(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ジエステル化合物が、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコールまたはジプロピレングリコールと、安息香酸またはパラトルイル酸とのジエステルである請求項7記載のエステル樹脂混合物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のエステル樹脂は、
下記一般式(I)
H−(G
1−A)
n−G
1−H (I)
〔式(I)中、G
1はアルキレングリコール残基、オキシアルキレングリコール残基又はアリールグリコール残基であり、Aはジカルボン酸残基であって、Aの合計モル数の25モル%以上がイソフタル酸残基であり、nは繰り返し数であり、繰り返しごとにG
1、Aは同一でも異なっていてもよく、また複数あるG
1は同一でも異なっていてもよい。〕
で表されることを特徴とする。
【0011】
前記一般式(I)中のG
1はアルキレングリコール残基、オキシアルキレングリコール残基又はアリールグリコール残基である。グリコール残基とは、水酸基から水素原子を除去した後の基を示す。
【0012】
前記アルキレングリコール残基としては、炭素原子数2〜12のアルキレングリコール残基であることが、本発明の効果をより発現しやすい観点から好ましく、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等の残基が挙げられ、単独でも2種以上を併有していても良い。これらの中でも、後述するセルロースエステル樹脂と混合した際の相溶性により優れるエステル樹脂である観点から、OH基間の分岐を含まない炭素原子数が3以下であるものが好ましく、なかでもエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオールの残基であることが好ましく、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコールの残基であることがより好ましく、1,2−プロピレングリコールの残基であることが最も好ましい。
【0013】
前記オキシアルキレングリコール残基としては、炭素原子数4〜12のオキシアルキレングリコール残基であることが、本発明の効果をより発現しやすい観点から好ましく、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等の残基が挙げられ、単独でも、2種以上を併有していても良い。
【0014】
前記アリールグリコール残基としては、炭素数6〜18のアリールグリコール残基であることが、本発明の効果をより発現しやすい観点から好ましく、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、ビスフェノールF、ビスフェノールFのアルキレンオキシド付加物、ビフェノール、ビフェノールのアルキレンオキシド付加物等の残基が挙げられ、単独でも、2種以上を併有していても良い。
【0015】
また、前記一般式(I)中のAはジカルボン酸残基であり、具体的にはアルキレンジカルボン酸残基(A1)又はアリールジカルボン酸残基(A2)が挙げられ、Aの全モル数中におけるイソフタル酸残基のモル数が25モル%以上であることを必須とする。ここで、ジカルボン酸残基とは、カルボキシ基中の−OHを除いた基を言う。
【0016】
前記一般式(I)で表されるエステル樹脂において、原料のジカルボン酸としてイソフタル酸を多く用いることにより、後述する光学用樹脂と混合した際に、当該光学用樹脂、特にはセルロースエステル樹脂に対してこれを可塑化することなく、フィルム状に加工した際には、弾性率の向上、耐熱性を付与するとともに、当該光学用樹脂が本来有する透明性を損なうことがなく、薄膜化が進む光学フィルム用途に好適に用いることができる。
【0017】
前述の効果を奏する観点から、ジカルボン酸残基におけるイソフタル酸残基のモル数が25モル%以上であることを必須とし、特にその効果がより奏される観点からは、イソフタル酸残基の含有率は、25〜100モル%の範囲であることが好ましく、40〜100%の範囲であることがより好ましく、70〜90%の範囲であることが最も好ましい。
【0018】
イソフタル酸残基と併有していてもよい、前記アルキレンジカルボン酸残基(A1)としては、炭素原子数2〜12のアルキレンジカルボン酸残基であることが、本発明の効果をより発現しやすい観点から好ましく、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、1,2−ジカルボキシシクロヘキサン、1,2−ジカルボキシシクロヘキセン等の残基が挙げられ、単独でも、2種以上を併有していてもよい。これらの中でも、よりフィルムの透明性に優れる光学フィルムが得られることから、コハク酸、アジピン酸、1,2−ジカルボキシシクロヘキサンの残基であることが好ましく、アジピン酸の残基が最も好ましい。
【0019】
イソフタル酸残基と併有していてもよい、前記アリールジカルボン酸残基(A2)としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸等の残基が挙げられ、単独でも、2種以上を併有していてもよい。これらの中でも、より強度が高い光学フィルムが得られることから、フタル酸、テレフタル酸の残基であることが好ましく、フタル酸の残基が最も好ましい。
【0020】
本発明では、前記一般式(I)で表されるエステル樹脂であって、G
1、Aが同一のものからなり、n、すなわち繰り返し数のみが異なる化合物の混合物であっても、あるいは、一般式(I)中のG
1、Aおよびnがそれぞれ異なる化合物の混合物であってもよい。
【0021】
本発明の効果がより一層発現される観点から、一般式(I)において、G
1がエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオールの残基、併有していてもよいA1はコハク酸、アジピン酸、1,2−ジカルボキシシクロヘキサンの残基、A2はフタル酸、テレフタル酸の残基であることが好ましく、特に、G
1がエチレングリコール、1,2−プロピレングリコールの残基であり、併有していてもよいA1がアジピン酸残基、A2がフタル酸の残基であることが最も好ましい。
【0022】
本発明では、後述する光学材料用樹脂、特にはセルロースエステル樹脂と混合して得られる光学フィルムにおいて、フィルムの製造工程における不揮発成分を低減し、さらに吸湿寸法安定性に優れる光学フィルムを得るために、蒸留などにより、前記一般式(I)で表されるエステル樹脂において、残存グリコール量を低減することが望ましい。エステル樹脂中の残存グリコール量としては、1.5質量%以下とすることが好ましく、1.0質量%以下とすることが最も好ましい。尚、上記残存グリコール量は、ガスクロマトグラフィーにより測定することができる
【0023】
また本発明のエステル樹脂としては、その数平均分子量は相溶性とフィルム物性を両立させる観点から、350〜2000の範囲であることが好ましく、特に400〜1500の範囲であることが好ましく、500〜1200の範囲であることが最も好ましい。また、前記一般式(I)中の繰り返し数nの平均値としては、同じく相溶性とフィルム物性を両立させる観点から、1.0〜10.0の範囲であることが好ましく、1.0〜8.0の範囲であることがさらに好ましく、1.5〜7.0の範囲であることが最も好ましい。尚、この数平均分子量及びnの平均値はGPC測定にて測定した値である。
【0024】
尚、本発明でのGPC測定は下記条件で実施したものである。
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製高速GPC装置「HLC−8320GPC」
カラム:東ソー株式会社製「TSK GURDCOLUMN SuperHZ−L」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM−M」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM−M」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ−2000」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ−2000」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「EcoSEC Data Analysis バージョン1.07」
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.35mL/分
測定試料:試料7.5mgを10mlのテトラヒドロフランに溶解し、得られた溶液をマイクロフィルターでろ過したものを測定試料とした。
試料注入量:20μl
標準試料:前記「HLC−8320GPC」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0025】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−300」
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−288」
【0026】
更に本発明のエステル樹脂の酸価としては、光学材料用樹脂との相溶性がより良好である観点から5以下であることが好ましく、1以下がより好ましい。
【0027】
本発明のエステル樹脂は、例えば、前記の原料を、必要に応じてエステル化触媒の存在下で、例えば、180〜250℃の温度範囲内で10〜25時間、エステル化反応させることにより製造することができる。尚、エステル化反応の温度、時間などの条件は特に限定せず、適宜設定してよい。モノカルボン酸やジカルボン酸については、原料として酸そのものを使用してもよく、あるいは、そのエステル化物、酸塩化物、ジカルボン酸の無水物等を原料としてもよい。
【0028】
前記エステル化触媒としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒;ジブチル錫オキサイド等のスズ系触媒;p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸系触媒などが挙げられる。
【0029】
前記エステル化触媒の使用量は、適宜設定すればよいが、通常、原料の全量100質量部に対して、0.001〜0.1質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0030】
本発明のエステル樹脂の性状は、その数平均分子量や原料の組み合わせなどの要因により異なるが、通常、常温にて液体、固体、ペースト状などである。
【0031】
より具体的なエステル樹脂の製造方法としては、前述のアルキレングリコール、オキシアルキレングリコール又はアリールグリコールと、ジカルボン酸とを用いて得られる末端に水酸基を有する化合物と、モノカルボン酸とを反応させる方法が挙げられる。ここで、前記アルキレングリコール、オキシアルキレングリコール又はアリールグリコールとジカルボン酸とモノカルボン酸とは一括で反応系に仕込み、これらを反応させてもよく、あるいは、アルキレングリコール、オキシアルキレングリコール又はアリールグリコールとジカルボン酸とを用いて得られる末端に水酸基を有する化合物を得た後、更に、モノカルボン酸を反応系に仕込む、逐次反応であってもよい。
【0032】
本発明では、前述のエステル樹脂を単独で用いてこれを後述するセルロースエステル樹脂等の光学材料用樹脂に添加してもよく、あるいは、下記一般式(II)
B−G
2−B(II)
〔式(II)中、Bはアリールモノカルボン酸残基または脂肪族モノカルボン酸残基であり、G
2はアルキレングリコール残基、オキシアルキレングリコール残基又はアリールグリコール残基であり、複数あるBは同一でも異なっていてもよい。〕
で表されるジエステル化合物を併用してもよい。
【0033】
前記一般式(II)中のBは、モノカルボン酸残基であり、具体的には、アリールモノカルボン酸残基または脂肪族モノカルボン酸残基が挙げられる。ここで、「カルボン酸残基」とは、カルボキシ基中の−OH以外の基を示す。前記アリールモノカルボン酸残基としては、炭素原子数6〜12のアリールモノカルボン酸残基であることが、原料入手容易性とエステル化反応の容易性、並びに後述するセルロースエステル樹脂と混合した際に、耐透湿性、弾性率、寸法安定性のバランスがとりやすい観点から好ましく、例えば、安息香酸、ジメチル安息香酸、トリメチル安息香酸、テトラメチル安息香酸、エチル安息香酸、プロピル安息香酸、ブチル安息香酸、クミン酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、エトキシ安息香酸、プロポキシ安息香酸、アニス酸、ナフトエ酸等が挙げられ、単独でも2種以上を併有していてもよい。特に、本発明の効果をより発現しやすい観点より、安息香酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸の残基であることが好ましく、安息香酸、パラトルイル酸の残基であることがより好ましい。尚ここで炭素原子数はカルボキシ基中の炭素原子は含まないものとする。また、置換基を有していてもよい、芳香族性を有するニコチン酸、フロ酸等の残基であってもよい。
【0034】
前記脂肪族モノカルボン酸残基としては、炭素原子数1〜8の脂肪族モノカルボン酸残基であることが原料入手容易性とエステル化反応の容易性、並びに後述するセルロースエステル樹脂と混合した際に、耐透湿性、弾性率、寸法安定性のバランスがとりやすい観点から好ましく、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、オクチル酸等の残基が挙げられ、単独でも2種以上を併有していてもよく、特に酢酸であることが好ましい。尚ここで炭素原子数はカルボキシ基中の炭素原子は含まないものとする。
【0035】
前記一般式(II)中のG
2はアルキレングリコール残基、オキシアルキレングリコール残基又はアリールグリコール残基である。グリコール残基とは、水酸基から水素原子を除去した後の基を示す。
【0036】
前記アルキレングリコール残基としては、炭素原子数2〜12のアルキレングリコール残基であることが、本発明の効果をより発現しやすい観点から好ましく、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等の残基が挙げられ、単独でも2種以上を併有していても良い。これらの中でも、フィルムの強度を向上させる観点から、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオールの残基であることが好ましい。
【0037】
前記オキシアルキレングリコール残基としては、炭素原子数4〜12のオキシアルキレングリコール残基であることが、本発明の効果をより発現しやすい観点から好ましく、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等の残基が挙げられ、単独でも、2種以上を併有していても良い。
【0038】
前記アリールグリコール残基としては、炭素数6〜18のアリールグリコール残基であることが、本発明の効果をより発現しやすい観点から好ましく、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、ビスフェノールF、ビスフェノールFのアルキレンオキシド付加物、ビフェノール、ビフェノールのアルキレンオキシド付加物等の残基が挙げられ、単独でも、2種以上を併有していても良い。
【0039】
本発明の効果がより一層発現される観点から、一般式(II)において、Bが安息香酸、パラトルイル酸の残基、G
2がエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコールまたはジプロピレングリコールの残基であることが好ましい。
【0040】
前記ジエステル化合物(II)は、合成したものであっても、市販されているものであってもよく、合成する際には、反応条件(触媒、温度、時間等)は、例えば、本発明で用いるエステル樹脂(I)の合成で用いる条件を用いることができる。
【0041】
本発明のエステル樹脂混合物は、前記エステル樹脂(I)とジエステル化合物(II)とを、質量比〔エステル樹脂/ジエステル化合物〕で100/0〜50/50となる範囲で含有することが、後述する光学用樹脂の反可塑化剤として好適に使用できる点から好ましい。
【0042】
このような、ジエステル化合物(II)を含むと、光学材料用樹脂、特にはセルロースエステル樹脂の隙間に好適に配置され、その結果として耐透湿性、弾性率、寸法安定性を向上させる効果がよりいっそう発現されるとともに、光学材料用樹脂との相溶性を確保し、光学フィルムとして使用できる透明性をより効果的に維持することができる。
【0043】
これらの効果がより一層発現され、また揮発による製造ライン等の汚染の抑制や、光学フィルムの透明性の維持が容易になる等の観点から、前記エステル樹脂(I)とジエステル化合物(II)の合計質量中のエステル樹脂(I)の割合は、50〜100質量%であることが好ましく、60〜95質量%であることがさらに好ましく、65〜90質量%であることが最も好ましい。
【0044】
本発明のエステル樹脂混合物は、前記エステル樹脂(I)とジエステル化合物(II)のみからなるものであっても良いし、エステル樹脂(I)以外のポリエステルやジエステル化合物(II)以外のジエステル化合物を含んでいても良い。また、エステル樹脂(I)やジエステル化合物(II)以外のいわゆる光学用樹脂の改質剤として知られているものを含んでいても良いし、エステル樹脂(I)やジエステル化合物(II)の製造に用いた原料の未反応物を含んでいても良い。
【0045】
このような方法等で得られる本発明のエステル樹脂あるいはエステル樹脂混合物は、これを光学材料用樹脂に配合することにより、得られるフィルムの弾性率、耐熱性、寸法安定性のバランスに優れたものとすることができ、いわゆる反可塑化剤として用いることができるものであり、得られるフィルムは特に光学フィルムとして好適である。
【0046】
前記光学材料用樹脂としては、透明性の高いものであって、且つフィルム状に加工できるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、(メタ)アクリル樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロースエステル樹脂等が挙げられる。特に本発明の効果がより一層奏される観点から、セルロースエステル樹脂を用いることが好ましい。
【0047】
光学材料用樹脂に対する本発明のエステル樹脂、エステル樹脂混合物の配合量は、目的とする性能(弾性率、耐熱性等)に応じて決定すればよく、例えば、光学材料用樹脂100質量部に対して0.1〜50質量部の範囲であり、1〜30質量部の範囲であることが好ましく、特に3〜20質量部の範囲であることがより好ましい。
【0048】
前記セルロースエステル樹脂としては、例えば、綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等から得られるセルロースの有する水酸基の一部又は全部がエステル化されたものなどが例示できる。
【0049】
前記セルロースエステル樹脂としては、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸セルロース等が挙げられ、偏光板用保護フィルムとして使用する場合には、セルロースアセテートを用いることが、機械的物性及び透明性に優れたフィルムを得ることができるので、好ましい。これらセルロースエステル樹脂は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0050】
前記セルロースアセテートとしては、重合度が250〜400の範囲であることが好ましく、且つ、酢化度が54.0〜62.5質量%の範囲であることが好ましく、58.0〜62.5質量%の範囲であることがより好ましい。前記セルロースアセテートの重合度と酢化度がかかる範囲であれば、優れた機械的物性を有するフィルムを得ることができる。本発明では、所謂セルローストリアセテートを使用することがより好ましい。尚、本発明でいう酢化度とは、セルロースアセテートの全量に対する、該セルロースアセテートをケン化することによって生成する酢酸の質量割合である。
【0051】
前記セルロースアセテートの数平均分子量は、70,000〜300,000の範囲であることが好ましく、80,000〜200,000の範囲であることがより好ましい。前記セルロースアセテートの数平均分子量がこの範囲であると、優れた機械的物性を有するフィルムを容易に得ることができる。
【0052】
本発明における光学フィルムは、本発明のエステル樹脂又はエステル樹脂混合物とセルロースエステル樹脂等の光学材料用樹脂を含む樹脂組成物を用いるものであり、必要に応じてその他の各種添加剤等を含有してなる樹脂組成物を用いてもよい。
【0053】
本発明の光学フィルムを得るには、例えば、押し出し成形、キャスト成形等の手法が用いられる。具体的には、例えば、Tダイ、円形ダイ等が装着された押出機等を用いて、未延伸状態の光学フィルムを押し出し成形することができる。押し出し成形により本発明の光学フィルムを得る場合は、事前に前記エステル樹脂、エステル樹脂混合物、セルロースエステル樹脂等の光学材料用樹脂、その他添加剤等を溶融混錬して得られる樹脂組成物を用いることもできれば、押し出し成形時に溶融混錬し、そのまま押し出し成形することもできる。
【0054】
前記添加剤としては、例えば、本発明のエステル樹脂、ジエステル化合物以外のその他の改質剤、熱可塑性樹脂、紫外線吸収剤、マット剤、安定剤、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤等)、染料などが挙げられる。
【0055】
前記その他の改質剤としては、本発明で規定するエステル樹脂、ジエステル化合物以外のエステル樹脂や、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート等のリン酸エステル、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等のフタル酸エステル、エチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、トリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラアセテート、アセチルクエン酸トリブチル等を、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0056】
前記熱可塑性樹脂としては、特に限定しないが、例えば、本発明のエステル樹脂以外のポリエステル樹脂、ポリエステルエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、トルエンスルホンアミド樹脂等が挙げられる。
【0057】
前記紫外線吸収剤としては、特に限定しないが、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられる。前記紫外線吸収剤は、前記セルロースエステル樹脂100質量部に対して、0.01〜2質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0058】
前記マット剤としては、例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク等が挙げられる。前記マット剤は、前記セルロースエステル樹脂100質量部に対して、0.1〜0.3質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0059】
前記安定剤としては、例えば、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、脂肪酸金属塩等が挙げられる。前記安定剤は、前記セルロースエステル樹脂100質量部に対して、50〜5000ppmの範囲で用いることが好ましい。
【0060】
前記染料としては、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、種類や配合量など特に限定しない。
【0061】
また、前記光学フィルムは、前記成形方法の他に、例えば、前記セルロースエステル樹脂組成物等の光学材料用樹脂を有機溶剤中に溶解して得られる樹脂溶液を、金属支持体上に流延させ、次いで、前記有機溶剤を留去し乾燥させる、いわゆる溶液流延法(ソルベントキャスト法)で成形することによって得ることもできる。
【0062】
前記溶液流延法によれば、成形途中でのフィルム中における前記セルロースエステル樹脂等の光学材料用樹脂の配向を抑制することができるため、得られるフィルムは実質的に光学等方性を示すことができる。前記光学等方性を示すフィルムは、例えば液晶ディスプレイなどの光学材料に使用することができ、中でも偏光板用保護フィルムに有用である。また、前記方法によって得られたフィルムは、その表面に凹凸が形成されにくく、表面平滑性にも優れる。
【0063】
前記溶液流延法は、一般に、前記樹脂組成物を有機溶剤中に溶解させ、得られた樹脂溶液を金属支持体上に流延させる第1工程と、流延させた前記樹脂溶液中に含まれる有機溶剤を留去し乾燥させてフィルムを形成する第2工程、それに続く、金属支持体上に形成されたフィルムを金属支持体から剥離し加熱乾燥させる第3工程からなる。
【0064】
前記第1工程で使用する金属支持体としては、無端ベルト状又はドラム状の金属製のものなどを例示でき、例えば、ステンレス製でその表面が鏡面仕上げの施されたものを使用することができる。
【0065】
前記金属支持体上に樹脂溶液を流延させる際には、得られるフィルムに異物が混入することを防止するために、フィルターで濾過した樹脂溶液を使用することが好ましい。
【0066】
前記第2工程の乾燥方法としては、特に限定しないが、例えば30〜50℃の温度範囲の風を前記金属支持体の上面及び/又は下面に当てることで、流延した前記樹脂溶液中に含まれる有機溶剤の50〜80質量%を蒸発させ、前記金属支持体上にフィルムを形成させる方法が挙げられる。
【0067】
次いで、前記第3工程は、前記第2工程で形成されたフィルムを金属支持体上から剥離し、前記第2工程よりも高い温度条件下で加熱乾燥させる工程である。前記加熱乾燥方法としては、例えば100〜160℃の温度条件にて段階的に温度を上昇させる方法が、良好な寸法安定性を得ることができるため、好ましい。前記温度条件にて加熱乾燥することにより、前記第2工程後のフィルム中に残存する有機溶剤をほぼ完全に除去することができる。
【0068】
尚、前記第1工程〜第3工程で、有機溶媒は回収し再使用することも可能である。
【0069】
前記樹脂組成物を有機溶剤に混合させ溶解する際に使用できる有機溶剤としては、それらを溶解可能なものであれば特に限定しないが、例えば光学材料用樹脂としてセルロースアセテートを使用する場合は、良溶媒として、例えばメチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類を使用することが好ましい。
【0070】
また、前記良溶媒と共に、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等の貧溶媒を併用することが、フィルムの生産効率を向上させるうえで好ましい。
【0071】
前記良溶媒と貧溶媒との混合割合は、良溶媒/貧溶媒=75/25〜95/5質量比の範囲であることが好ましい。
【0072】
前記樹脂溶液中の光学材料用樹脂の濃度は、10〜50質量%が好ましく、15〜35質量%がより好ましい。
【0073】
本発明においては、例えば、前記の方法で得られる未延伸状態の光学フィルムを必要に応じて、機械的流れ方向に縦一軸延伸、機械的流れ方向に直行する方向に横一軸延伸することで延伸された光学フィルムを得ることができる。また、ロール延伸とテンター延伸の逐次2軸延伸法、テンター延伸による同時2軸延伸法、チューブラー延伸による2軸延伸法等によって延伸することにより2軸延伸された延伸フィルムを得ることができる。延伸倍率は少なくともどちらか一方向に0.1%以上300%以下であることが好ましく、0.2%以上250%以下であることがさらに好ましく、0.3%以上200%以下であることが最も好ましい。この範囲に設計することにより、複屈折、耐熱性、強度の観点で好ましい延伸された光学フィルムが得られる。
【0074】
本発明の光学フィルムは、弾性率、耐熱性、耐透湿性、且つ寸法安定性に優れていることから、例えば、液晶表示装置の光学フィルムに使用できる。前記液晶表示装置の光学フィルムとしては、例えば、偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、反射フィルム、視野角向上フィルム、防眩フィルム、無反射フィルム、帯電防止フィルム、カラーフィルター等が挙げられ、それらの中でも、偏光板用保護フィルムとして好ましく使用する事ができる。
【0075】
前記光学フィルムの膜厚は、20〜120μmの範囲であることが好ましく、25〜100μmの範囲であることがより好ましく、25〜80μmの範囲であることが特に好ましい。前記光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いる場合には、膜厚が25〜80μmの範囲であれば、液晶表示装置の薄型化を図る際に好適であり、且つ充分なフィルム強度、Rth安定性、耐透湿性などの優れた性能を維持することができる。
【0076】
本発明の光学フィルムは、弾性率がエステル樹脂を配合しない場合よりも高くなることを特徴とする。一般的にセルロースエステル樹脂に対してはその加工性を高めることを目的として配合されるポリエステル樹脂は「可塑剤」と称されることもあるが、本発明のエステル樹脂は可塑化効果よりも光学材料用樹脂に強度を向上させることができる観点から、反可塑化剤として使用するものである点において、従来とは異なる性能を有するものである。
【0077】
また、前記偏光板用保護フィルムは、高温多湿下でのブリードを生ずることなく、所望の位相差に調整することも可能であることから、用途に応じて様々な液晶表示方式に広範囲に使用することができる。
【0078】
前記液晶表示方式としては、例えばIPS(イン−プラン スイッチング:In−Plane Switching)、TN(ツイスティッド ネマチック:Twisted Nematic)、VA(バーティカリー アラインド:Vertically Aligned)、OCB(オプティカリー コンペンセートリー ベンド:Optically Compensatory Bend)等が例示できる。
【0079】
本発明に係る光学フィルムは、光学材料として、液晶表示装置、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイに用いられる偏光板保護フィルム、1/4波長板、1/2波長板、視野角制御フィルム、液晶光学補償フィルム等の位相差フィルム、ディスプレイ前面板等に好適に用いることができる。また、本発明の樹脂組成物は、その他にも、光通信システム、光交換システム、光計測システムの分野において、導波路、レンズ、光ファイバー、光ファイバーの基材、被覆材料、LEDのレンズ、レンズカバーなどにも用いることができる。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例に基づき更に具体的に説明する。例中の部及び%は断りがない限り質量基準である。
【0081】
実施例1
1リットル4つ口フラスコに、グリコール成分として1,2−プロピレングリコール(以下「PG」と略す)346g、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸(以下「IPA」と略す)376g、アジピン酸(以下「AA」と略す)110g及び触媒であるテトライソプロピルチタネート(以下「TIPT」と略す)0.05gを仕込み、窒素導入管より窒素気流下、段階的に230℃まで昇温した。230℃で8時間縮合反応させ、酸価が1.0以下になったことを確認した。減圧下、150℃にて過剰のグリコールを除去することで本発明のエステル樹脂(1)を得た。得られたエステル樹脂(1)は、常温で淡黄色液体であり、酸価が0.25、水酸基価135であり、数平均分子量は920、残存PG量は0.2質量%であった。
【0082】
実施例2
1リットル4つ口フラスコに、グリコール成分としてPG 352g、ジカルボン酸成分としてIPA257g、AA 226g及び触媒であるTIPT 0.05gを仕込み、窒素導入管より窒素気流下、段階的に230℃まで昇温した。230℃で8時間縮合反応させ、酸価が1.0以下になったことを確認した。減圧下、150℃にて過剰のグリコールを除去することで本発明のエステル樹脂(2)を得た。得られたエステル樹脂(2)は、常温で淡黄色液体であり、酸価が0.27、水酸基価135であり、数平均分子量は950、残存PG量は0.2質量%であった。
【0083】
比較例1
3リットル4つ口フラスコに、グリコール成分としてPG 922g、ジカルボン酸成分として無水フタル酸(以下「PA」と略記する。)を944g、AA 310g及び触媒であるTIPT 0.13gを仕込み、窒素導入管より窒素気流下、段階的に220℃まで昇温した。220℃で8時間縮合反応させ、酸価が1以下になった時点で、反応生成物を濾過して取り出し、エステル樹脂(1’)を得た。得られたエステル樹脂(1’)は、常温で淡黄色液体であり、酸価が0.50、水酸基価163であり、数平均分子量は790、残存PG量は3.0質量%であった。
【0084】
比較例2
エステル樹脂(1’)を減圧下、150℃にて過剰のグリコールを除去することでエステル樹脂(2’)を得た。得られたエステル樹脂(2’)は、常温で淡黄色液体であり、酸価が0.18、水酸基価147であり、数平均分子量は800、残存PG量は0.5質量%であった。
【0085】
実施例3〜4、比較例3〜4
<セルロースエステル光学フィルムの調整>
トリアセチルセルロース樹脂(株式会社ダイセル製「LT−35」)100部、エステル樹脂(1)〜(2)、エステル樹脂(1’)〜(2’)10部を、メチレンクロライド810部及びメタノール90部からなる混合溶剤に加えて溶解し、セルロースエステル樹脂組成物であるドープ液を調製した。これらのドープ液をガラス板上に厚さ0.8mmまたは0.5mmとなるように流延し、室温で16時間乾燥させた後、50℃で30分、さらに120℃で30分乾燥させることで、光学フィルム(60μmまたは40μm)を得た。得られたフィルムについて、下記に従い物性を測定し、その結果を表1に示した。
【0086】
<光学フィルムの弾性率測定>
装置:(株)島津製作所製オートグラフAG−IS
試験片:150mm×10mm,厚み40μmの短冊形
チャック間:100mm
試験速度 :10mm/min
弾性率が大きい程、硬いフィルムであることを表す。
【0087】
<弾性率の評価方法>
×:弾性率が4600MPa以下である。
○:弾性率が4600MPaよりも高く、4650MPa以下である。
◎:弾性率が4650MPaよりも高い。
【0088】
<光学フィルムの耐熱性測定>
装置 :TA Instruments社製 RSA−III 引張モード
昇温速度 :3℃/min
周波数 :1Hz
負荷歪 :0.1%
試験片膜厚:60μm
tanδのピークトップをTgとし、Tgが高いほど耐熱性に優れることを示す。
【0089】
<耐熱性の評価方法>
×:Tgが182℃以下である。
○:Tgが182℃よりも高い。
【0090】
<光学フィルムの寸法安定性測定>
装置 :日立ハイテク社製 SIINT TMA/SS6100+湿度制御ユニット
測定温度 :40℃一定
相対湿度 :0%〜80%
測定荷重 :50mN
試験片膜厚:60μm
相対湿度を0%から80%にしたときの寸法変化率を測定した。変化率が小さいほど、寸法安定性に優れることを示す。
【0091】
<寸法安定性の評価方法>
×:寸法変化率が0.45%よりも大きい。
○:寸法変化率が0.40%以上、0.45%以下である。
◎:寸法変化率が0.40%よりも小さい。
【0092】
<HAZE>
HAZE値は、濁度計(日本電色工業株式会社製「NDH 5000」)を用いて、JIS K 7105に準じて測定した。得られる値が0%に近い程、透明であること表す。
【0093】
<透明性の評価方法>
×:HAZE値が1.0%よりも大きい。
○:HAZE値が1.0%以下である。
【0094】
<光学フィルムの透湿度測定>
JIS Z 0208に記載の方法に従い、測定した。測定条件は、温度40℃、相対湿度90%で行なった。得られる値が小さい程、耐透湿性に優れることを表す。
【0095】
<耐透湿性の評価方法>
×:透湿度が600g/m
2・24hよりも大きい。
○:透湿度が600g/m
2・24h以下である。
【0096】
<不揮発性の評価>
フィルムを85℃、相対湿度90%の環境下(湿熱環境下)に120時間晒した時の質量変化量を測定。得られる値が小さい程、不揮発性に優れることを示す。
【0097】
<不揮発性の評価方法>
×:湿熱減量が1.5%よりも大きい。
○:湿熱減量が1.5%以下である。
【0098】
【表1】
【0099】
エステル樹脂(I)のジカルボン酸成分にイソフタル酸を用いることで、弾性率とTgが向上した。また、エステル樹脂(I)の残存グリコール量を低減させることで、吸湿寸法変化が抑制されると共に、耐透湿性や湿熱環境下における不揮発性が向上した。
【0100】
合成例1
3リットル4つ口フラスコに、モノカルボン酸成分としてパラトルイル酸1,906g、グリコール成分としてPG639g及び触媒であるTiPT0.153gとを仕込んだ後、220℃まで昇温し11時間反応させた。反応後、200℃で未反応のグリコールを減圧留去した。その後減圧を解除し降温して、反応生成物を濾過して取り出し、透明黄色液状のジエステル化合物(a)を得た。ジエステル化合物(a)の数平均分子量(Mn)は310、酸価は0.10、水酸基価は4であった。
【0101】
合成例2
2リットル4つ口フラスコに、モノカルボン酸成分として安息香酸(以下「BzA」と略す。)900g、グリコール成分としてPG294g、ジプロピレングリコール50g及び触媒であるTiPT0.62gとを仕込んだ後、220℃まで昇温し11時間反応させた。反応後、200℃で未反応のグリコールを減圧留去した。未反応アルコールの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、反応生成物を濾過して取り出し、透明黄色液状のジエステル化合物(b)を得た。ジエステル化合物(b)の数平均分子量(Mn)は300、酸価は0.07、水酸基価は7であった。
【0102】
合成例3
2リットル4つ口フラスコに、モノカルボン酸成分としてBzA952g、グリコール成分としてPG124g、ジエチレングリコール281g及び触媒であるTiPT0.68gとを仕込んだ後、220℃まで昇温し11時間反応させた。反応後、200℃で未反応のグリコールを減圧留去した。未反応アルコールの流出がなくなった後、減圧を解除し降温して、反応生成物を濾過して取り出し、透明黄色液状のジエステル化合物(c)を得た。ジエステル化合物(c)の数平均分子量(Mn)は350、酸価は0.05、水酸基価は3であった。
【0103】
実施例5〜11、比較例5〜7
<セルロースエステル光学フィルムの調整>
トリアセチルセルロース樹脂(株式会社ダイセル製「LT−35」)100部、エステル樹脂(1)〜(2)、エステル樹脂(1’)〜(2’)とジエステル化合物(a)〜(c)を表2〜3に示す割合で合わせて10部、メチレンクロライド810部及びメタノール90部からなる混合溶剤に加えて溶解し、セルロースエステル樹脂組成物であるドープ液を調製した。これらのドープ液をガラス板上に厚さ0.8mmまたは0.5mmとなるように流延し、室温で16時間乾燥させた後、50℃で30分、さらに120℃で30分乾燥させることで、本発明の光学フィルム(60μmまたは40μm)を得た。得られたフィルムについて、上記に従い物性を測定し、その結果を表2〜3に示した。
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
ジエステル化合物(II)の添加により、弾性率、寸法安定性、耐透湿性が大幅に向上した。いずれもHAZE値が低く、光学フィルムとして十分な透明性を有している。