(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
<シクロペンテン開環共重合体>
本発明のシクロペンテン開環共重合体は、シクロペンテンと、3環以上のノルボルネン化合物とを開環共重合することにより得られ、シクロペンテン由来の構造単位と、3環以上のノルボルネン化合物由来の構造単位とを含むシクロペンテン開環共重合体であって、シクロペンテン開環共重合体中の全繰り返し構造単位に対する、3環以上のノルボルネン化合物由来の構造単位の含有割合が40〜80重量%の範囲にあるものである。
【0015】
本発明で用いる3環以上のノルボルネン化合物としては、ノルボルネン環を含む、3環以上の環構造を有するものであればよく、特に限定されないが、3〜6個の環構造を有するものが好ましく、3〜4の環構造を有するものがより好ましい。
【0016】
なお、本発明者等の知見によれば、ノルボルネン化合物として、環構造が2個のもの(例えば、2−ノルボルネン)を使用した場合には、破断強度および耐摩耗性の向上効果が小さく、また、破断強度および耐摩耗性を向上させるために、その含有割合を増加させると、ポリマームーニー粘度が高くなることから加工性に劣り、また、共重合体中の二重結合が多くなることから共重合体が酸化劣化しやすくなってしまう。これに対し、3環以上のノルボルネン化合物を用い、かつ、3環以上のノルボルネン化合物由来の構造単位の含有割合を40〜80重量%とすることで、シクロペンテンにノルボルネン化合物を共重合することにより得られるウエットグリップ性および低発熱性の向上効果に加えて、破断強度および耐摩耗性を効果的に向上させることができるものである。
【0017】
3環以上のノルボルネン化合物としては、ノルボルネン環とノルボルネン環と縮合している環とを含む化合物をいい、ノルボルネン環と縮合しているヘテロ環を有するノルボルネン化合物、およびノルボルネン環と炭化水素環との縮合環を有するノルボルネン化合物などが挙げられるが、これらのなかでも、本発明の作用効果をより一層顕著なものとすることができることから、ノルボルネン環と炭化水素環との縮合環を有するノルボルネン化合物が好ましい。
【0018】
ノルボルネン環と縮合しているヘテロ環を有するノルボルネン化合物としては、たとえば、ノルボルネン−5,6−ジカルボン酸無水物、ノルボルネン−5,6−ジカルボン酸イミドなどが挙げられる。
【0019】
ノルボルネン環と炭化水素環との縮合環を有するノルボルネン化合物としては、たとえば、下記一般式(1)または下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【化3】
(上記一般式(1)中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基;または、ケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基;を表し、R
1とR
2とは互いに結合して環を形成していてもよい。R
3は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の二価の炭化水素基を表す。)
【化4】
(上記一般式(2)中、R
4〜R
7はそれぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基;または、ケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基;を表し、R
4とR
6、もしくはR
4とR
5および/またはR
6とR
7とは互いに結合して環を形成していてもよい。nは1または2である。)
【0020】
上記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカ−8−エン、テトラシクロ[9.2.1.0
2,10.0
3,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレンともいう)、テトラシクロ[10.2.1.0
2,11.0
4,9]ペンタデカ−4,6,8,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9,9a,10−ヘキサヒドロアントラセンともいう)などの炭化水素環が縮合したビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン類が挙げられる。
【0021】
上記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−メチルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−エチルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−シクロヘキシルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−シクロペンチルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−メチレンテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−エチリデンテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−ビニルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−プロペニルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−シクロヘキセニルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−シクロペンテニルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、9−フェニルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エンなどの無置換または炭化水素置換基を有するテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン類;
テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸メチル、4−メチルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸メチルなどのアルコキシカルボニル基を有するテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン類;
テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸無水物などのヒドロキシカルボニル基または酸無水物基を有するテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン類;
【0022】
テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン−4−メタノール、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン−9−オールなどのヒドロキシル基を有するテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン類;
テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン−4−カルバルデヒドなどのヒドロカルボニル基を有するテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン類;
酢酸9−テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エニル、アクリル酸9−テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エニル、メタクリル酸9−テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エニルなどのカルボニルオキシ基を有するテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン類;
テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン−4−カルボニトリル、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン−4−力ルボキサミド、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸イミドなどの窒素原子を含む官能基を有するテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン類;
9−クロロテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エンなどのハロゲン原子を有するテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン類;
4−トリメトキシシリルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン、4−トリエトキシシリルテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エンなどのケイ素原子を含む官能基を有するテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン類;などが挙げられる。
【0023】
これらの3環以上のノルボルネン化合物は、1種類を単独で使用しても2種類以上を組合せて用いてもよい。3環以上のノルボルネン化合物としては、上記一般式(1)で表される化合物、および無置換または炭化水素置換基を有するテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン類が好ましく、ジシクロペンタジエン、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレン、およびテトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エンがより好ましく、本発明の効果がより得られやすいという観点より、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレンが特に好ましい。
【0024】
本発明のシクロペンテン開環共重合体中における、全繰り返し構造単位に対する、3環以上のノルボルネン化合物由来の構造単位の含有割合は、40〜80重量%であり、好ましくは40〜70重量%、より好ましくは40〜60重量%である。3環以上のノルボルネン化合物由来の構造単位の含有割合が低すぎると、得られるゴム架橋物が破断強度に劣るものとなってしまい、一方、多すぎると、ポリマームーニー粘度が高くなり過ぎてしまい、加工性に劣るものとなってしまう。
【0025】
本発明のシクロペンテン開環共重合体中における、全繰り返し構造単位に対する、シクロペンテン由来の構造単位の含有割合は、好ましくは20〜60重量%であり、より好ましくは30〜60重量%、さらに好ましくは40〜60重量%である。
【0026】
また、本発明のシクロペンテン開環共重合体は、シクロペンテン、および3環以上のノルボルネン化合物に加えて、これらと共重合可能な他の単量体を共重合したものであってもよい。このような他の単量体としては、シクロペンテン以外のモノ環状オレフィン、モノ環状ジエン、モノ環状トリエンなどが挙げられる。シクロペンテン以外のモノ環状オレフィンとしては、シクロオクテンが例示される。モノ環状ジエンとしては、1,5−シクロオクタジエンが例示される。モノ環状トリエンとしては、1,5,9−シクロドデカトリエンが例示される。本発明のシクロペンテン開環共重合体中における、全繰り返し構造単位に対する、他の単量体由来の構造単位の含有割合は、好ましくは40重量%以下であり、より好ましくは30重量%以下であり、本発明においては、他の単量体由来の構造単位が実質的に含まれていないものであることが特に好ましい。
【0027】
本発明のシクロペンテン開環共重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)の値として、好ましくは10,000〜1,000,000であり、より好ましくは50,000〜500,0000、さらに好ましくは80,000〜400,000である。重量平均分子量(Mw)を上記範囲とすることで、ゴム特性を十分なものとしながら、製造および取扱いが良好なものとすることができるため、好ましい。また、本発明のシクロペンテン開環共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される、ポリスチレン換算の、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは1.0〜5.0、より好ましくは1.5〜2.5である。
【0028】
本発明のシクロペンテン開環共重合体は、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは−80〜0℃であり、より好ましくは−60〜0℃、さらに好ましくは−50〜−5℃である。ガラス転移温度(Tg)を上記範囲とすることにより、本発明のシクロペンテン開環共重合体を用いて得られるゴム架橋物を、破断強度および耐摩耗性に優れたものとすることができる。なお、シクロペンテン開環共重合体のガラス転移温度は、たとえば、使用する3環以上のノルボルネン化合物の種類および使用量を調整することにより、制御することができる。
【0029】
また、本発明のシクロペンテン開環共重合体は、シクロペンテン開環共重合体全体に対する、芳香環の含有量が、0〜40重量%であることが好ましく、0〜30重量%であることがより好ましく、10〜25重量%であることがさらに好ましい。シクロペンテン開環共重合体中の芳香環の含有量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物を、破断強度および耐摩耗性により優れたものとすることができる。なお、本発明において、芳香環の含有量は、シクロペンテン開環共重合体中に含まれる芳香環を重量割合で示したものであり、たとえば、「全繰り返し構造単位に対する、芳香環を含有する構造単位の重量割合」と、「芳香環を含有する構造単位中における、芳香環の重量割合」とに基づいて、たとえば、下記式にしたがって、求めることができる。
芳香環の含有量(%)=「全繰り返し構造単位に対する、芳香環を含有する構造単位の重量割合」(%)×「芳香環を含有する構造単位中における、芳香環の重量割合」(%)
【0030】
また、本発明のシクロペンテン開環共重合体は、重合体鎖末端に変性基を有するものであることが好ましい。このような末端変性基を有することで、シリカに対する親和性をより高めることができ、これにより、シリカを配合した際における、ゴム組成物中のシリカの分散性を高めることができ、結果として、ゴム架橋物とした場合における破断強度および耐摩耗性をより高めることができる。重合体鎖末端に導入する変性基としては、特に限定されないが、周期表第15族の原子、周期表第16族の原子、およびケイ素原子からなる群から選ばれる原子を含有する変性基であることが好ましい。
【0031】
末端変性基を形成するための変性基としては、シリカに対する親和性を高めることができ、これにより、ゴム架橋物とした場合における、破断強度および耐摩耗性をより良好なものとすることができるという観点より、窒素原子、酸素原子、リン原子、イオウ原子、およびケイ素原子からなる群から選ばれる原子を含有する変性基がより好ましく、これらのなかでも、窒素原子、酸素原子、およびケイ素原子からなる群から選ばれる原子を含有する変性基がさらに好ましい。
【0032】
窒素原子を含有する変性基としては、アミノ基、ピリジル基、イミノ基、アミド基、ニトロ基、ウレタン結合基、またはこれらの基を含む炭化水素基が例示される。酸素原子を含有する変性基としては、水酸基、カルボン酸基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、アルデヒド基、エポキシ基、またはこれらの基を含む炭化水素基が例示される。ケイ素原子を含有する変性基としては、アルキルシリル基、オキシシリル基、またはこれらの基を含む炭化水素基が例示される。リン原子を含有する変性基としては、リン酸基、ホスフィノ基、またはこれらの基を含む炭化水素基が例示される。イオウ原子を含有する変性基としては、スルホニル基、チオール基、チオエーテル基、またはこれらの基を含む炭化水素基が例示される。また、変性基としては、上記した基を複数含有する変性基であってもよい。これらのなかでも、ゴム架橋物とした場合における、破断強度および耐摩耗性をより向上させことができるという観点から特に好適な変性基の具体例としては、アミノ基、ピリジル基、イミノ基、アミド基、水酸基、カルボン酸基、アルデヒド基、エポキシ基、オキシシリル基、またはこれらの基を含む炭化水素基が挙げられ、シリカに対する親和性の観点より、オキシシリル基が特に好ましい。なお、オキシシリル基とは、ケイ素−酸素結合を有する基をいう。
【0033】
オキシシリル基の具体例としては、アルコキシシリル基、アリーロキシシリル基、アシロキシ基、アルキルシロキシシリル基、またはアリールシロキシシリル基などが挙げられる。また、アルコキシシリル基またはアリーロキシシリル基、アシロキシ基を加水分解してなるヒドロキシシリル基を挙げることができる。これらのなかでも、シリカに対する親和性の観点より、アルコキシシリル基が好ましい。
【0034】
アルコキシシリル基は、1つ以上のアルコキシ基がケイ素原子と結合してなる基であり、その具体例としては、トリメトキシシリル基、(ジメトキシ)(メチル)シリル基、(メトキシ)(ジメチル)シリル基、(メトキシ)(ジクロロ)シリル基、トリエトキシシリル基、(ジエトキシ)(メチル)シリル基、(エトキシ)(ジメチル)シリル基、(ジメトキシ)(エトキシ)シリル基、(メトキシ)(ジエトキシ)シリル基、トリプロポキシシリル基などが挙げられる。
【0035】
本発明のシクロペンテン開環共重合体の重合体鎖末端における、変性基の導入割合は、特に限定されないが、変性基が導入されたシクロペンテン開環共重合体鎖末端数/シクロペンテン開環共重合体鎖末端全数の百分率の値として、10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上、特に好ましくは40%以上である。末端変性基の導入割合が高いほど、タイヤ用のゴム材料とする際に用いられる充填剤としてのシリカとの親和性が高く、これにより、低発熱性の向上効果が高くなるため、好ましい。なお、重合体鎖末端への変性基の導入割合を測定する方法としては、特に限定されないが、末端変性基として、オキシシリル基を導入する場合を例示すると、
1H−NMRスペクトル測定により求められるオキシシリル基に対応するピーク面積比と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィから求められる数平均分子量とから求めることができる。
【0036】
本発明のシクロペンテン開環共重合体のムーニー粘度(ML
1+4,100℃)は、好ましくは20〜150、より好ましくは22〜120、さらに好ましくは25〜90である。ムーニー粘度を上記範囲とすることにより、常温および高温での混練を容易なものとすることができ、これにより加工性を良好なものとすることができる。
【0037】
<シクロペンテン開環共重合体の製造方法>
本発明のシクロペンテン開環共重合体を製造する方法は特に限定されないが、たとえば、シクロペンテンと、3環以上のノルボルネン化合物とを、開環重合触媒の存在下で共重合させる方法が挙げられる。
【0038】
開環重合触媒は、シクロペンテンと、3環以上のノルボルネン化合物とを、開環共重合できるものである限りにおいて特に限定されないが、たとえば、タングステン化合物、モリブデン化合物、ルテニウムカルベン錯体を挙げることができる。
【0039】
タングステン化合物の具体例としては、タングステンヘキサクロリド、タングステンオキソテトラクロリド、タングステン(フェニルイミド)テトラクロリド、モノカテコラートタングステンテトラクロリド、ビス(3,5−ジターシャリブチル)カテコラートタングステンジクロリド、ビス(2−クロロエテレート)テトラクロリド、タングステンオキソテトラフェノレートが挙げられる。
モリブデン化合物の具体例としては、モリブデンペンタクロリド、モリブデンオキソテトラクロリド、モリブデン(フェニルイミド)テトラクロリドが挙げられる。
【0040】
ルテニウムカルベン錯体の具体例としては、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)−3,3−ジフェニルプロペニリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)t−ブチルビニリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)エトキシメチリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)エトキシメチリデンルテニウムジクロリドが挙げられる。開環重合触媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。
【0041】
開環重合触媒の使用量は、(開環重合触媒:共重合に用いる単量体)のモル比で、通常1:500〜1:2,000,000、好ましくは1:700〜1:1,500,000、より好ましくは1:1,000〜1:1,000,000の範囲である。
【0042】
タングステン化合物やモリブデン化合物を開環重合触媒として用いる場合には、助触媒として、有機金属化合物を組み合わせて使用してもよい。有機金属化合物としては、炭素数1〜20の炭化水素基を有する周期表第1、2、12、13または14族金属原子の有機金属化合物が挙げられる。これらのなかでも、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物が好ましく用いられ、有機リチウム化合物、有機スズ化合物、有機アルミニウム化合物がより好ましく用いられ、有機アルミニウム化合物が特に好ましく用いられる。
【0043】
タングステン化合物やモリブデン化合物を開環重合触媒として用いる場合に助触媒として組み合わせて用いる有機金属化合物の量は、特に限定されないが、(モリブデン化合物またはタングステン化合物:助触媒として用いる有機金属化合物)のモル比で、通常1:0.1〜1:100、好ましくは1:0.2〜1:50、より好ましくは1:0.5〜1:20の範囲である。なお、助触媒として組み合わせて用いる有機金属化合物は、一種を単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。
【0044】
重合反応は、無溶媒中で行ってもよく、溶液中で行ってもよい。溶液中で共重合する場合、用いられる溶媒は重合反応において不活性であり、共重合に用いるシクロペンテンや3環以上のノルボルネン化合物、重合触媒などを溶解させ得る溶媒であれば特に限定されないが、炭化水素系溶媒またはハロゲン系溶媒を用いることが好ましい。炭化水素系溶媒としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;などを挙げることができる。また、ハロゲン系溶媒としては、たとえば、ジクロロメタン、クロロホルムなどのアルキルハロゲン;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族ハロゲン;などを挙げることができる。これらの溶媒は、一種を単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。
【0045】
シクロペンテンと、3環以上のノルボルネン化合物とを開環共重合させる際には、必要に応じて、得られるシクロペンテン開環共重合体の分子量を調整するために、分子量調整剤として、オレフィン化合物またはジオレフィン化合物を重合反応系に添加してもよい。
【0046】
オレフィン化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する有機化合物であれば特に限定されないが、たとえば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエンなどのスチレン類;アリルクロライドなどのハロゲン含有ビニル化合物;エチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリクロロシラン、スチリルトリメトキシシランなどのケイ素含有ビニル化合物;2−ブテン、3−ヘキセンなどの二置換オレフィン;などが挙げられる。
【0047】
ジオレフィン化合物としては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンなどの非共役ジオレフィンが挙げられる。
【0048】
分子量調整剤としてのオレフィン化合物およびジオレフィン化合物の使用量は、製造するシクロペンテン開環共重合体の分子量に応じて適宜選択すればよいが、共重合に用いる単量体に対して、モル比で、通常1/100〜1/100,000、好ましくは1/200〜1/50,000、より好ましくは1/500〜1/10,000の範囲である。
【0049】
また、本発明のシクロペンテン開環共重合体を、重合体鎖末端に、変性基を有するものとする場合には、分子量調整剤として、上述したオレフィン化合物やジオレフィン化合物に代えて、変性基含有オレフィン性不飽和炭化水素化合物を用いることが好ましい。このような変性基含有オレフィン性不飽和炭化水素化合物を用いることで、共重合により得られるシクロペンテン開環共重合体の重合体鎖末端に、変性基を好適に導入することができる。
【0050】
変性基含有オレフィン性不飽和炭化水素化合物としては、変性基を有し、かつ、メタセシス反応性を有するオレフィン性炭素−炭素二重結合を1つ有する化合物であればよく、特に限定されない。たとえば、シクロペンテン開環共重合体の重合体鎖末端にオキシシリル基を導入することを望む場合には、オキシシリル基含有オレフィン性不飽和炭化水素を重合反応系に存在させればよい。
【0051】
このようなオキシシリル基含有オレフィン性不飽和炭化水素の例としては、シクロペンテン開環共重合体の重合体鎖の一方の末端(片末端)のみに変性基を導入するものとして、ビニル(トリメトキシ)シラン、ビニル(トリエトキシ)シラン、アリル(トリメトキシ)シラン、アリル(メトキシ)(ジメチル)シラン、アリル(トリエトキシ)シラン、アリル(エトキシ)(ジメチル)シラン、スチリル(トリメトキシ)シラン、スチリル(トリエトキシ)シラン、スチリルエチル(トリエトキシ)シラン、アリル(トリエトキシシリルメチル)エーテル、アリル(トリエトキシシリルメチル)(エチル)アミンなどのアルコキシシラン化合物;ビニル(トリフェノキシ)シラン、アリル(トリフェノキシ)シラン、アリル(フェノキシ)(ジメチル)シランなどのアリーロキシシラン化合物;ビニル(トリアセトキシ)シラン、アリル(トリアセトキシ)シラン、アリル(ジアセトキシ)メチルシラン、アリル(アセトキシ)(ジメチル)シランなどのアシロキシシラン化合物;アリルトリス(トリメチルシロキシ)シランなどのアルキルシロキシシラン化合物;アリルトリス(トリフェニルシロキシ)シランなどのアリールシロキシシラン化合物;1−アリルヘプタメチルトリシロキサン、1−アリルノナメチルテトラシロキサン、1−アリルノナメチルシクロペンタシロキサン、1−アリルウンデカメチルシクロヘキサシロキサンなどのポリシロキサン化合物;などが挙げられる。
【0052】
また、シクロペンテン開環共重合体の重合体鎖の両方の末端(両末端)に変性基を導入するものとして、ビス(トリメトキシシリル)エチレン、ビス(トリエトキシシリル)エチレン、2−ブテン−1,4−ジ(トリメトキシシラン)、2−ブテン−1,4−ジ(トリエトキシシラン)、1,4−ジ(トリメトキシシリルメトキシ)−2−ブテンなどのアルコキシシラン化合物;2−ブテン−1,4−ジ(トリフェノキシシラン)などのアリーロキシシラン化合物;2−ブテン−1,4−ジ(トリアセトキシシラン)などのアシロキシシラン化合物;2−ブテン−1,4−ジ[トリス(トリメチルシロキシ)シラン]などのアルキルシロキシシラン化合物;2−ブテン−1,4−ジ[トリス(トリフェニルシロキシ)シラン]などのアリールシロキシシラン化合物;2−ブテン−1,4−ジ(ヘプタメチルトリシロキサン)、2−ブテン−1,4−ジ(ウンデカメチルシクロヘキサシロキサン)などのポリシロキサン化合物;などが挙げられる。
【0053】
オキシシリル基含有オレフィン性炭化水素化合物などの変性基含有オレフィン性不飽和炭化水素化合物は、シクロペンテン開環共重合体の重合体鎖末端への変性基の導入作用に加えて、分子量調整剤としても作用するため、変性基含有オレフィン性不飽和炭化水素化合物の使用量は、製造するシクロペンテン開環共重合体の分子量に応じて適宜選択すればよいが、共重合に用いる単量体に対して、モル比で、通常1/100〜1/100,000、好ましくは1/200〜1/50,000、より好ましくは1/500〜1/10,000の範囲である。
【0054】
重合反応温度は、特に限定されないが、好ましくは−100℃以上であり、より好ましくは−50℃以上、さらに好ましくは0℃以上、特に好ましくは20℃以上である。また、重合反応温度の上限は特に限定されないが、好ましくは100℃未満であり、より好ましくは90℃未満、さらに好ましくは80℃未満、特に好ましくは70℃未満である。重合反応時間も、特に限定されないが、好ましくは1分間〜72時間、より好ましくは10分間〜20時間である。
【0055】
重合反応により得られるシクロペンテン開環共重合体には、所望により、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤の添加量は、その種類などに応じて適宜決定すればよい。さらに、所望により、伸展油を配合してもよい。重合溶液としてシクロペンテン開環共重合体を得た場合において、重合溶液からシクロペンテン開環共重合体を回収するためには、公知の回収方法を採用すればよく、たとえば、スチームストリッピングなどで溶媒を分離した後、固体をろ別し、さらにそれを乾燥して固形状のシクロペンテン開環共重合体を取得する方法などが採用できる。
【0056】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、上述した本発明のシクロペンテン開環共重合体に、シリカを配合してなるものである。
【0057】
シリカとしては、特に限定されないが、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカなどが挙げられる。また、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン−シリカデュアル・フェイズ・フィラーを用いてもよい。これらのなかでも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
シリカとしては、窒素吸着比表面積が、50〜300m
2/gであるものが好ましく、80〜220m
2/gであるものがより好ましく、100〜170m
2/gであるものが特に好ましい。比表面積がこの範囲であると、シクロペンテン開環共重合体とシリカとの親和性が特に良好となる。また、シリカのpHは、7未満であることが好ましく、より好ましくは5〜6.9である。なお、窒素吸着比表面積は、ASTMD3037−81に準拠して、BET法にて測定することができる。
【0059】
本発明のゴム組成物中における、シリカの配合量は、ゴム組成物中の上述した本発明のシクロペンテン開環共重合体を含むゴム成分100重量部に対して、好ましくは1〜150重量部、より好ましくは10〜120重量部、さらに好ましくは15〜100重量部、特に好ましくは20〜80重量部である。シリカの配合量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物の破断強度および耐摩耗性をより適切に高めることができる。
【0060】
本発明のゴム組成物には、シクロペンテン開環共重合体とシリカとの親和性をより向上させる目的で、シランカップリング剤をさらに配合することが好ましい。シランカップリング剤としては、たとえば、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィドなどや、特開平6−248116号公報に記載されているγ−トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドなどのテトラスルフィド類を挙げることができる。なかでも、テトラスルフィド類が好ましい。これらのシランカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。シランカップリング剤の配合量は、シリカ100重量部に対して、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは1〜15重量部である。
【0061】
また、本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、上述した本発明のシクロペンテン開環共重合体以外のゴムを含んでいてもよい。本発明のシクロペンテン開環共重合体以外のゴムとしては、たとえば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、乳化重合SBR(スチレン−ブタジエン共重合ゴム)、溶液重合ランダムSBR(結合スチレン5〜50重量%、ブタジエン部分の1,2−結合含有量10〜80%)、高トランスSBR(ブタジエン部のトランス結合含有量70〜95%)、低シスBR(ポリブタジエンゴム)、高シスBR、高トランスBR(ブタジエン部のトランス結合含有量70〜95%)、スチレン−イソプレン共重合ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、乳化重合スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、高ビニルSBR−低ビニルSBRブロック共重合ゴム、ポリイソプレン−SBRブロック共重合ゴム、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレンブロック共重合体、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。なかでも、NR、BR、IR、SBRが好ましく用いられる。これらのゴムは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0062】
本発明のゴム組成物中のシクロペンテン開環共重合体の含有割合は、ゴム成分の全量に対して、50重量%以上とすることが好ましく、60重量%以上とすることがより好ましく、70重量%以上とすることが特に好ましい。この割合が低すぎると、破断強度および耐摩耗性の向上効果が得られなくなるおそれがある。
【0063】
本発明のゴム組成物には、上記成分以外に、常法に従って、架橋剤、架橋促進剤、架橋活性化剤、シリカ以外の充填剤、老化防止剤、活性剤、プロセス油、可塑剤、滑剤などの配合剤をそれぞれ必要量配合できる。
【0064】
架橋剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄;一塩化硫黄、二塩化硫黄などのハロゲン化硫黄;ジクミルパーオキシド、ジターシャリブチルパーオキシドなどの有機過酸化物;p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシムなどのキノンジオキシム;トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、4,4’−メチレンビス−o−クロロアニリンなどの有機多価アミン化合物;メチロール基をもったアルキルフェノール樹脂;などが挙げられる。これらの中でも、硫黄が好ましく、粉末硫黄がより好ましい。これらの架橋剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。
【0065】
架橋促進剤としては、たとえば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系架橋促進剤;1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジオルトトリルグアニジン、1−オルトトリルビグアニジンなどのグアニジン系架橋促進剤;ジエチルチオウレアなどのチオウレア系架橋促進剤;2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩などのチアゾール系架橋促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどのチウラム系架橋促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛などのジチオカルバミン酸系架橋促進剤;イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛などのキサントゲン酸系架橋促進剤;などが挙げられる。なかでも、スルフェンアミド系架橋促進剤を含むものが特に好ましい。これらの架橋促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋促進剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。
【0066】
架橋活性化剤としては、たとえば、ステアリン酸などの高級脂肪酸や酸化亜鉛などを用いることができる。架橋活性化剤の配合量は適宜選択されるが、高級脂肪酸の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.05〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部であり、酸化亜鉛の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.05〜10重量部、より好ましくは0.5〜3重量部である。
【0067】
プロセス油としては、鉱物油や合成油を用いてよい。鉱物油は、アロマオイル、ナフテンオイル、パラフィンオイルなどが通常用いられる。その他の配合剤としては、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、シリコーンオイルなどの活性剤;カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、クレーなどのシリカ以外の充填剤;石油樹脂、クマロン樹脂などの粘着付与剤;ワックスなどが挙げられる。
【0068】
本発明のゴム組成物は、常法に従って各成分を混練することにより得ることができる。たとえば、架橋剤および架橋促進剤を除く配合剤とシクロペンテン開環共重合体などのゴム成分とを混練後、その混練物に架橋剤と架橋促進剤とを混合してゴム組成物を得ることができる。架橋剤および架橋促進剤を除く配合剤とシクロペンテン開環共重合体などのゴム成分との混練温度は、好ましくは80〜200℃、より好ましくは120〜180℃であり、その混練時間は、好ましくは30秒間〜30分間である。架橋剤と架橋促進剤との混合は、通常100℃以下、好ましくは80℃以下まで冷却後に行われる。
【0069】
<ゴム架橋物>
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明のゴム組成物を架橋してなるものである。
本発明のゴム架橋物は、本発明のゴム組成物を用い、たとえば、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10〜200℃、好ましくは25〜120℃である。架橋温度は、通常、100〜200℃、好ましくは130〜190℃であり、架橋時間は、通常、1分〜24時間、好ましくは2分〜12時間、特に好ましくは3分〜6時間である。
【0070】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
【0071】
加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
【0072】
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、上述した本発明のシクロペンテン開環共重合体を用いて得られるものであり、上述したように、本発明のシクロペンテン開環共重合体は、シクロペンテンにノルボルネン化合物を共重合することにより得られるウエットグリップ性および低発熱性の向上効果に加えて、破断強度および耐摩耗性が効果的に高められたものであることから、本発明のゴム架橋物は、ウエットグリップ性および低発熱性に優れることに加え、破断強度および耐摩耗性にも優れるものである。そして、本発明のゴム架橋物は、このような特性を活かし、たとえば、タイヤにおいて、キャップトレッド、ベーストレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位の材料;ホース、ベルト、マット、防振ゴム、その他の各種工業用品の材料;樹脂の耐衝撃性改良剤;樹脂フィルム緩衝剤;靴底;ゴム靴;ゴルフボール;玩具;などの各種用途に用いることができる。特に、本発明のゴム架橋物は、オールシーズンタイヤ、高性能タイヤ、およびスタッドレスタイヤなどの各種タイヤにおいて、トレッド、カーカス、サイドウォール、およびビード部などのタイヤ各部位に好適に用いることができる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験および評価は下記に従った。
【0074】
〔シクロペンテン開環共重合体の分子量〕
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、ポリスチレン換算の分子量に基づくチャートを得て、そのチャートに基づいて求めた。なお、ゲルパーミエーションクロマトグラフィの具体的な測定条件は、以下の通りである。
【0075】
測定器 :HLC−8320 EcoSCE(東ソー社製)
カラム :GMH−HR−H(東ソー社製)2本を直列に連結した。
検出器 :示差屈折計RI−8020(東ソー社製)
溶離液 :テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
【0076】
〔シクロペンテン開環共重合体中のシクロペンテン由来の構造単位およびノルボルネン化合物由来の構造単位の割合〕
シクロペンテン開環共重合体中の単量体組成比を、
1H−NMRスペクトル測定から求めた。
【0077】
〔シクロペンテン開環共重合体中の芳香環の含有量〕
シクロペンテン開環共重合体中の芳香環の全重合体に占める割合を、
1H−NMRスペクトル測定から求めた。
【0078】
〔シクロペンテン開環共重合体のオキシシリル基の導入率〕
1H−NMRスペクトル測定により、オキシシリル基に由来する3.8ppm付近のピーク積分値とシクロペンテン開環共重合体主鎖中の炭素−炭素二重結合に由来する5.0〜6.0ppmのピーク積分値との比率を求め、このピーク積分値の比率とGPCによる数平均分子量(Mn)の測定値に基づいて、オキシシリル基の導入率〔(オキシシリル基が導入されたシクロペンテン開環共重合体鎖末端数/シクロペンテン開環重合体鎖末端全数)の百分率〕を計算した。
【0079】
〔スチレンブタジエンゴムのスチレン単量体単位含有量、ビニル結合量〕
スチレン単量体単位含有量、およびビニル結合量は、
1H−NMRにより測定した。
【0080】
〔シクロペンテン開環共重合体、スチレンブタジエンゴムのムーニー粘度(ML
1+4,100℃)〕
シクロペンテン開環共重合体およびスチレンブタジエンゴムのムーニー粘度(ML
1+4,100℃)を、JIS K6300に準じて測定した。
【0081】
〔シクロペンテン開環共重合体、スチレンブタジエンゴムのガラス転移温度(Tg)〕
シクロペンテン開環共重合体およびスチレンブタジエンゴムのガラス転移温度(Tg)を、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温で測定した。
【0082】
〔破断強度〕
試料となるゴム組成物を、160℃で20分間プレス架橋することで、架橋された試験片を作製し、この試験片について、引っ張り試験装置(商品名「TANSOMETER 10K」ALPHA TECHNOLOGIES社製)を用い、JIS K6251:2010「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム―引張特性の求め方」に準じて、破断強度を測定した。この値は、比較例1の試料の測定値を100とする指数とした。この指数が大きいものほど、破断強度が高いことを示す。
【0083】
〔耐摩耗性評価〕
試料となるゴム組成物を、160℃で20分間プレス架橋することで、架橋された試験片を作製し、この試験片について、ランボーン摩耗試験機を用い、JIS K6264に準じて、摩耗減量を測定した。この値は、比較例1の試料の測定値を100とする指数とした。この指数が大きいものほど、耐摩耗性に優れることを示す。なお、耐摩耗性の評価は、実施例1〜4、比較例1,2についてのみ行った。
【0084】
《実施例1》
(シクロペンテン開環共重合体の製造)
窒素雰囲気下、攪拌機付き耐圧ガラス反応容器に、シクロペンテン541部、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレン(MTHF)163部、トルエン2800部および1−ヘキセン0.61部を加え、ここに(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド0.074部をトルエン30部に溶解した重合触媒溶液を加えて、25℃で4時間重合反応を行った。4時間の重合反応後、耐圧ガラス反応容器に、過剰のイソプロパノールを加えて重合を停止した後、耐圧ガラス反応容器内の溶液を、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)を含む大過剰のイソプロパノールに注いだ。次いで、沈殿したポリマーを回収し、イソプロパノールで洗浄後、40℃で3日間、真空乾燥することにより、320部のシクロペンテン/MTHF開環共重合体を得た。得られたシクロペンテン/MTHF開環共重合体について、上記方法に従い、分子量、単量体組成比、芳香環の含有量、ムーニー粘度(ML
1+4,100℃)、およびガラス転移温度(Tg)を測定した。結果を表1に示す。
【0085】
(ゴム組成物の調製)
上記にて得られたシクロペンテン/MTHF開環共重合体100部を容積250mlのバンバリーミキサーで素練りし、次いで、シリカ(商品名「Zeosil 1165MP」、ソルベイ社製、窒素吸着比表面積(BET法):163m
2/g)40部、プロセスオイル(商品名「アロマックス T−DAE」、新日本石油社製)10部、およびシランカップリング剤(ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、商品名「Si69」、デグッサ社製)4.8部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練した。次いで、得られた混練物に、シリカ(商品名「Zeosil 1165MP」、ソルベイ社製)20部、酸化亜鉛(亜鉛華1号)3部、ステアリン酸(商品名「SA−300」、旭電化工業社製)2部、および老化防止剤(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、商品名「ノクラック6C」、大内新興化学工業社製)2部を添加し、3分間混練して、バンバリーミキサーから混練物を排出させた。混練終了時のゴム組成物の温度は150℃であった。そして、得られた混練物を、室温まで冷却した後、再度バンバリーミキサー中で、3分間混練した後、バンバリーミキサーから混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールで、得られた混練物と、硫黄1.6部、および架橋促進剤(シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーCZ−G」)1.4部と、1,3−ジフェニルグアニジン(商品名「ノクセラーD」、大内新興化学工業社製)1.4部との混合物)2.8部とを混練した後、シート状のゴム組成物を取り出した。そして、得られたゴム組成物について、破断強度および耐摩耗性を上記方法によって評価した。結果を表1に示す。
【0086】
《実施例2》
シクロペンテンの使用量を193部に、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレン(MTHF)の使用量を85部に、トルエンの使用量を1100部に、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリドの使用量を0.028部に、それぞれ変更するとともに、1−ヘキセン0.61部に代えて、アリルトリエトキシシラン0.47部を使用した以外は実施例1と同様にして、重合反応を行い、178部の重合体鎖の片側の末端にトリエトキシシリル基を有する末端変性シクロペンテン/MTHF開環共重合体を得た。得られた末端変性シクロペンテン/MTHF開環共重合体について、実施例1と同様にして、各測定を行った。結果を表1に示す。また、末端変性シクロペンテン/MTHF開環共重合体のオキシシリル基の導入率は、45%であった。
そして、実施例1で得られたシクロペンテン/MTHF開環共重合体100部の代わりに、得られた末端変性シクロペンテン/MTHF開環共重合体100部を使用した以外は、実施例1と同様の方法で、シート状のゴム組成物を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0087】
《実施例3》
シクロペンテンの使用量を166部に、トルエンの使用量を1057部に、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリドの使用量を0.028部に、1−ヘキセンの使用量を0.42部に、それぞれ変更するとともに、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレン(MTHF)163部に代えて、70重量%のジシクロペンタジエン(DCPD)/シクロヘキサン溶液162部を使用した以外は実施例1と同様にして、重合反応を行い、177部のシクロペンテン/DCPD開環共重合体を得た。得られたシクロペンテン/DCPD開環共重合体について、実施例1と同様にして、各測定を行った。結果を表1に示す。
そして、実施例1で得られたシクロペンテン/MTHF開環共重合体100部の代わりに、得られたシクロペンテン/DCPD開環共重合体100部を使用した以外は、実施例1と同様の方法で、シート状のゴム組成物を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
《実施例4》
シクロペンテンの使用量を183部に、トルエンの使用量を1100部に、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリドの使用量を0.028部に、1−ヘキセンの使用量を0.28部に、それぞれ変更するとともに、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレン(MTHF)163部に代えて、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン(TCD)100部を使用した以外は実施例1と同様にして、重合反応を行い、191部のシクロペンテン/TCD開環共重合体を得た。得られたシクロペンテン/TCD開環共重合体について、実施例1と同様にして、各測定を行った。結果を表1に示す。
そして、実施例1で得られたシクロペンテン/MTHF開環共重合体100部の代わりに、得られたシクロペンテン/TCD開環共重合体100部を使用した以外は、実施例1と同様の方法で、シート状のゴム組成物を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
《比較例1》
(アミノ基変性スチレンブタジエンゴムの製造)
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン5670g、スチレン170g、1,3−ブタジエン430g、およびテトラメチルエチレンジアミン8.4mmolを仕込んだ後、n−ブチルリチウムを、シクロヘキサン、スチレン、および1,3−ブタジエンに含まれる重合を阻害する不純物の中和に必要な量を添加した。その後、n−ブチルリチウムを重合反応に用いる分として6.0mmolを加え、40℃で重合を開始した。次いで、重合を開始してから10分経過後、スチレン40g、1,3−ブタジエン360gを60分間かけて連続的に添加した。なお、重合反応中の最高温度は70℃であった。そして、連続添加終了後、さらに10分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、カップリング剤としての四塩化錫0.6mmolを20重量%シクロへキサン溶液の状態で加え、65℃で10分間反応させた。次いで、変性剤としてN−フェニル−2−ピロリドン5.4mmolを40重量%キシレン溶液の状態で添加し、65℃で20分間反応させた。その後、重合停止剤として、重合反応に使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、アミノ基変性スチレンブタジエンゴムを含有する溶液を得た。
【0090】
そして、得られたアミノ基変性スチレンブタジエンゴムを含有する溶液のゴム成分100部あたり、老化防止剤として、2,4−ビス(n−オクチルチオメチル)−6−メチルフェノール0.2部を添加した。次いで、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、固形状ゴムの回収を行ない、ロールにかけて脱水し、さらに熱風乾燥機にて乾燥することで、アミノ基変性スチレンブタジエンゴムを得た。
【0091】
得られたアミノ基変性スチレンブタジエンゴムは、結合スチレン量が21重量%であり、ブタジエン単位部分のビニル結合含有量が63重量%であった。また、実施例1と同様にして各測定を行った。結果を表1に示す。
【0092】
(ゴム組成物の調製)
そして、実施例1で得られたシクロペンテン/MTHF開環共重合体100部の代わりに、得られたアミノ基変性スチレンブタジエンゴム100部を使用した以外は、実施例1と同様の方法で、シート状のゴム組成物を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0093】
《比較例2》
(シロキサン変性スチレンブタジエンゴムの製造)
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン5670g、スチレン170g、1,3−ブタジエン430g、及びテトラメチルエチレンジアミン10.0mmolを仕込んだ後、n−ブチルリチウムを、シクロヘキサン、スチレン、および1,3−ブタジエンに含まれる重合を阻害する不純物の中和に必要な量を添加した。その後、n−ブチルリチウムを重合反応に用いる分として5.6mmolを加え、40℃で重合を開始した。次いで、重合を開始してから10分経過後、スチレン40g、1,3−ブタジエン360gを60分間かけて連続的に添加した。なお、重合反応中の最高温度は70℃であった。連続添加終了後、さらに10分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、カップリング剤としての四塩化錫0.278mmolを20重量%シクロへキサン溶液の状態で加え、65℃で10分間反応させた。次いで、変性剤として下記式(3)で表されるポリオルガノシロキサン0.024mmolを40重量%キシレン溶液の状態で添加し、65℃で20分間反応させた。その後、重合停止剤として、重合反応に使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、シロキサン変性スチレンブタジエンゴムを含有する溶液を得た。
【化5】
【0094】
そして、得られたシロキサン変性スチレンブタジエンゴムを含有する溶液のゴム成分100部あたり、老化防止剤として、2,4−ビス(n−オクチルチオメチル)−6−メチルフェノール0.2部を添加した。次いで、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、固形状ゴムの回収を行ない、ロールにかけて脱水し、さらに熱風乾燥機にて乾燥することで、シロキサン変性スチレンブタジエンゴムを得た。
【0095】
得られたシロキサン変性スチレンブタジエンゴムは、結合スチレン量が21重量%であり、ブタジエン単位部分のビニル結合含有量が63重量%であった。また、実施例1と同様にして各測定を行った。結果を表1に示す。
【0096】
(ゴム組成物の調製)
そして、実施例1で得られたシクロペンテン/MTHF開環共重合体100部の代わりに、得られたシロキサン変性スチレンブタジエンゴム100部を使用した以外は、実施例1と同様の方法で、シート状のゴム組成物を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0097】
《比較例3》
シクロペンテンの使用量を206部に、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレン(MTHF)の使用量を49部に、トルエンの使用量を1178部に、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリドの使用量を0.028部に、1−ヘキセンの使用量を0.28部に、それぞれ変更した以外は実施例1と同様にして、重合反応を行い、131部のシクロペンテン/MTHF開環共重合体を得た。得られたシクロペンテン/MTHF開環共重合体について、実施例1と同様にして、各測定を行った。結果を表1に示す。
そして、実施例1で得られたシクロペンテン/MTHF開環共重合体100部の代わりに、得られたシクロペンテン/MTHF開環共重合体100部を使用した以外は、実施例1と同様の方法にて、シート状のゴム組成物を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
《比較例4》
シクロペンテンの使用量を188部に、トルエンの使用量を1160部に、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリドの使用量を0.028部に、1−ヘキセンの使用量を0.17部に、それぞれ変更するとともに、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレン(MTHF)163部に代えて、70重量%のジシクロペンタジエン(DCPD)/シクロヘキサン溶液103部を使用した以外は実施例1と同様にして、重合反応を行い、177部のシクロペンテン/DCPD開環共重合体を得た。得られたシクロペンテン/DCPD開環共重合体について、実施例1と同様にして、各測定を行った。結果を表1に示す。
そして、実施例1で得られたシクロペンテン/MTHF開環共重合体100部の代わりに、得られたシクロペンテン/DCPD開環共重合体100部を使用した以外は、実施例1と同様の方法にて、シート状のゴム組成物を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
《比較例5》
シクロペンテンの使用量を211部に、トルエンの使用量を1120部に、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリドの使用量を0.028部に、1−ヘキセンの使用量を0.25部に、それぞれ変更するとともに、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレン(MTHF)163部に代えて、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカ−4−エン(TCD)32部を使用した以外は実施例1と同様にして、重合反応を行い、191部のシクロペンテン/TCD開環共重合体を得た。得られたシクロペンテン/TCD開環共重合体について、実施例1と同様にして、各測定を行った。結果を表1に示す。
そして、実施例1で得られたシクロペンテン/MTHF開環共重合体100部の代わりに、得られたシクロペンテン/TCD開環共重合体100部を使用した以外は、実施例1と同様の方法にて、シート状のゴム組成物を作製し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
表1に示す結果より、シクロペンテンと、3環以上のノルボルネン化合物とを開環共重合してなり、3環以上のノルボルネン化合物由来の構造単位の含有割合が40〜80重量%であるシクロペンテン開環共重合体は、破断強度および耐摩耗性のいずれにも優れたゴム架橋物を与えるものであり、タイヤ用途として好適なものであった(実施例1〜4)。特に、実施例1〜4のシクロペンテン開環共重合体は、シクロペンテン開環共重合体中、所定の割合にて、3環以上のノルボルネン化合物由来の構造単位を含むものであることから、シクロペンテンに、ノルボルネン化合物を共重合することにより得られるウエットグリップ性および低発熱性の向上効果に加えて、破断強度および耐摩耗性が効果的に高められたものであるといえる。
【0102】
一方、末端変性スチレンブタジエンゴムを用いて得られるゴム架橋物は、破断強度および耐摩耗性のいずれにも、劣るものであった(比較例1,2)。
また、3環以上のノルボルネン化合物由来の構造単位の含有割合が40重量%未満である場合には、得られるゴム架橋物は、破断強度に劣るものであった(比較例3〜5)。