特許第6875152号(P6875152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6875152多孔質膜封孔方法および多孔質膜封孔用材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6875152
(24)【登録日】2021年4月26日
(45)【発行日】2021年5月19日
(54)【発明の名称】多孔質膜封孔方法および多孔質膜封孔用材料
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20210510BHJP
   H01L 21/312 20060101ALI20210510BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20210510BHJP
   H01L 23/532 20060101ALI20210510BHJP
   C08J 9/40 20060101ALI20210510BHJP
【FI】
   H01L21/302 105Z
   H01L21/312 A
   H01L21/90 S
   C08J9/40CEQ
   C08J9/40CER
   C08J9/40CEZ
   C08J9/40CFJ
【請求項の数】26
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-40708(P2017-40708)
(22)【出願日】2017年3月3日
(65)【公開番号】特開2018-145275(P2018-145275A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】占部 継一郎
(72)【発明者】
【氏名】沈 鵬
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン デュサラ
(72)【発明者】
【氏名】服部 大輝
(72)【発明者】
【氏名】田原 慈
【審査官】 正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−184725(JP,A)
【文献】 特開2015−061073(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0371869(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0119014(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0324849(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0266698(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0233579(US,A1)
【文献】 特開平11−040548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
C08J 9/40
H01L 21/312
H01L 21/768
H01L 23/532
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質膜中の孔を封孔する方法であって、
前記多孔質膜を有する被封孔処理体が収容された処理容器内に第1の材料を供給する第1の工程を含み、
前記第1の材料は、下記一般式(2)または下記一般式(4)で表される、炭素原子数が6以上の非芳香族フルオロカーボンを含むことを特徴とする多孔質膜封孔方法。
CR(O(CROCR ・・・・・(2)
(ここで、式(2)中、複数存在するRは各々独立してH、F、Cl、CFまたはCHFであり、複数存在するRは各々独立してH、F、Cl、CFまたはCHFであり、複数存在するRは各々独立して、H、F、Cl、CFまたはCHFである。nは1以上15以下の整数であり、mは1以上4以下の整数であり、nとmを乗じた数は4以上15以下である。)
【化7】

(ここで、式(4)中、複数存在するRは各々独立してH、F、Cl、CFまたはCHFであり、nは2以上17以下の整数であり、mは1以上4以下の整数であり、nとmを乗じた数は6以上17以下である。)
【請求項2】
前記第1の工程において、
前記第1の材料は前記処理容器内にガス状態で導入され、
前記第1の材料が前記多孔質膜中の孔を封孔することを特徴とする、請求項1に記載の
多孔質膜封孔方法。
【請求項3】
前記第1の工程において、
前記第1の材料は前記処理容器内に液体状態で導入され、
前記第1の材料が前記多孔質膜中の孔を封孔することを特徴とする、請求項1に記載の多孔質膜封孔方法。
【請求項4】
エッチングガスによりプラズマを生成する第2の工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の多孔質膜封孔方法。
【請求項5】
前記第2の工程は、前記第1の工程の後に行われ、
前記第2の工程において、前記第1の材料がエッチングガスとして作用することを特徴とする、請求項4に記載の多孔質膜封孔方法。
【請求項6】
前記処理容器内の温度を上昇させ、および/または、前記処理容器内の圧力を低下させることにより、前記第1の材料を前記多孔質膜中の孔から除去する第3の工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の多孔質膜封孔方法。
【請求項7】
前記第1の材料は環状構造を有し、25℃の温度における蒸気圧が0.05Torr以上25Torr以下であることを特徴とする、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の多孔質膜封孔方法。
【請求項8】
前記第1の材料は直鎖または分岐構造を有し、25℃の温度における蒸気圧が0.05Torr以上40Torr以下であることを特徴とする、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の多孔質膜封孔方法
【請求項9】
前記第1の材料は、−50℃から−20℃の温度範囲における蒸気圧が0.0001Torr以上0.1Torr以下であることを特徴とする、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の多孔質膜封孔方法。
【請求項10】
前記第1の材料は、標準沸点が100℃以上400℃以下であることを特徴とする、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の多孔質膜封孔方法。
【請求項11】
前記第1の材料は、前記第1の材料の一分子中に含有される合計原子数のうち0%以上20%以下が水素原子であることを特徴とする、請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の多孔質膜封孔方法。
【請求項12】
前記第1の材料は、前記第1の材料の分子量のうち0%以上5%以下が水素原子の原子量であることを特徴とする、請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の多孔質膜封孔方法。
【請求項13】
前記第1の材料は、前記多孔質膜上における接触角が0度より大きく、5度以下であることを特徴とする、請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の多孔質膜封孔方法。
【請求項14】
前記第1の材料は、パーフルオロトリグリム、パーフルオロテトラグリム、パーフルオロペンタグリム、パーフルオロ−15−クラウン−5−エーテル、およびヘキサフルオロプロピレンオキサイドトリマーよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の多孔質膜封孔方法。
【請求項15】
前記第1の材料は、純度が99.9重量%以上100重量%以下であり、水を0%以上0.1%以下含有することを特徴とする、請求項1ないし請求項14のいずれか1項に記載の多孔質膜封孔方法。
【請求項16】
下記一般式(2)または下記一般式(4)で表される、炭素原子数6以上の非芳香族フルオロカーボンを含むことを特徴とする、多孔質膜封孔用材料。
CR(O(CROCR ・・・・・(2)
(ここで、式(2)中、複数存在するRは各々独立してH、F、Cl、CFまたはCHFであり、複数存在するRは各々独立してH、F、Cl、CFまたはCHFであり、複数存在するRは各々独立して、H、F、Cl、CFまたはCHFである。nは1以上15以下の整数であり、mは1以上4以下の整数であり、nとmを乗じた数は4以上15以下である。)
【化8】

(ここで、式(4)中、複数存在するRは各々独立してH、F、Cl、CFまたはCHFであり、nは2以上17以下の整数であり、mは1以上4以下の整数であり、nとmを乗じた数は6以上17以下である。)
【請求項17】
エッチング工程に用いられることを特徴とする、請求項16に記載の多孔質膜封孔用材料。
【請求項18】
環状構造を有し、25℃における蒸気圧が0.05Torr以上25Torr以下であることを特徴とする、請求項16または請求項17に記載の多孔質膜封孔用材料。
【請求項19】
直鎖または分岐鎖構造を有し、25℃における蒸気圧が0.075Torr以上40Torr以下であることを特徴とする、請求項16または請求項17に記載の多孔質膜封孔用材料。
【請求項20】
−50℃〜−20℃の温度範囲における蒸気圧が0.0001Torr以上0.1Torr以下であることを特徴とする、請求項16ないし請求項19のいずれか1項に記載の多孔質膜封孔用材料。
【請求項21】
標準沸点が100℃以上400℃以下であることを特徴とする、請求項16ないし請求項20のいずれか1項に記載の多孔質膜封孔用材料。
【請求項22】
一分子中に含有される合計原子数のうち0%以上20%以下が水素原子であることを特徴とする、請求項16ないし請求項21のいずれか1項に記載の多孔質膜封孔用材料。
【請求項23】
分子量のうち0%以上5%以下が水素原子の原子量であることを特徴とする、請求項16ないし請求項22のいずれか1項に記載の多孔質膜封孔用材料。
【請求項24】
多孔質膜上における接触角が0度より大きく、5度以下である、請求項16ないし請求項23のいずれか1項に記載の多孔質膜封孔用材料。
【請求項25】
パーフルオロトリグリム、パーフルオロテトラグリム、パーフルオロペンタグリム、パ
ーフルオロ−15−クラウン−5−エーテル、およびヘキサフルオロプロピレンオキサイドトリマーよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、請求項16ないし請求項24のいずれか1項に記載の多孔質膜封孔用材料。
【請求項26】
純度が99.9重量%以上100重量%以下であり、水を0%以上0.1%以下含有することを特徴とする、請求項16ないし請求項25のいずれか1項に記載の多孔質膜封孔用材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質膜封孔方法および多孔質膜封孔用材料に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質膜は、水処理、バイオ、食品、化粧料、医療、診断、半導体、理化学分析等の多くの分野で用いられている。しかしながら、多孔質膜は機械的強度が弱く、加工の際にダメージを受ける場合が多い。
【0003】
半導体の分野においては、次世代半導体向けに低誘電率層間絶縁膜材料(以下、「Low−k膜」という。)が開発されている。Low−k膜とは、4.0よりも低い比誘電率を有する膜の総称のことをいう。Low−k膜の比誘電率をできる限り低減させるためには、空孔を多く含んだ多孔質膜とすることが必要である。しかしながら、空孔を導入すると弾性率や硬さといった機械的強度は空孔量に比例して著しく低下するため、プラズマエッチングによりダメージを受けやすく、プロセス中に剥離するなどの問題が生じやすい。このように、半導体の分野では、Low−k膜の低誘電率化とプロセス耐性の両立が課題となっていた。
【0004】
そこで、多孔質膜表面の処理を可能にしつつ、過剰な損傷から保護するために、多孔質膜の孔に化合物を凝縮させ、孔を保護してエッチングすることによりダメージを軽減する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この方法では化合物を凝縮させるための処理を行う温度範囲が狭く、またその温度範囲が低温域であるため、反応の制御が困難であり、冷却のための装置も大がかりなものとなる。
【0005】
特許文献1に示すような多孔質膜の孔に化合物を凝縮させる方法は極低温で行われる。このため液体窒素を冷媒として使用し、極低温に対応し得る処理装置を使用することが必要となる。そこで、極低温機構を必要としない多孔質膜のエッチング方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−61073号公報
【特許文献2】特開2016−207768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2に開示される方法では、孔に凝縮させる化合物としてC等の芳香族系フルオロカーボンを使用している。しかしながら、これらの芳香族系フルオロカーボンは蒸気圧が高く、すなわち凝縮が起きる温度は低くなる。このため、比較的高い温度においては多孔質膜の孔への凝縮が不十分となる。このため、従来よりも高温で多孔質膜の孔へ十分に凝縮されて封孔し得る材料、および改善された多孔質膜の封孔方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
封孔処理をした多孔質膜をエッチングする場合、多孔質膜の孔内が十分に封孔されていることが望ましいが、封孔される材料が多孔質膜の表面上にも液体状態で存在するとエッチング工程に悪影響を及ぼす。よって、エッチングを実施する温度は、所定の圧力下において、封孔される材料が多孔質膜の孔内に毛細管凝縮により凝縮する温度以下であって、
該材料が液化する温度以上の温度条件下とすることが望ましい。また、エッチングに好適な温度の範囲は、広い方がエッチング条件の制御が容易である。上記により、所定の圧力下、多孔質膜を封孔する材料の液化温度と、該材料が毛細管凝縮により多孔質膜の孔内に凝縮する温度との差が大きい化合物が多孔質膜の封孔用材料として好適である。
【0009】
そこで本発明者らは、蒸気圧、沸点および多孔質膜上における該化合物の接触角に着目し、該接触角が小さい方が液化温度と毛細管凝縮が起こる温度との温度差が大きくなり、蒸気圧曲線と接触角などの知見から、多孔質膜の封孔用材料として好適な化合物及び多孔質膜封孔方法を見出した。
【0010】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0011】
[適用例1]
本発明に係る多孔質膜封孔方法の一態様は、
多孔質膜中の孔を封孔する方法であって、
前記多孔質膜を有する被封孔処理体が収容された処理容器内に第1の材料を供給する第1の工程を含み、
前記第1の材料は、炭素原子数が6以上の非芳香族フルオロカーボンを含むことを特徴とする。
【0012】
かかる適用例によれば、炭素原子数が6以上の非芳香族フルオロカーボンを含む第1の材料が多孔質膜の孔内に浸入し、多孔質膜の孔が封孔される。
【0013】
[適用例2]
適用例1の多孔質膜封孔方法における前記第1の工程において、
前記第1の材料は前記処理容器内にガス状態で導入され、前記第1の材料が前記多孔質膜中の孔を封孔することができる。
【0014】
かかる適用例によれば、第1の材料がガス状態で導入されることから、処理容器内で均一に第1の材料ガスが分散する。分散した第1の材料ガスは毛細管凝縮現象により多孔質膜の孔内に浸入し、均一な封孔処理を行うことができる。
【0015】
[適用例3]
適用例1または適用例2の多孔質膜封孔方法における前記第1の工程において、
前記第1の材料は前記処理容器内に液体状態で導入され、前記第1の材料が前記多孔質膜中の孔を封孔することができる。
【0016】
かかる適用例によれば、第1の材料を気化させることなく、液体状態で導入できる。供給された第1の材料(液体)は毛細管現象により多孔質膜の孔内に浸入し、封孔処理を行うことができる。
【0017】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか1例の多孔質膜封孔方法において、
エッチングガスによりプラズマを生成する第2の工程をさらに含むことができる。
【0018】
かかる適用例によれば、多孔質膜の孔に第1の材料が浸入し封孔された状態でプラズマエッチングを実施することができる。よって、多孔質膜へのダメージの少ないエッチングを行うことができる。
【0019】
[適用例5]
適用例4の多孔質膜封孔方法において、
前記第2の工程は、前記第1の工程の後に行われ、前記第2の工程において、前記第1の材料がエッチングガスとして作用することができる。
【0020】
第1の工程を経ることにより、多孔質膜の孔が第1の材料によって封孔されるので、多孔質膜の機械的強度が向上する。これにより、多孔質膜へのダメージの少ないエッチングを行うことができる。また、第2の工程においてエッチングが行われると、多孔質膜のうちエッチングにより露出した面の孔が開孔する。プラズマ条件下で、開孔部から孔を封孔していた第1の材料が気化、分散すると、第1の材料はエッチングガスとしても作用することができる。
【0021】
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか1例の多孔質膜封孔方法において、
前記処理容器内の温度を上昇させ、および/または、前記処理容器内の圧力を低下させることにより、前記第1の材料を前記多孔質膜中の孔から除去する第3の工程をさらに含むことができる。
【0022】
かかる適用例によれば、第3の工程により、第1の材料が蒸発し、多孔質膜の孔から除去され、多孔質膜を次のプロセスに供することができる。なお、第3の工程終了後、再び第1の工程から繰り返し実行しても良い。
【0023】
[適用例7]
適用例1ないし適用例6のいずれか1例の多孔質膜封孔方法において、
前記第1の材料は環状構造を有し、25℃の温度における蒸気圧が0.05Torr以上25Torr以下であることができる。
【0024】
かかる適用例によれば、第1の工程を実施する温度において、第1の材料が多孔質膜の孔内に浸入し凝縮しやすい。よって多孔質膜の封孔が起きやすくなる。
【0025】
[適用例8]
適用例1ないし適用例6のいずれか1例の多孔質膜封孔方法において、
前記第1の材料は直鎖または分岐構造を有し、25℃の温度における蒸気圧が0.05Torr以上40Torr以下であることができる。
【0026】
かかる適用例によれば、第1の工程を実施する温度において、第1の材料が多孔質膜の孔内に浸入し凝縮しやすい。第1の材料が直鎖または分岐構造である場合には、その分子の立体構造の自由度が大きく、環状構造である場合よりも多孔質膜の微細な孔内への浸入・凝縮に好適である。
【0027】
[適用例9]
適用例1ないし適用例8のいずれか1例の多孔質膜封孔方法において、
前記第1の材料は、−50℃から−20℃の温度範囲における蒸気圧が0.0001Torr以上0.1Torr以下であることができる。
【0028】
かかる適用例によれば、多孔質膜の孔内に浸入・凝縮した第1の材料が孔内に残存した状態でエッチングを実施することができる。
【0029】
[適用例10]
適用例1ないし適用例9のいずれか1例の多孔質膜封孔方法において、
前記第1の材料は、標準沸点が100℃以上400℃以下であることができる。ここで標準沸点とは、第1の材料の蒸気圧が大気圧(101325Pa)と等しくなる温度をいう。
【0030】
[適用例11]
適用例1ないし適用例10のいずれか1例の多孔質膜封孔方法において、
前記第1の材料は、前記第1の材料の一分子中に含有される合計原子数のうち0%以上20%以下が水素原子であることができる。
【0031】
[適用例12]
適用例1ないし適用例11のいずれか1例の多孔質膜封孔方法において、
前記第1の材料は、前記第1の材料の分子量のうち0%以上5%以下が水素原子の原子量であることができる。
【0032】
かかる適用例によれば、水素原子が第1の材料中に含まれる割合が比較的少ない。このため第1の材料による多孔質膜の還元が起きにくく、デバイスに与えるダメージを抑制することができる。
【0033】
[適用例13]
適用例1ないし適用例12のいずれか1例の多孔質膜封孔方法において、
前記第1の材料は、1以上の酸素原子および/または窒素原子を含有することができる。
【0034】
[適用例14]
適用例1ないし適用例13のいずれか1例の多孔質膜封孔方法において、
前記第1の材料は、前記多孔質膜上における接触角が0度より大きく、5度以下であることができる。
【0035】
かかる適用例によれば、第1の材料が毛細管現象により多孔質膜の孔内に浸入しやすい。
【0036】
[適用例15]
適用例1ないし適用例14のいずれか1例の多孔質膜封孔方法において、
前記第1の材料は、下記一般式(1)ないし一般式(4)のいずれかの一般式で表される化合物であることができる。
CR(CRCR ・・・・・(1)
(ここで、式(1)中、複数存在するRは各々独立して、H、F、Cl、CFまたはCHFであり、複数存在するRは各々独立して、H、F、Cl、CFまたはCHFであり、複数存在するRは各々独立して、H、F、Cl、CFまたはCHFである。nは4以上15以下の整数である。)
CR(O(CROCR ・・・・・(2)
(ここで、式(2)中、複数存在するRは各々独立してH、F、Cl、CFまたはCHFであり、複数存在するRは各々独立してH、F、Cl、CFまたはCHFであり、複数存在するRは各々独立して、H、F、Cl、CFまたはCHFである。nは1以上15以下の整数であり、mは1以上4以下の整数であり、nとmを乗じた数は4以上15以下である。)
【化1】
(ここで、式(3)中、複数存在するRは各々独立してH、F、Cl、CFまたはCHFであり、nは6以上17以下の整数である。)
【化2】
(ここで、式(4)中、複数存在するRは各々独立してH、F、Cl、CFまたはCHFであり、nは2以上17以下の整数であり、mは1以上4以下の整数であり、nとmを乗じた数は6以上17以下である。)
【0037】
[適用例16]
適用例1ないし適用例14のいずれか1例の多孔質膜封孔方法において、
前記第1の材料は、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリペンチルアミン、パーフルオロトリプロピルアミン、パーフルオロデカリン、パーフルオロテトラデカハイドロフェナントレン、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロデカン、パーフルオロウンデカン、パーフルオロトリグリム、パーフルオロテトラグリム、パーフルオロペンタグリム、パーフルオロ−1,4−ジメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−1,3,5−トリメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−1,2,4,5−テトラメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−15−クラウン−5−エーテル、およびヘキサフルオロプロピレンオキサイドトリマーよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることができる。
【0038】
[適用例17]
適用例1ないし適用例16のいずれか1例の多孔質膜封孔方法において、
前記第1の材料は、純度が99.9重量%以上100重量%以下であり、水を0%以上0.1%以下含有することができる。
【0039】
かかる適用例によれば、純度が99.9重量%以上100重量%以下であり、水を0%以上0.1%以下含有する炭素原子数6以上の非芳香族フルオロカーボンを使用することで、プラズマにより励起された酸素ラジカル、OHラジカル等の活性種に起因する、多孔質膜および多孔質膜を含むデバイスへのダメージを低減することができる。
【0040】
[適用例18]
本発明に係る多孔質膜封孔用材料の一態様は、
炭素原子数6以上の非芳香族フルオロカーボンを含むことを特徴とする。
【0041】
かかる適用例によれば、炭素原子数が6以上の非芳香族フルオロカーボンを含む多孔質膜封孔用材料が多孔質膜の孔内に浸入し、多孔質膜の孔が封孔される。
【0042】
[適用例19]
適用例18の多孔質膜封孔用材料は、エッチング工程に用いられることができる。
【0043】
かかる適用例によれば、前記多孔質膜封孔用材料は毛細管凝縮現象により多孔質膜の孔内に浸入し、孔を封孔することができるので、該多孔質膜のエッチング工程におけるダメ
ージを低減することができる。
【0044】
[適用例20]
適用例18または適用例19の多孔質膜封孔用材料は、環状構造を有し、25℃の温度における蒸気圧が0.05Torr以上25Torr以下であることができる。
【0045】
かかる適用例によれば、多孔質膜の膜を封孔する温度において、多孔質膜封孔用材料が多孔質膜の孔内に浸入し凝縮しやすい。よって、多孔質膜の封孔が起きやすくなる。
【0046】
[適用例21]
適用例18または適用例19の多孔質膜封孔用材料は、直鎖または分岐構造を有し、25℃の温度における蒸気圧が0.05Torr以上40Torr以下であることができる。
【0047】
かかる適用例によれば、多孔質膜の膜を封孔する温度において、前記多孔質膜封孔用材料が多孔質膜の孔内に浸入し凝縮しやすい。前記多孔質膜封孔用材料が直鎖または分岐構造である場合には、その分子の立体構造の自由度が高く、環状構造である場合よりも多孔質膜の微細な孔内への浸入・凝縮に好適である。
【0048】
[適用例22]
適用例18ないし適用例21のいずれか1例の多孔質膜封孔用材料は、−50℃から−20℃の温度範囲における蒸気圧が0.0001Torr以上0.1Torr以下であることができる。
【0049】
かかる適用例によれば、多孔質膜封孔用材料が多孔質膜を封孔した状態のままエッチングを実施することができる。
【0050】
[適用例23]
適用例18ないし適用例22のいずれか1例の多孔質膜封孔用材料は、標準沸点が100℃以上400℃以下であることができる。
【0051】
[適用例24]
適用例18ないし適用例23のいずれか1例の多孔質膜封孔用材料は、その一分子中に含有される合計原子数のうち0%以上20%以下が水素原子であることができる。
【0052】
かかる適用例によれば、多孔質膜封孔用材料中に含まれる水素原子の割合が少ないため、多孔質膜封孔用材料による多孔質膜の還元が起きにくく、デバイスに与えるダメージを抑制することができる。
【0053】
[適用例25]
適用例18ないし適用例24のいずれか1例の多孔質膜封孔用材料は、その分子量のうち0%以上5%以下が水素原子の原子量であることができる。
【0054】
[適用例26]
適用例18ないし適用例25のいずれか1例の多孔質膜封孔用材料は、1以上の酸素原子および/または窒素原子を含有することができる。
【0055】
[適用例27]
適用例18ないし適用例26のいずれか1例の多孔質膜封孔用材料は、前記多孔質膜上における接触角が0度より大きく、5度以下であることができる。
【0056】
かかる適用例によれば、多孔質膜封孔用材料が毛細管現象により多孔質膜の孔内に浸入しやすい。
【0057】
[適用例28]
適用例18ないし適用例27のいずれか1例の多孔質膜封孔用材料は、下記一般式(1)ないし一般式(4)のいずれかの一般式で表される化合物であることができる。
CR(CRCR ・・・・・(1)
(ここで、式(1)中、複数存在するRは各々独立して、H、F、Cl、CFまたはCHFであり、複数存在するRは各々独立して、H、F、Cl、CFまたはCHFであり、複数存在するRは各々独立して、H、F、Cl、CFまたはCHFである。nは4以上15以下の整数である。)
CR(O(CROCR ・・・・・(2)
(ここで、式(2)中、複数存在するRは各々独立してH、F、Cl、CFまたはCHFであり、複数存在するRは各々独立してH、F、Cl、CFまたはCHFであり、
複数存在するRは各々独立して、H、F、Cl、CFまたはCHFである。nは1以上15以下の整数であり、mは1以上4以下の整数であり、nとmを乗じた数は4以上15以下である。)
【化3】
(ここで、式(3)中、複数存在するRは各々独立してH、F、Cl、CFまたはCHFであり、nは6以上17以下の整数である。)
【化4】
(ここで、式(4)中、複数存在するRは各々独立してH、F、Cl、CFまたはCHFであり、nは2以上17以下の整数であり、mは1以上4以下の整数であり、nとmを乗じた数は6以上17以下である。)
【0058】
[適用例29]
適用例18ないし適用例27のいずれか1例の多孔質膜封孔用材料は、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリペンチルアミン、パーフルオロトリプロピルアミン、パーフルオロデカリン、パーフルオロテトラデカハイドロフェナントレン、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロデカン、パーフルオロウンデカン、パーフルオロトリグリム、パーフルオロテトラグリム、パーフルオロペンタグリム、パーフルオロ−1,4−ジメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−1,3,5−トリメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−1,2,4,5−テトラメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−15−クラウン−5−エーテル、およびヘキサフルオロプロピレンオキサイドトリマーよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることができる。
【0059】
[適用例30]
適用例18ないし適用例29のいずれか1例の多孔質膜封孔用材料は、純度が99.9重量%以上100重量%以下であり、水を0%以上0.1%以下含有することができる。
【0060】
かかる適用例によれば、純度が99.9重量%以上100重量%以下であり、水を0%以上0.1%以下含有する多孔質膜封孔用材料を使用することで、プラズマにより励起された酸素ラジカル、OHラジカル等の活性種に起因する、多孔質膜および多孔質膜を含むデバイスへのダメージを低減することができる。
【発明の効果】
【0061】
本発明に係る多孔質膜封孔方法によれば、炭素原子数が6以上の非芳香族フルオロカーボンである第1の材料を、多孔質膜を有する被封孔処理隊が収容された処理容器内に供給することにより、前記第1の材料が多孔質膜の孔内に浸入し、孔を封孔する。第1の材料により封孔することで、多孔質膜へのダメージが少ないエッチングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】本実施形態に係る多孔質膜封孔方法の概念の説明図である。
図2】本実施形態で好適に用いられる多孔質膜封孔装置の概略構成図である。
図3】本実施形態に係る多孔質膜封孔方法のフローを示す図である。
図4】実施例で使用した各材料の蒸気圧曲線である。
図5】実施例で使用した各材料の蒸気圧曲線である。
図6】本実施例で用いられる多孔質膜封孔装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に記載された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。
【0064】
1.多孔質膜封孔方法
本実施形態に係る多孔質膜封孔方法は、多孔質膜を有する被封孔処理体が収容された処理容器内に第1の材料を供給する第1の工程を含む方法であって、前記第1の材料は炭素原子数が6以上の非芳香族フルオロカーボンであることを特徴とする。また、本実施形態に係る多孔質膜封孔方法では、エッチングガスによりプラズマを生成する第2の工程;前記第1の材料を多孔質膜中の孔から除去する第3の工程;を必要に応じてさらに含んでもよい。第3の工程終了後、再び第1の工程から繰り返して実行しても良い。
【0065】
本実施形態に係る多孔質膜封孔方法は、多孔質膜を有する被封孔処理体(例えばフィルター材料、多孔質フィルム、Low−k膜等)の孔の封孔に使用することができ、水処理、半導体、食品等の分野において好適に使用することができる。
【0066】
被封孔処理体は、特に限定されず、基板上に支持された多孔質膜の形態をとってもよく、自立した多孔質膜であってもよい。また、多孔質膜は、膜内で各孔が独立して存在してもよく、膜内で孔同士が部分的あるいは完全に相互接続されていてもよい。多孔質膜の孔の大きさは、特に限定されるものではないが、通常、直径0.1〜5000nmである。多孔質膜がLow−k膜である場合には、孔の大きさは、直径0.1〜100nmであることが好ましい。
【0067】
本実施形態に係る多孔質膜封孔方法の概念について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る多孔質膜封孔方法の概念の説明図を図1に示す。図1(A)は、第1の工程前の被封孔処理体11を示している。図1(A)に示すように、被封孔処理体11は、例えば基板13の上方に複数の孔15を有する多孔質膜14を備えている。
【0068】
図1(B)は、第1の工程終了後の被封孔処理体11を示している。第1の工程において、第1の材料16は、孔15内に浸入・凝集することにより多孔質膜封孔用材料として
機能する。このように多孔質膜14の孔15が封孔されることにより、多孔質膜14の弾性率や硬さといった機械的強度が向上する。
【0069】
図1(C)は、第2の工程終了後、すなわち第1工程終了後にエッチングされた被封孔処理体11を示している。第1の工程において多孔質膜14の孔15に第1の材料が浸入し凝縮していることにより、プラズマエッチングを行う第2の工程で多孔質膜14が受けるダメージを低減させることができる。具体的には、プラズマにより発生した活性種により多孔質膜14の孔15の立体形状が破壊される現象を抑制することができる。さらに、第2の工程において多孔質膜14がエッチングされると、エッチングにより新たに発生した多孔質膜表面で第1の材料が凝縮した孔が開孔する。この開孔部から第1の材料の少なくとも一部が蒸散し、蒸散した第1の材料がエッチングガスとしても機能する場合がある。
【0070】
図1(D)は、第3の工程終了後の被封孔処理体11を示している。第2の工程終了後には、後述の第3の工程により第1の材料が除去される。
【0071】
以下、本実施形態に係る多孔質膜封孔方法における各工程について工程毎に説明する。
【0072】
1.1.第1の工程
第1の工程は、多孔質膜を有する被封孔処理体が収容された処理容器内に第1の材料を供給する工程である。第1の工程において多孔質膜の孔を第1の材料により封孔することができる。処理容器内に第1の材料を供給するためには、当業者に既知の任意の材料導入方法を用いることができる。
【0073】
以下、図面を参照しながら、第1の工程で実施される多孔質膜封孔方法について説明する。図2は、本実施形態で好適に用いられる装置の概略構成図である。図3は、本実施形態に係る多孔質膜封孔方法のフローを示す図である。
【0074】
まず、図2および図3に示すように、多孔質膜を有する被封孔処理体11を処理容器21内に収容する。処理容器21内には、封孔処理を行うための被封孔処理体を1〜200個程度収容することができる。多孔質膜を有する被封孔処理体11は、用途によって異なる。被封孔処理体11の具体例としては、例えば多孔質シリカ、多孔質カーボン、多孔質カーボンセラミック複合体またはこれらの組み合わせを有するLow−k膜、フルオロカーボン多孔質膜、又はこれらの材料のあらゆる組合せを含む他の多孔質膜が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
このとき、圧力調整機構22により、処理容器21内の圧力を所定の圧力とし、温度調節機構23により処理容器21内の温度を所定の温度とする。圧力調整機構22には背圧弁または圧力調整弁を用いることができるが、これらに限定されない。温度調節機構23には、冷媒(例えば液体窒素、イソプロピルアルコール等)による冷却とヒーターによる加温を組み合わせた温度調節機構を用いることができるが、これに限定されない。第1の工程と第2の工程を実施する温度及び圧力はそれぞれ異なる値とすることができる。
【0076】
処理容器21内の温度は、温度調節機構23により−70℃以上25℃以下の範囲の温度に設定することができる。処理容器21内の温度の下限値は好ましくは−70℃であり、より好ましくは−30℃であり、さらに好ましくは−20℃である。処理容器21内の温度の上限値は好ましくは25℃であり、より好ましくは20℃である。
【0077】
処理容器21内の圧力の下限値は、好ましくは0.01mTorrであり、より好ましくは0.05mTorrであり、さらに好ましくは0.1mTorrである。処理容器2
1内の圧力の上限値は、好ましくは1000mTorrであり、より好ましくは500mTorrであり、さらに好ましくは100mTorrである。
【0078】
処理容器21は、例えばステンレススチール製とすることができるが、これに限定されない。
【0079】
続いて、6以上の炭素原子を有する非芳香族フルオロカーボンを含む第1の材料を処理容器21内に導入する。この際、第1の材料はガス状態または液体状態で処理容器21内に導入することができる。第1の材料をガス状態で導入する場合には、第1の材料容器31から第1の材料の蒸気を導入する方法(昇華した第1の材料を導入する方法を含む)、第1の材料の液滴をヒーター上に滴下し、発生した蒸気を導入するダイレクトインジェクション方法、または第1の材料容器31にキャリアガスを導入してバブリングにより第1の材料の蒸気を同伴させて導入する方法が好適に用いられるが、これらに限定されない。第1の材料を液体状態で導入する場合には、処理容器21内に液滴を滴下し蒸発させる方法が好適に用いられるが、これらに限定されず、液滴を直接多孔質膜に滴下してもよい。ガス状態または液体状態で第1の材料を処理容器21に導入するにあたり、流量調整機構32により第1の材料の流量を制御することもできる。流量調整機構32には第1の材料の性状、特性等に応じてマスフローコントローラ、可変リークバルブ、または液体流量計を使用することができるが、これらに限定されない。
【0080】
処理容器21では、多孔質膜の封孔処理のみを実施することもできるが、第2の工程であるエッチングおよび/または第3の工程である第1の材料の除去も実施することができる。第2の工程および第3の工程の詳細については後述する。
【0081】
処理容器21内に導入する第1の材料の流量は、流量調整機構32により、例えば00.1SCCM〜2000SCCMの範囲内のガス流量または液体流量とする。前記流量は処理容器21の容量、被封孔処理体の個数、第1の材料の性状等に応じて変更することができる。
【0082】
処理容器21内に第1の材料を導入する時間は、処理容器21の容量、被封孔処理体の個数、第1の材料の性状等に応じて変更することができ、例えば5秒から60分の範囲とすることができる。
【0083】
このようにして、処理容器21内で、第1の材料によって被封孔処理体11の孔が封孔される。第1の材料が処理容器21内においてガス状態である場合には、毛細管凝縮により孔に浸入するためである。また、第1の材料が処理容器21内において液体状態であり、液滴が多孔質膜に直接供給される場合は、毛細管現象により孔に浸入するためである。
【0084】
<第1の材料>
第1の材料としては、炭素原子数が6以上の非芳香族フルオロカーボンを含む材料であれば特に限定されない。非芳香族フルオロカーボンは、芳香族フルオロカーボンと比較して炭素−炭素結合の回転・収縮の自由度が高く、分子の立体構造が柔軟であるため、多孔質膜の孔に浸入しやすい。
【0085】
第1の材料が環状構造を有する化合物である場合には、25℃における蒸気圧の下限値が好ましくは0.05Torrであり、より好ましくは0.5Torrであり、上限値が好ましくは25Torrであり、より好ましくは20Torrである。
【0086】
第1の材料が直鎖または分岐構造を有する化合物である場合には、25℃における蒸気圧の下限値が好ましくは0.05Torrであり、より好ましくは0.5Torrであり
、上限値が好ましくは40Torrであり、好ましくは25Torrである。
【0087】
第1の材料の蒸気圧が、上記範囲内であれば、第1の工程を実施する温度・圧力条件において多孔質膜の孔への浸入、凝集が起こりやすい。直鎖または分岐構造を有する化合物は、環状構造を有する化合物よりもさらに原子間の結合の回転・伸縮の自由度が高い。このため、第1の材料に好適な蒸気圧の範囲をより広くすることができる。
【0088】
第1の材料は、−50℃から−20℃の温度における蒸気圧の下限値が好ましくは0.0001Torrであり、より好ましくは0.001Torrであり、上限値が好ましくは0.1Torrであり、より好ましくは0.05Torrである。
【0089】
−50℃から−20℃の低温における蒸気圧が上記範囲内であれば、封孔が起きやすく、かつ、封孔をする第1の工程と同程度の温度・圧力条件において第2の工程であるエッチングを実施することができる点で好ましい。
【0090】
第1の材料は、標準沸点の下限値が好ましくは100℃であり、より好ましくは110℃であり、上限値が好ましくは400℃であり、より好ましくは250℃である。
【0091】
第1の材料は、前記第1の材料の一分子中に含有される合計原子数のうち0%以上20%以下が水素原子であることが好ましい。
【0092】
また、第1の材料は、前記第1の材料の分子量のうち0%以上5%以下が水素原子の原子量であることが好ましい。
【0093】
このように、第1の材料中に含まれる水素原子の割合が少ない場合には、第1の材料による多孔質膜の還元が起きにくい。よって、多孔質膜および多孔質膜を含むデバイスに与えるダメージを抑制することができる。
【0094】
第1の材料は、1以上の酸素原子および/または窒素原子を含有することもできる。酸素原子を含有する第1の材料としては、直鎖、分岐、または環状のエーテル、ケトン、酸無水物、アルコール類、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。窒素原子を含有する第1の材料としては、直鎖、分岐、または環状のアミン、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
第1の材料は、前記被封孔処理体の多孔質膜上における接触角が0度より大きく、5度以下であることが好ましい。接触角が0度より大きく、5度以下である場合には、第1の材料が毛細管現象により多孔質膜の孔に特に浸入しやすく、封孔が起こりやすい。
【0096】
なお、本発明における多孔質膜上における第1の材料の接触角とは、以下に示す液滴法により測定された静的接触角のことをいう。
(1)25℃の温度において、空気中に多孔質膜を静置する。
(2)マイクロシリンジを用いて、水平な状態で多孔質膜上に第1の材料10μLを滴下する。
(3)静止した状態で、滴下された第1の材料の液滴を真横からデジタルカメラにより撮影する。
(4)撮影された画像から、多孔質膜と該多孔質膜上の液滴(第1の材料)の接点における液滴表面の接線と多孔質膜とのなす角を接触角として算出する。
【0097】
第1の材料は、下記一般式(1)ないし(4)のいずれかの一般式で表わされる化合物またはこれらの混合物であることがより好ましい。
CR(CRCR ・・・・・(1)
(ここで、式(1)中、複数存在するRは各々独立して、H、F、Cl、CFまたはCHFであり、複数存在するRは各々独立して、H、F、Cl、CFまたはCHFであり、複数存在するRは各々独立して、H、F、Cl、CFまたはCHFである。nは4以上15以下の整数である。)
CR(O(CROCR ・・・・・(2)
(ここで、式(2)中、複数存在するRは各々独立してH、F、Cl、CFまたはCHFであり、複数存在するRは各々独立してH、F、Cl、CFまたはCHFであり、複数存在するRは各々独立して、H、F、Cl、CFまたはCHFである。nは1以上15以下の整数であり、mは1以上4以下の整数であり、nとmを乗じた数は4以上15以下である。)
【化5】
(ここで、式(3)中、複数存在するRは各々独立してH、F、Cl、CFまたはCHFであり、nは6以上17以下の整数である。)
【化6】
(ここで、式(4)中、複数存在するRは各々独立してH、F、Cl、CFまたはCHFであり、nは2以上17以下の整数であり、mは1以上4以下の整数であり、nとmを乗じた数は6以上17以下である。)
【0098】
上記一般式(1)中、R、RまたはRとしては、H、F、Cl、CFまたはCHFが挙げられるが、各々独立してCFまたはFであることがさらに好ましい。なお、nは4以上15以下の整数であるが、好ましくは6以上12以下の整数であり、より好ましくは7以上10以下の整数である。
【0099】
上記一般式(2)中、R、RまたはRとしては、H、F、Cl、CFまたはCHFが挙げられるが、各々独立してCFまたはFであることがさらに好ましい。なお、nは1以上15以下の整数であるが、好ましくは2以上10以下の整数であり、より好ましくは3以上6以下の整数である。mは1以上4以下の整数であるが、好ましくは1以上3以下の整数であり、より好ましくは1以上2以下の整数である。
【0100】
上記一般式(3)中、Rとしては、H、F、Cl、CFまたはCHFが挙げられるが、各々独立してCFまたはFであることがさらに好ましい。なお、nは6以上17以下の整数であるが、好ましくは7以上15以下の整数であり、より好ましくは8以上12以下の整数である。
【0101】
上記一般式(4)中、Rとしては、H、F、Cl、CFまたはCHFが挙げられるが、各々独立してCFまたはFであることがさらに好ましい。なお、nは2以上17以下の整数であるが、好ましくは3以上15以下の整数であり、より好ましくは4以上12以下の整数である。mは1以上4以下の整数であるが、好ましくは2以上3以下の整数である。
【0102】
なお、上記一般式(1)ないし一般式(4)のいずれかの一般式で表される化合物とし
ては、水素原子を有しないパーフルオロ化合物であってもよいが、水素原子を1個以上有するハイドロフルオロ化合物であってもよい。
【0103】
第1の材料の具体例としては、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリペンチルアミン、パーフルオロトリプロピルアミン、パーフルオロデカリン、パーフルオロテトラデカハイドロフェナントレン、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロデカン、パーフルオロウンデカン、パーフルオロトリグリム、パーフルオロテトラグリム、パーフルオロペンタグリム、パーフルオロ−1,4−ジメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−1,3,5−トリメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−1,2,4,5−テトラメチルシクロヘキサン、パーフルオロ−15−クラウン−5−エーテル、およびヘキサフルオロプロピレンオキサイドトリマー等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
【0104】
第1の材料は、純度が99.9重量%以上100重量%以下であり、かつ、水を0%以上0.1%以下含有する材料であることが好ましい。
【0105】
純度が99.9重量%以上100重量%以下であり、かつ、水を0%以上0.1%以下含有する第1の材料を使用することで、プラズマにより励起された酸素ラジカル、OHラジカル等の活性種に起因する、多孔質膜および多孔質膜を含むデバイスへのダメージを低減することができる。
【0106】
1.2.第2の工程
本実施形態による多孔質膜封孔方法において、エッチングガスによりプラズマを生成する第2の工程をさらに含むことができる。この第2の工程は、第1の工程を実施している処理容器21内で、第1の工程終了後に実施することが好ましいが、第1の工程終了後に別の処理容器に被封孔処理体を移動して第2の工程を実施してもよい。
【0107】
第2の工程においてエッチングガスによりプラズマを生成すると、多孔質膜がエッチングされる。多孔質膜の孔内には第1の工程において実施した封孔処理により、第1の材料が浸入・凝集しているため、多孔質膜の機械的強度が向上しており、第2の工程におけるプラズマエッチングの多孔質膜へのダメージを低減することができる。
【0108】
エッチングガスは、当業者に既知の任意のガスを用いることができ、例えばSF、SiF、NF、CF、CHF、CH、C、C、O、CO、CO、N、He、Ar,Ne、Kr、およびXeよりなる群から選択される少なくとも1種のガスを含むことができる。前記第1の材料を含むこともできる。
【0109】
第2の工程においては、圧力調整機構22により、処理容器21内の圧力を所定の圧力とし、温度調節機構23により処理容器21内の温度を所定の温度とする。圧力調整機構22には背圧弁または圧力調整弁を用いることができるが、これらに限定されない。温度調節機構23には、液体窒素による冷却とヒーターによる加温を組み合わせた温度調節機構を用いることができるが、これに限定されない。第1の工程と第2の工程を実施する温度及び圧力はそれぞれ異なる値とすることができる。
【0110】
第2の工程における処理容器21内の温度は、温度調節機構23により−70℃以上25℃以下の範囲の温度に設定することができる。処理容器21内の温度の下限値は好ましくは−70℃であり、より好ましくは−30℃であり、さらに好ましくは−20℃である。処理容器21内の温度の上限値は好ましくは25℃であり、より好ましくは20℃である。
【0111】
第2の工程における処理容器21内の圧力の下限値は、好ましくは0.01mTorrであり、より好ましくは0.05mTorrであり、さらに好ましくは0.1mTorrである。処理容器21内の圧力の上限値は、好ましくは1000mTorrであり、より好ましくは500mTorrであり、さらに好ましくは100mTorrである。
【0112】
処理容器21内に導入するエッチングガスの流量は、処理容器21の容量、被封孔処理体の個数、エッチングガスの特性等に応じて変更することができる。前記エッチングガスの流量は流量調整機構34により調整され、例えば1SCCM〜3000SCCMの範囲内のガス流量とすることができる。
【0113】
1.3.第3の工程
本実施形態に係る多孔質膜封孔方法は、処理容器21内の温度を上昇させ、および/または、処理容器21内の圧力を低下させることにより、第1の材料を多孔質膜中の孔から除去する第3の工程をさらに含むことができる。処理容器21内の温度上昇および圧力の低下は、いずれか一方を選択することもできるが、両方を実施することもできる。この第3の工程は、第1の工程および/または第2の工程を実施している処理容器内で、第2の工程終了後に実施することができる。
【0114】
第3の工程において、処理容器21の温度を上昇させる際は、温度調節機構23により処理容器21内の温度を所定の温度とする。第3の工程において、処理容器21の圧力を低下させる場合には圧力調整機構22により、処理容器21内の圧力を所定の圧力とする。圧力調整機構22には背圧弁または圧力調整弁を用いることができるが、これらに限定されない。
【0115】
第3の工程における処理容器21内の温度は、第1の工程を実施した温度以上50℃以下の範囲の温度に設定することができる。処理容器21内の温度の下限値は好ましくは第1の工程を実施した温度であり、より好ましくは第1の工程を実施した温度+10℃であり、さらに好ましくは第1の工程を実施した温度+50℃である。処理容器21内の温度の上限値は好ましくは50℃であり、より好ましくは20℃である。
【0116】
第3の工程における処理容器21内の圧力の下限値は、好ましくは0.0001mTorrであり、より好ましくは0.005mTorrであり、さらに好ましくは0.1mTorrである。処理容器21内の圧力の上限値は、好ましくは1000mTorr未満であり、より好ましくは500mTorrであり、さらに好ましくは100mTorrである。
【0117】
第3の工程終了後、処理容器21内をパージし、温度を所定の温度(例えば25℃)に戻し、処理容器21内から被封孔処理体11を取出すことができる。第3の工程終了後、再び第1の工程から繰り返して実行することもできる。
【0118】
1.4.作用効果
本実施形態に係る多孔質膜封孔方法によれば、多孔質膜を有する被封孔処理体が収容された処理容器内に第1の材料が供給され、第1の材料が多孔質膜の孔中に浸入・凝集する。これにより、多孔質膜の孔は封孔される。第1の材料が多孔質膜の孔中に封孔された状態を維持しながらプラズマエッチングを実施することにより、エッチングによる多孔質膜へのダメージを抑制することができる。そのため、第1の工程における封孔はプラズマによるダメージを受けやすい多孔質膜のエッチング工程に好適である。この場合、エッチングが、多孔質膜の孔内に第1の材料が封孔した状態で行われるので、多孔質膜の孔の立体形状を維持したエッチングを行うことができる。
【0119】
また、本実施形態に係る多孔質膜封孔方法には、多孔質膜封孔用材料として炭素原子数が6以上の非芳香族フルオロカーボンを適用することができる。多孔質膜を封孔してエッチングを行う方法においては、多孔質膜の封孔が不十分であることによりエッチング工程においてダメージを受け、多孔質膜の孔の立体形状が破壊される傾向がある。この場合、多孔質膜本来の誘電特性が失われ、デバイスにダメージを与える。しかしながら、本実施形態に係る多孔質膜封孔方法によれば、多孔質膜封孔用材料である第1の材料が多孔質膜の孔内に浸入・凝縮しやすい。炭素原子数が6以上の非芳香族フルオロカーボンは封孔に好適な分子内の結合の回転・伸縮の自由度を有しており、多孔質膜の孔内に容易に浸入しうるためである。封孔を実施する第1の工程に続くエッチング工程(第2の工程)において多孔質膜へのダメージを低減することができる。
【0120】
2.実施例
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0121】
2.1.各材料の蒸気圧測定
下表1に示す各材料について、種々の温度における蒸気圧を測定した結果(蒸気圧曲線)を図4および図5に示す。蒸気圧の測定は、ステンレススチール製容器に測定対象となる材料を入れ、容器全体を冷却後、徐々に温度を上昇させながら該容器内圧力を測定することにより実施した。なお、下表1には、各材料の図4および図5から読み取れる25℃における蒸気圧を併せて示した。
<測定条件>
・装置名:MKS社製圧力計722B
・低温槽:EYELA社製PSL−2500B
・測定温度:−50℃〜30℃
【0122】
【表1】
【0123】
上表1に示すように、芳香族フルオロカーボンであるCは25℃における蒸気圧が25Torr以上(実測値70Torr)であった。同じく芳香族フルオロカーボンであるCも25℃における蒸気圧が25Torr以上(実測値29Torr)であった。これに対して、炭素原子数が6以上の環状構造を有する非芳香族フルオロカーボンの場合(表1中の化合物番号1、2、3、4)は、25℃における蒸気圧が0.05Torr以上25Torr以下の範囲であった。炭素数が6以上の直鎖または分岐構造を有する
非芳香族フルオロカーボンの場合(表1中の化合物番号5、6、7、8、9)は、25℃における蒸気圧が0.05Torr以上40Torr以下の範囲であった。
【0124】
図4に示すように、芳香族フルオロカーボンであるCは−50℃から−20℃の範囲における蒸気圧が0.1Torr以上(実測値0.4Torr以上)であるのに対し、炭素原子数が6以上の環状構造を有する非芳香族フルオロカーボン(化合物番号1、2、3)の−50℃から−20℃の範囲における蒸気圧は0.0001Torr以上0.1Torr以下の範囲であった。
【0125】
また、図5に示すように、炭素原子数が6以上の直鎖または分岐構造を有する非芳香族フルオロカーボン(化合物番号5、6、7、8、9)の−50℃から−20℃の範囲における蒸気圧も0.0001Torr以上0.1Torr以下の範囲であった。
【0126】
2.2.各材料の標準沸点測定
下表2に示す各材料について、標準沸点を測定した結果を下表2に示す。標準沸点の測定は、上述の蒸気圧測定方法と同じ装置を用い、測定対象化合物の蒸気圧が101325Paとなったときの温度を観測することにより行った。
【0127】
【表2】
【0128】
上表2に示すように、芳香族フルオロカーボンであるCの標準沸点は100℃以下(実測値81℃)であった。これに対して、炭素原子数が6以上の非芳香族フルオロカーボン(化合物番号1〜14)の標準沸点は100℃以上400℃以下であった。
【0129】
2.3.各材料の接触角測定
下表3に示す各材料について接触角を測定した結果を下表3に示す。なお、接触角の測定は以下の手順により実施した。
(1)25℃の温度において、空気中に多孔質膜を静置する。
(2)マイクロシリンジを用いて、水平な状態で多孔質膜上に下表3に示す材料10μL
を滴下する。
(3)静止した状態で、滴下された材料の液滴を真横からデジタルカメラにより撮影する。
(4)撮影された画像から、多孔質膜と該多孔質膜上の液滴(第1の材料)の接点における液滴表面の接線と多孔質膜とのなす角を接触角として算出する。
(5)多孔質膜には、Advantive Technologies社より購入のBlack Diamond(登録商標) 3膜(k値〜2.5)を使用した。Black Diamond(登録商標) 3膜は、PECVD成長による有機シリケートガラスの「バックボーン」と熱的に不安定な有機相を作成し、次いで紫外線硬化により不安定相を除去し(ここで多孔質が形成される)、残った酸化シリコンのマトリクスを再構築および強化して形成されたナノ多孔質膜である。
【0130】
【表3】
【0131】
上表3に示すように、芳香族フルオロカーボンであるCは接触角が9度であり、Cは10度であった。一方、多孔質膜上における第1の材料のうち化合物番号3、5、7、8、9の接触角は5度以下であった。
【0132】
2.4.第1の工程
下表4に示すいずれか1つの化合物を、多孔質膜を有する被封孔処理体を収容する処理容器に供給し、下記の条件により封孔を実施した。封孔前後の多孔質膜について屈折率を測定した結果を下表4に示す。第1の材料が多孔質膜の孔に浸入・凝縮したときの該多孔質膜の屈折率は、第1の材料が浸入・凝縮していないときの多孔質膜の屈折率よりも増加する。封孔前の屈折率と比較して、封孔後の屈折率が5%以上増加した場合には良好な封孔状態と判定し「○」とした。封孔後の屈折率が1%以上5%未満増加した場合には許容しうる封孔状態と判定し「△」とした。封孔後の屈折率の増加が1%未満であった場合には不十分な封孔状態と判定し「×」とした。
【0133】
<封孔条件>
・使用した装置:図6に示す多孔質膜封孔装置を使用した。図6に示す多孔質膜封孔装置は、真空筐体ポンプ25と接続されたガラス窓61付き真空筐体24の内部に、ガラス窓62付き処理容器21および温度調節機構23を備えている。温度調節機構23は、冷媒容器51と接続されており、処理容器21内の温度を任意に制御することができる。また、処理容器21は、第1の材料流量調整機構32を介して第1の材料容器31と接続されており、エッチングガス流量調整機構34を介してエッチングガス容器33と接続されており、処理容器21に第1の材料およびエッチングガスを導入できるようになっている。さらに、処理容器21は、圧力調整機構22および処理容器真空ポンプ45と接続されて
おり、処理容器内の圧力を任意に制御して第1の材料やエッチングガスの流量を調節できる。
・処理容器:ステンレススチール製容器、容量0.05Lである。
・封孔温度:−40℃
・被封孔処理体:Advantive Technologies社より購入、Black Diamond(登録商標) 3膜
・処理容器内圧力:0.03Torr
・多孔質膜封孔用材料(第1の材料):化合物番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、C、C
・封孔時間:3分
【0134】
<操作手順>
第1の工程における操作手順について図6を参照しながら説明する。
【0135】
多孔質膜を有する被封孔処理体(アプライドマテリアルズ社製、Black Diamond(登録商標) 3膜)11を処理容器21内の被封孔処理体ホルダー12に載せた。処理容器21内を不活性ガスによりパージ後、処理容器真空ポンプ45により処理容器21内を減圧した。また、圧力調整機構22により処理容器21内圧力を0.03Torrに調整した。また、温度調整機構23により処理容器21内温度を−40℃とした。処理容器21内温度は、液体窒素による冷却と電気ヒーターによる加温により制御した。
【0136】
ここで、処理容器21の冷却に伴う処理容器21の外側での結露発生防止のため、真空筐体24が設けられている。真空筐体24は真空筐体真空ポンプ25により0.01Torrに減圧されている。
【0137】
処理容器21内の圧力、温度が設定値に達した後、第1の材料容器31から第1の材料を処理容器21に供給した。供給流量は第1の材料流量調整機構32により調整した。本実施例における第1の材料流量調整機構32には可変リークバルブを使用した。第1の材料を3分間、処理容器21に供給することにより、被封孔処理体11の多孔質膜封孔処理を行った。
【0138】
<屈折率測定方法>
・使用した屈折率計:浜松ホトニクス社製 C13027
・測定方法:処理容器21の上部および真空筐体24の上部にガラス窓を設置し、光学的な多孔質膜の屈折率測定と封孔処理を同時に行った。
【0139】
<実験結果>
封孔処理された多孔質膜の屈折率評価の結果を下表4に示す。
【0140】
【表4】
【0141】
上表4では、比較例1および比較例2の芳香族系フルオロカーボンでは封孔が不十分であったのに対し、実施例1〜14の非芳香族系フルオロカーボンである化合物番号1〜14では良好な封孔がなされたことが確認できる。
【0142】
化合物番号1〜14は炭素原子数6以上の非芳香族フルオロカーボンであり、分子内の原子間結合の回転・伸縮の自由度が高く、さらに多孔質膜上での接触角が小さい特性があることから、多孔質膜の孔内に容易に浸入し、縮合したと考えられる。このため多孔質膜の孔において、良好な封孔状態が得られた。
【0143】
2.5.第2の工程
第1の工程を終了後、エッチングガス容器33からエッチングガスを処理容器21に供給した。エッチングガスの流量は、エッチングガス流量調整機構34により調整される。本実施例においては、エッチングガス流量調整機構34にはマスフローコントローラを用いた。処理容器21内の温度及び圧力は第1の工程と同じである。エッチングガスはプラズマにより励起され、処理容器21に供給される。
【0144】
<第2の工程の実験条件>
・使用した装置:図6に示す装置を使用した。
・処理容器:ステンレススチール製容器、容量0.05Lである。
・温度:−40℃
・被封孔処理体:Advantive Technologies社より購入、BlackDiamond(登録商標) 3膜
・処理容器内圧力:0.03Torr
・エッチングガス:SF
・ガス流量:10SCCM
・エッチング時間:30秒
・高周波電力:60MHz,100W
・高周波バイアス電力:0.4MHz,50W
【0145】
<エッチング結果>
実施例1〜14では、多孔質膜の孔が十分に封孔された状態であったため、多孔質膜の機械的強度が向上しており、プラズマエッチングにより多孔質膜の孔が崩壊することなく、良好なエッチングを実現することができた。一方、比較例1および2では、多孔質膜の孔の封孔が不十分な状態でプラズマエッチングを行ったため、多孔質膜の部分的な崩壊が認められた。
【0146】
2.6.第3の工程
第2の工程を終了後、エッチングガスの供給を停止した。その後、処理容器21内の温度を温度調整機構23により昇温させた。また、処理容器21内の圧力を圧力調整機構22により低下させた。その後、上記第1の工程と同様にして、第3の工程終了後の被封孔処理体の屈折率を測定したところ、いずれの実施例および比較例においても封孔処理前の被封孔処理体の屈折率と同じ値であったことから、多孔質膜封孔用材料が除去されたことが確認できた。
【0147】
本実施形態に係る第1の工程、第2の工程および第3の工程は、例えばAlcatel社製601E、またはオックスフォードインスツルメンツ社製PlasmaPro100でも実施することができるが、これに限定されず当業者に既知の任意の装置を用いることができる。
【符号の説明】
【0148】
11…被封孔処理体、12…被封孔処理体ホルダー、13…基板、14…多孔質膜、15…孔、16…第1の材料、21…処理容器、22…圧力調整機構、23…温度調節機構、24…真空筐体、25…真空筐体ポンプ、31…第1の材料容器、32…第1の材料流量調整機構、33…エッチングガス容器、34…エッチングガス流量調整機構、41…マッチングボックス、42…電極、43…マッチングボックス、44…バイアス電源、45…処理容器真空ポンプ、46…排気、47…プラズマ発生用電源、51…冷媒容器、61・62…窓
図1
図2
図3
図4
図5
図6