(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は自動分析装置の全体概略構成図である。
図1において、操作部1に内蔵された制御ユニット(以下、コントローラとも言う)6は、インタフェース3を介して、分析部2の動作を制御する。
【0012】
試料分注機構9は試料容器から試料を吸引し分析部2の容器に分注する試料ノズル18を備える。搬送機構24は試料容器を収容する試料ラック8を駆動させることで試料ノズル18が試料を吸引できる試料吸引位置まで試料容器を搬送する。制御ユニット(コントローラ)6は、後述する電解質項目や比色項目の分析部2の分析および分析部2のメンテナンスを実行する。
【0013】
以下、電解質項目と比色項目の分析について説明する。
【0014】
試料容器を収容する試料ラック8を試料吸引位置まで駆動機構24により搬送する。試料分注機構9に備えられた試料ノズル18は、試料を測定する際に、必要な試料量を、試料ラック8の試料容器から吸引する。当該試料ノズル18は、試料容器内の液体の高さを検出するため液面センサを備えている。装置は、予め、試料容器の形状を記憶しているため、試料容器内の液面高さから、試料容器内の液体の容量を算出することができる。
【0015】
吸引された試料は、測定項目が電解質の場合には、電解質ユニット20へ吐出され、電解質の濃度が測定される。一方、測定項目が比色項目の場合には、反応容器10へ吐出される。試料が吐出された反応容器10には、試薬分注機構14の試薬ノズル15によって試薬容器12に充填された対象項目の試薬が添加される。試薬が添加された反応容器10は、撹拌機構16によって試料と試薬の撹拌が実施される。撹拌後、当該反応容器は反応槽17で恒温状態を維持されながら、ランプから発せられる光軸を通過する。反応容器10を通過した光量は光度計11によって検出されたのち、データ演算ユニット5によって濃度算出がされる。
【0016】
生体試料を用いる自動分析装置では、流路や洗浄機構を洗浄するために次亜塩素酸を用いることがある。次亜塩素酸は、塩化水素を発生しながら分解する不安定な物質の為、金属の機構を用いた装置には常時設置することが困難である。そのため、試料ラック8に類似の形状をした洗浄ラックを用いて、オペレータが必要時に次亜塩素酸を必要量セットして用いる。
【0017】
操作部1の入力手段4において、測定したい項目の設定、測定のスタート等の測定に必要な情報の入力をすることができる。記憶部7は、データ演算ユニット5によって算出された測定した項目の濃度が記憶される。記憶部7として、例えばハードディスク、不揮発性メモリーなどのメモリーが挙げられる。ディスプレイ19(表示部)は、測定した項目の濃度などが表示される。後述する洗浄ラックの洗浄容器のポジションの確認はセンサ22によって行われる。
【0018】
図2は自動分析装置の電解質ユニット概略構成図である。
図2を用いて、電解質分析の動作を説明する。まず、内部標準液が内部標準液吐出ノズル35より希釈槽31に吐出される。次に、希釈槽31内の内部標準液がシッパーノズル流路32を経由して測定用電極33へ吸引される。その後、流路が切り替わり、比較電極液が比較用電極37に吸引される。このとき、比較用電極37に対する内部標準液のNa、K、Clの起電力が測定される。その後、希釈槽31内に残された内部標準液が、廃液ノズル流路34に吸引され、廃棄される。次に、試料ノズル18で分取された試料が、希釈槽31に吐出される。さらに、希釈液吐出ノズル36から希釈液が吐出され、試料が適宜希釈される。内部標準液と同様に、希釈された試料のNa、K、Clの起電力が測定され、その後、希釈槽31内に残された希釈試料が、廃液ノズル流路34に吸引され、廃棄される。さらに、次の試料測定に備えて希釈槽を洗浄するために、内部標準液が吐出され、最後に廃液ノズル流路34に吸引され、廃棄される。このように、試料と内部標準液とを交互に測定し、内部標準液を基準に補正がなされ、測定値が算出される。
【0019】
次にこの電解質測定ユニットを例に、洗浄ラックで外部から洗剤が供給される同一洗剤による複数のメンテナンス動作の例を説明する。
【0020】
洗剤は洗剤容器30に入れられ、洗浄ラックにより供給される。洗浄ラックは
図3に示す形状をしている。洗浄ラックは特に限定されないが試料ラック8と同一形状をしている。
図3の例では洗浄ラックに5つの洗浄容器が収容できるように構成されている。
図3は自動分析装置に用いる洗浄ラックを上面から見た上面図である。
【0021】
オペレータはいずれのポジションにも洗剤容器を設置することができ、装置はいずれのポジションに容器が設置されたかを装置のセンサを用いて検知することができる。例えば、装置のセンサはポジション1に洗剤容器が設置されていることを検知した場合には第1のメンテナンス動作、ポジション2に洗剤容器が設置されていることを検知した場合には第2のメンテナンス動作を実行するようにプログラムされている。
【0022】
ここで第1のメンテナンス動作は、洗浄容器30から洗剤を試料ノズル18で吸引し、希釈槽31に吐出、希釈液吐出ノズル36を用いて希釈槽内で水を添加され、この水で希釈された洗剤をシッパーノズル(シッパーノズル流路32の先端)で吸引することにより、シッパーノズル流路32および測定用電極33を洗浄する。
【0023】
第2のメンテナンス動作は、希釈槽31を洗浄する目的で、洗浄容器30から洗剤を試料ノズル18で吸引し、希釈槽31に吐出、一定時間経過後に洗剤を廃液ノズルで吸引し、廃棄する。
【0024】
図4に電解質測定ユニットのメンテナンス項目管理画面(以下、単に管理画面とも言う)の例を示す。図に示すように、洗浄周期、洗浄部位、洗浄ラック位置(ポジション)、必要洗剤量、前回実施日がディスプレイ19に表示される。例えば、第1のメンテナンス動作の周期は1日、第2のメンテナンス動作の周期は1週間に設定されている。また、第1のメンテナンスはポジション1に割り当てられ、第2のメンテナンスはポジション2に割り当てられている。装置のコントローラはセンサ22を介して搬送機構24が搬送する洗浄ラックのどのポジションに洗浄容器が収容されているか識別する。コントローラは、識別した結果、メンテナンス項目管理画面で設定されたポジションに対応するメンテナンス動作を実行する。実行した場合には、実行したメンテナンス動作に対して前回実施日が更新される。なお、洗浄周期や必要洗剤量は同じ設定をすることも可能である。
【0025】
このような管理画面においては、現在の日付が実施周期を超えるとメンテナンス項目管理画面の項目または文字の色が変わる、また別の警告画面にメッセージを出すなどしてオペレータにその旨報知することが望ましい。
【0026】
オペレータは、管理画面を参考に必要な洗剤を準備する。このとき、オペレータの確認不足などにより、第1および第2のメンテナンスが必要または実施予定であるにもかかわらず、洗浄ラック上のポジション1または2のみに洗剤容器が設置されたり、ポジション1、2の両方に洗剤容器が設置されているが一方の容器内の洗剤量がメンテナンス実施に必要な量を下回っていたりすることがある。
【0027】
第1および第2のメンテナンスが必要または実施予定であるにもかかわらず、洗浄ラック上いずれかの位置にしか洗剤容器が載せられていないことを装置が検知した場合には、メンテナンス項目管理画面の設定に従えばいずれかの位置に設置した洗剤容器に対応したメンテナンスしか実施されない。しかしながら、使用する洗剤が同一洗剤であることからこのような確認不足に該当する場合には、対応するポジションに洗剤容器が設置されていなくとも他方のメンテナンス動作を実施する。具体的には、試料ノズル18の液面検知機能により検知された洗剤量から、容器位置により実施されるべきメンテナンスに使用される洗剤量を引いた残量がもう一方のメンテナンスに必要な量を上回る場合には両方のメンテナンスを実施する。
【0028】
また、ポジション1、2の両方に洗剤容器が設置されているが一方の容器内の洗剤量がメンテナンス実施に必要な量を下回っていることを装置が検知した場合には、一方の容器ポジションに対応するメンテナンスは実行されないのが通常の考え方であるが、ここでは双方のポジション1、2に設置された洗剤容器内の洗剤量の合計が2つのメンテナンスの必要洗剤量の合計よりも多い場合には、両方のメンテナンスを実施する。使用する洗剤が同一洗剤であることから互いに洗剤を融通できるためである。
【0029】
これらのようにすることで、オペレータによるミスをリカバーし適切なメンテナンスを実行することができる。
【0030】
特に、洗浄周期との関係でオペレータが上記ミスをしたとしても洗浄周期内であれば特別にミスをリカバーする必要性は小さいと考えられるので、敢えて実行せずに洗浄周期を超えていた場合に上記の手段を実施してもよい。
【0031】
図5はメンテナンスのフロー図である。
図5を用いてメンテナンスのフローを説明する。当該フローはコントローラ6により実行される。
【0032】
まずメンテナンス周期管理を常に実行している(S10)。メンテナンス周期管理とは
図4の画面で、現在の日付が前回実施日と洗浄周期から洗浄周期内にあるか洗浄周期外にあるかを判定することである。
【0033】
次に、コントローラは洗浄ラックによる同じ洗剤(同一組成の洗剤)を用いる二種類のメンテナンスが必要か否かを判定する(S20)。ここで必要か否かの判定は二種類のメンテナンスの両方が洗浄周期外あるか否かを判定する。例えば、「シッパーノズル流路」と「希釈槽」の両方が洗浄周期外にあるか否かを判定する。なお、必ずしも洗浄周期外にあることが必須の要素ではないが本フローでは説明の便宜上このことを前提に説明する。
【0034】
ここの判定でNoであった場合には、前述のオペレータのミスをリカバーする制御の対象外であるため説明は省略する。一方、ここの判定でYESであった場合には、管理画面により、洗浄ラックによる同一組成の洗剤を用いる二種類のメンテナンスを実行するようアナウンスする(S30)。これは前述のようにオペレータに二種類のメンテナンスが洗浄周期外にある旨報知してメンテナンス洗浄を促す。
【0035】
次に、オペレータ(ユーザー)は、この報知によりメンテナンスの必要性を認識した上で、洗浄ラックを準備し、洗剤を洗剤容器に入れ、メンテナンスに対応する洗浄ラックのポジションに洗剤容器を設置する(S40)。オペレータはこの洗浄ラックを装置のラック搬入口に設置する。
【0036】
オペレータは、スタートボタンを押下することで実際に洗浄ラックを装置内に投入する(S50)。
【0037】
コントローラは搬送機構24を制御することで洗浄ラックを試料吸引位置に向かって搬送させる。このとき、センサ22の前を通過することでコントローラは洗浄ラック上の容器設置位置を確認する(S60)。これによりコントローラはオペレータがどのようなメンテナンスを実行したいと考えたかを識別する。
【0038】
そして、コントローラは、センサ22を用いて、実施すべきすべての洗浄に対応する位置に容器が設置されているか判定する(S70)。ここで「実施すべき」とは洗浄周期外にあるメンテナンスのことを指す。なお、前述のように、必ずしも洗浄周期外に拘る必要はなく
図3で割り当てられた洗浄ラックの位置に対応するすべての位置に容器が設置されているか判定するやり方でも構わない。
【0039】
ここで、YESの場合には、洗浄ラック上のポジションに従いメンテナンスを実行する(S80)。但し、試料ノズル18の液面検知機能により検知された洗剤量が夫々の必要洗剤量を上回っている場合である。実行が完了すると夫々の前回実施日は更新される。
【0040】
一方、NOの場合には、オペレータが洗剤容器の設置し忘れなどのミスであると考えられ、リカバーするための制御を行う。まず、すべてのポジションに洗剤容器が設置されていない場合は例外的に説明の対象外ではあるが、何れか一方に洗剤容器が設置されている場合には、この容器内の洗剤量を試料ノズル18の液面検知機能により検知する。そして、コントローラは、検知した洗剤量が洗剤位置により実施されるメンテナンスに使用される洗剤量(必要洗剤量)ともう一方のメンテナンスに使用される洗剤量(必要洗剤量)の合計と比較し、検知した洗剤量がこの合計以上あるかを判定する(S90)。
【0041】
もし、この判定がNOであれば、コントローラはリカバーすることを断念し、洗浄ラック上のポジションに従いメンテナンスを実行する(S80)。一方、この判定がYESであれば、リカバーする。つまり、洗剤容器が設置されていないポジションに対応するメンテナンスにも係らず設置されている洗剤を用いて両メンテナンスを実施する(S100)。
【0042】
このようすることで、オペレータが洗剤容器の設置をミスした場合でも適切メンテナンスを実行できる。
【0043】
ここで、オペレータは両メンテナンスに対応するポジションに洗剤容器を設置したものの試料ノズル18の液面検知機能により洗剤量が不足していることが判明する場合がある。実際に試料ノズル18を洗剤容器に挿入することで初めてコントローラは洗剤量を認識できるためである。例えば、実施順が後のメンテナンス用の洗剤量が不足していることが判明した場合、実施順が前の洗剤容器に必要な量の洗剤が残っていれば、ラックをその吸引位置に戻してメンテナンスを行うことが考えられる。その際、ラックの搬送は、搬送機構24を通常ラックが搬送される向きと逆向きに搬送してもよいし、ラック待機ポジションを持つ装置においては、一旦ラック待機ポジションに戻って再び試料吸引位置まで搬送してもよい。また、逆に実施順が先のメンテナンス用の洗剤量が不足していることが判明した場合、実施順が後の洗剤容器に必要な量の洗剤が残っている、若しくは、洗剤容器内の洗剤量がS90の合計以上である場合には、S100のように十分洗剤量がある方の洗剤を用いて両メンテナンスを実行することも可能である。
【0044】
または、試料ノズル18の液面検知機能に頼らない制御も可能である。例えば、光学センサなどによる液量検知が考えられる。この光学センサはセンサ22と兼ねてもよいし、別のセンサを設けてもよい。例えば、洗剤容器が載せられてはいるものの光学センサなどによる液量検知によりメンテナンス開始前(洗剤容器に試料ノズル18を挿入する前)に洗浄ラック上のいずれかの位置の洗剤量が不足していることを装置が検知することもできる。この場合には、容器位置により実施されるべきメンテナンスに使用される洗剤量を引いた残量がもう一方のメンテナンスに必要な量を上回る場合、若しくは、一方の洗剤容器内の洗剤量がS90の合計以上である場合には、S100のように十分洗剤量がある方の洗剤を用いて両メンテナンスを実行することも可能である。このようにすれば、前述のように洗浄ラックを逆向きに搬送したり、一旦ラック待機ポジションに戻して再び試料吸引位置まで搬送するといった制御が不要となる。
【0045】
あるいは、各メンテナンスに予め優先順位を設定し記憶部7に記憶させておく手段も有効である。各メンテナンスに優先順位が設定されている場合には、設置されている洗剤の総量から、優先順位が高くかつ洗剤量が足りるメンテナンスから実施することも可能である。例えば、「希釈槽」の優先順位を高く設定し、「シッパーノズル流路」の優先順位を設定していた場合に、オペレータは夫々の洗剤容器に2.2mlと0.7mlの洗剤を入れてメンテナンスをしようとしたところ、誤って洗剤容器のポジションを逆に設置してしまうミスも考えられる。この場合には、「シッパーノズル流路」の洗浄のために0.5ml使用するので残りの洗剤は1.7mlとなり、1.7mlと0.7mlとの夫々は「希釈槽」のメンテナンスで必要とされる2.0mlに満たない。このため、予め優先順位を設定しておくことで必ず優先順位の高い「希釈槽」を先にメンテナンスを実行するようにしてもよい。この場合、ポジション2の洗剤容器でメンテナンスを実行するように割り当てられている設定を解除して2.0ml以上あるポジション1に設置された洗剤容器の洗剤を用いて先に「希釈槽」のメンテナンスを実行してもよい。なお、この場合であっても、試料ノズルの液面検知機能やセンサ22の液量検知のいずれの場合でも実現できる。
【0046】
また、優先順位を設定しておかなくとも、夫々の洗剤容器の洗剤の合計量がメンテナンスの必要洗剤量の合計以上の場合には、夫々の容器内の洗剤の双方を使用して2つのメンテナンスを実行してもよい。例えば、先の例では残りは、1.7mlと0.7mlを合計すると2.4mlで「希釈槽」のメンテナンスの必要洗剤量2.0ml以上であり夫々の洗剤容器から洗剤を吸引することで2.0mlの洗剤量を賄うことができる。このようにすることで、誤って洗剤容器のポジションを逆に設置してしまうミスがあっても両方のメンテナンスを実行できる。逆に設置してしまい、かつ、一方の洗剤量が不足するような複合的なミスも想定されるため、優先順位の設定を行いメンテナンスの実行順番を予め設定しておき、設置されている洗剤の総量から優先順位が高くかつ洗剤量が足りるメンテナンスから実施することで、優先順位の高いメンテナンスを優先的に実行することもできる。
【0047】
以上、メンテナンスの例として2種類の例を示したが同じ洗剤を3種類以上のメンテナンスで使用する場合でも同様の考え方で実現することができる。
【0048】
また、説明の便宜上、
図3のようにラックのポジション毎に予めメンテナンスを割り当て、装置側でラックに収容された洗剤容器の位置によって実行するメンテナンスを装置が自動で識別する例を説明したが、必ずしもこの形態に開示技術は限定されるものではない。つまり、操作部1側でオペレータが実行するメンテナンスを指定してもよい。このような場合には、必ずしもポジション毎に夫々メンテナンスを指定しなくともよい。例えば、ポジション1に「シッパーノズル流路」と「希釈槽」のメンテナンスを指定して1つの洗剤容器内の洗剤を用いて両方のメンテナンスを実行してもよい。なお、洗剤ラックは5本の洗剤容器を収容するものでなくてもよく1本の洗剤容器を収容するものであっても2本以上収容するものであってもいずれでもよい。但し、ポジション毎に夫々のメンテナンスを割り当てる又は操作部から指定する場合には2本以上の洗剤容器を収容するラックである必要がある。
【0049】
また、
図5では、管理画面でアナウンスされた洗浄周期外にあるメンテナンスに対応するラックのポジションのすべてに洗剤容器が設置されているかを判定して制御する例を示したが、この判定は必ずしも洗浄周期外にあるメンテナンスに対応するラックのポジションを基準とする必要はない。例えば、操作部1側でオペレータが指定したメンテナンスに対応するラックのポジションを基準としてもよい。
【0050】
上記では、洗剤量の判定は液面検知機能を用いたが、容器形状が予め判明していることで液面を検知した高さと容器形状とから洗剤量を判定することができる。但し、必ずしも容器形状が判明している必要はなく液面を検知した高さのみから洗剤量を判定することもできる。正確な量でなくとも大凡の量が判定できればよいためである。従い、請求項の記載で「洗剤量を判定」と言うときには正確な量の判定のみならず液面検知機能の液面高さやセンサ22の液面検知による液面高さの判定もこの「洗剤量を判定」に含まれる。
【0051】
なお、電解質測定ユニットの例を説明したが、電解質測定ユニットと比色分析ユニットが連結された装置である場合、電解質測定ユニットと比色ユニットで同一洗剤による複数の洗浄動作がある場合や、比色ユニットで同一洗剤による複数の洗浄動作がある場合にも同様に洗浄動作を制御することができる。
【0052】
また、搬送機構24がラックの搬送機構である場合を例にしたが、試料ディスクを用いるタイプの自動分析装置においても本開示技術は適用できる。この場合、試料ディスクの回転駆動機構が搬送機構に該当する。
【0053】
以上、実施形態について説明した。以下、効果について説明する。
【0054】
上記実施形態では、コントローラは、分析部のメンテナンスの実行の際に、搬送機構24を制御することで洗剤が含まれる洗剤容器が収容された容器収容手段(ラック又は試料ディスク)を試料吸引位置まで搬送し、洗剤容器内の洗剤量を判定し、判定された洗剤容器内の洗剤量が第1使用量と第2使用量の合計以上あるか否かを判定し、判定の結果、洗剤容器内の洗剤量が前記合計以上あると判定した場合には、試料ノズルで第1および第2メンテナンスのために洗剤を吸引させ、夫々のメンテナンスを実行することを説明した。
【0055】
これにより、同じ洗剤に対して2種類のメンテナンスを実行しようとする場合には、オペレータが入れた洗剤量が使用量の合計よりも多い場合には確実に2種類のメンテナンスを実行することができる。具体的には、十分な量の洗剤が設置されないといったオペレータのミスや洗剤容器の設置し忘れのミス等があった場合についても他の位置に設置された洗剤をミスした箇所のメンテナンスに使用することができ、セットされている洗剤の容量に適したメンテナンスを装置が自動的に判断し確実に実行することが可能となる。
【0056】
なお、ここで言う「洗剤量を判定」には1つの洗剤容器内の洗剤量の判定のみならず広義には異なる洗剤容器での洗剤量の合計の判定も「洗剤量を判定」に含まれる。
【0057】
また、複数のメンテナンスに対して同じ洗剤を用いる場合でも夫々異なる洗剤設置位置に設置しなければならないという課題に対しオペレータの作業の効率化を図ることができる。当然にこれまで通り、ラック上の洗剤設置位置に応じて、洗浄箇所や、洗浄動作が選択されるようプログラムされていて、夫々異なる洗剤設置位置に洗剤容器を夫々設置した場合や単一の設置位置に洗剤容器を設置した場合でも、同じメンテナンスを実行できる仕様としてもよい。すなわち、オペレータの都合を考慮し、オペレータが設置位置の選択と洗剤量の調節により、同じ目的のためにいずれの手段をも用いれるようにしてもよい。
【0058】
また、コントローラは、第1と第2メンテナンスのいずれかを実行すべきかを識別し、 判定された洗剤容器内の洗剤量が前記合計以上であると判定した場合には、識別されたメンテナンスと、識別されていないメンテナンスの第1および第2メンテナンスの双方を実行することが望ましい。これにより、コントローラが当初識別したメンテナンス以外でも当初識別していなかったメンテナンスについても実行することができる。例えば、
図5で説明したように一方のポジションに洗剤容器を設置し忘れた場合にはコントローラは一方のメンテナンスのみを実行すべきと識別するが、洗剤量の判定により設置し忘れた方のメンテナンスについてもリカバーして実行することができる。なお、前述のように操作部1側でオペレータが実行するメンテナンスを指定してもよい。すなわち、コントローラがどのメンテナンスを実行すべきかの識別には、ラックのポジション以外でもオペレータが実行するメンテナンスを指定することでもコントローラの識別に該当する。
【0059】
また、第1および第2メンテナンスのメンテナンス周期と夫々のメンテナンスに対して前回の実施時期を記憶する記憶部を備え、コントローラは、識別されていないメンテナンスにおいては、記憶部に記憶された前回の実施時期とメンテナンス周期に基づき識別されていないメンテナンスの実行の要否の判定を行うことが望ましい。このようにすることで、コントローラが当初メンテナンスを実施すべきと識別しなかったメンテナンスについても、メンテナンス周期外の場合に限りメンテナンスを実行するようにし、オペレータが意図しない又は必要性の薄いメンテナンスの実行を避け、必要性の高いメンテナンスに対してオペレータの設置ミスをリカバーすることができる。
【0060】
また、コントローラは、容器収容手段(ラック又は試料ディスク)に収容された洗剤容器の位置に応じて前記第1および第2メンテナンスのいずれかを実行すべきかを識別することが望ましい。これにより、オペレータが容器収容手段に設置する位置を選択するといった簡便な方法でメンテナンスの種類を指定することができる。
【0061】
また、コントローラは、容器収容手段(ラック又は試料ディスク)の第1位置に洗剤容器が収容されている場合には第1メンテナンスを実行するよう識別し、容器収容手段(ラック又は試料ディスク)の第2位置に洗剤容器が収容されている場合には前記第2メンテナンスを実行するように識別し、第1位置に洗剤容器が収容されているか否か、第2位置に洗剤容器が収容されているか否かを判定し、当該判定結果に基づき、洗剤容器の位置に応じて対応するメンテナンスを実行し、コントローラは、以下の(1)〜(3)の条件を判定し、全ての条件を満たす場合に、第1および第2メンテナンスの双方を実行することが望ましい。(1)前記第1位置に洗剤容器が収容され、且つ、前記第2位置に洗剤容器が収容されていない場合、(2)前記第1位置の洗剤容器内の洗剤量が前記第1使用量と前記第2使用量の合計以上ある場合、(3)前記記憶部に記憶された前記第2メンテナンスの前回の実施時期と前記第2メンテナンスのメンテナンス周期に基づき、現在の時期が前記メンテナンス周期を超えている場合。これにより、オペレータの容器の設置し忘れに対してもメンテナンス周期外に限定して両方のメンテナンスを確実に実行することができる。
【0062】
また、上記実施形態では、第1メンテナンスと第2メンテナンスの優先順位を記憶する記憶部をさらに備え、コントローラは、分析部のメンテナンスの実行の際に、搬送機構24を制御することで、洗剤が含まれる洗剤容器が収容された容器収容手段(ラック又は試料ディスク)を試料吸引位置まで搬送し、優先順位の識別と、洗剤容器内の洗剤量を判定し、第1メンテナンスが優先順位について最も高い順位として記憶されていた場合に、判定された洗剤容器内の洗剤量が、第1使用量以上あるか否かを判定し、判定の結果、洗剤容器内の洗剤量が前記第1使用量以上あると判定した場合には、試料ノズルで第1メンテナンスのために洗剤を吸引させ、第1メンテナンスを実行することを説明した。
【0063】
これにより、同じ洗剤に対して2種類のメンテナンスを実行しようとする場合でも優先順位の最も高い順位については確実にメンテナンスを実行することができる。なお、ここで言う「洗剤量を判定」には1つの洗剤容器内の洗剤量の判定のみならず広義には異なる洗剤容器での洗剤量の合計も洗剤量の判定に含まれる。また、洗剤ラックは5本の洗剤容器を収容するものでなくてもよく1本の洗剤容器を収容するものであっても2本以上収容するものであってもいずれでもよい。但し、ポジション毎に夫々のメンテナンスを割り当てる又は操作部から指定する場合には2本以上の洗剤容器を収容するラックである必要がある。
【0064】
また、コントローラは、判定の結果、洗剤容器内の洗剤量が第1使用量未満であると判定した場合には、優先順位について次に高い順位として記憶されている第2メンテナンスについて、判定された洗剤容器内の洗剤量が、第2使用量以上あるか否かを第2判定し、第2判定の結果、洗剤容器内の洗剤量が第2使用量以上(第2使用量は第1使用量よりも小さいとする)であると判定した場合には、試料ノズルで第2メンテナンスのために洗剤を吸引させ、第2メンテナンスを実行することが望ましい。これにより、優先順位が高いメンテナンスであっても洗剤量がこの使用量に満たない場合であって次に優先順位の高いメンテナンスを実行することができる。
【0065】
また、コントローラは、容器収容手段(ラック又は試料ディスク)の第1位置に洗剤容器が収容されている場合には第1メンテナンスを実行するよう識別し、容器収容手段(ラック又は試料ディスク)の第2位置に洗剤容器が収容されている場合には第2メンテナンスを実行するように識別し、第1メンテナンスが優先順位について最も高い順位として記憶され、第2メンテナンスが次に高い順位として記憶され、第1位置と第2位置に夫々洗剤容器が収容されている場合には、第1および前記第2メンテナンスを実行し、第1位置に洗剤容器が収容されておらず第2位置に洗剤容器が収容されている場合には、第2位置に収容された洗剤容器内の洗剤を用いて第1メンテナンスを優先的に実行することが望ましい。これにより、オペレータがポジションを間違えて洗剤容器を設置した場合においても優先順位の高いメンテナンスを優先的に実行することができる。
【0066】
また、コントローラは、第2位置に収容された洗剤容器内の洗剤量が第1使用量と第2使用量の合計以上あるか否かを第3判定し、第3判定の結果、洗剤容器内の洗剤量が合計以上あると判定した場合には、第2位置に収容された洗剤容器内の洗剤を用いて第1メンテナンス、第2メンテナンスの順に実行することが望ましい。これにより、一方の洗剤容器の洗剤を用い、かつ、優先順位を考慮したメンテナンスを実行することができる。
【0067】
また、コントローラは、第1および第2位置に夫々洗剤容器が収容されている場合に、夫々の洗剤容器内の洗剤量を判定し、且つ、これらを合算し、合算された洗剤量および優先順位に基づき、優先順位の高い前記第1メンテナンス、次に優先順位の高い前記第2メンテナンスの順に実行することが望ましい。これにより、合算された洗剤量および優先順位に基づき、一方の洗剤容器の洗剤量が不足している場合であっても他の洗剤容器の洗剤量を用いて、かつ、優先順位を考慮したメンテナンスを実行することができる。
【0068】
また、さらに、第1および第2メンテナンスのメンテナンス周期と夫々のメンテナンスに対して前回の実施時期を記憶する記憶部を備え、コントローラは、記憶部に記憶された第1および前記第2メンテナンスの前回の実施時期と第1および前記第2メンテナンスのメンテナンス周期に基づき、現在の時期が夫々の前記メンテナンス周期を超えているか否かを判定し、優先順位の識別は、メンテナンス周期を超えているメンテナンスの中から優先順位の高低を識別することが望ましい。このようにすることで、メンテナンス周期外の場合に限りメンテナンスを実行するようにし、オペレータが意図しない又は必要性の薄いメンテナンスの実行を避け、必要性の高いメンテナンスに対してオペレータの設置ミスをリカバーすることができ、且つ、優先順位順にメンテナンスを実行することができる。
【0069】
また、コントローラは、現在の時期がメンテナンス周期を超えた場合に、その旨をオペレータに報知することが望ましい。これにより、オペレータはメンテナンスの実施の必要性を認識することができる。
【0070】
また、コントローラは、洗剤量を判定する際に、洗剤容器内の液面高さの情報から判定することもできる。加えて、コントローラは、予め記憶されている洗剤容器の容器形状と、液面高さの情報とから、洗剤量を判定することもできる。洗剤容器の容器形状を考慮することで正確な洗剤量を判定することができる。
【0071】
また、液面高さの情報を検出するセンサを備え、コントローラは、このセンサから検出された液面高さ情報を取得することもできる。ノズルの液面の液面検知機能とは別のセンサを用いることでコントローラは洗剤容器にノズルを挿入する前に各洗剤容器の液面高さ情報又は洗剤量を把握することができる。このようにすることで、前述のように洗浄ラックを逆向きに搬送したり、一旦ラック待機ポジションに戻して再び試料吸引位置まで搬送するといった制御が不要となる。
【0072】
また、分析部は、電解質分析部であり、電解質分析部は、試料を希釈する希釈槽と、希釈された試料を測定する測定用電極と、希釈槽と前記測定用電極との間の流路とを有し、第1および第2メンテナンスは、一方は洗剤を希釈せずに希釈槽を洗浄するメンテナンスであり、他方は洗剤を希釈しこの流路を洗浄するメンテナンスであることが望ましい。これにより、電解質分析部に対しセットされている洗剤の容量に適したメンテナンスを自動的に判断し実行することが可能である。但し、この2種類のメンテナンスに本開示技術は限定されない。