した。内容物の状態を光学顕微鏡で確認して凝集性を評価し、凝集がない場合は「◎」、凝集がほとんどない場合は「○」、凝集が少し生じた場合は「△」、凝集が多く生じた場合は「×」とした。
【0061】
結果を表1にまとめて示す。表1の「MPC割合」は、薄膜層を構成する共重合体のうち、MPCの占める割合(モル%)である。
【0062】
【表1】
【0063】
免疫グロブリン用の薄膜層は、共重合体に占めるMPCの割合が、実施例1によれば90モル%であるが、70〜95モル%であることが好ましく、80〜90モル%であることがより好ましい。
【0064】
牛血清アルブミン用の薄膜層は、共重合体に占めるMPCの割合が、実施例3によれば60モル%であるが、30〜70モル%であることが好ましく、55〜65モル%であることがより好ましい。