【課題を解決するための手段】
【0008】
封孔処理をした多孔質膜をエッチングする場合、多孔質膜の孔内が十分に封孔されていることが望ましいが、封孔される材料が多孔質膜の表面上にも液体状態で存在するとエッチング工程に悪影響を及ぼす。よって、エッチングを実施する温度は、所定の圧力下において、封孔される材料が多孔質膜の孔内に毛細管凝縮により凝縮する温度以下であって、
該材料が液化する温度以上の温度条件下とすることが望ましい。また、エッチングに好適な温度の範囲は、広い方がエッチング条件の制御が容易である。上記により、所定の圧力下、多孔質膜を封孔する材料の液化温度と、該材料が毛細管凝縮により多孔質膜の孔内に凝縮する温度との差が大きい化合物が多孔質膜の封孔用材料として好適である。
【0009】
そこで本発明者らは、蒸気圧、沸点および多孔質膜上における該化合物の接触角に着目し、該接触角が小さい方が液化温度と毛細管凝縮が起こる温度との温度差が大きくなり、蒸気圧曲線と接触角などの知見から、多孔質膜の封孔用材料として好適な化合物及び多孔質膜封孔方法を見出した。
【0010】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0011】
[適用例1]
本発明に係る多孔質膜封孔方法の一態様は、
多孔質膜中の孔を封孔する方法であって、
前記多孔質膜を有する被封孔処理体が収容された処理容器内に第1の材料を供給する第1の工程を含み、
前記第1の材料は、炭素原子数が6以上の非芳香族フルオロカーボンを含むことを特徴とする。
【0012】
かかる適用例によれば、炭素原子数が6以上の非芳香族フルオロカーボンを含む第1の材料が多孔質膜の孔内に浸入し、多孔質膜の孔が封孔される。
【0013】
[適用例2]
適用例1の多孔質膜封孔方法における前記第1の工程において、
前記第1の材料は前記処理容器内にガス状態で導入され、前記第1の材料が前記多孔質膜中の孔を封孔することができる。
【0014】
かかる適用例によれば、第1の材料がガス状態で導入されることから、処理容器内で均一に第1の材料ガスが分散する。分散した第1の材料ガスは毛細管凝縮現象により多孔質膜の孔内に浸入し、均一な封孔処理を行うことができる。
【0015】
[適用例3]
適用例1または適用例2の多孔質膜封孔方法における前記第1の工程において、
前記第1の材料は前記処理容器内に液体状態で導入され、前記第1の材料が前記多孔質膜中の孔を封孔することができる。
【0016】
かかる適用例によれば、第1の材料を気化させることなく、液体状態で導入できる。供給された第1の材料(液体)は毛細管現象により多孔質膜の孔内に浸入し、封孔処理を行うことができる。
【0017】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか1例の多孔質膜封孔方法において、
エッチングガスによりプラズマを生成する第2の工程をさらに含むことができる。
【0018】
かかる適用例によれば、多孔質膜の孔に第1の材料が浸入し封孔された状態でプラズマエッチングを実施することができる。よって、多孔質膜へのダメージの少ないエッチングを行うことができる。
【0019】
[適用例5]
適用例4の多孔質膜封孔方法において、
前記第2の工程は、前記第1の工程の後に行われ、前記第2の工程において、前記第1の材料がエッチングガスとして作用することができる。
【0020】
第1の工程を経ることにより、多孔質膜の孔が第1の材料によって封孔されるので、多孔質膜の機械的強度が向上する。これにより、多孔質膜へのダメージの少ないエッチングを行うことができる。また、第2の工程においてエッチングが行われると、多孔質膜のうちエッチングにより露出した面の孔が開孔する。プラズマ条件下で、開孔部から孔を封孔していた第1の材料が気化、分散すると、第1の材料はエッチングガスとしても作用することができる。
【0021】
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか1例の多孔質膜封孔方法において、
前記処理容器内の温度を上昇させ、および/または、前記処理容器内の圧力を低下させることにより、前記第1の材料を前記多孔質膜中の孔から除去する第3の工程をさらに含むことができる。
【0022】
かかる適用例によれば、第3の工程により、第1の材料が蒸発し、多孔質膜の孔から除去され、多孔質膜を次のプロセスに供することができる。なお、第3の工程終了後、再び第1の工程から繰り返し実行しても良い。
【0023】
[適用例7]
適用例1ないし適用例6のいずれか1例の多孔質膜封孔方法において、
前記第1の材料は環状構造を有し、25℃の温度における蒸気圧が0.05Torr以上25Torr以下であることができる。
【0024】
かかる適用例によれば、第1の工程を実施する温度において、第1の材料が多孔質膜の孔内に浸入し凝縮しやすい。よって多孔質膜の封孔が起きやすくなる。
【0025】
[適用例8]
適用例1ないし適用例6のいずれか1例の多孔質膜封孔方法において、
前記第1の材料は直鎖または分岐構造を有し、25℃の温度における蒸気圧が0.05Torr以上40Torr以下であることができる。
【0026】
かかる適用例によれば、第1の工程を実施する温度において、第1の材料が多孔質膜の孔内に浸入し凝縮しやすい。第1の材料が直鎖または分岐構造である場合には、その分子の立体構造の自由度が大きく、環状構造である場合よりも多孔質膜の微細な孔内への浸入・凝縮に好適である。
【0027】
[適用例9]
適用例1ないし適用例8のいずれか1例の多孔質膜封孔方法において、
前記第1の材料は、−50℃から−20℃の温度範囲における蒸気圧が0.0001Torr以上0.1Torr以下であることができる。
【0028】
かかる適用例によれば、多孔質膜の孔内に浸入・凝縮した第1の材料が孔内に残存した状態でエッチングを実施することができる。
【0029】
[適用例10]
適用例1ないし適用例9のいずれか1例の多孔質膜封孔方法において、
前記第1の材料は、標準沸点が100℃以上400℃以下であることができる。ここで標準沸点とは、第1の材料の蒸気圧が大気圧(101325Pa)と等しくなる温度をいう。
【0030】
[適用例11]
適用例1ないし適用例10のいずれか1例の多孔質膜封孔方法において、
前記第1の材料は、前記第1の材料の一分子中に含有される合計原子数のうち0%以上20%以下が水素原子であることができる。
【0031】
[適用例12]
適用例1ないし適用例11のいずれか1例の多孔質膜封孔方法において、
前記第1の材料は、前記第1の材料の分子量のうち0%以上5%以下が水素原子の原子量であることができる。
【0032】
かかる適用例によれば、水素原子が第1の材料中に含まれる割合が比較的少ない。このため第1の材料による多孔質膜の還元が起きにくく、デバイスに与えるダメージを抑制することができる。
【0033】
[適用例13]
適用例1ないし適用例12のいずれか1例の多孔質膜封孔方法において、
前記第1の材料は、1以上の酸素原子および/または窒素原子を含有することができる。
【0034】
[適用例14]
適用例1ないし適用例13のいずれか1例の多孔質膜封孔方法において、
前記第1の材料は、前記多孔質膜上における接触角が0度より大きく、5度以下であることができる。
【0035】
かかる適用例によれば、第1の材料が毛細管現象により多孔質膜の孔内に浸入しやすい。
【0036】
[適用例15]
適用例1ないし適用例14のいずれか1例の多孔質膜封孔方法において、
前記第1の材料は、下記一般式(1)ないし一般式(4)のいずれかの一般式で表される化合物であることができる。
CR
13(CR
22)
nCR
33 ・・・・・(1)
(ここで、式(1)中、複数存在するR
1は各々独立して、H、F、Cl、CF
3またはCHF
2であり、複数存在するR
2は各々独立して、H、F、Cl、CF
3またはCHF
2であり、複数存在するR
3は各々独立して、H、F、Cl、CF
3またはCHF
2である。nは4以上15以下の整数である。)
CR
43(O(CR
52)
m)
nOCR
63 ・・・・・(2)
(ここで、式(2)中、複数存在するR
4は各々独立してH、F、Cl、CF
3またはCHF
2であり、複数存在するR
5は各々独立してH、F、Cl、CF
3またはCHF
2であり、複数存在するR
6は各々独立して、H、F、Cl、CF
3またはCHF
2である。nは1以上15以下の整数であり、mは1以上4以下の整数であり、nとmを乗じた数は4以上15以下である。)
【化1】
(ここで、式(3)中、複数存在するR
7は各々独立してH、F、Cl、CF
3またはCHF
2であり、nは6以上17以下の整数である。)
【化2】
(ここで、式(4)中、複数存在するR
8は各々独立してH、F、Cl、CF
3またはCHF
2であり、nは2以上17以下の整数であり、mは1以上4以下の整数であり、nとmを乗じた数は6以上17以下である。)
【0037】
[適用例16]
適用例1ないし適用例14のいずれか1例の多孔質膜封孔方法において、
前記第1の材料は、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリペンチルアミン、パーフルオロトリプロピルアミン、パーフルオロデカリン、パーフルオロテトラデカハイドロフェナントレン、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロデカン、パーフルオロウンデカン、パーフルオロトリグリム、パーフルオロテトラグリム、パーフルオロペンタグリム、パーフルオロ−1,4−ジメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−1,3,5−トリメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−1,2,4,5−テトラメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−15−クラウン−5−エーテル、およびヘキサフルオロプロピレンオキサイドトリマーよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることができる。
【0038】
[適用例17]
適用例1ないし適用例16のいずれか1例の多孔質膜封孔方法において、
前記第1の材料は、純度が99.9重量%以上100重量%以下であり、水を0%以上0.1%以下含有することができる。
【0039】
かかる適用例によれば、純度が99.9重量%以上100重量%以下であり、水を0%以上0.1%以下含有する炭素原子数6以上の非芳香族フルオロカーボンを使用することで、プラズマにより励起された酸素ラジカル、OHラジカル等の活性種に起因する、多孔質膜および多孔質膜を含むデバイスへのダメージを低減することができる。
【0040】
[適用例18]
本発明に係る多孔質膜封孔用材料の一態様は、
炭素原子数6以上の非芳香族フルオロカーボンを含むことを特徴とする。
【0041】
かかる適用例によれば、炭素原子数が6以上の非芳香族フルオロカーボンを含む多孔質膜封孔用材料が多孔質膜の孔内に浸入し、多孔質膜の孔が封孔される。
【0042】
[適用例19]
適用例18の多孔質膜封孔用材料は、エッチング工程に用いられることができる。
【0043】
かかる適用例によれば、前記多孔質膜封孔用材料は毛細管凝縮現象により多孔質膜の孔内に浸入し、孔を封孔することができるので、該多孔質膜のエッチング工程におけるダメ
ージを低減することができる。
【0044】
[適用例20]
適用例18または適用例19の多孔質膜封孔用材料は、環状構造を有し、25℃の温度における蒸気圧が0.05Torr以上25Torr以下であることができる。
【0045】
かかる適用例によれば、多孔質膜の膜を封孔する温度において、多孔質膜封孔用材料が多孔質膜の孔内に浸入し凝縮しやすい。よって、多孔質膜の封孔が起きやすくなる。
【0046】
[適用例21]
適用例18または適用例19の多孔質膜封孔用材料は、直鎖または分岐構造を有し、25℃の温度における蒸気圧が0.05Torr以上40Torr以下であることができる。
【0047】
かかる適用例によれば、多孔質膜の膜を封孔する温度において、前記多孔質膜封孔用材料が多孔質膜の孔内に浸入し凝縮しやすい。前記多孔質膜封孔用材料が直鎖または分岐構造である場合には、その分子の立体構造の自由度が高く、環状構造である場合よりも多孔質膜の微細な孔内への浸入・凝縮に好適である。
【0048】
[適用例22]
適用例18ないし適用例21のいずれか1例の多孔質膜封孔用材料は、−50℃から−20℃の温度範囲における蒸気圧が0.0001Torr以上0.1Torr以下であることができる。
【0049】
かかる適用例によれば、多孔質膜封孔用材料が多孔質膜を封孔した状態のままエッチングを実施することができる。
【0050】
[適用例23]
適用例18ないし適用例22のいずれか1例の多孔質膜封孔用材料は、標準沸点が100℃以上400℃以下であることができる。
【0051】
[適用例24]
適用例18ないし適用例23のいずれか1例の多孔質膜封孔用材料は、その一分子中に含有される合計原子数のうち0%以上20%以下が水素原子であることができる。
【0052】
かかる適用例によれば、多孔質膜封孔用材料中に含まれる水素原子の割合が少ないため、多孔質膜封孔用材料による多孔質膜の還元が起きにくく、デバイスに与えるダメージを抑制することができる。
【0053】
[適用例25]
適用例18ないし適用例24のいずれか1例の多孔質膜封孔用材料は、その分子量のうち0%以上5%以下が水素原子の原子量であることができる。
【0054】
[適用例26]
適用例18ないし適用例25のいずれか1例の多孔質膜封孔用材料は、1以上の酸素原子および/または窒素原子を含有することができる。
【0055】
[適用例27]
適用例18ないし適用例26のいずれか1例の多孔質膜封孔用材料は、前記多孔質膜上における接触角が0度より大きく、5度以下であることができる。
【0056】
かかる適用例によれば、多孔質膜封孔用材料が毛細管現象により多孔質膜の孔内に浸入しやすい。
【0057】
[適用例28]
適用例18ないし適用例27のいずれか1例の多孔質膜封孔用材料は、下記一般式(1)ないし一般式(4)のいずれかの一般式で表される化合物であることができる。
CR
13(CR
22)
nCR
33 ・・・・・(1)
(ここで、式(1)中、複数存在するR
1は各々独立して、H、F、Cl、CF
3またはCHF
2であり、複数存在するR
2は各々独立して、H、F、Cl、CF
3またはCHF
2であり、複数存在するR
3は各々独立して、H、F、Cl、CF
3またはCHF
2である。nは4以上15以下の整数である。)
CR
43(O(CR
52)
m)
nOCR
63 ・・・・・(2)
(ここで、式(2)中、複数存在するR
4は各々独立してH、F、Cl、CF
3またはCHF
2であり、複数存在するR
5は各々独立してH、F、Cl、CF
3またはCHF
2であり、
複数存在するR
6は各々独立して、H、F、Cl、CF
3またはCHF
2である。nは1以上15以下の整数であり、mは1以上4以下の整数であり、nとmを乗じた数は4以上15以下である。)
【化3】
(ここで、式(3)中、複数存在するR
7は各々独立してH、F、Cl、CF
3またはCHF
2であり、nは6以上17以下の整数である。)
【化4】
(ここで、式(4)中、複数存在するR
8は各々独立してH、F、Cl、CF
3またはCHF
2であり、nは2以上17以下の整数であり、mは1以上4以下の整数であり、nとmを乗じた数は6以上17以下である。)
【0058】
[適用例29]
適用例18ないし適用例27のいずれか1例の多孔質膜封孔用材料は、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリペンチルアミン、パーフルオロトリプロピルアミン、パーフルオロデカリン、パーフルオロテトラデカハイドロフェナントレン、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロデカン、パーフルオロウンデカン、パーフルオロトリグリム、パーフルオロテトラグリム、パーフルオロペンタグリム、パーフルオロ−1,4−ジメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−1,3,5−トリメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−1,2,4,5−テトラメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−15−クラウン−5−エーテル、およびヘキサフルオロプロピレンオキサイドトリマーよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることができる。
【0059】
[適用例30]
適用例18ないし適用例29のいずれか1例の多孔質膜封孔用材料は、純度が99.9重量%以上100重量%以下であり、水を0%以上0.1%以下含有することができる。
【0060】
かかる適用例によれば、純度が99.9重量%以上100重量%以下であり、水を0%以上0.1%以下含有する多孔質膜封孔用材料を使用することで、プラズマにより励起された酸素ラジカル、OHラジカル等の活性種に起因する、多孔質膜および多孔質膜を含むデバイスへのダメージを低減することができる。