特許第6874364号(P6874364)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874364
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20210510BHJP
   G03G 9/093 20060101ALI20210510BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   G03G9/097 375
   G03G9/097 374
   G03G9/097 372
   G03G9/093
   G03G9/087 325
   G03G9/097 365
【請求項の数】18
【全頁数】61
(21)【出願番号】特願2016-253767(P2016-253767)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2017-120422(P2017-120422A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2019年9月3日
(31)【優先権主張番号】特願2015-256204(P2015-256204)
(32)【優先日】2015年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-256205(P2015-256205)
(32)【優先日】2015年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-256206(P2015-256206)
(32)【優先日】2015年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-256207(P2015-256207)
(32)【優先日】2015年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】特許業務法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田匡哉
(72)【発明者】
【氏名】中川智子
(72)【発明者】
【氏名】生川勇樹
(72)【発明者】
【氏名】岡本真明
(72)【発明者】
【氏名】弓削哲治
(72)【発明者】
【氏名】樹神弘也
【審査官】 川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−264573(JP,A)
【文献】 特開2009−163026(JP,A)
【文献】 特開2012−008552(JP,A)
【文献】 特開2013−210574(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/148509(WO,A1)
【文献】 特開2014−209215(JP,A)
【文献】 特開2014−182348(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0097985(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/148578(WO,A1)
【文献】 特開2001−235894(JP,A)
【文献】 特開2014−209188(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0011534(US,A1)
【文献】 特開2007−063550(JP,A)
【文献】 特開2011−100078(JP,A)
【文献】 特開2012−068331(JP,A)
【文献】 特開2011−018030(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0318141(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08−9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂と着色剤を含有するコア成分と、その周囲に存在する高耐熱樹脂微粒子成分とを含有するトナー母粒子、及び、外添剤を含む静電荷像現像用トナーであって、
レオメーターで40℃から120℃までの昇温過程において40℃以上80℃以下に観測されるtanδ極大値の1回目測定値をTP1とし、次いで40℃まで冷却した後、40℃から120℃までの昇温過程において40℃以上80℃以下に観測されるtanδ極大値の2回目測定値をTP2とし、その比であるTP2/TP1が1.47以上2.35以下であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
過型電子顕微鏡で測定したときの、前記コア成分と前記高耐熱樹脂微粒子成分に陰影差がない請求項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
平均円形度が0.95〜0.99である請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
体積平均粒径が5〜8μmである請求項1ないし請求項の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
ワックスを含有する請求項1ないし請求項の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
前記TP2/TP1が1.63以上2.35以下である請求項1ないし請求項の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
前記TP2/TP1が1.63以上2.22以下である請求項1ないし請求項の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
前記TP2/TP1が1.79以上2.22以下である請求項1ないし請求項の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項9】
前記TP2/TP1が1.79以上2.09以下である請求項1ないし請求項の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項10】
静電荷像現像用トナーの外添剤を剥離処理した後のBET比表面積をBETNとし、静電荷像現像用トナーの外添剤を剥離処理した後のフロー式粒子分析装置で測定される比表面積をBETFとし、その差であるBETN−BETFが0.54m/g以上1.56m/g以下である請求項1ないし請求項の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項11】
前記BETN−BETFが0.77m/g以上1.56m/g以下である請求項10に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項12】
前記BETN−BETFが0.99m/g以上1.45m/g以下である請求項10に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項13】
示差走査熱量計(DSC)で測定されるTg(ガラス転移温度)が、37.9℃以上45.4℃以下である請求項1ないし請求項12の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項14】
レオメーターの1回目昇温測定でtanδが極大になる40℃以上80℃以下の温度を[T1st]とし、2回目昇温測定でtanδが極大になる40℃以上80℃以下の温度を[T2nd]としたとき、[T2nd]−[T1st]が1.0℃以上4.5℃以下であり、
TP1が1.15以上1.80以下であり、
TP2/TP1が1.50以上2.20以下である請求項1ないし請求項の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項15】
静電荷像現像用トナーの示差走査熱量計(DSC)で測定されるTg(ガラス転移温度)が38.5℃以上45.5℃以下であり、かつ、
静電荷像現像用トナーを外添剤剥離処理した後のBET比表面積をBETNとし、静電荷像現像用トナーを外添剤剥離処理した後にフロー式粒子分析装置で測定される比表面積をBETFとしたとき、その差であるBETN−BETFが0.60m/g以上1.60m/g以下である請求項1ないし請求項の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項16】
レオメーターで40℃以上80℃以下に観測される1回目測定のtanδ極大値温度([T1st])における貯蔵弾性率(G’)が1.10×10Pa以上2.95×10Pa以下である請求項15に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項17】
レオメーターで測定される貯蔵弾性率(G’)の1回目測定値を[G’1st]として、2回目測定値を[G’2nd]としたとき、[G’1st]/[G’2nd]の63.0℃以上80.0℃以下の極大値[G’1st]/[G’2nd]MAXが1.40以上10.0以下である請求項1ないし請求項16の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項18】
示差走査熱量計(DSC)で観測される降温時の発熱最大ピーク温度を[発熱最大ピーク温度Td]とした時、[発熱最大ピーク温度Td]が50℃以上75℃以下である請求項17に記載の静電荷像現像用トナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐ブロッキング性を維持したまま低温定着性と高グロス性を両立でき、低温定着時にも高画質画像を得られる静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
静電荷像現像用トナーは、プリンターや複写機、ファクシミリ等において、静電荷像を可視化する画像形成に用いられる。電子写真方式による画像の形成を例にとると、先ず感光体ドラム上に静電潜像を形成し、次いでこれをトナーにより現像した後、転写紙等に転写し、熱等により定着することによって画像形成が行われる。
静電荷像現像用トナーとしては、通常、結着樹脂及び着色剤に、必要に応じて帯電制御剤、離型剤、磁性体等を乾式混合した後、押出機等で溶融混練し、次いで、粉砕、分級する、いわゆる溶融混練粉砕法により得られたトナー粒子に、流動性等の各種性能を付与することを目的として、例えばシリカ等の固体微粒子を外添剤として表面に付着させた形態のものが用いられている。
更に昨今の高精細化の要求により、トナーの粒径や粒度分布を制御し易い懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法等の製造法も提案されている。
【0003】
近年、複写機やプリンター等の電子写真方式で得られた画像をプロフェッショナル分野へ応用する取り組みが盛んに行われており、これまでの文字を印刷する用途から写真・グラフィック等の画像を美しく出力することが必要になってきた。そのため、その出力画像にはこれまで以上に高光沢性(高グロス性)を有することが強く望まれて来ている。
【0004】
一方、電子写真装置の低エネルギー化、高速印字化も同時に望まれているため、トナーとしては、低熱エネルギー(時間×温度)で融けて、媒体に定着し更にその画質が高グロス性を有することが強く望まれているが、低温定着性・高グロス性は耐ブロッキング性と二律背反の関係にあり、この3点の両立を図ることが望まれている。低温定着性と耐ブロッキング性の両立という課題に対して、種々の検討がなされている。
【0005】
特許文献1には、結晶性ポリエステル樹脂と離型剤とを含むトナーであって、ルテニウム染色したトナー断面に前記結晶性ポリエステル樹脂が前記離型剤と接触した構造体が存在し、該構造体の断面積をA、前記離型剤単独の断面積をB、前記結晶性ポリエステル樹脂単独の断面積をCとしたとき、40≦100×A/(A+B+C)≦70、10≦100×B/(A+B+C)≦30、20≦100×C/(A+B+C)≦30である静電荷現像用トナーが開示されている。
【0006】
特許文献2には、耐熱保存性、低温定着を目的として、定着助剤として融点50〜150℃の結晶性有機化合物を含有し、加熱時に樹脂と定着助剤が相溶化するために、トナーのDSC測定において、昇温2回目の定着助剤由来の融解極大値の吸熱量は昇温1回目に比べ小さくなり、トナーのガラス転移温度が樹脂のガラス転移温度よりも低下し、昇温二回目のガラス転移温度が昇温1回目に比べ小さくなる静電荷像現像用トナーが提案されている。
【0007】
特許文献3には、トナー母粒子とシェル層を有するコアシェル構造であり、前記トナー母粒子は、前記トナー母粒子の表面上に水溶性樹脂からなる樹脂被覆層を有し、且つ前記樹脂被覆層上に前記シェル層を有する静電荷像現像用トナーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−33057号公報
【特許文献2】特開2012−22331号公報
【特許文献3】特開2015−64573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、何れの特許文献とも、耐ブロッキング性と低温定着性の面において検討されているが、両立が充分とは言えず、トナーに熱エネルギーがあまり与えられない低温定着時又は高速印刷時の高グロス性という意味では特に不充分であった。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、耐ブロッキング性を維持したまま、低温定着時又は高速印刷時にでも、低温定着性と高グロス性を両立できる静電荷像現像用トナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、耐ブロッキング性を維持したまま、低温定着時又は高速印刷時にでも、低温定着性と高グロス性を両立できる形態として、レオメーターで測定されるtanδ極大値の1回目測定値(TP1)と2回目の測定値(TP2)の比を特定の範囲となるように調整することが有効であることを見出した。
また、トナー表面の微小凹凸値を特定の範囲に調整することで、より顕著に本発明の効果が得られ、更にトナーのTg(ガラス転移温度)を特定の範囲に調整することで、更に顕著に本発明の効果を得られることを見出し、本発明に至った。
【0012】
本発明は、上述した知見に基づくものであり、本発明の態様は以下の通りである。
<1>
レオメーターで40℃以上80℃以下に観測されるtanδ極大値の1回目測定値をTP1とし、40℃以上80℃以下に観測されるtanδ極大値の2回目測定値をTP2とし、その比であるTP2/TP1が1.47以上2.35以下であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
<2>
少なくとも結着樹脂と着色剤を含有するトナー母粒子、及び、外添剤を含む<1>に記載の静電荷像現像用トナー。
<3>
少なくとも結着樹脂と着色剤を含有するコア成分と、その周囲に存在する高耐熱樹脂微粒子成分とを含有し、透過型電子顕微鏡で測定したときの、コア成分と高耐熱樹脂微粒子成分に陰影差がない<2>に記載の静電荷像現像用トナー。
<4>
平均円形度が0.95〜0.99である<1>ないし<3>の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
<5>
体積平均粒径が5〜8μmである<1>ないし<4>の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
<6>
ワックスを含有する<1>ないし<5>の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
<7>
前記TP2/TP1が1.63以上2.35以下である<1>ないし<6>の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
<8>
前記TP2/TP1が1.63以上2.22以下である<1>ないし<6>の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
<9>
前記TP2/TP1が1.79以上2.22以下である<1>ないし<6>の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
<10>
前記TP2/TP1が1.79以上2.09以下である<1>ないし<6>の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
<11>
静電荷像現像用トナーの外添剤を剥離処理した後のBET比表面積をBETNとし、静電荷像現像用トナーの外添剤を剥離処理した後のフロー式粒子分析装置で測定される比表面積をBETFとし、その差であるBETN−BETFが0.54m/g以上1.56m/g以下である<1>ないし<10>の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
<12>
前記BETN−BETFが0.77m/g以上1.56m/g以下である<11>に記載の静電荷像現像用トナー。
<13>
前記BETN−BETFが0.99m/g以上1.45m/g以下である<11>に記載の静電荷像現像用トナー。
<14>
示差走査熱量計(DSC)で測定されるTg(ガラス転移温度)が、37.9℃以上45.4℃以下である<1>ないし<13>の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナー。
<15>
レオメーターの1回目昇温測定でtanδが極大になる40℃以上80℃以下の温度を[T1st]とし、2回目昇温測定でtanδが極大になる40℃以上80℃以下の温度を[T2nd]としたとき、[T2nd]−[T1st]が1.0℃以上4.5℃以下であり、
TP1が1.15以上1.80以下であり、
TP2/TP1が1.50以上2.20以下である静電荷像現像用トナー。
<16>
静電荷像現像用トナーの示差走査熱量計(DSC)で測定されるTg(ガラス転移温度)が38.5℃以上45.5℃以下であり、かつ、
静電荷像現像用トナーを外添剤剥離処理した後のBET比表面積をBETNとし、静電荷像現像用トナーを外添剤剥離処理した後にフロー式粒子分析装置で測定される比表面積をBETFとしたとき、その差であるBETN−BETFが0.60m/g以上1.60m/g以下である静電荷像現像用トナー。
<17>
レオメーターで40℃以上80℃以下に観測される1回目測定のtanδ極大値温度における貯蔵弾性率(G’)が1.10×10Pa以上2.95×10Pa以下である<16>に記載の静電荷像現像用トナー。
<18>
レオメーターで測定される貯蔵弾性率(G’)の1回目測定値を[G’1st]として、2回目測定値を[G’2nd]としたとき、[G’1st]/[G’2nd]の63.0℃以上80.0℃以下の極大値[G’1st]/[G’2nd]MAXが1.40以上10.0以下である静電荷像現像用トナー。
<19>
示差走査熱量計(DSC)で観測される降温時の発熱最大ピーク温度を[発熱最大ピーク温度Td]とした時、[発熱最大ピーク温度Td]が50℃以上75℃以下である<18>に記載の静電荷像現像用トナー。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐ブロッキング性を維持したまま、低温定着時又は高速印刷時にでも、良好な定着性と高グロス性を両立する静電荷像現像用トナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の静電荷像現像用トナーをレオメーターで1回目に測定する際の成型体の断面の概念図である。
図2】本発明の静電荷像現像用トナーのTP1とTP2を測定した際の概念図である。
図3】実施例7で製造した静電荷像現像用トナー1個の一部分を拡大したSEM画像であり、トナー表面の凹部には薄膜化した高耐熱樹脂微粒子成分が少なく、凸部には該成分が多く存在する態様を示す図(写真)である。
図4】母粒子表面に高耐熱樹脂微粒子が過度に多く存在する状態のトナーの一例を示す断面模式図である。
図5】母粒子表面に高耐熱樹脂微粒子が存在する量が過度に少ない状態のトナーの一例を示す断面模式図である。
図6】母粒子表面に高耐熱樹脂微粒子が存在する量が過度に少ない別の状態のトナーの一例を示す断面模式図である。
図7】レオメーターで測定される貯蔵弾性率(G’)の1回目測定値[G’1st]と、2回目測定値[G’2nd]と、[G’1st]/[G’2nd]の関係を示した模式図である。
図8】示差走査熱量計(DSC)による降温時の[発熱最大ピーク温度Td]を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.測定方法、定義
本発明においては、外添剤を有する前のものを「トナー母粒子」と称する。該トナー母粒子の表面に外添剤を有するものを「トナー」又は「静電荷像現像用トナー」と称する。
【0016】
トナーのレオメーター測定は、実施例に記載の方法で行い、温度、貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)、tanδ(=G”/G’)、tanδ極大値、「40℃以上80℃以下に観測されるtanδ極大値の1回目測定値であるTP1」、「40℃以上80℃以下に観測されるtanδ極大値の2回目測定値であるTP2」等は、実施例に記載の測定方法で測定したものと定義される。
また、本発明における「1回目の昇温」(及び「2回目の昇温」)も、実施例に記載の測定方法において、該測定に際して昇温したものと定義される。
【0017】
BETN、BETF、「BETN−BETF」の測定方法と定義も、実施例に記載の方法で行い、実施例に記載の測定方法で測定したものと定義される。
【0018】
本発明の静電荷像現像用トナーとは、実施例等に記載の測定方法(装置、設定等)で測定したときに、そのような数値(パラメーター)を有する(示す)トナーのことである。
すなわち、数値(パラメーター)を他の装置や他の設定で測定した場合であっても、トナー自体が、本願明細書の実施例等に記載の測定方法で測定したときに、該数値(パラメーター)を有するような(示すような)ものであれば、本発明に含まれる。
【0019】
詳細は後述するが、本発明のトナーは、「少なくとも結着樹脂と着色剤を含有するトナー母粒子」及び外添剤を含むものであることが好ましい。
また、「少なくとも結着樹脂と着色剤を含有する中心部(コア)」と「その周囲に存在する高耐熱樹脂微粒子成分」、及び、外添剤を含むものであることが特に好ましい。すなわち、本発明のトナーは、少なくとも結着樹脂と着色剤を含有するコア成分と、その周囲に存在する高耐熱樹脂微粒子成分とを含有するトナー母粒子、及び、外添剤を含むトナーであることが特に好ましい。
【0020】
後述するような何れのトナー母粒子の調製方法においても、該高耐熱樹脂微粒子成分とは、トナー母粒子の表面に偏在しているものを言う。トナーになったときの高耐熱性微粒子成分の形状は、微粒子であっても薄膜であってもよく、更には、連続的にコア成分を覆っていても非連続的にコア成分を覆っていてもよいが、高耐熱樹脂微粒子が扁平状に薄膜化し高耐熱樹脂粒子の添加量の割に被覆率を上げている状態が好ましく、この高耐熱樹脂微粒子による薄膜とコア成分の地肌が共連続構造を有している状態がより好ましく、更に、この薄膜がトナー表面の凹部に比べ凸部により選択的に付着している(つまりコア成分の地肌が見えている部分が凹部に比べ凸部の方が少ない)状態が更に好ましい。
【0021】
例えば、図3は、1個のトナーの一部分の拡大写真であるが、トナー母粒子の表面の凹部には黒く見える表皮(コア成分の地肌)が多く観測され、トナー母粒子の表面の凸部には、庇部分がない薄膜化した表皮(高耐熱樹脂微粒子成分)が多く観測されている。
従来のトナーのトナー母粒子のコアシェル構造は、コアをシェルが全体的に覆っているか、トナー母粒子表面の凹凸に関係なく、コアを部分的にシェルが覆っている構造であり、シェルがコアとは独立した表皮(その場合、シェルが「かさぶた」のように見えることがある)としてコアの表面を覆っているような構造であった。
【0022】
湿式媒体(水系及び又は有機溶剤を連続相とする)中で、トナー母粒子を作製する場合には、コア成分と同時に高耐熱性微粒子を添加し、熱力学的にコア成分と湿式媒体の界面に高耐熱性微粒子を配置(極性をコントロール)する方法と、コア成分の後に高耐熱性微粒子を添加し、物理的にコア成分の表面に配置させる方法があり、更に、この熱力学的(極性制御)に配置させる方法と、物理的(添加の順序)に配置させる方法を組み合わせて用いることもできる。
また、コア成分の後に高耐熱性微粒子を添加する場合は、中心部(コア)成分の組成及び又は形状が決まってから(その後の、加熱、熟成、撹拌等によって、中心部(コア)の形状、物性、相溶等は変化することがある)、追添加する方法も挙げられる。
【0023】
以下、高耐熱樹脂微粒子成分が上記コアを取り囲んでなるものを「シェル」と略記する場合がある。
トナー母粒子に外添剤が外添されてなるトナーにおいて、「高耐熱樹脂微粒子成分と外添剤からなる構造体」は、レオメーターでの測定における、上記「コア」に対しての物・概念として本発明では重要である。以下、「高耐熱樹脂微粒子成分と外添剤からなる構造体」を単に「構造体」と略記する場合がある。
【0024】
2.静電荷像現像用トナーの規定
2.1.TP2、TP1、TP2/TP1
本発明の静電荷像現像用トナーにおいては、レオメーターで測定されるTP2とTP1は同じ値を取らない。これは、1回目の測定時の加熱によってトナーの構造に変化が生じたことを示していると考えられ、その理由は以下のように推定している。
【0025】
1回目の測定は、実施例に記載の通り、トナーを極力加熱せず、かつ極力トナー間に空隙が無いペレットに成型されるので、図1に示すようなトナー母粒子表面に偏在した「高耐熱樹脂微粒子成分及び外添剤からなる構造体」を有する試料を測定していると推定される。
トナー母粒子の中心部(コア)成分よりも分子の絡み合い密度の高いシェル成分である高耐熱樹脂微粒子成分が構造体を形成しているため、1回目の測定では、トナーは、より弾性的に振る舞うことによりG”に比しG’が大きくなる方向であるために、tanδ(TP1)は小さくなる方向であると推定される。
【0026】
一方、2回目の測定では、1回目の測定時の加熱とシェアーによって、コア成分と高耐熱樹脂微粒子成分と外添剤が溶融混合して混合体を形成し、組成が1回目の測定に比し平均化された状態を測定している。
そのため、高耐熱樹脂微粒子(成分)よりも分子の絡み合い密度の低いコア成分の性質が強調され、より塑性的に振る舞うため、G’に比しG”が大きくなる方向であるために、tanδ(TP2)は、1回目測定の値に比し大きな値をとる。
【0027】
つまり、そのレオロジー挙動は、相対的に1回目は、構造体のレオロジーを測定しており、2回目は、上記混合体のレオロジーを測定している。
【0028】
従って、TP2/TP1が大きい場合は、高耐熱樹脂微粒子(成分)と外添剤の相が1回目の測定時に連続相を形成している割合が比較的高く、前記構造体のレオロジー挙動が現れ、そのためG”に比しG’が比較的大きくなっている(TP1が比較的小さくなっている)。
一方、TP2/TP1が小さい場合は、高耐熱樹脂微粒子と外添剤が1回目の測定において連続相を形成している割合が比較的小さく、前記構造体のレオロジー挙動が現れ難く、そのためG’に比しG”が比較的大きくなっている(TP1が比較的大きくなっている)と推定される。
【0029】
なお、レオメーターでの1回目の測定時の「加熱とシェアー」は、静的条件で加熱しており、また、トナー粒子単位の小さな部分(例えば前記の記載や図1参照)での変化が起こっている。
【0030】
耐ブロッキング性を維持したまま低温定着時又は高速印刷時にでも、低温定着性と高グロス性を両立できるバランスをとるためには、TP2/TP1が適正な範囲である必要があり、この範囲は1.47以上2.35以下である。
この範囲であるトナーは、トナー母粒子の表面を覆う状態で高耐熱樹脂微粒子成分が薄く存在し、更にその外側に外添剤が外添されている状態であると推定され、更には高耐熱樹脂微粒子成分とコア成分が、1回目の測定時より2回目の測定時の方がある程度相溶しているという、付かず離れずと言った絶妙な極性バランスで構成されている。
例えば、コア成分と高耐熱樹脂微粒子成分が全く異なる化学成分であったり、高耐熱樹脂微粒子成分が塩等の極端にTgが高い成分であったりすると、レオメーターでの1回目の測定前後で、(例えば相溶しない等)構造変化が起こらないため、TP2/TP1は1に近づく。
【0031】
上記の構造体は、高耐熱樹脂微粒子成分と外添剤とで形成されていることから、この測定は、トナー母粒子を測定するのではなく、トナーを測定することが重要である。
【0032】
レオメーターで測定されるTP2/TP1は、1.47以上であり、好ましくは1.63以上であり、より好ましくは1.79以上である。また、TP2/TP1は、2.35以下であり、好ましくは2.22以下、より好ましくは2.09以下である。
TP2/TP1が小さ過ぎると、耐ブロッキング性が不足する傾向があり、TP2/TP1が大き過ぎると、定着性とグロスが不足する傾向がある。
【0033】
TP2/TP1の制御手段としては以下が挙げられる。
TP2/TP1を大きくするためには、例えば、コア成分と高耐熱樹脂微粒子成分の極性差を大きくする(水中で高耐熱樹脂微粒子とコア成分を付着させる場合は、コア成分より高耐熱樹脂微粒子の極性を大きく設計し、水相を好む側にする)、高耐熱樹脂微粒子の分子量を大きくする、高耐熱樹脂微粒子の架橋密度を大きくする、高耐熱樹脂微粒子の添加量を多くする、高耐熱樹脂微粒子(成分)でのコア成分の被覆率を大きくする(同一添加量でも、薄い皮膜にするかコア成分に潜り込ませない様なコア成分と高耐熱樹脂微粒子成分の極性差とする)等が挙げられる。
TP2/TP1を小さくするには、これらの逆の設計を行えばよい。
【0034】
また、構造体の形成状態を示すTP1は、0.98以上が好ましく、より好ましくは1.07以上であり、更に好ましくは1.16以上である。また、TP1は、1.64以下が好ましく、より好ましくは1.52以下であり、更に好ましくは1.39以下である。
TP1が小さいと、耐ブロッキング性が良化する傾向があり、TP1が大きいと、定着性と高グロス性が良化する傾向にある。
【0035】
2.2.BETN、BETF、「BETN−BETF」
「BETN−BETF」は、外添後に外添剤を除去してトナー母粒子表面を出したのち比表面積を測定することによって求める。
BETNで表されるBET比表面積は、トナー母粒子の粒径と円形度と表面の微小凹凸の全てを捉えた数値である。一方、BETFで表されるフロー式粒子分析装置で測定する比表面積は、粗い解像度で撮影した画像解析によりトナー母粒子の粒径、円形度を算出し、その値から表面積を計算しているため、微小凹凸値を除いた表面積となる。
よって、BETNとBETFの差は、トナー母粒子表面の微小凹凸を表していると推定されるため、「BETN−BETF」が大きい程この微小凹凸は大きくなる。
【0036】
BETN−BETFが小さいと、トナー母粒子表面が平滑に近いことを示し、この場合、微小凹凸に介在する空気の断熱作用により低温定着性が損なわれず、不必要に高耐熱樹脂微粒子がトナーの外側に突き出していないため、その部分を溶融するのに必要な熱エネルギーの吸収が少ないため、低温定着性や高グロス性が良化する。
一方、BETN−BETFが大きいと、トナー母粒子表面に微小凹凸が形成されていることを示し、高耐熱樹脂微粒子(成分)が薄膜化し過ぎず、耐熱性を維持できるようになっている、又は、高耐熱樹脂微粒子(成分)がトナーの中心部に過度に潜り込んでいない構造をとっているため、耐ブロッキング性が良化する。
よって、高度な領域で高グロス性と低温定着性のバランスをとるためには、「BETN−BETF」が適正な範囲である必要がある。
【0037】
BET比表面積とフロー式粒子分析装置で測定する比表面積は、外添前のトナー母粒子ではなく、外添後のトナーを外添剤剥離処理したトナー母粒子を用いて測定し、その差を制御することが重要であることが本発明において分かった。
後述するように、外添によって高耐熱樹脂微粒子の形状が変化するため、プリンターや複写機に供されるトナーは外添品であるため、外添後のトナー母粒子の表面構造がトナー性能と関係すると推定している。
【0038】
BETN−BETFは、0.54以上が好ましく、0.77以上がより好ましく、0.99以上が特に好ましい。また、BETN−BETFは、1.56以下が好ましく、1.51以下がより好ましく、1.45以下が特に好ましい。
BETN−BETFが小さいと、低温定着性と高グロス性が良化する傾向がある。BETN−BETFが大きいと、耐ブロッキング性が良化する傾向がある。
【0039】
BETN−BETFを制御する手段としては以下が挙げられる。
BETN−BETFを大きくするためには、微小表面凹凸を大きくすることが必要であり、例えば、高耐熱樹脂微粒子の埋没を防止するために、高耐熱樹脂微粒子の粒子径を大きくする、コア成分と高耐熱樹脂微粒子成分の極性差を大きくする(水中で高耐熱樹脂微粒子とコア成分を付着させる場合は、コア成分より高耐熱樹脂微粒子の極性を大きく設計し水相を好む側にする、高耐熱樹脂微粒子のTg以上に加熱しない等で達成される)こと等が挙げられる。
更に、トナー母粒子に対して外添する際に、温度を低くする、時間を短くする、回転数を落とすこと等により、高耐熱樹脂微粒子のコア成分への埋没及び又は過度な延伸を防止することも有効である。また高耐熱樹脂微粒子の添加量を増やすことによってもBETN−BETFを大きくすることができる。
一方、BETN−BETFを小さくする場合は、この逆の設計を行えばよい。
【0040】
2.3.Tg(ガラス転移温度)
更には、トナーの示差走査熱量計(DSC)で測定されるTgも、耐ブロッキング性を維持したまま、低温定着時又は高速印刷時にでも、低温定着性と高グロス性を両立するという観点から重要であり、トナーのTg(ガラス転移温度)の範囲は、45.4℃以下であるのが好ましく、より好ましくは43.8℃以下であり、更に好ましくは42.1℃以下である。また、Tgの範囲は、37.9℃以上が好ましく、より好ましくは38.7℃以上、更に好ましくは39.5℃以上である。
【0041】
この範囲に調整することにより、コア成分と高耐熱樹脂微粒子を上述の適した範囲に調整した範囲内で、耐ブロッキングを維持したまま、更に好ましい低温定着性と高グロス性を得ることができる。
これは、トナーのTgを高くすることで耐ブロッキング性を補い、トナーのTgを低くすることで低温定着性とグロスをより好ましい範囲に調整することができるからである。
【0042】
トナーのTgを高くするには、Tgの高い単量体成分の共重合割合を増加させる、絡み合い点間分子量の2倍以下の分子量(Mc)成分を減らす(分子量調整剤等を減量する、架橋剤を増量させる等)、結着樹脂を可塑化させる融点100℃以下の可塑剤(例えばワックスや結晶性樹脂等)を増量すればよい。
一方、トナーのTgを低くするには、この逆の設計を行えばよい。
【0043】
2.4.[T2nd]、[T1st]、[T2nd]−[T1st
前記した本発明のトナーは、更に、以下の要件を満たしているものであることがより好ましい。
すなわち、レオメーターの1回目昇温測定でtanδが極大になる40℃以上80℃以下の温度を[T1st]とし、2回目昇温測定でtanδが極大になる40℃以上80℃以下の温度を[T2nd]としたとき、[T2nd]−[T1st]が1.0℃以上4.5℃以下であり、TP1が1.15以上1.80以下であり、TP2/TP1が1.50以上2.20以下である前記したトナーであることがより好ましい。
【0044】
レオメーター測定に関しては、実施例に記載の方法で行い、トナー自体が、実施例に記載の測定方法で測定したときに、[T2nd]、[T1st]、[T2nd]−[T1st]の数値(パラメーター)範囲を有する(示す)ものであれば、本発明に含まれる。
[T2nd]−[T1st]は以下のように求める。
1回目昇温測定で得られた貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)からtanδ(=G”/G’)を求める。
図2のように、1回目昇温測定のtanδが極大値をとる温度[T1st]を求める。同様に2回目昇温測定のtanδが極大値をとる温度[T2nd]を求める。それらを用いて、[T2nd]−[T1st]を求める。
【0045】
本発明の静電荷像現像用トナーは、[T1st]と[T2nd]は同じ値にならない。これは、1回目の測定時の加熱によってトナーの構造に変化が生じたことを示していると考えられ、その理由は以下のように推定している。
詳細は後述するが、本発明のトナーは、「少なくとも結着樹脂と着色剤を含有する内部成分」と、その周囲に存在する高耐熱樹脂微粒子及び外添剤を有する。
測定試料はトナーを極力加熱せずにペレットに成型するので、成型後も内部成分と「高耐熱樹脂微粒子及び外添剤」とが分離した状態を維持している。
【0046】
この成型品を測定して得られる[T1st]は、大きいドメインとして存在する内部成分の性質を反映した値になる。
一方、[T2nd]は、1回目の測定時の加熱によって、内部成分と高耐熱樹脂微粒子成分と外添剤が溶融混合するため、トナー全体の平均組成を反映した値になる。
【0047】
[T2nd]−[T1st]が大きい場合は、内部成分と高耐熱樹脂微粒子成分の熱特性の差が大きい、又は、内部成分に対する「高耐熱樹脂微粒子成分や外添剤」の、熱特性に及ぼす寄与比率若しくは質量比率が高い状態を示す。
[T2nd]−[T1st]が小さい場合は、内部成分と高耐熱樹脂微粒子成分の熱特性の差が小さい、又は、内部成分に対する「高耐熱樹脂微粒子成分や外添剤」の、熱特性に及ぼす寄与比率若しくは質量比率が低い状態を示す。
【0048】
[T2nd]−[T1st]は、1.0℃以上であり、好ましくは1.1℃以上であり、より好ましくは1.8℃以上であり、特に好ましくは2.5℃以上である。
また、[T2nd]−[T1st]は、4.5℃以下であり、好ましくは4.3℃以下であり、特に好ましくは4.0℃以下である。
この範囲であると、耐ブロッキング性と低温定着性のバランスの良いトナーとなる。
[T2nd]−[T1st]が大きいと、耐ブロッキング性が良化する傾向があり、[T2nd]−[T1st]が小さいと、低温定着性が良化する傾向がある。
【0049】
また、TP2/TP1が大きい場合は、高耐熱樹脂微粒子と外添剤が多いが、1回目の測定時の加熱による溶融混合は進み易く、TP2/TP1が小さい場合は、高耐熱樹脂微粒子と外添剤が少ない。
耐ブロッキング性と低温定着性のバランスをとるためには、TP2/TP1が適正な範囲である必要があり、この範囲は1.50以上2.20以下である。この範囲であるトナーは、トナー母粒子表面近傍に高耐熱樹脂微粒子成分が薄く存在し、更にその外側に外添剤が外添されている状態である。
上記の構造体は、高耐熱樹脂微粒子成分と外添剤で形成されていることから、この測定は、トナー母粒子を測定するのではなく、トナーを測定することが重要である。
【0050】
[T2nd]−[T1st]が1.0℃以上4.5℃以下の前記したトナーにおいては、TP1は、1.15以上であることが好ましく、より好ましくは1.20以上であり、特に好ましくは1.30以上である。また、TP1は、1.80以下であることが好ましく、より好ましくは1.60以下であり、特に好ましくは1.40以下である。
TP1が大きいと、低温定着性が良化する傾向があり、TP1が小さいと、耐ブロッキング性が良化する傾向がある。
【0051】
[T2nd]−[T1st]が1.0℃以上4.5℃以下の前記したトナーにおいては、TP2/TP1は、1.50以上が好ましく、2.20以下が好ましい。より好ましい範囲、特に好ましい範囲等については、前記した範囲と同様である。
この範囲であると、耐ブロッキング性と低温定着性のバランスが優れたトナーとなる。
TP2/TP1が大きいと、耐ブロッキング性が良化する傾向があり、TP2/TP1が小さいと、低温定着性が良化する傾向がある。
【0052】
[T2nd]−[T1st]が1.0℃以上4.5℃以下を満たすには、「少なくとも結着樹脂と着色剤を含む内部成分」と、高耐熱樹脂微粒子とが完全に溶融混合していていない状態であるから、高耐熱樹脂微粒子の粒径と含有量のバランスが調整され、ワックスや着色剤等の各成分の含有量が調整されることが必要である。
高耐熱樹脂微粒子の粒径は、50nm以上が好ましく、70nm以上がより好ましく、300nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましい。高耐熱樹脂微粒子の粒径が大きくなるほど、高耐熱樹脂微粒子の添加量を少なくしてバランスをとることが好ましい。
【0053】
高耐熱樹脂微粒子の添加量を決定するときは、被覆率を用いることができる。被覆率は、トナー母粒子を球体と仮定したときの目標粒径から求められる表面積と、高耐熱樹脂微粒子を球体と仮定したときの平均粒径から求められる投影面積との比から計算できる。
高耐熱樹脂微粒子の粒径が100nm以上150nm以下のときは、被覆率は40%以上90%以下であることが好ましい。高耐熱樹脂微粒子の粒径が150nm以上のときは、被覆率は20%以上80%以下であることが好ましい。高耐熱樹脂微粒子の粒径が100nmより小さいときは、被覆率は60%以上であることが好ましい。
上記のような「高耐熱樹脂微粒子の添加量」や「被覆率」に設定すること等を行うことによって、本発明の[T2nd]−[T1st]、TP1及びTP2/TP1の値の範囲にし得る。
【0054】
[T2nd]−[T1st]が1.0℃以上4.5℃以下であり、TP2/TP1が1.50以上2.20以下になるように調整するために、結着樹脂と高耐熱樹脂微粒子が適度な親和性を持つように組成を組み合わせることが望ましい。
1回目測定では、結着樹脂と高耐熱樹脂微粒子が溶融混合していない状態で測定を開始する。1回目測定が終了すると、その間の加熱によって結着樹脂と高耐熱樹脂微粒子が互いに溶融混合する。2回目測定では互いに溶融混合した状態から測定を開始する。この違いが[T2nd]−[T1st]、及びTP2/TP1に現れる。
【0055】
よって、結着樹脂の種類に応じて高耐熱樹脂微粒子に含有する樹脂の種類を選定して親和性を調整することが望ましい。以下の具体的数値には限定されないが、例えば、結着樹脂がスチレンアクリル系樹脂であれば、高耐熱樹脂微粒子に含有する樹脂もスチレンアクリル系樹脂として、スチレンモノマーとアクリルモノマーの比率を、結着樹脂が70:30の場合は高耐熱樹脂微粒子に含有する樹脂は95:5とする、又は、その他の単量体100質量部に対する親水性単量体の部数を、結着樹脂が1部の場合は高耐熱樹脂微粒子に含有する樹脂は1.5部とする、結着樹脂と高耐熱樹脂微粒子の何れかにスチレンアクリル系樹脂とポリエステルのハイブリッド樹脂を用いる、といった方法で組成に差をつけることが挙げられる。
【0056】
結着樹脂がポリエステルであれば高耐熱樹脂微粒子に含有する樹脂もポリエステルとして、酸価を、結着樹脂が3mgKOH/g以下の場合は高耐熱樹脂微粒子に含有する樹脂は4mgKOH/g以上20mgKOH/g以下とする、結着樹脂は水酸基を有さず、高耐熱樹脂微粒子に含有する樹脂は水酸基を有する、といった方法が挙げられる。
【0057】
結着樹脂と高耐熱樹脂微粒子に含有する樹脂が同一若しくは近似、又は、樹脂物性が同一若しくは近似であると、[T1st]と[T2nd]に差がつかない。また、トナー母粒子作製時に結着樹脂と高耐熱樹脂微粒子の溶融混合が進むことから、TP1とTP2もほぼ同じ値になる。
高耐熱樹脂微粒子は、樹脂を含むが、ワックスを含むことが好ましい。内部成分にもワックスを含むときは、内部成分に含まれるワックスと高耐熱樹脂微粒子に含まれるワックスは、同じ種類でもよいが、異なる種類を用いる方が好ましい。また、他に帯電制御剤等を含んでもよい。
【0058】
上記のような「『結着樹脂』と『高耐熱樹脂微粒子に含有される樹脂』の、種類若しくは物性の差」に設定すること等を含めて行うことで、本発明の[T2nd]−[T1st]、TP1及びTP2/TP1の値範囲にし得る。
【0059】
上記「2.4.に記載した物性を有するトナー」は、上記した種々の効果を奏して耐ブロッキング性と低温定着性のバランスが優れたトナーを与えるが、前記「2.1.から2.3までに記載した物性を有するトナー」であり、かつ、上記「2.4.に記載した物性を有するトナー」は、上記効果を更に奏する点でより好ましい。
【0060】
2.5.[T1st]における貯蔵弾性率(G’)、及び、Tgと「BETN−BETF」の組み合わせ
前記した本発明のトナーは、更に、以下の要件を満たしているものであることがより好ましい。
すなわち、静電荷像現像用トナーの示差走査熱量計(DSC)で測定されるTg(ガラス転移温度)が38.5℃以上45.5℃以下であり、かつ、静電荷像現像用トナーを外添剤剥離処理した後のBET比表面積をBETNとし、静電荷像現像用トナーを外添剤剥離処理した後にフロー式粒子分析装置で測定される比表面積をBETFとしたとき、BETN−BETFが0.60m/g以上1.60m/g以下であるである前記したトナーであることがより好ましい。
【0061】
上記トナーの場合、レオメーターで40℃以上80℃以下に観測される1回目測定のtanδ極大値温度(すなわち、[T1st])における貯蔵弾性率(G’)が1.10×10Pa以上2.95×10Pa以下であることが更に好ましく、更に、TP2/TP1が1.30以上2.36以下であることが特に好ましい。
【0062】
トナーのTgは、38.5℃以上45.5℃以下が好ましく、39.0℃以上45.0℃以下がより好ましく、39.5℃以上44.5℃以下が特に好ましい。
Tgが低いと低温定着性が良化する傾向があり、Tgが高いと耐ブロッキング性が良化する傾向がある。
【0063】
本発明のトナーは、「少なくとも結着樹脂、着色剤を含有する内部成分」と、その周囲に存在する高耐熱樹脂微粒子及び外添剤を有する。
高耐熱樹脂微粒子は、外添や外添操作によって形状が変化する。よって、外添後のトナー母粒子の表面構造がトナー性能に関係する、と推定している。
【0064】
BETN−BETFは、0.60m/g以上1.60m/g以下であることが好ましい。より好ましい範囲、特に好ましい範囲等については、前記した範囲と同様である。
【0065】
例えば、BETN−BETFが、1.60m/gより大きい場合は、図4で示す様に結着樹脂の周りを高耐熱樹脂微粒子が覆っている状態のトナーである。
【0066】
また、例えば、BETN−BETFが、0.60m/g未満の場合は、図5図6で示すように母粒子表面に高耐熱樹脂微粒子が存在する量が少ない状態のトナーである。
【0067】
従って、BETN−BETFが小さいと、低温定着性が良化し、BETN−BETFが大きいと、耐ブロッキング性が良化する。
【0068】
レオメーターで40℃以上80℃以下に観測される1回目測定のtanδ極大値温度([T1st])におけるG’は、外添後に高耐熱樹脂微粒子由来で形成される凸部の割合を表しており、この数値が1.10×10Pa以上2.95×10Pa以下の場合には、外添後に「高耐熱樹脂微粒子由来で形成される凸部」の割合が適度であることを意味している。
つまり、2.95×10Paより大きい場合は、外添後に「高耐熱樹脂微粒子由来で形成される凸部」の割合が過度な状態であり、1.10×10Pa未満であるときは、外添後に「高耐熱樹脂微粒子由来で形成される凸部」の割合が過少な状態である。
【0069】
レオメーターで40℃以上80℃以下に観測される1回目測定のtanδ極大値温度([T1st])におけるG’は、下限は、1.10×10Pa以上が好ましく、1.20×10Pa以上がより好ましく、1.30×10Pa以上が特に好ましい。
また、上限は、2.95×10Pa以下が好ましく、2.85×10Pa以下がより好ましく、2.75×10Pa以下が特に好ましい。
【0070】
本発明の静電荷像現像用トナーは、TP1とTP2は同じ値にならない。これは、1回目の測定の加熱によってトナーの構造に変化が生じたことを示していると考えられ、その理由については、前記した通りであるが、言い換えれば以下のように推定している。
測定試料は、トナーを極力加熱せずにペレットに成型して作成するので、成型後もトナーの内部と表面の組成の差をそのまま維持し、その結果、図1に示すような、高耐熱樹脂微粒子成分及び外添剤からなる構造体が全体に形成されている。1回目の測定では、この構造体を有する試料を測定している。
【0071】
2回目の測定では、1回目の測定時の加熱によって内部と高耐熱樹脂微粒子成分と外添剤が溶融混合し組成が平均化された状態の試料を測定している。
TP2/TP1が大きい場合は、高耐熱樹脂微粒子と外添剤が存在し、TP2/TP1が小さい場合は、高耐熱樹脂微粒子と外添剤が構造体を形成する割合が少なく、その結果、図1のような構造体が形成されていない。
【0072】
耐ブロッキング性と低温定着性のバランスをとるためには、TP2/TP1が適正な範囲である必要があり、この範囲は前記範囲であることが好ましい。この範囲であるトナーは、トナー母粒子表面近傍に高耐熱樹脂微粒子成分が薄く存在し、更に、その外側に外添剤が外添されている状態であり、本発明の前記効果を奏し易い。
【0073】
上記「2.5.に記載した物性を有するトナー」は、上記した種々の効果を奏して耐ブロッキング性と低温定着性のバランスが優れたトナーを与えるが、前記「2.1.から2.3までに記載した物性を有するトナー」であり、かつ、上記「2.5.に記載した物性を有するトナー」は、上記効果を更に奏する点でより好ましい。
【0074】
2.6.[G’1st]、[G’2nd]、[G’1st]/[G’2nd]MAX、[発熱最大ピーク温度Td]
前記した本発明のトナーは、更に、以下の要件を満たしているものであることがより好ましい。
すなわち、レオメーターで測定される貯蔵弾性率(G’)の1回目測定値を[G’1st]として、2回目測定値を[G’2nd]としたとき、[G’1st]/[G’2nd]の63.0℃以上80.0℃以下の極大値[G’1st]/[G’2nd]MAXが1.40以上10.0以下である前記したトナーであることがより好ましい。
【0075】
上記トナーの場合、更に、TP2/TP1が1.45以上2.36以下である上記トナーがより好ましく、更には、示差走査熱量計(DSC)で観測される降温時の発熱最大ピーク温度を[発熱最大ピーク温度Td]とした時、[発熱最大ピーク温度Td]が50℃以上75℃以下であるトナーが特に好ましい。
【0076】
レオメーター測定に関しては、実施例に記載の方法で行い、トナー自体が、実施例に記載の測定方法で測定したときに、[G’1st]/[G’2nd]MAXの数値(パラメーター)範囲を有する(示す)ものであれば、本発明に含まれる。
【0077】
本発明において、[G’1st]/[G’2nd]MAXは以下のように求める。
1回目昇温測定で得られたG’生データを元に、1℃刻みのG’を計算する。2回目昇温測定も同様にG’を計算する。1回目の1℃刻みのG’を、2回目の1℃刻みのG’で除して、図7のような[G’1st]/[G’2nd]のグラフから、図7の43’のように、63.0℃以上80.0℃以下の極大値[G’1st]/[G’2nd]MAXを求める。
【0078】
本発明の静電荷像現像用トナーは、図7に示すように、[G’1st]と[G’2nd]は同じ値にならないため、[G’1st]/[G’2nd]MAXが存在する。これは、1回目の測定時の加熱によってトナーの構造に変化が生じたことを示していると考えられ、その理由は以下のように推定している。
【0079】
詳細は後述するが、本発明のトナーは、「少なくとも結着樹脂、着色剤を含有する内部成分」と、その周囲に存在する高耐熱樹脂微粒子及び外添剤を有する。測定試料は、トナーを極力加熱せずにペレットに成型して作製するので、成型後もトナーの内部と表面の組成の差をそのまま維持し、その結果、図1に示すような、高耐熱樹脂微粒子成分及び外添剤からなる構造体が全体に形成されている。
1回目の測定では、この構造体を有する試料を測定している。2回目の測定では、1回目の測定時の加熱によって、内部成分と高耐熱樹脂微粒子成分と外添剤が溶融混合し、組成が平均化された状態の試料を測定している。
【0080】
[G’1st]/[G’2nd]MAXは、内部と高耐熱樹脂微粒子の溶融状態の差が最も大きい点であり、内部と高耐熱樹脂微粒子の親和性を表現していると推定される。
【0081】
[G’1st]/[G’2nd]MAXが10.0より大きい場合は、「高耐熱樹脂微粒子及び外添剤からなる構造体」が明瞭に形成されている、すなわち、内部成分と高耐熱樹脂微粒子の親和性が低く、かつ高耐熱樹脂微粒子の量も過剰であるために高耐熱樹脂微粒子がトナー母粒子表面に過剰に存在する状態である。
一方、[G’1st]/[G’2nd]MAXが1.40未満の場合は、構造体が形成されていない、すなわち、内部と高耐熱樹脂微粒子の親和性が良いために、高耐熱樹脂微粒子の樹脂が内部に埋没している状態である。
【0082】
耐ブロッキング性と低温定着性のバランスをとるためには、[G’1st]/[G’2nd]MAXが適正な範囲である必要があり、この範囲は本発明の数値範囲である。1.40以上10.0以下の範囲である。本発明の範囲であるトナーは、トナー母粒子表面近傍に高耐熱樹脂微粒子が適度に存在していると推定される。
【0083】
本発明の静電荷像現像用トナーは、TP1とTP2は同じ値を取らない。これは、1回目の測定時の加熱によってトナーの構造に変化が生じたことを示していると考えられ、その理由は以下のように推定している。
測定試料は、トナーを極力加熱せずにペレットに成型するので、成型後もトナーの内部と表面の組成の差をそのまま維持し、その結果、図1に示すような、高耐熱樹脂微粒子成分及び外添剤からなる構造体が形成されている。
1回目の測定では、この構造体を有する試料を測定している。2回目の測定では、1回目の測定時の加熱によって内部と高耐熱樹脂微粒子成分と外添剤が溶融混合し、組成が平均化された状態を測定している。
【0084】
TP2/TP1が大きい場合は、高耐熱樹脂微粒子と外添剤が多く、TP2/TP1が小さい場合は、高耐熱樹脂微粒子と外添剤が少なく、その結果、構造体が十分に形成されていない。
耐ブロッキング性と低温定着性のバランスをとるためには、TP2/TP1の値が適正な範囲である必要があり、1.45以上2.36以下の範囲であることが好ましい。本発明の範囲であるトナーは、トナー母粒子表面近傍に高耐熱樹脂微粒子成分が薄く存在し、更にその外側に外添剤が外添されている状態であると推定される。
【0085】
上記トナーにおいては、TP2/TP1は、1.45以上が好ましく、1.50以上であることが特に好ましい。また、2.36以下であることが好ましい。TP2/TP1が大きいと、耐ブロッキング性が良化する傾向があり、TP2/TP1が小さいと、定着性が良化する傾向がある。
【0086】
降温時の[発熱最大ピーク温度Td]の測定は、以下の手順で行う。
示差走査熱量計(DSC)による降温時の[発熱最大ピーク温度Td]測定は、ティー・エイ・インスツルメント社のQ20を用い、次の通り行う。
トナー3±1mgをアルミニウム製パンに入れて0.1mgの桁まで精秤し、酸化アルミニウム3mgを充填したアルミニウム製パンをリファレンスとして、窒素気流中、0℃から120℃まで10℃/分で昇温する。120℃にて10分間保持した後、10℃/分で0℃まで降温し、5分間保持した後に10℃/分で再び120℃まで昇温する。
【0087】
横軸を温度(℃)、縦軸をHeat flow(W/g)とした時、降温時の[発熱最大ピーク温度Td]は、図8に示すようにベースラインから発熱側方向に最も高さを有するピーク温度と定義される。
【0088】
前記した本発明の静電荷像現像用トナーは、DSCで測定される[発熱最大ピーク温度Td]が50℃以上75℃以下であることが好ましい。
この発熱ピークは、例えば、トナー中のワックスによって発現するが、その場合、ワックスは低温定着性を阻害せず、かつ定着後速やかに固まる必要があることを意味する。
[発熱最大ピーク温度Td]が大きいと、例えば50℃以上に存在する場合、定着後にワックスが固まり易いことで、定着後の用紙同士が引っ付いてしまう等の不具合が起こり難い。逆に、[発熱最大ピーク温度Td]が低いと、例えば75℃以下に存在する場合、定着時にワックスが溶け易いことで離型剤として寄与し、低温定着性を阻害しない。
【0089】
定着後の用紙同士の接着や低温定着の観点から、[発熱最大ピーク温度Td]は、50℃以上が好ましく、53℃以上が更に好ましく、75℃以下が好ましく、72℃以下が更に好ましい。
【0090】
また、DSC測定による2回目昇温時にベースラインから吸熱側方向に最も高さを有するピーク温度を[吸熱最大ピーク2nd]とした際、[吸熱最大ピーク2nd]が62℃以上75℃以下であることが好ましい。この吸熱ピークは、例えばトナー中のワックスによって発現するが、その場合、結着樹脂や高耐熱樹脂微粒子とワックスは適度な親和性をもつことが必要であることを意味する。
【0091】
[吸熱最大ピーク2nd]が高いと、例えば62℃以上に存在する場合、親和性が低い状態であり、この場合、高耐熱樹脂微粒子が埋まり込み難いため、耐ブロッキング性が良化する。例えば結着樹脂のTgを下げると、低温定着性が良化するために、低温定着と耐ブロッキング性の両立ができる。
一方、[吸熱最大ピーク2nd]が低いと、例えば75℃以下に存在する場合、親和性が高い状態であり、この場合、低温定着性が良化する。
【0092】
例えば結着樹脂のTgを上げると、耐ブロッキング性が良化するために、低温定着と耐ブロッキング性の両立ができる。
【0093】
上記「2.6.に記載した物性を有するトナー」は、上記した種々の効果を奏して耐ブロッキング性と低温定着性のバランスが優れたトナーを与えるが、前記「2.1.から2.3までに記載した物性を有するトナー」であり、かつ、上記「2.6.に記載した物性を有するトナー」は、上記効果を更に奏する点でより好ましい。
【0094】
2.7.トナー母粒子の組成
2.7.1.コア(中心部)成分
トナー母粒子は、「少なくとも結着樹脂(例えば重合体一次粒子からなる)、着色剤を含有するコア成分」に高耐熱樹脂微粒子が被覆してなっている。
この高耐熱樹脂微粒子には、その他必要に応じ帯電制御剤等を含有していてもよく、ワックスが含まれていることが高温側のオフセット防止の観点から好ましく、更に、このワックスが高耐熱樹脂成分で実質的に内包された状態で含有されていることが、フィルミング等のワックス遊離により起こる問題をも解決できるのでより好ましい。
ワックスを高耐熱樹脂成分で実質的に内包された状態にするには、水中及び/又は有機溶剤下において、ワックス粒子存在化で結着樹脂をそのワックス表面に、重合、析出又は凝集させる方法等が挙げられる。
【0095】
結着樹脂としては、一般にトナーを製造する際に結着樹脂として用いられるものであればよく、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂、これらの樹脂の混合物等が挙げられる。
結着樹脂を製造するために用いる単量体成分としては、一般的にトナーの結着樹脂を製造する際に用いられている単量体を適宜用いることができる。
例えば、酸性基を有する重合性単量体(以下、単に酸性単量体と称すことがある)、塩基性基を有する重合性単量体(以下、単に塩基性単量体と称することがある)、酸性基も塩基性基も有さない重合性単量体(以下、その他の単量体と称することがある)の何れの重合性単量体も使用することができる。
【0096】
結着樹脂としてポリスチレン系共重合体樹脂及びポリ(メタ)アクリル系樹脂を使用する場合、以下の単量体が例として挙げられる。「スチレン系又は(メタ)アクリル系単量体」を、以下単に「単量体組成物」と略記する場合がある。
【0097】
酸性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸等のカルボキシル基を有する重合性単量体;スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有する重合性単量体;ビニルベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド基を有する重合性単量体;等が挙げられる。
【0098】
塩基性単量体としては、アミノスチレン等のアミノ基を有する芳香族ビニル化合物;ビニルピリジン、ビニルピロリドン等の窒素含有複素環含有重合性単量体;ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル;等が挙げられる。
これら酸性単量体及び塩基性単量体は、トナー母粒子の分散安定化に寄与する。単独で用いても複数種類を混合して用いてもよく、また、対イオンを伴って塩として存在していてもよい。
【0099】
更に、トナー母粒子の中心部(コア)成分及び高耐熱樹脂微粒子のどちらか一方に、あるいは双方に含まれていてもよいが、コア成分を構成する「結着樹脂と酸性又は塩基性単量体によりなる樹脂成分」と、高耐熱樹脂微粒子を構成する「結着樹脂と酸性又は塩基性単量体によりなる樹脂成分」は、互いに異なっていることが好ましい。
これは、前述した高耐熱樹脂微粒子成分とコア成分が、tanδの1回目の測定時より2回目の測定時の方がある程度相溶しているという、付かず離れずといった絶妙なバランスで構成される必要があるため、適切な親和性に調整するという意味で、本発明おいては特に重要である。
【0100】
また、酸性(又は塩基性)単量体の添加量に依存する酸価(塩基価)について、水中で高耐熱樹脂微粒子を付着させることにより製造する場合には、トナー母粒子のコア(中心部)成分よりも高耐熱樹脂微粒子の酸価(塩基価)を高めた方が好ましく、具体的には、高耐熱樹脂微粒子の酸価(塩基価)をコア成分の酸価(塩基価)よりも1.1倍以上2.8倍以下に調整することが好ましい。この倍数が小さ過ぎると、高耐熱樹脂微粒子がコア成分に埋没してしまい、満足いく耐ブロッキング性が得られず、この倍数が大き過ぎると、コア成分に比し水中で高耐熱樹脂微粒子が安定し過ぎていて付着しない場合があるからである。
【0101】
その他の単量体としては、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−n−ノニルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド等のアクリルアミド類;等が挙げられる。「その他の単量体」は、単独で用いてもよく、また複数を組み合わせて用いてもよい。
【0102】
結着樹脂を架橋樹脂とする場合、上述の重合性単量体と共に多官能性単量体が用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサエチレングリコールジメタクリレート、ノナエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジアリルフタレート等が挙げられる。
中でも二官能性重合性単量体が好ましく、ジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジアクリレート等が特に好ましい。これら多官能性重合性単量体は、単独で用いても複数種類を混合して用いてもよい。
また、反応性基をペンダントグループに有する重合性単量体、例えば、グリシジルメタクリレート、メチロールアクリルアミド、アクロレイン等を用いることも可能である。
【0103】
必要に応じて公知の連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤の具体的な例としては、t−ドデシルメルカプタン、ドデカンチオール、ジイソプロピルキサントゲン、四塩化炭素、トリクロロブロモメタン等が挙げられる。連鎖移動剤は単独又は2種類以上の併用でもよく、重合性単量体に対して0〜5質量%が好ましい。
【0104】
ポリスチレン系共重合体樹脂及びポリ(メタ)アクリル系樹脂を結着樹脂とする場合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと記載する)における数平均分子量は好ましくは5000以上、より好ましくは8000以上、更に好ましくは1万以上であり、好ましくは4万以下、より好ましくは3万以下、更に好ましくは2万以下であることが望ましい。重量平均分子量は、好ましくは3万以上、より好ましくは5万以上、好ましくは30万以下、より好ましくは25万以下であることが望ましい。
【0105】
結着樹脂としてポリエステル系樹脂を使用する場合、2価のアルコールとして、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール類、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノールAアルキレンオキシド付加物;等が挙げられる。
2価の酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、これらの酸の無水物若しくは低級アルキルエステル;n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸等のアルケニルコハク酸類若しくはアルキルコハク酸類;その他の2価の有機酸が挙げられる。
【0106】
結着樹脂を架橋樹脂とする場合、上述の重合性単量体と共に多官能性単量体が用いられ、例えば、3価以上の多価アルコールとしては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ショ糖、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン、その他が挙げられる。
3価以上の酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、これらの無水物、その他が挙げられる。
【0107】
また、ポリエステル系樹脂の酸価について、水中で高耐熱樹脂微粒子を付着させることにより製造する場合には、トナー母粒子のコア(中心部)成分よりも高耐熱樹脂微粒子の酸価を高めた方が好ましく、具体的には、高耐熱樹脂微粒子の酸価をコア成分の酸価よりも1.1倍以上2.8倍以下に調整することが好ましい。
この倍数が大きいと、高耐熱樹脂微粒子がコア成分に埋没し難い方向であるため、満足いく耐ブロッキング性が得られ、この倍数が小さいと、コア成分に比し水中で高耐熱樹脂微粒子が安定化し過ぎず、高耐熱樹脂微粒子がコア成分に良好に付着し易い。
【0108】
これらのポリエステル樹脂は、通常の方法にて合成することができる。具体的には、反応温度(170〜250℃)、反応圧力(5mmHg〜常圧)等の条件をモノマーの反応性に応じて決め、所定の物性が得られた時点で反応を終了すればよい。
結着樹脂としてポリエステル系樹脂を使用する場合のGPCにおける数平均分子量は、好ましくは2000〜20000、より好ましくは3000〜12000であることが望ましい。
【0109】
オフセット防止剤として、また、低温定着性向上のために、ワックスを使用することが好ましい。
本発明のトナーに用いられるワックスは、公知のワックスを任意に使用することができるが、具体的には、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、共重合ポリエチレン等のオレフィン系ワックス;パラフィンワックス;ベヘン酸ベヘニル、モンタン酸エステル、ステアリン酸ステアリル等の長鎖脂肪族基を有するエステル系ワックス;水添ひまし油、カルナバワックス等の植物系ワックス;ジステアリルケトン等の長鎖アルキル基を有するケトン;アルキル基を有するシリコーン;ステアリン酸等の高級脂肪酸;長鎖脂肪酸(ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の)多価アルコールエステル若しくはその部分エステル体;オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド;等が例示される。
好ましくは、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素系ワックス;エステル系ワックス;シリコーン系ワックス;等が挙げられる。中でも、エステル系ワックスがより好ましく、C18及び/又はC22の炭化水素を主体的に含むモノエステルワックスが更に好ましく、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、ステアリン酸ベヘニル、それらを主体的に含むもの、が最も好ましい。ワックスは単独で用いても混合して用いてもよい。
【0110】
ワックスの融点ピーク(トナーのDSC2回目昇温時における吸熱ピークトップ)は、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、75℃以下が更に好ましく、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、65℃以上が更に好ましい。ワックスの融点ピーク温度が高いと、耐ブロッキング性が良化する傾向にあり、ワックスの融点ピークが低いと、低温定着性と高グロス性が良化する傾向にある。
また、ワックスの融点ピークとワックスのオンセット温度(トナーのDSC2回目における吸熱ピーク前のベースラインと、吸熱ピーク前に現れる最初の変曲点における接線の交点温度)の差は、10℃以下であることが好ましく、8℃以下であることがより好ましく、4℃以下であることが更に好ましい。
また、ワックスのオンセット温度は、86℃以下が好ましく、76℃以下がより好ましく、71℃以下が更に好ましく、46℃以上が好ましく、56℃以上がより好ましく、61℃以上が更に好ましい。上記オンセット温度が低い場合、低温定着性と高グロス性が良化する傾向にあり、上記オンセット温度が高い場合、耐ブロッキング性が良化する傾向にある。
【0111】
ワックスの量は、トナー100質量部に対して1質量部以上であることが好ましく、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。また、35質量部以下であることが好ましく、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは25質量部以下である。
【0112】
着色剤としては公知の着色剤を任意に用いることができる。着色剤の具体的な例としては、カーボンブラック、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、ローダミン系染顔料、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系染顔料等、公知の任意の染顔料を単独で又は混合して用いることができる。
フルカラートナーの場合には、イエローは、ベンジジンイエロー系、モノアゾ系、縮合アゾ系の染顔料;マゼンタは、キナクリドン系、モノアゾ系の染顔料;シアンは、フタロシアニン系の染顔料;等をそれぞれ用いることが好ましい。
【0113】
着色剤は、トナー100質量部に対して、3質量部以上20質量部以下となるように用いることが好ましい。
【0114】
帯電制御剤としては公知のものを任意に用いることができる。帯電制御剤の具体的な例としては、正帯電性用としてニグロシン染料、アミノ基含有ビニル系コポリマー、四級アンモニウム塩化合物、ポリアミン樹脂等があり、負帯電性用としてクロム、亜鉛、鉄、コバルト、アルミニウム等の金属を含有する含金属アゾ染料、サリチル酸若しくはアルキルサリチル酸の前記した金属との塩、金属錯体等がある。
帯電制御剤の量は、トナー100質量部に対して、0.1〜25質量部が好ましく、1〜15質量部がより好ましい。
帯電制御剤はトナー母粒子内部に混合してもよく、またトナー母粒子表面に付着させた形で用いてもよい。
【0115】
2.7.2.高耐熱樹脂微粒子の成分
トナー母粒子は、前記コアと、その周囲に存在する高耐熱樹脂微粒子を有する。その他必要に応じて、コア及び/又は高耐熱樹脂微粒子には、ワックス、帯電制御剤等を含有していてもよい。コア及び/又は高耐熱樹脂微粒子は、ワックスを含有することが好ましい。
高耐熱樹脂微粒子の成分である「高耐熱樹脂微粒子成分」の種類としては、一般にトナーを製造する際に結着樹脂として用いられる前記樹脂が挙げられる。
樹脂の種類は特に限定されないが、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂、これらの樹脂の混合物等が挙げられる。
【0116】
2.8.トナーの形態
本発明のトナーの体積平均粒径は、上限は、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。下限は、8μm以下が好ましく、6μm以下がより好ましい。
また、形状は、フロー式粒子像分析装置FPIA−3000を用いて測定した平均円形度が、好ましくは0.92以上、より好ましくは0.95以上、更に好ましくは0.97以上であり、好ましくは0.99以下である。
平均円形度が大きいと、トナー母粒子への外添剤の付着不良による帯電悪化から画像濃度の低下を引き起こし難く、小さいと、形状に起因するクリーニング不良が起こり難い。
【0117】
3.静電荷像現像用トナーの作製
本発明のトナーは公知の何れの方法で製造してもよく、特に限定されない。
【0118】
3.1.トナー母粒子の作製方法
3.1.1.トナー母粒子より小さい粒子を凝集してトナー母粒子を作製する方法
各原料をトナー母粒子サイズより小さい粒子として用意し、これらを混合・凝集することでトナー母粒子を得る方法を用いることができる。
【0119】
3.1.1.1.乳化重合
結着樹脂をトナー母粒子サイズより小さい「重合体一次粒子」として調製し、該重合体一次粒子の分散液を得る方法を以下に述べる。
また、高耐熱樹脂微粒子の作製にも、これと同様の方法を用いることができる。
【0120】
スチレン系又は(メタ)アクリル系単量体(単量体組成物)を構成要素とする重合体一次粒子は、前述の単量体組成物と、必要に応じ連鎖移動剤を、乳化剤を用いて乳化重合することによって得られる。
【0121】
乳化剤としては公知のものが使用できるが、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤の中から選ばれる1種又は2種以上の乳化剤を併用して用いることができる。
【0122】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム、等の脂肪酸石けん、硫酸ドデシルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートエーテル、モノデカノイルショ糖等が挙げられる。
【0123】
乳化剤の使用量は、重合性単量体100質量部に対して0.1質量部以上、10質量部以下で用いられることが好ましい。乳化剤の使用量を多くすると、得られる重合体一次粒子の粒径が小さくなり、使用量を少なくすると、得られる重合体一次粒子の粒径が大きくなる。また、これらの乳化剤に、例えば、部分又は完全ケン化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体類等の1種又は2種以上を保護コロイドとして併用することができる。
【0124】
また、必要に応じて公知の重合開始剤を1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、等の過硫酸塩、及び、これら過硫酸塩を一成分として酸性亜硫酸ナトリウム等の還元剤を組み合わせたレドックス開始剤、過酸化水素、4,4’−アゾビスシアノ吉草酸、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、等の水溶性重合開始剤、及び、これら水溶性重合開始剤を一成分として第一鉄塩等の還元剤と組み合わせたレドックス開始剤、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル、等が用いられる。これら重合開始剤は重合性単量体添加前、添加と同時、添加後の何れの時期に重合系に添加しても良く、必要に応じてこれらの添加方法を組み合わせてもよい。
【0125】
トナー中に好適な分散粒径でワックスを分散させるために、乳化重合時にワックスをシードとして添加する、いわゆるシード重合とすることが好ましい。シードとして添加することにより、ワックスがトナー中に微細かつ均一に分散するため、トナーの帯電性や耐熱性の悪化を抑制することができる。
また、ワックスをステアリルアクリレート等の長鎖重合性単量体と予め水系分散媒体中で分散し得られるワックス・長鎖重合性単量体分散液を調製し、ワックス・長鎖重合性単量体の存在下において重合性単量体を重合することもできる。
【0126】
着色剤をシードとして乳化重合することも可能だが、着色剤存在下で重合性単量体を重合すると、着色剤中の金属がラジカル重合に影響し、樹脂の分子量やレオロジー制御が困難となり、所望の物性が得られないおそれがあるため、着色剤を乳化重合時には添加せず、次工程で着色剤分散液を添加する方法が好ましい。
【0127】
3.1.1.2.樹脂を乳化する方法
塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の方法で樹脂を得た後、水系媒体と混合し、樹脂の融点かガラス転移温度の何れかの高い温度以上に加熱して樹脂の粘性を下げて、剪断力を与えて乳化することで、重合体一次粒子が得られる。
【0128】
剪断力を与えるための乳化機としては、例えば、ホモジナイザー、ホモミキサー、加圧ニーダー、エクストルーダー、メディア分散機等が挙げられる。
乳化時の樹脂の粘度が高く所望の粒径まで小さくならない場合は、大気圧以上に加圧可能な乳化装置を用いて温度を上げ、樹脂粘度を下げた状態で乳化することで、所望の粒径の重合体一次粒子を得ることができる。
別の方法として、あらかじめ樹脂に有機溶剤を混合して樹脂の粘度を下げる方法を用いてもよい。使用される有機溶剤としては、樹脂を溶解させるものであれば特に限定はないが、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等のベンゼン系溶剤等を用いることができる。更に、水系媒体との親和性向上、及び、粒度分布制御の目的で、エタノールやイソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤を水若しくは樹脂に添加してもよい。有機溶剤を添加した場合は、乳化終了後、乳化液から有機溶剤を除去する必要がある。有機溶剤を除去する方法としては、常温若しくは加熱下で減圧しながら有機溶剤を揮発させる方法等がある。
【0129】
また、粒度分布制御の目的で、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の塩や、アンモニア等を添加してもよい。
【0130】
粒度分布制御の目的で、乳化剤や分散剤を添加してもよい。例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、の等の水溶性高分子;前記の乳化剤;リン酸三カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の無機化合物等が挙げられる。使用量としては、樹脂100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましい。
【0131】
酸性基又は塩基性基を含有する樹脂を用いると、乳化剤や分散剤の添加量を減らすことができるが、樹脂の吸湿性が高くなり、帯電性が悪化する場合がある。
【0132】
また、転相乳化法を用いてもよい。転相乳化法は、樹脂に、必要に応じて有機溶剤や中和剤や分散安定剤を添加して、攪拌下にて、水系媒体を滴下して、乳化粒子を得た後、樹脂分散液中の有機溶剤を除去して、乳化液を得る方法である。有機溶剤は、前述の有機溶剤と同様のものを用いることができる。中和剤としては、硝酸、塩酸、水酸化ナトリウム、アンモニア等一般の酸、アルカリを用いることができる。
【0133】
3.1.1.3.凝集・熟成によるトナー母粒子の形成
上記乳化重合及び樹脂の乳化の何れの調製方法においても、得られる重合体一次粒子の体積平均粒径は、通常0.02μm以上であり、好ましくは0.05μm以上であり、特に好ましくは0.1μm以上であり、通常3μm以下であり、好ましくは2μm以下であり、特に好ましくは1μm以下である。
重合体一次粒子の体積平均粒径が前記範囲以上であると、凝集工程において凝集速度の制御が容易になる。一方で、前記範囲以下であると、凝集して得られるトナー母粒子の粒径が大きくなり難く、目的とする粒径のトナー母粒子を得ることが容易になる。
【0134】
凝集工程は、前記の、重合体一次粒子、着色剤粒子、必要に応じて帯電制御剤、ワックス等の配合成分は、同時に又は逐次に混合する。予めそれぞれの成分の分散液、即ち、重合体一次粒子分散液、着色剤粒子分散液、必要に応じ帯電制御剤分散液、ワックス微粒子分散液を作製しておき、これらを混合して混合分散液を得ることが、組成の均一性及び粒径の均一性の観点で好ましい。
【0135】
着色剤は、乳化剤の存在下で水中に分散した状態で用いるのが好ましく、着色剤粒子の体積平均粒径は、好ましくは0.01μm以上、特に好ましくは0.05μm以上であり、好ましくは3μm以下、特に好ましくは1μmである。
【0136】
凝集工程において、凝集は、通常、攪拌装置を備えた槽内で行われるが、加熱する方法、電解質を加える方法と、これらを組み合わせる方法とがある。
重合体一次粒子を攪拌下に凝集して目的とする大きさの粒子凝集体を得ようとする場合、粒子同士の凝集力と攪拌による剪断力とのバランスから粒子凝集体の粒径が制御されるが、加熱するか又は電解質を加えることによって凝集力を大きくすることができる。
【0137】
電解質を添加して凝集を行う場合の電解質としては、酸、アルカリ、塩の何れでもよく、有機系、無機系の何れでもよいが、具体的には、酸として、塩酸、硝酸、硫酸、クエン酸等;アルカリとして、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等;塩として、NaCl、KCl、LiCl、NaSO、KSO、LiSO、MgCl、CaCl、MgSO、CaSO、ZnSO、Al(SO、Fe(SO、CHCOONa、CSONa等が挙げられる。
これらのうち、2価以上の多価の金属カチオンを有する無機塩が好ましい。
【0138】
電解質の添加量は、電解質の種類、目的とする粒径等によって異なるが、混合分散液の固形成分100質量部に対して、0.02質量部以上が好ましく、0.05質量部以上が更に好ましい。また、25質量部以下が好ましく、更には15質量部以下、特に10質量部以下が好ましい。
添加量が多いと、凝集の進行が速くなり、凝集後も1μm以下の微粉が残らず、得られた粒子凝集体の平均粒径が目的の粒径に達し易い。一方、添加量が少ないと、急速な凝集が起こり難く、粒径の制御が容易となり、得られた凝集粒子中に粗粉や不定形のものが含まれ難い。
電解質を加えて凝集を行う場合の凝集温度は、好ましくは20℃以上、特に好ましくは30℃以上であり、好ましくは70℃以下、特に好ましくは60℃以下である。
【0139】
凝集に要する時間は装置形状や処理スケールにより最適化されるが、トナー母粒子の粒径が目的とする粒径に到達するためには、前記した所定の温度で、少なくとも30分以上保持することが好ましい。所定の温度へ到達するまでの昇温は、一定速度で昇温してもよいし、段階的に昇温することもできる。
【0140】
高耐熱樹脂微粒子を添加するタイミングは、どのタイミングであってもよく、コア成分の原料(例えば、重合体一次粒子、顔料、ワックス等)と同時に仕込んでもよいし、コア成分の原料の一部若しくは全てを凝集させた後に添加してもよい。
【0141】
コア成分と高耐熱樹脂微粒子を同時に仕込む場合は、熱力学的にコア成分と媒体(例えば水)の中間の極性になる様に高耐熱性微粒子の極性を設計すれば、自発的にコア成分の周りに高耐熱樹脂微粒子が付着した状態になる。
水中及び/又は有機溶剤の様な湿式媒体中で、高耐熱樹脂微粒子を付着させる場合は、コア成分の原料の組成が決まった(トナー母粒子より小さい粒子を凝集してトナー母粒子を作製する場合には、コア成分の一部若しくは全てを凝集させた)後に、高耐熱樹脂微粒子を添加することが、よりコア成分の表面に高耐熱性微粒子を配置させられる観点から好ましい。
【0142】
高耐熱樹脂微粒子の組成や調製方法としては、前述のものが挙げられる。添加は1回であってもよいし、複数回であってもよい。1回目の高耐熱樹脂微粒子と、次回以降の高耐熱樹脂微粒子とは、異なっていてもよく、いかなる組み合わせであってもよい。
【0143】
凝集工程で得られた粒子凝集体の安定性を増すために、凝集工程の後の熟成工程において凝集粒子内の融着を行うことが好ましい。
熟成工程の温度は、好ましくは重合体一次粒子のTg以上、より好ましくは重合体一次粒子のTgより5℃高い温度以上であり、また、好ましくは高耐熱樹脂微粒子のTg以下、より好ましくは高耐熱樹脂微粒子のTgより5℃低い温度以下である。
また、熟成工程に要する時間は、目的とするトナー母粒子の形状により異なるが、重合体一次粒子のTg以上に到達した後、好ましくは0.1〜10時間、特に好ましくは0.5〜5時間保持することが望ましい。
【0144】
凝集工程以降、好ましくは熟成工程以前又は熟成工程中の段階で、界面活性剤を添加するか、pHを調整するか、両者を併用することが好ましい。
ここで用いられる界面活性剤としては、重合体一次粒子を製造する際に用いることのできる乳化剤から1種以上を選択して用いることができるが、特に重合体一次粒子を製造した際に用いた乳化剤と同じものを用いることが好ましい。
界面活性剤を添加する場合の添加量は限定されないが、混合分散液の固形成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
凝集工程以降、熟成工程の完了前の間に界面活性剤を添加するか、pHを調整することにより、凝集工程で得られた粒子凝集体同士の凝集等を抑制することができ、熟成工程後の粗大粒子生成を抑制できる場合がある。
【0145】
熟成工程の時間を制御することにより、重合体一次粒子が凝集した形状を保った葡萄型、融着が進んだジャガイモ型、更に融着が進んだ球状等、目的に応じて様々な形状のトナー母粒子を製造することができる。
【0146】
3.1.2.トナー母粒子のサイズの粒子を作製する方法
各原料を混合した後、該混合物をトナー母粒子のサイズに微粒化し、微粒化する前後に高耐熱樹脂微粒子を添加することで、トナー母粒子を得る方法を用いることができる。
【0147】
3.1.2.1.懸濁重合でトナー母粒子を作製する方法
上述の単量体組成物と同様の「スチレン系又は(メタ)アクリル系単量体」(単量体組成物)中に、着色剤、重合開始剤、必要に応じて、ワックス、極性樹脂、帯電制御剤、架橋剤等の添加剤を加え、均一に溶解又は分散させた単量体組成物を調製する。
この単量体組成物を、必要に応じ懸濁安定剤等を含有する水系媒体中に分散させる。単量体組成物の液滴が所望のトナー母粒子のサイズを有するように撹拌速度・時間を調整し、造粒する。その後、分散安定剤の作用により、粒子状態が維持され、かつ粒子の沈降が防止される程度の撹拌を行い、重合を行うことによりトナー母粒子を得ることができる。
【0148】
懸濁安定剤の具体的な例としては、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、重合性単量体100質量部に対して、1質量部以上、10質量部以下の量が好ましい。懸濁安定剤は、重合性単量体添加前、添加と同時、添加後の何れの時期に重合系に添加してもよく、必要に応じてこれらの添加方法を組み合わせてもよい。
【0149】
単量体組成物に極性樹脂が含まれている場合、水系媒体中に単量体組成物を分散させて液滴を形成したのち、極性樹脂が液滴表面近傍に移行し易い。この状態で重合を行うことによって、内部と表面で組成に差のあるトナー母粒子が得られる。例えば、単量体の重合後のTgよりもTgの高い極性樹脂を選ぶと、トナー母粒子の内部はTgが低く、表面にはTgの高い樹脂が高い比率で存在している構造が得られる。本発明ではシェル粒子を被覆することで耐ブロッキング性を高めているのだが、この方法を併用すれば、良好な耐ブロッキング性が更に得られ易くなる。
【0150】
高耐熱樹脂微粒子を添加するタイミングは、どのタイミングであってもよく、例えば、単量体組成物に溶解させておいて、その後、水系媒体中に分散させて、高耐熱樹脂微粒子が、熱力学的にコア成分と水の界面に来るように、該高耐熱樹脂微粒子の極性を設計することもできる。
また、コア成分の単量体組成物を分散させた後に、高耐熱樹脂微粒子を添加してもよいし、コア成分の単量体組成物を分散させて、コア成分の重合性単量体の一部又はほぼ全てを重合してから、高耐熱樹脂微粒子を添加してもよい。
コア成分の表面に高耐熱性微粒子を配置させる観点からは、重合性単量体の一部を重合してから高耐熱樹脂微粒子を添加することが好ましく、実質的に重合性単量体のほぼ全てを重合させてから、高耐熱樹脂微粒子を添加することがより好ましい。
【0151】
高耐熱樹脂微粒子の組成や調製方法としては、前述のものが挙げられる。添加は1回であってもよいし、複数回であってもよい。1回目の高耐熱樹脂微粒子と、次回以降の高耐熱樹脂微粒子は、異なっていてもよく、いかなる組み合わせであってもよい。
【0152】
その他、反応系には、pH調整剤、重合度調節剤、消泡剤等を適宜添加することができる。
【0153】
3.1.2.2.溶解懸濁でトナー母粒子を作製する方法
有機溶媒中に、少なくとも結着樹脂と着色剤、必要に応じワックスや帯電制御剤等が溶解又は分散している油性分散液を作り、これを水系媒体中に分散させる。その後、分散液から有機溶剤を除去し、トナー母粒子を得ることができる。高耐熱性微粒子は、油性分散液に予め添加しておいてもよいし、水系媒体中に分散させてから添加してもよいし、有機溶剤を除去してから添加してもよい。
高耐熱樹脂微粒子の組成や調製方法としては、前述のものが挙げられる。高耐熱樹脂微粒子の添加は、1回であってもよいし、複数回であってもよい。1回目の高耐熱樹脂微粒子と、次回以降の高耐熱樹脂微粒子とは、異なっていてもよく、いかなる組み合わせであってもよい。
【0154】
水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。
必要に応じて、分散剤を用いることができる。分散剤を用いた方が、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定するので好ましい。分散剤としては、上述の乳化重合に用いる乳化剤と同様のものが使用できる。また、水系媒体中で高分子系保護コロイドを形成する各種の親水性高分子物質を存在させることができる。
【0155】
また、無機微粒子及び/又はポリマー微粒子を用いることができる。
無機微粒子としては、水に不溶ないし難溶の従来公知の各種の無機化合物が用いられる。このようなものとしては、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等が挙げられる。
ここで、ポリマー微粒子を、前記の高耐熱樹脂微粒子とみなしてもよい。
【0156】
油性分散液を水系媒体中に分散させる場合、分散装置として低速剪断式、高速剪断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波等の公知の分散機が適用できる。
【0157】
結着樹脂の代わりに反応性基をもつプレポリマーを用いて油性分散液を作製し、水系媒体中に分散させたのち反応性基を反応させて樹脂を伸長させてもよい。この方法は、プレポリマーが比較的低分子量なため、油性分散液の粘度が上がり難く、水系媒体中への分散が容易になる。
【0158】
着色剤を油性分散液中に均一分散させ易くするために、予め着色剤を樹脂と複合化されたマスターバッチとして調製し、これを有機溶剤に分散してもよい。
【0159】
有機溶剤を除去する方法としては、常温若しくは加熱下で減圧しながら有機溶剤を揮発させる方法等がある。
【0160】
結着樹脂として、極性の高い樹脂と、極性の低い樹脂を併用すると、水系媒体中に単量体組成物を分散させて液滴を形成したのち、極性の高い樹脂は液滴表面近傍に、極性の低い樹脂は液滴中心付近に移行する。その後有機溶剤を除去することによって、内部と表面で組成に差のあるトナー母粒子が得られる。
活性水素基含有化合物と反応可能なプレポリマーを用いて油性分散液を作製する場合は、油性分散液を水系媒体中に分散させたのち、活性水素基含有化合物を添加し、該水系媒体中で液滴表面から両者を伸長反応又は架橋反応させることにより、液滴表面に優先的に伸長又は架橋樹脂が生成する。その後有機溶剤を除去することによって、内部と表面で組成に差のあるトナー母粒子が得られる。
【0161】
これらの方法で、Tgを考慮して原料を選択することにより、トナー母粒子の内部よりも表面の方が高Tgの樹脂の比率が高い構造が得られる。
また、分散剤に用いるポリマー微粒子を、前記の高耐熱樹脂微粒子とみなして、該高耐熱樹脂微粒子の物性に調整することで、高耐熱樹脂微粒子(ポリマー微粒子)がトナー母粒子表面に存在する構造を作ってもよい。
【0162】
3.1.3.トナー母粒子の洗浄・乾燥
前記した「トナー母粒子より小さい粒子を凝集してトナー母粒子を作製する方法」、「懸濁重合でトナー母粒子のサイズの粒子を作製する方法」、「溶解懸濁でトナー母粒子のサイズの粒子を作製する方法」等で作製されたトナー母粒子は、水系溶媒から分離され、洗浄、乾燥され、外添処理が施されて静電荷像現像用トナーに供される。
【0163】
洗浄に用いる液体としては、水が用いられるが、酸又はアルカリの水溶液で洗浄することもできる。また、温水や熱水で洗浄することもでき、これらの方法を併用することもできる。このような洗浄工程を経ることによって、懸濁安定剤や乳化剤、未反応モノマー等を低減、除去することができる。
洗浄工程は、例えば、濾過、デカンテーション等することによって、トナー母粒子を濃厚スラリー又はウエットケーキ状とし、これに新たに洗浄するための液体を加えてトナー母粒子を分散する操作を繰り返すことが好ましい。洗浄後のトナー母粒子は、ウエットケーキ状で回収することが、引き続き行われる乾燥工程における取り扱いの面で好ましい。
【0164】
乾燥工程では、振動型流動乾燥法、循環型流動乾燥法等流動乾燥法、気流乾燥法、真空乾燥法、凍結乾燥法、スプレードライ法、フラッシュジェット法等が用いられる。乾燥工程における温度、風量、減圧度等の操作条件は、着色粒子のTg、使用する装置の形状、機構、大きさ等をもとに、適宜最適化される。
【0165】
3.1.4.溶融混練粉砕法でトナー母粒子を作製する方法
溶融混練粉砕法とは、結着樹脂及び着色剤に、必要に応じて帯電制御剤、離型剤、磁性体等を乾式混合した後、押出機等で溶融混練し、次いで粉砕、分級しトナー母粒子を得る方法であり、トナー母粒子を得た後の外添工程で、高耐熱樹脂微粒子を添加しコア成分表面に付着させてもよい。
【0166】
3.1.5.高耐熱樹脂微粒子の添加時期
湿式媒体中(水中及び/又は有機溶剤中)でトナー母粒子を作製する場合、上述の様にコア成分と同時に高耐熱樹脂微粒子(又は単なる樹脂)を添加(溶解・分散・懸濁のいかなる状態であってもよい)し、熱力学的に、高耐熱樹脂微粒子を、コア成分と湿式媒体の表面に配置させてもよいし、コア成分の組成及び/又は形状が決まった後に高耐熱樹脂微粒子を添加し、物理的にコア成分の表面を高耐熱性樹脂微粒子が連続的及び/又は非連続的に覆う形としてもよい。
更には、湿式媒体中(水中及び/又は有機溶剤中)でトナー母粒子を作製する場合、洗浄工程の前後でもよいし、乾燥工程の前後で高耐熱樹脂微粒子を添加してもよい。また、外添工程で高耐熱樹脂微粒子を添加してもよく、外添工程で高耐熱樹脂微粒子を付着させる場合は、高耐熱樹脂微粒子を添加し固着させてから外添剤を添加する方が好ましい。
【0167】
乾式でトナー母粒子を作製する溶融混練粉砕法においては、粉砕し分級した後の外添工程の前後で高耐熱樹脂微粒子を添加して、該高耐熱樹脂微粒子を付着させることが好ましい。
より強固にコア成分と高耐熱樹脂微粒子を固着させる観点から、水中及び/又は有機溶剤中で、高耐熱樹脂微粒子を添加することが特に好ましい。
【0168】
3.2.本発明のパラメーターを満たすトナーの作製
3.2.1.「TP2/TP1」について
レオメーターで測定されるTP2/TP1が1.47以上2.35以下を満たすようにするには、トナー母粒子表面に高耐熱樹脂微粒子成分を広く存在させ、その外側を外添剤で覆い、高耐熱樹脂微粒子の粒径と量を調整し、水中で付着させる場合はコア成分と高耐熱樹脂微粒子の極性バランスを調整し、更にトナー母粒子全体の組成比を調整することが必要である。
【0169】
高耐熱樹脂微粒子の体積中位径(Dv50)は、50nm以上が好ましく、70nm以上がより好ましく、300nm以下が好ましく、250nm以下がより好ましい。本発明における「体積中位径(Dv50)」は、その大きさによって実施例に記載の方法で測定し、そのように測定したものとして定義される。
【0170】
高耐熱樹脂微粒子の粒径が100nm以上の時は、外添操作で高耐熱樹脂微粒子を衝撃によって押し広げて、高耐熱樹脂微粒子成分をトナー母粒子表面に薄く広げることが好ましい。粒径が100nm以上の高耐熱樹脂微粒子が外添操作の衝撃によって押し広げられると、BETN−BETFが0.54以上1.56以下のトナーが得られるので、BETN−BETFを本発明の範囲に入れ易くなる。
一方、高耐熱樹脂微粒子の粒径が100nmより小さいときは、外添操作で高耐熱樹脂微粒子が押し広げられる変化が生じ難い傾向があるので、添加量を多くすることで母粒子表面を広く覆うことで、本発明のパラメーターを満たすトナーにすることが好ましい。
【0171】
高耐熱樹脂微粒子の添加量を決定するときは、被覆率を基準に決定することが好ましい。トナー母粒子を球体と仮定したときの目標粒径から求められる表面積と、高耐熱樹脂微粒子を球体と仮定したときの平均粒径から求められる投影面積との比から計算できる。
高耐熱樹脂微粒子の粒径が100nm以上のときは、被覆率は25%以上85%以下であることが好ましく、35%以上70%以下であることがより好ましく、40%以上60%以下であることが特に好ましい。
高耐熱樹脂微粒子の粒径が100nmより小さいときは、被覆率は55%以上120%以下であることが好ましく、65%以上105%以下であることがより好ましく、70%以上95%以下であることが特に好ましい。
【0172】
高耐熱樹脂微粒子成分は、トナーの形態となった際に表面近傍に配置されていることが望ましい。その形状としては、本発明を逸脱しない範囲であれば、粒子状・球状でもよく、薄膜状でもよい。
【0173】
レオメーターで測定されるTP2/TP1が1.47以上2.35以下になるように調整するために、結着樹脂と高耐熱樹脂微粒子が適度な相溶性を持つように組成を組み合わせることが望ましい。
1回目測定では、結着樹脂と高耐熱樹脂微粒子が溶融せずに接している状態で測定を開始する。1回目測定が終了すると、その間の加熱によって結着樹脂と高耐熱樹脂微粒子が互いに溶融する。よって、2回目測定では互いに溶融した状態で測定を開始する。この違いが、TP2/TP1の違いに表れている。
【0174】
よって、結着樹脂の種類に応じて高耐熱樹脂微粒子に含有する樹脂の種類を選定して相溶性を調整することが望ましい。以下、その調整方法を例示するが、例に挙げた数値は限定されない。
【0175】
すなわち、例えば、結着樹脂がスチレンアクリル系樹脂であれば、高耐熱樹脂微粒子に含有する樹脂もスチレンアクリル系樹脂として、スチレンモノマーとアクリルモノマーの比率を、例えば、結着樹脂が70:30の場合は高耐熱樹脂微粒子に含有する樹脂は95:5とする;あるいはその他の単量体100質量部に対する親水性単量体の部数を、結着樹脂が1部の場合は高耐熱樹脂に含有する樹脂は1.5部とする;結着樹脂と高耐熱樹脂微粒子の何れかにスチレンアクリル系樹脂とポリエステルのハイブリッド樹脂を用いる;等といった方法で組成に差をつけることが挙げられる。
【0176】
コア成分と高耐熱性樹脂微粒子成分の適切な相溶性が得られることから、結着樹脂の溶解度パラメータ(SP値)と、高耐熱樹脂微粒子成分のSP値との差が0.5〜1.0であることが好ましく、0.6〜0.8であることがより好ましい。
【0177】
また、接着強度を高くし部材汚染を減らす観点から、透過型電子顕微鏡で測定したときの、コア成分と高耐熱樹脂微粒子成分の陰影差がないことが特に好ましい。透過型電子顕微鏡の測定条件は、実施例に記載の通り測定し、「陰影差」については、そのように測定したときの写真を肉眼で見たときの「陰影差」とする。
ここで、「陰影差がない」とは、コア成分と高耐熱樹脂微粒子成分の染色度合い(白黒度合い)の差がなく、高耐熱性樹脂微粒子成分の縁(すなわち、コア成分と高耐熱性樹脂微粒子成分の境界)が見えないことを言う。
ただし、上記「陰影差がない」は、陰影差が明瞭ではなく殆ど陰影差が見えない態様まで除外するものではない。
【0178】
高耐熱性樹脂微粒子がコア成分から離脱しないように、ある程度の親和性を有していることが重要なため、コア成分を構成する結着樹脂の単量体成分と高耐熱性樹脂微粒子を構成する単量体成分の少なくとも一つは同一の単量体成分とすることが好ましい。こうすることで、コア成分と高耐熱性樹脂微粒子の界面がシームレスとなり、接着強度が上がることにより、例えば、湿式で高耐熱性樹脂をコア成分の表面に付着させ、その後、外添工程で高耐熱性樹脂を引き伸ばす際に、高耐熱性樹脂の一部分は、コア成分にアンカーリングし、コア成分から突き出た部分を延伸化でき被覆率を稼ぐことができ、好ましい高耐熱性樹脂微粒子成分の被覆形態を得ることができる。
【0179】
また、結着樹脂がポリエステルであれば、高耐熱樹脂微粒子に含有する樹脂もポリエステルとして、酸価を、結着樹脂が3mgKOH/g以下の場合は高耐熱樹脂微粒子に含有する樹脂は4mgKOH/g以上20mgKOH/g以下とする;結着樹脂は水酸基を有さないものにし、高耐熱樹脂微粒子に含有する樹脂は水酸基を有するものにする;等といった方法が挙げられる。
【0180】
結着樹脂と高耐熱樹脂微粒子に含有する樹脂が同一であると、トナー母粒子作製時に結着樹脂と高耐熱樹脂微粒子の溶融が進むため、レオメーターで測定されるTP2とTP1がほぼ同じ値をとる。
また、結着樹脂と高耐熱樹脂微粒子の相溶性がきわめて悪いと、1回目測定の熱で互いに溶融せずトナーの構造が維持されて、TP2とTP1がほぼ同じ値をとる。
高耐熱樹脂微粒子は樹脂を含むが、それ以外の成分、例えばワックス、帯電制御剤等を含んでもよい。
【0181】
高耐熱樹脂微粒子に含有する樹脂のGPCによる数平均分子量は、好ましくは8000以上、より好ましくは1万以上、更に好ましくは1.3万以上であり、好ましくは5万以下、より好ましくは4万以下、更に好ましくは3.5万以下であることが望ましい。
高耐熱樹脂微粒子に含有する樹脂のGPCによる重量平均分子量は、好ましくは2万以上、より好ましくは3万以上、好ましくは30万以下、より好ましくは20万以下であることが望ましい。
【0182】
高耐熱樹脂微粒子のTgは、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましい。また、結着樹脂のTgより高いことが必要で、10℃以上高いことがより好ましく、20℃以上高いことが更に好ましい。
【0183】
トナーのレオメーターで測定されるTP2/TP1が、本発明の範囲(1.47以上2.35以下)に入るように調整するためには、高耐熱樹脂微粒子をトナー母粒子の表面近傍に配置することが必要である。
そのために有効な高耐熱樹脂微粒子の組成としては、湿式媒体(水及び又は有機溶剤)中でトナー母粒子を作製する場合、結着樹脂よりも媒体になじみ易い組成にしておくことが挙げられ、例えば、媒体が水の場合は酸性単量体若しくは塩基性単量体の比率を結着樹脂より高く、かつ、その他の単量体100質量部に対して1.0質量部以上にする;イオン性の重合開始剤を使用する;等が挙げられる。
【0184】
3.2.2.「BETN−BETF」について
BETN−BETFが小さ過ぎるとき(0.54より小さいとき)は、トナー母粒子表面の高耐熱樹脂微粒子が少ない;外添操作の衝撃による変形が大きい;等の平滑に近い状態を示す。
BETN−BETFが大き過ぎるとき(1.56より大きいとき)は、高耐熱樹脂微粒子が過剰;外添操作の衝撃による変形が少ない;高耐熱樹脂微粒子の粒径が非常に大きい;等の微小凹凸が激しい状態を示す。
【0185】
高耐熱樹脂微粒子を添加する前のコア成分粒子が凹凸を持った形状であり、水中で高耐熱樹脂微粒子を同一の電荷(プラス同士、又はマイナス同士)で付着させる場合は、高耐熱樹脂微粒子はコア成分粒子の凸部に選択的に付着し易い傾向があり、これは好ましい傾向である。
従来のトナーでは、高耐熱樹脂微粒子を添加しても付着後に、高耐熱樹脂微粒子がトナー母粒子の表面近傍に留まることなく内部に深く埋まり込んでしまう。
本発明では、高耐熱樹脂微粒子がトナー母粒子の表面近傍に留まる。また、外添操作によって押し広げられる場合は、高耐熱樹脂微粒子成分がトナー母粒子の表面に薄く広がって存在する。
【0186】
よって、高耐熱樹脂微粒子は、トナー母粒子表面全体に均一に分布するのではなく、凸部への付着率が凹部への付着率に比べ高い傾向にある。耐ブロッキング性は、加熱環境下でトナー同士が融着することにより悪化するが、確率論的にトナーの凸部が優位に接触する。よって凸部の耐熱性が高いことが好ましい形態となる。
従って、「BETN−BETF」が本発明の範囲に入っているトナーは、本発明の効果(特に良好な耐ブロッキング性)を奏する。
【0187】
4.外添
4.1.外添剤
本発明においては、本発明のトナーの物性を得るために、また、トナーの流動性向上や帯電制御性向上のために、外添剤を添加する。外添剤はトナー母粒子表面全体に付着するため、高耐熱樹脂微粒子が存在しない部分も外添剤で被覆されることが好ましい。外添剤としては、各種無機又は有機微粒子の中から適宜選択して使用することができる。また、2種類以上の外添剤を併用してもよい。
【0188】
無機微粒子としては、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化クロム、炭化モリブデン、炭化カルシウム等の各種炭化物、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム等の各種窒化物、ホウ化ジルコニウム等の各種ホウ化物、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化アルミニウム、酸化セリウム、シリカ、コロイダルシリカ等の各種酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム等の各種チタン酸化合物、リン酸カルシウム等のリン酸化合物、二硫化モリブデン等の硫化物、フッ化マグネシウム、フッ化炭素等のフッ化物、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の各種金属石鹸、滑石、ベントナイト、各種カーボンブラックや導電性カーボンブラック、マグネタイト、フェライト等を用いることができる。
【0189】
有機微粒子としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂等の微粒子を用いることができる。また、フッ素原子を含有する微粒子を用いて帯電安定性を向上させることができる。
【0190】
これら外添剤の中では、特に、シリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、各種カーボンブラックや導電性カーボンブラック等が好適に使用される。また、外添剤は、前記の無機又は有機微粒子の表面を、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)等のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル、ジメチルシリコーンオイル、変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル等のシリコーンオイル処理剤、シリコーンワニス、フッ素系シランカップリング剤、フッ素系シリコーンオイル、アミノ基や第4級アンモニウム塩基を有するカップリング剤等の処理剤によって疎水化等の表面処理が施されているものを使用することもできる。該処理剤は2種以上を併用することもできる。
【0191】
外添剤の添加量は、トナー母粒子100質量部に対して、1.0質量部以上が好ましく、1.5質量部以上が特に好ましく、6.5質量部以下が好ましく、5.5質量部以下が特に好ましい。
【0192】
本発明のトナーにおいては、帯電制御の観点から、外添剤として導電性微粒子を使用してもよい。導電性微粒子としては、例えば、導電性酸化チタン、シリカ、マグネタイト、等の金属酸化物又はそれらに導電性物質をドープしたもの、ポリアセチレンやポリフェニルアセチレン、ポリ−p−フェニレン等の共役2重結合を有するポリマーに金属等の導電性物質をドープした有機微粒子、カーボンブラックやグラファイトに代表される炭素等が挙げられるが、トナーの流動性を損なわず導電性を付与できるという観点から、導電性酸化チタン又はその導電性物質をドープしたものがより好ましい。
【0193】
導電性微粒子の含有量は、トナー母粒子100質量部に対して、下限は、0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.2質量部以上であることが特に好ましい。
一方、導電性微粒子の含有量の上限は、3質量部以下が好ましく、2質量部以下がより好ましく、特に好ましくは1質量部以下である。
【0194】
4.2.外添剤の外添方法
外添剤の添加方法は、ヘンシェルミキサー等の高速攪拌機を用いる方法や、圧縮剪断応力を加えることのできる装置による方法等が挙げられる。
トナーは、トナー母粒子に全ての外添剤を同時添加して外添する一段外添法により作製できるが、外添剤毎に外添する分段外添法により作製することもできる。
外添中の温度上昇を防止するために、容器に冷却装置を設置する、分段外添する等が挙げられる。
【0195】
外添の温度、回転数、時間等を調整することで、BETN−BETFが本発明の範囲(例えば0.54以上1.56以下)となるように調整することができる。
例えば、ヘンシェルミキサーで、3000回転で長時間(例えば25分以上)撹拌すると、「BETN−BETF」の数値が小さくなる(例えば0.54に近い値をとる)。同様の条件で短時間(例えば5分以下)撹拌すると、この数値が大きくなる(例えば1.56に近い値をとる)。
【0196】
5.その他
本発明の静電荷像現像用トナーは、トナーをキャリアとともに用いる二成分系現像剤、又は、キャリアを使用しない磁性若しくは非磁性一成分系現像剤の何れの形態で用いてもよい。
二成分系現像剤として用いる場合、キャリアとしては、鉄粉、マグネタイト粉、フェライト粉等の磁性物質又はそれらの表面に樹脂コーティングを施したものや磁性キャリア等公知のものを用いることができる。樹脂コーティングキャリアの被覆樹脂としては一般的に知られているスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル共重合系樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂、又はこれらの混合物等が利用できる。
【実施例】
【0197】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。以下の例で単に「部」「%」とあるのは、質量に関するものは、「質量部」「質量%」を意味する。
【0198】
<実施例1〜9、比較例1〜6>
体積中位径、個数中位径、粒子径分布(Dv50/Dn50)、平均円形度、重量平均分子量(Mw)、エマルション固形分濃度等は次のように測定した。本発明では、それぞれの数値は、次のように測定したものとして定義される。
【0199】
<中位径測定1>
1ミクロン未満の体積中位径を有す粒子の体積中位径は、日機装株式会社製型式MicrotracNanotrac150(以下、「ナノトラック」と略す)、及び、同社解析ソフトMicrotracParticle Analyzer Ver10.1.2−019EEを用い、電気伝導度が0.5μS/cmのイオン交換水を溶媒とし、溶媒屈折率:1.333、測定時間:120秒、測定回数:5回の測定条件で、取り扱い説明書に記載された方法で測定し、その平均値を求めた。
その他の設定条件は、粒子屈折率:1.59、透過性:透過、形状:真球形、密度:1.04とした。
【0200】
<中位径測定2>
1ミクロン以上の体積中位径(Dv50)を有す粒子の体積中位径(Dv50)と個数中位径(Dn50)は、ベックマン・コールター社製、マルチサイザーIII(アパーチャー径100μm)(以下、「マルチサイザー」と略す)を用い、同社アイソトンIIを分散媒として、分散質濃度0.03質量%になるように分散させて測定した。粒子径分布は、Dv50をDn50で除した値とした。
【0201】
<平均円形度>
平均円形度は、分散質を分散媒(セルシース:シスメックス社製)に、5720〜7140個/μLとなるように分散させ、フロー式粒子分析装置(FPIA3000:シスメックス社製)を用いて、HPF分析量0.35μL、HPF検出量2000〜2500個の条件下でHPFモードにより測定した。
【0202】
<重量平均分子量(Mw)>
重合体一次粒子分散液のTHF可溶成分を、以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
装置:東ソー株式会社製GPC装置 HLC−8320、カラム:TOSOH TSKgel SuperHM−H(直径6mmx長さ150mmx2本)、溶媒:THF、カラム温度40℃、流量0.5mL/分、試料濃度:0.1質量%、検量線:標準ポリスチレン
【0203】
<エマルション固形分濃度>
エマルション固形分濃度は、株式会社ケット科学研究所製、赤外線水分計FD−610を用い、2gの試料を195℃で90分加熱して水分を蒸発させることにより求めた。
【0204】
<透過型電子顕微鏡での測定方法、陰影差の測定方法>
トナーをエポキシ系樹脂に包埋して硬化させた後、四酸化ルテニウムで5分間ガス暴露することでシェルとコアを識別染色した。次に、ナイフで断面出しして、ウルトラミクロトームを用いて、厚さが200nmのトナーの超薄切片を作製した。更に、TEM(透過型電子顕微鏡)H7500(日立ハイテク社製)を用いて、加速電圧100kVでトナーの超薄切片を観察し、陰影差を肉眼で確認した。
【0205】
実施例1
<ワックス分散液A1の作製:乳化工程>
ワックスとしてエステルワックス1(日油株式会社製 品名:WEP−3、DSC2回目測定融点ピーク:71.0℃、DSC2回目測定オンセット温度:68.6℃、DSC2回目測定変曲点:69.9℃、カタログ酸価0.1mgKOH/g、カタログ水酸基価3mgKOH/g以下)30.00部(1440g)、デカグリセリンデカベヘネート(三菱化学フーズ株式会社製、品名:B100D、水酸基価27、融点70℃)0.24部、20%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(以下、「20%DBS水溶液」と略す)1.93部、脱塩水67.83部、を90℃に加熱して、45℃傾斜3段パドル翼を備えたCSTR型撹拌層内で20分混合した。
次いで、この分散液を90℃に加熱したまま、バルブホモジナイザー(ゴーリン社製、15−M−8PA型)を用いて25MPaの加圧条件で循環乳化を開始し、ナノトラックで粒子径を測定し、体積中位径が245nmになるまで分散して、ワックス分散液A1(エマルション固形分濃度=31.2%、ワックス成分濃度30.8%)を作製した。
【0206】
<ワックス分散液A2の作製:乳化工程>
原料として上記エステルワックス1を22.50部、エステルワックス2(日油株式会社製、品名:WEP−5、カタログ融点82℃、カタログ酸価0.1mgKOH/g、カタログ水酸基価3mgKOH/g以下)7.50部(1080g)、デカグリセリンデカベヘネート0.24部、20%DBS水溶液1.93部、脱塩水67.83部を用い、ワックス分散液A1と同様の方法で、ワックス分散液A2(エマルション固形分濃度=31.4%)を作製した。
【0207】
<重合体一次粒子の作製:重合工程>
攪拌装置、加熱冷却装置、濃縮装置、及び、各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器に、ワックス分散液A1を10.7部(ワックス成分として)、脱塩水252部、0.5%硫酸鉄(II)7水和物水溶液0.02部を仕込み、攪拌しながら窒素気流下で90℃に昇温した。
【0208】
その後、攪拌を続けたまま、事前にホモジナイザーで30分間撹拌した下記のモノマー類・乳化剤溶液の混合物を240分かけて添加した。
このモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を添加開始した時間を重合開始とし、下記の開始剤水溶液を重合開始0分から480分かけて添加した。重合開始240分に下記の硫酸鉄水溶液を添加した。重合開始300分に95℃に昇温した。重合開始540分まで加熱撹拌を継続した。
【0209】
[モノマー類]
スチレン 70.9部
アクリル酸ブチル 29.1部
アクリル酸 0.85部
トリクロロブロモメタン 1.0部
ヘキサンジオールジアクリレート 0.95部
【0210】
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 66.9部
【0211】
[開始剤水溶液]
8%過酸化水素水溶液 28.0部
8%L−(+)アスコルビン酸水溶液 28.0部
【0212】
[硫酸鉄水溶液]
0.5%硫酸鉄(II)7水和物水溶液 0.08部
【0213】
重合開始540分後、30℃まで冷却し、乳白色の重合体一次粒子を得た。ナノトラックを用いて測定した体積中位径は239nmだった。重量平均分子量(Mw)は67000だった。固形分濃度は、24.1質量%であり、Tgは38℃であった。
【0214】
<高耐熱樹脂微粒子の調製:重合工程>
攪拌装置、加熱冷却装置、濃縮装置、及び、各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器に、ワックス分散液A2を50.6部、粒子径調整用乳化剤(DBS SP)として、20%DBS水溶液2.96部、脱塩水350部を仕込み、攪拌しながら窒素気流下で75℃に昇温した。
【0215】
下記の開始剤水溶液1を添加して5分後、攪拌を続けたまま、事前にホモジナイザーで30分間撹拌した下記のモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を180分かけて添加した。
このモノマー類・乳化剤水溶液の混合物の添加を開始した時間を重合開始とし、下記の開始剤水溶液2を重合開始240分から60分かけて連続的に添加した。下記の開始剤水溶液3を重合開始240分から120分かけて連続的に添加した。重合開始180分に下記の硫酸鉄水溶液を添加した。重合開始180分に93℃に昇温した。重合開始480分まで加熱撹拌を継続した。
【0216】
[モノマー類]
スチレン 97.9部
アクリル酸ブチル 2.1部
アクリル酸 1.5部
1−ドデカンチオール 1.0部
【0217】
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 66.7部
【0218】
[開始剤水溶液1]
20%過硫酸アンモニウム水溶液 6.0部
[開始剤水溶液2]
8%過酸化水素水溶液 14.2部
[開始剤水溶液3]
8%L−(+)アスコルビン酸水溶液 21.3部
【0219】
[硫酸鉄水溶液]
0.5%硫酸鉄(II)7水和物水溶液 0.05部
【0220】
重合開始480分後、30℃まで冷却し、乳白色の高耐熱樹脂微粒子を得た。ナノトラックを用いて測定した体積中位径は158nmだった。重量平均分子量(Mw)は59000だった。固形分濃度は20.0%でありTgは80℃であった。
【0221】
<トナー母粒子の分散液の調製:凝集工程>
攪拌装置、加熱冷却装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器に、上記で得られた重合体一次粒子87.1部(固形分)、20%DBS水溶液0.07部(固形分)、脱イオン水74部、5%硫酸鉄(II)七水和物水溶液0.52部(固形分)、シアン着色剤EP−700(大日精化(株)製)18部を撹拌しながら順に添加して均一に混合した。
その後、0.5%硫酸アルミニウム水溶液0.10部(固形分)を15分かけて、脱イオン水41部を5分かけて添加した。続けて内温を40℃まで昇温し、更に体積中位径が5.2μmになるまで段階的に昇温した。この温度(一次凝集温度)は45℃であった。
【0222】
すみやかに一次凝集温度より1℃温度を下げると同時に重合体一次粒子9.7部(固形分)を添加した。180分後、高耐熱樹脂微粒子5.6部(固形分)を添加した。90分後、20%DBS水溶液4.0部(固形分)と脱イオン水23部を添加してから、50分かけて65℃まで昇温し、その後円形度が0.975になるまで段階的に昇温した。
円形度が0.975に到達した時の温度(最終円形化温度)は、68℃であった。その後、すみやかに30℃まで冷却し、トナー母粒子分散液を得た。
【0223】
<トナー母粒子の作製:洗浄・乾燥工程>
得られたトナー母粒子分散液を抜き出し、5種C(東洋濾紙(株)社製、No.5C)の濾紙を用いてアスピレーターにより吸引濾過した。濾紙上に残ったケーキを、攪拌機(プロペラ翼)を備えたステンレス容器に移し、電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水を加え攪拌することにより均一に分散させ、その後30分間攪拌した。
この工程をろ液の電気伝導度が2μS/cmになるまで繰り返した後、得られたケーキを、40℃に設定された送風乾燥機内で48時間乾燥することにより、トナー母粒子を得た。
【0224】
<トナーの製造:外添工程>
上記で得られたトナー母粒子(100部)に対し、ポリマー/シリカ複合体粒子(ATLAS100:キャボット社製:シリカ/ポリマー比=70/30、真比重=1.7g/cm)、オクタヒドロペンタレン含有)を4部、チタニアとシリカ複合酸化物粒子(STX501:日本アエロジル(株)社製)を0.5部、小粒径シリカ(RY200L:日本アエロジル(株)社製)を0.4部添加し、ヘンシェルミキサーにて、3000rpmで15分間攪拌・混合して篩別することによりトナーを得た。
【0225】
実施例2〜9、比較例1〜4
実施例1において、重合体一次粒子の作製工程でのスチレン(St)添加量、ブチルアクリレート(BA)添加量、アクリル酸(AA)添加量、ワックス分散液A1のワックス成分としての添加量、及び、高耐熱樹脂微粒子作製工程での粒子径調整用乳化剤(DBS SP)として20%DBS水溶液の添加量、凝集工程での高耐熱樹脂微粒子の固形分としての添加量を表1のように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2から9及び比較例1から4のトナーを製造した。
【0226】
比較例5
特開2006−145889号公報の実施例1と同様にして、比較例5のトナーを製造した。
【0227】
比較例6
特開2014−081614号公報の実施例4と同様にして、比較例6のトナーを製造した。
【0228】
重合体一次粒子の重量平均分子量、高耐熱樹脂微粒子の体積中位径と重量平均分子量、及び、高耐熱樹脂微粒子がトナー母粒子を被覆する(トナー母粒子は5.6μmと仮定)被覆率、凝集工程での一次凝集温度・最終円形化温度を表1に示す。
更に、トナー母粒子を外添したトナーの体積中位径(Dv50)、個数中位径(Dn50)、粒子径分布(Dv50/Dn50)、平均円形度も表1に示す。
【0229】
【表1】
【0230】
実施例1〜9及び比較例1〜6で得られたトナーを用いて、以下の方法で評価し、判定した。測定したトナー(サンプル)は、製造直後、すなわち外添直後のものであったが、経時したものであっても、既に現像層等に入っているものであっても、測定数値は殆ど変わらないことは技術常識である。また、50℃以上の環境下に置かれた外添後のトナーは、適切なTP1の値が得られないことがある。
【0231】
[TP2とTP1の測定方法とTP2/TP1の定義]
レオメーターで測定されるTP2/TP1は以下の手順で求めた。
測定装置は、TA Instruments製、レオメーターARES(測定制御ソフトウェアTA Orchestrator V7.2.0.2)を用い、以下の方法で測定を行った。
【0232】
<8mm円筒ペレット測定>
サンプル約0.3gを8mm径用の治具に入れ、50℃に加熱したプレス機(小平製作所 5トンプレス PE−5Y)によって型締力1.25トン(ゲージ25kg/cm)で15分間加圧し、ペレットに成型した。本発明において、これを「成型体」と略記する場合がある。
測定に使用するアルミニウム製8mmディスポーザブルプレート表面には、格子状に縦横各12本、開口部の幅50〜100μm、深さ1〜10μm(平均3〜5μm)の傷を形成しておいた。
【0233】
1回目昇温測定:ペレット(成型体)を上下直径8mmの円形パラレルプレートを装着した測定装置にセットし、40℃に昇温した状態で上部プレートを下げてフォース‘Force’を200gに調整した後、以下の条件で測定した。
【0234】
治具コンプライアンス ‘Fixture compliance’ 0
プレート慣性 ‘Tool inertia’ 0
測定周波数 ‘Frequency’ 6.28rad/sec
初期温度 ‘Initial Temp.’ 40.0℃
最終温度 ‘Final Temp.’ 120.0℃
昇温速度 ‘Ramp Rate’ 4.0℃/min
昇温後保持時間 ‘Soak Time After Ramp’ 20s(秒)
測定サイクル時間 ‘Time Per Measure’ 10s(秒)
歪み ‘Strain’ 0.025%
オプション ‘Option’
初期温度到達後測定前保持時間 ‘Delay Before Test’ 非設定
自動テンション調整 ‘Auto Tension Adjustment’
自動テンション調整 ‘Auto Tension Adjustment’ 設定
自動テンション方向 ‘Auto Tension Direction’ Compression (圧縮)
初期フォース ‘Initial Static Force’ 204.0g
自動テンション感度 ‘Auto Tension Sensitivity’ 2.0g
自動テンション切り替え ‘Switch Auto Tension to Programmed Extension’
サンプル弾性率設定 ‘When Sample Modulus’ < 3.00e+05Pa
最大自動テンション速度 ‘Max Auto Tension Rate’ 0.01mm/s(mm毎秒)
自動歪み調整 ‘Auto Strain Adjustment’
自動歪み調整 ‘Auto Strain’ 設定
最大歪み ‘Max Applied Strain’ 40.0%
最大許容トルク ‘Max Allowed Torque’ 100.0gf・cm
最小許容トルク ‘Min Allowed Torque’ 0.2gf・cm
歪み調整 ‘Strain Adjustment’ 20.0%
測定終了時設定 ‘End of Test’
温度制御オフ ‘Turn OFF Temp Controller’ No
測定終了後温度設定 ‘Set End of Test Temp’ Yes
測定終了後温度 ‘Set End of Test Temp to’ 40.0℃
モーターオフ ‘Turn OFF Motor’ No
ホールド ‘Turn Hold ON’ Yes
【0235】
2回目昇温測定:40℃まで温度が下がったら、1回目と同じ条件で2回目昇温時の測定を行った。ただし測定終了時の設定は以下の通りとした。1回目の測定が終了したら、自動的に空冷し、40℃になった時点で、ペレット(成型体)を取り出さず、直ぐに2回目昇温時の測定を開始した。
【0236】
測定終了時設定 ‘End of Test’
温度制御オフ ‘Turn OFF Temp Controller’ No
測定終了後温度設定 ‘Set End of Test Temp’ Yes
測定終了後温度 ‘Set End of Test Temp to’ 120.0℃
モーターオフ ‘Turn OFF Motor’ No
ホールド ‘Turn Hold ON’ No
【0237】
1回目昇温測定で得られた損失弾性率(G”)を貯蔵弾性率(G’)で除すことによりtanδ(=G”/G’)を求め、40℃〜80℃の範囲に現れるtanδの極大値TP1(図2参照)を求めた。
同様に、2回目測定の40℃〜80℃の範囲に現れるtanδの極大値TP2(図2参照)を求め、TP2をTP1で除すことにより、TP2/TP1を求めた。
【0238】
実施例と比較例についての、TP1、TP2及び「TP2/TP1」の結果を表2に示す。
更に、以下の基準により、トナーのTP2/TP1について判定を行った。結果を表2に記載する。
【0239】
[「TP2/TP1」の判定基準]
◎:1.79≦TP2/TP1≦2.09
○:1.63≦TP2/TP1≦2.22(但し、◎領域を除く)
△:1.47≦TP2/TP1≦2.35(但し、◎領域と○領域を除く)
×:1.47>TP2/TP1、又は、2.35<TP2/TP1
【0240】
また、市場から入手できる「シェルが形成されている可能性のある公知トナー」について、TP1とTP2を同様に測定し、TP2/TP1と共に、参考例として表3に示す。
【0241】
[BETNとBETFの測定方法と「BETN−BETF」の定義]
BETN及びBETFは以下の様に測定し定義した。
試料調製としての、外添剤の剥離処理は以下の手順で行った。
200mLガラスビーカー中のトナー3.5gに、10mol/L水酸化ナトリウム水溶液60mL及び中性界面活性剤水溶液(和光純薬工業(株)コンタミノンN(R) 3倍希釈)1mLを加え、液面に浮いたトナーを金属スパチュラー等で穏やかにかき混ぜて水溶液と馴染ませた後、30mm回転子を投入して、マグネティックスターラーにて、60分間トナーが液中に分散するに十分な強度で攪拌し、3μm孔径のポリテトラフルオロエチレンメンブレンフィルターで吸引濾過した。
水溶液がロートに残っている間に、中性洗剤希釈水溶液(例えば、ライオン株式会社チャーミーマジカ(R)の20倍希釈水溶液)30mLを濾過中のスラリーに回しかけし、次いで、イオン交換水30mLでスラリーを濯ぎながら1回目の濾過を完了させた。
【0242】
500mLガラスビーカーにフィルター捕集物を回収して、300mLのイオン交換水を加え、30mm回転子を投入して、マグネティックスターラーにて捕集物が液中に分散するに十分な強度で3分間攪拌後、定量濾紙5Aを装着したビフネルロートで吸引濾過した。
濾過終了後、濾紙捕集物に1回目濾過と同じ中性洗剤希釈水溶液30mLを回しかけ、次いで、イオン交換水100mLで濯いだ。
濾紙捕集物を濾紙ごと蒸発皿に入れ、室温(20〜30℃)で15時間自然乾燥し、十分に水分を揮発させて得られた粉体を「外添剤剥離後トナー母粒子」とした。
【0243】
BETNは、外添剤剥離後トナー母粒子を用い、Mountech社製、全自動比表面積測定装置Macsorb HM model−1208を用い、以下の手順で測定した。
サンプル約0.5gをガラスセルに入れ、0.1mgの桁まで精秤した。セルを装置に取り付け、窒素気流中40℃で20分脱気した後、セルを液体窒素に浸した状態で窒素をサンプルに吸着させ、次いで、室温にて吸着窒素を脱離させ、その吸脱着カーブとヘリウム/窒素混合ガスを用いたキャリブレーション、及び、サンプル重量に基づいて、BET法による比表面積を算出し、「BETN(m/g)」とした。
【0244】
BETFは、外添剤剥離後トナー母粒子を用い、フロー式粒子分析装置で測定する以下の手順で求めた。
100mLのガラスビーカー中のトナー0.2gに、20%DBS水溶液を、粉体面を全て覆うように2.0g添加し、粉体が舞わないようにスパチュラーで均一になるまで練った。超音波分散機(AS ONE社製、型式:ULTRASONIC CLEANER VS−150)で分散しながら3分間スパチュラーで更に練った。その後、分散媒として、ベックマンコールター社製、アイソトンIIを25g添加し、スターラーで10分撹拌した。
目開き60μmのふるいで濾過し、超音波分散機で5分間分散させた。泡を除去するために再度ふるいで濾過した。アイソトンIIを用いて5720〜7140個/μLの範囲になるように希釈し、フロー式粒子分析装置(FPIA3000:シスメックス社製)を用いて、HPF分析量0.35μL、HPF検出量2000〜2500個の条件下でHPFモードにより測定した。
【0245】
密度:1、円相当径:D[μm]、円形度:R、として、1≦D≦30かつ0.7≦R≦1.0のデータ個数(n)全ての粒子について、下式を用いて1粒毎の表面積(A)[μm]及び体積(V)[μm]を求めた。この表面積の平均AAVEを、平均質量(WAVE)(今回比重1のため、体積=質量(W)となる)で除すことにより、平均比表面積BETF(m/g)を求めた。
【0246】
表面積(A) :[4π×(D/2)]/R
体積(V) :[4π(D/2)]/3
平均表面積(AAVE):(ΣA)/n
質量(W) :W=V
平均質量(WAVE) :(ΣW)/n
BETF :AAVE/WAVE(m/g)
【0247】
この様にして得られた、BETNからBETFを減ずることにより、「BETN−BETF(m/g)」を求めた。「BETN−BETF(m/g)」を表2に記載する。
【0248】
更に、以下の基準により、トナーの「BETN−BETF」について判定を行った。結果を表2に記載する。
【0249】
[「BETN−BETF」の判定基準]
◎:0.99≦BETN−BETF≦1.45
○:0.77≦BETN−BETF≦1.51(但し、◎領域を除く)
△:0.54≦BETN−BETF≦1.56(但し、◎領域と○領域を除く)
×:0.54>BETN−BETF、又は、1.56<BETN−BETF
【0250】
[Tgの測定と定義]
示差走査熱量計(DSC)によるTg測定は、ティー・エイ・インスツルメント社のQ20を用い、次の通り行った。
トナー3±1mgをアルミニウム製パンに入れて0.1mgの桁まで精秤し、酸化アルミニウム3mgを充填したアルミニウム製パンをリファレンスとして、窒素気流中、0℃から120℃まで10℃/分で昇温した。
120℃にて10分間保持した後、10℃/分で0℃まで降温し、5分間保持した後に10℃/分で再び120℃まで昇温した。
2回目昇温時の吸熱ピーク前のベースラインと、吸熱ピーク開始後30〜55℃に現れる最初の変曲点における接線の交点の温度をTg(ガラス転移温度)とした。
【0251】
この様にして求めたトナーのTgを表2に示す。更に、以下の基準によりトナーのTgについて判定を行った。結果を表2に示す。
【0252】
[Tgの判定基準]
◎:39.5℃≦Tg≦42.1℃
○:38.7℃≦Tg≦43.8℃(但し、◎領域を除く)
△:37.9℃≦Tg≦45.4℃(但し、◎領域と○領域を除く)
×:Tg<37.9℃、又は、45.4<Tg
【0253】
なお、重合一次体粒子、高耐熱樹脂微粒子の試料が水分散体の場合のTgは、凍結乾燥して水分を除去してから上記方法で測定した。
【0254】
[耐ブロッキング性の測定方法と定義]
トナー10gを内径3cm、高さ6cmの円筒形の容器に入れ、20gの荷重をのせ、温度50℃、湿度55%の環境下に48時間放置した後、トナーを容器から取り出し、上から荷重をかけることで凝集の程度を確認した。
その崩壊荷重について表2に記載し、更に、以下の判定基準で判定し、結果を表2に記載した。
【0255】
[耐ブロッキング性の判定基準]
◎:150g以下の荷重で崩れる
○:150gを越え300g以下の荷重で崩れる
△:300gを越え900g以下の荷重で崩れる
×:900gを超える荷重をかけないと崩れない
【0256】
[定着・グロス試験の測定方法]
未定着のトナー像を担持した記録紙(坪量80g/m紙)を用意し、熱ロール定着方式の定着機を用い、以下のように試験した。
【0257】
ローラー直径27mm、ニップ幅9mm、定着速度229mm/secであり、上ローラーにヒーターを有し、ローラー表面がPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)で構成されており、シリコーンオイルは塗布されていない。
【0258】
ローラーの表面温度を、140℃、145℃、150℃の3水準の温度について、各々3回、合計9点の定着・グロス試験を行った。
付着量約0.5mg/cmの未定着のトナー像を担持した記録紙を定着ニップ部に搬送し、定着画像を得た。定着画像にメンディングテープを貼り、その上を2kgの錘を通過させテープと定着画像を密着させた。メンディングテープを剥離し、定着画像がテープに移行する程度を目視で判定し、テープにトナーが移行していないものは、定着評価「○」、テープに画像が移行してしまっているものは定着評価「×」として判定した。更に、定着が「○」であった画像については、NIPPON DENSYOKU社製、グロスメーター(VG2000)を用い、角度75°でグロスを測定した。
定着の判定とグロスの測定値を表2に記載する。
【0259】
更に、9点の測定のうち、定着判定が「○」となったグロス値のみを積算し、表2に記載し、下記判定基準により、定着・グロス判定を行った。判定結果を表2に記載する。
【0260】
[定着・グロス試験の判定基準:定着判定○となったグロス積算値]
◎:110点以上
○:70点以上110点未満
△:30点以上70点未満
×:30点未満
【0261】
[総合評価判定]
上記のように判定した、耐ブロッキング性の判定結果と、定着・グロス試験の判定結果のうち悪い方を取り、「総合評価判定」とし表2に示す。
つまり、耐ブロッキング性の判定結果が「◎」でも、定着・グロス試験の判定結果が「×」の場合は、総合評価判定は「×」とした。
耐ブロッキング性の判定結果が「△」で、定着・グロス試験の判定結果が「◎」の場合は、総合評価判定は「△」とした。
【0262】
【表2】
【0263】
【表3】
【0264】
<結果>
表2から分かるように、実施例1〜9のトナーでは、総合評価判定が「◎」、「○」又は「△」であり、耐ブロッキング性が良好のまま、定着・グロス試験の結果が良好であったが(低温定着性と高グロス性を両立できたが)、比較例1〜6のトナーでは、耐ブロッキング性、又は、定着・グロス試験結果の何れかが劣っていた。
【0265】
<実施例11〜18、比較例11、12>
1ミクロン未満、1ミクロン以上の各粒子の粒子径、平均円形度、重量平均分子量(Mw)、エマルション固形分濃度等は前記と同様に測定した。
【0266】
実施例11
<ワックス分散液A1の調製>
ワックスとしてエステルワックス1(日油株式会社製、品名:WEP−3、カタログ融点73℃、カタログ酸価0.1mgKOH/g、カタログ水酸基価3mgKOH/g以下)30.00部(1440g)、デカグリセリンデカベヘネート(三菱化学フーズ株式会社製、品名:B100D、水酸基価27、融点70℃)0.24部、20%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(以下、「20%DBS水溶液」と略す)1.93部、脱塩水67.83部、を90℃に加熱して、45℃傾斜3段パドル翼を備えたCSTR型撹拌層内で20分混合した。
次いでこの分散液を90℃に加熱したまま、バルブホモジナイザー(ゴーリン社製、15−M−8PA型)を用いて25MPaの加圧条件で循環乳化を開始し、ナノトラックで粒子径を測定し、体積中位径が245nmになるまで分散して、ワックス分散液A1(エマルション固形分濃度=31.2%)を作製した。
【0267】
<ワックス分散液A2の調製>
上記エステルワックス1を22.50部、エステルワックス2(日油株式会社製 品名:WEP−5、カタログ融点82℃、カタログ酸価0.1mgKOH/g、カタログ水酸基価3mgKOH/g以下)7.50部(1080g)、デカグリセリンデカベヘネート0.24部、20%DBS水溶液1.93部、脱塩水67.83部を用いた以外は、ワックス分散液A1と同様の方法で、ワックス分散液A2(エマルション固形分濃度=31.1%)を作製した。
【0268】
<重合体一次粒子分散液B1の調製>
攪拌装置、加熱冷却装置、濃縮装置、及び、各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器に、ワックス分散液A1を34.7部、脱塩水252部、0.5%硫酸鉄(II)7水和物水溶液0.02部を仕込み、攪拌しながら窒素気流下で90℃に昇温した。
その後、攪拌を続けたまま下記のモノマー類・乳化剤溶液の混合物を240分かけて添加した。
このモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を添加開始した時間を重合開始とし、下記の開始剤水溶液を重合開始0分から480分かけて添加した。重合開始240分に下記の硫酸鉄水溶液を添加した。重合開始300分に95℃に昇温した。重合開始540分まで加熱撹拌を継続した。
【0269】
[モノマー類]
スチレン 70.9部
アクリル酸ブチル 29.1部
アクリル酸 0.85部
トリクロロブロモメタン 1.0部
ヘキサンジオールジアクリレート 0.95部
【0270】
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 66.9部
【0271】
[開始剤水溶液]
8%過酸化水素水溶液 28.0部
8%L−(+)アスコルビン酸水溶液 28.0部
【0272】
[硫酸鉄水溶液]
0.5%硫酸鉄(II)7水和物水溶液 0.08部
【0273】
重合反応終了後、冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液B1を得た。ナノトラックを用いて測定した体積中位径は239nmだった。重量平均分子量(Mw)は、67000だった。
【0274】
<高耐熱樹脂微粒子分散液B2の調製>
攪拌装置、加熱冷却装置、濃縮装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器に、ワックス分散液A2を50.7部、20%DBS水溶液3.50部、脱塩水349部を仕込み、攪拌しながら窒素気流下で75℃に昇温した。
下記の開始剤水溶液1を添加して5分後、攪拌を続けたまま下記のモノマー類・乳化剤溶液の混合物を180分かけて添加した。このモノマー類・乳化剤水溶液の混合物の添加開始した時間を重合開始とし、重合開始180分に下記の硫酸鉄水溶液を添加した。重合開始180分に93℃に昇温した。下記の開始剤水溶液2を重合開始240分から60分かけて添加した。下記の開始剤水溶液3を重合開始240分から120分かけて添加した。重合開始480分まで加熱撹拌を継続した。
【0275】
[モノマー類]
スチレン 97.9部
アクリル酸ブチル 2.1部
アクリル酸 1.5部
1−ドデカンチオール 1.0部
【0276】
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 66.7部
【0277】
[開始剤水溶液1]
20%過硫酸アンモニウム水溶液 6.0部
[開始剤水溶液2]
8%過酸化水素水溶液 14.2部
[開始剤水溶液3]
8%L−(+)アスコルビン酸水溶液 21.3部
【0278】
[硫酸鉄水溶液]
0.5%硫酸鉄(II)7水和物水溶液 0.05部
【0279】
重合反応終了後、冷却し、乳白色の高耐熱樹脂微粒子分散液B2を得た。ナノトラックを用いて測定した体積中位径は112nmだった。重量平均分子量(Mw)は41000だった。
【0280】
<トナー母粒子C1の調製>
攪拌装置、加熱冷却装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器に重合体一次粒子分散液B1を89部(固形分)、20%DBS水溶液0.27部(固形分)、脱イオン水33部、5%硫酸鉄(II)七水和物水溶液0.52部(固形分)、シアン着色剤EP−700(大日精化(株)製)18部、脱イオン水41部を撹拌しながら順に添加した。
260分かけて内温45℃まで昇温した。ここでマルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定したところ、5.2μmであった。重合体一次粒子分散液B1を9.8部(固形分)追加した。
【0281】
30分後、高耐熱樹脂微粒子分散液B2を4.0部(固形分)追加した。90分後、20%DBS水溶液4.1部(固形分)と脱イオン水23部を添加してから、60分かけて69℃まで昇温し、45分保持した。その後30℃まで冷却した。
【0282】
得られた分散液を抜き出し、5種C(東洋濾紙(株)社製、No.5C)の濾紙を用いてアスピレーターにより吸引濾過した。濾紙上に残ったケーキを、攪拌機(プロペラ翼)を備えたステンレス容器に移し、電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水を加え攪拌することにより均一に分散させ、その後30分間攪拌した。この工程をろ液の電気伝導度が2μS/cmになるまで繰り返した後、得られたケーキを40℃に設定された送風乾燥機内で48時間乾燥することにより、トナー母粒子C1を得た。
【0283】
<トナーD1の製造>
トナー母粒子C1(100部)に対し、ポリマー/シリカ複合体粒子(ATLAS100:キャボット社製:シリカ/ポリマー比=70/30、真比重=1.7g/cm、オクタヒドロペンタレン含有)を4部、チタニアとシリカ複合酸化物粒子(STX501:日本アエロジル(株)社製)を0.5部、小粒径シリカ(RY200L:日本アエロジル(株)社製)を0.4部添加し、ヘンシェルミキサーにて3000rpmで15分間攪拌・混合して篩別することによりトナーD1を得た。
【0284】
実施例12〜18、比較例11、12
実施例11において、高耐熱樹脂微粒子調製時に反応器に仕込む20%DBS水溶液の部数と得られた高耐熱樹脂微粒子の粒径、及び被覆率を表4に示す組成に変更することを除いて、実施例1と同様にしてトナーを製造した。得られたトナーの各種物性を表4に示す。
【0285】
実施例11〜18及び比較例11、12で得られたトナーを用いて、以下の方法で評価した。
【0286】
[耐ブロッキング性の測定方法と定義]
耐ブロッキング性の測定方法と定義は、前記した測定方法と定義と同様である。
【0287】
[耐ブロッキング性の判定基準]
耐ブロッキング性の判定基準は前記した判定基準と同様である。
【0288】
[定着性の測定方法]
未定着のトナー像を担持した記録紙(坪量80g/m紙)を用意し、熱ロール定着方式の定着機を用い、以下のように試験した。
【0289】
ローラー直径27mm、ニップ幅9mm、定着速度229mm/secであり、上ローラーにヒーターを有し、ローラー表面がPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)で構成されており、シリコーンオイルは塗布されていない。
【0290】
ローラーの表面温度を135℃から5℃刻みで昇温し、付着量約0.5mg/cmの未定着のトナー像を担持した記録紙を定着ニップ部に搬送し、定着画像を得た。
定着画像にメンディングテープを貼り、その上を2kgの錘を通過させテープと定着画像を密着させた。メンディングテープを剥離し、定着画像がテープに移行する程度を目視で判定した。3回試験の平均値で以下の判定を行った。
【0291】
[定着性の判定基準]
◎:145℃以下で定着する
○:145℃より上、150℃以下で定着する
×:150℃で定着しない
【0292】
【表4】
【0293】
<結果>
表4から分かるように、実施例11〜18のトナーでは、定着性と耐ブロッキング性の両立が達成されていたが、比較例11、12のトナーでは、定着性と耐ブロッキング性の両立が達成されず、定着性と耐ブロッキング性の何れかが劣っていた。
【0294】
<実施例21〜24、参考例21、22>
1ミクロン未満、1ミクロン以上の各粒子の粒子径、平均円形度、重量平均分子量(Mw)、エマルション固形分濃度等は前記と同様に測定した。
【0295】
実施例21
<ワックス分散液A1の調製>
ワックスとしてエステルワックス1(日油株式会社製、品名:WEP−3、DSC2回目測定融点ピーク:71.0℃、DSC2回目測定オンセット温度:68.6℃、DSC2回目測定変曲点:69.9℃、カタログ酸価0.1mgKOH/g、カタログ水酸基価3mgKOH/g以下)30.00部(1440g)、デカグリセリンデカベヘネート(三菱化学フーズ株式会社製、品名:B100D、水酸基価27、融点70℃)0.24部、20%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(以下、「20%DBS水溶液」と略す)1.93部、脱塩水67.83部を90℃に加熱して、45℃傾斜3段パドル翼を備えたCSTR型撹拌層内で20分混合した。
【0296】
次いで、この分散液を90℃に加熱したまま、バルブホモジナイザー(ゴーリン社製、15−M−8PA型)を用いて25MPaの加圧条件で循環乳化を開始し、ナノトラックで粒子径を測定し、体積中位径が245nmになるまで分散して、ワックス分散液A1(エマルション固形分濃度=31.2%)を作製した。
【0297】
<ワックス分散液A2の調製>
上記エステルワックス1を22.50部、エステルワックス2(日油株式会社製 品名:WEP−5、カタログ融点82℃、カタログ酸価0.1mgKOH/g、カタログ水酸基価3mgKOH/g以下)7.50部、(1080g)、デカグリセリンデカベヘネート0.24部、20%DBS水溶液1.93部、脱塩水67.83部を用いた以外は、ワックス分散液A1と同様の方法で、ワックス分散液A2(エマルション固形分濃度=31.4%)を作製した。
【0298】
<重合体一次粒子分散液B1の調製>
攪拌装置、加熱冷却装置、濃縮装置、及び、各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器にワックス分散液A1を34.7部、脱塩水252部、0.5%硫酸鉄(II)7水和物水溶液0.02部を仕込み、攪拌しながら窒素気流下で90℃に昇温した。
その後、攪拌を続けたまま下記のモノマー類・乳化剤溶液の混合物を240分かけて添加した。
このモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を添加開始した時間を重合開始とし、下記の開始剤水溶液を重合開始0分から480分かけて添加した。重合開始240分に下記の硫酸鉄水溶液を添加した。重合開始300分に95℃に昇温した。重合開始540分まで加熱撹拌を継続した。
【0299】
[モノマー類]
スチレン 70.9部
アクリル酸ブチル 29.1部
アクリル酸 0.85部
トリクロロブロモメタン 1.0部
ヘキサンジオールジアクリレート 0.95部
【0300】
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 66.9部
【0301】
[開始剤水溶液]
8%過酸化水素水溶液 28.0部
8%L−(+)アスコルビン酸水溶液 28.0部
【0302】
[硫酸鉄水溶液]
0.5%硫酸鉄(II)7水和物水溶液 0.08部
【0303】
重合反応終了後、冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液B1を得た。ナノトラックを用いて測定した体積中位径は239nmだった。重量平均分子量(Mw)は、67000だった。
【0304】
<高耐熱樹脂微粒子分散液B3の調製>
攪拌装置、加熱冷却装置、濃縮装置、及び、各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器に、ワックス分散液A2を50.6部、20%DBS水溶液2.96部、脱塩水350部を仕込み、攪拌しながら窒素気流下で75℃に昇温した。
下記の開始剤水溶液1を添加して5分後、攪拌を続けたまま下記のモノマー類・乳化剤溶液の混合物を180分かけて添加した。このモノマー類・乳化剤水溶液の混合物の添加開始した時間を重合開始とし、重合開始180分に下記の硫酸鉄水溶液を添加した。重合開始180分に93℃に昇温した。下記の開始剤水溶液2を重合開始240分から60分かけて添加した。下記の開始剤水溶液3を重合開始240分から120分かけて添加した。重合開始480分まで加熱撹拌を継続した。
【0305】
[モノマー類]
スチレン 97.9部
アクリル酸ブチル 2.1部
アクリル酸 1.5部
1−ドデカンチオール 1.0部
【0306】
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 66.7部
【0307】
[開始剤水溶液1]
20%過硫酸アンモニウム水溶液 6.0部
[開始剤水溶液2]
8%過酸化水素水溶液 14.2部
[開始剤水溶液3]
8%L−(+)アスコルビン酸水溶液 21.3部
【0308】
[硫酸鉄水溶液]
0.5%硫酸鉄(II)7水和物水溶液 0.05部
【0309】
重合反応終了後冷却し、乳白色の高耐熱樹脂微粒子分散液B3を得た。ナノトラックを用いて測定した中位径(D50)は158nmだった。重量平均分子量(Mw)は59000だった。
【0310】
<トナー母粒子C2の調製>
攪拌装置、加熱冷却装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器に、重合体一次粒子分散液B1を87部(固形分)、20%DBS水溶液0.07部(固形分)、脱イオン水74部、5%硫酸鉄(II)七水和物水溶液0.52部、シアン着色剤EP−700(大日精化(株)製)18部を撹拌しながら順に添加して均一に混合した後、0.5%硫酸アルミニウム水溶液0.10部(固形分)を15分かけて、脱イオン水41部を5分かけて添加した。
更に210分かけて内温44℃まで昇温した。ここでマルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定したところ、5.2μmであった。重合体一次粒子分散液B1を9.7部(固形分)追加した。
【0311】
180分後、高耐熱樹脂微粒子分散液B3を5.6部(固形分)追加した。90分後、20%DBS水溶液4.0部(固形分)と脱イオン水23部を添加してから、60分かけて70℃まで昇温し、75分保持し、その後30℃まで冷却した。
【0312】
得られた分散液を抜き出し、5種C(東洋濾紙(株)社製、No.5C)の濾紙を用いてアスピレーターにより吸引濾過した。濾紙上に残ったケーキを、攪拌機(プロペラ翼)を備えたステンレス容器に移し、電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水を加え攪拌することにより均一に分散させ、その後30分間攪拌した。この工程を、ろ液の電気伝導度が2μS/cmになるまで繰り返した後、得られたケーキを40℃に設定された送風乾燥機内で48時間乾燥することにより、トナー母粒子C2を得た。
【0313】
<トナーD2の製造>
トナー母粒子C2(100部)に対し、ポリマー/シリカ複合体粒子(ATLAS100:キャボット社製:シリカ/ポリマー比=70/30、真比重=1.7g/cm、オクタヒドロペンタレン含有)を4部、チタニアとシリカ複合酸化物粒子(STX501:日本アエロジル(株)社製)を0.5部、小粒径シリカ(RY200L:日本アエロジル(株)社製)を0.4部添加し、ヘンシェルミキサーにて、3000rpmで15分間攪拌・混合して篩別することによりトナーD2を得た。
【0314】
実施例22〜24及び参考例21、22
実施例21において、スチレン/ブチルアクリレート比率を表5に示す組成に変更することを除いて、実施例21と同様にして、実施例22〜24及び参考例21、22に対応して、トナーD3ないしD7を製造した。
得られたトナーの各種物性を表5に示す。
【0315】
実施例21〜24及び参考例21、22で得られたそれぞれのトナーを用いて、以下の方法で評価し、以下の基準で判定した。
【0316】
[耐ブロッキング性の測定方法と定義]
耐ブロッキング性の測定方法と定義は、前記した測定方法と定義と同様である。
【0317】
[耐ブロッキング性の判定基準]
◎:150g以下の荷重で崩れる
○:150gを越え300g以下の荷重で崩れる
△:300gを越える荷重をかけないと崩れない
【0318】
[定着性の測定方法]
定着性の測定方法は、前記した測定方法と同様である。
【0319】
[定着性の判定基準]
◎:150℃未満で定着する
○:150℃で定着する
△:150℃越えで定着する
【0320】
【表5】
【0321】
<結果>
表5から分かるように、実施例21〜24のトナーでは、極めて良好に耐ブロッキング性と定着性の両立が達成されていた。
【0322】
<実施例31〜41>
1ミクロン未満、1ミクロン以上の各粒子の粒子径、平均円形度、重量平均分子量(Mw)、エマルション固形分濃度等は前記と同様に測定した。
【0323】
実施例31
<ワックス分散液A1の調製>
ワックスとしてエステルワックス1(日油株式会社製、品名:WEP−3、DSC2回目測定融点ピーク:71.0℃、DSC2回目測定オンセット温度:68.6℃、DSC2回目測定変曲点:69.9℃、カタログ酸価0.1mgKOH/g、カタログ水酸基価3mgKOH/g以下)30.00部(1440g)、デカグリセリンデカベヘネート(三菱化学フーズ株式会社製、品名:B100D、水酸基価27、融点70℃)0.24部、20%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(以下、「20%DBS水溶液」と略す)1.93部、脱塩水67.83部、を90℃に加熱して、45℃傾斜3段パドル翼を備えたCSTR型撹拌層内で20分混合した。
【0324】
次いで、この分散液を90℃に加熱したまま、バルブホモジナイザー(ゴーリン社製、15−M−8PA型)を用いて25MPaの加圧条件で循環乳化を開始し、ナノトラックで粒子径を測定し、体積中位径が245nmになるまで分散して、ワックス分散液A1(エマルション固形分濃度=31.2%)を作製した。
【0325】
<ワックス分散液A2の調製>
上記エステルワックス1を22.50部、エステルワックス2(日油株式会社製 品名:WEP−5、カタログ融点82℃、カタログ酸価0.1mgKOH/g、カタログ水酸基価3mgKOH/g以下)7.50部、(1080g)、デカグリセリンデカベヘネート0.24部、20%DBS水溶液1.93部、脱塩水67.83部を用いた以外は、ワックス分散液A1と同様の方法で、ワックス分散液A2(エマルション固形分濃度=31.4%)を作製した。
【0326】
<重合体一次粒子分散液B1の調製>
攪拌装置、加熱冷却装置、濃縮装置、及び、各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器にワックス分散液A1を34.7部、脱塩水252部、0.5%硫酸鉄(II)7水和物水溶液0.02部を仕込み、攪拌しながら窒素気流下で90℃に昇温した。
その後、攪拌を続けたまま下記のモノマー類・乳化剤溶液の混合物を240分かけて添加した。
このモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を添加開始した時間を重合開始とし、下記の開始剤水溶液を重合開始0分から480分かけて添加した。重合開始240分に下記の硫酸鉄水溶液を添加した。重合開始300分に95℃に昇温した。重合開始540分まで加熱撹拌を継続した。
【0327】
[モノマー類]
スチレン 70.9部
アクリル酸ブチル 29.1部
アクリル酸 0.85部
トリクロロブロモメタン 1.0部
ヘキサンジオールジアクリレート 0.95部
【0328】
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 66.9部
【0329】
[開始剤水溶液]
8%過酸化水素水溶液 28.0部
8%L−(+)アスコルビン酸水溶液 28.0部
【0330】
[硫酸鉄水溶液]
0.5%硫酸鉄(II)7水和物水溶液 0.08部
【0331】
重合反応終了後、冷却し、乳白色の重合体一次粒子分散液B1を得た。ナノトラックを用いて測定した体積中位径は239nmだった。重量平均分子量(Mw)は、67000だった。
【0332】
<高耐熱樹脂微粒子分散液B3の調製>
攪拌装置、加熱冷却装置、濃縮装置、及び、各原料・助剤仕込み装置を備えた反応器に、ワックス分散液A2を50.6部、20%DBS水溶液2.96部、脱塩水350部を仕込み、攪拌しながら窒素気流下で75℃に昇温した。
下記の開始剤水溶液1を添加して5分後、攪拌を続けたまま下記のモノマー類・乳化剤溶液の混合物を180分かけて添加した。このモノマー類・乳化剤水溶液の混合物の添加開始した時間を重合開始とし、重合開始180分に下記の硫酸鉄水溶液を添加した。重合開始180分に93℃に昇温した。下記の開始剤水溶液2を重合開始240分から60分かけて添加した。下記の開始剤水溶液3を重合開始240分から120分かけて添加した。重合開始480分まで加熱撹拌を継続した。
【0333】
[モノマー類]
スチレン 97.9部
アクリル酸ブチル 2.1部
アクリル酸 1.5部
1−ドデカンチオール 1.0部
【0334】
[乳化剤水溶液]
20%DBS水溶液 1.0部
脱塩水 66.7部
【0335】
[開始剤水溶液1]
20%過硫酸アンモニウム水溶液 6.0部
[開始剤水溶液2]
8%過酸化水素水溶液 14.2部
[開始剤水溶液3]
8%L−(+)アスコルビン酸水溶液 21.3部
【0336】
[硫酸鉄水溶液]
0.5%硫酸鉄(II)7水和物水溶液 0.05部
【0337】
重合反応終了後冷却し、乳白色の高耐熱樹脂微粒子分散液B3を得た。ナノトラックを用いて測定した体積中位径は158nmだった。重量平均分子量(Mw)は59000だった。
【0338】
<トナー母粒子C3の調製>
攪拌装置、加熱冷却装置、及び各原料・助剤仕込み装置を備えた混合器に、重合体一次粒子分散液B1を87部(固形分)、20%DBS水溶液0.07部(固形分)、脱イオン水74部、5%硫酸鉄(II)七水和物水溶液0.52部、シアン着色剤EP−700(大日精化(株)製)18部を撹拌しながら順に添加して均一に混合した後、0.5%硫酸アルミニウム水溶液0.10部(固形分)を15分かけて、脱イオン水41部を5分かけて添加した。
更に210分かけて内温44℃まで昇温した。ここでマルチサイザーを用いて体積中位径(Dv50)を測定したところ、5.2μmであった。重合体一次粒子分散液B1を9.7部(固形分)追加した。
【0339】
180分後、高耐熱樹脂微粒子分散液B3を5.6部(固形分)追加した。90分後、20%DBS水溶液4.0部(固形分)と脱イオン水23部を添加してから、60分かけて70℃まで昇温し、75分保持し、その後30℃まで冷却した。
【0340】
得られた分散液を抜き出し、5種C(東洋濾紙(株)社製、No.5C)の濾紙を用いてアスピレーターにより吸引濾過した。濾紙上に残ったケーキを、攪拌機(プロペラ翼)を備えたステンレス容器に移し、電気伝導度が1μS/cmのイオン交換水を加え攪拌することにより均一に分散させ、その後30分間攪拌した。この工程を、ろ液の電気伝導度が2μS/cmになるまで繰り返した後、得られたケーキを40℃に設定された送風乾燥機内で48時間乾燥することにより、トナー母粒子C3を得た。
【0341】
<トナーD8の製造>
トナー母粒子C3(100部)に対し、ポリマー/シリカ複合体粒子(ATLAS100:キャボット社製:シリカ/ポリマー比=70/30、真比重=1.7g/cm、オクタヒドロペンタレン含有)を4部、チタニアとシリカ複合酸化物粒子(STX501:日本アエロジル(株)社製)を0.5部、小粒径シリカ(RY200L:日本アエロジル(株)社製)を0.4部添加し、ヘンシェルミキサーにて、3000rpmで15分間攪拌・混合して篩別することによりトナーD8を得た。
【0342】
実施例32〜41
実施例31において、スチレン/ブチルアクリレート比率、樹脂/ワックス比率、ワックス種類、ワックス比率を、表6に示す組成に変更することを除いて、実施例31と同様にして、実施例32〜41に対応して、トナーD9ないしD18を製造した。
【0343】
ワックスの物性は以下の通りである。
WEP−2:日油株式会社製、カタログ融点60℃、DSC2回目測定融点ピーク:59.1℃、DSC2回目測定オンセット温度:57.4℃、DSC2回目測定変曲点:58.4℃、カタログ酸価0.1mgKOH/g、カタログ水酸基価3mgKOH/g以下
WEP−6:日油株式会社製、カタログ融点77℃、カタログ酸価0.1mgKOH/g、カタログ水酸基価3mgKOH/g以下
WE−11:日油株式会社製、融点68℃、DSC2回目測定融点ピーク:66.5℃、DSC2回目測定オンセット温度:64.8℃、DSC2回目測定変曲点:65.6℃
【0344】
得られたトナーの各種物性を表6に示す。
【0345】
実施例31〜41で得られたトナーを用いて、以下の方法で評価し、以下の基準で判定した。
【0346】
[耐ブロッキング性の測定方法と定義]
耐ブロッキング性の測定方法と定義は、前記した測定方法と定義と同様である。
【0347】
[耐ブロッキング性の判定基準]
◎:150g以下の荷重で崩れる
○:150gを超え900g以下の荷重で崩れる
△:900gを超え1500g以下の荷重で崩れる
×:1500gを超える荷重をかけないと崩れない
【0348】
[定着性の測定方法]
定着性の測定方法は、前記した測定方法と同様である。
【0349】
[定着性の判定基準]
◎:145℃以下で定着する
△:145℃より上、150℃以下で定着する
×:150℃で定着しない
【0350】
【表6】
【0351】
<結果>
表6から分かるように、実施例31〜41のトナーでは、耐ブロッキング性と定着性の両立が達成されていた。
【産業上の利用可能性】
【0352】
本発明のパラメーターを有する静電荷像現像用トナーは、耐ブロッキング性が良好のまま、低温定着性と高グロス性を両立できるので、プリンター、複写機、ファクシミリ等、静電荷像を可視化する画像形成の分野に広く利用されることは勿論、高光沢性や高グロス性が要求され、写真・グラフィック等の画像を美しく出力することが必要なプロフェッショナル分野にも広く利用されるものである。
また、更に、本発明の測定値を有する静電荷像現像用トナーは、低温定着性と耐ブロッキング性を両立できるので、プリンター、複写機、ファクシミリ等、静電荷像を可視化する画像形成の分野に広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0353】
1 高耐熱樹脂微粒子と外添剤からなる構造体(不連続部分があってもよい)
2 コア成分(トナーの中心部を構成する成分)
3 1回目測定のtanδ曲線とTP1
4 2回目測定のtanδ曲線とTP2
41 [G’1st]のグラフ
42 [G’2nd]のグラフ
43 [G’1st]/[G’2nd]のグラフ
43’ [G’1st]/[G’2nd]MAX
48 [発熱最大ピーク温度Td]
A 薄膜化した高耐熱樹脂微粒子成分が多いトナー表面の凸部
B 薄膜化した高耐熱樹脂微粒子成分が少ないトナー表面の凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8