(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物は、非水系二次電池電極用スラリー組成物を調製する際に用いることができる。そして、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物を用いて調製した非水系二次電池電極用スラリー組成物は、リチウムイオン二次電池等の非水系二次電池の電極を形成する際に用いることができる。更に、本発明の非水系二次電池は、本発明の非水系二次電池電極用スラリー組成物を用いて形成した非水系二次電池用電極を用いたことを特徴とする。
なお、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物および非水系二次電池電極用スラリー組成物は、非水系二次電池が備える負極を作製する際に特に好適に用いることができる。
【0021】
(非水系二次電池電極用バインダー組成物)
本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物は、粒子状重合体および界面活性剤を含む。また、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物は、任意に、二次電池の電極に配合され得る、粒子状重合体および界面活性剤以外のその他の成分を更に含有し得る。このとき、当該その他の成分は、後述する水溶性高分子であっても良い。また、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物は、通常、水などの分散媒を更に含有する。更に、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物は、粒子状重合体の体積平均粒子径が0.01μm以上0.1μm以下であり、界面活性剤の含有量が、前記粒子状重合体100質量部に対して0.1質量部以上1.0質量部以下であることを特徴とする。
【0022】
そして、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物は所定の小さな粒子径を有する粒子状重合体および所定の少ない含有量の界面活性剤を含んでいるので、小さな粒子径を有する粒子状重合体の大きな接触表面積に起因して、当該バインダー組成物を用いて作製した電極に優れた密着性を発揮させる。また、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物をスラリー組成物の調製に用いた場合、粒子状重合体の小さな粒子径に起因して粒子状重合体が過度に凝集することなく、粒子状重合体の電極活物質表面への均一分散性を優れたものとすることができる。ここで、粒子状重合体などによる凝集物は、充電時における電極上でのリチウムなどの金属析出の原因となるため、粒子状重合体の凝集を抑えた結果として、当該バインダー組成物を用いて製造された二次電池において、充電時における電極上でのリチウムなどの金属析出が抑制される。更に、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物を用いて製造した二次電池において、微細な粒子状重合体および少量の界面活性剤の寄与により、粒子状重合体が電極活物質表面に良好に吸着され、電極活物質表面上に電解液の劣化堆積物が生成することを抑制することで、二次電池の放電容量を高く保つことができるため、当該二次電池に優れた保存特性を発揮させる。
【0023】
<粒子状重合体>
<<性状>>
[体積平均粒子径]
本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物に含まれる粒子状重合体は、体積平均粒子径が0.01μm以上0.1μm以下である必要がある。また、粒子状重合体の体積平均粒子径は、0.02μm以上であることが好ましく、0.03μm以上であることがより好ましく、0.08μm以下であることが好ましく、0.06μm以下であることがより好ましく、0.05μm以下であることが更に好ましい。粒子状重合体の体積平均粒子径が0.01μm以上であれば、当該粒子状重合体を含むバインダー組成物を調製する際に、過度に小さな粒子径を有する粒子状重合体が凝集して分散性が悪化することを抑制できるため、調製されるバインダー組成物の分散安定性が良好になる。また、粒子状重合体が凝集することなく良好に分散したバインダー組成物を用いて形成した電極合材層は比較的均質な構造を有するため、二次電池内部において電解液が電極合材層内に良好に浸透する。そのため、二次電池の充電時にリチウムイオンなどの金属イオンが電極表面に偏在することなく、電極上への金属析出を抑制することができる。更に、過度に小さな粒子径を有する粒子状重合体が凝集して電極活物質に付着することを防ぎ、電池内部におけるイオン伝導性を良好に保つため、当該粒子状重合体を有するバインダー組成物を用いて製造した二次電池の放電容量を高く保つことができる。
また、粒子状重合体の体積平均粒子径が0.1μm以下であれば、当該粒子状重合体を用いて作製した電極において、当該粒子状重合体と、電極活物質および集電体との接触面積を大きくすることができるため、電極の密着性が良好になる。また、大きな粒子径を有する粒子状重合体を用いて作製した場合の電極の不均質構造に起因した電極上への金属析出、および、大きな粒子径を有する粒子状重合体が電極活物質を不均一に覆うことに伴う放電容量の保存安定性の悪化を抑制することができる。
【0024】
ここで、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物のように、体積平均粒子径が0.1μm以下である微細な粒子状重合体を用いると、当該粒子状重合体を用いて準備されたスラリー組成物および電極合材層において、微細な粒子状重合体が、電極活物質の表面をより薄く均一に被覆することが考えられる。そして、当該微細な粒子状重合体による電極活物質の均一な被覆は、二次電池が正常に作動している間においては、上述の通り、高い電極密着性、電極上への金属析出の抑制、および、高い保存特性の並立に寄与する。
他方、二次電池が、例えば異常加熱などの誤作動を起こした場合においては、当該微細な粒子状重合体が部分的に溶解しながら電極活物質全体を膜状に隙間なく覆うことが推察される。そして、電極活物質全体が隙間なく覆われることにより電極活物質と電荷移動を担うイオンとの接触点がなくなった場合は、電池内部でのイオン伝導性は急激に低下し、電池抵抗は急激に上昇すると考えられる。つまり、当該微細な粒子状重合体を含むバインダー組成物を二次電池の製造に使用することにより、二次電池の異常作動時において作動停止などの緊急措置を講じる効果が期待でき、二次電池の安全性を高め得ると発明者らは考察する。
【0025】
[ガラス転移温度]
ここで、粒子状重合体のガラス転移温度は、−50℃以上であることが好ましく、−40℃以上であることがより好ましく、−30℃以上であることが更に好ましく、15℃以下であることが好ましく、−10℃以下であることがより好ましく、−20℃以下であることが更に好ましい。粒子状重合体のガラス転移温度が−50℃以上であれば、粒子状重合体の粘着性(タック性)が過度に大きくなることを抑制し、電池の製造プロセスを容易なものにすることができるからである。また、粒子状重合体のガラス転移温度が15℃以下、とりわけ、−10℃以下、更には−20℃以下であれば、粒子状重合体が高い接着性を発揮するため、電極の粉落ちを抑制し、電極の密着性をより向上させることができるからである。
【0026】
[電解液ゲル含有割合]
また、粒子状重合体の電解液ゲル含有割合は、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましく、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが更に好ましい。粒子状重合体の電解液ゲル含有割合が50質量%以上であれば、当該粒子状重合体を含む電極の強度をより高め得るからである。また、粒子状重合体の電解液ゲル含有割合が99質量%以下であれば、当該粒子状重合体を含む電極の密着性および柔軟性をより高め得るからである。
なお、本発明において「電解液ゲル含有割合」は、実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0027】
<<組成>>
粒子状重合体の組成は、上述した体積平均粒子径を有すれば特に制限されない。また、粒子状重合体は、当該粒子状重合体を構成する重合体として、エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位を含有することが好ましく、エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位以外のその他の単量体単位を更に含有してもよい。
【0028】
[エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位]
粒子状重合体中におけるエチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の含有割合は、3質量%以上であることが好ましく、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。粒子状重合体が3質量%以上のエチレン性不飽和カルボン酸単量体単位を含有すれば、得られる重合体粒子の化学的、機械的安定性を増加させ、粗大粒子の発生を抑制することにより、粒子状重合体の電極活物質などとの接着点をより増大させ、電極の密着性を更に向上させることができるからである。また、粒子状重合体が20質量%以下のエチレン性不飽和カルボン酸単量体単位を含有すれば、凝集作用のある水溶性成分が重合中に発生して粗大粒子が重合されてしまうことを抑制できるため、粒子状重合体としての接着性を高め、電極の耐粉落ち性などの密着性を更に向上し得るからである。
【0029】
ここで、エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位とは、エチレン性不飽和カルボン酸単量体を重合して形成される構造を有する構造単位である。そして、エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位を形成し得るエチレン性不飽和カルボン酸単量体の例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのモノまたはジカルボン酸(無水物)などが挙げられる。中でも、イタコン酸が好ましい。エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせてもよい。
【0030】
[その他の単量体単位]
粒子状重合体が含有し得るエチレン性不飽和カルボン酸単量体単位以外のその他の単量体単位としては、エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位と併用し得、かつバインダー(結着材)として機能し得る単量体単位であれば特に限定されない。その他の単量体単位を形成し得る単量体としては、例えば、芳香族ビニル単量体、脂肪族共役ジエン単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、シアン化ビニル系単量体、不飽和カルボン酸アミド単量体、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体、ジ(メタ)アクリル酸エステル単量体等が挙げられる。
【0031】
芳香族ビニル単量体としては、特に限定されることなく、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。中でも、スチレンが好ましい。なお、芳香族ビニル単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、脂肪族共役ジエン単量体としては、特に限定されることなく、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換および側鎖共役ヘキサジエン類などが挙げられる。中でも、1,3−ブタジエンが好ましく、1,3−ブタジエンを上述のスチレンと併用することがより好ましい。なお、脂肪族共役ジエン単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体の例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレートおよびt−ブチルアクリレートなどのブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのオクチルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n−テトラデシルアクリレート、ステアリルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル;並びにメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレートおよびt−ブチルメタクリレートなどのブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどのオクチルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、n−テトラデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。中でも、メチルアクリレートおよびメチルメタクリレートが好ましく、メチルアクリレートおよびメチルメタクリレートを併用することがより好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
シアン化ビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどが挙げられる。なお、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
不飽和カルボン酸アミド単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド等が挙げられる。なお、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体としては、例えば、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジ−(エチレングリコール)マレエート、ジ−(エチレングリコール)イタコネート、2−ヒドロキシエチルマレエート、ビス(2−ヒドロキシエチル)マレエート、2−ヒドロキシエチルメチルフマレートなどが挙げられる。なお、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ジ(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、エチレンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレートなどが挙げられる。なお、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0032】
<界面活性剤>
本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物は界面活性剤を含む。そして、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物では、界面活性剤の含有量が、上述の粒子状重合体100質量部に対して0.1質量部以上1.0質量部以下であることを必要とする。また、界面活性剤の含有量は、0.2質量部以上であることが好ましく、0.25質量部以上であることがより好ましく、0.8質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以下であることがより好ましい。バインダー組成物中の界面活性剤の含有量が0.1質量部以上であれば、バインダー組成物および後述するスラリー組成物中において粒子状重合体が凝集、沈殿することなく良好に分散される。従って、例えば当該スラリー組成物を塗布、乾燥して作製される電極においても、粒子状重合体および電極活物質が良好に分散、接着された状態を維持することができ、電池内部におけるイオン伝導性を良好に保つことができる。つまり、二次電池における内部抵抗の上昇を抑制し、保存特性を良好にし得る。また、バインダー組成物中の界面活性剤の含有量が1.0質量部以下であれば、当該バインダー組成物を用いて製造した二次電池を充放電した際に、界面活性剤が電気化学的に分解されて充放電効率を悪化させることを抑制でき、二次電池における保存特性を良好にし得る。
【0033】
なお、バインダー組成物中の界面活性剤の含有量の制御としては、特に制限されることなく、例えば、粒子状重合体の調製時において、所望の少量の界面活性剤を用いることができる。または、粒子状重合体の調製後において、任意の手法により界面活性剤を除去することもできる。または、粒子状重合体の調製における重合時の前に、あらかじめ、界面活性剤に代わり、保護コロイドとして、水溶性高分子を用いることもできる。ここで、界面活性剤を除去する手法としては、特に制限されず、例えば、イオンのみを通す半透膜およびチューブなど、並びに、イオン交換水などの溶媒を用いて界面活性剤成分を精製する透析法;任意の電解液を用いて界面活性剤成分を沈殿させる塩析法;等が挙げられる。中でも、操作の簡便さおよび重合体成分に影響を与えない観点からは、透析法を用いることが好ましい。
【0034】
ここで、透析法を用いた場合における透析時間(浸漬時間)は、特に制限されず、例えば、1時間以上が好ましく、24時間以上がより好ましく、3日間以上が更に好ましく、5日間以上がとりわけ好ましく、通常、3週間以内とすることができる。また浸漬する温度は30℃未満が好ましい。浸漬温度が30℃未満であれば、粒子状重合体の凝集を更に抑制することができるからである。
【0035】
なお、バインダー組成物中の界面活性剤の含有量が1.0質量部以下と少量である場合に、二次電池における保存特性が良好になる理由は明らかではないが、以下の通りであると推察される。
即ち、バインダー組成物中に含まれる界面活性剤は、電極合材層を形成するためのスラリー組成物にも含まれる。そして、当該スラリー組成物中を、例えば集電体上に塗布、乾燥することにより作製した電極(電極合材層)内においても、当該界面活性剤は存在し続けることになる。ここで、例えば、界面活性剤がイオン性界面活性剤である場合は、一般的に、水などの溶液中において解離してイオンとなることが知られている。従って、電池の組立てにおいて、当該界面活性剤を含有する電極を備える電池体に電解液を注入することにより、電極と電解液とが接触した場合、とりわけ、後述する二次電池の製造における後処理などによって電解液が電極内部まで良好に浸透した場合は、電極合材層内に含まれていた界面活性剤由来のイオンが電解液中に解離し、電池反応を担うリチウムイオンなどの金属イオンの伝導性を阻害してしまうことが考えられる。従って、バインダー組成物中の界面活性剤の含有量を所定の範囲まで低減することにより、二次電池の内部抵抗を低く抑えることができ、その結果、放電容量の保存安定性としての保存特性を良好にすることができる。
【0036】
<<界面活性剤の種類>>
界面活性剤としては、上述した含有量に制御すること以外は特に制限されることなく、既知の界面活性剤、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれであってもよい。アニオン性界面活性剤の具体例としては、ラウリル硫酸ナトリウムといったドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウムといったドデシル硫酸アンモニウム、オクチル硫酸ナトリウム、デシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ヘキサデシル硫酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウムなどの高級アルコールの硫酸エステル塩;ドデシルジフェニルエーテル(ジ)スルホン酸ナトリウム、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウムといったドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリルスルホン酸ナトリウムといったドデシルスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウムなどの脂肪族スルホン酸塩;などが挙げられ、不飽和結合を有するいわゆる反応性界面活性剤であってもよい。中でも、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いることが好ましい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0037】
<<粒子状重合体の調製方法>>
粒子状重合体の調製方法は、特に限定されることなく、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法を用いてもよい。また、重合反応としては、イオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などの付加重合を用いることができる。また、重合には、上述した界面活性剤を用い、必要に応じて、当該界面活性剤以外の添加剤(分子量調整剤、重合開始剤など)を更に用いることができる。そして、重合に使用される分子量調整剤、重合開始剤などは、一般に用いられるものを使用することができ、界面活性剤を除き、その使用量も、一般に使用される量とすることができる。
なお、粒子状重合体の調製に使用する界面活性剤の量を調節することにより、粒子状重合体の体積平均粒子径を所望の範囲に制御することができる。
【0038】
[分子量調整剤]
分子量調整剤としては、特に制限されることなく、例えば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物;ターピノレンや、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物;アリルアルコール等のアリル化合物;ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物;チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ジフェニルエチレン、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。これらのなかでも、副反応抑制という観点から、アルキルメルカプタンが好ましく、t−ドデシルメルカプタンがより好ましい。これらは1種類を単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0039】
[重合開始剤]
重合開始剤としては、既知の重合開始剤、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが挙げられる。中でも、過硫酸カリウムを用いることが好ましい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0040】
<その他の成分>
本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物は、上記成分の他に、補強材、レベリング剤、粘度調整剤、電解液添加剤等の成分を含有していてもよい。これらは、電池反応に影響を及ぼさないものであれば特に限られず、公知のもの、例えば国際公開第2012/115096号に記載のものを使用することができる。また、これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0041】
<バインダー組成物の調製方法>
そして、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物は、特に限定されることなく、例えば、上述した界面活性剤を用いて調製した粒子状重合体を含む分散液、および、任意に配合されるその他の成分を混合することにより、調製することができる。なお、粒子状重合体の分散液を用いてバインダー組成物を調製する場合には、粒子状重合体の分散液が含有している液分をそのままバインダー組成物の分散媒として利用してもよい。
【0042】
(非水系二次電池電極用スラリー組成物)
本発明の非水系二次電池電極用スラリー組成物は、電極活物質と、上述したバインダー組成物とを含み、任意に、水溶性高分子およびその他の成分を更に含有する。即ち、本発明の非水系二次電池電極用スラリー組成物は、通常、電極活物質と、上述した粒子状重合体と、界面活性剤とを含有し、任意に、その他の成分と、分散媒などとを更に含有する。そして、本発明の非水系二次電池電極用スラリー組成物は、上述したバインダー組成物を含んでいるので、分散性が高く、また、電極の電極合材層の形成に用いた際に、電極活物質同士および電極活物質と集電体とを良好な密着性を持って結着させることができる。従って、本発明の非水系二次電池電極用スラリー組成物を使用すれば、電極合材層を良好に形成して、粉落ちを抑制した電極が得られる。また、上記バインダー組成物を含むスラリー組成物を用いて形成した電極を使用すれば、充電時における電極上への金属析出を抑制し、非水系二次電池に優れた保存特性を発揮させることができる。
なお、以下では、一例として非水系二次電池電極用スラリー組成物がリチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物である場合について説明するが、本発明は下記の一例に限定されるものではない。
【0043】
<電極(負極)活物質>
電極活物質は、二次電池の電極において電子の受け渡しをする物質である。そして、リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、通常は、リチウムを吸蔵および放出し得る物質を用いる。
【0044】
具体的には、リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、例えば、炭素系負極活物質、金属系負極活物質、およびこれらを組み合わせた負極活物質などが挙げられる。
【0045】
ここで、炭素系負極活物質とは、リチウムを挿入(「ドープ」ともいう。)可能な、炭素を主骨格とする活物質をいい、炭素系負極活物質としては、例えば炭素質材料と黒鉛質材料とが挙げられる。
【0046】
そして、炭素質材料としては、例えば、易黒鉛性炭素や、ガラス状炭素に代表される非晶質構造に近い構造を持つ難黒鉛性炭素などが挙げられる。
ここで、易黒鉛性炭素としては、例えば、石油または石炭から得られるタールピッチを原料とした炭素材料が挙げられる。具体例を挙げると、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチ系炭素繊維、熱分解気相成長炭素繊維などが挙げられる。
また、難黒鉛性炭素としては、例えば、フェノール樹脂焼成体、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、擬等方性炭素、フルフリルアルコール樹脂焼成体(PFA)、ハードカーボンなどが挙げられる。
【0047】
更に、黒鉛質材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などが挙げられる。
ここで、人造黒鉛としては、例えば、易黒鉛性炭素を含んだ炭素を主に2800℃以上で熱処理した人造黒鉛、MCMBを2000℃以上で熱処理した黒鉛化MCMB、メソフェーズピッチ系炭素繊維を2000℃以上で熱処理した黒鉛化メソフェーズピッチ系炭素繊維などが挙げられる。
【0048】
また、金属系負極活物質とは、金属を含む活物質であり、通常は、リチウムの挿入が可能な元素を構造に含み、リチウムが挿入された場合の単位質量当たりの理論電気容量が500mAh/g以上である活物質をいう。金属系活物質としては、例えば、リチウム金属、リチウム合金を形成し得る単体金属(例えば、Ag、Al、Ba、Bi、Cu、Ga、Ge、In、Ni、P、Pb、Sb、Si、Sn、Sr、Zn、Tiなど)およびその合金、並びに、それらの酸化物、硫化物、窒化物、ケイ化物、炭化物、燐化物などが用いられる。これらの中でも、金属系負極活物質としては、ケイ素を含む活物質(シリコン系負極活物質)が好ましい。シリコン系負極活物質を用いることにより、リチウムイオン二次電池を高容量化することができるからである。
【0049】
シリコン系負極活物質としては、例えば、ケイ素(Si)、ケイ素を含む合金、SiO、SiO
x、Si含有材料を導電性カーボンで被覆または複合化してなるSi含有材料と導電性カーボンとの複合化物などが挙げられる。なお、これらのシリコン系負極活物質は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
中でも、リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、炭素系負極活物質を用いることが好ましく、黒鉛質材料がより好ましく、人造黒鉛が更に好ましい。
【0051】
<水溶性高分子>
ここで、スラリー組成物は、上述のバインダー組成物および電極活物質に加え、水溶性高分子を更に含むことが好ましい。スラリー組成物が水溶性高分子を更に含めば、当該水溶性高分子が、粒子状重合体に対する親水性保護コロイドとして機能するため、スラリー組成物の調製において、粒子状重合体および電極活物質などをより良好に分散させることができることに加え、当該スラリー組成物に適度な粘度を付与することにより、更に良好な塗工性などの塗料特性を付与する効果が得られるからである。また、スラリー組成物が水溶性高分子を更に含めば、当該スラリー組成物を用いて作製される電極の密着性を更に向上させることができるからである。なお、スラリー組成物中での水溶性高分子の配合量を、例えば表1に示した量などに適切に抑えることにより、製造された二次電池の充放電の際に、当該水溶性高分子が電気化学的に分解され、充放電効率を悪化させることを抑制でき、二次電池における保存特性をより良好にすることができる。そして、当該水溶性高分子が担う上述した保護コロイドとしての機能は、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物および非水系二次電池電極用スラリー組成物のように、界面活性剤を少量のみ含む場合に、とりわけ有用である。
【0052】
ここで、スラリー組成物の調製に水溶性高分子を用いた場合に上述の効果が得られる理由は明らかではないが、以下の通りであると推察される。
即ち、併用される水溶性高分子は、スラリー組成物中において、粒子状重合体の保護コロイドとしての役割を担うため、当該粒子状重合体を電極活物質表面により良好に分散させ、粒子状重合体と電極活物質とをより均質的に混合させることができる。また、粒子状重合体に対する当該水溶性高分子の保護コロイドとしての効果に起因して、スラリー組成物中における、粒子状重合体などの凝集物の発生をより抑制することができるため、電極上での金属析出をより効果的に抑制することができる。更に、当該水溶性高分子は、粒子状重合体の電極活物質表面への吸着性を促進するため、製造された二次電池内において、当該電極活物質表面での電解液の劣化を更に抑制することができ、二次電池の保存特性をより向上させ得る。
【0053】
水溶性高分子としては、特に限定されることなく、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロースなどのセルロース化合物、およびこれらのアンモニウム塩やアルカリ金属塩などの塩類といったセルロース系重合体;カゼイン;アルキルデンプン、カルボキシルメチルデンプン、酸化デンプン、リン酸デンプンなどの各種変性デンプン;ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリスルホン酸、ポリカルボン酸;(メタ)アクリル酸共重合体及びこれらの鹸化物;アクリルアミド系重合体、およびこれらのアンモニウム塩やアルカリ金属塩などの塩類;アラビアゴム、トラガントゴム、キサンタンガム、グアーガム、アルギン酸またはその金属塩等を挙げることができる。これらは1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用して用いることができる。
中でも、水溶性高分子としては、セルロース系重合体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩がより好ましく、強い保護コロイド性および優れた分散安定性を発揮する観点からは、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩が更に好ましい。
【0054】
<その他の成分>
スラリー組成物に配合し得るその他の成分としては、特に限定することなく、本発明のバインダー組成物に配合し得るその他の成分と同様のものが挙げられる。なお、その他の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0055】
<負極用スラリー組成物の調製方法>
上述したスラリー組成物は、上記各成分を水などの分散媒中に分散または溶解させることにより調製することができる。具体的には、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、らい潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、遊星型ミキサー、プラネタリーミキサー、フィルミックスなどの混合機を用いて上記各成分と分散媒とを混合することにより、スラリー組成物を調製することができる。なお、上記各成分と分散媒との混合は、通常、室温〜80℃の範囲で、10分〜数時間行うことができる。また、スラリー組成物の調製に用いる分散媒としては、バインダー組成物と同様のものを用いることができる。そして、スラリー組成物の調製に用いる分散媒には、バインダー組成物が含有していた分散媒も含まれ得る。
【0056】
(非水系二次電池用電極)
本発明の非水系二次電池用電極は、上記非水系二次電池電極用スラリー組成物を用いて形成されたものであり、通常は、集電体と、集電体上に形成された電極合材層とを有している。そして、電極合材層には、少なくとも、電極活物質と、所定の粒子径を有する粒子状重合体と、所定量の界面活性剤とが含有されており、水溶性高分子が更に含有されていることが好ましい。なお、電極合材層中に含まれている各成分は、上記非水系二次電池電極用スラリー組成物中に含まれていたものであり、それら各成分の好適な存在比は、スラリー組成物中の各成分の好適な存在比と同じである。
なお、粒子状重合体は、バインダー組成物中およびスラリー組成物中では粒子形状で存在するが、スラリー組成物を用いて形成された電極合材層中では、粒子形状であってもよいし、その他の任意の形状であってもよい。
【0057】
そして、本発明の非水系二次電池用電極では、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物を含むスラリー組成物を使用しているので、電極合材層に含まれる成分同士、および、電極合材層と集電体とが良好な密着性を有する。また、本発明の非水系二次電池用電極は、本発明の非水系二次電池電極用バインダー組成物を含むスラリー組成物を使用して形成しているので、当該電極を使用すれば、充電時における電極上への金属析出を抑制でき、かつ、電池抵抗が上昇し難い二次電池が得られる。
なお、以下では、一例として非水系二次電池用電極がリチウムイオン二次電池用負極である場合について説明するが、本発明は下記の一例に限定されるものではない。
【0058】
<集電体>
ここで、集電体としては、電気導電性を有し、かつ、電気化学的に耐久性のある材料が用いられる。具体的には、集電体としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などの金属材料からなる集電体を用い得る。なお、前記の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0059】
<電極の製造方法>
なお、本発明の非水系二次電池用電極は、例えば、上述したスラリー組成物を集電体上に塗布する工程(塗布工程)と、集電体上に塗布されたスラリー組成物を乾燥して集電体上に電極合材層を形成する工程(乾燥工程)とを経て製造される。
【0060】
[塗布工程]
上記スラリー組成物を集電体上に塗布する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。具体的には、塗布方法としては、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などを用いることができる。この際、スラリー組成物を集電体の片面だけに塗布してもよいし、両面に塗布してもよい。塗布後乾燥前の集電体上のスラリー膜の厚みは、乾燥して得られる電極合材層の厚みに応じて適宜に設定しうる。
【0061】
[乾燥工程]
集電体上のスラリー組成物を乾燥する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥法、真空乾燥法、赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。このように集電体上のスラリー組成物を乾燥することで、集電体上に電極合材層を形成し、集電体と電極合材層とを備える非水系二次電池用電極を得ることができる。
【0062】
なお、乾燥工程の後、金型プレスまたはロールプレスなどを用い、電極合材層に加圧処理を施してもよい。加圧処理により、電極合材層と集電体との密着性を向上させることができる。また、電極合材層が硬化性の重合体を含む場合は、電極合材層の形成後に前記重合体を硬化させることが好ましい。
【0063】
(非水系二次電池)
本発明の非水系二次電池は、正極、負極、および電解液を備え、正極および負極の少なくとも一方を、上述した非水系二次電池用電極とすることを特徴とする。つまり、本発明の非水系二次電池は、二次電池の正極が本発明の非水系二次電池用電極であり負極が他の既知の負極であってもよく、二次電池の負極が本発明の非水系二次電池用電極であり正極が他の既知の正極であってもよく、そして、二次電池の正極および負極の両方が本発明の非水系二次電池用電極であってもよい。中でも、二次電池の負極が本発明の非水系二次電池用電極であることが好ましい。
また、本発明の非水系二次電池は、前記正極、負極、および電解液以外に、正極と負極とを隔離して正極と負極との間の短絡を防ぐセパレータ等の既知の電池部材が含まれていてもよい。ここで、二次電池が備える正極、負極、およびセパレータ等の電池部材は、通常、セパレータの片側に正極が、セパレータの他方の片側に負極が接するように配置される。より具体的には、セパレータの片側に正極合材層側が、セパレータの他方の片側に負極合材層側が、それぞれセパレータと接するように配置される。また、特に制限されることなく、例えば、これらの電池部材を既知の電池容器に入れ、既知の組立方法を用いることにより二次電池を製造することができる。
そして、本発明の非水系二次電池は、本発明の非水系二次電池用バインダー組成物を用いて作製された電極を備えているため、電極の密着性の向上、充電時の電極上への金属析出の抑制、および保存特性の向上を並立することができる。
【0064】
<正極>
正極としては、既知の正極を用いることができる。具体的には、正極としては、特に限定されることなく、集電体と、集電体上に形成された正極合材層とを有する正極を用いることができる。そして、正極合材層は、通常、正極活物質、導電助剤、および結着材を含有する。
ここで、集電体、正極合材層中の正極活物質、導電助剤、および結着材、並びに、集電体上への正極合材層の形成方法には、既知のものを用いることができ、例えば特開2013−145763号公報に記載のものを用いることができる。
【0065】
<<正極用活物質>>
具体的には、正極活物質としては、特に限定されることなく、リチウム含有コバルト酸化物(LiCoO
2)、マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)、リチウム含有ニッケル酸化物(LiNiO
2)、Co−Ni−Mnのリチウム含有複合酸化物(Li(Co Mn Ni)O
2)、Ni−Mn−Alのリチウム含有複合酸化物、Ni−Co−Alのリチウム含有複合酸化物、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO
4)、オリビン型リン酸マンガンリチウム(LiMnPO
4)、Li
2MnO
3−LiNiO
2系固溶体、Li
1+xMn
2-xO
4(0<X<2)で表されるリチウム過剰のスピネル化合物、Li[Ni
0.17Li
0.2Co
0.07Mn
0.56]O
2、LiNi
0.5Mn
1.5O
4等の既知の正極活物質が挙げられる。
なお、正極活物質の配合量や粒子径は、特に限定されることなく、従来使用されている正極活物質と同様とすることができる。
【0066】
<<導電助剤>>
また、導電助剤としては、カーボンブラック、アセチレンブラックなどの粒子状炭素材料;気相成長炭素繊維、有機繊維を炭化して得られる炭素繊維、カーボンナノチューブなどの繊維状炭素材料;等が挙げられる。中でも、導電助剤としては、アセチレンブラックが好ましい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
なお、正極活物質および導電助剤の配合量は、特に限定されることなく、従来使用されている正極活物質および導電助剤と同様とすることができる。
【0067】
<<結着材>>
更に、結着材としては、特に限定されることなく、上述した粒子状重合体および水溶性高分子以外の既知の結着材、例えば、フッ素含有重合体を用いることができる。フッ素含有重合体としては、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。結着材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
なお、結着材の配合量は、特に限定されることなく、従来使用されている結着材と同様とすることができる。
【0068】
<電解液>
電解液としては、通常、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。例えば、非水系二次電池がリチウムイオン二次電池である場合には、支持電解質としては、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF
6、LiAsF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAlCl
4、LiClO
4、CF
3SO
3Li、C
4F
9SO
3Li、CF
3COOLi、(CF
3CO)
2NLi、(CF
3SO
2)
2NLi、(C
2F
5SO
2)NLiなどが挙げられる。なかでも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すので、LiPF
6、LiClO
4、CF
3SO
3Liが好ましく、LiPF
6が特に好ましい。なお、電解質は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。通常は、解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導性が高くなる傾向があるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導性を調節することができる。
【0069】
また、電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類;などが好適に用いられる。またこれらの溶媒の混合液を用いてもよい。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広いのでカーボネート類を用いることが好ましく、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物を用いることが更に好ましい。
また、電解液には、既知の添加剤、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)やエチルメチルスルホンなどを添加してもよい。
【0070】
<セパレータ>
セパレータとしては、特に限定されることなく、例えば、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)の樹脂を用いた微多孔膜、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルスルフォン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアラミド、ポリシクロオレフィン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂を用いた微多孔膜、ポリオレフィン系の繊維を用いた織布または不織布、絶縁性物質よりなる粒子の集合体等が挙げられる。これらの中でも、セパレータ全体の膜厚を薄くすることができ、これにより、非水系二次電池内の電極合材層の比率を高くして体積あたりの容量を高くすることができるという点より、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)の樹脂を用いた微多孔膜が好ましい。中でも、ポリプロピレンの樹脂からなる微多孔膜がより好ましい。
【0071】
<組立方法>
そして、本発明の非水系二次電池は、特に制限されることなく、既知の組立方法を用いて非水系二次電池を製造することができる。具体的には、本発明の非水系二次電池は、例えば、上述で得られた負極と、正極と、セパレータとを必要に応じて電池形状に巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することにより、非水系二次電池を製造することができる。非水系二次電池の内部圧力の上昇、過充放電等の発生を防止するために、必要に応じて、ヒューズ、PTC素子等の過電流防止素子、エキスパンドメタル、リード板などを設けてもよい。二次電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
【0072】
<後処理>
ここで、二次電池の製造においては、例えば、上述の通り組み立てた二次電池を所定の充電深度まで充電(初期充電処理)し、当該初期充電された非水系二次電池を加温した状態で所定時間保存(エージング処理)するなどの後処理を施してもよい。
なお、二次電池に初期充電処理を施す場合は、電極合材層上に良好な固体電解質皮膜を効率的に形成させる観点から、例えば、電圧は3.30V以上4.00V以下とすることが好ましい。
また、二次電池にエージング処理を施す場合の加熱温度は、例えば、温度25℃以上とすることができ、40℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましく、85℃以下とすることができ、70℃以下が好ましい。更に、加熱した二次電池の加熱保持時間は、例えば、1時間以上とすることができ、5時間以上が好ましく、10時間以上がより好ましく、50時間以下とすることができる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
そして、粒子状重合体の体積平均粒子径、ガラス転移温度、および電解液ゲル含有割合;バインダー組成物に含まれる界面活性剤の含有量;負極の密着性;二次電池における充電時の負極上へのリチウム金属析出状態、および保存特性;は、下記の方法で測定および評価した。
また、複数種類の単量体を共重合して製造される重合体において、ある単量体を重合して形成される単量体単位の前記重合体における割合は、別に断らない限り、通常は、その重合体の重合に用いる全単量体に占める当該ある単量体の比率(仕込み比)と一致する。
【0074】
<体積平均粒子径>
粒子状重合体の体積平均粒子径は、レーザー回折法にて測定した。具体的には、調製した粒子状重合体を含む水分散体(固形分濃度0.1質量%に調整)を試料とした。そして、レーザー回折式粒子径分布測定装置(ベックマン・コールター社製、製品名「LS−230」)を用いて測定された粒度分布(体積基準)において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径D50を、体積平均粒子径(μm)とした。結果を表1に示す。
【0075】
<ガラス転移温度>
粒子状重合体のガラス転移温度は、示差熱分析測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、製品名「DSC6220」、基準物質:アルミニウム)を用いて測定した。具体的には、まず、調製した粒子状重合体を含む水分散体を、相対湿度50±5%、温度23〜26℃の環境下で3日間自然乾燥させることにより、厚み1±0.3mmのフィルムを得た。次に、得られたフィルムを、温度60℃下の真空乾燥機を用いて10時間乾燥させた。そして、乾燥させたフィルムを測定試料として、JIS K7121に準じて、測定温度−100℃〜180℃、昇温速度5℃/分の間で測定することにより、ガラス転移温度(℃)を求めた。結果を表1に示す。
【0076】
<電解液ゲル含有割合>
粒子状重合体の電解液ゲル含有割合は、粒子状重合体の全固形分の質量に対する粒子状重合体の固形分のうち、テトラヒドロフラン(THF)に不溶な固形分の質量の割合(質量%)として求めることができる。具体的には、まず、調製した粒子状重合体を含む水分散体を、相対湿度50±5%、温度23〜25℃の環境下で乾燥させて、厚み1±0.3mmのフィルムを得た。次に、得られたフィルムを、温度60℃下の真空乾燥機を用いて10時間乾燥させた。そして、当該乾燥させたフィルムを一辺が3mm以上5mm以下の略正方形状に裁断することにより、乾燥フィルム片を用意した。用意した乾燥フィルム片を精秤し、得られた乾燥フィルム片の質量をW0とした。
続いて、精秤された乾燥フィルム片を、50gのTHFに、温度23〜27℃の環境下で24時間浸漬させ、溶解させた。その後、THFから引き揚げた残留フィルム片を、温度105℃下にて3時間真空乾燥した後に、当該乾燥させた残留フィルム片を精秤し、得られた残留フィルム片(つまりTHFへの不溶分)の質量をW1とした。
そして、下記式(I):
電解液ゲル含有割合=(W1/W0)×100・・・(I)
に従って、電解液ゲル含有割合(質量%)を算出した。結果を表1に示す。
【0077】
<界面活性剤の含有量>
バインダー組成物に含まれる界面活性剤の含有量は、液体クロマトグラフィーを用いて以下の通り測定した。具体的には、調製したバインダー組成物を後述の方法にて透析精製し、当該透析精製に用いた透析終了後のイオン交換水を測定用試料とした。そして、当該測定用試料を以下の条件にて分析し、イオン交換水中に透析除去された界面活性剤の量を定量した。
そして、粒子状重合体の調製に用いた界面活性剤の全配合量から、当該定量された界面活性剤の透析除去量を差し引くことにより、透析精製後のバインダー組成物に含まれる界面活性剤の含有量(質量部)を算出した。結果を表1に示す。
<<測定条件>>
カラム :Agilent社製、製品名「ZORBAX XDP−C18(3.0×50mm、1.8μ)」
カラム温度:40℃
流速 :0.75mL/分
注入量 :5μL
検出器 :DAD λ=210nm Ref=off
移動相 :グラジエント条件、30mM−過塩素酸ナトリウム(pH=3.1リン酸)/アセトニトリル
【0078】
<負極の密着性>
電極(負極)の密着性は、以下の通り粉落ち性を測定することにより評価した。具体的には、プレス後の負極電極から5cm×5cmの略正方形状を切り出し、当該切り出した負極片の質量(X0)を測定した。次に、測定した負極片を500mlのガラス瓶に入れ、振とう機を用いて、100rpmの回転数にて30分間振とうさせた。その後、振とうさせた負極片の質量(X1)を測定した。そして、下記式(II):
粉落ち性=(X0−X1)/X0×100・・・(II)
に従って粉落ち性(質量%)を算出することにより、負極の密着性を以下の基準により評価した。粉落ち性の値が小さい(耐粉落ち性が高い)ほど、負極から電極活物質等が脱落することなく、密着性に優れることを示す。結果を表1に示す。
A:粉落ち性が2質量%未満
B:粉落ち性が2質量%以上5質量%未満
C:粉落ち性が5質量%以上
【0079】
<リチウム金属析出状態>
二次電池における充電時の負極上へのリチウム金属析出の状態は、以下の通り目視観察した。具体的には、製造したラミネートセル型のリチウムイオン二次電池において、電解液注液後の当該二次電池を、温度25℃下、5時間静置させた。静置させた二次電池を、温度25℃の環境下、0.2Cのレートでの定電流法により、セル電圧3.65Vまで初期充電した。その後、初期充電した二次電池を、温度60℃下で12時間エージング処理を行った。また、エージング処理を行った二次電池を、温度25℃の環境下、0.2Cのレートでの定電流法により、セル電圧3.00Vまで放電を行うことにより初期充放電を完了した。
また、初期充放電した二次電池を、0.2Cのレートでの定電流、上限セル電圧4.30Vの条件にて、定電流定電圧充電を行い、更に、定電流定電圧充電を行った二次電池を、0.2Cのレートでの定電流、下限セル電圧3.00Vの条件にて定電流放電を行った。
加えて、定電流放電を行った上記二次電池を、温度25℃の環境下で、セル電圧4.30V〜3.00V間で、0.5Cのレートでの定電流充放電を10回実施した。その後、更に、温度25℃の環境下で、0.5Cのレートでの定電流、上限セル電圧4.30Vの条件にて、定電流定電圧充電を行った。
当該二次電池を不活性ガスであるアルゴン雰囲気化で分解して負極を取り出し、取り出した負極をジエチルカーボネートで洗浄した。そして、洗浄した負極の表面を目視にて観察することにより、以下の基準により、負極表面上に析出されたリチウム金属の状態を評価した。
A:負極表面上にリチウム金属の析出が観察されない
B:負極表面上に観察されるリチウム金属の析出範囲が、負極充電面積の50%未満
C:負極表面上に観察されるリチウム金属の析出範囲が、負極充電面積の50%以上
【0080】
<保存特性>
二次電池における保存特性は以下の通り放電容量の保存安定性として評価した。具体的には、製造したラミネートセル型のリチウムイオン二次電池において、電解液注液後の当該二次電池を、温度25℃の環境下、5時間静置させた。静置させた二次電池を、温度25℃の環境下、0.2Cのレートでの定電流法により、セル電圧3.65Vまで初期充電した。その後、初期充電した二次電池を、温度60℃の環境下で12時間エージング処理を行った。また、エージング処理を行った二次電池を、温度25℃の環境下、0.2Cのレートでの定電流法により、セル電圧3.00Vまで初期放電を行った。
また、初期放電した二次電池を、0.2Cのレートでの定電流、上限セル電圧4.30Vの条件にて、定電流定電圧充電を行い、更に、定電流定電圧充電を行った二次電池を、0.2Cのレートでの定電流、下限セル電圧3.00Vの条件にて定電流放電を行った。
加えて、定電流放電を行った上記二次電池を、温度25℃の環境下で、セル電圧4.30V〜3.00V間で、0.2Cのレートでの定電流充放電を実施した。その後、上記同様に、温度25℃の環境下で、0.2Cのレートでの定電流にて定電流定電圧充電(上限セル電圧4.30V)を行い、更に、定電流定電圧充電を行った二次電池を、0.2Cのレートでの定電流にて定電流放電(下限セル電圧3.00V)を実施した。そして、この時の二次電池の放電容量(C0)を測定した。
続いて、上記二次電池を、温度25℃の環境下、0.2Cのレートでの定電流にて、セル電圧4.30Vまで定電流定電圧充電を行った。その後、当該定電流定電圧充電を行った二次電池を、温度55℃の環境下に2週間放置した。放置後、温度25℃の環境下にて、0.2Cのレートでの定電流にて、セル電圧3.00Vまで定電流放電した。そして、この時の二次電池の放電容量(C1)を測定した。
そして、下記式(III):
放電容量の差ΔC=C1/C0×100・・・(III)
に従って放電容量の差ΔC(%)を求め、二次電池における放電容量の保存安定度を示す保存特性として、以下の基準により評価した。ΔC値が大きいほど保存特性に優れることを示す。結果を表1に示す。
A:放電容量の差ΔCが90%以上
B:放電容量の差ΔCが80%以上90%未満
C:放電容量の差ΔCが80%未満
【0081】
(実施例1)
<粒子状重合体の調製>
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、エチレン性不飽和カルボン酸単量体としてイタコン酸3部、その他の単量体単位を形成し得る単量体である、芳香族ビニル単量体としてスチレン37部および脂肪族共役ジエン単量体として1,3−ブタジエン60部、分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン0.3部、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4.0部、溶媒としてイオン交換水270部、および重合開始剤として過硫酸カリウム1部を入れ、十分に攪拌した後、55℃に加温、維持して、重合反応を開始した。
単量体消費量が95.0%になった時点で冷却して重合反応を停止し、重合体を含む水分散体を得た。得られた重合体を含む水分散体に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、当該重合体を含む水分散体をpH8に調整した。その後、加熱減圧蒸留によって、重合体を含む水分散体から未反応単量体を除去した。更に、未反応単量体を除去した重合体を含む水分散体を温度30℃以下まで冷却することにより、粒子状重合体の水分散体を得た。
そして、得られたバインダー組成物を用いて、当該バインダー組成物に含まれる粒子状重合体の体積平均粒子径、ガラス転移温度、および電解液ゲル含有割合を上述の方法によって測定した。結果を表1に示す。
【0082】
<バインダー組成物の調製>
続いて、得られた粒子状重合体の水分散体を、セルロース製チューブ(和光純薬工業製)に入れ、イオン交換水中に1週間浸漬させることにより、粒子状重合体の水分散体中に含まれる界面活性剤をイオン交換水中に移動除去させた。このように、粒子状重合体の水分散体を透析精製して、粒子状重合体の調製に用いた界面活性剤を所定量まで除去することにより、非水系二次電池電極用バインダー組成物を得た。
そして、調製されたバインダー組成物を用いて、透析精製後のバインダー組成物に含まれる界面活性剤の含有量を上述の方法によって測定した。結果を表1に示す。
【0083】
<負極用スラリー組成物の調製>
プラネタリーミキサーに、負極活物質としての人造黒鉛(放電容量:360mAh/g相当)を97.5部、上述で得られたバインダー組成物を粒子状重合体の固形分相当で1.5部、および水溶性高分子としてのカルボキシメチルセルロースのナトリウム(Na)塩(日本製紙社製、製品名「MAC350H」)の4.5%水溶液を固形分相当で1.0部配合し、当該混合物を、更にイオン交換水にて固形分濃度が60%となるように希釈した。その後、希釈した混合物を、遊星型ミキサー(プライミックス社製、製品名「T.K.HIVISMIX 2P−03」)を用いて、回転数40rpmにて60分間混練することにより、ペースト状にした。さらに、得られたペースト状の混合物を、B型粘度計(TOKI社製、製品名「RB−80L」、回転数12rpm)の測定値で粘度が1100±100mPa・sとなるようにイオン交換水80部を加えることにより、負極用スラリー組成物を調製した。なお、得られた負極用スラリー組成物の固形分濃度は45%であった。
【0084】
<負極の作製>
上述で得られた負極用スラリー組成物を、コンマコーターを用いて、集電体としての銅箔(厚み:15μm)の片面に、乾燥後(負極合材層)の塗布量が11.8mg/cm
2以上12.2mg/cm
2以下となるように塗布した。次に、当該負極用スラリー組成物が塗布された銅箔を、0.3m/分の速度で、温度80℃のオーブン内を2分間、さらに温度110℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより、銅箔上のスラリー組成物を乾燥させ、プレス前の負極原反を得た。
続いて、当該プレス前の負極原反を、ロールプレス機を用いて、プレス後の密度が1.68g/cm
3以上1.72g/cm
3以下になるようプレスした。そして、負極合材層からの水分除去および負極合材層内における架橋の更なる促進を目的として、プレス前の負極原反を、真空条件下、温度105℃の環境下に4時間置くことにより、負極を得た。
そして、得られた負極を用いて、負極の密着性を上述の方法で測定、評価した。結果を表1に示す。
【0085】
<正極用スラリー組成物の調製>
プラネタリーミキサーに、正極活物質としてのLiCoO
2を100部、導電助剤としてのアセチレンブラック(電気化学工業社製、製品名「HS−100」)を2部、および結着材としてのポリフッ化ビニリデン(クレハ化学社製、製品名「KF−1100」)を2部加えた。更に、当該混合物の全固形分濃度が67%となるようにN−メチル−2−ピリロドンを加えて混合することにより、正極用スラリー組成物を調製した。
【0086】
<正極の作製>
上述で得られた正極用スラリー組成物を、コンマコーターを用いて、集電体としてのアルミニウム箔(厚み:20μm)の片面に、乾燥後(正極合材層)の塗布量が26.5mg/cm
2以上27.5mg/cm
2以下となるように塗布した。次に、当該正極用スラリー組成物が塗布されたアルミニウム箔を、0.5m/分の速度で、温度60℃のオーブン内を2分間、更に温度120℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより、アルミニウム箔上のスラリー組成物を乾燥させ、プレス前の正極原反を得た。
続いて、当該プレス前の正極原反を、ロールプレス機を用いて、プレス後の密度が3.40g/cm
3以上3.50g/cm
3以下になるようプレスした。そして、正極合材層からの水分除去を目的として、プレス前の正極原反を、真空条件下、温度120℃の環境下に3時間置くことにより、正極を得た。
【0087】
<非水系二次電池の製造>
単層のポリプロピレン製セパレータ(製品名「セルガード2500」、切り出しサイズ:4.0cm×5.0cm)、上述で得られたプレス後の正極(切り出しサイズ:2.8cm×3.8cm)、および上述で得られたプレス後の負極(切り出しサイズ:3.0cm×4.0cm)を、セパレータの各面にそれぞれ正極合材層および負極合材層が向かい合うように配置し、単層セルを得た。更に、当該扁平体を、電池の外装としてのアルミ包材外装で包み、濃度1.0MのLiPF
6電解液(混合溶媒:エチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)=3/7(体積比)、添加剤:ビニレンカーボネート(VC)=2体積%(溶媒比))を空気が残らないように注入した。そして、温度150℃で、当該アルミ包材外装の開口をヒートシールし、アルミ包材外装を密封閉口することにより、30mAh相当の、単層ラミネートセル型セルであるリチウムイオン二次電池を製造した。
そして、製造したリチウムイオン二次電池について、充電時の負極上へのリチウム金属の析出状態、および保存特性を上述の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0088】
(実施例2)
粒子状重合体の調製において、エチレン性不飽和カルボン酸単量体としてのイタコン酸を4部、その他の単量体単位を形成し得る単量体である、芳香族ビニル単量体としてのスチレンを48部および脂肪族共役ジエン単量体としての1,3−ブタジエンを48部に変更し、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを8.0部に変更した以外は実施例1と同様にして、粒子状重合体、バインダー組成物、負極用スラリー組成物、正極用スラリー組成物、負極、正極、およびリチウムイオン二次電池を製造した。
そして、実施例1と同様にして測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
(実施例3)
粒子状重合体の調製において、エチレン性不飽和カルボン酸単量体としてのイタコン酸を5部、その他の単量体単位を形成し得る単量体である、芳香族ビニル単量体としてのスチレンを47部および脂肪族共役ジエン単量体としての1,3−ブタジエンを48部に変更した以外は実施例1と同様にして、粒子状重合体、バインダー組成物、負極用スラリー組成物、正極用スラリー組成物、負極、正極、およびリチウムイオン二次電池を製造した。
そして、実施例1と同様にして測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
(実施例4)
粒子状重合体の調製において、エチレン性不飽和カルボン酸単量体としてのイタコン酸を5部、その他の単量体単位を形成し得る単量体である、芳香族ビニル単量体としてのスチレンを45部および脂肪族共役ジエン単量体としての1,3−ブタジエンを45部に変更し、かつ、(メタ)アクリル酸エステル単量体としてのメチルメタクリレートを5部追加した。また、t−ドデシルメルカプタンを0.35部に変更した以外は実施例1と同様にして、粒子状重合体、バインダー組成物、負極用スラリー組成物、正極用スラリー組成物、負極、正極、およびリチウムイオン二次電池を製造した。
そして、実施例1と同様にして測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0091】
(実施例5)
粒子状重合体の調製において、界面活性剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムに替えて、ドデシルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウムを使用した以外は実施例1と同様にして、粒子状重合体、バインダー組成物、負極用スラリー組成物、正極用スラリー組成物、負極、正極、およびリチウムイオン二次電池を製造した。
そして、実施例1と同様にして測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0092】
(比較例1)
粒子状重合体の調製において、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを2.0部に変更した以外は実施例1と同様にして、粒子状重合体、バインダー組成物、負極用スラリー組成物、正極用スラリー組成物、負極、正極、およびリチウムイオン二次電池を製造した。
そして、実施例1と同様にして測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0093】
(比較例2)
バインダー組成物の調製において透析精製を行わず、得られた粒子状重合体の水分散体をそのままバインダー組成物として使用した以外は実施例1と同様にして、粒子状重合体、バインダー組成物、負極用スラリー組成物、正極用スラリー組成物、負極、正極、およびリチウムイオン二次電池を製造した。
そして、実施例1と同様にして測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0094】
(比較例3)
粒子状重合体の調製において、その他の単量体単位を形成し得る単量体である、芳香族ビニル単量体としてのスチレンを64部および脂肪族共役ジエン単量体としての1,3−ブタジエンを33部に変更した。また、t−ドデシルメルカプタンを0.25部に変更し、界面活性剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを2.0部に変更した。
更に、バインダー組成物の調製において透析精製を行わず、得られた粒子状重合体の水分散体をそのままバインダー組成物として使用した以外は実施例1と同様にして、粒子状重合体、バインダー組成物、負極用スラリー組成物、正極用スラリー組成物、負極、正極、およびリチウムイオン二次電池を製造した。
そして、実施例1と同様にして測定、評価を行った。結果を表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
表1より、体積平均粒子径が0.1μm超である粒子状重合体を用いて製造した比較例1および3の二次電池では、体積平均粒子径が0.01μm以上0.1μm以下である粒子状重合体を用いて製造した実施例1〜5の二次電池と比較し、負極の密着性、負極上へのリチウム金属の析出状態、および保存特性の全てにおいて顕著に悪化することが分かる。
また、界面活性剤の含有量が粒子状重合体100質量部に対して1.0質量部超である比較例2および3の二次電池では、当該界面活性剤の含有量が0.1質量部以上1.0質量部以下と少量である実施例1〜5の二次電池と比較し、保存特性が顕著に悪化することが分かる。更に、比較例2の二次電池では、実施例1〜5の二次電池と比較し、負極上へのリチウム金属の析出が増大していることが分かる。