特許第6873842号(P6873842)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6873842
(24)【登録日】2021年4月23日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 41/06 20120101AFI20210510BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20210510BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20210510BHJP
   B23Q 3/08 20060101ALI20210510BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20210510BHJP
   B23Q 7/04 20060101ALI20210510BHJP
   B25J 15/06 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   B24B41/06 A
   B24B27/06 M
   H01L21/78 N
   B23Q3/08 A
   H01L21/68 P
   B23Q7/04 K
   B25J15/06 N
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-123922(P2017-123922)
(22)【出願日】2017年6月26日
(65)【公開番号】特開2019-5854(P2019-5854A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大室 喜洋
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌之
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−207424(JP,A)
【文献】 特開2015−88558(JP,A)
【文献】 特開2015−12264(JP,A)
【文献】 米国特許第5803797(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 41/06
B23Q 3/08
B24B 27/06
H01L 21/301
H01L 21/683
B23Q 7/04
B25J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削してチップに分割する切削ユニットと、該チャックテーブルからチップ収容部に該チップを搬送する搬送ユニットと、を備える切削装置であって、
該搬送ユニットは、
内部に正圧・負圧伝達用の空間を備え、下面の保持面で該チップを保持する箱状の本体部と、
該本体部を移動させる移動部と、
該本体部に接続し、該保持面に負圧を作用させる吸引路と、
該本体部の該保持面と反対側の面に接続して、該空間にエアーを供給するエアー供給路と、を有し、
該本体部は、
該空間から該保持面に貫通する複数のチップ吸引用の貫通孔と、
該貫通孔と対面する該エアー供給路の端部開口と該貫通孔との間に設置され、該端部開口から噴射するエアーを該空間内で放射状に整流する邪魔板と、
を備える切削装置。
【請求項2】
該邪魔板は、該エアー供給路の端部開口と各貫通孔とを結ぶ直線のそれぞれと交差する請求項1に記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を切削してチップに分割する切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、パッケージ基板やセラミックス基板など、各種板状の被加工物を切削ブレードにより切削して、例えばCSP(Chip Size Package)と呼ばれるチップに分割する切削装置が知られている。このような切削装置として、被加工物をテープなどに固定せず、直接、チャックテーブルに吸引保持して個々のチップに分割し、分割された個々のチップをそれぞれ吸引保持する搬送ユニットによって、チャックテーブルからチップ収容部に搬送するタイプの装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
搬送ユニットは、内部に正圧・負圧伝達用の空間を有する本体部を備え、この本体部の下面に設けられた保持面には、分割された個々のチップの領域に対応して開口する貫通孔が形成される。内部空間を負圧に保持することにより、保持面の貫通孔にチップを吸引し、内部空間を正圧に保持することにより、貫通孔からエアーを噴出してチップを離脱させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−020215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、貫通孔からエアーを噴出してチップを離脱させるために、上記した空間に正圧を加えた場合、特定の貫通孔からエアーが強力に噴射されるものの、その他の貫通孔からのエアーの噴射が弱くなる事態が生じ、一部のチップが離脱されずに本体部に残ってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、搬送ユニットの本体部に残存するチップの低減を図った切削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削してチップに分割する切削ユニットと、該チャックテーブルからチップ収容部に該チップを搬送する搬送ユニットと、を備える切削装置であって、該搬送ユニットは、内部に正圧・負圧伝達用の空間を備え、下面の保持面で該チップを保持する箱状の本体部と、該本体部を移動させる移動部と、該本体部に接続し、該保持面に負圧を作用させる吸引路と、該本体部の該保持面と反対側の面に接続して、該空間にエアーを供給するエアー供給路と、を有し、該本体部は、該空間から該保持面に貫通する複数のチップ吸引用の貫通孔と、該貫通孔と対面する該エアー供給路の端部開口と該貫通孔との間に設置され、該端部開口から噴射するエアーを該空間内で放射状に整流する邪魔板と、を備える。
【0008】
この構成によれば、エアー供給路の端部開口から本体部の空間内に噴射されたエアーは、邪魔板に当たることにより放射状に整流されて該空間内に滞留する。これにより、噴射されたエアーの圧力差が空間内で緩和されることにより、複数の貫通孔からそれぞれ吹き出すエアーの量の均一化を図ることができるため、本体部に残存するチップの低減を図ることができる。
【0009】
この構成において、該邪魔板は、該エアー供給路の端部開口と各貫通孔とを結ぶ直線のそれぞれと交差する位置に設けてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、搬送ユニットの本体部に残存するチップの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施形態に係る切削装置を示す斜視図である。
図2図2は、被加工物を保持するチャックテーブルを示す斜視図である。
図3図3は、被加工物を搬送する搬送パッドの下方視図である。
図4図4は、搬送パッドに接続される加圧空気供給装置及び吸引装置の構成を示す図である。
図5図5は、搬送パッドの長手方向の縦断面図である。
図6図6は、搬送パッドの短手方向の縦断面図である。
図7図7は、搬送パッドの横断面図である。
図8図8は、チップを吸引した状態を示す吸引パッドの縦断面図である。
図9図9は、チップを離脱した状態を示す吸引パッドの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
図1は、本実施形態に係る切削装置を示す斜視図である。図2は、被加工物を保持するチャックテーブルを示す斜視図である。図3は、被加工物を搬送する搬送パッドの下方視図である。図4は、搬送パッドに接続される加圧空気供給装置及び吸引装置の構成を示す図である。図5は、搬送パッドの長手方向の縦断面図である。図6は、搬送パッドの短手方向の縦断面図である。図7は、搬送パッドの横断面図である。本実施形態に係る切削装置は、例えば、矩形状に形成されたパッケージ基板やセラミックス基板などの被加工物に対して切削加工を行う装置である。
【0014】
切削装置1は、図1に示すように、装置本体としての基台2と、この基台2上に設けられ、上記した被加工物100を保持するチャックテーブル10と、チャックテーブル10に保持された被加工物100に対して切削加工をする切削ユニット20とを備える。
【0015】
被加工物100は、図2に示すように、平面形状が矩形の平板状に形成されている。被加工物100は、電極板101を備え、電極板101の表面101aに複数の分割予定ライン102が格子状に形成されている。被加工物100は、複数の分割予定ライン102によって区画された複数の領域を備え、これらの領域それぞれにチップ(CSP(Chip Size Package))103が配置されている。チップ103は、電極板101の裏面側からモールド樹脂104によって外表面の少なくとも一部が被覆されている。即ち、チップ103は、個々にパッケージされたパッケージデバイスである。このように、本実施形態において、被加工物100は、モールド樹脂104により被覆された複数のチップ103を含むパッケージ基板である。
【0016】
チャックテーブル10は、テーブル本体11と、このテーブル本体11の上に固定されて被加工物100を吸引保持する吸引保持板12とを備える。吸引保持板12は、被加工物100と同等の大きさの矩形状に形成され、この吸引保持板12の上面12aには、被加工物100を吸引するための吸引口13と、切削ユニット20の切削ブレード(後述する)を逃がすための逃がし溝14とが設けられている。吸引口13は、チップ103に対応する位置に設けられ、逃がし溝14は、分割予定ライン102に対応する位置に設けられている。チャックテーブル10は、吸引口13が図示しない真空吸引源と接続され、真空吸引源により吸引されることで、被加工物100を吸引して保持する。また、チャックテーブル10は、図示しない加工送りユニットによりX軸方向(図1)に移動自在で図示しない回転駆動源によりZ軸方向(図1)と平行な軸心回りに回転自在に設けられている。
【0017】
切削ユニット20は、被加工物100を切削するものである。切削ユニット20は、図1に示すように、チャックテーブル10に保持された被加工物100を切削する切削ブレード21と、この切削ブレード21を着脱可能に装着する図示しないスピンドルとを備えている。切削ブレード21は、略リング形状を有する極薄の切削砥石である。スピンドルは、切削ブレード21を回転させることで被加工物100を切削する。スピンドルは、スピンドルハウジング22内に収容されている。切削ユニット20のスピンドル及び切削ブレード21の軸心は、Y軸方向と平行に設定されている。
【0018】
切削ユニット20は、チャックテーブル10に保持された被加工物100に対して、図示しない割り出し送りユニットによりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、図示しない切り込み送りユニットによりZ軸方向に移動自在に設けられている。切削ユニット20は、割り出し送りユニット及び切り込み送りユニットにより、チャックテーブル10の吸引保持板12の任意の位置に切削ブレード21を位置付け可能となっている。切削ユニット20は、割り出し送りユニット及び切り込み送りユニットによりY軸方向及びZ軸方向に移動されることによって、加工送りユニットによりX軸方向に移動されるチャックテーブル10に保持された被加工物100の分割予定ライン102を切削して、被加工物100を複数のチップ103に分割する。切削ブレード21は、被加工物100を切削する際に、逃がし溝14に進入することにより、吸引保持板12(チャックテーブル10)との接触が回避される。
【0019】
また、切削装置1は、図1に示すように、加工前の被加工物100を複数収容するカセット30と、このカセット30から被加工物100を取り出す搬出ユニット40と、カセット30から取り出された加工前の被加工物100をチャックテーブル10に搬送するパッケージ搬送ユニット50と、個々に分割されたチップ103を収容するチップ収容部60と、個々に分割されたチップ103をチャックテーブル10上からチップ収容部60に搬送するチップ搬送ユニット70と、切削装置1の全体の動作を制御する制御ユニット90とを備える。
【0020】
カセット30は、被加工物100を複数枚収容するものである。カセット30は、複数枚の被加工物100をZ軸方向に間隔をあけて重ねる。カセット30は、被加工物100を出し入れ自在とする開口を備え、図示しないカセットエレベータによりZ軸方向に昇降自在に設けられている。
【0021】
搬出ユニット40は、加工前の被加工物100をカセット30から1枚取り出す搬出手段41と、カセット30から取り出された被加工物100を一時的に載置する一対のレール42とを備える。パッケージ搬送ユニット50は、一対のレール42上の被加工物100を吸引する。パッケージ搬送ユニット50は、吸引した被加工物100をチャックテーブル10上に載置する。チップ収容部60は、上方に開口61を有する箱状に形成されている。
【0022】
チップ搬送ユニット70は、チャックテーブル10上の個々に分割された複数のチップ103(図2)を吸引する吸引パッド71(本体部)と、吸引パッド71をZ軸方向とY軸方向に移動させる移動機構(移動部)72とを備える。この移動部72は、図示は省略するが基台2に設けられた電動モータ、ボールねじ等を含み、上記したZ軸方向及びY軸方向に移動可能に構成されている。
【0023】
吸引パッド71は、図3及び図4に示すように、ステンレス鋼等の金属により構成されたパッド本体73と、パッド本体73の下面に取り付けられた緩衝シート74とを備える。パッド本体73は、平面形状が矩形状の上板部73aと、この上板部73aと同等の形状、大きさに形成された下板部73bと、これら上板部73aと下板部73bとを連結する側板部73cとを備えた直方体形状に形成されている。また、パッド本体73は、図5及び図6に示すように、内部を中空とする内部空間(正圧・負圧伝達用の空間)76を有する箱状に形成されている。緩衝シート74は、平面形状が矩形状に形成され、下板部73bに取り付けられる。緩衝シート74の下面(保持面)74aは、平坦でありかつ水平方向と平行となる。緩衝シート74は、気密性と弾性とを有する合成樹脂により構成されている。本実施形態では、緩衝シート74は、ゴムにより構成されるが、材質はゴムに限定されるものではない。
【0024】
また、吸引パッド71は、図3に示すように、緩衝シート74の下面74aに開口した複数の吸引孔(貫通孔)75を有している。吸引孔75は、図5及び図6に示すように、下板部73bおよび緩衝シート74を貫通して、内部空間76と外部とを連通する。また、吸引孔75は、複数のチップ103と対応する領域に設けられている。すなわち、吸引孔75は、吸引パッド71がチップ103を吸引する際に、対応するチップ103により塞がれる位置に配置されている。本実施形態では、吸引孔75は、吸引対象となるチップ103と1対1で対応し、1つの吸引孔75が1つのチップ103を吸引する構成としているが、1つのチップ103を複数の吸引孔75によって吸引する構成としても良い。
【0025】
また、吸引パッド71は、図4に示すように、パッド本体73の上板部73aに設けられた複数(4つ;図4には3つが示される)の配管接続開口部(端部開口)77と、一部(2つ;図4には1つが示される)の配管接続開口部77に接続される吸引路78と、これら吸引路78に接続される吸引弁79と、吸引装置80とを備える。また、吸引パッド71は、残り(2つ)の配管接続開口部77に接続される加圧空気供給路(エアー供給路)81と、これら加圧空気供給路81に接続される供給弁82と、加圧空気供給装置83とを備える。加圧空気供給路81は、パッド本体73の内部空間76に加圧した空気(エアー)を供給する流路であり、この加圧空気供給路81が接続される配管接続開口部77は、少なくとも、緩衝シート74の下面74aと反対側に位置する面であるパッド本体73の上板部73aに設けられている。
【0026】
吸引装置80及び加圧空気供給装置83は、それぞれ制御ユニット90に接続され、制御ユニット90の制御に従い、吸引装置80及び加圧空気供給装置83の動作、吸引弁79及び供給弁82の開閉がなされる。
【0027】
吸引装置80が動作して、吸引弁79が開放されると、吸引路78、配管接続開口部77を通じて、パッド本体73の内部空間76内の空気が吸い出されるため、吸引孔75を通じて内部空間76内の空気が吸引される。また、加圧空気供給装置83が動作して、供給弁82が開放されると、加圧空気供給路81、配管接続開口部77を通じて、パッド本体73の内部空間76内に加圧した空気(エアー)が供給されるため、吸引孔75を通じて内部空間76内の空気が噴出する。
【0028】
吸引パッド71は、吸引装置80を動作した状態で吸引弁79を開放させて、内部空間76内に負圧を生じさせることにより、吸引孔75がチップ103を吸引して保持する。この場合、少なくとも供給弁82は閉塞されて内部空間76内に加圧した空気が供給されないようになっている。また、吸引パッド71は、加圧空気供給装置83が動作した状態で供給弁82を開放させて、内部空間76内に正圧を生じさせることにより、吸引孔75から空気を噴出し、保持したチップ103を緩衝シート74から離脱させる。
【0029】
ところで、上記した構成では、吸引孔75から空気を噴出してチップ103を離脱させるために、加圧空気供給路81から内部空間76に正圧を加えた場合、加圧空気供給路81の配管接続開口部77の下方に位置する特定の吸引孔75から空気が強力に噴射される。一方、配管接続開口部77から離れた他の吸引孔75からの空気の噴射が弱くなる事態が生じ、一部のチップ103が緩衝シート74から離脱されずに緩衝シート74に残存する問題が想定された。
【0030】
本実施形態では、吸引パッド71は、図5図7に示すように、パッド本体73の内部空間76内に邪魔板85を備えている。この邪魔板85は、ステンレス鋼等の金属板により構成され、加圧空気供給路81の配管接続開口部77と吸引孔75との間に配置されている。邪魔板85は、図5及び図7に示すように、長手方向の両端部をそれぞれステップ状に折り曲げた取り付け部86を備え、この取り付け部86を、ねじ87によりパッド本体73の上板部73aの内面(天面)73a1に固定している。
【0031】
邪魔板85は、加圧空気供給路81から内部空間76内に供給された空気(エアー)を整流する機能を有する。このため、本実施形態では、図6に示すように、邪魔板85は、加圧空気供給路81の配管接続開口部77と各吸引孔75とを結ぶ直線88のそれぞれと交差する位置、大きさに形成されている。この構成によれば、加圧空気供給路81の配管接続開口部77を通じて内部空間76内に供給(噴射)された空気は、邪魔板85と接触することにより、この邪魔板85で整流される。このため、供給された空気が邪魔板で整流されて内部空間76内に滞留することにより、供給された空気の圧力差が内部空間76内で緩和される。従って、複数の貫通孔からそれぞれ吹き出す空気量の均一化を図ることができる。
【0032】
次に、吸引パッドの動作について説明する。図8は、チップを吸引した状態を示す吸引パッドの縦断面図である。図9は、チップを離脱した状態を示す吸引パッドの縦断面図である。本実施形態では、チップ搬送ユニット70は、上記した切削ユニット20によって、個々に分割された複数のチップ103をチャックテーブル10からチップ収容部60に搬送する。
【0033】
制御ユニット90は、チップ搬送ユニット70の吸引パッド71をチャックテーブル10に移動し、吸引保持板12に保持されたチップ103と吸引パッド71とを重ねる。この場合、制御ユニット90は、吸引パッド71の緩衝シート74に設けられた吸引孔75を対応するチップ103が塞ぐ位置に、吸引パッド71を位置付ける。
【0034】
次に、制御ユニット90は、吸引装置80を動作すると共に、吸引弁79を開放する。これにより、図8に示すように、吸引路78の配管接続開口部77を通じて、吸引パッド71の内部空間76内の空気が吸い出されるため、吸引パッド71の緩衝シート74に設けられた吸引孔75にチップ103がそれぞれ吸引保持される。この場合、吸引装置80の動作によって、各吸引孔75から内部空間76内に吸引された空気は、それぞれ邪魔板85にぶつかることによって整流される。このため、各吸引孔75における吸引力の差が生じることが抑えられ、各吸引孔75にチップ103が吸引保持される。
【0035】
次に、制御ユニット90は、図9に示すように、チップ103が吸引保持された吸引パッド71をチップ収容部60の上方に移動させる。続いて、制御ユニット90は、吸引弁79を閉鎖し、同時に、加圧空気供給装置83を動作すると共に供給弁82を開放する。この場合、前もって加圧空気供給装置83を動作させておくことが好ましい。
【0036】
供給弁82が開放されると、加圧空気供給装置83で加圧された空気が加圧空気供給路81、配管接続開口部77を通じて、吸引パッド71の内部空間76内に供給(噴射)される。この供給された空気は、邪魔板85に当たることにより、この邪魔板85上を放射状に整流されて内部空間76内に滞留する。これにより、配管接続開口部77を通じて供給された空気の圧力差が内部空間76内で緩和されることにより、複数の吸引孔75からそれぞれ吹き出す空気量の均一化を図ることができる。このため、各吸引孔75に吸引されたチップ103をチップ収容部60の中に落とすことができ、緩衝シート74に残存するチップ103の低減を図ることができる。
【0037】
以上、説明したように、本実施形態に係る切削装置1は、被加工物100を保持するチャックテーブル10と、該チャックテーブル10に保持された被加工物100を切削してチップ103に分割する切削ユニット20と、該チャックテーブル10からチップ収容部60に該チップ103を搬送するチップ搬送ユニット70とを備え、チップ搬送ユニット70は、内部に正圧・負圧伝達用の内部空間76を備え、緩衝シート74の下面74aでチップ103を保持する箱状の吸引パッド71と、吸引パッド71を移動させる移動部72と、吸引パッド71に接続し、下面74aに負圧を作用させる吸引路78と、吸引パッド71の下面74aと反対側の面に接続して、内部空間76に加圧した空気を供給する加圧空気供給路81と、を有し、吸引パッド71は、内部空間76から下面74aに貫通する複数のチップ吸引用の吸引孔75と、吸引孔75と対面する加圧空気供給路81の配管接続開口部77と吸引孔75との間に設置され、配管接続開口部77から供給される空気を内部空間76内で放射状に整流する邪魔板85と、を備える。この構成によれば、内部空間76内に供給された空気は、邪魔板85に当たることにより、この邪魔板85上を放射状に整流されて内部空間76内に滞留する。これにより、配管接続開口部77を通じて供給された空気の圧力差が内部空間76内で緩和されることにより、複数の吸引孔75からそれぞれ吹き出す空気量の均一化を図ることができる。このため、各吸引孔75に吸引されたチップ103をチップ収容部60の中に落とすことができ、緩衝シート74に残存するチップ103の低減を図ることができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、邪魔板85は、加圧空気供給路81の配管接続開口部77と各吸引孔75とを結ぶ直線88のそれぞれと交差する位置、大きさに形成されているため、内部空間76内に供給(噴射)された空気は、必ず邪魔板85と接触することにより、この邪魔板85で整流することができる。
【0039】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、本実施形態では、切削ユニット20は、切削ブレード21を備える構成としたが、例えば、レーザ照射部を備えた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 切削装置
10 チャックテーブル
12 吸引保持板
20 切削ユニット
21 切削ブレード
60 チップ収容部
70 チップ搬送ユニット(搬送ユニット)
71 吸引パッド
72 移動部(移動機構)
73 パッド本体
73a 上板部
73b 下板部
73c 側板部
74 緩衝シート
74a 下面(保持面)
75 吸引孔(貫通孔)
76 内部空間(正圧・負圧伝達用の空間)
77 配管接続開口部(端部開口)
78 吸引路
81 加圧空気供給路(エアー供給路)
85 邪魔板
86 取り付け部
87 ねじ
88 直線
90 制御ユニット
100 被加工物
103 チップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9