(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の基板および第2の基板が接触する接触領域を前記第1の基板および前記第2の基板の一部に形成し、前記接触領域が前記一部から拡大するように前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせる基板貼り合わせ装置であって、
前記接触領域に関する情報を検出する検出部と、
前記検出部で検出した前記情報に基づいて、前記第1の基板および前記第2の基板が搬出可能であること、および、前記第1の基板および前記第2の基板の貼り合わせが完了したこと、の少なくとも一方を判断する判断部と、
前記判断部によって、搬出可能であることおよび貼り合わせの完了の少なくとも一方が判断されたことに応じて、前記第1の基板および前記第2の基板を搬出する搬出部と
を備える基板貼り合わせ装置。
前記判断部は、前記光学的特性の値が一定となったとき、または、前記値の変化率が所定の値よりも小さくなったときに、搬出可能であることおよび貼り合わせの完了の少なくとも一方を判断する請求項4から7のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
前記情報は、前記第1の基板および前記第2の基板の距離の変化に関する情報、および、前記第1の基板および前記第2の基板の少なくとも一方と当該基板を保持する保持部との距離の変化に関する情報、の少なくとも一方を含む請求項1から8のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
前記判断部は、前記距離の値が一定となったとき、または、前記値の変化率が所定の値よりも小さくなったときに、搬出可能であることおよび貼り合わせの完了の少なくとも一方を判断する請求項9に記載の基板貼り合わせ装置。
前記情報は、前記第1の基板および前記第2の基板が接触していない非接触領域と前記接触領域との境界に関する情報であり、前記境界が、前記第1の基板および前記第2の基板の周縁部に向けて移動することにより、前記接触領域が広がり、
前記判断部は、前記境界の位置が所定の位置に達したときに、搬出可能であることおよび貼り合わせの完了の少なくとも一方を判断する請求項1または2に記載の基板貼り合わせ装置。
第1の基板および第2の基板が接触する接触領域を前記第1の基板および前記第2の基板の一部に形成し、前記接触領域が前記一部から拡大するように前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合せる基板貼り合せ方法であって、
前記接触領域に関する情報を検出する検出段階と、
前記検出段階で検出した前記情報に基づいて、前記第1の基板および前記第2の基板が搬出可能であること、および、前記第1の基板および前記第2の基板の貼り合わせが完了したこと、の少なくとも一方を判断する判断段階と、
前記判断段階で搬出可能であることおよび貼り合わせの完了の少なくとも一方が判断されたことに応じて、前記第1の基板および前記第2の基板を搬出する搬出段階と、
を含む基板貼り合わせ方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明する。下記の実施形態は、請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、基板貼り合わせ装置100の模式的平面図である。基板貼り合わせ装置100は、筐体110と、筐体110の外側に配された基板カセット120、130および制御部150と、筐体110の内部に配された搬送部140、貼り合わせ部300、ホルダストッカ400、およびプリアライナ500を備える。筐体110の内部は温度管理されており、例えば、室温に保たれる。
【0010】
一方の基板カセット120は、これから重ね合わせる複数の基板210を収容する。他方の基板カセット130は、基板210を重ね合わせて作製された複数の貼り合わせ基板230を収容できる。基板カセット120、130は、筐体110に対して個別に着脱できる。このように、基板カセット120を用いることにより、複数の基板210を一括して基板貼り合わせ装置100に搬入できる。また、基板カセット130を用いることにより、複数の貼り合わせ基板230を一括して基板貼り合わせ装置100から搬出できる。
【0011】
搬送部140は、筐体110の内部における搬送機能を担う。搬送部140は、単独の基板210、基板ホルダ220、基板210を保持した基板ホルダ220、基板210を積層して形成した貼り合わせ基板230等を搬送する。
【0012】
制御部150は、基板貼り合わせ装置100の各部を相互に連携させて統括的に制御する。また、制御部150は、外部からのユーザの指示を受け付けて、貼り合わせ基板230を製造する場合の製造条件を設定する。更に、制御部150は、基板貼り合わせ装置100の動作状態を外部に向かって表示するユーザインターフェイスも有する。
【0013】
貼り合わせ部300は、各々が基板210を保持して対向する一対のステージを有し、制御部150の制御の下に、ステージに保持した2つの基板210を相互に位置合わせした後、互いに接触させて貼り合わせる。これにより、基板210は、貼り合わせ基板230を形成する。尚、貼り合わせとは、2つの基板210にそれぞれ設けられた端子同士が基板210間で電気的に接続されている状態、および、2つの基板210の表面に形成された絶縁膜同士が接合しており基板210間に電気的な接続はされていない状態を含み、いずれの状態においても、2つの基板210の分離が可能な状態および不可能な状態の両方を含む。2つの基板210を貼り合わせた状態が分離可能な状態である場合は、2つの基板210を貼り合わせた後に、基板210をアニール炉のような加熱装置に搬入して加熱することが好ましい。
【0014】
ホルダストッカ400は、複数の基板ホルダ220を収容する。基板ホルダ220は、アルミナセラミックス等の硬質材料により形成され、基板210を吸着する保持部と、保持部の外側に配された縁部とを有する。基板貼り合わせ装置100の内部において、基板ホルダ220は個々に基板210を保持して、基板210と一体的に取り扱われる。これにより、反ったり撓んだりした基板210に平坦性を確保することができる。
【0015】
貼り合わせ基板230を基板貼り合わせ装置100から搬出する場合、基板ホルダ220は、貼り合わせ基板230から分離されて、再びホルダストッカ400に収容される。これにより、少数の基板ホルダ220を繰り返し使用できる。よって、基板ホルダ220は、基板貼り合わせ装置100の一部であると見做すこともできる。
【0016】
プリアライナ500は、搬送部140と協働して、基板貼り合わせ装置100に搬入された基板210を基板ホルダ220に保持させる。また、プリアライナ500は、貼り合わせ部300から搬出された貼り合わせ基板230を基板ホルダ220から分離する場合に使用してもよい。
【0017】
基板貼り合わせ装置100は、素子、回路、端子等が形成された基板210の他に、未加工のシリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、ガラス基板等を貼り合わせることもできる。また、回路が形成された回路基板と未加工の基板とを貼り合わせることも、回路基板同士、未加工基板同士等、同種の基板を貼り合わせることもできる。更に、接合される基板210は、それ自体が、既に複数の基板を積層して形成された貼り合わせ基板230であってもよい。
【0018】
図2は、基板貼り合わせ装置100において貼り合わせることができる基板210の模式的平面図である。基板210は、ノッチ214と、複数の回路領域216および複数のアライメントマーク218とを有する。
【0019】
ノッチ214は、全体として略円形の基板210の周縁に形成されて、基板210における結晶方位を示す指標となる。また、基板210を取り扱う場合は、ノッチ214の位置を検出することにより、基板210における回路領域216の配列方向等も知ることができる。更に、1枚の基板210に、互いに異なる回路を含む回路領域216が形成されている場合は、ノッチ214を基準にして、回路領域216を区別することができる。
【0020】
回路領域216は、基板210の表面に、基板210の面方向に周期的に配される。回路領域216の各々には、フォトリソグラフィ技術等より形成された半導体装置、配線、保護膜等が設けられる。回路領域216には、基板210を他の基板210、リードフレーム等に電気的に接続する場合に接続端子となるパッド、バンプ等も配される。
【0021】
アライメントマーク218は、例えば、回路領域216相互の間に配されたスクライブライン212に重ねて配され、基板210を積層対象である他の基板210と位置合わせする場合に指標として利用される。スクライブライン212は、最終的にダイシングにより無くなる領域なので、アライメントマーク218を設けることにより回路領域216の面積が圧迫されることはない。なお、アライメントマーク218は、回路領域216の内側に配してもよいし、回路領域216に形成された構造物の一部をアライメントマーク218として利用してもよい。
【0022】
図3は、基板貼り合わせ装置100において基板210を貼り合わせて貼り合わせ基板230を作製する手順を示す流れ図である。基板貼り合わせ装置100においては、制御部150が各部の動作を制御する。また、制御部150は、基板210の貼り合わせが完了したか否かを判断する判断部としても動作する。
【0023】
基板貼り合わせ装置100の内部においては、基板210を1枚ずつ基板ホルダ220に保持させた状態で操作する。よって、制御部150は、まず、プリアライナ500に、基板カセット120から取り出した基板210を一枚ずつ基板ホルダ220に保持させる。次いで、制御部150は、相互に貼り合わせる複数の基板210を、基板ホルダ220と共に貼り合わせ部300に搬入させる(ステップS101)。
【0024】
次に、制御部150は、貼り合わせ部300に搬入された基板210の各々に設けられたアライメントマーク218を検出する(ステップS102)。また、制御部150は、検出したアライメントマーク218の位置に基づいて、貼り合わせる複数の基板210の相対位置を検出する(ステップS103)。
【0025】
次に、制御部150は、基板210の表面を活性化する(ステップS104)。基板210は、例えば、基板210の表面をプラズマに暴露して清浄化することにより活性化できる。これにより、基板210を他の基板210に接触させた場合に、基板210同士が相互に接着されて一体化する。なお、基板210は、研磨等の機械的な処理、洗浄による化学的な処理によっても活性化できる。また、複数種類の活性化方法を併用してもよい。
【0026】
次に、制御部150は、貼り合わせる基板210の温度調節を開始する(ステップS105)。ここで実行される温度調節は、例えば、基板210の設計仕様に対する倍率差を補償する補正をするための温度調節である。また、基板210の反り等の変形を、温度調節以外の方法、例えば後述するアクチュエータを用いた補正手法と併せて補正してもよい。これにより、個々の基板210に固有の歪みがある場合であっても、複数の基板210を精度よく位置合わせできる。
【0027】
次に、制御部150は、貼り合わせる複数の基板210を相互に位置合わせする(ステップS106)。位置合わせは、ステップS103において検出した基板210の相対位置に基づいて、一方の基板210を他方の基板210に対して相対移動させることにより実行される。
【0028】
次に、制御部150は、基板210の一部に貼り合わせの起点を形成すべく、重ね合わせた基板210の一部を相互に接触させる(ステップS107)。互いに接触した一部は、基板210同士が接触した領域である接触領域であり、貼り合わせを開始するときに形成される接触領域である。起点は、面積を有する領域であってもよい。貼り合わせる一対の基板210における貼り合わせの起点は、一方の基板210の一部を他の基板210の一部に押し付けることにより、基板210の間に挟まれた雰囲気等が押し出されて、基板210同士が直接に接触して形成される。
この接触により、活性化された二つの基板210の接触領域が、水素結合のような化学結合により結合する。二つの基板210を一部で接触させた後、二つの基板210が互いに接触した状態を維持する。このとき、基板210同士を押し付けることにより、接触した一部の面積を大きくすることにより接触領域を広げてもよい。接触状態を維持した状態で所定の時間が経過すると、二つの基板210の貼り合わせの過程で基板210間に位置ずれが生じない大きさの結合力が二つの基板210の間に確保される。これにより、基板210の互いに接触した一部に貼り合わせの起点が形成される。
【0029】
なお、基板210の面方向について複数箇所に貼り合わせの起点が形成された場合、複数の起点に挟まれた領域に残された気泡を貼り合わせの過程で排出できなくなり、最終的に完成した貼り合わせ基板230にボイドが生じる場合がある。よって、2つの基板210を貼り合わせる場合は、基板210の1箇所に貼り合わせの起点を形成して、基板210同士が貼り合わされた領域である接触領域を当該貼り合わせの起点から拡げることにより基板210全体を貼り合わせることが好ましい。
【0030】
そこで、貼り合わせ部300で基板210を貼り合わせる場合は、例えば、貼り合わせる基板210の一方に隆起部分を形成し、当該隆起部分を他方の基板210に接触させることにより、予め決定したひとつの位置に貼り合わせの起点を形成する。なお、貼り合わせの起点を形成する場合は、複数箇所に起点が形成されることを防止する目的で、貼り合わせの起点が形成されるまでは、基板の隆起部分の形状を維持し続けることが好ましい。
【0031】
次に、制御部150は、一部が相互に押し付けられた基板210において、基板210の接触領域が形成されて、上記した所定の大きさの結合力が二つの基板210の間に確保されたか否かを調べる(ステップS108)。この段階で基板210が貼り合わされたことを検出する場合は、基板210の貼り合わせが開始されるきっかけとなる貼り合わせの起点が形成されたか否かを調べることになる。よって、ステップS108においては、ステップS107において基板210の一部を押し付けた領域か、当該領域に近い位置において、貼り合わせの起点となる領域が形成されたか否かを調べる。
【0032】
これにより、基板210に貼り合わせの起点が形成されたと判断された場合(ステップS108:YES)、すなわち、制御部150は、二つの基板210の接触した一部の間に、上記した所定の大きさの結合力が確保されたと判断した場合、少なくとも一方の基板210の保持を解除して当該基板210を解放し(ステップS109)、二つの基板210の接触領域を広げることにより相互に吸着しあって貼り合わされることを許容する。すなわち、貼り合わせ部300は、接触部を構成する。なお、ステップS108において基板210に起点が形成されていることが確認されない場合(ステップS108:NO)は、制御部150は、両方の基板210の保持を継続しつつ、貼り合わせの起点を形成すべく、基板210の一部を押し付け続ける。
【0033】
次に、制御部150は、基板210に形成された貼り合わせの起点から、基板210の接触領域が拡がっているか否かを調べる(ステップS110)。基板210の接触領域が拡大したか否かは、例えば、貼り合わせの起点が形成された領域とは異なる領域に、接触領域が形成されたか否かを調べることにより確認できる。
【0034】
ステップS110において、基板210の接触領域が拡大していることが確認されなかった場合(ステップS110:NO)、制御部150は、基板210の貼り合わせが何らかの理由で阻害されていると判断する。そこで、貼り合わせ部300の動作を停止する、外部に警報を伝える、貼り合わせ部300から貼り合わせ中の基板210を搬出する、等の対応を実行した後(ステップS111)、次の基板210の貼り合わせを開始すべく制御をステップS101に戻す。
【0035】
ステップS110において、基板210の接触領域が拡大していることが確認された場合(ステップS110:YES)、制御部150は、基板210の貼り合わせが進行しているものと判断して、制御を次のステップに進める。次に、制御部150は、基板210の貼り合わせが完了したか否かを調べる(ステップS112)。貼り合わせの完了は、例えば、基板210の接触領域が基板210の外縁に形成されたか否かを調べてもよい。これにより、制御部150は、基板210毎に貼り合わせに要する時間が異なる場合も、確実に貼り合わせの完了を確認できる。
【0036】
制御部150は、ステップS112において基板の貼り合わせが完了したことを確認した場合(ステップS112:YES)に、基板211、213に対する温度制御等を終了し、貼り合わせ基板230を搬送部140により貼り合わせ部300から搬出させる(ステップS113)。貼り合わせ部300から搬出された基板210は、貼り合わせ基板230と基板ホルダ220とに分離された上で、基板カセット130に収容される。
【0037】
また、制御部150は、ステップS112において基板の貼り合わせが完了したことを確認できない場合(ステップS112:NO)に、基板210の貼り合わせ完了が確認されるまで、基板210の貼り合わせ完了を繰り返し調べてもよいが、予め定めた閾値時間を過ぎても基板210の貼り合わせ完了が確認できない場合に、ステップS110:NOの場合と同様に、当該基板210の貼り合わせを中止してもよい。
【0038】
なお、制御部150は、ステップS110において基板210の接触領域が拡大したことを確認する場合に、基板210の接触領域が拡大する速さを併せて検出することにより、制御部150が、基板210の貼り合わせが完了する時間を予測してもよい。基板210の接触領域が拡大する速さは、例えば、ステップS107において基板210の一部を押し付けてから、ステップS110において貼り合わせの起点とは異なる領域で基板210が貼り合わされたことを検出するまでの時間を計測することにより、制御部が算出してもよい。
【0039】
また、基板210の一部に貼り合わせの起点が形成されると、貼り合わせる複数の基板210の相対位置は、基板210の面方向について固定され、貼り合わせる基板210の少なくとも一方の保持を解除しても、基板210が変位すること、あるいは、一方の基板210が他方の基板に対して位置ずれを生じることがなくなる。よって、制御部150は、基板210の貼り合わせが周縁まで完了する前に、二つの基板210を貼り合わせ部300から搬出してもよい。
【0040】
図4は、ステップS101において貼り合わせ部300に搬入される1枚の基板211が基板ホルダ221に保持された状態を示す模式的断面である。基板ホルダ221は、静電チャック、真空チャック等を有して基板211を保持面222に吸着して保持する。
【0041】
基板ホルダ221の保持面222は、中央側が高く、周縁が低い湾曲した形状を有する。よって、保持面222に吸着された基板211も、中央側が突出した形状に湾曲する。また、基板ホルダ221が基板211を保持し続けている間は、基板210の凸状の形状が維持される。なお、基板ホルダ221の保持面222の形状は、球面、放物面、円筒面等であってもよい。
【0042】
なお、保持面222に基板211が吸着された場合、湾曲した基板211においては、図中に一点鎖線で示す基板211の厚さ方向の中心線Aに比較して、基板211の図中上面では、基板211の表面が面方向に拡大変形される。また、基板211の図中下面においては、基板211の表面が面方向に縮小変形される。
【0043】
よって、基板211を基板ホルダ221に保持させることにより、基板211の表面に形成された回路領域216の、設計仕様に対する面内の倍率も拡大される。よって、保持面222の曲率が異なる複数の基板ホルダ221を用意して、基板211の変形量を変化させることにより、基板211の倍率補正量を調節してもよい。
【0044】
また、基板ホルダ221は、厚さ方向に貫通する複数の観察孔227、228、229を有する。ひとつの観察孔227は、基板ホルダ221の径方向について、中心軸Xを含む領域に配される。また、他のひとつの観察孔229は、基板ホルダ221に保持された基板211の周縁を含む領域に配される。更に、また他の観察孔228は、他の観察孔227、228の中間の位置に配される。なお、観察孔227、228、229のそれぞれは、基板211を観察する場合に使用する照明光の波長に対して透明な材料で充填され、基板ホルダ221の保持面222は、円滑な曲面を形成している。
【0045】
図5は、他の基板213を基板ホルダ223に保持させた状態を示す模式的断面である。基板ホルダ223は、平坦な保持面224と、静電チャック、真空チャック等、基板213を吸着する機能とを有する。基板ホルダ223に吸着して保持された基板213は、保持面224に密着して、保持面224の形状に倣って平坦になる。
【0046】
よって、貼り合わせ部300において、
図4に示した基板ホルダ221に保持されて凸状に変形した基板211を、
図5に示した基板ホルダ223に平坦な状態で保持された基板213に押し付けた場合、基板211、213は、中央の一点において強く押し付けられる。また、基板ホルダ221、223の各々が基板211、213を保持している間は、基板211、213の周縁側の領域は、互いに離れた状態を保つ。
【0047】
なお、上記の例では、凸状に変形させた基板211と平坦な基板213との組み合わせを例にあげた。しかしながら、例えば、基板211、213を両方とも凸状に変形させた場合、基板211、213を互いに曲率が異なる凸状と凹状に変形させた場合、基板211、213を、中心軸が平衡ではない円筒状に変形させた場合も、貼り合わせ部300において、基板211、213を一点で接触させることができる。
【0048】
図6は、貼り合わせ部300の構造を示す模式的断面図である。また、
図6は、基板211、213および基板ホルダ221、223が搬入された直後の貼り合わせ部300の状態を示す図でもある。貼り合わせ部300は、枠体310、上ステージ322および下ステージ332を備える。
【0049】
枠体310は、水平な床面に対して平行な底板312および天板316と、床板に対して垂直な複数の支柱314とを有する。底板312、支柱314および天板316は、貼り合わせ部300の他の部材を収容する直方体の枠体310を形成する。
【0050】
上ステージ322は、天板316の図中下面に下向きに固定される。上ステージ322は、真空チャック、静電チャック等の保持機能を有して、基板ホルダ221を保持する保持部を形成する。図示の状態において、上ステージ322には、既に、基板211を保持した基板ホルダ221が保持されている。
【0051】
また、上ステージ322は、保持した基板ホルダ221の観察孔227、228、229の位置に対応して設けられた複数の観察窓327、328、329を有する。観察窓327、328、329の各々は、基板211を観察する場合に使用する照明光の波長に対して透明な材料で充填され、上ステージ322の下面は、観察窓327、328、329が配された領域も含めて平坦な面を形成している。
【0052】
なお、貼り合わせ部300は、上記の上ステージ322に設けられた観察窓327、328、329に対応する位置に、枠体310の天板316を厚さ方向に貫通して設けられた複数の検出器341、342、343を有する。検出器341、342、343は、上ステージ322の下面に光学的に連通する観察窓327、328、329と、基板ホルダ221の観察孔227、228、229とを通じて、貼り合わせ部300内で基板211、213の貼り合わせ状態を観察する観察部344を形成する。
【0053】
検出器341、342、343は、例えば、フォトダイオード等の受光部と照射光源とを用いて形成できる。この場合、上ステージ322に基板211を保持した基板ホルダ221が保持されると、観察窓327、328、329および観察孔227、228、229を通じて、基板211、213等による反射光の光強度を検出器341、342、343で観察できる。
【0054】
また、検出器341、342、343は、例えば、CCD、CMOSセンサ等の撮像素子と照明光源とを用いて形成できる。この場合、上ステージ322に基板211を保持した基板ホルダ221が保持されると、観察窓327、328、329および観察孔227、228、229を通じて、検出器341、342、343により上ステージ322の基板211の画像を撮像して観察できる。また、貼り合わせ部300において基板211、213が重なっている場合は、基板211、213を併せて撮像できる。
【0055】
更に、検出器341、342、343は、照射光源または照明光源として赤外線等の長い波長の光を用いることにより、上ステージ322に保持された基板211を透過し、基板211に貼り合わされる基板213を観察できる。検出器341、342、343の出力は、例えば制御部150において処理され、検出器341、342、343の観察結果に基づいて基板211、213の貼り合わせが検出される。
照明光源として赤外線を用いる場合は、基板211,213の中心を含む領域を撮影することにより、基板211,213の接触領域と非接触領域との境界の位置の変化を観察してもよい。この場合、貼り合わせの起点が形成された時点、もしくは、接触領域が拡大していく過程で接触領域の形状を検出する。接触領域の形状は、接触領域の拡大の状態に関する情報の一つである。すなわち、観察部344は、接触領域の拡大に関する情報を検出する検出部を構成する。接触領域の拡大に関する情報は、接触領域の拡大の進行度合いに応じて変化する情報である。制御部150において、接触領域の形状が所定の条件を満たす形状であると判断した場合は、接触領域の接触状態が、その後に貼り合わせが適切に行われる状態であると判断し、基板211,213を下ステージ332から搬出してもよい。所定の条件は、例えば接触領域の形状がほぼ真円であることである。所定の条件を満たす接触領域の形状は、予め記憶されている。また、接触領域の形状が、ウエハの種類毎、ロット毎、および、ウエハの製造プロセス毎等に固有の形状を有する場合は、それぞれの接触領域の拡大中の形状を予め記憶部に格納しておき、実際の接合時に記憶された形状と比較してもよい。
また、照明光源として赤外線を用いる場合に、基板211,213の少なくとも中心から周縁部に向けて半径方向に延びる領域を観察領域としてもよい。この場合、接触領域が拡大していく過程で、例えば500msec単位で複数の画像を連続して撮影し、ある時点で撮影された接触領域の画像と、その画像よりも前の時点で撮影された接触領域の画像との比較する処理を行うことにより、接触領域が拡大するときの進行方向や進行速度を推測することができる。
【0056】
下ステージ332は、上ステージ322に対向して配置され、底板312の上面に配されたX方向駆動部331に重ねられたY方向駆動部333の図中上面に搭載される。下ステージ332は、上ステージ322に保持された基板211に対向して、基板213を保持する保持部を形成する。図示の状態において、下ステージ332には、既に、基板213を保持した基板ホルダ223が保持されている。
【0057】
なお、図示の状態では、湾曲した保持面222を有する基板ホルダ221が、図中上側に位置する上ステージ322に、平坦な保持面224を有する基板ホルダ223に保持された基板213が、図中下側に位置する下ステージ332に、それぞれ保持されている。しかしながら、上ステージ322および下ステージ332と、基板ホルダ221、223との組み合わせはこれに限らない。また、上ステージ322および下ステージ332の両方に、平坦な基板ホルダ223または湾曲した基板ホルダ221を搬入してもよい。
【0058】
貼り合わせ部300において、X方向駆動部331は、底板312と平行に、図中に矢印Xで示す方向に移動する。Y方向駆動部333は、X方向駆動部331上で、底板312と平行に、図中に矢印Yで示す方向に移動する。これら、X方向駆動部331およびY方向駆動部333の動作を組み合わせて、下ステージ332は、底板312と平行に二次元的に移動する。これにより、下ステージ332に搭載した基板213を、上ステージ322に保持した基板211に対して位置合わせできる。
【0059】
また、下ステージ332は、底板312に対して垂直に、矢印Zで示す方向に昇降する昇降駆動部338により支持される。下ステージ332は、Y方向駆動部333に対して昇降できる。これにより、昇降駆動部338は、下ステージ332に搭載した基板213を、上ステージ322に保持した基板211に押し付ける押し付け部を形成する。
【0060】
X方向駆動部331、Y方向駆動部333および昇降駆動部338による下ステージ332の移動量は、干渉計等を用いて精密に計測される。また、X方向駆動部331およびY方向駆動部333は、粗動部と微動部との2段構成としてもよい。これにより、高精度な位置合わせと、高いスループットとを両立させて、下ステージ332に搭載された基板213の移動を、制御精度を低下させることなく高速に接合できる。
【0061】
Y方向駆動部333には、顕微鏡334および活性化装置336が、それぞれ下ステージ332の側方に更に搭載される。顕微鏡334は、上ステージ322に保持された下向きの基板211の下面を観察できる。活性化装置336は、上ステージ322に保持された基板211の下面を清浄化するプラズマを発生する。
【0062】
なお、貼り合わせ部300は、底板312に対して垂直な回転軸の回りに下ステージ332を回転させる回転駆動部、および、下ステージ332を揺動させる揺動駆動部を更に備えてもよい。これにより、下ステージ332を上ステージ322に対して平行にすると共に、下ステージ332に保持された基板213を回転させて、基板211、213の位置合わせ精度を向上させることができる。
【0063】
更に、貼り合わせ部300は、一対の顕微鏡324、334と、一対の活性化装置326、336とを有する。一方の顕微鏡324および活性化装置326は、天板316の下面において、上ステージ322の側方に固定される。顕微鏡324は、下ステージ332に保持された基板213の上面を観察できる。活性化装置326は、下ステージ332に保持された基板213の上面を清浄化するプラズマを発生する。
【0064】
また、他方の顕微鏡334および活性化装置336は、Y方向駆動部333において、下ステージ332の側方に搭載される。顕微鏡334は、上ステージ322に保持された基板211の下面を観察できる。活性化装置336は、上ステージ322に保持された基板211の下面を清浄化するプラズマを発生する。
【0065】
顕微鏡324、334は、ステップS102において次のような手順で使用できる。制御部150は、
図6に示すように、顕微鏡324、334の焦点を相互に合わせることにより、顕微鏡324、334の相対位置を較正する。
【0066】
次に、
図7に示すように、制御部150は、X方向駆動部331およびY方向駆動部333を動作させて、顕微鏡324、334により基板211、213の各々に設けられたアライメントマーク218を検出させる(
図3のステップS102)。制御部150は、アライメントマーク218を検出するまでの、X方向駆動部331およびY方向駆動部333による下ステージ332の移動量を把握している。
【0067】
こうして、相対位置が既知である顕微鏡324、334で基板211、213のアライメントマーク218の位置を検出することにより、基板211、213の相対位置が判る(
図3のステップS103)。これにより、重ね合わせる基板211、213を位置合わせする場合には、検出したアライメントマーク218の位置を一致させるべく、基板211、213の相対的な移動量および回転量を含む相対移動量を算出すればよい。
【0068】
ただし、貼り合わせ基板230を形成する個々の基板211、213には、個別に歪みが生じている場合がある。基板211、213に生じる歪みとしては、基板211、213の反り、撓み等、基板211、213全体で一定の傾向を有する歪みと、基板の面方向または径方向に生じる非線形歪みとが含まれる。
【0069】
これらの歪みは、基板211、213における回路領域216を形成するプロセスにより生じた応力、基板211、213の結晶配向に起因する異方性、スクライブライン212、回路領域216等の配置等に起因する周期的な剛性の変化等により生じる。また、基板211、213単体では歪みが生じていない場合であっても、貼り合わせの過程で、既に貼り合わされた領域である接触領域と未だ貼り合わされていない領域である非接触領域との境界で基板211、213が変形して歪みを生じる場合もある。
【0070】
基板211、213がそれぞれ個別に異なる歪みを有する場合は、ステップS106において、相対移動量を計算しても、アライメントマーク218の位置が一致する値を算出できない場合がある。そこで、基板211、213の少なくとも一方の歪みを温度調節により補正して(ステップS105)、基板211、213の位置合わせ精度を向上させることができる。
【0071】
例えば、基板211、213における回路領域216の設計仕様に対する倍率の相違に起因する歪みは、基板211、213の少なくとも一方の温度を調節することにより、基板211、213全体の大きさを変化させて補正できる。また、既に説明した通り、保持面222が湾曲または屈曲した基板ホルダ221に基板211を保持させることにより、基板211の歪みを補正することもできる。
【0072】
更に、貼り合わせ部300において、基板211、213を搭載する上ステージ322および下ステージ332の少なくとも一方に、基板211、213を機械的に変形させるアクチュエータを設けて、基板211、213の少なくとも一方を変形させて補正することもできる。これにより、貼り合わせ部300は、基板211、213の歪みを、線形、非線形を問わず補正できる。
【0073】
図8は、貼り合わせ部300が基板211、213を活性化する動作(
図3のステップS104)を示す。制御部150は、下ステージ332の位置を初期位置にリセットした後に水平に移動させて、活性化装置326、336の生成したプラズマにより基板211、213の表面を走査させる。これにより、基板211、213のそれぞれの表面が清浄化され、化学的な活性が高くなる。このため、基板211、213は、互いに接近しただけで自律的に吸着して接合する状態になる。
【0074】
なお、活性化装置326、336は、顕微鏡324、334の各々から遠ざかる方向にプラズマPを放射する。これにより、プラズマを照射された基板211、213から発生した破片が顕微鏡324を汚染することが防止される。
【0075】
また、貼り合わせ部300は、基板211、213を活性化する活性化装置326、326を備えているが、貼り合わせ部300とは別に設けた活性化装置326、326を用いて予め活性化した基板211、213を貼り合わせ部300に搬入することにより、貼り合わせ部300の活性化装置326を省略した構造にすることもできる。
【0076】
更に、基板211、213は、プラズマに暴露する方法の他に、不活性ガスを用いたスパッタエッチング、イオンビーム、または、高速原子ビーム等によりを活性化することもできる。イオンビームや高速原子ビームを用いる場合は、貼り合わせ部300を減圧下において生成することが可能である。また更に、紫外線照射、オゾンアッシャー等により基板211、213を活性化することもできる。更に、例えば、液体または気体のエッチャントを用いて、基板211、213の表面を化学的に清浄化することにより活性化してもよい。
【0077】
なお、基板211、213の少なくとも一方を活性化するステップS104と、基板211、213のいずれかを温度調節するステップS105とは、順番を入れ換えてもよい。即ち、上記の説明のように、基板211、213を活性化(ステップS104)した後に、基板211、213の少なくとも一方を温度調節(ステップS105)してもよいし、先に基板211、213の少なくとも一方を温度調節した後(ステップS105)に、基板211、213を活性化(ステップS104)してもよい。
【0078】
図9は、貼り合わせ部300が基板211、213を位置合わせする動作(
図3のステップS106)を示す。制御部150は、まず、最初に検出した顕微鏡324、334の相対位置と、ステップS102において検出した基板211、213のアライメントマーク218の位置とに基づいて、基板211、213間の位置ずれ量が所定の値より小さくなるように、下ステージ332を移動させる。
【0079】
図10は、
図9に示したステップS106の状態における基板211、213の様子を模式的に示す図である。図示のように、それぞれが基板ホルダ221、223を介して上ステージ322および下ステージ332に保持された基板211、213は、互いに位置合わせされた状態で対向する。
【0080】
ここで、既に説明した通り、上ステージ322に保持された基板ホルダ221は、中央が隆起した保持面222で基板211を保持しているので、基板211も中央部が隆起している。一方、下ステージ332に保持された基板ホルダ223は平坦な保持面224を有するので、基板213は平坦な状態で保持される。よって、貼り合わせ部300において対向する基板211、213の間隔は、中央部において近く、周縁部に近づくほど遠くなる。
【0081】
図11は、貼り合わせ部300が下ステージ332に保持された基板213を、上ステージ322に保持された基板211に接触させる動作(
図3のステップS107)を示す。制御部150は、昇降駆動部338を動作させて下ステージ332を上昇させることにより基板211、213を相互に接触させる。
【0082】
図12は、
図10に示したステップS107からステップS108にかけての基板211、213の様子を模式的に示す図である。図示のように、上ステージ322に保持された基板211の中央部が隆起しているので、下ステージ332が上ステージ322に接近すると、まず、基板211、213の中央部が接触する。更に、制御部150が昇降駆動部338の動作を継続することにより、基板211、213の中央部が相互に接触し、基板211、213に貼り合わせの起点が形成される。
【0083】
このとき、基板211は、基板ホルダ221の湾曲した保持面222に依然として保持されている。よって、基板211の中央部分が平坦な基板213に当接した時点では、基板211の周縁部は、基板ホルダ221に保持されて、基板213から離れている。換言すれば、基板ホルダ221は、基板211、213の中央部以外の部分が接触しないように、基板211を保持し続けている。
【0084】
なお、上記した貼り合わせの起点が形成される前に、温度調節等による温度差を形成して基板211、213を補正しておくことが好ましい。これにより、基板211、213の中央部の位置ずれが低減された貼り合わせ基板230を製造できる。
【0085】
図13は、
図3に示したステップS107に続く期間の基板211、213の状態を示す図である。ステップS107において、基板211、213は、面方向の中央の一部において相互に押し付けられる。これにより、基板211、213の中央付近には、基板211、213が部分的に貼り合わされた貼り合わせの起点231が形成される。ただし、
図12を参照して説明したように、基板211は、基板ホルダ221に依然として保持されているので、基板211、213の中央からはずれた領域は未だ貼り合わされていない。
【0086】
図14は、ステップS107(
図3参照)の実行中に、基板211、213が接触する直前の状態を部分的に拡大して示す図である。
図14に示した領域は、
図12に点線Bで示した領域に対応する。
【0087】
図示の状態においては、基板211、213相互の間に間隙Gが残っている。間隙Gは、貼り合わせ部300内部の雰囲気等が基板211、213に挟まれることにより形成される。基板に挟まれた雰囲気等は、貼り合わせ部300が基板211、213を継続的に押し付けることにより押し出され、やがて、基板211、213は相互に密着して貼り合わされるが、雰囲気の密度等により、基板211、213が貼り合わされるまでに要する時間が異なる場合がある。
【0088】
貼り合わせ部300においては、基板211、213が上ステージ322および下ステージ332に挟まれた状態であっても、基板211、213の中央付近の一部が、観察窓327および観察孔227を通じて検出器341に光学的に連通する。図示の例では、検出器341は、光源351および受光部352を有する。
【0089】
光源351は、少なくとも一部が基板211を透過する波長の照射光を発生する。光源351が発生した照射光は、観察窓327および観察孔227を通じて基板211に向かって照射される。受光部352は、フォトダイオード等の光電気変換素子を有し、基板211、213等により反射された照射光を受光して、反射光強度に応じた電気信号を発生する。受光部352が発生した電気信号は、制御部150に入力される。
【0090】
図中に一点鎖線で示すように、上ステージ322および下ステージ332の間では、屈折率が異なる媒体の境界に反射面が形成される。図示の例では、観察孔227および基板213の境界、基板213および間隙Gの境界、間隙Gおよび基板213の境界、基板213および基板ホルダ221の境界のそれぞれに反射面P、Q、R、Sが形成される。よって、観察窓327および観察孔227を通じて検出器341の光源351から照射された照射光は、反射面P、Q、R、Sの各々において反射され、検出器341の受光部352において反射光の強度が検出される。
【0091】
図15は、
図14と同じ視点において、ステップS107の後に、基板211、213の中央が貼り合わされた状態を示す。基板211、213が貼り合わされて互いに密着すると、基板211、213とギャップGとの間に形成された一対の反射面R、Qが消滅する。このため、検出器341の照射光を反射する反射面の数が減り、検出器341が検出する反射光強度が変化する。すなわち、ギャップGの大きさに応じて、基板211,213からの全体の反射率が変化し、例えば、ギャップGの大きさが大きいほど、反射率が増大する。反射光強度は、接触領域の拡大の状態に関する情報の一つであり、反射光の輝度(cd/m
2)であってもよく、反射光の光度(lm・s)であってもよい。よって、検出器341の出力を受けた制御部150は、反射光強度が一定になったこと、または、反射光強度の変化率が所定の値よりも小さくなったことを検出することにより、基板211、213の接触した部分、即ち、貼り合わせの起点231が基板211、213に形成されたと判断できる。すなわち、制御部150は、接触領域の接触状態が、起点231が形成された状態であると判断する。よって、制御部150は、基板211、213が貼り合わされたか否かを判断する判断部を形成できる。
【0092】
制御部150は、貼り合わせの起点231が形成されたと判断したことに呼応して、基板211の保持を解除(
図3のステップS109)してもよい。これらの一連の制御により、基板211、213に貼り合わせの起点231が確実に形成され、且つ、貼り合わせの起点231が形成された後に無駄な待ち時間を過ごすことなく、基板211の保持を解除できる。よって、貼り合わせ基板230製造に関して、歩留りが向上されると共に、スループットも短縮される。
【0093】
なお、
図14および
図15では、図中で照射光と反射光とを区別しやすくする目的で、照射光を基板211、213に対して傾けて照射しているかのように記載した。しかしながら、照射光を基板211、213に対して垂直に照射しても、ハーフミラー等の光学デバイスを用いることにより、反射光強度を検出する光学系を形成することができる。また、検出器341は、受光部352に換えて、CCD、CMOSセンサ等のイメージセンサを用いてもよい。また、検出器341の上記構造は、
図6等に示した他の検出器342、343にも適用できる。
【0094】
図16は、ステップS109(
図3参照)に続く期間における基板211、213の状態を示す模式的な平面図である。また、
図17は、
図16に示した状態の基板211、213の模式的な縦断面図である。
【0095】
ステップS109においては、上ステージ322に保持された基板ホルダ221による保持が解除され、基板211は解放される。基板211、213の少なくとも一方の表面は活性化されているので、一部が密着して貼り合わせの起点が形成され、且つ、一方の基板211、213が基板ホルダ221、223による保持から解放されると、基板211、213同士の分子間力により、隣接する領域が自律的に相互に吸着されて貼り合わされる。基板211、213の接触領域は、時間の経過に従って、隣接する領域に順次拡がってゆく。
【0096】
これにより、基板211、213が貼り合わされた領域である接触領域と、未だ貼り合わされていない領域である非接触領域との境界であるボンディングウェイブ232が、基板211、213の内側から外側に向かって各径方向に移動し、基板211、213の貼り合わせが進行する。すなわち、ボンディングウェイブの移動により接触領域が拡大する。ただし、ボンディングウェイブ232に囲まれた領域の外側の領域では、基板211、213は未だ貼り合わされていない。
【0097】
ここで、既に説明した通り、貼り合わせ部300の上ステージ322に保持される基板ホルダ221は、保持する基板211の中心と周縁との中間の位置にも観察孔228を有する。また、貼り合わせ部300の上ステージには、基板ホルダ221を保持した場合に観察孔228に対応する位置に、観察窓328および検出器342を有する。
【0098】
よって、貼り合わせ部300において基板211、213を貼り合わせる場合は、観察孔228の位置においても、基板211、213が貼り合わされたか否かを判断できる。なお、検出器342は、基板211、213の中心部に配された検出器341と同じ構造のものを使用できるが、それに限定されるわけではない。
【0099】
ステップS108において基板211、213の中心に貼り合わせの起点231が形成されたことが検出された後に、観察孔228を通じて基板211、213の貼り合わせを検出した場合、制御部150は、ステップS110として、基板211、213の接触領域が、基板211、213の中心と周縁との中間まで拡大したと判断できる(ステップS110:YES)。すなわち、ボンディングウェイブが所定の位置である中間位置に達したと判断する。ボンディングウェイブの位置は、接触領域の拡大の状態に関する情報の一つである。これにより、制御部150は、制御手順を、ステップS112に進めることができる。
【0100】
更に、基板ホルダ221は、保持する基板211の周縁にも観察孔229を有する。また、貼り合わせ部300の上ステージには、基板ホルダ221を保持した場合に観察孔229に対応する位置に、観察窓329および検出器343を有する。よって、貼り合わせ部300において基板211、213を貼り合わせる場合は、観察孔229の位置においても、基板211、213が貼り合わされたか否かを判断できる。
【0101】
図16および
図17に示した状態において、基板211、213は、観察孔228の位置では貼り合わされているが、観察孔229の位置では未だ貼り合わされていない。よって、制御部150は、ボンディングウェイブ232が拡大して基板211、213の貼り合わせが進行しつつあるものの、基板211、213全体が貼り合わされるには至っていないことを判断できる。
【0102】
図18は、ステップS112(
図3参照)において制御部150が基板211、213の貼り合わせが完了したと判断した時点(ステップS112:YES)における基板211、213の状態を示す模式的な平面図である。また、
図19は、
図18に示した状態の基板211、213の模式的な縦断面図である。
【0103】
ステップS110においては、観察孔228、観察窓328および検出器342を通じて、制御部150が、基板211、213の貼り合わせが進行していることを確認した。基板211、213の貼り合わせが更に進み、ボンディングウェイブ232が基板211、213の周縁に至ると、接触領域は基板211、213全体に及ぶ。これにより、基板211、213は互いに貼り合わされて、貼り合わせ基板230を形成する。
【0104】
既に説明した通り、貼り合わせ部300の上ステージ322に保持される基板ホルダ221は、保持する基板211の周縁の位置にも観察孔229を有する。また、貼り合わせ部300の上ステージには、基板ホルダ221を保持した場合に観察孔229に対応する位置に、観察窓329および検出器343を有する。よって、貼り合わせ部300において基板211、213を貼り合わせる場合は、観察孔229の位置においても、基板211、213が貼り合わされたか否かを判断できる。
【0105】
貼り合わせ部300においては、ステップS110に、接触領域と非接触領域との境界であるボンディングウェイブ232に包囲された、基板211、213の接触領域の拡大が検出された(ステップS110:YES)後、観察孔229を通じて、ボンディングウェイブが基板211、213の外縁に到達したか否かすなわち貼り合わせが完了したか否かを検出することができる(ステップS112)。なお、検出器342は、基板211、213の中心部に配された検出器341と同じ構造のものを使用できるが、それに限定されるわけではない。特に、基板211、213の周縁部は、基板211、213が貼り合わされた後も外部に向かって露出している。よって、基板211、213の周縁部における貼り合わせを検出する検出器343は、他の検出器341、342と異なる構造にすることもできる。
【0106】
このように、貼り合わせ部300においては、基板211、213の接触領域の拡大は、基板211、213の中央から外縁に向かって拡大する。このため、貼り合わせる前の段階で基板211、213に挟まれていた雰囲気、例えば大気は、基板211、213の接触領域の面積が拡がる過程で、基板211、213の内側から外側に向かって押し出され、貼り合わされた基板211、213の間に気泡が残ることが防止される。
【0107】
基板211、213が重ね合わされる過程で、基板211、213の間から気泡等を円滑に押し出すには、基板211、213の接触が開始された時点で、基板211、213の間に、気泡の移動を妨げない広さを有し、基板211、213の周縁で連続した隙間が形成されていることが好ましい。よって、保持面222が湾曲した基板ホルダ221に吸着させることによる基板211の変形は、ステップS107(
図3)で基板213に接触させる段階において、一定の湾曲が残るような変形手順を選択することが好ましい。また、重ね合わせの段階で基板211の湾曲が少なくなることが予測される場合は、気泡を通す間隙を確保する目的で、下ステージ332に保持される基板213を保持する基板ホルダ223として、基板ホルダ221のように保持面224が湾曲した基板ホルダ223を用いてもよい。
【0108】
また、上記の例では、ステップS109に、上ステージ322に保持された基板211の保持を解除した。しかしながら、同ステップにおいては、下ステージ332による保持を解除してもよいし、両方のステージにおいて基板211、213の保持を解除してもよい。
【0109】
ただし、保持を解除した基板211は、基板ホルダ221の吸着による歪みの補正も解除されることになる。よって、ステップS109において基板の保持を解除する場合は、基板の変形が相対的に少なく、補正量がより小さい方の基板211、213の保持を解除することが好ましい。
【0110】
図20は、貼り合わせ部300における検出器341の他の構造を例示する模式図である。
図20は、
図14および
図15と同じ視点で描かれている。
【0111】
貼り合わせ部300において、図示の検出器341は、変位計353を有する。変位計353は、上ステージ322に対する変位計353自体の相対位置が固定されており、測定対象物としての基板211、213等の変位を光学的な特性の変化により検出する。光学式の変位計353としては、様々なタイプのものを使用できるが、三角測距式、レーザフォーカス式、分光干渉式等の方式を例示できる。
【0112】
図示の検出器341は、図中上側の基板211の上面と、図中下側の基板213の上面との相対的な間隔H
1を継続的に計測しながら、ステップS107(
図3参照)において基板211、213を接近させさ、やがて押し付ける。この過程で、間隔H
1の値が、既知である上側の基板211の厚さT
1と等しくなった場合に、基板211、213が隙間なく接触し、貼り合わされたことが検出される。このように、検出器341として変位計353を用いることにより、制御部150は、基板211、213の貼り合わせを継続的に観察して、貼り合わせ部300の制御に反映できる。間隔H
1の値は、接触領域の拡大の状態に関する情報の一つである。
【0113】
図21は、
図20に示した貼り合わせ部300と同じ構造を有するが、検出器341としての変位計353による測定対象が異なる。図示の貼り合わせ部300において、変位計353は、図中上側の基板211の上面の位置と、図中下側の基板213の下面の位置、または、下側の基板ホルダ221の上面の位置との間隔H
2を計測する。そして、ステップS107(
図3参照)に基板211、213を接近させさ、やがて押し付ける。この過程で、間隔H
2の値が、既知である基板211の厚さT
1および基板213の厚さT
2の合計と等しくなった場合に、基板211、213が隙間なく接触し、貼り合わされられたことが検出できる。
【0114】
図22は、
図20および
図21に示した貼り合わせ部300と同じ構造を有するが、検出器341としての変位計353による測定対象が異なる。図示の貼り合わせ部300において、変位計353は、図中上側の基板211の下面の位置と、図中下側の基板213の上面の位置とに基づいて、基板211、213の間のギャップGの厚さT
3を計測する。そして、ステップS107(
図3参照)に基板211、213を接近させ、やがて押し付ける。この過程で、厚さT
3の値が零になった場合に、基板211、213が隙間なく接触し、貼り合わされたことが検出できる。
検出器341、342、343のように、基板211,213の中心部、中間部、および周縁部にそれぞれ変位計353を配置して、各位置において接触領域の境界の位置を検出してもよい。この場合、制御部150は、中心部において接触を検出することにより起点231の形成が完了したと判断し、周縁部で接触を検出することにより貼り合わせが完了したと判断する。
【0115】
図20、
図21、および
図22に示したように、観察部344における検出器341としての変位計353の測定対象は複数ある。よって、複数の検出対象、例えば、
図20、
図21、および
図22に示した検出対象のうちの2以上を選択して並行して計測することにより、検出器341の検出精度を向上させてもよい。
【0116】
また、上記の例では、光学的な変位計を用いた場合について説明したが、変位計には、渦電流式、超音波式、接触式等、複数の方式が知られている。これらの他の方式による変位計を用いてもよいことはもちろんである。また、観察部344を形成する複数の検出器341、342、343に、異なる方式の変位計を混在させてもよい。また、上側の基板213が基板ホルダ223に保持されている状態を基準として接触領域の拡大が進行している間の基板213の上面の変位量すなわち基板213の上面と基板ホルダ223の保持面との間の距離を変位計353により測定してもよい。この距離の値は、接触領域の拡大の状態に関する情報の一つである。この場合、基板213の上面の変位が0となって変位量が一定となったとき、または、変化量が所定の値よりも小さくなったときに、制御部150は、貼り合わせが完了したと判断してもよい。
【0117】
図23は、他の構造を有する観察部345の模式図である。観察部345を有する貼り合わせ部300においては、
図22までに示した観察部344と同様に、観察窓327、328、329が上ステージ322に、観察孔227、228、229が、上ステージに保持された基板ホルダ221に、それぞれ設けられる。
【0118】
更に、観察部345を有する貼り合わせ部300においては、下ステージ332にも、観察窓327、328、329が設けられる。また、下ステージ332に保持された平坦な基板ホルダ223にも観察孔227、228、229が設けられる。
【0119】
また更に、観察部345においては、光源351が、上ステージ322の観察窓327、328、329および図中上側の基板ホルダ221の観察孔227、228、229を通じて照射光を基板211、213に照射する一方、受光部352は、下ステージ332の観察窓327、328、329および図中下側の基板ホルダ223の観察孔227、228、229を通じて照射光を受光する。このような構造により、受光部352は、基板211、213を透過した照射光の光量に基づいて、基板211、213の貼り合わせ状態を観察してもよい。照射光の光量は、接触領域の拡大の状態に関する情報の一つである。起点231の形成が完了したときの光量、および、貼り合わせが完了したときの光量を予め実験的に求めておくことにより、制御部150は、観察部345で検出した量が予め求めた値になったことに基づいて、起点231の形成が完了したこと、および、貼り合わせが完了したことを判断する。
図4から
図23に示す例において、検出器341で起点形成が完了したことを検出してから、検出器342で接触領域の境界を検出するまでの時間、もしくは、検出器342で境界を検出してから検出器343で境界を検出するまでの時間に基づいて、ボンディングウェイブの進行速度すなわち接触領域の拡大速度を予測し、貼り合わせが完了する時点を予測してもよい。
また、3つの検出器341,342,343を基板211,213の中心部、中間部、および周縁部に配置した例を示したが、これに代えて、または、これに加えて、二つの基板211,213のうち貼り合わせ時にステージから解放されることなく固定されている基板の周縁を観察可能となるように複数の検出器を配置してもよい。この場合、解放された基板の周縁部が複数の検出器の全てによって検出されたときに、貼り合わせが完了したと判断する。また、複数の検出器による基板の周縁部の検出タイミングに基づいて、ボンディングウェイブの進行状況を把握できる。すなわち、一つの検出器による検出タイミングと他の検出器による検出タイミングが異なる場合、検出タイミングが遅い周縁部を含む領域はボンディングウェイブの進行が遅いことが分かる。この場合、制御部150は、ボンディングウェイブの進行が遅い領域の進行を促進するよう装置にフィードバックする。
【0120】
図24は、貼り合わせ部300における検出器343の他の構造を示す模式図である。既に説明した通り、基板211、213の周縁部は、基板211、213が貼り合わされた後も外部に向かって露出している。よって、基板211、213の周縁部における貼り合わせを検出する検出器343は、他の検出器341、342と異なる構造にすることもできる。
【0121】
図示の検出器343は、光源351、受光部352、および光ファイバ354を有する。光源351は、観察窓329および観察孔229を通じて、基板211、213の周縁端部に向かって照射光を照射する。光ファイバ354は、下ステージ332に保持された基板213の端部近傍に一端が配される。これにより、光ファイバ354には、基板213の周縁端部により散乱された照射光が入射する。
【0122】
光ファイバ354の他端は、受光部352に向かって配される。これにより、光ファイバ354に入射した照射光は、受光部352に入射する。照射光を受光した受光部352は、電気信号を発生して、制御部150に入力する。受光部352から制御部150に入力される電気信号は、接触領域の拡大の状態に関する情報の一つである。
【0123】
図25は、
図24に示した検出器343の動作を説明する模式図である。貼り合わせ部300において基板211、213が周縁端部まで貼り合わされると、光源351から照射された照射光は、基板213に代わって、基板211に照射されて散乱される。このため、基板213の側方に配された光ファイバ354には、照射光が入射しなくなる。これにより、受光部352から制御部150に入力される電気信号が変化するので、制御部150は、基板211が、基板213に対して周縁まで貼り合わされたことを判断できる。
【0124】
図26は、また他の構造を有する観察部346の模式図である。観察部346は、それぞれ複数の光源361、362、363と、受光部371、372、373とを有する。
【0125】
受光部371、372、373は、基板211、213の面方向について、基板211、213を挟んで光源361、362、363に向かって配される。ひとつの受光部371は、基板211、213の中心を挟んでひとつの光源361に対向する位置に配される。他のひとつの受光部373は、基板211、213の周縁を含む領域を挟んで、他のひとつの光源363に対向する位置に配される。更に他のひとつの受光部372は、光源361、362の間に配された光源362に対向する位置に配される。
【0126】
図27は、
図26に示した観察部346の動作を説明する模式図である。
図27は、観察部346により観察されている基板211、213を、面方向側部の受光部371、372、373側からから見た様子を示す。
【0127】
図示の基板211、213は、上側の基板211が上ステージ322から解放されて(
図3のステップS109)、既に貼り合わせが進行して
図17に示した状態になっている。このため、受光部371、372側から見た場合、光源361、362が基板に照射した照射光の光束の幅は、互いに貼り合わされた基板211、213により遮られて細くなる。よって、受光部371、372からは、少ない照射光を受光した場合の電気信号が制御部150に入力される。受光部371、372から制御部150に入力される電気信号は、接触領域の拡大の状態に関する情報の一つである。二つの基板211,213が接触する前から受光部371で受光し、受光量の変化を検出することにより、この変化率が0になり光量の値が所定の時間が経過するまで一定であったとき、または、変化率が所定の値よりも小さくなったときに起点が形成されたと判断してもよい。受光部372についても、受光量の変化を検出し、変化率が0になり光量の値が所定の時間が経過するまで一定であったとき、または、変化率が所定の値よりも小さくなったときに、貼り合わせの起点231から拡がったボンディングウェイブが基板211,213の中心と周縁部との中間地点に到達したと判断してもよい。
【0128】
これに対して、図示の状態においては、基板211、213の周縁は未だ貼り合わされていない。このため、光源363が基板211、213に照射した光は、基板211、213の間を通過して、受光部372に広い光束幅で受光される。よって、受光部371、372からは、強い照射光を受光した場合の電気信号が制御部150に入力される。
【0129】
このように、観察部346は、受光部371の出力により、基板211、213の中心に貼り合わせの起点231が形成されることを検出できる。また、観察部346は、受光部372の出力により、基板211、213の貼り合わせが、中心から周縁に向かって拡がっていることを検出できる。更に、観察部346は、受光部373の出力により、変化率が0になり光量の値が所定の時間が経過するまで一定であること、または、変化率が所定の値よりも小さくなったことを検出することにより、基板211、213の貼り合わせが周縁部まで完了したと判断することができる。
【0130】
なお、基板211、213の表面は、回路領域216等により必ずしも平坦ではない。また、基板211、213自体が、回路領域216を形成するプロセスで反り等の変形を生じている場合がある。更に、貼り合わせ部300においては、貼り合わせる基板211、213を変形させて、基板211、213の倍率、歪み等を補正する場合がある。このため、基板211、213の間に、光源361、362、363から受光部371、372、373まで光が直進できる間隙が形成されない場合がある。
【0131】
しかしながら、基板211、213の間の間隙が光源361、362、363から受光部371、372、373まで連続していれば、照射光の一部が受光部371、372、373に届く。よって、基板211、213相互の間の間隙が、受光部371、372、373から光源361、362、363を見通すことができないものであっても、観察部346は、基板211、213が貼り合わされたか否かを検出することができる。
【0132】
また、観察部344、345、346等において光源351、361、362、363が発生する照射光を、予め定めた周波数で変調し、受光部352、371、372、373において照射光をロックイン検出してもよい。これにより、背景光の影響を排除して、微弱な照射光を精度よく検出できる。
【0133】
図28は、また他の構造を有する観察部347の模式図である。観察部347は、光源361、撮像部374、および背景板364を有する。
【0134】
光源361および撮像部374は、基板211、213の面方向について基板211、213の側方に、基板211、213に対して同じ側に配される。光源361が発生した照明光は、撮像部374と同じ側から基板211、213に向かって照射され、撮像部374の撮像視野を照明する。
【0135】
背景板364は、光源361および撮像部374に対して、基板211、213と反対側に配される。これにより、撮像部374が基板211、213を撮像した場合に、背景板364は、基板211、213の背景を形成する。背景板364は、撮像部374が撮像した基板211、213の像に対して強いコントラストを有する色および明度を有する。
【0136】
観察部347において、撮像部374の撮像視野は、図中に点線で示すように、基板211、213の中心から周縁に及ぶ。これにより、観察部347においては、
図26および
図27に示した観察部346の受光部371、372、373の役割を、撮像部374が一括して担う。撮像部374が撮像した映像は、制御部150により取得されて、画像処理に付される。
【0137】
貼り合わせ部300において、それぞれが基板211、213を保持した上ステージ322および下ステージ332が対向した場合、撮像部374は、基板211、213の間から見える背景板364の画像を撮像する。基板211、213が、ステップS108(
図3参照)において貼り合わせの起点231を形成した場合、撮像部374が撮像した画像において、背景板364の画像の一部が基板211、213により遮られて分断される。これにより、制御部150は、貼り合わせの起点231が形成されたことを検出できる。
【0138】
続いて、撮像部374は、ステップS110において、基板211、213の接触領域が拡大する様子を継続的に監視できる。更に、ステップS112において、撮像部374は、基板211、213の接触領域が基板の周縁に達して、貼り合わせが完了したことを検出できる。このように、観察部347は、基板211、213を貼り合わせる様子を直接に撮像して、撮影画像上の基板211、213の距離により貼り合わせを継続的に検出できる。
【0139】
なお、上記の例では、撮像部374を、面方向について基板211、213の側方に配置して貼り合わせを検出した。しかしながら、例えば、上ステージ322および下ステージ332の少なくとも一方と、当該ステージに保持される基板ホルダ221、223とを透過する波長に感度のある撮像部374を用いて、撮像部374を、基板211、213の厚さ方向について側方に配置して貼り合わせを検出してもよい。
【0140】
また、撮像部374により取得する画像は、基板211、213の形状を直接に撮像した画像に限られない。例えば、基板211、213の間で生じる干渉等の光学現象で生じた干渉縞像の変化等に基づいて、基板211、213の貼り合わせの状態を検出してもよい。
【0141】
図29は、他の構造を有する観察部348を備えた貼り合わせ部300の模式図である。図示の貼り合わせ部300は、次に説明する部分を除くと、
図6等に示した貼り合わせ部300と同じ構造を有する。よって、共通の構成要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0142】
図示の貼り合わせ部300は、光学的に貼り合わせ状態を観察する観察部344に換えて、ロードセル380を有する観察部348を有する点において、
図6に示した貼り合わせ部300と異なる構造を有する。ロードセル380は、枠体310の天板316と、上ステージ322との間に配される。
【0143】
これにより、観察部348は、昇降駆動部338により下ステージ332を上昇させることにより基板211、213が押し付けられた場合に、基板211、213から上ステージ322が受ける反力を、ロードセル380により継続的に検出できる。即ち、ロードセル380は、ステップS107(
図3参照)において押し付けられた基板211、213が相互に接触して貼り合わせの起点231を形成した場合に、最初に反力の増加を検出する。ロードセル380により検出された反力は、接触領域の拡大の状態に関する情報の一つであり、制御部150に伝達される。反力が予め定められた値に達したとき、もしくは、所定の値を閾値時間以上維持した場合、制御部150は、基板211、213に貼り合わせの起点231が形成されたと判断できる(ステップS108:YES)。
また、起点231を形成する際、基板211、213の間に挟まれた雰囲気等を介して基板213の一部が基板211の一部に押し付けられ、雰囲気等が押し出された後、基板211,213同士が直接に接触する。このため、ロードセル380により検出される反力は、雰囲気が押し出されたときに一時的に小さくなる。制御部150は、ロードセル
380の値が一時的に小さくなったことを検出し、または、一時的に小さくなった後にロードセル
380の値が再度大きくなって所定の値を超えたことを検出して、基板211、213に貼り合わせの起点231が形成されたと判断してもよい。
【0144】
その後、基板211、213全体が貼り合わされると、昇降駆動部338が下ステージ332を上昇させる力がそのままロードセル380に加わる状態になる。よって、制御部150は、観察部348のロードセル380が検出する反力が増加することをもって、基板211、213全体が貼り合わされたことを判断できる。
【0145】
このように、基板211、213の貼り合わせ状態は、機械的な特性の変化により検出することもできる。機械的な特性に基づいて検出する観察部348の構造は上記に限られない。昇降駆動部338に対する駆動負荷の変化に応じた駆動電力の変化、作動流体の圧力変化等に基づいて、基板211、213の反力を検出してもよい。昇降駆動部338の駆動負荷の検出により貼り合わせの完了を判断する場合、図示の例のように上側の基板211が下側の基板213に積層されるときは基板211,213の接触領域が拡大するに従って基板211の荷重が下ステージ332に付加されるため、昇降駆動部338の推力が増加する。制御部150は、この推力の変化がなくなり負荷値が一定になり、一定の負荷値が閾値時間を維持したこと、または、推力の変化率が所定の値よりも小さくなったことを検出して、貼り合わせが完了したと判断する。
【0146】
また、ステップS109に上ステージ322の保持から解放された基板211の周縁部が、固定された基板213に接する位置に変位した場合に接触する接触子を有する機械式変位計を用いても、観察部348を形成できる。
【0147】
図30は、他の構造を有する観察部349を備えた貼り合わせ部300の模式図である。図示の貼り合わせ部300は、次に説明する部分を除くと、
図6等に示した貼り合わせ部300と同じ構造を有する。よって、共通の構成要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0148】
図示の貼り合わせ部300は、光学的に貼り合わせ状態を検出する観察部344に換えて、マイクロフォン390を有する観察部349を有する点において、
図6に示した貼り合わせ部300と異なる構造を有する。マイクロフォン390は、枠体310の天板316から懸架され、上ステージ322と下ステージ332との間で発生した弾性波を検出する。
【0149】
貼り合わせ部300において、基板211、213は、貼り合わせの過程で弾性波を発生する。例えば、ステップS109(
図3参照)で解放されるまで、上ステージ322に保持された基板211は、曲面状の保持面222を有する基板ホルダ221に保持されることにより反った状態にある。一方、ステップS109から解放されると、基板211は、貼り合わせの進行と共に、他方の基板213に倣った形状に変形する。
【0150】
この変形に伴って、基板211は、微細な弾性波を発生する。よって、マイクロフォン390の検出した音に基づく電気信号を取得することにより、制御部150は、基板211、213において貼り合わせが進行していることを判断できる。
【0151】
また、基板211、213が貼り合わされる過程で、当初は基板211、213の間に挟まれていた雰囲気は、基板211、213の間から押し出される。この移動に伴って、雰囲気が発生する振動も、音響的な弾性波として検出することができる。よって、マイクロフォン390により雰囲気に発生した弾性波を検出して、貼り合わせの継続および終了を検出できる。
【0152】
更に、基板211、213の貼り合わせが基板211、213の周縁まで到達した場合、一方の基板211の周縁が他方の基板213に当接することにより、継続していた基板211の変位が急速に停止する。これにより、基板211、213の間には、いわば衝突音が発生する。よって、当該衝突音を検出したマイクロフォン390が発生した電気信号を取得することにより、制御部150は、基板211、213の貼り合わせが周縁に達して完了したことを判断できる。
【0153】
なお、基板211が発生する弾性波は、可聴帯域の周波数を有するとは限らない。よって、観察部349において使用するマイクロフォン390は、可聴帯域外にも感度を有することが好ましい。
【0154】
図31は、他の構造を有する観察部610を備えた貼り合わせ部300の模式図である。図示の貼り合わせ部300は、次に説明する部分を除くと、
図30に示した貼り合わせ部300と同じ構造を有する。よって、共通の構成要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0155】
図示の貼り合わせ部300において、観察部610は、マイクロフォン390に換えて、振動発生部391および振動検出部392を有する。振動発生部391は、上ステージ322に配され、予め定めた周波数の振動を発生する。振動発生部391が振動を発生した場合、発生された振動は、上ステージ322および基板ホルダ221を介して基板211に伝達される。振動発生部391は、圧電素子等により形成できる。
【0156】
振動検出部392は、下ステージ332に配され、基板211から、基板213および基板ホルダ221を介して下ステージ332に伝達された振動を検出する。よって、ステップS107(
図3参照)に、基板211、213が互いに押し付けられるまでは、振動発生部391が振動を発生しても、振動検出部392は当該振動を検出しない。しかしながら、ステップS107に基板211、213が互いに接触すると、振動発生部391が発生した振動を、振動検出部392が検出できる。
【0157】
また、ステップS107で基板211、213が接触した後も、上ステージ322、基板ホルダ221、223、基板211、213、および下ステージ332により形成される振動系の音響インピーダンスは、基板211、213の接触状態の変化に応じて変化する。よって、振動発生部391が振動を発生した場合の、振動検出部392による検出結果も変化する。これにより、基板211、213における貼り合わせの進行および完了を、振動検出部392により検出できる。
【0158】
図32は、また他の構造を有する観察部620を備えた貼り合わせ部300の模式図である。図示の貼り合わせ部300は、次に説明する部分を除くと、
図6等に示した貼り合わせ部300と同じ構造を有する。よって、共通の構成要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0159】
図示の貼り合わせ部300において、観察部620は、静電容量検出部621を有する。静電容量検出部621は、測定対象となる基板211、213相互の間の静電容量と標準インダクタとを含んで形成されたLC共振回路に周期的に変化する電気信号を印加する。このとき、静電容量検出部621は、静電チャックの機能を有する二つの基板ホルダ221、223の電極に印加されるDC電圧にAC電圧を重畳し、基板211、213における静電容量の変化に応じて変化する電気信号のAC成分を検出する。静電容量検出部621で検出された静電容量の値および変化率の値は、接触領域の拡大の状態に関する情報の一つである。
【0160】
二つの基板ホルダ221,232間の全体の静電容量は、基板ホルダ221の電極と基板211との間の静電容量、基板211のシリコン層と表面の酸化膜層との間の静電容量、二つの基板211,213の間の静電容量、基板213のシリコン層と酸化膜層との間の静電容量、および、基板ホルダ223の電極と基板213との間の静電容量の合成である。
基板211、213間の静電容量の値は、基板211、213間の間隔が狭くなるほど大きくなり、基板211、213の一部が接触することにより最大となり、全体の静電容量の値も最大となる。すなわち、基板211、213間に起点が形成されたときに最大値をとる。その後、ボンディングウェイブが進行するに従って、基板211と基板ホルダ221の電極との間隔が大きくなるため、全体の静電容量が小さくなる。
【0161】
このように、基板211、213の貼り合わせ状態の変化に応じて静電容量が変化する。この変化を検出することにより、基板211、213の貼り合わせ状態を電気的に検出する。
【0162】
制御部150は、静電容量の値が閾値を超えたこと、または、予め最大値として定められた値となったことを検出して、基板211、213間に起点が形成されたと判断する。もしくは、制御部150は、静電容量の値が閾値を超えた後、または、予め最大値として定められた値となった後、所定の時間が経過したことを検出して、起点が形成されたと判断してもよい。所定の時間は、基板211、213の接触した一部の間の接合強度に応じて決定され、例えば基板211、213の活性化条件に基づいて設定される。または、制御部150は、基板211、213の接触した一部の接触面積の大きさが所定の大きさになったことを検出して、起点が形成されたと判断してもよい。所定の面積の大きさは、基板211、213の一部の間の接合強度に応じて決定され、予め実験的に求めておいてもよい。面積の大きさは、基板211、213が一点接触してから接触領域が微小に広がったときの静電容量の変化や、
図28に示すような手段により外部から撮影することにより検出することができる。
【0163】
また、制御部150は、静電容量の値が一定になり、一定の負荷値が閾値時間を維持したこと、または、静電容量の変化率が所定の値よりも小さくなったことを検出して、貼り合わせが完了したと判断する。もしくは、制御部150は、全体の静電容量の値が、基板211、213が接触する前の値に戻ったことを検出して、貼り合わせが完了したと判断してもよい。
【0164】
上記の通り、貼り合わせ部300においては、基板211、213に関する光学的特性、機械的特性、電気的特性等、さまざまな特性の変化により、貼り合わせ状態の変化を検出できる。更に、上記した様々な観察部344、345、346、347、348、349、610、620を複数組み合わせて貼り合わせ部300を形成してもよい。
【0165】
図33は、貼り合わせ部300の変形例を模式的な断面により示す、部分拡大図である。図示の貼り合わせ部300は、下記に説明する部分を除くと、
図10に示した貼り合わせ部300と同じ構造を有する。よって、共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0166】
図示の貼り合わせ部300において、上ステージ322は、厚さ方向に貫通する複数の通気孔325を有する。通気孔325の各々の図中下端は、上ステージ322の下面に開口する。通気孔325の各々の図中上端は、貼り合わせ部300の外部に配されたタンク631に、バルブ632を介して結合される。
【0167】
タンク631には、乾燥空気、不活性ガス等の、基板211、213の雰囲気に混入しても差し支えない流体が、大気圧よりも高圧に収容される。バルブ632は、制御部150の制御の下に開閉する。バルブ632が開放された場合は、タンク631から供給された流体が、通気孔325を通じて、上ステージ322から噴射される。
【0168】
また、図示の貼り合わせ部300において、上ステージ322が保持する基板ホルダ221も、上ステージ322の通気孔325と対応する位置に、厚さ方向に貫通する複数の通気孔225を有する。これにより、制御部150の制御の下にバルブ632が開放された場合は、タンク631から供給された流体、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガスが、基板ホルダ221の通気孔225から噴射される。これにより、例えば、静電チャック等への電力供給を絶った後も基板211が基板ホルダ221に吸着している場合に、基板211を強制的に押し放して、基板貼り合わせ装置100のスループットを向上できる。
【0169】
図34は、上記した貼り合わせ部300におけるステージ周りの制御手順の一部を示す流れ図である。図示の手順は、
図3に示した手順におけるステップS107からステップS112までの過程で実行してもよい。よって、下記の説明においては、
図34に示した手順と共に、
図3に示した手順への対応も併せて示す。
【0170】
まず、
図3のステップS106において、上ステージ322に保持された基板211と、下ステージ332に保持された基板213とが位置合わせされると、制御部150は、下ステージ332を上昇させつつ(ステップS201)、基板211、213が当接したか否かを判断する(ステップS202)。下ステージ332の上昇は、基板211、213が当接するまで継続される(ステップS202:NO)。
【0171】
下ステージ332の上昇に伴って接近した基板211、213が当接したことを検出すると(ステップS202:YES)、制御部150は、に保持された基板213と、上ステージ322に保持された基板211とが互いに接近する。更に下ステージ332が上昇すると、
図35に示すように、基板211、213は互いに当接する(ステップS202:YES)。
【0172】
図35は、下ステージ332の上昇により基板211、213が当接した状態を示す模式的断面図である。
図34と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。図示のように、上ステージ322に保持された基板211は、中央部が図中下方に突出した状態で保持されているので、平坦な状態で下ステージ332に保持された基板213に対しては、まず、中央部が部分的に押し付けられる(ステップS107)。
【0173】
再び
図34を参照すると、次に、制御部150は、上ステージ322と天板316の間に配されたロードセル380を通じて、下ステージ332の上昇により上ステージ322が受ける圧力の計測を開始する(ステップS203)。また、制御部150は、当接した基板211、213に、互いに貼り合わされた領域が形成されたか否かを判断して(ステップS108)、基板211、213に貼り合わせの起点が形成されるのを待つ(ステップS204:NO)。
【0174】
これにより、基板211、213に貼り合わせの起点が形成されたことが検出されると(ステップS204:YES)、制御部150は、この時点における下ステージ332の昇降方向の位置、即ち、
図35に示すZ方向の位置L
0を、下ステージ332の位置を制御する場合の基準位置とする。また、制御部150は、下ステージ332が基準位置に位置する場合にロードセル380が測定した圧力を、下ステージのZ方向の位置を制御する場合の制御基準圧力として記憶する(ステップS205)。
【0175】
更に、基板211、213に貼り合わせの起点が形成されたことが検出されると(ステップS204:YES)、制御部150は、少なくとも上ステージ322側における基板211の保持を解除する(ステップS109、S206)。また、制御部150は、バルブ632を開放して、通気孔325、225を通じて流体を吹き出すことにより、
図36に示すように、上ステージ322に保持された基板ホルダ221から、基板211を突き離す(ステップS07)。
【0176】
図36は、基板211、213の間に貼り合わせの起点が形成された後に、制御部150が、流体の噴射により基板211を上ステージ322から突き離した状態を示す模式的な断面図である。上ステージ322側から噴射した流体が基板211に吹きつけられた場合、基板211に当接する下側の基板213および基板ホルダ223を通じて、流体の圧力が下ステージ332にも作用する。これにより、下ステージ332を駆動する昇降駆動部338に対する負荷が上昇するので、下ステージ332は、基準位置L
0よりも下方に変位する。
【0177】
ここで、当初は上ステージ322に保持されていた基板211は、既に下ステージ332に保持された基板211に対して部分的に貼り合わされている。よって、下ステージ332が下降すると、上側の基板211も共に下降する。このため、上ステージ322に保持された上側の基板ホルダ221と、基板211との間隔が広くなり、基板ホルダ221および基板211の間における流体の圧力が低下する。
【0178】
これにより、ロードセル380による圧力の計測値が低下するので(ステップS208:YES)、制御部150は、ロードセル380の測定値を制御基準圧力に近づけるべく、昇降駆動部338を動作させて下ステージ332を上昇させる(ステップS209)。すなわち、下ステージ332のZ位置は、流体から基板211が受ける力と、昇降駆動部338により下ステージ332を持ち上げる力とが均衡する位置となるように制御されている。流体の噴射により基板211が上側の基板ホルダ221から離れると基板211と基板213との間の空間が大きくなるため、基板211,213間の流体の圧力が下がり、力の均衡が崩れてしまう。このため、流体の圧力を上げるべく、流体圧と昇降駆動部338の力とが均衡する位置まで下ステージ332を上昇させる。こうして、
図37に示すように、下ステージ332は上昇して、再び基準位置L
0に近づく。
【0179】
この後、制御部150は、ロードセル380が計測した圧力の値を検出して、昇降駆動部338による下ステージ332の上昇力と、上ステージ322から噴射される流体の圧力とが均衡して、ロードセル380の値が一定となるように、下ステージ332の位置の制御を継続する(ステップS208:YES)。しかしながら、基板211、213の貼り合わせが進行している間は、上側の基板ホルダ221と上側の基板211との間の状態が経時的に変化するので、下ステージ332のZ方向に位置は安定しない。ボンディングウェイブが進むことにより接触領域が拡大して基板211が上側の基板ホルダ221から離れていくにつれて基板211と基板ホルダ221との間の空間が徐々に大きくなり、流体圧が徐々に小さくなるため、接触領域が拡大している過程では徐々に下ステージ332のZ位置が上昇する。貼り合わせが完了すると、基板211と基板ホルダ221との間の空間の大きさに変化が無くなり、流体圧も変化が無くなるため、下ステージ332のZ位置が一定になる。
【0180】
図38は、上記のような過程を経て、貼り合わせ部300における基板211、213の貼り合わせが完了した状態を示す模式的断面図である。図示のように、基板211、213の貼り合わせが完了して、上側の基板ホルダ221と基板211との間の状態が変化しなくなると、ロードセル380により測定される圧力値の変化が収束して、下ステージ332の位置も変化しなくなる。そこで、予め、例えば実験による定めた閾値時間を設定して、ロードセル380による圧力の測定値、もしくは、下ステージ332のZ位置を検出する位置検出部の検出値が閾値時間を超えて変化しない場合に、制御部150は、基板211、213の貼り合わせが完了したと判断できる(ステップS210)。
【0181】
上記した実施例において、制御部150は、ボンディングウェイブの進行が止まった場合や、進行度合いが基板211,213の周方向で不均一である場合等に、制御部150は、貼り合わせに異常が生じていると判断することができる。この場合、制御部150は、異常の原因に応じてその異常を解消する信号を出力する。
【0182】
例えば、基板211,213間のゴミの存在によりボンディングウェイブの進行が不均一である場合は、基板ホルダまたはステージの清掃を行うよう、清掃装置に信号を出力する。
【0183】
前記したアクチュエータで基板を変形させる場合に、異常の原因が、アクチュエータによる基板の変形量であるときは、アクチュエータの駆動を制御する制御部に変形量を調整すべくアクチュエータの駆動量を調整するよう、制御部150から制御信号を出力する。
【0184】
図33から
図38に示す例において、異常の原因が流体の流量や流体圧である場合は、制御部150は、ボンディングウェイブの進行が他の領域よりも遅い領域または速い領域に対応する通気孔325からの流量および流体圧を調整する。
【0185】
異常の原因が上ステージ322および下ステージ332の周囲の温度および気圧の少なくとも一方である場合は、図示しない温調装置または圧力調整装置に対して、温度および気圧を変化させるべく制御信号を出力する。
【0186】
基板211の領域のうちボンディングウェイブの進行が遅い領域を検出した場合は、上ステージ322および下ステージ332の少なくとも一方を、その領域が基板213に近づくように傾動させてもよい。
【0187】
異常の原因が二つの基板211,213の少なくとも一方の面内における活性化の不均一さである場合、制御部150は、活性化装置に対し、ボンディングウェイブの進行度合いの分布に応じて活性化度合いを調整すべく制御信号を出力する。
異常の原因が、基板211、213の反り量を含む変形量である場合、制御部150は、基板211、213を製造する工程で用いられる成膜装置や露光装置等の前処理装置に対し、基板に生じる変形量を調整する旨の制御信号を出力する。
また、起点の形成にかかる時間が長い場合は、基板の活性化度合いが弱かったり、基板211、213間の接触時の押し付け力が弱かったりすること等が原因と考えられるため、制御部150は、活性化装置に対して活性化度合いを調整すべく制御信号を出力したり、基板211、213の接触時の下ステージ332の駆動量を制御する。
【0188】
上記した制御部150によるフィードバック制御は、リアルタイムで実施してもよく、次の基板の貼り合わせ時に行ってもよい。また、フィードバック制御を、基板の1ロット毎、貼り合わせプロセスのレシピが変更される毎等に実施してもよい。
【0189】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0190】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。