特許第6874831号(P6874831)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6874831剥離紙又は剥離フィルム製造用シリコーン組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6874831
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】剥離紙又は剥離フィルム製造用シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20210510BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20210510BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   C09K3/00 R
   B32B27/00 L
   B32B27/00 101
   C08L83/07
【請求項の数】6
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2019-512370(P2019-512370)
(86)(22)【出願日】2018年2月27日
(86)【国際出願番号】JP2018007275
(87)【国際公開番号】WO2018190012
(87)【国際公開日】20181018
【審査請求日】2019年9月11日
(31)【優先権主張番号】特願2017-78224(P2017-78224)
(32)【優先日】2017年4月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野澤 勇人
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−025135(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/199561(WO,A1)
【文献】 特開2003−261855(JP,A)
【文献】 特開平07−053875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
B32B 27/00
C08L 83/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、アルケニル基含有量が0.001〜0.04mol/100gで、25℃での30質量%トルエン希釈粘度で0.01〜70Pa・sのポリオルガノシロキサン:100質量部、
(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有し、下記平均組成式(1)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1〜30質量部、
1abSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、R1は脂肪族不飽和結合を含有しない一価有機基であり、aは0.1〜2、bは0.1〜2.9で、a+bは1〜3.0の正数であり、1分子中に3個以上のSiH基を有し、25℃の粘度が0.005〜10Pa・sの範囲に入るように選ばれる。)
(C)下記一般式(2)で表されるポリオルガノシロキサン:1〜30質量部、及び
【化1】
(式中、R2は、同一又は異なってもよい、炭素数1〜20の非置換又は置換のアルキル基、水酸基又は炭素数1〜3のアルコキシ基であり、cは2以上、dは1以上、eは0以上、fは0以上の整数で、c+d+e+fは25℃の粘度が0.001〜4Pa・sの範囲に入るように選ばれる。)
(D)白金族金属系触媒:触媒量
を含む付加反応硬化型の剥離紙又は剥離フィルム製造用シリコーン組成物。
【請求項2】
一般式(2)において、c+d+e+fが、25℃の粘度が0.008〜1Pa・sの範囲に入るように選ばれる請求項1記載の剥離紙又は剥離フィルム製造用シリコーン組成物。
【請求項3】
一般式(2)において、c+d+e+fが、25℃の粘度が0.015〜0.5Pa・sの範囲に入るように選ばれる請求項2記載の剥離紙又は剥離フィルム製造用シリコーン組成物。
【請求項4】
一般式(2)において、R2が同一又は異なってもよい炭素数1〜20の非置換又は置換のアルキル基である請求項1〜3のいずれか1項記載の剥離紙又は剥離フィルム製造用シリコーン組成物。
【請求項5】
更に、(E)有機溶剤を含む請求項1〜4のいずれか1項記載の剥離紙又は剥離フィルム製造用シリコーン組成物。
【請求項6】
紙基材又はフィルム基材上に、請求項1〜5のいずれか1項記載のシリコーン組成物の硬化物が形成されてなる剥離紙又は剥離フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離紙又は剥離フィルム製造用シリコーン組成物、及び該シリコーン組成物を用いて得られる剥離紙又は剥離フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
剥離紙や剥離フィルムとして、紙やプラスチックフィルム等の基材の表面にシリコーン系剥離剤が塗布され、架橋反応によって硬化皮膜を形成させて、接着性ないし粘着性物質に対する剥離剤皮膜を用いることが知られている。
【0003】
剥離紙及び剥離フィルムの用途には、両面粘着テープや表裏両面を粘着面とした粘着剤層からなる芯なし粘着シート等のような、粘着剤層の両側に保護用セパレーターを必要とする製品があり、これらの製品は工業用に需要の伸びが見込まれている。このタイプの製品では、取扱い上の利便性を高める目的で、粘着剤層の両側で剥離力の差をつけることが必要となる。また、剥離速度により剥離力が変化することが一般的であり、剥離速度によっては剥離力の差がなくなり剥離不良となることがあるので、剥離速度依存性を制御することが求められる。
【0004】
剥離力の差及び剥離速度依存性を制御する役割は、一般的にセパレーターが担うが、最近の傾向として、広範な粘着剤種に対し、より正確に剥離力の差及び剥離速度依存性を制御することが求められるようになってきた。従来から、低速剥離速度域の剥離力を小さくするためにビニル基含有量が低いポリオルガノシロキサンをベースとして使用することが知られているが、この場合、高速剥離速度域での剥離力は極度に大きくなってしまう。ビニル基含有量が高いポリオルガノシロキサンをベースとして使用した場合、高速剥離速度域での剥離力は小さくすることができるものの、低速剥離速度域の剥離力が大きくなる。このように、低速剥離速度域と高速剥離速度域の剥離抵抗を同時に小さくすることは困難であった。
【0005】
低速剥離速度域と高速剥離速度域の剥離力をともに小さくする方法として、アルケニル基含有ポリオルガノシロキサンとして、ビニル基含有量が高くかつフェニル基を含有するポリオルガノシロキサンと、ビニル基含有量が低いポリオルガノシロキサンとを併用する方法(特開平2−187466号公報)、ビニル基含有量が高いポリオルガノシロキサンと特定のモル比のポリジオルガノハイドロジェンシロキサンを使用し、さらに水酸基を有するポリオルガノシロキサンを配合する方法(特開平6−93183号公報)が知られている。
【0006】
しかし、これらの方法では、上述のような高速剥離速度域の剥離力をある程度小さくすることができるものの十分ではなく、低速剥離速度域の剥離力も十分に小さくすることができるとは言えなかった。特に、後者の方法では、水酸基を有するポリオルガノシロキサンによりシリコーンの移行量が増加し、残留接着率が極端に低下してしまうことがあった。そのため、いずれの方法も実用的ではなかった。
【0007】
また、アリール基含有のポリオルガノシロキサンを併用し、低速剥離速度域と高速剥離速度域の剥離力を同時に小さくする方法として、付加反応型の剥離用組成物に、非反応性のアリール基含有ポリオルガノシロキサンを配合する方法(特開昭60−133051号公報)、末端に水酸基を有し、かつアリール基を含有するポリオルガノシロキサンを配合する方法(特開平3−93858号公報)、水酸基を有する高分子量のポリジメチルシロキサンと、水酸基を有し、かつアリール基を有するポリオルガノシロキサンを併用する方法(特開平8−217980号公報)が知られている。
【0008】
しかしながら、これらのアリール基含有ポリオルガノシロキサンを使用する方法では、高速剥離速度域の剥離力を小さくする効果は確認できるものの、シリコーンの移行量が増加してしまい、残留接着率の低下を抑えることが困難であった。また、特開平8−217980号公報に記載された方法でもシリコーンの移行量の増加と残留接着率の低下が確認された。そのため、これらの方法も実用的ではなかった。
【0009】
このように、従来は、水酸基を有する、又は有しないアリール基含有のポリオルガノシロキサンを使用すること、又は水酸基を有する高分子量のポリジメチルシロキサンを併用する方法にて残留接着率低下の抑制を検討してきた。しかしながら、これらの方法ではシリコーンの移行を抑制できず、残留接着率が低下してしまうのが現状である。
【0010】
また、アリール基含有ポリオルガノシロキサンのように炭化水素の含有率が高いポリオルガノシロキサンを配合する場合、剥離剤組成物との相溶性が悪くなり、ポリエステルフィルムやポリプロピレンフィルム等のプラスチックフィルムに対する密着性が乏しくなる傾向にある。そのため、密着性悪化の抑制も同時に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平2−187466号公報
【特許文献2】特開平6−93183号公報
【特許文献3】特開昭60−133051号公報
【特許文献4】特開平3−93858号公報
【特許文献5】特開平8−217980号公報
【特許文献6】特開2003−192897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、残留接着率の低下やシリコーンの移行量増加を抑制しつつ、基材との密着性に悪影響を与えず、低速及び高速剥離の際の剥離力を小さくすることが可能な剥離紙又は剥離フィルム製造用シリコーン組成物、及び剥離紙又は剥離フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、従来の剥離フィルム製造用のシリコーン組成物に、25℃の粘度が0.001〜4Pa・sのアルケニル基等の脂肪族不飽和基を含有しないポリオルガノシロキサンを必須成分として配合することにより、残留接着率の低下やシリコーンの移行量増加を抑制しつつ、基材との密着性に悪影響を与えることなく低速及び高速剥離の際の剥離力を小さくすることが可能な剥離紙又は剥離フィルム製造用シリコーン組成物を提供することが可能であることを見出した。
【0014】
従って、本発明は、下記に示す剥離紙又は剥離フィルム製造用シリコーン組成物、及び該シリコーン組成物を用いて得られる剥離紙又は剥離フィルムを提供する。
〔1〕
(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、アルケニル基含有量が0.001〜0.04mol/100gで、25℃での30質量%トルエン希釈粘度で0.01〜70Pa・sのポリオルガノシロキサン:100質量部
(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有し、下記平均組成式(1)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1〜30質量部
1abSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、R1は脂肪族不飽和結合を含有しない一価有機基であり、aは0.1〜2、bは0.1〜2.9で、a+bは1〜3.0の正数であり、1分子中に3個以上のSiH基を有し、25℃の粘度が0.005〜10Pa・sの範囲に入るように選ばれる。)
(C)下記一般式(2)で表されるポリオルガノシロキサン:1〜30質量部
【化1】
(式中、R2は、同一又は異なってもよい、炭素数1〜20の非置換又は置換のアルキル基、炭素数6〜20の非置換又は置換のアリール基、炭素数7〜20の非置換又は置換のアラルキル基、又は水酸基もしくは炭素数1〜3のアルコキシ基であり、cは2以上、dは1以上、eは0以上、fは0以上の整数で、c+d+e+fは25℃の粘度が0.001〜4Pa・sの範囲に入るように選ばれる。)
(D)白金族金属系触媒:触媒量
を含む付加反応硬化型の剥離紙又は剥離フィルム製造用シリコーン組成物。
〔2〕
一般式(2)において、c+d+e+fが、25℃の粘度が0.008〜1Pa・sの範囲に入るように選ばれる〔1〕記載の剥離紙又は剥離フィルム製造用シリコーン組成物。
〔3〕
一般式(2)において、c+d+e+fが、25℃の粘度が0.015〜0.5Pa・sの範囲に入るように選ばれる〔2〕記載の剥離紙又は剥離フィルム製造用シリコーン組成物。
〔4〕
一般式(2)において、R2が同一又は異なってもよい炭素数1〜20の非置換又は置換のアルキル基である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の剥離紙又は剥離フィルム製造用シリコーン組成物。
〔5〕
更に、(E)有機溶剤を含む〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の剥離紙又は剥離フィルム製造用シリコーン組成物。
〔6〕
紙基材又はフィルム基材上に、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のシリコーン組成物の硬化物が形成されてなる剥離紙又は剥離フィルム。
【発明の効果】
【0015】
本発明のシリコーン組成物を用いて得られた剥離紙又は剥離フィルムは、残留接着率の低下やシリコーンの移行量の増加を抑制しつつ、密着性に悪影響を与えることなく低速及び高速剥離の際の剥離力を小さくすることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
本発明の剥離紙又は剥離フィルム製造用シリコーン組成物(以下、シリコーン組成物と略すこともある。)は、付加反応硬化型ポリオルガノシロキサンを含み、具体的には、下記(A)〜(D)成分、及び必要により下記(E)成分を含む組成物であり、付加反応によって硬化するものである。
【0017】
[(A)成分]
(A)成分は、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、アルケニル基含有量が0.001〜0.04mol/100gで、25℃での30質量%トルエン希釈粘度で0.01〜70Pa・sのポリオルガノシロキサンであり、下記一般式(3)で表されることが好ましい。
【0018】
【化2】
【0019】
上記式(3)中、R3は同一又は異なってもよい、脂肪族不飽和結合を有しない炭素数1〜20の非置換又は置換の1価炭化水素基、又は炭素数2〜12の酸素原子を介してもよいアルケニル基から選択される基であり、R3の少なくとも2個はアルケニル基である。
【0020】
上記脂肪族不飽和結合を有しない炭素数1〜20の1価炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、シクロヘキシル基等の好ましくは炭素数5〜8のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等の好ましくは炭素数6〜10のアリール基、ベンジル基等の好ましくは炭素数7〜10のアラルキル基、又はこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部をヒドロキシ基、アルコキシ基、ポリエーテル基、アルコキシアルキル基、エポキシ基、ハロゲン原子等で置換したヒドロキシプロピル基、1−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等から選択される炭素数1〜10の1価炭化水素基が挙げられるが、特に剥離性の観点からアルキル基、アリール基であることが好ましく、更にメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基がより好ましい。
【0021】
炭素数2〜12の酸素原子を介してもよいアルケニル基としては、−(CH2n−CH=CH2(nは0又は1〜10の整数)で表される基であることが好ましく、具体的には、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基が挙げられる。これらの中でもビニル基が好ましい。
【0022】
(A)成分のポリオルガノシロキサンの1分子中のアルケニル基は2個以上であり、2個未満では硬化後も未架橋分子が残る可能性が高く、硬化性が低下する。(A)ポリオルガノシロキサン100gあたりのアルケニル基含有量として、0.001〜0.04モルが好ましく、0.002〜0.02モルがより好ましい。この含有量が0.001モル未満では硬化性が低下する場合があり、0.04モルを超えると低速剥離速度域における剥離力が大きくなる場合がある。
【0023】
また、(A)成分の25℃における粘度は、30質量%トルエン溶液で0.01〜70Pa・sであり、30質量%トルエン溶液で0.01〜50Pa・sであることが好ましい。0.01Pa・s未満では組成物としたときの塗工性が十分ではなく、70Pa・sを超えると作業性が低下する。なお、粘度は、回転粘度計により測定することができる(以下同じ)。
【0024】
上記式(3)中のg、h、i、jは、上記粘度の範囲とする整数から選ばれるが、特に、gは2以上、好ましくは2〜300の整数、hは100以上、好ましくは200〜20,000の整数、iは0以上、好ましくは0〜100の整数、jは0以上、好ましくは0〜100の整数で、150≦g+h+i+j≦20,000であり、好ましくは200≦g+h+i+j≦15,000である。
【0025】
(A)成分の具体的な例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中のMe、Vi、Phはそれぞれメチル基、ビニル基、フェニル基を表す。
【0026】
【化3】
(150≦k1≦2,500)
【化4】
(150≦k2≦10,000)
【化5】
(150≦k3≦19,000、2≦k4≦500)
【化6】
(150≦k5≦19,000、1≦k6≦500)
【化7】
(150≦k7≦19,000、1≦k8≦500、1≦k9≦500)
【化8】
(150≦k10≦5,000、0≦k11≦5,000、0≦k12≦500、0≦k13≦100)
【化9】
(150≦k14≦5,000、0≦k15≦5,000、0≦k16≦500、0≦k17≦500、0≦k18≦500、0≦k19≦100、0≦k20≦100)
【0027】
[(B)成分]
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子(以下、「SiH基」ともいう)を少なくとも3個有し、このSiH基と(A)成分中のアルケニル基とが付加反応して硬化皮膜が形成されるものである。かかる(B)成分としては、例えば、下記平均組成式(1)で表されるものが挙げられる。
【0028】
1abSiO(4-a-b)/2 (1)
【0029】
上記式(1)中、R1は脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、シクロヘキシル基等の好ましくは炭素数5〜8のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等の好ましくは炭素数6〜10のアリール基、ベンジル基等の好ましくは炭素数7〜10のアラルキル基、又はこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部をヒドロキシ基、アルコキシ基、ポリエーテル基、アルコキシアルキル基、エポキシ基、ハロゲン原子等で置換したヒドロキシプロピル基、1−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が例示される。その中でもアルキル基、アリール基が好ましく、付加反応速度向上の観点からメチル基であることが更に好ましい。
【0030】
aは0.1〜2、好ましくは0.2〜1.5の正数であり、bは0.1〜2.9、好ましくは0.2〜2の正数であり、a+bは1〜3.0の正数であり、特に0.4〜2.7を満たす。
【0031】
上記式(1)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの例としては、R1HSiO2/2単位(R1は上記と同じ、以下同じ)、HSiO3/2単位、及びR12HSiO1/2単位の少なくとも1種を有し、場合により更にR12SiO2/2単位、R1SiO3/2単位、及びR13SiO1/2単位の少なくとも1種を含んでなるポリマー又はコポリマーが例示されるが、R1HSiO2/2単位又はR12HSiO1/2単位を合計して1分子中に少なくとも2個、特に10〜100個有するものであることが好ましい。また、SiO4/2単位を、本発明の効果が得られる範囲で含有してもよい。
なお、SiH基の含有量は、ポリオルガノシロキサン中0.1〜3モル/100g、特に0.2〜2モル/100gであることが好ましい。また、この(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度は、0.001〜3mPa・s、特に0.005〜1.5mPa・sであることが好ましい。
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、また、それらの混合物であってもよい。
【0032】
(B)成分の具体的な例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中のMe、Phはそれぞれメチル基、フェニル基を表す。
【0033】
【化10】
(2≦p1≦100)
【化11】
(2≦p2≦100、0≦p3≦500)
【化12】
(0≦p4≦100、0≦p5≦500)
【化13】
(2≦p6≦100、0≦p7≦500)
【化14】
(0≦p8≦200、0≦p9≦200、0≦p10≦100、0≦p11≦100)
【0034】
(B)成分の配合量は、適度の架橋密度が得られる点で、(A)成分100質量部に対して0.1〜30質量部であり、0.5〜15質量部であることが好ましく、0.5〜10質量部であることがより好ましい。
更に、このとき、(B)成分の配合量は、(A)成分のアルケニル基1モル又は後述する剥離力コントロール剤を配合する場合は(A)成分と剥離力コントロール剤との合計アルケニル基1モルに対する(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子のモル数が0.5〜10の範囲となる量であることが好ましく、1.0〜5.0の範囲となる量がより好ましい。モル比が0.5より小さいと硬化性が低下する上、基材との密着が悪くなる場合があり、10よりも大きいと重剥離化してしまう場合がある。
【0035】
[(C)成分]
(C)成分は、25℃での粘度が0.001〜4Pa・sのポリオルガノシロキサンであり、下記一般式(2)で表されることが好ましい。
【0036】
【化15】
【0037】
上記式(2)中、R2は同一又は異なってもよい、炭素数1〜20の非置換又は置換のアルキル基、炭素数6〜20の非置換又は置換のアリール基、炭素数7〜20の非置換又は置換のアラルキル基、又は水酸基もしくは炭素数1〜3のアルコキシ基である。
【0038】
上記炭素数1〜20のアルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、シクロヘキシル基等の好ましくは炭素数5〜8のシクロアルキル基、又はこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部をヒドロキシ基、アルコキシ基、ポリエーテル基、アルコキシアルキル基、エポキシ基、ハロゲン原子等で置換したヒドロキシプロピル基、1−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等から選択される炭素数1〜10のアルキル基が挙げられるが、特に剥離性の観点から、アルキル基が好ましく、とりわけメチル基、エチル基、プロピル基がより好ましい。
【0039】
更に、R2としては、上記フェニル基、トリル基等の好ましくは炭素数6〜10のアリール基、ベンジル基等の好ましくは炭素数7〜10のアラルキル基、又はこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部をヒドロキシ基、アルコキシ基、ポリエーテル基、アルコキシアルキル基、エポキシ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられるが、特に剥離性の観点からフェニル基がより好ましい。
【0040】
また、(C)成分の25℃における粘度は0.001〜4Pa・sであり、0.008〜1Pa・sであることが好ましく、0.015〜0.5Pa・sであることが特に好ましい。粘度が0.001Pa・s未満では加熱条件下で(C)成分が揮発し、剥離力が安定しない場合がある。粘度が4Pa・sを超えると、シリコーンの移行量増加につながり残留接着率が低下する場合がある。
【0041】
(C)成分の常圧での沸点が220℃以上であることが好ましい。常圧での沸点が220℃未満では、剥離力が安定せず、経時で変化する場合がある。
【0042】
上記式(2)中のc、d、e、fは、上記粘度の範囲とする整数から選ばれるが、特に、cは2以上、好ましくは2〜30の整数、dは1以上、好ましくは1〜500の整数、eは0以上、好ましくは0〜10の整数、fは0以上、好ましくは0〜10の整数で、3≦c+d+e+f≦500であり、好ましくは4≦c+d+e+f≦200である。
【0043】
(C)成分の具体的な例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中のMe、Et、Phはそれぞれメチル基、エチル基、フェニル基を表す。
【0044】
【化16】
(2≦m1≦350)
【化17】
(1≦m2≦350)
【化18】
(2≦m3≦350)
【化19】
(2≦m4≦350)
【化20】
(2≦m5≦350、1≦m6≦80)
【化21】
(1≦m7≦350、1≦m8≦80)
【化22】
(2≦m9≦350、1≦m10≦80)
【化23】
(2≦m11≦350、1≦m12≦80)
【化24】
(1≦m13≦200、1≦m14≦200、1≦m15≦100、1≦m16≦30)
【化25】
(1≦m17≦100、1≦m18≦100、1≦m19≦15、1≦m20≦15、1≦m21≦15、0≦m22≦10、0≦m23≦10)
【0045】
理論に束縛されるものではないが、剥離剤組成物に25℃の粘度が0.001〜4Pa・sの脂肪族不飽和基を含有しない非反応性ポリオルガノシロキサンを配合することにより、シリコーンの移行量増加と残留接着率の低下を抑制しつつ、密着性に悪影響を与えることなく、低速剥離速度域と高速剥離速度域の剥離力を小さくすることが可能であることを見出している。
【0046】
一般的に非反応性のポリオルガノシロキサンを配合することで、低速剥離速度域及び高速剥離速度域の剥離力が小さくなることが知られている。これは非反応性であるポリオルガノシロキサンが表面に移行することで剥離力が小さくなり、粘着剤にシリコーンが移行することで残留接着率が低下すると考えられる。例えば、アリール基を含有するポリオルガノシロキサンは炭化水素の割合が増加するため、剥離剤組成物との相溶性が悪くなり、剥離力及び残留接着率の低下はより顕著となる。またこの場合、上記ポリオルガノシロキサンが表面に移行すると同時に皮膜と基材の界面にも移行し、基材との密着性の悪化につながる。移行を抑えるためには、ポリオルガノシロキサンに反応性基を導入することが有効である。しかし、ヒドロシリル化反応性基を導入した場合は皮膜中に完全に取り込まれてしまうため、シリコーンの移行は抑えられるが剥離力を小さくする効果も小さくなる。他の官能基として水酸基を導入した場合、水酸基はヒドロシリル化反応性基と比較して反応性に乏しいため、剥離剤のように低温短時間の硬化条件ではシリコーンの移行を防ぐことはできない。
【0047】
ポリオルガノシロキサンの高分子量化もシリコーンの移行を抑えるには有用な手段ではあるが、高分子量化したポリオルガノシロキサンも本質的には硬化皮膜との相溶性が悪いため、シリコーンが移行し残留接着率の低下につながる。
【0048】
本発明の、25℃の粘度が0.001〜4Pa・sのポリオルガノシロキサンを配合した場合、低分子量であるため硬化皮膜との相溶性が良好であるため、硬化皮膜中に留まることができると推測できる。その結果、剥離力は小さくなるもののシリコーンの移行が抑制され、残留接着率の向上につながったと考えられる。また、硬化皮膜との相溶性が良いため、硬化皮膜と基材間への移行が抑えられ密着性が悪化しないと考えられる。
【0049】
[(D)成分]
(D)白金族金属系触媒(付加反応用触媒)は、(A)成分と(B)成分との架橋反応を促進し、硬化皮膜を形成するために用いられる。かかる付加反応用触媒としては、例えば、白金、白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸の各種オレフィン又はビニルシロキサンとの錯体、塩化白金酸−アルコール配位化合物、ロジウム、ロジウム−オレフィンコンプレックス等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0050】
上記付加反応用触媒は、(A)成分及び(B)成分の合計質量に対し、白金族金属の量として10〜1,000ppm(質量比)配合することが十分な硬化皮膜を形成する上で好ましく、前記成分の反応性又は所望の硬化速度に応じて適宜増減させることができる。
【0051】
[(E)成分]
本発明のシリコーン組成物には、(E)有機溶剤を配合することができる。
本発明のシリコーン組成物は、上記(A)〜(D)成分の所定量を配合することによって得られる無溶媒型の組成物とすることもできるが、必要により有機溶剤で希釈した溶剤型組成物として使用することも可能である。有機溶剤で組成物を希釈することで、塗工作業性の改善、塗工皮膜の厚さや表面の仕上がり状態など塗工皮膜状態の改善など実用上の利点が得られる。
【0052】
使用可能な(E)有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系化合物、ヘキサン、ヘプタン、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素系化合物、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン化合物、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル化合物が挙げられるが、シリコーンを溶解させることができる化合物であればいずれのものでもよい。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0053】
(E)成分は任意成分であり、その配合量は任意量とすることができる。即ち、0質量部でもよい。有機溶剤による危険性や安全性の低下が好ましくない場合は、当該(E)成分を配合せず、無溶剤型の剥離紙又は剥離フィルム製造用シリコーン組成物とすることも可能である。(E)成分を配合する場合の配合量は、上記(A)成分100質量部に対して100〜20,000質量部が好ましく、200〜10,000質量部がより好ましい。(E)成分の配合量が100質量部未満では希釈による利点が得られない場合があり、20,000質量部を超えても効果の向上はあまり望めない。
【0054】
本発明のシリコーン組成物は、上記(A)〜(E)成分の所定量を配合することによって得られるが、その他の任意成分を必要に応じて本発明の目的、効果を損なわない範囲で添加することができる。シリコーン系剥離剤組成物に通常使用されるものとして公知のものを通常の配合量で添加することができる。
【0055】
その他の任意成分としては、剥離力コントロール剤が挙げられる。本成分は、処理浴中に残存するSiH基を減少させ剥離力を軽くする、又は架橋密度を高め密着性を向上する目的で用いられる。この目的には、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、アルケニル基含有量が(A)成分のアルケニル基含有量の5〜1,000倍に相当する量で、25℃での粘度が1Pa・s未満又は30質量%トルエン希釈粘度で0.1Pa・s未満の化合物が用いられる。
【0056】
剥離力コントロール剤を配合する場合、その配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜20質量部であり、より好ましくは0.1〜15質量部である。上記範囲で目的とする剥離力を調整することができる。
【0057】
剥離力コントロール剤の具体例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中のMe、Viはそれぞれメチル基、ビニル基を表す。
【0058】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
(0≦n1≦100)
【化34】
(0≦n2≦100、0≦n3≦100、0≦n2+n3≦100)
【化35】
(0≦n4≦100)
【化36】
(0≦n5≦100、0≦n6≦100、0≦n7≦100、0≦n8≦30)
【化37】

(0≦n9≦100、0≦n10≦100、0≦n11≦100、0≦n12≦100、0≦n13≦100、0≦n14≦30、0≦n15≦30)
【0059】
その他の任意成分としては、例えば、ポットライフ延長剤として、各種有機窒素化合物、有機リン化合物、アセチレン系化合物、オキシム化合物、有機クロロ化合物等が公知のものとして使用できる。例えば、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、フェニルブチノール等のアセチレン系アルコール、3−メチル−3−1−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−イン等のアセチレン系化合物、これらのアセチレン系化合物とアルコキシシラン又はシロキサンあるいはハイドロジェンシランとの反応物、テトラメチルビニルシロキサン環状体等のビニルシロキサン、ベンゾトリアゾール等の有機窒素化合物及びその他の有機リン化合物、オキシム化合物、有機クロロ化合物等が挙げられる。
【0060】
ポットライフ延長剤の配合量は、良好なポットライフが得られる量であればよく、一般に(A)成分100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましい。
【0061】
更に、本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じて、その他の任意の成分として公知の酸化防止剤、顔料、安定剤、消泡剤、密着向上剤、増粘剤、シリカ等の無機充填剤を配合することができる。
【0062】
[調製方法]
剥離紙又は剥離フィルム製造用シリコーン組成物の調製は、(A)、(B)、(C)、(E)成分及び任意成分を予め均一に混合した後、(D)成分を使用直前に添加する方法がポットライフの面で望ましい。
【0063】
[剥離紙及び剥離フィルム]
剥離紙及び剥離フィルムは、紙基材又はフィルム基材と、この基材に形成された上記シリコーン組成物の硬化物からなる剥離層とを有するものである。剥離層は上記基材の少なくとも1面に形成されていればよく、片面でも両面でもよい。
【0064】
基材の例としては、ポリエチレンラミネート紙、グラシン紙、上質紙、クラフト紙、クレーコート紙など各種コート紙、ユポなど合成紙、ポリエチレンフィルム、CPPやOPPなどのポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ乳酸フィルム、ポリフェノールフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられる。これらの基材と剥離層の密着性を向上させるために、基材面にコロナ処理、エッチング処理、あるいはプラズマ処理したものを用いてもよい。
【0065】
剥離紙及び剥離フィルムの製造方法は、基材の少なくとも1面、例えば、片面又は両面にシリコーン組成物を塗布する工程と、このシリコーン組成物を乾燥し、硬化させ、剥離層を形成する工程とを含む方法が挙げられる。塗布方法としては、例えば、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、キスコーター、グラビアコーター、ワイヤーバーコーター等による塗工、スクリーン塗工、浸漬塗工、キャスト塗工等の塗工方法が挙げられる。この際、上記シリコーン組成物としては、そのまま、あるいは更に上述した希釈用の溶剤や水で上述した範囲にて希釈したものを用いることができる。塗工量は、特に制限はないが、通常は、固形分として、0.01〜100g/m2が好ましく、0.03〜10g/m2がより好ましい。乾燥する方法としては、加熱することにより揮発成分や溶剤成分を除去する方法が挙げられる。具体的には、熱風乾燥機、IR乾燥機等が挙げられる。あるいはそのまま常温で放置してもよい。硬化方法は常法が採用されるが、硬化温度は、50〜200℃が好ましく、70〜180℃がより好ましい。硬化時間は、1〜120秒が好ましく、5〜90秒がより好ましい。基材の両面に剥離層を作る場合は、基材の片面ずつ硬化皮膜の形成操作を行なうことが好ましい。
【実施例】
【0066】
以下に、実施例及び比較例を示すが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0067】
<使用原料>
[(A)成分]
(A−1)
(CH32(CH2=CH)SiO1/2で表されるジメチルビニルシロキサン単位0.02モル%、(CH3)(CH2=CH)SiO2/2で表されるメチルビニルシロキサン単位が0.58モル%、(CH32SiO2/2で表されるジメチルシロキサン単位が99.4モル%で構成されているポリオルガノシロキサン
30質量%トルエン溶液の25℃での粘度が15Pa・s
アルケニル基含有量=0.008モル/100g
(A−2)
(CH32(CH2=CH)SiO1/2で表されるジメチルビニルシロキサン単位0.02モル%、(CH3)(CH2=CH)SiO2/2で表されるメチルビニルシロキサン単位が0.63モル%、(CH32SiO2/2で表されるジメチルシロキサン単位が96.35モル%、Ph2SiO2/2で表されるジフェニルシロキサン単位が3.0モル%で構成されているポリオルガノシロキサン
30質量%トルエン溶液の25℃での粘度が10Pa・s
アルケニル基含有量=0.008モル/100g
【0068】
[(B)成分]
(B−1)
(CH33SiO1/2で表されるトリメチルシロキサン単位5モル%、(CH3)HSiO2/2で表されるメチルハイドロジェンシロキサン単位95モル%からなるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
25℃における粘度が0.02Pa・s
SiH基含有量=1.6モル/100g
(B−2)
(CH33SiO1/2で表されるトリメチルシロキサン単位2モル%、(CH3)HSiO2/2で表されるメチルハイドロジェンシロキサン単位58モル%、(CH32SiO2/2で表されるジメチルシロキサン単位20モル%、Ph2SiO2/2で表されるジフェニルシロキサン単位20モル%からなるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
25℃における粘度が0.7Pa・s
SiH基含有量=0.64モル/100g
【0069】
[(C)成分]
(C−1)〜(C−8)
一般式(4)で表されるポリオルガノシロキサン。oはC−1〜C−8の粘度を満たす数。
【0070】
【化38】
(C−1)25℃における粘度が0.01Pa・s
(C−2)25℃における粘度が0.02Pa・s
(C−3)25℃における粘度が0.05Pa・s
(C−4)25℃における粘度が0.1Pa・s
(C−5)25℃における粘度が0.5Pa・s
(C−6)25℃における粘度が1Pa・s
(C−7)25℃における粘度が3Pa・s
(C−8)25℃における粘度が10Pa・s
【0071】
(C−9)及び(C−11)
一般式(5)で表されるポリオルガノシロキサン。o1及びo2は、(C−9)及び(C−11)の粘度及びPh基含有率を満たす数。
【0072】
【化39】
(C−9)Ph基含有率が5モル%、25℃における粘度が0.02Pa・s
(C−11)Ph基含有率が5モル%、25℃における粘度が5Pa・s
【0073】
(C−10)及び(C−13)
一般式(6)で表されるポリオルガノシロキサン。oは(C−10)及び(C−13)の粘度を満たす数。
【0074】
【化40】
(C−10)25℃における粘度が0.05Pa・s
(C−13)25℃における粘度が15Pa・s
【0075】
(C−12)
一般式(7)で表されるポリオルガノシロキサン。o1及びo2は(C−12)の粘度及びPh基含有率を満たす数。
【0076】
【化41】
(C−12)Ph基含有率が5モル%、25℃における粘度が50Pa・s
【0077】
(C−14)
流動パラフィン 鹿1級(関東化学株式会社製)
【0078】
[(D)成分]
触媒として、白金−ビニルシロキサン錯体
【0079】
[(E)成分]
トルエンとヘキサンの重量比1:1混合溶剤
【0080】
[任意成分]
ポットライフ延長剤として、3−メチル−1−ブチン−3−オール
【0081】
<実施例1〜10、比較例1〜11>
上記に示す(A)〜(E)成分及び任意成分を原料として使用し、以下の手順で塗工用のシリコーン組成物を調製した。
(A)、(B)、(C)成分を、表の配合比に従いフラスコに取り、(E)3,200質量部、任意成分3質量部を添加し、撹拌して溶解した。
得られた溶液に、(D)成分を(A)成分に対して白金質量換算で100ppmになるよう添加し、撹拌混合することで塗工用のシリコーン組成物を得た。この組成物を用いて後述の方法で塗工品を作製し評価した。
【0082】
<評価>
各例の剥離剤について、硬化性、剥離に要する力(以下、「剥離強度」という。)、残留接着率を以下の方法により評価又は測定した。結果を表1〜3に示す。
【0083】
[硬化性(硬化直後の密着性)]
得られた組成物を、厚さ38μmのPETフィルムに、バーコーターを用いて塗布し、120℃の熱風式乾燥機中で1分間加熱して剥離層を形成した。この際、塗工量は、固形分で0.2g/m2とした。次いで、その剥離層を、指で10回擦った後、くもり及び脱落の有無を目視により観察し、以下の基準で評価した。
A:くもり及び脱落は見られなかった。
B:わずかにくもり及び脱落が見られた。
C:くもり又は脱落が見られた。
【0084】
[剥離強度]
・低速剥離試験
上記硬化性評価と同様にして剥離層を形成し、FINAT法に準拠し以下手順で評価した。
剥離層の表面に幅25mm粘着テープ(Tesa7475テープ、Tesa Tape.Inc製商品名)を貼り、25℃の乾燥機中70g/cm2の荷重をかけ20時間加熱処理した。30分ほど空冷した後、引張試験機(株式会社島津製作所製 AGS−50G型)を用いて180゜の角度、剥離速度0.3m/分でTesa7475テープを引張り、剥離させるのに要する力(N/25mm)を測定した。
【0085】
・高速剥離試験
上記低速剥離試験と同様にし、FINAT法に準拠し以下手順で評価した。
剥離層の表面に幅25mm粘着テープ(Tesa7475テープ、Tesa Tape.Inc製商品名)を貼り、25℃の乾燥機中70g/cm2の荷重をかけ20時間加熱処理した。30分ほど空冷した後、引張試験機(テスター産業株式会社製高速剥離試験機)を用いて180゜の角度、剥離速度60m/分でTesa7475テープを引張り、剥離させるのに要する力(N/25mm)を測定した。
【0086】
[残留接着率]
・Tesa7475テープ
上記硬化性評価と同様にして剥離層を形成し、剥離層の表面に幅25mm粘着テープ(Tesa7475テープ、Tesa Tape.Inc製商品名)を貼り、25℃の乾燥機中70g/cm2の荷重をかけ20時間加熱処理した。その後、剥離層から幅25mm粘着テープを剥がし、その幅25mm粘着テープをステンレス板に貼り付けた。次いで、引張試験機(株式会社島津製作所製 AGS−50G型)を用いて、ステンレス板から幅25mm粘着テープを剥離し、剥離強度Xを測定した。
また、剥離層に貼り合せていない幅25mm粘着テープをステンレス板に貼り付け、引張試験機を用いて、ステンレス板から幅25mm粘着テープを剥離し、剥離強度Yを測定した。
そして、(剥離強度X/剥離強度Y)×100(%)の式より、残留接着率を求めた。
残留接着率が高い程、剥離層の剥離性に優れ、剥離層に貼り合せることによる幅25mm粘着テープの接着力低下が抑制、すなわち皮膜からのブリードアウトが抑制されていることを示す。
【0087】
・ニットー31B
上記硬化性評価と同様にして剥離層を形成し、剥離層の表面にポリエステル粘着テープ(ニットー31B、日東電工株式会社製商品名)を載せ、次いで、その粘着テープの上に1,976Paの荷重を載せて、剥離層にポリエステル粘着テープを貼り合せた。その後、70℃で20時間加熱処理してから、剥離層からポリエステル粘着テープを剥がし、そのポリエステル粘着テープをステンレス板に貼り付けた。次いで、引張試験機(株式会社島津製作所製 AGS−50G型)を用いて、ステンレス板からポリエステル粘着テープを剥離し、剥離強度Xを測定した。
また、剥離層に貼り合せていないポリエステル粘着テープをステンレス板に貼り付け、引張試験機を用いて、ステンレス板からポリエステル粘着テープを剥離し、剥離強度Yを測定した。
そして、(剥離強度X/剥離強度Y)×100(%)の式より、残留接着率を求めた。
残留接着率が高い程、剥離層の剥離性に優れ、剥離層に貼り合せることによるポリエステル粘着テープの接着力低下が抑制、すなわち皮膜からのシリコーン移行が抑制されていることを示す。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
評価の結果、25℃の粘度が0.001〜4Pa・sのポリオルガノシロキサンを配合することにより、シリコーンの移行量増加及び残留接着率の低下を抑制しつつ、低速剥離速度域及び高速剥離速度域の剥離力を同時に小さくすることが可能であると示された。