特許第6874883号(P6874883)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6874883
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】セメントクリンカ及びセメント組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 7/02 20060101AFI20210510BHJP
【FI】
   C04B7/02
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-58520(P2020-58520)
(22)【出願日】2020年3月27日
【審査請求日】2020年7月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 準
(72)【発明者】
【氏名】山田 曜
(72)【発明者】
【氏名】山縣 亨介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友樹
(72)【発明者】
【氏名】那須 英由希
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−190751(JP,A)
【文献】 特開2016−190752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00− 32/02
C04B 40/00− 40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al、Fe、MgO、MnO及びZnOを含み、前記Alの含有量が2.00質量%以上10.00質量%以下であり、前記Feの含有量が1.00質量%以上10.00質量%以下であり、前記MgOの含有量が0.05質量%以上5.0質量%以下であり、前記MnOの含有量が0.01質量%以上0.80質量%以下であり、前記ZnOの含有量が0.01質量%以上0.0685質量%以下であり、
下記式(1)を満たすセメントクリンカ。
【数1】

式中、WAl2O3はセメントクリンカ全量に対するAlの含有量(質量%)を表し、WFe2O3はセメントクリンカ全量に対するFeの含有量(質量%)を表し、WMgOはセメントクリンカ全量に対するMgOの含有量(質量%)を表し、WMnOはセメントクリンカ全量に対するMnOの含有量(質量%)を表し、WZnOはセメントクリンカ全量に対するZnOの含有量(質量%)を表す。
【請求項2】
ボーグ式で算出された3CaO・SiOの割合が50.0質量%以上、75.0質量%以下であり、
ボーグ式で算出された2CaO・SiOの割合が5.0質量%以上、25.0質量%以下であり、
ボーグ式で算出された3CaO・Al及び4CaO・Al・Feの合計の割合が15.0質量%以上、22.0質量%以下である請求項1に記載のセメントクリンカ。
【請求項3】
前記3CaO・SiOにおけるAlの含有量(Al_CS)が1.000質量%以上である請求項2に記載のセメントクリンカ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のセメントクリンカと、石膏とを含むセメント組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントクリンカ及びセメント組成物に関し、特に普通ポルトランドセメントに関する。
【背景技術】
【0002】
セメント組成物の色調は、それを用いたモルタルやコンクリート製品の色調に影響を与え、セメント組成物のLab色空間のb値が大きくなるほどそれを用いたモルタルやコンクリート製品のb値も大きくなり、黄味をおびる。
従来、b値はセメント組成物のもととなるセメントクリンカの主要成分であるAl、FeやMgOの含有量の影響を受け大きくなり、また微量成分である、NaO、TiO、MnO及びCrの影響も受けることが知られていた(非特許文献1)。
【0003】
一方で、近年セメント業界においては、セメントクリンカの原料として建設発生土といったAlを多く含有する各種廃棄物及び副産物を受け入れているため、セメントクリンカ中のAlの含有量が増加する傾向にある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「C&Cエンサイクロペディア−セメント・コンクリート化学の基礎解説」、社団法人セメント協会発行、1996年7月、P.15−16
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1のように、セメント組成物のLab色空間のb値はセメントクリンカのAlの含有量の増加により大きくなることが懸念される。このため、セメントクリンカの原料として廃棄物及び副産物の使用量を増加させるとセメント組成物のb値が増加する傾向にある。このため、廃棄物及び副産物の使用量を低下させることなく、セメント組成物のb値の増加を抑制することが求められている。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、廃棄物及び副産物の使用量を低下させることなく、b値の増加を抑制したセメントクリンカ及びセメント組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
セメントクリンカ製造及びセメント製造では、Lab色空間のb値やセメントの物性は、Al等の主要成分だけでなく、種々の微量成分や、製造条件などの影響を受ける。
非特許文献1では、Al、Fe、MgO、NaO、TiO、MnO及びCrのb値への影響に関し報告がなされているが、これら成分の含有量を調整するだけでは、セメント原料として廃棄物及び副産物の使用量を低下させることなく、b値の増加を抑制することが困難であった。
【0008】
このため、本発明者らは、セメント組成物中の成分を詳細に検討した結果、セメントクリンカ全量に対するAlの含有量(WAl2O3)、Feの含有量(WFe2O3)、MgOの含有量(WMgO)、MnOの含有量(WMnO)及びZnOの含有量(WZnO)を詳細に検討した結果、セメントクリンカ全量に対する各化合物の含有量を検討することにより、廃棄物及び副産物の使用量を低下させることなく、b値の増加を抑制したセメント組成物が得られることを見出した。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[4]を提供するものである。
[1] Al、Fe、MgO、MnO及びZnOを含み、
下記式(1)を満たすセメントクリンカ。
【数1】

式中、WAl2O3はセメントクリンカ全量に対するAlの含有量(質量%)を表し、WFe2O3はセメントクリンカ全量に対するFeの含有量(質量%)を表し、WMgOはセメントクリンカ全量に対するMgOの含有量(質量%)を表し、WMnOはセメントクリンカ全量に対するMnOの含有量(質量%)を表し、WZnOはセメントクリンカ全量に対するZnOの含有量(質量%)を表す。
[2] ボーグ式で算出された3CaO・SiOの割合が50.0質量%以上、75.0質量%以下であり、
ボーグ式で算出された2CaO・SiOの割合が5.0質量%以上、25.0質量%以下であり、
ボーグ式で算出された3CaO・Al及び4CaO・Al・Feの合計の割合が15.0質量%以上、22.0質量%以下である[1]に記載のセメントクリンカ。
[3] 前記3CaO・SiOにおけるAlの含有量(Al_CS)が1.000質量%以上である請求項1に記載のセメントクリンカ。
[4] 請求項1又は2に記載のセメントクリンカと、石膏とを含むセメント組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、廃棄物及び副産物の使用量を低下させることなく、Lab色空間のb値の増加を抑制し、セメントクリンカ及びセメント組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のセメントクリンカ及びセメント組成物について、詳細に説明する。
【0011】
[セメントクリンカ]
本発明のセメントクリンカは、好適には普通ポルトランドセメントに使用される。
【0012】
本発明のセメントクリンカは、セメント組成物を構成する主要成分であり、石灰石(CaO成分)、粘土(Al成分、SiO成分)、ケイ石(SiO成分)及び酸化鉄原料(Fe成分)などを配合し、焼成して製造される。本発明のセメントクリンカは、原料として石炭灰、建設発生土、製鋼スラグ、高炉スラグ、転炉スラグ、副産石膏、都市ごみ焼却灰等の産業廃棄物及び生産過程で生じる副産物等を含んでいても良い。
SiO、Al、Fe及びCaOの含有量は、JIS R 5204:2019「セメントの蛍光X線分析方法」に準拠して測定される。
【0013】
<主要成分>
本発明のセメントクリンカのSiOの含有量は15.00質量%以上であることが好ましく、17.00質量%以上であることがより好ましく、18.00質量%以上であることが更に好ましく、30.00質量%以下であることが好ましく、25.00質量%以下であることがより好ましく、23.00質量%以下であることが更に好ましい。
【0014】
本発明のセメントクリンカのAlの含有量(WAl2O3質量%)
2.00質量%以上であることが好ましく、4.00質量%以上であることがより好ましく、4.50質量%以上であることが更に好ましく、10.00質量%以下であることが好ましく、8.00質量%以下であることがより好ましく、7.00質量%以下であることが更に好ましい。
【0015】
本発明のセメントクリンカのFeの含有量(WFe2O3質量%)は1.00質量%以上であることが好ましく、1.50質量%以上であることがより好ましく、2.00質量%以上であることが更に好ましく、10.00質量%以下であることが好ましく、7.00質量%以下であることがより好ましく、5.00質量%以下であることが更に好ましい。
【0016】
本発明のセメントクリンカのCaOの含有量は50.00質量%以上であることが好ましく、55.00質量%以上であることがより好ましく、60.00質量%以上であることが更に好ましく、80.00質量%以下であることが好ましく、75.00質量%以下であることがより好ましく、70.00質量%以下であることが更に好ましい。
【0017】
<微量成分>
本発明のセメントクリンカは、微量成分としてMgO、MnO及びZnOを含む。MgO、MnO各含有量は、JIS R 5204:2019「セメントの蛍光X線分析方法」に準拠して測定される。ZnOの含有量はJCAS I−53:2018「セメント中の微量成分の定量方法」に準拠して測定される。
MgOは、例えば、MgOを多く含むスラグをセメントクリンカの原料として用いることにより、セメントクリンカへ導入される。
MnOは、例えば、高炉スラグ、転炉スラグをセメントクリンカの原料として用いることにより、セメントクリンカへ導入される。
ZnOは、例えば、都市ごみ焼却灰をセメントクリンカの原料として用いることにより、セメントクリンカへ導入される。
【0018】
本発明のセメントクリンカのMgOの含有量(WMgO質量%)は0.05質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましく、5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、2.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0019】
本発明のセメントクリンカのMnOの含有量(WMnO質量%)は0.01質量%以上であることが好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましく、0.03質量%以上であることが更に好ましく、0.80質量%以下であることが好ましく、0.50質量%以下であることがより好ましく、0.30質量%以下であることが更に好ましい。
【0020】
本発明のセメントクリンカのZnOの含有量(WZnO質量%)は0.01質量%以上であることが好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましく、1.50質量%以下であることが好ましく、1.00質量%以下であることがより好ましく、0.90質量%以下であることが更に好ましい。
【0021】
<式(1)>
本発明のセメントクリンカは、少なくともAl、Fe、MgO、MnO及びZnOを含み、式(1)の関係を満たす。
【0022】
【数2】
【0023】
セメントクリンカの原料として産業廃棄物等の量を増加させる(WAl2O3が大きくなる)と、Lab色空間のb値も大きくなってしまい、セメント組成物が黄色味を帯びてくる。このため、式(1)を満たすようにWFe2O3、WMgO、WMnO及びWZnOを調整することにより、セメント組成物のb値を維持することができる。特許文献1では、b値はAl、Fe、MgO、NaO、TiO、MnO及びCrの影響を受けると開示しているが、本発明では、Al、Fe、MgO、MnO及びZnOの含有量の関係を最適化することにより、より効果的にセメント組成物のb値の増加を抑制することができる。
また、WAl2O3、WFe2O3、WMgO、WMnO及びWZnOは、使用原料及びそれらの組み合わせにより適宜調整することができる。
【0024】
式(1)の左辺は−2.5400未満であるが、b値の増加を抑制する観点からは−2.6000以下であることがより好ましく、−2.7000以下であることが更に好ましく、−2.8000以下であることがより更に好ましい。
式(1)の左辺の下限値としては、特に限定はないが原料の調達やモルタルとした際に実用的な圧縮強度を得られる観点から−3.8000以上であることがより好ましく、−3.6000以上であることが更に好ましく、−3.5000以上であることがより更に好ましい。
【0025】
<セメントクリンカ組成>
本発明のセメントクリンカは、3CaO・SiO(略号:CS)、2CaO・SiO(略号:CS)、3CaO・Al(略号:CA)、及び4CaO・Al・FeO(略号:CAF)を含む。セメントクリンカは、エーライト(CS)及びビーライト(CS)の主要鉱物と、その主要鉱物の結晶間に存在するアルミネート相(CA)及びフェライト相(CAF)の間隙相などとから構成される。
【0026】
セメントクリンカにおけるCS、CS、CA及びCAFの割合は、JIS R 5204:2019「セメントの蛍光X線分析方法」により測定したセメントクリンカにおけるCaO、SiO、Al及びFeの割合から、セメント化学の分野でボーグ式と呼ばれる計算式により求められる(例えば、大門正機編訳「セメントの科学」、内田老鶴圃(1989)、p.11を参照)。
【0027】
<3CaO・SiO(CS)の割合>
本発明のセメントクリンカにおけるボーグ式で算出された3CaO・SiOの割合は、セメントクリンカを用いて製造されるコンクリートやモルタルの強度を実用レベルとできるため50.0質量%以上であることが好ましく、52.0質量%以上であることがより好ましく、54.0質量%以上であることが更に好ましく、セメント組成物の水和熱を抑えることができるため75.0質量%以下であることがより好ましく、70.0質量%以下であることがより好ましく、65.0質量%以下であることが更に好ましい。
【0028】
<2CaO・SiO(CS)の割合>
本発明のセメントクリンカにおけるボーグ式で算出された2CaO・SiOの割合は、3CaO・SiOの割合が高くなり、セメント組成物の水和熱が高くなりすぎることを抑えられるため5.0質量%以上であることが好ましく、10.0質量%以上であることがより好ましく、15.0質量%以上であることが更に好ましく、セメントクリンカによって製造されるコンクリートやモルタルの短期強度を実用レベル以上とできるため25.0質量%以下であることが好ましく、24.0質量%以下であることがより好ましい。
【0029】
<3CaO・Al(CA)及び4CaO・Al・FeO(CAF)の合計の割合>
本発明のセメントクリンカにおけるボーグ式で算出された3CaO・Al及び4CaO・Al・FeOの合計の割合は、セメントクリンカの焼成時に生成する液相の量が少ないと、液相介在による固相−液相反応が速やかに進まなくなり、セメントクリンカの焼成が不十分になる場合があり、また、セメントキルン中にダストが飛散し、バーナーからの輻射熱が遮断されるため、セメントクリンカの焼成を効率よく実施できない場合があるため、15.0質量%以上であることが好ましく、16.0質量%以上であることがより好ましく、17.0質量%以上であることが更に好ましく、セメントクリンカによって製造されるコンクリートやモルタルの短期強度を実用レベル以上とできるため22.0質量%以下であることが好ましく、21.0質量%以下であることがより好ましい。
【0030】
<3CaO・Al(CA)の割合>
本発明のセメントクリンカにおけるボーグ式で算出された3CaO・Alの割合は、セメントクリンカの焼成中に生成する液相の粘性低下を抑制し、セメントクリンカの造粒を適切に進行させ、セメントクリンカの粒径が小さくなることによってクリンカークーラー中の層圧が一定しなくなることを抑制するとともに、水和熱を低くすることができるため、3.0質量%以上であることが好ましく、5.0質量%以上であることがより好ましく、7.0質量%以上であることが更に好ましく、クリンカークーラー中の層圧が一定となり、セメントクリンカが急冷できるため15.0質量%以下であることが好ましく、12.0質量%以下であることがより好ましい。
【0031】
<4CaO・Al・FeO(CAF)の割合>
本発明のセメントクリンカにおけるボーグ式で算出された4CaO・Al・FeOの割合は、セメント組成物の水和熱を抑えることができるため、5.0質量%以上であることが好ましく、7.0質量%以上であることがより好ましく、8.5質量%以上であることが更に好ましく、セメントクリンカによって製造されるコンクリートやモルタルの短期強度を実用レベル以上とできるため13.0質量%以下であることが好ましく、11.0質量%以下であることがより好ましい。
【0032】
<Al_CS>
本発明のセメントクリンカにおける3CaO・SiOに含まれるAlの含有量(Al_CS)は、後記するEPMA測定により決定される。
セメントクリンカを用いて製造されるコンクリートやモルタルの強度を実用レベルとできるため1.000質量%以上であることが好ましいが、より高い強度が要求される場合には1.100質量%以上であることがより好ましく、1.200質量%以上であることが更に好ましく、1.205質量%以上であることが更に好ましく、上限値は特に制限はないが、セメント組成物の水和熱を抑えることができるため1.800質量%以下であることがより好ましく、1.600質量%以下であることがより好ましく、1.500質量%以下であることが更に好ましい。
【0033】
[セメントクリンカの製造方法]
本発明のセメントクリンカは、例えば、以下のようにして製造することができる。
セメントクリンカ原料としては、Ca、Si、Al、Feの他、少なくともMg、Mn、Znを含むものを用いる。上記元素を含むのであれば、元素単体物、酸化物、炭酸化物などの形態を問わず用いることができ、また、それらの混合物を用いることができる。例えば、天然原料として、石灰石、粘土、珪石、酸化鉄原料が挙げられ、工業的な原料の例として、上記元素を含む廃棄物原料、高炉スラグ、フライアッシュなどが挙げられる。クリンカ原料の混合割合に関しては、目的とするボーグ式値に対応した成分組成となり、かつ、前記の式(1)を満たすように、原料を配合することが好ましい。
【0034】
そして、目的とするセメントクリンカが得られるような組成で混合されたセメントクリンカ原料を、通常の焼成条件で焼成し、冷却する。焼成は、通常、電気炉やロータリーキルンなどを用いて行われる。焼成方法としては、例えば、セメントクリンカ原料を、所定の第1焼成温度及び第1焼成時間で加熱して焼成を行う第1焼成工程と、該第1焼成工程後、第1焼成温度から所定の第2焼成温度まで所定の昇温時間をかけて昇温させる昇温工程と、該昇温工程後、第2焼成温度及び所定の第2焼成時間で加熱して焼成を行う第2焼成工程と、を含む方法が挙げられる。各工程の温度及び時間は、通常実施される条件でよく、焼成物を急冷することにより、セメントクリンカを製造することができる。
急冷とはセメントクリンカを用いたモルタル等の強度の観点から100℃/min以上が好ましく、200℃/min以上がより好ましく、500℃/min以上が更に好ましい。
【0035】
[セメント組成物]
本発明のセメント組成物は、上記セメントクリンカと、石膏とを含む。本発明に用いるセメントのブレーン比表面積は3000cm/g以上3400cm/g以下が好ましく、3100cm/g以上3300cm/g以下がさらに好ましい
〔石膏〕
本発明のセメント組成物における石膏の割合は、SO換算量で好ましくは0.5〜2.5質量%、より好ましくは1.0〜1.8質量%である。石膏の割合が上記範囲とすることにより、セメント組成物の乾燥収縮を適切にすることができるとともに、セメント組成物が発現する強度を高くすることができる。石膏中のSOの割合は、JIS R 5202:2010「ポルトランドセメントの化学分析方法」に準じて測定することができる。セメント組成物中の石膏のSOに換算した質量の割合は、石膏の配合量と石膏に含まれるSOの割合から求めることができる。
石膏としては、無水石膏、半水石膏、二水石膏のいずれも使用することができる。
【0036】
<その他の成分>
本発明のセメント組成物には、流動性、水和速度または強度発現の調節用として、フライアッシュ、高炉スラグあるいはシリカフュームなどをさらに添加することができる。また、本発明のセメント組成物に、AE減水剤、高性能減水剤または高性能AE減水剤、特にポリカル系高性能AE減水剤を添加することができる。
【0037】
[モルタル及びコンクリート]
本発明のセメント組成物を、水と混合することにより、セメントミルクを作製することができ、水及び砂と混合することにより、モルタルを作製することができ、砂及び砂利と混合することにより、コンクリートを製造することができる。また、上記セメント組成物からモルタルやコンクリートを作製する際、高炉スラグやフライアッシュなどを添加することもできる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
1.測定及び評価
1−1.クリンカ組成
実施例及び比較例のセメントクリンカ中の化学組成(各成分の含有率)を、JIS R 5204:2019「セメントの蛍光X線分析方法」および、JCAS I−53:2018「セメント中の微量成分の定量方法」に準拠して測定した。結果を表1に示す。
鉱物組成は、得られたCaO、SiO、Al及びFeの質量割合から、下記のボーグ式を用いて算出した。結果を表2に示す。
S=(4.07×CaO)−(7.60×SiO)−(6.72×Al)−(1.43×Fe
S=(2.87×SiO)−(0.754×CS)
A=(2.65×Al)−(1.69×Fe
AF=3.04×Fe
更に、得られた各成分の含有率を用い、式(1)の左辺の値を算出した。結果を表2に示す。
【0039】
1−2.EPMA測定
実施例及び比較例のセメントクリンカを、粒径1〜2mm程度に粉砕し、粒度調整を行った。得られた粒子をエポキシ樹脂に包埋し、その後樹脂表面を鏡面研磨した。鏡面研磨後、樹脂表面に炭素蒸着を行い、EPMA測定用試料を作製した。
測定装置として日本電子社製、EPMA JXA−8200を用い、下記条件で上記試料の鏡面におけるセメントクリンカ粒子の組織像を観察した。組織像において、前記(a)〜(d)の特徴に基づき各鉱物を特定した。
(a) CS:多角形粒子、明灰色、数十μm
(b) CS:楕円形粒子、暗灰色、数十μm
(c) CA:シリケート相間に観察される不定形組織、暗灰色、数μm〜十数μm
(d) CAF:シリケート相間に観察される不定形組織、白色、数μm〜十数μm
上記4鉱物について鉱物毎に20点、加速電圧:15kV、照射電流:3.0×10-8A、ビーム径:約1 μm、補正計算法:Oxide−ZAF法にて特性X線を分析した。
このうちCSは分析値が2.7<CaO含有率(%)/SiO含有率(%)<3.3の範囲内の分析点を採用し、
得られた平均値をCSにおける化学組成(質量%)として採用した。
【0040】
1−3.b値
実施例及び比較例のセメント組成物を、色調計(ZE−2000型 日本電色工業(株))を用いて、b値の測定を実施した。
【0041】
1−4.28日モルタル強度(28d強度)
実施例および比較例のセメント組成物を用いた28日モルタル強度は、JIS R 5201「セメントの物理試験方法:10.4供試体の作り方」に準拠して、セメント組成物から作製したモルタルをそれぞれ、40×40×160mmの金属型枠3個に打設し、24時間後に脱型してモルタル供試体を3個ずつ作製した。20℃水中で材齢28日まで養生し、JIS R 5201「セメントの物理試験方法:10.5測定」に準拠して、圧縮強さを測定した。
【0042】
2.セメント組成物の作製
2−1.セメントクリンカ
セメントクリンカの原料として、炭酸カルシウム(キシダ化学(株)製、試薬1級、CaCO)、二酸化珪素(関東化学(株)製、試薬1級、SiO)、酸化アルミニウム(関東化学(株)製、試薬1級、Al)、酸化鉄(III)(関東化学(株)製、試薬特級、Fe)、塩基性炭酸マグネシウム(キシダ化学(株)製、試薬特級、4MgCO・Mg(OH)・5HO)、炭酸ナトリウム(キシダ化学(株)製、特級、NaCO)、炭酸カリウム(関東化学(株)製、試薬1級、KCO)、硫酸カルシウム2水和物(キシダ化学(株)製、試薬1級、CaSO・2HO)、二酸化チタン(関東化学(株)製、試薬特急、TiO)、リン酸三カルシウム(キシダ化学(株)製、試薬1級、Ca(PO)、酸化マンガン(関東化学(株)製、鹿1級、MnO)、及び、酸化亜鉛(関東化学(株)製、試薬特級、ZnO)を用いた。
【0043】
配合量を変えて配合した原料を、電気炉に投入して1000℃で30分間の焼成を行った.その後、1000℃から1450℃まで45分間かけて昇温させ、更に1450℃で30分間の焼成を行った。その後、焼成物を大気中に取り出すことによって急冷して、実施例1〜6及び比較例1のセメントクリンカを作製した。
【0044】
2−2.セメント組成物の調製
上記作製したセメントクリンカに、内割でSO換算量1.5質量%の半水石膏(関東化学(株)製、半水石膏、型番:07108−01(焼石膏 鹿1級))を配合した。配合物を、ブレーン比表面積値が約3200±200cm/gの範囲となるようにボールミルで粉砕して、実施例1〜6及び比較例1〜2のセメント組成物を作製した。
【0045】
2−3.モルタルの作製
実施例及び比較例のセメント組成物から、JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」に準拠してモルタルを調整した。得られたモルタルを、40mm×40mm×160mmの金属型枠3個に打設し、24時間後に脱型して供試体を3個ずつ作製した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
実施例1〜6はいずれも、Alの含有量を保ちつつ、式(1)の左辺の値を−2.4500未満とし、3CaO・SiOにおけるAlの含有量(Al_CS)を1.000質量%以上としたセメントクリンカである。
セメントクリンカから作製したセメント組成物のb値はいずれも7.3以下と小さな値となり、黄色味を抑えることができた。これに対し比較例1は式(1)の左辺の値を−2.4081としたセメントクリンカであるが、b値は8.4となり、黄色味が目立つ結果となった。
【0049】
実施例2のセメントクリンカはAlの含有量を5.26としたもので、式(1)の左辺の値を−2.8481に調整したものであるが、b値を7.2に抑えることができた。
実施例5のセメントクリンカはAlの含有量をさらに増加させつつ、MgO、MnO及びZnOの含有量を増やし、式(1)の左辺の値を−2.9496に調整したものであるが、b値は7.0とその増加を抑えることができた。
以上のように式(1)の左辺の値を−2.4500未満に調整することにより、b値の上昇を抑えられることが分かった。
【要約】
【課題】廃棄物及び副産物の使用量を低下させることなく、b値の増加を抑制したセメントクリンカ及びセメント組成物を提供する。
【解決手段】Al、Fe、MgO、MnO及びZnOを含み、式(1)を満たすセメントクリンカ。
Al2O3×0.2273+WFe2O3×(−0.9262)+WMgO×(−0.4991)+WMnO×(−1.6387)+WZnO×(−5.0687) < −2.4500
・・・式(1)
【選択図】なし