(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0012】
<用語:樹脂製品>
本発明の樹脂製品の製造方法は、シート状製品、フイルム状製品、ファイバー状製品、ストランド状製品、液体状製品、その他製品の製造に適用することができる。特に、異なった光学特性(例えば、物体色、屈折率、光沢など)を有する複数品種の樹脂製品や、製造条件を変更したときに光学特性が有為に変化する樹脂製品を、同一の製造系列で品種切り替えしたときに、すぐに次の品種の樹脂製品に切替わらず、製造運転が安定するまでの間に光学特性が一定しない規格外の中間製品が発生するような製造工程に適用できる。
前記シート又はフイルム状製品の具体例としては、樹脂シート及び樹脂フイルム等の樹脂製品、並びに製紙、印刷物等を挙げることができる。前記液体状製品の具体例としては、塗料及びコーティング液等を挙げることができる。ファイバー状製品としては、繊維を挙げることができる。その他製品としては、食品及び医薬品等を挙げることができる。また、樹脂製品以外にも、カラー鋼板及び金属圧延シート等の金属製品等にも、本発明の樹脂製品の製造方法を適用することができる。
前記樹脂製品の材料としては、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン−アクリロニトリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂等の全ての樹脂製品に適用することができる。
【0013】
<用語:物体色>
「色」には「明度、彩度、色相」の3つがあり、また色を定量化する指標としては色度(xy座標)、明度+補色(Lab空間座標)等色々ある。色指標の総称としてJIS
Z8722で規定する「物体色」を使用する。
本発明において、物体色とは、光が非発光物体にあたり反射又は非発光物体を透過してきた光を計量して、公知の表色系を用いて定量値に表現した値のことをいう。公知の表色系としては、特に限定されるものではなく、当業者が周知技術にもとづいて、例えば、以下(a)〜(i)に挙げる公知の表色系を用いることができる。
(a)マンセル表色系
(b)オストワルト表色系
(c)CIE 1931色空間を用いたXYZ表色系
(d)Hunter 1948色空間を用いたLab表色系
(e)CIE1964色空間を用いたX
10Y
10Z
10表色系
(f)CIE 1976色空間を用いたL*a*b*表色系
(g)CIE 1976色空間を用いたL*u*v*表色系
(h)色度図の座標xyz表色系、xy表色系、Yxy表色系
(i)UCS色度図のu´v´座標系
【0014】
上述した表色系の中でも、特にCIE 1976色空間のL*a*b*表色系は、比較的安価な市販の測定装置を利用できること、及び、樹脂製品の物体色を測定するときの定量性や再現性に優れることから、好ましい。
【0015】
<用語:CIE 1976色空間のL*a*b*表色系>
CIE 1976色空間のL*a*b*表色系とは、1976年に国際照明委員会(CIE)で規格化され、日本でもJISにおいて採用された規格(CIE 1976、及びJIS Z 8729)をいい、明度(輝度)をL*、色相と彩度を示す色度をクロマティクネス指数a*、b*で表現される表色系をいう。
a*、b*は、色の方向を示しており、a*は赤方向、−a*は緑方向、そしてb*は黄方向、−b*は青方向をそれぞれ示すパラメーターである。a*及び/またはb*の数値が大きくなる程、色が鮮やかになり、a*およびb*が0に近づく程、くすんだ色となる。
【0016】
<用語:2つの樹脂製品の間の物体色の差(色差)>
本発明の工程(2)〜(5)に用いられる、2つの樹脂製品の間の物体色の差(色差:ΔE
*)とは、上述した公知の表色系における2つの樹脂製品の色差を定量値に表現した値のことをいう。
色差を算出する表色系又は色座標は特に限定されるものではなく、上述した(a)〜(i)等の公知の表色系又は色座標系を用いることができる。
また、色差を算出する方法は特に限定されるものではなく、当業者が周知技術に基づいて、例えば、以下(A)〜(I)に挙げる公知の色差式を用いることができる。
(A)L*a*b*表色系におけるΔE
*ab色差式
(B)L*C*h表色系におけるΔE
*ab色差式
(C)L*a*b*表色系におけるCIE1994色差式
(D)L*a*b*表色系におけるCIE2000色差式
(E)ハンターLab表色系におけるハンターの色差式
(F)L*a*b*表色系におけるCMC(l:c)色差式
(G)XYZ表色系におけるBFD(l:c)色差式
(H)MLAB色差式
(I)SVF色差式
【0017】
<用語:L*a*b*表色系におけるΔE
*ab色差式>
前記「(A)L*a*b*表色系におけるΔE
*ab色差式」とは、CIE 1976色空間のL*a*b*表色系において、2つの樹脂製品の間の物体色の色座標L
*、a
*、b
*の差(ΔL
*、Δa
*、Δb
*)を用いて、下記一般式(X−1)で示される色差式にもとづき算出できる。
【0019】
<用語:L*a*b*表色系におけるCIE2000色差式>
前記「(B)L*a*b*表色系におけるCIE2000色差式」とは、2000年に国際照明委員会で規格化され、日本でもJIS(JIS Z 8730、色の表示方法−物体色の色差)において採用された規格であり、2つの樹脂製品の物体色の違いを測定するときに、目視評価と近い結果が得られ、定量性と再現性に優れることから好ましい。
CIE2000色差式は、L*a*b*表色系における2つの樹脂製品の色差値ΔL*、ΔC*、ΔH*に対し、重価係数及びパラメトリック係数を掛け合わせるが、特に低彩度領域のa*軸の目盛補正を行うのが特徴である。このCIE2000色差式にもとづく色差ΔE
00は、下記式(X−2)を用いて算出される。
【0021】
但し、前記式(X−2)において、
R
T:ローテーション関数
K
L、K
C、K
H:パラメトリック係数(K
L:明度係数、K
C:彩度係数、K
H:色相係数)
S
L、S
C、S
H:重価係数
ΔL’、ΔC’、ΔH’:L*a*b*表色系における2つの樹脂製品の色差値であって、下記式(X−3)により算出される。
【0023】
上記式(X−2)において、明度係数K
L、彩度係数K
C及び色相係数K
Hは、色差判定の目的に応じて任意に設定することができる定数である。なお、上記重価係数S
L、S
C、S
Hは、下記式(X−4)により算出される。
【0025】
さらに、上記式(X−2)において、ローテーション関数R
Tは、下記式(X−5)に示す複数の式での算出が定義されている。
【0027】
なお、標準的な条件で物体色が測定されたことを想定し、パラメトリック係数(K
L、K
C、K
H)を、全て「1」として計算することもできる。
【0028】
CIE2000色差式に関する参考文献としては、例えば、G.Sharma著の「The CIEDE2000 Color-Difference Formula:Implementation Notes、Supplementary Test Data、andMathematical Observations’、Color Research and Application、vol.30、No.1(2005)」がある。
【0029】
<樹脂製品の連続製造装置>
本発明の製造方法は、板状の樹脂製品の製造に適用することができる。板状の樹脂製品の製造に使用する、所定の間隔をもって対向して走行する一対のエンドレスベルトからなる重合装置の一具体例を
図1に示す。
上下に配置した一対のエンドレスベルト1はそれぞれ主プーリで張力が与えられ、同一速度で走行するよう駆動される。樹脂製品の原料は、原料タンク3から原料供給装置4を通して、一対のエンドレスベルト1間に供給される。一対のエンドレスベルト1の両側端部付近は弾力性のある二個の軟質樹脂製のガスケット2でシールされる。樹脂製品の原料は、エンドレスベルト1の走行に伴い、温水スプレーや遠赤外線ヒーターなど公知の加熱手段を用いて加熱されて重合を完結して、一対のエンドレスベルト1から送出された後に、図示されていない冷却手段で冷却され、板状の樹脂製品5として取り出される。次いで、切断機構12で切断されて、枚葉状態の板状樹脂製品14とされた後に、搬送ベルト13によって搬送され、必要に応じてマスキングした後に、積載、梱包される。
図1において、符号15は、積載された板状の樹脂製品を示している。
【0030】
<物体色の測定方法>
本発明において、樹脂製品が有する光学特性を測定する方法(例えば、物体色を測定する方法(以下、「測色法」と略す)、屈折率を測定する方法、光沢を測定する方法など)は特に制限されるものではない。当業者が公知技術にもとづき、例えば、下記の測定方法1〜4を用いて測定することができる。
[測定方法1]
樹脂製品の表面に光源から光を入射して、樹脂製品の表面で反射された反射光を後述する測色器を用いて測定、又は前記反射光をスクリーンに投影して得られた反射像を後述する測色器を用いて測定する。
[測定方法2]
樹脂製品に、光源から光を入射して、樹脂製品を透過した透過光を後述する測色器を用いて測定、又は前記透過光をスクリーンに投影して得られた透過像を後述する測色器を用いて測定する。
[測定方法3]
樹脂製品の表面に積分球内より光源から光を入射して、樹脂製品の表面で反射された反射光を積分球内の測色器で測定する。
[測定方法4]
樹脂製品に、回折格子を介して光源から光を入射して、樹脂製品を透過した透過光を用いて測色器で測定する。
【0031】
上記測定方法1〜4により得られた反射光又は透過光から、前記物体色(例えば、前記(a)〜(i)に例示した公知の表色系又は色座標系で示される物体色。)を算出する方法は特に限定されるものではなく、当業者が公知技術にもとづき、例えば、日本工業規格JIS Z 8722(物体色の測定方法)、JIS Z 8723(表面色の比較方法)、JIS Z 8105(色に関する用語)、JIS Z 8120(光学用語)、JIS Z 8721(色の表示方法)などに規定されている測色法を用いることができる。具体的には、下記(1)〜(3)の方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(1)分光測色法(例えば、分光光度計、カラーコンピューターなど。)
(2)刺激値直読測色法(例えば、色差計、色彩輝度計など。)
(3)視感測色法(例えば、視感色彩計、標準色票との比較方法など。)
前記分光測色法は、JIS Z 8722の5の規定に従って測定される。
前記刺激値直読測色は、JIS Z 722の6の規定に従って測定される。
前記視感測色はJIS Z 8721(三属性による色の表示方法)及びJIS Z 8723(表面色の比較方法)などに規定する「標準色票」との比較方法で測定、表示される。
【0032】
<測色器>
本発明で用いられる測色器は、「物体色」を測定できるものであれば特に制限されるもではない。具体的には、後述する光源から出射されて樹脂製品を透過して得られた透過光、又は、後述する光源から出射されて樹脂製品の表面で反射して得られた反射光について、色彩計や測色計(colorimeter)のように三刺激値のような測色に関する量(色刺激値)を測定する計測器、又は、光電色彩計(photo-electric colorimeter)のように光電変換素子で構成される受光器を用いて、総合分光特性を適正に調整した色彩計を挙げることができる。中でも、測色計は測定値の再現性が良好となることから、特に好ましい。
<光源>
前記光源の種類は、特に制限はなく、当業者が周知技術にもとづいて、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ及び高圧水銀灯を用いることができる。具体的な光源の波長は、光源や光学レンズの入手容易性と解像度の観点から、280〜380nm(紫外線領域)、380〜780nm(可視光領域)を利用することができる。光量が安定していることから点光源が好ましい。
【0033】
<演算装置>
本発明において、後述する工程(1)で使用する演算装置について、
図2を用いて説明する。演算装置11は、光学特性測定部8(
図2に示す例では、測色器)から連続的に送信される光学特性(
図2に示す例では、物体色)のデータを受け、後述する特定の演算アルゴリズムにより、前記光学特性(物体色)の収束値を計算して、
図2に図示されていない信号ケーブルを通して、後述する切り替え開始位置印付与機構6に信号を送信する機能を有していればよい。
さらに、前記演算装置11は、後述する取得開始位置印付与機構10に信号を送信する機能を有することができる。
さらに、前記演算装置11は、後述する切り替え開始位置印検出機構7から送信された信号を受信する機能を有することができる。
さらに、前記演算装置11は、後述する輝度計(模様検出カメラ)9から送信された信号を受信する機能を有することができる。
また、演算装置11の構成としては、例えば、CPU等の演算処理部及びメモリやハードディスク等の記憶部を含んで構成されているコンピュータシステムが挙げられる。
【0034】
また、本発明でいう特定の演算アルゴリズムとは、前記光学特性測定部8(測色器)から前記演算装置11に連続的に送信され定量化された光学特性(物体色)のデータを、帰納的、経験的又は経験的手法で処理して光学特性(物体色)の収束値の計算値である光学特性[2]を計算する手法のことをいう。具体的には下記の方法1又は方法2を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
方法1)前記光学特性測定部8(測色器)から連続的に送信される光学特性(物体色)のデータを定量化した後のデータから、多項式関数や対数関数、指数関数などの時間特性をもつ関数にもとづき収束値を計算する手法。
方法2)前記光学特性測定部8(測色器)から連続的に送信される光学特性(物体色)のデータを定量化した後のデータを、複数個取得し、前記複数個のデータを取得した期間における、該データの値の変化量に依存する所定の関係式、及び、該データの値の初期値を設定する。次いで、前記初期値を漸次的に修正しながら、前記初期値と前記所定の関係式にもとづいて算出した光学特性(物体色)のデータと、前記初期値との差が最小となるときの前記光学特性(物体色)のデータを収束値とする手法。
【0036】
<搬送部>
本発明において、後述する工程(1)に用いられる搬送部の実施形態とは、樹脂製品が同一方向に搬送される形態を有していればよく、例えば、ベルト表面上を樹脂製品が一方向に搬送される形態、配管内部を樹脂製品が一方向に搬送される形態、一対の支持体の間を樹脂製品が一方向に搬送される形態、ベルトコンベア上を樹脂製品が一方向に搬送される形態が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
<樹脂製品の製造方法>
本発明の樹脂製品の製造方法は、異なった光学特性(例えば物体色、屈折率、光沢など)を有する複数品種の樹脂製品を、同一の製造系列で、品種切り替えを行い、連続的に製造する、樹脂製品の製造方法である。この製造方法においては、樹脂製品を連続して走行せしめる搬送部において、樹脂製品を、第1樹脂製品から第2樹脂製品に連続的に切り替えた後に、下記の工程(1)〜工程(4)を順次行い、且つ、工程(3)で合格と判定されるまで工程(1)〜工程(3)を繰り返す。
【0038】
<工程(1)>
工程(1)は、前記搬送部上の予め決められた測定位置に設置された光学特性測定部(例えば物体色を測定する測色器、屈折率を測定する屈折率計、光沢を測定する色彩計など)8によって連続的に測定される樹脂製品の光学特性の実測値である光学特性[1](例えば実測値の物体色[1]など)を、前記光学特性測定部8に接続された前記演算装置11に連続的に送信することを含む工程である。
例えば実測値の物体色[1]は、前述した物体色の測定方法に記載したように、樹脂製品に光源からの光を入射して、該樹脂製品を透過して得られた透過光、又は、該樹脂製品の表面で反射して得られた反射光を、前述した測色器を用いて測定して得ることができる。
【0039】
<工程(2)>
工程(2)は、前記演算装置11で、前記光学特性測定部8から連続的に送信された光学特性[1]のデータを定量化し、上述した特定の演算アルゴリズムにより、樹脂製品の光学特性の収束値の計算値である光学特性[2](例えば物体色[2]など)を算出することを含む工程である。
【0040】
<工程(3)>
工程(3)は、前記演算装置11で、光学特性[2](例えば物体色[2]など)と光学特性[1](例えば物体色[1]など)との差である第1の差(例えば色差など)が、予め決められた値a以下となるか否かを判定し、第1の差が値a以下となる場合に合格と判定することを含む工程である。
図5は、樹脂製品上における前記物体色[1]と前記物体色[2]、及び物体色[1]と物体色[2]の差(色差ΔL*)の変化を示すグラフである。
図5では、第1樹脂製品から第2樹脂製品に品種切り替えを開始した、樹脂製品の位置を距離0mとしている。
図5における物体色[1]20とは、
図2に示される光学特性測定部8の一例である測色器により、前記工程(1)で連続的に測定された樹脂製品の物体色の実測値である。
図5における物体色[2]21とは、前記工程(2)において物体色[1]20から算出された物体色の収束値の計算値である。
図5における色差ΔL*22とは、前記物体色[2]と前記物体色[1]との差(色差)である。
前記予め決められた値aは、前記工程(2)で算出された物体色の収束値の計算値(物体色[2])と、前記測色器から連続的に送信される物体色の実測値(物体色[1])との差(色差)の許容値である。前記値aは、前記物体色を計算する方法、前記第2樹脂製品の物体色及び前記色差を計算する方法等にもとづいて、経験的に決定することができる。
前記値aの上限値は特に限定されるものではないが、第1樹脂製品から第2樹脂製品への品種切り替えが不十分な状態で、品種切り替えが完了したと判定することを防ぐために、3.0以下が好ましく、2.0以下がより好ましい。値aの下限値は特に限定されるものではないが、第1樹脂製品から第2樹脂製品への品種切り替えが完了したか否かを短時間で判定でき、品種切り替えの際に生じる切り替えロスを低減できることから、0.5以上が好ましく、1.0以上がより好ましい。
【0041】
<工程(4)>
工程(4)は、工程(3)で合格と判定されたときの樹脂製品上の測定点から、前記第2樹脂製品の取得を開始する工程である。工程(3)で合格と判定されたときの樹脂製品上の測定点から、前記第2樹脂製品の取得を開始することにより、同一の製造系列を用いて光学特性(例えば物体色など)が異なる複数品種の樹脂製品を製造する場合に、作業者の経験の有無によらず、品種切り替えの際に生じる切り替えロスや品質低下を低減することができる。
前記樹脂製品を取得する方法は特に制限されるものではなく、前記光学特性測定部8(例えば測色器など)より下流の位置において、当業者が公知の方法にもとづき、例えば樹脂製品がシート、フイルム及びストランド状のときは回転刃による切断やレーザーカット等の公知の切断方法を用いて樹脂製品を所定のサイズに切り出して取得することができる。
【0042】
さらに、本発明においては、前記工程(3)で合格と判定された直後に、下記工程(5)を行い、且つ、工程(5)で合格と判定されるまで、前記工程(2)〜(3)及び工程(5)を、この順で繰り返すことにより、作業者の経験の有無によらず、品種切り替えの際に生じる切り替えロスや品質低下をより低減することができる。
【0043】
<工程(5)>
工程(5)は、前記工程(3)で合格と判定されたときから、予め決められた一定時間t
1後までの間において、前記光学特性測定部8(例えば測色器など)で連続的に測定され、前記演算装置11に連続的に送信された光学特性[3](光学特性[3]とは、工程(3)で合格と判定された後に光学特性測定部8によって連続的に測定される樹脂製品の光学特性の実測値であり、例えば物体色[3]などである。)のデータを、定量化し、特定の演算アルゴリズムにより、樹脂製品の光学特性の収束値の計算値である光学特性[4](例えば物体色[4]など)を連続的に算出し、前記光学特性[4]と、工程(3)で合格と判定されたときの光学特性[2]との差である第2の差が、予め決められた値b以下となるか否かを判定し、第2の差が値b以下となる場合に合格と判定することを含む工程である。
【0044】
図6は、工程(3)で合格と判定されたときの物体色[2]と前記物体色[4]、及び前記物体色[2]と前記物体色[4]の差(色差、ΔL*)の変化を示すグラフである。
図6では、前記工程(3)で合格と判定されたときの樹脂製品の位置を距離0mとしている。
図6における物体色[2]23とは、工程(3)で合格と判定されたときの物体色[2]のことである。
図6における物体色[4]24とは、本工程(5)で算出された物体色の収束値の計算値(物体色[4])のことである。
図6における色差(ΔL*)25とは、前記物体色[4]と前記物体色[2]との差(色差)のことである。
【0045】
工程(3)で一旦合格と判定されたとしても、その後に、第1樹脂製品から第2樹脂製品への切替えが不十分な部分が混入したり、第2樹脂製品の厚みが変動して、第2樹脂製品の物体色が変動するおそれがある。
そこで、
工程(3)で合格と判定された直後に、下記工程(5)を行い、且つ、工程(5)で合格と判定された場合には、工程(3)で合格と判定されたときから予め決められた一定時間t
1後までの間において、
前記測色器で連続的に測定され、工程(2)に従って算出された前記物体色の収束値の計算値(物体色[4])と、
工程(3)で合格と判定されたときの物体色[2]との色差が、予め決められた値b以下を維持していれば、樹脂製品の製造において、同ロット内での色の不均一さが改善されるので、同一の製造系列を用いて物体色が異なる複数品種の樹脂製品を製造する場合に、作業者の経験の有無によらず、品種切り替えの際に生じる切り替えロスや品質低下を低減できる。
前記特定の演算アルゴリズムとは、前記工程(3)で合格と判定されたときから、予め決められた一定時間t
1後までの間において、前記測色器から前記演算装置11に連続的に送信され、定量化された物体色[3]のデータを、帰納的、経験的又は経験的手法で処理して該物体色データの収束値の計算値を計算する手法のことをいい、前記工程(2)で開示したのと同様の演算アルゴリズムを用いることができる。
前記値bは、第1樹脂製品から第2樹脂製品への品種切り替えが十分に完了したか否かを判定するための許容値であり、前記物体色を計算する方法、前記第2樹脂製品の物体色及び前記色差を計算する方法等にもとづいて決定することができる。
【0046】
さらに、本発明においては、前記工程(5)で合格と判定された後に、下記工程(6)を合格と判定される回数がn
1回に達するまで工程(6)を繰り返すことにより、作業者の経験の有無によらず、品種切り替え後の樹脂製品に生じる物体色の斑をさらに低減することができる。
<工程(6)>
工程(6)は、前記工程(5)で合格と判定された後に、予め決められた一定時間t
2の間に、前記光学特性測定部8(例えば測色器)で連続的に測定され、前記演算装置11に連続的に送信された光学特性[5](例えば物体色[5])のデータを、定量化し、特定の演算アルゴリズムにより、光学特性の収束値の計算値である光学特性[6](例えば物体色[6])を連続的に算出する。前記光学特性[5](例えば物体色[5])と前記光学特性[6](例えば物体色[6])との差である第3の差(例えば色差)が、予め決められた値c以下となるか否かを判定し、第3の差が値c以下となる場合に合格と判定することを含む工程である。
但し、t
2=t
1/n
1(n
1は2以上50以下の整数)、c=b/n
2(n
2は2以上50以下の整数)である。光学特性[5]とは、工程(5)で合格と判定された後に光学特性測定部8によって連続的に測定される樹脂製品の光学特性の実測値である。
【0047】
前記特定の演算アルゴリズムとは、前記工程(5)で合格と判定された後に、予め決められた一定時間t
2の間に、前記光学特性測定部8(例えば測色器)から前記演算装置11に連続的に送信され、定量化された光学特性[5](例えば物体色[5])のデータを、帰納的、経験的又は経験的手法で処理して光学特性の収束値の計算値である光学特性[6](例えば物体色[6])を計算する手法のことをいい、前記工程(2)で開示したのと同様の演算アルゴリズムを用いることができる。
前記n
1の下限値が2以上であれば、工程(6)の判定の際に生じる切り替えロスを低減できる。一方、前記n
1の上限値が50以下であれば、品種切り替え後の樹脂製品について例えば物体色の斑を工程(5)よりも低減できるとともに、前記演算装置11において計算量が増加すること抑制できるので工程(6)の判定速度を高速に維持できる。
前記値cは、第1樹脂製品から第2樹脂製品への品種切り替えが十分に完了したか否かを判定するための許容値であり、前記n
2の下限値が2以上であれば、品種切り替え後の樹脂製品について例えば物体色の斑を工程(5)よりも低減することができ、上限値が50以下であれば、例えば物体色の斑がより小さい樹脂製品を短時間で取得することができ、工程(6)の判定の際に生じる切り替えロスを低減できる。
【0048】
さらに、本発明においては、前記工程(6)で合格と判定された直後に、後述する工程(7)を行い、且つ、該工程(7)で合格と判定されるまで、前記工程(6)及び工程(7)をこの順で繰り返すことにより、作業者の経験の有無によらず、品種切り替えの際に生じる切り替えロスや品質低下を、さらに低減することができる。
【0049】
<工程(7)>
工程(7)は、工程(6)で合格と判定された直後に、工程(6)で合格と判定された樹脂製品の少なくとも一部の領域に面状光源又は線状光源からの光を入射して、前記領域を透過して得られた透過光の輝度を輝度計9を用いて測定し、前記領域内における輝度の最低値を輝度の最高値で割った値を輝度均一度として、該輝度均一度が予め決められた値d以下となるか否かを判定することを含む工程である。
なお、本工程(7)においては、輝度を用いることに限定されるものではなく、樹脂製品を透過した透過光の照度を、照度計を用いて測定して、後述する輝度均一度の評価方法に準じて照度の均一度を算出し、その値が予め決められた値以下となるか否かを判定してもよい。
前記工程(1)において、光源として点光源又は樹脂製品の面積より小さい面積の面光源を用いて樹脂製品の物体色を測定するときに、同一ロットの樹脂製品中に色むらや厚み斑が含まれると、工程(3)、工程(5)及び工程(6)の判定で合格とされるおそれがある。そこで、工程(7)において、面状光源又は線状光源を用いて測定した輝度均一度が予め決められた値以下でなるか判定することにより、上述した問題を解決することができる。
図2に示すように、輝度計9は、前記樹脂製品の走行方向に対して、前記光学特性測定部8(例えば測色器)の下流の位置に設けられており、図示されていない前記面光源装置又は線状光源からの光を、板状の樹脂製品5に入射して、透過して得られた透過光の輝度を輝度計9で測定する。
輝度均一度の具体的な測定方法は、後述する輝度均一度の評価方法に記載する。前記光源としては面光源装置を、輝度計としてはマルチ輝度計や模様検出用カメラを用いることができる。樹脂製品の走行方向に対して垂直方向についてみたとき、前記面状光源又は線状光源の長さは樹脂製品の幅長さに対して60%以上100%以下の範囲とすることができる。また、前記輝度計9は、前記樹脂製品の走行方向に対して、前記光学特性測定部8(例えば測色器)より下流側の位置に配設することができる。
【0050】
さらに、本発明においては、前記工程(1)で、樹脂製品上の測定位置においてJIS Z 8722に準じて前記光学特性測定部8(例えば測色器)により連続的に測定された光学特性[1](例えば物体色[1])をE
1(x)とし、前記工程(2)で第1樹脂製品から第2樹脂製品に切り替えたときに、樹脂製品上の測定位置においてJIS Z 8722に準じて前記光学特性測定部8(例えば測色器)により測定された樹脂製品の光学特性(例えば物体色)をE
01(x)として、下記(式1)で樹脂製品上の測定位置における第4の差(例えば色差)ΔE
1(x)を算出する。前記第4の差(例えば色差)ΔE
1(x)は、工程(2)の光学特性(例えば物体色)と工程(1)の光学特性[1](例えば物体色[1])との差(例えば色差)である。
ΔE
1(x)=E
1(x)―E
01(x) (式1)
【0051】
次いで、得られた第4の差(例えば色差)ΔE
1(x)を用いて、下記(式2)より工程(2)における光学特性[2](例えば物体色[2])をE
1、c(x)として算出する。前記E
1、c(x)は、前記工程(2)で算出された光学特性の収束値の計算値である光学特性[2](例えば物体色[2])である。
E
1、c(x)=ΔE
1(x)−〔ΔE
1(x)’〕
2×/ΔE
1(x)’’ (式2)
前記式(式2)中、ΔE
1(x)’は前記第4の差(例えば色差)ΔE
1(x)を測定位
置について一次微分したものであり、ΔE
1(x)’’は前記第4の差(例えば色差)ΔE
1(x)を測定位
置について二階微分したものである。
【0052】
次いで、得られたE
1、c(x)を用いて、工程(3)における第1の差(例えば色差)が、下記(式3)により△E
00Bとして算出される。前記△E
00Bは、前記工程(2)で算出された光学特性の収束値の計算値である光学特性[2](例えば物体色[2])と、前記光学特性測定部8(例えば測色器)から連続的に送信される光学特性[1](例えば物体色[1])との差(例えば色相の差)の指標値である。
△E
00B=E
1、c(x)―E
1(x) (式3)
つまり上述した(式1)から(式3)が、工程(2)において用いられる演算アルゴリズムに相当する。
【0053】
図7は、請求項5の樹脂製品の光学特性(例えば物体色)を示すグラフであって、前記工程(3)における第1の差(例えば色差)△E
00Bの変化を示すグラフである。
図7では、第1樹脂製品から第2樹脂製品に品種切り替えを開始した、樹脂製品の位置を距離0mとしている。
【0054】
図9は、光学特性測定部8により連続的に測定された光学特性[1]と、工程(2)で算出された光学特性の収束値の計算値である光学特性[2]との差である第1の差を説明するための図である。
図9の縦軸は、光学特性[1](例えば物体色)および光学特性[2](例えば物体色)を示している。
図9の横軸は、第1樹脂製品から第2樹脂製品への切替開始位置からの距離を示している。
図9中の双方向矢印は、光学特性[1]と光学特性[2]との差である第1の差を示している。第1の差が、上述した値a以下となる場合に、上述した工程(3)において合格と判定される。
【0055】
さらに、本発明においては、前記工程(5)において、樹脂製品上の測定位
置においてJIS Z 8722に準じて前記光学特性測定部8(例えば測色器)により連続的に測定された光学特性[3](例えば物体色[3])をE
2(x)とし、前記工程(3)で第1の差(例えば色差)が前記予め決めた値aとなったときの光学特性(例えば物体色)をE
02(x)として、下記(式4)で樹脂製品上の測定位
置における第5の差(例えば色差)ΔE
2(x)を算出し、
ΔE
2(x)=E
2(x)―E
02(x) (式4)
次いで、下記(式5)で前記工程(5)における光学特性[4](例えば物体色[4])をE
2、c(x)として算出し、
E
2、c(x)=ΔE
2(x)−〔ΔE
2(x)’〕
2×/ΔE
2(x)’’ (式5)
((式5)中、ΔE
2(x)’は前記第5の差(例えば色差)ΔE
2(x)を測定位
置について一次微分したものであり、ΔE
2(x)’’は前記第5の差(例えば色差)ΔE
2(x)を測定位
置について二階微分したものである。)
次いで、前記工程(5)における第2の差(例えば色差)を、下記(式6)
△E
00C=E
2、c(x)―E
02(x) (式6)
により算出される差(例えば色差)△E
00Cとして、前記工程(5)における差(例えば色差)△E
00Cが予め決められた値b以下となるか否かを判定することができる。
つまり上述した(式4)から(式6)が、工程(5)において用いられる演算アルゴリズムに相当する。
【0056】
図8は、請求項6の樹脂製品の光学特性(例えば物体色)を示すグラフであって、前記工程(5)における差(例えば色差)△E
00Cの変化を示すグラフである。
図8では、前記工程(3)で合格と判定されたときの樹脂製品の位置を距離0mとしている。
【0057】
前記差(例えば色差)△E
00Cは、前記工程(3)で合格と判定されたときから、予め決められた一定時間t
1後までの間に、前記光学特性測定部8(例えば測色器)で連続的に測定され、定量化された光学特性[3](例えば物体色[3])から算出された、光学特性の収束値の計算値である光学特性[4](例えば物体色[4])と、工程(3)で合格と判定されたときの光学特性[2](例えば物体色[2])との差である第2の差(例えば色差)であり、樹脂製品の製造において、同ロット内での色の不均一さを示す指標値であり、差(例えば色差)△E
00Cを用いて判定を行うことにより、同ロット内での色の不均一さが改善されるので、同一の製造系列を用いて光学特性(例えば物体色)が異なる複数品種の樹脂製品を製造する場合に、作業者の経験の有無によらず、品種切り替えの際に生じる切り替えロスや品質低下を低減できる。
【0058】
前記値bの上限値は特に限定されるものではないが、第1樹脂製品から第2樹脂製品への品種切り替えが不十分な状態で、品種切り替えが完了したと判定することを防ぐために、1.5以下が好ましく、1.0以下がより好ましい。値bの下限値は特に限定されるものではないが、第1樹脂製品から第2樹脂製品への品種切り替えが完了したか否かを短時間で判定でき、品種切り替えの際に生じる切り替えロスを低減できることから、0.5以上が好ましい。
【0059】
さらに、本発明においては、前記工程(6)において、樹脂製品上の測定位
置においてJIS Z 8722に準じて前記光学特性測定部8(例えば測色器)により連続的に測定された光学特性[5](例えば物体色[5])をE
3(x)とし、前記工程(5)で第2の差(例えば色差)が前記予め決めた値bとなったときの光学特性(例えば物体色)をE
03(x)として、下記(式7)で樹脂製品上の測定位
置における第6の差(例えば色差)ΔE
3(x)を算出し、
ΔE
3(x)=E
3(x)―E
03(x) (式7)
次いで、下記(式8)で前記工程(6)における光学特性[6](例えば物体色[6])をE
3、c(x)として算出し、
E
3、c(x)=ΔE
3(x)−〔ΔE
3(x)’〕
2×/ΔE
3(x)’’ (式8)
((式8)中、ΔE
3(x)’は前記第6の差(例えば色差)ΔE
3(x)を測定位
置について一次微分したものであり、ΔE
3(x)’’は前記第6の差(例えば色差)ΔE
3(x)を測定位
置について二階微分したものである。)
次いで、前記工程(6)における第3の差(例えば色差)を、下記(式9)
△E
00d=E
3、c(x)―E
03(x) (式9)
により算出される差(例えば色差)△E
00dとすることにより、同ロット内での色の不均一さが改善されるので、同一の製造系列を用いて光学特性(例えば物体色)が異なる複数品種の樹脂製品を製造する場合に、作業者の経験の有無によらず、品種切り替えの際に生じる切り替えロスや品質低下を低減できる。
つまり上述した(式7)から(式9)が、工程(6)において用いられる演算アルゴリズムに相当する。
前記値cの上限値は特に限定されるものではないが、第1樹脂製品から第2樹脂製品への品種切り替えが不十分な状態で、品種切り替えが完了したと判定することを防ぐために、0.5以下が好ましい。値cの下限値は特に限定されるものではないが、第1樹脂製品から第2樹脂製品への品種切り替えが完了したか否かを短時間で判定でき、品種切り替えの際に生じる切り替えロスを低減できることから、0.05以上が好ましい。
【0060】
<切り替え開始位置印を付与する機構>
本発明においては、第1樹脂製品から第2樹脂製品に品種切り替えしたときに、前記樹脂製品の走行方向に対して、前記光学特性測定部(例えば測色器)より上流側の位置で、前記搬送部の一部又は樹脂製品の一部に、前記品種切り替えを開始した位置を示す切り替え開始位置印を付与する機構(以下、「切り替え開始位置印付与機構」という。)を配設することができる。
【0061】
前記切り替え開始位置印付与機構において、前記切り替え開始位置印を付与する手段(以下、「切り替え開始位置印付与手段」という。)の形態は特に限定されるものではなく、前記搬送部又は樹脂製品を損傷することなく、作業者が視認しやすいように、切り替え開始位置印を付与することができればよい。具体的には、レーザーマーカー法、インクマーカー法及びシール法等の公知の方法を用いることができる。
図2に示すように、切り替え開始位置印付与機構6は、前記樹脂製品の走行方向に対して、エンドレスベルト1の上流の位置に設けられている。
図3−1は、切り替え開始位置印付与機構6の一実施形態を示す概略図であり、切り替え開始位置印付与機構6は切り替え開始位置印付与手段として、エアシリンダ16で駆動される印字装置(ペン)17を備えている。第1樹脂製品から第2樹脂製品への品種切り替えを開始する位置に関する情報(信号)が、図示されていない演算装置11から切り替え開始位置印付与機構6に送信され、印字装置(ペン)17は、ガスケット2の所定部位に前記品種切り替えを開始する位置を示す切り替え開始位置印を付与する。
【0062】
<切り替え開始位置印を検出する機構>
本発明においては、前記切り替え開始位置印を検出する機構(以下、「切り替え開始位置印検出機構」という。)を、前記樹脂製品の走行方向に対して、前記切り替え開始位置印付与機構6より下流側で且つ前記光学特性測定部8(例えば測色器)と並列又は前記光学特性測定部8(例えば測色器)より上流側の位置に配設することができる。
前記切り替え開始位置印検出機構の形態は特に限定されるものではなく、例えば、前記切り替え開始位置印に光源からの光を照射し、その反射光を検知して、例えば反射率の変化等から前記切り替え開始位置印の有無を検出する光量検知センサーを挙げることができる。
図2に示すように、切り替え開始位置印検出機構7は、前記樹脂製品の走行方向に対して、エンドレスベルト1の下流の位置に設けられている。
図3−2は、切り替え開始位置印検出機構の一実施形態を示す概略図であり、図示されていないレーザーマーカーからの出射光をガスケット2に照射して、その反射光を、切り替え開始位置印検出機構7(例えば、光量検知センサー)で検出することにより、ガスケット2の所定部位に付与された切り替え開始位置印を検知する。前記切り替え開始位置印検出機構7は、切り替え開始位置印が検出された位置を示す信号を前記演算装置11に送信することができる。
【0063】
<取得開始位置印を付与する機構>
さらに本発明においては、前記樹脂製品の走行方向に対して、前記光学特性測定部8(例えば測色器)より下流側の位置に、前記演算装置11からの信号を受けて、第2樹脂製品の取得開始位置を示す取得開始位置印を付与する機構(以下、「取得開始位置印付与機構」という。)を配設することができる。
前記取得開始位置印付与機構において、前記取得開始位置印を付与する手段(以下、「取得開始位置印付与手段」という。)は特に制限されるものではなく、切り替え開始位置印付与手段と同様の方法を用いることができる。
図2に示すように、取得開始位置印付与機構10は、前記樹脂製品の走行方向に対して、光学特性測定部8(例えば測色器)の下流の位置に設けられている。
図4は、取得開始位置印付与機構の一実施形態を示す概略図であり、取得開始位置印付与機構10は取得開始位置印付与手段として、エアシリンダ16で駆動される印字装置(ペン)17を備えている。前記工程(5)において工程(3)で合格と判定された樹脂製品上の測定点に関する情報が、演算装置11から取得開始位置印付与機構10に送信され、印字装置(ペン)17は、ガスケット2の所定部位に第2樹脂製品の取得開始位置を示す取得開始位置印を付与する。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本実施例においては、
図1及び
図2に示す樹脂製品の連続製造装置を用いて、板状の樹脂製品を製造した。前記連続製造装置においては、エンドレスベルト(1)の下流に、切り替え開始位置印検出機構(7)、光学特性測定部(測色器)(8)、輝度計(9)、取得開始位置印付与機構(10)及び演算装置(11)を設置した。また、後述する評価方法を用いて、製造途中の樹脂製品又は最終的に得られた樹脂製品を評価した。
【0065】
<評価方法>
実施例及び比較例における評価は以下の方法により実施した。
(1)輝度均一度
製造途中の板状の樹脂製品について、以下の方法で輝度均一度を求めた。
面光源装置(アイ・テックシステム社製、製品名:TMN50×60−22WD)のの上部平面の中央部を中心とする88mm×66mmの領域を光出射面とした。前記面光源装置を、走行する板状の樹脂製品の下方10cmの位置に、面光源装置の上部平面(光出射面)と板状の樹脂製品の下部平面が平行になるように配設した。また、前記板状の樹脂製品の下部平面と対向する面(上部平面)の上方10cmの位置に、光学特性測定部(測色器)(8)として平板状のマルチ輝度計(SENTECH社製、製品名:STC−MC202USB)を前記マルチ輝度計の上部平面(受光面)と、板状の樹脂製品の上部平面が平行になるように配設した。
前記マルチ輝度計の受光面に0.1375mmピッチで計307200箇所(=640ドット×480ドット)設けた測定点において、前記面光源装置からの出射光を板状の樹脂製品に入射して、透過して得られた透過光の輝度(cd/m
2)を測定した。測定に際しては、外乱光の影響を避けるために、遮光用の黒色アクリル板(厚み2mm)製のカバーを前記マルチ輝度計を覆うように設置した。前記307200箇所における輝度の測定値において、輝度の最小値を「C1」とし、輝度の最大値を「C2」としたとき、下記の計算式で求められる値を輝度均一度とした。
輝度均一度(%)=(C1/C2)×100
【0066】
(2)切替ロス長
樹脂製品の連続製造装置(
図2)の取得開始位置印付与機構(10)の直後において、ガスケット上に切り替え開始位置印が付与された位置(品種切り替えを開始した位置)を起点として1mおきに、板状の樹脂製品にマジックで印をつけた。ガスケット上に取得開始位置印が付与された位置(製品取得を開始する位置)が前記取得開始位置印付与機構を追加した後に、前記切り替え開始位置印と前記取得開始位置印の間の樹脂製品を回収し、前記切り替え開始位置印と前記取得開始位置印の間の長さを測定して、これを切替ロス長とした。
(3)目視評価
樹脂製品の連続製造装置(
図2)を用いて製造された板状の樹脂製品について、目視評価で色斑の有無を判定した。
取得開始位置印が付与された位置(製品取得を開始する位置)が前記取得開始位置印付与機構(10)を追加した後に、前記取得開始位置印を起点として長さ1000mの区間について、切断機構(12)で、長さ1mおきに切断して、枚葉状態の板状樹脂製品(14)を取得した。得られた樹脂製品について、樹脂製品の取得を開始した直後と、中間付近(前記取得開始位置印の起点から500m付近)と、最後(前記取得開始位置印の起点から1000m付近)の樹脂製品を抜き取り、横に並べて目視評価により色斑の有無を判定した。
色斑の有無を判定するにあたり、色斑(物体色の斑)の程度が合格とされた既知の板状の樹脂製品を標本と、上記樹脂製品の3サンプル(樹脂製品の取得を開始した直後と、中間付近(前記起点から500m付近)と、最後(前記起点から1000m付近)の3点)とを、目視評価でそれぞれ比較観察して、3サンプル全てについて色斑が小さいと判定された場合は「合格」、1サンプルでも色斑が大きいと判定された場合は「不合格」とした。
【0067】
[実施例1]
樹脂製品の連続製造装置(
図2)を用いて板状の樹脂製品を製造するにあたり、第1樹脂製品から第2樹脂製品への品種切り替えを実施した。
第1樹脂製品としては、酸化チタンを0.2質量%含有するメタクリル酸メチル樹脂板(厚み3mm)を用いた。第2樹脂製品としては、通常のメタクリル酸メチル樹脂板(PMMA樹脂板)(厚み3mm)を用いた。すなわち、半透明な樹脂製品から、透明な樹脂製品への品種切り替えを実施した。
品種切り替えの判定には、請求項1〜7に記載の方法を採用した。請求項1〜4の判定に用いる値a〜値dについては、色斑(物体色の斑)の程度が合格とされた既知の樹脂製品にもとづいて予め決めた値を採用した。
前記第1樹脂製品から前記第2樹脂製品への品種切り替えを実施した後、上述した方法に従って切替ロス長を測定した。また、得られた樹脂製品の3サンプル(樹脂製品の取得を開始した直後と、中間付近(前記起点から500m付近)と、最後(前記起点から1000m付近)の3点)について、上述した方法に従って目視評価を行った。
切替ロス長は12.5mであった。また目視評価の結果は「合格」であった。
【0068】
[実施例2]
第2樹脂製品として、カーボンブラックを0.1質量%含有するPMMA樹脂板(厚み3mm)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、第1樹脂製品から第2樹脂製品への品種切り替えを実施した。すなわち、半透明な樹脂製品から、いわゆるスモーク調の樹脂製品への品種切り替えを実施した。得られた結果を表1に示した。
【0069】
【表1】
【0070】
[実施例3]
第1樹脂製品として通常のPMMA樹脂板(厚み3mm)を、また第2樹脂製品としてスチレン系樹脂微粒子を1.0質量%含有するPMMA樹脂板(厚み3mm)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、第1樹脂製品から第2樹脂製品への品種切り替えを実施した。すなわち、透明な樹脂製品から、不透明な樹脂製品への品種切り替えを実施した。
得られた結果を表1に示した。
【0071】
[実施例4]
第1樹脂製品としては、通常のPMMA樹脂板(厚み3mm)を、また第2樹脂製品としては、酸化チタンを0.2質量%含有するPMMA樹脂板(厚み3mm)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、第1樹脂製品から第2樹脂製品への品種切り替えを実施した。すなわち、透明な樹脂製品から、半透明な樹脂製品への品種切り替えを実施した。得られた結果を表1に示した。
【0072】
[比較例1]
品種切り替えの判定を、請求項1〜7に記載の方法を用いず、樹脂製品の連続製造装置(
図2)の取得開始位置印付与機構(10)の直後において、作業者が目視で品種切り替えの判定をした以外は、実施例1と同じ条件で樹脂製品を製造した。得られた結果を表1に示した。
【0073】
[比較例2]
品種切り替えの判定を、比較例1と同様に作業者が目視で品種切り替えの判定をした以外は、実施例2と同じ条件で樹脂製品を製造した。得られた結果を表1に示した。
【0074】
[比較例3]
品種切り替えの判定を、比較例1と同様に作業者が目視で品種切り替えの判定をした以外は、実施例3と同じ条件で樹脂製品を製造した。得られた結果を表1に示した。
【0075】
[比較例4]
品種切り替えの判定を、比較例1と同様に作業者が目視で品種切り替えの判定をした以外は、実施例4と同じ条件で樹脂製品を製造した。得られた結果を表1に示した。
【0076】
比較例1においては、品種切り替えの切替ロス長が実施例1より長かった。
比較例2については、品種切り替えの切替ロス長が実施例2より長かった。
比較例3については、品種切り替えの切替ロス長が実施例3より長かった。
比較例4については、品種切り替えの切替ロス長が実施例4より長かった。さらに、作業者が目視で品種切り替えの判定を「合格」と判断した後に、樹脂製品の取得を開始したが、得られた樹脂製品に色斑(物体色の斑)の程度が不合格となる部分が含まれていた。