特許第6874774号(P6874774)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6874774遮光領域を有する透明基板および表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874774
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】遮光領域を有する透明基板および表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20210510BHJP
   G02B 1/113 20150101ALI20210510BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20210510BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   G02B5/22
   G02B1/113
   G02F1/1335 500
   G02F1/1333
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-555010(P2018-555010)
(86)(22)【出願日】2017年12月5日
(86)【国際出願番号】JP2017043619
(87)【国際公開番号】WO2018105602
(87)【国際公開日】20180614
【審査請求日】2020年8月26日
(31)【優先権主張番号】特願2016-238840(P2016-238840)
(32)【優先日】2016年12月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健輔
【審査官】 岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−99159(JP,A)
【文献】 特開2014−215702(JP,A)
【文献】 特開2015−185096(JP,A)
【文献】 特開平11−163789(JP,A)
【文献】 特開2015−28621(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0091709(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
G02B 1/113
G02F 1/1333
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板の一方の主面の周辺部に遮光領域を有する透明基板であって、
前記遮光領域は、第1の遮光領域と第2の遮光領域を含み、
透明基板の他方の主面から測定した、前記第1の遮光領域の視感透過率が0.1〜40%であり、波長800〜1000nmにおける平均透過率が65%以上であり、
前記第2の遮光領域は光学濃度が4以上であり、
前記透明基板の他方の主面から測定し、前記他方の主面での表面反射を除いて求められる、前記第2の遮光領域の視感反射率が0.1〜1%で、波長600〜700nmにおける平均反射率Rが波長400〜600nmにおける平均反射率Rの1.5倍以上であることを特徴とする遮光領域を有する透明基板。
【請求項2】
前記第1の遮光領域は、第1の遮光層からなる請求項1記載の遮光領域を有する透明基板。
【請求項3】
前記第2の遮光領域は、前記第1の遮光層と、第2の遮光層が積層してなる請求項2に記載の遮光領域を有する透明基板。
【請求項4】
前記第1の遮光層は、赤外線を透過する顔料を含む請求項2または3に記載の遮光領域を有する透明基板。
【請求項5】
前記遮光領域を有する主面側から測定した時の、前記遮光領域の面積に対する、前記第1の遮光領域の面積の割合は、5〜40%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の遮光領域を有する透明基板。
【請求項6】
透明基板の他方の主面に表面機能層を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の遮光領域を有する透明基板。
【請求項7】
前記表面機能層が、反射防止層、防眩層および防汚層からなる群から選ばれる少なくとも1つの層である請求項6に記載の遮光領域を有する透明基板。
【請求項8】
前記透明基板がガラス板である請求項1〜7のいずれか1項に記載の遮光領域を有する透明基板。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の遮光領域を有する透明基板と、表示パネルと、赤外線を受光するセンサーと、筐体とを有し、
前記透明基板の第1の遮光領域に相当する位置に前記赤外線を受光するセンサーを有する表示装置。
【請求項10】
前記表示パネルが液晶パネルである、請求項9に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光領域を有する透明基板と、前記遮光領域を有する透明基板を有する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置が高機能化しており、表示装置には、表示面を保護する前面板が設けられている。そして、前面板は、表示面を透光する領域と表示面の周囲の領域に光を透過しない遮光領域を有する。
【0003】
表示装置の中には、表示パネルと、リモコンからの赤外線などの操作光を受光するセンサーとを有するものがある。このような表示装置においては、遮光領域の裏面に前記センサーが配置されている。そのため、遮光領域の一部では、赤外線などの操作光を透過させる必要がある。
【0004】
しかし、遮光領域の一部で、赤外線などの操作光を透過させるために、赤外線を透過する領域と赤外線を透過しない領域とを異なる材料で形成すると、一つの遮光領域の中に境界ができ、それが目立つと意匠性が低くなる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本国特開2014−99159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、表示装置は、高い意匠性が求められており、表示装置の前面板においても、機能性を備えつつ、意匠性が高いことも求められている。そのため、前面板として使用される遮光領域を有する透明基板として、遮光領域に赤外光透過領域と赤外光不透過領域とを備え、かつ、これらの領域の境界を視認できないことが求められている。本発明は、上記した遮光領域を有する透明基板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の遮光領域を有する透明基板は、透明基板の一方の主面の周辺部に遮光領域を有する透明基板であって、前記遮光領域は、第1の遮光領域と第2の遮光領域を含み、透明基板の他方の主面から測定した、前記第1の遮光領域の視感透過率が0.1〜40%であり、波長800〜1000nmにおける平均透過率が65%以上であり、前記第2の遮光領域は光学濃度が4以上であり、前記透明基板の他方の主面から測定し、前記他方の主面での表面反射を除いて求められる、前記第2の遮光領域の視感反射率が0.1〜1%で、波長600〜700nmにおける平均反射率Rが波長400〜600nmにおける平均反射率Rの1.5倍以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の遮光領域を有する透明基板によると、第1の遮光領域と第2の遮光領域を有しながら、表示装置の前面板として使用すると、これらの領域の境界が不明確とできる。その結果、意匠性の高い表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態にかかる遮光領域を有する透明基板の平面図である。
図2図2は、本実施形態にかかる遮光領域を有する透明基板のA−A断面図である。
図3図3は、本実施形態にかかる表示装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について説明する。以下の説明において、特に断りが無い限り、可視光領域とは、波長380〜780nmの範囲の光を意味し、赤外領域とは、波長800nm以上の範囲の光を意味する。視感透過率および視感反射率は、それぞれの測定波長が380〜780nmの範囲の、視感度および光源の光強度で荷重した平均透過率および平均反射率を意味し、JIS Z 8701(1999年)に準じて測定できる。平均透過率および平均反射率は、測定波長が800〜1000nmの範囲で求めた透過率および反射率における、それぞれの平均値であり、JIS Z 8722(2009年)に準じて測定できる。ヘイズ値は、JIS K 7136(2000)で規定される値である。遮光層付き透明基板の説明において、透明基板の遮光領域を有する側の主面を裏側、遮光領域を有さない側の主面を表側という。
【0011】
(遮光領域を有する透明基板)
図1〜2を用いて、本実施形態の遮光領域を有する透明基板を説明する。
図1は、本実施形態にかかる遮光領域を有する透明基板10の概略平面図である。図2は、本実施形態にかかる遮光領域を有する透明基板10の図1のA−Aの断面図である。図1および図2で示すとおり、本実施形態の遮光領域を有する透明基板10は、透光領域7と、透光領域7を囲うように透明基板4の一方の主面に遮光領域3を有し、遮光領域3は、第1の遮光領域1と第2の遮光領域2を有する。
【0012】
(遮光領域3)
本実施形態において、遮光領域3は、第1の遮光領域1と第2の遮光領域2を有する。本実施形態においては、第1の遮光領域1は、第1の遮光層5からなり、第2の遮光領域は、第1の遮光層5と第2の遮光層6が積層してなる。
【0013】
本実施形態においては、下記に説明するとおり、第1の遮光領域1は、赤外領域の波長の光を透過し、第2の遮光領域2では赤外領域の波長の光を透過しない。これにより、遮光領域を有する透明基板10を表示パネルおよび赤外光を受光するセンサー(以下、単にセンサーと呼ぶ。)の前面板として使用した際に、遮光領域3の第1の遮光領域1の裏側の位置において、センサーが透明基板の第1の遮光領域1を透過した赤外光を受光できる。また、第2の遮光領域2では、可視光および赤外領域の光が十分に遮蔽されるのでセンサーにとってノイズとなる波長の光を遮断できる。本明細書において「透過しない」とは、後述の光学濃度で3.5以上の遮光性を意味する。本実施形態の遮光領域を有する透明基材10を表示装置の前面板に使用し、その表示装置の構成部材としての表示パネルに液晶パネルを使用することがある。この場合、その背面にバックライトを載置するが、光学濃度が3.5以上であれば、遮光性が十分となりバックライトの光が漏れることなく、表示装置の視認性を確保できる。
【0014】
遮光領域3は、透明基板4に透光領域7を形成するように、透明基板4の主表面の周辺部に形成される。遮光領域3は、透明基板4の主表面の外周端から、0mmを超え30mm未満の領域に設けられることが好ましい。このようにすることで、透明基板4において、透光領域7を広くできる。また、遮光領域3を狭くすることで意匠性を高くできる。
【0015】
また、本実施形態において、遮光領域3を有する主面側から測定したときの、遮光領域3の面積に対する、第1の遮光領域1の面積の割合は、5〜40%が好ましい。前記割合が下限値以上であることで、良好なセンサー感度が得られ、前記割合が上限値以下であると迷光等によるセンサーの誤動作を抑制できる。
【0016】
(第1の遮光領域1)
本実施形態において、第1の遮光領域1は、透明基板の遮光領域を有さない主面(他方の主面)から測定した視感透過率が0.1〜40%であり、波長800〜1000nmにおける平均透過率が65%以上である。
【0017】
第1の遮光領域1は、視感透過率が0.1〜40%と、低い値であるため、第1の遮光領域1においても一定の遮光性能を有する。そして、センサーのノイズになる赤外領域以外の光を遮蔽できる。前記視感透過率は、0.2〜40%が好ましく、10〜30%がより好ましく、15〜20%がさらに好ましい。前記視感透過率が30%以下であれば、第1の遮光領域1の遮光性能を高くできるため好ましく、20%以下であれば、同様の観点でさらに好ましい。前記視感透過率が0.1%以上であっても、遮光性能の点では問題がない。前記視感透過率が10%以上であれば、透明基板4の一方の主面(裏側)と第1の遮光層5の屈折率と消衰係数が近づき、第1の遮光領域1からの反射率、具体的には後述する反射率Rが低減するため好ましい。
【0018】
第1の遮光領域1は、波長800〜1000nmにおける平均透過率が65%以上である。前記平均透過率が65%以上あれば、第1の遮光領域1において、波長800〜1000nmの範囲の光を十分に透過できる。センサーは、通常、波長800〜1000nmの光に応答するため、この波長範囲の光を透過することが求められる。前記平均透過率は、75%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上がさらに好ましい。前記平均透過率が高いほど、第1の遮光領域1においてセンサーが受光する波長の光である波長800〜1000nmの光の損失が小さくなるため好ましい。一方で第1の遮光領域1の波長800〜1000nmにおける平均透過率の上限は特に制限はないが、95%以下が好ましい。
【0019】
(第1の遮光層)
本実施形態において、第1の遮光領域1を構成する第1の遮光層5は、赤外線を透過する材料(以下、赤外線透過材料と略す。)を有する。例えば、第1の遮光層5は、赤外線透過材料を含む樹脂組成物を硬化して形成される。以下の説明では、第1の遮光層5を形成するための樹脂組成物を第1の樹脂組成物という。
【0020】
前記赤外線透過材料としては、赤外線透過能を有する顔料が挙げられる。前記顔料としては、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用できる。無機顔料としては、例えば、酸化鉄、酸化チタン、複合酸化物系などが挙げられる。有機顔料としては、例えば、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、アゾ系顔料等の金属錯体系顔料などが挙げられる。
【0021】
第1の遮光層5中の赤外線透過材料の含有割合は、所望の光学特性に応じて自由に変更できる。第1の遮光層5の全質量に対する、赤外線透過材料の含有量の比である含有割合は0.01〜20質量%が好ましい。前記の含有割合は、第1の樹脂組成物の質量全体に対する、赤外線透過材料の含有割合を調整することで実現できる。
【0022】
第1の樹脂組成物の硬化は、光硬化型、熱硬化型、2種以上の液体を混合することにより硬化するもの、溶媒を乾燥させることにより硬化するものなどが挙げられる。
【0023】
第1の樹脂組成物の樹脂成分としては、例えば、ワニス(油ワニスおよび/または酒精ワニス)、塗料用樹脂、汎用プラスチック、またはエンジニアリングプラスチック等が挙げられる。前記樹脂成分としては、赤外線の吸収が少ない材料が好ましい。塗料用樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。汎用プラスチックまたはエンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、変性PPO樹脂、またはポリアミド樹脂などが挙げられる。
【0024】
第1の樹脂組成物には、溶媒や分散媒を含んでもよい。樹脂組成物を透明基板に塗工する作業性を向上させるためにこれらの材料は、樹脂組成物中に適切に配合される。
【0025】
第1の遮光層5の厚さは、1〜10μmが好ましく、2〜5μmがより好ましい。第1の遮光層5の厚さが1μm以上であると、第1の遮光層5の厚さの偏差に透過率が敏感になるのを防ぎ、透過率のムラを抑制できる。また、第1の遮光層5の厚さが10μm以下であると、応力による層間の膜剥がれを防ぎ、液晶パネルに貼り合わせる際に、段差部に残留空気によるエアラインの発生を抑制できる。
第1の遮光層5の屈折率は、透明基板4の屈折率と近い値が好ましい。透明基板4の屈折率n1と、第1の遮光層5の屈折率n2との差|n1−n2|が、0.3以下が好ましく、0.2以下がより好ましい。前記差がこの範囲にあることによって、第2の遮光領域2の反射率が十分低下する。なお、屈折率とは、波長550nmにおける屈折率の実部を指す。透明基板として例えばガラスが挙げられる。
【0026】
(第2の遮光領域2)
本実施形態において、第2の遮光領域2は光学濃度が4以上である。このため、遮光領域3における第2の遮光領域2の遮光性能が高い。本実施形態の遮光領域を有する透明基材10を表示装置の前面板に使用し、その表示装置の構成部材としての表示パネルに液晶パネルを使用することがある。この場合、その背面にバックライトを載置するが、光学濃度が4以上であれば、遮光性が十分となりバックライトの光が漏れることなく十分に遮光でき、表示装置の視認性を確保できる。遮光領域を有する透明基板10の遮光領域3の遮光性能を高くする点で、前記光学濃度は、4.2以上が好ましく、4.5以上がより好ましい。
【0027】
なお、光学濃度は、ある光の入射光量Iに対する、被測定物を透過してきた透過光量Taの比について底を10とした常用対数で表した値の絶対値であり、隠蔽性能を示す。例えば、波長が360〜830nmである可視光で入射光量Iが1000、透過光量Taが1とすると、この時の光学濃度は|Log10(1/1000)|=3となる。これは白黒透過濃度計(伊原電子株式会社製、商品名:Ihac−T5)やガラス基盤透過率/反射率計測ユニット(ラムダビジョン社製、商品名:LV−RTM)を使用し測定できる。
【0028】
本実施形態において、透明基板4の他方の主面(表側)から測定した第2の遮光領域2の視感反射率は0.1〜1%である。なお、前記視感反射率は、透明基板4の前記他方の主面での表面反射を除いた値である。第2の遮光領域2の視感反射率は、実施例に記載の方法で算出できる。
【0029】
本実施形態の遮光領域を有する透明基板10は、表示パネルの表示面の前に配置され、遮光領域の裏面側(遮光層を有する面側)には表示パネルまたはセンサーが設けられる。表示パネルの表示面またはセンサーは通常、黒色であり、それらの表面の波長350nm〜700nmでの平均反射率は1%程度である。
【0030】
本実施形態においては、透明基板の表側から第1の遮光領域に入射した可視光領域の光の大部分は、第1の遮光層5で吸収されて、可視光領域の中で波長が長い光は、第1の遮光層5を透過する。第1の遮光層5を透過した光は、表示パネルの表示面またはセンサー表面で反射し、再び第1の遮光層5を透過するので、第1の遮光領域1は人に視認される。一方で、第2の遮光領域2では、第1の遮光層5および第2の遮光層6が存在するため、表示パネルの表示面又はセンサーまで可視光領域の光が到達しない。その代わりに、可視光領域の波長が長い光は、第1の遮光層5を透過し、第1の遮光層5と第2の遮光層6の境界で反射される。この第2の遮光領域2における可視光領域の波長が長い光の反射率が、第1の遮光領域1におけるセンサー表面等からの反射率よりも著しく低いと、遮光領域3において、第1の遮光領域1と第2の遮光領域2とで、色味に差(以下、色差という。)が生じることになる。
【0031】
本実施形態の遮光領域を有する透明基板10においては、第1の遮光層5と第2の遮光層6との境界が明確に存在しており、第1の遮光層5と第2の遮光層6との間で反射が起こる。その結果、遮光領域3における第2の遮光領域2では、表示パネルの表示面またはセンサー表面まで可視光領域の波長の長い光以外は到達せず、可視光領域の波長の長い光は、第1の遮光層5と第2の遮光層6との間で反射して、第1の遮光層5を透過する。
【0032】
遮光領域を有する透明基板10を表示パネルの前面に配置した場合に、第2の遮光領域2での第1の遮光層5と第2の遮光層6との間での可視光領域の波長の長い光の反射の程度が、第1の遮光領域3での可視光領域の波長の長い光の反射の程度が同等とすれば、遮光領域3において、第1の遮光領域1と第2の遮光領域2とで、これらの領域での色差を小さくできるので、これらの領域の境界が視認できなくなる。
【0033】
上記観点から、透明基板4の表側から測定した第2の遮光領域2の視感反射率は、0.1〜0.8%がより好ましく、0.1〜0.6%がさらに好ましい。
【0034】
また、上記観点から、本実施形態において、第2の遮光領域2における透明基板4の表側から測定した波長600〜700nmにおける平均反射率Rは、波長400〜600nmにおける平均反射率Rの1.5倍以上である。なお、前記第2の遮光領域2の平均反射率は、透明基板4の表面反射を除いた値である。
【0035】
本実施形態においては、第1の遮光層5は、可視光領域の中で波長の長い光の透過率は高く、波長の短い光の透過率は低い。第2の遮光領域2の、波長600〜700nmにおける平均反射率Rが、波長400〜600nmにおける平均反射率Rの1.5倍未満となる場合、第2の遮光層6で反射して第1の遮光層5を透過する光の量が少なくなるため、遮光領域3において、第1の遮光領域1と第2の遮光領域2との色差が大きくなる。そのため、前記平均反射率Rは、前記平均反射率Rの2倍以上が好ましく、2〜10倍がより好ましい。10倍以上になると、印刷そのものが赤みを帯びてしまい、意匠性として問題が生じる可能性がある。
【0036】
(第2の遮光層)
本実施形態において、第2の遮光層6は、第1の遮光層5に積層した際に、その積層領域(第2の遮光領域)の光学濃度が4以上となる層である。
第2の遮光層6が、前記した特性を満たすためには、第2の遮光層6は、単層で光学濃度(OD値)が2以上であることが好ましい。また、第2の遮光層6は、赤外光を透過しない層が好ましい。
【0037】
第2の遮光層6は、可視光領域の光を吸収する着色顔料を含む樹脂組成物を硬化して形成される。以下の説明では、第2の遮光層6を形成するための樹脂組成物を第2の樹脂組成物という。
【0038】
可視光領域の光を吸収する着色顔料としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック等の黒色材料、酸化チタン、酸化亜鉛等の白色材料が挙げられる。また、着色材料は、前記した黒色材料および白色材料に限定されず、所望の色有する材料を使用できる。
【0039】
第2の遮光層6中の可視光領域の光を吸収する着色顔料の含有割合は、所望の光学特性に応じて自由に変更できる。第2の遮光層6の全質量に対する、可視光領域の光を吸収する着色顔料の含有量の比である含有割合は0.01〜20質量%が好ましい。前記の含有割合は、第2の樹脂組成物の質量全体に対する、可視光領域の光を吸収する着色顔料の含有割合を調整することで実現できる。
【0040】
第2の樹脂組成物の樹脂成分としては、第1の遮光層5を形成する樹脂組成物の樹脂成分と同様の物を使用できる。
【0041】
第2の遮光層6を形成する樹脂組成物には、溶媒や分散媒を含んでもよい。樹脂組成物を透明基板に塗工する作業性を向上させるためにこれらの材料は、樹脂組成物中に適切に配合される。
【0042】
第2の遮光層6の厚みは、1〜10μmが好ましく、2〜5μmがより好ましい。第2の遮光層6の厚さが1μm以上であると、第2の遮光層6の厚さの偏差に透過率が敏感になるのを防ぎ、透過率のムラを抑制できる。また、第2の遮光層6の厚さが10μm以下であると、応力による層間の膜剥がれを防ぎ、液晶パネルに貼り合わせる際に、段差部に残留空気によるエアラインの発生を抑制できる。
【0043】
(透明基板)
本実施形態において、透明基板4は表示パネルおよびセンサーを保護する前面板として作用する。透明基板4としては、ガラス板、樹脂板、ガラス板の合わせガラス、ガラス板と樹脂板の積層板などを使用できる。中でも、意匠性に優れる点で、ガラス板や合わせガラスが好ましく。また、透明基板4を軽量または薄くできる点で、ガラス板が好ましい。
【0044】
本実施形態においては、ガラス板として、無色透明なソーダライムガラスやアルミノシリケートガラス(SiO−Al−NaO系ガラス)に強化処理を施した強化ガラスなどが挙げられる。
【0045】
ガラス板としては、例えば、酸化物基準のモル%表示で、SiOを50〜80%、Alを1〜20%、NaOを6〜20%、KOを0〜11%、MgOを0〜15%、CaOを0〜6%およびZrOを0〜5%含有するガラス材料が挙げられる。具体的には、アルミノシリケートガラスに強化処理を施した強化ガラス(例えば「ドラゴントレイル(登録商標)」)が好適に用いられる。
【0046】
ガラス板の表面には、圧縮応力層が形成されていることが好ましい。圧縮応力層の厚さは10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、25μm以上がさらに好ましく、30μm以上が特に好ましい。また、圧縮応力層における表面圧縮応力は、650MPa以上が好ましく、750MPa以上がより好ましい。
【0047】
ガラス板に上記した圧縮応力層を形成する方法としては、ガラス板を、KNO溶融塩に浸漬し、イオン交換処理した後、室温付近まで冷却する方法が挙げられる。KNO溶融塩の温度や浸漬時間などの処理条件は、表面圧縮応力及び圧縮応力層の厚さが所望の値となるように設定すればよい。
【0048】
透明基板4の板厚は、0.3〜2.5mmが好ましい。板厚が0.3mm以上であると、透明基板4の強度が十分となり耐衝撃性が向上する。また、板厚が2.5mm以下であると、厚くなりすぎることなく、例えば、透明基板4と表示パネルの間にタッチパネルを配置した場合に、タッチパネルの感度が低下するのを抑制できる。透明基板4の板厚は0.7〜2.3mmがより好ましく、1〜2mmがさらに好ましい。
【0049】
透明基板4の外形の形状および大きさは、表示パネルの外形に合わせて適宜決定される。通常、表示パネルは、外形が、長方形等の矩形であることが一般的であるため、透明基板4の外形も矩形が一般的である。透明基板4のサイズは表示パネルの表示部よりも大きい。なお、透明基板4の大きさの一例としては、例えば、矩形の場合、長手方向:100〜800mm、短手方向:40〜300mmが挙げられる。
【0050】
透明基板4の断面は矩形でもよく、一部が湾曲する形状であってもよい。
【0051】
(表面機能層)
本実施形態において、透明基板4の主面には、機能層を設けてもよい。機能層としては、例えば、反射防止層、防汚層、抗菌層、防眩層などが挙げられる。機能層は、透明基板4の両主面に設けてもよく、一方の主面のみに設けてもよい。表示性能を高める点で、これらの機能層は、透明基板4の表側に設けることが好ましい。
【0052】
<反射防止層>
反射防止層は、外光による反射を抑え表示画像の表示品質を高めるために形成される層である。
【0053】
透明基板4の表面に防眩層を有する場合は、防眩層の上に反射防止層を形成することが好ましい。透明基板4の表面に、防汚層と反射防止層を有する場合、透明基板4側から反射防止層と防汚層とをこの順に形成することが好ましい。
【0054】
反射防止層の構成としては、光の反射を所定範囲に抑制できる構成であれば特に限定されず、例えば、高屈折率層と低屈折率層とを積層した構成とできる。ここで、高屈折率層は、例えば、波長550nmの光の屈折率が1.9以上の層をいい、低屈折率層は、波長550nmの光の屈折率が1.6以下の層をいう。
【0055】
反射防止層における高屈折率層と低屈折率層との層数は、それぞれを1層ずつ含む形態であってもよいが、それぞれを2層以上含む構成であってもよい。高屈折率層と低屈折率層をそれぞれ1層含む構成の場合は、透明基板の主面に、高屈折率層、低屈折率層の順に積層したものが好ましい。また、高屈折率層と低屈折率層をそれぞれ2層以上含む構成の場合は、高屈折率層、低屈折率層の順に交互に積層した積層体が好ましい。前記積層体は、例えば、全体で2層以上8層以下の積層が好ましく、2層以上6層以下の積層がより好ましく、2層以上4層以下の積層がさらに好ましい。また、光学特性を損なわない範囲での層の追加を行ってもよい。例えば、ガラス板からのNa拡散を防ぐために、ガラスと第1層との間にSiO膜を挿入してもよい。
【0056】
高屈折率層、低屈折率層を構成する材料は、特に制限はなく、要求される反射防止性の程度や生産性を考慮して選択できる。高屈折率層を構成する材料としては、例えば、酸化ニオブ(Nb)、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タンタル(Ta)、酸化アルミニウム(Al)、窒化ケイ素(SiN)等が挙げられる。これらの材料から選択される1種以上を好ましく使用できる。低屈折率層を構成する材料としては、酸化ケイ素(特に、二酸化ケイ素SiO)、SiとSnとの混合酸化物を含む材料、SiとZrとの混合酸化物を含む材料、SiとAlとの混合酸化物を含む材料等が挙げられる。これら材料から選択される1種以上を好ましく使用できる。
【0057】
反射防止層は、表面に無機薄膜を直接形成する方法、エッチング等の手法により表面処理する方法や、乾式法、例えば、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、特に物理蒸着法の一種である真空蒸着法やスパッタ法により好適に形成できる。
【0058】
反射防止層の厚さは、100〜500nmが好ましい。反射防止層の厚さを100nm以上とすることで、効果的に外光の反射を抑制できるため好ましい。
【0059】
<防汚層>
防汚層は、撥油性や親油性の少なくとも一つの特性を持つ。指紋跡のみならず汗や埃など様々な汚れの付着を抑える、汚れを拭き取りやすくする、汚れを目立ちにくくする等の機能を有し、透明基板の表面をきれいに保つ。また、タッチパネル操作の際にひっかかりのないスムーズな指滑り性が得られる。
【0060】
防汚層の形成方法としては、フッ素含有有機化合物等を真空槽内で蒸発させて、反射防止層の表面に付着させる真空蒸着法(乾式法)や、フッ素含有有機化合物等を有機溶剤に溶解させ、所定の濃度になるように調整し、反射防止層の表面に塗布する方法(湿式法)等を利用できる。
【0061】
乾式法としては、例えば、イオンビームアシスト蒸着法、イオンプレート法、スパッタ法、プラズマCVD法等が挙げられる。湿式法としては、例えば、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、スリットコート法、スプレー法等が挙げられる。乾式法、湿式法のどちらも使用できる。耐擦傷性の観点からは、乾式の成膜方法を用いることが好ましい。
【0062】
防汚層の構成材料は、防汚性、撥水性、撥油性を付与できるフッ素含有有機化合物等から適宜選択できる。具体的には、含フッ素有機ケイ素化合物や、含フッ素加水分解性が挙げられる。フッ素含有有機化合物は、防汚性、撥水性および撥油性を付与できれば、特に制限なく使用できる。
【0063】
防汚層を形成する含フッ素有機ケイ素化合物被膜は、透明基板の主面または防眩層の処理面に反射防止層が形成される場合には、当該反射防止層の表面に形成されることが好ましい。また、透明基板として防眩処理、化学強化処理等の表面処理が施され、反射防止層が形成されないガラス基板を用いる場合には、含フッ素有機ケイ素化合物被膜は、これら表面処理の施された面に直接形成されることが好ましい。
【0064】
含フッ素有機ケイ素化合物被膜を形成する方法としては、例えば、パーフルオロアルキル基;パーフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖を含むフルオロアルキル基等のフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤の組成物を、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、スリットコート法、スプレーコート法等により塗布した後加熱処理する方法、または含フッ素有機ケイ素化合物を気相蒸着させた後加熱処理する真空蒸着法等が挙げられる。密着性の高い含フッ素有機ケイ素化合物被膜を得るには、真空蒸着法により形成することが好ましい。真空蒸着法による含フッ素有機ケイ素化合物被膜の形成は、含フッ素加水分解性ケイ素化合物を含有する被膜形成用組成物を用いて行うことが好ましい。
【0065】
防汚層において、含フッ素有機ケイ素化合物被膜の形成に用いる含フッ素加水分解性ケイ素化合物は、得られる含フッ素有機ケイ素化合物被膜が、撥水性、撥油性等の防汚性を有するものであれば特に制限はない。具体的には例えば、パーフルオロポリエーテル基、パーフルオロアルキレン基およびパーフルオロアルキル基からなる群から選ばれる1つ以上の基を有する含フッ素加水分解性ケイ素化合物が挙げられる。
【0066】
防汚層の層厚は、特に制限されないが、2〜20nmが好ましく、2〜15nmがより好ましく、3〜10nmがさらに好ましい。層厚が2nm以上であれば、防汚層によって反射防止層の表面が均一に覆われた状態となり、耐擦り性の簡単で実用に耐えるものとなる。また、層厚が20nm以下であれば、防汚層が積層された状態での視感反射率やヘイズ値等の光学特性が良好である。
【0067】
<防眩層>
透明基材4に防眩性を付与するために、透明基板4の表面に防眩層を設けてもよい。防眩性とは、主に反射光を散乱させ、光源の映り込みによる反射光の眩しさを低減する機能を示す。防眩性を付与するためには、透明基板4の表面に凹凸形状を形成することが挙げられる。
【0068】
凹凸形状を形成する方法として、公知の方法を適用可能である。例えば、透明基板4としてガラス基板を用いる場合、ガラス基板の表面に化学的または物理的に表面処理を施し、所望の表面粗さの凹凸形状を形成する方法や、ウエットコート等を利用できる。
【0069】
化学的に防眩処理を行う方法としては、フロスト処理が挙げられる。フロスト処理は、例えば、フッ化水素とフッ化アンモニウムの混合溶液に、被処理体であるガラス基板を浸漬することで実現できる。また、物理的に防眩処理を行う方法としては、例えば、結晶質二酸化ケイ素粉、炭化ケイ素粉等を加圧空気でガラス基板の主面に吹き付けるサンドブラスト処理や、結晶質二酸化ケイ素粉、炭化ケイ素粉等を付着させたブラシを水で湿らせたものを用いて擦る方法等を利用できる。
【0070】
防眩層を有する透明基板4の表面は、表面粗さ(二乗平均粗さ、RMS)が0.01〜0.5μmであることが好ましい。表面粗さ(RMS)は、0.01〜0.3μmがより好ましく、0.02〜0.2μmがさらに好ましい。表面粗さ(RMS)を上記範囲とすることで、防眩層を有する透明基板のヘイズ値を1〜30%に調整できる。
【0071】
(他の形態)
本発明において、第1の遮光領域および第2の遮光領域における遮光層の層数は限定されない。上記した形態以外に、第1の遮光領域が2層以上の遮光層を有してもよく、第2の遮光領域が3層以上の遮光領域を有してもよい。層数が多くなるほど層厚を高めることができ、単層を設ける場合に発生するおそれのあるピンホール(透明基板の一部に遮光層が形成されない穴状の領域)を消失させて、遮光性能を向上できる。
【0072】
一方で、製造効率を考慮すると、層数が多くなると、製造効率が低下する場合がある。そのため、遮光層の合計層数は2〜4層が好ましく、2〜3層がより好ましく、2層が特に好ましい。
【0073】
なお、第1の遮光領域で層数を増やす場合は、前記第1の遮光層を形成した材料と同様の材料を用いることが好ましい。第2の遮光領域で層数を増やす場合には、第2の遮光層を形成した材料と同様の材料を使用することが好ましい。
【0074】
また、本発明においては、第2の遮光領域に加えて、遮光特性が異なる第3の遮光領域を有してもよく、さらに他の遮光領域を有してもよい。
【0075】
(遮光層付き透明基板の製造方法)
本実施形態の遮光領域を有する透明基板の製造方法を説明する。
遮光領域を有する透明基板の製造方法は、透明基板を準備する工程と、透明基板の一方の主面に第1の遮光層を形成する工程と、第1の遮光層の所定の部分に第2の遮光層を形成して遮光領域を形成する工程を有し、遮光領域は、第1の遮光層からなる第1の遮光領域と、第1の遮光層と第2の遮光層が積層した第2の遮光領域を有する。
【0076】
本実施形態において、第1の遮光層および第2の遮光層は、第1または第2の樹脂組成物を印刷する方法で形成される。印刷法としては、バーコード法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ロールコート法、スクリーン法、インクジェット法等が挙げられる。簡便に印刷できるうえ、種々の基材に印刷でき、また基材のサイズに合わせて印刷できることから、スクリーン印刷法が好ましい。
【0077】
(透明基板の一方の主面に第1の遮光層を形成する工程)
本工程では、透明基板に第1の樹脂組成物を前記した印刷法で塗布し、乾燥して第1の遮光層を形成する。本実施形態においては、第1の遮光層を十分に乾燥させることが好ましい。ここで、十分に乾燥させるとは、第1の樹脂組成物を塗布した後、第1の遮光層が第2の遮光層とインクが混合せず、光学的に明確な境界を作るようになった状態をいう。
【0078】
従来は、層間の密着性を向上させる観点から、第1の遮光層が十分乾燥する前に第2の遮光層を塗布することが通常よく行われている。この場合、第1の遮光層が十分乾燥する前に第2の遮光層を塗布する等を行うことにより、第1の遮光層と第2の遮光層の境界付近で層の材料が混合し、境界が不明瞭となり、屈折率が層方向に連続的に変化することとなり、反射しなくなるおそれがある。これに対し、本工程において第1の遮光層を十分に乾燥させることにより、第1の遮光層と第2の遮光層との界面で、可視光領域の波長が長い光の反射が起こることを見出した。
【0079】
本実施形態においては、第1の遮光層を形成する際には、第1の遮光領域の視感透過率が0.1〜40%であり、波長800〜1000nmにおける平均透過率が65%以上となるように第1の樹脂組成物を選定する。
【0080】
(第2の遮光層を形成する工程)
次いで、第1の遮光層の所定の領域に第2の樹脂組成物を前記した印刷法で塗布し、乾燥して第2の遮光層を形成する。この時、第1の遮光層が十分に乾燥しているので、積層領域において、第1の樹脂組成物と第2の樹脂組成物がそれぞれ他層に移行しづらい。各層の樹脂組成物が他層に移行しないので、第1の遮光層と第2の遮光層との境界が明確になる。その結果、透明基板の他方の主面(表側)から測定し、前記他方の主面での表面反射を除いて求められる、第1の遮光層と第2の遮光層が積層した第2の遮光領域の視感反射率が0.1〜1%で、波長600〜700nmにおける平均反射率Rを波長400〜600nmにおける平均反射率Rの1.5倍以上とできる。
【0081】
本実施形態においては、第2の遮光層を形成する際には、第2の遮光領域の光学濃度が4以上となるように第2の樹脂組成物を選定する。
【0082】
(他の遮光層を形成する工程)
遮光領域を有する透明基板を製造する際に、第2の遮光層の上に、さらに他の遮光層を形成する工程を有してもよい。これにより、遮光層の遮光性能をより高くできる。
【0083】
(表面機能層を形成する工程)
遮光層付き透明基板を製造する際に、透明基板を準備する工程の前もしくは後、または、透明基板の一方の主面に遮光層を形成する工程の後に、表面機能層を形成する工程を有してもよい。
この工程により、表面機能層を有する遮光層付き透明基板が得られる。
【0084】
(遮光領域を有する透明基板を有する表示装置)
本発明の遮光領域を有する透明基板10は、表示パネルの前面板(または、カバー部材)として使用できる。
【0085】
本実施形態の表示装置20を、図3の断面図を用いて説明する。本実施形態の表示装置20は、遮光領域を有する透明基板10と、表示パネル11と、赤外線を受光するセンサー12と、表示パネルを保持する筐体14とを有する。そして、本実施形態の表示装置20は、遮光領域を有する透明基板10と、表示パネル11の表示面とが、粘着層13を介して一体化されている。なお、この粘着層13は、表示装置においては必須ではない。
【0086】
本実施形態の表示装置20において、遮光領域を有する透明基板10は、遮光領域3の第1の遮光領域1において、赤外線を透過する領域を有するので、赤外線を受光するセンサー12は、遮光領域を有する透明基板10の第1の遮光領域の裏面に配置する。
【0087】
表示パネル11としては、液晶ディスプレイパネル、有機ELディスプレイパネルなどが挙げられる。また、本実施形態の表示装置20は、遮光領域を有する透明基板10は、筐体14に組み付けられてもよい。
【0088】
遮光領域を有する透明基板10と表示パネル11の表示面との貼り合わせに使用される粘着層13は、光学用の透明接着剤または粘着フィルムなどが挙げられる。前記透明接着剤や粘着フィルムの材料としては、例えば、熱硬化性樹脂組成物、光硬化性樹脂組成物が挙げられる。また、これらの樹脂組成物としては、例えば、アクリル材料、シリコーン材料、およびエポキシ材料などが挙げられる。
【0089】
前記粘着フィルムや、硬化後の透明接着剤の厚さは、5μm以上400μm以下が好ましく、50μm以上200μm以下がより好ましい。また、前記粘着フィルムや、硬化後の透明接着剤の厚さは、の貯蔵せん断弾性率は、5kPa以上5MPa以下が好ましく、1MPa以上5MPa以下がより好ましい。
【0090】
なお、図3において、センサー12と遮光領域を有する透明基板10との間に空間のある構成となっているが、これに限定されない。例えば、表示パネル11と同様に、粘着層を介して設置させてもよい。この場合、粘着層としては、上述の特性を有する材料を使用できる。
【0091】
表示パネル11が、液晶パネルの場合には、前記筐体14の中には、バックライトモジュールをさらに有する。バックライトモジュールは、バックライトと、バックライトが十分に機能するための拡散板や光導板を必要に応じて含むものである。
【0092】
本実施形態の表示装置20は、表示パネル11の表示面側に図示しないタッチセンサ等を備えていてもよい。タッチセンサは、遮光領域を有する透明基板10の遮光層を有する側の主面に光学用の透明接着剤または粘着フィルムを介して貼り合わせて設けられる。また、表示パネル11として、表示パネルの中にタッチセンサを有するもの(例えば、インセル方式という。)を用いてもよい。
【実施例】
【0093】
以下に実施例によって、本発明を具体的に説明する。本発明はこれらに限定して解釈されるべきではない。
【0094】
以下の手順により、遮光領域を有する透明基板を製造した。透明基板として、ガラス板[旭硝子株式会社製 商品名:ドラゴントレイル(登録商標)]を使用した。
【0095】
<実施例1>
工程1:第1の遮光層形成工程
15cm×25cmの長方形で厚さが1mmのガラス板の一方の主面の外周部に、スクリーン版を用いて、第1の樹脂組成物(株式会社セイコーアドバンス製、商品名:HF GV3 RX01 IRインキ)を塗布し、150℃で60分だけ乾燥して、第1の遮光層を形成した。第1の遮光層は厚さが3μmであった。
工程2:第2の遮光層形成工程
第1の遮光層の上に、スクリーン版を用いて、第2の樹脂組成物(株式会社セイコーアドバンス製、商品名:HF GV3 RX01 710)を塗布し、150℃で60分だけ乾燥して、第2の遮光層を形成した。図1に示すように、第1の遮光層上に第2の遮光層を有さない領域ができるように、第2の樹脂組成物を塗布した。第2の遮光層は厚さが3μmであった。
これらの工程により、図2に示すように、ガラス板の一方の主面に、第1の遮光層からなる第1の遮光領域と、第1の遮光層と第2の遮光層が積層した第2の遮光領域とを備えた、遮光領域を有するガラス板を得た。
【0096】
<実施例2>
工程1において、第1の樹脂組成物(帝国インキ製造株式会社製、商品名IRX HF 40512)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、遮光領域を有するガラス板を得た。
【0097】
<実施例3>
工程1において、第1の樹脂組成物(帝国インキ製造株式会社製、商品名IRX−HF 40552)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、遮光領域を有するガラス板を得た。
【0098】
<比較例1>
工程1において、第1の樹脂組成物を塗布した後の、乾燥時間を10分と短くしたこと以外は、実施例1と同様にして、遮光領域を有するガラス板を得た。
上記により作製した遮光領域を有するガラス板について、下記項目を測定して評価した。結果を表1に示す。
【0099】
(第1の遮光領域の視感透過率)
第1の遮光層からなる第1の遮光領域について波長が380〜780nmの範囲で視感透過率を測定した。視感透過率の測定は紫外可視近赤外分光光度計(株式会社 島津製作所社製、商品名:SolidSpec3700)を使用した。測定波長間隔は5nmで行った。
【0100】
(第1の遮光領域の赤外線領域の平均透過率)
第1の遮光領域の波長が800〜1000nmの範囲の平均透過率を測定した。平均透過率の測定は紫外可視近赤外分光光度計(株式会社 島津製作所社製、商品名:SolidSpec3700)を使用した。測定波長間隔は5nmで行った。
【0101】
(第2の遮光領域の光学濃度)
第1の遮光層と第2の遮光層が積層している第2の遮光領域の光学濃度を測定した。光学濃度の測定は、白黒透過濃度計(伊原電子株式会社製、商品名:Ihac−T5)を使用した。
【0102】
(第2の遮光領域の視感反射率)
第2の遮光領域の波長が360〜740nmの範囲の視感反射率を測定した。分光測色計(コニカミノルタジャパン株式会社製、商品名:CM−2600d)を用いて、ガラス板の遮光層を有する側の主面での第2の遮光領域の分光反射率をSCI(Specular Component Include)モードで測定し、その反射率から、視感反射率[JIS Z 8701(1999年)において規定されている反射の刺激値Y]を求めた。この値を、第2の遮光領域の視感反射率とした。波長間隔は10nmとし、光源はD65光源として計算した。なお、視感反射率は通常、波長が380〜780nmの範囲で測定するが、波長360〜740nmでの測定結果と差がないことを確認し代用した。
【0103】
(第2の遮光領域の反射率比)
第2の遮光領域の波長400〜600nmにおける平均反射率Rと、波長600〜700nmにおける平均反射率Rを測定した。反射率比はRに対するRの比として算出した。測定装置は分光測色計(コニカミノルタジャパン株式会社製、商品名:CM−2600d)を用いて、視感反射率を測定した時と同様に、SCIモードで測定した。波長間隔は10nmとした。
【0104】
なお、第2の遮光領域の視感反射率および平均反射率を算出する際には、以下の(1)および(2)の考え方を使用した。
(1)透明基板の他方の主面(表側)において、透光領域を測定した反射率を反射率Rとする。反射率Rとして算出される光は、透明基板の表面で反射された光と、透明基板の内部をとおり、透明基板と裏面の空気との間で反射され、再度透明基板の表面から出射した光とを含む。透明基板の表面に反射防止膜を施していない場合、透明基板の表面の反射率と、透明基板と裏面の空気との間での反射率は等しく、これらの値を反射率Rとする。この場合、反射率Rと反射率Rは以下の関係式を満たす。そして、分析値として得られる反射率Rの値と下記計算式から、反射率Rを算出する。
反射率R=反射率R+反射率R(1−反射率R
(2)さらに、透明基板の遮光層が形成されていない、前記他方の主面側から、第2の遮光領域で測定した反射率を反射率Rとする。また、第2の遮光領域において、遮光層と透明基板との界面での反射率を反射率Rとする。反射率Rとして算出される光は、透明基板と第1の遮光層の境界面での反射光と、第1の遮光層と第2の遮光層との境界面での反射光が含まれる。そして、反射率R、反射率Rおよび反射率Rは以下の関係式を満たす。上記で得られた反射率Dと、分析値として得られる反射率Rから、反射率Rを算出する。そして、この反射率Rを第2の遮光領域の反射率とする。
反射率R=反射率R+反射率R(1−反射率R
【0105】
(境界部の視認性)
遮光層の第1の遮光領域と、第2の遮光領域の境界部の視認性を評価した。遮光層付きガラス板を黒色の板の上に配置して、遮光層の各領域の境界を明確に視認できない場合を良とし、境界が明確に視認できる場合を不良として評価した。
【0106】
【表1】
【0107】
第2の遮光領域における反射率比が1.5以上である実施例1〜3は、第1の遮光領域と第2の遮光領域との色差が小さく、境界部の視認性が低かった。一方で、第2の遮光領域の反射率比が1.5未満である比較例1では、境界部を明確に区別されていた。
【0108】
遮光領域において、第1の遮光領域と第2の遮光領域とは境界が存在している。ここで、実施例1、2および比較例1の第1の遮光層は、可視域において30%程度の透過率を有し、波長600〜700nmで透過率が上昇し始め、波長800nm以上の赤外領域で光をさらに透過する。そして、第1の遮光領域では、第1の遮光層を透過した一部の光が、遮光領域を有するガラス板を置いている黒色の板の表面で反射している。
【0109】
実施例1〜3においては、第1の樹脂組成物を塗布した後に乾燥時間を十分に長くしたので、第1の遮光層と第2の遮光層の間の屈折率を不連続にでき、第2の遮光領域では、第1の遮光層を透過した一部の光が第1の遮光層と第2の遮光層の界面で反射された。その結果、遮光層付きガラス板を黒色の板の上に置くと、第1の遮光領域と第2の遮光領域とで、外光の反射が同程度となったと考えられる。そして、これらの領域の間で色味の違いが生じず、境界が視認されにくくなったと考えられる。
【0110】
一方で、比較例1は、従来どおり、第1の樹脂組成物を塗布した後に乾燥時間が短かったので、第2の遮光領域に相当する領域において、第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物が他層に移行し、層間での混合が起こっていると考えられる。そのため、第1の遮光層と第2の遮光層の境界で屈折率差が生じず、屈折率が連続的に変化し、これらの界面での反射が起こらなかったと考えられる。その結果、遮光領域を有するガラス板を黒色の板の上に置くと、第1の遮光領域と第2の遮光領域に相当する領域とで、外光の反射が同程度とならず、これらの領域の間で色差が生じ、境界が視認されやすくなったと考えられる。
【0111】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2016年12月8日付けで出願された日本特許出願(特願2016−238840)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、表示パネルのカバーガラスとして利用できる。
【符号の説明】
【0113】
1 第1の遮光領域
2 第2の遮光領域
3 遮光領域
4 透明基板
5 第1の遮光層
6 第2の遮光層
7 透光領域
10 遮光領域を有する透明基板
11 表示パネル
12 センサー
14 筐体
20 表示装置
図1
図2
図3