(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「ハロゲン化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「フッ素化アルキル基」又は「フッ素化アルキレン基」は、アルキル基又はアルキレン基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基をいう。
「構成単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「置換基を有していてもよい」と記載する場合、水素原子(−H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(−CH
2−)を2価の基で置換する場合との両方を含む。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
「アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「アクリル酸エステル」は、アクリル酸(CH
2=CH−COOH)のカルボキシ基末端の水素原子が有機基で置換された化合物である。
アクリル酸エステルは、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該α位の炭素原子に結合した水素原子を置換する置換基(R
α0)は、水素原子以外の原子又は基であり、たとえば炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基等が挙げられる。また、置換基(R
α0)がエステル結合を含む置換基で置換されたイタコン酸ジエステルや、置換基(R
α0)がヒドロキシアルキル基やその水酸基を修飾した基で置換されたαヒドロキシアクリルエステルも含むものとする。なお、アクリル酸エステルのα位の炭素原子とは、特に断りがない限り、アクリル酸のカルボニル基が結合している炭素原子のことである。
以下、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されたアクリル酸エステルをα置換アクリル酸エステルということがある。また、アクリル酸エステルとα置換アクリル酸エステルとを包括して「(α置換)アクリル酸エステル」ということがある。
【0018】
≪レジスト組成物≫
本発明の第一の態様であるレジスト組成物は、露光により酸を発生し、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物であって、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分(A)(以下「(A)成分」ともいう)、及び露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(以下「(B)成分」ともいう)を含有する。
かかるレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成し、該レジスト膜に対して選択的露光を行うと、露光部では、(B)成分から酸が発生し、該酸の作用により(A)成分の現像液に対する溶解性が変化する一方で、未露光部では、(A)成分の現像液に対する溶解性が変化しないため、露光部と未露光部との間で現像液に対する溶解性の差が生じる。そのため、該レジスト膜を現像すると、当該レジスト組成物がポジ型の場合は露光部が溶解除去されてポジ型のレジストパターンが形成され、当該レジスト組成物がネガ型の場合は未露光部が溶解除去されてネガ型のレジストパターンが形成される。
本明細書においては、露光部が溶解除去されてポジ型レジストパターンを形成するレジスト組成物をポジ型レジスト組成物といい、未露光部が溶解除去されてネガ型レジストパターンを形成するレジスト組成物をネガ型レジスト組成物という。
本態様のレジスト組成物は、ポジ型レジスト組成物であってもよく、ネガ型レジスト組成物であってもよい。
また、本態様のレジスト組成物は、レジストパターン形成時の現像処理にアルカリ現像液を用いるアルカリ現像プロセス用であってもよく、該現像処理に有機溶剤を含む現像液(有機系現像液)を用いる溶剤現像プロセス用であってもよい。
【0019】
本態様のレジスト組成物は、具体的には、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)を含有するものであり、この場合、(A)成分は、「酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分」となる。
【0020】
<(A)成分>
本発明において、「基材成分」とは、膜形成能を有する有機化合物であり、好ましくは分子量が500以上の有機化合物が用いられる。該有機化合物の分子量が500以上であることにより、膜形成能が向上し、加えて、ナノレベルのレジストパターンを形成しやすい。
基材成分として用いられる有機化合物は、非重合体と重合体とに大別される。
非重合体としては、通常、分子量が500以上4000未満のものが用いられる。以下、「低分子化合物」という場合は、分子量が500以上4000未満の非重合体を示す。
重合体としては、通常、分子量が1000以上のものが用いられる。以下、「樹脂」という場合は、分子量が1000以上の重合体を示す。
重合体の分子量としては、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の質量平均分子量を用いるものとする。
【0021】
本発明のレジスト組成物に用いられる基材成分としては、少なくとも(A)成分が用いられ、該(A)成分とともに他の高分子化合物及び/又は低分子化合物を用いてもよい。
(A)成分は、酸の作用により現像液に対する溶解性が増大するものであってもよく、酸の作用により現像液に対する溶解性が減少するものであってもよい。
本発明のレジスト組成物において、(A)成分は、一般式(1)で表される構成単位を有するポリマーを含有する。
かかる(A)成分を含有するレジスト組成物を用いて形成されたレジスト膜を露光した場合、前記構成単位は、酸の作用によりその構造中の少なくとも一部の結合が開裂し、極性が増大する。このため、本実施形態のレジスト組成物は、現像液が有機系現像液の場合(溶剤現像プロセス)においてネガ型となり、現像液がアルカリ現像液の場合(アルカリ現像プロセス)においてポジ型となる。(A)成分は露光前後で極性が変化するため、(A)成分を用いることにより、アルカリ現像プロセスだけでなく、溶剤現像プロセスにおいても良好な現像コントラストを得ることができる。
つまり、溶剤現像プロセスを適用する場合、(A)成分は、露光前は有機系現像液に対して溶解性が高い。露光により酸が発生すると、該酸の作用により極性が高くなって有機系現像液に対する溶解性が減少する。このため、レジストパターンの形成において、当該レジスト組成物を支持体上に塗布して得られるレジスト膜に対して選択的に露光すると、露光部は有機系現像液に対して可溶性から難溶性に変化する一方で、未露光部は可溶性のまま変化しないため、有機系現像液で現像することにより、露光部と未露光部との間でコントラストをつけることができ、ネガ型レジストパターンが形成できる。
一方、アルカリ現像プロセスを適用する場合は、(A)成分は、露光前はアルカリ現像液に対して溶解性が低い。露光により酸が発生すると、該酸の作用により極性が高くなってアルカリ現像液に対する溶解性が増加する。このため、レジストパターンの形成において、当該レジスト組成物を支持体上に塗布して得られるレジスト膜に対して選択的に露光すると、露光部はアルカリ現像液に対して難溶性から可溶性に変化する一方で、未露光部は難溶性のまま変化しないため、アルカリ現像液で現像することにより、露光部と未露光部との間でコントラストをつけることができ、ポジ型レジストパターンが形成できる。
【0022】
・一般式(1)で表される構成単位を有するポリマー
一般式(1)で表される構成単位は、次のとおりである。
【0023】
【化4】
[一般式(1)中、R
xは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基を示し、Zは、単結合または炭素数1〜5のアルキル基を示し、C
pは、下記一般式(Cp−1)で表される基である。
【0024】
【化5】
[式中、R
2は第三級アルキル基、nは正の整数であり、*はZとの結合位置を示す。]
【0025】
前記一般式(1)中、R
xは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。
R
xにおける炭素数1〜5のアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
R
xにおける炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基は、前記炭素数1〜5のアルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基である。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
R
xとしては、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜5のアルキル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0026】
前記一般式(1)中、Zは、単結合または炭素数1〜5のアルキル基を示す。
Zにおける炭素数1〜5のアルキル基は、前記R
xで定義した炭素数1〜5のアルキル基と同様のものが挙げられる。
前記一般式(1)中、C
pは、前記式(Cp−1)で表される基である。
前記式(Cp−1)におけるR
2は、第三級アルキル基を示し、第三級アルキル基は、炭素数4〜10であることが好ましく、炭素数4〜6であることがより好ましく、tert−ブチル基が最も好ましい。
前記式(Cp−1)におけるnは、正の整数を示し、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が最も好ましい。
【0027】
前記構成単位は、酸の作用により極性が増大する酸分解性基を含む構成単位である。
「酸分解性基」は、酸の作用により、当該酸分解性基の構造中の少なくとも一部の結合が開裂し得る酸分解性を有する基である。
かかる構成単位における酸分解性基は、酸の作用により、酸分解性基の構造中の少なくとも一部の結合が開裂するのに必要な活性化エネルギーが他の酸分解性基に比べて相対的に低い(すなわち、酸の作用により、後述の酸解離性基が解離しやすい)。
前記構成単位における酸分解性基は、酸の作用により分解して極性基(カルボキシ基)を生じる。すなわち、該酸分解性基は、前記極性基が特定の単環構造の酸解離性基で保護された基である。
【0028】
成分(A)に含まれるポリマーの前記構成単位の割合は、全構成単位の合計に対し、5〜70モル%であることが好ましく、10〜60モル%であることがより好ましく、10〜50モル%であることがさらに好ましい。
【0029】
本発明において、成分(A)に含まれるポリマーの好ましい構成単位の例としては、下記の構成単位等が挙げられる。
【0031】
本態様のレジスト組成物中、(A)成分の含有量は、形成しようとするレジストの膜厚等によって調整すればよい。
【0032】
<(B)成分>
本発明において、レジスト組成物は、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)を含有する。
【0033】
{アニオン部}
(B)成分は、下記一般式(2)で表されるアニオンを有する酸発生剤を含有する。
【0034】
【化7】
[式中、R
yは、ヘテロ原子を有してもよい炭素数3〜20の環状の炭化水素基を示し、Aは、−O(C=O)−または−(C=O)O−を示し、Lは、単結合またはヘテロ原子を含む2価の炭化水素基を示し、前記ヘテロ原子を含む2価の炭化水素基の水素は、それぞれ独立に、置換基で置換されてもよく、Xは、それぞれ独立に、HまたはFを示し、nは、0〜10の整数を示す。]
【0035】
・R
yにおけるヘテロ原子を有してもよい炭素数3〜20の環状の炭化水素基
R
yにおける環状の炭化水素基は、芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。R
yにおける環状の炭化水素基としての脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
R
yにおける環状の脂肪族炭化水素基は、脂環式炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を1個除いた基)、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、脂環式炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基等が挙げられる。
【0036】
前記脂環式炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素数3〜6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式の脂環式炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素数7〜12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0037】
前記直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。
前記分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基等が挙げられる。
R
yにおける環状の芳香族炭化水素基は、フェニル基またはナフチル基等のアリール基が好ましい。
【0038】
R
yのヘテロ原子を有してもよい環状の炭化水素基における、ヘテロ原子とは、炭素原子及び水素原子以外の原子であり、例えば酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子等が挙げられる。
ヘテロ原子を有してもよい環状の炭化水素基は、−O−、−C(=O)−O−、−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=O)−NH−、−NH−、−NH−C(=NH)−(Hはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。)、−S−、−S(=O)
2−、−S(=O)
2−O−等を有することができる環状の炭化水素基が挙げられる。
特に、ヘテロ原子を有する環状の炭化水素基は、ラクトン含有環式基、−SO
2−含有環式基またはカーボネート含有環式基であることが好ましい。
【0039】
「ラクトン含有環式基」とは、その環骨格中に−O−C(=O)−を含む環(ラクトン環)を含有する環式基を示す。ラクトン環をひとつ目の環として数え、ラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。ラクトン含有環式基は、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。
【0040】
「−SO
2−含有環式基」とは、その環骨格中に−SO
2−を含む環を含有する環式基を示し、具体的には、−SO
2−における硫黄原子(S)が環式基の環骨格の一部を形成する環式基である。その環骨格中に−SO
2−を含む環をひとつ目の環として数え、該環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。−SO
2−含有環式基は、単環式基であってもよく多環式基であってもよい。
【0041】
「カーボネート含有環式基」とは、その環骨格中に−O−C(=O)−O−を含む環(カーボネート環)を含有する環式基を示す。カーボネート環をひとつ目の環として数え、カーボネート環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。カーボネート含有環式基は、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。
【0042】
・Lにおけるヘテロ原子を含む2価の炭化水素基
Lにおけるヘテロ原子を含む2価の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。該脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
前記脂肪族炭化水素基としては、直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基または構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。該置換基の例としては、下記においてより具体的に記述する。
前記構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、環構造中にヘテロ原子を含む置換基を含んでもよい環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、前記環状の脂肪族炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、前記環状の脂肪族炭化水素基が直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基等が挙げられる。前記直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、前記と同様のものが挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が3〜20であることが好ましく、3〜12であることがより好ましい。
【0043】
・ヘテロ原子を含む2価の炭化水素基の置換基
ヘテロ原子を含む2価の炭化水素基の水素は、それぞれ独立に、1つ以上の置換基で置換されてもよい。
この置換基としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基(例えば、炭素数1〜5のアルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等で置換された基)、ヒドロキシ基、メトキシ基等のアルコキシ基(例えば、炭素数1〜6のアルコキシ基等)、カルボキシ基、メトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基(例えば、炭素数1〜6のアルコキシ−カルボニル基等)、アセチル基等のアシル基(例えば、炭素数1〜6のアシル基等)、シアノ基、フェニル基等のアリール基(例えば、炭素数6〜14のアリール基等)、メチル基等のアルキル基(例えば、炭素数1〜20のアルキル基、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基)、ビニル基等のアルケニル基(例えば、炭素数2〜6のアルケニル基等)、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基(例えば、炭素数3〜12のシクロアルキル基等)、ニトロ基等が挙げられる。
また、前記置換基に水素原子が存在する場合、これも前記に挙げた置換基で置換され得る。
【0044】
前記一般式(2)において、nは、0〜20の整数を示し、0〜10の整数が好ましく、0〜5の整数がより好ましい。
【0045】
一方、本発明の(B)成分において、一般式(2)で表されるアニオンは、下記一般式(2−1)または下記一般式(2−2)で表されるアニオンであることがさらに好ましい。
【0046】
【化8】
[式中、R
zは、ラクトン含有環式基を示す。]
【0047】
【化9】
[式中、R
wは、ポリシクロアルキル基を示し、Lは、単結合またはヘテロ原子を含む2価の炭化水素基を示し、前記ヘテロ原子を含む2価の炭化水素基の水素は、それぞれ独立に、置換基で置換されてもよく、Xは、それぞれ独立に、HまたはFを示し、nは、0〜10の整数を示す。]
【0048】
前記一般式(2−2)で表されるアニオンは、下記一般式(2−2−1)または一般式(2−2−2)で表されるアニオンであることが特に好ましい。
【0051】
前記一般式(2−2)、(2−2−1)及び(2−2−2)において、R
wのポリシクロアルキル基は、上述した、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基を意味し、該ポリシクロアルカンとしては、炭素数7〜12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
前記一般式(2−2)、(2−2−1)及び(2−2−2)において、各記号に定義された意味は、前記一般式(2)で説明したことと同様のものが挙げられる。
【0052】
本発明において、成分(B)のアニオンの好ましい例としては、下記の酸発生剤(A)〜(D)のアニオン等が挙げられる。
【0054】
{カチオン部}
(B)成分は、(M
m+)
1/mで表されるカチオンを有する酸発生剤を含有することができる。
M
m+は、m価の有機カチオンであり、M
m+の有機カチオンとしては、特に限定されず、例えば、下記一般式(ca−1)〜(ca−4)でそれぞれ表されるカチオンと同様のものが挙げられる。
【0055】
【化13】
[式中、R
201〜R
207、およびR
211〜R
212は、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアリール基、アルキル基またはアルケニル基を表し、R
201〜R
203、R
206〜R
207、R
211〜R
212は、相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。R
208〜R
209はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、R
210は置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、又は置換基を有していてもよい−SO
2−含有環式基であり、L
201は−C(=O)−または−C(=O)−O−を表し、Y
201は、それぞれ独立に、アリーレン基、アルキレン基またはアルケニレン基を表し、xは1または2であり、W
201は(x+1)価の連結基を表す。]
【0056】
R
201〜R
207、およびR
211〜R
212におけるアリール基としては、炭素数6〜20の無置換のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
R
201〜R
207、およびR
211〜R
212におけるアルキル基としては、鎖状又は環状のアルキル基であって、炭素数1〜30のものが好ましい。
R
201〜R
207、およびR
211〜R
212におけるアルケニル基としては、炭素数が2〜10であることが好ましい。
R
201〜R
207、およびR
210〜R
212が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、カルボニル基、シアノ基、アミノ基、アリール基、下記式(ca−r−1)〜(ca−r−7)でそれぞれ表される基が挙げられる。
【0057】
【化14】
[式中、R’
201はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。]
【0058】
R
201〜R
203、R
206〜R
207、R
211〜R
212は、相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成する場合、硫黄原子、酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子や、カルボニル基、−SO−、−SO
2−、−SO
3−、−COO−、−CONH−または−N(R
N)−(該R
Nは炭素数1〜5のアルキル基である。)等の官能基を介して結合してもよい。形成される環としては、式中のイオウ原子をその環骨格に含む1つの環が、イオウ原子を含めて、3〜10員環であることが好ましく、5〜7員環であることが特に好ましい。形成される環の具体例としては、たとえばチオフェン環、チアゾール環、ベンゾチオフェン環、チアントレン環、ジベンゾチオフェン環、9H−チオキサンテン環、チオキサントン環、フェノキサチイン環、テトラヒドロチオフェニウム環、テトラヒドロチオピラニウム環等が挙げられる。
【0059】
R
208〜R
209は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、アルキル基となる場合、相互に結合して環を形成してもよい。
R
210は、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、又は置換基を有していてもよい−SO
2−含有環式基である。
R
210におけるアリール基としては、炭素数6〜20の無置換のアリール基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
R
210におけるアルキル基としては、鎖状又は環状のアルキル基であって、炭素数1〜30のものが好ましい。
R
210におけるアルケニル基としては、炭素数が2〜10であることが好ましい。
R
210における、置換基を有していてもよい−SO
2−含有環式基としては、前述の「−SO
2−含有多環式基」が好ましい。
Y
201は、それぞれ独立に、アリーレン基、アルキレン基又はアルケニレン基を表す。
Y
201におけるアリーレン基は、アリール基から水素原子を1個除いた基が挙げられる。
Y
201におけるアルキレン基、アルケニレン基は、鎖状のアルキル基、鎖状のアルケニル基から水素原子を1個除いた基が挙げられる。
【0060】
前記式(ca−4)中、xは、1または2である。
W
201は、(x+1)価、すなわち2価または3価の連結基である。
W
201における2価の連結基としては、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基が好ましい。W
201における2価の連結基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、環状であることが好ましい。なかでも、アリーレン基の両端に2個のカルボニル基が組み合わされた基が好ましい。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、フェニレン基が特に好ましい。
W
201における3価の連結基としては、前記W
201における2価の連結基から水素原子を1個除いた基、前記2価の連結基にさらに前記2価の連結基が結合した基などが挙げられる。W
201における3価の連結基としては、アリーレン基に2個のカルボニル基が結合した基が好ましい。
【0061】
前記式(ca−1)で表される好適なカチオンとして具体的には、下記式(ca−1−1)〜(ca−1−63)でそれぞれ表されるカチオンが挙げられる。
【0064】
【化17】
[式中、g1、g2、g3は繰返し数を示し、g1は1〜5の整数であり、g2は0〜20の整数であり、g3は0〜20の整数である。]
【0065】
【化18】
[式中、R”
201は水素原子又は置換基であって、置換基としては前記R
201〜R
207、およびR
210〜R
212が有していてもよい置換基として挙げたものと同様である。]
【0066】
上述した酸発生剤成分(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.5〜60質量部が好ましく、1〜50質量部がより好ましく、1〜40質量部がさらに好ましい。
(B)成分の含有量を上記範囲とすることで、パターン形成が充分に行われる。また、レジスト組成物の各成分を有機溶剤に溶解した際、均一な溶液が得られやすく、レジスト組成物としての保存安定性が良好となるため好ましい。
【0067】
<他の成分>
本発明のレジスト組成物は、上述した(A)成分及び(B)成分に加えて、該(A)成分及び(B)成分以外の他の成分をさらに含有してもよい。他の成分としては、例えば、以下に示す(D)成分、(E)成分、(F)成分、(S)成分等が選ばれる。
【0068】
[(D)成分:酸拡散制御剤成分]
本発明のレジスト組成物は、(A)成分及び(B)成分に加えて、さらに、酸拡散制御剤成分(以下「(D)成分」ともいう。)を含有してもよい。
(D)成分は、前記(B)成分等から露光により発生する酸をトラップするクエンチャー(酸拡散制御剤)として作用するものである。
本発明における(D)成分は、露光により分解して酸拡散制御性を失う光崩壊性塩基(D1)(以下「(D1)成分」という。)であってもよく、該(D1)成分に該当しない含窒素有機化合物(D2)(以下「(D2)成分」という。)であってもよい。
【0069】
・(D1)成分について
(D1)成分を含有するレジスト組成物とすることで、レジストパターンを形成する際に、露光部と未露光部とのコントラストを向上させることができる。
(D1)成分としては、露光により分解して酸拡散制御性を失うものであれば特に限定されず、下記一般式(d1−1)で表される化合物(以下「(d1−1)成分」という。)、下記一般式(d1−2)で表される化合物(以下「(d1−2)成分」という。)及び下記一般式(d1−3)で表される化合物(以下「(d1−3)成分」という。)からなる群より選ばれる1種以上の化合物が好ましい。
(d1−1)〜(d1−3)成分は、露光部においては分解して酸拡散制御性(塩基性)を失うためクエンチャーとして作用せず、未露光部においてクエンチャーとして作用する。
【0070】
【化19】
[式中、Rd
1〜Rd
4は置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基である。但し、式(d1−2)中のRd
2における、S原子に隣接する炭素原子にはフッ素原子は結合していないものとする。Yd
1は単結合又は2価の連結基である。M
m+はそれぞれ独立にm価の有機カチオンである。]
【0071】
{(d1−1)成分}
・・アニオン部
式(d1−1)中、Rd
1は置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、R
101と同様のものが挙げられる。
これらのなかでも、Rd
1としては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい脂肪族環式基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基が好ましい。これらの基が有していてもよい置換基としては、水酸基、オキソ基、アルキル基、アリール基、フッ素原子又はフッ素化アルキル基、上記一般式(a2−r−1)〜(a2−r−7)でそれぞれ表されるラクトン含有環式基、エーテル結合、エステル結合、またはこれらの組み合わせが挙げられる。エーテル結合やエステル結合を置換基として含む場合、アルキレン基を介していてもよく、下記式(y−al−1)〜(y−al−5)でそれぞれ表される連結基が好ましい。
前記芳香族炭化水素基としては、フェニル基もしくはナフチル基等のアリール基がより好ましい。
前記脂肪族環式基としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
前記鎖状の炭化水素基としては、鎖状のアルキル基が好ましい。鎖状のアルキル基としては、炭素数が1〜10であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖状のアルキル基;1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基等の分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
前記鎖状のアルキル基が置換基としてフッ素原子又はフッ素化アルキル基を有するフッ素化アルキル基である場合、フッ素化アルキル基の炭素数は、1〜11が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜4がさらに好ましい。該フッ素化アルキル基は、フッ素原子以外の原子を含有してもよい。フッ素原子以外の原子としては、たとえば酸素原子、炭素原子、水素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
【0072】
Rd
1としては、直鎖状のアルキル基を構成する一部又は全部の水素原子がフッ素原子により置換されたフッ素化アルキル基であることが好ましく、直鎖状のアルキル基を構成する水素原子の全てがフッ素原子で置換されたフッ素化アルキル基(直鎖状のパーフルオロアルキル基)であることが好ましい。
【0073】
以下に(d1−1)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0075】
・・カチオン部
式(d1−1)中、M
m+は、m価の有機カチオンであり、上述した(B)成分のカチオンと同様のものが挙げられる。
(d1−1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
{(d1−2)成分}
・・アニオン部
式(d1−2)中、Rd
2は、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、R
101と同様のものが挙げられる。
ただし、Rd
2における、S原子に隣接する炭素原子にはフッ素原子は結合していない(フッ素置換されていない)ものとする。これにより、(d1−2)成分のアニオンが適度な弱酸アニオンとなり、(D)成分のクエンチング能が向上する。
Rd
2としては、置換基を有していてもよい脂肪族環式基であることが好ましく、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等から1個以上の水素原子を除いた基(置換基を有していてもよい);カンファー等から1個以上の水素原子を除いた基であることがより好ましい。
Rd
2の炭化水素基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記式(d1−1)のRd
1における炭化水素基(芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基)が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0077】
以下に(d1−2)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0079】
・・カチオン部
式(d1−2)中、M
m+は、m価の有機カチオンであり、前記式(d1−1)中のM
m+と同様である。
(d1−2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
{(d1−3)成分}
・・アニオン部
式(d1−3)中、Rd
3は置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、R
101と同様のものが挙げられ、フッ素原子を含む環式基、鎖状のアルキル基、又は鎖状のアルケニル基であることが好ましい。中でも、フッ素化アルキル基が好ましく、前記Rd
1のフッ素化アルキル基と同様のものがより好ましい。
式(d1−3)中、Rd
4は、置換基を有していてもよい環式基、置換基を有していてもよい鎖状のアルキル基、又は置換基を有していてもよい鎖状のアルケニル基であり、R
101と同様のものが挙げられる。
中でも、置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、環式基であることが好ましい。
【0081】
Rd
4におけるアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。Rd
4のアルキル基の水素原子の一部が水酸基、シアノ基等で置換されていてもよい。
Rd
4におけるアルコキシ基は、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜5のアルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。なかでも、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。
Rd
4におけるアルケニル基は、前記R
101と同様のものが挙げられ、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、1−メチルプロペニル基、2−メチルプロペニル基が好ましい。これらの基はさらに置換基として、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基を有していてもよい。
Rd
4における環式基は、前記R
101と同様のものが挙げられ、シクロペンタン、シクロヘキサン、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた脂環式基、又は、フェニル基、ナフチル基等の芳香族基が好ましい。Rd
4が脂環式基である場合、レジスト組成物が有機溶剤に良好に溶解することにより、リソグラフィー特性が良好となる。また、Rd
4が芳香族基である場合、EUV等を露光光源とするリソグラフィーにおいて、該レジスト組成物が光吸収効率に優れ、感度やリソグラフィー特性が良好となる。
【0082】
式(d1−3)中、Yd
1は、単結合または2価の連結基である。
Yd
1における2価の連結基としては、特に限定されないが、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基(脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基)、ヘテロ原子を含む2価の連結基等が挙げられる。これらはそれぞれ、前記式(a2−1)におけるYa
21の2価の連結基の説明で挙げたものと同様のものが挙げられる。
Yd
1としては、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、アルキレン基又はこれらの組み合わせであることが好ましい。アルキレン基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であることがより好ましく、メチレン基又はエチレン基であることがさらに好ましい。
【0083】
以下に(d1−3)成分のアニオン部の好ましい具体例を示す。
【0086】
・・カチオン部
式(d1−3)中、M
m+は、m価の有機カチオンであり、前記式(d1−1)中のM
m+と同様である。
(d1−3)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
(D1)成分は、上記(d1−1)〜(d1−3)成分のいずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記の(d1−1)成分、(d1−2)成分の製造方法は、特に限定されず、公知の方法により製造することができる。
(D1)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.5〜15.0質量部であることが好ましく、0.5〜10.0質量部であることがより好ましく、1.0〜8.0質量部であることがさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると、特に良好なリソグラフィー特性及びレジストパターン形状が得られる。上記範囲の上限値以下であると、感度を良好に維持でき、スループットにも優れる。
【0088】
・(D2)成分について
(D)成分は、上記(D1)成分に該当しない含窒素有機化合物成分(以下「(D2)成分」という。)を含有してもよい。
(D2)成分としては、酸拡散制御剤として作用するもので、かつ、(D1)成分に該当しないものであれば特に限定されず、公知のものから任意に用いればよい。なかでも、脂肪族アミン、特に第2級脂肪族アミンや第3級脂肪族アミンがより好ましい。
脂肪族アミンとは、1つ以上の脂肪族基を有するアミンであり、該脂肪族基は炭素数が1〜12であることが好ましい。
脂肪族アミンとしては、アンモニアNH
3の水素原子の少なくとも1つを、炭素数12以下のアルキル基またはヒドロキシアルキル基で置換したアミン(アルキルアミンまたはアルキルアルコールアミン)又は環式アミンが挙げられる。
アルキルアミンおよびアルキルアルコールアミンの具体例としては、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリ−n−ドデシルアミン等のトリアルキルアミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジ−n−オクタノールアミン、トリ−n−オクタノールアミン等のアルキルアルコールアミンが挙げられる。これらの中でも、炭素数5〜10のトリアルキルアミンがさらに好ましく、トリ−n−ペンチルアミン又はトリ−n−オクチルアミンが特に好ましい。
【0089】
環式アミンとしては、たとえば、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環化合物が挙げられる。該複素環化合物としては、単環式のもの(脂肪族単環式アミン)であっても多環式のもの(脂肪族多環式アミン)であってもよい。
脂肪族単環式アミンとして、具体的には、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられる。
脂肪族多環式アミンとしては、炭素数が6〜10のものが好ましく、具体的には、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、ヘキサメチレンテトラミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0090】
その他の脂肪族アミンとしては、トリス(2−メトキシメトキシエチル)アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシメトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−エトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−エトキシプロポキシ)エチル}アミン、トリス[2−{2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチル]アミン、トリエタノールアミントリアセテート等が挙げられ、トリエタノールアミントリアセテートが好ましい。
【0091】
また、(D2)成分としては、芳香族アミンを用いてもよい。
芳香族アミンとしては、アニリン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ピロール、インドール、ピラゾール、イミダゾールまたはこれらの誘導体、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、2,6−ジイソプロピルアニリン、N−tert−ブトキシカルボニルピロリジン等が挙げられる。
【0092】
(D2)成分は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D2)成分は、(A)成分100質量部に対して、通常、0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。上記範囲とすることにより、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等が向上する。
【0093】
(D)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のレジスト組成物が(D)成分を含有する場合、(D)成分は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜15質量部であることが好ましく、0.3〜12質量部であることがより好ましく、0.5〜12質量部であることがさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると、レジスト組成物とした際、LWR等のリソグラフィー特性がより向上する。また、より良好なレジストパターン形状が得られる。前記範囲の上限値以下であると、感度を良好に維持でき、スループットにも優れる。
【0094】
さらに、本発明においては、前記(D)成分が、下記一般式(d0)で表される化合物(D0)を含むことが好ましく、化合物(D0)としては、下記化合物(D11)を含むことがさらに好ましい。酸拡散制御剤成分(D)が化合物(D0)を含む場合、(A)成分100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、0.3〜20質量部であることがより好ましく、0.5〜15質量部であることがさらに好ましい。上記範囲とすることで本発明の効果が向上する。また(D)成分の総質量に対し、化合物(D0)の含まれる割合が25質量%以上であることが好ましく、50質量%以上がより好ましく、75質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。該割合が25質量%以上であると、本発明に係る効果が向上する。また溶剤溶解性や感度等も向上すると考えられる。
【0095】
【化24】
[式(d0)中、Rb
1は電子吸引性基であり、Rb
2、Rb
3はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアルケニル基を表し、Rb
2とRb
3は、相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。X2
−は弱酸を発生しうる1価の対アニオンである。]
【0096】
一般式(d0)中、X2
−は弱酸を発生しうる1価の対アニオンである。
X2
−は、弱酸を発生しうる1価の対アニオンであれば特に限定されず、例えば酸の酸解離定数(pKa)が、好ましくは0超であり、より好ましくは0.2以上であり上限は特に設定されないが10程度である酸を発生しうる1価の対アニオンが挙げられる。
また、本発明においてX1
−は、例えば前記式(d1−1)〜(d1−3)中のアニオン部と同様のアニオンが挙げられる。
【0097】
[(F)成分:フッ素添加剤成分]
本実施形態のレジスト組成物は、レジスト膜に撥水性を付与するために、フッ素添加剤成分(以下「(F)成分」という。)を含有してもよい。
(F)成分としては、例えば、特開2010−002870号公報、特開2010−032994号公報、特開2010−277043号公報、特開2011−13569号公報、特開2011−128226号公報に記載の含フッ素高分子化合物を用いることができる。(F)成分としてより具体的には、下記一般式(f1−1)で表される構成単位(f1)を有する重合体が挙げられる。但し、上述の(A1)成分に該当する高分子化合物を除く。
前記の構成単位(f1)を有する重合体としては、構成単位(f1)のみからなる重合体(ホモポリマー);該構成単位(f1)と下記一般式(m−1)で表される構成単位との共重合体;該構成単位(f1)と、アクリル酸又はメタクリル酸から誘導される構成単位と、下記一般式(m−1)で表される構成単位との共重合体が好ましい。
ここで、該一般式(m−1)で表される構成単位としては、1−エチル−1−シクロオクチル(メタ)アクリレートから誘導される構成単位、1−メチル−1−アダマンチル(メタ)アクリレートから誘導される構成単位が好ましい。
【0098】
【化25】
[式中、複数のRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。式(f1−1)中、Rf
102およびRf
103はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基を表し、Rf
102およびRf
103は同じであっても異なっていてもよい。nf
1は0〜5の整数であり、Rf
101はフッ素原子を含む有機基である。式(m−1)中、R
21はアルキル基であり、R
22は、当該R
22が結合した炭素原子と共に脂肪族環式基を形成する基である。]
【0099】
前記式(f1−1)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。前記式(f1−1)中のRは、上述の前記式(1)中のRと同様である。
Rとしては、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のフッ素化アルキル基が好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜5のアルキル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
式(f1−1)中、Rf
102およびRf
103のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。Rf
102およびRf
103の炭素数1〜5のアルキル基としては、前記Rの炭素数1〜5のアルキル基と同様のものが挙げられ、メチル基またはエチル基が好ましい。Rf
102およびRf
103の炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基として、具体的には、炭素数1〜5のアルキル基の水素原子の一部または全部が、ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。なかでもRf
102およびRf
103としては、水素原子、フッ素原子、又は炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、水素原子、フッ素原子、メチル基、またはエチル基が好ましい。
式(f1−1)中、nf
1は0〜5の整数であり、0〜3の整数が好ましく、0又は1であることがより好ましい。
【0100】
式(f1−1)中、Rf
101は、フッ素原子を含む有機基であり、フッ素原子を含む炭化水素基であることが好ましい。
フッ素原子を含む炭化水素基としては、直鎖状、分岐鎖状または環状のいずれであってもよく、炭素数は1〜20であることが好ましく、炭素数1〜15であることがより好ましく、炭素数1〜10が特に好ましい。
また、フッ素原子を含む炭化水素基は、当該炭化水素基における水素原子の25%以上がフッ素化されていることが好ましく、50%以上がフッ素化されていることがより好ましく、60%以上がフッ素化されていることが、浸漬露光時のレジスト膜の疎水性が高まることから特に好ましい。
なかでも、Rf
101としては、炭素数1〜5のフッ素化炭化水素基がより好ましく、トリフルオロメチル基、−CH
2−CF
3、−CH
2−CF
2−CF
3、−CH(CF
3)
2、−CH
2−CH
2−CF
3、−CH
2−CH
2−CF
2−CF
2−CF
2−CF
3が特に好ましい。
【0101】
式(m−1)中、R
21におけるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。該直鎖状のアルキル基は、炭素数が1〜5であることが好ましく、1〜4がより好ましく、1または2がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられ、これらの中でもメチル基、エチル基又はn−ブチル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。該分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が3〜10であることが好ましく、3〜5がより好ましい。具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられ、イソプロピル基が特に好ましい。
【0102】
式(m−1)中、R
22は、当該R
22が結合した炭素原子と共に脂肪族環式基を形成する基である。R
22が形成する脂肪族環式基は、多環式であってもよく、単環式であってもよい。単環式の脂肪族環式基としては、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素数3〜10のものが好ましく、例えばシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン等が挙げられる。多環式の脂肪族環式基としては、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素数7〜12のものが好ましく、例えばアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0103】
(F)成分の質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、1000〜50000が好ましく、5000〜40000がより好ましく、10000〜30000が最も好ましい。この範囲の上限値以下であると、レジストとして用いるのにレジスト用溶剤への充分な溶解性があり、この範囲の下限値以上であると、耐ドライエッチング性やレジストパターン断面形状が良好である。
【0104】
(F)成分の分散度(Mw/Mn)は、1.0〜5.0が好ましく、1.0〜3.0がより好ましく、1.2〜2.5が最も好ましい。
【0105】
(F)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
レジスト組成物が(F)成分を含有する場合、(F)成分は、(A)成分100質量部に対して、通常、0.5〜10質量部の割合で用いられる。
【0106】
本実施形態のレジスト組成物には、さらに所望により混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料などを適宜、添加含有させることができる。
【0107】
[(S)成分:有機溶剤成分]
本実施形態のレジスト組成物は、レジスト材料を有機溶剤成分(以下「(S)成分」ということがある)に溶解させて製造することができる。
(S)成分としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、化学増幅型レジスト組成物の溶剤として公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。
たとえば、γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤、ジメチルスルホキシド(DMSO)等を挙げることができる。
(S)成分は、単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
なかでも、PGMEA、PGME、γ−ブチロラクトン、EL、シクロヘキサノンが好ましい。
また、PGMEAと極性溶剤とを混合した混合溶剤も好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2の範囲内とすることが好ましい。
より具体的には、極性溶剤としてEL又はシクロヘキサノンを配合する場合は、PGMEA:EL又はシクロヘキサノンの質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2である。また、極性溶剤としてPGMEを配合する場合は、PGMEA:PGMEの質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2、さらに好ましくは3:7〜7:3である。さらに、PGMEAとPGMEとシクロヘキサノンとの混合溶剤も好ましい。
また、(S)成分として、その他には、PGMEA及びELの中から選ばれる少なくとも1種とγ−ブチロラクトンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者の質量比が好ましくは70:30〜95:5とされる。
(S)成分の使用量は、特に限定されず、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定される。一般的には、レジスト組成物の固形分濃度が1〜20質量%、好ましくは2〜15質量%の範囲内となるように、(S)成分は用いられる。
【0108】
≪レジストパターン形成方法≫
本発明の第二の態様であるレジストパターン形成方法は、露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物を用いて、支持体上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を露光する工程、及び、前記露光後のレジスト膜を、現像液を用いた現像によりパターニングしてレジストパターンを形成する工程、を含む。
かかるレジストパターン形成方法は、例えば以下のようにして行うことができる。
まず、支持体上に、露光により酸を発生し、かつ、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化するレジスト組成物を、スピンナーなどで塗布し、ベーク(ポストアプライベーク(PAB))処理を、たとえば80〜150℃の温度条件にて40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施してレジスト膜を形成する。
ここでのレジスト組成物には、上述のレジスト組成物が用いられる。
次に、該レジスト膜に対し、例えばArF露光装置、電子線描画装置、EUV露光装置等の露光装置を用いて、所定のパターンが形成されたフォトマスク(マスクパターン)を介した露光、又はフォトマスクを介さない電子線の直接照射による描画等により選択的露光を行う。
その後、ベーク(ポストエクスポージャーベーク(PEB))処理を、たとえば80〜150℃の温度条件にて40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施す。
次に、前記の露光、ベーク(PEB)処理後のレジスト膜を現像する。アルカリ現像プロセスの場合は、アルカリ現像液を用い、溶剤現像プロセスの場合は、有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液)用いて行う。
現像後、好ましくはリンス処理を行う。リンス処理は、アルカリ現像プロセスの場合は、純水を用いた水リンスが好ましく、溶剤現像プロセスの場合は、有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
溶剤現像プロセスの場合、前記現像処理またはリンス処理の後に、パターン上に付着している現像液またはリンス液を超臨界流体により除去する処理を行ってもよい。
現像処理後またはリンス処理後、乾燥を行う。また、場合によっては、上記現像処理後にベーク処理(ポストベーク)を行ってもよい。このようにして、レジストパターンを得ることができる。
前記のような操作を行うことにより、微細なレジストパターンを形成することができる。
【0109】
前記の支持体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等を例示することができる。より具体的には、シリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が使用可能である。
また、支持体としては、上述のような基板上に、無機系及び/又は有機系の膜が設けられたものであってもよい。無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)や多層レジスト法における下層有機膜等の有機膜が挙げられる。
ここで、多層レジスト法とは、基板上に、少なくとも一層の有機膜(下層有機膜)と、少なくとも一層のレジスト膜(上層レジスト膜)とを設け、上層レジスト膜に形成したレジストパターンをマスクとして下層有機膜のパターニングを行う方法であり、高アスペクト比のパターンを形成できるとされている。すなわち、多層レジスト法によれば、下層有機膜により所要の厚みを確保できるため、レジスト膜を薄膜化でき、高アスペクト比の微細なパターン形成が可能となる。
多層レジスト法には、基本的に、上層レジスト膜と下層有機膜との二層構造とする方法(2層レジスト法)と、上層レジスト膜と下層有機膜との間に一層以上の中間層(金属薄膜等)を設けた三層以上の多層構造とする方法(3層レジスト法)と、に分けられる。
【0110】
露光に用いる波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、F
2エキシマレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線等の放射線を用いて行うことができる。本実施形態のレジストパターン形成方法は、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EB又はEUV用としての有用性が高く、ArFエキシマレーザー、EBまたはEUV用として特に有用である。
【0111】
レジスト膜の露光方法は、空気や窒素等の不活性ガス中で行う通常の露光(ドライ露光)であってもよく、液浸露光(Liquid Immersion Lithography)であってもよい。
液浸露光は、予めレジスト膜と露光装置の最下位置のレンズ間を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒(液浸媒体)で満たし、その状態で露光(浸漬露光)を行う露光方法である。
液浸媒体としては、空気の屈折率よりも大きく、かつ、露光されるレジスト膜の有する屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒が好ましい。かかる溶媒の屈折率としては、前記範囲内であれば特に制限されない。
空気の屈折率よりも大きく、かつ、前記レジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒としては、例えば、水、フッ素系不活性液体、シリコン系有機溶剤、炭化水素系有機溶剤等が挙げられる。
フッ素系不活性液体の具体例としては、C
3HCl
2F
5、C
4F
9OCH
3、C
4F
9OC
2H
5、C
5H
3F
7等のフッ素系化合物を主成分とする液体等が挙げられ、沸点が70〜180℃のものが好ましく、80〜160℃のものがより好ましい。フッ素系不活性液体が前記範囲の沸点を有するものであると、露光終了後に、液浸に用いた媒体の除去を、簡便な方法で行えることから好ましい。
フッ素系不活性液体としては、特に、アルキル基の水素原子が全てフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル化合物が好ましい。パーフルオロアルキル化合物としては、具体的には、パーフルオロアルキルエーテル化合物やパーフルオロアルキルアミン化合物を挙げることができる。
さらに、具体的には、前記パーフルオロアルキルエーテル化合物としては、パーフルオロ(2−ブチル−テトラヒドロフラン)(沸点102℃)を挙げることができ、前記パーフルオロアルキルアミン化合物としては、パーフルオロトリブチルアミン(沸点174℃)を挙げることができる。
液浸媒体としては、コスト、安全性、環境問題、汎用性等の観点から、水が好ましく用いられる。
【0112】
アルカリ現像プロセスにおいて、現像処理に用いるアルカリ現像液としては、上述の(A)成分(露光前の(A)成分)を溶解し得るものであればよく、公知のアルカリ現像液の中から適宜選択できる。たとえば、0.1〜10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液が挙げられる。
溶剤現像プロセスで現像の処理に用いる有機系現像液が含有する有機溶剤としては、上述の(A)成分(露光前の(A)成分)を溶解し得るものであればよく、公知の有機溶剤の中から適宜選択できる。具体的には、ケトン系有機溶剤、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤、ニトリル系有機溶剤、アミド系有機溶剤、エーテル系有機溶剤等の極性溶剤、炭化水素系有機溶剤等が挙げられる。また、現像液には、有機溶剤が80質量%以上含有され得る。
ケトン系有機溶剤は、構造中にC−C(=O)−Cを含む有機溶剤である。エステル系有機溶剤は、構造中にC−C(=O)−O−Cを含む有機溶剤である。アルコール系有機溶剤は、構造中にアルコール性水酸基を含む有機溶剤であり、「アルコール性水酸基」は、脂肪族炭化水素基の炭素原子に結合した水酸基を意味する。ニトリル系有機溶剤は、構造中にニトリル基を含む有機溶剤である。アミド系有機溶剤は、構造中にアミド基を含む有機溶剤である。エーテル系有機溶剤は、構造中にC−O−Cを含む有機溶剤である。
有機溶剤の中には、構造中に前記各溶剤を特徴づける官能基を複数種含む有機溶剤も存在するが、その場合は、当該有機溶剤が有する官能基を含むいずれの溶剤種にも該当するものとする。たとえば、ジエチレングリコールモノメチルエーテルは、前記の分類中の、アルコール系有機溶剤又はエーテル系有機溶剤のいずれにも該当するものとする。
炭化水素系有機溶剤は、ハロゲン化されていてもよい炭化水素からなり、ハロゲン原子以外の置換基を有さない炭化水素溶剤である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記の中でも、溶剤現像プロセスの現像に用いられる現像液は、高解像性のレジストパターンが得られやすいことから、エステル系有機溶剤及びケトン系有機溶剤からなる群より選ばれる1種以上を含有することが好ましく、エステル系有機溶剤を含有することがより好ましい。
【0113】
エステル系有機溶剤としては、たとえば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酢酸イソアミル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、4−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2−エトキシブチルアセテート、4−エトキシブチルアセテート、4−プロポキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート、プロピル−3−メトキシプロピオネート等が挙げられる。
前記のなかでも、エステル系有機溶剤としては、酢酸ブチルが好ましい。
【0114】
ケトン系有機溶剤としては、たとえば、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、メチルアミルケトン(2−ヘプタノン)等が挙げられる。
前記のなかでも、ケトン系有機溶剤としては、メチルアミルケトン(2−ヘプタノン)が好ましい。
【0115】
有機系現像液には、必要に応じて公知の添加剤を配合できる。該添加剤としては、たとえば界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、特に限定されないが、たとえばイオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。
界面活性剤としては、非イオン性の界面活性剤が好ましく、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤がより好ましい。
有機系現像液に界面活性剤を配合する場合、その配合量は、有機系現像液の全量に対して、通常0.001〜5質量%であり、0.005〜2質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%がより好ましい。
【0116】
現像の処理は、公知の現像方法により実施することが可能であり、たとえば現像液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、支持体表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している支持体上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出し続ける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0117】
溶剤現像プロセスの現像後のリンス処理に用いるリンス液が含有する有機溶剤としては、たとえば前記有機系現像液に用いる有機溶剤として挙げた有機溶剤のうち、レジストパターンを溶解しにくいものを適宜選択して使用できる。通常、炭化水素系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤、アミド系有機溶剤及びエーテル系有機溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤を使用する。これらのなかでも、炭化水素系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤及びアミド系有機溶剤から選択される少なくとも1種類が好ましく、エステル系有機溶剤及びケトン系有機溶剤から選択される少なくとも1種類がより好ましく、エステル系有機溶剤が特に好ましい。
これらの有機溶剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、前記以外の有機溶剤や水と混合して用いてもよい。ただし、現像特性を考慮すると、リンス液中の水の含有量は、リンス液の全量に対し、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、3質量%以下が特に好ましい。
リンス液には、必要に応じて公知の添加剤を添加できる。該添加剤としては、例えば界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、前記と同様のものが挙げられ、非イオン性の界面活性剤が好ましく、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤がより好ましい。
界面活性剤を添加する場合、その添加量は、リンス液の全量に対して、通常0.001〜5質量%であり、0.005〜2質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%がより好ましい。
【0118】
リンス液を用いたリンス処理(洗浄処理)は、公知のリンス方法により実施できる。該方法としては、たとえば一定速度で回転している支持体上にリンス液を塗出し続ける方法(回転塗布法)、リンス液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
【実施例】
【0119】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
なお、実施例1、2、4、6〜10及び13は参考例である。
【0120】
<レジスト組成物の基材成分>
本実施例に用いた基材成分のポリマー−(1)〜ポリマー−(3)及びポリマー−(5)〜ポリマー−(11)は、各高分子化合物を構成する構成単位を提供するモノマーM−1〜M−9を、所定のモル比で用いてラジカル重合させることによりそれぞれ得た。
【0121】
【化26】
【0122】
【表1】
【0123】
表中のモル比は、例えばポリマー−(1)については、M−1:M−5のモル比を示し、ポリマー−(2)〜ポリマー−(3)及びポリマー−(5)〜ポリマー−(11)についても同様である。
【0124】
<レジスト組成物の調製:実施例1〜12、比較例1〜8>
表2及び3に示す各成分を混合して溶解することにより、各例のレジスト組成物を調製した。
【0125】
【表2】
【0126】
【表3】
【0127】
表2及び3中、各略号は、それぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は、配合量(質量部)である。
ポリマー−(1)〜ポリマー−(3)及びポリマー−(5)〜ポリマー−(11):上記表1のポリマー−(1)〜ポリマー−(3)及びポリマー−(5)〜ポリマー−(11)。
PAG−(A)〜PAG−(H):下記化学式で表される酸発生剤。
【0128】
【化27】
【0129】
Quencher(A)〜(C):下記化学式で表される酸拡散制御剤
【0130】
【化28】
【0131】
Additive(A):下記式で表されるポリマー。
【0132】
【化29】
【0133】
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0134】
<溶剤現像ネガ型レジストパターンの形成:実施例1〜6、比較例1〜4>
12インチのシリコンウェーハ上に、有機系反射防止膜組成物「ARC95」(商品名、ブリュワーサイエンス社製)を、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で205℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚90nmの有機系反射防止膜を形成した。
次いで、該膜上に、上記表2及び3のレジスト組成物をそれぞれスピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、温度110℃で60秒間の条件でポストアプライベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚85nmのレジスト膜を形成した。
次いで、該レジスト膜に、露光装置NSR−S609B[ニコン社製;NA=1.30、Crosspole、液浸媒体:水]により、ArFエキシマレーザー(193nm)を位相シフトマスク(Phase Shift Mask、PSM)を介して選択的に照射した。
その後、90℃で60秒間ポストエクスポージャーベーク(PEB)処理を行った。
次いで、23℃にて、酢酸ブチルを用いて13秒間の溶剤現像を行い、振り切り乾燥を行った。
その結果、いずれの例においても、ホール直径45nmのホールが等間隔(ピッチ:90nm)に配置されたコンタクトホールパターン(以下“CHパターン”という。)が形成された。
【0135】
<溶剤現像ネガ型レジストパターンの形成(1):実施例7〜10、比較例5〜6>
12インチのシリコンウェーハ上に、有機系反射防止膜組成物「ARC95」(商品名、ブリュワーサイエンス社製)を、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で205℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚90nmの有機系反射防止膜を形成した。
次いで、該膜上に、上記表2及び3のレジスト組成物をそれぞれスピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、温度110℃で60秒間の条件でポストアプライベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚85nmのレジスト膜を形成した。
次いで、該レジスト膜に対し、液浸用ArF露光装置NSR−S609B[Nikon社製;NA(開口数)=1.30、Dipole(in/out=0.78/0.97)with POLANO、液浸媒体:水]により、マスクを介して、ArFエキシマレーザー(193nm)を選択的に照射した。
その後、95℃で60秒間ポストエクスポージャーベーク(PEB)処理を行った。
次いで、23℃にて、酢酸ブチルを用いて30秒間の溶剤現像を行い、振り切り乾燥を行った。
その結果、いずれの例においても、スペース幅45nm/ピッチ96nmのラインアンドスペースパターン(以下、単に「LSパターン」ともいう。)が形成された。
【0136】
<アルカリ現像ポジ型レジストパターンの形成:実施例11〜12、及び比較例7〜8>
12インチのシリコンウェーハ上に、有機系反射防止膜組成物「ARC95」(商品名、ブリューワーサイエンス社製)をスピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で205℃、60秒間焼成して乾燥することにより、膜厚90nmの有機系反射防止膜を形成した。
次いで、該膜上に、前記表2及び3のレジスト組成物をそれぞれスピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、温度110℃で60秒間の条件にてポストアプライベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。
次いで、該レジスト膜に、液浸装置NSR−S609B[ニコン社製;NA=1.30、Dipole、0.78/0.97 w/o P]により、ArFエキシマレーザー(193nm)を位相シフトマスクを介して選択的に照射した。
次いで、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH )を用いて13秒間のアルカリ現像処理を施した。
その後、95℃(PEB(℃))で60秒間の露光後加熱処理を行った。
その結果、下記のコンタクトホールパターンが形成された。
CHパターン:マスクサイズ60nm/110nmピッチ/ホール直径55nm
【0137】
<レジストパターンの評価>
[CDU(パターン寸法の面内均一性)評価]
上記CHパターン中の100個のホールを、測長SEM(走査電子顕微鏡、加速電圧300V、商品名:S−9380、日立ハイテクノロジーズ社製)により上から観察し、各ホールのホール直径(nm)を測定した。その測定結果から算出した標準偏差(σ)の3倍値(3σ)を求めた。その結果を「CDU」として表4及び表5に示す。
このようにして求められる3σは、その値が小さいほど、当該レジスト膜に形成された複数のホールの寸法(CD)均一性が高いことを意味する。
【0138】
【表4】
【0139】
表4に示す結果から、実施例1〜6は、比較例1〜4に比べて、CDUの値が小さいことから、パターン寸法の面内均一性が高いことを確認することができる。
【0140】
【表5】
【0141】
表5に示す結果から、実施例11及び12は、比較例7及び8に比べて、CDUの値が小さいことから、パターン寸法の面内均一性が高いことを確認することができる。
【0142】
[ラインワイズラフネス(LWR)の評価]
上記のようにして形成されたレジストパターンにおいて、測長SEM(加速電圧300V)により、LSパターンのスペース幅をスペースの長手方向に400箇所測定した。測長SEMには、日立ハイテクノロジーズ社製の走査型電子顕微鏡(商品名:S−9380)を用いた。
次いで、各パターンのスペース幅の測定結果から、標準偏差(s)の3倍値(3s)を求め、400箇所の3sについて平均化した値を、LWRを示す尺度として算出した。その結果を「LWR(nm)」として表6に示す。
このようにして求められる3sは、その値が小さいほどスペース部分のラフネスが小さく、より均一な幅のスペースを有するLSパターンが得られたことを意味する。
【0143】
【表6】
【0144】
上記表に示したとおり、実施例7〜10は、比較例5〜6に比べて、LWRの値が小さいことから、ラフネスが低減した良好な形状のパターンが得られるということが分かる。
また、上記結果から分かるように、一般式(1)で表される構成単位を有するポリマーを含む基材成分(A)、及び一般式(2)で表されるアニオンを有する酸発生剤成分(B)のいずれをも含有する本発明のレジスト組成物を用いて形成したレジストパターンは、CDU及びLWRがいずれも良好であることが分かる。
【0145】
<溶剤現像ネガ型レジストパターンの形成:実施例13>
12インチのシリコンウェーハ上に、有機系反射防止膜組成物「ARC95」(商品名、ブリュワーサイエンス社製)を、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で205℃、60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚90nmの有機系反射防止膜を形成した。
次いで、該膜上に、上記表2の実施例13のレジスト組成物をスピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、温度110℃で60秒間の条件でポストアプライベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚85nmのレジスト膜を形成した。
次いで、該レジスト膜に、露光装置NSR−S610C[ニコン社製;NA=1.30、Crosspole、液浸媒体:水]により、ArFエキシマレーザー(193nm)を位相シフトマスク(Phase Shift Mask、PSM)を介して選択的に照射した。
その後、90℃で60秒間ポストエクスポージャーベーク(PEB)処理を行った。
次いで、23℃にて、酢酸ブチルを用いて30秒間の溶剤現像を行い、振り切り乾燥を行った。
その結果、ホール直径45nmのホールが等間隔(ピッチ:90nm)に配置されたコンタクトホールパターン(以下“CHパターン”という。)が形成された。
【0146】
<レジストパターンの評価>
[CDU(パターン寸法の面内均一性)評価]
上記CHパターン中の200個のホールを、測長SEM(走査電子顕微鏡、加速電圧500V、商品名:CG5000、日立ハイテクノロジーズ社製)により上から観察し、各ホールのホール直径(nm)を測定した。その測定結果から算出した標準偏差(σ)の3倍値(3σ)を求めた。その結果を「CDU」として表7に示す。
このようにして求められる3σは、その値が小さいほど、当該レジスト膜に形成された複数のホールの寸法(CD)均一性が高いことを意味する。
【0147】
【表7】
【0148】
表7に示す結果から、実施例13は、CDUの値が小さいことから、パターン寸法の面内均一性が高いことを確認することができる。
【0149】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。