【文献】
K. SHINOZAKI et al.,Highly efficient red-emitting BaMgBO3F:Eu3+,R+ (R: Li, Na, K, Rb) phosphor for near-UV excitation synthesized via glass precursor solid-state reaction,Japanese Journal of Applied Physics,2017年 8月 2日,56,092601-1〜092601-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記一般式(1)によって表され、下記一般式(1)において蛍光賦活元素を除いた化合物のX線回折のピーク位置と同じピーク位置を有し、蛍光賦活元素がEuである場合はEuBO3に起因するX線回折のピークを有せず、蛍光賦活元素がEu以外である場合はEuBO3のEuをEu以外の蛍光賦活元素に置き換えたものに起因するX線回折のピークを有しない結晶相からなる化合物。
Y1xBa1-xMyY2zX1-y-zBO3F(0<x<0.15,0≦y<0.15,0≦z<0.15)・・・(1)
[式(1)において、Y1は、Eu,Ce,Pr,Nd,Sm,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,TmおよびBiから選択された少なくとも1つであり、Y2は、Ni,Cu,V,Mn,Fe,Ti,Cr,CoおよびAgから選択された少なくとも1つであり、Mは、Na,Li,K,Rbのいずれか1つであり、Xは、MgまたはZnである。]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された製造方法においては、結晶化物から複合酸化物の結晶を分離・精製するため、複合酸化物の結晶を容易に得ることができないという問題がある。また、特許文献1に記載の複合酸化物微粒子は、発光強度が低いという問題がある。
【0006】
この発明の実施の形態によれば、発光強度を向上可能な化合物を提供する。
【0007】
また、この発明の実施の形態によれば、発光強度を向上可能な化合物を用いた蛍光体を提供する。
【0008】
更に、この発明の実施の形態によれば、発光強度を向上可能な化合物を容易に製造可能な製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(構成1)
この発明の実施の形態によれば、化合物は、下記一般式(1)によって表され、下記一般式(1)において蛍光賦活元素を除いた化合物のX線回折のピーク位置と同じピーク位置を有し、結晶相からなる化合物である。
Y1
xBa
1-xM
yY2
zX
1-y-zBO
3F0<x<0.15,0≦y<0.15,0≦z<0.15)・・・(1)
[式(1)において、Y1は、Eu,Ce,Pr,Nd,Sm,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,TmおよびBiから選択された少なくとも1つであり、Y2は、Ni,Cu,V,Mn,Fe,Ti,Cr,CoおよびAgから選択された少なくとも1つであり、Mは、Na,Li,K,Rbのいずれか1つであり、Xは、MgまたはZnである。]
【0010】
この発明の実施の形態による化合物は、蛍光賦活元素を含む副生成物結晶に起因する光吸収を有しないため、発光強度を向上できる。
【0011】
(構成2)
この発明の実施の形態による蛍光体は、構成1に記載の化合物を備える。
【0012】
従って、蛍光体の発光強度を向上できる。
【0013】
(構成3)
この発明の実施の形態によれば、化合物の製造方法は、下記一般式(
1)によって表され、下記一般式(
1)において蛍光賦活元素を除いた化合物のX線回折のピーク位置と同じピーク位置を有し、結晶相を有する化合物の製造方法であって、
Y1
xBa
1-xM
yY2
zX
1-y-zBO
3F(0<x<0.15,0≦y<0.15,0≦z<0.15)・・・(
1)
[式(1)において、Y1は、Eu,Ce,Pr,Nd,Sm,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,TmおよびBiから選択された少なくとも1つであり、Y2は、Ni,Cu,V,Mn,Fe,Ti,Cr,CoおよびAgから選択された少なくとも1つであり、Mは、Na,Li,K,Rbのいずれか1つであり、Xは、MgまたはZnである。]
【0014】
バリウム化合物(炭酸バリウム、酸化バリウム、フッ化バリウムおよび水酸化バリウムのいずれか1つ)と、元素Xの酸化物と、元素Xのフッ化物とを含む群のうちの1つまたは2つと、三酸化二ホウ素またはホウ酸と、蛍光賦活元素の酸化物とを混合して混合物を生成する第1の工程と、混合物を溶融し、急速冷却して非晶質物を生成する第2の工程と、非晶質物と、群のうち混合物に含まれない残りの材料とを混合して固相法によって化合物を生成する第3の工程とを備える。
【0015】
この発明の実施の形態による化合物の製造方法においては、三酸化二ホウ素またはホウ酸は、ガラス化促進材として機能するので、工程1,2を実行することにより、非晶質物が容易に生成される。そして、工程3において、非晶質物と、群のうち混合物に含まれない残りの材料とが反応して化合物が生成される。その結果、化合物は、蛍光賦活元素を含む副生成物の結晶に起因したX線回折のピークを有しない。この副生成物の結晶は、発光強度を低下させるものである。また、工程3において、非晶質物と残りの材料とが反応して化合物が生成されるので、生成された化合物は、結晶相からなる単体からなる。その結果、特許文献1に記載のように、結晶化物から複合酸化物の結晶を分離・精製する必要がない。
【0016】
従って、発光強度を向上できるY1
xBa
1-xM
yY2
zX
1-y-zBO
3Fを容易に製造できる。
【0017】
(構成4)
構成3の第1の工程において、混合物は、炭酸バリウムと三酸化二ホウ素と酸化ユウロピウムの酸化物とを混合して生成され、第3の工程において、化合物は、非晶質物と、酸化マグネシウムと、フッ化マグネシウムとを混合して固相法によって生成される。
【0018】
三酸化ホウ素は、第2の工程において、ガラス化促進材として機能するので、バリウム(Ba)と、ユウロピウム(Eu)と、酸素(O)とを含む非晶質物が容易に生成される。そして、第3の工程において、非晶質物(バリウム(Ba)、ユウロピウム(Eu)および酸素(O)を含む)と、酸化マグネシウムおよびフッ化マグネシウムとが反応して化合物(Y1
xBa
1-xM
yY2
zX
1-y-zBO
3)が生成される。
【0019】
従って、ユウロピウム(Eu)を蛍光賦活元素として含む化合物(Y1
xBa
1-xM
yY2
zX
1-y-zBO
3)を容易に製造できる。
【発明の効果】
【0020】
上記式(1)で表される化合物の発光強度を向上できる。また、上記式(1)で表される化合物を用いた蛍光体の発光強度を向上できる。更に、発光強度を向上可能な化合物(上記式(1)で表される化合物)を容易に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の実施の形態による化合物は、下記一般式(1)によって表され、下記一般式(1)において蛍光賦活元素を除いた化合物のX線回折のピーク位置と同じピーク位置を有し、結晶相からなる化合物である。
Y1
xBa
1-xM
yY2
zX
1-y-zBO
3F(0<x<0.15,0≦y<0.15,0≦z<0.15)・・・(1)
[式(1)において、Y1は、Eu,Ce,Pr,Nd,Sm,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,TmおよびBiから選択された少なくとも1つであり、Y2は、Ni,Cu,V,Mn,Fe,Ti,Cr,CoおよびAgから選択された少なくとも1つであり、Mは、Na,Li,K,Rbのいずれか1つであり、Xは、MgまたはZnである。]
【0023】
図1は、この発明の実施の形態による化合物の製造方法を示す工程図である。
図1を参照して、化合物の製造が開始されると、原料Aと、ガラス化促進材と、蛍光賦活元素の酸化物とを混合して混合物を生成する(工程S1)。
【0024】
ここで、原料Aは、バリウム化合物(炭酸バリウム、酸化バリウム、フッ化バリウムおよび水酸化バリウムのいずれか1つ)と、元素Xの酸化物と、元素Xのフッ化物とを含む群から選択された1つまたは2つである。
【0025】
また、ガラス化促進材は、三酸化二ホウ素またはホウ酸である。
【0026】
工程S1の後、混合物を溶融し、急速冷却して非晶質物を生成する(工程S2)。この場合、混合物を坩堝に入れ、大気中で混合物を溶融する。混合物を溶融するときの溶融温度は、示差熱分析を用いて決定され、900℃〜1300℃である。そして、溶融された混合物は、例えば、鉄板上に注がれ、鉄板によってプレス急冷される。これによって、非晶質物が生成される。その後、非晶質物は、メノウ乳鉢を用いて粉砕され、粉末状にされる。なお、「非晶質物」とは、ガラス転移点を有する固体を言う。また、「急速冷却」とは、放冷よりも速い冷却速度を有する冷却を言う。
【0027】
工程S2の後、非晶質物と原料Bとを混合して固相法によって結晶成長させ、化合物を生成する(工程S3)。この場合、原料Bは、バリウム化合物(炭酸バリウム、酸化バリウム、フッ化バリウムおよび水酸化バリウムのいずれか1つ)と、元素Xの酸化物と、元素Xのフッ化物とのうち原料Aに含まれない残りの材料である。また、固相法によって結晶成長させるときの温度は、800℃〜900℃であり、時間は、例えば、2時間である。
【0028】
これにより、化合物の製造が終了する。
【0029】
工程S1において、ガラス化促進材を用いて混合物を生成するので、工程S2において、混合物を溶融して急速冷却することによって、非晶質物が生成される。
【0030】
図2から
図5は、
図1に示す工程S1および工程S3における材料の組み合わせを示す図である。
【0031】
図2は、バリウム化合物が炭酸バリウム、元素Xの酸化物および元素Xのフッ化物のうちの1つまたは2つと、三酸化ホウ素(またはホウ酸)と、蛍光賦活元素の酸化物とを用いた場合の工程S1および工程S3における材料の組み合わせを示す。
【0032】
また、
図3は、バリウム化合物が酸化バリウム、元素Xの酸化物および元素Xのフッ化物のうちの1つまたは2つと、三酸化ホウ素(またはホウ酸)と、蛍光賦活元素の酸化物とを用いた場合の工程S1および工程S3における材料の組み合わせを示す。
【0033】
更に、
図4は、バリウム化合物がフッ化バリウム、元素Xの酸化物および元素Xのフッ化物のうちの1つまたは2つと、三酸化ホウ素(またはホウ酸)と、蛍光賦活元素の酸化物とを用いた場合の工程S1および工程S3における材料の組み合わせを示す。
【0034】
更に、
図5は、バリウム化合物が水酸化バリウム、元素Xの酸化物および元素Xのフッ化物のうちの1つまたは2つと、三酸化ホウ素(またはホウ酸)と、蛍光賦活元素の酸化物とを用いた場合の工程S1および工程S3における材料の組み合わせを示す。
【0035】
図2を参照して、炭酸バリウム、元素Xの酸化物および元素Xのフッ化物のうちの1つが工程S1における原料である場合、炭酸バリウム、元素Xの酸化物および元素Xのフッ化物のうちの残りの2つの材料が工程S3の原料となる(No.1〜No.6参照)。
【0036】
また、炭酸バリウム、元素Xの酸化物および元素Xのフッ化物のうちの2つが工程S1における原料である場合、炭酸バリウム、元素Xの酸化物および元素Xのフッ化物のうちの残りの1つの材料が工程S3の原料となる(No.7〜No.12参照)。
【0037】
図3を参照して、酸化バリウム、元素Xの酸化物および元素Xのフッ化物のうちの1つが工程S1における原料である場合、酸化バリウム、元素Xの酸化物および元素Xのフッ化物のうちの残りの2つの材料が工程S3の原料となる(No.13〜No.18参照)。
【0038】
また、酸化バリウム、元素Xの酸化物および元素Xのフッ化物のうちの2つが工程S1における原料である場合、酸化バリウム、元素Xの酸化物および元素Xのフッ化物のうちの残りの1つの材料が工程S3の原料となる(No.19〜No.24参照)。
【0039】
図4を参照して、フッ化バリウム、元素Xの酸化物および元素Xのフッ化物のうちの1つが工程S1における原料である場合、フッ化バリウム、元素Xの酸化物および元素Xのフッ化物のうちの残りの2つの材料が工程S3の原料となる(No.25〜No.30参照)。
【0040】
また、フッ化バリウム、元素Xの酸化物および元素Xのフッ化物のうちの2つが工程S1における原料である場合、フッ化バリウム、元素Xの酸化物および元素Xのフッ化物のうちの残りの1つの材料が工程S3の原料となる(No.31〜No.36参照)。
【0041】
図5を参照して、水酸化バリウム、元素Xの酸化物および元素Xのフッ化物のうちの1つが工程S1における原料である場合、水酸化バリウム、元素Xの酸化物および元素Xのフッ化物のうちの残りの2つの材料が工程S3の原料となる(No.37〜No.42参照)。
【0042】
また、水酸化バリウム、元素Xの酸化物および元素Xのフッ化物のうちの2つが工程S1における原料である場合、水酸化バリウム、元素Xの酸化物および元素Xのフッ化物のうちの残りの1つの材料が工程S3の原料となる(No.43〜No.48参照)。
【0043】
このように、バリウム化合物(炭酸バリウム、酸化バリウム、フッ化バリウムおよび水酸化バリウムのいずれか1つ)と、元素Xの酸化物と、元素Xのフッ化物とを含む群の一部の材料が工程S1における原料となり、炭酸バリウム、酸化バリウム、フッ化バリウムおよび水酸化バリウムのいずれかと、元素Xの酸化物と、元素Xのフッ化物とを含む群の残りの材料が工程S3における原料となる。
【0044】
そして、バリウム化合物(炭酸バリウム、酸化バリウム、フッ化バリウムおよび水酸化バリウムのいずれか1つ)と、元素Xの酸化物と、元素Xのフッ化物とを工程S1における原料と工程S3における原料とに振り分けるときの方法は、任意である。
【0045】
図6は、蛍光賦活元素と、蛍光賦活元素の酸化物との関係を示す図である。
図6を参照して、蛍光賦活元素がユウロピウム(Eu)である場合、蛍光賦活元素の酸化物は、Eu
2O
3である。蛍光賦活元素がセリウム(Ce)である場合、蛍光賦活元素の酸化物は、CeO
2である。蛍光賦活元素がプラセオジム(Pr)である場合、蛍光賦活元素の酸化物は、Pr
6O
11である。蛍光賦活元素がネオジウム(Nd)である場合、蛍光賦活元素の酸化物は、Nd
2O
3である。
【0046】
蛍光賦活元素がサマリウム(Sm)である場合、蛍光賦活元素の酸化物は、Sm
2O
3である。蛍光賦活元素がガドリニウム(Gd)である場合、蛍光賦活元素の酸化物は、Gd
2O
3である。蛍光賦活元素がテルビウム(Td)である場合、蛍光賦活元素の酸化物は、Td
2O
3またはTd
4O
7である。蛍光賦活元素がジスプロシウム(Dy)である場合、蛍光賦活元素の酸化物は、Dy
2O
3である。
【0047】
蛍光賦活元素がホルミウム(Ho)であるとき、蛍光賦活元素の酸化物は、Ho
2O
3である。蛍光賦活元素がエルビウム(Er)である場合、蛍光賦活元素の酸化物は、Er
2O
3である。蛍光賦活元素がツリウム(Tm)である場合、蛍光賦活元素の酸化物は、Tm
2O
3である。蛍光賦活元素がニッケル(Ni)である場合、蛍光賦活元素の酸化物は、NiOである。
【0048】
蛍光賦活元素が銅(Cu)である場合、蛍光賦活元素の酸化物は、CuOまたはCu
2Oである。蛍光賦活元素がビスマス(Bi)である場合、蛍光賦活元素の酸化物は、Bi
2O
3である。蛍光賦活元素がバナジウム(V)である場合、蛍光賦活元素の酸化物は、V
2O
5である。蛍光賦活元素がマンガン(Mn)である場合、蛍光賦活元素の酸化物は、Mn
2O
3である。
【0049】
蛍光賦活元素が鉄(Fe)である場合、蛍光賦活元素の酸化物は、FeO、Fe
2O
3およびFe
3O
4のいずれかである。蛍光賦活元素がチタン(Ti)である場合、蛍光賦活元素の酸化物は、TiO
2である。蛍光賦活元素がクロム(Cr)である場合、蛍光賦活元素の酸化物は、Cr
2O
3である。蛍光賦活元素がコバルト(Co)である場合、蛍光賦活元素の酸化物は、CoOである。蛍光賦活元素が銀(Ag)である場合、蛍光賦活元素の酸化物は、Ag
2Oである。
【0050】
この発明の実施の形態による化合物は、少なくとも1つの蛍光賦活元素を含むので、工程S1における蛍光賦活元素の酸化物は、使用される蛍光賦活元素に対応して
図6に示す蛍光賦活元素の酸化物の少なくとも1つからなる。
【0051】
図7は、
図1に示す工程S2および工程S3における状態を示す概念図である。
図7を参照して、
図1に示す工程S2において生成される非晶質物は、原料Aと、ガラス化促進材と、蛍光賦活元素とを含む。
【0052】
そして、
図1に示す工程S3において、非晶質物と原料Bとを混合して固相法によって化合物を生成するとき、原料Bが非晶質物と反応し、結晶相からなる化合物が生成される。
【0053】
従って、最終的に生成された化合物は、結晶相からなる単体であり、特許文献1に記載の製造方法のように、結晶化物から複合酸化物の結晶を分離・精製する必要がない。その結果、化合物を容易に製造できる。なお、最終的に生成された化合物が結晶相からなる単体であるのは、原料Bが非晶質物と反応して最終的な化合物が生成されるからである。
【0054】
また、
図7に示すように、非晶質物と原料Bとが反応して化合物が生成されるので、最終的に製造された化合物の発光を阻害する副生成物の生成が抑制される。従って、
図1に示す製造方法によって製造された化合物の発光強度を強くできる。
【0055】
なお、蛍光賦活元素がEuである場合、発光を阻害する副生成物は、EuBO
3であり、蛍光賦活元素がEu以外である場合、発光を阻害する副生成物は、EuBO
3のEuをEu以外の蛍光賦活元素に置き換えたものである。
【0056】
以下、実施例を用いて、この発明の実施の形態による化合物を詳細に説明する。
(実施例1)
実施例1における化合物は、Eu
0.05Ba
0.95MgBO
3Fである。Eu
0.05Ba
0.95MgBO
3Fは、上記一般式(1)において、Y1=Eu、X=Mg、x=0.05、y=Z=0であるときの化合物である。Eu
0.05Ba
0.95MgBO
3Fは、
図1に示す製造方法によって製造された。より具体的には、Eu
2O
3,BaCO
3,B
2O
3が混合され、混合物が生成された。
【0057】
そして、混合物は、Pt坩堝に入れられ、大気中において、1100℃の温度で、30分、熱せられ、溶融された。この工程でCO
2の脱離によりBaCO
3はBaOになる。
【0058】
その後、混合物の溶融物は、鉄板上に注がれ、プレス急冷された。急冷された非晶質物は、メノウ乳鉢によって粉砕され、粉末状のxEu
2O
3−(66.7−2x)BaO−33.3B
2O
3を得、これとMgOおよびMgF
2が混合され、混合された混合物は、Pt坩堝に入れられた。
【0059】
引き続いて、混合された混合物を、例えば、750℃の温度で3時間熱し、その後、電気炉中において、850℃の温度で3時間、熱して、化合物Eu
0.05Ba
0.95MgBO
3Fを製造した。この場合、Eu
3+の減少を抑制するため、O
2:N
2=1:1の酸素ガスおよび窒素ガスが電気炉中へ流された。
【0060】
(実施例2)
実施例2における化合物は、Eu
xBa
1-xM
yMg
1-yBO
3F(Mは、アルカリ金属であるNa,Li,K,Rbのいずれか1つ)である。実施例2における化合物は、上記一般式(1)において、Y1=Eu、z=0であるときの化合物である。
【0061】
粉末状のxEu
2O
3−(66.7−2x)BaO−33.3B
2O
3と、MgOと、Li
2CO
3,Na
2CO
3,K
2CO
3,RbNO
3のいずれか1つを有するMgF
2との混合物を用いた点を除いては、実施例1と同じ方法によってEuBaMMgBO
3Fを製造した。
【0062】
(比較例1)
比較例1における化合物は、EuBaMgBO
3Fである。Eu
2O
3,BaCO
3,MgO,MgF
2,B
2O
3を混合して従来の固相法によってEuBaMgBO
3Fを製造した。
【0063】
(比較例2)
比較例2における化合物は、Eu
0.15Ba
0.85MgBO
3Fである。Eu
0.15Ba
0.85MgBO
3Fは、Euの組成を0.15に設定した以外は、実施例1と同様にして製造された。
【0064】
(基準サンプル)
基準サンプルは、Eu(蛍光賦活元素)を含まないBaMgBO
3Fである。非晶質物の原料をBaCO
3,B
2O
3とした以外は、実施例1と同様にして、Eu(蛍光賦活元素)を含まないBaMgBO
3Fを製造した。
【0065】
図8は、
図1に示す製造方法によって製造されたBaMgBO
3Fの結晶構造を示す図である。
図8の(a)は、c軸方向から見た結晶構造を示す図であり、
図8の(b)は、a軸方向から見た結晶構造を示す図である。
【0066】
図8を参照して、BaMgBO
3Fは、単斜晶系結晶からなる。そして、格子定数は、a=17.64Åであり、b=30.546Åであり、c=8.060Åであり、β=90.008°である。
【0067】
BO
3およびMgO
4F
2は、層構造を有し、交互に配置される。そして、Ba
2+は、BO
3層(酸化物層)とMgO
4F
2層(フッ化物層)との間に配置される。
【0068】
このように、
図1に示す製造方法によって製造されたBaMgBO
3Fは、層構造からなる結晶構造を有する。
【0069】
図9は、基準サンプル、実施例1および比較例1,2のX線回折パターンを示す図である。X線回折は、Rigaku製のUltimaIVを用いて測定された。そして、粉末を充填したガラスホルダを用い、室温にて測定した。
図9において、横軸は、回折角を表し、縦軸は、強度を表す。また、矢印は、EuBO
3に起因するピークを示す。
【0070】
図9を参照して、実施例1(Eu
0.05Ba
0.95MgBO
3F)は、BaMgBO
3Fに起因するピークを有し、EuBO
3に起因するピークを有しない。そして、BaMgBO
3Fに起因するピークのピーク位置は、基準サンプルのピーク位置と同じである。
【0071】
一方、比較例1,2は、BaMgBO
3Fに起因するピークとEuBO
3に起因するピークとを有する。そして、BaMgBO
3Fに起因するピークのピーク位置は、基準サンプルのピーク位置と同じである。
【0072】
このように、実施例1は、蛍光賦活元素を含んでいるにも拘わらず、蛍光賦活元素を含まない基準サンプルのピーク位置と同じピーク位置を有し、EuBO
3に起因するピークを有しない。
【0073】
従って、
図1に示す製造方法によって製造することによって、発光を阻害するEuBO
3に起因するピークを有しないEu
0.05Ba
0.95MgBO
3Fを製造できることが実証された。
【0074】
これは、粉末状の非晶質物、MgOおよびMgF
2の混合物を用いて固相法によって結晶成長させる際に、非晶質物と、MgOおよびMgF
2とが反応してEu
0.05Ba
0.95MgBO
3Fが製造される結果、EuBO
3が生成され難いためと考えられる。
【0075】
また、比較例2(Eu
0.15Ba
0.85MgBO
3F)がEuBO
3に起因するピークを有するので、蛍光賦活元素(Eu)の含有量xは、0.15未満が好ましいことが分かった。従って、実施例1における化合物は、Eu
xBa
1-xMgBO
3F(0<x<0.15)である。
【0076】
図10は、実施例2におけるEu
xBa
1-xM
yMg
1-yBO
3FのX線回折パターンを示す図である。
図10において、横軸は、回折角を表し、縦軸は、強度を表す。また、サンプルAは、EuのみをドープしたEu
0.05Ba
0.95MgBO
3F(実施例1と同じ)のX線回折パターンを示し、サンプルBは、EuおよびLiをドープしたEu
0.05Ba
0.95Li
0.05Mg
0.95BO
3FのX線回折パターンを示し、サンプルCは、EuおよびNaをドープしたEu
0.05Ba
0.95Na
0.05Mg
0.95BO
3FのX線回折パターンを示し、サンプルDは、EuおよびKをドープしたEu
0.05Ba
0.95K
0.05Mg
0.95BO
3FのX線回折パターンを示し、サンプルEは、EuおよびRbをドープしたEu
0.05Ba
0.95Rb
0.05Mg
0.95BO
3FのX線回折パターンを示す。
【0077】
図10を参照して、サンプルA〜サンプルEは、いずれも、基準サンプルと同じピークを有し、EuBO
3に起因するピークを有しない。また、サンプルA〜サンプルEは、いずれも、基準サンプルのピーク位置と同じピーク位置を有する。
【0078】
このように、蛍光賦活元素と、アルカリ金属とをドープしても、EuBO
3に起因するピークを有しないことが実証された。
【0079】
図11は、サンプルA、サンプルB、サンプルCおよびサンプルDの蛍光スペクトルを示す図である。蛍光スペクトルは、Hitachi製のF-7100を用いて室温で測定された。また、蛍光スペクトルの測定には393nmの励起光を用いた。
【0080】
図11において、横軸は、波長を表し、縦軸は、強度を表す。
図11を参照して、サンプルA、サンプルB、サンプルC、サンプルDおよび比較例1は、同じピーク波長を有する。また、サンプルA、サンプルB、サンプルCおよびサンプルDは、いずれも、蛍光スペクトルの強度が比較例1の蛍光スペクトルの強度よりも強い。このように、Eu、またはEuおよびアルカリ金属をドープすることによって、蛍光スペクトルの強度を強くすることができる。
【0081】
従って、
図1に示す製造方法によって製造することによって、発光強度の強いEu
xBa
1-xM
yMg
1-yBO
3F(M:Na,Li,K,Rbのいずれか1つ)を製造できる。
【0082】
上述したように、Eu
xBa
1-xMgBO
3F(0<x<0.15)は、蛍光賦活元素(Eu)を含まないBaMgBO
3FのX線回折のピーク位置と同じピーク位置を有するので、この発明の実施の形態による化合物は、上記一般式(1)によって表され、上記一般式(1)において蛍光賦活元素を除いた化合物のX線回折のピーク位置と同じピーク位置を有し、結晶相からなる化合物であればよい。
【0083】
そして、この発明の実施の形態による化合物は、蛍光体に用いられる。そして、発光を阻害する副生成物を含まない。従って、この発明の実施の形態による化合物を用いた蛍光体において、発光強度を強くできる。