(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、オシレーションしながらフィルムを巻き取った場合、フィルムは、幅方向に波打つように歪曲した状態でコアに巻き付けられる。そのため、上記従来の技術では、フィルムを巻き出す際、フィルムが幅方向に歪曲した状態で巻き出されてしまうという課題ある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、フィルムの幅方向における歪曲を低減しつつ当該フィルムを巻き出すことが可能なフィルム製造方法およびフィルム巻出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るフィルム製造方法は、コアを回転軸方向に振動させながら当該コアの外周面にフィルムを巻き付ける巻取工程にて巻き取った前記フィルムを、前記コアから巻き出す巻出工程を含み、前記巻出工程にて、前記コアを回転軸方向に振動させることを特徴としている。
【0007】
コアを回転軸方向に振動(オシレーション)させながら当該コアの外周面に巻き付けられたフィルムを巻き出す場合、通常、フィルムは当該フィルムの幅方向(コアの回転軸方向)に波打つように歪曲した状態で巻き出される。
【0008】
上記の構成では、巻出工程にてコアの振動を適切に制御することにより、上記歪曲を打ち消しながらフィルムを巻き出すことが可能となる。
【0009】
したがって、上記の構成によれば、フィルムの幅方向における歪曲を低減しつつ当該フィルムを巻き出すことが可能なフィルム製造方法を実現することができる。
【0010】
また、本発明に係るフィルム製造方法では、前記巻取工程にて、前記フィルムは、前記回転軸方向に波打つように歪曲した状態で前記コアに重畳的に巻き付けられており、前記巻出工程にて、巻き出した前記フィルムにおける前記歪曲が小さくなるように前記コアの振動を制御することが好ましい。
【0011】
上記の構成によれば、巻出工程にて、巻き出したフィルムにおける上記歪曲が小さくなるようにコアの振動を制御することにより、巻出工程にてフィルムを真っ直ぐな状態に近づけて巻き出すことができる。
【0012】
また、本発明に係るフィルム製造方法では、前記巻出工程における前記コアの振動周期および振幅は、前記巻取工程における前記コアの振動周期および振幅と同一であることが好ましい。
【0013】
上記の構成では、巻出工程におけるコアの振動周期および振幅を、巻取工程におけるコアの振動周期および振幅に一致させることにより、上記歪曲を好適に打ち消しながらフィルムを巻き出すことが可能となる。
【0014】
したがって、上記の構成によれば、巻出工程にてフィルムを真っ直ぐな状態に好適に近づけて巻き出すことができる。
【0015】
また、本発明に係るフィルム製造方法では、巻き出した前記フィルムの幅方向における端部の位置を検出し、検出した情報に基づいて、前記コアの振動を制御することが好ましい。
【0016】
上記の構成によれば、巻き出したフィルムの幅方向における端部の検出結果に基づいて、当該フィルムにおける上記歪曲が小さくなるようにコアの振動をフィードバック制御することが可能となる。
【0017】
したがって、上記の構成によれば、巻出工程にてフィルムをより真っ直ぐな状態に近づけて巻き出すことができる。
【0018】
また、本発明に係るフィルム製造方法では、前記巻出工程にて巻き出した前記フィルムを、所定の製品幅にスリットするスリット工程をさらに含むことが好ましい。
【0019】
上記の構成では、巻出工程にて巻き出した上記歪曲を低減させたフィルムがスリット工程へ導入される。そのため、スリット工程にてフィルムをスリットする際、製品化が不可能な、フィルムの幅方向の両端部において当該幅方向に波打った部分の幅(揺らぎ幅)を減少させることが可能となる。
【0020】
したがって、上記の構成によれば、製品の生産性の悪化を抑制することができる。
【0021】
また、本発明に係るフィルム製造方法では、前記フィルムは、当該フィルムの表面および裏面の少なくとも一方に機能層が形成されたものであってもよい。
【0022】
本発明は、表面および裏面の少なくとも一方に機能層が形成されたフィルムに対しても適用可能である。
【0023】
上記の構成によれば、機能層が形成されたフィルムにおける上記歪曲を低減しつつ当該フィルムを巻き出すことができる。
【0024】
上記課題を解決するために、本発明に係るフィルム巻出方法は、コアを回転軸方向に振動させながら当該コアの外周面にフィルムを巻き付ける巻取工程にて巻き取った前記フィルムを、前記コアを回転軸方向に振動させながら巻き出すことを特徴としている。
【0025】
上述のとおり、コアを回転軸方向に振動(オシレーション)させながら当該コアの外周面に巻き付けられたフィルムを巻き出す場合、通常、当該フィルムはコアの回転軸方向(フィルムの幅方向)に波打つように歪曲した状態で巻き出される。
【0026】
上記の構成では、コアの振動を適切に制御することにより、上記歪曲を打ち消しながらフィルムを巻き出すことが可能となる。
【0027】
したがって、上記の構成によれば、フィルムの幅方向における歪曲を低減しつつ当該フィルムを巻き出すことが可能なフィルム巻出方法を実現することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、フィルムの幅方向における歪曲を低減しつつ当該フィルムを巻き出すことが可能なフィルム製造方法およびフィルム巻出方法を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の一形態について、
図1から
図7に基づいて説明すれば、以下のとおりである。本実施形態では、本発明に係るフィルム製造方法を、リチウムイオン二次電池用セパレータ(セパレータと記す場合がある)の製造に適用した場合を例にして説明する。
【0031】
まず、リチウムイオン二次電池について、
図1から
図3に基づいて説明する。
【0032】
〔リチウムイオン二次電池の構成〕
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池は、エネルギー密度が高く、それゆえ、現在、パーソナルコンピュータ、携帯電話、携帯情報端末等の機器、自動車、航空機等の移動体に用いる電池として、また、電力の安定供給に資する定置用電池として広く使用されている。
【0033】
図1は、リチウムイオン二次電池1の断面構成を示す模式図である。
図1に示されるように、リチウムイオン二次電池1は、カソード11と、セパレータ12と、アノード13とを備える。リチウムイオン二次電池1の外部において、カソード11とアノード13との間に、外部機器2が接続される。そして、リチウムイオン二次電池1の充電時には方向Aへ、放電時には方向Bへ、電子が移動する。
【0034】
(セパレータ)
セパレータ(フィルム)12は、リチウムイオン二次電池1の正極であるカソード11と、その負極であるアノード13との間に、これらに挟持されるように配置される。セパレータ12は、カソード11とアノード13との間を分離しつつ、これらの間におけるリチウムイオンの移動を可能にする。セパレータ12は、その材料として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン等が用いられる。
【0035】
図2の(a)〜(c)は、
図1に示されるリチウムイオン二次電池1の各状態における様子を示す模式図である。
図2の(a)は、通常の様子を示し、
図2の(b)は、リチウムイオン二次電池1が昇温したときの様子を示し、
図2の(c)は、リチウムイオン二次電池1が急激に昇温したときの様子を示す。
【0036】
図2の(a)に示されるように、セパレータ12には、多数の孔Pが設けられている。通常、リチウムイオン二次電池1のリチウムイオン3は、孔Pを介し往来することができる。
【0037】
ここで、例えば、リチウムイオン二次電池1の過充電、または、外部機器2の短絡に起因する大電流等により、リチウムイオン二次電池1は、昇温することがある。この場合、
図2の(b)に示されるように、セパレータ12が融解または柔軟化し、孔Pが閉塞する。そして、セパレータ12は収縮する。これにより、リチウムイオン3の往来が停止するため、上述の昇温も停止する。
【0038】
しかし、リチウムイオン二次電池1が急激に昇温する場合、セパレータ12は、急激に収縮する。この場合、
図2の(c)に示されるように、セパレータ12は、破壊されることがある。そして、リチウムイオン3が、破壊されたセパレータ12から漏れ出すため、リチウムイオン3の往来は停止しない。ゆえに、昇温は継続する。
【0039】
(耐熱セパレータ)
図3の(a)および(b)は、他の構成のリチウムイオン二次電池1の各状態における様子を示す模式図である。
図3の(a)は通常の様子を示し、(b)はリチウムイオン二次電池1が急激に昇温したときの様子を示す。
【0040】
図3の(a)に示されるように、リチウムイオン二次電池1は、耐熱層(機能層)4をさらに備えていてもよい。この耐熱層4は、セパレータ12に設けることができる。
図3の(a)は、セパレータ12に、機能層としての耐熱層4が設けられた構成を示している。以下、セパレータ12に耐熱層4が設けられたフィルムを、耐熱セパレータ(フィルム)12aとする。
【0041】
図3の(a)に示す構成では、耐熱層4は、セパレータ12のカソード11側の片面に積層されている。なお、耐熱層4は、セパレータ12のアノード13側の片面に積層されてもよいし、セパレータ12の両面に積層されてもよい。そして、耐熱層4にも、孔Pと同様の孔が設けられている。通常、リチウムイオン3は、孔Pと耐熱層4の孔とを介し往来する。耐熱層4は、その材料として、例えば全芳香族ポリアミド(アラミド樹脂)を含む。
【0042】
図3の(b)に示されるように、リチウムイオン二次電池1が急激に昇温し、セパレータ12が融解または柔軟化しても、耐熱層4がセパレータ12を補助しているため、セパレータ12の形状は維持される。ゆえに、セパレータ12が融解または柔軟化し、孔Pが閉塞するにとどまる。これにより、リチウムイオン3の往来が停止するため、上述の過放電または過充電も停止する。このように、セパレータ12の破壊が抑制される。
【0043】
〔セパレータの製造フロー〕
次に、セパレータの製造フローについて説明する。
【0044】
図4は、セパレータの製造方法の概略を示すフロー図である。セパレータは、基材となるセパレータ原反に機能層が積層された構成を有している。セパレータ原反には、ポリオレフィン等のフィルムが用いられる。また、機能層としては、耐熱層や接着剤層が例示される。
【0045】
セパレータ原反への機能層の積層は、セパレータ原反に、機能層に対応する塗料(材料)等を塗工し、乾燥させることで行われる。
【0046】
図4では、機能層が耐熱層4である場合の、耐熱セパレータ12aの製造フローを例示している。例示するフローは、耐熱層4の材料として全芳香族ポリアミド(アラミド樹脂)を用い、それを、セパレータ原反(フィルム)12cであるポリオレフィン基材フィルムに積層するフローの一例である。
【0047】
このフローは、基材巻出・検査工程S1、塗工工程S2、析出工程S3、洗浄工程S4、乾燥工程S5、塗工品検査工程S6、塗工品巻取工程(巻取工程)S7、塗工品巻出工程(巻出工程,フィルム巻出方法)S8、およびスリット工程S9を含んでいる。
【0048】
(基材製造工程)
まず、基材としてのセパレータ原反12cの製造について、その材料として主にポリエチレンを含む場合を例として説明する。
【0049】
例示する製造方法は、熱可塑性樹脂に孔形成剤を加えてフィルム成形した後、該孔形成剤を適当な溶媒で除去する方法である。具体的には、セパレータ原反12cが、超高分子量ポリエチレンを含むポリエチレン樹脂を材料とする場合には、以下に示す(ア)〜(エ)の工程を順に経る製造方法となる。
【0050】
(ア)混練工程
超高分子量ポリエチレンと、炭酸カルシウム等の無機充填剤とを混練してポリエチレン樹脂組成物を得る工程。
【0051】
(イ)圧延工程
混練工程で得られたポリエチレン樹脂組成物を用いてフィルムを成形する工程。
【0052】
(ウ)除去工程
圧延工程で得られたフィルム中から無機充填剤を除去する工程。
【0053】
(エ)延伸工程
除去工程で得られたフィルムを延伸してセパレータ原反12cを得る工程。
【0054】
上記製造方法では、上記除去工程(ウ)で、フィルム中に多数の微細孔が設けられる。そして、上記延伸工程(エ)によって延伸されたフィルム中の微細孔が、上述の孔Pとなる。これにより、所定の厚さと透気度とを有するポリエチレン微多孔膜であるセパレータ原反12cが形成される。
【0055】
また、上記混練工程(ア)において、超高分子量ポリエチレン100重量部と、重量平均分子量1万以下の低分子量ポリオレフィン5〜200重量部と、無機充填剤100〜400重量部とを混練してもよい。
【0056】
なお、セパレータ原反12cが他の材料を含む場合でも、同様の製造工程により、セパレータ原反12cを製造することができる。また、セパレータ原反12cの製造方法は、孔形成剤を除去する上記方法に限定されず、種々の方法を用いることができる。
【0057】
次に、上記セパレータ原反12cの製造工程に続く各工程S1〜S9について、順に説明する。なお、各工程は、S1〜S9の順で進行する。
【0058】
(基材巻出・検査工程S1)
基材巻出・検査工程S1は、機能付与セパレータの基材となるセパレータ原反12cを、ロールから巻き出す工程である。また、巻き出したセパレータ原反12cについて、次工程の塗工に先立ち、セパレータ原反12cの検査を行う工程である。
【0059】
(塗工工程S2)
塗工工程S2は、基材巻出・検査工程S1で巻き出したセパレータ原反12cに耐熱層4の塗料(材料)を塗工する工程である。塗工工程S2では、セパレータ原反12cの一方の面のみに塗工を行ってもよいし、両面に塗工を行ってもよい。
【0060】
例えば、塗工工程S2では、セパレータ原反12cに、耐熱層用の塗料として、アラミドのNMP(N−メチル−ピロリドン)溶液を塗工する。なお、耐熱層4は上記アラミド耐熱層に限定されない。例えば、耐熱層用の塗料として、アルミナとカルボキシメチルセルロースと水との懸濁液を塗工してもよい。
【0061】
塗料をセパレータ原反12cに塗工する方法は、セパレータ原反12cを均一にウェットコーティングできる方法であれば特に限定はなく、種々の方法を採用することができる。
【0062】
例えば、キャピラリーコート法、スリットダイコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、バーコーター法、グラビアコーター法、ダイコーター法等を採用することができる。
【0063】
また、セパレータ原反12cに塗工される耐熱層4の材料の膜厚は、塗工ウェット膜の厚み、および、塗工液の固形分濃度を調節することによって制御することができる。
【0064】
この塗工工程S2では、セパレータ原反12cの幅方向における両端部側の表面に非塗工部分が残るように塗工(耳残し塗工)することが好ましい。なお、幅方向とは、セパレータ原反12cの長手方向と厚み方向とに対し略垂直である方向である。
【0065】
これにより、セパレータ原反12cの両端部側の表面まで塗料を行き渡らせる全面塗工を行う場合に生じる、セパレータ原反12cの両端部側の表面から裏面への塗料の回り込みを抑制することが可能となる。そのため、セパレータ原反12cの裏面へ塗料が回り込むことによって生じる製品不良を抑制することができる。耳残し塗工を行った場合、後述するスリット工程S9において、非塗工部分を切除すればよい。
【0066】
(析出工程S3)
析出工程S3は、塗工工程S2において塗工した塗料を固化させる工程である。塗料がアラミド塗料である場合には、例えば、塗工面に水蒸気を与え、湿度析出によりアラミドを固化させる。これにより、耐熱層4が形成されたセパレータ原反12cである耐熱セパレータ原反12b(
図5参照)が得られる。
【0067】
(洗浄工程S4)
洗浄工程S4は、析出工程S3において塗料を固化した耐熱セパレータ原反12bを洗浄する工程である。耐熱層4がアラミド耐熱層である場合には、洗浄液として、例えば、水、水系溶液、アルコール系溶液が好適に用いられる。
【0068】
なお、洗浄工程S4は、洗浄効果を高めるために、複数回の洗浄を行う多段洗浄であってもよい。
【0069】
また、洗浄工程S4の後、洗浄工程S4で洗浄した耐熱セパレータ原反12bを水切りする水切り工程を行ってもよい。水切りの目的は、次工程の乾燥工程S5に入る前に、耐熱セパレータ原反12bに付着した水等を取り除き、乾燥を容易にし、また乾燥不足を防止することにある。
【0070】
(乾燥工程S5)
乾燥工程S5は、洗浄工程S4において洗浄した耐熱セパレータ原反12bを乾燥させる工程である。乾燥の方法は、特には限定されず、例えば、加熱されたロールに耐熱セパレータ原反12bを接触させる方法や、耐熱セパレータ原反12bに熱風を吹き付ける方法等、種々の方法を用いることができる。
【0071】
(塗工品検査工程S6)
塗工品検査工程S6は、乾燥工程S5において乾燥させた耐熱セパレータ原反12bを検査する工程である。この検査を行う際、欠陥箇所を適宜マーキングすることで、耐熱セパレータ原反12bに欠陥が混入することを効率よく抑制することができる。
【0072】
(塗工品巻取工程S7)
塗工品巻取工程S7は、塗工品検査工程S6を経た耐熱セパレータ原反12bを円筒形状のコアに巻き取る工程である。コアに巻き取った耐熱セパレータ原反12bは、そのまま、幅広の状態で原反として出荷等されてもよい。
【0073】
図5は、
図4に示される塗工品巻取工程S7の一例を示す上面図である。なお、図中MDは、耐熱セパレータ原反12bの搬送方向を示す。
【0074】
図5に示されるように、塗工品巻取工程S7では、円筒形状のコア87を回転軸方向(セパレータの幅方向TDと記す場合がある)に振動(オシレーション)させながら、コア87の外周面に耐熱セパレータ原反12bを巻き付ける。これにより、耐熱セパレータ原反12bの長手方向に沿って厚みムラ75が生じた場合であっても、当該厚みムラ75を幅方向TDに分散させながら、耐熱セパレータ原反12bをコア87に巻き取ることが可能となる。そのため、コア87の外周面に耐熱セパレータ原反12bを巻き付けた状態における耐熱セパレータ原反12bの表面の平面性を改善することが可能となる。
【0075】
図6の(a)は、塗工品巻取工程S7において得られた捲回体5を示す断面図であり、
図6の(b)は、
図6の(a)に示される破線枠Cにおける耐熱セパレータ原反12bの表面の状態を示す拡大図であり、
図6の(c)は、塗工品巻取工程S7においてコア87を振動させずに耐熱セパレータ原反12bを巻き取った場合の耐熱セパレータ原反12bの表面の状態を示す参考図である。
【0076】
捲回体5とは、コア87の外周面に耐熱セパレータ原反12bを重畳的に巻き付けた耐熱セパレータ原反12bの巻物である。
【0077】
幅方向TDにコア87を振動させながら耐熱セパレータ原反12bをコア87に巻き取った場合、耐熱セパレータ原反12bは、幅方向TDに周期的に波打つように歪曲した状態でコア87に巻き付けられる。
【0078】
そのため、
図6の(a)に示されるように、塗工品巻取工程S7において得られた捲回体5では、耐熱セパレータ原反12bの端部Eが揃わず、コア87の振幅に応じた凹凸が端部Eに生じる。
【0079】
塗工品巻取工程S7では、耐熱セパレータ原反12bの長手方向に沿って生じた厚みムラ75を幅方向TDに分散させながら耐熱セパレータ原反12bがコア87に巻き取られるため、耐熱セパレータ原反12bの厚みムラ75の巻き取り位置はコア87の両振幅(片振幅×2)分だけ分散する。そのため、
図6の(b)に示されるように、厚みムラ75に起因して生じる耐熱セパレータ原反12bの表面における隆起76を低くすることができる。
【0080】
一方、塗工品巻取工程S7においてコア87を振動させずに耐熱セパレータ原反12bを巻き取った場合、耐熱セパレータ原反12bの厚みムラ75の巻き取り位置は一定である。そのため、
図6の(c)に示されるように、耐熱セパレータ原反12bの巻き数が増えるにしたがって厚みムラ75に起因する隆起76が強調され、隆起76が高くなる。
【0081】
このように、塗工品巻取工程S7において、耐熱セパレータ原反12bの幅方向TDにコア87を振動させながら、耐熱セパレータ原反12bを巻き取ることにより、捲回体5における、耐熱セパレータ原反12bの表面の平面性を改善することが可能となる。
【0082】
コア87を幅方向TDに振動させる方法は特に限定されないが、例えば、モーターや油圧シリンダ等を用いたオシレーション装置によって、コア87の内側に貫設された第1巻取ローラ80を幅方向TDに振動させる方法等が挙げられる。
【0083】
また、コア87を幅方向TDに振動させる振動パターンは特に限定されないが、耐熱セパレータ原反12bの長手方向に平均したときに、耐熱セパレータ原反12bを偏りなく振動させる振動パターンであることが好ましい。コア87の振動パターンは一定速度でもよいが、往復運動の運動方向が切り替わる点に近づくにつれて移動速度が小さくなる振動パターンであることが好ましい。
【0084】
塗工品巻取工程S7におけるコア87の振幅は、1mm以上、30mm以下であることが好ましい。コア87の振幅を上記範囲に設定することにより、捲回体5における耐熱セパレータ原反12bの表面の平面性を改善する効果を好適に得ることができる。
【0085】
また、塗工品巻取工程S7におけるコア87の振動周期は、例えば2s以上、180s以下であり、耐熱セパレータ原反12bの搬送速度(巻取速度)は、例えば0.01m/s以上、5m/s以下であることが好ましい。塗工品巻取工程S7におけるコア87の振動周期および搬送速度を上記範囲に設定することにより、製品の生産性を維持しつつ、耐熱セパレータ原反12bに過剰な負荷を与えずに耐熱セパレータ原反12bを巻き取ることが可能となる。
【0086】
(塗工品巻出工程S8)
塗工品巻出工程S8は、塗工品巻取工程S7において得られた捲回体5から、耐熱セパレータ原反12bを巻き出す工程である。塗工品巻出工程S8では、幅方向TDにコア87を振動(オシレーション)させながら、コア87から耐熱セパレータ原反12bを巻き出す。これにより、搬送方向MDに対して、耐熱セパレータ原反12bを真っ直ぐな状態に近づけて、巻き出すことが可能となる。なお、塗工品巻出工程S8の詳細は後述する。
【0087】
(スリット工程S9)
スリット工程S9は、塗工品巻出工程S8において巻き出した耐熱セパレータ原反12bを、所定の製品幅にスリット(切断)する工程である。具体的には、スリット工程S9では、耐熱セパレータ原反12bをリチウムイオン二次電池1等の応用製品に適した幅である製品幅にスリットする。
【0088】
生産性を上げるために、通常、耐熱セパレータ原反12bは、その幅が製品幅以上となるように製造される。そして、一旦、製品幅以上に製造された後に、耐熱セパレータ原反12bは、製品幅にスリットされて耐熱セパレータ12aとなる。
【0089】
(塗工品巻出工程S8の詳細)
図7の(a)および(b)は、
図4に示される塗工品巻出工程S8およびスリット工程S9の一例を示す模式図である。
【0090】
図7の(a)に示されるように、塗工品巻出工程S8およびスリット工程S9は、巻出・スリット装置8によって行われる。
【0091】
巻出・スリット装置8は、回転可能に支持された円柱形状の、巻出ローラ81、ローラ82〜85、および複数の第2巻取ローラ86を備える。巻出・スリット装置8には、図示しない刃が複数設けられる。捲回体5は、巻出ローラ81に嵌められる。
【0092】
上述のとおり、捲回体5では、耐熱セパレータ原反12bは、幅方向TDに波打つように歪曲した状態でコア87に重畳的に巻き付けられる。そのため、塗工品巻出工程S8において、コア87を幅方向TDに振動させずに耐熱セパレータ原反12bを巻き出した場合、耐熱セパレータ原反12bは、幅方向TDに波打つように歪曲した状態でスリット工程S9へ搬送される。この場合、耐熱セパレータ原反12bは、製品化が不可能な幅方向TDに波打った耳部分(両端部E)を含むため、製品の生産性が悪化する。
【0093】
そこで、
図7の(a)および(b)に示されるように、塗工品巻出工程S8では、幅方向TDにコア87を振動させながら、耐熱セパレータ原反12bを巻き出する。
【0094】
具体的には、塗工品巻出工程S8では、巻き出した耐熱セパレータ原反12bの幅方向TDにおける歪曲が小さくなるようにコア87の振動を制御する。
【0095】
例えば、巻き出した耐熱セパレータ原反12bの端部Eの位置を検出するエッジ検出装置を巻き出し直後に搬送路に設け、エッジ検出装置が検出した情報に基づいて、コア87の振動をフィードバック制御する。
【0096】
または、塗工品巻取工程S7におけるオシレーション情報(振動周期、振幅、位相等の情報)を取得し、当該情報を塗工品巻出工程S8で使用するオシレーション装置に入力することで、コア87の振動を制御してもよい。
【0097】
これにより、耐熱セパレータ原反12bの幅方向TDにおける歪曲を打ち消し、耐熱セパレータ原反12bを真っ直ぐな状態に近づけて、耐熱セパレータ原反12bを巻き出すことが可能となる。そのため、次工程であるスリット工程S9にて耐熱セパレータ原反12bをスリットする際、耐熱セパレータ原反12bにおいて製品化が不可能な、両端部Eにおいて幅方向TDに波打った耳部分の幅(揺らぎ幅)が減少するため、製品の生産性の悪化を抑制することができる。
【0098】
塗工品巻出工程S8では、塗工品巻出工程S8におけるコア87の振幅および振動周期は、上述した塗工品巻取工程S7におけるコア87の振幅および振動周期と同一であることが好ましい。これにより、耐熱セパレータ原反12bの幅方向TDにおける歪曲を好適に打ち消しながら耐熱セパレータ原反12bを巻き出すことが可能となる。
【0099】
なお、コア87を幅方向TDに振動させる方法は特に限定されないが、例えば、モーターや油圧シリンダ等を用いたオシレーション装置によって、コア87に内側に貫設された巻出ローラ81を幅方向TDに振動させる方法等が挙げられる。
【0100】
塗工品巻出工程S8では、耐熱セパレータ原反12bはコア87から経路UまたはLへ巻き出される。巻き出した耐熱セパレータ原反12bは、ローラ83を経由し、ローラ84へ搬送される。搬送される工程において耐熱セパレータ原反12bは、搬送方向MDに対して略平行にスリットされる。これにより、セパレータ原反12cが製品幅にスリットされた複数の耐熱セパレータ12aが製造される。
【0101】
製造された複数の耐熱セパレータ12aは、それぞれ、第2巻取ローラ86に嵌められたコア88に巻き取られる。
【0102】
〔まとめ〕
以上のように、本実施形態に係るセパレータの製造方法は、コア87を回転軸方向(幅方向TD)に振動させながらコア87の外周面に耐熱セパレータ原反12bを巻き付ける塗工品巻取工程S7にて巻き取った耐熱セパレータ原反12bを、コア87から巻き出す塗工品巻出工程S8を含み、塗工品巻出工程S8にて、コア87を回転軸方向(幅方向TD)に振動させる。
【0103】
コア87を回転軸方向に振動(オシレーション)させながらコア87の外周面に巻き付けられた耐熱セパレータ原反12bを巻き出す場合、通常、耐熱セパレータ原反12bは幅方向TDに波打つように歪曲した状態で巻き出される。
【0104】
本実施形態に係るセパレータの製造方法では、塗工品巻出工程S8にてコア87の振動を適切に制御することにより、耐熱セパレータ原反12bの幅方向TDにおける歪曲を打ち消しながら耐熱セパレータ原反12bを巻き出すことが可能となる。
【0105】
したがって、本実施形態によれば、塗工品巻出工程S8にて、耐熱セパレータ原反12bの幅方向TDにおける歪曲を低減しつつ耐熱セパレータ原反12bを巻き出すことが可能なセパレータの製造方法を実現することができる。
【0106】
なお、本実施形態では、本発明に係るフィルム製造方法を、リチウムイオン二次電池用セパレータの製造に適用した場合を例にして説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明に係るフィルム製造方法は、リチウムイオン二次電池用セパレータ以外の各種フィルムの製造に適用することができる。
【0107】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。