(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記撃力付与部は、前記圧電性ウェハの表裏の何れか一方の面に対して撃力を付与する撃力付与機構と、前記撃力付与機構が前記圧電性ウェハに撃力を付与する際に前記圧電性ウェハの他方の面を支持する支持機構とを含む、
請求項1乃至3の何れか一項に記載の表裏判定装置。
前記撃力付与機構は、前記圧電性ウェハの表裏の何れか一方の面を打撃することで前記圧電性ウェハの前記一方の面に対して撃力を付与するとともに、前記圧電性ウェハと接触する部分に前記電圧検出部に接続される電極が設けられた打撃部を有する、
請求項4に記載の表裏判定装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の実施例に係る表裏判定装置100の構成例を示す機能ブロック図である。また、
図2は、表裏判定装置100の概略図である。本実施例において、表裏判定装置100は、例えば、結晶方位に依存する焦電効果を持つ圧電性ウェハ(以下、「ウェハW」とする。)の分極方向に応じて決まるウェハWの表裏を判定する。
【0017】
ウェハWは、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)、タンタル酸リチウム(LiTaO
3)等の圧電効果を持つ酸化物結晶体で形成される。ウェハWの分極方向(厳密には+z方向を意味する。)は、ポーリング処理によって決定される。ウェハWの分極方向は、通常、ウェハWの円板面に対して傾斜して鉛直方向の成分を有し得るが、以下では、説明の便宜のため、鉛直方向の成分を考慮しないものとする。ウェハWの表裏は、任意の判定条件にしたがって再現可能に決定されるものであり、絶対的なものではない。
【0018】
本実施例では、表裏判定装置100は、主に、制御装置1、撃力付与装置2、電圧検出装置3、及び出力装置4を有する。
【0019】
制御装置1は、表裏判定装置100を制御する制御手段の1例であり、例えば、CPU、揮発性記憶媒体、不揮発性記憶媒体、入出力インタフェース等を備えたコンピュータである。具体的には、制御装置1は、例えば、撃力付与部10、電圧検出部11、及び表裏判定部12のそれぞれの機能要素に対応するプログラムを不揮発性記憶媒体から読み出して揮発性記憶媒体に展開し、各機能要素に対応する処理をCPUに実行させる。
【0020】
撃力付与装置2は、ウェハWの円板面に撃力を付与するための撃力付与手段の1例であり、主に、上部電極2aU、上部伸縮機構2bU、上部絶縁体2cU、下部電極2aD、下部伸縮機構2bD、下部絶縁体2cD、支持ユニット2d、ステージ2e、回転軸2f、回転機構2g、支持台2h等を含む。
【0021】
上部電極2aUはステージ2eの上に置かれたウェハWの上面と接触する電極であり、下部電極2aDはウェハWの下面と接触する電極である。
図2の例では、一対の電極である上部電極2aU及び下部電極2aDは、ウェハWの圧電効果によって生じる電圧を取り出すための部材を構成する。
図2の例では、上部電極2aU及び下部電極2aDは、導電ゴムで形成される。ウェハWとの接触を安定化させることで、ウェハWの圧電効果によって生じる電圧を安定的に検出できるようにするためである。但し、上部電極2aU及び下部電極2aDは金属で形成されてもよい。
【0022】
上部伸縮機構2bUは、ウェハWの上面に上部電極2aUを接触させる機構であり、ウェハWの上面に撃力を付与する撃力付与機構を構成する。
図2の例では、上部伸縮機構2bUはエアシリンダで構成され、エアシリンダが伸縮させるロッドの下端には上部電極2aUが取り付けられている。
【0023】
上部伸縮機構2bUは、制御装置1からの制御信号に応じてロッドを下方に伸長させてロッドの下端に取り付けられた上部電極2aUをウェハWの上面に接触させる。
【0024】
また、上部伸縮機構2bUは、所定時間にわたって上部電極2aUをウェハWの上面に押し付けた後、ロッドを上方に引っ込めて上部電極2aUをウェハWの上面から引き離す。
【0025】
上部電極2aUは、圧縮バネを介してロッドの下端に取り付けられていてもよい。上部電極2aUによってウェハWの上面に付与される撃力が過度に大きくならないようにするためである。具体的には、圧縮バネは、上部伸縮機構2bUがウェハWに及ぼす力が所定値を上回った場合に上部電極2aUを鉛直上方に後退させることによってその力を吸収してウェハWが割れるのを防止する。
【0026】
図3は、上部伸縮機構2bUの別の構成例を示す。
図3は、上部伸縮機構2bUの断面図である。
図3の上部伸縮機構2bUは、主に、打撃部20a、弾性部材20b、電動アクチュエータ20c、及び筐体20dで構成される。電動アクチュエータ20cは、制御装置1からの制御信号に応じて駆動され、打撃部20a及び弾性部材20bを上下させる。電動アクチュエータ20cは、制御信号で指定された速度で、打撃部20aの先端に取り付けられた上部電極2aUをウェハWの上面に打ち付けることができる。電動アクチュエータ20cは、ウェハWに上部電極2aUを当接させた状態で所定の押し付け時間にわたって上部電極2aUをウェハWに押し付けた後で上部電極2aUを上昇させる。押し付け時間は、例えば、数10マイクロ秒〜数100ミリ秒である。
【0027】
弾性部材20bは、上部電極2aUがウェハWに当接した後も打撃部20aが下降し続けた場合に弾性変形する。そのため、弾性圧(バネ圧)以上の力がウェハWに作用してしまうのを防止できる。弾性部材20bは、例えば、弦巻バネ、ゴム体等で構成される。弾性圧(バネ圧)は、例えば50g〜300gである。
【0028】
打撃部20aは、先端に取り付けられた上部電極2aUがウェハWの上面に対して撃力を与えることのできる形状を有する。例えば、打撃部20aは、先端部が平坦な円筒形状を有する。
【0029】
下部伸縮機構2bDは、ウェハWの下面に下部電極2aDを接触させる機構であり、ウェハWの上面に撃力を付与する際にウェハWの下面を支持する支持機構を構成する。
図2の例では、下部伸縮機構2bDは、上部伸縮機構2bUと同様に、エアシリンダで構成され、エアシリンダが伸縮させるロッドの上端には下部電極2aDが取り付けられている。
【0030】
下部伸縮機構2bDは、制御装置1からの制御信号に応じてロッドを上方に伸長させてロッドの上端に取り付けられた下部電極2aDをウェハWの下面に接触させる。
【0031】
また、下部伸縮機構2bDは、典型的には、上部電極2aUがウェハWの上面に接触する前に、下部電極2aDをウェハWの下面に接触させる。但し、上部電極2aUがウェハWの上面に接触するのと同時に、下部電極2aDをウェハWの下面に接触させてもよい。下部電極2aDは、ウェハWを挟んで上部電極2aUと対向するように配置される。そして、上部電極2aUがウェハWの上面に接触したときに上部電極2aUと下部電極2aDとでウェハWを挟むことができるように配置される。この構成により、撃力付与装置2は、ウェハWの上面に対して下向きの撃力を与えることができる。
【0032】
図4は、下部伸縮機構2bDの別の構成例を示す。
図4は、下部伸縮機構2bDの断面図である。
図4の下部伸縮機構2bDは、主に、支持部22a、電動アクチュエータ22b、及び筐体22cで構成される。電動アクチュエータ22bは、制御装置1からの制御信号に応じて駆動され、支持部22aを上下させる。電動アクチュエータ22bは、制御信号で指定された速度で、支持部22aの先端に取り付けられた下部電極2aDをウェハWの下面に当接させることができる。支持部22aは、先端に取り付けられた下部電極2aDがウェハWの下面を支持できる形状を有する。例えば、支持部22aは、先端部が平坦な円筒形状を有する。
【0033】
ウェハWの上面と上部電極2aUとの接触、及び、ウェハWの下面と下部電極2aDとの接触は何れも面接触となるように構成される。この場合、接触面積は、ウェハWの割れを防止するのに十分な大きさとなるように構成される。また、ウェハWの下面と下部電極2aDとの間の接触面(下側接触面)は、ウェハWの上面と上部電極2aUとの間の接触面(上側接触面)よりも大きくなるように構成される。上側接触面及び下側接触面は、望ましくは平坦面である。例えば、上側接触面は直径5ミリメートルの円形平面であり、下側接触面は直径10ミリメートルの円形平面である。但し、上側接触面の面積は下側接触面の面積以上であってもよい。また、上部電極2aU及び下部電極2aDは、望ましくは円板形状を有するが、球形状、半球形状、角柱形状等を有していてもよい。
【0034】
支持ユニット2dは、上部伸縮機構2bU及び下部伸縮機構2bDを支持する部材である。
図2の例では、上部伸縮機構2bUは上部絶縁体2cUを介して支持ユニット2dに取り付けられ、下部伸縮機構2bDは下部絶縁体2cDを介して支持ユニット2dに取り付けられる。そのため、上部伸縮機構2bUは上部絶縁体2cUによって支持ユニット2dから電気的に絶縁され、下部伸縮機構2bDは下部絶縁体2cDによって支持ユニット2dから電気的に絶縁されている。上部絶縁体2cU及び下部絶縁体2cDは、例えば、塩化ビニル等の絶縁体で形成される。
【0035】
上部伸縮機構2bUは、上部電極2aUの円形平面とウェハWの上面とがなす角度を調整できるように支持ユニット2dに取り付けられてもよい。同様に、下部伸縮機構2bDは、下部電極2aDの円形平面とウェハWの下面とがなす角度を調整できるように支持ユニット2dに取り付けられてもよい。上部電極2aUの円形平面とウェハWの上面とを平行にし、且つ、下部電極2aDの円形平面とウェハWの下面とを平行にし、そして、上部電極2aUの円形平面と下部電極2aDの円形平面とを平行にするためである。
【0036】
ステージ2eは、ウェハWを支持する部材である。
図2の例では、ステージ2eは、絶縁体で形成された真空吸着ステージであり、制御装置1からの制御信号に応じて真空吸着をオン・オフする。
【0037】
回転機構2gは、ステージ2eを回転させる機構である。
図2の例では、回転機構2gは電動モータであり、制御装置1からの制御信号に応じて回転駆動する。そして、鉛直方向に伸びる回転軸2fの上端に取り付けられたステージ2eを鉛直軸回りに回転させる。
【0038】
回転軸2fは、回転機構2gによって回転駆動される棒状部材である。
図2の例では、回転機構2gとしての電動モータの回転軸である。支持台2hは、ステージ2e及び回転軸2fを回転可能に支持する部材である。
【0039】
電圧検出装置3は、ウェハWの圧電効果によって生じる電圧を検出するための電圧検出手段の1例である。
図2の例では、電圧検出装置3はオシロスコープであり、上部電極2aU及び下部電極2aDを通じ、ウェハWの圧電効果によって生じた電圧を検出する。電圧は、上部電極2aUと下部電極2aDとの間の電位差であり、上部電極2aUがウェハWの上面に接触(衝突)したときの圧力(撃力)でウェハWが鉛直方向に圧縮されることで発生する。また、電圧は、上部電極2aUがウェハWの上面から離れたときにウェハWが鉛直方向に伸張することで発生する。上部電極2aU及び下部電極2aDは何れも同軸アナログケーブル等の導電線を介してオシロスコープに接続される。同軸アナログケーブルは、例えば、フローティング状態とされてもよい。
【0040】
電圧検出装置3は所定時間にわたる電圧の変化を検出データとして記録し、記録した検出データを制御装置1に対して出力する。電圧検出装置3は電圧の変化をリアルタイムで制御装置1に対して出力してもよい。電圧検出装置3は、アナログ/デジタル変換器等を用いて電圧をアナログ値からデジタル値に変換して制御装置1に出力してもよい。
【0041】
出力装置4は、各種情報を出力するための装置であり、例えば、制御装置1によるウェハの表裏の判定結果を表示するためのディスプレイ、又は、その判定結果を音声出力するためのスピーカ等である。
【0042】
表裏判定装置100は、オリエンテーションフラットを検出するオリエンテーションフラット検出装置7を備えていてもよい。オリエンテーションフラット検出装置7は、例えば、レーザ光線によってウェハWのオリエンテーションフラットの中央部分を検出し、その検出信号を制御装置1に対して出力する。オリエンテーションフラット検出装置7は画像センサであってもよい。
図5は、オリエンテーションフラット検出装置7がウェハWのオリエンテーションフラットの中央部分を検出したときの表裏判定装置100の上面図である。例えば、制御装置1は、回転機構2gに制御信号を出力してステージ2eを回転させる。そして、オリエンテーションフラット検出装置7から検出信号を受けたときの回転機構2gの回転角度(すなわちウェハWの回転角度)を基準回転角度として記憶する。この構成により、制御装置1は、ステージ2eの上に置かれたウェハWを基準回転角度に対する所望の相対回転角度まで回転させることができる。
【0043】
次に、制御装置1が有する各種機能要素について説明する。
【0044】
撃力付与部10は、撃力付与手段を動作させるための機能要素である。
図2の例では、撃力付与部10は、撃力付与装置2に対して制御信号を出力し、撃力付与装置2を動作させる。
【0045】
具体的には、撃力付与部10は、ステージ2eに制御信号を出力し、ステージ2e上に置かれたウェハWを真空吸着させる。その後、撃力付与部10は、回転機構2gに制御信号を出力し、ウェハWのオリエンテーションフラットが所定位置に来るようにステージ2eを回転させてもよい。このとき、ステージ2eの真空吸着をオフしてもよい。その後、撃力付与部10は、下部伸縮機構2bDに制御信号を出力し、エアシリンダのロッドを上方に伸長させてロッドの上端に取り付けられた下部電極2aDをウェハWの下面に接触させる。その後、撃力付与部10は、上部伸縮機構2bUに制御信号を出力し、エアシリンダのロッドを所定速度で下方に伸長させてロッドの下端に取り付けられた上部電極2aUをウェハWの上面に接触させる。上部電極2aUが下降を開始してから所定時間が経過すると、撃力付与部10は、上部伸縮機構2bUに制御信号を出力し、エアシリンダのロッドを上方に引っ込めて上部電極2aUをウェハWの上面から引き離す。このようにして、撃力付与部10は、ウェハWの上面に撃力が所定時間にわたって付与されるようにする。
【0046】
電圧検出部11は、ウェハWの圧電効果によって生じる電圧(発生電圧)を検出するための機能要素である。
図2の例では、電圧検出部11は、電圧検出装置3が検出したパルス状の発生電圧に関する情報を電圧検出装置3から取得する。電圧検出部11は、発生電圧を直接的に検出するオシログラフ機能を有していてもよい。この場合、電圧検出装置3は省略されてもよい。
【0047】
具体的には、電圧検出部11は、撃力付与部10が出力する制御信号に応じて撃力付与装置2が動作してウェハWの上面に撃力を付与した結果として生じる発生電圧に関する情報を取得し、その情報を表裏判定部12に対して出力する。電圧検出部11は、例えば、撃力付与部10が上部電極2aUの下降を開始させた時に発生電圧の検出を開始し、その後の所定時間(例えば2秒間)にわたって所定間隔(例えば10マイクロ秒間隔)で繰り返し発生電圧を検出する。電圧検出部11は、撃力付与部10が上部電極2aUの下降を開始させる前に、発生電圧の検出を開始してもよい。
【0048】
表裏判定部12は、ウェハWの円板面の表裏を判定するための機能要素である。
図2の例では、表裏判定部12は、ウェハWの分極方向に依存するウェハWの円板面の表裏を判定する。表裏判定部12は、ウェハWの極性(分極方向)を判定してもよい。この場合、以下の説明におけるウェハWの円板面の表裏の判定は、ウェハWの極性(分極方向)の判定で置き換えられてもよい。
【0049】
具体的には、表裏判定部12は、発生電圧の正負(極性)に基づいてウェハWの円板面の表裏を判定する。例えば、表裏判定部12は、上部電極2aUをウェハWの上面に接触させたときの発生電圧が正値の場合にその上面が表面であると判定する。或いは、表裏判定部12は、上部電極2aUをウェハWの上面から引き離したときの発生電圧が負値の場合にその上面が表面であると判定してもよい。或いは、表裏判定部12は、上部電極2aUをウェハWの上面に接触させたときの発生電圧が正値で、且つ、上部電極2aUをウェハWの上面から引き離したときの発生電圧が負値の場合にその上面が表面であると判定してもよい。
【0050】
同様に、表裏判定部12は、上部電極2aUをウェハWの上面に接触させたときの発生電圧が負値の場合にその上面が裏面であると判定する。或いは、表裏判定部12は、上部電極2aUをウェハWの上面から引き離したときの発生電圧が正値の場合にその上面が裏面であると判定してもよい。或いは、表裏判定部12は、上部電極2aUをウェハWの上面に接触させたときの発生電圧が負値で、且つ、上部電極2aUをウェハWの上面から引き離したときの発生電圧が正値の場合にその上面が裏面であると判定してもよい。
【0051】
表裏判定部12は、ウェハWの表裏配置が所望の表裏配置でないと判定した場合に警報を出力する。所望の表裏配置は、例えば、ステージ5a上に置かれたウェハWの上面が表面の場合をいう。表裏判定部12は、例えば、ウェハWの上面が裏面であると判定した場合、出力装置4に制御信号を出力し、その旨を知らせるテキストメッセージをディスプレイに表示させ、或いは、その旨を知らせる音声メッセージをスピーカから出力させる。
【0052】
表裏判定部12は、ウェハWの表裏配置を判定できない場合に警報を出力してもよい。例えば、表裏判定部12は、上部電極2aUをウェハWの上面に接触させたときの発生電圧の絶対値が予め登録されている閾値未満の場合に、出力装置4に制御信号を出力する。そして、ウェハWの表裏配置を判定できない旨のテキストメッセージをディスプレイに表示させ、或いは、その旨を知らせる音声メッセージをスピーカから出力させる。
【0053】
このように、表裏判定部12は、ウェハWの表裏配置が所望の表裏配置でない状態、ウェハWの表裏配置を判定できない状態等を含むエラー状態を検知した場合、出力装置4を通じてエラー状態の内容を知らせる警告を出力する。また、表裏判定部12は、エラー状態を検知した場合、ステージ2eに制御信号を出力し、ウェハWの真空吸着をオフしてもよい。ウェハWの取り除き処理を行えるようにするためである。
【0054】
次に
図6を参照し、ウェハWの平板面に撃力を付与したときにウェハWの圧電効果によって生じる発生電圧について説明する。
図6は、発生電圧の時間的推移の1例を示す図である。具体的には、
図6(A)はウェハWの表面に撃力を付与したときの発生電圧の時間的推移を示し、
図6(B)はウェハWの裏面に撃力を付与したときの発生電圧の時間的推移を示す。
【0055】
また、
図6(A)及び
図6(B)は何れも、時刻t1において上部電極2aUの下降が開始され、時刻t2において上部電極2aUがウェハWの上面に接触したことを示す。また、時刻t3において上部電極2aUがウェハWの上面から引き離され、時刻t4において上部電極2aUが下降開始前の高さに戻ったことを示す。
【0056】
時刻t1から時刻t2までの時間は、上部電極2aUの下降時間に相当する。時刻t2から時刻t3までの時間は、上部電極2aUをウェハWの上面に押し付ける押し付け時間に相当する。時刻t3から時刻t4までの時間は、上部電極2aUの上昇時間、すなわち上部電極2aUを上昇させて下降開始前の高さに戻す時間に相当する。
【0057】
下降時間、押し付け時間、及び上昇時間は、不揮発性記憶媒体等に予め登録された時間である。適宜に変更できるように構成されてもよい。時刻Taは、時刻t2と時刻t3との中間の時刻を示す。
【0058】
電圧検出部11は、例えば、上部電極2aUの下降が開始した時刻である時刻t1から、上部電極2aUが下降開始前の高さに戻った時刻である時刻t4まで、所定時間間隔(例えば10ミリ秒)で繰り返し発生電圧を検出して記録する。
【0059】
表裏判定部12は、例えば、時刻t1から時刻Taまでの間、すなわち、上部電極2aUの下降開始時刻から押し付け時間の半分が経過するまでに記録された発生電圧の時間的推移を参照する。実際の下降時間がばらついた場合であっても、上部電極2aUをウェハWの上面に接触させたときの発生電圧の推移を参照できるようにするためである。
【0060】
図6(A)に示すように、ウェハWの表面を上面としてウェハWがステージ2eにセットされた場合には、上部電極2aUがウェハWの上面に接触したときの発生電圧のピーク値が正値で且つ閾値TH1(正値)以上の値となる。一方、
図6(B)に示すように、ウェハWの裏面を上面としてウェハWがステージ2eにセットされた場合には、上部電極2aUがウェハWの上面に接触したときの発生電圧のピーク値が負値で且つ閾値TH2(負値)より小さい値(絶対値で大きい値)となる。発生電圧のピーク値の絶対値は、例えば、数10mV〜数V程度である。
【0061】
閾値TH1及び閾値TH2は、制御装置1の不揮発性記憶媒体に予め登録された値であり、ウェハWの材料、サイズ、厚み、種類、上部電極2aUの接触位置等に応じて決定されている。
【0062】
表裏判定部12は、例えば、上部電極2aUがウェハWの上面に接触したときに発生するパルス状の発生電圧のピーク値が正値であっても、閾値TH1未満であれば、ウェハWの表裏を判別できないと判定する。同様に、上部電極2aUがウェハWの上面に接触したときに発生するパルス状の発生電圧のピーク値が負値であっても、その絶対値が閾値TH2の絶対値未満であれば、ウェハWの表裏を判別できないと判定する。ノイズと区別できないためである。
【0063】
一方、表裏判定部12は、例えば、上部電極2aUがウェハWの上面に接触したときの発生電圧のピーク値が正値で且つ閾値TH1以上の場合、ウェハWの上面が表面であると判定する。
【0064】
表裏判定部12は、上部電極2aUがウェハWの上面から引き離されたときの発生電圧をも考慮してウェハWの円板面の表裏を判定してもよい。例えば、表裏判定部12は、上部電極2aUがウェハWの上面に接触したときの発生電圧のピーク値が正ピーク値(最大値)で且つ閾値TH1より大きく、更に、上部電極2aUがウェハWの上面から引き離されたときの発生電圧のピーク値が負ピーク値(最小値)で且つその絶対値が正ピーク値未満の場合にウェハWの上面が表面であると判定してもよい。
【0065】
同様に、表裏判定部12は、例えば、上部電極2aUがウェハWの上面に接触したときの発生電圧のピーク値が負値で且つその絶対値が閾値TH2の絶対値以上の場合、ウェハWの上面が裏面であると判定する。
【0066】
また、表裏判定部12は、上部電極2aUがウェハWの上面に接触したときの発生電圧のピーク値が負ピーク値で且つその絶対値が閾値TH2の絶対値より大きく、更に、上部電極2aUがウェハWの上面から引き離されたときの発生電圧のピーク値が正ピーク値で且つ負ピーク値の絶対値未満の場合にウェハWの上面が裏であると判定してもよい。
【0067】
このように、表裏判定装置100は、発生電圧のパルス波形又は発生電圧の正負に基づいて、ウェハWの表裏を判定することができる。
【0068】
表裏判定装置100は、必要に応じ、ウェハWの円板面の別の位置に撃力が付与されるよう、ステージ2eを所定角度(例えば10度)だけ回転させるようにしてもよい。何らかの理由により、撃力が付与される位置によっては発生電圧のピーク値が小さくなってしまう場合があるためである。また、複数の位置に撃力を付与することで得られた複数の発生電圧のピーク値に基づいてウェハWの円板面の表裏を判定してもよい。より高い確度でウェハWの円板面の表裏を判定できるためである。
【0069】
次に
図7を参照し、表裏判定装置100がウェハWの表裏を判定する処理(以下、「表裏判定処理」とする。)について説明する。なお、
図7は、表裏判定処理の一例を示すフローチャートである。表裏判定装置100は、例えば、ウェハWがステージ2eにセットされる度に自動的にこの表裏判定処理を実行する。
【0070】
最初に、制御装置1はウェハWの円板面に撃力を付与する(ステップS1)。例えば、制御装置1の撃力付与部10は、撃力付与装置2に制御信号を出力し、撃力付与装置2を作動させる。具体的には、撃力付与部10は、上部伸縮機構2bUを作動させて上部電極2aUをウェハWの上面に接触させる。
【0071】
その後、制御装置1は発生電圧を検出する(ステップS2)。例えば、制御装置1の電圧検出部11は、電圧検出装置3が検出した発生電圧を取得する。具体的には、電圧検出装置3は、ウェハWの圧電効果によって生じる発生電圧を所定周期で繰り返し検出し、その検出結果(検出データ)を電圧検出部11に送信する。電圧検出部11は、電圧検出装置3が出力する検出データを継続的に取得する。
【0072】
その後、制御装置1は、発生電圧の絶対値と閾値を比較し、発生電圧の絶対値が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS3)。例えば、制御装置1の表裏判定部12は、発生電圧のピーク値の絶対値が閾値以上であるか否かを判定する。具体的には、表裏判定部12は、発生電圧の正ピーク値又は負ピーク値の絶対値が閾値以上であるか否かを判定する。
【0073】
発生電圧の絶対値が閾値以上であると判定した場合(ステップS3のYES)、制御装置1は、発生電圧が正値であるか否かを判定する(ステップS4)。例えば、制御装置1の表裏判定部12は、絶対値が閾値以上であると判定した発生電圧のピーク値が正値であるか否かを判定する。
【0074】
発生電圧が正値であると判定した場合(ステップS4のYES)、制御装置1は、ウェハWの上面が表面であると判定する(ステップS5)。例えば、制御装置1の表裏判定部12は、発生電圧のピーク値が正値であると判定した場合、ウェハWの上面が表面であると判定する。
【0075】
発生電圧が負値であると判定した場合(ステップS4のNO)、制御装置1は、ウェハWの上面が裏面であると判定する(ステップS6)。例えば、制御装置1の表裏判定部12は、発生電圧のピーク値が負値であると判定した場合、ウェハWの上面が裏面であると判定する。
【0076】
一方、発生電圧の絶対値が閾値未満であると判定した場合(ステップS3のNO)、制御装置1は、ウェハWの表裏が判定不可であるとする(ステップS7)。例えば、制御装置1の表裏判定部12は、発生電圧のピーク値の絶対値が閾値未満であると判定した場合、ウェハWの表裏を判別できないと判定する。
【0077】
その後、制御装置1は判定結果を出力する(ステップS8)。例えば、制御装置1の表裏判定部12は、ウェハWの上面が表面であると判定した場合、その旨を知らせるテキストメッセージをディスプレイに表示させ、或いは、その旨を知らせる音声メッセージをスピーカから出力させる。裏面であると判定した場合、或いは、判定不可とした場合についても同様である。
【0078】
以上の構成により、表裏判定装置100は、ウェハWをステージ2eで支持しながらウェハWの円板面に撃力を与え、ウェハWを圧縮する。そして、表裏判定装置100は、圧縮されるウェハWの圧電効果によって生じる電圧を検出し、その発生電圧の正負に基づいてウェハWの円板面の表裏を判定する。その結果、表裏判定装置100は、X線やレーザ等の光学的手段を用いる方法では判定できないウェハWの分極方向に応じたウェハWの円板面の表裏を判定できる。また、ウェハWに撃力を付与する機構と発生電圧を検出する機構とを一体化することで装置構成を簡素化できる。具体的には、ウェハWの円板面に瞬間的に電極を接触させることで撃力を付与する構成のため、ウェハWの端面に振動を与える構成、ウェハWに予め電極を接触させておく構成等に比べ、より簡易な構成で且つより簡易な演算でウェハWの円板面の表裏を判定できる。そのため、低コスト化、小型化が可能で、無人で動作する面取り装置等の他の装置にも組み込み易い。また、簡易な演算でウェハの円板面の表裏を判定するため、判定不可の状態とはなり難い。
【0079】
また、表裏判定装置100は、追加的なオリエンテーションフラット、又は、目印となる空隙若しくは細溝をウェハWに形成することなく、ウェハWの円板面の表裏を判定できる。そのため、ウェハWの円板面の表裏を判定するタイミングが特定の処理又は加工が行われる前に制限されたり、特定の処理又は加工が行われた後に制限されたりすることもない。
【0080】
次に、
図8及び
図9を参照し、本発明の実施例に係る表裏判定装置を組み込んだ面取り装置としてのべべリング装置100Aについて説明する。
図8は、べべリング装置100Aの機能ブロック図である。
図9は、べべリング装置100Aの概略図である。具体的には、
図9(A)はべべリング装置100Aの上面図であり、
図9(B)はべべリング装置100Aの側面図である。
【0081】
べべリング装置100Aは、ウェハWの外周の面取り研削を行う装置であり、主に、表裏判定装置の構成要素である制御装置1、撃力付与装置2、電圧検出装置3、及び出力装置4と、搬送装置5と、面取り研削装置50とで構成される。
【0082】
搬送装置5は、ウェハWを支持するステージ5a、ウェハWを真空吸着する吸着機構5b、リニアモータ5c、リニアモータガイド5d等を備える。
【0083】
吸着機構5bは、真空吸着アーム5b1、エアシリンダ5b2、及び真空吸着アームシャフト5b3を含む。吸着機構5bは、リニアモータ5cによりリニアモータガイド5dに沿って
図9(A)の矢印AR1で示すように水平方向に移動する。ステージ5aは移動しない。
【0084】
搬送装置5は、例えば、リニアモータ5cによってウェハカセットのところまで吸着機構5bを移動させる。吸着機構5bは、ウェハカセット内のウェハWを1枚だけ吸着する。具体的には、搬送装置5は、エアシリンダ5b2を駆動して真空吸着アームシャフト5b3を下方に伸長させ、真空吸着アームシャフト5b3の先端に取り付けられた真空吸着アーム5b1でウェハカセット内のウェハWを1枚だけ吸着する。そして、エアシリンダ5b2を駆動して真空吸着アームシャフト5b3を上方に引っ込めた後、リニアモータ5cによってステージ5aのところまで吸着機構5bを移動させる。その後、吸着機構5bは、吸着していたウェハWをステージ5a上に置く。具体的には、搬送装置5は、
図9(B)の点線で示すように真空吸着アームシャフト5b3を下方に伸長させ、真空吸着アーム5b1が吸着していたウェハWをステージ5a上に位置付ける。そして、真空吸着アーム5b1による真空吸着を解除する。ウェハWは、機械式クランプ、レーザーマイクロメータ等によるセンターリング機構によって芯出しが行われてもよい。
【0085】
その後、表裏判定処理が実行される。表裏判定処理では、ウェハWの圧電効果による電圧の波形パターンを評価することでウェハWの表裏が判定される。波形パターンの記録には電圧検出装置3としてのオシロスコープが利用され、波形パターンの評価には制御装置1が利用される。制御装置1には評価結果を表示できる出力装置4としてのディスプレイが接続されている。評価結果は、オシロスコープのディスプレイ3aに表示されてもよい。オシロスコープのプローブは、圧電効果による電圧を発生させるために撃力付与装置2によってウェハWの上面に衝突させられる。
【0086】
撃力付与装置2は、例えば、プローブ保持部2a1、エアシリンダ2a2、及びプローブシャフト2a3を含む。具体的には、オシロスコープのプローブは、エアシリンダ2a2が伸縮させるプローブシャフト2a3の先端にあるプローブ保持部2a1に取り付けられる。そして、プローブシャフト2a3が下方に伸長したときにプローブがウェハWの上面に接触するように構成される。そのプローブは、エアシリンダ2a2によってウェハWの上面から所定の高さまで引き上げられた後で自然落下によりウェハWの上面に打ち付けられてもよい。また、プローブ保持部2a1は、上述のような圧縮バネを介してプローブシャフト2a3に取り付けられていてもよい。ウェハWに過度の衝撃が加わるのを防止するためである。なお、オシロスコープの接地プローブは、例えば、ステージ5a上に置かれたウェハWの下面と接触するように配置されている。
【0087】
オシロスコープのプローブがウェハWの上面に打ち付けられると、圧電効果による電圧が発生する。圧電効果による電圧は、ウェハWに接触しているオシロスコープのプローブを通じて検出される。圧電効果による電圧の変動は、マイクロ秒オーダーの短時間だけ継続するのみである。また、プローブとウェハWの接触時間が長いと余計なノイズを拾ってしまうおそれがある。そのため、プローブとウェハWの接触時間は、望ましくは、数10マイクロ秒〜数100ミリ秒となるように構成される。但し、オシロスコープのプローブは、圧電効果による電圧を発生させる前にウェハWの上面に接触させられていてもよい。この場合、接触体としてのプローブ以外の他の接触体(例えば、絶縁体)がウェハWに打ち付けられるように構成される。
【0088】
撃力付与装置2は、吸着機構5bと共に移動できるように構成される。ステージ5aが設置された場所以外の場所で表裏判定処理を実行できるようにするためである。
【0089】
ウェハWは、ステージ5a上でオシロスコープのプローブによる打撃を受ける。プローブはウェハWを軽く打撃するように撃力付与装置2によって下降させられる。打撃時におけるウェハWの圧電効果による電圧の波形はオシロスコープで記録される。オシロスコープはアナログケーブルを介して制御装置1に接続されている。制御装置1は、ウェハWの圧電効果による電圧の波形を自動的に評価してウェハWの表裏を判定し、その判定結果をディスプレイに表示する。例えば、制御装置1は、ウェハWの表裏配置が所望の表裏配置であるか否かを判定する。所望の表裏配置は、例えば、ステージ5a上に置かれたウェハWの上面が表面の場合をいう。ステージ5a上に置かれたウェハWの上面が裏面の場合を所望の表裏配置としてもよい。
【0090】
制御装置1は、ウェハWの表裏配置が所望の表裏配置でないと判定した場合、すなわち、表裏間違いと判定した場合、その旨を知らせる警報を出力する。具体的には、ディスプレイにその旨を表示する。警報音を鳴らしてもよい。また、ウェハ反転作業を促すプログラムを実行してもよい。例えば、ステージ5a上でウェハWを反転させるよう作業者に通知してもよい。反転されたウェハWに対しては、再び表裏判定処理が行われる。また、ウェハWを自動的に反転させてもよい。また、ウェハWの廃棄を促すメッセージを出力してもよい。また、表裏判定処理をやり直す際には、ウェハWの円板面の別の位置に撃力が付与されるよう、ステージ5aを所定角度(例えば10度)だけ回転させるようにしてもよい。
【0091】
ウェハWの表裏配置が所望の表裏配置であると判定すると、制御装置1は、
図9(B)の矢印AR2で示すようにウェハWを面取り研削装置50のところに自動搬送する。例えば、制御装置1は、搬送装置5に対して制御信号を出力して吸着機構5b及びリニアモータ5cを動作させ、面取り研削装置50の投入口51を通じてウェハWを面取り研削加工室55内に設置された研削チャックステージ30aの上に位置付ける。
【0092】
面取り研削装置50は、ウェハWを面取り研削加工(ベベリング加工)する際にウェハWを保持するチャック部30、及び、ウェハWを研削する砥石部40を備える。チャック部30及び砥石部40は面取り研削加工室55内に設置される。
【0093】
チャック部30は、研削チャックステージ30a、研削チャックステージスピンドル30b、スピンドルモータ30c、リニアモータ30d、及びリニアモータガイド30eを含む。
【0094】
研削チャックステージ30aは真空吸着でウェハWを保持する。研削チャックステージ30aは、研削チャックステージスピンドル30bを介してスピンドルモータ30cに連結される。スピンドルモータ30cは鉛直軸回りに回転する。回転数は、例えば、1〜10RPM程度である。
【0095】
研削チャックステージ30aは、リニアモータ30dによりリニアモータガイド30eに沿って
図9(B)の矢印AR3で示すように水平方向に移動する。
【0096】
研削チャックステージ30aに真空吸着で保持されたウェハWは、研削チャックステージ30aと共に水平方向へ移動させられ、砥石部40と接触する。
【0097】
砥石部40は、ダイヤモンド砥石40a、砥石スピンドル40b、及びスピンドルモータ40cを含む。
【0098】
ダイヤモンド砥石40aは、砥石スピンドル40bを介してスピンドルモータ40cに連結され、研削力を得るため高速で回転させられる。スピンドルモータ40cは鉛直軸回りに回転する。ダイヤモンド砥石40aの周速は、例えば、4〜6インチのタンタル酸リチウム結晶でできたウェハの場合で、1分間当たり400〜1200メートル程度である。
【0099】
ダイヤモンド砥石40aは所望のラウンド形状の砥石断面を備えており、べべリング加工と同時にウェハWの面取りを行うことができる。面取り研削装置50は、クーラントノズル56からクーラント57を噴射させながらべべリング加工を行う。なお、べべリング工程でサブ・オリエンテーションフラットを作製したり、メイン・オリエンテーションフラットのべべリング加工を行ったりするには、ウェハWの水平位置、リニアモータガイド30eを介した水平方向への移動距離をウェハWの回転角度毎に細かく調整すればよい。べべリング加工により、ウェハWは所望の直径に仕上げられる。
【0100】
ベベリング加工が終了すると、搬送装置5は、
図9(B)の矢印AR4で示すように、面取り研削加工室55内から投入口51を通じてウェハWを研削後ステージ58のところに自動搬送する。
【0101】
上述の構成により、べべリング装置100Aは、表裏判定装置の判定結果に基づいてウェハWをセットした上でウェハWの面取加工を行う。そのため、ウェハWの表裏間違いに起因する取り返しのつかない事態の発生をより確実に防止しながら、ウェハWの外周の面取り研削を行うことができる。
【0102】
次に
図10を参照し、本発明の実施例に係る表裏判定装置を組み込んだ面取り装置としてのべべリング装置100Bについて説明する。
図10は、べべリング装置100Bの機能ブロック図である。べべリング装置100Bは、反転装置6を備える点で、
図8のべべリング装置100Aと相違するがその他の点で共通する。そのため、共通部分の説明を省略し、相違部分を詳細に説明する。
【0103】
反転装置6は、ウェハWを反転させる装置である。例えば、反転装置6は、クランプ機構を含み、水平に保持されたウェハWの端部をクランプ機構でクランプしてクランプ機構を水平軸回りに回転させることでウェハWの上下を反転させる。反転装置6は、他の公知の機構を用いて構成されてもよい。
【0104】
制御装置1は、反転装置6に制御信号を出力して反転装置6を動作させる。制御装置1は、例えば、ウェハWの表裏配置が所望の表裏配置でないと判定した場合に、反転装置6を動作させる。
【0105】
制御装置1は、反転装置6を動作させた場合には、その反転されたウェハWの表裏判定が必ずやり直されるようにする。例えば、制御装置1は、反転装置6を動作させた場合には、その反転されたウェハWの表裏判定がやり直されるまでは、その反転されたウェハWが搬送装置5によって面取り研削装置50のところに自動搬送されないようにする。
【0106】
ここで
図11を参照し、
図10のべべリング装置100Bが実行する表裏判定処理について説明する。
図11は、べべリング装置100Bが実行する表裏判定処理の一例を示すフローチャートである。べべリング装置100Bは、例えば、ウェハWがステージ5aにセットされる度に自動的にこの表裏判定処理を実行する。
【0107】
図11の表裏判定処理は、ステップS1〜ステップS7に関しては、
図7の表裏判定処理と同じである。そのため、それ以外のステップについて詳細に説明する。
【0108】
制御装置1は、ウェハWの表裏配置が所望の表裏配置であると判定した場合、自動搬送を行う。
【0109】
例えば、制御装置1は、ウェハWの上面が表面であると判定した場合(ステップS5)、自動搬送を行う(ステップS8a)。制御装置1は、例えば、搬送装置5に制御信号を出力して搬送装置5を作動させる。搬送装置5は、エアシリンダ5b2を駆動して真空吸着アームシャフト5b3を下方に伸長させ、真空吸着アームシャフト5b3の先端に取り付けられた真空吸着アーム5b1でステージ5a上のウェハWを吸着する。そして、エアシリンダ5b2を駆動して真空吸着アームシャフト5b3を上方に引っ込めた後、リニアモータ5cによって面取り研削装置50のところまで吸着機構5bを移動させる。その後、吸着機構5bは、真空吸着アームシャフト5b3を下方に伸長させ、真空吸着アーム5b1が吸着していたウェハWを研削チャックステージ30a上に置く。そして、真空吸着アーム5b1による真空吸着を解除する。
【0110】
一方、制御装置1は、ウェハWの表裏配置が所望の表裏配置でないと判定した場合、べべリング装置100Bによる面取り研削(面取加工)を中止する。
【0111】
例えば、制御装置1は、ウェハWの上面が裏面であると判定した場合(ステップS6)、自動搬送を中止する(ステップS8b)。その上で、制御装置1は、ウェハWを反転させる(ステップS9)。制御装置1は、例えば、搬送装置5及び反転装置6に制御信号を出力して搬送装置5及び反転装置6を作動させる。搬送装置5は、真空吸着アーム5b1でステージ5a上のウェハWを吸着する。そして、エアシリンダ5b2を駆動して真空吸着アームシャフト5b3を上方に引っ込める。反転装置6は、搬送装置5によって持ち上げられたウェハWの端部をクランプ機構でクランプする。このとき、搬送装置5は真空吸着を解除する。その後、反転装置6は、クランプ機構を水平軸回りに回転させることでウェハWの上下を反転させる。その後、搬送装置5は、反転させられたウェハWを真空吸着アーム5b1で吸着し、エアシリンダ5b2を駆動して真空吸着アームシャフト5b3を下方に伸張させ、反転させられたウェハWをステージ5a上に置く。これにより、べべリング装置100Bは、反転させられたウェハWの円板面の表裏を再び判定できる。
【0112】
べべリング装置100Bは、反転させられたウェハWの表裏配置が所望の表裏配置であるか否かを再び判定し、所望の表裏配置であると判定した場合にはその運転(面取加工)を続行する。具体的には、その反転させられたウェハWを面取り研削装置50のところまで自動搬送する。
【0113】
或いは、制御装置1は、ウェハWの表裏が判定不可であるとした場合(ステップS7)、自動搬送を中止する(ステップS8c)。その上で、制御装置1は、べべリング装置100Bによる表裏判定を停止させる(ステップS10)。制御装置1は、例えば、撃力付与装置2、搬送装置5、及び面取り研削装置50に制御信号を出力して撃力付与装置2、搬送装置5、及び面取り研削装置50を停止させる。その上で、制御装置1は、出力装置4に制御信号を出力し、ウェハWの表裏が判定不可である旨を知らせる警告を出力させる。
【0114】
上述の構成により、べべリング装置100Bは、ウェハWの表裏間違いに起因する取り返しのつかない事態の発生をより確実に防止しながら、ウェハWの外周の面取り研削を行うことができる。
【0115】
次に
図12を参照し、本発明の実施例に係る表裏判定装置を組み込んだ面取り装置としてのべべリング装置100Cについて説明する。
図12は、べべリング装置100Cの平面模式図である。
図12の破線は、各種ステージの上に載せ置かれたウェハWを示す。
【0116】
べべリング装置100Cは、ウェハカセット302、準備室304、面取り研削加工室306(306a、306b)、後処理室308、及び搬送機構310を含む。
【0117】
ウェハカセット302は、ウェハWを保持しておくための容器である。ウェハカセット302は、例えば、複数のウェハWをまとめて保持しておくことができる容器とすることが好適である。
【0118】
準備室304は、ウェハカセット302から面取り研削加工室306へウェハWを搬送する前の準備を行う場所である。
図12の例では、準備室304に表裏判定装置100が組み込まれている。すなわち、撃力付与機構としての上部伸縮機構2bUと、支持機構としての下部伸縮機構2bDとが準備室304に設けられている。上部伸縮機構2bU及び下部伸縮機構2bDは、
図2に示すように制御装置1に接続される。搬送機構310によってウェハカセット302から搬送されてきたウェハWは、ステージ2eの上に載せ置かれる。その後、制御装置1は、オリエンテーションフラット検出装置7を用いてオリエンテーションフラットの位置を検出し、ステージ2eの上に置かれたウェハWを基準回転角度に対する所望の相対回転角度まで回転させる。そして、上部伸縮機構2bU及び下部伸縮機構2bDを制御してウェハWの上面に撃力を付与し、ウェハWの表裏を判定する。
【0119】
面取り研削加工室306でのべべリング加工は、ウェハWの表裏が正しい状態で行われなければならない。そこで、制御装置1は、ウェハWの表裏配置が所望の表裏配置でないと判定した場合、べべリング装置100Cを一時停止させてもよい。また、搬送機構310を用いてウェハWの表裏を反転させた後でべべリング装置100Cによるべべリング加工を開始させてもよい。
【0120】
面取り研削加工室306では、ウェハWの径及び形状が所望の径及び形状となるようにべべリング加工される。面取り研削加工室306には、研削チャックステージ30a、砥石部40、及び砥石移動機構44が設けられている。研削チャックステージ30aは、ウェハWを載せ置くための円板状の部材である。研削チャックステージ30aには、研削チャックステージスピンドルを介してスピンドルモータ等の回転機構が連結されている。回転機構は、研削チャックステージ30aに載せ置かれたウェハWを所望の回転速度で回転させることができる。研削チャックステージ30aは、ウェハWを確実に固定保持するための真空チャック等のチャック機構を備えていてもよい。砥石部40は、砥石移動機構44により、ウェハWに対して相対的に移動させられ、回転するウェハWに面取り研削加工を施す。砥石移動機構44は、例えば、外部から制御可能なボールネジ、電動アクチュエータ等によって構成されてもよい。
【0121】
図12の例では、2つの面取り研削加工室306a、306bが設けられている。準備室304における前処理、及び、後処理室308における後処理よりも、べべリング加工に時間が掛かるためである。この構成により、べべリング装置100Cは、べべリング加工を効率的に行うことができる。但し、面取り研削加工室306の数は2つに限定されない。面取り研削加工室306の数は、例えば、面取り研削加工室306におけるべべリング加工時間に応じて決定され、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
【0122】
後処理室308は、面取り研削加工室306でべべリング加工されたウェハWに対して後処理を行う場所である。面取り研削加工室306でべべリング加工されたウェハWは、搬送機構310によって後処理室308に搬送される。後処理室308では、ウェハWの洗浄等の処理が行われる。洗浄された後、ウェハWはべべリング装置100Cから搬出される。
【0123】
上述の構成により、べべリング装置100Cは、ウェハWの表裏間違いに起因する取り返しのつかない事態の発生をより確実に防止しながら、ウェハWの外周の面取り研削を行うことができる。
【0124】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0125】
例えば、表裏判定装置100は、ウェハWの上面に上部電極2aUを接触させることでウェハWの圧電効果による電圧を発生させる。しかしながら、本発明はこの構成に限定されない。例えば、表裏判定装置100は、ウェハWの下面に電極を接触させることでウェハWの圧電効果による電圧を発生させてもよい。具体的には、上部電極2aUをウェハWの上面に接触させた状態で、下部電極2aDを瞬間的にウェハWの下面に接触させてもよい。
【0126】
また、上述の実施例では、下部電極2aDは、下部伸縮機構2bDによって上下するように構成される。しかしながら、本発明はこの構成に限定されない。例えば、下部電極2aDは、ウェハWがステージ2e上にセットされたときにウェハWの下面と接触するように固定的に配置されていてもよい。この場合、下部伸縮機構2bDは省略されてもよい。
【0127】
また、上述の実施例では、表裏判定処理の際にウェハWは円板面が水平となるように保持されている。しかしながら、本発明はこの構成に限定されない。例えば、ウェハWは、表裏判定処理の際に円板面が水平面に対して傾斜するように保持されてもよい。