(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った具体的な実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。
【0013】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0014】
本開示による荷電粒子線装置では、試料ステージが、減衰部と試料室の第1側面との間に挟まれて支持されており、試料ステージと水平に配置された減衰部は、その内部に複数の摩擦体を保持している(摩擦体が充填されている)。このような構成は、例えば、FIB(イオンビーム加工装置)やSEM(走査型電子顕微鏡)、TEM(透過型電子顕微鏡)などの荷電粒子線装置に適用可能である。
【0015】
(1)第1の実施形態
以下、本開示の第1の実施形態について、
図1および2を用いて説明する。
【0016】
<荷電粒子線装置の全体構成>
図1は、本開示の実施形態による荷電粒子線装置の100の全体概略構成を示す図である。本実施形態では、荷電粒子線装置のうち、SEMを例に装置の全体構成について示している。ただし、本開示による着想は、SEMに限定されず、他の荷電粒子線装置(FIBやTEMなど)にも適用できる。
【0017】
本実施形態によるSEM100は、電子ビームを出力するカラム1と、試料を真空封止する試料室2と、様々な角度から試料を観察できるように、試料を所望の位置に移動させる試料室2と、カラム1、試料室2、および試料室2を支持する荷重板4と、荷重板4を除振支持する除振マウント5と、除振マウント下方から支持する架台6と、を備えている。カラム1は、試料室上部もしくは側面に設置され、試料ステージ3は試料室側面に設置される。
【0018】
さらに、試料ステージ3は、試料を鉛直方向に移動させるためのZテーブル10と、試料をX軸と平行な軸周りに傾斜させるためのTiltベース11と、試料をX方向に移動させるためのXテーブル12と、試料をY方向に移動させるためのYテーブル13と、試料を鉛直軸と平行な軸周りに回転させるローテーションテーブル14と、Zテーブル10、Xテーブル12、Yテーブル13、およびテーブルTiltベース11の一部を覆うステージケース15と、によって構成されており、これらが順に組み上げられている。さらに、試料ステージ3には、先端に減衰部18を受ける減衰部受け板16が設置されており、アクチュエーター17により、減衰部18が減衰部受け板16に押し付けられている。
【0019】
なお、試料ステージ3を試料室2へ入れる方向をX方向とし、水平面上でX方向と直角となる方向をY方向とし、鉛直方向をZ方向としている。また、本開示による荷電粒子線装置の構成要素や、ステージを構成する各テーブルを組み上げる順番や構成はこの限りではない。
【0020】
<減衰部の構成>
図2は、本開示の第1の実施形態による、荷電粒子線装置100の減衰部18の断面構成を示す図(断面図)である。
減衰部18は、減衰部受け板16と、アクチュエーター17とによって挟み込まれるように設置されている。アクチュエーター17の先端部分はロッドになっており、ロッド先端のねじ部により減衰部18と結合されている。また、減衰部18は、Y−Z平面に広がる減衰部受け板16に押し付けられているだけで、ねじや溶接などの結合要素で減衰部受け板16とつながっているわけではない。
【0021】
減衰部18は、アクチュエーター17とアクチュエーター取付板25とによって試料室2に水平に支持されている。アクチュエーター取付板25は、金属やセラミックなどの多数の球体で構成された摩擦体24を収容する摩擦体封止ケース26を水平に支持する。また、摩擦体封止ケース26は、先端ピン20および押し付けピン22を有する圧力調整ねじ21を水平に支持する。そして、減衰部受け板16側からアクチュエーター17に向かい、先端ピン20、圧縮力調整ねじ21、押し付けピン22、押し付け板23、摩擦体24、およびアクチュエーター取付板25が金属で構成され、摩擦体24が金属やセラミックで構成されており、これらの部材が接触して連結されている。
【0022】
摩擦体24は、水平方向の両側を押し付け板23とアクチュエーター取付板25により挟まれ、さらに周囲を摩擦体封止ケース26で囲まれている。また、押し付けピン22を紙面の左側に移動させたときに、押し付け板23が追従するように、押し付け板23に引張りばね27を設けている。この引張りばね27の両端部は、押し付け板23と摩擦体封止ケース26の内側側壁261にそれぞれ固定されており、これにより、押し付け板23が押し付けピン22の移動に追従可能となっている。
【0023】
以上のように、減衰部18は金属(例えば、減衰部18を構成する各部材)やセラミック部材(例えば、摩擦体24)の接触で支持されているため、ゴムや樹脂を用いる場合に比べて剛性が高くなる。また、一般的に減衰部材として用いられるゴムのような粘弾性材料を用いていないため、このような部材を押し付けた時に生じるドリフト(部材を押し付けたときに、押し付け力に変化はないが、粘弾性材料に変位が生じてしまう)が生じにくい。さらに、多数の接触部を持つので摩擦による減衰が付加される。
【0024】
また、減衰部18において、減衰部受け板16側からアクチュエーター17まで水平方向に直列支持されている部品のうち、接触部分の多い摩擦体24の剛性が最も低くなり、さらに摩擦減衰が最も大きくなる。これらのことから、摩擦体24の剛性及び減衰が減衰部18の剛性及び減衰において支配的となる。ここで、上述の摩擦減衰は、摩擦体24同士の相対変位(振動によって相対変位が生じる)により生じる摩擦力が熱エネルギーに変換され、これにより運動エネルギーが消散される現象を意味する。
【0025】
圧縮力調整ねじ21を回すことにより、押し付けピン22が水平方向の何れかの方向に動き、押し付け板23を動かす。押し付け板23が動くことにより、摩擦体24へ作用する圧縮力が変化する。摩擦体を図のように球体にした場合、摩擦体に作用する圧縮力が高くなるほど、摩擦体の接触部剛性が高くなり、また、減衰に影響する接触面積も増えていく。このことから、圧縮力の調整により、摩擦体24の剛性及び減衰が調整できるので、減衰部剛性や減衰も調整が可能になる。ただし、摩擦体(例えば、球体)24同士の摩擦量は、摩擦体の接触面積が増えれば増えるほど増加するとは限らない。従って、摩擦体24同士の接触面積は適宜調整する必要がある。
【0026】
図2に示されるように、摩擦体24は、押し付け板23、アクチュエーター取付板25、および摩擦体封止ケース26で形成される空間内で互いに接触し、要素間の接触個所において生じる相対変位により摩擦を生じるものである。摩擦体24の材料は、金属やセラミックもしくはこれらを組み合わせた複合材でよく、材料のヤング率は20〜500GPaの範囲である。さらに、本実施形態では、摩擦体24の形状を球体としているが、これに限定されるものではなく、円筒や円柱、直方体、円錐、円錐台、三角柱、五角柱、六角柱、またはこれらの形状を複数組み合わせた形状、さらに砂粒のような不規則な形状のものでもよい。充填される摩擦体24の個数は2つでもよいが、3つ以上あるのが望ましい。また、摩擦体24のサイズは均一である必要はなく、適宜異なるサイズの摩擦体24を充填してもよい。さらに、摩擦体24に圧縮力を作用させる際に、押し付けピン22と押し付け板23に分けているが、摩擦体を圧縮できる構造であれば、例えば押し付けピン22と押し付け板23を一体構造にするなど、前述の限りではない(この場合、引張りばね27は不要となる)。また、本実施形態ではアクチュエーター17により減衰部18を押し付ける構成にしているが、手動で押付けるような構造にしてもよい。
【0027】
以上のような構成により、環境音などの外乱が装置に作用して試料ステージを振動させたときに、この試料ステージの振動を低減させる減衰部の剛性を維持したまま減衰を付与することができ、また、減衰部を試料ステージに押し当てた時に発生するドリフトが起きにくい構造にすることが可能になる。さらに、ステージの機差に応じて剛性及び減衰の調整が可能になる。
【0028】
(2)第2の実施形態
以下、本開示の第2の実施形態について、
図3を用いて説明する。
図3は、本開示の第2の実施形態による、荷電粒子線装置の減衰部18の断面構造を示す図(断面図)である。なお、
図3において、
図1あるいは
図2と同一符号は同一部品を示すので、当該部品についての再度の説明は省略する。
【0029】
第1の実施形態では、減衰部18を試料室2の壁面に設置されたアクチュエーター17と減衰部受け板16との間に設置していたが、第2の実施形態では、減衰部18を試料室2の壁面に内蔵させている。つまり、第1の実施形態では、アクチュエーター17を減衰部18の固定端としているが、第2の実施形態では、後述の封止フタ28を固定端としている。
【0030】
例えば、試料室2の内壁を円形にくり抜き、この円形の穴の中に減衰部18を入れる。減衰部18は、摩擦体封止ケース26と封止フタ28とによって覆われている。減衰部18の内側には、摩擦体24、摩擦体通し筒29、ステージ受け部品31、および押し付けばね32が内蔵されている。さらに、封止フタ28から、減衰部18内部へ圧縮力調整ねじ21がねじ込まれる。これらが、減衰部を構成しており、試料室2の外壁からはめ込まれるようになっている。本実施形態で用いる摩擦体通し筒29は、例えば、金属製の筒状部材に複数の穴が規則的に形成することにより構成される(いわゆるパンチングメタルで構成された筒状部材である)。
【0031】
摩擦体封止ケース26は、円筒形状で円筒の片側が中央に穴のあいた円板でふさがれている。封止フタ28は、サイズが試料室2の内壁に設けられた穴よりも大きい円板によって構成される。内壁に摩擦体封止ケース26を収めた試料室2は、封止フタ28と試料室2の側壁に設けられたOリング30により真空封止される。摩擦体封止ケース26の円筒端部と封止フタ28とが結合し、減衰部18の他の部品を内蔵している。
【0032】
摩擦体通し筒29には、多数の円形の穴が形成されている。摩擦体通し筒29は、摩擦体封止ケース26の円板部分に設けられた溝(図示せず)と封止フタ28に設けられた溝(図示せず)にはめ込まれて固定されている。そして、摩擦体24の一部が、摩擦体通し筒29に空いた穴に入り込むようになっている。摩擦体通し筒29の穴の大きさは、この摩擦体24の一部が摩擦体通し筒29の板の反対側に突き出る程度に設定されている。これにより、摩擦体24とステージ受け部品31が接するようになる。
【0033】
ステージ受け部品31は、円柱形状で片側が球形受けとなっている。これにより、ステージホルダ先端にある球形ピン34が試料ステージ3の上下・左右の動きに合わせて球形受けの表面を接触しながら移動できるようになっている。また、ステージ受け部品31は、摩擦体通し筒29に内蔵され、外周を摩擦体24と接触するように構成されている。そして、押し付けばね32は、ステージ受け部品31と封止フタ28との間に挟まれるように配置され、ステージ受け部品31を紙面左側に押し出し、ステージ受け部品31を元の位置に戻すことができる。
【0034】
試料ステージ3は、TEMに用いられる試料ステージのように、ロッド状のステージホルダ33を試料室2の内部に差し込む構成にし、アクチュエーター17で軸方向や軸直方向に移動できる構成にしてもよい。
【0035】
ステージホルダ33の先端の球形ピン34は、ステージ受け部品31、および摩擦体24を介して、摩擦体封止ケース26もしくは封止フタ28、試料室の順で支えられる。また、摩擦体24およびステージ受け部品31の圧縮力は、圧縮力調整ねじ21によって調整できるようになっている。つまり、圧縮力調整ねじ21が押し込められた量だけ摩擦体24の収容スペースがきつくなるため、摩擦体24間の摩擦量が増え、その摩擦によって試料ステージ3の振動を吸収するレベルをコントロールすることができる。また、圧縮ばねである押し付けばね32により、試料ステージ3を紙面右側に移動させた後、紙面左側に移動したときに、試料ステージ3により紙面右側に押し込まれたステージ受け部品31が試料ステージ3の移動に追従して左側に移動するようになる。また、試料ステージ3が振動した場合、当該振動は、ステージホルダ33からステージ受け部品31に伝わり、ステージ受け部品31から摩擦体24に伝わる。
【0036】
以上のような構成により、TEMに用いられるようなロッド状のステージホルダ33を押し付けるステージ構造にも適用でき、また、外側から減衰部18への圧縮力を容易に調整することが可能になる。さらに、外部から入れ込むことができるため,着脱性がよくなる。
【0037】
(3)第3の実施形態
以下、本開示の第3の実施形態について、
図4を用いて説明する。
図4は、第3の実施形態による、荷電粒子線装置の減衰部18の断面構成を示す図(断面図)である。なお、
図4において、
図1および
図2と同一符号は同一部品を示すので、当該部品についての再度の説明は省略する。また、ここでは摩擦体24は球体として説明するが、球体に限定されるわけではない。
【0038】
第3の実施形態においては、摩擦体封止ケース26の内側に複数の段差が設けられている。そして、当該段差の高さは、内部に充填する球体の高さと同程度にしてもよい。これにより、段差を目印にして高さを調整することが容易になる。
【0039】
球体(摩擦体24)を多数充填させる場合には、
図4Aに示されるように、全ての段に摩擦体24を充填させる。一方、球体(摩擦体24)の充填を減らす場合には、
図4Bに示されるように、摩擦体24の充填高さを変えて(段を減らす)摩擦体24の充填量を調整する。このように、摩擦体封止ケース26に設ける段差を設けて収容する摩擦体24の個数を調整することにより、減衰部18の剛性や摩擦減衰を大幅に変化させることができる。
【0040】
以上のような構成により、剛性の異なる様々な機種のステージにおいても、充填する摩擦体(球)24の数を変えることにより、減衰部18の構造を大きく変えずに減衰部18の剛性を調節することができるようになる。なお、本実施形態では段差を設けているが、目印になるなら溝などを設けるようにしてもよい。
【0041】
(4)第4の実施形態
以下、本開示の第4の実施形態について、
図5を用いて説明する。
図5は本開示の第4の実施形態による、荷電粒子線装置の減衰部18の断面構成を示す図(断面図)である。なお、
図5AおよびBにおいて、
図1および
図2と同一符号は同一部品を示すので、当該部品についての再度の説明は省略する。また、ここでは摩擦体24は球体として説明するが、球体に限定されるわけではない。
【0042】
図5Aに示されるように、本実施形態では、押し付け板23に突起35が所定間隔(各突起間の配置は等間隔である必要はない)で設けられている。突起35は、ボルトやロッドなど棒状部材であれば何でもよい。このとき、突起35の断面は摩擦体の球体直径よりも小さくすることが好ましい。
【0043】
図5Bに示すように,ステージ3が軸直方向(Y軸方向あるいはZ方向)に変位して押し付け板23を軸直方向に動かすと、摩擦体24がせん断変形を起こすので、押し付け板23と摩擦体24との間の距離が遠いほど、摩擦体24と押し付け板23との間に生じる相対変位が大きくなる。このとき、押し付け板23に設けた突起35により、押し付け板23の変形が摩擦体24の内部に作用する。これにより、摩擦体24と突起35との間における相対変位、つまり摩擦量が大きくなり、減衰効果が高くなる。
【0044】
なお、押し付け板23は薄板構造にしてもよい。これにより、試料ステージ3の軸方向(X軸方向)の変位が押し付け板23を軸方向に変形させ、この変形が突起35によって摩擦体24の内部に作用し、摩擦量が増えて減衰効果が高くなる。
以上のような構成により、押し付け板23の振動が突起35により摩擦体24全体に伝わることで、摩擦減衰が大きくなる。
【0045】
(5)第5の実施形態
以下、本開示の第5の実施形態について、
図6を用いて説明する。
図6は、本開示の第5の実施形態による、荷電粒子線装置の減衰部18の断面構成を示す図(断面図)である。なお、
図6において、
図1および
図2と同一符号は同一部品を示すので、当該部品についての再度の説明は省略する。また、ここでは摩擦体24は球体として説明するが、球体に限定されるわけではない。
【0046】
第1の実施形態では球体の摩擦体24のみを摩擦体封止ケース26に充填させているが、摩擦体24と摩擦体24の間に穴の空いたしきい板36を配置し、このしきい板36の穴(例えば、球体の径よりも穴の径の方が小さい)に球体である摩擦体24をはめ込むように収容する。例えば、しきい板36を設置し、次に摩擦体24を1段並べた後、しきい板36をさらに設置し、そのしきい板36の穴に嵌め込むように摩擦体24を1段並べるというように交互にしきい板36および摩擦体24が設置される。
【0047】
同じサイズの穴が空いたしきい板36を設置することにより、決められた位置に摩擦体24が均等に整列し、機差の少ない減衰部18の構造を実現することができる。さらに、しきい板36と摩擦体24の段数を変えることにより、減衰部18の剛性と減衰を可変調整することができる。
【0048】
以上のような構成により、摩擦体24のばらつきを防ぎ、しきい板36に設けられた穴の位置およびサイズが固定であるため機差が少なく、さらに剛性や減衰が可変調整できる減衰部18にすることができる。
【0049】
(6)第6の実施形態
以下、本開示の第6の実施形態について、
図7を用いて説明する。
図7は、本開示の第6の実施形態による、荷電粒子装置の減衰部18の断面構成を示す図である。なお、
図7において、
図1および
図2と同一符号は同一部品を示すので、当該部品についての再度の説明は省略する。また、ここでは摩擦体24は球体として説明するが、球体に限定されるわけではない。
【0050】
第1の実施形態では先端ピン20により1点で減衰部受け板16に押し当てていた(
図2参照)が、第6の実施形態では、先端ピン20で押し当てた部分(減衰部受け板16)を複数点(例えば、
図7では3点)で支持する。減衰部受け板16を複数点で指示するために、先端ピン20は、板部中央に圧縮力調整ねじ21と、板の中央から離れた位置に複数(例えば、3つ)のピンと、を備えており、各ピンを減衰部受け板16に押し当てて、減衰部受け板16を支持するように構成されている。
以上のような構成を採用することにより、先端ピン20による減衰部受け板16に対する支持の安定性が向上する。
【0051】
(7)第7の実施形態
以下、本開示の第7の実施形態について、
図8を用いて説明する。
図8は、本開示の第7の実施形態による、荷電粒子装置の減衰部18の断面構成を示す図である。なお、
図8において、
図1および
図2と同一符号は同一部品を示すので、当該部品についての再度の説明は省略する。また、ここでは摩擦体24は球体として説明するが、球体に限定されるわけではない。
【0052】
第6の実施形態では、圧縮力調整ねじ21を先端ピン20に固定し、摩擦体封止ケース26端面に設置している(
図7参照)が、第7の実施形態では、圧縮力調整ねじ21を摩擦体封止ケース26の円筒面に設置する。また、先端ピン20の板部材201に複数の突起35を設置し、これらを摩擦体封止ケース26の端面に空けた穴を通して摩擦体24内部に差し込むような構造にする。さらに、突起35を含む先端ピン20の安定性を向上させるため、先端ピン20の板部材201と摩擦体封止ケース26との間に支持ばね45が設けられている。支持ばね45は、例えば、板部材201と摩擦体封止ケース26とに対して接着剤や溶接などによって固定することが可能である。
以上のような構成により、圧縮力調整ねじ21の調整が容易になり、また先端ピン20の減衰部受け板16に対する支持の安定性が向上する。
【0053】
(8)第8の実施形態
以下、本開示の第8の実施形態について、
図9を用いて説明する。
図9は、本開示の第8の実施形態による、荷電粒子装置の減衰部18の断面構成を示す図である。なお、
図9において、
図1および
図2と同一符号は同一部品を示すので、再度の説明を省略する。また、ここでは摩擦体24は球体として説明するが、球体に限定されえるわけではない。
【0054】
第7の実施形態において、先端ピン20の板部材201に突起が設置されている(
図8参照)が、第8の実施形態では、板部材201の中央にロッド47を取り付け、当該ロッド47の部分を摩擦体封止ケース26に内蔵する。ロッド47のロッド径は、摩擦体封止ケース26よりも小さく、ロッド47と摩擦体封止ケース26の間に摩擦体24が充填できる大きさに設定される。
【0055】
また、摩擦体封止ケース26は、片側が封止された円筒として構成され、封止側にアクチュエーター17が設置できるように構成されている。また、摩擦体封止ケース26の内壁には段差48を設け、内壁の開口端側が広く、奥側が狭くなるようにし、奥側に支持ばね45が設置できるように構成している。支持ばね45は、例えば、先端ピン20に取り付けられたロッド47と摩擦体封止ケース26とに、接着剤や溶接等によって結合されており、先端ピン20を安定的に支持している。ただし、先端ピン20は、ロッド47の側面を主に摩擦体24によって支えられている。また、支持ばね45は、摩擦体24を充填する前において、先端ピン20を支持するために用いられる。これにより、減衰部18の組み立てが容易になる。なお、支持ばね45の剛性は、摩擦体24による支持剛性の1/10以下となるように設定するのが好ましい。
【0056】
さらに、摩擦体封止ケース26の開口部には、封止フタ46が設置され、摩擦体24が摩擦体封止ケース26から落下するのを防いでいる。また、封止フタ46の中央には穴を設けられており、先端ピン20のロッド47が貫通できるように構成されている。
以上のような構成により、圧縮力調整ねじ21の調整が容易になり、また先端ピン20の支持の安定性が向上し、さらに減衰部18の組み立てが容易になる。
【0057】
(9)第9の実施形態
以下、本開示の第9の実施形態について、
図10を用いて説明する。
図10は、本開示の第9の実施形態による、荷電粒子線装置の減衰部18の断面図である。なお、
図10において、
図1および
図2と同一符号は同一部品を示すので、再度の説明を省略する。また、ここでは摩擦体24は球体として説明するが、球体に限定されるわけではない。
【0058】
第9の実施形態では、摩擦体24を封止するフタの固定部(摩擦体封止ケース26)を可動構造にし、さらに圧縮力調整ねじ21と摩擦体24との間に相対変位が生じるように摩擦体24を封止するケース(摩擦体封止ケース26)と圧縮力調整ねじ21との間に隙間を持つ構造としている。
【0059】
減衰部18は、例えば、ロッド(第1および第6の実施形態ではねじ構造(圧縮力調整ねじ21)となっているが、第9の実施形態ではねじ構造ではなく、単なる棒状部材となっている)49のある先端ピン20と、円板形状をなし、中央に球形支点が設けられ、先端ピン20とロッドを介して結合する押し付け板23と、圧縮力緩衝部37と、円板形状をなし、中央に球形支点が設けられ、アクチュエーター17と結合するアクチュエーター取付板25と、片側を閉じた円筒状の構造で、側面中央付近にネジ穴が設けられ、また円筒の閉じた面の中央に貫通穴が設けられ、さらに、試料室側面に固定される減衰部支持体38と、を備えている。
【0060】
減衰部18においては、試料室2の側壁によってアクチュエーター17とアクチュエーター取付板25が支持される。また、アクチュエーター取付板25によって圧縮力緩衝部37が支持される。圧縮力緩衝部37によって先端ピン20および押し付け板23を有するロッドが支持される。このように、減衰部受け板16からアクチュエーター17までの各部材が水平に支持されている。また、各部材を金属で構成することにより、減衰部18の剛性を担保している。ただし、減衰部18の支持の安定性を向上させるため、押し付け板23と摩擦体封止ケース26との間、および摩擦体封止ケース26とアクチュエーター取付板25との間にそれぞれ支持ばね45が設置されている。支持ばね45は、押し付け板23と摩擦体封止ケース26、および摩擦体封止ケース26とアクチュエーター取付板25のそれぞれに、例えば接着剤や溶接等により固定される。
【0061】
圧縮力緩衝部37は、減衰部支持体38の内側にあり、側面両端及び中央に貫通穴のあいた円筒状の摩擦体封止ケース26と、摩擦体封止ケース26の両端から摩擦体24を封止し、摩擦体封止ケース26の側面両端の穴にはめ込められるように突起のついた円板の封止フタ40−1および40−2と、摩擦体24と、摩擦体封止ケース26の側面中央の穴41と減衰部支持体側面中央の穴42を通して、圧縮力緩衝部37の内部へとねじ込むことが可能な圧縮力調整ねじ21と、を備えている。
【0062】
摩擦体封止ケース26の側面中央の穴41は、圧縮力調整ねじ21のサイズ(径)よりも大きく構成されており、穴41と圧縮力調整ねじ21と間の隙間により、圧縮力緩衝部37の摩擦体24と、減衰部支持体38に固定された圧縮力調整ねじ21との間に相対変位が生じるようになっている。この相対変位により摩擦体全体が変形し減衰が生じる。
【0063】
圧縮力緩衝部37において、摩擦体封止ケース26の側面両端の穴43に、封止フタの突起44がはめ込まれている。また、封止フタの突起44に比べて摩擦体封止ケース26の側面両端の穴43の方が大きく構成されている。これにより、摩擦体封止ケース26の外側への力に対するストッパとして機能させることができる。
摩擦体封止ケース26の内部には、封止フタの突起44が常に摩擦体封止ケース26の側面両端の穴43と接触できるように摩擦体24が充填されている。
【0064】
上述の突起44と穴43との間の隙間があることにより、試料ステージ3側から摩擦体封止ケース26の内側に作用する力に対して試料ステージ3側の封止フタ40−1が摩擦体封止ケース26で支持されない。このため、試料ステージ3からの力は、摩擦体24で支持されることになる。なお、摩擦体24は、摩擦体封止ケース26の反対側の封止フタ40−2およびアクチュエーター取付板25の順に支持されている。
【0065】
以上のような減衰部18の構造を採用したため、試料ステージ3から減衰部18へ力が作用すると、押し付け板23やアクチュエーター取付板25などの固定部材に比べて剛性の小さい摩擦体24が変形し、封止フタ40−1および40−2が僅かに内側へ押しこまれる。これにより摩擦体24に減衰が生じる。一方、圧縮力調整ねじ21を圧縮力緩衝部37へ押し込み、摩擦体24が紙面の左右に押し出されても、封止フタ40−1および40−2の突起44が摩擦体封止ケース側面両端の穴43の側面に押し付けられ固定される。そのため、圧縮力を摩擦体24に加えた時の力が直接試料ステージ3やアクチュエーター17に作用しなくなることから、圧縮力を加えた時に試料ステージ3がドリフトすることを防ぐことが可能になる。
【0066】
以上の構成により、圧縮力緩衝部37内に圧縮調整ねじ21をねじ込んでも、封止フタ40−1および40−2により摩擦体24の変形が試料ステージ3に伝わらないようにできる。
【0067】
なお、本実施形態では圧縮力調整ねじ21により、圧縮力緩衝部37内の摩擦体24への圧縮力を調整しているが、圧縮力緩衝部37内にピエゾ素子等の伸縮する機能を持つ部材を内蔵させ、外部からの信号により伸縮させ圧縮力を調整させてもよい。また、圧縮力の調整は減衰部18に設置したピエゾ素子等のセンサにより取得した振動データに基づいてもよい。
【0068】
(10)まとめ
本実施形態では、荷電粒子線装置において、試料ステージと試料ステージの振動を減衰する減衰部とが水平に(荷電粒子線装置が載置される床面と水平に)配置されている。また、試料ステージが、荷電粒子線装置の試料室の一側面と減衰部との間に挟まれて支持される構造をなしている。そして、減衰部の筐体の内部には、複数の摩擦体が充填されている。当該摩擦体は、金属あるいはセラミックで構成された部材を採用することができる。このようにすることにより、減衰部は、試料ステージから伝搬してきた振動によって生じる各摩擦体の摩擦により、振動を減衰させることができるようになる。摩擦体は一定の剛性を有するため、減衰部の剛性を維持することができ、よって試料ステージを減衰部に押し当てたときにドリフトが発生しにくくすることができる。
【0069】
本実施形態(第1、および第3から6の実施形態)では、減衰部は、さらに、減衰部から試料ステージに向かって延設される伸縮可能な調整ねじを備えている。この調整ねじの先端が試料ステージに当って試料ステージを支持している。また、この調整ねじによって減衰部に充填されている摩擦体に試料ステージの振動が伝達される。この調整ねじは、減衰部の減衰及び剛性を調整する機能を有している。このようにすることにより、試料ステージの振動が摩擦体に伝達されやすくなり、効率的に振動を減衰させることができるようになる。また、第6の実施形態のように、調整ねじの先端部に複数の支持部を設け、試料ステージを複数点で支持するようにしてもよい。これにより、安定的に試料ステージを支持することができるようになる。
【0070】
第2の実施形態は、例えばTEM用試料ステージの場合に採用することができる構成に関する。TEM用試料ステージは、第1の実施形態などとは異なり、減衰部の内部に挿入される棒状部を有している。そして、減衰部は、摩擦体が嵌る複数の穴を有する筒状部材(例えば、円筒形のパンチングメタル部材)と、当該筒状部材に内蔵され、棒状部の先端を受けるステージ受け部材を有している。また、筒状部材の複数の穴に嵌った摩擦体が、棒状部の先端を受ける面以外のステージ受け部材の面と接触している。このように試料ステージ側のピン(棒状部)を減衰部側で受けることにより、TEM用試料ステージの振動も第1の実施形態と同様の考え方で減衰することができる。なお、この場合、減衰部を、試料室の内部(上記一側面とは反対側の側面)に埋め込むようにしてもよい。
【0071】
第3の実施形態では、減衰部は、摩擦体を保持する内部空間に段差を備えている。なお、段差の高さ(段さ幅)は、摩擦体の径とほぼ同じサイズにすることが好ましい。このようにすることにより、充填される摩擦体の個数を可変にすることができ、摩擦体の個数によって振動によって生じる摩擦エネルギーの大きさを調整できるため、減衰部の減衰機能を調整することができるようになる。
【0072】
第4の実施形態では、減衰部は、水平方向に延設された複数の突起(例えば、摩擦体を抑える板部材であって、摩擦体に接する面と反対の面には上記調整ねじの先端が押し付けられる板部材に突起が設けられている)を備える。当該複数の突起が充填されている複数の摩擦体のいくつかに接するようになっている。このような突起により摩擦体全体に振動が伝達されるため、効率的に振動を減衰させることができる。
【0073】
第5の実施形態では、減衰部において、摩擦体の径よりも小さい径を有する複数の穴を含むしきい板が複数の摩擦体が充填される空間に配置されている。この場合、摩擦体は、しきい板の複数の穴に嵌って充填されている。このようにすることにより、摩擦体のばらつきを防ぐことができ、機差が少なく、減衰部の剛性や減衰機能を可変とすることが可能となる。
【0074】
第7の実施形態では、減衰部は、試料ステージを支持する支持部を先端に有するロッド(ねじ構造となっていない)と、減衰部の筐体のロッドが取り付けられた面とは異なる面(
図8参照)に減衰部の減衰及び剛性を調整する調整ねじと、を備えている。このようにすることにより、調整ねじによって摩擦体に与える圧縮力を容易に調整することができるようになる。
【0075】
第8の実施形態では、第7の実施形態の構成(ただし、ロッドは第7の実施形態の各ロッドよりも径サイズが大きいものを採用)において、摩擦体をロッドの側面と減衰部の筐体の内部側面との間に充填するようにしている。このような構成によっても、調整ねじによって摩擦体に与える圧縮力を容易に調整することができ、また、試料ステージの支持機能を安定させることができる。
【0076】
第9の実施形態では、第7の実施形態の構成(
図10では、ロッドは1つとなっているが、複数のロッドを用いてもよい第7の実施形態の各ロッドよりも径サイズが大きいものを採用)に加えて、減衰部が、減衰部の筐体の内部に、摩擦体を保持する摩擦体保持筐体を有する構造となっている。この場合、摩擦体保持筐体は、摩擦体を封止するフタ部材を可動にする構造を有し、調整ねじと摩擦体との間で相対変位が生じるように、調整ねじと摩擦体保持筐体における調整ねじが挿入される穴との間に隙間が設けられている(
図10参照)。このようにすることにより、調整ねじを摩擦体群にねじ込んで圧縮力を大きくしてもフタ部材の変位が所定位置までに制限されるため、摩擦体の変形が試料ステージに伝搬することがなく、試料ステージのドリフトを防止することができる。