(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873825
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】粉粒体の混合方法および装置
(51)【国際特許分類】
B01F 7/16 20060101AFI20210510BHJP
B01F 7/00 20060101ALI20210510BHJP
B01F 3/18 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
B01F7/16 H
B01F7/00 C
B01F3/18
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-105610(P2017-105610)
(22)【出願日】2017年5月29日
(65)【公開番号】特開2018-199108(P2018-199108A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2020年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(73)【特許権者】
【識別番号】000152136
【氏名又は名称】株式会社徳寿工作所
(74)【代理人】
【識別番号】100171354
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100071663
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 保夫
(72)【発明者】
【氏名】河村 順平
(72)【発明者】
【氏名】諸星 浩和
(72)【発明者】
【氏名】吉田 泰三
【審査官】
瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−046900(JP,A)
【文献】
特表2010−502430(JP,A)
【文献】
特開2004−255348(JP,A)
【文献】
特開平06−343846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 1/00− 7/18、15/00−17/24
B01F 3/18、7/00、7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体を収容して混合するための缶体と、駆動シャフトに取り付けられて駆動シャフトの回転とともに水平方向に回動して粉粒体を缶体外周に移動させるとともに上方へ移動させるために缶体の底部に配置されたウイングと、前記駆動シャフトに取り付けられて駆動シャフトの回転とともに回動し上方に移動した粉粒体をさらに上方へ移動と同時に攪拌混合するための羽根状のスクリューとをそなえた粉粒体の混合装置を用いて粉粒体を混合する方法であって、回動方向に凸となる湾曲状に形成したウイングの回動により粉粒体を缶体外周に移動させ、ウイングの回動による遠心力と、ウイングの直上に位置し上下に延びる下部スクリューと下部スクリューの上方に位置し上方から缶体の周壁に沿って斜め下方に湾曲して延びる上部スクリューの回動により、ウイングの回動で缶体外周に移動した粉粒体を缶体の上方に移動させて攪拌混合するようにするとともに、缶体の側面の前記ウイングの上方に粉粒体を分散するためのチョッパーが設置されて、前記ウイングの回動による遠心力と下部スクリューの回動により、ウイングの回動で缶体外周に移動した粉粒体を上方に移動させてチョッパーに供給し、チョッパーで分散された粉粒体を下部スクリューと上部スクリューの回動によりさらに缶体の上方に移動させ攪拌混合するようにし、ウイングの回動速度を低速にしても粉粒体の上方への移動と攪拌混合を可能としたことを特徴とする粉粒体の混合方法。
【請求項2】
前記ウイングの回動速度が周速3〜5m/秒であることを特徴とする請求項1に記載の粉粒体の混合方法。
【請求項3】
粉粒体を収容して混合するための缶体と、駆動シャフトに取り付けられて駆動シャフトの回転とともに水平方向に回動して粉粒体を缶体外周に移動させるとともに上方へ移動させるために缶体の底部に配置されたウイングと、前記駆動シャフトに取り付けられて駆動シャフトの回転とともに回動し上方に移動した粉粒体をさらに上方へ移動と同時に攪拌混合するための羽根状のスクリューと、粉粒体を分散するために缶体の側面のウイングの上方に設置したチョッパーをそなえ、前記ウイングは回動方向に凸となる湾曲状に形成され、
前記ウイングは、缶体の上方から見た場合、缶体の中央部に位置する駆動シャフトから缶体の周壁まで延びる複数のウイング部材からなり、該ウイング部材は、粉粒体を缶体外周に移動させるためウイングの回動方向に凸となる湾曲状に形成されており、ウイング部材には、缶体の周壁と当接するウイング部材の先端部に粉粒体に上昇流を与える傾斜角度を有する傾斜プレートが付設され、前記羽根状のスクリューは、ウイングの直上に位置し上下に延びる下部スクリューと下部スクリューの上方に位置し上方から缶体の周壁に沿って斜め下方に湾曲して延びる上部スクリューからなり、ウイングの回動による遠心力と下部スクリューの回動により、ウイングの回動で缶体外周に移動した粉粒体を上方に移動させてチョッパーに供給し、チョッパーで分散された粉粒体を下部スクリューと上部スクリューの回動によりさらに缶体の上方に移動させ攪拌混合するよう構成したことを特徴とする粉粒体の混合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉粒体の混合方法および装置に関し、とくに、攪拌型混合機において粉粒体を移動攪拌混合するための回転速度を低速にしても混合を可能とする省エネルギー型の粉粒体の混合方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品、化学品などの分野においては、製品の製造過程において種類の異なる複数の粉粒体を混合する場合が多く、そのために、粉粒体を収容して混合するための缶体内に複数種類の粉粒体を投入し、缶体内で攪拌羽根を回動させて粉粒体を攪拌混合する攪拌型混合機が用いられている。
【0003】
例えば、缶体と、駆動シャフトに取り付けられて駆動シャフトの回転とともに水平方向に回動して粉粒体を缶体外周に移動させるとともに上方へ移動させるために缶体の底部に配置された下側の羽根(ウイング)と、駆動シャフトに取り付けられて駆動シャフトの回転とともに回動し上方に移動した粉粒体を攪拌混合するための上側の羽根(スクリュー)をそなえた混合装置が用いられている。(特許文献1参照)
【0004】
この混合装置においては、缶体の底部に配置された下側の羽根(ウイング)の回動により粉粒体が缶体外周に移動し、移動した粉粒体は回動に伴う遠心力で缶体の外周壁に沿って上方に押し上げられ、押し上げられた粉粒体は上側の羽根(スクリュー)で攪拌されることにより粉粒体の混合が行われるが、この混合方式には以下のような問題点がある。
【0005】
粉粒体を缶体外周に移動させて缶体の外周壁に沿って上方に押し上げるのは下側の羽根(ウイング)の回動に伴う遠心力だけであるから、駆動シャフトを中心として放射状に延びる直線状のウイングでは、粉粒体を缶体外周に移動させて上方に押し上げるためにウイングを周速6〜10m/秒のような回動速度で回動させなければならないから、大きな動力を要しエネルギー消費量も大きくなる。ウイングの回転を低速にすると、十分な遠心力が得られないため、粉粒体が缶体外周に移動せず粉粒体が直線状のウイングの上を反回転側に乗り越えてしまい、従って粉粒体を缶体外周に移動させることも缶体の外周壁に沿って上方に押し上げることも困難となり混合ができない。
【0006】
また、上記のように、粉粒体を缶体の外周壁に沿って上方に押し上げるのはウイング(下側の羽根)の回動に伴う遠心力だけであるから、粉粒体の上方への移動距離には限界があり、従って羽根状のスクリュー(上側の羽根)で攪拌混合する高さ方向の範囲にも限界があって、缶体への粉粒体の仕込み高さを、例えば缶体の底面径の50%程度に抑えなければならず、仕込み高さをさらに高くすると、混合不良が発生するなどの不具合が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−255348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、缶体内で攪拌羽根を回動させて粉粒体を攪拌混合する攪拌型混合機において、回動方向に凸となる湾曲状に形成したウイング(下側の羽根)を用いることにより粉粒体が効果的に缶体外周に移動して缶体の外周壁に沿って押し上げられることを見出し、さらに粉粒体の上方への押し上げに有効な羽根状のスクリュー(上側の羽根)の配置構成を見出したことに基づいてなされたものであり、その目的は、粉粒体を移動攪拌混合するための回転速度を低速にしても混合を可能とする省エネルギー型の粉粒体の混合方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための請求項1による粉粒体の混合方法は、粉粒体を収容して混合するための缶体と、駆動シャフトに取り付けられて駆動シャフトの回転とともに水平方向に回動して粉粒体を缶体外周に移動させるとともに上方へ移動させるために缶体の底部に配置されたウイングと、前記駆動シャフトに取り付けられて駆動シャフトの回転とともに回動し上方に移動した粉粒体をさらに上方へ移動と同時に攪拌混合するための羽根状のスクリューとをそなえた粉粒体の混合装置を用いて粉粒体を混合する方法であって、回動方向に凸となる湾曲状に形成したウイングの回動により粉粒体を缶体外周に移動させ、ウイングの回動による遠心力と、ウイングの直上に位置し上下に延びる下部スクリューと下部スクリューの上方に位置し上方から缶体の周壁に沿って斜め下方に湾曲して延びる上部スクリューの回動により、ウイングの回動で缶体外周に移動した粉粒体を缶体の上方に移動させて攪拌混合するように
するとともに、缶体の側面の前記ウイングの上方に粉粒体を分散するためのチョッパーが設置されて、前記ウイングの回動による遠心力と下部スクリューの回動により、ウイングの回動で缶体外周に移動した粉粒体を上方に移動させてチョッパーに供給し、チョッパーで分散された粉粒体を下部スクリューと上部スクリューの回動によりさらに缶体の上方に移動させ攪拌混合するようにし、ウイングの回動速度を低速にしても粉粒体の上方への移動と攪拌混合を可能としたことを特徴とする。
【0010】
請求項2による粉粒体の混合方法は、請求項1において、前記ウイングの回動速度が周速3〜5m/秒であることを特徴とする。
【0012】
請求項
3による粉粒体の混合装置は、粉粒体を収容して混合するための缶体と、駆動シャフトに取り付けられて駆動シャフトの回転とともに水平方向に回動して粉粒体を缶体外周に移動させるとともに上方へ移動させるために缶体の底部に配置されたウイングと、前記駆動シャフトに取り付けられて駆動シャフトの回転とともに回動し上方に移動した粉粒体を
さらに上方へ移動と同時に攪拌混合するための羽根状のスクリューと、粉粒体を分散するために缶体の側面のウイングの上方に設置したチョッパーをそなえ、前記ウイングは回動方向に凸となる湾曲状に形成され、
前記ウイングは、缶体の上方から見た場合、缶体の中央部に位置する駆動シャフトから缶体の周壁まで延びる複数のウイング部材からなり、該ウイング部材は、粉粒体を缶体外周に移動させるためウイングの回動方向に凸となる湾曲状に形成されており、ウイング部材には、缶体の周壁と当接するウイング部材の先端部に粉粒体に上昇流を与える傾斜角度を有する傾斜プレートが付設され、前記羽根状のスクリューは、ウイングの直上に位置し上下に延びる下部スクリューと下部スクリューの上方に位置し上方から缶体の周壁に沿って斜め下方に湾曲して延びる上部スクリューからなり、ウイングの回動による遠心力と下部スクリューの回動により、ウイングの回動で缶体外周に移動した粉粒体を上方に移動させてチョッパーに供給し、チョッパーで分散された粉粒体を下部スクリューと上部スクリューの回動によりさらに缶体の上方に移動させ攪拌混合するよう構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、従来の攪拌型混合機と比べて、以下の効果が得られる。
缶体内に立設した駆動シャフトと共に回転するウイングおよびスクリューの回動速度を従来の1/3〜1/2(3〜5m/秒)としても、粉粒体の混合が可能となるから、動力は小さくてすみ省エネルギー効果が達成される。
【0016】
ウイングおよびスクリューによる粉粒体の上方への押し上げ高さが大きくなるから、缶体への粉粒体の仕込み(投入)高さを高く、例えば缶体の底部径の80%の高さにしても粉粒体の混合が可能となり、省スペース効果を達成することができる。
【0017】
本発明による粉粒体の混合装置においては、ウイングおよびスクリューを回動するための駆動シャフトを缶体内に立設しているから、メンテナンス時には駆動機構を上方に引き上げるだけでウイングおよびスクリューの取り外し、点検などを行うことができ、また、缶体内底部の清掃も駆動機構を上方に引き上げるだけで容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の粉粒体の混合装置におけるウイング、スクリュー、チョッパーの配置を側面からみた図である。
【
図2】本発明の粉粒体の混合装置におけるウイング、スクリュー、チョッパーの配置を上面(
図1の矢印A方向)からみた図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の粉粒体の混合装置1は、
図1〜2に示すように、粉粒体を収容して混合するための缶体2と、缶体2に立設された駆動シャフト3の枝杆11に取り付けられて駆動シャフト3の回転とともに水平方向に回動して粉粒体を缶体2の外周に移動させるとともに上方へ移動させるために缶体2の底部に配置されたウイング4と、駆動シャフト3の枝杆11に取り付けられて駆動シャフト3の回転とともに回動し上方に移動した粉粒体を攪拌混合するための羽根状のスクリュー(上部スクリュー5、下部スクリュー6)と、粉粒体を分散するために缶体2の側面のウイング4の上方に設置したチョッパー7をそなえている。
【0020】
図2に示すように、ウイング4は、缶体2の中央部に位置する駆動シャフト3から缶体2の周壁まで延びる複数のウイング部材9からなり、ウイング部材9は粉粒体を缶体2の外周に移動させるためウイングの回動方向(B)に凸となる湾曲状に形成されている。
図2においては、ウイング部材9は駆動シャフト3から左右方向に逆S字状に2個配置されたものが示されているが、放射状にさらに多数配置することもできる。
【0021】
また、ウイング部材9は、
図1〜2に示すように、缶体2の周壁と当接する先端部に粉粒体に上昇流を与える傾斜角度を有する傾斜プレート10が付設されていることが望ましい。
【0022】
粉粒体を攪拌混合するための羽根状のスクリューは、
図1〜2に示すように、ウイング4の直上に位置し上下に延びる下部スクリュー6と、下部スクリュー6の上方に位置し上方から缶体2の周壁に沿って斜め下方に湾曲して延びる上部スクリュー5からなる。
【0023】
粉粒体を分散するために缶体2の側面のウイング4の上方に設置したチョッパー7は、複数の分散ブレード8をそなえた公知のものが適用される。
【0024】
本発明においては、缶体2内に投入された粉粒体は、ウイング4の回動により粉粒体を缶体2の外周に移動する。ウイング4の回動方向に凸となる湾曲状に形成されたウイング部材9は、粉粒体の缶体2の外周への移動を促進し、回動速度が3〜5m/秒のような低速でも粉粒体は缶体2の外周へ移動して缶体2の外周壁に押し付けられ、ウイング4の回動による遠心力で容易に上方へ押し上げられる。
【0025】
缶体2の外周に移動した粉粒体は、ウイング4の回動による遠心力と、ウイング4の直上に位置する下部スクリュー6と下部スクリュー6の上方に位置する上部スクリュー5の回動により、缶体2の上方に移動して攪拌混合される。本発明においては、ウイング4の形状と、下部スクリュー6および上部スクリュー5の形状および配置の組み合わせにより、ウイング4およびスクリュー5、6の回動速度を前記のように従来の1/3〜1/2の周速にしても粉粒体の上方への移動と攪拌混合が可能となる。ウイング部材9の先端部に傾斜プレート10が付設されている場合には、粉粒体の上昇流はさらに促進される。
【0026】
図1〜2に示すように、缶体2の側面のウイング4の上方に粉粒体を分散するためのチョッパー7が設置されている場合においては、ウイング4の回動による遠心力と下部スクリュー6の回動により、ウイング4の回動で缶体2の外周に移動した粉粒体を上方に移動させてチョッパー7に供給する。チョッパー7の分散ブレード8は粉体が結合して生じた凝集塊の解砕、繊維質のほぐし、固形油脂の添加混合時の油脂解砕、加液・加湿混合時のダマ解砕などして、チョッパー7で分散された粉粒体は、下部スクリュー6と上部スクリュー5の回動によりさらに缶体2の上方に移動して攪拌混合される。この場合においても、ウイング部材9の先端部に傾斜プレート10が付設されていると、粉粒体の上昇流が促進されて、チョッパー7への粉粒体の供給を効果的に行うことができ、粉粒体の分散効果を促進する。
【0027】
上記のように、本発明において、粉粒体は、ウイング4の回動による遠心力と、ウイング4の直上に位置する下部スクリュー6と下部スクリュー6の上方に位置する上部スクリュー5の回動により、缶体2の上方まで押し上げられ混合されるから、缶体への粉粒体の仕込み(投入)高さを高く、例えば缶体の底部径の80%の高さにしても粉粒体の混合が可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1 粉粒体の混合装置
2 缶体
3 駆動シャフト
4 ウイング
5 上部スクリュー
6 下部スクリュー
7 チョッパー
8 分散ブレード
9 ウイング部材
10 傾斜プレート
11 枝杆