(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1支持部のうち、前記面内での位置を拘束されない第1支持部に対して、前記面内に平行な方向の力を付与する付与部を備える請求項2〜7の何れか一項に記載の物体保持装置。
前記第1支持部は、多孔質体によって形成され、該多孔質体を介して前記物体に吸引力を作用させることによって前記物体を吸着保持する請求項1〜11の何れか一項に記載の物体保持装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
《第1の実施形態》
以下、第1の実施形態について、
図1〜
図5(B)を用いて説明する。
【0013】
図1には、第1の実施形態に係る露光装置(ここでは液晶露光装置10)の構成が概略的に示されている。液晶露光装置10は、物体(ここではガラス基板P)を露光対象物とするステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。ガラス基板P(以下、単に「基板P」と称する)は、平面視矩形(角型)に形成され、液晶表示装置(フラットパネルディスプレイ)などに用いられる。
【0014】
液晶露光装置10は、照明系12、マスクMを保持するマスクステージ装置14、投影光学系16、表面(
図1で+Z側を向いた面)にレジスト(感応剤)が塗布された基板Pを保持する基板ステージ装置20、及びこれらの制御系等を有している。以下、露光時にマスクMと基板Pとが投影光学系16に対してそれぞれ相対走査される方向をX軸方向とし、水平面内でX軸に直交する方向をY軸方向、X軸及びY軸に直交する方向をZ軸方向として説明を行う。
【0015】
照明系12は、米国特許第5,729,331号明細書などに開示される照明系と同様に構成されており、露光用照明光(照明光)ILをマスクMに照射する。照明光ILとしては、i線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)などの光(あるいは、上記i線、g線、h線の合成光)が用いられる。
【0016】
マスクステージ装置14は、マスクMを、例えば真空吸着により保持している。マスクステージ装置14は、リニアモータなどのアクチュエータを含むマスクステージ駆動系(不図示)により、少なくとも走査方向(X軸方向)に所定の長ストロークで駆動される。マスクステージ装置14の位置情報は、リニアエンコーダシステム、あるいは光干渉計システムを含むマスクステージ計測系(不図示)により求められる。
【0017】
投影光学系16は、マスクステージ装置14の下方に配置されている。投影光学系16は、例えば米国特許第6,552,775号明細書などに開示される投影光学系と同様な構成の、いわゆるマルチレンズ投影光学系であり、例えば両側テレセントリックな等倍系で正立正像を形成する複数の投影光学系を備えている。
【0018】
液晶露光装置10では、照明系12からの照明光ILによってマスクM上の照明領域が照明されると、マスクMを通過した照明光により、投影光学系16を介してその照明領域内のマスクMの回路パターンの投影像(部分正立像)が、基板P上の照明領域に共役な照明光の照射領域(露光領域)に形成される。そして、照明領域(照明光IL)に対してマスクMが走査方向に相対移動するとともに、露光領域(照明光IL)に対して基板Pが走査方向に相対移動することで、基板P上の1つのショット領域の走査露光が行われ、そのショット領域にマスクMに形成されたパターンが転写される。
【0019】
基板ステージ装置20は、定盤22、基板テーブル24、自重支持装置26、及び基板ホルダ30を備えている。
【0020】
定盤22は、平面視(+Z側から見て)矩形の板状の部材から成り、床F上に設置されている。基板テーブル24は、平面視矩形の厚みの薄い箱形の部材から成る。自重支持装置26は、定盤22上に非接触状態で載置され、基板テーブル24、及び基板ホルダ30の自重を下方から支持している。基板ホルダ30は、基板テーブル24の上面に固定されている。また、不図示であるが、基板ステージ装置20は、例えばリニアモータなどのアクチュエータを含み、基板テーブル24をX軸、及びY軸方向に(XY平面に沿って)所定の長ストロークで駆動するとともに、基板テーブル24を6自由度(X軸、Y軸、Z軸、θx、θy、及びθz)方向に微小駆動する基板ステージ駆動系、及びエンコーダシステム、光干渉計システムなどを含み、基板ホルダ30の上記6自由度方向の位置情報を求めるための基板ステージ計測系などを備えている。基板ステージ駆動系、基板ステージ計測系としては、米国特許出願公開第2010/0018950号明細書に開示される露光装置(定盤22が固定)、国際公開第2015/147319号(定盤22が可動)に開示される露光装置などと同様に構成することが可能であるが、これに限定されない。
【0021】
基板ホルダ30は、平面視矩形の板状の部材から成り、上面(+Z側の面)に基板Pが載置される。
図2(A)に示されるように、基板ホルダ30の上面は、X軸方向を長手方向とする長方形に形成されており、その縦横比は、基板Pとほぼ同じである。ただし、基板ホルダ30の上面の長辺及び短辺の長さは、基板Pの長辺及び短辺の長さに対して、それぞれ幾分短く設定されており、基板Pが基板ホルダ30の上面に載置された状態で、基板Pの4辺の端部近傍が、基板ホルダ30から外側にはみ出すようになっている。
【0022】
図2(A)は、
図1の液晶露光装置が備える基板ホルダ30の平面図(+Z方向から見下ろした上面図)であり、
図2(B)は基板ホルダ30を−Y方向から見た側面図である。
図2(A)及び2(B)から分かるように、基板ホルダ30は、ベース部32、中間部34、保持面部36、及び9つのチャック部40を備えている。
【0023】
ベース部32、中間部34、及び保持面部36は、それぞれ平面視矩形の板状(あるいは箱形)の部材である。基板ホルダ30は、ベース部32が最下層、中間部34が中間層、保持面部36が最上層の3層構造となっている。基板ホルダ30は、保持面部36上に載置された基板Pを、複数のチャック部40が真空吸着保持する。また、基板ホルダ30では、保持面部36から基板Pの下面に対して加圧気体が噴出されるとともに、基板Pの下面と保持面部36の上面部との間に真空吸引力が供給される。ベース部32、及び中間部34には、上記真空吸引力、あるいは加圧気体を供給するための管路などが形成されている。なお中間部34は、例えば黒みかげ石(斑レイ岩)、あるいはセラミックスなどにより形成されており、その表面(保持面部36が載置(対向配置)される方の面、上面)は、全面に渡って極めて平坦に仕上げられている。またこの中間部34は、表面が平坦に仕上げられた複数の平板を組み合わせて構成しても良い。以下、基板ホルダ30を構成する各要素の構造、及び動作について説明する。
【0024】
保持面部36は、多孔質材料によって形成されている。なお、保持面部36を形成する多孔質材料は、特に限定されず、金属、セラミックス、合成樹脂などを用いることができる。保持面部36の内部には、9つ(
図2(A)参照)の収納部38が形成されている。
図3に示されるように、保持面部36内には、収納部38によって保持面部36の上面側に開口した空間が形成され、該空間内には、チャック部40が収納されている。9つのチャック部40の数、及び配置は、特に限定されないが、基板Pの中心部(重心位置)を吸着保持(
図2(A)参照)することが可能となるように、基板ホルダ30の中央部(中心部)に配置された1つのチャック部40を含むことが好ましい。以下、特に区別する必要がある場合には、基板ホルダ30の中央部に配置されたチャック部40を、適宜センタ−チャック部40Cと称して説明する。
【0025】
図3は、
図2(A)の基板ホルダ30を−Y方向から見た場合のXZ断面図である。
図4(A)及び
図4(B)は、基板ホルダ30が有するチャック部40の、−Y方向から見たXZ断面図と、+Z方向から見下ろした平面図(上面図)である。
【0026】
チャック部40は、
図4(A)及び
図4(B)から分かるように、Z方向に突出する円筒形状に形成された突出部42と、突出部42の下端に一体的に接続されたフランジ部44とを備えている。
【0027】
チャック部40は、
図3に示されるように、収納部38に収納された状態で、突出部42の先端が、保持面部36の上面から僅かに突出するように(数十マイクロメートル程度突き出すように)高さ寸法が設定されている。なお、この突出部42の先端が保持面部36から突出する量は、チャック部40の突出部42の先端部において吸着支持された基板Pを、後述する保持面部36からの気体の吹き付けによって保持面部36上で浮上支持させることができる程度の突出量以内に設定されている。
【0028】
フランジ部44は、チャック部40が収納部38に収納された状態を維持できるように、抜け止めの機能を果たすものである。このフランジ部44によって、チャック部40がXY面内を移動しても、またZ方向に移動しても収納部38から抜け出ることが無い。またフランジ部44は、後述するチャック部40のXY面内の移動およびZ方向の移動を制御するためにチャック部40に作用する力(加圧気体)を受ける部位としても機能する。
【0029】
また、
図3に示されているように、チャック部40が収納部38に収納された状態で、収納部38(空間)を形成する壁面と、チャック部40の外周面との間に所定の隙間が形成されるように、収納部38、及びチャック部40の寸法が設定されている。このような寸法構成とともに、後述する加圧気体によるチャック部40の位置制御とによって、チャック部40は、収納部38に収納された状態で、XY平面に平行な方向(チャック部40の突出部42が突出しているZ方向に対して交差する面内の方向)に関して、保持面部36に対して拘束されていない状態(XY面内の位置に対して非拘束な状態、換言すれば保持面部36に対してXY平面と平行な方向に相対移動自在な状態)となっている。また、上述したセンターチャック部40Cを除く他の複数のチャック部40は、多孔質部材によって形成された円環状の部材46上に載置されている。
【0030】
図4(A)及び
図4(B)から分かるように、突出部42の+Z方向の先端部には、円環状に形成された周壁部48aと、該周壁部48aの内径側に配置された複数(本実施形態では4本)のピン(ピン部)48bが形成されている。周壁部48aの先端部と、ピン48bの先端部とは、高さ方向(Z軸方向)の位置が実質的に同じとなるように精度良く加工されている。また突出部42の先端部には、周壁部48aの内側の空間の気体を吸引するための孔部48c(吸引孔)が、ピン48bに囲まれた位置のほぼ中央の位置(周壁部46aに囲まれたエリアのほぼ中央の位置)に設けられている。基板ホルダ30(
図3参照)は、チャック部40の周壁部48aと複数のピン48bとが基板P(
図3参照)を下方から支持した状態で、孔部48cを介した真空吸引動作によって、周壁部48aの内径側に真空吸引力が作用する。これにより、基板Pが、合計で9つの箇所(
図2(A)参照)で吸着保持される。なお、
図2(A)などでは、理解を容易にするためにチャック部40が実際よりも大きく図示されているが、実際には、チャック部40の突出部42の直径は、数mm(10mm以下)程度であり、基板P(1辺の長さが500mm以上)は、複数のチャック部40の各支持位置において、実質的にそれぞれ点支持される。従って、本実施形態の基板ホルダ30は、基板Pを9点で吸着保持できる。なお、本実施形態では、周壁部48aに囲まれた空間内に孔部48cを介して真空吸引力が作用するるが、これに限られず、各ピン48bを筒状に形成し、該ピン48bの先端部が(筒状の先端の開口によって)基板Pを吸着保持するように構成しても良い。
【0031】
図3に戻り、ベース部32の側面には、加圧気体供給用の継手60と、真空吸引力供給用の継手62とが接続されている。ベース部32、及び中間部34内には、複数の管路が形成されており、継手60を介してベース部32に供給される加圧気体は、上記複数の管路を介して多孔質材料によって形成された保持面部36、及び部材46に供給される(
図3の小矢印参照)。保持面部36、及び部材46は、加圧気体をチャック部40(センターチャック部40Cを除く)の外周面(突出部42やフランジ部44の表面)、及び底面に噴出し、該加圧気体の静圧によって、保持面部36の収納部38とチャック部40との間に隙間を介した状態、すなわち収納部38内において機械的に非拘束な状態で保持する。
図3において、チャック部40に対してX,Y(不図示),Z方向のそれぞれから示されている複数の黒矢印は、それぞれ加圧気体の流れを示している。
【0032】
なお本実施形態では、チャック部40を、収納部38内において機械的に非拘束な状態にするために、XY方向からチャック部40に作用する各加圧気体の圧力や風量をほぼ同じに制御する。これにより、チャック部40を収納部38内の中立位置(収納部38を形成する壁面とチャック部40の外周面との隙間がほぼ均一な位置)に自動的に配置することができる。しかしながらチャック部40を必ずしも中立位置に配置しなくとも良く、チャック部40がXY面内において移動可能な位置に配置されていれば良い。
【0033】
図3において、チャック部40のZ方向の位置を制御するための加圧気体の噴出は、基板PのXY面内の位置を拘束させないために(チャック部40を収納部38内においてZ方向に浮かせておき、収納部38内でチャック部40を摩擦なくXY移動させるようにするために)継続される。そして、
図3に示されるようにチャック部40のフランジ部には下から(部材46から)、および上から(保持面部36から)、狭い隙間に加圧気体を噴出させることによって、チャック部40をZ方向の剛性が比較的高い状態で中間部34上に浮上維持(浮上支持)させることができるようになっている。このため、すべてのチャック部40の先端高さは同一平面に揃い安定している。
【0034】
一方、チャック部40のXY方向の位置を制御するための加圧気体の噴出(
図3中のX,Y方向からチャック部40に作用する加圧気体)は、チャック部40が収納部38を形成する壁面と接触しない状態にした後で(チャック部40がXY面内において何れの方向にも移動可能な状態にした後で)、且つ基板Pを受け取る前に停止しても良い。これはチャック部40のXY方向の位置を、XY方向からの加圧気体によって全く拘束しないようにするためである。なお、基板Pを受け取る前のチャック部40に対する、上述したXY方向からの加圧気体の噴出自体も、必ずしも必要では無い。チャック部40のXY位置が、収納部38の壁部に接触していない状況を認識できれば、このXY方向からの加圧気体の噴出を行う必要は無い。例えば、露光装置内に、チャック部40の収納部38内におけるXY位置をモニターするセンサー機構を設ければ、そのセンサー出力に基づいて(収納部38の壁部とのXY方向における間隔が所定間隔以上無い時に)、XY方向の加圧気体を噴出する制御を行えば良い。
【0035】
これにより、チャック部40(センターチャック部40Cを除く)は、保持面部36に対して水平面内3自由度(X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転方向)に移動自在となっている。すなわち、センターチャック部40Cを除く複数のチャック部40は、基板Pを吸着保持するが、基板Pを保持面部36に対して拘束しない。また、センターチャック部40Cを除く複数のチャック部40が基板Pを吸着保持した状態で、基板Pの一部(又は全体)に対してXY平面に平行な応力、すなわち基板Pに皺などを発生させる方向の応力が作用している場合、チャック部40はその応力を受けてXY面内を移動することができる。これにより基板Pに生じている作用している応力(歪、皺)を解放することができる。なお、この場合において、基板Pに生じている応力の解放を、XY方向からチャック部40に作用する加圧気体を用いて手助けするようにしても良い。この場合には、該応力によってチャック部40が水平面内で保持面部36に対して相対移動する程度に、上記加圧気体の圧力が設定されている。
【0036】
上述した構成により、基板Pの溜まった歪、応力やその他影響(例えば熱変形等)による歪を基板Pに留めることなく解放できるので、基板を平坦に支持することが可能になる。
【0037】
また、保持面部36に供給された加圧気体は、保持面部36の上面から噴出し、保持面部36上に載置された基板Pに対して重力方向上向きの力を作用させる(
図3の+Z方向の小矢印参照)。基板Pは、保持面部36の上面から先端部が突き出した複数のチャック部40に下方から支持されており、該チャック部40に支持された部分と保持面部36の上面との間には隙間が形成されているが、上記加圧気体が下面側に供給されることによって、自重による垂れ下がり、及び基板Pの下面と保持面部36の上面との接触が防止される。
【0038】
真空吸引力供給用の継手62を介してベース部32に供給される真空吸引力は、複数の管路を介して、保持面部36の上面に供給される。保持面部36の上面には、微少な孔部が複数形成されている(
図2(A)などでは不図示)。これらの複数の孔部は、保持面部36(多孔質材)が有する微少な孔部とは別に、機械的に加工されたものである。
図3に示される例では、真空吸引用の孔部が、隣接するチャック部40間に2つ形成されているが、該真空吸引用の孔部の数は、これに限定されない。また、真空吸引力供給用の管路は、該管路内に上記加圧気体が供給されないように内壁面に所定の処理が施されていても良い。基板ホルダ30では、上記真空吸引力によって、複数のチャック部40上に載置された基板Pに対して重力方向下向きの力を作用させる(
図3の大矢印参照)。基板ホルダ30では、基板Pの表面が、水平面と平行となるように、上記加圧気体が基板Pに作用させる重力方向上向きの力と、真空吸引力が基板Pに作用させる重力方向下向きの力とのバランスが設定されている。基板Pの表面の平面度は、基板ホルダ30に内蔵されたセンサによって、基板Pの裏面側から計測しても良いし、基板Pの上面側から計測しても良い。
【0039】
なお、継手62を介して供給される真空吸引力と、チャック部40に供給される真空吸引力とは、別系統で供給されるため、チャック部40による基板Pの保持(及びその解除)と、保持面部36による基板Pの平面矯正(及びその解除)とは、任意のタイミングで独立に制御することができる。
【0040】
また、中間部34は、継手62を介して供給される真空吸引力によってセンターチャック部40Cを吸着保持する。これによって、複数のチャック部40のうち、センターチャック部40Cのみが、保持面部36に対して水平面内3自由度方向の位置が拘束される。なお、センターチャック部40Cの保持面部36に対する拘束、非拘束を切り換える必要がない場合、センターチャック部40Cは、保持面部36、あるいは中間部34に対して予め機械的に拘束されていても良い。また、センターチャック部40Cは基板ホルダ30に対する基板のX、Y、θz方向の位置ずれを防ぐために他のチャック部40よりも真空吸引力を強くしてもよい。そのために突出部42の径を大きくしたり、センターチャック部40Cを近接して複数配置したりしてもよい。なお、センターチャック部40Cの高さ(Z方向)は他のチャック部40のように中間部34上で浮上しないので、他のチャック部の高さよりも幾分(数マイクロメートル〜数十マイクロメートル)高くなっている。
【0041】
以上のようにして構成された液晶露光装置10(
図1参照)では、不図示の主制御装置の管理の下、不図示のマスクローダによって、マスクステージ装置14上へのマスクMのロードが行われるとともに、不図示のプレートローダによって、基板ホルダ30上への基板Pのロードが行なわれる。その後、主制御装置により、不図示のアライメント検出系を用いてアライメント計測が実行され、そのアライメント計測の終了後、基板P上に設定された複数のショット領域に逐次ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行なわれる。この露光動作は従来から行われているステップ・アンド・スキャン方式の露光動作と同様であるので、その詳細な説明は省略するものとする。
【0042】
以上説明した第1の実施形態では、上記アライメント動作時、及びステップ・アンド・スキャン方式の露光動作時において、基板ホルダ30は、投影光学系16に対してX軸方向、及びY軸方向に所定のストローク、及び所定の速度(加速、及び減速を含む)で駆動される。この際、基板ホルダ30では、センターチャック部40Cが保持面部36に対する基板Pの水平面内の位置を拘束しているので、基板Pの水平面内の位置ずれは生じない。
【0043】
また、基板PのZ軸方向の変形(凹凸、皺の発生)は、センターチャック部40Cを除くチャック部40が水平面内で保持面部36に対して相対移動する(上記凹凸、皺の原因となる応力を相殺する)ことによって抑制される。従って、仮に基板のローディング時などに、基板Pに皺が発生した状態で、基板Pが基板ホルダ30上に載置された場合であっても、該皺が自動的に除去される。また、保持面部36が基板Pの下面に加圧気体を噴出するとともに、基板Pの下面側に真空吸引力を作用させるので、基板Pの自重による撓みを抑制し、全体的な平面度を向上させることができる。
【0044】
また、基板Pの全体平面度は、個々に調整が可能で、あらかじめ正確に高さ(Z方向)調整され、Z方向が高剛性で安定維持される複数のチャック部と各チャック部間を非接触支持される比較的剛性の低い保持面部によって形成されるので、完全非接触で基板を浮上支持するよりも基板の平面度及び平面安定性を高くしやすい。また、完全非接触のホルダでは、基板の外周部などに基板のずれ防止対策(XY方向流れ止め)が必要になるが、そのようなものも必要ない。また、基板ホルダ30は、基板Pを9点で支持(吸着保持)する構造であるので、仮に基板Pの下面の全面を複数のピンによって支持する基板ホルダ(いわゆるピンチャックホルダ)に比べて、基板Pの下面とピンの先端部との間にゴミなどが挟み込まれる可能性を低減できる。したがって、基板Pを平面度良く保持できる。
【0045】
なお、本第1の実施形態において、センターチャック部40Cを除くチャック部40は、チャック部40に対して水平面内の力が作用しない限りは、収納部38内の中立位置(収納部38を形成する壁面とチャック部40の外周面との隙間がほぼ均一な位置)に自動的に配置される構成(既述した、XY方向から各加圧気体の圧力や風量をほぼ同じに制御する構成)であるが、これに限られず、
図5(A)及び
図5(B)に示されるように、チャック部40の外周面に対して噴出される加圧気体の圧力、流量などを制御する(
図5(B)の白矢印参照)ことによって、チャック部40を保持面部36に対して駆動する(
図5(B)の黒矢印参照)ことができるようにしても良い。なお
図5(B)の白矢印は、加圧気体がチャック部40の側面に吹き付けられている様子を表すものであり、
図5(B)中のチャック部40の左側に記載された右向きの矢印(右矢印)の方が、チャック部40の右側に記載された左向き矢印(左矢印)よりもチャック部40に作用する力(加圧気体の流量および/又は圧力)が大きいことを示している。この場合には、チャック部40を介して、チャック部40に吸着保持されている基板Pに対して水平面に平行な方向(本
図5(B)の場合は右方向)に強制的に力(張力)を付与することができる。これによって、基板Pの表面に生じた皺、凹凸などを強制的に除去(平面矯正)することができる。
図5(A)では、チャック部40をセンターチャック部40C(基板Pの中央部)に対して基板ホルダ30の外側に移動させることで基板Pの皺などを抑制する例が示されているが、各チャック部40の移動方向は、これに限定されず、基板Pに内向き方向の張力を作用させても良いし、チャック部40をZ軸回りの回転方向に回転させても良い。また、センターチャック部40Cを除く複数のチャック部40のうちの一部のみを移動させても良い。また、センターチャック部40Cを除くチャック部40を下方から非接触支持する部材46(
図3参照)に対して供給される加圧気体の圧力、流量を制御することによって、チャック部40に対してZ軸方向の力を付与しても良い。これにより、チャック部40の先端部の高さ位置(Z軸方向の位置)を制御することが可能となり、基板Pの表面の高さ位置の調整を行うことが可能となる。
【0046】
《第2の実施形態》
次に第2の実施形態に係る液晶露光装置について、
図6(A)〜
図6(C)を用いて説明する。第2の実施形態に係る液晶露光装置の構成は、基板ホルダ230の構成が異なる点を除き、上記第1の実施形態と同じであるので、以下、相違点についてのみ説明し、上記第1の実施形態と同じ構成及び機能を有する要素については、上記第1の実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0047】
本第2の実施形態の基板ホルダ230は、チャック部240を除き、上記第1の実施形態の基板ホルダ30(
図2(A)など参照)と同様に構成されている。チャック部240は、円筒形状に形成され、先端部が保持面部36の上面から上方に突出する(
図6(B)参照)突出部242と、突出部242の下端に一体的に接続されたフランジ部244とを備えている。ただし、上記第1の実施形態の基板ホルダ30において、突出部42の先端には、周壁部48a、及び複数のピン48b(
図4(A)など参照)が形成された(凹凸が形成された)のに対し、本第2の実施形態において、突出部242は、多孔質材料によって形成され、先端部が平坦となってきる。また、突出部242の外周面は、真空吸引力が発生しないように、コーティングなどの加工が施されている。なおフランジ部244の上記以外の構成や機能は、上述したフランジ部44と同様のため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0048】
チャック部240には、上記第1の実施形態と同様に、真空吸引力が供給され、チャック部240は、平坦に形成された突出部242の先端部で基板Pを吸着保持する。なお、第2の実施形態に係るチャック部240も、突出部242の直径は数mm程度と、基板Pに比べて十分に小さく設定されており、基板Pが実質的に点支持されることは第1の実施形態と同じである。複数のチャック部240のうち、基板Pの中央部を吸着保持するセンターチャック部240Cが、保持面部36に対して相対移動不可とされている点、及びセンターチャック部240Cを除くチャック部240が保持面部36に対して水平面内3自由度に非拘束である点も、上記第1の実施形態と同じである。なお、
図6(A)〜
図6(C)に示される例では、突出部242の先端中央部に開口部240a(
図6(C)参照)が形成され、基板Pに対して真空吸引力を直接作用させる構成になっているが、チャック部240は、開口部240aが形成されず、多孔質部材からの吸引力のみによって基板Pを吸着保持しても良い。
【0049】
本第2の実施形態でも、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、チャック部240は、先端部にピンなどの凹凸を形成(機械的な加工などを)する必要がないので、コストダウンが可能となる。また、チャック部240内での真空吸引力による基板の凹凸(吸着歪み)を抑えることができる。
【0050】
なお、上記第1及び第2の実施形態に係る基板ホルダ30、230の構成は、一例であって、適宜変更が可能である。すなわち、基板ホルダ30、230において、チャック部40、240は、それぞれ9つ配置されたが、チャック部40、240の数、及び配置は、これに限定されない。
図7(A)及び
図7(B)には、第2の実施形態の基板ホルダ230の変形例として、基板ホルダ330が、チャック部240を合計で63(7×9)有する例が図示されている。基板ホルダ330では、チャック部240の数が基板ホルダ230よりも多いので、基板Pの自重に起因する撓みを抑制することができる。チャック部240の数、及び配置は、基板Pの大きさ、厚さなどに応じて、適宜設定すると良い。
【0051】
また、第1の実施形態に係るチャック部40(ピン保持タイプ)と、第2の実施形態に係るチャック部240(平面保持タイプ)とを混在させ、基板Pの吸着保持力を、部位によって異ならせても良い。
【0052】
また、固定(拘束)されるチャック部としてのセンターチャック部40C、240Cは、各実施形態において、1つのみであったが、基板Pの中央部近傍を保持する複数のチャック部40、240を中間部34に対して拘束しても良い。また、中間部34に対して拘束されるチャック部40、240は、基板Pの中央部に対応する位置に配置されたものに限られない。
【0053】
また、全てのチャック部40、240の中間部34に対する拘束、非拘束の切り替えができるように構成しても良い。この切り替えは、センターチャック部40C、240Cと同様に、真空吸引保持によって行ってもよいが、機械的、磁気的な装置を用いても良い。チャック部40、240を非拘束状態とするのは、基板Pにおける皺、凹凸の発生を抑制するためであるので、基板Pに皺、凹凸が発生しても問題ない部位(露光対象ショット以外の領域など)は、当該部位を吸着保持するチャック部40、240を非拘束状態とし、基板Pの保持力を高めても良い。
【0054】
また上記実施形態では、保持面部36を多孔質材で構成するものとしたが、基板Pに非接触で支持力(浮上力)を与えられる構成であれば他の構成でも良い。例えば比較的小さい開口径で気体を吹き出す吹き出し用の開口(および気体を吸引する吸引用の開口)を保持面部36上に多数配置しておき、それらを用いて気体によって基板Pを浮上支持させる構成にしても良い。なお、センターチャック部40C、240Cを、フランジのない形状にして上(+Z側)から容易に交換が可能な構成にしてもよい。また、他のチャック部も突出部とフランジ部とを分離可能にして、突出部を上(+Z側)から容易に交換可能な構成にしてもよい。
【0055】
また上記実施形態では、X、Y方向に移動可能な(X、Y方向に非拘束な状態にある)チャック部40を、加圧気体を用いて中間部34上に浮上させることによりXY方向に非拘束な状態で支持する構成にしているが、チャック部40はX、Y方向に非拘束で支持される構成であれば別の構成でも良い。例えば、チャック部40の下方(底面部)を、弾性部材で支持することでX、Y方向に移動できるように構成しても良い。この場合、弾性変形によりチャック部40のZ方向の位置が変動しないように、チャック部40の側面部分(突出部42の側面部、またはフランジ部44の側面部)を、弾性部材(X、Y方向には変位するがZ方向には変位しないように構成又は配置された弾性部材)で支持するように構成する。
【0056】
また上記実施形態では、チャック部40全体をX、Y、Z方向に移動するように構成しているが、チャック部40の一部のみ(例えば突出部42)をX、Y方向に移動できるように構成しても良い。例えば突出部42をフランジ部44に対して、X、Y方向に相対的に移動できるように、突出部42とフランジ部44との境目部分(突出部42の底面に相当する部分)に、上述したような弾性部材を設けるようにすれば良い。この場合も突出部42のZ方向の位置が変動しないように、突出部42の側面部分を弾性部材(X、Y方向には変位するがZ方向には変位しない弾性部材)で支持するように構成する。
【0057】
また、照明光は、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F
2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。また、照明光としては、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、エルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、固体レーザ(波長:355nm、266nm)などを使用しても良い。
【0058】
また、投影光学系16が複数本の光学系を備えたマルチレンズ方式の投影光学系である場合について説明したが、投影光学系の本数はこれに限らず、1本以上あれば良い。また、マルチレンズ方式の投影光学系に限らず、オフナー型の大型ミラーを用いた投影光学系などであっても良い。また、投影光学系16としては、拡大系、又は縮小系であっても良い。
【0059】
また、露光装置の用途としては角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置に限定されることなく、有機EL(Electro-Luminescence)パネル製造用の露光装置、半導体製造用の露光装置、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるマスク又はレチクルを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも適用できる。
【0060】
また、露光対象となる物体はガラスプレートに限られず、ウエハ、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。また、露光対象物がフラットパネルディスプレイ用の基板である場合、その基板の厚さは特に限定されず、フィルム状(可撓性を有するシート状の部材)のものも含まれる。なお、本実施形態の露光装置は、一辺の長さ、又は対角長が500mm以上の基板が露光対象物である場合に特に有効である。
【0061】
液晶表示素子(あるいは半導体素子)などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたマスク(あるいはレチクル)を製作するステップ、ガラス基板(あるいはウエハ)を製作するステップ、上述した各実施形態の露光装置、及びその露光方法によりマスク(レチクル)のパターンをガラス基板に転写するリソグラフィステップ、露光されたガラス基板を現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ガラス基板上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。