(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一熱可塑性樹脂、前記第二熱可塑性樹脂、前記第三熱可塑性樹脂、及び、前記第四熱可塑性樹脂が、脂環式構造含有重合体を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィルムセンサ部材。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0016】
以下の説明において、「長尺」の形状とは、幅に対して、5倍以上の長さを有する形状をいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムの形状をいう。長尺の形状の長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
【0017】
以下の説明において、フィルムの面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx−ny)×dで表される値である。また、フィルムの厚み方向のレターデーションRthは、別に断らない限り、Rth={(nx+ny)/2−nz}×dで表される値である。さらに、フィルムのNZ係数は、別に断らない限り、(nx−nz)/(nx−ny)で表される値であり、0.5+Rth/Reで計算しうる。ここで、nxは、フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、フィルムの前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。nzはフィルムの厚み方向の屈折率を表す。dは、フィルムの厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、590nmである。
【0018】
以下の説明において、固有複屈折値が正の樹脂とは、別に断らない限り、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも大きくなる樹脂を意味する。また、固有複屈折値が負の樹脂とは、別に断らない限り、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも小さくなる樹脂を意味する。固有複屈折値は、誘電率分布から計算しうる。
【0019】
以下の説明において、フィルムの遅相軸とは、別に断らない限り、当該フィルムの面内における遅相軸を表す。
【0020】
以下の説明において、長尺のフィルムの斜め方向とは、別に断らない限り、そのフィルムの面内方向であって、そのフィルムの幅方向に平行でもなく垂直でもない方向を示す。
【0021】
以下の説明において、ある面の正面方向とは、別に断らない限り、当該面の法線方向を意味し、具体的には前記面の極角0°且つ方位角0°の方向を指す。
【0022】
以下の説明において、ある面の傾斜方向とは、別に断らない限り、当該面に平行でも垂直でもない方向を意味し、具体的には前記面の極角が0°より大きく90°より小さい範囲の方向を指す。
【0023】
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0024】
以下の説明において、「偏光板」、「λ/2板」、「λ/4板」及び「ポジティブCプレート」とは、別に断らない限り、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
【0025】
以下の説明において、複数のフィルムを備える部材における各フィルムの光学軸(偏光吸収軸、偏光透過軸、遅相軸等)がなす角度は、別に断らない限り、前記のフィルムを厚み方向から見たときの角度を表す。
【0026】
[1.フィルムセンサ部材の概要]
図1は、本発明の一実施形態に係るフィルムセンサ部材100を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るフィルムセンサ部材100は、透明導電層110、λ/4板120及びλ/2板130を、この順に備える。このフィルムセンサ部材100は、通常、直線偏光子を備える画像表示装置において、直線偏光子の視認側に設けられるための部材である。画像表示装置に設けられる場合、フィルムセンサ部材100は、透明導電層110、λ/4板120及びλ/2板130を、視認側からこの順に備えるように設けられる。
【0027】
λ/4板120は、所定範囲のガラス転移温度を有する非晶性の重合体、又は、所定範囲の融点を有する結晶性の重合体を含む第一熱可塑性樹脂からなる部材である。
【0028】
λ/2板130は、所定範囲のNZ係数を有し、且つ、第二熱可塑性樹脂からなる第一外側層131、紫外線吸収剤を含む第三熱可塑性樹脂からなる中間層132、及び、第四熱可塑性樹脂からなる第二外側層133をこの順に備える複層構造の部材である。
【0029】
フィルムセンサ部材100は、透明導電層110、λ/4板120及びλ/2板130に組み合わせて、更に任意の層を備える。例えば、フィルムセンサ部材100は、λ/4板120の少なくとも片面120Uに設けられたハードコート層140を備えていてもよいし、λ/4板120の両面にハードコート層を備えていてもよい。透明導電層110は、λ/4板120のハードコート層140を備えた片面に設けられてもよいし、ハードコート層140を備えた両面に設けられてもよい。
【0030】
[2.透明導電層]
透明導電層は、透明性が高く、且つ、表面抵抗率が小さい層である。透明導電層は、フィルムセンサ部材を画像表示装置に設けた場合に、タッチパネルの電極、配線等の導電層として機能しうる。
【0031】
透明導電層としては、例えば、導電性金属酸化物、導電性ナノワイヤ、金属メッシュ及び導電性ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の導電材料を含む層を用いうる。
【0032】
導電性金属酸化物としては、例えば、ITO(インジウム錫オキサイド)、IZO(インジウム亜鉛オキサイド)、ZnO(酸化亜鉛)、IWO(インジウムタングステンオキサイド)、ITiO(インジウムチタニウムオキサイド)、AZO(アルミニウム亜鉛オキサイド)、GZO(ガリウム亜鉛オキサイド)、XZO(亜鉛系特殊酸化物)、IGZO(インジウムガリウム亜鉛オキサイド)等が挙げられる。これらの中でも、光線透過性及び耐久性の観点より、ITOが特に好ましい。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0033】
導電性金属酸化物を含む透明導電層は、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト蒸着法、アーク放電プラズマ蒸着法、熱CVD法、プラズマCVD法、鍍金法、及びこれらの組み合わせ等の成膜方法によって、形成しうる。これらの中でも、蒸着法及びスパッタリング法が好ましく、スパッタリング法が特に好ましい。スパッタリング法では、厚みが均一な透明導電層を形成できるので、透明導電層に局所的に薄い部分が発生することを抑制できる。
【0034】
導電性ナノワイヤとは、形状が針状または糸状であり、径がナノメートルサイズの導電性物質をいう。導電性ナノワイヤは直線状であってもよく、曲線状であってもよい。このような導電性ナノワイヤは、導電性ナノワイヤ同士が隙間を形成して網の目状となることにより、少量の導電性ナノワイヤであっても良好な電気伝導経路を形成することができ、電気抵抗の小さい透明導電層を実現できる。また、導電性ワイヤは、網の目状となることにより、網の目の隙間に開口部を形成するので、光透過率の高い透明導電層を得ることができる。さらに、導電性ナノワイヤを含む透明導電層を用いることにより、耐屈曲性に優れるフィルムセンサ部材を得ることができる。
【0035】
導電性ナノワイヤの太さdと長さLとの比(アスペクト比:L/d)は、好ましくは10〜100,000であり、より好ましくは50〜100,000であり、特に好ましくは100〜10,000である。このようにアスペクト比の大きい導電性ナノワイヤを用いれば、導電性ナノワイヤが良好に交差して、少量の導電性ナノワイヤにより高い導電性を発現させることができる。その結果、透明性に優れるフィルムセンサ部材を得ることができる。ここで、「導電性ナノワイヤの太さ」とは、導電性ナノワイヤの断面が円状である場合はその直径を意味し、楕円状である場合はその短径を意味し、多角形である場合は最も長い対角線を意味する。導電性ナノワイヤの太さおよび長さは、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡によって測定しうる。
【0036】
導電性ナノワイヤの太さは、好ましくは500nm未満であり、より好ましくは200nm未満であり、更に好ましくは10nm〜100nmであり、特に好ましくは10nm〜50nmである。これにより、透明導電層の透明性を高めることができる。
【0037】
導電性ナノワイヤの長さは、好ましくは2.5μm〜1000μmであり、より好ましくは10μm〜500μmであり、特に好ましくは20μm〜100μmである。これにより、透明導電層の導電性を高めることができる。
【0038】
導電性ナノワイヤとしては、例えば、金属により構成される金属ナノワイヤ、カーボンナノチューブを含む導電性ナノワイヤ等が挙げられる。
【0039】
金属ナノワイヤに含まれる金属としては、導電性の高い金属が好ましい。好適な金属の例としては、金、白金、銀及び銅が挙げられ、なかでも好ましくは、銀、銅及び金であり、より好ましくは銀である。また、上記金属にメッキ処理(例えば、金メッキ処理)を行った材料を用いてもよい。さらに、前記の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0040】
金属ナノワイヤの製造方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、溶液中で硝酸銀を還元する方法;前駆体表面にプローブの先端部から印可電圧又は電流を作用させ、プローブ先端部で金属ナノワイヤを引き出し、該金属ナノワイヤを連続的に形成する方法;等が挙げられる。溶液中で硝酸銀を還元する方法においては、エチレングリコール等のポリオール、およびポリビニルピロリドンの存在下で、硝酸銀等の銀塩の液相還元をすることによりにより、銀ナノワイヤが合成され得る。均一サイズの銀ナノワイヤは、例えば、Xia, Y.etal., Chem.Mater.(2002)、14、4736−4745、 Xia, Y.etal., Nano letters(2003)3(7)、955−960に記載される方法に準じて、大量生産が可能である。
【0041】
カーボンナノチューブとしては、例えば、直径が0.3nm〜100nm、長さ0.1μm〜20μm程度の、いわゆる多層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブ等が用いられる。なかでも、導電性が高い点から、直径10nm以下、長さ1μm〜10μmの単層もしくは二層カーボンナノチューブが好ましい。また、カーボンナノチューブの集合体には、アモルファスカーボン及び触媒金属などの不純物は、含まないことが好ましい。カーボンナノチューブの製造方法としては、任意の適切な方法が採用されうる。好ましくは、アーク放電法で作製されたカーボンナノチューブが用いられる。アーク放電法で作製されたカーボンナノチューブは結晶性に優れるため好ましい。
【0042】
導電性ナノワイヤを含む透明導電層は、導電性ナノワイヤを溶媒に分散させて得られた導電性ナノワイヤ分散液を塗工及び乾燥させることにより、製造しうる。
【0043】
導電性ナノワイヤ分散液に含まれる溶媒としては、例えば、水、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒等が挙げられ、中でも、環境負荷低減の観点から、水を用いることが好ましい。また、溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0044】
導電性ナノワイヤ分散液における導電性ナノワイヤの濃度は、好ましくは0.1重量%〜1重量%である。これにより、導電性および透明性に優れる透明導電層を形成することができる。
【0045】
導電性ナノワイヤ分散液は、導電性ナノワイヤ及び溶媒に組み合わせて、任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、導電性ナノワイヤの腐食を抑制する腐食抑制剤、導電性ナノワイヤの凝集を抑制する界面活性剤、導電性ナノワイヤを透明導電層に保持するためのバインダーポリマー等が挙げられる。また、任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0046】
導電性ナノワイヤ分散液の塗工方法としては、例えば、スプレーコート法、バーコート法、ロールコート法、ダイコート法、インクジェットコート法、スクリーンコート法、ディップコート法、スロットダイコート法、凸版印刷法、凹版印刷法、グラビア印刷法等が挙げられる。乾燥方法としては、任意の適切な乾燥方法(例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)が採用されうる。例えば、加熱乾燥の場合には、乾燥温度は100℃〜200℃であり、乾燥時間は1分〜10分としうる。
【0047】
透明導電層における導電性ナノワイヤの割合は、透明導電層の全重量に対して、好ましくは80重量%〜100重量%であり、より好ましくは85重量%〜99重量%である。これにより、導電性および光透過性に優れる透明導電層を得ることができる。
【0048】
金属メッシュとは、格子状に形成された金属細線である。金属メッシュに含まれる金属としては、導電性の高い金属が好ましい。好適な金属の例としては、金、白金、銀及び銅が挙げられ、なかでも好ましくは銀、銅及び金であり、より好ましくは銀である。これらの金属は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0049】
金属メッシュを含む透明導電層は、例えば、銀塩を含む透明導電層形成用組成物を塗工し、露光処理及び現像処理によって金属細線を所定の格子パターンに形成することにより、形成できる。また、金属メッシュを含む透明導電層は、金属微粒子を含む透明導電層形成用組成物を所定のパターンに印刷することによっても、形成できる。このような透明導電層及びその形成方法の詳細については、特開2012−18634号公報、特開2003−331654号公報を参照しうる。
【0050】
導電性ポリマーとしては、例えば、ポリチオフェン系ポリマー、ポリアセチレン系ポリマー、ポリパラフェニレン系ポリマー、ポリアニリン系ポリマー、ポリパラフェニレンビニレン系ポリマー、ポリピロール系ポリマー、ポリフェニレン系ポリマー、アクリル系ポリマーで変性されたポリエステル系ポリマー等が挙げられる。中でも、ポリチオフェン系ポリマー、ポリアセチレン系ポリマー、ポリパラフェニレン系ポリマー、ポリアニリン系ポリマー、ポリパラフェニレンビニレン系ポリマーおよびポリピロール系ポリマーが好ましい。
【0051】
その中でも、特に、ポリチオフェン系ポリマーが好ましい。ポリチオフェン系ポリマーを用いることにより、透明性及び化学的安定性に優れる透明導電層を得ることができる。ポリチオフェン系ポリマーの具体例としては、ポリチオフェン;ポリ(3−ヘキシルチオフェン)等のポリ(3−C
1−8アルキル−チオフェン);ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ[3,4−(1,2−シクロヘキシレン)ジオキシチオフェン]等のポリ(3,4−(シクロ)アルキレンジオキシチオフェン);ポリチエニレンビニレン等が挙げられる。
また、前記の導電性ポリマーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0052】
導電性ポリマーは、好ましくは、アニオン性ポリマーの存在下で重合される。例えば、ポリチオフェン系ポリマーは、アニオン性ポリマーの存在下で酸化重合させることが好ましい。アニオン性ポリマーとしては、カルボキシル基、スルホン酸基、又はその塩を有する重合体が挙げられる。好ましくは、ポリスチレンスルホン酸等のスルホン酸基を有するアニオン性ポリマーが用いられる。
【0053】
導電性ポリマーを含む透明導電層は、例えば、導電性ポリマーを含む導電性組成物を塗工し、乾燥することにより形成しうる。導電性ポリマーを含む透明導電層については、特開2011−175601号公報を参照しうる。
【0054】
透明導電層をλ/4板の両面に設ける場合は、片面ごとに透明導電層の形成を行ってもよいし、両面同時に透明導電層の形成を行ってもよい。両面に透明導電層を設ける場合の透明導電層の厚さは、異なっていてもよいが、λ/4板のシワ及びカール等の変形を防ぐためには同じ厚さである方が好ましい。
【0055】
透明導電層は、フィルムセンサ部材の面内方向の全体に形成されていてもよいが、所定のパターンにパターン化されていてもよい。透明導電層のパターンの形状は、タッチパネル(例えば、静電容量方式タッチパネル)として良好に動作するパターンが好ましく、例えば、特表2011−511357号公報、特開2010−164938号公報、特開2008−310550号公報、特表2003−511799号公報、特表2010−541109号公報に記載のパターンが挙げられる。
【0056】
透明導電層の表面抵抗値は、好ましくは2000Ω/□以下、より好ましくは1500Ω/□以下、特に好ましくは1000Ω/□以下である。透明導電層の表面抵抗値がこのように低いことにより、フィルムセンサ部材を用いて高性能のタッチパネルを実現できる。透明導電層の表面抵抗値の下限に特段の制限は無いが、製造が容易であることから、好ましくは100Ω/□以上、より好ましくは200Ω/□以上、特に好ましくは300Ω/□以上である。
【0057】
透明導電層の全光線透過率は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。光線透過率は、JIS K0115に準拠して、分光光度計(日本分光社製、紫外可視近赤外分光光度計「V−570」)を用いて測定しうる。
【0058】
透明導電層の厚みは、好ましくは0.01μm〜10μm、より好ましくは0.05μm〜3μm、特に好ましくは0.1μm〜1μmである。
【0059】
[3.λ/4板]
〔3.1.λ/4板の組成〕
λ/4板は、所定範囲のガラス転移温度を有する非晶性の重合体、又は、所定範囲の融点を有する結晶性の重合体を含む第一熱可塑性樹脂からなる。ここで、結晶性の重合体とは、示差走査熱量計(DSC)で観測できる融点を有する重合体をいう。このような結晶性の重合体は、通常、分子鎖が規則正しく長距離秩序を持って配列する。また、非晶性の重合体とは、示差走査熱量計(DSC)で観測できる融点を有さない重合体をいう。非晶性の重合体は、通常、分子鎖が結晶のような長距離秩序を有さない。
【0060】
非晶性の重合体の具体的なガラス転移温度は、通常150℃以上、好ましくは155℃以上、より好ましくは160℃以上であり、好ましくは185℃以下、より好ましくは180℃以下、特に好ましくは175℃以下である。非晶性の重合体のガラス転移温度が前記範囲の下限値以上であることにより、λ/4板の耐熱性を向上させることができるので、フィルムセンサ部材の耐熱性を改善できる。よって、高温環境においてλ/4板上に透明導電層を形成しても、シワ及びカール等の変形の発生を抑制できる。また、非晶性の重合体のガラス転移温度が前記範囲の上限値以下であることにより、第一熱可塑性樹脂の成形及び延伸を容易に行えるので、λ/4板の製造を容易に行うことが可能である。
【0061】
また、結晶性の重合体の具体的な融点は、通常250℃以上、好ましくは255℃以上、より好ましくは260℃以上であり、好ましくは290℃以下、より好ましくは280℃以下、特に好ましくは270℃以下である。結晶性の重合体の融点が前記範囲の下限値以上であることにより、λ/4板の耐熱性を向上させることができるので、フィルムセンサ部材の耐熱性を改善できる。よって、高温環境においてλ/4板上に透明導電層を形成しても、シワ及びカール等の変形の発生を抑制できる。また、結晶性の重合体の融点が前記範囲の上限値以下であることにより、第一熱可塑性樹脂の成形及び延伸を容易に行えるので、λ/4板の製造を容易に行うことが可能である。
【0062】
(3.1.1.非晶性の重合体)
非晶性の重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリフェニレンサルファイド等のポリアリーレンサルファイド;ポリビニルアルコール;ポリカーボネート;ポリアリレート;セルロースエステル重合体、ポリエーテルスルホン;ポリスルホン;ポリアリルサルホン;ポリ塩化ビニル;ノルボルネン系重合体等の、脂環式構造含有重合体;棒状液晶ポリマーなどが挙げられる。これらの重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、重合体は、単独重合体でもよく、共重合体でもよい。これらの中でも、機械特性、耐熱性、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性に優れることから、脂環式構造含有重合体が好ましい。
【0063】
脂環式構造含有重合体は、その重合体の構造単位が脂環式構造を含有する重合体である。脂環式構造含有重合体は、主鎖に脂環式構造を有していてもよく、側鎖に脂環式構造を有していてもよく、主鎖及び側鎖に脂環式構造を有していてもよい。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、主鎖に脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
【0064】
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、機械強度及び耐熱性の観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
【0065】
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下の範囲である。脂環式構造を構成する炭素原子数をこの範囲にすることにより、脂環式構造含有重合体を含む樹脂の機械強度、耐熱性及び成形性が高度にバランスされる。
【0066】
非晶性の脂環式構造含有重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造含有重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合がこの範囲にあると、脂環式構造含有重合体を含む樹脂の透明性及び耐熱性が良好となる。
【0067】
非晶性の脂環式構造含有重合体としては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物が挙げられる。これらの中でも、透明性及び成形性が良好であるので、ノルボルネン系重合体がより好ましい。
【0068】
ノルボルネン系重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素添加物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素添加物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との付加共重合体が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素添加物は、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性の観点から、特に好適である。
【0069】
ノルボルネン構造を有する単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0070】
極性基の種類としては、例えば、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン酸基などが挙げられる。
【0071】
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のモノ環状オレフィン類及びその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン等の環状共役ジエン及びその誘導体;などが挙げられる。ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0072】
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体は、例えば、単量体を開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
【0073】
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素原子数2〜20のα−オレフィン及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロオレフィン及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0074】
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体は、例えば、単量体を付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
【0075】
上述した開環重合体及び付加重合体の水素添加物は、例えば、開環重合体及び付加重合体の溶液において、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む水素添加触媒の存在下で、炭素−炭素不飽和結合を、好ましくは90%以上水素添加することによって製造しうる。
【0076】
ノルボルネン系重合体の中でも、構造単位として、X:ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジイル−エチレン構造と、Y:トリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカン−7,9−ジイル−エチレン構造とを有し、これらの構造単位の量が、ノルボルネン系重合体の構造単位全体に対して90重量%以上であり、かつ、Xの割合とYの割合との比が、X:Yの重量比で100:0〜40:60であるものが好ましい。このような重合体を用いることにより、当該ノルボルネン系重合体を含む層を、長期的に寸法変化がなく、光学特性の安定性に優れるものにできる。
【0077】
脂環式構造含有重合体の市販品の例としては、日本ゼオン社製のゼオネックス及びゼオノア(ノルボルネン系樹脂);住友ベークライト社製のスミライトFS−1700;JSR社製のアートン(変性ノルボルネン系樹脂);三井化学社製のアペル(環状オレフィン共重合体);Ticona社製のTopas(環状オレフィン共重合体);及び、日立化成社製のオプトレッツOZ−1000シリーズ(脂環式アクリル樹脂);が挙げられる。
【0078】
非晶性の重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、特に好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、樹脂の機械的強度および成型加工性が高度にバランスされる。
【0079】
非晶性の重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、特に好ましくは1.8以上であり、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.7以下である。ここで、Mnは、数平均分子量を表す。分子量分布を前記範囲の下限値以上にすることにより、重合体の生産性を高め、製造コストを抑制できる。また、上限値以下にすることにより、低分子成分の量が小さくなるので、高温曝露時の緩和を抑制して、その重合体を含む部材の安定性を高めることができる。
【0080】
前記の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、溶媒としてシクロヘキサンを用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量として測定しうる。また、前記のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにおいて、試料がシクロヘキサンに溶解しない場合には、溶媒としてトルエンを用いてもよい。
【0081】
第一熱可塑性樹脂における非晶性の重合体の割合は、好ましくは50重量%〜100重量%、より好ましくは70重量%〜100重量%、特に好ましくは90重量%〜100重量%である。非晶性の重合体の割合を前記範囲にすることにより、λ/4板が十分な耐熱性及び透明性を得られる。
【0082】
(3.1.2.結晶性の重合体)
結晶性の重合体としては、例えば、結晶性の脂環式構造含有重合体、及び、結晶性のポリスチレン系重合体(特開2011−118137号公報参照)などが挙げられる。中でも、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性に優れることから、結晶性の脂環式構造含有重合体が好ましい。
【0083】
脂環式構造含有重合体とは、前述したように、分子内に脂環式構造を有する重合体である。よって、脂環式構造含有重合体には、環状オレフィンを単量体として用いた重合反応によって得られうる重合体又はその水素添加物が含まれる。結晶性の脂環式構造含有重合体が有する脂環式構造は、非晶性の脂環式構造含有重合体が有する脂環式構造と同様にしうる。
【0084】
結晶性の脂環式構造含有重合体において、全ての構造単位に対する脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。結晶性の脂環式構造含有重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合を前記のように多くすることにより、耐熱性を高めることができる。
また、脂環式構造含有重合体において、脂環式構造を有する構造単位以外の残部は、格別な限定はなく、使用目的に応じて適宜選択しうる。
【0085】
結晶性の脂環式構造含有重合体の具体例としては、下記の重合体(α)〜重合体(δ)が挙げられる。これらの中でも、耐熱性に優れる樹脂が得られ易いことから、重合体(β)が好ましい。
重合体(α):環状オレフィン単量体の開環重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(β):重合体(α)の水素添加物であって、結晶性を有するもの。
重合体(γ):環状オレフィン単量体の付加重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(δ):重合体(γ)の水素添加物であって、結晶性を有するもの。
【0086】
具体的には、結晶性の脂環式構造含有重合体としては、ジシクロペンタジエンの開環重合体であって結晶性を有するもの、及び、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物であって結晶性を有するものがより好ましく、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物であって結晶性を有するものが特に好ましい。ここで、ジシクロペンタジエンの開環重合体とは、全構造単位に対するジシクロペンタジエン由来の構造単位の割合が、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは100重量%の重合体をいう。
【0087】
以下、重合体(α)及び重合体(β)の製造方法を説明する。
重合体(α)及び重合体(β)の製造に用いうる環状オレフィン単量体は、炭素原子で形成された環構造を有し、該環中に炭素−炭素二重結合を有する化合物である。環状オレフィン単量体の例としては、ノルボルネン系単量体等が挙げられる。また、重合体(α)が共重合体である場合には、環状オレフィン単量体として、単環の環状オレフィンを用いてもよい。
【0088】
ノルボルネン系単量体は、ノルボルネン環を含む単量体である。ノルボルネン系単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:エチリデンノルボルネン)及びその誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)等の、2環式単量体;トリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)及びその誘導体等の、3環式単量体;7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン及びその誘導体等の、4環式単量体;などが挙げられる。
【0089】
前記の単量体において置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;プロパン−2−イリデン等のアルキリデン基;フェニル基等のアリール基;ヒドロキシ基;酸無水物基;カルボキシル基;メトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;などが挙げられる。また、前記の置換基は、1種類を単独で有していてもよく、2種類以上を任意の比率で有していてもよい。
【0090】
単環の環状オレフィンとしては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、メチルシクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の環状モノオレフィン;シクロヘキサジエン、メチルシクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチルシクロオクタジエン、フェニルシクロオクタジエン等の環状ジオレフィン;等が挙げられる。
【0091】
環状オレフィン単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。環状オレフィン単量体を2種以上用いる場合、重合体(α)は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。
【0092】
環状オレフィン単量体には、エンド体及びエキソ体の立体異性体が存在するものがありうる。環状オレフィン単量体としては、エンド体及びエキソ体のいずれを用いてもよい。また、エンド体及びエキソ体のうち一方の異性体のみを単独で用いてもよく、エンド体及びエキソ体を任意の割合で含む異性体混合物を用いてもよい。中でも、脂環式構造含有重合体の結晶性が高まり、耐熱性により優れる樹脂が得られ易くなることから、一方の立体異性体の割合を高くすることが好ましい。例えば、エンド体又はエキソ体の割合が、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。また、合成が容易であることから、エンド体の割合が高いことが好ましい。
【0093】
重合体(α)の合成には、通常、開環重合触媒を用いる。開環重合触媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。このような重合体(α)の合成用の開環重合触媒としては、環状オレフィン単量体を開環重合させ、シンジオタクチック立体規則性を有する開環重合体を生成させうるものが好ましい。好ましい開環重合触媒としては、下記式(1)で示される金属化合物を含むものが挙げられる。
【0094】
M(NR
1i)X
i4−a(OR
2i)
a・L
b (1)
(式(1)において、
Mは、周期律表第6族の遷移金属原子からなる群より選択される金属原子を示し、
R
1iは、3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基、又は、−CH
2R
3i(R
3iは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基からなる群より選択される基を示す。)で表される基を示し、
R
2iは、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基からなる群より選択される基を示し、
X
iは、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、及び、アルキルシリル基からなる群より選択される基を示し、
Lは、電子供与性の中性配位子を示し、
aは、0又は1の数を示し、
bは、0〜2の整数を示す。)
【0095】
式(1)において、Mは、周期律表第6族の遷移金属原子からなる群より選択される金属原子を示す。このMとしては、クロム、モリブデン及びタングステンが好ましく、モリブデン及びタングステンがより好ましく、タングステンが特に好ましい。
【0096】
式(1)において、R
1iは、3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基、又は、−CH
2R
3iで表される基を示す。
R
1iの、3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基の炭素原子数は、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜15である。また、前記置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;などが挙げられる。これらの置換基は、1種類を単独で有していてもよく、2種類以上を任意の比率で有していてもよい。さらに、R
1iにおいて、3位、4位及び5位の少なくとも2つの位置に存在する置換基が互いに結合し、環構造を形成していてもよい。
【0097】
3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基としては、例えば、無置換フェニル基;4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−メトキシフェニル基等の一置換フェニル基;3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基等の二置換フェニル基;3,4,5−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリクロロフェニル基等の三置換フェニル基;2−ナフチル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−2−ナフチル基等の置換基を有していてもよい2−ナフチル基;等が挙げられる。
【0098】
R
1iの、−CH
2R
3iで表される基において、R
3iは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基からなる群より選択される基を示す。
R
3iの、置換基を有していてもよいアルキル基の炭素原子数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10である。このアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。さらに、前記置換基としては、例えば、フェニル基、4−メチルフェニル基等の置換基を有していてもよいフェニル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシル基;等が挙げられる。これらの置換基は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
R
3iの、置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ベンジル基、ネオフィル基等が挙げられる。
【0099】
R
3iの、置換基を有していてもよいアリール基の炭素原子数は、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜15である。さらに、前記置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;等が挙げられる。これらの置換基は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
R
3iの、置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基等が挙げられる。
【0100】
これらの中でも、R
3iで表される基としては、炭素原子数が1〜20のアルキル基が好ましい。
【0101】
式(1)において、R
2iは、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基からなる群より選択される基を示す。R
2iの、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基としては、それぞれ、R
3iの、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基として示した範囲から選択されるものを任意に用いうる。
【0102】
式(1)において、X
iは、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、及び、アルキルシリル基からなる群より選択される基を示す。
X
iのハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
X
iの、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基としては、それぞれ、R
3iの、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基として示した範囲から選択されるものを任意に用いうる。
X
iのアルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等が挙げられる。
式(1)で示される金属化合物が1分子中に2以上のX
iを有する場合、それらのX
iは、互いに同じでもよく、異なっていてもよい。さらに、2以上のX
iが互いに結合し、環構造を形成していてもよい。
【0103】
式(1)において、Lは、電子供与性の中性配位子を示す。
Lの電子供与性の中性配位子としては、例えば、周期律表第14族又は第15族の原子を含有する電子供与性化合物が挙げられる。その具体例としては、トリメチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ルチジン等のアミン類;等が挙げられる。これらの中でも、エーテル類が好ましい。また、式(1)で示される金属化合物が1分子中に2以上のLを有する場合、それらのLは、互いに同じでもよく、異なっていてもよい。
【0104】
式(1)で示される金属化合物としては、フェニルイミド基を有するタングステン化合物が好ましい。即ち、式(1)において、Mがタングステン原子であり、且つ、R
1iがフェニル基である化合物が好ましい。さらに、その中でも、テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体がより好ましい。
【0105】
式(1)で示される金属化合物の製造方法は、特に限定されない。例えば、特開平5−345817号公報に記載されるように、第6族遷移金属のオキシハロゲン化物;3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニルイソシアナート類又は一置換メチルイソシアナート類;電子供与性の中性配位子(L);並びに、必要に応じて、アルコール類、金属アルコキシド及び金属アリールオキシド;を混合することにより、式(1)で示される金属化合物を製造することができる。
【0106】
前記の製造方法では、式(1)で示される金属化合物は、通常、反応液に含まれた状態で得られる。金属化合物の製造後、前記の反応液をそのまま開環重合反応の触媒液として用いてもよい。また、結晶化等の精製処理により、金属化合物を反応液から単離及び精製した後、得られた金属化合物を開環重合反応に供してもよい。
【0107】
開環重合触媒は、式(1)で示される金属化合物を単独で用いてもよく、式(1)で示される金属化合物を他の成分と組み合わせて用いてもよい。例えば、式(1)で示される金属化合物と有機金属還元剤とを組み合わせて用いることで、重合活性を向上させることができる。
【0108】
有機金属還元剤としては、例えば、炭素原子数1〜20の炭化水素基を有する周期律表第1族、第2族、第12族、第13族又は14族の有機金属化合物が挙げられる。このような有機金属化合物としては、例えば、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、フェニルリチウム等の有機リチウム;ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミド等の有機マグネシウム;ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛等の有機亜鉛;トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムイソブトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムジイソブトキシド等の有機アルミニウム;テトラメチルスズ、テトラ(n−ブチル)スズ、テトラフェニルスズ等の有機スズ;等が挙げられる。これらの中でも、有機アルミニウム又は有機スズが好ましい。また、有機金属還元剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0109】
開環重合反応は、通常、有機溶媒中で行われる。有機溶媒は、開環重合体及びその水素添加物を、所定の条件で溶解もしくは分散させることが可能であり、かつ、開環重合反応及び水素化反応を阻害しないものを用いうる。このような有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系脂肪族炭化水素溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系芳香族炭化水素溶媒;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル等の含窒素炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;これらを組み合わせた混合溶媒;等が挙げられる。これらの中でも、有機溶媒としては、芳香族炭化水素溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、脂環族炭化水素溶媒、エーテル溶媒が好ましい。
【0110】
開環重合反応は、例えば、環状オレフィン単量体と、式(1)で示される金属化合物と、必要に応じて有機金属還元剤とを混合することにより、開始させることができる。これらの成分を混合する順序は、特に限定されない。例えば、環状オレフィン単量体を含む溶液に、式(1)で示される金属化合物及び有機金属還元剤を含む溶液を混合してもよい。また、有機金属還元剤を含む溶液に、環状オレフィン単量体及び式(1)で示される金属化合物を含む溶液を混合してもよい。さらに、環状オレフィン単量体及び有機金属還元剤を含む溶液に、式(1)で示される金属化合物の溶液を混合してもよい。各成分を混合する際は、それぞれの成分の全量を一度に混合してもよいし、複数回に分けて混合してもよい。また、比較的に長い時間(例えば1分間以上)にわたって連続的に混合してもよい。
【0111】
開環重合反応の開始時における反応液中の環状オレフィン単量体の濃度は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、特に好ましくは3重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは45重量%以下、特に好ましくは40重量%以下である。環状オレフィン単量体の濃度を前記範囲の下限値以上にすることにより、生産性を高くできる。また、上限値以下にすることにより、開環重合反応後の反応液の粘度を低くできるので、その後の水素化反応を容易に行うことができる。
【0112】
開環重合反応に用いる式(1)で示される金属化合物の量は、「金属化合物:環状オレフィン単量体」のモル比が、所定の範囲の収まるように設定することが望ましい。具体的には、前記のモル比は、好ましくは1:100〜1:2,000,000、より好ましくは1:500〜1,000,000、特に好ましくは1:1,000〜1:500,000である。金属化合物の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、十分な重合活性を得ることができる。また、上限値以下にすることにより、反応後に金属化合物を容易に除去できる。
【0113】
有機金属還元剤の量は、式(1)で示される金属化合物1モルに対して、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.2モル以上、特に好ましくは0.5モル以上であり、好ましくは100モル以下、より好ましくは50モル以下、特に好ましくは20モル以下である。有機金属還元剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、重合活性を十分に高くできる。また、上限値以下にすることにより、副反応の発生を抑制することができる。
【0114】
重合体(α)の重合反応系は、活性調整剤を含んでいてもよい。活性調整剤を用いることで、開環重合触媒を安定化したり、開環重合反応の反応速度を調整したり、重合体の分子量分布を調整したりできる。
活性調整剤としては、官能基を有する有機化合物を用いうる。このような活性調整剤としては、例えば、含酸素化合物、含窒素化合物、含リン有機化合物等が挙げられる。
【0115】
含酸素化合物としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、フラン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、ベンゾフェノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;エチルアセテート等のエステル類;等が挙げられる。
含窒素化合物としては、例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、キヌクリジン、N,N−ジエチルアニリン等のアミン類;ピリジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、2−t−ブチルピリジン等のピリジン類;等が挙げられる。
含リン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート等のホスフィン類;トリフェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド類;等が挙げられる。
【0116】
活性調整剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
重合体(α)の重合反応系における活性調整剤の量は、式(1)で示される金属化合物100モル%に対して、好ましくは0.01モル%〜100モル%である。
【0117】
重合体(α)の重合反応系は、重合体(α)の分子量を調整するために、分子量調整剤を含んでいてもよい。分子量調整剤としては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル、酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレート等の酸素含有ビニル化合物;アリルクロライド等のハロゲン含有ビニル化合物;アクリルアミド等の窒素含有ビニル化合物;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン等の非共役ジエン;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン;等が挙げられる。
【0118】
分子量調整剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
重合体(α)を重合するための重合反応系における分子量調整剤の量は、目的とする分子量に応じて適切に決定しうる。分子量調整剤の具体的な量は、環状オレフィン単量体に対して、好ましくは0.1モル%〜50モル%の範囲である。
【0119】
重合温度は、好ましくは−78℃以上、より好ましくは−30℃以上であり、好ましくは+200℃以下、より好ましくは+180℃以下である。
重合時間は、反応規模に依存しうる。具体的な重合時間は、好ましくは1分間から1000時間の範囲である。
【0120】
上述した製造方法により、重合体(α)が得られる。この重合体(α)を水素化することにより、重合体(β)を製造することができる。
重合体(α)の水素化は、例えば、常法に従って水素化触媒の存在下で、重合体(α)を含む反応系内に水素を供給することによって行うことができる。この水素化反応において、反応条件を適切に設定すれば、通常、水素化反応により水素添加物のタクチシチーが変化することはない。
【0121】
水素化触媒としては、オレフィン化合物の水素化触媒として公知の均一系触媒及び不均一触媒を用いうる。
均一系触媒としては、例えば、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウム等の、遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなる触媒;ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリドカルボニルビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリド、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の貴金属錯体触媒;等が挙げられる。
不均一触媒としては、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム等の金属触媒;ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナ等の、前記金属をカーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタンなどの担体に担持させてなる固体触媒が挙げられる。
水素化触媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0122】
水素化反応は、通常、不活性有機溶媒中で行われる。不活性有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素溶媒;ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒;シクロヘキサン、デカヒドロナフタレンなどの脂環族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル溶媒;等が挙げられる。不活性有機溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、不活性有機溶媒は、開環重合反応に用いた有機溶媒と同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、開環重合反応の反応液に水素化触媒を混合して、水素化反応を行ってもよい。
【0123】
水素化反応の反応条件は、通常、用いる水素化触媒によっても異なる。
水素化反応の反応温度は、好ましくは−20℃以上、より好ましくは−10℃以上、特に好ましくは0℃以上であり、好ましくは+250℃以下、より好ましくは+220℃以下、特に好ましくは+200℃以下である。反応温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、反応速度を速くできる。また、上限値以下にすることにより、副反応の発生を抑制できる。
【0124】
水素圧力は、好ましくは0.01MPa以上、より好ましくは0.05MPa以上、特に好ましくは0.1MPa以上であり、好ましくは20MPa以下、より好ましくは15MPa以下、特に好ましくは10MPa以下である。水素圧力を前記範囲の下限値以上にすることにより、反応速度を速くできる。また、上限値以下にすることにより、高耐圧反応装置等の特別な装置が不要となり、設備コストを抑制できる。
【0125】
水素化反応の反応時間は、所望の水素添加率が達成される任意の時間に設定してもよく、好ましくは0.1時間〜10時間である。
水素化反応後は、通常、常法に従って、重合体(α)の水素添加物である重合体(β)を回収する。
【0126】
水素化反応における水素添加率(水素化された主鎖二重結合の割合)は、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。水素添加率が高くなるほど、脂環式構造含有重合体の耐熱性を良好にできる。
ここで、重合体の水素添加率は、オルトジクロロベンゼン−d
4を溶媒として、145℃で、
1H−NMR測定により測定しうる。
【0127】
次に、重合体(γ)及び重合体(δ)の製造方法を説明する。
重合体(γ)及び(δ)の製造に用いる環状オレフィン単量体としては、重合体(α)及び重合体(β)の製造に用いうる環状オレフィン単量体として示した範囲から選択されるものを任意に用いうる。また、環状オレフィン単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0128】
重合体(γ)の製造においては、単量体として、環状オレフィン単量体に組み合わせて、環状オレフィン単量体と共重合可能な任意の単量体を用いうる。任意の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素原子数2〜20のα−オレフィン;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香環ビニル化合物;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等の非共役ジエン;等が挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、任意の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0129】
環状オレフィン単量体と任意の単量体との量の割合は、重量比(環状オレフィン単量体:任意の単量体)で、好ましくは30:70〜99:1、より好ましくは50:50〜97:3、特に好ましくは70:30〜95:5である。
【0130】
環状オレフィン単量体を2種以上用いる場合、及び、環状オレフィン単量体と任意の単量体を組み合わせて用いる場合は、重合体(γ)は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0131】
重合体(γ)の合成には、通常、付加重合触媒を用いる。このような付加重合触媒としては、例えば、バナジウム化合物及び有機アルミニウム化合物から形成されるバナジウム系触媒、チタン化合物及び有機アルミニウム化合物から形成されるチタン系触媒、ジルコニウム錯体及びアルミノオキサンから形成されるジルコニウム系触媒等が挙げられる。また、付加重合体触媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0132】
付加重合触媒の量は、単量体1モルに対して、好ましくは0.000001モル以上、より好ましくは0.00001モル以上であり、好ましくは0.1モル以下、より好ましくは0.01モル以下である。
【0133】
環状オレフィン単量体の付加重合は、通常、有機溶媒中で行われる。有機溶媒としては、環状オレフィン単量体の開環重合に用いうる有機溶媒として示した範囲から選択されるものを任意に用いうる。また、有機溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0134】
重合体(γ)を製造するための重合における重合温度は、好ましくは−50℃以上、より好ましくは−30℃以上、特に好ましくは−20℃以上であり、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、特に好ましくは150℃以下である。また、重合時間は、好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上であり、好ましくは20時間以下、より好ましくは10時間以下である。
【0135】
上述した製造方法により、重合体(γ)が得られる。この重合体(γ)を水素化することにより、重合体(δ)を製造することができる。
重合体(γ)の水素化は、重合体(α)を水素化する方法として先に示したものと同様の方法により、行いうる。
【0136】
結晶性の脂環式構造含有重合体は、シンジオタクチック構造を有することが好ましく、そのシンジオタクチック立体規則性の度合いが高いことがより好ましい。これにより、脂環式構造含有重合体の結晶性を高めることができるので、耐加水分解性及び耐薬品性を良好にでき、更には、融点を高めることができるので耐熱性を特に良好にできる。脂環式構造含有重合体のシンジオタクチック立体規則性の度合いは、脂環式構造含有重合体のラセモ・ダイアッドの割合によって表しうる。脂環式構造含有重合体の具体的なラセモ・ダイアッドの割合は、好ましくは51%以上、より好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上である。
【0137】
ラセモ・ダイアッドの割合は、
13C−NMRスペクトル分析により、測定しうる。具体的には、下記の方法により測定しうる。
オルトジクロロベンゼン−d
4を溶媒として、200℃で、inverse−gated decoupling法を適用して、重合体試料の
13C−NMR測定を行う。この
13C−NMR測定の結果から、オルトジクロロベンゼン−d
4の127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルの強度比に基づいて、重合体試料のラセモ・ダイアッドの割合を求めうる。
【0138】
結晶性の重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、樹脂の成形加工性と耐熱性とのバランスに優れる。特に、結晶性の重合体が脂環式構造含有重合体である場合、そのような傾向が顕著である。
【0139】
結晶性の重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下である。このような分子量分布を有する結晶性の重合体は、成形加工性に優れる。特に、結晶性の重合体が脂環式構造含有重合体である場合、そのような傾向が顕著である。
【0140】
結晶性の重合体のガラス転移温度は、特に限定されないが、通常は85℃以上、通常170℃以下である。
【0141】
結晶性の重合体は、フィルムセンサ部材を製造するよりも前においては結晶化が進行していなくてもよいが、フィルムセンサ部材が製造された後においては結晶化が十分に進行していることが好ましい。フィルムセンサ部材が備えるλ/4に含まれる結晶性の重合体の具体的な結晶化度の範囲は、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、特に好ましくは20%以上である。結晶化度を前記範囲の下限値以上にすることにより、フィルムセンサ部材に高い耐熱性、耐薬品性及び引張弾性率等の好ましい性質を付与することができる。前記の結晶化度の上限に特に制限は無いが、透明性の観点から、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、特に好ましくは50%以下である。重合体の結晶化度は、X線回折法によって測定しうる。
【0142】
第一熱可塑性樹脂における結晶性の重合体の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。結晶性の重合体の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、耐熱性及び引張弾性率を高めることができる。
【0143】
(3.1.3.任意の成分)
第一熱可塑性樹脂は、上述した非晶性の重合体及び結晶性の重合体に組み合わせて、任意の成分を含みうる。
例えば、第一熱可塑性樹脂は、任意の成分として、CO
2レーザー光を効率良く吸収できる添加剤を含んでいてもよい。λ/4板、λ/2板又はフィルムセンサ部材といったフィルムを所望の形状の大きさに切断し、直線偏光子と枚葉で貼合し、任意の光軸関係にある積層フィルムを得ようとする場合がある。さらに、積層フィルムと液晶セルを貼合してパネルを作製し、そのパネルの各四隅に切欠きを入れて厚みを厚くすることなく表示装置の配線を行うために、スペースを設ける場合がある。この際、フィルムを切断する方法のひとつとして、CO
2レーザー切断方法がある。CO
2レーザーによる切断を効率よく行うために、第一熱可塑性樹脂は、CO
2レーザー光(例えば波長9.4μm付近)を効率よく吸収できる添加剤を含んでいてもよい。その添加剤の例として、例えば、リン酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物、フタル酸エステル化合物、アジピン酸エステル化合物などのエステル化合物が挙げられる。
【0144】
さらに、任意の成分としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤;石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリアルキレンワックス等のワックス;ソルビトール系化合物、有機リン酸の金属塩、有機カルボン酸の金属塩、カオリン及びタルク等の核剤;ジアミノスチルベン誘導体、クマリン誘導体、アゾール系誘導体(例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、及びベンゾチアソール誘導体)、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ナフタル酸誘導体、及びイミダゾロン誘導体等の蛍光増白剤;タルク、シリカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維等の無機充填材;顔料、染料等の着色剤;分散剤;熱安定剤;光安定剤;難燃剤;難燃助剤;帯電防止剤;酸化防止剤;可塑剤;近赤外線吸収剤;界面活性剤;滑剤;フィラー;などが挙げられる。
また、任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0145】
(3.1.4.第一熱可塑性樹脂の固有複屈折値)
第一熱可塑性樹脂は、正の固有複屈折値を有することが好ましい。正の固有複屈折値を有する樹脂とは、延伸方向の屈折率が、それに直交する方向の屈折率よりも大きくなる樹脂を意味する。固有複屈折値は、誘電率分布から計算しうる。第一熱可塑性樹脂として正の固有複屈折値を有する樹脂を採用することにより、配向規制力の高さ、強度の高さ、コストの低さ、低い熱寸法変化率等の良好な特性を備えたλ/4板を、容易に得ることができる。
【0146】
〔3.2.λ/4板の特性〕
λ/4板の面内レターデーションは、λ/2板及びλ/4板の組み合わせによって広帯域λ/4板が実現できる範囲で、適切に設定しうる。具体的なλ/4板の面内レターデーションReは、好ましくは110nm以上、より好ましくは118nm以上であり、好ましくは154nm以下、より好ましくは138nm以下、特に好ましくは128nm以下である。λ/4板がこのような面内レターデーションReを有することにより、λ/2板及びλ/4板を組み合わせて、広帯域λ/4板として機能させることができる。そのため、フィルムセンサ部材を備える画像表示装置を偏光サングラスを着用して見た場合に、視認できる色の範囲を広くして、視認性を高めることができる。
【0147】
λ/4板のNZ係数は、好ましくは0.95以上、より好ましくは0.97以上、特に好ましくは0.99以上であり、好ましくは1.05以下、より好ましくは1.03以下、特に好ましくは1.01以下である。λ/4板のNZ係数が1.0に近く、λ/4板の光学的な一軸性が高い方が、NZ係数が所定範囲にあるλ/2板とλ/4板との組み合わせを、広帯域λ/4板として良好に機能させることができる。
【0148】
λ/4板は、順波長分散特性、フラット波長分散特性、及び逆波長分散特性等の波長分散特性を有しうる。順波長分散特性は、波長が短くなるに従って、レターデーションが大きくなる波長分散特性を意味する。また、逆波長分散特性は、波長が短くなるに従って、レターデーションが小さくなる波長分散特性を意味する。さらに、フラット波長分散特性は、波長に関係なく、レターデーションが変わらない波長分散特性を意味する。
【0149】
図2は、本発明の一例としてのフィルムセンサ部材100を模式的に示す分解斜視図である。また、
図2には、円偏光板を製造する場合にフィルムセンサ部材100に貼り合わせられる直線偏光子210を、一点鎖線で示す。
図2に示す例のように、フィルムセンサ部材100が長尺の形状を有する場合、フィルムセンサ部材100の長手方向MDに対してλ/4板120の遅相軸D
Qがなす配向角θ1は、λ/4板120及びλ/2板130の組み合わせによって広帯域λ/4板が実現できる範囲で、任意に設定しうる。前記の配向角θ1の具体的な範囲は、好ましくは75°±5°、より好ましくは75°±3°、特に好ましくは75°±1°である。
【0150】
一般に、長尺の直線偏光子210は、当該直線偏光子210の長手方向に平行な偏光吸収軸D
Pを有する。また、長尺のフィルムセンサ部材100及び長尺の直線偏光子210から長尺の円偏光板を製造する場合、通常は、フィルムセンサ部材100の長手方向MDと直線偏光子210の長手方向とを平行にして、貼り合わせを行う。よって、製造される円偏光板において、λ/4板120の配向角θ1は、円偏光板において直線偏光子210の偏光吸収軸D
Pに対してλ/4板120の遅相軸D
Qがなす角度に一致しうる。そして、こうして得られる円偏光板では、λ/4板120及びλ/2板130の組み合わせを含むフィルムセンサ部材が広帯域λ/4板として機能して、直線偏光子210を通った広い波長範囲の直線偏光を、安定して円偏光に変換できる。したがって、λ/4板120の配向角θ1が前記範囲にあることにより、広い波長範囲において機能しうる円偏光板を、フィルムセンサ部材100と直線偏光子210とのロール・トゥ・ロール法による貼り合わせによって製造できる。
【0151】
λ/4板の全光線透過率は、好ましくは80%以上である。
λ/4板のヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下であり、理想的には0%である。ここで、ヘイズは、JIS K7361−1997に準拠して、日本電色工業社製「濁度計 NDH−300A」を用いて、5箇所測定し、それから求めた平均値を採用しうる。
【0152】
λ/4板が含む揮発性成分の量は、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下であり、理想的にはゼロである。揮発性成分の量を少なくすることにより、λ/4板の寸法安定性が向上し、レターデーション等の光学特性の経時変化を小さくすることができる。
ここで、揮発性成分とは、フィルム中に微量含まれる分子量200以下の物質であり、例えば、残留単量体及び溶媒などが挙げられる。揮発性成分の量は、フィルム中に含まれる分子量200以下の物質の合計として、フィルムをクロロホルムに溶解させてガスクロマトグラフィーによって分析することにより定量することができる。
【0153】
λ/4板の飽和吸水率は、好ましくは0.03重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下であり、理想的にはゼロである。λ/4板の飽和吸水率が前記範囲であると、面内レターデーション等の光学特性の経時変化を小さくすることができる。
ここで、飽和吸水率は、フィルムの試験片を23℃の水中に24時間浸漬し、増加した質量の、浸漬前フィルム試験片の質量に対する百分率で表される値である。
【0154】
λ/4板の光弾性係数の絶対値は、好ましくは2.0×10
−11Pa
−1以下、より好ましくは1.0×10
−11Pa
−1以下、特に好ましくは6.0×10
−12Pa
−1以下である。光弾性係数とは、応力を受けたときに生じる複屈折の応力依存性を示す値であり、屈折率の差Δnが、応力σと光弾性係数Cの積(Δn=C・σ)で求められる関係を有する。光弾性係数の絶対値が、前記上限以下であることにより、衝撃を与えたり、曲面の表示面を有する画像表示装置に適合させるために変形させたりした場合であっても、良好な光学性能を発揮することができる。
【0155】
光弾性係数は、下記の方法によって測定しうる。
温度20℃±2℃、湿度60±5%の条件下で、フィルムに50g〜150gの範囲で荷重を加えながら、フィルムの面内レターデーションを測定する。測定された面内レターデーションをフィルムの厚みで割って、複屈折値Δnを求める。荷重を変えながら複屈折値Δnを求め、その結果から荷重−Δn曲線を作成する。そして、この荷重−Δn曲線の傾きを、光弾性係数として測定する。
【0156】
λ/4板は、加熱した場合のフィルム面内の熱寸法変化率の絶対値が、特定の小さい値であることが好ましい。具体的には、150℃で1時間加熱した場合のフィルム面内の熱寸法変化率の絶対値が、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、さらにより好ましくは0.1%以下である。λ/4板は、通常、高温環境下において収縮するので、前記の熱寸法変化率は通常は負の値となる。このような低い熱寸法変化率の絶対値を有することにより、透明導電層の形成による不具合の発生が抑制され、高品質なフィルムセンサ部材を容易に製造することができる。また、フィルムセンサ部材を、画像表示装置の構成要素として用いた場合、高い耐久性と優れた光学的性能を発揮することができる。
【0157】
λ/4板等のフィルムの熱寸法変化率は、下記の方法により測定しうる。
室温23℃の環境下で、フィルムを150mm×150mmの大きさの正方形に切り出し、試料フィルムとする。この試料フィルムを、150℃のオーブン内で60分間加熱し、23℃(室温)まで冷却した後、試料フィルムの四辺の長さ及び2本の対角線の長さを測定する。
測定された四辺それぞれの長さを基に、下記式(I)に基づいて、熱寸法変化率を算出する。式(I)において、L
Aは、加熱後の試料フィルムの辺の長さ[mm]を示す。
熱寸法変化率(%)=[(L
A−150)/150]×100 (I)
また、測定された2本の対角線の長さを基に、下記式(II)に基づいて、熱寸法変化率を算出する。式(II)において、L
Dは、加熱後の試料フィルムの対角線の長さ[mm]を示す。
熱寸法変化率(%)=[(L
D−212.13)/212.13]×100 (II)
そして、得られた6つの熱寸法変化率の計算値の中で絶対値が最大になる値を、フィルムの熱寸法変化率として採用する。このような測定により得られる熱寸法変化率は、実質的に、面内の全ての方向において測定した熱寸法変化率の最大値となりうる。
【0158】
λ/4板の複屈折Δnは、好ましくは0.0010以上、より好ましくは0.003以上である。複屈折Δnの上限は、特に限定されないが、通常0.1以下である。λ/4板の複屈折が、前記下限値以上であることにより、所望の光学的性能を有しながら薄いフィルムセンサ部材を得ることができる。
【0159】
〔3.3.λ/4板の厚み〕
λ/4板の厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは13μm以上、特に好ましくは15μm以上であり、好ましくは60μm以下、より好ましくは58μm以下、特に好ましくは55μm以下である。λ/4板の厚みが、前記範囲の下限値以上であることにより所望のレターデーションの発現ができ、また、前記範囲の上限値以下であることにより薄膜化ができる。
【0160】
〔3.4.λ/4板の製造方法〕
λ/4板の製造方法は任意である。λ/4板は、例えば、第一熱可塑性樹脂からなる長尺の延伸前基材に延伸を施すことを含む製造方法により、延伸フィルムとして製造しうる。特に、λ/4板は、長尺の延伸前基材に1回以上の斜め延伸を施すことを含む製造方法により、斜め延伸フィルムとして製造することが好ましい。ここで「斜め延伸」とは、長尺のフィルムを斜め方向に延伸することを表す。斜め延伸を含む製造方法によれば、λ/4板を容易に製造することができる。
【0161】
以下、λ/4板の好ましい製造方法の一例を、説明する。この例に係るλ/4板の製造方法は、(a)第一熱可塑性樹脂からなる長尺の延伸前基材を用意する第一工程と、(b)長尺の延伸前基材を延伸して、長尺のλ/4板を得る第二工程と、を含む。
【0162】
(a)第一工程では、長尺の延伸前基材を用意する。延伸前基材は、例えば、溶融成形法又は溶液流延法によって製造しうる。溶融成形法のより具体的な例としては、押出成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、及び延伸成形法が挙げられる。これらの方法の中でも、機械強度、表面精度等に優れたλ/4板を得るために、押出成形法、インフレーション成形法又はプレス成形法が好ましく、中でも効率よく簡単にλ/4板を製造できる観点から押出成形法が特に好ましい。
【0163】
(a)第一工程で長尺の延伸前基材を用意した後で、(b)その長尺の延伸前基材を延伸して、延伸フィルムとしてλ/4板を得る第二工程を行なう。(b)第二工程では、通常、延伸前基材を長手方向に連続的に搬送しながら、延伸を行なう。この際、延伸方向は、フィルムの長手方向でもよく、幅方向でもよいが、斜め方向であることが好ましい。また、延伸は、延伸方向以外に拘束力の加わらない自由一軸延伸であってもよく、延伸方向以外にも拘束力が加わる延伸であってもよい。ここで自由一軸延伸とは、ある一方向への延伸であって、延伸される方向以外の方向に拘束力を加えないことをいう。これらの延伸は、ロール延伸機、テンター延伸機等の任意の延伸機を用いて行いうる。中でも、斜め延伸を行う場合には、テンター延伸機を用いることが好ましい。テンター延伸機は、延伸前基材のフィルム幅方向の両端部をそれぞれ把持しうる複数個の把持子を有し、この把持子で延伸前基材を所定の方向に延伸することにより、任意の方向への延伸を達成しうる。
【0164】
(b)第二工程における延伸倍率は、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.15倍以上、更に好ましくは1.2倍以上、特に好ましくは1.5倍以上であり、好ましくは20倍以下、より好ましくは10倍以下、更に好ましくは5.0倍以下、より更に好ましくは3.0倍以下、中でも好ましくは2.8倍以下、特に好ましくは2.6倍以下である。(b)第二工程における延伸倍率を前記範囲の下限値以上にすることにより、延伸方向の屈折率を大きくできる。また、上限値以下にすることにより、λ/4板の遅相軸方向を容易に制御することができる。
【0165】
(b)第二工程における延伸温度は、好ましくはTg
1−30℃以上、より好ましくはTg
1−20℃以上、更に好ましくはTg
1−10℃以上、より更に好ましくはTg
1−5℃以上、中でも好ましくはTg
1−2℃以上、特に好ましくはTg
1℃以上であり、好ましくはTg
1+60℃以下、より好ましくはTg
1+50℃以下、更に好ましくはTg
1+40℃以下、より更に好ましくはTg
1+35℃以下、特に好ましくはTg
1+30℃以下である。ここで「Tg
1」は、第一熱可塑性樹脂に含まれる重合体のガラス転移温度を表す。(b)第二工程における延伸温度を前記の範囲にすることにより、延伸前基材に含まれる分子を確実に配向させることができるので、所望の光学特性を有するλ/4板を容易に得ることができる。
【0166】
前記の例に示したλ/4板の製造方法は、所望のλ/4板が得られる範囲において、更に変更して実施してもよい。よって、λ/4板の製造方法は、上述した工程に組み合わせて、更に任意の工程を有していてもよい。例えば、第一熱可塑性樹脂が結晶性の重合体を含む場合、λ/4板の製造方法は、(b)第二工程の後で、(c)結晶性の重合体の結晶化を促進する工程(結晶化促進工程)を含んでいてもよい。結晶化を促進することにより、所望の性質を有するλ/4板を容易に得ることができる。
【0167】
結晶化の促進は、(b)第二工程で得られた延伸フィルムを所定の温度に調整することで行いうる。結晶化を促進する際の温度範囲は、結晶性の重合体のガラス転移温度Tg
c以上、結晶性の重合体の融点Tm以下の温度範囲において任意に設定しうる。中でも、前記の温度範囲は、結晶化の速度が大きくなるように設定することが好ましく、具体的には、好ましくはTg
c+20℃以上、より好ましくはTg
c+30℃以上であり、好ましくはTm−20℃以下、より好ましくはTm−40℃以下である。結晶化を促進する際の温度を前記範囲の下限値以上にすることにより結晶化を効果的に促進でき、また、上限値以下にすることによりλ/4板の白濁を抑制できる。
【0168】
延伸フィルムを前記のような温度にする場合、通常、延伸フィルムの加熱を行う。この際に用いる加熱装置としては、延伸フィルムの雰囲気温度を上昇させる加熱装置が好ましい。好適な加熱装置の具体例を挙げると、オーブン及び加熱炉が挙げられる。そのような加熱装置による加熱では、延伸フィルムとの接触が不要であるため、均一な加熱を行うことができる。
【0169】
結晶化の促進は、延伸フィルムの形状を保持して緊張させた状態で行うことが好ましい。これにより、結晶化の促進時における延伸フィルムの熱収縮による変形を抑制できるので、延伸フィルムの平滑性を損なうことなく当該延伸フィルム中の重合体の結晶化を促進できる。ここで、延伸フィルムを緊張させた状態とは、延伸フィルムに張力がかかった状態をいう。ただし、この延伸フィルムを緊張させた状態には、延伸フィルムが実質的に延伸される状態を含まない。また、実質的に延伸されるとは、延伸フィルムのいずれかの方向への延伸倍率が通常1.1倍以上になることをいう。
【0170】
延伸フィルムを保持する場合、適切な保持具によって延伸フィルムを保持する。保持具は、延伸フィルムを連続的に保持しうるものでもよく、間隔を空けて間欠的に保持しうるものでもよい。例えば、所定の間隔で配列された保持具によって延伸フィルムを間欠的に保持してもよい。
【0171】
延伸フィルムは、例えば当該延伸フィルムの二辺以上で保持されることによって、緊張した状態にされうる。これにより、保持されて緊張した状態となった領域において延伸フィルムの熱収縮による変形が妨げられる。延伸フィルムの広い面積において変形を妨げるためには、延伸フィルムは、対向する二辺を含む辺で保持されて、その保持された辺の間の領域を緊張した状態にされることが好ましい。例えば、矩形の枚葉の延伸フィルムでは、その延伸フィルムの対向する二辺(例えば、長辺同士、又は、短辺同士)で保持されて、前記二辺の間の領域を緊張した状態にされることで、その枚葉の延伸フィルムの全面において変形が妨げられる。また、例えば、長尺の延伸フィルムでは、その延伸フィルムの幅方向の端部にある二辺(即ち、長辺)で保持されて前記二辺の間の領域を緊張した状態にされることで、その長尺の延伸フィルムの全面において変形が妨げられる。このように変形を妨げられた延伸フィルムは、熱収縮によってフィルム内に応力が生じても、シワ等の変形の発生が抑制される。この際、例えば延伸方向(二軸延伸の場合は延伸倍率が大きい方向)と直交する二辺を含む辺で延伸フィルムが保持されることにより延伸方向に張力が与えられて延伸フィルムが緊張させられると、変形が特に効果的に抑制される。
【0172】
結晶化の促進による変形を効果的に抑制するためには、より多くの辺で延伸フィルムが保持されることが好ましい。よって、例えば、枚葉の延伸フィルムは、その全ての辺で保持されることが好ましい。具体例を挙げると、矩形の枚葉の延伸フィルムは、四辺で保持されることが好ましい。
【0173】
延伸フィルムを辺で保持しうる保持具としては、延伸フィルムの辺以外の部分では延伸フィルムと接触しないものが好ましい。このような保持具を用いることにより、より平滑性に優れるλ/4板を得ることができる。
【0174】
また、保持具としては、保持具同士の相対的な位置を(c)結晶化促進工程において固定しうるものが好ましい。このような保持具は、(c)結晶化促進工程において保持具同士の位置が相対的に移動しないので、延伸フィルムの実質的な延伸及び収縮を抑制しやすい。
【0175】
好適な保持具としては、例えば、矩形の延伸フィルム用の保持具として、型枠に所定間隔で設けられ延伸フィルムの辺を把持しうるクリップ等の把持子が挙げられる。また、例えば、長尺の延伸フィルムの幅方向の端部にある二辺を保持するための保持具としては、テンター延伸機に設けられ延伸フィルムの辺を把持しうる把持子が挙げられる。
【0176】
長尺の延伸フィルムは、その延伸フィルムの長手方向の端部にある辺(即ち、短辺)で保持されてもよいが、前記の辺で保持される代わりに、延伸フィルムが結晶化の促進のために所定の温度に調整される処理領域の長手方向の両側で保持されてもよい。例えば、延伸フィルムの処理領域の長手方向の両側に、延伸フィルムを熱収縮しないように保持して緊張させた状態にしうる保持装置を設けてもよい。このような保持装置としては、例えば、2つのロールの組み合わせ、押出機と引き取りロールとの組み合わせ、などが挙げられる。これらの組み合わせによって延伸フィルムに搬送張力等の張力を加えることで、結晶化の促進が行われる処理領域において当該延伸フィルムの熱収縮を抑制できる。そのため、前記の組み合わせを保持装置として用いれば、延伸フィルムを長手方向に搬送しながら当該延伸フィルムを保持できるので、λ/4板の効率的な製造ができる。
【0177】
また、(c)結晶化促進化工程により、高温環境下における寸法変化の原因となり得るフィルム内の応力が解消される。このために、熱膨張が小さく、熱寸法変化率が小さいλ/4板の製造ができる。
【0178】
延伸フィルムを結晶化の促進のための所定の温度に維持する処理時間は、好ましくは1秒以上、より好ましくは5秒以上であり、好ましくは30分以下、より好ましくは10分以下である。処理時間を前記範囲の下限値以上にすることにより、延伸フィルムが含む重合体の結晶化を十分に進行させて、λ/4板の耐熱性を効果的に高めることができる。また、処理時間を前記範囲の上限値以下にすることにより、λ/4板の白濁を抑制できる。
【0179】
さらに、第一熱可塑性樹脂が結晶性の重合体を含む場合、λ/4板の製造方法は、(b)第二工程の後で、(d)延伸フィルムを平坦に維持しながら延伸フィルムの緊張を緩和させる工程(緩和工程)を含んでいてもよい。λ/4板の製造方法が(c)結晶化促進工程を含む場合、(c)結晶化促進工程の後で、(d)緩和工程を行うことが好ましい。
【0180】
延伸フィルムの緊張の緩和、とは、延伸又は結晶化促進のために延伸機又は保持装置によって保持されて緊張した状態から延伸フィルムを解放することをいい、延伸フィルムが緊張していなければ延伸フィルムが保持装置で保持されていてもよい。このように緊張が緩和されると、延伸フィルムは熱収縮を生じうる状態となる。(d)緩和工程では、延伸フィルムに熱収縮を生じさせることによって、λ/4板に加熱時において生じうる応力を解消している。そのため、λ/4板の高温環境下での熱収縮を小さくできるので、高温環境下での寸法安定性に優れるλ/4板が得られる。
【0181】
延伸フィルムの緊張の緩和は、一時に行ってもよく、時間をかけて連続的又は段階的に行ってもよい。ただし、得られるλ/4板の波打ち及びシワ等の変形の発生を抑制するためには、緊張の緩和は、連続的又は段階的に行うことが好ましい。
【0182】
前記の延伸フィルムの緊張の緩和は、延伸フィルムを平坦に維持しながら行う。ここで延伸フィルムを平坦に維持する、とは、延伸フィルムに波打ち及びシワといった変形を生じないように延伸フィルムを平面形状に保つことをいう。これにより、得られるλ/4板の波打ち及びシワ等の変形の発生を抑制できる。
【0183】
緊張の緩和の際の延伸フィルムの処理温度は、結晶性の重合体のガラス転移温度Tg
c以上、結晶性の重合体の融点Tm以下の温度範囲において設定しうる。具体的な処理温度は、好ましくはTg
c+20℃以上、より好ましくはTg
c+30℃以上であり、好ましくはTm−20℃以下、より好ましくはTm−40℃以下である。また、(c)結晶化促進工程から冷却を経ずに引き続いて(d)緩和工程を行う場合には、(d)緩和工程における延伸フィルムの処理温度は、(c)結晶化促進工程での温度と同じであることが好ましい。これにより、(d)緩和工程における延伸フィルムの温度ムラを抑制したり、λ/4板の生産性を高めたりできる。
【0184】
(d)緩和工程において、延伸フィルムを前記の温度範囲に維持する処理時間は、好ましくは1秒以上、より好ましくは5秒以上であり、好ましくは10分間以下である。処理時間を前記範囲の下限値以上にすることにより、λ/4板の高温環境下での寸法安定性を効果的に高めることができる。また、上限値以下にすることにより、λ/4板の高温環境下での寸法安定性を効果的に高めることができ、また、(d)緩和工程における結晶化の進行によるλ/4板の白濁を抑制することができる。
【0185】
(d)緩和工程において枚葉の延伸フィルムの緊張を緩和する場合、例えば、その延伸フィルムの四辺を保持しながら、保持部分の間隔を連続的又は段階的に狭める方法を採用しうる。この場合、延伸フィルムの四辺において保持部分の間隔を同時に狭めてもよい。また、一部の辺において保持部分の間隔を狭めた後で、別の一部の辺の保持部分の間隔を狭めてもよい。さらに、一部の辺の保持部分の間隔を狭めないで維持してもよい。また、一部の辺の保持部分の間隔は連続的又は段階的に狭め、別の一部の辺の保持部分の間隔を一時に狭めてもよい。
【0186】
また、前記のような(d)緩和工程において長尺の延伸フィルムの緊張を緩和する場合、例えば、テンター延伸機を用いて、クリップ等の把持子を案内しうるガイドレールの間隔を延伸フィルムの搬送方向において狭めたり、隣り合う把持子の間隔を狭めたりする方法を採用しうる。
【0187】
前記のように、延伸フィルムを保持した状態で保持部分の間隔を狭めることで延伸フィルムの緊張の緩和を行う場合、間隔を狭める程度は、延伸フィルムに残留していた応力の大きさに応じて設定しうる。(d)緩和工程において保持間隔を狭める具体的な程度は、(d)緩和工程での処理温度において延伸フィルムに緊張を与えない状態での熱収縮率をS(%)とした場合に、好ましくは0.1S以上、より好ましくは0.5S以上、特に好ましくは0.7S以上であり、好ましくは1.2S以下、より好ましくは1.0S以下、特に好ましくは0.95S以下である。また、例えば直交する2方向で熱収縮率Sが異なる場合のように、前記熱収縮率Sに異方性がある場合は、各々の方向について前記範囲内で保持間隔を狭める程度を定めうる。このような範囲にすることで、λ/4板の残留応力を十分に除去し、かつ平坦性を維持させることができる。
【0188】
前記の熱収縮率Sは、下記の方法により測定しうる。
室温23℃の環境下で、延伸フィルムを150mm×150mmの大きさの正方形に切り出し、試料フィルムとする。この試料フィルムを、(d)緩和工程の処理温度と同じ温度に設定したオーブン内で60分間加熱し、23℃(室温)まで冷却した後、試料フィルムの熱収縮率Sを求めたい方向に平行な二辺の長さを測定する。
測定された二辺それぞれの長さを基に、下記式(A)に基づいて、試料フィルムの熱収縮率Sを算出する。式(A)において、L
1は、加熱後の試料フィルムの測定した二辺の一方の辺の長さ[mm]を示し、L
2はもう一方の辺の長さ[mm]を示す。
熱収縮率S(%)=[(300−L
1−L
2)/300]×100 (A)
【0189】
さらに、λ/4板の製造方法は、例えば、上述した工程で延伸される前に延伸前基材を任意の方向に延伸する工程、製造されたλ/4板の両端部をトリミングする工程、λ/4板の表面に保護層を設ける工程、λ/4板の表面に化学的処理及び物理的処理等の表面処理を施す工程を含んでいてもよい。
【0190】
[4.λ/2板]
〔4.1.λ/2板の組成〕
λ/2板は、第二熱可塑性樹脂からなる第一外側層、紫外線吸収剤を含む第三熱可塑性樹脂からなる中間層、及び、第四熱可塑性樹脂からなる第二外側層を、この順に備える。このλ/2板において、通常は、第一外側層と中間層とは間に他の層を挟むことなく接しており、また、中間層と第二外側層とは間に他の層を挟むことなく接している。このλ/2板は、紫外線吸収剤を含む中間層を備えるので、当該λ/2板を透過する紫外線を弱めることができる。よって、フィルムセンサ部材のλ/2板側の面に紫外線が照射された場合に、λ/4板及び透明導電層に入射する紫外線のエネルギーを弱くできる。したがって、フィルムセンサ部材のλ/2板側の面に直線偏光子を貼り合わせて円偏光板を製造する場合に、前記直線偏光子を通して紫外線硬化型接着剤に紫外線を照射しても、その紫外線によっては、λ/4板から透明導電層までの層部分には材料劣化が生じ難い。よって、フィルムセンサ部材と直線偏光子との貼り合わせ操作による透明導電層の密着性の低下を抑制できるので、透明導電層の密着性に優れた円偏光板を製造できる。さらに、このλ/2板は、中間層の両側に第一外側層及び第二外側層を備えるので、中間層に含まれる紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制できる。
【0191】
(4.1.1.中間層に含まれる第三熱可塑性樹脂、及び、厚み)
中間層は、紫外線吸収剤を含む第三熱可塑性樹脂からなる。この第三熱可塑性樹脂は、通常、重合体及び紫外線吸収剤を含む。
【0192】
第三熱可塑性樹脂における重合体としては、通常、熱可塑性の重合体を用いる。この熱可塑性の重合体としては、例えば、λ/4板が含みうる重合体として説明した範囲の重合体を任意に用いうる。これにより、λ/4板の説明で記載したのと同様の利点を得ることができる。さらに、第三熱可塑性樹脂が含む重合体には、そのガラス転移温度及び融点に制限は無い。よって、第三熱可塑性樹脂が含む重合体の例としては、λ/4板が含みうる重合体と同じ種類の重合体であって、ガラス転移温度又は融点が前記所定範囲に収まらないものも挙げられる。中でも、機械特性、耐熱性、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性に優れることから、前記の重合体としては、脂環式構造含有重合体が好ましい。また、第三熱可塑性樹脂が含む重合体は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0193】
第三熱可塑性樹脂が含む重合体のガラス転移温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上であり、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下、特に好ましくは140℃以下である。重合体のガラス転移温度が前記範囲の下限値以上であることにより、高温環境下におけるλ/2板の耐久性を高めることができ、また、前記範囲の上限値以下であることにより、延伸処理を容易に行える。
【0194】
第三熱可塑性樹脂に含まれる重合体の光弾性係数の絶対値は、好ましくは10×10
−12Pa
−1以下、より好ましくは7×10
−12Pa
−1以下、特に好ましくは4×10
−12Pa
−1以下である。これにより、λ/2板のレターデーションのバラツキを小さくすることができる。
【0195】
第三熱可塑性樹脂における重合体の量は、好ましくは80.0重量%以上、より好ましくは82.0重量%以上、特に好ましくは84.0重量%以上であり、好ましくは97.0重量%以下、より好ましくは96.0重量%以下、特に好ましくは95.0重量%以下である。重合体の量を前記範囲に収めることにより、λ/2板の耐熱性及び透明性を高くできる。
【0196】
紫外線吸収剤としては、紫外線を吸収しうる化合物を用いうる。紫外線吸収剤により、中間層に紫外線の透過を妨げる能力を付与できる。紫外線吸収剤としては、有機紫外線吸収剤が好ましく、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、アゾメチン系紫外線吸収剤、インドール系紫外線吸収剤、ナフタルイミド系紫外線吸収剤、フタロシアニン系紫外線吸収剤等の有機紫外線吸収剤が挙げられる。
【0197】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、1,3,5−トリアジン環を有する化合物が好ましい。トリアジン系紫外線吸収剤の具体例としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(へキシル)オキシ]−フェノール、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。このようなトリアジン系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、チバスペシャリティーケミカルズ社製「チヌビン1577」、ADEKA社製「LA−F70」、「LA−46」などが挙げられる。
【0198】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−ベンゾトリアゾール−2−イル−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖および側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール等が挙げられる。このようなトリアゾール系紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、ADEKA社製「アデカスタブLA−31」、チバスペシャリティーケミカルズ社製「TINUVIN328」などが挙げられる。
【0199】
アゾメチン系紫外線吸収剤としては、例えば、特許第3366697号公報に記載の材料を例示することができ、市販品としては、例えば、オリエント化学社製「BONASORB UA−3701」などが挙げられる。
【0200】
インドール系紫外線吸収剤としては、例えば、特許第2846091号公報に記載の材料を例示することができ、市販品としては、例えば、オリエント化学社製「BONASORB UA−3911」、「BONASORB UA−3912」などが挙げられる。
【0201】
フタロシアニン系紫外線吸収剤としては、例えば、特許第4403257号公報、特許第3286905号公報に記載の材料を例示することができ、市販品としては、例えば、山田化学工業社製「FDB001」、「FDB002」などが挙げられる。
【0202】
これらの中でも、波長380nm〜400nmでの紫外線吸収性能が優れているという点で、トリアジン系紫外線吸収剤、アゾメチン系紫外線吸収剤及びインドール系紫外線吸収剤が好ましく、トリアジン系紫外線吸収剤が特に好ましい。
【0203】
紫外線吸収剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0204】
第三熱可塑性樹脂における紫外線吸収剤の量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは4重量%以上、特に好ましくは5重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは18重量%以下、特に好ましくは16重量%以下である。紫外線吸収剤の量が、前記範囲の下限値以上であることにより、紫外線の透過を妨げるλ/2板の能力を特に高めることができ、前記範囲の上限値以下であることにより、λ/2板の可視光に対する透明性を高めることができる。
【0205】
第三熱可塑性樹脂は、重合体及び紫外線吸収剤に組み合わせて、更に任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、第一熱可塑性樹脂が含みうる任意の成分と同様の例が挙げられる。また、任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0206】
中間層の厚みは、「中間層の厚み」/「λ/2板の厚み」で表される比が、所定の範囲に収まるように設定することが好ましい。前記の所定の範囲は、好ましくは1/3以上、より好ましくは2/4以上、特に好ましくは3/5以上であり、好ましくは80/82以下、より好ましくは79/82以下、特に好ましくは78/82以下である。前記の比が、前記範囲の下限値以上であることにより、紫外線の透過を妨げるλ/2板の能力を特に高めることができ、前記範囲の上限値以下であることにより、λ/2板の厚みを薄くできる。
【0207】
(4.1.2.第一外側層に含まれる第二熱可塑性樹脂、及び、厚み)
第一外側層は、第二熱可塑性樹脂からなる。この第二熱可塑性樹脂は、通常、重合体を含む。第二熱可塑性樹脂における重合体としては、通常、熱可塑性の重合体を用いる。この熱可塑性の重合体としては、例えば、中間層に含まれる第三熱可塑性樹脂が含みうる重合体として説明した範囲の重合体を任意に用いうる。これにより、中間層の説明で記載したのと同様の利点を得ることができる。中でも、機械特性、耐熱性、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性に優れることから、前記の重合体としては、脂環式構造含有重合体が好ましい。さらに、第一外側層に含まれる第二熱可塑性樹脂が含む重合体としては、中間層に含まれる第三熱可塑性樹脂が含む重合体と同一の重合体を用いることが好ましい。これにより、中間層と第一外側層との接着強度を高めたり、中間層と第一外側層との界面での光の反射を抑制したりし易い。また、第二熱可塑性樹脂が含む重合体は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0208】
第二熱可塑性樹脂における重合体の量は、好ましくは90.0重量%〜100重量%、より好ましくは95.0重量%〜100重量%である。重合体の量を前記範囲にすることにより、λ/2板が十分な耐熱性及び透明性を得られる。
【0209】
第二熱可塑性樹脂は、紫外線吸収剤を含みうるが、第二熱可塑性樹脂における紫外線吸収剤の量は少ないことが好ましく、第二熱可塑性樹脂は紫外線吸収剤を含まないことがより好ましい。第二熱可塑性樹脂が紫外線吸収剤を含まないことにより、紫外線吸収剤のブリードアウトを効果的に抑制することができる。
【0210】
第二熱可塑性樹脂は、重合体に組み合わせて、更に任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、第一熱可塑性樹脂が含みうる任意の成分と同様の例が挙げられる。また、任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0211】
第一外側層の厚みは、「第一外側層の厚み」/「λ/2板の厚み」で表される比が、所定の範囲に収まるように設定することが好ましい。前記の所定の範囲は、好ましくは1/82以上、より好ましくは2/82以上、特に好ましくは3/82以上であり、好ましくは1/3以下、より好ましくは1/4以下、特に好ましくは1/5以下である。前記の比が、前記範囲の下限値以上であることにより、中間層に含まれる紫外線吸収剤のブリードアウトを効果的に抑制でき、前記範囲の上限値以下であることにより、λ/2板の厚みを薄くできる。
【0212】
(4.1.3.第二外側層に含まれる第四熱可塑性樹脂、及び、厚み)
第二外側層は、第四熱可塑性樹脂からなる。この第四熱可塑性樹脂は、通常、重合体を含む。第四熱可塑性樹脂における重合体としては、通常、熱可塑性の重合体を用いる。この熱可塑性の重合体としては、例えば、第一外側層に含まれる第二熱可塑性樹脂が含みうる重合体として説明した範囲の重合体を任意に用いうる。これにより、第一外側層の説明で記載したのと同様の利点を得ることができる。中でも、機械特性、耐熱性、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性に優れることから、前記の重合体としては、脂環式構造含有重合体が好ましい。また、第四熱可塑性樹脂が含む重合体は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0213】
第一外側層に含まれる第二熱可塑性樹脂と、第二外側層に含まれる第四熱可塑性樹脂とは、異なる樹脂であってもよいが、同一の樹脂であることが好ましい。第二熱可塑性樹脂と、第四熱可塑性樹脂とが同一の樹脂であることにより、λ/2板の製造コストを抑制したり、λ/2板のカールを抑制したりできる。
【0214】
第二外側層の厚みは、第一外側層の厚みの範囲として説明した範囲から選択される任意の厚みにしうる。これにより、第一外側層の厚みの説明で記載したのと同様の利点を得ることができる。中でも、λ/2板のカールを抑制するためには、第二外側層の厚みは、第一外側層と同一にすることが好ましい。
【0215】
〔4.2.λ/2板の特性〕
λ/2板の面内レターデーションは、λ/2板及びλ/4板の組み合わせによって広帯域λ/4板が実現できる範囲で、適切に設定しうる。具体的なλ/2板の面内レターデーションは、好ましくは240nm以上、より好ましくは250nm以上であり、好ましくは300nm以下、より好ましくは280nm以下、特に好ましくは265nm以下である。λ/2板がこのような面内レターデーションReを有することにより、λ/2板及びλ/4板を組み合わせて、広帯域λ/4板として機能させることができる。そのため、フィルムセンサ部材を備える画像表示装置を偏光サングラスを着用して見た場合に、視認できる色の範囲を広くして、視認性を高めることができる。
【0216】
λ/2板のNZ係数は、通常1.1以上、好ましくは1.3以上、特に好ましくは1.5以上であり、通常3.0以下、好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下である。λ/2板が前記範囲のNZ係数を有することにより、フィルムセンサ部材を設けた画像表示装置の表示面を、前記表示面の傾斜方向から見た場合に、偏光サングラス装着の有無に応じた全方位方向における画像の色味及び明るさのバラツキを抑制できる。
【0217】
λ/2板は、順波長分散特性、フラット波長分散特性、及び逆波長分散特性等の波長分散特性を有しうる。
【0218】
一般に、ある基準方向に対して角度θ
λ/4をなす遅相軸を有するλ/4板と、前記基準方向に対して角度θ
λ/2をなす遅相軸を有するλ/2板とを組み合わせた複層フィルムが、式(B):「θ
λ/4=2θ
λ/2+45°」を満たす場合、この複層フィルムは、広い波長範囲において当該複層フィルムを通過する光にその光の波長の略1/4波長の面内レターデーションを与えうる広帯域λ/4板となる(特開2007−004120号公報参照)。よって、
図2に示す例のように、λ/2板130及びλ/4板120の組み合わせによって広帯域λ/4板の機能を発揮させる観点から、λ/4板120の遅相軸D
Qは、λ/2板130の遅相軸D
Hとの間に、前記式(B)で表されるのに近い関係を満たすことが好ましい。具体的には、円偏光板を製造するためにフィルムセンサ部材100と貼り合わせられる直線偏光子210の偏光吸収軸D
Pの方向を、前記の基準方向とした場合に、λ/4板120の遅相軸D
Q及びλ/2板130の遅相軸D
Hが、前記式(B)の関係を満たすことが好ましい。このような観点から、λ/4板120の遅相軸D
Qと、λ/2板130の遅相軸D
Hとがなす交差角は、好ましくは55°以上、より好ましくは57°以上、特に好ましくは59°以上であり、好ましくは65°以下、より好ましくは63°以下、特に好ましくは61°以下である。
【0219】
さらには、フィルムセンサ部材100が長尺の形状を有する場合、ロール・トゥ・ロール法を用いた貼り合わせによる円偏光板の製造を可能にする観点から、
図2に示す例のように、フィルムセンサ部材100の長手方向MDに対してλ/2板130の遅相軸D
Hがなす配向角θ2は、所定の範囲に設定されることが好ましい。具体的には、λ/2板130の配向角θ2は、好ましくは15°±5°、より好ましくは15°±3°、特に好ましくは15°±1°である。長尺のフィルムセンサ部材100及び長尺の直線偏光子210から長尺の円偏光板を製造する場合、通常は、λ/2板130の配向角θ2は、円偏光板において直線偏光子210の偏光吸収軸D
Pに対してλ/2板130の遅相軸D
Hがなす角度に一致しうる。したがって、λ/2板130の配向角θ2が前記範囲にあることにより、広い波長範囲において機能しうる円偏光板を、フィルムセンサ部材100と直線偏光子210とのロール・トゥ・ロール法による貼り合わせによって製造できる。
【0220】
λ/2板130の遅相軸D
Hがフィルムセンサ部材100の長手方向MDに対して配向角θ2をなす向きは、通常、λ/4板120の遅相軸D
Qがフィルムセンサ部材100の長手方向MDに対して配向角θ1をなす向きと同じである。したがって、例えば、厚み方向から見た場合、フィルムセンサ部材100の長手方向MDに対してλ/4板120の遅相軸D
Qが時計回りの向きで配向角θ1をなす場合には、フィルムセンサ部材100の長手方向MDに対してλ/2板130の遅相軸D
Hは、通常、時計回りの向きで配向角θ2をなす。また、例えば、厚み方向から見た場合、フィルムセンサ部材100の長手方向MDに対してλ/4板120の遅相軸D
Qが反時計回りの向きで配向角θ1をなす場合には、フィルムセンサ部材100の長手方向MDに対してλ/2板130の遅相軸D
Hは、通常、反時計回りの向きで配向角θ2をなす。
【0221】
λ/2板の全光線透過率は、好ましくは80%以上である。
【0222】
λ/2板のヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下であり、理想的には0%である。
【0223】
λ/2板が含む揮発性成分の量は、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下であり、理想的にはゼロである。揮発性成分の量を少なくすることにより、λ/2板の寸法安定性が向上し、レターデーション等の光学特性の経時変化を小さくすることができる。
【0224】
λ/2板の飽和吸水率は、好ましくは0.03重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下であり、理想的にはゼロである。λ/2板の飽和吸水率が前記範囲であると、面内レターデーション等の光学特性の経時変化を小さくすることができる。
【0225】
〔4.3.λ/2板の厚み〕
λ/2板の厚みは、好ましくは25μm以上、より好ましくは27μm以上、特に好ましくは30μm以上であり、好ましくは45μm以下、より好ましくは43μm以下、特に好ましくは40μm以下である。λ/2板の厚みが、前記範囲の下限値以上であることにより所望のレターデーションの発現ができ、また、前記範囲の上限値以下であることにより薄膜化ができる。
【0226】
〔4.4.λ/2板の製造方法〕
λ/2板の製造方法は任意である。λ/2板は、例えば、中間層、第一外側層及び第二外側層それぞれに対応する層を含む長尺の延伸前基材に1回以上の斜め延伸を施すことを含む製造方法により、斜め延伸フィルムとして製造してもよい。斜め延伸を含む製造方法によれば、λ/2板を容易に製造することができる。
【0227】
さらに、λ/2板は、前記の斜め延伸の後で更に縦延伸を施すことを含む製造方法により、逐次二軸延伸フィルムとして製造することが好ましい。ここで「縦延伸」とは、長尺のフィルムを長手方向に延伸することを表す。このような斜め延伸と縦延伸との組み合わせを行うことにより、λ/4板とロール・トゥ・ロール法による貼り合わせが可能なλ/2板を製造し易い。
【0228】
以下、λ/2板の好ましい製造方法の一例を、説明する。この例に係るλ/2板の製造方法は、(e)中間層、第一外側層及び第二外側層それぞれに対応する層を含む長尺の延伸前基材を用意する第三工程と、(f)長尺の延伸前基材を斜め方向に延伸して、長尺の中間フィルムを得る第四工程と、必要に応じて(g)中間フィルムを長手方向に自由一軸延伸して、長尺のλ/2板を得る第五工程とを含む。
【0229】
(e)第三工程では、長尺の延伸前基材を用意する。延伸前基材は、例えば、第一外側層形成用の第二熱可塑性樹脂、中間層形成用の第三熱可塑性樹脂、及び、第二外側層形成用の第四熱可塑性樹脂をフィルム状に成形する工程を含む製造方法により、製造しうる。樹脂の成形方法としては、例えば、共押出法及び共流延法などが挙げられる。これらの成形方法の中でも、共押出法は、製造効率に優れ、フィルム中に揮発性成分を残留させ難いので、好ましい。
【0230】
共押出法を用いた製造方法は、樹脂を共押し出しする工程を含む。共押出法においては、樹脂は、溶融状態で層状に押し出され、第二熱可塑性樹脂の層、第三熱可塑性樹脂の層、及び、第四熱可塑性樹脂の層を形成する。この際、樹脂の押出方法としては、例えば、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等が挙げられる。中でも、共押出Tダイ法が好ましい。共押出Tダイ法には、フィードブロック方式及びマルチマニホールド方式があり、厚みのばらつきを少なくできる点で、マルチマニホールド方式が特に好ましい。前記のように樹脂をフィルム状に成形することにより、第二熱可塑性樹脂の層、第三熱可塑性樹脂の層、及び、第四熱可塑性樹脂の層をこの順に備える長尺の延伸前基材が得られる。
【0231】
(e)第三工程で長尺の延伸前基材を用意した後で、(f)その長尺の延伸前基材を斜め方向に延伸して中間フィルムを得る第四工程を行なう。(f)第四工程では、通常、延伸前基材を長手方向に連続的に搬送しながら、延伸を行なう。この延伸は、テンター延伸機を用いて行いうる。
【0232】
(f)第四工程における延伸倍率は、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.15倍以上、特に好ましくは1.2倍以上であり、好ましくは5.0倍以下、より好ましくは4.0倍以下、特に好ましくは3.5倍以下である。(f)第四工程における延伸倍率が前記範囲の下限値以上であることにより、λ/2板におけるシワの発生を抑制でき、また、延伸方向の屈折率を大きくできる。また、延伸倍率が前記範囲の上限値以下であることにより、λ/2板の配向角のバラツキを小さくすることができ、遅相軸方向を容易に制御できる。
【0233】
(f)第四工程における延伸温度は、好ましくはTg
2−5℃以上、より好ましくはTg
2−2℃以上、特に好ましくはTg
2℃以上であり、好ましくはTg
2+40℃以下、より好ましくはTg
2+35℃以下、特に好ましくはTg
2+30℃以下である。(f)第四工程における延伸温度が前記の範囲であることにより、延伸前基材に含まれる分子を確実に配向させることができるので、所望の光学特性を有する中間フィルムが容易に得られる。ここで「Tg
2」は、第二熱可塑性樹脂、第三熱可塑性樹脂及び第四熱可塑性樹脂に含まれる重合体のガラス転移温度のうち、最も高い温度を表す。
【0234】
(f)第四工程で延伸されたことによって、中間フィルムに含まれる分子は配向している。そのため、中間フィルムは、遅相軸を有する。(f)第四工程では、斜め方向へ延伸が行なわれるので、中間フィルムの遅相軸は、中間フィルムの斜め方向に発現する。具体的には、中間フィルムは、その長手方向に対して、通常5°〜85°の範囲に遅相軸を有する。
【0235】
中間フィルムの遅相軸の具体的な方向は、製造したいλ/2板の遅相軸の方向に応じて設定することが好ましい。通常は、(g)第五工程により得られるλ/2板の遅相軸がその長手方向に対してなす配向角は、中間フィルムの遅相軸がその長手方向に対してなす配向角よりも小さくなる。そのため、中間フィルムの遅相軸がその長手方向に対してなす配向角は、λ/2板の遅相軸がその長手方向に対してなす配向角よりも大きくすることが好ましい。
【0236】
(f)第四工程の後で、必要に応じて、(g)中間フィルムを長手方向に自由一軸延伸して、長尺のλ/2板を得る第五工程を行なう。本例に示す中間フィルムの長手方向への自由一軸延伸では、通常、中間フィルムの幅方向の端部を拘束しない、長手方向への延伸を行う。(g)第五工程でのこのような延伸は、通常、中間フィルムを長手方向に連続的に搬送しながら、ロール延伸機を用いて行なわれる。
【0237】
(g)第五工程における延伸倍率は、(f)第四工程における延伸倍率よりも小さくすることが好ましい。これにより、斜め方向に遅相軸を有するλ/2板において、シワの発生を抑制しながら延伸を行うことが可能となる。斜め方向への延伸及び長手方向への自由一軸延伸をこの順に行なうことと、(g)第五工程における延伸倍率を(f)第四工程における延伸倍率よりも小さくすることとの組み合わせにより、長手方向に対して小さい角度方向に遅相軸を有するλ/2板を容易に製造できる。
【0238】
(g)第五工程における具体的な延伸倍率は、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.15倍以上、特に好ましくは1.2倍以上であり、好ましくは3.0倍以下、より好ましくは2.8倍以下、特に好ましくは2.6倍以下である。(g)第五工程における延伸倍率が前記範囲の下限値以上であることにより、λ/2板のシワを抑制できる。また、延伸倍率が前記範囲の上限値以下であることにより、遅相軸の方向を容易に制御することが可能となる。
【0239】
(g)第五工程における延伸温度T2は、(f)第四工程における延伸温度T1を基準として、好ましくは「T1−20℃」より高く、より好ましくは「T1−18℃」以上、特に好ましくは「T1−16℃」以上であり、好ましくは「T1+20℃」より低く、より好ましくは「T1+18℃」以下、特に好ましくは「T1+16℃」以下である。(g)第五工程における延伸温度T2を前記の範囲にすることにより、λ/2板の面内レターデーションを効果的に調節することができる。
【0240】
前記の例に示したλ/2板の製造方法は、所望のλ/2板が得られる範囲において、更に変更して実施してもよい。よって、λ/2板の製造方法は、上述した工程に与わせて、更に任意の工程を有していてもよい。例えば、λ/4板の製造方法の任意の工程と同様の工程を含んでいてもよい。
【0241】
[5.任意の層]
フィルムセンサ部材は、上述した要素以外に、任意の層を備えていてもよい。
任意の層としては、例えば、ハードコート層が挙げられる。このようなハードコート層は、λ/4板の少なくとも片面に設けられうる。通常、ハードコート層は、λ/4板の透明導電層側の面に設けられる。よって、透明導電層がλ/4板の両面に設けられる場合は、ハードコート層もλ/4板の両面に設けられうる。
【0242】
ハードコート層は、高い硬さを有する層である。ハードコート層の硬さは、JIS鉛筆硬度で表しうる。ハードコート層の具体的なJIS鉛筆硬度は、好ましくはB以上、より好ましくはHB以上、更に好ましくはH以上、特に好ましくは2H以上である。ハードコート層のJIS鉛筆硬度が前記のように高いことにより、λ/4板の耐擦傷性及びカール抑制性能を向上させることができる。ここで、JIS鉛筆硬度は、JIS K5600−5−4に準拠して、各種硬度の鉛筆を45°傾けて、上から500g重の荷重を掛けて層の表面を引っ掻き、傷が付きはじめる鉛筆の硬さである。
【0243】
ハードコート層を構成するハードコート材料の例としては、有機系シリコーン系、メラミン系、エポキシ系、(メタ)アクリル系、ウレタン(メタ)アクリレート系などの有機ハードコート材料;および、二酸化ケイ素などの無機系ハードコート材料が挙げられる。(メタ)アクリル系、ウレタン(メタ)アクリレート系の有機ハードコート材料は、重合性不飽和基を含みうる。ここで、前記の有機ハードコート材料としては、重合性不飽和基を、分子内に1つ有するもの、2つ有するもの、3つ以上有する多官能のものを挙げることができる。なかでも、接着力が良好であり、生産性に優れる観点から、ウレタン(メタ)アクリレート系および多官能(メタ)アクリレート系ハードコート材料の使用が好ましい。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。ここで、用語「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の両方を包含し、用語「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する。
【0244】
ハードコート層の厚みは、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.8μm以上、特に好ましくは1.0μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、特に好ましくは3μm以下である。ハードコート層の厚みが、前記範囲の下限値以上であることにより、耐擦傷性を良好にでき、また、前記範囲の上限値以下であることにより、視認性を良好にできる。
【0245】
ハードコート層の形成方法は、特に制限されない。ハードコート層は、例えば、ハードコート材料及び有機溶媒を含む組成物を、λ/4板の表面に塗布し、空気、窒素などの雰囲気下で有機溶媒を乾燥させた後に、紫外線、電子線等の活性エネルギー線によって架橋硬化させる方法により、形成できる。また、ハードコート層は、例えば、シリコーン系、メラミン系、エポキシ系のハードコート材料をλ/4板の表面に塗布し、熱硬化させることにより、形成できる。この際、塗布方法としては、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコーター法、ダイコーター法、グラビアコーター法、スクリーン印刷法等の方法を用いうる。また、有機溶媒の乾燥時に、塗布された組成物の膜の膜厚ムラが生じやすいため、膜の外観を損ねないよう吸気と排気を調整し、膜全面が均一になるよう制御することが好ましい。さらに、紫外線で硬化する材料を使用する場合、塗布後のハードコート材料を硬化させるための紫外線照射時間は、通常0.01秒から10秒の範囲であり、エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、通常40mJ/cm
2から1000mJ/cm
2の範囲である。また、紫外線照射は、例えば、窒素及びアルゴン等の不活性ガス中において行ってもよく、空気中で行ってもよい。有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンシクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル溶媒;イソプロピルアルコール、エチルアルコールなどのアルコール溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒;フェノール、パラクロロフェノールなどのフェノール溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素溶媒等が挙げられる。これら溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0246】
λ/4板とハードコート層との接着性を高める目的で、ハードコート層を形成する前に、λ/4板の表面に表面処理を施してもよい。該表面処理としては、例えば、プラズマ処理、コロナ処理、アルカリ処理、コーティング処理等が挙げられる。とりわけコロナ処理を用いることで、λ/4板とハードコート層の密着を強固とすることができる。コロナ処理の条件としては、コロナ放電電子の照射量として、1W/m
2/min〜1000W/m
2/minであることが好ましい。上記コロナ処理後のλ/4板の表面の水に対する接触角は、10°〜50°であることが好ましい。また、コロナ処理をした直後にハードコート層を形成してもよく、λ/4板の表面を除電してからハードコート層を形成してもよいが、ハードコート層の外観が良好となることから、除電してからハードコート層を形成することが好ましい。
【0247】
ハードコート層のヘイズは、0.5%以下、好ましくは0.3%以下である。このようなヘイズ値であることにより、フィルムセンサ部材として好適に使用することができる。
【0248】
ハードコート層の形成材料は、有機粒子、無機粒子、光増感剤、重合禁止剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、シランカップリング剤等の任意の成分を含んでいてもよい。紫外線吸収剤の具体例としては、λ/2板の中間層が含みうる紫外線吸収剤の具体例として挙げた紫外線吸収剤と同様の例が挙げられる。
【0249】
任意の層としては、例えば、インデックスマッチング層が挙げられる。インデックスマッチング層は、λ/4板と透明導電層との間、又は、透明導電層とハードコート層との間に、大きな屈折率差による層界面での反射を抑制するために設けられる。インデックスマッチング層としては、例えば、交互に配置された複数の高屈折率膜及び低屈折率膜を含む層が挙げられる。前記の低屈折率膜としては、例えば、SiO
2、TiO
2、NaF、ZrO
2、ZnO、中空シリカ等の無機酸化物の膜、並びに、前記無機酸化物とシロキサン系ポリマーなどの有機物との混合物の膜、などが挙げられる。また、インデックスマッチング層としては、例えば、ジルコニア等の金属を含む樹脂層が挙げられる。λ/4板と透明導電層との屈折率が大きく異なっていたり、透明導電層とハードコート層との屈折率が大きく異なっていたりしても、インデックスマッチング層によって、屈折率差による界面反射を抑制できる。
【0250】
任意の層としては、例えば、λ/4板とλ/2板とを貼り合わせる接着層が挙げられる。接着層は、λ/4板とλ/2板とを接着する層であり、通常、接着剤又は当該接着剤の硬化物からなる。
【0251】
接着剤の例としては、水性接着剤、溶剤型接着剤、二液硬化型接着剤、光硬化型接着剤、及び感圧性接着剤が挙げられる。この中でも、光硬化型接着剤が好ましい。また、接着剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0252】
光硬化型接着剤としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、およびアクリルアミド誘導体を含むアクリレート系接着剤を用いることができる。これらの接着剤は、紫外線硬化型の接着剤としうる。紫外線硬化型の接着剤を用いることにより、他の形式の接着剤を用いる場合に比べて、塗布及び硬化を迅速に行うことができ、高い生産性を得ることができる。
【0253】
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させた後、更に水酸基含有(メタ)アクリル化合物および必要に応じて水酸基含有アリルエーテル化合物を反応させることによって、ラジカル重合性不飽和基含有オリゴマーとして得ることができる。また、ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル化合物とポリオールとを反応させた後、更にポリイソシアネートを反応させることによっても得ることができる。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、一分子当たり2個〜3個の二重結合を有し、且つ、二重結合1個当たりの数平均分子量が500〜3000であるウレタン(メタ)アクリレートを用いることが、接着強度、柔軟性、光硬化性及び粘度等をバランスさせやすいので、好ましい。
光硬化型接着剤におけるウレタン(メタ)アクリレートの量は、通常30重量%〜50重量%である。ウレタン(メタ)アクリレートの量を前記範囲の下限値以上にすることにより、接着層が脆くなることを抑制できる。また、上限値以下にすることにより、接着剤の粘度を低くでき、また、接着強度を高くできる。
【0254】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。それらの中でも、特にヒドロキシエチルメタアクリレートが好ましい。
光硬化型接着剤におけるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの量は、通常13重量%〜40重量%である。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの量を前記範囲の下限値以上にすることにより、接着剤全体の親水性を適切な範囲とすることができる。また、上限値以下にすることにより、接着層が脆くなることを抑制でき、また、接着剤の光硬化性を高くできる。
【0255】
アクリルアミド誘導体としては、例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドが挙げられる。中でも、特にN,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドが好ましい。
光硬化型接着剤におけるアクリルアミドの量は、通常0〜30重量%、好ましくは1重量%〜30重量%である。
【0256】
光硬化型接着剤は、上述した成分に加えて、イソボルニル(メタ)アクリレートを30重量%〜40重量%含むことが好ましい。イソボルニル(メタ)アクリレートを含むことで、接着層に耐熱性が付与される。さらに、接着性能を低下させずに塗工性能を改良するための粘度調整を容易に行うことができる。
【0257】
光硬化型接着剤は、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。光重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、光硬化型接着剤における光重合開始剤の量は、通常2重量%〜10重量%である。
【0258】
接着剤の具体例としては、SVRシリーズ(Dexerials社製)、TE−9000シリーズ(日立化成社製)、ThreeBond1500シリーズ、1600シリーズ(スリーボンド社製)、ワードロックHRJシリーズ(協立化学産業社製)などが挙げられる。
【0259】
接着剤の粘度は、23℃で、好ましくは20mPa・s以上、より好ましくは30mPa・s以上、特に好ましくは50mPa・s以上であり、好ましくは5000mPa・s以下、より好ましくは3000mPa・s以下、特に好ましくは1500mPa・s以下である。
【0260】
接着層の厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下である。
【0261】
任意の層としては、例えば、フィルムセンサ部材を傾斜方向から観察した際に生じるレターデーション変化を抑制するためのポジティブCプレートのような光学補償層等が挙げられる。前記ポジティブCプレートは、正面方向ではレターデーションがゼロであるが、傾斜方向の傾きとともにλ/4板のレターデーション変化を打ち消すようにレターデーションが変化するもので、屈折率がnx=ny<nzの関係を満たすものをいう。
【0262】
[6.フィルムセンサ部材の特性]
フィルムセンサ部材は、上述したように、λ/4板及びλ/2板を備えるので、広い波長帯域において直線偏光を円偏光に変換する広帯域λ/4板として機能できる。そのため、このフィルムセンサ部材を直線偏光子と貼り合わせることにより、広帯域の円偏光板を得ることが可能である。
【0263】
フィルムセンサ部材は、耐熱性に優れるλ/4板を備えるので、当該フィルムセンサ部材自体も、耐熱性に優れる。そのため、熱によるシワ及びカール等の変形の発生を、抑制することができる。さらには、熱による変色の発生を、抑制することができる。また、特に脂環式構造含有重合体を用いた場合には、脂環式構造含有重合体の優れた耐湿性を活用できるので、フィルムセンサ部材の耐湿性を向上させることが可能である。したがって、湿度による変形及び変色の発生を、抑制することができる。
【0264】
フィルムセンサ部材は、紫外線吸収剤を含む中間層を有するλ/2板を備えるので、紫外線の透過を抑制することができる。具体的には、波長380nmにおけるフィルムセンサ部材の光線透過率は、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。フィルムセンサ部材の波長380nmでの光線透過率が前記のように低いことにより、フィルムセンサ部材の耐光性を向上させることができる。そのため、フィルムセンサ部材は、光の照射を受けても、着色を生じ難い。さらに、フィルムセンサ部材が、このように紫外線の透過を抑制する作用を発揮できることにより、このフィルムセンサ部材によって、直線偏光子及び画像表示素子を紫外線から保護できる。そのため、画像表示装置製造時に照射される紫外線、使用環境における外光に含まれる紫外線等の紫外線による劣化を抑制して、円偏光板及び画像表示装置の耐久性を向上させることができる。特に紫外線による劣化を受けやすい有機発光層を有する有機EL表示素子においては、波長390nmの光に対する耐久性をさらに向上させるために、測定波長390nmにおけるフィルムセンサ部材の光線透過率を、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下にすることが望ましい。測定波長390nmにおける前記の光線透過率は、例えば、紫外線吸収剤濃度を増やす、紫外線吸収剤を含有するλ/2板の中間層の厚さを厚くする、等の方法で達成することができる。
【0265】
フィルムセンサ部材は、通常、高い透明性を有する。具体的には、フィルムセンサ部材の全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。また、フィルムセンサ部材のヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。
【0266】
フィルムセンサ部材は、飽和吸水率が小さいことが好ましい。具体的には、フィルムセンサ部材の飽和吸水率は、好ましくは0.1重量%以下、さらに好ましくは0.05重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下であり、理想的にはゼロである。フィルムセンサ部材の飽和吸水率が前記範囲であると、面内レターデーション等の光学特性の経時変化を小さくすることができる。
【0267】
フィルムセンサ部材は、透湿度が低いことが好ましい。具体的には、フィルムセンサ部材の透湿度は、好ましくは1.5g/m
2・24h以下、より好ましくは1.0g/m
2・24h以下、特に好ましくは0.5g/m
2・24h以下である。フィルムセンサ部材の透湿度が前記のように低いことにより、フィルムセンサ部材を設けた画像表示装置において、直線偏光子及び画像表示素子を湿気から保護できる。そのため、画像表示装置の耐久性を向上させることができる。
透湿度は、JIS Z0208に準拠して、測定温度50℃、相対湿度90%の条件下で、水蒸気透過度計(Lyssy社製、水蒸気透過度計L80−5000型)により測定しうる。
【0268】
フィルムセンサ部材は、長尺の形状を有していてもよく、枚葉の形状を有していてもよい。通常は、フィルムセンサ部材は、長尺の形状を有する部材として製造される。そして、長尺のフィルムセンサ部材が直線偏光子と貼り合わせられて円偏光板を得た後、その円偏光板が枚葉の形状となるように切り出される。
【0269】
フィルムセンサ部材の厚みは、特段の制限は無いか、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、特に好ましくは40μm以上であり、好ましくは120μm以下、より好ましくは100μm以下、特に好ましくは80μm以下である。
【0270】
[7.フィルムセンサ部材の製造方法]
フィルムセンサ部材は、例えば、λ/4板の一側に透明導電層を形成する工程と;λ/4板の他側に、紫外線硬化型接着剤で、λ/2板を貼り合わせる工程と;を含む製造方法によって、製造しうる。このような製造方法は、ロール・トゥ・ロール法によって行うことが好ましい。ロール・トゥ・ロール法によれば、長尺のフィルムセンサ部材を、良好な生産性で製造できる。
【0271】
前記の製造方法において、λ/4板の一側に透明導電層を形成する工程と、λ/4板の他側にλ/2板を貼り合わせる工程とは、いずれを先に行ってもよい。ただし、透明導電層を形成する際のλ/2板の熱変形によるカールの発生を抑制する観点では、λ/4板の一側に透明導電層を形成する工程の後で、λ/4板の他側にλ/2板を貼り合わせる工程を行うことが好ましい。
【0272】
λ/4板の一側へ透明導電層を形成する方法としては、透明導電層の項において説明した方法を用いうる。この際、透明導電層は、λ/4板の一側に、他の層を介することなく直接に形成してもよい。また、透明導電層は、λ/4板の一側に、ハードコート層、インデックスマッチング層等の任意の層を介して形成してもよい。
【0273】
λ/4板の他側にλ/2板を貼り合わせる工程において、紫外線硬化型接着剤としては、前述の光硬化型接着剤のうちで紫外線硬化型のものを用いうる。このような紫外線硬化型接着剤を介して貼り合わせを行うことにより、エアギャップ及びクラックの発生を抑制することができる。
【0274】
通常は、λ/4板とλ/2板とを貼り合わせる工程の後で、紫外線硬化型接着剤を硬化させる工程を行う。紫外線硬化型接着剤の硬化は、紫外線の照射によって行う。この際、λ/2板が紫外線を透過し難いので、前記の紫外線の照射は、λ/4板を通して行うことが好ましい。
【0275】
さらに、フィルムセンサ部材の製造方法は、上述した工程以外の工程を含んでいてもよい。例えば、フィルムセンサ部材の製造方法は、λ/4板の表面にハードコート層を形成する工程を含んでいてもよい。
【0276】
[8.円偏光板]
〔8.1.円偏光板の概要〕
図3は、本発明の一実施形態に係る円偏光板200を模式的に示す断面図である。
図3に示すように、本発明の一実施形態に係る円偏光板200は、直線偏光子210及びフィルムセンサ部材100を備える。フィルムセンサ部材100は、λ/2板130、λ/4板120及び透明導電層110が、直線偏光子210側からこの順に並ぶように設けられている。さらに、円偏光板200は、通常、直線偏光子210とフィルムセンサ部材100とを貼り合わせるための接着層220を備える。さらに、円偏光板200は、直線偏光子210のフィルムセンサ部材100側とは反対側に、保護フィルム、液晶セル用の光学補償フィルム、有機EL表示装置用の反射防止フィルム等の任意のフィルム層(図示せず。)を備えうる。保護フィルムの例としては、脂環式構造含有重合体、トリアセチルセルロースなどのセルロース樹脂などの透明材料が挙げられる。液晶セル用の光学補償フィルムの例としては、特開2008−517344号公報、特開2006−285208号公報、特開平11−133408号公報などに記載の光学フィルムが挙げられる。有機EL表示装置用の反射防止フィルムの例としては、前記特許文献4〜6などに記載の広帯域λ/4板などが挙げられる。
【0277】
円偏光板200において、直線偏光子210の偏光吸収軸に対してλ/4板120の遅相軸D
Qがなす角度は、前述の配向角θ1と同様の範囲にあることが好ましい。また、円偏光板200において、直線偏光子210の偏光吸収軸に対してλ/2板130の遅相軸D
Hがなす角度は、前述の配向角θ2と同様の範囲にあることが好ましい(
図2参照)。これにより、広い波長範囲において、直線偏光子210を透過した直線偏光をフィルムセンサ部材100によって円偏光へと変換できる。そのため、広い波長範囲で機能できる円偏光板200を容易に得ることができる。
【0278】
また、円偏光板200は、上述したフィルムセンサ部材100を含むので、耐熱性に優れ、更に通常は、耐湿性にも優れる。
【0279】
さらに、円偏光板200は、紫外線吸収剤を含む中間層132を有するλ/2板130を備えるので、紫外線の透過を抑制することができる。そのため、紫外線による直線偏光子210の劣化を抑制できる。したがって、円偏光板200は、高い耐光性を有するので、光の照射を受けても着色を生じ難い。
【0280】
また、円偏光板200は、当該円偏光板200を製造する際に、透明導電層110の劣化を生じ難いので、透明導電層110の密着性が良好である。
【0281】
〔8.2.円偏光板の製造方法〕
円偏光板は、直線偏光子とフィルムセンサ部材とを、紫外線硬化型接着剤で貼り合わせる工程と;前記直線偏光子を通して紫外線硬化型接着剤に紫外線を照射する工程と;を含む製造方法によって、製造しうる。このような製造方法は、ロール・トゥ・ロール法によって行うことが好ましい。ロール・トゥ・ロール法によれば、長尺の円偏光板を、良好な生産性で製造できる。
【0282】
紫外線硬化型接着剤としては、λ/4板とλ/2板との貼り合わせに用いうる紫外線硬化型接着剤と、同様のものを用いうる。このような紫外線硬化型接着剤を介した貼り合わせにより、エアギャップ及びクラックの発生を抑制することができる。そのため、円偏光板の透湿度を効果的に低くできる。
【0283】
直線偏光子とフィルムセンサ部材との貼り合わせ後、紫外線硬化型接着剤に紫外線を照射する工程では、直線偏光子側から紫外線の照射を行う。これにより、紫外線が、直線偏光子を通って紫外線硬化型接着剤に入射し、紫外線硬化型接着剤が硬化して、円偏光板が得られる。この際、λ/2板が紫外線吸収剤を含む中間層を有するので、紫外線は、λ/2板で遮られる。そのため、λ/4板から透明導電層までの層部分には大きなエネルギーを有する紫外線が入射しないので、紫外線による透明導電層の密着性の低下を抑制でき、その結果、透明導電層110の密着性が良好な円偏光板を得ることができる。
【0284】
〔8.3.直線偏光子〕
直線偏光子は、偏光透過軸及び偏光吸収軸を有する光学部材であり、偏光吸収軸と平行な振動方向を有する直線偏光を吸収し、偏光透過軸と平行な振動方向を有する直線偏光を通過させうる。円偏光板を設けられた画像表示装置において、画像を表示する光は、この直線偏光子を通過した直線偏光が更に広帯域λ/4板として機能するフィルムセンサ部材を通過することによって円偏光となって、画像表示装置の外へと出て行き、観察者によって視認される。
【0285】
直線偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール、部分ホルマール化ポリビニルアルコール等の適切なビニルアルコール系重合体のフィルムに、ヨウ素及び二色性染料等の二色性物質による染色処理、延伸処理、架橋処理等の適切な処理を適切な順序及び方式で施したフィルムを用いうる。通常、直線偏光子を製造するための延伸処理では、フィルムを長手方向に延伸するので、得られる直線偏光子においては当該直線偏光子の長手方向に平行な偏光吸収軸及び当該直線偏光子の幅方向に平行な偏光透過軸が発現しうる。この直線偏光子は、偏光度に優れるものが好ましい。直線偏光子の厚さは、5μm〜80μmが一般的であるが、これに限定されない。
【0286】
直線偏光子は、通常、長尺のフィルムとして製造される。長尺の直線偏光子を製造する場合、直線偏光子の偏光吸収軸は、当該直線偏光子の長手方向に平行であることが好ましい。これにより、長尺のフィルムセンサ部材と貼り合わせて円偏光板を製造する際に、長手方向を平行にすることで、光学軸を合わせることが可能である。そのため、長尺の直線偏光子と長尺のフィルムセンサ部材とを、ロール・トゥ・ロール法により容易に貼り合わせることができる。
【0287】
ロール・トゥ・ロール法での貼り合わせとは、長尺状のフィルムのロールからフィルムを繰り出し、これを搬送し、搬送ライン上で他のフィルムとの貼り合わせの工程を行い、さらに得られた貼合物を巻き取りロールとする態様の貼り合わせをいう。ロール・トゥ・ロール法を用いた貼り合わせでは、枚葉のフィルムを貼り合わせる場合とは異なり、複雑な光学軸合わせの工程が不要である。そのため、効率の良い貼り合わせが可能である。
【0288】
[9.画像表示装置]
画像表示装置は、画像表示素子と、前記の画像表示素子の視認側に設けられた前記の円偏光板とを備える。また、前記の画像表示装置において、円偏光板は、フィルムセンサ部材が直線偏光子の視認側に位置するように設けられる。このような画像表示装置では、広帯域λ/4板として機能するフィルムセンサ部材の作用により、広い波長範囲の円偏光による画像の表示が可能となる。そのため、偏光サングラスを通した画像の視認性を良好にできる。
【0289】
また、フィルムセンサ部材が備えるλ/2板が所定範囲のNZ係数を有するので、画像表示装置の表示面を傾斜方向から偏光サングラスを通して見た場合に、全方位方向における画像の視認性を良好にできる。具体的には、下記のとおりである。
一般に、画像を表示する光は、表示面の方位に応じて、偏光状態が異なりうる。そのため、偏光サングラスを装着して表示面を見た場合、方位に応じて画像が異なる色づきを生じることがあったので、従来は、画像の色味が全方位方向においてバラツキを生じることがあった。しかし、上述した所定範囲のNZ係数を有するλ/2板を備えたフィルムセンサ部材を備える画像表示装置は、偏光サングラスを通して見える画像の色味の色づきを抑制して、偏光サングラスを通さないで見える画像の色味に近づけることができる。そのため、表示面を見る方位に応じた画像の色味のバラツキを抑制できる。したがって、表示面を傾斜方向から見た場合の偏光サングラス装着の有無に応じた全方位方向における画像の色味のバラツキを抑制して、画像の色味の均一性を高めることができる。
さらに、画像表示装置の表示面を偏光サングラスを装着して見た場合、一般に、画像の明るさは、偏光サングラスを装着していない場合よりも低下する。従来は、偏光サングラスを装着して表示面をみると、表示面を見る方位によって、前記の明るさの低下の程度が異なっていたので、全方位方向における画像の明るさがバラツキを生じることがあった。しかし、上述した所定範囲のNZ係数を有するλ/2板を備えたフィルムセンサ部材を備える画像表示装置は、偏光サングラスを装着したことによる前記の明るさのバラツキを抑制できる。そのため、表示面を傾斜方向から見た場合の偏光サングラス装着の有無に応じた全方位方向における画像の明るさのバラツキを抑制して、画像の明るさの均一性を高めることができる。
【0290】
また、画像表示装置に設けられるフィルムセンサ部材の透明導電層は、通常、その画像表示装置が備えるタッチパネルの導電層として用いられる。ここで、前記のフィルムセンサ部材は、基材として、第一熱可塑性樹脂からなるλ/4板を用いている。このような樹脂製のλ/4板を基材として備えるフィルムセンサ部材は、ガラス基材を用いたタッチパネル用のセンサ部材と比べて、割れ難いので、機械的耐久性に優れるタッチパネルを実現できる。さらに、樹脂製のλ/4板を基材として備えるフィルムセンサ部材は、可撓性に優れるので、指での入力が円滑なタッチパネルを実現できる。この際、透明導電層をλ/4板の両面に備えたフィルムセンサ部材が、厚さを薄くできるという観点で好ましい。また、片面に透明導電層を備えたフィルムセンサ部材と、別の基材(例えば等方性基材やガラスなど)に透明導電層を備えた部材と組合わせて、タッチパネルに設けてもよい。
【0291】
また、上述したように、フィルムセンサ部材は、耐熱性及び耐光性に優れ、更に通常は耐湿性に優れる。さらに、透明導電層は、密着性が良好である。そのため、フィルムセンサ部材を備える画像表示装置は、優れた耐久性を有することができるので、通常は、長い寿命を実現できる。
【0292】
画像表示装置としては、画像表示素子の種類に応じて様々なものがあるが、代表的な例としては、画像表示素子として液晶セルを備える液晶表示装置、及び、画像表示素子として有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、適宜「有機EL素子」ということがある。)を備える有機EL表示装置が挙げられる。
【0293】
図4は、本発明の一実施形態に係る画像表示装置としての液晶表示装置300の一例を模式的に示す断面図である。
図4に示すように、液晶表示装置300は、光源310;光源側直線偏光子320;画像表示素子としての液晶セル330;並びに、円偏光板200を、この順に備える。また、この液晶表示装置300において、円偏光板200は、フィルムセンサ部材100が直線偏光子210の視認側に位置するように設けられる。よって、液晶表示装置300は、視認側から、透明導電層110、λ/4板120、λ/2板130、直線偏光子210、液晶セル330、光源側直線偏光子320及び光源310を、この順に備える。
【0294】
液晶表示装置300においては、光源310から発せられ、光源側直線偏光子320、液晶セル330、直線偏光子210、並びに、広帯域λ/4板として機能しうるフィルムセンサ部材100を通過した光によって、画像が表示される。画像を表示する光は、直線偏光子210を通過した時点では直線偏光であるが、フィルムセンサ部材100を通過することによって円偏光に変換される。したがって、前記の液晶表示装置300では、円偏光によって画像が表示されるので、偏光サングラスを通して見た場合に、画像を視認することが可能である。特に、フィルムセンサ部材100が備えるλ/2板130が所定範囲のNZ係数を有するので、液晶表示装置300の表示面300Uの傾斜方向から見た場合に、偏光サングラス装着の有無に応じた全方位方向における画像の色味及び明るさのバラツキを抑制できる。
また、この液晶表示装置300において、フィルムセンサ部材100の透明電極層110は、タッチパネル用の導電層として用いうる。よって、タッチパネルを備えた液晶表示装置300を実現することが可能である。
【0295】
液晶セル330は、例えば、インプレーンスイッチング(IPS)モード、バーチカルアラインメント(VA)モード、マルチドメインバーチカルアラインメント(MVA)モード、コンティニュアスピンホイールアラインメント(CPA)モード、ハイブリッドアラインメントネマチック(HAN)モード、ツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モード、オプチカルコンペンセイテッドベンド(OCB)モードなど、任意のモードの液晶セルを用いうる。
【0296】
図5は、本発明の一実施形態に係る画像表示装置としての有機EL表示装置400の一例を模式的に示す断面図である。
図5に示すように、有機EL表示装置400は、画像表示素子としての有機EL素子410、λ/4板420、及び、円偏光板200を、この順に備える。また、この有機EL表示装置400において、円偏光板200は、フィルムセンサ部材100が直線偏光子210の視認側に位置するように設けられる。よって、有機EL表示装置400は、視認側から、透明導電層110、λ/4板120、λ/2板130、直線偏光子210、λ/4板420及び有機EL素子410を、この順に備える。
【0297】
有機EL表示装置400において、λ/4板420は、通常、直線偏光子210との組み合わせによって、外光の反射による表示面400Uのぎらつきを抑制するために設けられる。具体的には、装置外部から入射した光は、その一部の直線偏光のみが直線偏光子210を通過し、次にそれがλ/4板420を通過することにより円偏光となる。円偏光は、表示装置内の光を反射する構成要素(有機EL素子410中の反射電極(図示せず)等)により反射され、再びλ/4板420を通過することにより、入射した直線偏光の振動方向と直交する振動方向を有する直線偏光となり、直線偏光子210を通過しなくなる。これにより、反射防止の機能が達成される(有機EL表示装置における反射防止の原理は、特開平9-127885号公報参照)。ここで、
図5に示す例ではλ/4板420として単一の部材を用いた有機EL表示装置400を示したが、λ/4板420としては、λ/2板及びλ/4板を組み合わせた広帯域λ/4板を用いてもよい。
【0298】
前記の有機EL表示装置400においては、有機EL素子410から発せられ、λ/4板420、直線偏光子210、並びに、広帯域λ/4板として機能しうるフィルムセンサ部材100を通過した光によって、画像が表示される。画像を表示する光は、直線偏光子210を通過した時点では直線偏光であるが、フィルムセンサ部材100を通過することによって円偏光に変換される。したがって、前記の有機EL表示装置400では、円偏光によって画像が表示されるので、偏光サングラスを通して見た場合に、画像を視認することが可能である。特に、フィルムセンサ部材100が備えるλ/2板130が所定範囲のNZ係数を有するので、有機EL表示装置400の表示面400Uの傾斜方向から見た場合に、偏光サングラス装着の有無に応じた全方位方向における画像の色味及び明るさのバラツキを抑制できる。
また、この有機EL表示装置400において、フィルムセンサ部材100の透明電極層110は、タッチパネル用の電極層として用いうる。よって、タッチパネルを備えた有機EL表示装置400を実現することが可能である。
【0299】
有機EL素子410は、透明電極層、発光層及び電極層をこの順に備え、透明電極層及び電極層から電圧を印加されることにより発光層が光を生じうる。有機発光層を構成する材料の例としては、ポリパラフェニレンビニレン系、ポリフルオレン系、およびポリビニルカルバゾール系の材料を挙げることができる。また、発光層は、複数の発光色が異なる層の積層体、あるいはある色素の層に異なる色素がドーピングされた混合層を有していてもよい。さらに、有機EL素子410は、バリア層、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、等電位面形成層、電荷発生層等の機能層を備えていてもよい。
【0300】
図6は、本発明の一実施形態に係る画像表示装置としての有機EL表示装置500の一例を模式的に示す断面図である。
図6に示すように、有機EL表示装置500は、円偏光板200の代わりに円偏光板520を備えていること以外は、
図5に示す有機EL表示装置400と同様に設けられている。円偏光板520は、フィルムセンサ部材100の代わりに、λ/4板120の片面120Uだけではなく、両面120U及び120Dにハードコート層140及び150並びに透明導電層110及び160が設けられたフィルムセンサ部材510を備えている。よって、有機EL表示装置500は、有機EL素子410、λ/4板420、直線偏光子210、接着層220、λ/2板130、透明導電層160、ハードコート層150、λ/4板120、ハードコート層140及び透明導電層110を、この順に備える。また、
図6において、符号500Uは、有機EL表示装置500の表示面を表す。
【0301】
このようにλ/4板120の両面120U及び120Dに透明導電層110及び160が設けられたフィルムセンサ部材510を備える有機EL表示装置500によっても、
図5を用いた説明した有機EL表示装置400と同様の利点を得ることができる。
【0302】
また、
図4を用いて説明したような液晶表示装置に、λ/4板120の両面120U及び120Dに透明導電層110及び160が設けられたフィルムセンサ部材510を設けてもよい。
【実施例】
【0303】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものでは無く、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中において行った。
【0304】
[評価方法]
〔フィルムの遅相軸方向、レターデーション及びNZ係数の測定方法〕
フィルムの遅相軸方向、レターデーション及びNZ係数は、位相差計(王子計測社製「KOBRA−21ADH」)を用いて測定した。
【0305】
〔λ/2板に含まれる各層の厚みの測定方法〕
λ/2板の全体の厚みは、スナップゲージにて測定した。
また、λ/2板に含まれる中間層の厚みは、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製「V−7200」)を用いて波長390nmのλ/2板の光線透過率を測定し、得られた光線透過率から計算した。さらに、後述する実施例及び比較例においては、第一外側層及び第二外側層は同じ厚みの層として形成したので、第一外側層及び第二外側層の厚みは、λ/2板の全体の厚みから中間層の厚みを引き算し、2で割ることにより、計算した。第一外側層及び第二外側層が異なる厚みの層として形成されている場合には、λ/2板の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより、第一外側層及び第二外側層の厚みを測定しうる。
【0306】
〔フィルムの光弾性係数の測定方法〕
フィルムに50g〜150gの範囲で荷重を加えながら、フィルムの面内レターデーションを、レターデーション測定装置(王子計測機器社製、「KOBRA−21ADH」)を用いて測定した。測定された面内レターデーションをフィルムの厚みで割って、複屈折値Δnを求めた。荷重を変えながら複屈折値Δnを求め、その結果から荷重−Δn曲線を作成した。この荷重−Δn曲線の傾きから、光弾性係数を求めた。
【0307】
〔フィルムの熱寸法変化率の測定方法〕
室温23℃の環境下で、フィルムを150mm×150mmの大きさの正方形に切り出し、試料フィルムとした。この試料フィルムを、150℃のオーブン内で60分間加熱し、23℃(室温)まで冷却した後、試料フィルムの四辺の長さ及び2本の対角線の長さを測定した。
測定された四辺それぞれの長さを基に、下記式(I)に基づいて、熱寸法変化率を算出した。式(I)において、LAは、加熱後の試料フィルムの辺の長さ[mm]を示す。
熱寸法変化率(%)=[(LA−150)/150]×100 (I)
また、測定された2本の対角線の長さを基に、下記式(II)に基づいて、熱寸法変化率を算出した。式(II)において、LDは、加熱後の試料フィルムの対角線の長さ[mm]を示す。
熱寸法変化率(%)=[(LD−212.13)/212.13]×100 (II)
そして、得られた6つの熱寸法変化率の計算値の中で絶対値が最大になる値を、フィルムの熱寸法変化率として採用した。
【0308】
〔フィルムの吸水率の測定方法〕
フィルムの吸水率は、ASTM D570に従い、23℃で24時間浸漬して、増加重量を測定することにより測定した。
【0309】
〔透明導電層の表面の抵抗値の測定方法〕
フィルムセンサ部材を10cm×10cmの正方形に切り出して、JIS K 7194に準拠し、抵抗率計(三菱化学社製「ロレスタ(登録商標)GP」)を用いて四端子四探針法にてシート抵抗を測定した。
【0310】
〔フィルムセンサ部材のカール量の評価方法〕
実施例及び比較例で得られたフィルムセンサ部材を切断し、5cm×5cmの矩形のサンプルを得た。このサンプルを平らなステージ上に、透明導電層側を下にして載置した。ステージから浮き上がったフィルムセンサ部材の4隅の角の、ステージからの高さを測定した。測定された高さの測定値の平均を、カール量とした。サンプルが丸まってしまった場合、高さを測定することができないので、単に「不良」と評価した。
【0311】
その後、前記のサンプルを、温度65℃、湿度93%の環境に1000時間保管する耐湿試験を行った。耐湿試験後のサンプルのカール量を、前記の方法によって測定した。
【0312】
また、耐湿試験を行っていないサンプルを、温度95℃の環境に1000時間保管する耐熱試験を行った。耐熱試験後のサンプルのカール量を、前記の方法によって測定した。
【0313】
〔フィルムセンサ部材の色変化の評価方法〕
実施例及び比較例で得られたフィルムセンサ部材を切断し、5cm×5cmの矩形のサンプルを得た。前記のサンプルを、温度65℃、湿度95%の環境に1000時間保管する耐湿試験を行った。耐湿試験後のサンプルを目視で観察し、色変化を評価した。色変化が無ければ「A」、変色が少しであれば「B」、黄色く変色していれば「C」と判定した。
【0314】
また、耐湿試験を行っていないサンプルを、温度95℃の環境に1000時間保管する耐熱試験を行った。耐熱試験後のサンプルを目視で観察し、前記と同様に色変化を評価した。
【0315】
〔フィルムセンサ部材の波長380nmにおける光線透過率の測定方法〕
実施例及び比較例で得られたフィルムセンサ部材の測定波長380nmにおける光線透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製「V−7200」)を用いて測定した。
【0316】
〔円偏光板の耐光性の評価方法〕
実施例及び比較例で得られた円偏光板の透明導電層側から、放射照度60W/m
2、照射時間500時間の条件で、キセノンランプから光を照射した。その後、円偏光板を目視で観察して、着色があるか否かを判定した。着色が無い場合は「良」、着色がある場合は「不良」と判定した。
【0317】
〔円偏光板における透明導電層の密着性の評価方法〕
実施例及び比較例で得られた円偏光板の透明導電層について、JIS K5400に準じて、1mm角100個の碁盤目試験を行い、セロハンテープ(JIS Z1522に規定されるもの)により透明導電層の剥離状態を確認した。この際、透明導電層に貼り付けたセロハンテープを剥離した時に、透明導電層が剥がれなかった碁盤目の数を数えた。透明導電層が剥がれなかった碁盤目の数が多いほど、透明導電層の密着性に優れることを示す。
【0318】
〔画像表示装置の色味及び明るさのバラツキの目視評価方法〕
図7は、実施例及び比較例において行った目視評価の様子を模式的に示す斜視図である。
図7に示すように、実施例及び比較例で得られた画像表示装置を白表示として、偏光サングラスを装着しないで、表示面10に対して極角θ=45°の傾斜方向から、目視観察を行った。この観察は、方位角φ=0°〜360°の全方位方向において行った。その後、偏光サングラス20を装着して、前記と同様に、表示面10に対して極角θ=45°の傾斜方向から、方位角φ=0°〜360°の全方位方向において、目視観察を行った。そして、偏光サングラス20を装着して見えた画像が、偏光サングラス20を装着しないで見えた画像と比較して、全方位方向における色味及び明るさのバラツキが大きいか小さいかを、定性的に評価した。
【0319】
前記の目視評価を、観察者10人が行った。偏光サングラス20を装着して見えた画像が、偏光サングラス20を装着しないで見えた画像と比較して、色味及び明るさのバラツキが小さいほど、良好な結果である。観察者10人の観察の結果から、下記の基準に基づいて、色味及び明るさのバラツキを評価した。
「優」:観察者9〜10人が色味及び明るさのバラツキが小さいと感じた。
「良」:観察者5〜8人が色味及び明るさのバラツキが小さいと感じた。
「不良」:観察者4人以下が色味及び明るさの変化が大きいと感じた。
【0320】
[製造例1]
(延伸前基材の製造)
非晶性のノルボルネン系重合体からなる熱可塑性樹脂のペレット(日本ゼオン社製、ガラス転移温度Tg=163℃)を、100℃で5時間乾燥させた。乾燥させたペレットを、押出機に供給し、熱可塑性樹脂を押出機内で溶融させた。その後、溶融した熱可塑性樹脂を、ポリマーパイプ及びポリマーフィルターを通し、Tダイからキャスティングドラム上にシート状に押し出し、冷却して、厚み145μmの延伸前基材を得た。この延伸前基材を、マスキングフィルム(トレデガー社製「FF1025」)と貼り合わせて保護しながら巻き取り、延伸前基材のロールを得た。
【0321】
(λ/4板の製造)
ロールから延伸前基材を引き出し、連続的にマスキングフィルムを剥離して、テンター延伸機に供給した。そして、テンター延伸機を用いて斜め延伸を行なって、長尺のλ/4板を得た。前記の斜め延伸における延伸倍率は4.0倍、延伸温度は180℃とした。得られたλ/4板の遅相軸がフィルム長手方向に対してなす配向角は75°、面内レターデーションReは125nm、NZ係数は1.18、厚みは35μmであった。このλ/4板を、新たなマスキングフィルム(トレデガー社製「FF1025」)と貼り合わせて保護しながら巻き取り、λ/4板のロールを得た。
【0322】
[製造例2]
(熱可塑性樹脂の調製)
非晶性のノルボルネン系重合体のペレット(日本ゼオン社製、ガラス転移温度Tg=126℃)を、100℃で5時間乾燥させた。乾燥させたペレット100部と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(ADEKA社製「LA−31」)5.5部とを、二軸押出機により混合した。得られた混合物を、単軸押出機に接続されたホッパーへ投入し、単軸押出機から溶融押し出して、熱可塑性樹脂(J1)を得た。この熱可塑性樹脂(J1)における紫外線吸収剤の含有量は、5.2重量%である。
【0323】
(延伸前基材の製造)
目開き3μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを備える、ダブルフライト型単軸押出機(スクリューの直径D=50mm、スクリューの有効長さLとスクリューの直径Dとの比L/D=32)を用意した。この単軸押出機に、中間層形成用の樹脂として、熱可塑性樹脂(J1)を導入し、溶融させて、押出機出口温度280℃、押出機のギヤポンプの回転数10rpmの条件で、ダイスリップの表面粗さRaが0.1μmであるマルチマニホールドダイに供給した。
【0324】
他方、目開き3μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを備える、単軸押出機(スクリューの直径D=50mm、スクリューの有効長さLとスクリューの直径Dとの比L/D=32)を用意した。この単軸押出機に、第一外側層及び第二外側層形成用の熱可塑性樹脂(J2)として、前記熱可塑性樹脂(J1)の調製に用いたのと同様の非晶性のノルボルネン系重合体のペレット(日本ゼオン社製、ガラス転移温度Tg=126℃)を導入した。そして、導入した熱可塑性樹脂(J2)を、押出機出口温度285℃、押出機のギヤポンプの回転数4rpmの条件で、前記のマルチマニホールドダイに供給した。
【0325】
次いで、第一外側層形成用の樹脂の層、中間層形成用の樹脂の層、及び、第二外側層形成用の樹脂の層の3層を含むフィルム状に吐出されるように、前記の熱可塑性樹脂(J1)及び(J2)を、マルチマニホールドダイから280℃で共押し出しした。そして、吐出された熱可塑性樹脂(J1)及び(J2)を、150℃に温度調整された冷却ロールにキャストして、熱可塑性樹脂(J2)からなる第一外側層(厚み15μm)/熱可塑性樹脂(J1)からなる中間層(厚み40μm)/熱可塑性樹脂(J2)からなる第二外側層(厚み15μm)の3層からなる、幅1400mm、厚さ70μmの延伸前基材を得た。前記の共押し出しの際、エアギャップ量は50mmとした。また、溶融状態のフィルム状の樹脂を冷却ロールにキャストする方法としては、エッジピニングを採用した。こうして得られた延伸前基材を巻き取り、延伸前基材のロールを得た。
【0326】
(λ/2板の製造)
ロールから延伸前基材を引き出し、長手方向に連続的に搬送して、テンター延伸機に供給した。そして、テンター延伸機を用いて斜め延伸を行って、長尺の中間体フィルムを得た。前記の斜め延伸における延伸倍率は1.67倍、延伸温度は140℃とした。得られた中間体フィルムは、熱可塑性樹脂(J2)からなる第一外側層(厚み8μm)/熱可塑性樹脂(J1)からなる中間層(厚み26μm)/熱可塑性樹脂(J2)からなる第二外側層(厚み8μm)の3層からなる複層構造を有していた。また、この中間体フィルムの遅相軸がフィルム長手方向に対してなす配向角は45°、面内レターデーションReは220nm、幅は1330mm、厚みは42μmであった。
【0327】
次いで、前記の中間体フィルムを長手方向に連続的に搬送しながら、フィルム長手方向に自由一軸延伸を行って、長尺のλ/2板を得た。前記の自由一軸延伸における延伸倍率は1.50倍、延伸温度は135℃とした。得られたλ/2板は、熱可塑性樹脂(J2)からなる第一外側層(厚み5μm)/熱可塑性樹脂(J1)からなる中間層(厚み20μm)/熱可塑性樹脂(J2)からなる第二外側層(厚み5μm)の3層からなる複層構造を有していた。また、このλ/2板の遅相軸がフィルム長手方向に対してなす配向角は15°、面内レターデーションReは245nm、NZ係数は1.5、厚みは30μm、波長380nmにおける光線透過率は0.15%であった。得られたλ/2板を巻き取り、λ/2板のロールを得た。
【0328】
[製造例3]
延伸前基材を延伸して中間フィルムを得る第一延伸工程での延伸条件、及び、中間フィルムを延伸してλ/2板を得る第二延伸工程での延伸条件を、表1に示すように変更した。以上の事項以外は、製造例2と同様にして、熱可塑性樹脂(J2)からなる第一外側層(厚み6μm)/熱可塑性樹脂(J1)からなる中間層(厚み18μm)/熱可塑性樹脂(J2)からなる第二外側層(厚み6μm)の3層からなる複層構造を有するλ/2板を製造した。得られたλ/2板の遅相軸がフィルム長手方向に対してなす配向角は15°、面内レターデーションReは245nm、NZ係数は2.0、厚みは30μmであった。
【0329】
[製造例4]
延伸前基材を延伸して中間フィルムを得る第一延伸工程での延伸条件、及び、中間フィルムを延伸してλ/2板を得る第二延伸工程での延伸条件を、表1に示すように変更した。以上の事項以外は、製造例2と同様にして、熱可塑性樹脂(J2)からなる第一外側層(厚み4μm)/熱可塑性樹脂(J1)からなる中間層(厚み14μm)/熱可塑性樹脂(J2)からなる第二外側層(厚み4μm)の3層からなる複層構造を有するλ/2板を製造した。得られたλ/2板の遅相軸がフィルム長手方向に対してなす配向角は15°、面内レターデーションReは245nm、NZ係数は2.5、厚みは22μmであった。
【0330】
[製造例5]
延伸前基材を延伸して中間フィルムを得る第一延伸工程での延伸条件、及び、中間フィルムを延伸してλ/2板を得る第二延伸工程での延伸条件を、表1に示すように変更した。以上の事項以外は、製造例2と同様にして、熱可塑性樹脂(J2)からなる第一外側層(厚み3μm)/熱可塑性樹脂(J1)からなる中間層(厚み11μm)/熱可塑性樹脂(J2)からなる第二外側層(厚み3μm)の3層からなる複層構造を有するλ/2板を製造した。得られたλ/2板の遅相軸がフィルム長手方向に対してなす配向角は15°、面内レターデーションReは245nm、NZ係数は3.0、厚みは17μmであった。
【0331】
[製造例6]
(結晶性の重合体の製造)
金属製の耐圧反応器を、充分に乾燥した後、窒素置換した。この金属製耐圧反応器に、シクロヘキサン154.5部、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の濃度70%シクロヘキサン溶液42.8部(ジシクロペンタジエンの量として30部)、及び1−ヘキセン1.9部を入れ、53℃に加温した。
【0332】
テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体0.014部を0.70部のトルエンに溶解した溶液を用意した。この溶液に、濃度19%のジエチルアルミニウムエトキシド/n−ヘキサン溶液0.061部を加えて10分間攪拌して、触媒溶液を調製した。
この触媒溶液を耐圧反応器に加えて、開環重合反応を開始した。その後、温度を53℃に保ち4時間反応させて、ジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液を得た。
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、それぞれ、8,750および28,100であり、これらから求められる分子量分布(Mw/Mn)は3.21であった。
【0333】
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部に、停止剤として1,2−エタンジオール0.037部を加えて、60℃に加温し、1時間攪拌して重合反応を停止させた。ここに、ハイドロタルサイト様化合物(協和化学工業社製「キョーワード(登録商標)2000」)を1部加えて、60℃に加温し、1時間攪拌した。その後、濾過助剤(昭和化学工業社製「ラヂオライト(登録商標)#1500」)を0.4部加え、PPプリーツカートリッジフィルター(ADVANTEC東洋社製「TCP−HX」)を用いて吸着剤と溶液を濾別した。
【0334】
濾過後のジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部(重合体量30部)に、シクロヘキサン100部を加え、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0043部を添加して、水素圧6MPa、180℃で4時間水素化反応を行なった。これにより、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物を含む反応液が得られた。この反応液においては、水素添加物が析出しており、その結果、反応液はスラリー溶液となっていた。
【0335】
前記の反応液に含まれる水素添加物と溶液とを、遠心分離器を用いて分離し、60℃で24時間減圧乾燥して、結晶性を有するジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物28.5部を得た。この水素添加物の水素添加率は99%以上、ガラス転移温度Tgは93℃、融点(Tm)は262℃、ラセモ・ダイアッドの割合は89%であった。
【0336】
(延伸前基材の製造)
ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物100部に、酸化防止剤(テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン;BASFジャパン社製「イルガノックス(登録商標)1010」)1.1部を混合して、λ/4板の材料となる熱可塑性樹脂を得た。
【0337】
前記の熱可塑性樹脂を、内径3mmΦのダイ穴を4つ備えた二軸押出機(東芝機械社製「TEM−37B」)に投入した。前記の二軸押出機によって、熱可塑性樹脂を熱溶融押出成形によりストランド状の成形体に成形した。この成形体をストランドカッターにて細断して、熱可塑性樹脂のペレットを得た。前記の二軸押出機の運転条件を、以下に示す。
・バレル設定温度:270℃〜280℃
・ダイ設定温度:250℃
・スクリュー回転数:145rpm
・フィーダー回転数:50rpm
【0338】
引き続き、得られたペレットを、Tダイを備える熱溶融押出しフィルム成形機に供給した。このフィルム成形機を用いて、熱可塑性樹脂を、26.45m/分の速度でロールに巻き取る方法にて成形した。これにより、長尺の延伸前基材(厚み70μm、幅750mm)を得た。前記のフィルム成形機の運転条件を、以下に示す。
・バレル温度設定:280℃〜290℃
・ダイ温度:270℃
・スクリュー回転数:30rpm
【0339】
(λ/4板の製造)
前記の延伸前基材を、ロールから引き出し、クリップを備えたテンター延伸機に供給した。テンター延伸機のクリップで延伸前基材の幅方向の端部の二辺を把持し、延伸倍率2.0倍、延伸温度130℃、延伸速度5m/分で、幅方向に対する配向角が15°になるように斜め方向に斜め延伸を行った。
【0340】
斜め延伸を行った後、テンター延伸機のクリップで、延伸終了時点のフィルムの幅寸法を保持したままフィルムを搬送し、それによりフィルムが緊張した状態を保った。この状態で、200℃で30秒間、オーブン内でフィルムに加熱処理を施して、フィルムに含まれるジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物の結晶化を促進する結晶化促進工程を行って、長尺のλ/4板を得た。得られたλ/4板の遅相軸がフィルム長手方向に対してなす配向角は75°、面内レターデーションReは141nm、NZ係数は1.15、厚みは30μm、23℃における光弾性係数は4×10
−12Pa
−1、複屈折Δnは0.0047、結晶化度は20%、温度150℃での熱寸法変化率は0.3%、吸水率は0.009%であった。このλ/4板を巻き取って、λ/4板のロールを得た。
【0341】
[製造例7]
熱可塑性樹脂のペレットを、非晶性のノルボルネン系重合体からなる熱可塑性樹脂のペレット(日本ゼオン社製、ガラス転移温度Tg=126℃)に変更した。また、延伸前基材を延伸してλ/4板を得る工程での延伸条件を、表1に示すように変更した。以上の事項以外は、製造例1と同様にして、λ/4板を製造した。得られたλ/4板の遅相軸がフィルム長手方向に対してなす配向角は75°、面内レターデーションReは140nm、NZ係数は1.23、厚みは34μmであった。
【0342】
[製造例8]
紫外線吸収剤を含む熱可塑性樹脂(J1)の代わりに、紫外線吸収剤を含まない熱可塑性樹脂(J2)を用いて、延伸前基材の層構造を、熱可塑性樹脂(J2)からなる層のみを有する単層構造に変更した。また、延伸前基材を延伸して中間フィルムを得る第一延伸工程での延伸条件、及び、中間フィルムを延伸してλ/2板を得る第二延伸工程での延伸条件を、表1に示すように変更した。以上の事項以外は、製造例2と同様にして、熱可塑性樹脂(J2)からなる層からなる単層構造を有するλ/2板を製造した。得られたλ/2板の遅相軸がフィルム長手方向に対してなす配向角は15°、面内レターデーションは245nm、NZ係数は1.5、厚みは35μmであった。
【0343】
[製造例9]
製造例2で製造した長尺の延伸前基材を用意した。この延伸前基材を長手方向に連続的に搬送しながら、フィルム長手方向に自由一軸延伸を行って、長尺のλ/2板を得た。前記の自由一軸延伸における延伸倍率及び延伸温度は、表1に示すとおりであった。得られたλ/2板は、熱可塑性樹脂(J2)からなる第一外側層(厚み4μm)/熱可塑性樹脂(J1)からなる中間層(厚み14μm)/熱可塑性樹脂(J2)からなる第二外側層(厚み4μm)の3層からなる複層構造を有していた。また、このλ/2板の遅相軸はフィルム長手方向に平行であり、面内レターデーションReは245nm、NZ係数は1.0、厚みは35μmであった。得られたλ/2板を巻き取り、λ/2板のロールを得た。
【0344】
[製造例10]
延伸前基材を延伸して中間フィルムを得る第一延伸工程での延伸条件、及び、中間フィルムを延伸してλ/2板を得る第二延伸工程での延伸条件を、表1に示すように変更した。以上の事項以外は、製造例2と同様にして、熱可塑性樹脂(J2)からなる第一外側層(厚み5μm)/熱可塑性樹脂(J1)からなる中間層(厚み10μm)/熱可塑性樹脂(J2)からなる第二外側層(厚み5μm)の3層からなる複層構造を有するλ/2板を製造した。得られたλ/2板の遅相軸がフィルム長手方向に対してなす配向角は15°、面内レターデーションReは245nm、NZ係数は3.1、厚みは20μmであった。
【0345】
[製造例のまとめ]
前記の製造例1〜10における製造条件、並びに、製造されたλ/4板及びλ/2板の光学特性を、下記の表1に示す。下記の表において、略称の意味は、下記のとおりである。
非晶性COP:非晶性の脂環式構造含有重合体を含む樹脂。
結晶性COP:結晶性の脂環式構造含有重合体を含む樹脂。
COP複層:非晶性の脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなる、第一外側層、中間層及び第二外側層を含む複層構造のフィルム。
COP単層:非晶性の脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなる単層構造のフィルム。
Tg:非晶性の重合体のガラス転移温度。
Tm:結晶性の重合体の融点。
斜め:フィルム斜め方向での延伸。
縦:フィルム長手方向での延伸。
Re:面内レターデーション。
【0346】
【表1】
【0347】
[実施例1]
(フィルムセンサ部材の製造)
6官能基以上のアクリロイル基を含有するウレタンアクリレートオリゴマー(日本合成化学工業社製「UV−7640B」)100部に、シリカ粒子(CIKナノテック社製、数平均粒径30nm)40部と光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製「IRGACURE184」)6部とを加え、攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、ハードコート層形成用組成物を得た。
【0348】
製造例1で製造したλ/4板のロールからλ/4板を引き出し、マスキングフィルムを剥離した。このλ/4板の片面に、前記のハードコート層形成用組成物を塗工し、紫外線の照射によって硬化させて、厚み6μmのハードコート層を形成した。このハードコート層の面の鉛筆硬度を測定したところ、「B」であった。
【0349】
このハードコート層の面に、スパッタリング法によって、透明導電層としてITOの層を形成した。前記のスパッタリングは、フィルム温度150℃に保った状態で、アルゴンガス94%、酸素ガス6%の混合ガスを導入した真空度5×10
−1Paの環境において、1時間かけて、ITO焼結体ターゲットをカソードに設置して行った。形成された透明導電層の表面抵抗値は、105Ω/□であった。
【0350】
製造例2で製造したλ/2板の片面に、コロナ処理を施した。透明導電層とは反対側のλ/4板の面と、λ/2板のコロナ処理を施した面とを、紫外線硬化型の接着剤(日立化成社製「LE−3000シリーズ」)を介して貼り合わせた。前記の貼り合わせは、λ/4板の長手方向とλ/2板の長手方向とを平行にすることで、λ/4板の遅相軸とλ/2板の遅相軸との交差角が60°となるように行った。その後、透明導電層側から紫外線を照射することによって接着剤を硬化させて、透明導電層、ハードコート層、λ/4板、接着層及びλ/2板をこの順に備えるフィルムセンサ部材を得た。
得られたフィルムセンサ部材について、上述した方法により、カール量、色変化、及び、波長380nmにおける光線透過率を評価した。
【0351】
(円偏光板の製造)
フィルムセンサ部材のλ/2板側の面に、コロナ処理を施した。コロナ処理を施したフィルムセンサ部材の面と、直線偏光子としての偏光フィルム(サンリッツ社製「HLC2−5618S」、厚さ180μm、長手方向に対して平行な偏光吸収軸、及び、幅方向に対して平行な偏光透過軸を有する)の片面とを、紫外線硬化型の接着剤(日立化成社製「LE−3000シリーズ」)を介して貼り合わせた。前記の貼り合わせは、フィルムセンサ部材のλ/2板の遅相軸と、偏光フィルムの偏光吸収軸との交差角が15°となるように行った。その後、偏光フィルム側から紫外線を照射することによって接着剤を硬化させて、透明導電層、ハードコート層、λ/4板、接着層、λ/2板、接着層及び直線偏光子をこの順に備える円偏光板を得た。
得られた円偏光板について、上述した方法により、耐光性、並びに、透明導電層の密着性を評価した。
【0352】
(画像表示装置の製造)
光源、光源側直線偏光板、液晶セル及び視認側直線偏光板をこの順に備える市販の液晶表示装置(Apple社製「iPad」(登録商標))を用意した。この液晶表示装置の表示面部分を分解し、液晶表示装置の視認側直線偏光板を剥離し、代わりに、前記の円偏光板を取り付けた。これにより、視認側から、透明導電層、ハードコート層、λ/4板、接着層、λ/2板、接着層、直線偏光子、及び、画像表示素子としての液晶セルをこの順に備える画像表示装置を得た。
得られた画像表示装置について、上述した方法により、色味及び明るさのバラツキの評価を行った。
【0353】
[実施例2]
製造例2で製造したλ/2板の代わりに、製造例3で製造したλ/2板を用いた。以上の事項以外は実施例1と同様にして、フィルムセンサ部材、円偏光板及び画像表示装置の製造及び評価を行った。
【0354】
[実施例3]
製造例2で製造したλ/2板の代わりに、製造例4で製造したλ/2板を用いた。以上の事項以外は実施例1と同様にして、フィルムセンサ部材、円偏光板及び画像表示装置の製造及び評価を行った。
【0355】
[実施例4]
製造例2で製造したλ/2板の代わりに、製造例5で製造したλ/2板を用いた。また、λ/4板の表面へのハードコート層の形成を行わなかった。以上の事項以外は実施例1と同様にして、フィルムセンサ部材、円偏光板及び画像表示装置の製造及び評価を行った。
【0356】
[実施例5]
製造例1で製造したλ/4板の代わりに、製造例6で製造したλ/4板を用いた。また、製造例2で製造したλ/2板の代わりに、製造例3で製造したλ/2板を用いた。以上の事項以外は実施例1と同様にして、フィルムセンサ部材、円偏光板及び画像表示装置の製造及び評価を行った。
【0357】
[比較例1]
製造例1で製造したλ/4板の代わりに、製造例7で製造したλ/4板を用いた。また、製造例2で製造したλ/2板の代わりに、製造例3で製造したλ/2板を用いた。以上の事項以外は実施例1と同様にして、フィルムセンサ部材、円偏光板及び画像表示装置の製造及び評価を行った。
【0358】
[比較例2]
製造例2で製造したλ/2板の代わりに、製造例8で製造したλ/2板を用いた。以上の事項以外は実施例1と同様にして、フィルムセンサ部材、円偏光板及び画像表示装置の製造及び評価を行った。
【0359】
[比較例3]
製造例2で製造したλ/2板の代わりに、製造例9で製造したλ/2板を用いた。また、λ/2板とλ/4板との貼り合わせは、長尺のλ/2板と長尺のλ/4板との貼り合わせではなく、長尺のλ/2板から切り出した枚葉のフィルム片と長尺のλ/4板から切り出した枚葉のフィルム片との貼り合わせによって行った。以上の事項以外は実施例1と同様にして、フィルムセンサ部材、円偏光板及び画像表示装置の製造及び評価を行った。
【0360】
[比較例4]
製造例2で製造したλ/2板の代わりに、製造例10で製造したλ/2板を用いた。以上の事項以外は実施例1と同様にして、フィルムセンサ部材、円偏光板及び画像表示装置の製造及び評価を行った。
【0361】
[結果]
前記の実施例及び比較例の結果を、下記の表2〜表4に示す。下記の表において、略称の意味は、以下のとおりである。
非晶性COP:非晶性の脂環式構造含有重合体を含む樹脂。
結晶性COP:結晶性の脂環式構造含有重合体を含む樹脂。
COP複層:非晶性の脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなる、第一外側層、中間層及び第二外側層を含む複層構造のフィルム。
COP単層:非晶性の脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなる単層構造のフィルム。
Tg:非晶性の重合体のガラス転移温度。
Tm:結晶性の重合体の融点。
斜め:フィルム斜め方向での延伸。
縦:フィルム長手方向での延伸。
Re:面内レターデーション。
交差角:λ/4板の遅相軸とλ/2板の遅相軸との交差角。
UV透過率:フィルムセンサ部材の波長380nmにおける光線透過率。
【0362】
【表2】
【0363】
【表3】
【0364】
【表4】