(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アクリル酸及びその塩の少なくとも一方を単量体単位として含有する架橋された重合体を含み、生理食塩水の吸水速度が1〜15秒であり、中位粒子径が100〜600μmであり、残存揮発成分量が0.44質量%以上1.5質量%以下であり、前記残存揮発成分が、鎖状脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、及び芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種である、吸水性樹脂粒子。
液体透過性シート、液体不透過性シート及び請求項6に記載の吸収体を備え、対向して配置された前記液体透過性シートと前記液体不透過性シートとの間に、前記吸収体が配置されている、吸収性物品。
第一の液体透過性シート、第二の液体透過性シート及び請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸水性樹脂粒子を備え、対向して配置された前記第一の液体透過性シートと前記第二の液体透過性シートとの間に、前記吸水性樹脂粒子が配置されている、止水材。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の実施形態について、以下に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本明細書に記載される全ての構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に組み合わせることができる。例えば、本明細書に記載される数値範囲の上限値及び下限値、並びに実施例に記載される数値から任意に選択される数値を上限値又は下限値として用いて、各種特性に関する数値範囲を規定することができる。
【0043】
本実施形態にかかる吸水性樹脂粒子の生理食塩水の吸水速度は、1〜15秒又は1〜20秒であってもよい。吸水速度を上記範囲内とすることにより、言い換えると、吸水性樹脂粒子がこのように優れた吸水速度を有することにより、吸水性樹脂粒子が吸収性物品、止水材等に用いられた際に、液漏れを特に効果的に防止することができる。同様の観点から、上記吸水速度は、1〜12秒、2〜10秒、2〜8秒、2〜6秒であってもよい。
【0044】
本実施形態にかかる吸水性樹脂粒子の中位粒子径は、100〜600μmであってもよい。中位粒子径をこの範囲内とすることにより、吸収体を製造する際の吸水性樹脂粒子のハンドリング性を特に良好に保ち、かつ、吸収体を薄くすることができる。同様の観点から、吸水性樹脂粒子の中位粒子径は、110〜500μm、120〜500μm、120〜400μm、140〜400μm、140〜350μm又は150〜350μmであってもよい。
【0045】
本実施形態にかかる吸水性樹脂粒子の残存揮発成分量は、1.5質量%以下であってもよい。残存揮発成分量を上記範囲内とすることで、言い換えると、吸水性樹脂粒子が少ない残存揮発成分量を有することで、例えば、吸水性樹脂粒子が吸水した際の臭気の発生を特に効果的に抑制して、吸収性物品の装着者の快適さを向上させることができる。同様の観点から、上記残存揮発成分量は、1.3質量%以下、1.2質量%以下、0.001〜1.2質量%、0.001〜1.0質量%、0.01〜1.0質量%、0.01〜0.8質量%、0.01〜0.6質量%、又は0.01〜0.45質量%であってもよい。
【0046】
本実施形態にかかる吸水性樹脂粒子の比表面積は、特に限定されないが、吸水速度を向上させる観点から、0.08m
2/g以上、0.1〜2.0m
2/g、0.12〜1.0m
2/g、又は0.14〜0.5m
2/gであってもよい。
【0047】
本実施形態にかかる吸水性樹脂粒子の生理食塩水の吸水量は、特に限定されないが、吸収性物品の吸収容量を向上させる観点から、30〜90g/g、35〜80g/g、45〜75g/g、50〜70g/g、又は55〜65g/gであってもよい。
【0048】
吸水性樹脂粒子の平衡膨潤性能(10分値)(単に、平衡膨潤性能ということがある)は、20mm以上であってもよい。このように吸水性樹脂粒子が高い膨潤性能を有することで、吸水性樹脂粒子がケーブル用止水材に用いられた際、ケーブルの亀裂による初期浸水を防止した後、長時間の浸水防止効果を維持し、かつケーブルの基材劣化を促進しない程度の適度な膨潤圧力を発揮することができる。同様の観点から、上記平衡膨潤性能は、21〜40mm、22〜35mm、又は23〜30mmであってもよい。
【0049】
吸水性樹脂粒子の初期膨潤性能(1分値)の平衡膨潤性能に対する比率(初期膨潤比率)は、60〜100%であってもよい。このように吸水性樹脂粒子が高い初期膨潤比率を有することで、吸水性樹脂粒子がケーブル用止水材に用いられた際、ケーブルの亀裂による初期浸水をより確実に防止できる。同様の観点から、上記初期膨潤比率は75〜98%、又は90〜95%であってもよい。
【0050】
以上説明した生理食塩水の吸水速度、中位粒子径、残存揮発成分量、比表面積、生理食塩水の吸水量、平衡膨潤性能及び初期膨潤比率は、いずれも実施例にて後述する方法によって測定された値である。
【0051】
本実施形態にかかる吸水性樹脂粒子の原料は特に限定されない。例えば、吸水性樹脂粒子を構成する樹脂を、生理食塩水の吸水速度、中位粒子径、残存揮発成分量が上述の数値範囲内となるように選択することができる。例えば、水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させることによって得られる樹脂(水溶性エチレン不飽和単量体を単量体単位として含む重合体)が用いられ得る。水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させた樹脂としては、例えば、澱粉−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体の中和物、酢酸ビニル−アクリル酸エステルのケン化物、及びポリアクリル酸部分中和物等が挙げられる。水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させる方法としては、水溶液重合法、及び、界面活性剤の存在下、炭化水素分散媒中で行う逆相懸濁重合法等が挙げられる。吸水性樹脂粒子は、水溶性エチレン性不飽和単量体を単量体単位として含む重合体を主成分として含んでいてもよい。例えば、吸水性樹脂粒子100質量部に対して、上記重合体の割合が50質量部以上であってもよい。
【0052】
後述の親水性高分子分散剤を用いて吸水性樹脂粒子を製造する場合、得られる吸水性樹脂粒子は、親水性高分子分散剤を含み得る。吸水性樹脂粒子中の親水性高分子分散剤の含有量は、吸水性樹脂粒子100質量部に対して、例えば、0.001〜10質量部、0.005〜5質量部、0.01〜3質量部、又は0.01〜1.5質量部であってもよい。これら含有量は、吸水性樹脂粒子の製造方法の説明において後述するように、水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対する親水性高分子分散剤の含有量(使用量)と同様にして導かれる。
【0053】
後述の水溶性増粘剤を用いて吸水性樹脂粒子を製造する場合、得られる吸水性樹脂粒子は、水溶性増粘剤を含み得る。吸水性樹脂粒子中の水溶性増粘剤の含有量は、吸水性樹脂粒子(ポリマー固形分)100質量部に対して、例えば、0.05〜20質量部、0.2〜10質量部、0.4〜5質量部又は0.6〜3質量部である。水溶性増粘剤の含有量は、吸水性樹脂粒子の製造方法の説明において後述するように、水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対する、水溶性増粘剤の含有量(使用量)と同様にして導かれる。
【0054】
吸水性樹脂粒子には、目的に応じて、耐熱性安定剤、酸化防止剤、抗菌剤等の添加剤が含まれていてもよい。これら添加剤の量は、吸水性樹脂粒子の用途、添加剤の種類等によって異なるが、吸水性樹脂粒子(ポリマー固形分)100質量部に対して、0.001〜10質量部、0.01〜5質量部、又は0.1〜2質量部であってもよい。
【0055】
以下、一例として、逆相懸濁重合法について詳細に説明する。本実施形態にかかる吸水性樹脂粒子は、例えば、界面活性剤、炭化水素分散媒及び必要に応じて疎水性高分子分散剤を含む油性液と、水溶性エチレン性不飽和単量体を含む水性液とを含有し、水性液が上記油性液中に分散された懸濁液中で、水溶性エチレン性不飽和単量体を、ラジカル重合開始剤を用いて逆相懸濁重合する方法により、得ることができる。係る方法として、例えば、以下の製造方法1〜3のうち少なくとも1つを採用することができる。
【0056】
すなわち、HLBが6以上の界面活性剤と、親水性高分子分散剤を含む水性液とを用いて、逆相懸濁重合を行う方法(製造方法1)、
HLBが6以上の界面活性剤と、20℃において20mPa・s以上の粘度を有する、及び/又は水溶性増粘剤を含む水性液とを用いて、逆相懸濁重合を行う方法(製造方法2)、又は
HLBが6以上の界面活性剤及び水性液を含む懸濁液を用いて逆相懸濁重合することにより得られた含水ゲル状重合体を含む45℃以上の懸濁液に、別の水性液を加えてさらに逆相懸濁重合を行う方法(製造方法3)により、吸水性樹脂粒子を得ることができる。
【0057】
HLBが6以上の界面活性剤を用いた逆相懸濁重合では、連続相である油性液(O)と不連続相である水性液(W)とにより形成されるW/O型逆相懸濁の状態を良好に維持できるため、吸水性樹脂粒子の表面に微細な凹凸を均一且つ多数形成させることができる傾向がある。凹凸の程度は、吸水性樹脂粒子の比表面積で表すことができる。表面に凹凸の多い吸水性樹脂粒子は比表面積が大きく、吸水速度が速くなる傾向がある。その一方で、界面活性剤を用いた逆相懸濁重合では、水性液と油性液との界面が強く活性化される。このため、逆相懸濁重合時に水性液内部に油性液中の微細な炭化水素分散媒を取り込みやすくなるためか、吸水性樹脂粒子の残存揮発成分量が大きくなる傾向がある。このように、比表面積が大きい吸水性樹脂粒子は吸水速度が速くなる傾向があるものの、吸水後の臭気が強くなる傾向がある。
【0058】
ところが、上記製造方法1〜3の少なくとも1つを採用することにより、吸水速度ばかりでなく吸水後の臭気の点でも優れる、本実施形態にかかる吸水性樹脂粒子を得ることができる。以下に、これら製造方法について詳細に説明する。
【0059】
(製造方法1)
製造方法1は、炭化水素分散媒を含む油性液と水性溶媒及び水溶性エチレン性不飽和単量体を含む水性液とを含有し、水性液が油性液中に分散された懸濁液中で、水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させることを含む重合工程を備える。上記重合は、炭化水素分散媒を含む油性液(O)を連続相とし、水を含む水性液(W)を上記連続相中に分散される液滴状の不連続相として重合するW/O型逆相懸濁重合である。
【0060】
上記懸濁液はHLBが6以上の界面活性剤をさらに含む。また、上記水性液は親水性高分子分散剤をさらに含む。
【0061】
上記界面活性剤のHLBは6〜16、7〜16、8〜12、又は8.5〜10.5であってもよい。界面活性剤のHLBがこれら範囲内であることにより、W/O型逆相懸濁の状態がより良好となり、より好適な粒子径とより優れた吸水速度とを有する粒子が得られる傾向がある。
【0062】
界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル(「(ポリ)」とは「ポリ」の接頭語がある場合とない場合の双方を意味するものとする。以下同じ。)、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、及びポリエチレングリコール脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤;脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルメチルタウリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、及びポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステル等のアニオン系界面活性剤等が挙げられる。W/O型逆相懸濁の状態が良好で、吸水性樹脂粒子が好適な粒子径で得られやすく、工業的に入手が容易であるという観点から、界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であってもよく、さらに、得られる吸水性樹脂粒子の上記諸性能が向上するという観点から、ソルビタン脂肪酸エステルであってもよい。これらの界面活性剤は、それぞれ単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0063】
界面活性剤の使用量は、W/O型逆相懸濁の状態を安定させ、かつ懸濁安定化効果が得られる効率的な使用量を選択する観点から、水性液100質量部に対して、0.1〜5質量部、0.2〜3質量部、又は0.4〜2質量部であってもよい。通常、水性溶媒、水溶性エチレン性不飽和単量体、親水性高分子分散剤、及び後述の水溶性増粘剤の合計量を、水性液の質量とみなして各成分の比率を計算することができる。ただし、これは、親水性高分子分散剤及び水溶性増粘剤が、常に水性液の必須の成分であることを意味しない。
【0064】
製造方法1における水性液は、水を含む水性溶媒と、水溶性エチレン性不飽和単量体と、親水性高分子分散剤と、場合により各種添加剤とを含有する。水性溶媒は、主として水から構成され、他の親水性溶媒を含んでいてもよい。
【0065】
親水性高分子分散剤は、例えば、25℃の水100gに溶解する量が0.001〜200g、0.05〜150g、又は0.1〜100gであってもよい高分子分散剤である。
【0066】
親水性高分子分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールブロック共重合体、ポリグリセリン、ポリオキシエチレングリセリン、ポリオキシプロピレングリセリン、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリセリン共重合体、及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の高分子化合物であってもよい。親水性高分子分散剤は、これらの中でも、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリグリセリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であってもよく、残存揮発成分量の低減効果の観点から、ポリビニルピロリドン又はポリビニルアルコールであってもよい。これら親水性高分子分散剤は、それぞれ単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0067】
上記親水性高分子分散剤として挙げられるポリビニルピロリドン及びポリビニルアルコール等は、一般的には増粘剤としても用いられるが、本実施形態では水性液の粘度の上昇がほとんど認められない程度の少量の含有量であっても、残存揮発成分量が低減されるという、予想外の効果が得られる。
【0068】
逆相懸濁重合に供される水性液が親水性高分子分散剤を含むことによる、残存揮発成分量の低減メカニズムは明確ではないが、親水性高分子分散剤がW/O型逆相懸濁における水性液滴の分離及び合一を安定化することが一つの理由と考えられる。より詳細には、親水性高分子分散剤が、水性液滴の内側の表面近傍を効率的に保護しているため、水性液滴同士の衝突時に炭化水素分散媒が水性液滴に内包される頻度が低減され、O/W/O型構造の形成が抑制されるためであると推察される。
【0069】
親水性高分子分散剤の使用量は、その種類及び分子量によって好適な量が異なるため、一概には決定できないが、例えば、水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対し、0.001〜10質量部、0.005〜5質量部、0.01〜3質量部、又は0.01〜1.5質量部であってもよい。親水性高分子分散剤の使用量が0.001質量部以上の場合、残存揮発成分量の低減効果をより高度に得ることができ、また10質量部以下の場合、使用量に応じた効果を得ることができる傾向があり、より経済的である。
【0070】
上記親水性高分子分散剤の分子量等は特に限定されず、親水性高分子分散剤が水性溶媒(特に水)に親和して水性液中に均一に分散できる範囲であればよい。親水性高分子分散剤の質量平均分子量は、2000〜5000000、5000〜3000000、10000〜2000000、20000〜1500000、又は30000〜1500000であってもよい。親水性高分子分散剤の分子量をこれらの範囲とすることにより、得られる吸水性樹脂粒子が適度な粒子径を達成しつつ、残存揮発成分量の低減効果を特に顕著に高めることができる傾向がある。上記質量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により測定され、ポリエチレンオキサイドを標準物質として換算された値である。親水性高分子分散剤がポリビニルアルコールである場合、そのけん化度等は特に限定はされない。ポリビニルアルコールのけん化度は、水への溶解性と残存揮発成分量の低減効果の観点から、65〜100%、75〜98%、80〜95%、又は85〜90%であってもよい。
【0071】
上記水溶性エチレン性不飽和単量体としては、カルボキシル基、スルホ基、アミド基及びアミノ基等からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有するエチレン性不飽和単量体が挙げられる。水溶性エチレン性不飽和単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸(以下、「アクリル」及び「メタクリル」を合わせて「(メタ)アクリル」と表記する)とその塩、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とその塩、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、及びジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。水溶性エチレン性不飽和単量体がアミノ基を含有する場合には、当該アミノ基は4級化されていてもよい。上記単量体が有するカルボキシル基及びアミノ基等の官能基は、後述する後架橋工程において架橋が可能な官能基として機能しうる。これらの水溶性エチレン性不飽和単量体は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0072】
水溶性エチレン性不飽和単量体は、工業的に入手が容易という観点から、アクリル酸及びその塩、メタクリル酸及びその塩、アクリルアミド、メタクリルアミド並びにN,N−ジメチルアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であってもよく、アクリル酸及びその塩、メタクリル酸及びその塩並びにアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であってもよく、さらに安全性をより高める観点から、アクリル酸及びその塩、並びにメタクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であってもよい。
【0073】
水性液中の水溶性エチレン性不飽和単量体の濃度は、水性液(水性溶媒、水溶性エチレン性不飽和単量体、親水性高分子分散剤、及び後述の水溶性増粘剤の合計量)を基準として、20質量%〜飽和濃度以下の範囲であってもよい。また、W/O型逆相懸濁の状態が良好で好適な粒子径の吸水性樹脂粒子を得やすく、得られる吸水性樹脂粒子の膨潤性能が向上する観点から、上記濃度は25〜50質量%、30〜45質量%、又は35〜42質量%であってもよい。
【0074】
水溶性エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のように酸基を有する場合、当該酸基がアルカリ金属塩等のアルカリ性中和剤によって中和され、塩を形成してもよい。アルカリ性中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びアンモニア等の水溶液等が挙げられる。これらアルカリ性中和剤は、それぞれ単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0075】
アルカリ性中和剤による全酸基に対する中和度は、得られる吸水性樹脂粒子の浸透圧を高めることで膨潤能力を高め、かつ、余剰のアルカリ性中和剤の残存を抑制して安全性等に問題がより生じないようにする観点から、10〜100モル%、30〜90モル%、50〜80モル%、又は60〜78モル%であってもよい。
【0076】
上記水性液はラジカル重合開始剤を含んでいてもよい。この場合、ラジカル重合開始剤は水溶性であってもよい。ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、及び過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、及び過酸化水素等の過酸化物;並びに2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(N−フェニルアミジノ)プロパン]2塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(N−アリルアミジノ)プロパン]2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、及び4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物等が挙げられる。これらラジカル重合開始剤は、それぞれ単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0077】
ラジカル重合開始剤の使用量は、通常、水溶性エチレン性不飽和単量体100モルに対して0.005〜1モルであってもよい。ラジカル重合開始剤の使用量が0.005モル以上であると、重合反応に長時間を要さず、効率的である。使用量が1モル以下であると、急激な重合反応が起こらない傾向がある。
【0078】
ラジカル重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄及びL−アスコルビン酸等の還元剤と併用して、レドックス重合開始剤として用いることもできる。
【0079】
水性液は、吸水性樹脂粒子の吸水性能を制御するために、連鎖移動剤を含んでいてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、次亜リン酸塩類、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類及びアミン類等が挙げられる。
【0080】
油性液は、主として炭化水素分散媒から構成される疎水性の液体である。逆相懸濁重合においては、上記炭化水素分散媒を水性液の分散媒とすることができる。
【0081】
上記炭化水素分散媒としては、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、及びn−オクタン等の鎖状脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、trans−1,2−ジメチルシクロペンタン、cis−1,3−ジメチルシクロペンタン、及びtrans−1,3−ジメチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの炭化水素分散媒は、それぞれ単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。炭化水素分散媒は、炭素数6〜8の鎖状脂肪族炭化水素、及び炭素数6〜8の脂環族炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であってもよい。W/O型逆相懸濁の状態が良好で、優れた吸水速度の吸水性樹脂粒子が好適な粒子径で得られやすく、工業的に入手が容易であり、かつ品質が安定している観点から、炭化水素分散媒は、n−ヘプタン又はシクロヘキサンであってもよい。また、同観点から、上記炭化水素分散媒の混合物は、例えば、市販されているエクソールヘプタン(エクソンモービル社製:n−ヘプタン及び異性体の炭化水素75〜85%含有)であってもよい。
【0082】
油性液に含まれる炭化水素分散媒の量は、重合熱を適度に除去し、重合温度を制御しやすくする観点から、水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、50〜650質量部、70〜550質量部、又は100〜450質量部であってもよい。炭化水素分散媒の使用量が50質量部以上であることにより、重合温度の制御が容易となる傾向がある。炭化水素分散媒の使用量が650質量部以下であることにより、重合の生産性が向上する傾向があり、経済的である。
【0083】
油性液は、疎水性高分子分散剤を含んでいてもよい。界面活性剤と疎水性高分子分散剤とを併用することにより、W/O型逆相懸濁の状態をより安定させることができる。疎水性高分子分散剤としては、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン−ターポリマー)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−プロピレン−無水マレイン酸共重合体、ブタジエン−無水マレイン酸共重合体、酸化型ポリエチレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチルセルロース、及びエチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。これらの中でも、W/O型逆相懸濁の安定性の面から、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、又はエチレン−アクリル酸共重合体を用いることができる。これらの疎水性高分子分散剤は、それぞれ単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0084】
油性液中に含まれる疎水性高分子分散剤の量は、水性液(水性溶媒、水溶性エチレン性不飽和単量体、親水性高分子分散剤、および水溶性増粘剤の合計量)100質量部に対して、0.1〜5質量部、0.2〜3質量部、又は0.4〜2質量部であってもよい。
【0085】
逆相懸濁重合では、通常、重合前に油性液及び水性液が各々調製される。調製された水性液と油性液とを混合して、重合用の懸濁液が調製される。
【0086】
親水性高分子分散剤の配合方法は、特に限定されないが、重合前の水性液に均一に分散できればよく、例えば(a)水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液に親水性高分子分散剤を混合、溶解して水性液を得て、これを油性液中に分散する方法、(b)油性液に水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液と親水性高分子分散剤の水溶液とを別々に添加して分散する方法、(c)油性液に水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を分散した後、重合前に親水性高分子分散剤の水溶液を添加して分散する方法等が挙げられる。これらの中でも、残存揮発成分量がより効果的に低減される観点から、(a)の方法を採用することができる。
【0087】
界面活性剤は、油性液に加えることができる。
【0088】
逆相懸濁重合を行う際の重合温度(懸濁液の温度)は、使用するラジカル重合開始剤の種類によって異なるので、一概には決定することができない。通常、該重合温度は、重合を迅速に進行させることで重合時間を短くし、かつ重合熱を除去することが簡単で、かつ円滑に反応を行う観点から、20〜110℃、又は40〜90℃であってもよい。重合時間は、通常、0.5〜4時間である。
【0089】
上述のようにして、水溶性エチレン性不飽和単量体が重合することにより、粒子状の含水ゲル状重合体が生成する。通常、得られる重合体(含水ゲル状重合体)は、球状、顆粒状、破砕状、金平糖状及びそれらの凝集物等の様々な形態を有する。本実施形態においては、比表面積及び吸水速度が向上する観点から、含水ゲル状重合体は顆粒状であってもよく、表面に多くの突起を有する顆粒状であってもよい。
【0090】
製造方法1は、上記含水ゲル状重合体を架橋する後架橋工程をさらに備えていてもよい。製造方法1はまた、上記含水ゲル状重合体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体由来の成分(ポリマー固形分)を100質量%としたときの、含水ゲル状重合体中の水の質量百分率(含水ゲル状重合体の水分率)が例えば20〜130質量%となるように調整する1次乾燥工程を後架橋工程の前に備えていてもよい。
【0091】
1次乾燥工程の乾燥方法としては、特に限定されないが、例えば(a)上記含水ゲル状重合体を油性液(炭化水素分散媒)に分散した状態で、外部から加熱することにより共沸蒸留により炭化水素分散媒を還流させて水分を除去する方法、(b)デカンテーションにより含水ゲル状重合体を取り出し、減圧乾燥する方法、(c)フィルターにより含水ゲル状重合体をろ別し、減圧乾燥する方法等が挙げられる。中でも、製造工程における簡便さから、(a)の方法を採用することができる。
【0092】
上記のようにして、含水ゲル状重合体の水分率が例えば20〜130質量%であるように調整された含水ゲル状重合体を架橋させることにより、より優れた吸水性能を有する吸水性樹脂粒子が得られる。
【0093】
含水ゲル状重合体の後架橋は、例えば、含水ゲル状重合体と後架橋剤とを混合し、加熱することにより行われる。後架橋剤は、水溶性エチレン性不飽和単量体中に含まれる官能基(例えば、アクリル酸の場合はカルボキシル基)と反応しうる官能基を有し、水溶性の化合物であってもよい。後架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等の2個以上のエポキシ基を有する化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、及びα−メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4−トリレンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネート等の2個以上のイソシアネート基を有する化合物;3−メチル−3−オキセタンメタノール、3−エチル−3−オキセタンメタノール、3−ブチル−3−オキセタンメタノール、3−メチル−3−オキセタンエタノール、3−エチル−3−オキセタンエタノール、及び3−ブチル−3−オキセタンエタノール等のオキセタン化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物等が挙げられる。後架橋剤は、水溶性エチレン性不飽和単量体が有する官能基と反応しうる官能基を分子内に2個以上有する化合物であってもよい。このような化合物としては、上記ポリオール、2個以上のエポキシ基を有する化合物、ハロエポキシ化合物、及び2個以上のイソシアネート基を有する化合物等が挙げられる。これら後架橋剤は、それぞれ単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0094】
後架橋剤は、反応性に優れている観点から、2個以上のエポキシ基を有する化合物であってもよい。なかでも水への溶解性が高く、後架橋剤としてのハンドリング性がよいという観点から、後架橋剤は、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、及びポリグリセロールグリシジルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であってもよく、得られる吸水性樹脂粒子の上記諸性能を向上する観点から、エチレングリコールジグリシジルエーテル、又はプロピレングリコールジグリシジルエーテルであってもよい。
【0095】
後架橋剤の量は、含水ゲル状重合体を生成するために用いられた水溶性エチレン性不飽和単量体100モルに対して、0.0001〜1モル、0.0005〜0.5モル、0.001〜0.1モル、又は0.005〜0.05モルであってもよい。後架橋剤の量が0.0001モル以上であると、架橋の効果が発現し、吸水時の吸水性樹脂粒子表面が粘性を帯びることなく、吸水性樹脂粒子の吸水速度をより向上させることができる傾向がある。後架橋剤の量が1モル以下であると、架橋が過度とならず、吸水性樹脂粒子の吸水量をより向上させることができる傾向がある。
【0096】
含水ゲル状重合体と後架橋剤との混合は、1次乾燥工程等により、含水ゲル状重合体の水分率を特定の範囲に調整した後に行うことができる。このように、含水ゲル状重合体と後架橋剤との混合時における含水ゲル状重合体の水分率を制御することにより、より好適に後架橋反応を進行させることができる。
【0097】
後架橋工程に供される含水ゲル状重合体の水分率は、20〜130質量%、25〜110質量%、30〜90質量%、35〜80質量、又は40〜70質量%であってもよい。含水ゲル状重合体の水分率をこれらの範囲内とすることで、1次乾燥工程を短くして製造効率を高めつつ、後架橋反応により吸水性能をさらに向上させることが可能となる。
【0098】
含水ゲル状重合体の水分率は、重合前の水性液に含まれる水分量から、1次乾燥工程により外部に抽出された水分量を差し引いた量(1次乾燥ゲルの水分量)に、後架橋剤を混合する際に必要に応じて用いられる水分量を合計した値を含水ゲル状重合体の水分量として算出した後、含水ゲル状重合体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体成分の質量に対する上記含水ゲル状重合体の水分量の割合を算出することによって求めることができる。
【0099】
含水ゲル状重合体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体由来の成分の質量は、重合反応に用いた水溶性エチレン性不飽和単量体の総質量から、理論上のポリマー固形分として、計算により求められる。
【0100】
含水ゲル状重合体と後架橋剤との混合の際には、後架橋剤を均一に分散させるため、後架橋剤を溶解する溶媒として、水を加えてもよい。1次乾燥ゲル(含水ゲル重合体)の水分量と、後架橋剤と共に加えられる水分量との質量比率は、乾燥工程を合理的に短縮してプロセスの経済性を高めつつ、後架橋剤を均一に分散させる観点から、100:0〜60:40、99:1〜70:30、98:2〜80:20、又は98:2〜90:10であってもよい。水に代えて、又は水と共に、親水性有機溶媒を用いてもよい。親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール及びイソプロピルアルコール等の低級アルコール類、アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン類、ジオキサン及びテトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、並びにジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いられてもよく、必要に応じて、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0101】
後架橋反応の反応温度は、60℃以上、70〜200℃、又は80〜150℃であってもよい。反応温度が60℃以上であることにより、後架橋反応が促進され、反応に過大な時間を要しない傾向がある。反応温度が200℃以下であることにより、得られる吸水性樹脂粒子の劣化、吸水性能の低下を抑制できる傾向がある。
【0102】
後架橋反応の反応時間は、反応温度、後架橋剤の種類及び量等によって異なるので一概には決定することができないが、例えば、1〜300分間、又は5〜200分間であってもよい。
【0103】
製造方法1は、後架橋反応を行った後、熱等のエネルギーを外部から加えることにより、水、炭化水素分散媒等を蒸留により除去する、2次乾燥工程を備えていてもよい。この2次乾燥を行うことで、流動性にさらに優れる吸水性樹脂粒子が得られる傾向がある。
【0104】
上記2次乾燥の方法としては、特に限定されず、例えば、(a)油性液(炭化水素分散媒)に分散した後架橋反応後の樹脂粒子の混合物を、蒸留することにより水分と炭化水素分散媒等を同時に除去する方法、(b)デカンテーションにより樹脂粒子を取り出し、減圧乾燥する方法、(c)フィルターにより樹脂粒子をろ別し、減圧乾燥する方法等が挙げられる。これらの中でも、製造工程における簡便さから、(a)の方法を採用することができる。
【0105】
製造方法1によれば、上述の実施形態にかかる吸水性樹脂粒子を得ることができる。得られる吸水性樹脂粒子は、適度な大きさの粒子径、優れた吸水速度を有しながら、低い残存揮発成分量を有する。
【0106】
(製造方法2)
製造方法2は、炭化水素分散媒を含む油性液と水性溶媒及び水溶性エチレン性不飽和単量体を含む水性液とを含有し、水性液が油性液中に分散された懸濁液中で、水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させることを含む重合工程を備える。上記重合は、炭化水素分散媒を含む油性液(O)を連続相とし、水を含む水性液(W)を上記連続相中に分散される液滴状の不連続相として重合するW/O型逆相懸濁重合である。前記水性液は20℃において、20mPa・s以上の粘度を有する。
【0107】
上記懸濁液はHLBが6以上の界面活性剤をさらに含む。
【0108】
界面活性剤の使用量は、製造方法1と同様の範囲内で調整することができる。親水性高分子分散剤を用いない場合、界面活性剤の上記使用量は、通常、水性溶媒、水溶性エチレン性不飽和単量体及び場合により後述の水溶性増粘剤の合計量を水性液の質量とみなして、設定することができる。
【0109】
製造方法2において、水性液は、水を含む水性溶媒と、水溶性エチレン性不飽和単量体と、場合により水溶性増粘剤等の各種添加剤とを含有する。水性溶媒は、主として水から構成され、他の親水性溶媒を含んでいてもよい。
【0110】
製造方法2における水性液の20℃における粘度は20mPa・s以上である。この粘度は、20〜500000mPa・s、25〜500000mPa・s、25〜200000mPa・s、30〜200000mPa・s、30〜100000mPa・s、35〜100000mPa・s、35〜50000mPa・s、40〜50000mPa・s又は40〜10000mPa・sであってもよい。上記粘度が20mPa・s以上であることにより、残存揮発成分量を特に顕著に低減することができる。また、上記粘度が500000mPa・s以下であることにより、水性液の移送がしやすくなる傾向がある。水性液の上記粘度は、ブルックフィールド回転粘度計(LVDV−I)を用いて、20℃、60rpmで測定したときの値である。
【0111】
上記粘度を有する水性液を得ること等を目的として、水性液は水溶性増粘剤を含んでいてもよい。この水溶性増粘剤が25℃において水100gに対して溶解する量は、1〜300g、3〜250g、又は5〜200gであってもよい。水溶性増粘剤としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等のヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース;カルボキシメチルセルロース等のカルボキシアルキルセルロース;カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース等のカルボキシアルキルヒドロキシアルキルセルロース等が挙げられる。水溶性増粘剤は、これらの中でも、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロース及びカルボキシアルキルヒドロキシアルキルセルロースより選ばれる少なくとも1種の化合物であってもよく、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースであってもよい。ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースは、水性液への溶解性が高く、水性液の増粘効果がより発現しやすく、また吸水性樹脂粒子の残存揮発成分量をより低減することができる。水溶性増粘剤は、それぞれ単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0112】
水性液が水溶性増粘剤を含む場合の水溶性増粘剤の量は、特に限定されないが、例えば、水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対し、0.05〜20質量部、0.2〜10質量部、0.4〜5質量部又は0.6〜3質量部であってもよい。水性液中の水溶性増粘剤の量が0.05質量部以上である場合、より高い増粘効果を得ることができる傾向がある。水溶性増粘剤の量が20質量部以下である場合、量に応じた効果を得ることができる傾向があり、経済的である。
【0113】
水性液の20℃における粘度が20mPa・s以上若しくは20〜500000mPa・sであることによる残存揮発成分量の低減メカニズムは明確ではないが、W/O型逆相懸濁における水性液滴の分離及び合一が安定化されるためと考えられる。より詳細には、水溶性増粘剤等を用いて水性液滴に一定以上の粘度を付与することにより、水性液滴同士の衝突時に炭化水素分散媒が水性液滴に内包される頻度が低減され、O/W/O型構造の形成が抑制されるためであると推察される。
【0114】
上記水性液が水溶性増粘剤を含むことによる、残存揮発成分量の低減メカニズムは明確ではないが、水性液の粘度が一定以上となり、W/O型逆相懸濁における水性液滴の分離及び合一を安定化されるためと考えられる。より詳細には、水溶性増粘剤を用いて水性液滴に一定以上の粘度を付与することにより、水性液滴同士の衝突時に炭化水素分散媒が水性液滴に内包される頻度が低減され、O/W/O型構造の形成が抑制されるためであると推察される。
【0115】
水性液中の水溶性エチレン性不飽和単量体の濃度は、水性液(例えば、水性溶媒、水溶性エチレン性不飽和単量体、親水性高分子分散剤、及び水溶性増粘剤の合計)の質量を基準として、製造方法1と同様の範囲で調整することができる。親水性高分子分散剤を用いない場合、水性溶媒、水溶性エチレン性不飽和単量体、及び場合により水溶性増粘剤の合計を水性液の質量とみなして、水溶性エチレン性不飽和単量体の濃度を設定することができる。
【0116】
製造方法2において、水性液に含まれる水性溶媒、水溶性エチレン性不飽和単量体及びラジカル重合開始剤、油性液に含まれる炭化水素分散媒、並びに界面活性剤、その他の各種添加剤は、製造方法1において上述したものと同様の種類の化合物を、同様の範囲の量で用いることができる。また、製造方法2における重合、後架橋、乾燥等は、製造方法1と同様の方法により行うことができる。
【0117】
製造方法2によれば、上述の実施形態にかかる吸水性樹脂粒子を得ることができる。吸水性樹脂粒子は、適度な大きさの粒子径、優れた吸水速度を有しながら、低い残存揮発成分量を有する。
【0118】
(製造方法3)
製造方法3は、下記第一重合工程及び第二重合工程を備える。第一重合工程では、炭化水素分散媒とHLBが6以上の界面活性剤とを含む油性液と、水性溶媒、水溶性エチレン性不飽和単量体及びラジカル重合開始剤を含む第一の水性液とを含有し、液滴状の第一の水性液が油性液中に分散された懸濁液中で、水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させ、含水ゲル状重合体を含む懸濁液を得る。第二重合工程では、含水ゲル状重合体を含む45℃以上の懸濁液と、水性溶媒、水溶性エチレン性不飽和単量体及びラジカル重合開始剤を含む第二の水性液とを混合し、液滴状の第二の水性液を分散させた懸濁液中で、水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させる。第一重合工程及び第二重合工程における重合は、炭化水素分散媒を含む油性液(O)を連続相とし、水を含む水性液(W)を不連続相として重合するW/O型逆相懸濁重合である。
【0119】
第一の水性液は、水を含む水性溶媒と、水溶性エチレン性不飽和単量体と、ラジカル重合開始剤と、場合により各種添加剤とを含有する。水性溶媒は、主として水から構成され、他の親水性溶媒を含んでいてもよい。
【0120】
第一の水性液中の水溶性エチレン性不飽和単量体の濃度は、第一の水性液の質量(水性溶媒、水溶性エチレン性不飽和単量体、親水性高分子分散剤、及び水溶性増粘剤の合計量)を基準として、例えば20質量%〜飽和濃度以下の範囲であってもよい。W/O型逆相懸濁の状態が良好で好適な粒子径の吸水性樹脂粒子を得やすく、得られる吸水性樹脂粒子の膨潤性能が向上する観点から、上記濃度は25〜50質量%、30〜45質量%、又は35〜42質量%であってもよい。
【0121】
製造方法3の第一重合工程において、第一の水性液に含まれる水性溶媒、水溶性エチレン性不飽和単量体及びラジカル重合開始剤、油性液に含まれる炭化水素分散媒、並びに界面活性剤、その他任意の材料は、製造方法1、2において上述したものと同様の種類の化合物を、同様の範囲の量で用いることができる。例えば、第一の水性液は、製造方法1、2における水性液と同様に、親水性高分子分散剤、水溶性増粘剤、連鎖移動剤等を含んでいてもよい。また、第一重合工程における重合は、製造方法1の重合と同様の方法により行われる。
【0122】
第一重合工程において、水溶性エチレン性不飽和単量体を重合することにより、粒子状の含水ゲル状重合体が生成する。製造方法3は、第二重合工程の前に、上記含水ゲル状重合体を架橋する中間架橋工程をさらに備えていてもよい。含水ゲル状重合体の中間架橋は、例えば、含水ゲル状重合体と中間架橋剤とを混合し、加熱することにより行われる。中間架橋剤としては、製造方法1で述べた後架橋剤と同様のものが用いられる。
【0123】
中間架橋剤の混合量は含水ゲル状重合体を生成するために用いられた水溶性エチレン性不飽和単量体100モルに対して、例えば、0.0001〜0.03モル、0.0005〜0.02モル、0.001〜0.015モル又は0.001〜0.01モルであってもよい。中間架橋剤の混合量が0.0001モル以上であると、第二の水性液中の水溶性エチレン性不飽和単量体の、中間架橋工程後の含水ゲル状重合体への吸収が抑制され、吸水速度及び膨潤性能の低下を抑制できる傾向がある。中間架橋剤の混合量が0.03モル以下であると、過度な架橋による吸水性樹脂粒子の吸水性能の低下を抑制できる傾向がある。上記中間架橋反応の反応温度は60℃以上、又は70℃〜第一重合における炭化水素分散媒の沸点温度であってもよい。中間架橋反応の反応時間は、反応温度、中間架橋剤の種類及び混合量等によって異なるので一概には決定することができないが、通常、1〜200分間、5〜100分間、又は10〜60分間であってもよい。
【0124】
続いて、製造方法3の第二重合工程について詳細に説明する。第二重合は複数回行われてもよい。第二重合を複数回行う場合の回数は、2回以上であればよく、残存揮発成分量を低減しつつ、生産性を高める観点から、2又は3回であってもよい。
【0125】
第一重合工程で重合後に得られる含水ゲル状重合体を含む懸濁液は、必要により冷却して、45℃以上に調整される。懸濁液は、50〜100℃、55〜90℃、60〜85℃、又は65〜80℃に調整されてもよい。その後、上記含水ゲル状重合体を含む懸濁液と、水性溶媒、水溶性エチレン性不飽和単量体及びラジカル重合開始剤を含む第二の水性液とを混合し、第二の水性液が液滴状に分散される。第二重合工程において、含水ゲル状重合体を含む懸濁液と第二の水性液の全量とが混合された時点(含水ゲル状重合体を含む懸濁液と第二の水性液の全量とを混合し終えた時点)の懸濁液の温度は、35℃以上、40〜90℃、45〜85℃、又は50〜80℃であってもよい。含水ゲル状重合体を含む懸濁液と第二の水性液とを混合する前後の懸濁液の温度を上記範囲とすることにより、得られる吸水性樹脂粒子の残存揮発成分量を効率よく低減することが可能となる。
【0126】
第二の水性液に含まれる水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液及びラジカル重合開始剤は、例えば、第一の水性液の説明において上述したものと同様の種類の化合物を、同様な範囲の量で用いることができる。第一及び第二の水性液は同じ単量体等から構成されていてもよく、異なる単量体等から構成されていてもよい。
【0127】
第二重合工程において、上記水溶性エチレン性不飽和単量体は、第一の水性液に含まれる水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、例えば、20〜250質量部、40〜200質量部、又は60〜150質量部の割合で第二の水性液に含まれる。第二の水性液中の水溶性エチレン性不飽和単量体の使用量が20質量部以上であることにより、得られる吸水性樹脂粒子の残存揮発成分量がより低減する傾向があり、使用量が250質量部以下であることにより、得られる吸水性樹脂粒子の粒子径が過大となることを抑制できる傾向がある。
【0128】
第二重合工程における第二の水性液中の水溶性エチレン性不飽和単量体の濃度は、生産性向上の観点から、第二の水性液の質量(水性溶媒、水溶性エチレン性不飽和単量体、親水性高分子分散剤及び水溶性増粘剤の合計量)を基準として、第一重合工程における濃度よりも、例えば、1質量%以上、2〜25質量%、3〜20質量%、又は4〜15質量%高くてもよい。
【0129】
第一重合によって重合後に得られた含水ゲル状重合体を含む懸濁液と、水性溶媒、水溶性エチレン性不飽和単量体及びラジカル重合開始剤を含む第二の水性液とを混合した後に行う重合は、第一重合と同様の条件で行うことができる。上述のようにして、水溶性エチレン性不飽和単量体が重合することにより、粒子状の含水ゲル状重合体がさらに生成する。通常、重合工程で得られる重合体(含水ゲル状重合体)は、球状、顆粒状、破砕状、金平糖状及びそれらの凝集物等の様々な形態で得られうる。本実施形態においては、比表面積及び吸水速度が向上する観点から、含水ゲル状重合体は、顆粒状、又は表面に多くの突起を有する顆粒状であってもよい。
【0130】
製造方法3によれば、1つのプロセス中において、2回以上の逆相懸濁重合を実施することにより、吸水性樹脂粒子の生産性を向上することが可能となる。さらに驚くべきことに、得られる吸水性樹脂粒子の残存揮発成分量を大幅に低減させることが可能となる。また、第一重合を行った懸濁液で第二重合を行えば、通常は吸水性樹脂粒子の粒子径や吸水性能への悪影響も懸念されるが、本発明者らは、製造方法3によれば、吸水性能、生産性の向上及び残存揮発成分量の低減の両立が可能であることを見出した。
【0131】
第二重合を実施することによって残存揮発成分量を低減するメカニズムは明確ではないが、第二重合を実施する際に、第一重合で得られた含水ゲル状重合体が存在していることで、W/O型逆相懸濁系における水性液滴の分離及び合一を安定化する、すなわち、水性液滴同士の衝突時に炭化水素分散媒が水性液滴に内包される頻度が低減されて、O/W/O型構造の形成が抑制されるためであると推察される。
【0132】
製造方法3は、上記最終(第二)の重合工程において得られた含水ゲル状重合体を架橋する後架橋工程をさらに備えていてもよい。製造方法3は、含水ゲル状重合体中の水溶性エチレン性不飽和単量体由来の成分(ポリマー固形分)を100質量%としたときの、含水ゲル状重合体中の水の質量百分率(含水ゲル状重合体の水分率)が例えば20〜130質量%となるように調整する1次乾燥工程を後架橋工程の前に備えていてもよい。
【0133】
1次乾燥工程の乾燥方法としては、特に限定されないが、例えば(a)上記含水ゲル状重合体を油性液(炭化水素分散媒)に分散した状態で、外部から加熱することにより共沸蒸留により炭化水素分散媒を還流させて水分を除去する方法、(b)デカンテーションにより含水ゲル状重合体を取り出し、減圧乾燥する方法、(c)フィルターにより含水ゲル状重合体をろ別し、減圧乾燥する方法等が挙げられる。中でも、製造工程における簡便さから、(a)の方法を採用することができる。
【0134】
上記のようにして、含水ゲル状重合体の水分率が例えば20〜130質量%であるように調整された含水ゲル状重合体を架橋させることにより、より優れた吸水性能を有する吸水性樹脂粒子が得られる。
【0135】
含水ゲル状重合体の後架橋は、例えば、含水ゲル状重合体と後架橋剤とを混合し、加熱することにより行われる。後架橋剤は、製造方法1で述べた後架橋剤と同様のものが用いられる。中間架橋剤と後架橋剤は同じであっても異なっていてもよい。
【0136】
後架橋剤の混合量は、含水ゲル状重合体を生成するために用いられた水溶性エチレン性不飽和単量体100モルに対して、例えば、0.0001〜1モル、0.0005〜0.5モル、0.001〜0.1モル、又は0.005〜0.05モルであってもよい。後架橋剤の混合量が0.0001モル以上であると、架橋の効果が発現し、吸水時の吸水性樹脂粒子表面が粘性を帯びることなく、吸水性樹脂粒子の吸水速度をより向上させることができる傾向がある。後架橋剤の混合量が1モル以下であると、架橋が過度とならず、吸水性樹脂粒子の吸水性能をより向上させることができる傾向がある。
【0137】
含水ゲル状重合体と後架橋剤との混合は、含水ゲル状重合体の水分率を特定の範囲に調整(1次乾燥工程)した後に行うことができる。含水ゲル状重合体と後架橋剤との混合時における含水ゲル状重合体の水分率を制御することにより、より好適に後架橋反応を進行させることができる。
【0138】
後架橋工程に供される含水ゲル状重合体の水分率は、例えば、20〜130質量%、25〜110質量%、30〜90質量%、35〜80質量%、又は40〜70質量%であってもよい。含水ゲル状重合体の水分率をこれらの範囲内とすることで、1次乾燥工程を短くして製造効率を高めつつ、後架橋反応により吸水性能をさらに向上させることが可能となる。
【0139】
含水ゲル状重合体の水分率は、重合前の第一及び第二の水性液に含まれる水分量から、1次乾燥工程により外部に抽出された水分量を差し引いた量(1次乾燥ゲルの水分量)に、中間架橋剤や後架橋剤を混合する際に必要に応じて用いられる水分量を合計した値を含水ゲル状重合体の水分量として算出した後、含水ゲル状重合体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体由来の成分の質量に対する上記含水ゲル状重合体の水分量の割合を算出することによって求めることができる。
【0140】
含水ゲル状重合体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体由来の成分の質量は、重合反応に用いた水溶性エチレン性不飽和単量体の総質量から、理論上のポリマー固形分として、計算により求められる。
【0141】
含水ゲル状重合体と後架橋剤との混合の際には、後架橋剤を均一に分散させるため、後架橋剤を溶解する溶媒として、水が加えられてもよく、親水性溶媒が加えられてもよい。親水性溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール及びイソプロピルアルコール等の低級アルコール類、アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン類、ジオキサン及びテトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、並びにジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いられてもよく、必要に応じて、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0142】
1次乾燥ゲルの水分量と加えられる溶媒量との質量比率は、乾燥工程を合理的に短縮してプロセスの経済性を高めつつ、後架橋剤を均一に分散させる観点から、例えば、100:0〜60:40、99:1〜70:30、98:2〜80:20、又は98:2〜90:10であってもよい。
【0143】
後架橋反応の反応温度は、例えば、60℃以上、70〜200℃、又は80〜150℃であってもよい。反応温度が60℃以上であることにより、架橋反応が促進され、反応に過大な時間を要しない傾向があり、反応温度が200℃以下であることにより、得られる吸水性樹脂粒子の劣化、吸水性能の低下を抑制できる傾向がある。
【0144】
後架橋反応の反応時間は、反応温度、後架橋剤の種類及び量等によって異なるので一概には決定することができないが、通常、1〜300分間、又は5〜200分間であってもよい。
【0145】
製造方法3は、上記後架橋反応を行った後、熱等のエネルギーを外部から加えることにより、水、炭化水素分散媒等を蒸留により除去する、2次乾燥工程を備えていてもよい。このような2次乾燥を行うことで、更に優れた流動性を有する吸水性樹脂粒子が得られる傾向がある。
【0146】
2次乾燥の方法としては、特に限定されず、例えば、(a)炭化水素分散媒に分散した後架橋反応後の樹脂粒子の混合物を、蒸留することにより水分と炭化水素分散媒を同時に除去する方法、(b)デカンテーションにより樹脂粒子を取り出し、減圧乾燥する方法、(c)フィルターにより樹脂粒子をろ別し、減圧乾燥する方法等が挙げられる。これらの中でも、製造工程における簡便さから、(a)の方法を採用することができる。
【0147】
製造方法3によれば、上述の実施形態にかかる吸水性樹脂粒子を得ることができる。吸水性樹脂粒子は、適度な大きさの粒子径、優れた吸水速度を有しながら、低い残存揮発成分量を有する。
【0148】
以上のようにして得られる吸水性樹脂粒子を用いることにより、以下に記載する吸収体、吸収性物品及び止水材等を得ることができる。
【0149】
本実施形態にかかる吸収体は、上記吸水性樹脂粒子と親水性繊維とを含む。親水性繊維としては、綿状パルプ、ケミカルパルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維等が挙げられる。吸収体は、補強剤として、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の合成樹脂からなる合成繊維をさらに含んでいてもよい。吸収体の構造としては、例えば、吸水性樹脂粒子と親水性繊維を均一にブレンドしたミキシング構造、親水性繊維の複数の層の間に吸水性樹脂粒子を保持したサンドイッチ構造、吸水性樹脂粒子と親水性繊維とをティッシュペーパー又は不織布等の透水性シートで包んだ構造等が挙げられる。ただし、本実施形態の吸収体はかかる例示のみに限定されるものではない。
【0150】
吸収体における吸水性樹脂粒子の使用量は、吸収体の質量を基準として、例えば、5〜80質量%、10〜70質量%、又は15〜60質量%であってもよい。吸水性樹脂粒子の使用量が5質量%以上であることにより、吸収体の吸収容量が大きくなり、液モレ及び逆戻りを抑制できる傾向がある。吸水性樹脂粒子の使用量が80質量%以下であることにより、吸収体のコストを低く抑えることができ、吸収体の感触が硬くなることを抑制できる傾向がある。
【0151】
図1は、吸収性物品の一実施形態を示す断面図である。本実施形態にかかる吸収性物品30は、液体透過性シート10、液体不透過性シート20及び吸収体15を備える。吸収体15は、親水性繊維によって形成された親水性繊維層13と、親水性繊維層13内に配置された吸水性樹脂粒子5とを含む。対向して配置された液体透過性シート10及び液体不透過性シート20の間に、吸収体15が配置されている。吸収体15の厚みは、例えば、0.1〜10mmであってもよい。
【0152】
吸収性物品としては、例えば、紙おむつ、失禁パッド、生理用ナプキン、ペットシート、食品用ドリップシート等が挙げられる。これらの中でも、本実施形態にかかる吸水性樹脂粒子は子供用ビッグサイズのおむつ、子供用おねしょパンツ、大人用おむつ、失禁パッド、多い日用ナプキンのような特定の衛生材料、ペットシート、簡易トイレ等に使用できる。上記吸収性物品を身体に接触する製品に用いる場合は、液体透過性シートは、身体と接触する側に配され、液体不透過性シートは、身体と接触する側の反対側に配される。
【0153】
上記液体透過性シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等の合成樹脂からなる不織布、多孔質の合成樹脂シート等が挙げられる。上記液体不透過性シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂からなるシート、これらの合成樹脂と不織布との複合材料からなるシート等が挙げられる。液体透過性シート及び液体不透過性シートの大きさは、吸収性物品等の用途によって異なるので一概に決定することができない。したがって、かかる大きさは、吸収性物品の用途等に応じて適宜調整される。
【0154】
図2は、止水材の一実施形態を示す断面図である。本実施形態にかかる止水材40は、第一の液体透過性シート11、第二の液体透過性シート12及び吸水性樹脂粒子5を備える。対向して配置された第一の液体透過性シート11と第二の液体透過性シート12との間に、吸水性樹脂粒子5が配置されている。吸水性樹脂粒子5は、対向して配置された第一の液体透過性シート11と第二の液体透過性シート12との間に挟持されていてもよい。止水材は、液体透過性シートを3枚以上備えていてもよい。この場合、吸水性樹脂粒子は、隣り合って配置された少なくとも1組の液体透過性樹脂シートの間に配置されていればよい。吸水性樹脂粒子5は、止水材40の厚み方向から見たときに、30〜500g/m
2の割合で配置、又は100〜300g/m
2の割合で配置されていてもよい。第一の液体透過性シート11及び第二の液体透過性シート12の厚みは、例えば、0.05〜6mmであってもよい。
【0155】
本実施形態にかかる止水材は、例えば、対向して配置された第一の液体透過性シートと第二の液体透過性シートとの間に、複数の吸水性樹脂粒子を配置することにより得られる。具体的には、粘着剤を用いて液体透過性シートに吸水性樹脂粒子を固定して、吸水性樹脂粒子をシート化することができる。本実施形態にかかる止水材は、例えば、電力ケーブル又は光通信ケーブルの中心部を巻いて保護するために用いられる。止水材は、外部素材が劣化し、発生した亀裂から漏れこんだ水分を吸収するとともに、膨潤してケーブル内に圧力を発生させることで、ケーブル中心部に水が到達するのを防止することができる。
【0156】
止水材の液体透過性シートとしては、上記吸収性物品の場合と同様のものが用いられる。上記粘着剤としては、例えば、天然ゴム系、ブチルゴム系、ポリイソプレン等のゴム系接着剤;スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)等のスチレン系エラストマー接着剤;エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)接着剤;エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)等のエチレン−アクリル酸誘導体共重合体系接着剤;エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)接着剤;共重合ナイロン等のポリアミド系接着剤;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系接着剤;ポリエチレンテレフタレート(PET)、共重合ポリエステル等のポリエステル系接着剤等、及びアクリル系接着剤が用いられる。
【実施例】
【0157】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0158】
<評価方法>
(1)残存揮発成分量
本発明における残存揮発成分量は、吸水性樹脂粒子の合成時に用いられ、粒子の内部に取り込まれた炭化水素分散媒の量から算出される。合成時に内部に取り込まれた炭化水素分散媒は、実際には、乾燥状態であっても樹脂内部に強固に遮蔽されているため、外部に放出されることはほとんどない。樹脂粒子が吸水してゲルを形成した際、残存揮発成分量の一部が放出される。
吸水性樹脂粒子に残存する炭化水素分散媒に由来する残存揮発成分の量を、以下の要領で測定した。すなわち、ジメチルホルムアミド(DMF)及び25質量%リン酸水溶液と吸水性樹脂粒子との混合液を110℃で加熱したときに揮発した気体中の炭化水素分散媒の量を測定し、測定値を吸水性樹脂粒子1gあたりに換算した値を、残存揮発成分量とした。具体的な手順を以下に示す。
【0159】
(a)検量線の作成
実施例及び比較例で使用した炭化水素分散媒、ジメチルホルムアミド(DMF)、25質量%リン酸水溶液を、栓のできるガラス容器内に用意した。これらは測定中の揮発による誤差を抑えるため、必要に応じて冷却して用いた。
【0160】
まず、内容積200mLのメスフラスコに上記炭化水素分散媒を0.15g精秤したのち、合計200mLとなるようにDMFを加え、これを標準液1とした。次いで、内容積20mLのメスフラスコに標準液1を10mLホールピペットで精密に量りとり、合計20mLとなるようにDMFを加え、標準液1を半分に希釈し、これを標準液2とした。
【0161】
同様に、標準液2を半分に希釈することで標準液3を得て、標準液3を同様に半分に希釈することで標準液4を得て、標準液4を同様に半分に希釈することで標準液5を得た。
【0162】
内容積20mLのバイアル瓶(SMI−Lab Ltd.社製、VZH−20CR−100)に標準液1を4mL加え、さらに25質量%リン酸水溶液5mLを加えた。セプタムゴムとアルミキャップを用いてバイアル瓶を速やかに密栓し、バイアル瓶を1分間振とう攪拌し混合した。標準液2〜5に対しても同様の操作を行い、検量線溶液を調製した。
【0163】
上記バイアル瓶を振とう撹拌しながら、110℃で2時間加温した後、1mLの気相部をガスクロマトグラフに注入し、各検量線溶液に対するクロマトグラムを得た。検量線溶液を調製する際に精密に秤量した炭化水素分散媒の質量と、クロマトグラムのピーク面積とを用いて、検量線を作成した。炭化水素分散媒由来のピークが複数認められた場合、それらピーク面積の総和を用いて検量線を作成した。
【0164】
(b)残存揮発成分量の測定
DMFと25質量%リン酸水溶液を用意した。内容積20mLのバイアル瓶に、実施例及び比較例で得られた吸水性樹脂粒子0.10gをそれぞれ精秤した。このバイアル瓶に、DMFを4mL、25質量%リン酸水溶液5mLを加えた。セプタムゴムとアルミキャップを用いてバイアル瓶を速やかに密栓し、バイアル瓶を1分間振とう混合した。上記バイアル瓶を振とう混合しながら、110℃で2時間加温した後、1mLの気相部をガスクロマトグラフに注入し、クロマトグラムを得た。
【0165】
得られたクロマトグラムのピーク面積と先に作成した検量線から、吸水性樹脂粒子(0.10gの精秤値)に含まれる炭化水素分散媒量を算出した。算出された値を吸水性樹脂粒子1gあたりに換算した値を残存揮発成分量(質量%)とした。
【0166】
以下は、ガスクロマトグラフの条件である。
装置:GC−2014(島津製作所製)
ヘッドスペースオートサンプラ:HT200H(Hamilton Company製)
充填剤:Squalane 25% Shimalite(NAW)(101)
80−100mesh
カラム:3.2mmφ×2.1m
カラム温度:80℃
注入口温度:180℃
検出器温度:180℃
検出器:FID
キャリアガス:N
2
バイアル瓶加熱温度:110℃
シリンジ設定温度:130℃
【0167】
(2)臭気官能試験(6段階臭気強度表示法)
吸水性樹脂粒子の膨潤時の炭化水素分散媒由来の臭気を次の方法にて評価した。内容積140mLの蓋付ガラス容器(マヨネーズ瓶)に、25℃の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(以下、生理食塩水)20.0gを加え、長さ3cmの回転子を入れて攪拌した。吸水性樹脂粒子2.0gを上記ガラス容器に添加し密閉した。当該ガラス容器中の炭化水素分散媒由来の臭気を、表1に示す評価基準に従って、5名の分析者が判定し、その平均値を臭気の評価結果とした。
【0168】
【表1】
【0169】
(3)生理食塩水の吸水量(g/g)
生理食塩水吸収量は、以下の方法により評価した。生理食塩水500gと吸水性樹脂粒子2.0gとを混合し、室温で60分間攪拌した。質量Wa(g)を有する、目開き75μmのJIS Z 8801−1標準篩を用いて、上記混合液をろ過した。篩を水平に対して約30度の傾斜角となるように傾けた状態で、ろ物を篩上で30分間放置した。吸水した吸水性樹脂粒子と篩の質量の合計Wb(g)を測定し、以下の式により、吸水量を求めた。
生理食塩水の吸水量=(Wb−Wa)/2.0
【0170】
(4)生理食塩水の吸水速度(秒)
吸水速度の測定は、25℃±1℃に調節された室内で行われた。恒温水槽にて25±0.2℃の温度に調整した生理食塩水50±0.1gをマグネチックスターラーバー(8mmφ×30mmのリング無し)で攪拌して、回転数600rpmで渦を発生させた。吸水性樹脂粒子2.0±0.002gを、上記生理食塩水中に一度に添加し、吸水性樹脂粒子の添加後から液面の渦が収束する時点までの時間(秒)を測定し、当該時間を吸水性樹脂粒子の吸水速度とした。
【0171】
(5)中位粒子径
吸水性樹脂粒子50gに、滑剤として非晶質シリカ(デグサジャパン株式会社製、商品名:Sipernat 200)0.25gを混合した。滑剤と混合された吸水性樹脂粒子を、JIS Z 8801−1標準篩の目開き250μmの篩に通過させた。全量に対して篩上に残る量が50質量%以上の場合には、下記(A)の篩の組み合わせを、50質量%未満の場合には、下記(B)の篩の組み合わせを用いて中位粒子径を測定した。
【0172】
(A)JIS標準篩を上から、目開き850μmの篩、目開き600μmの篩、目開き500μmの篩、目開き425μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き150μmの篩及び受け皿の順に組み合わせた。
【0173】
(B)JIS標準篩を上から、目開き425μmの篩、目開き250μmの篩、目開き180μmの篩、目開き150μmの篩、目開き106μmの篩、目開き75μmの篩、目開き45μmの篩及び受け皿の順に組み合わせた。
【0174】
最上段に位置する篩に、上記吸水性樹脂粒子を入れ、ロータップ式振とう器を用いて20分間振とうさせて分級した。
分級後、各篩上に残った吸水性樹脂粒子の質量を全量に対する質量百分率として計算し、粒子径の大きい方から順に積算することにより、篩の目開きと篩上に残った吸水性樹脂粒子の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒子径とした。
【0175】
(6)比表面積(m
2/g)
比表面積の測定に用いられる吸水性樹脂粒子を、42メッシュ(目開き355μm)のJIS Z 8801−1標準篩を通過させ、80メッシュ(目開き180μm)の標準篩上に保持される粒子径に調節した。次に、この試料を、真空乾燥器によって、約1Paの減圧下において100℃の温度で16時間かけて乾燥した。その後、高精度全自動ガス吸着装置(商品名:BELSORP36、日本ベル株式会社製)により、吸着ガスとしてクリプトンガスを用いて−196℃における吸着等温線を測定し、多点BETプロットから比表面積を求めた。
【0176】
(7)ハンドリング性
吸水性樹脂粒子の粉体ハンドリング性は、5名の分析者により、以下基準に従って目視により評価された。3名以上の分析者が選択した評価を、その吸水性樹脂粒子の粉体ハンドリング性とした。
良好:粉立ちが少ない。流動性が適度にあり、計量や清掃等の操作が容易。
不良:粉立ちが多い。流動性が低いので、計量や清掃等の操作が難しい。
【0177】
(8)膨潤性能(mm)
凹型円形カップ(高さ30mm、内径80.5mm)の底部の全面に吸水性樹脂粒子0.2gを略均等に広げ、凸型円形シリンダー(外径80mm、吸水性樹脂粒子との接触面に直径2mmの貫通孔7が均等に60個配設されている)により吸水性樹脂粒子上に90gの荷重が加えられた状態で、凹型円形カップに20℃の水130gを加えたときの1分後及び10分後における、凹型円形カップ底部の面に対して垂直方向の凸型円形シリンダーの変位(移動距離)をそれぞれ、初期膨潤性能(1分値)及び平衡膨潤性能(10分値)とした。
【0178】
膨潤性能は、膨潤性能を測定するための装置を用いて以下のように測定される。膨潤性能を測定するための装置の概略図を
図3に示す。
図3に示した膨潤性能を測定するための装置Xは、移動距離測定装置1と凹型円形カップ2、プラスチック製の凸型円形シリンダー3及び不織布4(目付量12g/m
2の液体透過性不織布)から構成される。膨潤性能測定装置Xは、レーザー光6により距離の変位を0.01mm単位で測定することが可能なセンサー(移動距離測定装置1の下部)を有する。凹型円形カップ2内に、所定量の吸水性樹脂粒子5が均一に散布することができるようになっている。凸型円形シリンダー3は、吸水性樹脂粒子5に対して90gの荷重を均一に加えることができるようになっている。
【0179】
凹型円形カップ2に試料(吸水性樹脂粒子5)0.2gを均一に散布し、その上に不織布4を敷いた。凸型円形シリンダー3を不織布4の上に静かにのせ、移動距離測定装置1のセンサーのレーザー光6が凸型円形シリンダー3の凸部の中央部にくるように設置した。あらかじめ20℃に調節したイオン交換水130gを凹型円形カップ2内に投入し、吸水性樹脂粒子5が膨潤して凸型円形シリンダー3を押し上げた距離を測定した。吸水開始から1分後及び10分後における凸型円形シリンダー3の移動距離を初期膨潤性能(1分値)及び平衡膨潤性能(10分値)とした。そして、平衡膨潤性能(10分値)に対する初期膨潤性能(1分値)の比率(初期膨潤比率)を算出した。
【0180】
(9)水性液の粘度
水性液の粘度は、スピンドル回転数60rpm、20℃の条件で、ブルックフィールド回転粘度計(LVDV−I)を用いて測定され、2回の測定値の平均値として算出される。具体的には、内容積170mLの円筒形粘度測定用ガラス容器に水性液を150mL加え、20℃に調整した恒温水槽に30分間以上浸漬し、水性液の温度を20℃とした。ブルックフィールド回転粘度計(LVDV−I)を用いて、スピンドル回転数60rpmで回転開始から5分後の目盛り値を読み取ることにより、水性液の粘度を2回測定した。測定結果の平均値にスピンドル種類に応じた係数を乗算することで、水性液の20℃における粘度を求めた。スピンドルは測定する水性液の粘度によって適宜選択した。
【0181】
<検討1>
[実施例1]
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼(フッ素樹脂を表面にコートしたもの)を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコ(以下、丸底フラスコという)を準備した。丸底フラスコに炭化水素分散媒としてn−ヘプタン660mLを加え、界面活性剤としてソルビタンモノラウレート(日油社製、商品名ノニオンLP−20R;HLB8.6)1.10gを添加し、45℃まで昇温して界面活性剤をn−ヘプタンに溶解した。
【0182】
一方、内容積300mLのビーカーに、水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液92g(1.03モル)を加えた。アクリル酸水溶液を氷水冷しながら、ビーカーに20.9質量%水酸化ナトリウム水溶液147.7gを滴下して、アクリル酸のうち75モル%の中和を行った。その後、ビーカーに親水性高分子分散剤としてポリビニルアルコール(日本合成化学社製、商品名GH−20;質量平均分子量約1300000、けん化度88)1.10g、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.10g(0.00037モル)を加えて溶解し、水性液を調製した。この水性液のポリマー固形分量は91g、水分量は148.6gであった。
【0183】
撹拌機の回転数を700rpmとして撹拌しながら、上記水性液の全量を上記丸底フラスコに添加した。系内を窒素で30分間置換した後、丸底フラスコを70℃の水浴に浸漬して系内を昇温し、重合反応を1時間行うことにより、含水ゲル状重合体を得た。
【0184】
次いで、120℃の油浴を使用して系内を昇温し、水とn−ヘプタンを共沸させることにより、n−ヘプタンを還流しながら、111.7gの水を系外へ抜き出した(1次乾燥工程)。その後、丸底フラスコに後架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.14g(0.00048モル)を添加し、後架橋剤を含む混合物を得た。この時の丸底フラスコ内の水分量は40.9gであり、1次乾燥後(後架橋時)の含水ゲル状重合体の水分率は、45質量%であった。後架橋剤を含む混合物を調製後、約80℃で2時間保持した(後架橋工程)。
【0185】
その後、n−へプタンを120℃にて蒸発させて乾燥させること(2次乾燥工程)によって、顆粒状の吸水性樹脂粒子を89.2g得た。
【0186】
[実施例2]
実施例1と同様の構成の丸底フラスコに炭化水素分散媒としてn−ヘプタン660mLを加え、界面活性剤としてソルビタンモノラウレート(日油社製、商品名ノニオンLP−20R;HLB8.6)1.10gを添加し、45℃まで昇温して界面活性剤をn−ヘプタンに溶解した。
【0187】
一方、内容積300mLのビーカーに、水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液92g(1.03モル)を加えた。アクリル酸水溶液を氷水冷しながら、ビーカーに20.9質量%水酸化ナトリウム水溶液147.7gを滴下して、アクリル酸のうち75モル%の中和を行った。その後、ビーカーに水溶性増粘剤としてヒドロキシエチルセルロース(住友精化社製、商品名AW−15F)0.46g、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.10g(0.00037モル)を加えて溶解し、水性液を調製した。この水性液の20℃における粘度は40mPa・sであり、ポリマー固形分量は91g、水分量は148.6gであった。
【0188】
撹拌機の回転数を700rpmとして撹拌しながら、上記水性液の全量を上記丸底フラスコに添加した。系内を窒素で30分間置換した後、丸底フラスコを70℃の水浴に浸漬して系内を昇温し、重合反応を1時間30分行うことにより、含水ゲル状重合体を得た。
【0189】
次いで、120℃の油浴を使用して系内を昇温し、水とn−ヘプタンを共沸させることにより、n−ヘプタンを還流しながら、111.7gの水を系外へ抜き出した(1次乾燥工程)。その後、丸底フラスコに後架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.14g(0.00048モル)を添加し、後架橋剤を含む混合物を得た。この時の丸底フラスコ内の水分量は40.9gであり、1次乾燥後(後架橋時)の含水ゲル状重合体の水分率は、45質量%であった。後架橋剤を含む混合物を調製後、約80℃で2時間保持した(後架橋工程)。
【0190】
その後、n−へプタンを120℃にて蒸発させて乾燥させること(2次乾燥工程)によって、顆粒状の吸水性樹脂粒子を87.1g得た。
【0191】
[実施例3]
実施例1と同様の構成の丸底フラスコに炭化水素分散媒としてn−ヘプタン580mLを加え、界面活性剤としてソルビタンモノラウレート(日油社製、商品名ノニオンLP−20R;HLB8.6)0.97gを添加し、45℃まで昇温して界面活性剤をn−ヘプタンに溶解した。
【0192】
一方、内容積300mLのビーカーに、水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液81.0g(0.91モル)を加えた。アクリル酸水溶液を氷水冷しながら、ビーカーに20.9質量%水酸化ナトリウム水溶液130.0gを滴下して、アクリル酸のうち75モル%の中和を行った。その後、ビーカーに水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.09g(0.00033モル)を加えて溶解し、第一の水性液を調製した。この第一の水性液のポリマー固形分量は80.1g、水分量は130.8gであった。
【0193】
撹拌機の回転数を700rpmとして撹拌しながら、上記第一の水性液の全量を上記丸底フラスコに添加した。系内を窒素で30分間置換した後、丸底フラスコを70℃の水浴に浸漬して系内を昇温し、重合反応を1時間行うことにより、含水ゲル状重合体を得た(第一重合工程)。重合後、中間架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液0.36g(0.000042モル)を加えて、75℃で30分間架橋反応を行った(中間架橋工程)。
【0194】
次に、上記第一重合工程とは別に、300mLビーカーに、水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液81.0g(0.91モル)を加えた。アクリル酸水溶液を氷水冷しながら、ビーカーに26.9質量%水酸化ナトリウム水溶液101.0gを滴下して、アクリル酸のうち75モル%の中和を行った。その後、ビーカーに水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.09g(0.00033モル)を加えて溶解し、第二の水性液を調製した。この第二の水性液のポリマー固形分量は80.1g、水分量は102.0gであった。
【0195】
中間架橋剤による架橋反応の終了後の懸濁液を、撹拌機の回転数を1000rpmとして攪拌しながら70℃に冷却した。冷却した丸底フラスコ内に上記第二の水性液の全量を滴下した後、系内温度を滴下が終了したときの温度(55℃)に保ちながら、系内を窒素ガスで30分間置換した。丸底フラスコを70℃の水浴に浸漬して系内を昇温し、その後重合を1時間行い(第二重合工程)、含水ゲル状重合体を得た。
【0196】
丸底フラスコを120℃の油浴に浸漬して、第二重合工程を経て得られた含水ゲル状重合体を含有する懸濁液を昇温し、水とn−ヘプタンとを共沸させることにより、n−ヘプタンを還流しながら、175.6gの水を系外へ抜き出した(1次乾燥工程)。その後、丸底フラスコに後架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液7.29g(0.00084モル)を添加し、後架橋剤を含む混合物を得た。この時の丸底フラスコ内の水分量は64.7gであった。1次乾燥後(後架橋時)の含水ゲル状重合体の水分率は、40質量%であった。後架橋剤を含む混合物を調製後、約80℃で2時間保持した(後架橋工程)。
【0197】
その後、n−へプタンを120℃にて蒸発させて乾燥すること(2次乾燥工程)によって、顆粒状の吸水性樹脂粒子を161.3g得た。
【0198】
[実施例4]
第一重合工程の水性液中にさらにポリビニルアルコール(日本合成化学社製、商品名GH−20;質量平均分子量約1300000、けん化度88)0.81gを添加した以外は、実施例3と同様の操作を行い、顆粒状の吸水性樹脂粒子を160.8g得た。1次乾燥後(後架橋時)の含水ゲル状重合体の水分率は、40質量%であった。
【0199】
[比較例1](特許文献2:特開昭56−131608号公報の実施例6に準拠)
攪拌機、還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管を装着した500mLの四つ口丸底フラスコに炭化水素分散媒としてシクロヘキサン213gを加え、界面活性剤としてソルビタンモノラウレート(日油社製、ノニオンLP−20R;HLB8.6)1.9gを添加した。攪拌下室温にて界面活性剤をシクロヘキサンに溶解させたのち、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を除去した。
【0200】
一方、内容積200mLの三角フラスコに、水溶性エチレン性不飽和単量体として80質量%のアクリル酸水溶液48.8g(0.542モル)を加えた。外部よりアクリル酸水溶液を氷水冷しながら、三角フラスコに25.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液67.0gを滴下して、アクリル酸のうち80モル%の中和を行った。その後、三角フラスコにラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.13g(0.00048モル)を加えて溶解し、水性液を調製した。この水性液のポリマー固形分量は48.6g、水分量は67.1gであった。
【0201】
撹拌機の回転数を700rpmとして撹拌しながら、上記水性液の全量を上記四つ口丸底フラスコに添加した。系内を窒素で充分に置換した後、四つ口丸底フラスコを55〜60℃の水浴に浸漬して系内を昇温し、3時間重合反応を行った。重合後、後架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.1g(0.00057モル)を加えた後、水及びシクロヘキサンを蒸留で除去、乾燥することによって微顆粒状の吸水性樹脂粒子48.3gを得た。
【0202】
[比較例2](特許文献3:特開平9−151224号公報の実施例1に準拠)
実施例1と同様の構成の丸底フラスコに、炭化水素分散媒としてn−ヘプタン580mLを加え、界面活性剤としてソルビタンモノラウレート(日油株式会社製、商品名ノニオンLP−20R;HLB8.6)0.97gを添加し、50℃まで昇温して界面活性剤をn−ヘプタンに溶解した。その後丸底フラスコの内温を30℃まで冷却した。
【0203】
一方、内容積500mLの三角フラスコに、水溶性エチレン性不飽和単量体として80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)を加えた。アクリル酸水溶液を氷水冷しながら、三角フラスコに20.1質量%の水酸化ナトリウム水溶液152.6gを滴下して、アクリル酸のうち75モル%の中和を行った。その後、三角フラスコにラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.11g(0.00041モル)を加えて溶解し、水性液を調製した。この水性液に吸水速度が42秒の吸水性樹脂粒子(住友精化株式会社製のアクアキープSA60S)18.4gを添加した。
【0204】
次に、三角フラスコ中の上記水性液の全量を上記四つ口フラスコに加えて分散させ、系内を窒素で置換した後、四つ口フラスコを70℃の水浴に浸漬して系内を昇温し、3時間重合反応を行った。重合後、水及びn−ヘプタンを蒸留により除去して乾燥し、吸水性樹脂粒子115.7gを得た。
【0205】
[比較例3]
内容積500mLの三角フラスコに、水溶性エチレン性不飽和単量体として80質量%アクリル酸水溶液92.0g(1.02モル)を加えた。アクリル酸水溶液を冷却し、攪拌しながら、三角フラスコに30質量%水酸化ナトリウム水溶液102.2gを滴下して、アクリル酸のうち75モル%の中和を行った。その後、三角フラスコにラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.11g(0.00041モル)、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル8.3mg(0.048ミリモル)、イオン交換水43.6gを加え、第一の水性液を調製した。
【0206】
翼径50mmの2段傾斜パドル翼を備える攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた内容積2Lの五ツ口円筒形丸底フラスコ(以下、丸底フラスコという)に、炭化水素分散媒としてn−ヘプタン334gを加え、61℃まで加温した。そこに、500rpmの攪拌速度下で上記第一の水性液の全量をロートを用いて一括添加し、内温40℃にて10分間攪拌し水性液を分散させた。
【0207】
次に、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、商品名:S−370;HLB3.0)0.92gを、炭化水素分散媒としてのn−ヘプタン8.28gと混合し、加温溶解させて油性液を得た。上記丸底フラスコ内にこの油性液の全量をロートを用いて添加し、第一の水性液をさらに分散させ懸濁液を得た。
【0208】
次に丸底フラスコの内温を40℃に保持しながら系内を充分に窒素置換した後、70℃の水浴を用いて1時間加温し、重合反応を行なった(第一重合工程)。第一重合工程終了後、撹拌速度を1000rpmとし、丸底フラスコの内温を21℃付近まで冷却した。
【0209】
別の内容積500mLの三角フラスコに、水溶性エチレン性不飽和単量体として80質量%アクリル酸128.8g(1.43モル)を加えた。アクリル酸水溶液を外部から冷却し、攪拌しながら、30質量%水酸化ナトリウム水溶液142.9gを滴下して、アクリル酸75モル%の中和を行った。その後、三角フラスコにラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.15g(0.00055モル)、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル11.6mg(0.067ミリモル)、蒸留水16.7gを加えて、第二の水性液を調製した。
【0210】
次に、冷却した第一重合工程後の懸濁液に上記第二の水性液の全量を滴下ロートにて添加し、系内を充分窒素置換した後、70℃の水浴に上記丸底フラスコを浸漬して系内を1時間加温し、重合反応を行った(第二重合工程)。
【0211】
第二重合工程の重合反応後、上記丸底フラスコを120℃の油浴に浸漬して懸濁液を加熱し、共沸蒸留により、n−ヘプタンを還流しながら260gの水を系外に除去した。これによりn−ヘプタンに分散された脱水重合体を得た。得られたヘプタン分散脱水重合体に、後架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液8.2g(0.00094モル)を添加し、約80℃で2時間、後架橋反応を行なった。
【0212】
その後、上記丸底フラスコを120℃の油浴に浸漬して懸濁液を加熱し、n−ヘプタンと水を蒸留により系外へ除去後、窒素気流下で乾燥し、球状粒子が凝集した形状の吸水性樹脂粒子234gを得た。
【0213】
[比較例4](特許文献1:国際公開第97/3114号の比較例3に準拠)
撹拌機を備えた500mL円筒型セパラブルフラスコに10質量%濃度の2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩水溶液288gを加え、液温を20℃に保ち、1200rpmで撹拌しながら、37質量%アクリル酸ナトリウム水溶液53.6gを添加した。数秒後に混合溶液が白濁し、10μm程度の白色微粒子状固体が上記混合溶液から生成した。この白濁液を濾過することにより白色微粒子状固体を単離し、水洗して精製した。
【0214】
次いで、重合に用いる単量体として75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウム塩の単量体水溶液711g(単量体濃度38%)、架橋剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート溶液0.45g(0.05モル%)、発泡剤として上記白色微粒子状固体として得られた2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二アクリル酸塩錯体0.52gを内容積2LのSUS容器に加えて、均一分散させ、液高さを約5cmとした。SUS容器内を窒素置換後、ラジカル重合開始剤として10質量%過硫酸アンモニウム水溶液3.1gと1質量%L−アスコルビン酸水溶液1.56gを添加し、撹拌して均一分散させたところ、1分後に重合が開始した。
【0215】
得られた白色の含水ゲル状重合体には、微細な気泡が多数均一に含まれていた。上記含水ゲル重合体を約10mmに裁断して300μmの金網上に広げ、150℃で60分間熱風乾燥した。乾燥物を金属製ブレンダーを用いて粉砕し、さらに850μmメッシュで分級して吸水性樹脂前駆体を得た。
【0216】
攪拌翼を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコ(以下、丸底フラスコという)に吸水性樹脂前駆体30gを量りとり、樹脂を撹拌しながら、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.045g、水1.2g、エチルアルコール0.3gを混合した架橋剤水溶液を噴霧した。得られた混合物を、さらに油浴にて180℃で30分間加熱処理することにより、吸水性樹脂粒子を得た。
【0217】
<評価>
実施例1〜4及び比較例1〜4で得られた吸水性樹脂粒子について、生理食塩水の吸水量、生理食塩水の吸収速度、中位粒子径、残存揮発成分量、臭気及び比表面積の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0218】
【表2】
【0219】
表2に示すように、実施例1〜4で得られた吸水性樹脂粒子は、いずれも粒子径が適度でありながらも吸水速度が速く、かつ残存揮発成分量が少なく、吸水後の臭気が少ないことがわかる。また、実施例1〜4で得られた吸水性樹脂粒子は、いずれもハンドリング性が良好であった。一方、比較例1〜4で得られた吸水性樹脂粒子は、これらの性能を充分に両立できていないことがわかる。重合中に炭化水素分散媒を取り込むことがない水溶液重合の樹脂粒子(比較例4)にも一定以上の臭気が感じられるのは、残存する表面架橋剤とその分散に用いる有機溶剤の残存物によるものと推察される。
【0220】
<検討2>
[実施例5]
実施例1と同様の構成の丸底フラスコに炭化水素分散媒としてn−ヘプタン530mLを加え、界面活性剤としてのソルビタンモノラウレート(日油社製、商品名ノニオンLP−20R;HLB8.6)1.65gを添加し、45℃まで昇温して界面活性剤を溶解した。
【0221】
一方、内容積300mLビーカーに、水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液92g(1.03モル)を加えた。アクリル酸水溶液を氷水冷しながら、ビーカーに20.9質量%水酸化ナトリウム水溶液147.6gを滴下して、アクリル酸のうち75モル%の中和を行った。その後、ビーカーにラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.10g(0.0037モル)を加えて溶解し、第一の水性液を調製した。この第一の水性液のポリマー固形分量は91.0g、水分量は148.5gであった。
【0222】
撹拌機の回転数を500rpmとして撹拌しながら、第一の水性液の全量を上記丸底フラスコに添加した。系内を窒素で30分間置換した後、丸底フラスコを70℃の水浴に浸漬して系内を昇温し、重合反応を1時間行うことにより、含水ゲル状重合体を得た(第一重合工程)。重合後、中間架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液1.24g(0.00014モル)を添加して、75℃で30分間架橋反応を行った(中間架橋工程)。
【0223】
次に、上記第一重合工程とは別に、300mLビーカーに、水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液92g(1.03モル)を加えた。アクリル酸水溶液を氷水冷しながら、ビーカーに26.9質量%水酸化ナトリウム水溶液114.7gを滴下して、アクリル酸のうち75モル%の中和を行った。その後、ビーカーにラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.10g(0.0037モル)を加えて溶解し、第二の水性液を調製した。この第二の水性液のポリマー固形分量は91.0g、水分量は115.9gであった。
【0224】
中間架橋剤による架橋反応終了後の懸濁液を、撹拌機の回転数を1000rpmとして攪拌しながら65℃に冷却した。冷却した丸底フラスコ内に上記第二の水性液の全量を滴下した後、系内温度を滴下が終了したときの温度(50℃)に保ちながら、系内を窒素ガスで30分間置換した。丸底フラスコを70℃の水浴に浸漬して系内を昇温し、その後第二重合を1時間行い(第二重合工程)、含水ゲル状重合体を得た。
【0225】
丸底フラスコを120℃の油浴に浸漬して、第二重合工程で得られた含水ゲル状重合体を含有する懸濁液を昇温し、水とn−ヘプタンとを共沸させることにより、n−ヘプタンを還流しながら、208.6gの水を系外へ抜き出した(1次乾燥工程)。その後、丸底フラスコに後架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液8.28g(0.00095モル)を添加し、後架橋剤を含む混合物を得た。この時の丸底フラスコ内の水分量は65.1gであり、1次乾燥後(後架橋時)の含水ゲル状重合体の水分率は、36質量%であった。後架橋剤を含む混合物を調製後、約80℃で2時間保持した(後架橋工程)。
【0226】
その後、n−へプタンを120℃にて蒸発させて乾燥させること(2次乾燥工程)によって、顆粒状の吸水性樹脂粒子を190.6g得た。
【0227】
[実施例6]
第一重合工程において、中間架橋剤による架橋反応終了後の懸濁液の冷却温度を75℃とし、さらに、第二重合工程において、第二の水性液を滴下した後の系(懸濁液)内温度を60℃とした以外は、実施例3と同様の操作を行い、顆粒状の吸水性樹脂粒子を161.8g得た。
【0228】
[比較例5]
実施例1と同様の構成の丸底フラスコに炭化水素分散媒としてn−ヘプタン660mLを加え、界面活性剤としてソルビタンモノラウレート(日油社製、商品名ノニオンLP−20R;HLB8.6)1.10gを添加し、45℃まで昇温して界面活性剤を溶解した。
【0229】
一方、内容積300mLのビーカーに、水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液92g(1.03モル)を加えた。アクリル酸水溶液を氷水冷しながら、ビーカーに20.9質量%水酸化ナトリウム水溶液147.7gを滴下して、アクリル酸のうち75モル%の中和を行った。その後、ビーカーにラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.10g(0.0037モル)を加えて溶解し、水性液を調製した。この水性液のポリマー固形分量は91g、水分量は148.6gであった。
【0230】
撹拌機の回転数を700rpmとして撹拌しながら、上記水性液の全量を上記丸底フラスコに添加した。系内を窒素で30分間置換した後、丸底フラスコを70℃の水浴に浸漬して系内を昇温し、重合反応を1時間行うことにより、含水ゲル状重合体を得た。
【0231】
次いで、120℃の油浴を使用して系内を昇温し、水とn−ヘプタンを共沸させることにより、n−ヘプタンを還流しながら、127.6gの水を系外へ抜き出した(1次乾燥工程)。その後、丸底フラスコに後架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液5.52g(0.00063モル)を添加し、後架橋剤を含む混合物を得た。この時の丸底フラスコ内の水分量は26.3gであり、1次乾燥後(後架橋時)の含水ゲル状重合体の水分率は29質量%であった。後架橋剤を含む混合物を調製後、約80℃で2時間保持した(後架橋工程)。
【0232】
その後、n−へプタンを120℃にて蒸発させて乾燥させること(2次乾燥工程)によって、顆粒状の吸水性樹脂粒子を87.4g得た。
【0233】
[比較例6]
第一重合工程後における、中間架橋剤による架橋反応終了後の懸濁液の冷却温度を40℃とし、さらに、第二重合工程において、第二の水性液を滴下した後の系内温度を34℃とした以外は、実施例5と同様の操作を行い、顆粒状の吸水性樹脂粒子を189.3g得た。
【0234】
[比較例7]
内容積500mLの三角フラスコに、80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)を加えた。アクリル酸水溶液を氷水冷しながら、三角フラスコに21.0質量%水酸化ナトリウム水溶液146.0gを滴下して、アクリル酸のうち75モル%の中和を行い、濃度38質量%の水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を調製した。得られた水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液に、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル18.4mg(106μモル)及びラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム92mg(0.00034モル)を添加し、これを第一の水性液とした。また、上記と同様の操作を行い、上記とは別の水性液を調製し、これを第二の水性液とした。
【0235】
次に、実施例1と同様の構成の丸底フラスコに、炭化水素分散媒としてn−ヘプタン340g(500mL)と、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ社製、商品名S−370;HLB3.0)0.92gとを加えて、界面活性剤をn−ヘプタンに溶解させた後、丸底フラスコ内を35℃にした。その後、丸底フラスコに第一の水性液の全量を加えて35℃に保ち、攪拌下で懸濁し、系内を窒素ガスで置換した。丸底フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合反応を2時間行った(第一重合工程)。
【0236】
第一重合終了後、重合スラリーを50℃に冷却した。界面活性剤が溶解している状態で、第二の水性液の全量を系内に滴下した。系内を50℃に保ちながら30分間攪拌しながら系内を窒素ガスで充分に置換した。その後、丸底フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合反応を1.5時間行う(第二重合工程)ことにより、含水ゲル状重合体を得た。
【0237】
次いで、丸底フラスコを120℃の油浴に浸漬して昇温し、水とn−ヘプタンを共沸させることにより、n−ヘプタンを還流しながら、250gの水を系外へ抜き出した(1次乾燥工程)。その後、丸底フラスコに架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル110mg(0.00063モル)を添加し、後架橋剤を含む混合物を得た。架橋時の含水ゲル状重合体の水分率は、25質量%であった。後架橋剤を含む混合物を調製後、約80℃で2時間保持した(後架橋工程)。
【0238】
その後、n−へプタンを120℃にて蒸発させて乾燥させること(2次乾燥工程)によって、球状の吸水性樹脂粒子を188.3g得た。
【0239】
評価
実施例3、5、6及び比較例5〜7で得られた吸水性樹脂粒子について、残存揮発成分量、臭気、生理食塩水の吸水量、生理食塩水の吸水速度、中位粒子径及びハンドリング性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0240】
【表3】
【0241】
表3中の、懸濁液Aとは、第一重合工程後であり第二の水性液の混合前の懸濁液を示す。懸濁液Bとは、第二の水性液の混合後であり、第二重合工程の重合前の懸濁液を示す。
【0242】
表3に示すように、実施例3、5、6で得られた吸水性樹脂粒子は、いずれも、粒子径が適度でありながらも吸水速度等の吸水性能にも優れ、かつ残存揮発成分量の少ないことがわかる。一方、比較例5及び6で得られた吸水性樹脂粒子は、残存揮発成分量が大きく吸水後に臭気が認められた。比較例7で得られた吸水性樹脂粒子は、粒子径が小さく、粉体ハンドリング性に問題があった。
【0243】
<検討3>
[実施例7]
水性液に加えるヒドロキシエチルセルロースの量を、1.10gとし、水性液の20℃における粘度を260mPa・sとした以外は、実施例2と同様の操作を行い、顆粒状の吸水性樹脂粒子を88.1g得た。
【0244】
[実施例8]
水性液に、ヒドロキシエチルセルロースに代えて、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製、商品名セルニーH)0.74gを加え、水性液の20℃における粘度を60mPa・sとし、次いで1次乾燥工程における系外への水の抜き出し量を121.2g、添加する2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液の量を5.06g(0.00058モル)として、後架橋反応時の水分率を35質量%とした以外は、実施例2と同様の操作を行い、顆粒状の吸水性樹脂粒子を86.8g得た。
【0245】
[比較例8]
水性液に、ヒドロキシプロピルセルロースを添加せず、水性液の20℃における粘度を8mPa・sとした以外は、実施例8と同様の操作を行い、顆粒状の吸水性樹脂粒子を87.4g得た。
【0246】
[比較例9]
水性液に、ヒドロキシエチルセルロース(住友精化社製、商品名AW−15F)0.27gを加え、水性成分の20℃における粘度を18mPa・sとした以外は、比較例8と同様の操作を行い、顆粒状の吸水性樹脂粒子を88.1g得た。
【0247】
評価
実施例2、7、8及び比較例8、9で得られた吸水性樹脂粒子について、水性液の残存揮発成分量、臭気、生理食塩水の吸水量、生理食塩水の吸水速度、中位粒子径、膨潤性能、及びハンドリング性の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0248】
【表4】
【0249】
表4に示すように、実施例2、7、8で得られた吸水性樹脂粒子は、いずれも、粒子径が適度であり、ハンドリング性に優れながらも吸水速度等の吸水性能にも優れ、かつ残存揮発成分量の少ないことがわかる。一方、比較例8及び9で得られた吸水性樹脂粒子は、残存揮発成分量が大きく吸水後の臭気が認められた。
【0250】
<検討4>
[実施例9、10]
実施例9、10では、水性液に加えるポリビニルアルコールの量を、それぞれ0.01g、0.67gとした以外は、実施例1と同様の操作を行い、顆粒状の吸水性樹脂粒子をそれぞれ88.2g、88.4g得た。1次乾燥後(後架橋時)の含水ゲル状重合体の水分率は、ともに45質量%であった。
【0251】
[実施例11]
水性液に、ポリビニルアルコールに代えて、ポリビニルピロリドン(アイエスピージャパン社製、商品名K−90;質量平均分子量約1300000)0.90gを加え、次いで1次乾燥工程における系外への水の抜き出し量を116.1g、後架橋反応時の含水ゲル状重合体の水分率を40質量%とした以外は、実施例9と同様の操作を行い、顆粒状の吸水性樹脂粒子を88.3g得た。
【0252】
[実施例12]
水性液に、ポリビニルピロリドンに代えて、ポリエチレングリコール(日油社製、商品名PEG#20000;質量平均分子量約20000)0.90gを加え、次いで1次乾燥工程における系外への水の抜き出し量を121.2g、添加する2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液の量を5.06g(0.00058モル)として、後架橋反応時の含水ゲル状重合体の水分率を35質量%とした以外は、実施例11と同様の操作を行い、顆粒状の吸水性樹脂粒子を88.8g得た。
【0253】
[比較例10]
水性液に、ポリエチレングリコールを加えない以外は、実施例12と同様の操作を行い、顆粒状の吸水性樹脂粒子を87.4g得た。
【0254】
[比較例11]
内容積500mLの三角フラスコに、80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)を加えた。アクリル酸水溶液を氷水冷しながら、三角フラスコに21.0質量%水酸化ナトリウム水溶液146.0gを滴下して、アクリル酸のうち75モル%の中和を行い、濃度38質量%の水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を調製した。得られた水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液に、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジエーテル18.4mg(106μモル)及びラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム92mg(0.00034モル)を添加し、これを第1段目の逆相懸濁重合用の水性液(a)とした。また、上記と同様の操作を行い、上記とは別の水性液を調製し、これを第2段目の逆相懸濁重合用の水性液(b)とした。
【0255】
次に、攪拌機、2段パドル翼、還流冷却器、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えた内容積2Lの五つ口円筒型丸底フラスコに、炭化水素分散媒としてn−ヘプタン340g(500mL)と、界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル(三菱化学フーズ社製、商品名S−370;HLB3.0)0.92gとを加えて、界面活性剤をn−ヘプタンに溶解させた後、丸底フラスコ内を35℃にした。その後、上記丸底フラスコに水性液(a)を加えて35℃に保ち、攪拌下で懸濁し、系内を窒素ガスで置換した。丸底フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合反応を2時間行った。
【0256】
第1段目の逆相懸濁重合終了後、重合スラリーを50℃に冷却した。界面活性剤が溶解している状態で、水性液(b)を系内に滴下した。系内を50℃に保ちながら30分間攪拌しながら系内を窒素ガスで充分に置換した。その後、丸底フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合反応を1.5時間行うことにより、含水ゲル状重合体を得た。
【0257】
次いで、丸底フラスコを120℃の油浴に浸漬して昇温し、水とn−ヘプタンを共沸させることにより、n−ヘプタンを還流しながら、250gの水を系外へ抜き出した(1次乾燥工程)。1次乾燥後の含水ゲル状重合体の水分率は、25質量%であった。その後、丸底フラスコに後架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル110mg(0.00063モル)を添加し、後架橋剤を含む混合物を得た。後架橋剤を含む混合物を調製後、約80℃で2時間保持した(後架橋工程)。
【0258】
その後、n−へプタンを120℃にて蒸発させて乾燥させること(2次乾燥工程)によって、球状の吸水性樹脂粒子を188.3g得た。
【0259】
評価
実施例1、9〜12及び比較例10、11で得られた吸水性樹脂粒子について、残存揮発成分量、臭気、生理食塩水の吸水量、生理食塩水の吸水速度、中位粒子径、膨潤性能、及びハンドリング性の評価を行った。評価結果を表5に示す。
【0260】
【表5】
【0261】
表5に示すように、実施例1、9〜12で得られた吸水性樹脂粒子は、いずれも、粒子径が適度であり、ハンドリング性に優れながらも吸水速度等の吸水性能にも優れ、かつ残存揮発成分量の少ないことがわかる。一方、比較例10で得られた吸水性樹脂粒子は、残存揮発成分量が大きく吸水後の臭気が認められた。また、比較例11で得られた吸水性樹脂粒子は、粒子径が小さく、ハンドリング性に問題があった。