特許第6872590号(P6872590)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの特許一覧

特許6872590再生可能な原料を主原料とするポリウレタン
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6872590
(24)【登録日】2021年4月21日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】再生可能な原料を主原料とするポリウレタン
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/42 20060101AFI20210510BHJP
   C08G 18/66 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   C08G18/42
   C08G18/66 033
   C08G18/66 040
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-166317(P2019-166317)
(22)【出願日】2019年9月12日
(62)【分割の表示】特願2016-522413(P2016-522413)の分割
【原出願日】2014年6月20日
(65)【公開番号】特開2019-218565(P2019-218565A)
(43)【公開日】2019年12月26日
【審査請求日】2019年10月7日
(31)【優先権主張番号】13174649.7
(32)【優先日】2013年7月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエイエスエフ・ソシエタス・エウロパエア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ヴェッタハ,ヘンニンク
(72)【発明者】
【氏名】イゼンビューゲル,カトリン
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−180467(JP,A)
【文献】 特表2013−514406(JP,A)
【文献】 特開平3−111418(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/064130(WO,A1)
【文献】 化学大辞典編集委員会編集,化学大辞典5,1963年,第368頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18、63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のポリイソシアネートと、少なくとも1種のポリエステルポリオールと、を主原料とするポリウレタンであって、
前記ポリエステルポリオールは、少なくとも1種の多価アルコールと、2種以上のジカルボン酸の混合物とを主原料とし、
前記2種以上のジカルボン酸の少なくとも1種は、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られ、
前記2種以上のジカルボン酸の混合物が、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られるセバシン酸を含み、
前記2種以上のジカルボン酸がC6〜C10ジカルボン酸から選択され
前記少なくとも1種の多価アルコールが、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られた1,3−プロパンジオールであり、
前記ポリウレタンが発泡剤を含まないことを特徴とするポリウレタン。
【請求項2】
前記ポリウレタンが、少なくとも1種の鎖延長剤を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項3】
前記ポリウレタンが、熱可塑性ポリウレタンであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリウレタン。
【請求項4】
前記2種以上のジカルボン酸の混合物が、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られたセバシン酸、及びアジピン酸を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のポリウレタン。
【請求項5】
セバシン酸およびアジピン酸が、80:20〜20:80、好ましくは70:30〜30:70のモル比で使用されることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のポリウレタン。
【請求項6】
前記ポリイソシアネートが、2,2’−、2,4’−、及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−、及び2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、及び1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]シクロヘキサン(H12MDI)からなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のポリウレタン。
【請求項7】
前記少なくとも1種の鎖延長剤が、C2〜C6ジオールからなる群から選択されることを特徴とする請求項2〜のいずれか1項に記載のポリウレタン。
【請求項8】
少なくとも1種のポリイソシアネートと、少なくとも1種のポリエステルポリオールとを反応させる工程を少なくとも含む熱可塑性ポリウレタンの製造方法であって、
前記ポリエステルポリオールが、少なくとも1種の多価アルコールと、2種以上のジカルボン酸の混合物と、を主原料とし、
前記2種以上のジカルボン酸の少なくとも1種が、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られ、
前記2種以上のジカルボン酸の混合物が、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られたセバシン酸を含み、
前記2種以上のジカルボン酸がC6〜C10ジカルボン酸から選択され、
前記少なくとも1種の多価アルコールが、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られた1,3−プロパンジオールであり、
前記の熱可塑性ポリウレタンの製造方法において発泡剤を使用しないことを特徴とする製造方法。
【請求項9】
成形品、ホース、自立膜/シート、不織布品又は繊維の製造に、請求項1〜のいずれか1項に記載のポリウレタン、又は請求項に記載の方法によって得られるポリウレタンを使用する方法。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載のポリウレタン、又は請求項に記載の方法によって得られるポリウレタンを含む成形品、自立膜/シート、ホース、不織布品又は繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のポリイソシアネート、及び少なくとも1種のポリエステルポリオールを主原料とするポリウレタンであって、ポリエステルポリオールが、少なくとも1種の多価アルコール、及び2種以上のジカルボン酸の混合物を主原料とし、2種以上のジカルボン酸の少なくとも1種が、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られることを特徴とするポリウレタンに関し、そのようなポリウレタンの製造方法に関し、及びそのようなポリウレタンを含む成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明のポリウレタンは、ブルーム(bloom、表面に成分が浮き出て粉を吹く現象)する傾向が極めて少ない。
【0003】
高分子ヒドロキシ化合物、例えば、ポリエステルポリオールは、イソシアネートと反応してポリウレタンを形成する。そのポリウレタンは、その特有な機械的特性によって、様々な可能性のある用途を有する。特に、ポリエステルポリオールは、好ましい特性を有し、そのため、高級なポリウレタン製品に使用される。
【0004】
再生可能な原料の使用によって、少なくとも部分的に得られるポリウレタンは、例えば、WO2011/083000A1、WO2012/173911A1又はWO2010/031792A1から公知である。
【0005】
高分子工業における天然原料の使用は、時には出発材料が低コストになるので、更に重要となっている。また、再生可能な原料を主原料とするポリウレタン製品についての市場の需要が増加しており、それゆえに、石油化学原料が少なくとも部分的に代替されている。
【0006】
天然原料は、より特には、植物又は植物の部分(又は動物)を加工することによって得られる物質である。再生可能な原料から製造される原料は、かなりの割合を占める炭素同位体14Cによって特徴付けられる。その測定は、実験的に行われる再生可能な原料の割合の測定でもよい。再生可能な原料は、より均一でない(それらの組成が、明確により大きく変化し得る)という点で、化学合成及び/又は石油精製によって得られる材料と異なる。
【0007】
天然原料の組成の変動は、例えば、植物が成長する気候及び地域、それが収穫される時期、生物種及び亜種間の差異、及び天然原料を回収するために使用される抽出方法の種類(押出法、遠心分離法、ろ過法、蒸留法、切削法(cutting)、押圧法(pressing)等)の因子による。天然原料の組成についてのこれらの変動、及び他の除去し難い混在物、例えば、分解生成物又は不純物の存在は、しばしば、更なる加工において問題を引き起こし、それゆえに、これらの材料の工業的使用を制限する。
【0008】
天然原料から得られる出発材料の反応によるポリエステルポリオールの製造は、非常に興味深いものであり、特に、例えば、製靴産業にとって(熱可塑性)ポリウレタンの製造
は興味深い。
【0009】
US−A−5695884には、高い結晶化度を有する熱可塑性ポリウレタンのための、セバシン酸を主原料とするポリエステルポリオールの使用方法が開示されている。また、US2006/0141883A1及びUS2006/0121812には、高い融点を有する繊維であるポリウレタンを製造するための、セバシン酸を主原料とするポリエステルポリオールの使用方法が記載されている。WO00/51660A1には、セバシン酸を主原料とするポリエステルポリオールを利用することができ、かつ、十分な硬度が要求される、心臓カテーテル用のポリウレタンが記載されている。更に、US2007/0161731A1及びUS6395833B1には、セバシン酸を使用して、ポリウレタン化学で使用するためのポリエステルポリオールを製造することが記載されている。
【0010】
しかしながら、ポリウレタンの製造において、セバシン酸を主原料とするポリエステルポリオールを使用することには問題がある。それは、加工されたポリウレタンに白色のブルームが現れることから、非常に顕著な白華現象が生じることが徐々に認識されるようになったことによるものである。そのため、多くの可能性のある用途があるために、その外観は、もはや許容され難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO2011/083000A1
【特許文献2】WO2012/173911A1
【特許文献3】WO2010/031792A1
【特許文献4】US−A−5695884
【特許文献5】US2006/0141883A1
【特許文献6】US2006/0121812
【特許文献7】WO00/51660A1
【特許文献8】US2007/0161731A1
【特許文献9】US6395833B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、ポリウレタン、特に、良好な機械的特性を有し、再生可能な原料を使用して得られ、ブルームが生じる傾向が少ない熱可塑性ポリウレタンを提供することである。
【0013】
この目的は、少なくとも1種のポリイソシアネート及び少なくとも1種のポリエステルポリオールを主原料とするポリウレタンであって、ポリエステルポリオールが、少なくとも1種の多価アルコール、及び2種以上のジカルボン酸の混合物を主原料とし、2種以上のジカルボン酸の少なくとも1種は、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られることを特徴とするポリウレタンによる本発明によって達成される。
【0014】
本発明において、ポリウレタンは、少なくとも1種のポリイソシアネート、及び少なくとも1種のポリエステルポリオールを主原料とし、その中で、ポリエステルポリオールは、少なくとも1種の多価アルコール及び、2種以上のジカルボン酸の混合物を主原料とし、2種以上のジカルボン酸の少なくとも1種は、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られる。供給材料が、再生可能な原料から得られたことを証明するために、例えば、ASTMD6866の14C法が使用され得る。
【0015】
ポリウレタンは、他の成分、例えば、少なくとも1種の鎖延長剤、又は加水分解抑制剤、酸化防止剤、UV安定剤、可塑剤、有機又は無機充填剤、離型助剤、及び他の通例の添加剤を含んでもよい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
従って、他の実施形態の一つにおいては、本発明はまた、少なくとも1種の鎖延長剤を含む上述のポリウレタンを提供する。
【0017】
他の実施形態の一つにおいては、本発明はまた、熱可塑性ポリウレタンである上述のポリウレタンを提供する。
【0018】
驚くことに、本発明のポリウレタンは、良好な機械的特性を有すると同時に、市販の熱可塑性ポリウレタンと比較して、ブルームが生じる傾向が明確に少ないということがわかった。
【0019】
同時に、本発明のポリウレタンは、好ましくは透明である。さらに、本発明のポリウレタンは、低い黄色度を有するが、ほとんど変色しない。しばしば、生物由来の原料を使用することで、最終生成物の黄色度が高くなることに示されるように、最終生成物が変色する。(熱可塑性)
【0020】
同様に、黄色度が高いポリウレタンは、使用する者にとっては不要であり、そのような生成物の可能性のある用途を制限することになる。
【0021】
原則的には、当業者に公知の任意の好適なポリエステロールは、本発明の目的のためには有用である。本発明の目的のために使用されるポリエステルポリオールは、好ましくは、1.8〜2.3の範囲、より好ましくは、1.9〜2.2の範囲、特に2に等しい平均官能基数を有する。本発明のポリエステルポリオールは、好ましくは、ポリエステルジオールである。従って、他の実施形態においては、本発明は、少なくとも1種のポリイソシアネート、及び少なくとも1種のポリエステルジオールを主原料とするポリウレタンであって、ポリエステルジオールが、少なくとも1種の多価アルコール、及び2種以上のジカルボン酸の混合物を主原料とし、2種以上のジカルボン酸の少なくとも1種が、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られることを特徴とするポリウレタンを提供する。
【0022】
本発明の目的のために使用されるポリエステルポリオールの好適な分子量範囲は、当業者に公知である。好ましい実施形態の一つにおいては、ポリエステルポリオールの分子量は、500〜4000g/molの範囲、より好ましくは、800〜3000g/molの範囲、最も好ましくは、1000〜2500g/molの範囲である。
【0023】
本発明の目的のために特に好適なポリエステルポリオールは、25〜230mgKOH/gの範囲、より好ましくは、35〜140mgKOH/gの範囲、最も好ましくは、40〜115mgKOH/gの範囲のOH価を有する。
【0024】
本発明においては、ポリエステルポリオールは、多価アルコールを主原料とする。好適な多価アルコールは、例えば、脂肪族多価アルコール、例えば、2個、3個、4個又はそれ以上のOH基、例えば、2個又は3個のOH基を有する脂肪族アルコールを含む。本発明の目的のための好適な脂肪族アルコールは、例えば、C2〜C12アルコール、好ましくはC2〜C8アルコール、最も好ましくは、C2〜C6アルコールを含む。本発明の目的のために好ましくは、多価アルコールがジオールであることであり、好適なジオールは、当業者に公知である。
【0025】
好適な脂肪族C2〜C6ジオールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、3−オキサペンタン−1,5−ジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、及び3−メチル−1,5−ペンタンジオールを含む。さらに好ましくは、多価アルコールが、1,3−プロパンジオール及び1,4−ブタンジオールからなる群から選択されることである。
【0026】
他の実施形態の一つにおいては、少なくとも1種の多価アルコールが、脂肪族C2〜C6ジオールからなる群から選択される上述のポリウレタンを提供する。
【0027】
他の実施形態の一つにおいては、本発明はまた、少なくとも1種の多価アルコールが、1,3−プロパンジオール及び1,4−ブタンジオールからなる群から選択される上述のポリウレタンを提供する。
【0028】
本発明の目的のためには、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られる多価アルコールを使用することも可能である。問題の多価アルコールは、部分的に又は全体的に、再生可能な原料から得られてもよい。本発明においては、2種以上の多価アルコールの混合物を使用することもできる。2種以上の多価アルコールが使用される場合には、使用される1種以上の多価アルコールは、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られてもよい。
【0029】
従って、1,3−プロパンジオールは、合成によって製造される1,3−プロパンジオールを含んでもよいが、特に、再生可能な原料から得られる1,3−プロパンジオール(“生物由来の1,3−プロパンジオール”)を含む。生物由来の1,3−プロパンジオールは、例えば、トウモロコシ(コーン)及び/又は砂糖から得られる。更なる可能性は、バイオディーゼル製造からの廃グリセロールを変換することである。本発明の他の好ましい実施形態の一つにおいては、多価アルコールは、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られる1,3−プロパンジオールである。
【0030】
更なる実施形態の一つにおいては、本発明はまた、少なくとも1種の多価アルコールが、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られる1,3−プロパンジオールである上述のポリウレタンを提供する。
【0031】
3個以上のOH基を有するアルコールは、また、ポリエステルポリオールの官能基数を高めるために使用され得る。3個以上のOH基を有するアルコールの例は、グリセロール、トリメチロールプロパン、及びペンタエリトリトールである。2個以上のヒドロキシル基を有するオリゴマー又はポリマー製品を使用することも可能である。それらの例は、ポリテトラヒドロフラン、ポリラクトン、ポリグリセロール、ポリエテロール、ポリエステロール又は、α,ω−ジヒドロキシポリブタジエンである。
【0032】
本発明におけるポリエステルポリオールは、少なくとも1種の多価アルコールだけではなく、2種以上のジカルボン酸の混合物をも主原料とし、2種以上のジカルボン酸の少なくとも1種は、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られる。ポリエステルポリオールを製造するために好適なジカルボン酸は、当業者に公知である。
【0033】
本発明は、2種以上のジカルボン酸の混合物、例えば、2個、3個又は4個のジカルボン酸の混合物を使用する。C2〜C12ジカルボン酸の群から選択される2種又は3種の異なるジカルボン酸の混合物が、例えば、本発明に関係してもよい。C2〜C12ジカルボン酸によるということは、脂肪族又は分岐状であり、かつ、2個〜12個の炭素原子を有するジカルボン酸であることが意図される。本発明によって使用されるジカルボン酸は、C2〜C14ジカルボン酸、好ましくはC4〜C12ジカルボン酸、より好ましくは、C6〜C10ジカルボン酸から選択されることも可能である。
【0034】
本発明の目的のために使用される1種以上のジカルボン酸は、カルボン酸ジエステルの形態で、又はカルボン酸無水物の形態でもよい。脂肪族及び/又は芳香族ジカルボン酸は、原則的に、ジカルボン酸として使用されてもよい。
【0035】
本発明は、2種以上のジカルボン酸の混合物であって、2種以上のジカルボン酸の少なくとも1種が、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られる2種以上のジカルボン酸の混合物を使用する。本発明におけるこの結合において使用される混合物は、3種以上のジカルボン酸を含んでもよく、その場合、存在する少なくとも1種のジカルボン酸は、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られる。本発明の実施形態の一つにおいては、使用される混合物は、2種のジカルボン酸からなるが、2種のジカルボン酸の少なくとも1種は、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られることを条件とする。
【0036】
好適なジカルボン酸は、特定の加工方法によって、天然原料から得られる。例えば、比較的長鎖のアルコール(例えば、1−又は2−オクタノール)の存在下で、かつ、高温で、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを使用して、ひまし油を処理することによって、セバシン酸が得られる。ここで、セバシン酸は、反応条件に従って、他の生成物の間で、99.5%を超える純度で得られる。セバシン酸(1,8−オクタンジカルボン酸)は、脂肪族ジカルボン酸の同族列のうちの一つである。コハク酸及び/又は2−メチルコハク酸は、特に、セバシン酸と同じように好適である。それらは、例えば、天然原料、例えば、砂糖又はコーン(とうもろこし)を発酵させることで得られる。再生原料から少なくとも部分的に得られるアゼライン酸は、本発明の目的にとって、さらに好適なジカルボン酸である。
【0037】
本発明の特に好ましい実施形態の一つにおいては、天然原料から少なくとも部分的に得られるジカルボン酸は、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸及びコハク酸からなる群から選択される。
【0038】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、使用される混合物は、再生可能な原料から得られるセバシン酸を含む。
【0039】
更なる実施形態の一つにおいては、本発明はまた、2種以上のジカルボン酸の混合物が、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られるセバシン酸を含む上述のポリウレタンを提供する。
【0040】
再生可能な原料から少なくとも部分的に得られる少なくとも1種のジカルボン酸と共に、更なるジカルボン酸として使用されるジカルボン酸は、好ましくは、同様に、C2〜C12ジカルボン酸の群から選択される。前述のジカルボン酸に、特に、アジピン酸を加えたものが好ましい。
【0041】
更なる実施形態の一つにおいては、本発明はまた、2種以上のジカルボン酸の混合物が、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られるセバシン酸、及びアジピン酸を含む上述のポリウレタンを提供する。
【0042】
本発明の目的のためには、混合物が、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られるセバシン酸に加えて、再生可能な原料を少なくとも部分的に主原料とする少なくとも1種の更なるジカルボン酸を含むことも可能である。従って、本発明の更なる実施形態においては、混合物は、共に、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られる2種のジカルボン酸を含む。
【0043】
例えば、2種以上のジカルボン酸の混合物は、少なくともセバシン酸及びアジピン酸を含んでもよく、その場合、セバシン酸とアジピン酸の両方が、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られることも可能である。
【0044】
セバシン酸及びアジピン酸を含む2種以上のジカルボン酸の混合物中の、セバシン酸及びアジピン酸が占める範囲は、好ましくは、90質量%以上、より好ましくは、95〜100質量%、最も好ましくは、98〜99.99質量%である。
【0045】
混合物中で使用されるジカルボン酸間の混合比は、本発明の目的のためには、幅広い範囲で変化してもよい。mol%で表わされた2種以上のジカルボン酸について、好ましい実施形態においては、この混合比は、90:10〜10:90、より好ましくは、80:20〜20:80、最も好ましくは、70:30〜30:70の範囲でもよい。
【0046】
更に好ましい実施形態においては、ジカルボン酸であるセバシン酸、及びアジピン酸の混合比(mol%比)は、90:10〜10:90、より好ましくは、80:20〜20:80、最も好ましくは、70:30〜30:70である。
【0047】
本発明において、使用される少なくとも1種のジカルボン酸、及び好ましくは、使用される多価アルコールは、好ましくは、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られる。「少なくとも部分的に」は、本発明においては、対応するジカルボン酸又はアルコールが、再生可能な原料から25%以上の範囲で得られ、特に、再生可能な原料から50〜100%の範囲で、より好ましくは、75〜100%の範囲で、さらにより好ましくは、85〜100%の範囲で、最も好ましくは、95〜100%の範囲で得られたことを意味するものとして理解される。
【0048】
本発明の更なる実施形態においては、ポリエステルポリオールは、それぞれ再生可能な原料から少なくとも部分的に得られるジカルボン酸、及び多価アルコールを使用することによって製造される。
【0049】
好ましくは高温かつ減圧下で、好ましくは、公知の触媒の存在下で、対応するヒドロキシ化合物とジカルボン酸の重縮合によるポリエステルポリオールの製造方法は、一般的知識であり、広く記載されている。
【0050】
同様に、ポリウレタンの製造方法も一般的知識である。例えば、熱可塑性ポリウレタンは、イソシアネートが、触媒及び/又は一般的な助剤の存在下で、又は触媒及び/又は一般的な助剤を使用せずに、ポリエステルポリオール、及び50〜499g/molの分子量を有する任意の鎖延長剤と反応することによって得られる。
【0051】
使用される成分の比は、広い範囲間で変化してもよい。この使用される成分の比は、一般的には、OH基に対するNCO基の比によって記載され、OH基は、使用されるポリエステルポリオール、鎖延長剤及び任意の更なる添加剤についてのOH基の合計である。
【0052】
本発明における、OH基に対するNCO基の比は、例えば、0.9〜1.1の範囲であり、好ましくは、0.95〜1.05の範囲である。
【0053】
熱可塑性ポリウレタンは、好ましくは、イソシアネートが、触媒及び/又は一般的な助剤の存在下で、又は触媒及び/又は一般的な助剤を使用せずに、ポリエステルポリオール、及び任意の更なるイソシアネート反応性化合物、及び任意の鎖延長剤と反応することによる本発明に従って製造される。例えば、本発明において、可塑剤が使用されてもよい。本発明に従って使用され、好ましい可塑剤は、イソシアネート反応性基を有してもよい。しかしながら、同様に、使用される可塑剤が、いかなるイソシアネート反応性基を有さないことも可能である。好適な可塑剤は、公知であり、“プラスチック添加剤ハンドブック”(第5版、H.Zwifel等、Hanser出版社、ミュンヘン、2001年)を参照のこと。
【0054】
本発明のポリウレタンは、プレポリマーの中間段階で得られる。エンドユーザーが、単純な処理についての利点、特に、イソシアネート成分の利点を有するために、不完全なポリマー鎖のみが最初に製造される。不完全に反応される出発材料がこのように提供されることは、例えば、靴底の製造において非常に重要なシステムと呼ばれる。
【0055】
有機イソシアネートとして、一般的に公知の芳香族、脂肪族、脂環式及び/又は芳香脂肪族イソシアネート、好ましくは、ジイソシアネート、例えば、2,2’−、2,4’−及び/又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、2,4−及び/又は2,6−トリレンジイシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルジイソシアネート、1,2−ジフェニルエタンジイソシアネート及び/又はフェニレンジイソシアネート、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−、及び/又はオクタメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、2−エチルブチレン1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、ブチレン1,4−ジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート,IPDI)、1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]シクロヘキサン(H12MDI)、2,6−ジイソシアナトヘキサンカルボン酸エステル、1,4−及び/又は1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1−メチル−2,4−及び/又は−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート及び/又は4,4’−、2,4’−及び2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、好ましくは、2,2’−、2,4’−及び/又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]シクロヘキサン及び/又はIPDI、より特には、4,4’−MDI及び/又はヘキサメチレンジイソシアネート及び/又はH12MDIが使用されてもよい。
【0056】
更なる実施形態の一つにおいては、本発明はまた、製造用に使用されるポリイソシアネートが、2,2’−、2,4’−及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート及び1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]シクロヘキサン(H12MDI)からなる群から選択される上述のポリウレタンを提供する。
【0057】
有用な鎖延長剤は、一般的に公知であり、50〜499g/molの分子量を有する脂肪族、芳香脂肪族、芳香族及び/又は脂環式化合物、好ましくは、2−官能性化合物、例えば、アルキレンラジカル中に2〜10個の炭素原子を有するアルカンジオール、好ましくは、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及び/又はジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−、オクタ−、ノナ−及び/又は3〜8個の炭素原子のデカアルキレングリコール、好ましくは、分岐していないアルカンジオール、より特に、1,3−プロパンジオール及び1,4−ブタンジオールを含む。
【0058】
本発明の目的のためには、好ましくは、鎖延長剤が、脂肪族C2〜C6ジオールからなる群から選択され、より好ましくは、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールからなる群から選択されることである。
【0059】
更なる実施形態の一つにおいては、本発明はまた、少なくとも1種の鎖延長剤が、C2〜C6ジオールからなる群から選択される上述のポリウレタンを提供する。
【0060】
本発明の目的のために更に好ましくは、使用される鎖延長剤が、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られることである。本発明の目的のためには、使用される鎖延長剤が、再生可能な原料から部分的に又は全体的に得られることが可能である。
【0061】
更に好ましい実施形態においては、従って、鎖延長剤は、1,3−プロパンジオール及び再生可能な原料から少なくとも部分的に得られる1,3−プロパンジオールからなる群から選択される。
【0062】
更に好ましい実施形態においては、2種以上のジカルボン酸の少なくとも1種、及びポリエステルポリオールの製造用に使用される多価アルコール、及び使用される鎖延長剤は、それぞれ、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られる。
【0063】
特に、ポリイソシアネートのNCO基とポリオール成分の間の反応において、速度を速めるために好適な触媒は、先行技術から公知の一般的な化合物、及び技術文献からの誘導体である。本発明において好適な触媒の例は、第三級アミン、例えば、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N,N’−ジメチルピペラジン、2−(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン等、より特に、有機金属化合物、例えば、チタンエステル、鉄化合物、例えば、鉄(VI)アセチルアセトネート、スズ化合物、例えば、スズジアセテート、スズジオクトエート、スズジラウレート、又は脂肪族カルボン酸のスズジアルキル塩、例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート等である。触媒は、通例、ポリヒドロキシ化合物100質量部当たり、0.00001〜0.1質量部の量で使用される。
【0064】
触媒に加えて、構造成分、すなわち、ポリオール、イソシアネート及び鎖延長剤に、一般的な助剤を加えてもよい。例えば、発泡剤、界面活性剤、難燃剤、核剤、潤滑剤及び離型助剤、染料及び顔料、安定剤、例えば、加水分解抑制剤、耐光剤、耐熱剤又は変色抑制剤、無機及び/又は有機充填剤、補強剤、可塑剤及び金属不活性化剤である。使用される加水分解抑制剤は、好ましくは、オリゴマー及び/又は高分子脂肪族又は芳香族カルボジイミドである。エイジング(aging、経時変化)に対して本発明のポリウレタンを安定化させるために、好ましくは、ポリウレタンに安定剤を添加することである。本発明の目的のための安定剤は、有害な環境影響からプラスチック又はプラスチック混合物を保護する添加剤である。例えば、一次及び二次酸化防止剤、チオシナジスト、三価リンの有機リン化合物、ヒンダードアミン光安定剤、UV吸収剤、加水分解抑制剤、消光剤及び難燃剤である。市販の安定剤の例は、“プラスチック添加剤ハンドブック”(第5版、H.Zwifel、Hanser出版社、ミュンヘン、2001年、98〜136ページ)に記載されている。本発明のポリウレタンを使用するときに、熱酸化ダメージ(thermal oxidative damage)を受けるときは、酸化防止剤を加えてもよい。好ましくは、フェノール類の酸化防止剤を使用することである。フェノール類の酸化防止剤の例は、“プラスチック添加剤ハンドブック”(第5版、H.Zwifel、Hanser出版社、ミュンヘン、2001年、98〜107ページ、116〜121ページ)に記載されている。好ましくは、分子量が700g/molより大きいフェノール類の酸化防止剤である。好ましく使用されるフェノール類の酸化防止剤の一つの例は、ペンタエリトリチルテトラキス(3−(3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(Irganox(R)1010)又は、対応する酸化防止剤から形成される、他の高分子量の縮合生成物である。フェノール類の酸化防止剤は、全て、ポリウレタンの合計質量に対して、0.1質量%と5質量%の間、好ましくは、0.1質量%と2質量%の間、特に、0.5質量%と1.5質量%の間の濃度で使用される。更に好ましくは、アモルファス状態又は液体の酸化防止剤を使用することである。本発明のポリウレタンが、それらの好ましい構成によって、紫外線に対して、例えば、フタレート又はベンゾエートで可塑化されたポリウレタンよりも、明確に安定であるのに、フェノール類の安定化剤による安定のみが、しばしば不十分である。この理由のために、UV光を受ける本発明のポリウレタンは、好ましくは、付加的に、UV吸収剤によって安定化される。UV吸収剤は、高エネルギーUV光を吸収し、エネルギーを放散する分子である。工業において幅広く使用されるUV吸収剤は、例えば、桂皮酸エステル、ジフェニルシアノアクリレート、オキサミド(オキサニリド)、より特に、2−エトキシ−2’−エチルオキサニリド、ホルムアミジン、ベンジリデンマロネート、ジアリールブタジエン、トリアジン、及びベンゾトリアゾールの群に属する。市販のUV吸収剤の例は、“プラスチック添加剤ハンドブック”(第5版、H.Zwifel、Hanser出版社、ミュンヘン、2001年、116〜122ページ)に記載されている。好ましい実施形態においては、UV吸収剤の数平均分子量は、300g/molより大きく、より特には、390g/molより大きい。更に、好ましく使用されるUV吸収剤の分子量は、5000g/mol以下であるべきであり、より好ましくは、2000g/mol以下であるべきである。ベンゾトリアゾールの群は、UV吸収剤として特に有用である。特に有用なベンゾトリアゾールの例は、Tinuvin(R)213、Tinuvin(R)328、Tinuvin(R)571、及びTinuvin(R)384、及びEversorb(R)82である。UV吸収剤は、好ましくは、ポリウレタンの合計質量に対して、0.01質量%と5質量%の間、より好ましくは、全て、ポリウレタンの合計質量に対して、0.1質量%と2.0質量%の間、特に、0.2質量%と0.5質量%の間の量で加えられる。酸化防止剤及びUV吸収剤を主原料とする上述のUV安定剤は、しばしば、本発明のポリウレタンが、UV線の有害性に対して良好な安定性を確保するためには、まだ十分ではない。この場合、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)は、好ましくは、酸化防止剤及びUV吸収剤に加えて添加され得る。特に好ましいUV安定剤は、フェノール類の安定剤、ベンゾトリアゾール、及びHALS化合物の混合物を、上述の好ましい量で含む。しかしながら、安定剤の官能基を結合する化合物、例えば、立体障害ピペラジルヒドロキシベンジル縮合生成物、例えば、ジ(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−ブチル−2−(3,5−ジ−第三級ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、Tinuvin(R)144を使用することができる。
【0065】
特に好適なのは、ワックスが、ポリウレタンを工業的に製造するときだけでなく、それらを加工するときにおいても重要な機能を果たすことである。ワックスは、摩擦低減内部及び外部潤滑剤として機能し、従って、ポリウレタンの流れ特性を向上させる。さらに、それは、ポリウレタンが周囲の材料(例えば、鋳型)に付着するのを防止する離型剤として、及び他の添加された物質、例えば、顔料及びアンチブロッキング剤についての分散剤として機能するとされている。好適なのは、例えば、脂肪酸エステル、例えば、ステアリン酸エステル及びモンタン酸エステル、及びそれらの金属石鹸だけでなく、脂肪酸アミド、例えば、ステアリルアミド及びオレアミド又は他のポリエチレンワックスである。熱可塑性プラスチックスで使用されるワックスの概要は、“プラスチック添加剤ハンドブック”(第5版、H.Zwifel、Hanser出版社、ミュンヘン、2001年、98〜107ページ、443ページff)、EP−A308683、EP−A670339、及びJP−A5163431に記載されている。
【0066】
更に、DE−A 19607870によるエステル及びアミドの組み合わせ、並びに、モンタン酸及び脂肪酸誘導体のワックス混合物(DE−A19649290)、並びに、DE102006009096A1によるヒドロキシステアリルアミドを加えることも可能である。
【0067】
特に好ましい実施形態においては、物質を授受し、及び/又は放出することが、望ましくは少ない傾向にあるポリウレタンの場合には、24〜34個の炭素原子のDE−A−19706452による脂肪酸及び/又はこれらの脂肪酸エステル及び/又はアミドを利用する。これにより、脂肪酸及び/又はそれらの誘導体は、ポリイソシアネート重付加生成物の合計質量に対して、0.001〜15質量%の質量分率で使用される。更に好ましい実施形態においては、アルキレンジアミンとa)1種以上の直鎖状脂肪酸の反応生成物、及びアルキレンジアミンとb)12−ヒドロキシステアリン酸の反応生成物、及び/又はアルキレンジアミンとc)12−ヒドロキシステアリン酸及び1種以上の直鎖状脂肪酸の反応生成物のEP−A−1826225による混合物を利用する。
【0068】
従って、この混合物は、アルキレンジアミンとa)及びb)及び/又はc)の反応生成物を含む。
【0069】
上述の助剤及び添加された物質についての更なる詳細は、技術文献、例えば、“プラスチック添加剤ハンドブック”(第5版、H.Zwifel、Hanser出版社、ミュンヘン、2001年)に記載されている。この引用における、上述の全ての分子量の単位は[g/mol]である。
【0070】
本発明はまた、熱可塑性ポリウレタンの製造方法であって、少なくとも1種のポリイソシアネート及び少なくとも1種のポリエステルポリオールの反応工程を少なくとも含み、ポリエステルポリオールは、少なくとも1種の多価アルコール及び2種以上のジカルボン酸の混合物を主原料とし、2種以上のジカルボン酸の少なくとも1種は、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られることを特徴とする方法を提供する。
【0071】
ポリウレタンの製造は、バッチ操作としての、又は連続操作としての公知の方法に従って行われることができ、例えば、反応押出機又は、ワンショットによるベルト法又は、プレポリマー法を利用して、好ましくは、ワンショット法によって行われる。これらの方法においては、反応成分は、連続して、又は同時に混合されることができ、反応はすぐに起こる。押出機の方法においては、構造成分及び鎖延長剤、触媒及び/又は添加される物質は、押出機の中に、それぞれ又は混合物として入れられ、100〜280℃、好ましくは140〜250℃の温度に上昇させ、その後、得られるポリウレタンが押し出され、冷却され、そして、ペレット化される。
【0072】
所要の自立膜/シート、成形部品、ローラー、繊維、自動車のライニング、ホース、ケーブルプラグ、ベローズ、ドラッグケーブル、ケーブル外装、ガスケット、ベルト又は衝撃吸収部材を形成するための、一般的にペレット又は粉末の状態である本発明のポリウレタンの加工は、従来の方法、例えば、射出成形、カレンダリング又は押出し加工によって行われる。
【0073】
本発明はまた、成形品、ホース、自立膜/シート又は繊維及び不織布品の製造における、上述のポリウレタン又は、上述の方法によって得られるポリウレタンの使用方法も提供する。
【0074】
本発明はまた、上述のポリウレタン又は、上述の方法によって得られるポリウレタンを含む成形品、自立膜/シート、ホース、不織布品又は繊維も提供する。
【0075】
本発明の更なる実施形態は、特許請求の範囲及び実施例から導くことができる。本発明に記載の物品/方法/使用方法についての上記及び下記に示された特徴は、記載された特定の組み合わせだけでなく、本発明の範囲内で、他の組み合わせにおいても使用され得る。例えば、好ましい特徴と、特に好ましい特徴の組み合わせ、又は、これ以上特徴付けられない特徴と、特に好ましい特徴の組み合わせ等もまた、この組み合わせが明示的に記載されていなくても、暗に含まれる。
【0076】
本発明を限定しない、本発明の典型的な実施形態を以下に示す。より特には、本発明はまた、以下に示される従属引用及び組み合わせから生ずる実施形態も含む。
【0077】
1.少なくとも1種のポリイソシアネート、及び少なくとも1種のポリエステルポリオールを主原料とするポリウレタンであって、
前記ポリエステルポリオールは、少なくとも1種の多価アルコール、及び2種以上のジカルボン酸の混合物を主原料とし、
前記2種以上のジカルボン酸の少なくとも1種は、少なくとも部分的に再生可能な原料から得られることを特徴とするポリウレタン。
【0078】
2.前記ポリウレタンが、少なくとも1種の鎖延長剤を含むことを特徴とする実施形態1に記載のポリウレタン。
【0079】
3.前記ポリウレタンが、熱可塑性ポリウレタンであることを特徴とする実施形態1又は2に記載のポリウレタン。
【0080】
4.前記少なくとも1種の多価アルコールが、脂肪族C2ジオール、脂肪族C3ジオール、脂肪族C4ジオール、脂肪族C5ジオール及び脂肪族C6ジオールからなる群から選択されることを特徴とする実施形態1〜3のいずれか1実施形態に記載のポリウレタン。
【0081】
5.前記少なくとも1種の多価アルコールが、1,3−プロパンジオール及び1,4−ブタンジオールからなる群から選択されることを特徴とする実施形態1〜4のいずれか1実施形態に記載のポリウレタン。
【0082】
6.前記少なくとも1種の多価アルコールが、少なくとも部分的に再生可能な原料から得られる1,3−プロパンジオールであることを特徴とする実施形態1〜5のいずれか1実施形態に記載のポリウレタン。
【0083】
7.前記2種以上のジカルボン酸の混合物が、少なくとも部分的に再生可能な原料から得られるセバシン酸を含むことを特徴とする実施形態1〜6のいずれか1実施形態に記載のポリウレタン。
【0084】
8.前記2種以上のジカルボン酸の混合物が、少なくとも部分的に再生可能な原料から得られるセバシン酸及びアジピン酸を含むことを特徴とする実施形態1〜7のいずれか1実施形態に記載のポリウレタン。
【0085】
9.前記ポリイソシアネートが、2,2’−、2,4’−及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−、及び2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、及び1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]シクロヘキサン(H12MDI)からなる群から選択されることを特徴とする実施形態1〜8のいずれか1実施形態に記載のポリウレタン。
【0086】
10.前記少なくとも1種の鎖延長剤が、C2〜C6ジオールからなる群から選択されることを特徴とする実施形態1〜9のいずれか1実施形態に記載のポリウレタン。
【0087】
11.少なくとも1種のポリイソシアネート、及び少なくとも1種のポリエステルポリオールが反応する工程を、少なくとも含み、
前記ポリエステルポリオールが、少なくとも1種の多価アルコール、及び2種以上のジカルボン酸の混合物を主原料とし、
前記2種以上のジカルボン酸の少なくとも1種が、少なくとも部分的に再生可能な原料から得られることを特徴とする熱可塑性ポリウレタンの製造方法。
【0088】
12.成形品、ホース、自立膜/シート、不織布品又は繊維の製造における、実施形態1〜10のいずれか1実施形態に記載のポリウレタン又は、請求項11に記載の方法によって得られるポリウレタンの使用方法。
【0089】
13.実施形態1〜10のいずれか1実施形態に記載のポリウレタン又は、実施形態11に記載の方法によって得られるポリウレタンを含む成形品、自立膜/シート、ホース、不織布品又は繊維。
【0090】
14.少なくとも1種のポリイソシアネート、及び少なくとも1種のポリエステルポリオールを主原料とする熱可塑性ポリウレタンであって、
前記ポリエステルポリオールが、少なくとも1種の多価アルコール並びに、少なくともセバシン酸及びアジピン酸を含む混合物を主原料とし、
前記セバシン酸が、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られる熱可塑性ポリウレタン。
【0091】
15.前記ポリウレタンが、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールからなる群から選択される少なくとも1種の鎖延長剤を含むことを特徴とする実施形態14に記載のポリウレタン。
【0092】
16.セバシン酸及びアジピン酸が、70:30〜30:70のモル比で使用されることを特徴とする実施形態14又は15に記載のポリウレタン。
【0093】
17.前記少なくとも1種の多価アルコールが、1,3−プロパンジオール及び1,4−ブタンジオールからなる群から選択されることを特徴とする実施形態14〜16のいずれか1実施形態に記載のポリウレタン。
【0094】
18.前記少なくとも1種の多価アルコールが、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られる1,3−プロパンジオールであることを特徴とする実施形態14〜17のいずれか1実施形態に記載のポリウレタン。
【0095】
19.前記ポリイソシアネートが、2,2’−、2,4’−及び4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、及び1−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]シクロヘキサン(H12MDI)からなる群から選択されることを特徴とする実施形態14〜18のいずれか1実施形態に記載のポリウレタン。
【0096】
20.熱可塑性ポリウレタンの製造方法であって、
少なくとも、少なくとも1種のポリイソシアネート、及び少なくとも1種のポリエステルポリオールの反応工程を含み、
前記ポリエステルポリオールが、少なくとも1種の多価アルコール並びに、少なくとも、セバシン酸及びアジピン酸を含む混合物を主原料とし、
前記セバシン酸が、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られる製造方法。
【0097】
21.成形品、ホース、自立膜/シート、不織布品若しくは繊維の製造における実施形態14〜19のいずれか1実施形態に記載のポリウレタン又は、実施形態20に記載の方法によって得られるポリウレタンの使用方法。
【0098】
22.実施形態14〜19のいずれか1実施形態に記載のポリウレタン又は、実施形態20に記載の方法によって得られるポリウレタンを含む成形品、自立膜/シート、ホース、不織布品又は繊維。
【0099】
本発明を、実施例によって、より具体的に説明する。
【実施例】
【0100】
1.使用する材料
ポリマーポリオール1は、セバシン酸(再生可能な原料から製造)、及び1,3−プロパンジオール(再生可能な原料から製造)から製造するポリエステルジオールであり、そのモル質量は1440g/molであり、OH価は78である。
【0101】
ポリマーポリオール2は、アゼライン酸(再生可能な原料から製造)、及び1,3−プロパンジオール(再生可能な原料から製造)から製造するポリエステルジオールであり、そのモル質量は1400g/molであり、OH価は80である。
【0102】
ポリマーポリオール3は、セバシン酸(再生可能な原料から製造)と、アジピン酸(その2種のジカルボン酸間のmol%比が1:1である)と、1,3−プロパンジオール(再生可能な原料から製造)とから製造するポリエステルジオールであり、そのモル質量は1400g/molであり、OH価は80である。
【0103】
ポリマーポリオール4は、セバシン酸(再生可能な原料から製造)と、アゼライン酸(再生可能な原料から製造)(その2種のジカルボン酸間のmol%比が1:1である)と、1,3−プロパンジオール(再生可能な原料から製造)とから製造するポリエステルジオールであり、そのモル質量は1500g/molであり、OH価は74である。
【0104】
鎖延長剤1(KV1)は、1,3−プロパンジオール(再生可能な原料から製造)であり、そのモル質量は76.09g/molである。
【0105】
鎖延長剤2(KV2)は、1,4−ブタンジオールであり、そのモル質量は90.12g/molである。
【0106】
イソシアネート1は、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)であり、そのモル質量は250.26g/molである。
【0107】
加水分解抑制剤1は、カルボジイミドを主成分とする加水分解抑制剤(Elastostab(R)H01)である。
【0108】
2. 製造例
2.1 一般的な処理方法1
特定のポリマーポリオールを、鎖延長剤1及びイソシアネート1と反応させる。同様に、加水分解抑制剤1を、反応混合物に加える。得られる反応混合物を、加熱プレート上に流し込み、10分間、120℃でそれらを完全に反応させる。その後、得られるポリマープラーク(polymer plaque)を24時間、80℃の状態に保持する。その後、ポリマープラークをペレット状にし、そのペレット状の材料を射出成形してテストプラークを製造する。
【0109】
2.2 例1(比較例)
処理方法1を使用して、56.95質量%のポリマーポリオール1と、7.96質量%の鎖延長剤2と、34.63質量%のイソシアネート1と、0.46質量%の加水分解抑制剤1とを反応させる。その結果を表1に示す。
【0110】
2.3 例2(比較例)
処理方法1を使用して、64.83質量%のポリマーポリオール2と、5.32質量%の鎖延長剤1と、29.33質量%のイソシアネート1と、0.52質量%の加水分解抑制剤1とを反応させる。その結果を表1に示す。
【0111】
2.4 例3(本発明の実施例)
処理方法1を使用して、65.64質量%のポリマーポリオール4と、5.32質量%の鎖延長剤1と、28.51質量%のイソシアネート1と、0.53質量%の加水分解抑制剤1とを反応させる。その結果を表1に示す。
【0112】
2.5 例4(本発明の実施例)
処理方法1を使用して、62.95質量%のポリマーポリオール3と、5.77質量%の鎖延長剤1と、30.64質量%のイソシアネート1と、0.63質量%の加水分解抑制剤1とを反応させる。その結果を表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
3. 測定方法
それぞれのパラメータを、以下の方法によって定める。
【0115】
硬度(ショアA): DIN53505
引張強度: DIN53504
破断伸び: DIN53504
破壊強度: DIN ISO 34−1,B(b)
摩耗量: DIN ISO 4649
密度: DIN ISO 1183−1,A
ブルーミング: 室温で、テストプラークの製造後、テストプラークを4週間保存した後のブルーミングの度合いについて視覚的に評価する。
【0116】
4. 結果
実施例から分かるように、機械的な値は、全てのテストについて同程度のレベルである。しかしながら、驚くことに、本発明によって得られる熱可塑性ポリウレタンにおいては、ブルーミングの度合いが明確に減少した。比較例として使用される熱可塑性ポリウレタンにおいては、室温で4週間保存された後に、テストプラーク上に、明確に視認できる白色で不透明なブルームを観察することができる。これとは対照的に、本発明によって得られる熱可塑性ポリウレタンは、室温で4週間保存された後に、仮にあるとしても、非常に小さなブルーミングの兆候を示すのみである。この差異は、肉眼で明らかである。